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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ガスタービン
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/26 20060101AFI20240927BHJP
   F02C 9/32 20060101ALI20240927BHJP
   F02C 9/28 20060101ALI20240927BHJP
   F02C 7/22 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F02C7/26 A
F02C9/32
F02C9/28 Z
F02C7/22 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021081227
(22)【出願日】2021-05-12
(65)【公開番号】P2022175083
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】503116899
【氏名又は名称】株式会社IHI原動機
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 勲
(72)【発明者】
【氏名】大村 真啓
(72)【発明者】
【氏名】山本 諒
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-110631(JP,A)
【文献】特開2013-245598(JP,A)
【文献】特開2008-082302(JP,A)
【文献】特開昭58-148236(JP,A)
【文献】特開昭61-043224(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0009666(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/00 - 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器で生成した燃焼ガスによってタービンを回転させるガスタービンであって、
前記燃焼器に燃料を供給する燃料ポンプと、
前記燃焼器の内部に燃料を供給するノズルと、
前記燃料ポンプと前記ノズルの間に設けられた燃料遮断弁と、
前記燃料遮断弁と前記ノズルの間に設けられた圧力センサと、
着火前に前記圧力センサが検出した燃料の圧力が第1閾値以上まで上昇したことを確認する制御部と、
前記燃料ポンプと前記燃料遮断弁の間に設けられた燃料制御弁を備え、
前記制御部は、着火前に前記燃料ポンプを動作させ、前記燃料遮断弁及び前記燃料制御弁を開いて前記圧力センサが検出した圧力が前記第1閾値以上まで上昇したことを確認した後に、前記燃料遮断弁又は燃料制御弁の何れか、又は両方を閉じる制御を行なうことを特徴とするガスタービン。
【請求項2】
前記ノズルとして主ノズルと副ノズルを有し、
前記圧力センサは前記燃料遮断弁と前記副ノズルとの間に設けられ、
前記圧力センサと前記副ノズルの間又は前記副ノズルに、所定の通路面積を有するしぼりが設けられたことを特徴とする請求項1に記載のガスタービン。
【請求項3】
前記制御部は、前記燃料遮断弁又は前記燃料制御弁の何れか、又は両方を閉じた後に、前記ガスタービンの回転速度が第2閾値以上まで上昇したことを確認してから前記燃料遮断弁及び前記燃料制御弁を開ける制御を行なうことを特徴とする請求項に記載したガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼器で生成した燃焼ガスによってタービンを回転させるガスタービンに係り、特に、始動時に着火不良又は着火遅れが発生しにくいガスタービンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ガスタービンの点火を確認する方法の発明が開示されている。この発明によれば、ガス流制御バルブに関連する許容信号と、燃料供給圧力信号と、点火器信号と、圧縮機圧力放出信号を受信した後、所定の条件を満たした前記各信号の変化に基づいて、ガスタービン燃焼器に関連する点火ステータスを決定し、決定した点火ステータスに基づいて点火ステータス信号を出力する。この発明によれば、ガスタービンシステムを制御し、その火炎点火の検出および確認が可能となる。
【0003】
特許文献2には、ガスタービンの燃料制御装置の発明が開示されている。この発明によれば、燃料制御用の第1供給ラインL1を、着火領域で着火限界ラインLMに沿って増大するラインとし、燃料の供給開始を燃料流量一定の場合よりも遅らせて、より高い回転速度(より多い空気量)で開始する。第1供給ラインL1が着火限界ラインLMに交差する時が燃料流量一定の場合よりも遅れ、第1供給ラインL1の着火遅れに対する裕度(T)は燃料流量一定の場合と同等になる。このため、空気がより少ない状態での燃料供給が少なくなり、着火までの投入燃料総量が減少し、常に希薄条件で着火する条件となるので、未燃焼・不完全燃焼が減って始動時の黒煙が減少する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-17738号公報
【文献】特開2013-44263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガスタービンは、燃焼器で生成した燃焼ガスによってタービンを回転させ、燃焼用の空気を圧縮する圧縮機を回転させるとともに、残りのエネルギーを出力軸で取り出す内燃機関であるが、始動時に着火不良又は着火遅れが発生することがあり、始動性が不安定であるという課題があった。
【0006】
本発明は、上述した従来の技術における課題を解決するためになされたものであり、始動時に着火不良又は着火遅れが発生しにくい始動性の良好なガスタービンを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載されたガスタービンは、
燃焼器で生成した燃焼ガスによってタービンを回転させるガスタービンであって、
前記燃焼器に燃料を供給する燃料ポンプと、
前記燃焼器の内部に燃料を供給するノズルと、
前記燃料ポンプと前記ノズルの間に設けられた燃料遮断弁と、
前記燃料遮断弁と前記ノズルの間に設けられた圧力センサと、
着火前に前記圧力センサが検出した燃料の圧力が第1閾値以上まで上昇したことを確認する制御部と、
前記燃料ポンプと前記燃料遮断弁の間に設けられた燃料制御弁を備え、
前記制御部は、着火前に前記燃料ポンプを動作させ、前記燃料遮断弁及び前記燃料制御弁を開いて前記圧力センサが検出した圧力が前記第1閾値以上まで上昇したことを確認した後に、前記燃料遮断弁又は燃料制御弁の何れか、又は両方を閉じる制御を行なうを備えたことを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載されたガスタービンは、請求項1に記載のガスタービンにおいて、
前記ノズルとして主ノズルと副ノズルを有し、
前記圧力センサは前記燃料遮断弁と前記副ノズルとの間に設けられ、
前記圧力センサと前記副ノズルの間又は前記副ノズルに、所定の通路面積を有するしぼりが設けられたことを特徴としている。
【0010】
請求項に記載されたガスタービンは、請求項に記載したガスタービンにおいて、
前記制御部は、前記燃料遮断弁又は前記燃料制御弁の何れか、又は両方を閉じた後に、前記ガスタービンの回転速度が第2閾値以上まで上昇したことを確認してから前記燃料遮断弁及び前記燃料制御弁を開ける制御を行なうことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載されたガスタービンによれば、主着火前(図2参照、詳細は後述する)に燃料ポンプから圧力センサまでの燃料配管が燃料で満たされたことを、圧力センサが検出した圧力に基づいて制御部が確認できるので、必要量の燃料を供給できないために始動時に着火不良が発生することを防止することができる。
さらに主着火前に予め燃料を配管に満たすことで、次に燃料遮断弁及び燃料制御弁を開く制御を行った際に、遅れなく燃料配管内の圧力を昇圧させることが可能になる。また、予め燃料を燃焼器に送ることで主着火前に一度着火させ、その後すぐに燃料遮断弁又は燃料制御弁の何れか、又は両方を閉じて消炎することにより、燃焼室内の温度を上昇させて気化した燃料を漂わせる等といった着火しやすい環境を燃焼器内に作ることができるため、任意の時期に確実に着火することが可能となる。一般に、ガスタービンは、始動時の着火時期における回転速度が高速になるほど、排出される黒煙が低減されるが、高回転速度での着火は不安定になりやすく、始動不良の要因になる。このガスタービンによれば、そのような不具合が解消される。
【0012】
請求項2に記載されたガスタービンによれば、次の三点の効果が得られる。一点目として、主燃焼用の燃料を燃焼器内に供給する主ノズルの他に、着火用の少量の燃料を燃焼器内に供給する副ノズルを設けることで始動時の着火を促進することができる。二点目として、副ノズルと燃料遮断弁の間に圧力センサを設けることで、副ノズルに送られる燃料の圧力を検出し、燃料配管に燃料があることを保証することができる。三点目として、圧力センサと副ノズルの間又は副ノズルの内部に、例えばオリフィスなどのような所定の通路面積を有するしぼりを設けるか、又は副ノズルの出口をしぼりとし、当該出口の出口径を所定の通路面積となるように定めておくことにより、燃料の圧力と流量の関係を一定にすることができる。すなわち、燃料が通過するしぼりの通路面積を所定の値とすることにより、所定の圧力で所定の流量が得られるように燃料を管理することができる。これにより、着火に最適な量の燃料を燃焼器に送ることが可能となり、燃料を確実に霧化して燃焼器内に噴霧することができる。
【0014】
請求項に記載されたガスタービンによれば、主着火前に燃料ポンプから圧力センサまでの燃料配管が燃料で満たされたことが確認されており、主着火時に燃料遮断弁及び燃料制御弁を開ける制御をすると、すぐに昇圧し、着火に必要な圧力にできるため、着火の時期を任意に設定することができ、ガスタービンの回転速度が第2閾値以上に高くなった後で着火させることにより、始動時の黒煙を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態のガスタービンの模式的な構成図である。
図2】実施形態のガスタービンの運転において、ガスタービンの回転速度及び燃料制御弁の開度と、各部の作動状況と、指令信号の時期等との関係を、横軸を時間軸として示す図である。
図3】実施形態のガスタービンの運転における着火不可領域とそれ以外の着火可能領域を、ガスタービンの回転速度と燃料油圧力と燃料制御弁開度の関係によって示す図であって、分図(a)は比較例として従来のガスタービンによる着火(従来(1)燃料配管内燃料有りの例)を示し、分図(b)は比較例として従来のガスタービンによる着火難(従来(2)燃料配管内燃料無しの例)を示し、分図(c)は実施形態のガスタービンによる着火を示している。また分図(d)は実施形態のガスタービンの運転における着火状態を確認するための図であって、ガスタービンの回転速度と排気温度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照して実施形態のガスタービンを用いた発電装置の全体構成を説明する。
このガスタービン1は、回転自在である共通のロータ2に取り付けられた圧縮機3及びタービン4と、タービン4に駆動用の燃焼ガスを供給する燃焼器5を備えている。この燃焼器5には、圧縮機3が圧縮した圧縮空気を導く空気流路9と、燃料を供給する燃料供給系統が接続されている。燃料供給系統については後に詳述する。さらに、燃焼器5には点火栓10が設けられており、燃焼器5に供給された圧縮空気と燃料の混合気に着火して燃焼させ、燃焼ガスを生成することができる。タービン4の出口には温度計30が設置され、着火によって排気温度が上昇することを確認できる。燃燃焼器5とタービン4は燃焼ガス流路11で接続されており、燃焼器5で生成された燃焼ガスは燃焼ガス流路11を介してタービン4に導かれ、これを駆動してロータ2を回転させることができる。ロータ2には減速機12と出力軸16を介して発電機13が連結されている。ガスタービン1を駆動すれば、ロータ2の回転力は減速機12で適当な回転速度に変換され、発電機13を駆動して電力を得ることができる。なお、減速機12には、ガスタービン1の始動時にロータ2を駆動する電気モータであるスタータ14と、後述するメインポンプ23が連結されているほか、回転速度検出手段15も設けられている。
【0017】
次に、図1を参照して燃焼器5に接続されている燃料供給系統の構成を説明する。
燃料供給系統は、燃料を貯蔵する燃料槽24と、燃料を送る燃料ポンプ6と、燃料ポンプ6から送られた燃料の流量を制御する燃料制御弁7と、燃料制御弁7と燃焼器5を接続する流路を必要に応じて開閉する燃料遮断弁8と、燃料を燃焼器5に供給するノズルとで構成されており、これらは、燃料配管によってつながれている。燃料槽24に貯蔵された燃料は、燃料ポンプ6にて加圧され、燃料制御弁7に送られる。なお、燃料ポンプ6は、ガスタービン1の始動時には図示しないバッテリーで駆動され、ガスタービン1が定格回転速度で運転されている状態での燃料供給は、減速機12から得た動力で駆動する機付きのメインポンプ23によって行なわれる。
【0018】
燃料制御弁7は、燃料流量を連続的に自在に調整することができる。ガスタービン1の回転速度または負荷に対応する必要な燃料の量は試験結果に基づいて設定されており、燃料制御弁7は、後述する制御部20に与えられた指令に基づいて開度を連続的に調整し、必要な量の燃料を燃料遮断弁8に送ることができる。燃料遮断弁8は、任意の時期に開閉することにより、燃料制御弁7から送られた燃料を任意の時期にノズルに送り、又は燃料制御弁7から送られた燃料のノズルに対する供給を遮断することができる。ノズルは、主着火後に燃焼器5に燃料を送る主ノズル22と、主着火前に着火用の燃料を燃焼器5に送る副ノズル21で構成されており、燃焼器5の頭部に設置されている。また、主ノズル22の上流側(燃料遮断弁8側)には圧力調整弁17が設けられ、主ノズル22へ送られる燃料の圧力を制御する。副ノズル21と燃料遮断弁8の間には、燃料遮断弁8に近い管路の上流側に圧力センサ18が設置されている。また、副ノズル21内又は副ノズル21に近い管路の上流側には、燃料の流れを制御する要素である「しぼり」としてオリフィス19が設けられているが、他の構成例としては、副ノズル21の出口をオリフィスとしてもよい。オリフィス19は、燃料の圧力と、通過する燃料の流量が所定の対応関係となるように口径が定められており、圧力センサ18が所定の圧力を検出した場合に、オリフィス19では燃料が所定の流量となって副ノズル21へ送られるようになっている。
【0019】
図1に示すガスタービン1及び発電機13等からなる発電装置は、燃料制御装置としての機能を有する制御部20によって全体として統轄的に制御されるようになっている。すなわち、図1中に示したように、燃料ポンプ6、燃料制御弁7、燃料遮断弁8、点火栓10、スタータ14、回転速度検出手段15等は制御部20に接続されており、制御部20は、回転速度検出手段15から得られる回転速度の情報、温度計30による排気温度、その他の図示しないセンサ等からの情報や外部からの指示を受けて、燃料ポンプ6、燃料制御弁7、燃料遮断弁8、点火栓10、スタータ14等の装置各部を適宜に制御し、燃料流量の制御を行なってガスタービン1による発電を行うことができる。
【0020】
次に、図2を参照して実施形態におけるガスタービン1の始動から定格運転に至る運転状態を説明する。
始動開始の指示(始動指令)が入ると、制御部20は、バッテリーによってスタータ14を始動してロータ2の駆動を開始し、バッテリーによって始動用の燃料ポンプ6を始動し、点火栓10による点火を開始する。そして、同時に燃料制御弁7に指令1を送り、燃料制御弁7の開度を所定の値に設定するとともに、燃料遮断弁8を開弁する。なお、燃料制御弁7に送信する指令1(及び後述する指令2)が示す弁の開度は、ガスタービン1の種類や排気量、燃料制御弁7の種類等によって異なるものであり、試験結果に基づいて適宜に設定される。
【0021】
制御部20は、燃料ポンプ6の燃料供給により、圧力センサ18が検出する燃料の圧力が所定の閾値(以下、第1閾値と称する。)以上になったことを確認する。これにより、主着火前に燃料ポンプ6から圧力センサ18までの燃料配管が燃料で満たされたことを、第1閾値以上の圧力を検知することで確認し、必要な量(又は圧力)の燃料がないために始動時に着火不良が発生するのを防止することができる。
【0022】
また、燃料ポンプ6から燃料制御弁7及び燃料遮断弁8を経由してオリフィス19に送られた燃料は、オリフィス19の開口を通過して副ノズル21に送られる。なお、この時点では、燃料遮断弁8を開弁しても主ノズル22に燃料が送られないように、圧力調整弁17を閉止しておく。圧力センサ18が検出し、制御部20が確認した燃料の圧力の基準値である第1閾値や、オリフィス19の開口の口径は、ガスタービン1の種類や排気量等によって異なるものであり、試験結果に基づいて予め適宜の値に設定されている。このように、圧力センサ18が検出した第1閾値を越える圧力の燃料と、この燃料の圧力に応じて所定の流量になるように選択された口径のオリフィス19により、副ノズル21に供給される燃料の流量を管理し、着火に最適な量の燃料を燃焼器5に送ることができる。
【0023】
燃焼器5では、点火栓10が連続的に作動しており、オリフィス19を経て副ノズル21から供給された燃料に着火する。この着火を、後の主着火の前に予め着火させることから、後の主着火に対してプレ着火と称する。一般に、ガスタービン1は始動時の着火時期における回転速度が高速であるほど、排出される黒煙の量が低減される。しかしながら、高回転速度での着火は不安定になりやすく、始動不良の要因になる。そこで、実施形態では、プレ着火によって燃焼器5の内部の温度を上昇させ、気化した燃料を漂わせる等といった着火しやすい環境を作り、高回転速度においても主着火が確実に得られるようにしている。そして、後述するように回転速度がある程度上昇してから主着火させることにより、黒煙の発生を低減させるものとしている。
【0024】
次に、制御部20は、圧力センサ18が検出する燃料の圧力が第1閾値以上であることを確認すると、燃料制御弁7に指令2を送って燃料制御弁7の開度を変更するとともに燃料遮断弁8を閉弁する。燃料遮断弁8の閉弁により、プレ着火は消炎される。指令2による燃料制御弁7の開度は、前述した指令1による燃料制御弁7の開度よりも小さいが、燃料制御弁7には既に燃料が満たされているので、比較的少量の燃料を供給するだけで燃料制御弁7から燃料遮断弁8に至る流路については燃料が充満した状態を維持できる。また、閉止された燃料遮断弁8よりも下流側の流路は、上述したように、圧力センサ18の検出値が第1閾値以上であることを制御部20が確認しているので、燃料で満たされた状態が維持される。
【0025】
次に、制御部20は、回転速度検出手段15にて、ガスタービン1の回転速度がN%以上まで上昇したことを確認した後、燃料遮断弁8を開弁させ、副ノズル21から燃焼器5内に燃料を送り、着火させる。この着火を、先に説明したプレ着火に対して主着火と称する(図2参照)。主着火を開始するガスタービンの回転速度N(%)を第2閾値と称する。必要に応じ、又は可能な限り第2閾値を大きく設定することで、ガスタービン1の回転速度がより高くなった後で主着火が行なわれることになり、始動時の黒煙を減少させる効果を得ることができる。
【0026】
以後、スタータ14、始動用の燃料ポンプ6及び点火栓10は適当な時期に停止するが、減速機12に連動するメインポンプ23で燃焼器5に燃料を供給して運転を続行する。回転速度が100%までは、空気量に対応して燃料制御弁7にて燃料流量を増加させていき、回転速度が100%に達した後は、回転速度100%を維持するように燃料流量を制御する。
【0027】
図3は、ガスタービンの回転速度(横軸)と、燃料油圧力及び燃料制御弁開度(縦軸)との対応関係において、着火ができない着火不可領域(グレー着色の領域)と、それ以外の着火可能領域を示すとともに、実施形態のガスタービン1(分図(c))と比較例である従来のガスタービン(分図(a)及び(b))について、主着火させた場合(分図(a)及び(c))と、主着火させようとしたが失敗した場合(分図(b))において、回転速度と燃料油圧力の変化を示すグラフを重ねて示した図である。また分図(d)は、実施形態のガスタービンの運転における着火状態を確認するために、排気温度と回転速度の関係を一例として示した図である。なお、比較例のガスタービンの燃料供給系統の構成は実施形態と概ね同様である。
【0028】
図3において、相対的に回転速度が高い着火不可領域では、圧縮空気の流れが強いために着火しにくいが、回転速度が高くても着火可能領域に入る程度の燃料圧力があれば着火は可能であり、また回転速度が高い状態での着火であれば黒煙の発生が少ない。逆に、着火可能領域では、相対的に低い回転速度で着火可能であるが、空気が少ないために黒煙が発生しやすい。
【0029】
図3(a),(b)に示す比較例では、実施形態で説明した燃料制御弁7と燃料遮断弁8を開弁するとともに、燃料ポンプ6と圧力センサ18の間の流路に所定圧力の燃料が存在することの確認を行なう制御を、主着火前に行なっていない。しかし、確認を行っていなくても、燃料ポンプ6と圧力センサ18の間の流路には、所定値以上の圧力の燃料が存在する場合もあれば、燃料がほとんど存在せず、圧力センサ18で所定値以上の圧力を検出できない場合もある。
【0030】
図3(a)は、燃料ポンプ6と圧力センサ18の間の流路に、所定値以上の圧力の燃料が存在する場合を示している。この場合、ガスタービンの回転速度が所定の値になったところで、制御部20が燃料制御弁7と燃料遮断弁8に「開」指令を与えると、燃料油圧力及び燃料制御弁開度が徐々に高まって主着火に至る。しかし、この場合、回転速度を所望の領域にまで高めてから主着火し、黒煙の発生を少なくするという運転を行うことはできない。
【0031】
図3(b)は、燃料ポンプ6と圧力センサ18の間の流路に、所定値以上の圧力の燃料が存在しない場合を示している。この場合、図3(a)と同一の時期に、制御部20が燃料制御弁7と燃料遮断弁8に「開」指令を与えたとしても、燃料ポンプ6と圧力センサ18の間の流路に主着火に必要な量の燃料が存在しないため、直ちに主着火することができず、着火しうる量の燃料が燃料配管内に充満して燃料油圧力が上昇するまでに相応の時間を要し、図3(a)の場合に較べ、「開」指令から着火すべき時期に至るまでの時間に遅れが生じ、しかも図示のように主着火に失敗することが少なくない。
【0032】
これに対し、図3(c)に示す実施形態では、主着火前に、燃料制御弁7と燃料遮断弁8を開弁するとともに、燃料ポンプ6と圧力センサ18の間の流路に燃料が存在していることの確認を、圧力センサ18の検知した圧力が第1閾値を越えていることを制御部20が判断することで行なっている。従って、燃料ポンプ6と圧力センサ18の間の流路には燃料が充満しているため、所望の回転速度において主着火動作(燃料制御弁7と燃料遮断弁8へ「開」指令を出力することによる燃料の再供給を)行うと、供給される燃料の量が増大して直ちに必要量に達して直ちに主着火に至る。
【0033】
このように、図3(c)に示す実施形態によれば、主着火前に、燃料ポンプ6と圧力センサ18の間の流路に燃料が存在していることを確認しており、始動時に着火不良又は着火遅れが発生しにくいため、主着火の時期は前記確認が完了した後であれば、任意に変更することができる。従って、図3(a)の従来例と比較すると、「開」指令のタイミングの差で示すように、運転者が必要と考える時期まで着火を遅くすることができる。図3(a)に示す従来例の主着火と、図3(c)に示す実施形態の主着火の差は、例えば、回転速度では数%に達し、時間では数秒差以上となっている。
【0034】
なお、図3(d)に示すように、図3(c)に示す実施形態では、プレ着火の消炎後も排気温度が着火しやすい所定の値を保持しており、第2閾値を越えて燃料制御弁7と燃料遮断弁8へ「開」指令が出力された後は速やかに主着火に至り、その後、ガスタービン回転速度の円滑な上昇に伴い、排気温度が安定的に上昇している。
【0035】
以上説明したように、実施形態のガスタービン1によれば、主着火前に燃料ポンプ6から圧力センサ18までの燃料配管が燃料で満たされていることを圧力センサ18で検知しているので、燃料がないために従来例で見られた着火遅れ、着火不良を防止し、始動性を改善することができる。また、従来例に較べて回転速度が高い状態での着火であるため、黒煙の発生を少なくできる。
【符号の説明】
【0036】
1…ガスタービン
4…タービン
5…燃焼器
6…燃料ポンプ
7…燃料制御弁
8…燃料遮断弁
18…圧力センサ
19…オリフィス
20…制御部
21…副ノズル
22…主ノズル
図1
図2
図3