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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車載用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/19 20180101AFI20240927BHJP
   F21V 19/00 20060101ALI20240927BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240927BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20240927BHJP
   F21Y 109/00 20160101ALN20240927BHJP
   F21Y 107/70 20160101ALN20240927BHJP
【FI】
F21S41/19
F21V19/00 150
F21V19/00 170
F21V19/00 450
F21V19/00 200
F21Y115:10
F21Y115:30
F21Y109:00
F21Y107:70
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021101834
(22)【出願日】2021-06-18
(65)【公開番号】P2023000809
(43)【公開日】2023-01-04
【審査請求日】2024-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多田 励起
(72)【発明者】
【氏名】半谷 明彦
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-243028(JP,A)
【文献】国際公開第2013/132764(WO,A1)
【文献】特開2018-142737(JP,A)
【文献】特開2020-42917(JP,A)
【文献】特開2014-150038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/19
F21V 19/00
F21Y 115/10
F21Y 115/30
F21Y 109/00
F21Y 107/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に搭載された配線パターンと、前記配線パターンの上に配置された発光素子と、前記発光素子の上に搭載された樹脂製のアウターレンズ層とを有し、
前記基板は、前記アウターレンズ層の前後方向の湾曲に沿って湾曲した形状であり、
前記発光素子、前記配線パターンおよび前記基板の少なくとも一部は、封止樹脂層によって覆われており、
前記アウターレンズ層は、前記封止樹脂層が配置されている部分は、前記封止樹脂層を介して、前記基板の上面、および、前記発光素子、前記配線パターンと隙間なく密着して一体化されていることを特徴とする車載用灯具。
【請求項2】
基板と、前記基板上に搭載された配線パターンと、前記配線パターンの上に配置された発光素子と、前記発光素子の上に搭載された樹脂製のアウターレンズ層とを有し、
前記基板は、前記アウターレンズ層の前後方向の湾曲に沿って湾曲した形状であり、
前記アウターレンズ層は、前記発光素子が搭載された前記基板を型内に配置して、前記型内に樹脂を充填するインサート成形により形成されていることを特徴とする車載用灯具。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか1項に記載の車載用灯具であって、前記発光素子は、LEDダイであることを特徴とする車載用灯具。
【請求項4】
基板と、前記基板上に搭載された配線パターンと、前記配線パターンの上に配置された発光素子と、前記発光素子の上に搭載された樹脂製のアウターレンズ層とを有し、
前記基板は、前記アウターレンズ層の前後方向の湾曲に沿って湾曲した形状であり、
前記発光素子は、サブマウント用電極が形成されたサブマウント基板と、前記サブマウント基板の上に搭載されたLEDダイと、前記サブマウント用電極と前記LEDダイの電極とを接合するダイ用接合材とを含み、
前記ダイ用接合材は、金属粒子を焼結した金属であることを特徴とする車載用灯具。
【請求項5】
基板と、前記基板上に搭載された配線パターンと、前記配線パターンの上に配置された発光素子と、前記発光素子の上に搭載された樹脂製のアウターレンズ層とを有し、
前記基板は、前記アウターレンズ層の前後方向の湾曲に沿って湾曲した形状であり、
前記配線パターンの上には、電子回路素子がさらに搭載され、前記電子回路素子の電極は、前記配線パターンと、金属粒子を焼結した金属を接合材として接合されており、
前記アウターレンズ層は、前記電子回路素子と隙間なく密着して一体化されていることを特徴とする車載用灯具。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の車載用灯具であって、前記基板は、透明であることを特徴とする車載用灯具。
【請求項7】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の車載用灯具であって、前記基板の下面には、前記基板に沿った形状のハウジングが隙間なく密着して固定されていることを特徴とする車載用灯具。
【請求項8】
基板と、前記基板上に搭載された配線パターンと、前記配線パターンの上に配置された発光素子と、前記発光素子の上に搭載された樹脂製のアウターレンズ層とを有し、
前記基板は、前記アウターレンズ層の前後方向の湾曲に沿って湾曲した形状であり、
前記基板の下面には、前記基板に沿った形状のハウジングが隙間なく密着して固定されており、
前記基板とハウジングとの間には、加飾フィルムが挿入され、前記加飾フィルムの上面は、前記基板の下面に密着し、前記加飾フィルムの下面は、前記ハウジングの上面に密着していることを特徴とする車載用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型で立体的に成形された車載用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドライトやリアランプ等の車載用灯具は、例えば、特許文献1に開示されているように、ハウジングの開口内に、光源ユニットと、リフレクタと、投影レンズユニットをねじ止め等により固定し、開口をカバーで閉塞した構成である。各ユニットは、複数の部品や機構からなり、それらも互いにねじ止め、嵌合、はんだ付け等により組み立てられた構造である。また、ランプハウジングは、ファンが取り付けられ、ランプハウジング内の空気を外部に排気することにより光源ユニットを冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6095931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、従来の車載用灯具は、多数の部品を組立てた構造であり、ハウジング内にはスペースが必要である。そのため、車載灯具全体として、厚みが増し、占有する容積が大きくなってしまう。
【0005】
近年の車載用灯具は、車両の外観に合わせた高いデザイン性や車内スペース拡大による快適性等が要求されるため、複雑な曲面を含む立体形状で、かつ、コンパクトな構造であることが望まれている。
【0006】
本発明の目的は、コンパクトで、複雑な曲面形状を実現可能な車載用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の車載用灯具は、基板と、基板上に搭載された配線パターンと、配線パターンの上に配置された発光素子と、発光素子の上に搭載された樹脂製のアウターレンズ層とを有する。基板は、アウターレンズ層の前後方向の湾曲に沿って湾曲した形状である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基板がアウターレンズ層の前後方向の湾曲に沿って湾曲した形状であるため、コンパクトで、複雑な曲面形状を実現可能な車載用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1の車載用灯具の(a)斜視図、(b)断面の斜視図。
図2】(a)は実施形態1の車載用灯具の構造を模式的に示す断面図、(b)は図(a)の拡大断面図。
図3】実施形態1の車載用灯具の基板10上の配線パターンの構造の一部を模式的に示す上面図。
図4】(a)~(g)実施形態1の車載用灯具の製造工程を示す断面図。
図5】(a)~(c)実施形態1の車載用灯具の製造工程を示す断面図。
図6】実施形態1の車載用灯具の製造工程を示す断面図。
図7】(a)および(b)は、実施形態1の車載用灯具1を搭載した車両を側面および上面からそれぞれ見た場合の、車内の空間を説明する図であり、(c)および(b)は、従来の灯具を搭載した車両の側面及び上面からそれぞれ見た場合の、車内の空間を説明する図である。
図8】(a)~(c)実施形態2の車載用灯具の製造工程を示す断面図。
図9】(a)~(e)実施形態3の車載用灯具の製造工程を示す断面図。
図10】(a)~(j)本発明の変形例2の車載用灯具の断面図。
図11】本発明の変形例2の車載用灯具の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態の車載用灯具について図面を用いて以下に説明する。
【0011】
従来、車載用灯具は、多数の部品から構成され、その組み立てのため、内部に空間が必要であったが、発明者らは、内部空間をなくすことにより、部品点数を低減が可能な車載用灯具を提供する。
【0012】
内部空間をなくすためには、樹脂による一体成型、例えばインサート成形が有効である。しかしながら、一般に、インサート成形時に必要な樹脂の加熱温度は、低融点はんだ、共晶はんだ、鉛フリーはんだ等のはんだの融点より高いため、インサート成型時には、溶融された樹脂の熱により、はんだが再溶融し、基板に実装された発光素子が脱落する。
【0013】
そこで、発明者らは、発光素子の接合材として、金属微粒子を用い、金属微粒子の融点降下を利用してインサート成形を可能にする。これにより、接合時には、金属微粒子の融点降下を利用して、金属微粒子が低融点であることを利用して、低温で溶融させてバルク化し、接合を実現する。インサート成型時には、バルク化した接合材の融点が高融点になるため、溶融された樹脂の熱でも、接合材を再溶融しない。よって、インサート成形が可能になる。
【0014】
<<実施形態1>>
実施形態1の車載用灯具1について、図面を用いて説明する。図1(a)は、本実施形態の車載用灯具1の斜視図であり、図1(b)はその断面図である。図2(a)は、車載用灯具1の断面構造を模式的に示す図であり、図2(b)は、図1(a)の一部をさらに拡大した図である。図3は、基板上の一部の配線パターンの一例を示す図である。
【0015】
図1(a)、(b)、および図2(a),(b)に示すように、実施形態1の車載用灯具1は、基板10と、基板10上に搭載された配線パターン11と備えている。配線パターン11の上には、発光素子12が配置されている。発光素子12の上には、発光素子12を覆い、かつ、配線パターン11および基板10の上面の少なくとも一部を覆う、封止樹脂層50が配置されている。封止樹脂層50の上には、アウターレンズ層20が配置されている。
【0016】
配線パターン11と発光素子12の電極とは、接合材13によって接合されている。接合材13は、金属粒子を焼結した金属である。
【0017】
アウターレンズ層20は、基板10の上面、発光素子12、および、配線パターン11と隙間なく密着して一体化されている。具体的には、アウターレンズ層20は、封止樹脂層50が配置されている部分は、封止樹脂層50に密着し、封止樹脂層50が配置されていない部分は、基板10の上面、および、発光素子12、配線パターン11と直接密着して一体化されている。
【0018】
このようなアウターレンズ層20は、予め用意しておいた所望のアウターレンズ層の上面形状が形成された型を用いてインサート成形により形成されている。すなわち、発光素子12が搭載された基板10を、型の内部に配置して、型内に樹脂を充填して硬化させることにより形成されている。
【0019】
このように、本実施形態では、接合材として、金属粒子を焼結したものを用いているため、接合時には、光焼結等により、比較的低温で焼結することができる。しかも、焼結によりバルク化するため、融点がはんだよりも高温になる。よって、インサート成形等の加熱溶融した樹脂を型に流し込んでも接合部材13は再溶融せず、発光素子12や基板10と一体化したアウターレンズ層20を形成することができる。
【0020】
よって、本実施形態によれば、内部に空間を備えず、コンパクトな、車載用灯具1を提供することができる。また、型も用いて成形することができるため、アウターレンズ層20を複雑な曲面形状にすることも可能である。
【0021】
図1の車載用灯具は、前後方向および上下方向に湾曲した形状(凸形状)となっている。なお、ここで前後方向とは車両に取り付けられた場合の車両の前後方向と一致した方向である。基板10は、アウターレンズ20と密着した状態で前後および上下方向に湾曲している。すなわち基板10は、アウターレンズ20の前後方向および上下方向の湾曲に沿った形状で湾曲している。
【0022】
なお、図2(a)、(b)では、発光素子12の周囲を封止樹脂層50により封止しているが、封止樹脂層50を設けなくてもよい。その場合、アウターレンズ層20が、発光素子12、配線パターン11および基板10の上面に直接密着する。
【0023】
発光素子12は、発光層を含む半導体層と、電極とを含み、パッケージを含まないLEDダイやサブマウント用電極が形成されたサブマウント基板に、LEDダイを搭載し、必要に応じて、封止樹脂や蛍光層や反射樹脂層等を周囲に充填したLEDパッケージ、受光機能を搭載した素子、半導体レーザー素子であってもよい。
【0024】
また、発光素子12が、サブマウント用電極が形成されたサブマウント基板に、LEDダイを搭載し、必要に応じて、封止樹脂や蛍光層や反射樹脂層等を周囲に充填したLEDパッケージである場合、サブマウント用電極とLEDダイの電極とを接合するダイ用接合材は、金属粒子を焼結した金属を用い、はんだを用いない構成とする。これにより、アウターレンズ層20の成型時に、サブマウント基板からLEDダイが脱落するのを防ぐ。
【0025】
図3に示すように、配線パターン11の上には、発光素子12の他に、電子回路素子14,15を搭載することも可能である。例えば、電子回路素子14、15はそれぞれ、発光素子12を駆動するIC(集積回路)チップと、チップ抵抗である。アウターレンズ層20は、電子回路素子14,15と隙間なく密着して一体化されている。
【0026】
電子回路素子14,15の電極と、配線パターン11とを接合する接合材としては、金属粒子を焼結した金属を用いる。
【0027】
接合は、リフローなどのオーブン加熱やヒートツールによる直接加熱などでもよく、基板10が光透過性を有する場合、フラッシュやレーザーなどの光による加熱を用いて接合しても良い。光による接合の場合、製造工程において、基板10の裏面側から接合材13の位置に向かって光を照射することが可能であり、光によって配線パターン11および接合材13を加熱し、接合材13を焼結することができる。
【0028】
基板10の下面には、図1(a)、(b)、図2(a),(b)のように、基板に沿った形状のハウジング30が密着して固定されている。
【0029】
ハウジング30は、基板10およびアウターレンズ20の前後方向および上下方向の湾曲(凸形状)に沿った形状で湾曲しており、基板10およびアウターレンズ20に密着している。ハウジング30の背面は、アウターレンズ20の前後方向および上下方向の湾曲に沿った形状である。
【0030】
よって、車両の前方に取り付けられる車載用灯具1を、前方に向かって凸の湾曲形状にすることにより、車両の前方に取り付けられた車載用灯具1の背面(後ろ側)に、車載用灯具1の湾曲形状で囲まれた空間を生じさせることができる。同様に、車両の後方に取り付けられる車載用灯具1を、後方に向かって凸の湾曲形状にすることにより、車両の後方に取り付けられた車載用灯具1の背面(前側)に、車載用灯具1の湾曲形状で囲まれた空間を生じさせることができる。
【0031】
また、基板10とハウジング30との間には、発光素子12から発生られた光を反射するリフレクタ等の加飾フィルム40が挿入されていてもよい。この場合、加飾フィルム40の上面は、基板10の下面に密着し、加飾フィルム40の下面は、ハウジング30の上面に密着している。加飾フィルム40もアウターレンズ20に沿って前後方向および上下方向に膨らんだ形状である。
【0032】
<材質>
(基板10)
基板10としては、高耐熱PET(ポリエチレンテレフタレート)、PI(ポリイミド)、および、ガラスエポキシ等の樹脂材料や、アルミ基板等の金属ベース基板を用いることができる。フレキシブルな材料であることが好ましい。アウターレンズ層20の成形時の温度(150~320℃)よりも融点や軟化点が高く、成型時に変形や変質を生じない基板10の材質を選定することが望ましい。
【0033】
基板10の厚さは、一例としては、25μm~2mmである。
【0034】
(配線パターン11)
配線パターン11は、銅箔等の金属箔を基板10に接着し、配線パターン11の形状に加工したものを用いることができる。また、スパッタ法等によって基板10の上に金属膜を成膜し、エッチングにより配線パターン11の形状に加工したものでもよい。さらに、導電性インク等を基板10上に配線パターン11の形状に塗布した後、加熱して、焼結したものであってもよい。
【0035】
配線パターン11の厚みは、例えば、12μm~35μm程度とする。
【0036】
導電性インクを基板上に形成する場合は、グラビア印刷やスクリーン印刷等の手法を用いることができる。
【0037】
また、接合材13と同様に、金属粒子を溶媒に分散させたものを導電性インクとして用いて、接合材13と配線パターン11を同時に形成してもよい。
【0038】
(接着剤)
配線パターン11が、金属箔を加工したものである場合、接着剤により金属箔を基板10に固定する。
【0039】
接着剤として、ポリウレタン・エステル系、アクリル系、エポキシ系、シリコーン系等を用いることができる。
【0040】
接着剤の厚さは、一例として、5~100μmである。
【0041】
接着剤で基板10と配線パターン11を接着する工法としては、ドライラミネート等の手法で接着できる。
【0042】
接着剤の他に、例えば、接着シートを用いることもできる。その場合、熱圧着やラミネート等を用いて接着を行うことができる。
【0043】
(接合材13)
接合材13は、導電性の金属ナノ粒子が分散されたインクまたはペースト等を焼結することによって形成される。
【0044】
導電性インクまたはペーストの組成は、導電性粒子が20wt%~95wt%、溶媒が5wt%~70wt%、有機分散剤が0.01wt%~10wt%の範囲であることが望ましい。
【0045】
導電性粒子を構成する材料としては、例えば、Au、Ag、Cu、Pd、ITO、Ni、Pt、Feなどの導電性金属および導電性金属酸化物のうちの1つ以上を用いることができる。
【0046】
導電性粒子の粒径分布の最大値は、1nm以上、10μm以下であることが望ましい。
【0047】
溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコールやプロパンジオール、ブタンジオール、ベンゼンジオールなどのジオール、グリセリンなどのトリオール、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテルなどのエーテルを用いることができる。
【0048】
焼結方法としては、オーブン等を用いた加熱の他に、光等の電磁波を照射する方法を用いることができる。具体的には、例えばレーザー、フラッシュ加熱を用いることができる。
【0049】
例えば、実装方法としては、基板10の配線パターン11やランド上に、導電性インクまたはペーストを、ディスペンスまたはスクリーン印刷等を用いて形成し、発光素子12や電子回路素子14,15を設置する。導電性インクまたはペーストを、200~400℃の温度まで加熱し、導電性粒子を溶融し、焼結させる。
【0050】
発光素子12や電子回路素子14,15を配線パターン11やランドの導電性インクまたはペースト上に設置する際にコレット等の治具を用いて固定や荷重をかけてもよいし、荷重をかけながら、加熱しても良い。
【0051】
(封止樹脂層50)
封止樹脂層50の材質としては、発光素子12の発する光に透明な樹脂を用いる。例えば、エポキシやウレタン系の樹脂、シリコーン樹脂やそれらを組み合わせた変性樹脂を用いることが出来る。
【0052】
(アウターレンズ層20)
アウターレンズ層20を成形する樹脂としては、PMMA(ポリメチルメタアクリレート)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンの共重合合成樹脂)、PP(ポリプロピレン)、PC(ポリカーボネート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PES(ポリエーテルスルホン)等を用いることができる。
【0053】
(加飾フィルム40)
加飾フィルム40としては、リフレクタとして機能する反射層や、表示機能として、例えば光拡散性や遮光効果のある半透過性のある木目調や金属調等の意匠層を用いる。
【0054】
<製造方法>
本実施形態の製造方法の一例について図4図5を用いて説明する。
【0055】
図4(a)の工程)
まず、厚さ25μm~50μmのポリイミドフィルムを基板10として用意した。配線パターン11を構成する厚さ12~35μm銅箔を、上述の接着剤の層16により接着する。
【0056】
図4(b)の工程)
銅箔をサブトラクティブ法によるエッチングで、所望の配線パターン11の形状にパターニングする。
【0057】
図4(c)の工程)
銅箔の表面に、表面処理層11aを形成する。例えば、無電解Niめっき、無電解金めっきにより、Ni層と、Au層を表面処理層11aとして順に形成する。
【0058】
一例として、Ni層の厚さは、1~5μm、Au層の厚さは0.03μm程度である。
【0059】
めっき法以外に、水溶性プリフラックスを用いてもよい。
【0060】
図4(d)の工程)
上述した導電性インクを用意し、配線パターン11の発光素子12および電子回路素子14,15の電極を搭載する領域にそれぞれ塗布し、塗布膜13aを形成する。
【0061】
図4(e)の工程)
発光素子12および電子回路素子14,15を導電性インクの塗布膜13a上に装置を用いて搭載する。必要に応じて、発光素子12および電子回路素子14,15に荷重をかけながら、基板10の裏面側からレーザー光を照射する。これにより、配線パターン11が加熱され、伝熱により導電性インクの塗布膜13aの導電性粒子が溶融し、焼結される。発光素子12等と、配線パターン11とを接合する接合材13が形成される。
【0062】
図4(f)の工程)
シリコーン樹脂等の樹脂を、ディスペンス塗布または金型等を用いて基板10上の発光素子12の周囲に充填し、加熱して硬化させ、封止樹脂層50を形成する。
【0063】
樹脂の硬化温度は、用いる樹脂にもよるが一例として150℃程度である。
【0064】
発光素子12によっては、封止樹脂層50を形成しなくても良い。
【0065】
封止樹脂層50は、基板10の上面全体に形成してもよいし、部分的に形成してよい。
【0066】
図4(g)の工程)
基板10の裏面に、予め用意しておいた加飾フィルム40を接着層で接着する。例えば加食フィルム40としては、リフレクタを用いる。接着層を構成する接着剤としては、図4(a)の工程で、銅箔と基板10との接着に用いた接着剤を用いることができる。
【0067】
また、印刷により加飾フィルム40を基板の下面に形成してもよい。
【0068】
図5(a)の工程)
図4(a)~(g)の工程で製造された、基板10上に発光素子12が搭載され、裏面に加飾フィルム40が配置された積層体を、成形金型101a,101bの内部にセットする。
【0069】
この時、所望の形状を得るために3次元フォーミングしてもよい。
【0070】
図5(b)の工程)
アウターレンズ層20の形成するため、PC(ポリカーボネート)樹脂を260~320℃程度まで加熱しておく。金型101a,101bは、70~110℃程度に加熱しておく。
【0071】
加熱されて流動性のあるPC樹脂を金型101a、101b内に注入した後硬化させ、インサート成形により所望の形状のアウターレンズ層20を、基板10、発光素子12、配線パターン11等に密着させ、一体に形成する。
【0072】
図5(c)の工程)
金型101a、101bから一体成型品を取り外し、アウターレンズ層20ノズル痕102をカット除去する。
【0073】
図6の工程)
図5(c)の工程で得られた、基板10等とアウターレンズ層20とが一体成型された成形品の基板10の裏面にハウジング30を上述の接着剤により接着する。
【0074】
接着剤ではなく、スナップフィット等の嵌合構造により、基板10とハウジング30とを固定しても良く、2色成形等で形成しても良い。
【0075】
以上により、実施形態1の車載用灯具1が製造できる。
【0076】
上述のように製造される本実施形態の車載用灯具1は、接合材13を形成するために、導電性ナノ粒子を溶媒に分散させた導電性インクを用いる(図4(d))。これにより、ナノ粒子の特性である融点降下により、通常のバルク体よりも低融点で導電性ナノ粒子を焼結ができる(図4(e))。
【0077】
さらに、焼結後の導電性ナノ粒子は、バルクに近い特性を有するため、融点降下が生じず、アウターレンズ20を型を用いて成形する高温下でも、導電性ナノ粒子は再溶融せず、実装部品(発光素子12等)が脱落しない(図5(b))。
【0078】
また、導電性粒子の焼結体である接合材13は、上記バルク特性を有する為、熱・電気特性が銀ペースト等の樹脂硬化型と比較して優れている。
【0079】
実施形態1の車載用灯具1は、内部空間が存在しないため、薄型である。また、ねじ止め等の必要がなく、部品点数を従来と比較して少なくできるため、軽量化、簡素化が可能である。
【0080】
図7(a)および(b)は、実施形態1の車載用灯具1を搭載した車両を側面および上面からそれぞれ見た場合の車内の空間を説明する図であり、図7(c)および(b)は、従来の灯具を搭載した車両の側面及び上面からそれぞれ見た場合の車内の空間を説明する図である。図7(a)、(b)に示すように、実施形態1の車載用灯具1は、図7(c)、(d)の従来の灯具と比較して、車両に搭載した場合、設置のスペースを小さくすることができる。よって、車内空間の有効活用が可能になる。
【0081】
具体的には、実施形態1の車載用灯具1は、車載用灯具1自身の背面が、アウターレンズ20の前後方向および上下方向の湾曲形状に沿った湾曲した形状であるため、車両の前方に取り付けられた車載用灯具1の背面(後ろ側)には、車載用灯具1の湾曲形状で囲まれた空間71が、図7(b)のように生じる。車両の後方に取り付けられた車載用灯具1の背面(前側)には、車載用灯具1の湾曲形状で囲まれた空間72が生じる。空間71、72は、従来の灯具を取り付けた車両(図7(d))にはない空間である。よって、実施形態1の車載用灯具1を搭載することにより、図7(c)のように、車両のエンジンルームもしくはトランクルームの一部を、実施形態1の車載用灯具1の背面の空間71,72に配置することが可能である。これに対し、従来の灯具を搭載した車両は、図7(d)から明らかなように、灯具の前後方向の厚み分のスペースが灯具搭載のために必要であり、その分、エンジンルームもしくはトランクルームが小さくなっていることがわかる。よって、実施形態1の車載用灯具1は、従来の灯具と比較して、車内空間の有効活用が可能になる。
【0082】
なお、実施形態1の車載用灯具1は、金型101a、101bを予め所望の形状に成形しておくことにより、複雑な3次元形状に容易に成形することができる。よって、複雑な組み立て構成が必要なく、図1(a),(b)に示したように湾曲した形状の車載用灯具を比較的容易に低コストで製造することができる。よって、車両のデザインに合わせた、湾曲面を有するデザイン性が高い車載用灯具を、コンパクト、かつ、低コストで製造することができる。
【0083】
<実施形態2>
実施形態2として、加飾フィルム40を備えない車載用灯具の製造方法について説明する。
【0084】
実施形態2の車載用灯具は、実施形態1の図4(a)~(f)の工程を行って、基板10上に、配線パターン11を形成し、発光素子12を接合したならば、図4(g)の工程は行わない。これにより、加飾フィルム40を設けない。図4(f)で得られた発光素子12を接合済みの基板10を用いて図8(a)~(c)の工程を行う。
【0085】
図8(a)~(c)は、実施形態1の図5(a)~(c)と同様であるが、図4(f)で得られた加飾フィルム40を備えず、基板10と発光素子12等の積層体を金型101a,101b内に配置して、樹脂を充填する。これにより、インサート成形により所望の形状のアウターレンズ層20を、基板10、発光素子12、配線パターン11等に密着させ、一体に形成する。
【0086】
その後、図6の工程と同様に、基板10の下面には、ハウジング30を隙間なく密着させて接着する。
【0087】
他の構成および作用・効果は、実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0088】
<実施形態3>
実施形態3として、3次元形状の車載用灯具の製造方法について図9(a)~(d)を用いて説明する。
【0089】
図9(a)の工程)
図9(a)に示すように、金型101a、101bを予め所望の3次元形状に形成しておく。実施形態1の図4(a)~(g)の工程で製造した積層体または図4(a)~(f)の工程で製造した積層体を金型101a,101bの内部に配置する。図4(a)~(g)の工程で製造した積層体は、発光素子12が基板10に積層され、基板10の下面に加飾フィルムが接着されたものである。図4(a)~(g)の工程で製造した積層体は、発光素子12が基板10に積層され、加飾フィルムは備えないものである。
【0090】
図9(b)の工程)
図9(b)に示すように、金型に基板10を挿入し、加熱により基板10を軟化させ、真空成型や圧空成形、プレス成型等で積層体の形状を所望の3次元形状に変形させる。工程を2つに分けてもよく、加熱だけでなく真空成型を併用することで複雑な形状も可能となる。この場合、型は各工程に適したものをそれぞれ使用する。1工程の場合は図9(b)と図9(c)の上型は同一の型となる。
【0091】
図9(c)の工程)
図5(b)の工程と同様に、金型101a,101bを加熱し、加熱されて流動性のあるPC樹脂を金型101a、101b内に注入した後硬化させる。これにより、インサート成形により所望の3次元形状のアウターレンズ層20を、基板10、発光素子12、配線パターン11等に密着させ、一体に形成する。
【0092】
図9(d)、(e)の工程)
金型101a、101bから一体成型品を取り外し、ノズル痕102を除去する。基板10の周縁部に不要な箇所がある場合は、カットして除去する。
【0093】
その後、図6の工程と同様に、3次元形状の基板10の下面に、別途形成しておいた3次元形状のハウジング30を隙間なく密着させて接着する。
【0094】
このように、実施形態3によれば、基板10を3次元形状に変形させると同時に、それに密着した形状のアウターレンズ層20一体成型することができるため、複雑な3次元形状に容易に成形することができる。
【0095】
よって、複雑な組み立て構成が必要なく、図1(a),(b)に示したように湾曲した形状の車載用灯具を比較的容易に低コストで製造することができる。よって、車両のデザインに合わせた、湾曲面を有する薄型、かつ、軽量で、デザイン性が高い車載用灯具を、低コストで製造することができる。
【0096】
<変形例1>
実施形態1~3の種々の変形例の車載用灯具について図10(a)~(j)を用いて説明する。なお、図10(a)~(j)には、配線パターン11、発光素子12、封止樹脂層50およびハウジング30は、図示を省略している。
【0097】
図10(a)は、実施形態2の車載用灯具を平板状(2次元形状)に形成した例である。
【0098】
図10(b)は、実施形態3で説明したように、実施形態2の車載用灯具を立体成形し、3次元形状に形成した例である。
【0099】
図10(c)に示したように、車載用灯具のアウターレンズ層20は、2種類以上の樹脂の層20-1,20-2を基板10のそれぞれ異なる領域に成形してもよい(2色成形)。
【0100】
また、図10(d)に示したように、車載用灯具のアウターレンズ層20は、基板10の一部の領域のみを覆うように設けることももちろん可能である。
【0101】
さらに、図10(e)に示したように、車載用灯具のアウターレンズ層20は、基板10の上面のみならず、下面側に設けることも可能である。
【0102】
図10(h)に示したように、車載用灯具のアウターレンズ層20は、2種類以上の異材の層20-3,20-4を基板10のそれぞれ異なる領域に成形してもよい(2色成形)。
【0103】
なお、図10(c)~(e)および(h)は、実施形態2の車載用灯具の例を図示しているが、実施形態1の車載用灯具でついても同様に適用することができる。
【0104】
図10(f)は、実施形態1の基板10の下面に加飾フィルム40を備えた車載用灯具を平板状(2次元形状)に形成した例である。
【0105】
図10(g)のように、加飾フィルム40は、基板10の一部の領域のみに配置してもよい。
【0106】
また、図10(i)のように、加飾フィルム40を基板10の上面側であって配置してもよい。例えば、封止樹脂層50とアウターレンズ層20の間に加飾フィルム40を配置することも可能であるし、封止樹脂層50に加飾フィルム40の機能を兼用させることも可能である。
【0107】
さらに、図10(j)のように、加飾フィルム40を基板10の両面に配置してもよい。
【0108】
なお、加飾フィルム40としては、基板10の上面につける場合は、例えば、黒色の半透過性のある樹脂等の層を用いる。
【0109】
上述の図10(c)~(j)の車載用灯具は、図10(b)のように、3次元形状に成形することも可能である。
【0110】
また、図10(c)~(e)および(h)のアウターレンズ層20の変形例と、図10(f)、(g)、(i)および(j)の加飾フィルムの変形例とを組み合わせることも可能である。
【0111】
<変形例2>
図11は、インサート成型を用いない、さらなる変形例の車載用灯具である。
【0112】
図11の車載用灯具は、前方にアウターレンズ22を有し、背面にはハウジング32が形成されている。本変形例においては、発光素子12を配列した基板17は、二つであり、重ねて搭載されている。少なくとも前方に配置される基板17は、透光性の基板であり、背面に搭載された基板17に配列された発光素子12の光を透過する。また、二つの基板17は、フレキシブル性の基板である。
【0113】
本変形例においては、アウターレンズ22およびハウジング32は個別に成形される。アウターレンズ22およびハウジング32は、2つの基板17を間に挟んだ状態で、固定されている。固定には、不図示のネジ等が使用される。
【0114】
本変形例においては、アウターレンズ22と基板17、ハウジング32の間に空間が生じている。ただし、アウターレンズ22の前後方向および上下方向に設けられた湾曲に沿った形状で、基板17およびハウジング32も湾曲しているため、生じる内部空間はごく薄くなっている。よって、図7(a)、(b)を用いて説明した車内空間の有効活用の効果は、本変形例においても同様に生じる。
【0115】
<適用例>
上述してきた各実施形態の車載用灯具は、ヘッドライト、リアランプ、ハイマウントストップランプ、DR-L、ライダー等の電子部品とモールドがセットとなっているユニットに好適である。
【0116】
また、車載用灯具以外にも家電や情報機器、医療機器などに用いられる平板状または立体構造の照明装置や、車載インテリアライト、エアコンパネルなどにも好適である。
【符号の説明】
【0117】
1…車載用灯具、10…基板、11…配線パターン、11a…表面処理層、12…発光素子、13…接合部材、13a…塗布膜、14、15…電子回路素子、16…接着剤の層、20,20-1,20-2,20-3,20-4…アウターレンズ層、30…ハウジング、40、40-1,40-2…加飾フィルム、50…封止樹脂層、101a,101b…成形金型、102…ノズル痕
図1
図2
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