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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電子回路、発振器及び計算装置
(51)【国際特許分類】
   H10N 60/12 20230101AFI20240927BHJP
   H10N 60/10 20230101ALI20240927BHJP
【FI】
H10N60/12 A
H10N60/10 K
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021135586
(22)【出願日】2021-08-23
(65)【公開番号】P2023030449
(43)【公開日】2023-03-08
【審査請求日】2023-03-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「超伝導量子回路における非線形ダイナミクスを活かした量子情報処理の研究」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】塩川 教次
(72)【発明者】
【氏名】後藤 隼人
(72)【発明者】
【氏名】金尾 太郎
【審査官】市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-500737(JP,A)
【文献】特開2021-118342(JP,A)
【文献】特表2018-537841(JP,A)
【文献】特開2007-250771(JP,A)
【文献】特開2009-194646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 60/10
H10N 60/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電層と、
第2導電層と、
第1ジョセフソン接合を含む第1電流経路であって、前記第1電流経路は、第1端部及び第2端部を含み、前記第1端部は、前記第1導電層と接続され、前記第2端部は、前記第2導電層と接続された、前記第1電流経路と、
第2ジョセフソン接合を含む第2電流経路であって、前記第2電流経路は、第3端部及び第4端部を含み、前記第3端部は、前記第1導電層と接続され、前記第4端部は、前記第2導電層と接続された、前記第2電流経路と、
を含む第1共振器と、
前記第1共振器と電磁界結合可能な第2共振器と、
を含む素子部を備え
前記素子部は、第1面を含む基体を含み、
前記第1導電層、前記第1電流経路及び前記第2電流経路は、前記第1面に設けられ、
前記第1共振器から前記第2共振器への方向は、前記第1面と交差する第1方向に沿う、電子回路。
【請求項2】
前記第2共振器は、第1導電部と、第2導電部と、を含み、
前記第1導電部の前記第1方向における長さは、前記第1導電部の前記第1方向と交差する方向における長さよりも長く、
前記第2導電部は、前記第1面に沿う第1平面において、前記第1導電部の周りに設けられた、請求項に記載の電子回路。
【請求項3】
前記第2共振器は、超伝導体を含む同軸共振器であり、
前記同軸共振器の軸は、前記第1方向に沿っている、請求項に記載の電子回路。
【請求項4】
前記第2導電層は、前記第1面に沿う第1平面に沿って前記第1導電層の周りに設けられた、請求項に記載の電子回路。
【請求項5】
第1導電部材をさらに備え、
前記第1導電部材の少なくとも一部は、前記第1平面に沿い、
前記少なくとも一部の前記第1方向における位置は、前記第1共振器の前記第1方向における位置と、前記第2共振器の前記第1方向における位置と、の間にある、請求項2または4に記載の電子回路。
【請求項6】
子回路と、
制御部と、
備え、
前記電子回路は、
第1導電層と、
第2導電層と、
第1ジョセフソン接合を含む第1電流経路であって、前記第1電流経路は、第1端部及び第2端部を含み、前記第1端部は、前記第1導電層と接続され、前記第2端部は、前記第2導電層と接続された、前記第1電流経路と、
第2ジョセフソン接合を含む第2電流経路であって、前記第2電流経路は、第3端部及び第4端部を含み、前記第3端部は、前記第1導電層と接続され、前記第4端部は、前記第2導電層と接続された、前記第2電流経路と、
を含む第1共振器と、
前記第1共振器と電磁界結合可能な第2共振器と、
を含む素子部を含み、
前記電子回路は、第1導電部材をさらに含み、
前記制御部は、前記第1導電部材に電気信号を供給可能であり、
前記第1導電部材に供給される前記電気信号に応じて前記第1導電部材から生じる磁界が通過する空間の周りに前記第1電流経路及び前記第2電流経路がある、発振器。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1つに記載の電子回路と、
制御部と、
備え、
前記電子回路は、第1導電部材をさらに含み、
前記制御部は、前記第1導電部材に電気信号を供給可能であり、
前記第1導電部材に供給される前記電気信号に応じて前記第1導電部材から生じる磁界が通過する空間の周りに前記第1電流経路及び前記第2電流経路がある、発振器。
【請求項8】
前記第1導電部材の少なくとも一部は、前記第1電流経路及び前記第2電流経路を含む平面に沿い、
前記少なくとも一部の前記第1方向における位置は、前記第共振器の前記第1方向における位置と、前記第2共振器の前記第1方向における位置と、の間にある、請求項7に記載の発振器。
【請求項9】
前記制御部は、前記電気信号の交流成分の周波数を変更可能であり、
前記制御部が前記第1導電部材に前記電気信号を供給したときに、前記素子部は発振し、
前記素子部の発振周波数は、前記交流成分の前記周波数の1/2である、請求項8に記載の発振器。
【請求項10】
前記発振周波数と、前記素子部の複数の固有周波数の1つとの差は、前記第1共振器のカー係数に対応する周波数の10倍以下である、請求項9に記載の発振器。
【請求項11】
前記素子部の複数の固有周波数は、第1固有周波数と、第2固有周波数と、を含み、
前記第2固有周波数は、前記複数の固有周波数のうちで前記第1固有周波数に最も近く、
前記発振周波数と前記第1固有周波数との差は、前記第1固有周波数と前記第2固有周波数との差の1/2以下である、請求項9に記載の発振器。
【請求項12】
前記第1固有周波数は、前記素子部の複数の固有周波数うちで最も低い、請求項11に記載の発振器。
【請求項13】
前記第1固有周波数を有する第1交流信号に基づく交流電磁界が前記素子部に印加される第1状態と、前記第2固有周波数を有する第2交流信号に基づく交流電磁界が前記素子部に印加される第2状態と、が形成可能であり、
前記第1交流信号の強度は、前記第2交流信号の強度と実質的に同じであり、
前記第2状態において前記第2共振器に生じる定在波の第2電界振幅の、前記第1状態において前記第2共振器に生じる定在波の第1電界振幅に対する比は、tan(θ)であり、前記θ(度)は、-90度以上0度以下であり、
前記第2固有周波数の、前記第1固有周波数に対する比は、sin(α)であり、前記α(度)は、0度以上90度以下であり、
前記αは、前記θの-2/3倍よりも大きい、請求項12に記載の発振器。
【請求項14】
請求項~13のいずれか1つに記載の発振器と、
カプラと、
を備え、
前記発振器は、複数の前記電子回路を含み、
前記カプラは、前記複数の電子回路の1つと、前記複数の電子回路の別の1つと、をカップリングする、計算装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子回路、発振器及び計算装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ジョセフソン接合を含む電子回路が計算装置に応用される。電子回路の小型化が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6779278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、小型化が可能な電子回路、発振器及び計算装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、電子回路は、素子部を含む。前記素子部は、第1共振器及び第2共振器を含む。第1共振器は、第1導電層、第2導電層、第1ジョセフソン接合を含む第1電流経路、及び、第2ジョセフソン接合を含む第2電流回路を含む。前記第1電流経路は、第1端部及び第2端部を含む。前記第1端部は、前記第1導電層と接続される。前記第2端部は、前記第2導電層と接続される。前記第2電流経路は、第3端部及び第4端部を含む。前記第3端部は、前記第1導電層と接続される。前記第4端部は、前記第2導電層と接続される。前記第2共振器は、前記第1共振器と電磁界結合可能である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1実施形態に係る電子回路を例示する模式斜視図である。
図2図2(a)~図2(c)は、第1実施形態に係る電子回路を例示する模式図である。
図3図3(a)~図3(c)は、第1実施形態に係る電子回路を例示する模式的断面図である。
図4図4は、第1実施形態に係る電子回路を例示する回路図である。
図5図5は、第1実施形態に係る電子回路を例示する回路図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、第1実施形態に係る電子回路の特性を例示する模式図である。
図7図7(a)及び図7(b)は、第1実施形態に係る電子回路の特性を例示する模式図である。
図8図8(a)及び図8(b)は、第1実施形態に係る電子回路の特性を例示する模式図である。
図9図9(a)及び図9(b)は、第1実施形態に係る電子回路の特性を例示する模式図である。
図10図10は、第1実施形態に係る電子回路の特性を例示する模式図である。
図11図11は、第1実施形態に係る電子回路の特性を例示する模式図である。
図12図12は、第1実施形態に係る電子回路の特性を例示する模式図である。
図13図13は、第1実施形態に係る電子回路の特性を例示する模式図である。
図14図14は、電子回路の評価状態を例示する模式斜視図である。
図15図15は、第1実施形態に係る電子回路を例示する模式的断面図である。
図16図16は、第1実施形態に係る電子回路を例示する模式的断面図である。
図17図17は、第1実施形態に係る電子回路を例示する模式的断面図である。
図18図18は、第1実施形態に係る電子回路を例示する模式斜視図である。
図19図19は、第2実施形態に係る計算装置を例示する模式斜視図である。
図20図20は、第2実施形態に係る計算装置を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る電子回路を例示する模式斜視図である。
図2(a)~図2(c)は、第1実施形態に係る電子回路を例示する模式図である。
図2(a)は、電子回路の一部を例示する平面図である。図2(b)は、図2(a)のB1-B2線断面図である。図2(c)は、図2(a)のC1-C2線断面図である。
図3(a)~図3(c)は、第1実施形態に係る電子回路を例示する模式的断面図である。
図3(a)は、図1のA1-A2線断面図である。図3(b)は、図2(a)のB1-B2線に対応する位置における断面図である。図3(c)は、図2(a)のC1-C2線に対応する位置における断面図である。
【0009】
図1に示すように、実施形態に係る電子回路110は、素子部25を含む。素子部25は、第1共振器10及び第2共振器20を含む。電子回路110は、発振器210の少なくとも一部として機能して良い。
【0010】
図1においては、図を見やすくするために、第1共振器10と第2共振器20との間の距離が拡大されて示されている。
【0011】
図1に示すように、第1共振器10は、第1導電層11及び第2導電層12を含む。例えば、図1に示すように、素子部25は、基体10sを含んで良い。基体10sは、第1面10fを含む。第1面10fは、例えば、X-Y平面(第1平面)に沿う。例えば、第1導電層11及び第2導電層12は、第1面10fに設けられる。
【0012】
X-Y平面に沿う1つの方向をX軸方向とする。X-Y平面に沿い、X軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。X-Y平面に対して垂直な方向をZ軸方向とする。
【0013】
図2(a)は、第1共振器10を例示している。図2(a)に示すように、第1共振器10は、第1導電層11、第2導電層12、第1電流経路16a及び第2電流経路16bを含む。
【0014】
第1電流経路16aは、超伝導体を含む。第1電流経路16aは、第1ジョセフソン接合J1を含む。例えば、第1電流経路16aは、第1部分p1、第2部分p2及び第1ジョセフソン接合J1を含む。第1部分p1は、第1端部e1及び第1他端部g1を含む。第2部分p2は、第2端部e2及び第2他端部g2を含む。第1端部e1は、第1導電層11と接続される。第2端部e2は、第2導電層12と接続される。第1ジョセフソン接合J1は、第1他端部g1と第2他端部g2との間に設けられる。第1ジョセフソン接合J1は、第1他端部g1及び第2他端部g2と接続される。
【0015】
第2電流経路16bは、超伝導体を含む。第2電流経路16bは、第2ジョセフソン接合J2を含む。例えば、第2電流経路16bは、第3部分p3、第4部分p4及び第2ジョセフソン接合J2を含む。第3部分p3は、第3端部e3及び第3他端部g3を含む。第4部分p4は、第4端部e4及び第4他端部g4を含む。第3端部e3は、第1導電層11と接続される。第4端部e4は、第2導電層12と接続される。第2ジョセフソン接合J2は、第3他端部g3と第4他端部g4との間に設けられる。第2ジョセフソン接合J2は、第3他端部g3及び第4他端部g4と接続される。
【0016】
図2(b)に示すように、第1部分p1、第2部分p2及び第1ジョセフソン接合J1は、第1面10fに設けられる。例えば、第1部分p1の一部と、第2部分p2の一部と、の間に絶縁層16iが設けられる。第1部分p1の一部、第2部分p2の一部、及び、絶縁層16iにより、第1ジョセフソン接合J1が形成される。このように、超伝導体の第1電流経路16aが、第1面10fに設けられる。
【0017】
図2(c)に示すように、第3部分p3、第4部分p4及び第2ジョセフソン接合J2は、第1面10fに設けられる。例えば、第3部分p3の一部と、第4部分p4の一部と、の間に絶縁層16jが設けられる。第3部分p3の一部、第4部分p4の一部、及び、絶縁層16jにより、第2ジョセフソン接合J2が形成される。絶縁層16jは、絶縁層16iと連続して良い。このように、超伝導体の第2電流経路16bが、第1面10fに設けられる。第1平面(X-Y平面)は、第1電流経路16a及び第2電流経路16bを含む。
【0018】
図1及び図2(a)に示すように、この例では、第2導電層12は、第1平面(X-Y平面)に沿って第1導電層11の周りに設けられる。この例では、第2導電層12は、第1導電層11を囲む環状である。第1導電層11の平面形状(X-Y平面における形状)は、例えば、円形(楕円形を含んで良い)である。第2導電層12の平面形状は、円環状である。第1電流経路16a及び第2電流経路16bは、第1導電層11を中心とし第1平面(X-Y平面)に沿う放射方向に実質的に沿って延びる。実施形態において、第1導電層11、第2導電層12、第1電流経路16a及び第2電流経路16bの平面形状は、種々の変形が可能である。
【0019】
第1電流経路16a及び第2電流経路16bにより、例えば、dc-SQUID(superconducting quantum interference device)が形成される。第1電流経路16a及び第2電流経路16bで囲まれた空間SPに、磁界が印加されても良い。第1共振器10は、例えば、非線形共振器である。第1電流経路16a及び第2電流経路16bで囲まれた空間SPは、例えば、SQUIDループに対応する。印加される磁界が通過する空間の周りに、第1電流経路16a及び第2電流経路16bがある。
【0020】
第2共振器20は、第1共振器10と電磁界結合する。第2共振器20は、例えば、第1共振器10と、容量カップリング可能である。電磁界結合は、例えば、電界結合及び磁界結合の少なくともいずれかを含む。電磁界結合は、例えば、容量性結合及び誘導性結合の少なくともいずれかを含んで良い。
【0021】
例えば、第2共振器20は、線形共振器である。例えば、第2共振器20は、ジョセフソン接合を含まない。
【0022】
図1に示すように、この例では、第2共振器20は、第1導電部21と、第2導電部22と、を含む。第1導電部21の少なくとも一部は、第1方向に沿って延びる。第1方向は、第1平面(X-Y平面)と交差する。第1方向は、例えば、Z軸方向である。
【0023】
この例では、第2導電部22は、第1平面(X-Y平面)において、第1導電部21の周りに設けられる。第2共振器20は、例えば、超伝導体を含む同軸共振器である。同軸共振器の軸は、第1方向(Z軸方向)に沿っている。
【0024】
第1導電部21は、第1導電部端21aと、第1導電部他端21bと、を含む。第1導電部端21aは、第1共振器10と対向する。第1導電部端21aから第1導電部他端21bへの方向は、第1方向(Z軸方向)に沿う。第1導電部端21aは、第1方向において、第1共振器10から離れる。第1方向において、第1導電部端21aは、第1共振器10と第1導電部他端21bとの間にある。
【0025】
第2導電部22は、第2導電部端22aと、第2導電部他端22bと、を含む。第2導電部端22aは、第1共振器10と対向する。第2導電部端22aから第2導電部他端22bへの方向は、第1方向(Z軸方向)に沿う。後述するように、第2導電部端22aは、第1共振器10の一部と接しても良い。第1方向において、第2導電部端22aは、第1共振器10と第2導電部他端22bとの間にある。
【0026】
図3(a)~図3(c)に示すように、実施形態において、第1導電部21と第2導電部22との間の少なくとも一部は、空隙でもよい。第1共振器10と第2共振器20との間の少なくとも一部は、空隙でもよい。第1導電部他端21bは、第2導電部他端22bと電気的に接続されても良い。例えば、導電部材23により、第1導電部他端21bが第2導電部他端22bと電気的に接続されても良い。第1導電部他端21b、第2導電部他端22b、及び、導電部材23の間の境界は、明確でも不明確でも良い。図3(a)~図3(c)においては、図を見やすくするために、ジョセフソン接合は簡略化されて描かれている。
【0027】
図3(a)に示すように、第1導電部21の第1方向(Z軸方向)における長さを長さL21とする。第1導電部21の第2方向に沿う方向における長さ(幅)を長さW21とする。第2方向は、第1平面(X-Y平面)に沿う。第2方向は、第1導電部21の第1平面における中心を通る。第2方向は、放射方向である。第2方向は、例えば、X軸方向で良い。長さL21は、第1導電部21の第1方向における最大の長さで良い。第1導電部21の第1方向に対して垂直な方向における最大の長さで良い。例えば、長さL21は、長さW21よりも長い。例えば、長さL21は、長さW21の1倍を超え100倍以下である。例えば、長さL21は、長さW21の2倍以上である。1つの例において、長さL21は、1mm以上10mm以下である。1つの例において、長さW21は、0.1mm以上1mm未満である。
【0028】
実施形態において、第1共振器10及び第2共振器20により、量子ビットが形成される。例えば、素子部25は、1つの量子ビットとして機能する。例えば、第1共振器10及び第2共振器20の結合系の固有状態を利用して、量子ビットが表現される。
【0029】
第1共振器10及び第2共振器20は、互いに電磁界結合する。このような構成により、例えば第1共振器10に形成されるキャパシタンス(後述する)を小さくできる。例えば、第1共振器10のX-Y平面内のサイズを小さくできる。実施形態によれば、小型化が可能な電子回路及び発振器が提供できる。例えば、電子回路110の素子部25が非線形発振器(カーパラメトリック発振器:KPO)の量子ビットとして利用され得る。例えば、損失を低減できる。
【0030】
図1に示すように、実施形態において、第1共振器10から第2共振器20への方向は、第1方向(例えば、Z軸方向)に沿う。第1方向は、第1電流経路16a及び第2電流経路16bを含む第1平面(X-Y平面)と交差する。例えば、第1平面は、基体10sの第1面10fに沿う。
【0031】
例えば、第2共振器20の少なくとも一部は、Z軸方向において、第1共振器10と重なる。例えば、第1共振器10を含むX-Y平面に第2共振器20を投影したときに、第2共振器20は、第1共振器10と重なる。これにより、第1共振器10及び第2共振器20を含む素子部25のX-Y平面内のサイズを縮小することが容易である。小型化が可能な電子回路及び発振器が提供できる。
【0032】
実施形態において、第1導電層11、第2導電層12、第1部分p1及び第2部分p2は、例えば、超伝導ニオブを含む。第2共振器20に含まれる第1導電部21は、例えば、超伝導アルミニウムを含む。
【0033】
図1に示すように、電子回路110(及び発振器210)は、第1導電部材60を含んでよい。1つの例において、第1導電部材60の少なくとも一部は、第1平面(X-Y平面)に沿う。図1及び図3(a)に示すように、第1導電部材60の少なくとも一部の第1方向(Z軸方向)における位置は、基体10sの第1方向(Z軸方向)における位置と、第2共振器20の第1方向(Z軸方向)における位置と、の間にある。例えば、第1導電部材60の少なくとも一部の第1方向(Z軸方向)における位置は、第1共振器10の第1方向(Z軸方向)における位置と、第2共振器20の第1方向(Z軸方向)における位置と、の間にある。第1導電部材60の例については、後述する。
【0034】
図4は、第1実施形態に係る電子回路を例示する回路図である。
図4に示すように、電子回路110は、第1共振器10及び第2共振器20を含む。第1共振器10は、上記の、第1導電層11、第2導電層12、第1電流経路16a及び第2電流経路16bを含む。第1共振器10において、第1キャパシタンスC1が形成されてよい。第1キャパシタンスC1の一端は、第1導電層11に電気的に接続される。第1キャパシタンスC1の他端は、第2導電層12に電気的に接続される。第1キャパシタンスC1は、第1電流経路16a及び第2電流経路16bを含む回路(dc-SQUID)と並列に設けられる。第2導電層12と、第1キャパシタンスC1の他端と、の接続点を第1接続点CP1とする。
【0035】
第2共振器20は、例えば、第2キャパシタンスC2及びインダクタンスL2を含む。第2キャパシタンスC2及びインダクタンスL2は、上記の、第1導電部21及び第2導電部22により形成される。第2キャパシタンスC2及びインダクタンスL2は、互いに並列に接続される。第2キャパシタンスC2の一端、及び、インダクタンスL2の一端は、第1導電層11と電気的に接続される。第2キャパシタンスC2の他端と、インダクタンスL2の他端と、の接続点を第2接続点CP2とする。
【0036】
第1共振器10及び第2共振器20は、例えば、キャパシタンスCmを介して結合される。キャパシタンスCmの大きさは、例えば、2つの共振器の間の距離、共振器のサイズ、及び、2つの共振器の間の空間における誘電率などに依存する。
【0037】
図5は、第1実施形態に係る電子回路を例示する回路図である。
図5に示すように、電子回路110は、第1導電部材60をさらに含んでもよい。例えば、制御部70から第1導電部材60に電気信号(例えば交流信号、例えば、マイクロ波)が供給される。この電気信号は、直流信号及び交流信号少なくともいずれかを含んで良い。この電気信号は、例えば、直流成分及び交流成分を含む信号で良い。この電気信号は、例えば、マイクロ波を含む。第1導電部材60に流れる電流(電気信号)に応じた磁界が、第1導電部材60から発生する。この磁界は、第1共振器10に印加される。磁界の少なくとも一部は、例えば、第1電流経路16a及び第2電流経路16bで囲まれた空間SP(SQUIDループ)に印加される。
【0038】
このように、制御部70は、第1導電部材60に電気信号を供給可能である。例えば、制御部70は、電気信号の周波数を変更可能である。制御部70が第1導電部材60に電気信号(例えば交流成分を含む信号)を供給したときに、素子部25は発振する。素子部25の発振周波数は、電気信号の周波数の変化に応じて変化する。
【0039】
例えば、電気信号は、直流成分及び交流成分を含んで良い。交流成分は、例えば変調磁界に対応する。交流成分の周波数(変調周波数)は、例えば、素子部25の発振周波数の2倍である。素子部25の発振周波数は、電気信号の交流成分(変調周波数)の1/2である。このような電気信号を適用することで、第1共振器10及び第2共振器20は、例えば、KPOとして機能する。
【0040】
例えば、第1導電層11及び第2導電層12に第1電流Iが流れる。例えば、第1導電層11の電位を基準にして、第1接続点CP1の電位は、第1電圧Vである。例えば、インダクタンスL2に第2電流Iが流れる。第2接続点CP2の電位は、第2電圧Vである。
【0041】
第1電流I及び第1電圧Vは、以下の第1式~第5式で表される。
【0042】
【数1】
【0043】
【数2】
【0044】
【数3】
【0045】
【数4】
【0046】
【数5】
【0047】
上記において、「η」は、ジョセフソン接合前後の波動関数の位相差である。「Ic」は、ジョセフソン接合の臨界電流である。Φは、SQUIDループの中の磁束である。「Φ」は、磁束量子である。「I’」は、dc-SQUIDの実効臨界電流である。物理量φ及びφは、第4式及び第5式で表される。「π」は、円周率である。「t」は時間である。
【0048】
第1式及び第2式から分かるように、ループの中の磁束を変化させることで、電流及び電圧が変調される。
【0049】
図6(a)及び図6(b)は、第1実施形態に係る電子回路の特性を例示する模式図である。
これらの図の横軸は、周波数f0である。これらの図の縦軸は、信号の強度M0に対応する。図6(a)は、第1共振器10及び第2共振器20を含む素子部25の共振特性を例示している。図6(b)は、SQUIDループ内に変調磁界が印加されたときの素子部25の発振特性を例示している。素子部25の発振周波数は、変調磁界の周波数の1/2である。
【0050】
図6(a)に示すように、素子部25は、複数の固有周波数fnnを有する。複数の固有周波数fnnは、第1固有周波数fn1及び第2固有周波数fn2などを含む。複数の固有周波数fnnは、例えば、高調波の固有周波数を含んで良い。第2固有周波数fn2は、複数の固有周波数fnnのうちで第1固有周波数fn1に最も近い。1つの例において、第1固有周波数fn1は、複数の固有周波数fnnのうちで、最も低くても良い。
【0051】
図6(b)に示すように、第1導電部材60に交流信号が供給されたときに、素子部25は、発振する。発振において、周波数は、発振周波数fo1であり、強度は、発振強度Mo1である。発振周波数fo1と、素子部25の複数の固有周波数fnnの1つ(この例では、例えば第1固有周波数fn1)と、の差は、第1共振器10のカー係数に対応する周波数の10倍以下であることが好ましい。これにより、例えば、安定した発振が得られる。
【0052】
例えば、発振周波数fo1と第1固有周波数fn1との差は、第1固有周波数fn1と第2固有周波数fn2との差の1/2以下であることが好ましい。これにより、例えば、安定した発振が得られる。この場合において、第1固有周波数fn1は、素子部25の複数の固有周波数fnnうちで最も低いことが好ましい。これにより、例えば、安定した発振が得られる。
【0053】
例えば、素子部25の複数の固有周波数fnnのうちで、複数の固有周波数fnnの1つ(例えば第1固有周波数fn1)は、発振周波数fo1に最も近くて良い。素子部25の複数の固有周波数fnnの別の1つ(例えば第2固有周波数fn2)は、複数の固有周波数fnnの上記の1つ(例えば第1固有周波数fn1)に最も近い。例えば、複数の固有周波数fnnの上記の1つと、発振周波数fo1と、の差は、複数の固有周波数fnnの上記の1つと、素子部25の複数の固有周波数fnnの上記の別の1つと、の差の1/2以下であることが好ましい。
【0054】
複数の固有周波数fnnのうちの上記の1つ(発振周波数fo1に最も近い)が、複数の固有周波数fnnうちで最も低いことが好ましい。例えば、高次のモードにおいて固有状態が密になる。発振周波数fo1が低く、発振周波数fo1に対応する複数の固有周波数fnnのうちの上記の1つが低次であることで、不要なモードが抑制される。
【0055】
素子部25の第1共振器10は、例えば、非線形発振器(KPO)として機能できる。
【0056】
実施形態に係る電子回路110及び発振器210おいて、複数の状態(例えば、第1状態及び第2状態)が形成可能である。これらの状態は、例えば、後述するように、制御用のプローブを素子部25に近づけて、プローブにより素子部25に交流電磁界(例えばマイクロ波)を印加することで形成できる。第1状態において、第1固有周波数fn1を有する第1交流信号(例えばマイクロ波)により素子部25が励振される。第2状態において、第2固有周波数fn2を有する第2交流信号(例えばマイクロ波)により素子部25が励振される。これらの状態における定在波が、別のプローブなどにより検出可能である。
【0057】
1つの例において、第1状態において、第1固有周波数fn1を有する第1交流信号に基づく交流電磁界(例えばマイクロ波)が素子部25に印加される。これにより、励振が行われる。1つの例において、第2状態において、第2固有周波数fn2を有する第2交流信号に基づく交流電磁界が素子部25に印加される。これらにより、励振が行われる。
【0058】
このような第1状態及び第2状態において、第1交流信号の強度は、第2交流信号の強度と実質的に同じであるとする。このような状態における素子部25の発振特性の例について説明する。実用的に、第1交流信号の強度と第2交流信号の強度との差の絶対値は、第1交流信号の強度の1%以下で良い。第1交流信号の強度と第2交流信号の強度との差は、これらの交流信号を供給する回路の特性の変動、及び、回路と素子部との間に設けられる導電部材などの変動による差を含んで良い。
【0059】
図7(a)及び図7(b)は、第1実施形態に係る電子回路の特性を例示する模式図である。
図7(a)は、第1状態ST1に対応する。図7(b)は、第2状態ST2に対応する。これらの図は、これらの状態において、第2共振器20に生じる定在波の特性を例示している。これらの図の横軸は、周波数f0である。これらの図の縦軸は、検出される定在波の信号の強度M0に対応する。
【0060】
図7(a)に示すように、第1状態ST1(第1固有周波数fn1を有する第1交流信号による励振)において、第2共振器20に生じる定在波の電界振幅は、第1電界振幅(強度Mm1)である。図7(b)に示すように、第2状態ST2(第2固有周波数fn2を有する第2交流信号による励振)において、第2共振器20に生じる定在波の電界振幅は、第2電界振幅(強度Mm2)である。第2電界振幅(強度Mm2)の、第1電界振幅(強度Mm1)に対する比を第1比tan(θ)とする。パラメータθ(度)は、-90度以上0度以下とする。第1比tan(θ)は、例えば、第1共振器10と第2共振器20との間における結合の強度に依存する。
【0061】
一方、第2固有周波数fn2の、第1固有周波数fn1に対する比を第2比sin(α)とする。パラメータα(度)は、0度以上90度以下とする。
【0062】
上記のθ及びαは、第1共振器10及び第2共振器20を含む素子部25におけるカップリングの特性を変更することで変化する。
【0063】
パラメータθは、例えば、結合していないときの共振器の周波数と、結合係数と、で定義される行列の固有ベクトルで定義される。パラメータθは、例えば、以下の第6式により表現できる。
【0064】
【数6】
【0065】
パラメータαは、素子部25(結合共振器)の固有周波数の比で定義される。パラメータαは、例えば、以下の第7式により表現できる。
【0066】
【数7】
【0067】
第6式において、「ω’01」は、第2共振器20とのキャパシタンスCm(相互キャパシタンス)を繰り込んだ第1共振器10の共振周波数である。SQUIDの等価インダクタンスを「L1」とすると、1/ω01=L1(Cx1+Cm)の関係が成立する。「Cx1」は、第1キャパシタンスC1の値である。「ω’02」は、第1共振器10とのキャパシタンスCmを繰り込んだ第2共振器20の共振周波数である。1/ω02=L1(Cx2+Cm)の関係が成立する。「Cx2」は、第2キャパシタンスC2の値である。「k’」は、実効的な結合係数である。k’=Cm/{(Cx1+Cm)(Cx2+Cm)}1/2の関係が成立する。
【0068】
以下、パラメータθ及びパラメータαに関するシミュレーション結果の例について説明する。
【0069】
図8(a)及び図8(b)は、第1実施形態に係る電子回路の特性を例示する模式図である。
これらの図の横軸は、パラメータθである。これらの図の縦軸は、パラメータαである。図8(a)及び図8(b)において、発振周波数(第1交流信号の周波数の1/2)は、素子部25(結合共振器)における複数の固有周波数のうちで一番低い周波数に近い。
【0070】
第1共振器10及び第2共振器20を含む素子部25(結合共振器)における第1キャパシタンスC1の値を第1値とする。第2共振器20が設けられない素子部25(結合共振器)における第1キャパシタンスC1の値を第2値とする。第1共振器10及び第2共振器20を含む素子部25(結合共振器)における、パラメトリックポンピングレートPのカー係数に対する比は、第2共振器20が設けられない素子部25(結合共振器)における、パラメトリックポンピングレートPのカー係数に対する比と同じに設定される。図8(a)の画像における濃度は、第1値の第2値に対する第1評価比RR1に対応する。第1評価比RR1が低いときに、画像の濃度が高い。第1評価比RR1が高いときに、画像の濃度が低い。
【0071】
図8(a)から分かるように、任意のパラメータθ及び任意のパラメータαにおいて、第1値の第2値に対する第1評価比RR1は、1未満である。第1共振器10及び第2共振器20を含む素子部25においては、第2共振器20が設けられない場合に比べて、第1キャパシタンスC1の値は小さくなる。実施形態によれば、小さい第1キャパシタンスC1の値が得られる。
【0072】
第1共振器10及び第2共振器20を含む素子部25(結合共振器)のK/γを第3値とする。第2共振器20が設けられない素子部25(結合共振器)のK/γを第4値とする。「K」はカー係数である。「γ」は、損失レートである。上記のように、第1共振器10及び第2共振器20を含む素子部25(結合共振器)における、パラメトリックポンピングレートPのカー係数に対する比は、第2共振器20が設けられない素子部25(結合共振器)における、パラメトリックポンピングレートPのカー係数に対する比と同じに設定される。比が同じに設定されたときに、K/γが高いことが好ましい。
【0073】
図8(b)の画像における濃度は、第3値の第4値に対する第2評価比RR2に対応する。第2評価比RR2が低いときに、画像の濃度が高い。第2評価比RR2が高いときに、画像の濃度が低い。
【0074】
図8(b)から分かるように、第2評価比RR2が1を超える領域が存在する。すなわち、第1共振器10及び第2共振器20を含む素子部25においては、第2共振器20が設けられない場合に比べて、K/γの値を大きくすることができる。
【0075】
図9(a)及び図9(b)は、第1実施形態に係る電子回路の特性を例示する模式図である。
図9(a)及び図9(b)において、発振周波数(第1交流信号の周波数の1/2)は、素子部25(結合共振器)における複数の発振周波数のうちで二番目に低い周波数に近い。
【0076】
図9(a)の画像における濃度は、上記の第1評価比RR1に対応する。第1評価比RR1が低いときに、画像の濃度が高い。第1評価比RR1が高いときに、画像の濃度が低い。
【0077】
図9(a)から分かるように、任意のパラメータθ及び任意のパラメータαにおいて、第1値の第2値に対する第1評価比RR1は、1未満である。第1共振器10及び第2共振器20を含む素子部25においては、第2共振器20が設けられない場合に比べて、第1キャパシタンスC1の値は小さくなる。実施形態によれば、小さい第1キャパシタンスC1の値が得られる。
【0078】
図9(b)の画像における濃度は、上記の第2評価比RR2に対応する。第2評価比RR2が低いときに、画像の濃度が高い。第2評価比RR2が高いときに、画像の濃度が低い。
【0079】
図9(b)から分かるように、第2評価比RR2が1を超える領域が存在する。すなわち、第1共振器10及び第2共振器20を含む素子部25においては、第2共振器20が設けられない場合に比べて、K/γの値を大きくすることができる。
【0080】
図10図13は、第1実施形態に係る電子回路の特性を例示する模式図である。
図10において、図8(b)と同じ画像中に、好ましい領域PRが例示される。図11において、図8(a)と同じ画像中に、好ましい領域PRが例示される。図12において、図9(b)と同じ画像中に、好ましい領域PRが例示される。図13において、図9(a)と同じ画像中に、好ましい領域PRが例示される。
【0081】
図10に示すように、パラメータαは、パラメータθの-2/3倍よりも大きいことが好ましい。これにより、例えば、損失の低減が容易になる。
【0082】
図11に示すように、パラメータαは、パラメータθの-9/5倍よりも小さいことが好ましい。これにより、例えば、小型化が容易になる。
【0083】
図12に示すように、例えば、パラメータθは、-35度よりも小さいことが好ましい。または、パラメータαは、パラメータθと90度との和よりも大きいことが好ましい。これにより、例えば、損失の低減が容易になる。
【0084】
図13に示すように、例えば、パラメータθは、-45度よりも大きいことが好ましい。または、パラメータαは、パラメータθの90/75倍と、108度と、の和よりも大きいことが好ましい。これにより、例えば、小型化が容易になる。
【0085】
図14は、電子回路の評価状態を例示する模式斜視図である。
図14は、パラメータθ及びパラメータαの導出の状態の例を示している。この例では、第2導電部22に複数の穴が設けられる。1つの穴を介して、第1プローブ41が第1導電部21に対向される。別の穴を介して、第2プローブ42が第1導電部21に対向される。例えば、第1プローブ41に交流信号(例えばマイクロ波)が供給されることで励振が行われる。交流信号の条件を変更することで、上記の第1状態ST1及び第2状態ST2が形成できる。この際に、第1導電部材60を介して第1電流経路16a及び第2電流経路16bで囲まれた空間SP(例えば、SQUIDループ)に直流磁界が印加されても良い。この直流磁界は、例えば、cos(π・Φ/Φ)<0.95を満たす磁界である。Φは、SQUIDループの中の磁束である。「Φ」は、磁束量子である。「π」は、円周率である。第1プローブ41及び第2プローブ42として、同軸線が用いられて良い。同軸線は、例えば、中心導体と、中心導体の周りの外部導体と、を含む。これらのプローは、例えば、中心導体である。
【0086】
例えば、第2プローブ42を用いることで、第2共振器20に生じる定在波が検出できる。実施形態において、パラメータθ及びパラメータαの導出(測定)の方法は、種々の変形が可能である。
【0087】
図15図17は、第1実施形態に係る電子回路を例示する模式的断面図である。
これらの図は、図1のA1-A2線断面図に対応する断面図である。
図15に示すように、実施形態に係る電子回路111においては、第2導電部22の複数の領域の間に、第1共振器10が設けられる。例えば、第2導電部22の複数の領域の間に、基体10sが設けられる。
【0088】
図16に示すように、実施形態に係る電子回路112においては、導電部材24が設けられる。導電部材24と導電部材23との間に、基体10s、第1共振器10及び第1導電部21が設けられる。導電部材24は、例えば、第2導電部端22aと接続される。
【0089】
図17に示すように、実施形態に係る電子回路113においては、第2導電部22(例えば、第2導電部端22a)は、第2導電層12と電気的に接続される。
【0090】
電子回路111~113における上記以外の構成は、電子回路110と同様で良い。電子回路111~113においても、小型化が可能な電子回路及び発振器を提供できる。
【0091】
図18は、第1実施形態に係る電子回路を例示する模式斜視図である。
図18に示すように、実施形態に係る電子回路114は、第1導電部材60を含む。電子回路114における第1導電部材60の形状は電子回路110におけるそれとは異なる。これを除く電子回路114の構成は、電子回路110の構成と同様で良い。
【0092】
電子回路114において、第1導電部材60は、Z軸方向(第1方向)に沿って延びる部分を含む。この例においても、第1導電部材60の少なくとも一部の第1方向(Z軸方向)における位置は、第1共振器10の第1方向(Z軸方向)における位置と、第2共振器20の第1方向(Z軸方向)における位置と、の間にある。電子回路114においても、サイズを小さくできる。小型化が可能な電子回路及び発振器が提供できる。
【0093】
(第2実施形態)
図19は、第2実施形態に係る計算装置を例示する模式斜視図である。
図20は、第2実施形態に係る計算装置を例示する模式図である。
図19に示すように、実施形態に係る計算装置310は、第1実施形態に記載した発振器210を含む。発振器210は、複数の電子回路(例えば、電子回路110~114など)を含む。
【0094】
例えば、図20に示すように、計算装置310は、カプラ80を含んで良い。カプラ80は、複数の電子回路(例えば電子回路110)の1つと、複数の電子回路(例えば電子回路110)の別の1つと、をカップリングする。カプラ80は、チューナブルカプラである。カプラ80は、複数の発振器210の1つと、複数の発振器210の別の1つと、をカップリングする。カプラ80は、チューナブルカプラである。
【0095】
例えば、複数の発振器210は、第1~第4発振器210A~210Dを含む。この例では、複数のカプラ80が設けられている。例えば、複数のカプラ80は、第1~第4カプラ80A~80Dを含む。
【0096】
第1カプラ80Aは、第1発振器210Aと第2発振器210Bとをカップリングする。第2カプラ80Bは、第1発振器210Aと第3発振器210Cとをカップリングする。第3カプラ80Cは、第2発振器210Bと第4発振器210Dとをカップリングする。第4カプラ80Dは、第3発振器210Cと第4発振器210Dとをカップリングする。
【0097】
複数の発振器210のそれぞれは、例えば、第1導電部材60を含んで良い。複数の発振器210のそれぞれが、制御部70をさらに含んでも良い。複数の発振器210が、1つの制御部70をさらに含んでも良い。複数の発振器210のそれぞれは、例えば、読み出し部85と接続される。読み出し部85は、制御部70に含まれても良い。
【0098】
カプラ80は、複数の発振器210のカップリングの強度を調整できる。カプラ80は、例えば、dc SQUIDを含むマイクロ波導波路共振器を含む。
【0099】
例えば、計算装置310において、組み合わせ最適化問題(イジング問題)を解く場合、カップリング強度及び外場強度は、与えられた問題に応じて設定される。例えば、複数の発振器210のポンプパワーがゼロから増加させて、複数の発振器210を発振させる。これにより、問題を解くことができる。
【0100】
実施形態において、例えば、カップリング強度、外場強度、及び、ポンプ強度を制御することにより、量子ゲート操作を実行することができる。量子ゲート操作において、複数の発振器210のそれぞれにおける2つの安定発振状態が、量子ビットの0状態または1状態とされる。
【0101】
実施形態は、以下の構成(例えば技術案)を含んで良い。
(構成1)
第1導電層と、
第2導電層と、
第1ジョセフソン接合を含む第1電流経路であって、前記第1電流経路は、第1端部及び第2端部を含み、前記第1端部は、前記第1導電層と接続され、前記第2端部は、前記第2導電層と接続された、前記第1電流経路と、
第2ジョセフソン接合を含む第2電流経路であって、前記第2電流経路は、第3端部及び第4端部を含み、前記第3端部は、前記第1導電層と接続され、前記第4端部は、前記第2導電層と接続された、前記第2電流経路と、
を含む第1共振器と、
前記第1共振器と電磁界結合可能な第2共振器と、
を含む素子部を備えた電子回路。
【0102】
(構成2)
前記第1共振器は、非線形共振器であり、
前記第2共振器は、線形共振器である、構成1に記載の電子回路。
【0103】
(構成3)
前記第1共振器から前記第2共振器への方向は、前記第1電流経路及び前記第2電流経路を含む第1平面と交差する第1方向に沿う、構成1または2に記載の電子回路。
【0104】
(構成4)
前記素子部は、第1面を含む基体を含み、
前記第1導電層、前記第1電流経路及び前記第2電流経路は、前記第1面に設けられ、
前記第1共振器から前記第2共振器への方向は、前記第1面と交差する第1方向に沿う、構成1または2に記載の電子回路。
【0105】
(構成5)
前記第2共振器は、第1導電部と、第2導電部と、を含み、
前記第1導電部の前記第1方向における長さは、前記第1導電部の前記第1方向と交差する方向における長さよりも長く、
前記第2導電部は、前記第1面に沿う第1平面において、前記第1導電部の周りに設けられた、構成4に記載の電子回路。
【0106】
(構成6)
前記第2共振器は、超伝導体を含む同軸共振器であり、
前記同軸共振器の軸は、前記第1方向に沿っている、構成3または4に記載の電子回路。
【0107】
(構成7)
前記第2導電層は、前記第1面に沿う第1平面に沿って前記第1導電層の周りに設けられた、構成4に記載の電子回路。
【0108】
(構成8)
第1導電部材をさらに備え、
前記第1導電部材の少なくとも一部は、前記第1平面に沿い、
前記少なくとも一部の前記第1方向における位置は、前記第1共振器の前記第1方向における位置と、前記第2共振器の前記第1方向における位置と、の間にある、構成5~7のいずれか1つに記載の電子回路。
【0109】
(構成9)
前記第1共振器及び前記第2共振器により、量子ビットが形成される、構成1~8のいずれか1つに記載の電子回路。
【0110】
(構成10)
構成1~7のいずれか1つに記載の電子回路と、
制御部と、
備え、
前記電子回路は、第1導電部材をさらに含み、
前記制御部は、前記第1導電部材に電気信号を供給可能であり、
前記第1導電部材に供給される前記電気信号に応じて前記第1導電部材から生じる磁界が通過する空間の周りに前記第1電流経路及び前記第2電流経路がある、発振器。
【0111】
(構成11)
前記第1導電部材の少なくとも一部は、前記第1電流経路及び前記第2電流経路を含む平面に沿い、
前記少なくとも一部の前記第1方向における位置は、前記第共振器の前記第1方向における位置と、前記第2共振器の前記第1方向における位置と、の間にある、構成10に記載の発振器。
【0112】
(構成12)
前記制御部は、前記電気信号の交流成分の周波数を変更可能であり、
前記制御部が前記第1導電部材に電気信号を供給したときに、前記素子部は発振し、
前記素子部の発振周波数は、前記交流成分の前記周波数の1/2である、構成11に記載の発振器。
【0113】
(構成13)
前記発振周波数と、前記素子部の複数の固有周波数の1つとの差は、前記第1共振器のカー係数に対応する周波数の10倍以下である、構成12に記載の発振器。
【0114】
(構成14)
前記素子部の複数の固有周波数は、第1固有周波数と、第2固有周波数と、を含み、
前記第2固有周波数は、前記複数の固有周波数のうちで前記第1固有周波数に最も近く、
前記発振周波数と前記第1固有周波数との差は、前記第1固有周波数と前記第2固有周波数との差の1/2以下である、構成12に記載の発振器。
【0115】
(構成15)
前記第1固有周波数は、前記素子部の複数の固有周波数うちで最も低い、構成14に記載の発振器。
【0116】
(構成16)
前記第1固有周波数を有する第1交流信号に基づく交流電磁界が前記素子部に印加される第1状態と、前記第2固有周波数を有する第2交流信号に基づく交流電磁界が前記素子部に印加される第2状態と、が形成可能であり、
前記第1交流信号の強度は、前記第2交流信号の強度と実質的に同じであり、
前記第2状態において前記第2共振器に生じる定在波の第2電界振幅の、前記第1状態において前記第2共振器に生じる定在波の第1電界振幅に対する比は、tan(θ)であり、前記θ(度)は、-90度以上0度以下であり、
前記第2固有周波数の、前記第1固有周波数に対する比は、sin(α)であり、前記α(度)は、0度以上90度以下であり、
前記αは、前記θの-2/3倍よりも大きい、構成15に記載の発振器。
【0117】
(構成17)
前記第1固有周波数を有する第1交流信号に基づく交流電磁界が前記素子部に印加される第1状態と、前記第2固有周波数を有する第2交流信号に基づく交流電磁界が前記素子部に印加される第2状態と、が形成可能であり、
前記第1交流信号の強度は、前記第2交流信号の強度と実質的に同じであり、
前記第2状態において前記第2共振器に生じる定在波の第2電界振幅の、前記第1状態において前記第2共振器に生じる定在波の第1電界振幅に対する比は、tan(θ)であり、前記θ(度)は、-90度以上0度以下であり、
前記第2固有周波数の、前記第1固有周波数に対する比は、sin(α)であり、前記α(度)は、0度以上90度以下であり、
前記αは、前記θの-9/5倍よりも小さい、構成15に記載の発振器。
【0118】
(構成18)
前記第1固有周波数を有する第1交流信号に基づく交流電磁界が前記素子部に印加される第1状態と、前記第2固有周波数を有する第2交流信号に基づく交流電磁界が前記素子部に印加される第2状態と、が形成可能であり、
前記第1交流信号の強度は、前記第2交流信号の強度と実質的に同じであり、
前記第2状態において前記第2共振器に生じる定在波の第2電界振幅の、前記第1状態において前記第2共振器に生じる定在波の第1電界振幅に対する比は、tan(θ)であり、前記θ(度)は、-90度以上0度以下であり、
前記第2固有周波数の、前記第1固有周波数に対する比は、sin(α)であり、前記α(度)は、0度以上90度以下であり、
前記θは、-35度よりも小さい、または、前記αは、前記θと90度との和よりも大きい、構成15に記載の発振器。
【0119】
(構成19)
前記第1固有周波数を有する第1交流信号に基づく交流電磁界が前記素子部に印加される第1状態と、前記第2固有周波数を有する第2交流信号に基づく交流電磁界が前記素子部に印加される第2状態と、が形成可能であり、
前記第1交流信号の強度は、前記第2交流信号の強度と実質的に同じであり、
前記第2状態において前記第2共振器に生じる定在波の第2電界振幅の、前記第1状態において前記第2共振器に生じる定在波の第1電界振幅に対する比は、tan(θ)であり、前記θ(度)は、-90度以上0度以下であり、
前記第2固有周波数の、前記第1固有周波数に対する比は、sin(α)であり、前記α(度)は、0度以上90度以下であり、
前記θは、-45度よりも大きい、または、前記αは、前記θの90/75倍と、108度と、の和よりも大きい、構成15に記載の発振器。
【0120】
(構成20)
構成11~19のいずれか1つに記載の発振器と、
カプラと、
を備え、
前記発振器は、複数の前記電子回路を含み、
前記カプラは、前記複数の電子回路の1つと、前記複数の電子回路の別の1つと、をカップリングする、計算装置。
【0121】
実施形態によれば、小型化が可能な電子回路、発振器及び計算装置を提供できる。
【0122】
以上、例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの例に限定されるものではない。例えば、電子回路、発振器または計算装置に含まれる導電層、電流経路、導電部、導電部材及び制御部などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0123】
各例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0124】
本発明の実施の形態として上述した電子回路、発振器及び計算装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての電子回路、発振器及び計算装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0125】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0126】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0127】
10…共振器、 10f…第1面、 10s…基体、 11、12…第1、第2導電層、 16a、16b…第1、第2電流経路、 16i、16j…絶縁層、 20…第2共振器、 21、22…第1、第2導電部、 21a、22a…第1、第2導電部端、 21b、22b…第1、第2導電部他端、 23、24…導電部材、 25…素子部、 41、42…第1、第2プローブ、 60…第1導電部材、 70…制御部、 80…カプラ、 80A~80D…第1~第4カプラ、 α、θ…パラメータ、 110~114…電子回路、 210…発振器、 210A~210D…第1~第4発振器、 310…計算装置、 C1、C2…第1、第2キャパシタンス、 CP1、CP2…第1、第2接続点、 Cm…キャパシタンス、 I、I…第1、第2電流、 J1、J2…第1、第2ジョセフソン接合、 L2…インダクタンス、 L21…長さ、 M0…強度、 Mm1、Mm2…強度、 Mo1…発振強度、 SP…空間、 ST1、ST2…第1、第2状態、 V、V…第1、第2電圧、 W21…長さ、 e1~e4…第1~第4端部、 f0…周波数、 fn1、fn2…第1、第2固有周波数、 fnn…固有周波数、 fo1…発振周波数、 g1~g4…第1~第4他端部、 p1~p4…第1~第4部分
図1
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