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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】釣竿用ハンドル部材及び釣竿
(51)【国際特許分類】
   A01K 87/08 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A01K87/08 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021144162
(22)【出願日】2021-09-03
(65)【公開番号】P2023037414
(43)【公開日】2023-03-15
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】川村 拓司
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-3(JP,A)
【文献】特開2000-32883(JP,A)
【文献】実開昭59-110575(JP,U)
【文献】特開2019-97508(JP,A)
【文献】特開2010-29176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/08
A01K 87/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨出部と、リール脚が載置されるリール脚載置部とが形成されたリールシート本体と、その軸方向でみて該リールシート本体の後方に設けられたグリップとが一体成形される釣竿用ハンドル部材であって、該釣竿用ハンドル部材は、炭素繊維強化プラスチックにより形成され、
前記リールシート本体は、前記軸方向でみて前記膨出部の前方40mmから前記後方100mmまでの範囲で、把持部を有し、該把持部の上半部の、周方向の角度でみて少なくとも10°分を占める一対の第1の部分は、凸曲面を挟んで周方向で互いに離間するように形成され、かつ該リールシート本体の周方向でみて曲率半径がその他の第2の部分よりも大きい曲面であることを特徴とする釣竿用ハンドル部材。
【請求項2】
前記把持部の上半部の、周方向の角度でみて少なくとも10°分を占める第1の部分の曲面の曲率半径は、R20以上又は-R30以下である、請求項1に記載の釣竿用ハンドル部材。
【請求項3】
前記その他の第2の部分の曲面の曲率半径は、R13以上R20未満である、請求項1又は2に記載の釣竿用ハンドル部材。
【請求項4】
前記把持部の上半部の第1の部分と、前記その他の第2の部分との間に移行部を備え、前記移行部は、変曲線又は変曲面である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の釣竿用ハンドル部材。
【請求項5】
前記移行部が、該変曲面である場合、平面又は曲率半径がR0.1からR1.0の範囲にある、請求項4に記載の釣竿用ハンドル部材。
【請求項6】
前記グリップは、前記軸方向でみて後方の端部から100mmの範囲で、把持部を有し、該把持部の上半部の、周方向の角度でみて少なくとも10°分を占める第1の部分は、平面又は該グリップの周方向でみて曲率半径がその他の第2の部分よりも大きい曲面である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の釣竿用ハンドル部材。
【請求項7】
前記釣竿用ハンドル部材は中空に形成される、請求項1から6までのいずれか1項に記載の釣竿用ハンドル部材。
【請求項8】
釣竿用竿体の端部が、前記リールシート本体の一方の端部であって、前記グリップとは反対側の端部に取付けられる、請求項1から7までのいずれか1項に記載の釣竿用ハンドル部材。
【請求項9】
前記炭素繊維強化プラスチックの炭素繊維が、前記釣竿用ハンドル部材の長手方向に沿って連続に形成されている、請求項1から8までのいずれか1項に記載の釣竿用ハンドル部材。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の釣竿用ハンドル部材と、竿体とを備えた釣竿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿用リールシート部を有する釣竿用ハンドル部材、及びこれを備えた釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、釣竿用リールシート及びグリップを備えた様々な釣竿が知られている。
【0003】
このような釣竿では、通常、竿体の上に釣竿用リールシートと釣竿用グリップが載置され、該釣竿用リールシートには、本体の上側又は下側にリール脚を載置するためのリール脚載置部が形成される。
【0004】
このような釣竿として、例えば、特許文献1には、竿体と、該竿体の周面に設けられ外周に凹凸面が形成された筒状の補強樹脂層と、該補強樹脂層の外周面上に射出成形されたリールシートとを備えた釣竿が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、リールの脚部が載置されるリール脚載置部を有する筒状のリールシート本体を備えたリールシートの後側に、リアグリップ部を備えた釣竿であって、竿本体と、プリプレグから中空竿体を形成する際にその後部を竿本体の径の変化率よりも大きい径の変化率で大径化することによりリアグリップ部が一体的に形成されたリアグリップ竿体とを備え、竿本体の後部とリアグリップ竿体の前部とが所定長さの重ね合わせ部を形成するようにして内外に重ね合わせられて接合一体化され、該重ね合わせ部の少なくとも一部がリールシート本体の内側に位置している釣竿が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-137132号公報
【文献】特開2013-21923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示の釣竿では、竿体に筒状の補強樹脂層該補強樹脂層の外周面上に射出成形された中実のリールシートを設けるため、重量が増大してしまい、またリールシートに肉厚があることからこれが緩衝材として機能してしまうために釣竿の感度が大幅に低下してしまうだけでなく、把持性について何ら考慮がなされていないという問題があった。
【0008】
また、特許文献2に開示の釣竿でも、竿本体にリアグリップ竿体とリールシート本体を接合するため、接着のための重量増加が不可避であり、また接着部分や複数の層が介在するためにこれらが緩衝材として機能してしまい、釣竿の感度が大幅に低下してしまうだけでなく、把持性について何ら考慮がなされていないという問題があった。
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、軽量かつ竿体からの振動が減衰しにくいだけでなく、把持性を大幅に高めた釣竿用リールシートを備える釣竿用ハンドル部材、及びこれを備えた釣竿を提供することにある。本発明のこれら以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材は、膨出部(トリガー)と、リール脚が載置されるリール脚載置部とが形成されたリールシート本体と、その軸方向でみて該リールシート本体の後方に設けられたグリップとが一体成形される釣竿用ハンドル部材であって、該釣竿用ハンドル部材は、炭素繊維強化プラスチックにより形成され、前記リールシート本体は、前記軸方向でみて前記膨出部(トリガー)の前方40mmから前記後方100mmまでの範囲で、把持部を有し、該把持部の上半部の、周方向の角度でみて少なくとも10°分を占める第1の部分は、平面又は該リールシート本体の周方向でみて曲率半径がその他の第2の部分よりも大きい曲面であるように構成される。
【0011】
本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材は、前記把持部の上半部の、周方向の角度でみて少なくとも10°分を占める第1の部分の曲面の曲率半径は、R20以上又は-R30以下であるように構成される。また、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材は、前記その他の第2の部分の曲面の曲率半径は、R13以上R20未満であるように構成される。
【0012】
本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材は、前記把持部の上半部の第1の部分と、前記その他の第2の部分との間に移行部を備えるように構成される。また、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材において、前記移行部は、変曲線又は変曲面であり、該変曲面である場合、平面又は曲率半径がR0.1からR1.0の範囲にある。
【0013】
本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材において、前記グリップは、前記軸方向でみて後方の端部から100mmの範囲で、把持部を有し、該把持部の上半部の、周方向の角度でみて少なくとも10°分を占める第1の部分は、平面又は該グリップの周方向でみて曲率半径がその他の部分よりも大きい曲面であるように構成される。
【0014】
本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材は、前記釣竿用ハンドルは中空に形成される。
【0015】
本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材は、釣竿用竿体の端部が、前記リールシート本体の一方の端部であって、前記グリップとは反対側の端部に取付けられるように構成される。
【0016】
本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材は、前記炭素繊維強化プラスチックの炭素繊維が、前記釣竿用ハンドル部材の長手方向に沿って連続に形成されている。
【0017】
本発明の一実施形態に係る釣竿は、上記いずれかの釣竿用ハンドル部材と、竿体とを備えるように構成される。
【発明の効果】
【0018】
上記実施形態によれば、軽量かつ竿体からの振動が減衰しにくいだけでなく、把持性を大幅に高めた釣竿用リールシートを備える釣竿用ハンドル部材、及びこれを備えた釣竿を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る釣竿を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る釣竿用リールシートを示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材を示す図である。
図4】(a)は本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材を示す図、(b)は本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材の断面を示す図である。
図5】(a)は、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材の断面を示す図、(b)は本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材の断面の一部拡大図を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材の断面を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材の断面を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材の成形方法を示す図である。
図9】本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る釣竿の実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0021】
図1は、本発明に係る釣竿の一実施形態を示す図である。図示のように、本発明の一実施形態による釣竿1は、竿体2と、竿体2にリールシート9を介して取り付けられたリールRと、竿体2に取り付けられた釣糸ガイド10と、を備える。図示の実施形態においては、リールシート9及び釣糸ガイド10の各々が、竿体の外周面に取り付けられる取付部品に該当する。
【0022】
竿体2は、例えば、元竿3、中竿5、及び穂先竿7等を連結することによって構成されている。これらの各竿体は、例えば、並継ぎ式に継合される。元竿3、中竿5、及び穂先竿7は、振出方式、逆並継方式、インロー方式、又はこれら以外の公知の任意の継合方式により継合され得る。竿体2は、単一の竿体から構成されていても良い。
【0023】
元竿3、中竿5、及び穂先竿7は、例えば、繊維強化樹脂製の管状体で構成されている。この繊維強化樹脂製の管状体は、強化繊維にマトリクス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂プリプレグ(プリプレグシート)を芯金に巻回し、このプリプレグシートを加熱して硬化させることにより作成される。このプリプレグシートに含まれる強化繊維として、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、及びこれら以外の任意の公知の強化繊維を用いることができる。当該プリプレグシートに含まれるマトリクス樹脂として、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。プリプレグシートが硬化された後には、芯金が脱芯される。また、管状体の外表面は、適宜研磨される。各竿体は、中実状に構成されてもよい。
【0024】
図示の実施形態において、元竿3、中竿5及び穂先竿7には、リールシート9に装着されるリール6から繰り出される釣糸を案内する複数の釣糸ガイド10(釣糸ガイド10A~10D)が設けられている。より具体的には、元竿3には釣糸ガイド10Aが設けられ、中竿5には釣糸ガイド10Bが設けられ、穂先竿7には釣糸ガイド10Cが設けられている。穂先竿7の先端には、トップガイド10Dが設けられているが、詳細は省略する。
【0025】
次に、図2を参照して、リールシート本体12及びリールシート9の基本的構成につき説明する。リールシートは、魚釣用リール6のリール脚6aが載置されるリール脚載置面12aをその軸方向に沿って有するリールシート本体12を備えている。リールシート本体12は、全体として筒状に形成されている。リールシート本体12は、例えば、300mmから450mmの範囲の長さを有するよう構成できるが、これに限られない。
【0026】
また、このリールシート本体12は、リール脚載置面12aの反対側を僅かに膨出させ、握持する手で握り込んだときに、母指球またはその近部を支えることで握持し易い湾曲形状の外面を有する膨出部(トリガー)12bを形成してある。
【0027】
リールシート本体12のリール脚載置面12aは、平坦または、リールシート本体12のリール脚載置面12aに隣接する他の周方向の部位(例えば握り部12b)よりも大きな曲率をもって略平坦に形成することができ、かつ、図2に示すリールシート本体12の軸方向に延びた状態に形成されている。リールシート本体12には、一端(竿元側)に固定フード14が一体的に配設されている。リールシート本体12のリール脚載置面12aの一端は、固定フード14の内部に配設されている。
【0028】
リールシート本体12には、他端(竿先側)に移動フード22が軸方向に移動自在に装着される。該リールシート本体12と該移動フード22を含めてリールシート9と呼ぶことがあるが、詳細は省略する。
【0029】
次に、図3(及び図2)を参照して、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20について説明する。ここで、釣竿用ハンドル部材20とは、既述のリールシート本体12と、該リールシート本体12に隣接して形成されたグリップ4とで構成されるものであるが、必要に応じてその間に接続部材を設けるようにしてもよい。なお、既述のリールシート9と、該グリップ4を含めて釣竿用ハンドル部材20と呼ぶこともできるが、本実施形態では上記の通り説明する。
【0030】
図示のように、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20は、リール脚6bが載置されるリール脚載置部12aが形成されたリールシート本体12と、該リールシート本体12に接続されるグリップ4とが一体成形され、当該釣竿用ハンドル部材は、炭素繊維強化プラスチックにより形成されている。また、後述する図4(b)に示すように、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20は、中空に形成することができる。このようにして、釣竿に与える感度に影響させることなく大幅に重量を低減することが可能となる。
【0031】
次に、図4(a)、(b)を参照して、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20について説明する。図示のように、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20は、リール脚6bが載置されるリール脚載置部12aが形成されたリールシート本体12と、該リールシート本体12に接続されるグリップ4とが一体成形されるよう構成され、該釣竿用ハンドル部材20は、炭素繊維強化プラスチックにより形成され、リールシート本体20は、当該リールシート本体20の軸方向でみて前記膨出部(トリガー)12bの前方40mmから前記後方100mm(X)までの範囲で、把持部21を有し、該把持部21の上半部の、周方向の角度でみて少なくとも10°分を占める第1の部分23は、平面(図示の例では、当該第1の部分23は平面)又は該リールシート本体の周方向でみて曲率半径がその他の部分24よりも大きい曲面であるように構成される。ここで、膨出部(トリガー)12bの前方とは、上述の竿体が装着される側の方向を指し、膨出部(トリガー)12bの後方とは、上述のグリップ4側の方向を指す。
【0032】
本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20によれば、ハンドル部材が一体成形されることで大幅な軽量化が実現でき、また一体成形のために竿体からの振動の減衰を低減することができるため、釣竿の感度を向上させることが可能となるだけでなく、リールシート本体を把持する際の把持性を大幅に向上させることが可能となる。このようにして、把持部を把持した際に指先が触れる部分を直線又は直線に近い曲面で構成された面を配置することで、把持部の軸長を回転中心とした回り方向に対して回り止めの機能を果たすため、把持性を大幅に向上させることに繋がることが判った。ここで、釣竿を把持する際、釣竿の把持部を釣り人が握ることとなる場合、想定される把持部外径(例えば、φ20~27mmであるがこれに限られない)と釣り人の指の幅(10~19mm)を考慮すると、指が果たす回り止め効果が発揮されるのに必要な割合を考えると把持部21の上半部の、周方向の角度でみて少なくとも10°分以上となると良好であることが判った。また、把持部の指が当たる中央の部分(把持部の軸方向でみて指が当たる中央の部分で、例えば、膨出部12bの前方30mmから後方80mmの部分)であれば、30°分以上であるとさらに良好となることが判っている。
【0033】
本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20は、把持部21の上半部の、周方向の角度でみて少なくとも10°分を占める第1の部分23(図4(b)に示す例では、一対(2つ)の当該第1の部分23が形成されている)の曲面の曲率半径は、R20以上又は-R30以下であるように構成される。なお、当該第1の部分23は図4(b)に示すように2つでもよいし、1つ又は3つ以上設けるようにしてもよい(本明細書を通じて同様とする)。このようにすることで、第一部分と第二部分との移行部が、釣竿ハンドルを把持した際に指先から第一関節付近において、回り止めの効果を発揮することができるため、把持性を大幅に向上させることが可能となる。また、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材は、前記その他の部分24(図4(b)に示す下半部)の曲率半径は、R13以上R20未満であるように構成される。
【0034】
本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材は、該把持部の上半部の第1の部分と、該その他の第2の部分との間に移行部を備えるように構成される。また、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材において、前記移行部は、変曲線(断面では変曲点(図示しない))又は変曲面(断面では直線又は曲線で、後述する図5に示す例では、変曲面25の曲線)であり、該変曲面である場合、平面又は曲率半径がR0.1からR1.0の範囲にある。このようにして、移行部が指関節にくい込む(馴染む)役割を果たし、回り止めの効果を発揮せしめることができるため、把持性を大幅に向上させることが可能となる。
【0035】
本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材において、該グリップは、該軸方向でみて後方の端部から100mm(Y)の範囲に、把持部を有し、該把持部の上半部の、周方向の角度でみて少なくとも10°分を占める第1の部分は、平面又は該グリップの周方向でみて曲率半径がその他の第2の部分よりも大きい面であるように構成される。
【0036】
本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20によれば、ハンドル部材が一体成形されることで大幅な軽量化が実現でき、また一体成形のために竿体からの振動の減衰を低減することができるため、釣竿の感度を向上させることが可能となるだけでなく、グリップを把持する際の把持性を大幅に向上させることが可能となる。このようにして、グリップを把持した際に指先が触れる部分を直線又は直線に近い曲面で構成された面を配置することで、グリップの軸長を回転中心とした回り方向に対して回り止めの機能を果たすため、把持性を大幅に向上させることに繋がることが判った。ここで、釣竿を把持する際、釣竿のグリップを釣り人が握ることとなる場合、想定されるグリップ外径(例えば、φ20~27mmであるがこれに限られない)と釣り人の指の幅(10~19mm)を考慮すると、指が果たす回り止め効果が発揮されるのに必要な割合を考えると把持部21の上半部の、周方向の角度でみて少なくとも10°分以上となると良好であることが判った。また、グリップの指が当たる部分(例えば、グリップの、該軸方向でみて後方の端部から0mmから80mmの部分)であれば、30°分以上であるとさらに良好となることが判っている。
【0037】
本発明の一実施形態に係る釣竿は、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材と、竿体とを備えるように構成される。
【0038】
本発明の一実施形態に係る釣竿によれば、ハンドル部材が一体成形されることで大幅な軽量化が実現でき、また一体成形のために竿体からの振動の減衰を低減することができるため、釣竿の感度を向上させることが可能となるだけでなく、把持部を形成することで把持性を大幅に向上させることが可能となる。このようにして、グリップを把持した際に指先が触れる部分を直線又は直線に近い曲面で構成された面を配置することで、グリップの軸長を回転中心とした回り方向に対して回り止めの機能を果たすため、把持性を大幅に向上させることに繋がることが判った。
【0039】
次に、図5-7を参照して、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20の把持部21をその断面図(図4(a)におけるA-A断面)を用いて説明する(説明の都合上、中空部分は省略している)。なお、グリップ4の把持部についても同様となるが、以下リールシート本体20の把持部21を例として説明する。ここで、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20の軸方向における第1の部分の位置は、図4(a)におけるA-A断面の位置に限られず、既述の位置とすることができる。また、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20における第1の部分が形成される(その断面の)周方向位置は、把持部21の軸方向における位置によらず同じでもよいし、当該位置に応じて異なるようにしてもよい。
【0040】
まず、図5(a)は、釣竿用ハンドル部材20の把持部21の断面図の一例を示し、図5(b)は、その拡大図を示す。図示のように、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20において、把持部21の上半部の、周方向の角度(α)でみて少なくとも10°分を占める第1の部分23(図5(a)に示す例では、一対(2つ)の当該第1の部分23が形成されている)は、平面(図5(a)の例では、当該第1の部分23は平面)又は該リールシート本体の周方向でみて曲率半径がその他の部分24よりも大きい曲面であるように構成される。なお、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20における第1の部分が占める(その断面の)周方向の角度(上半部に占める角度分)は、把持部21の軸方向における位置によらず同じでもよいし、当該位置に応じて異なるようにしてもよい。上述の通り、釣竿を把持する際、釣竿のグリップを釣り人が握ることとなる場合、想定されるグリップ外径(例えば、φ20~27mmであるがこれに限られない)と釣り人の指の幅(10~19mm)を考慮すると、指が果たす回り止め効果が発揮されるのに必要な割合を考えると把持部21の上半部の、周方向の角度でみて少なくとも10°分以上となるようにし、把持部の指が当たる中央の部分(把持部の軸方向でみて指が当たる中央の部分で、例えば、膨出部12bの前方30mmから後方80mmの部分)を30°分以上とすることができる。
【0041】
図5(b)は、図5(a)の平面(図5(b)に示すA)、曲率半径がR20のB、曲率半径が-R30のCの3つのプロファイルが示されている。上述の「曲率半径が大きい」という場合、数値の絶対値が大きいことを意味するものと理解されたい。
【0042】
また、図5(b)に示す当該第1の部分23は一例であり、把持部21の上半部の、周方向の角度でみて少なくとも10°分を占める第1の部分23(図5(a)に示す例では、一対(2つ)の当該第1の部分23が形成されている)の曲面の曲率半径は、R20以上又は-R30以下であるように構成することができる。また、把持部21の第1の部分23は、上半部の周方向の5度から45度の範囲の角度(図5(a)に示す例では角度40°分(角度α))に亘って形成されるようにすることができる。当該角度は、把持部21に設ける第1の部分23の数により変動し得る。また、第1の部分23と第2の部分24との間には変曲線(断面では変曲点)又は変曲面(平面(断面では直線)又は曲面(断面では曲線))が形成され、変曲面の曲率半径は、R0.1からR1.0の範囲にあるようにされる。図5(a)、(b)に示す例では、変曲面25が形成され、当該変曲の曲率半径は、R0.1からR1.0の範囲にされる。このようにして、握った際に手に傷が出来ないようエッジではなくラウンド形状にし、また変曲面25が指関節にくい込んで馴染む役割を果たすことができる。
【0043】
ここで、上半部とは、図5(a)に示す角度0°から180°までの範囲の角度をいうものとする。また、下半部とは、図5(a)に示す、角度180°から360°までの範囲の角度をいうものとする。その他の部分(第2の部分)24は、第1の部分以外を指すが、本明細書においては便宜上当該下半部を指すものとする。また、第1の部分23が設けられる角度範囲は、釣竿用ハンドル部材20の軸方向位置によって異なってもよく、同じにしてもよい。これらは本明細書を通じて同様である。
【0044】
次に、図6は、釣竿用ハンドル部材20の把持部21の断面図のその他の例を示す。図示のように、把持部21の第1の部分23は、上半部の周方向の45度から90度の範囲の角度(図6に示す例では角度40°分(角度β))に亘って形成されるようにすることができる。図示の例では、当該第1の部分23は平面に形成されている。
【0045】
次に、図7は、釣竿用ハンドル部材20の把持部21の断面図のその他の例を示す。図示のように、把持部21の第1の部分23は、上半部の周方向の5度から60度の範囲の角度(図7に示す例では角度55°分(角度γ))に亘って形成されるようにすることができる。図示の例では、当該第1の部分23は、曲率半径R20以上又は-R30以下の曲面に形成されている。
【0046】
次に、図9は、釣竿用ハンドル部材20の把持部21の断面図のその他の例を示す。図9(a)、(b)に示すように、把持部21の第1の部分23は、上半部の周方向の5度から45度の範囲の角度(図9に示す例では角度40°分(角度α))に亘って形成される部分23Aと、上半部の周方向の45度から90度の範囲の角度(図9に示す例では角度40°分(角度β))に亘って形成される部分23Bとで構成されている(図示の例では、23Aと23Bとが左右に一対形成されている(すなわち合計して4つの部分))。このように、把持部21の第1の部分23は、2つ設けられ、一対となるよう形成すると、合計4つとなる。このようにして、把持した際の回り止め効果を更に向上させることが可能となる。ここで、把持部21の第1の部分23は、特定の態様に限定されず様々な態様が考えられる。また、図9(b)では、当該部分23Aと23Bとの間に移行部が形成されているが、図9(a)では、当該部分23Aと23Bとは連続して形成されており、適宜いずれかの態様を選択することができる。また、第1の部分23として、3つ設けられる場合(図示しないが、例えば、23A、23B、23C)、当該23Aと23Bとの間には移行部が、当該23Bと23Cとの間は連続して形成するようにすることができる。
【0047】
本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20において、該釣竿用ハンドル部材20は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)により形成することができる。また、該釣竿用ハンドル部材20の材料として、CFRTP(連続繊維)、CFRTP(不連続繊維)又はハイブリッドで形成するようにしてもよい。このような材料で形成することで、釣竿に用いるハンドル部材20として、十分な剛性や強度を確保しつつ重量の増大を抑制することができる。
【0048】
また、図4a、4bに示すように、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20において、釣竿用竿体部が、該リールシート本体12の一方の端部15であって、該グリップ4とは反対側の端部15に取付けられるよう構成される。このようにすることで、従来の多くの方法とは異なり、竿体を釣竿用ハンドル部材20全体若しくは略全体に通す必要がなくなるため、重量の大幅な低減を図ることができる。
【0049】
本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20において、該リールシート本体12の端部15の長さ(A)は、20-50mmであるよう構成される。このようにすることで、既述の通り、竿体を釣竿用ハンドル部材20全体若しくは略全体に通す必要がなくなるため、重量の大幅な低減を図ることができる。ここで、釣竿用竿体部の釣竿用ハンドル部材20への取付方法は、例えば、勘合(圧入)、接着又は締結が考えられるが、これらに限られない。ここで挙げた取付方法により、竿体とハンドル部材の着脱がより容易となるといった利点がある。
【0050】
発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20において、当該釣竿用ハンドル部材は中空に形成されるが、釣竿用竿体部を、該リールシート本体12の一方の端部15であって、該グリップ4とは反対側の端部15に取付ける領域に周方向リブを備えるようにしてもよい。このようにして、釣竿に与える感度に影響させることなく大幅に重量を低減すると共に、周方向の剛性(つぶれ剛性)を高めることが可能となる。
【0051】
本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20において、該釣竿用ハンドル部材20の内側に、内側層(図示しない)を設けるようにしてもよい。この場合、内側層として樹脂材料を用いることができる。このようにして、内面の加工性が高くかつ樹脂枯れ及び内面表面の繊維ケバが発生しにくい該リールシートを備える釣竿用ハンドル部材を形成することが可能となる。
【0052】
より具体的には、釣竿用ハンドル部材20の内側に内側層が存在することにより、繊維に必要な樹脂を供給できることで、物性を安定化することができる(強度の下限を保証できる)。また、内側層に部品を挿入したり、接着する場合には部品の寸法に合わせて内径の追加工を行う必要が生じ得るが、内側がケバになっていると、加工代が確保できないという問題があるのに対し、内側層があることにより、加工代を充分に確保できるため、より柔軟かつ強固な構造を備えたハンドル部材を成形することが可能となる。
【0053】
本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20において、該炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の炭素繊維が、該釣竿用ハンドル部の長手方向に沿って連続に形成されるよう構成される。このようにすることで、曲げ剛性の確保による軽量化や魚の当たりによる竿の振動を手元に敏感に伝えることが可能となる。
【0054】
次に、図8を参照して、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20の成形方法について説明する。まず、図8aに示すように、釣竿用ハンドル部材20の形状や寸法に合わせてコア部材の寸法や形状(例えば、釣竿用ハンドル部材20より0.5-1mm程度内側にオフセットさせる)を決定し、溶解性のあるコア部材を造形する(コア部材の造形)。当該コア部材の造形方法は、射出成形、注型、3Dプリンターによる形成等が考えられるが、これらに限られない。なお、コア部材の表面層は非溶解性の樹脂で覆うようにする。
【0055】
次に、図8bに示すように、当該コア部材の周りにプリプレグを積層し、プリフォームを形成する。ここで、積層する材料として、樹脂が含侵されていないドライの炭素繊維基材を用いてもよい。
【0056】
そして、図8cに示すように、当該プリフォームを金型に入れ、加熱・加圧してプレス成形を行う。なお、オートクレーブやRTM成形等でもよいが特定の態様に限定されない。
【0057】
次に、図8dに示すように、成形品に二次加工を行う(寸法出し・バリ取り)。より具体的には、成形品の前後等余分な箇所や成形時に発生したバリを除去する。
【0058】
次に、図8eに示すように、二次加工を施した成形品を水や温水等に投入し、成形品の内側にあるコア部材を溶解させる。このようにして、釣竿用ハンドル部材20が形成される。その後、図8fに示すように、当該釣竿用ハンドル部材20の外表面に適宜塗装や印刷を行う。そして、図8gに示すように、リールを取付けるための部品等を装着する。最後に、図8hに示すように、当該釣竿用ハンドル部材20にリールを載置し固定することができる。
【0059】
このようにして、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20、すなわち、把持部を備え、リール脚6bが載置されるリール脚載置部12aが形成されたリールシート本体12と、該リールシート本体12に接続されるグリップ4とが一体成形された釣竿用ハンドル部材20が形成される。
【0060】
このようにして形成された本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20によれば、把持性を大幅に高めることができ、またハンドル部材が一体成形されることで大幅な軽量化が実現でき、また一体成形のために竿体からの振動の減衰を低減することができるため、釣竿の感度を向上させることが可能となる。
【0061】
次に、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20のその他の成形方法について説明する。まず、釣竿用ハンドル部材20の形状や寸法に合わせてコア部材の寸法や形状(例えば、釣竿用ハンドル部材20より0.5-1mm程度内側にオフセットさせる)を決定する(コア部材の設計)。水溶性の砂を使用して、当該コア部材の寸法や形状に合わせて砂型コア部材を形成する。
【0062】
次に、当該コア部材の周りに樹脂が含侵されていないカーボンを使用して、プリフォームを形成する。具体的には、クロス材(織物)、NCF(ノンクリンプファブリック)、ブレイド(組紐)、UDテープを用いることができるが、これらに限られない。また、コア部材には、炭素繊維を賦形させる必要があるが、その際バインダーを使用しタック性を付与する。当該バインダーの種類としては、エポキシ系、ロジン系、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、フェノキシなどが考えられるが、これらに限られない。ここで、上記例では、樹脂が含侵されていないカーボンを使用する場合を説明したが、樹脂をカーボンクロス等に予め含侵したプリプレグを直接コアの周りにハンドレイアップ法等で積層配置し、成形(硬化)する方法であってもよい。当該プリフォームを金型にセットし、樹脂を注入する(RTM成形法)。その後、砂型のコア部材を水中で除去する。最後に、成形品にバリ取り、研磨、塗装等を施し、釣竿用ハンドル部材20が形成される。
【0063】
このようなRTM成形法では、低粘度の樹脂を流し込む製法により、ハンドルのような複雑形状であっても、樹脂枯れ、ボイド等の樹脂の未含侵部分が極力避けられるという利点が得られる。また、プリプレグよりも賦形性の良い材料を使用きることにより、複雑形状の成形においても繊維に必要以上に負荷をかけることなく賦形できる。さらには、外部は金型により形成され、内部はコア材で形成されるために、外部、内部とも所望の寸法で成形することが可能となり、いずれも表面状態のよい成形物ができるという利点がある。以上のように、RTM成形法では品質の安定化や強度不足を回避することが可能となる。
【0064】
次に、本発明の一実施形態に係る釣竿用ハンドル部材20のその他の成形方法について簡単に説明する。まず、釣竿用ハンドル部材20の形状や寸法に合わせて成型された金型を用意する。当該金型に、プリフォームとしてプリプレグを入れ、空気圧の力で金型内の外型に押し付ける(内圧成形)ようにして成形品を形成する。その後、成形品にバリ取り、研磨、塗装等を施し、釣竿用ハンドル部材20が形成される。このような内圧成形法では、プリプレグが内圧によって金型(外型)に押し付けられて成形されることにより、成形品の外表面がより良好に成形することができる。また、プリプレグを使用することで、樹脂量が比較的少ない成形品を製作できるため、製品の軽量化が可能となる。
【0065】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0066】
1 釣竿
2 竿体
3 元竿
4 グリップ
5 中竿
6 リール
6a リール脚
7 穂先竿
9 リールシート
10 釣糸ガイド
12 リールシート本体
12a リール脚載置面
13 端部
14 固定フード
15 端部
17 内側層
18 外側層
20 釣竿用ハンドル部材
21 把持部
22 移動フード
23 第1の部分
24 第2の部分
25 変曲面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9