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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】多結晶シリコン製造用電極
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/035 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
C01B33/035
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021089737
(22)【出願日】2021-05-28
(65)【公開番号】P2022182269
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】523119425
【氏名又は名称】高純度シリコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】澤田 佳則
(72)【発明者】
【氏名】坂口 和也
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/020468(WO,A1)
【文献】特開2012-082128(JP,A)
【文献】特開2013-249251(JP,A)
【文献】特開2011-111360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 - 33/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多結晶シリコン反応炉の底部に配置された電極ホルダの上端部に取り付けられる連結部材と、該連結部材の上端部に取り付けられ、多結晶シリコンが析出されるシリコン芯棒を保持可能な芯棒保持部と、を備え、前記連結部材は前記電極ホルダに取り付けられ、前記芯棒保持部の基端部が結合される本体部と、該本体部の上に配置され、前記本体部を覆うカバー部材とを有し、前記連結部材及び前記芯棒保持部は炭素製であり、前記連結部材内、又は前記カバー部材と本体部と前記芯棒保持部との間に、断熱空間部が形成されていることを特徴とする多結晶シリコン製造用電極。
【請求項2】
前記断熱空間部は、前記連結部材と前記芯棒保持部との間で、前記芯棒保持部の周囲を囲むように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の多結晶シリコン製造用電極。
【請求項3】
前記カバー部材と前記本体部との接触面は、前記芯棒保持部の長さ方向に直交する方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の多結晶シリコン製造用電極。
【請求項4】
前記カバー部材は、さらに上下分離可能な複数枚の板状部材が積層されて形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の多結晶シリコン製造用電極。
【請求項5】
前記カバー部材は、前記連結部材の外縁よりも外方に張り出して設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の多結晶シリコン製造用電極。
【請求項6】
前記芯棒保持部と前記連結部材とはねじ結合されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の多結晶シリコン製造用電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーメンス法によって多結晶シリコンを製造する際に用いられる多結晶シリコン製造用電極に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体材料となる高純度の多結晶シリコンの製造方法として、シーメンス法が知られている。シーメンス法は、クロロシランと水素との混合ガスからなる原料ガスを、加熱したシリコン芯棒(シード)に接触させ、その表面に原料ガスの反応によって多結晶シリコンをロッド状に析出させる製造方法である。
【0003】
この製造方法を実施する装置として、密閉した反応炉に多数のシリコン芯棒を立設した多結晶シリコン反応炉が用いられており、これらシリコン芯棒は、反応炉の炉底に設置された金属製電極に、カーボン製の電極を介して連結される。金属製電極は反応炉の外部の電源に接続されており、一般的に水冷される。
【0004】
例えば、特許文献1には、シリコン回収時にカーボンを確実に分離できる構造として、反応炉の底板部上のホルダ部と、ホルダ部の上部に取り付けられてシリコン芯棒を保持する芯棒保持部とを備えた電極ユニットが開示されている。芯棒保持部は、カーボン等の導電材から形成され、ホルダ部のネジ穴に結合され、さらにナットが取り付けられている。そのナットが袋ナット状に形成された例も開示されている。
【0005】
特許文献2には、多結晶シリコン棒にかかる応力を緩和してひび割れを防ぐために、炉底の金属電極に固定される炭素電極が、芯線ホルダ(芯棒保持部)が固定される上部電極と、金属電極に固定される下部電極とにより構成され、シリコン析出時のシリコン芯棒等の移動を吸収できるように、上部電極と下部電極との間に半径方向に隙間が形成されている。
また、特許文献3では、同様に多結晶シリコン棒にかかる応力を抑制するために、上部電極が下部電極にボルトにより固定され、そのボルトの周囲に空隙が形成されることで、上部電極が移動できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-82128号公報
【文献】特開2013-249251号公報
【文献】特開2011-111360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような多結晶シリコン製造用電極においては、金属製電極、カーボン製電極、シリコンロッドのそれぞれの強度、及びこれらの接点における強度が十分にあることが必要である。
【0008】
特に問題となるのは、シリコンとカーボンの接点である。まず、反応初期においては、カーボン製電極とシリコン芯棒の接点において接触抵抗が顕著であり、この部分が通電によって発熱しやすいため、温度が上がり、優先的にシリコン析出が進むことでこの接点が強化される。接点にシリコンが十分に析出されると、カーボン製電極は1000℃以上に加熱されたシリコンロッドと冷却された金属製電極との熱流路となり、温度勾配が形成される。トリクロロシランの析出温度はおよそ800℃以上であるので、カーボン製電極の800℃以上になる部分にはシリコンの析出が生じ、シリコンロッドにカーボン製電極が巻き込まれていくことで、接点部分がさらに強化される。よってカーボンの熱伝導率などの物性と形状の組み合わせによって、倒壊を防ぐ適度な強度を持たせることが可能となる。
【0009】
ところで、シリコンロッドの強度は一般的なカーボン材より高いので、倒壊を防ぐべく、接点強度を上げすぎると、シリコンロッドを回収する際に、カーボン製電極の破損、場合によっては金属製電極まで破損させることもあり得る。また、シリコンが析出したカーボン部材は容易には再生できないので、消耗品となりコスト的な負担も大きい。
よって、倒壊を防ぐ十分な強度を確保しつつ、シリコンロッド回収の際には容易に分離可能で、かつ、消耗するカーボン部材のコストを抑えることができる電極構造が求められる。
【0010】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、シリコンロッドによる倒壊を防ぐ十分な強度を確保しつつ、シリコンロッド回収の際には容易に分離可能で、かつ、消耗するカーボン部材のコストを抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の多結晶シリコン製造用電極は、多結晶シリコン反応炉の底部に配置された電極ホルダに取り付けられる多結晶シリコン製造用電極であって、前記電極ホルダの上端部に取り付けられる連結部材と、該連結部材の上端部に取り付けられ、多結晶シリコンが析出されるシリコン芯棒を保持可能な芯棒保持部と、を備え、前記連結部材は前記電極ホルダに取り付けられる本体部と、該本体部の上に配置されるカバー部材とを有し、前記連結部材及び前記芯棒保持部は炭素製であり、前記連結部材内、又は前記カバー部材と本体部と前記芯棒保持部との間に、断熱空間部が形成されている。
【0012】
この電極は、連結部材内、又は連結部材とカバー部材と芯棒保持部との間に断熱空間部を有しているので、この断熱空間部より下方部位の温度が上方部位に比べて低くなり、断熱空間部より下方部位へのシリコンの析出が抑制される。一方、断熱空間部よりも上方部分には、従来よりも多く、芯棒保持部の周囲等にシリコンが析出する。このため、シリコンロッドが十分な強度で支持され、倒壊を防止することができる。
また、析出したシリコンロッドを回収する際には、断熱空間部より上方部位の最小限の部材を交換すればよい。
この場合、連結部材を本体部とカバー部材とに分け、そのカバー部材により本体部を覆うように構成したので、シリコンロッドの回収時には芯棒保持部とカバー部材を交換し、本体部は次のシリコン製造のために再利用することが可能になる。
【0013】
この多結晶シリコン製造用電極において、前記断熱空間部は、前記連結部材と前記芯棒保持部との間で、前記芯棒保持部の周囲を囲むように形成されているとよい。
【0014】
シリコン芯棒に析出したシリコンは、その析出範囲が下方に広がってくるので、シリコン芯棒を保持している芯棒保持部の周囲に断熱空間部が形成されることにより、断熱空間部より下方へのシリコンの析出をより効果的に抑制することができる。
【0015】
この多結晶シリコン製造用電極において、前記カバー部材と前記本体部との接触面は、前記芯棒保持部の長さ方向に直交する方向に沿って形成されているとよい。
単純にカバー部材を本体部から取外しやすくなるとともに、その接触面に生じる微小な隙間によっても断熱することができ、断熱効果をより高めることができる。
【0016】
この多結晶シリコン製造用電極において、前記カバー部材は、さらに上下分離可能な複数枚の板状部材が積層されて形成されているとよい。
【0017】
カバー部材の上側板状部材のみを交換して、下側板状部材を再利用することが可能になり、消耗部品をより少なくして、コストダウンを図ることができる。
【0018】
この多結晶シリコン製造用電極において、前記カバー部材は、前記連結部材の外縁よりも外方に張り出して設けられているとよい。
【0019】
シリコン芯棒周囲に析出したシリコンからの下方への輻射熱がカバー部材により遮られるので、芯棒保持部の周囲までシリコンが析出した場合でも、カバー部材の表面までの範囲にとどまり、カバー部材を超えて本体部の周囲に析出することが抑制され、本体部の再利用を容易にすることができる。
【0020】
この多結晶シリコン製造用電極において、前記芯棒保持部と前記連結部材とはねじ結合されているとよい。
ねじ結合により接触を確実にし、シリコンロッドをより強固に支持することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の多結晶シリコン製造用電極によれば、シリコンロッドによる倒壊を防ぐ十分な強度を確保しつつ、シリコンロッド回収の際には容易に分離可能で、かつ、消耗するカーボン部材のコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態に係る多結晶シリコン製造用電極の概略断面図である。
図2図1のA-A線に沿う断面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る多結晶シリコン製造用電極の概略断面図である。
図4】本発明の第3実施形態に係る多結晶シリコン製造用電極の概略断面図である。
図5】本発明の第4実施形態に係る多結晶シリコン製造用電極の概略断面図である。
図6】本発明の第5実施形態に係る多結晶シリコン製造用電極の概略断面図である。
図7】本発明の第6実施形態に係る多結晶シリコン製造用電極の概略断面図である。
図8】本発明の第7実施形態に係る多結晶シリコン製造用電極の概略断面図である。
図9】本発明の第8実施形態に係る多結晶シリコン製造用電極の概略断面図である。
図10】本発明の第9実施形態に係る多結晶シリコン製造用電極の概略断面図である。
図11図10のB-B線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1及び図2は本発明の多結晶シリコン製造用電極の第1実施形態を示している。
第1実施形態の多結晶シリコン製造用電極(以下、単に電極という)1は、多結晶シリコン反応炉(図示略)の底部10を貫通して外部の電源に接続された金属製の電極ホルダ11と、この電極ホルダ11に結合された炭素製電極20とにより構成される。
【0024】
電極ホルダ11は、ステンレス等の耐食性材料からなり、その上端部が略円柱状に形成され、多結晶シリコン反応炉(図示略)の底部10から突出している。
【0025】
炭素製電極20は、電極ホルダ11の上端部に固定される連結部材21と、連結部材21に固定されシリコン芯棒22を保持する芯棒保持部23とにより構成される。
芯棒保持部23は、円柱状に形成され、その上端部にシリコン芯棒22の下端部を挿入状態に固定する保持孔24が形成されている。
【0026】
連結部材21は円柱状の外周面を有し、下方に開口する下部結合穴25と、上方に開口する上部結合穴26とが軸心Cに沿って形成されている。そして、下部結合穴25に電極ホルダ11の上端部が嵌合状態に結合され、上部結合穴26に芯棒保持部23の基端部が嵌合状態に結合される。この結合状態で、電極ホルダ11、連結部材21、芯棒保持部23及びシリコン芯棒22は、軸心Cを一致させた状態に配置される。
【0027】
また、連結部材21は、下部結合穴25及び上部結合穴26を有する本体部27と、本体部27の上に載置されたカバー部材101とにより構成されている。カバー部材101は、円筒状のリング部材28と、リング部材28の上に載置された円板状の板状部材29とにより構成されている。板状部材29には芯棒保持部23を挿通させるための貫通孔30が形成されている。リング部材28は、本体部27と同じ外径に形成されるが、内径は芯棒保持部23の外径よりも十分に大きく形成されており、芯棒保持部23を本体部27の上部結合穴26に嵌合させたときに、芯棒保持部23の外周面との間に空間部(断熱空間部)31が形成される。この断熱空間部31は、連結部材21の本体部27とカバー部材101と芯棒保持部23との間に形成されている。具体的には、本体部27と板状部材29との間に、芯棒保持部23の周囲を囲むように形成され、その外側がリング部材28により覆われた状態となる。
【0028】
また、本体部27の上面27aは軸心Cに直交する水平面に形成されており、リング部材28の上面28a及び下面28b、板状部材29の下面29aも水平面に形成され、これら本体部27、リング部材28、板状部材29の接触面(27a,28b及び28a,29a)が水平面により形成される。
【0029】
この電極1の芯棒保持部23にシリコン芯棒22を保持して通電し、図示略の原料供給ノズルからクロロシランと水素との混合ガスからなる原料ガスを供給すると、シリコン芯棒22の周囲に多結晶シリコンが析出してロッド状に成長し、二点鎖線で示すシリコンロッドSが形成される。
このシリコンロッド形成過程において、多結晶シリコンは、シリコン芯棒22の周囲だけでなく、芯棒保持部23の上端部から板状部材29の上面にも析出する。このため、シリコンが析出した部分で電極1が補強され、成長して径が大きくなるシリコンロッドSを確実に支持し、その倒壊を防止することができる。
【0030】
一方、連結部材21内には、芯棒保持部23とリング部材28との間に断熱空間部31が形成されているので、連結部材21において断熱空間部31よりも下方部位への熱伝達が制限される。このため、連結部材21の本体部27の温度が板状部材29等に比べて低く抑えられ、その外周面へのシリコンの析出も抑制される。したがって、シリコンロッドSの回収時には、芯棒保持部23と板状部材29とを取外せばよく、連結部材21のリング部材28や本体部27は次の多結晶シリコン製造のために再利用することが可能である。
【0031】
ところで、炭素製電極20として用いられるカーボンは、一般的には押し出し成形により形成され、その電気抵抗率は約10-5Ωm程度である。
多結晶シリコンの高温での電気抵抗率については、正確なデータは示されていないが、析出反応中のシリコンロッドSの温度1100℃以上では、およそこの10倍程度になっていると推定される。よって、炭素製電極20の断面積はシリコンロッドSの断面積のおよそ1/10以上の大きさを有していないと、単位長さあたりでシリコンロッドS以上の抵抗発熱が生じることになるので、断熱空間部31の設計としては、シリコンロッドSの断面積のおよそ1/10以上の断面積を確保したうえで、なるべく短く形成されるべきである。
例えば、芯棒保持部23の外径が15mm以上114mm以下、連結部材21の外径が40mm以上120mm以下、リング部材28の内径が16mm以上115mm以下、リング部材28の高さが5mm以上30mm以下に設計される。
【0032】
電極ホルダ(金属製電極)11には、通常、SUS304、SUS316などのステンレス材が使用される。ステンレス材の熱伝導率はカーボン材などより低く、16W/mK程度の値が知られている。本発明者らの知見として、ステンレス材の表面温度が200℃を超えると、高純度シリコンに対する汚染源となり得る。電極ホルダ11を肉厚5mmで内部を通水冷却するものとして設計した場合、冷却側端部の表面温度が50℃、炭素製電極20側の表面温度が200℃とすると、熱流として4.8×10W/mと計算される。熱流としてこれ以下になるように設計することが望ましい。熱伝導率160W/mKのカーボン材料で同じ伝熱面積としてシリコンロッドS側が1000℃、電極ホルダ11側が200℃の温度差ΔT=800Kとした場合、伝熱長さは26.7cmと計算される。この計算より、電極ホルダ11とカーボン部材の接触面積はなるべく大きく、炭素製電極20は途中に断熱空間部31を設計して温度勾配を大きくとることで、(単純な同一断面構造より)コンパクトな設計となりカーボン部材のコストを低減できることが解る。
【0033】
炭素製電極20を単純な円柱形状等にした場合、断面積がシリコンロッドSの1/10未満しかないとすると、強度的に不足して倒壊のおそれがある。よって、最大径ではシリコンロッドSの1/3(1/√10)以上、例えば1/2以上の外径部分を有する補強部材を必要とする。この補強部材は機能的にはカーボンである必要はないが、汚染防止の観点からはほぼ必然的にカーボンが選ばれる。
なお、汚染防止としては合成石英の使用も考えられるが、断熱空間部31に代えて、その場所に石英部材を配置した場合、断熱とともに剛体で支持可能となるが、石英ガラスの方がカーボンよりも熱膨張率が小さいため、温度上昇に伴ってカーボン部材との間に隙間ができてしまい、剛体として機能せず、強度維持することが難しい。
【0034】
また、断熱空間部31は連結部材21の本体部27及びカバー部材101(リング部材28及び板状部材29)により閉鎖された空間であるが、カーボン材料は完全に気密なものではないので、多結晶シリコン製造中は反応ガスが侵入する。この場合、連結部材21を構成しているカーボンの熱伝導率は160W/mK程度であり、原料ガスの主成分である水素でも0.18W/mK程度とカーボンに比べて3桁も小さく、断熱空間部31内でのガス流も僅少であるので、十分に断熱効果を有する。
【0035】
図3は第2実施形態の電極を示している。この第2実施形態の電極2は、電極ホルダ11については第1実施形態と同じで、炭素製電極40も、連結部材41の本体部27等、大部分の構成は第1実施形態と同様であるが、連結部材41のカバー部材102における板状部材42が上下二枚の板状部材42A,42Bにより構成されている。第1実施形態と共通する要素には同一符号を付して説明を省略し、また、便宜上、板状部材42において、リング部材28と接触している下側板状部材42Bの下面も第1実施形態で用いた符号29aとする(以下の各実施形態においても、第1実施形態と同様に、符号28a,28b,29aは部材相互の接触面を示す)。
【0036】
この第2実施形態の電極2においても、断熱空間部31により第1実施形態と同様、多結晶シリコン製造中の倒壊を防止する効果がある。この第2実施形態では、板状部材42が上下二枚の板状部材42A,42Bにより構成されているので、シリコンロッド回収時には、上側の板状部材42Aを芯棒保持部とともに取外して、下側の板状部材42Bを含めてその下方部位の部材は次の多結晶シリコン製造に再利用することができる。
【0037】
図4は第3実施形態の電極を示している。この第3実施形態の電極3において、炭素製電極43は、連結部材44の本体部27の上に、第2実施形態における板状部材42の下側板状部材42Bとリング部材28とを一体化し、内部に断熱空間部31を形成した空間保持部材42Cと、上側板状部材42Aとが積み重ねられたカバー部材103を構成したものである。下側板状部材42Bとリング部材28とを一体にした空間保持部材42Cとすることにより、加工を共通にすることができ、その分、コスト低下を図ることができ、かつリング部材28を設置する際の芯位置ずれを低減することで、より確実に断熱空間部31を保持することが可能となる。
【0038】
図5は第4実施形態の電極を示している。この第3実施形態の電極4において、第1実施形態の電極1と異なる点は、炭素製電極45は、芯棒保持部46に、その外周面に沿っておねじ部47が形成され、連結部材48の本体部49の上部結合穴50及びカバー部材104の板状部材51の貫通孔52の内周面にめねじ部が形成されている点である。このため、芯棒保持部46は、連結部材48の本体部49の上部結合穴50にねじ結合され、板状部材51も芯棒保持部46のおねじ部47にねじ結合される。したがって、板状部材51がリング部材28を軸心Cに沿って強く圧迫し、板状部材51とリング部材28との間、リング部材28と本体部49との間が押圧状態に接触され、これらの接触面27a,28b、28a,29aが強固に押圧状態となり、倒壊をより確実に防止することができ、かつ断熱空間部を保持することにより、断熱性を確実に維持できる。
【0039】
図6は第5実施形態の電極を示している。この第5実施形態の電極5における炭素製電極53は、第1実施形態のカバー部材105の板状部材29とリング部材28のY軸方向(上下方向)における長さを1/2にした上で、二重に配置したものである。すなわち、炭素製電極53において、連結部材54の本体部27の上に設けられるカバー部材105は、第1リング部材281、第1板状部材291、第2リング部材282、第2板状部材292がこの順に積み重ねられており、二つの断熱空間部31A,31Bが第1板状部材291を介して上下に分離して配置される。
これにより、部材によって覆われた断熱空間部31A,31Bの数が2倍に増えるため、断熱性をより確実に担保することが出来る。
なお、図6の符号28c,28d,29b、29cは部材相互の接触面を示す。
【0040】
図7は第6実施形態の電極を示している。この第6実施形態の電極6において第1実施形態の電極1と異なる点は、炭素製電極55において、第1実施形態の炭素製電極20に対して、カバー部材106の板状部材56の外径を連結部材57の本体部27の外径よりも大きく形成した点であり、板状部材56が本体部27より半径方向外方に張り出した形状に構築される。
連結部材の外径が、析出予定のシリコンロッドSの最大外径よりも小さい外径に形成されていると、シリコンロッドSの外径が増大するにしたがって、その外周面からの輻射熱が連結部材の外周面に直接到達し、高熱にさらされることからシリコンが析出しやすくなる。この第4実施形態のように、板状部材56が外方に大きく張り出していることにより、シリコンロッドSからの輻射熱が連結部材57の本体部27外周面に直接到達することが遮られ、本体部27外周面へのシリコン析出を抑制することができる。
一方、板状部材56においては、シリコンロッドSからの輻射熱を上面の全面に受けるので、高熱にさらされる面積が大きく、シリコンが板状部材56の上面に太径で析出し、倒壊防止に効果的である。
【0041】
図8は第7実施形態の電極を示している。この第7実施形態の電極7における炭素製電極60は、第4実施形態の電極4に対して、連結部材61のカバー部材107として、リング部材62も板状部材56と同じ外径に形成したものである。
この構造とすることにより、リング部材62と板状部材56とが同じ外径であるので、これらの外径加工を共通にすることができ、その分、コスト低下を図ることができる。
【0042】
図9は第8実施形態の電極を示している。この第8実施形態の電極8における炭素製電極65は、連結部材66の本体部27の上に、カバー部材108として、空間保持部材67と板状部材68とを積み重ねた構造である。この板状部材68は、第7実施形態の板状部材56より薄く形成され、その分、リング状の部材に天板状の部材を一体化した空間保持部材67を構成したものである。
【0043】
図10及び図11は第9実施形態の電極を示している。この第9実施形態の電極9における炭素製電極70は、その連結部材71におけるカバー部材109が、第1実施形態のリング部材28に替えて、複数の円弧状部材72を相互に間隔をあけて周方向に並べて配置することにより、本体部27との固定部位を面から点にしたものである。
断熱空間部31の確保において、円弧状部材72による伝熱経路の極小化を図っており、断熱空間部31を部材で覆わない構造としているため、断熱効果がより向上する。
【0044】
以上、本発明である多結晶シリコン反応炉および多結晶シリコン製造方法の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0045】
例えば、各実施形態では連結部材にリング部材を設けて、図2に示すように芯棒保持部を囲むように断熱空間部31を形成し、その部分では芯棒保持部の外周面が断熱空間部31に露出する構成としたが、連結部材の本体部の上面に芯棒保持部の外周面から離間する内径で芯棒保持部を囲む凹溝を形成し、その凹溝を板状等のカバー部材で覆うことにより断熱空間部としてもよい。この場合、連結部材内に断熱空間部が設けられ、芯棒保持部の外周面は断熱空間部に露出しない。
【0046】
また、断熱空間部を1個の空間として形成したが、複数の空間を分散させることにより形成してもよい。例えば、リング部材の内径を芯棒保持部の外径と同程度とし、そのリング部材に多数の貫通孔を形成した構造とすることにより、断熱空間部を有するリング部材とすることができ、剛性を高めることができる。
【符号の説明】
【0047】
1,2,3,4,5,6,7,8,9 電極
10 底部
11 電極ホルダ
20 炭素製電極
21 連結部材
22 シリコン芯棒
23 芯棒保持部
24 保持孔
25 下部結合穴
26 上部結合穴
27 本体部
28 リング部材
101、102,103,104,105,106,107,108 カバー部材
29 板状部材
27a,28a,28b,28c,28d,29a,29b,29c 接触面
30 貫通孔
31 空間部(断熱空間部)
31A,31B 断熱空間部
40 炭素製電極
41 連結部材
42 板状部材
42A 上側板状部材
42B 下側板状部材
42C 空間保持部材
43 炭素製電極
44 連結部材
45 炭素製電極
46 芯棒保持部
47 おねじ部
48 連結部材
49 本体部
50 上部結合穴
51 板状部材
52 貫通孔
53 炭素製電極
54 連結部材
55 炭素製電極
56 板状部材
57 連結部材
60 炭素製電極
61 連結部材
62 リング部材
65 炭素製電極
66 連結部材
67 空間保持部材
68 板状部材
S 多結晶シリコン
図1
図2
図3
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図9
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図11