IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リンナイ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-加熱調理器、加熱調理システム 図1
  • 特許-加熱調理器、加熱調理システム 図2
  • 特許-加熱調理器、加熱調理システム 図3
  • 特許-加熱調理器、加熱調理システム 図4A
  • 特許-加熱調理器、加熱調理システム 図4B
  • 特許-加熱調理器、加熱調理システム 図5A
  • 特許-加熱調理器、加熱調理システム 図5B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】加熱調理器、加熱調理システム
(51)【国際特許分類】
   F24C 3/12 20060101AFI20240927BHJP
   F24C 15/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F24C3/12 L
F24C3/12 R
F24C15/00 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021072223
(22)【出願日】2021-04-22
(65)【公開番号】P2022166867
(43)【公開日】2022-11-04
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡野 佑香
(72)【発明者】
【氏名】梅田 真由子
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-125874(JP,A)
【文献】特開平11-264547(JP,A)
【文献】特開2020-186898(JP,A)
【文献】特開平10-185201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 1/00 - 15/36
A47J 27/00 - 36/42
H05B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段による前記被加熱物の加熱運転の開始及び停止を指示する運転指示手段と、
前記加熱手段による調理時間を設定する調理時間設定手段と、
前記加熱手段により加熱を実行した加熱時間を計時する計時手段と、
前記加熱手段と、前記計時手段と、前記運転指示手段とを制御する制御手段と、
を備える加熱調理器において、
前記調理時間設定手段は、設定する調理時間を入力する調理時間入力部と、前記調理時間入力部で入力した調理時間を表示する調理時間表示部とを有し、
前記制御手段は、前記加熱調理器の使用者が前記運転指示手段を介して前記加熱手段の加熱運転の開始を指示する開始指示を入力したとき、所定の初期設定調理時間を前記調理時間表示部に表示するとともに、前記計時手段により前記加熱時間の計時を開始し、前記計時手段により計時された加熱時間が前記初期設定調理時間に到達したとき、前記加熱手段の前記加熱運転を自動停止させ、
前記計時手段により計時された加熱時間が前記初期設定調理時間に到達するまでの間に、前記使用者が前記調理時間入力部を介して前記加熱手段による調理時間を延長する延長指示の入力が可能であり、
前記制御手段は、前記延長指示が入力された場合に前記加熱手段の調理延長時間を設定し、前記延長指示が入力されなかった場合にその旨を前記使用者又は第三者が認識可能となるように出力することを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記延長指示は、前記加熱手段の調理時間を所定の延長限度時間内に設定可能であることを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の加熱調理器と、
前記加熱調理器と通信可能な第1外部機器と、
を備える加熱調理システムにおいて、
前記加熱調理器は、前記第1外部機器と通信可能な通信手段を備え、
前記制御手段は、前記使用者が前記加熱調理器を使用し、前記初期設定調理時間内に前記延長指示を入力しないことで前記加熱手段が所定期間内に所定回数以上自動停止した場合、前記使用者が前記延長指示を入力せずに前記加熱調理器を使用したことを示す未入力使用情報を前記第1外部機器に出力することを特徴とする加熱調理システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の加熱調理器と、
前記加熱調理器と通信可能な外部サーバと、
前記外部サーバと通信可能な第2外部機器と、
を備える加熱調理システムにおいて、
前記加熱調理器は、前記外部サーバと通信可能な通信手段を備え、
前記制御手段は、前記使用者が前記加熱調理器を使用し、前記初期設定調理時間内に前記延長指示を入力しないことで前記加熱手段が自動停止した場合、前記加熱手段の停止情報を前記外部サーバに対して送信し、
前記外部サーバは前記停止情報を集計し、所定期間内に所定回数以上、前記停止情報を取得した場合、前記使用者が前記延長指示を入力せずに前記加熱調理器を使用したことを示す未入力使用情報を前記第2外部機器に対して送信することを特徴とする加熱調理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理時間の管理機能を備える加熱調理器、及び当該加熱調理器を含む加熱調理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高齢者(使用者)と離れて暮らす家族が、通信機能を備える外部機器を用いて、調理機器の使用状況から使用者の安全の確認等を行うことができる加熱調理システムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1のガスコンロは、使用者が調理容器を載置状態から非載置状態に移行させる操作、及び非載置状態から載置状態に移行させる操作を検出して家族が所有する外部機器に報知し、使用者の安否が確認できるように構成されている。
【0004】
このシステムによれば、加熱開始、停止指令部による加熱開始指令の発令を要件としている場合、使用者が加熱の停止を失念したときに発生が懸念される事象、つまり加熱が長時間継続して行われてしまうというような事象を抑制することができる(特許文献1/段落0075~0077、図11)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-125874号公報
【0006】
近年では、上述の加熱停止等の失念の原因として、認知症や軽度認知障害の可能性が挙げられている。また、この対策として、料理療法に代表される調理行為が認知症等の予防に効果があるといわれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記ガスコンロを利用すると、調理時における使用者の安否の確認が可能である。しかしながら、認知症等の予防のためのトレーニングとして、コンロバーナ上に載置した調理容器を用いる調理については、離れて暮らす家族が確認することが困難という問題があった。
【0008】
なお、ここでいう認知トレーニングとは、コンロバーナ上に載置された調理容器を用いて、俗にいう煮炊き等の調理を行うことである。また、認知トレーニングの対象者である使用者が、調理に使用する食材を切ったり、切った食材を次の工程を考えながら調理容器に順に投入したり、調理物の味付けをしたり、調理中のコンロバーナの火力調節をしたり、完成した調理物を盛り付けしたりする一連の調理を行うことも認知トレーニングに含まれる。
【0009】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、使用者が調理を安全に行うことができ、認知トレーニングとしての機能も有する加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、被加熱物を加熱する加熱手段と、前記加熱手段による前記被加熱物の加熱運転の開始及び停止を指示する運転指示手段と、前記加熱手段による調理時間を設定する調理時間設定手段と、前記加熱手段により加熱を実行した加熱時間を計時する計時手段と、前記加熱手段と、前記計時手段と、前記運転指示手段とを制御する制御手段と、を備える加熱調理器において、
前記調理時間設定手段は、設定する調理時間を入力する調理時間入力部と、前記調理時間入力部で入力した調理時間を表示する調理時間表示部とを有し、
前記制御手段は、前記加熱調理器の使用者が前記運転指示手段を介して前記加熱手段の加熱運転の開始を指示する開始指示を入力したとき、所定の初期設定調理時間を前記調理時間表示部に表示するとともに、前記計時手段により前記加熱時間の計時を開始し、前記計時手段により計時された加熱時間が前記初期設定調理時間に到達したとき、前記加熱手段の前記加熱運転を自動停止させ、
前記計時手段により計時された加熱時間が前記初期設定調理時間に到達するまでの間に、前記使用者が前記調理時間入力部を介して前記加熱手段による調理時間を延長する延長指示の入力が可能であり、
前記制御手段は、前記延長指示が入力された場合に前記加熱手段の調理延長時間を設定し、前記延長指示が入力されなかった場合にその旨を前記使用者又は第三者が認識可能となるように出力することを特徴とする。
【0011】
本発明の加熱調理器において、制御手段は、使用者が運転指示手段を介して加熱手段の加熱運転の開始を指示したとき、初期設定調理時間を調理時間表示部に表示する。また、制御手段は、計時手段により初期設定調理時間を計時し、加熱時間が初期設定調理時間に到達したときは、加熱運転を自動停止する。すなわち、調理を継続するためには、使用者が加熱運転を継続するための操作を行う必要がある。
【0012】
この加熱調理器では、初期設定調理時間に到達するまでの間に、使用者が加熱手段による調理時間を延長する延長指示の入力を可能としている。そして、制御手段は、延長指示に基づいて加熱手段の調理延長時間を設定する。一方、延長指示が入力されなかった場合には、異常の可能性もあるため、その旨を使用者又は第三者が認識可能となるように出力する。本加熱調理器は、使用者が延長指示を入力した場合にのみ調理を継続することができるため、安全に調理を行うことができ、認知トレーニングとしての効果も期待できる。
【0013】
本発明の加熱調理器において、
前記延長指示は、前記加熱手段の調理時間を所定の延長限度時間内に設定可能であることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、加熱調理器の連続使用時間に制限をかけることができるため、より安全に認知トレーニングを行うことができる。
【0015】
また、上記記載の加熱調理器と、前記加熱調理器と通信可能な第1外部機器と、を備える加熱調理システムにおいて、
前記加熱調理器は、前記第1外部機器と通信可能な通信手段を備え、前記制御手段は、前記使用者が前記加熱調理器を使用し、前記初期設定調理時間内に前記延長指示を入力しないことで前記加熱手段が所定期間内に所定回数以上自動停止した場合、前記使用者が前記延長指示を入力せずに前記加熱調理器を使用したことを示す未入力使用情報を前記第1外部機器に出力することが好ましい。
【0016】
使用者は、加熱調理器を使用して調理を行っているとき、自ら延長指示を入力しなければ、加熱手段は自動停止する。使用者が延長指示を入力しないことによる装置停止の事象が所定期間内に複数回繰り返された場合、加熱調理器は、第1外部機器に対して未入力使用情報を出力する。これにより、加熱調理システムは、例えば第三者が第1外部端末で当該未入力使用情報を確認することで、使用者の認知力低下の可能性等を認識することができる。
【0017】
また、上記記載の加熱調理器と、前記加熱調理器と通信可能な外部サーバと、前記外部サーバと通信可能な第2外部機器と、を備える加熱調理システムにおいて、
前記加熱調理器は、前記外部サーバと通信可能な通信手段を備え、前記制御手段は、前記使用者が前記加熱調理器を使用し、前記初期設定調理時間内に前記延長指示を入力しないことで前記加熱手段が自動停止した場合、前記加熱手段の停止情報を前記外部サーバに対して送信し、前記外部サーバは前記停止情報を集計し、所定期間内に所定回数以上、前記停止情報を取得した場合、前記使用者が前記延長指示を入力せずに前記加熱調理器を使用したことを示す未入力使用情報を前記第2外部機器に対して送信することが好ましい。
【0018】
使用者は、加熱調理器を使用して調理を行っているとき、自ら延長指示を入力しなければ、加熱手段は自動停止する。そして、使用者が延長指示を行わなかった場合、加熱手段の停止情報が外部サーバに送信され、外部サーバが停止情報を集計する。さらに、外部サーバが所定期間内に所定回数以上停止情報を取得した場合、第2外部機器に対して未入力使用情報を送信する。これにより、加熱調理システムは、使用者と離れて暮らす家族が第2外部機器を所有していれば、遠隔地にいても使用者の認知力低下の可能性等を認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る加熱調理システムの概略図。
図2】加熱調理器と外部機器の内部構成を説明する図。
図3】加熱調理器のコンロ操作パネルの詳細を説明する図。
図4A】加熱調理器の加熱運転のフローチャート(前半)。
図4B】加熱調理器の加熱運転のフローチャート(後半)。
図5A】加熱調理器の加熱運転のフローチャート(変更形態、前半)。
図5B】加熱調理器の加熱運転のフローチャート(変更形態、後半)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、図面を参照しながら、本発明の加熱調理システムについて説明する。
【0021】
初めに、図1図2を参照して、加熱機器の実施形態に係る加熱調理システムを説明する。加熱調理システム1は、加熱調理器10と、スマートフォン等の通信端末30,40と、外部サーバ50とから構成されている。
【0022】
本実施形態において、加熱調理器10は、ガスコンロである。図1に示すように、加熱調理器10は、被加熱物を加熱する燃焼式の加熱部として、天板部4の左前部、右前部及び後中央部にそれぞれ配置された左コンロ5a、右コンロ5b及び後コンロ5cを備えている。また、加熱調理器10は、その前面で開閉可能に該加熱調理器10の筐体内に配置されたグリル20を備えている。
【0023】
各コンロ5a,5b,5cは、互いに加熱能力(最大火力)が互いに相違するバーナを有するコンロである。例えば、各コンロ5a,5b,5cの加熱能力は、左コンロ5a、右コンロ5b、後コンロ5cの順番で(又は右コンロ5b、左コンロ5a、後コンロ5cの順番で)大、中、小となっている。なお、各コンロ5a,5b,5cの加熱能力は、左コンロ5aと右コンロ5bが同一で、後コンロ5cがそれよりも小、すなわち右コンロ5b、左コンロ5a、後コンロ5cの順番で大、大、小となっていてもよい。
【0024】
加熱調理器10の前面には、各コンロ5a,5b,5cのそれぞれの点火、消火及び火力調整を行うための操作ボタン11a,11b,11cと、グリル20の点火、消火及び火力調整を行うための操作ボタン21が設けられている。この場合、例えば、操作ボタン11a,11b,11cのそれぞれの押し操作により、それぞれに対応するコンロ5a、5b又は5cの点火又は消火が行われ、操作ボタン11a,11b,11cのそれぞれの回転操作により、それぞれに対応するコンロ5a、5b又は5cの火力調整が行われる。
【0025】
このことは、グリル20用の操作ボタン21についても同様である。なお、各コンロ5a,5b,5c及びグリル20のそれぞれの点火及び消火用の操作部と、火力調整用の操作部とは各別の操作部であってもよい。
【0026】
また、加熱調理器10の前面には、さらにプッシュオープン式のコンロ操作部12とグリル操作部22とが設けられている。この場合、コンロ操作部12を押し操作すると、コンロ操作部12が開いて、タッチパネル式のコンロ操作パネル13が操作可能に露出するようになっている。コンロ操作パネル13は、各コンロ5a,5b,5cの操作を切替え可能となっている。なお、コンロ操作パネル13はタッチパネル式でなくてもよく、各コンロ5a,5b,5cの操作のために設けられたタクトスイッチでもよい。当該タクトスイッチを押下することによって、各コンロ5a,5b,5cを操作することができる。
【0027】
また、グリル操作部22を押し操作するとグリル操作部22が開いて、タッチパネル式のグリル操作パネル23が操作可能に露出するようになっている。なお、グリル操作パネル23はタクトスイッチでもよく、当該タクトスイッチを押下することによって、グリル20を操作することができる。また、コンロ操作パネル13及びグリル操作パネル23のそれぞれは、加熱調理器10の外面部に露出した状態で備えられていてもよい。
【0028】
コンロ操作パネル13は、各コンロ5a,5b,5cの作動制御等に関する操作(例えば、湯沸かし運転若しくは炊飯運転のオンオフ操作、自動調理運転に関する設定操作、タイマ時間の設定操作、加熱温度の設定操作等)をユーザが行い得るように構成されていると共に、各コンロ5a,5b,5cの作動に関する種々の情報を表示し得るように構成されている。このことは、グリル操作パネル23についても同様である。
【0029】
加熱調理器10は、上記構成の他、図2に示すように、加熱調理器10の全体の作動制御を行う機能を有する制御部7と、加熱部5(コンロ5a,5b,5c)、20(グリル20)による調理時間を設定するための調理時間設定部9と、加熱部5による加熱時間を計時する計時部14と、通信端末30又は外部サーバ50と通信するための通信部16とを備えている。
【0030】
制御部7(本発明の「制御手段」)は、例えば、マイクロコンピュータ、メモリ、インターフェース回路等を含む1つ以上の電子回路ユニットにより構成される。この制御部7には、調理時間設定部9、計時部14等からの信号と、操作ボタン11a,11b,11c,21及び操作パネル13,23のそれぞれの操作信号とが入力される。
【0031】
制御部7は、火力制御部7Aと、計時制御部7Bとから構成されている。火力制御部7A(本発明の「運転指示手段」)は、実装されたハードウェア構成及びプログラム(ソフトウェア構成)の両方又は一方により実現される機能として、加熱部5,20の作動制御(詳しくは、点火、消火、火力調整に係る作動制御)を行う機能を有する。
【0032】
各コンロ5a,5b,5c及びグリル20のそれぞれの作動制御は、より詳しくは、左コンロ5a、右コンロ5b、後コンロ5c及びグリル20のそれぞれに対応する図示しない燃料供給路に設けられた開閉弁及び火力調整弁、並びに、図示しない点火用のイグナイタの作動制御を通じてなされる。
【0033】
火力制御部7Aは、使用者のコンロ操作パネル13及びグリル操作パネル23の操作によって、加熱部5,20の加熱運転を制御する。また、火力制御部7Aは、後述する延長指示の有無に基づいて、加熱運転を停止又は継続する制御を実行する。
【0034】
計時制御部7Bは、加熱部5の加熱運転が開始したとき(開始指示ありのとき)、初期設定調理時間Txを設定し、計時部14(本発明の「計時手段」)を用いて初期設定調理時間Txを計時する。なお、初期設定調理時間Txは、通常の調理は完了しない程度の時間であり、例えば5~10分程度である。計時制御部7Bは、計時された初期設定調理時間Txをカウントダウン方式により、後述する調理時間表示部9Bで表示するように制御する。
【0035】
調理時間設定部9(本発明の「調理時間設定手段」)は、調理時間入力部9Aと、調理時間表示部9Bとから構成されている。図3に示すように、調理時間入力部9Aは、加熱部5(右コンロ5b)による調理時間を入力する操作部である。また、調理時間表示部9Bは、使用者が調理時間入力部9Aを操作して入力した調理時間を表示するディスプレイである。本実施形態において、調理時間入力部9A及び調理時間表示部9Bは、コンロ操作パネル13の中に設けられているが、加熱調理器10の外面部等、より使用者が認識し易い位置に設けられていてもよい。
【0036】
制御部7は、調理時間設定部9からの延長指示(例えば、調理時間入力部9Aの「∧」スイッチを押下すること毎に延長指示時間1分を加算し、「∨」スイッチを押下すること毎に延長指示時間1分を減算する)を受けると、調理延長時間Tyを設定し、計時部14を用いて、更新された調理延長時間Tyを計時する。例えば、点火直後に10分の延長指示をした場合、初期設定調理時間「5分」に延長指示時間「10分」を加算した「15分」を計時し、初期設定時間「5分」に対して2分経過後に延長指示時間「10分」を加算した場合、「13分」を計時する。
【0037】
更新された調理延長時間Tyは、調理時間表示部9Bに表示される。なお、調理延長時間Tyの上限(本発明の「延長限度時間」)は、例えば30分間であるため、加熱調理器10の連続使用時間に制限をかけることができる。また、初期設定調理時間又は(及び)延長限度時間は、使用者又は使用者と離れて暮らす家族等によって変更できるようにしてもよい。なお、調理延長時間Tyは、初期設定調理時間Txに加算する設定ではなく、使用者が希望する調理時間を入力する設定にしてもよい。
【0038】
加熱調理器10において、初期設定調理時間Txに到達するまでの間に使用者が延長指示を行わなければ、加熱調理器10の加熱運転は自動停止する。使用者は、調理時間入力部9Aによって延長指示を行うことができる。延長指示は、初期設定調理時間Txの解除を含んでいてもよい。
【0039】
初期設定調理時間Txの解除を行った際は、加熱部5の連続使用時間を延長限度時間までとしてもよい。使用者は、調理時間入力部9Aの「∧」スイッチと「∨」スイッチとを同時に押す、又は何れか一方のスイッチを長押しする等の特殊操作を行うことにより、初期設定調理時間Txの解除を行うことができる。また、調理時間設定部9に初期設定調理時間Txの解除を行うための専用スイッチを設けてもよい。なお、延長指示を行うことなく、加熱調理器10の加熱運転が何度も自動停止するような状況が発生した場合、その旨が通信端末30に出力される。
【0040】
図2に示すように、通信端末30(本発明の「第1外部機器」)は、通信端末30の作動制御を行う制御部31と、加熱調理器10と通信可能な通信部32と、画像、文字等を表示する表示部33とから構成されている。通信端末30は、例えば、加熱調理器10のユーザが使用するスマートフォン、タブレット端末、モバイルパソコン等の携帯型の通信機器である。
【0041】
制御部31は、例えば、マイクロコンピュータ、メモリ、インターフェース回路等を含む電子回路ユニットにより構成され、操作部の操作信号が入力される。
【0042】
通信部32は、加熱調理器10の通信部16と無線通信が可能であり、例えば、加熱調理器10からその使用状況等の情報を受けて、表示部33に表示する。加熱調理器10の使用状況によっては、使用者の操作の誤りや不注意が判明するため、その旨を表示部33に表示する。これにより、通信端末30を使用する第三者(又は使用者)が当該使用状況を把握することができる。
【0043】
通信端末40(本発明の「第2外部機器」)は、外部サーバ50と通信可能なスマートフォン、タブレット端末、モバイルパソコン等の携帯型の通信機器であり、同様に制御部、通信部、表示部(図示省略)とから構成されている。
【0044】
通信端末40の制御部は、予めインストールされたアプリケーションを実行する。これにより、インターネット、公衆回線網等により構成される外部ネットワークNWと通信部とを介して、外部サーバ50と通信を行うことが可能である(図1参照)。
【0045】
なお、本実施形態において、通信端末40は、加熱調理器10の使用者とは離れて暮らす家族、親族等が所有する携帯端末を想定している。通信端末40の所有者は、外部サーバ50を介して上述の加熱調理器10からその使用状況等の情報を受け取ることができるため、遠隔地にいても当該使用状況を把握することができる。
【0046】
加熱調理器10の使用者が高齢者である場合、使用者が加熱の停止を失念したことが原因で加熱調理器10の加熱運転が何度も自動停止するような状況は、認知症や軽度認知障害の可能性が疑われる。このため、加熱調理システム1は、通信端末40の所有者に、当該使用者の認知症や軽度認知障害の予兆を認識させることができる。
【0047】
使用者が加熱調理器10を使用し、所定期間(例えば、24時間)内に延長指示を行わず(例えば、3回以上)、加熱部5が自動停止した場合、使用者が延長指示を入力せずに加熱調理器10を使用したことを示す「未入力使用情報」を通信端末30に出力し、報知する。例えば、1時間以内に連続してならば合計3回、24時間以内であれば合計5回の未入力により、「未入力使用情報」を通信端末30に出力する等、報知の条件を適宜変更してもよい。
【0048】
また、加熱調理器10の使用時に、使用者が延長指示を入力しないことで加熱部5が自動停止した場合、加熱部5の「停止情報」を外部サーバ50に送信し、外部サーバ50側で「停止情報」の回数をカウントするようにしてもよい。例えば、外部サーバ50が「停止情報」を24時間以内に合計5回取得したとき、「未入力使用情報」を通信端末40に送信する。これにより、加熱調理システム1は、通信端末40の所有者に、当該使用者の認知症や軽度認知障害の可能性を認識させることができる。
【0049】
次に、図4A図4Bを参照して、加熱調理器10と通信端末30とからなる加熱調理システム1における、加熱調理器10の加熱運転のフローチャートを説明する。
【0050】
図4Aにおいて、まず、AN=0をセットする(STEP01)。ここで、ANは、後述するSTEP02~04,06,07を通過した回数を表し、通過する度に1ずつ加算される。
【0051】
次に、バーナの点火SW(スイッチ)がオンされたか否かが判定される(STEP02)。点火スイッチのオンは、加熱運転の開始を意味する。点火スイッチがオンされた場合にはSTEP03に進み、点火スイッチがオンされていない場合には点火されるまでループする。
【0052】
点火スイッチがオンされた場合(STEP02で「YES」)、タイマTxの計時をスタートする(STEP03)。ここで、タイマTxは初期設定調理時間を意味し、例えば、運転開始から5分間をカウントダウン方式で計時する。なお、タイマTxの残り時間は、使用者が調理時間表示部9Bで確認することができる(図3参照)。
【0053】
次に、使用者がタイマを解除したか否かが判定される(STEP04)。これは、加熱調理器10で調理を継続して行うために必要な操作となる。使用者がタイマを解除した場合にはSTEP05に進み、使用者がタイマを解除しない場合にはSTEP06に進む。
【0054】
使用者がタイマを解除した場合(STEP04で「YES」)、加熱調理器10において、加熱運転を継続する(STEP05)。その後、一連の処理を終了する。
【0055】
一方、使用者がタイマを解除しない場合(STEP04で「NO」)、図4Bにおいて、時間Txが経過したか否かが判定される(STEP06)。時間Tx、すなわち、初期設定調理時間が経過した場合にはSTEP07に進み、まだ経過していない場合にはSTEP08に進む。
【0056】
まず、初期設定調理時間が経過していない場合(STEP06で「NO」)を説明する。この場合、使用者がタイマTyを設定したか否かが判定される(STEP08)。これは、使用者が調理時間入力部9Aを操作して(図3参照)、延長指示を入力したか否かの判定と同じである。
【0057】
使用者がタイマTyを設定した場合にはSTEP09に進み、タイマTyを設定しなかった場合にはSTEP04(図4A)に戻る。なお、使用者がタイマTyを設定しなかった場合には、タイマTxの計時が継続して行われる。
【0058】
使用者がタイマTyを設定した場合(STEP08で「YES」)、タイマTyの計時をスタートする(STEP09)。ここで、タイマTyは調理延長時間を意味し、例えば、初期設定調理時間5分に延長指示時間10分を加算した合計時間15分をカウントダウン方式で計時する。なお、タイマTyの残り時間は、使用者が調理時間表示部9Bで確認することができる(図3参照)。
【0059】
次に、使用者がタイマを解除したか否かが判定される(STEP10)。使用者がタイマを解除した場合にはSTEP05(図4A)に戻り、使用者がタイマを解除しない場合にはSTEP11に進む。
【0060】
使用者がタイマを解除しない場合(STEP10で「NO」)、時間Tyが経過したか否かが判定される(STEP11)。時間Ty、すなわち、調理延長時間が経過した場合にはSTEP12に進み、まだ経過していない場合にはSTEP10に戻る。
【0061】
時間Tyが経過した場合(STEP11で「YES」)、加熱調理器10において、加熱運転を停止する(STEP12)。これにより、加熱部5は自動的に消火される。その後、一連の処理を終了する。
【0062】
次に、初期設定調理時間が経過した場合(STEP06で「YES」)を説明する。この場合、加熱調理器10において、加熱運転を停止する(STEP07)。これにより、加熱部5は自動的に消火される。
【0063】
その後、AN+1=AN+1として、カウントアップする(STEP13)。今回、STEP01においてAN=0にセットしていたため、AN+1=1に更新される。
【0064】
その後、AN+1≧CXを満たすか否かが判定される(STEP14)。ここで、CXは、加熱調理器10の停止に関する情報(未入力使用情報)を通信端末30に出力するための閾値回数であり、例えば3回である。AN+1≧CXを満たす場合にはSTEP15に進み、AN+1≧CXを満たさない場合にはSTEP02(図4A参照)に戻る。
【0065】
N+1≧CXを満たす場合(STEP14で「YES」)、通信端末30に未入力使用情報を出力する(STEP15)。これにより、通信端末30の所有者は、延長指示が行われず、加熱運転が複数回停止したという加熱調理器10の使用状況を認識することができる。その後、AN+1=0にリセットし(STEP16)、一連の処理を終了する。
【0066】
初期設定調理時間Tx、調理延長時間Ty、閾値回数cxは、適宜変更することができる。また、認知症や軽度認知障害の進行度合いに応じて、報知の条件を適宜変更できるようにしてもよい。また、調理延長時間Tyは、延長限度時間(例えば、30分)の範囲内で複数回更新できるようにしてもよい。
【0067】
上記フローチャートでは、加熱調理器10の停止をカウントする期間を特に設けなかったが、期間I(h)を設けて、期間I内での当該停止をカウントするようにしてもよい。例えば、期間I=1(h)のとき、閾値回数Cx=3(回)とすれば、調理(最初の加熱運転)の開始から1時間以内に加熱調理器10が3回停止した時点で、加熱調理器10は、通信端末30に未入力使用情報を出力する。
【0068】
また、期間I=24(h)のとき、閾値回数Cx=5(回)とすれば、1日のうちの朝食、昼食、夕食、それ以外(間食)で加熱調理器10を使用したとき、加熱調理器10が合計5回停止した時点で、加熱調理器10は、通信端末30に未入力使用情報を出力する。このような構成とすることで、例えば、通信端末30,40の所有者が加熱調理器10の使用状況を把握することができる。
【0069】
一方、使用者は、加熱調理器10で調理を行う場合、調理の途中で延長指示を行って加熱運転を継続させる必要があるため、認知トレーニングの効果が得られる。なお、上記実施形態では、調理延長時間Tyの設定と初期設定調理時間Txの解除の双方を有無の判定を行っていたが、変更形態として、何れか一方のみの有無の判定(解除判定)を行うようにしてもよい。
【0070】
最後に、図5A図5Bを参照して、加熱調理器10と通信端末40と外部サーバ50とからなる加熱調理システム1における、加熱調理器10の加熱運転のフローチャート(変更形態)を説明する。
【0071】
図5Aにおいて、まず、加熱部5のバーナの点火SW(スイッチ)がオンされたか否かが判定される(STEP21)。点火スイッチのオンは、加熱運転の開始を意味する。点火スイッチがオンされた場合にはSTEP22に進み、点火スイッチがオンされていない場合には点火されるまでループする。
【0072】
点火スイッチがオンされた場合(STEP21で「YES」)、タイマTxの計時をスタートする(STEP22)。タイマTxは初期設定調理時間を意味し、例えば、運転開始から5分間をカウントダウン方式で計時する。
【0073】
次に、使用者がタイマを解除したか否かが判定される(STEP23)。使用者がタイマを解除した場合にはSTEP24に進み、使用者がタイマを解除しない場合にはSTEP25に進む。
【0074】
使用者がタイマを解除した場合(STEP23で「YES」)、加熱調理器10において、加熱運転を継続する(STEP24)。その後、一連の処理を終了する。
【0075】
一方、使用者がタイマを解除しない場合(STEP23で「NO」)、時間Txが経過したか否かが判定される(STEP25)。時間Txが経過した場合にはSTEP26に進み、まだ経過していない場合にはSTEP27(図5B)に進む。
【0076】
まず、初期設定調理時間が経過していない場合(STEP25で「NO」)を説明する。この場合、図5Bにおいて、使用者がタイマTyを設定したか否かが判定される(STEP27)。これは、使用者が調理時間入力部9Aを操作して、延長指示を入力したか否かの判定と同じである。
【0077】
使用者がタイマTyを設定した場合にはSTEP28に進み、タイマTyを設定しなかった場合にはSTEP23(図5A)に戻る。なお、使用者がタイマTyを設定しなかった場合には、タイマTxの計時が継続して行われる。
【0078】
使用者がタイマTyを設定した場合(STEP27で「YES」)、タイマTyの計時をスタートする(STEP28)。ここで、タイマTyは調理延長時間を意味し、例えば、初期設定調理時間5分に延長指示時間10分を加算した合計時間15分をカウントダウン方式で計時する。
【0079】
次に、使用者がタイマを解除したか否かが判定される(STEP29)。使用者がタイマを解除した場合にはSTEP30に進み、使用者がタイマを解除しない場合にはSTEP24(図5A)に戻る。
【0080】
使用者がタイマを解除しない場合(STEP29で「NO」)、時間Tyが経過したか否かが判定される(STEP30)。時間Ty、すなわち、調理延長時間が経過した場合にはSTEP31に進み、まだ経過していない場合にはSTEP29に戻る。
【0081】
時間Tyが経過した場合(STEP30で「YES」)、加熱調理器10において、加熱運転を停止する(STEP31)。これにより、加熱部5は自動的に消火される。その後、一連の処理を終了する。
【0082】
次に、図5Aにおいて、初期設定調理時間が経過した場合(STEP25で「YES」)を説明する。この場合、加熱調理器10において、加熱運転を停止する(STEP26)。これにより、加熱部5は自動的に消火される。
【0083】
次に、外部サーバ50に停止情報を送信する(STEP32)。停止情報は、使用者が延長指示を入力しなかったことで、加熱運転が停止したとき出力される情報である。その後、一連の処理を終了する。
【0084】
この後は、外部サーバ50での処理となるため図示しないが、外部サーバ50は加熱調理器10から受信した停止情報を集計する。例えば、停止情報のカウントをBN(最初、BN=0)とすると、外部サーバ50が停止情報を受信する度にBNが加算される。
【0085】
そして、調理(最初の加熱運転の開始)から期間I(例えば、期間I=1(h))以内に外部サーバ50が閾値回数Cx(例えば、Cx=3)の停止情報を受信した時点で、通信端末40に未入力使用情報を送信する。なお、期間Iや未入力使用情報を通信端末40に送信するための閾値回数Cxは適宜設定することができる。
【0086】
これにより、通信端末40の所有者は、延長指示が行われず、加熱運転が複数回停止したという加熱調理器10の使用状況を認識することができる。変更形態の加熱調理システム1は、加熱調理器10自体にデータの解析、記憶、集計等の手段を具備させる必要がない(外部サーバ50が担う)という利点もある。
【0087】
以上、本発明は上記実施形態及び変更形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0088】
上記実施形態では、加熱部としてコンロ5a~5cのバーナを例示したが、IHヒータ等でもよい。また、上記実施形態の初期設定調理時間Tx、調理延長時間Tyは一例であり、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 加熱調理システム
5,20 加熱部
5a 左コンロ
5b 右コンロ
5c 後コンロ
7 制御部(加熱調理器側)
7A 火力制御部
7B 計時制御部
9 調理時間設定部
9A 調理時間入力部
9B 調理時間表示部
10 加熱調理器
11a~11c,21 操作ボタン
12 コンロ操作部
13 コンロ操作パネル
14 計時部
16 通信部(加熱調理器側)
20 グリル
22 グリル操作部
23 グリル操作パネル
30,40 通信端末
31 制御部(通信端末側)
32 通信部(通信端末側)
33 表示部
50 外部サーバ
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B