(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ポンプ用パッキン
(51)【国際特許分類】
F16J 15/06 20060101AFI20240927BHJP
F04D 29/08 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F16J15/06 N
F16J15/06 M
F04D29/08 B
(21)【出願番号】P 2021150804
(22)【出願日】2021-09-16
【審査請求日】2024-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅村 晃佑
(72)【発明者】
【氏名】相原 頼年
(72)【発明者】
【氏名】竹内 一喜
(72)【発明者】
【氏名】橋本 正敏
(72)【発明者】
【氏名】橘木 孝尚
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-273491(JP,A)
【文献】特開2003-166494(JP,A)
【文献】特開2014-074453(JP,A)
【文献】特開2009-97528(JP,A)
【文献】特開2009-287468(JP,A)
【文献】米国特許第5700017(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/06
F04D 29/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを収容するモータケーシングと、前記モータケーシングを囲む外ケーシングとの間に介在するポンプ用パッキンであって、
前記外ケーシングには、前記外ケーシングを前記モータケーシングに固定するためのボルトが貫通する第1貫通孔と、前記第1貫通孔から離れた位置に設けられた第2貫通孔とが形成され、
前記ボルトが貫通するボルト孔が形成されると共に、前記第1貫通孔を止水する第1シール部と、
前記第2貫通孔を止水する第2シール部と、
前記第1シール部と前記第2シール部とを連結する連結部と、
前記ボルトの締結時に生じた前記第1シール部の変形が前記連結部を介して前記第2シール部へ伝わることを抑制する抑制部と、を備えている、ポンプ用パッキン。
【請求項2】
請求項1に記載のポンプ用パッキンにおいて、
前記抑制部は、前記第1シール部の周囲に設けられかつ、前記連結部よりも分厚いことによって、前記連結部よりも変形がしにくい剛性部によって構成されている、ポンプ用パッキン。
【請求項3】
請求項2に記載のポンプ用パッキンにおいて、
前記剛性部は、前記ボルト孔の中心に対して点対称な形状を有している、ポンプ用パッキン。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のポンプ用パッキンにおいて、
前記ボルトは、前記外ケーシングに取り付けられるハンドルを前記外ケーシングに固定するボルトを兼用しており、
前記ハンドルは、使用者によって把持されるグリップ部と、前記グリップ部の両端それぞれに設けられかつ、前記ボルトによって前記外ケーシングに固定される脚部とを有し、
前記剛性部は、前記脚部の下面であって、前記外ケーシングへの接触面の大きさ以下の大きさを有している、ポンプ用パッキン。
【請求項5】
請求項1に記載のポンプ用パッキンにおいて、
前記抑制部は、前記連結部に形成された切り込みによって構成されている、ポンプ用パッキン。
【請求項6】
請求項5に記載のポンプ用パッキンにおいて、
前記第1シール部及び前記第2シール部はそれぞれ、前記連結部の外周部に位置し、
前記切り込みは、前記連結部の外周縁から内方に向かって延びている、ポンプ用パッキン。
【請求項7】
請求項1に記載のポンプ用パッキンにおいて、
前記抑制部は、前記第1シール部と前記第2シール部との間において、前記連結部に形成された切り欠きによって構成されている、ポンプ用パッキン。
【請求項8】
請求項7に記載のポンプ用パッキンにおいて、
前記第1シール部及び前記第2シール部はそれぞれ、前記連結部の外周部に位置し、
前記切り欠きは、前記連結部の外周縁に開口している、ポンプ用パッキン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、ポンプ用パッキンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水中ポンプが記載されている。この水中ポンプは、例えば建設現場の溜水部の排水に使用される水中ポンプである。この水中ポンプは、羽根車を有するポンプ部と、モータを有するモータ部とを備えている。
【0003】
モータ部は、ポンプ部の上に位置している。モータ部は、モータケーシングと外ケーシングとを有している。モータケーシングはモータを収容する。外ケーシングはモータケーシングを囲む。モータケーシングと外ケーシングとの間には、環状の流路が形成される。ポンプ部が吐出した水は、環状の流路を通って水中ポンプの外へ排出される。
【0004】
外ケーシングは、円筒形状を有している。外ケーシングの上端は、上壁によって閉塞している。外ケーシングの上壁には、ハンドルが取り付けられている。使用者は、ハンドルを掴んで、水中ポンプを携行できる。ハンドルは、使用者が掴むグリップ部と、グリップ部の両端それぞれに設けられた脚部とを有している。二つの脚部それぞれが、外ケーシングの上壁に固定される。脚部を外ケーシングに固定するためのボルトは、外ケーシングを貫通して、モータケーシングの上端部に螺合される。このハンドル固定用のボルトは、外ケーシングをモータケーシングへ固定するボルトを兼用している。
【0005】
また、モータケーシングの上端部には、ボス部が設けられている。ボス部は、外ケーシングの上壁を貫通して外ケーシングの上面から上方へ突出している。ボス部には、モータへ給電するケーブルのブーツが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
外ケーシングの上壁の下面と、モータケーシングの上面とは、上下に重なっている。特許文献1には明示されていないが、上壁の下面とモータケーシングの上面との間には、パッキンが介設している。パッキンは、例えば合成ゴム製であって、環状の流路を流れる水が、外ケーシングに形成された貫通孔から漏れることを防止する。より詳細に、パッキンは、前述したハンドル固定用のボルトが貫通する二つの第1貫通孔それぞれを止水するための第1シール部と、ケーブルブーツ用のボス部が貫通する第2貫通孔を止水するための第2シール部と、を有している。これら第1シール部と第2シール部とは連結部によって互いに連結されている。つまり、第1シール部と第2シール部とを有するパッキンは、一部材として構成されている。一つのパッキンが、複数のシール部を有していることにより、水中ポンプの製造時の組み付け作業が容易になる。
【0008】
ところが、本願発明者らの検討によると、水中ポンプの使用時に、第2貫通孔の箇所から水が漏れる場合があることが、新たにわかった。
【0009】
ここに開示する技術は、ポンプ用パッキンの止水性能の低下を防止する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者らの検討によると、パッキンの止水性能の低下は、ポンプの製造時に原因があることがわかった。つまり、ハンドル固定用のボルトが締め付けられる際に、そのボルトに第1シール部の一部が巻き付いたり、ボルトの孔に第1シール部の一部が引き込まれたりすると、連結部を通じて第2シール部が引っ張られて第2シール部が変形してしまう。第2シール部が変形してしまう結果、第2貫通孔の箇所の止水性能が低下する。製造時の組み付け作業を考慮してパッキンを一部材にすることが、止水性能の低下を招いている。
【0011】
前述の通り、第1シール部の変形が第2シール部へ伝わって、第2シール部を変形させることが、止水性能を低下させる原因である。本願発明者らは、この新たに得られた知見に基づいて、第1シール部の変形を第2シール部へ伝えないことに着目して、ここに開示する技術を完成するに至った。
【0012】
具体的にここに開示する技術は、モータを収容するモータケーシングと、前記モータケーシングを囲む外ケーシングとの間に介在するポンプ用パッキンに係る。
【0013】
ここで、前記外ケーシングには、前記外ケーシングを前記モータケーシングに固定するためのボルトが貫通する第1貫通孔と、前記第1貫通孔から離れた位置に設けられた第2貫通孔とが形成されている。
【0014】
そして、前記ポンプ用パッキンは、前記ボルトが貫通するボルト孔が形成されると共に、前記第1貫通孔を止水する第1シール部と、前記第2貫通孔を止水する第2シール部と、前記第1シール部と前記第2シール部とを連結する連結部と、前記ボルトの締結時に生じた前記第1シール部の変形が前記連結部を介して前記第2シール部へ伝わることを抑制する抑制部と、を備えている。
【0015】
この構成によると、ポンプ用パッキンは、第1シール部と第2シール部と連結部とを有していて、一部材に構成されている。部品点数が減るため、ポンプの製造時の組み付け作業が容易になる。
【0016】
前記のポンプ用パッキンは、抑制部を備えている。抑制部は、第1シール部と第2シール部との間において、ボルトの締結時に生じた第1シール部の変形が連結部を介して第2シール部へ伝わることを抑制する。抑制部によって、製造後のポンプにおいて、第2シール部が引っ張られた状態になることが抑制される。第2シール部の変形が抑制される結果、第2シール部は、第2貫通孔を止水することができる。ポンプ用パッキンの止水性能の低下が抑制される。
【0017】
前記抑制部は、前記第1シール部の周囲に設けられかつ、前記連結部よりも分厚いことによって、前記連結部よりも変形がしにくい剛性部によって構成されている、としてもよい。
【0018】
剛性部は、相対的に分厚いため、外力を受けた場合に変形しにくい。ボルトの締結時に、ボルトに第1シール部の一部が巻き付こうとしたり、ボルトの孔に第1シール部の一部が引き込まれそうになったりしても、第1シール部及び剛性部の、変形が抑制される。第1シール部及び剛性部の変形が抑制されるため、第2シール部の変形も抑制される。その結果、第2シール部は、第2貫通孔を止水することができる。
【0019】
前記剛性部は、前記ボルト孔の中心に対して点対称な形状を有している、としてもよい。
【0020】
剛性部が、ボルト孔の中心に対して点対称な形状であれば、変形に対する剛性部の耐力が第1シール部に均等に作用する。その結果、ボルトの締結時の、第1シール部及び剛性部の変形がより効果的に抑制され、それに伴い第2シール部の変形も効果的に抑制できる。
【0021】
前記ボルトは、前記外ケーシングに取り付けられるハンドルを前記外ケーシングに固定するボルトを兼用しており、
前記ハンドルは、使用者によって把持されるグリップ部と、前記グリップ部の両端それぞれに設けられかつ、前記ボルトによって前記外ケーシングに固定される脚部とを有し、
前記剛性部は、前記脚部の下面であって、前記外ケーシングへの接触面の大きさ以下の大きさを有している、としてもよい。
【0022】
ハンドルがボルトによって固定されると、ハンドルの脚部が、外ケーシングを介して第1シール部及び剛性部を、モータケーシングへと押し付ける。剛性部が、脚部の接触面の大きさ以下の大きさであるため、剛性部の全体が、脚部によって押さえられる。ボルトの締め付け時に、剛性部の変形が抑制される。それと共に、ポンプの使用時には、剛性部の全体及び第1シール部が、脚部によって押さえられているため、第1貫通孔の止水が十分に行われる。
【0023】
前記抑制部は、前記連結部に形成された切り込みによって構成されている、としてもよい。
【0024】
ボルトの締結時に第1シール部に変形が生じても、切り込みが第1シール部と第2シール部との間を不連続にしているから、第2シール部へ変形が伝わることが抑制される。その結果、第2シール部は、第2貫通孔を止水することができる。ポンプ用パッキンの止水性能の低下が抑制できる。
【0025】
前記第1シール部及び前記第2シール部はそれぞれ、前記連結部の外周部に位置し、前記切り込みは、前記連結部の外周縁から内方に向かって延びている、としてもよい。
【0026】
こうすることで、第1シール部から第2シール部へ、連結部の外周部を通じて変形が伝わろうとしても、その変形の伝達が、切り込みによって効果的に抑制される。
【0027】
前記抑制部は、前記連結部に形成された切り欠きによって構成されている、としてもよい。
【0028】
こうすることで、ボルトの締結時に第1シール部に変形が生じても、切り欠きが第1シール部と第2シール部との間を不連続にしているから、第2シール部へ変形が伝わることが抑制される。その結果、第2シール部は、第2貫通孔を止水することができる。ポンプ用パッキンの止水性能の低下が抑制できる。
【0029】
前記第1シール部及び前記第2シール部はそれぞれ、前記連結部の外周部に位置し、前記切り欠きは、前記連結部の外周縁に開口している、としてもよい。
【0030】
こうすることで、第1シール部から第2シール部へ、連結部の外周部を通じて変形が伝わろうとしても、その変形の伝達が、切り欠きによって効果的に抑制される。
【発明の効果】
【0031】
前記のポンプ用パッキンは、止水性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図2】
図2は、
図1のA-A断面図の一部と、外ケーシングとモータケーシングとの間の構造を拡大して示す拡大図である。
【
図3】
図3は、パッキンの裏面図及び断面図である。
【
図4】
図4は、従来のパッキンの裏面図及び断面図である。
【
図5】
図5は、変形例に係るパッキンの裏面図である。
【
図6】
図6は、第2の変形例に係るパッキンの裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、ポンプ用パッキンの実施形態が、図面を参照しながら説明される。ここで説明されるポンプ用パッキンは例示である。
【0034】
(ポンプの全体構成)
図1は、ポンプ1の外観を示している。このポンプ1は水中ポンプであり、例えば建設現場で、水が溜まっている溜水部の排水に使用される。ポンプ1は、羽根車を有するポンプ部11と、羽根車を回すモータ21(
図2参照)を有するモータ部2とを備えている。モータ部2はポンプ部11の上側に位置している。
【0035】
ポンプ部11には、ストレーナ12が取り付けられている。ストレーナ12は、多数の吸込孔121を有している。ポンプ部11は、吸込孔121を通じて水を吸い込む。
【0036】
図2に示すように、モータ部2はモータ21と、モータ21を収容するモータケーシング22と、モータケーシング22を囲む外ケーシング23と、を備えている。モータケーシング22と外ケーシング23との間には、環状の流路24が形成されている。環状の流路24は、モータケーシング22の周囲を周回する。ポンプ部11が吐出した水は、環状の流路24を流れる。
【0037】
外ケーシング23は、円筒形状の本体部231と、本体部231の上端開口を閉塞する上壁232とを備えている。上壁231には、環状の流路24に連通する排出口25が形成されており、当該排出口25には、ホースカップリング26が設けられている。ホースカップリング26には、ホースが接続される。流路24を通った水は、排出口25及びホースを通ってポンプ1の外へ排出される。
【0038】
外ケーシング5の上壁232の略中央位置には携行用のハンドル3が取り付けられている。ハンドル3は、使用者が掴むグリップ部31と、二つの脚部32とを有している。二つの脚部23は、水平方向に伸びるグリップ部31の両端それぞれから下方に伸びる。二つの脚部32それぞれの下端は外ケーシング23の上壁232に固定されている。より詳細に、脚部32は、ボルト33によって外ケーシング23に固定されている。ボルト33は、
図2の上図に拡大して示すように、モータケーシング22の上端部に設けられたボルト締結部221に螺合している。尚、ボルト33は、ハンドル3を外ケーシング23に固定するためのボルトであると共に、外ケーシング23をモータケーシング22に固定するためのボルトでもある。
【0039】
外ケーシング23の上壁232には、
図2の上図に示すように、ボルト33が貫通する第1貫通孔28が形成されている。第1貫通孔28は、上壁232に二つ形成されている。
【0040】
外ケーシング23の上壁232における、ハンドル3を挟んだ排出口25とは逆側には、ケーブルブーツ41が配設されている。ケーブルブーツ41には、モータ21に給電する給電ケーブル42が挿通される。ケーブルブーツ41は、モータケーシング22の上端部に一体形成されたボス部27に対して、水密状態で取り付けられている。
【0041】
外ケーシング23の上壁232には、
図2の上図に示すように、ボス部27が貫通する第2貫通孔29が形成されている。このポンプ1は、第2貫通孔29を一つ有している。
【0042】
(パッキンの構成)
図2の上図に拡大して示すように、外ケーシング23の上壁232の下面と、モータケーシング22の上面とは、上下に重なっている。上壁232の下面と、モータケーシング22の上面との間には、パッキン5が介設している。パッキン5は、例えば合成ゴム製である。パッキン5は、環状の流路24を流れる水が、外ケーシング23に形成された第1貫通孔28及び第2貫通孔29から漏れることを防止する。
【0043】
図3は、パッキン5を例示している。
図4は、従来のパッキン50を例示している。
図3のパッキン5は、従来のパッキン50を改良したパッキンである。
図3及び
図4のそれぞれにおいて、(a)はパッキンの裏面図、(b)はA1-A1断面図又はA2-A2断面図である。また、
図3(c)は、B-B断面の拡大図である。
【0044】
先ず、
図4に示す従来のパッキン50は、二つの第1シール部51と、一つの第2シール部52と、連結部53とを有している。
【0045】
第1シール部51は、前述したハンドル3を固定するためのボルト33が貫通する第1貫通孔28を止水する。二つの第1シール部51は、二つの第1貫通孔28の間隔に対応する間隔を空けて位置している。第1シール部51には、ボルト33が貫通するボルト孔511が形成されている。第1シール部51は、ボルト孔511の周囲を囲むように設けられている。第1シール部51は、後述する連結部53よりも厚肉である。
【0046】
第2シール部52は、前述したケーブルブーツ41が取り付けられるボス部27が貫通する第2貫通孔29を止水する。第2シール部52は、第1シール部51から離れた位置に設けられている。第2シール部52には、ボス孔521が形成されている。ボス孔521は略ひし形形状を有し、ボス孔521にはボス部27が貫通する。第2シール部52は、ボス孔521の周囲を囲むように設けられている。第2シール部52も、第1シール部51と同様に、連結部53よりも厚肉に設けられている。第2シール部52の肉厚と、ボルトシール部52の肉厚とは、同じ、又は、略同じである。
【0047】
連結部53は、第1シール部51と第2シール部52とを連結する。連結部53は、第1シール部51及び第2シール部52よりも薄肉である。第1シール部51、第2シール部52及び連結部53を有するパッキン50は、略半円形状を有している。この略半円形状は、モータケーシング22の上端面の形状に対応している。略半円形状のパッキン50において、二つの第1シール部51は、直径に相当する縁の左右の両側に位置し、第2シール部52は、円弧に相当する縁の中央からずれた位置に位置している。二つの第1シール部51及び第2シール部52は共に、連結部53の外周部に位置している。
【0048】
尚、
図4に示す従来のパッキン50では、二つの第1シール部51の間には、相対的に厚肉の部位が左右に伸びるように設けられている。
【0049】
第1シール部51と第2シール部52とを有するパッキン50は、一部材として構成されている。一つのパッキン50が、複数のシール部51、52を有していることにより、ポンプ1の部品点数が減る。ポンプ1の製造時の組み付け作業が容易になる。
【0050】
ところが、本願発明者らの検討によると、従来のパッキン50を用いたポンプ1は、その使用中に、第2貫通孔29の箇所から水が漏れる場合があることが、新たにわかった。
【0051】
水漏れの原因について本願発明者らが鋭意検討した結果、ポンプ1の組立時に、水漏れを招く原因があることがわかった。つまり、ポンプ1の製造時や分解整備作業後においてハンドル3を取り付けるボルト33が締め付けられる際に、そのボルト33に第1シール部51の一部が巻き付いたり、ボルト33の孔に第1シール部51が引き込まれたりすると、連結部53を通じて第2シール部52が引っ張られてしまう。その結果、第2シール部52が変形してしまって、第2シール部52の止水性能が低下し、第2貫通孔29の箇所から水が漏れてしまうのである。製造時の組み付け作業を考慮してパッキン50を一部材にすることが、止水性能の低下を招いている。
【0052】
この従来のパッキン50に対し、改良されたパッキン5は、第1シール部51の変形が、第2シール部52に伝わることを抑制する抑制部を備えている。より詳細に、
図3のパッキン5は、抑制部としての剛性部6を有している。剛性部6は、二つの第1シール部51それぞれの周囲に設けられている。剛性部6は、
図3の(c)に拡大して示すように、連結部53よりも分厚く形成されている。また、剛性部6は、第1シール部51よりも薄く形成されている。これにより、剛性部6は、外力が作用した際に、連結部53よりも変形がしにくくなっている。
【0053】
剛性部6はまた、ボルト孔511の中心に対して点対称な形状を有している。具体的に
図3の構成例において、剛性部6は、平面視で、略正方形状を有している。
図4の二点鎖線は、従来のパッキン50に対して剛性部6の外形形状を重ね合わせて示している。剛性部6の外側の縁は、従来のパッキン50における最も外側の縁の外方まで拡がっていない。剛性部6は、モータケーシング22の上端面に範囲内に収まっている。また、
図3の二点鎖線は、ハンドル3の脚部32の下面であって、外ケーシング23に接触する接触面の大きさを示している。接触面は、略楕円形状を有している。剛性部6は、脚部32の接触面の大きさを超えない大きさに構成されている。
【0054】
剛性部6は、相対的に分厚いため、ボルト33の締結によって第1シール部51が変形しようとしても、その周囲の剛性部6までも変形することが抑制される。また、剛性部6は、第1シール部51の周囲に設けられているため、ボルト33が締め付けられる際の第1シール部51の変形自体も抑制できる。特に、剛性部6が、ボルト孔511の中心に対して点対称な形状であるため、変形に対する剛性部6の耐力が、第1シール部51に均等に作用する。その結果、第1シール部51及び剛性部6の変形が効果的に抑制できる。
【0055】
また、ハンドル3がボルト33によって固定されると、ハンドル3の脚部32が、外ケーシング23を介して第1シール部51及び剛性部6を、モータケーシング22へと押し付ける。剛性部6が、脚部32の接触面の大きさ以下の大きさであるため、剛性部6の全体が、脚部32によって押さえられる。その結果、ボルト33の締め付け時に、剛性部6の変形が抑制される。それと共に、ポンプ1の使用時には、剛性部6の全体及び第1シール部51が、脚部32によって押さえられるため、第1貫通孔28の止水が十分に行われる。
【0056】
こうして、第1シール部51及び剛性部6の変形が抑制される結果、ハンドル3取付後のポンプ1において、第2シール部52が引っ張られた状態になることが抑制される。第2シール部52の変形が抑制されるから、第2シール部52は、第2貫通孔29を止水することができる。改良されたパッキン5は、止水性能の低下が抑制できる。
【0057】
(第1変形例)
図5は、抑制部の変形例を示している。このパッキン500は、抑制部としての切り込み54を備えている。切り込み54は、第1シール部51と第2シール部52との間における、連結部53に形成されている。パッキン500には、二つの切り込み54が形成されており、これらの切り込み54はそれぞれ、略半円形状のパッキン500における円弧の箇所から、連結部53の内方に向かって延びている。二つの切り込み54は、二つの第1シール部51それぞれの近傍に設けられており、二つの切り込み54は、向かい合うように設けられている。
【0058】
切り込み54はそれぞれ、第1シール部51と第2シール部52との間を不連続にしている。このため、ボルト33の締結時に第1シール部51に変形が生じて、その変形が連結部53を通じて第2シール部52へ伝わろうとしても、変形の伝達が抑制される。その結果、第2シール部52は変形しない、又は、ほとんど変形しないから、第2シール部52は、第2貫通孔29を止水することができる。
【0059】
ここで、第1シール部51及び第2シール部52は共に、パッキン500の外周部に位置している。従来のパッキン50において、ボルト33の締結時に第1シール部51が変形すると、その変形は、連結部53の外周部の付近を伝わって第2シール部52を変形させる。
【0060】
これに対し、改良したパッキン500において、切り込み54は、連結部53の外周縁から内方に向かって延びていることにより、切り込み54は、第1シール部51から第2シール部52への変形の伝達を、効果的に抑制できる。
【0061】
(第2変形例)
図6は、抑制部の変形例を示している。このパッキン5000は、抑制部としての切り欠き55を備えている。切り欠き55は、第1シール部51と第2シール部52との間における、連結部53に形成されている。パッキン5000には、二つの切り欠き55が形成されており、これらの切り欠き55はそれぞれ、略半円形状のパッキン500における円弧の箇所から、内方に向かって延びかつ、連結部53の外周縁に開口している。二つの切り欠き55は、二つの第1シール部51それぞれの近傍に設けられている。二つの切り欠55は、向かい合うように設けられている。
【0062】
切り欠き55はそれぞれ、第1シール部51と第2シール部52との間を不連続にしている。ボルト33の締結時に第1シール部51に変形が生じて、その変形が連結部53を通じて第2シール部52へ伝わろうとしても、変形の伝達が抑制される。その結果、第2シール部52は変形しない、又は、ほとんど変形しないから、第2シール部52は、第2貫通孔29を止水することができる。
【0063】
また、改良したパッキン5000において、切り欠き55は、連結部53の外周縁に開口しかつ、その外周縁から内方に向かって延びている。このことにより、切り欠き55は、それぞれパッキン500の外周部に位置している第1シール部51から第2シール部52への変形の伝達を、効果的に抑制できる。
【0064】
(他の実施形態)
尚、一つのパッキンにおいて、前述した複数種類の抑制部が、適宜組み合わされて設けられてもよい。
【0065】
また、第2シール部は、一つのパッキンに一つのみとは限らない。一つのパッキンに、複数の第2シール部が設けられてもよい。
【0066】
また、第2貫通孔は、給電ケーブル及びケーブルブーツのボス部が挿通される孔に限定されない。
【符号の説明】
【0067】
1 ポンプ
2 パッキン
21 モータ
22 モータケーシング
23 外ケーシング
28 第1貫通孔
29 第2貫通孔
3 ハンドル
31 グリップ部
32 脚部
33 ボルト
51 第1シール部
511 ボルト孔
52 第2シール部
53 連結部
54 切り込み(抑制部)
55 切り欠き(抑制部)
6 剛性部(抑制部)