(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】樹脂成形体
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20240927BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240927BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240927BHJP
A01C 21/00 20060101ALI20240927BHJP
C05G 5/16 20200101ALI20240927BHJP
【FI】
C08J5/18 CER
C08J5/18 CEZ
B32B27/18 Z
B32B27/00 B
A01C21/00 Z
C05G5/16
(21)【出願番号】P 2021186975
(22)【出願日】2021-11-17
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150072
【氏名又は名称】藤原 賢司
(74)【代理人】
【識別番号】100170748
【氏名又は名称】稲垣 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100185719
【氏名又は名称】北原 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】大石 倫仁
(72)【発明者】
【氏名】石田 篤志
(72)【発明者】
【氏名】土肥 駿介
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-523581(JP,A)
【文献】特開2021-066630(JP,A)
【文献】特開2011-140507(JP,A)
【文献】特開2005-000035(JP,A)
【文献】特開2006-104190(JP,A)
【文献】国際公開第2012/137610(WO,A1)
【文献】特表2008-526732(JP,A)
【文献】国際公開第2015/125684(WO,A1)
【文献】特表2007-502823(JP,A)
【文献】特開2010-089005(JP,A)
【文献】特開平02-249554(JP,A)
【文献】特開2017-149695(JP,A)
【文献】特開2003-104788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J5/00-5/02、5/12-5/22
B32B1/00-43/00
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
A01C1/00-3/08、7/00-9/08
A01C15/00-23/04
A01M1/00-A01P23/00
A61K9/00-9/72、47/00-47/69
C05B1/00-C05G5/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性樹脂を主成分とする樹脂成形体であって、
前記樹脂成形体は、フィルム又はシートであり、
前記樹脂成形体には、少なくとも1種類以上の担持体が含有されており、
前記少なくとも1種類以上の担持体は、活性炭を含み、
前記
活性炭は、少なくとも1種類以上の有効成分を吸着しており、
前記少なくとも1種類以上の有効成分は、化学肥料成分を含み、
前記
水溶性樹脂の分解に起因して前記
活性炭が前記樹脂成形体の外部に露出するのに応じて、前記
化学肥料成分が前記樹脂成形体の外部に放出される、樹脂成形体。
【請求項2】
前記
水溶性樹脂は
、多糖類、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド
及びカルボキシメチルセルロー
スから選択される少なくとも1種類の樹脂である、請求項1に記載の樹脂成形体。
【請求項3】
少なくとも、第1層と、前記第1層に積層された第2層とを含み、
前記第1層に含有されている前記担持体の種類と、前記第2層に含有されている前記担持体の種類とは異なる、請求項1又は請求項2に記載の樹脂成形体。
【請求項4】
前記第1層において前記担持体に吸着されている前記有効成分と、前記第2層において前記担持体に吸着されている前記有効成分とは異なる、請求項
3に記載の樹脂成形体。
【請求項5】
少なくとも、第1層と、前記第1層に積層された第2層とを含み、
前記第1層には、前記有効成分が含有されていない、請求項1又は請求項2に記載の樹脂成形体。
【請求項6】
前記第1層における前記
水溶性樹脂の溶解速度は、前記第2層における前記
水溶性樹脂の溶解速度と異なる、請求項
5に記載の樹脂成形体。
【請求項7】
少なくとも一方の面に保護フィルムが貼られた、請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
【請求項8】
アルミ防湿袋に収容された、請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
特表2019-515987号公報(特許文献1)は、水溶性フィルムを開示する。この水溶性フィルムは、少なくとも2つの異なるポリビニルアルコールポリマーのブレンドを含んでいる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
使用開始からある程度の期間を経た後に有効成分の放出を開始するフィルム又はシート(徐放性能を有するフィルム又はシート)が有効な場合がある。上記特許文献1には、このようなフィルム又はシートが開示されていない。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、その目的は、使用開始からある程度の期間を経た後に有効成分を樹脂成形体の外部に放出することが可能な樹脂成形体(フィルム又はシート)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従う樹脂成形体は、所定の要因によって分解される分解性樹脂を主成分とする。樹脂成形体は、フィルム又はシートである。樹脂成形体には、少なくとも1種類以上の担持体が含有されている。担持体は、少なくとも1種類以上の有効成分を吸着している。分解性樹脂の分解に起因して担持体が樹脂成形体の外部に露出するのに応じて、有効成分が樹脂成形体の外部に放出される。
【0007】
この樹脂成形体においては、担持体が樹脂成形体の外部に露出するまでは有効成分が樹脂成形体内に留まり、担持体が樹脂成形体の外部に露出するのに応じて有効成分が樹脂成形体の外部に放出される。したがって、この樹脂成形体によれば、樹脂成形体の使用が開始されてから、ある程度の期間を経るまでは有効成分を樹脂成形体内に留まらせることができ、ある程度の期間を経た後に有効成分を樹脂成形体の外部に放出することができる。
【0008】
上記樹脂成形体において、分解性樹脂は、微生物産生ポリエステル、ポリアミノ酸、多糖類、脂肪族ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、レゾール型フェノール樹脂、メチロール化ユリア樹脂、メチロール化メラミン樹脂及びポリエチレンオキシドから選択される少なくとも1種類の樹脂であってもよい。
【0009】
上記樹脂成形体は、少なくとも、第1層と、第1層に積層された第2層とを含み、第1層及び第2層の各々において、分解性樹脂は生分解性樹脂であり、第1層における分解性樹脂の生分解度と、第2層における分解性樹脂の生分解度とは異なっていてもよい。
【0010】
この樹脂成形体によれば、第1層における分解性樹脂の生分解度と第2層における分解性樹脂の生分解度とを異ならせることによって、樹脂成形体の使用開始後における担持体の露出量の変化速度をコントロールすることができる。結果的に、この樹脂成形体においては、樹脂成形体の使用開始後における有効成分の放出速度の推移が所望のものとなる。なお、本発明における生分解度とは、本発明に記載した樹脂成型体をはじめとする化学物質が一定期間内に分解される割合を指す。生分解度の測定方法にはOECD 301A, OECD 301C, OECD 301D, OECD 301F, OECD 302C, ISO 14855, JIS K 6905, JIS K 6951, JIS K 3363等があり、適切な測定方法を適宜選択したうえで生分解度を評価することができる。
【0011】
上記樹脂成形体は、少なくとも、第1層と、第1層に積層された第2層とを含み、第1層において、分解性樹脂は生分解性樹脂であり、第2層において、分解性樹脂は水溶性樹脂であってもよい。
【0012】
この樹脂成形体によれば、第1層における分解性樹脂の種類と第2層における分解性樹脂の種類とを異ならせることによって、樹脂成形体の使用開始後における担持体の露出量の変化速度をコントロールすることができる。結果的に、この樹脂成形体においては、樹脂成形体の使用開始後における有効成分の放出速度の推移が所望のものとなる。
【0013】
上記樹脂成形体は、少なくとも、第1層と、第1層に積層された第2層とを含み、第1層に含有されている担持体の種類と、第2層に含有されている担持体の種類とは異なっていてもよい。
【0014】
この樹脂成形体においては、第1層に含有される担持体の種類と第2層に含有される担持体の種類とが異なるため、樹脂成形体の使用開始後における有効成分の放出速度の推移が所望のものとなる。
【0015】
上記樹脂成形体において、第1層において担持体に吸着されている有効成分と、第2層において担持体に吸着されている有効成分とは異なっていてもよい。
【0016】
この樹脂成形体によれば、第1層に含有されている有効成分と第2層に含有されている有効成分とが異なるため、複数種類の有効成分を樹脂成形体の外部に放出することができる。
【0017】
上記樹脂成形体は、少なくとも、第1層と、第1層に積層された第2層とを含み、第1層において、分解性樹脂は水溶性樹脂であり、第1層には、有効成分が含有されていなくてもよい。
【0018】
この樹脂成形体においては、有効成分が含有されていない水溶性樹脂で第1層が形成されているため、樹脂成形体の使用開始後における有効成分の放出開始タイミングが所望のものとなる。
【0019】
上記樹脂成形体において、第2層の分解性樹脂は水溶性樹脂であり、第1層の分解性樹脂の溶解速度は、第2層の分解性樹脂の溶解速度と異なっていてもよい。
【0020】
この樹脂成形体においては、第1層の水溶性樹脂として第2層の水溶性樹脂と溶解速度が異なる樹脂が用いられているため、樹脂成形体の使用開始後における有効成分の放出開始タイミング及び放出速度の推移が所望のものとなる。なお、本発明における溶解速度の測定方法・測定環境については適宜選択可能であるとする。
【0021】
上記樹脂成形体においては、少なくとも一方の面に保護フィルムが貼られていてもよい。
【0022】
この樹脂成形体によれば、少なくとも一方の面に保護フィルムが貼られており、樹脂成形体の保管時に湿気等に起因して分解性樹脂の分解が進行しにくいため、樹脂成形体の劣化を抑制することができる。また、この樹脂成形体によれば、少なくとも一方の面に保護フィルムが貼られているため、樹脂成形体が巻き取られて保管される場合に、ブロッキングの発生を抑制することができる。
【0023】
上記樹脂成形体は、アルミ防湿袋に収容されていてもよい。
【0024】
この樹脂成形体によれば、アルミ防湿袋に樹脂成形体が収容され、樹脂成形体の保管時に湿気等に起因して分解性樹脂の分解が進行しにくいため、樹脂成形体の劣化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、使用開始からある程度の期間を経た後に有効成分を樹脂成形体の外部に放出することが可能な樹脂成形体(フィルム又はシート)を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施の形態1に従うフィルムの断面を模式的に示す図である。
【
図2】フィルムの使用開始から一定期間が経過した時点におけるフィルムの状態を模式的に示す図である。
【
図3】実施の形態2に従うフィルムの断面を模式的に示す図である。
【
図4】実施の形態3に従うフィルムの断面を模式的に示す図である。
【
図5】実施の形態4に従うフィルムの断面を模式的に示す図である。
【
図6】実施の形態5に従うフィルムの断面を模式的に示す図である。
【
図7】実施の形態6に従うフィルムの断面を模式的に示す図である。
【
図8】実施の形態7に従うフィルムの断面を模式的に示す図である。
【
図9】一方の面に保護フィルムが貼られたフィルムの断面の一例を模式的に示す図である。
【
図10】パウチに収容されたフィルムを模式的に示す図である。
【
図11】外周辺部に汎用樹脂層が形成されたフィルムの断面を模式的に示す図である。
【
図12】平面視における各樹脂層の面積が異なる第1のパターンであるフィルムの断面を模式的に示す図である。
【
図13】平面視における各樹脂層の面積が互いに異なる第2のパターンであるフィルムの断面を模式的に示す図である。
【
図14】表面に複数の細孔が形成されたフィルムの断面を模式的に示す図である。
【
図16】カリウムイオンの溶出率の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施の形態」とも称する。)について、図面を用いて詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、各図面は、理解の容易のために、適宜対象を省略又は誇張して模式的に描かれている。
【0028】
[1.実施の形態1]
<1-1.フィルムの構成>
図1は、本実施の形態1に従うフィルム10の断面を模式的に示す図である。フィルム10は、例えば、地中に埋められることによって使用される。フィルム10は、フィルム10の使用開始からある程度の期間を経た後に有効成分をフィルム10の外部に放出するように構成されている。すなわち、フィルム10は、徐放性能を有する。例えば、フィルム10の厚みは、250μm未満である。
【0029】
図1に示されるように、フィルム10は、樹脂層100を含んでいる。樹脂層100は、例えば、所定の要因によって分解される分解性樹脂を主成分とする。分解性樹脂としては、例えば、生分解性樹脂及び水溶性樹脂が挙げられる。生分解性樹脂とは、自然界における微生物の関与によって、環境に悪影響を与えない低分子化合物に分解される樹脂のことをいう。生分解性樹脂としては、例えば、微生物産生ポリエステル、ポリアミノ酸、多糖類、脂肪族ポリエステル及びポリビニルアルコールが挙げられる。水溶性樹脂とは、水に可溶な樹脂のことをいう。水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド及びカルボキシメチルセルロースが挙げられる。なお、分解性樹脂は、例えば、熱酸化分解する樹脂であってもよいし、紫外線分解する樹脂であってもよいし、放射線分解する樹脂であってもよいし、酸化分解する樹脂であってもよい。分解性樹脂としては、他にも、例えば、レゾール型フェノール樹脂、メチロール化ユリア樹脂、メチロール化メラミン樹脂及びポリエチレンオキシドが挙げられる。
【0030】
フィルム10において、樹脂層100には、少なくとも1種類以上の担持体110が含有されている。担持体110としては、例えば、吸着性多孔質体が用いられる。吸着性多孔質体としては、例えば、活性炭、アルミナ、チューブ状含水ケイ酸アルミニウム(例えば、ハロイサイト、モンモリロナイト又はカオリナイト)、シリカゲル、ゼオライト、層状複水酸化物(Layered Double Hydroxide:LDH)、非晶質アルミニウムケイ酸塩及びシクロデキストリン等が挙げられる。担持体110は、少なくとも1種類以上の有効成分を吸着している。有効成分としては、フィルム10の用途に応じた種々の成分を用いることができる。有効成分としては、例えば、芳香成分、化学肥料成分、抗菌・抗ウィルス成分、保湿成分、褐変防止成分、忌避成分、殺虫・防虫成分、植物成長促進成分、土壌改良成分、酵素、微生物菌、酸化防止剤、難燃剤、可塑剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0031】
図2は、フィルム10の使用開始から一定期間が経過した時点におけるフィルム10の状態を模式的に示す図である。
図2を参照して、例えば、フィルム10の使用開始から時間が経過するのに応じて、樹脂層100の分解が進行する。樹脂層100が生分解性樹脂で構成されている場合には、例えば、フィルム10が地中に埋められてから時間が経過するのに応じて、樹脂層100が分解される。樹脂層100の「分解」という概念には、例えば、樹脂層100の「崩壊」及び「溶解」が含まれる。
【0032】
樹脂層100の分解が進行すると、樹脂層100内に包埋されていた担持体110が樹脂層100の外部(フィルム10の外部)に露出する。例えば、樹脂層100の崩壊部C1を介して、担持体110が樹脂層100の外部に露出する場合もある。担持体110が樹脂層100の外部に露出するのに応じて、担持体110によって吸着されている有効成分がフィルム10の外部に放出される。
【0033】
<1-2.特徴>
以上のように、本実施の形態1に従うフィルム10においては、担持体110がフィルム10の外部に露出するまでは有効成分がフィルム10内に留まり、担持体110がフィルム10の外部に露出するのに応じて有効成分がフィルム10の外部に放出される。したがって、フィルム10によれば、フィルム10の使用が開始されてから、ある程度の期間を経るまでは有効成分をフィルム10内に留まらせることができ、ある程度の期間を経た後に有効成分をフィルム10の外部に放出することができる。すなわち、フィルム10は、徐放性能を有している。
【0034】
なお、フィルム10は、例えば、押出成形(Tダイ法)によって製造される。具体的には、まず、有効成分を吸着する担持体110が作られ、押出成形機を用いることによって、担持体110と分解性樹脂とを用いた製膜が行なわれる。例えば、これにより、フィルム10が製造される。
【0035】
本実施の形態1において、フィルム10は、単層フィルムであった。一方、以下で説明する実施の形態2-7の各々におけるフィルムは複数の層を含む。以下では、本実施の形態1と異なる点を中心に説明し、本実施の形態1と共通する部分については説明を繰り返さない。
【0036】
[2.実施の形態2]
<2-1.フィルムの構成>
図3は、本実施の形態2に従うフィルム10Aの断面を模式的に示す図である。
図3に示されるように、フィルム10Aは、樹脂層100A1,100A2を含んでいる。樹脂層100A1は、生分解性樹脂を主成分とする。樹脂層100A2は、樹脂層100A1とは異なる種類の生分解性樹脂を主成分とする。すなわち、樹脂層100A1における生分解性樹脂の生分解度と、樹脂層100A2における生分解性樹脂の生分解度とは異なる。
【0037】
生分解度とは、本実施の形態2に従うフィルム10Aをはじめとする化学物質が一定期間内に分解される割合を指す。生分解度の測定方法にはOECD 301A, OECD 301C, OECD 301D, OECD 301F, OECD 302C, ISO 14855, JIS K 6905, JIS K 6951, JIS K 3363等があり、適切な測定方法を適宜選択したうえで生分解度を評価することができる。
【0038】
樹脂層100A1,100A2の各々には、担持体110が含有されている。樹脂層100A1,100A2に含有されている担持体110は、同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。担持体110には、有効成分が吸着している。
【0039】
例えば、生分解性樹脂が微生物に接する状態に置かれた後において、生分解度が高い生分解性樹脂は、生分解度が低い生分解性樹脂よりも速く分解される。すなわち、生分解度が高い生分解性樹脂内に包埋された担持体110は、生分解度が低い生分解性樹脂内に包埋された担持体110よりも早くに生分解性樹脂の外部に露出する。したがって、担持体110を包埋する生分解性樹脂の種類を適切に選択することによって、担持体110が生分解性樹脂の外部に露出するタイミングを調整することができる。
【0040】
なお、フィルム10Aは、2層で構成されているが、3層以上で構成されてもよい。例えば、フィルム10Aにおいて、樹脂層100A1のうち樹脂層100A2が積層されていない面にも別の樹脂層100A2が積層されていてもよい。また、フィルム10Aにおいて、樹脂層100A2のうち樹脂層100A1が積層されていない面にも別の樹脂層100A1が積層されていてもよい。
【0041】
<2-2.特徴>
以上のように、本実施の形態2に従うフィルム10Aによれば、樹脂層100A1における生分解性樹脂の生分解度と樹脂層100A2における生分解性樹脂の生分解度とを異ならせることによって、フィルム10Aの使用開始後における担持体110の露出量の変化速度をコントロールすることができる。結果的に、フィルム10Aにおいては、フィルム10Aの使用開始後における有効成分の放出速度の推移が所望のものとなる。
【0042】
なお、フィルム10Aは、例えば、共押出法、ラミネート加工、コーティング、印刷又は3Dプリンタによって製造することができる。
【0043】
[3.実施の形態3]
<3-1.フィルムの構成>
図4は、本実施の形態3に従うフィルム10Bの断面を模式的に示す図である。
図4に示されるように、フィルム10Bは、樹脂層100B1,100B2を含んでいる。樹脂層100B1は、生分解性樹脂を主成分とする。樹脂層100B2は、水溶性樹脂を主成分とする。すなわち、樹脂層100B1において分解性樹脂(生分解性樹脂)が分解する条件と、樹脂層100B2において分解性樹脂(水溶性樹脂)が分解する条件とは異なる。
【0044】
樹脂層100B1,100B2の各々には、担持体110が含有されている。樹脂層100B1,100B2に含有されている担持体110は、同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。担持体110には、有効成分が吸着している。
【0045】
樹脂層100B1は、樹脂層100B1に関与する微生物の状態に応じて分解速度が変わる。一方、樹脂層100B2は、樹脂層100B2に供給される水分量に応じて分解速度が変わる。また、一般的に水溶性樹脂の方が生分解性樹脂よりも分解速度が速い。したがって、フィルム10Bが使用される環境に合うように担持体110を包埋する分解性樹脂の種類を適切に選択することによって、担持体110がフィルム10Bの外部に露出するタイミングを調整することができる。
【0046】
なお、フィルム10Bは、2層で構成されているが、3層以上で構成されてもよい。例えば、フィルム10Bにおいて、樹脂層100B1のうち樹脂層100B2が積層されていない面にも別の樹脂層100B2が積層されていてもよい。また、フィルム10Bにおいて、樹脂層100B2のうち樹脂層100B1が積層されていない面にも別の樹脂層100B1が積層されていてもよい。
【0047】
<3-2.特徴>
以上のように、本実施の形態3に従うフィルム10Bによれば、樹脂層100B1における分解性樹脂の種類(生分解性樹脂)と樹脂層100B2における分解性樹脂の種類(水溶性樹脂)とを異ならせることによって、フィルム10Bの使用開始後における担持体110の露出量の変化速度をコントロールすることができる。結果的に、フィルム10Bにおいては、フィルム10Bの使用開始後における有効成分の放出速度の推移が所望のものとなる。
【0048】
なお、フィルム10Bは、例えば、共押出法、ラミネート加工、コーティング、印刷又は3Dプリンタによって製造することができる。
【0049】
[4.実施の形態4]
<4-1.フィルムの構成>
図5は、本実施の形態4に従うフィルム10Cの断面を模式的に示す図である。
図5に示されるように、フィルム10Cは、樹脂層100C1,100C2を含んでいる。樹脂層100C1,100C2は、例えば、互いに同じ種類の生分解性樹脂を主成分とする。なお、樹脂層100C1,100C2は、例えば、互いに異なる種類の生分解性樹脂を主成分としてもよい。また、樹脂層100C1,100C2は、例えば、互いに同じ種類の水溶性樹脂を主成分としてもよいし、互いに異なる種類の水溶性樹脂を主成分としてもよい。また、樹脂層100C1,100C2の一方が生分解性樹脂を主成分とし、樹脂層100C1,100C2の他方が水溶性樹脂を主成分としてもよい。
【0050】
樹脂層100C1には担持体110C1が含有されており、樹脂層100C2には担持体110C2が含有されている。担持体110C1,110C2は、互いに異なる種類の担持体である。担持体110C1,110C2の各々には、有効成分が吸着している。
【0051】
例えば、担持体の種類によって、担持体がフィルム10Cの外部に露出してから有効成分がフィルム10Cの外部に放出されるまでの時間に違いが生じる。例えば、担持体110C1に吸着されている有効成分は、担持体110C2に吸着されている有効成分よりもフィルム10Cの外部に放出されやすいという事態が生じ得る。すなわち、樹脂層100C1に含有される担持体(担持体110C1)の種類と樹脂層100C1に含有される担持体(担持体110C2)の種類とを異ならせることによって、フィルム10Cの使用開始後における有効成分の放出速度をコントロールすることができる。
【0052】
なお、フィルム10Cは、2層で構成されているが、3層以上で構成されてもよい。例えば、フィルム10Cにおいて、樹脂層100C1のうち樹脂層100C2が積層されていない面にも別の樹脂層100C2が積層されていてもよい。また、フィルム10Cにおいて、樹脂層100C2のうち樹脂層100C1が積層されていない面にも別の樹脂層100C1が積層されていてもよい。
【0053】
<4-2.特徴>
以上のように、本実施の形態4に従うフィルム10Cにおいては、樹脂層100C1に含有される担持体(担持体110C1)の種類と樹脂層100C1に含有される担持体(担持体110C2)の種類とが異なるため、フィルム10Cの使用開始後における有効成分の放出速度の推移が所望のものとなる。
【0054】
なお、フィルム10Cは、例えば、共押出法、ラミネート加工、コーティング、印刷又は3Dプリンタによって製造することができる。
【0055】
[5.実施の形態5]
<5-1.フィルムの構成>
図6は、本実施の形態5に従うフィルム10Dの断面を模式的に示す図である。
図6に示されるように、フィルム10Dは、樹脂層100D1,100D2を含んでいる。樹脂層100D1,100D2は、例えば、互いに同じ種類の生分解性樹脂を主成分とする。なお、樹脂層100D1,100D2は、例えば、互いに異なる種類の生分解性樹脂を主成分としてもよい。また、樹脂層100D1,100D2は、例えば、互いに同じ種類の水溶性樹脂を主成分としてもよいし、互いに異なる種類の水溶性樹脂を主成分としてもよい。また、樹脂層100D1,100D2の一方が生分解性樹脂を主成分とし、樹脂層100D1,100D2の他方が水溶性樹脂を主成分としてもよい。
【0056】
樹脂層100D1には担持体110D1が含有されており、樹脂層100D2には担持体110D2が含有されている。担持体110D1,110D2は、互いに同じ種類の担持体である。なお、担持体110D1,110D2は、互いに異なる種類の担持体であってもよい。
【0057】
担持体110D1に吸着している有効成分と、担持体110D2に吸着している有効成分とは互いに異なる。したがって、フィルム10Dにおいては、樹脂層100D2が分解するのに応じてフィルム10Dの外部に放出される有効成分の種類と、樹脂層100D1が分解するのに応じてフィルム10Dの外部に放出される有効成分の種類とが異なる。
【0058】
なお、フィルム10Dは、2層で構成されているが、3層以上で構成されてもよい。例えば、フィルム10Dにおいて、樹脂層100D1のうち樹脂層100D2が積層されていない面にも別の樹脂層100D2が積層されていてもよい。また、フィルム10Dにおいて、樹脂層100D2のうち樹脂層100D1が積層されていない面にも別の樹脂層100D1が積層されていてもよい。
【0059】
<5-2.特徴>
以上のように、フィルム10Dによれば、樹脂層100D1に含有されている有効成分と樹脂層100D2に含有されている有効成分とが異なるため、複数種類の有効成分をフィルム10Dの外部に放出することができる。
【0060】
なお、フィルム10Dは、例えば、共押出法、ラミネート加工、コーティング、印刷又は3Dプリンタによって製造することができる。
【0061】
[6.実施の形態6]
<6-1.フィルムの構成>
図7は、本実施の形態6に従うフィルム10Eの断面を模式的に示す図である。
図7に示されるように、フィルム10Eは、樹脂層100E1,100E2を含んでいる。樹脂層100E1は、水溶性樹脂を主成分とする。樹脂層100E2は、例えば、生分解性樹脂を主成分とする。なお、樹脂層100E2は、例えば、水溶性樹脂を主成分としてもよい。
【0062】
樹脂層100E2には、担持体110が含有されている。担持体110には、有効成分が吸着している。一方、樹脂層100E1には、担持体110が含有されていない。
【0063】
樹脂層100E1が樹脂層100E2よりも先に分解する要因(例えば、水分)に接する態様でフィルム10Eが使用されるとすると、樹脂層100E1が分解した後に樹脂層100E2が分解するまでは、有効成分がフィルム10Eの外部に放出されない。すなわち、フィルム10Eによれば、担持体110が含有されていない樹脂層100E1の厚みを調整することによって、フィルム10Eの使用開始後における有効成分の放出開始タイミングをコントロールすることができる。
【0064】
なお、フィルム10Eは、2層で構成されているが、3層以上で構成されてもよい。例えば、フィルム10Eにおいて、樹脂層100E2のうち樹脂層100E1が積層されていない面にも別の樹脂層100E1が積層されていてもよい。
【0065】
<6-2.特徴>
以上のように、フィルム10Eにおいては、有効成分が含有されていない水溶性樹脂で樹脂層100E1が形成されているため、フィルム10Eの使用開始後における有効成分の放出開始タイミングが所望のものとなる。
【0066】
なお、フィルム10Eは、例えば、共押出法、ラミネート加工、コーティング、印刷又は3Dプリンタによって製造することができる。
【0067】
[7.実施の形態7]
<7-1.フィルムの構成>
図8は、本実施の形態7に従うフィルム10Fの断面を模式的に示す図である。
図8に示されるように、フィルム10Fは、樹脂層100F1,100F2を含んでいる。樹脂層100F1,100F2は、水に対する溶解速度が互いに異なる水溶性樹脂を主成分とする。樹脂層100F1の水溶性は、樹脂層100F2の水溶性よりも低い。すなわち、樹脂層100F1は、樹脂層100F2よりも水に溶けにくい。なお、溶解速度の測定方法・測定環境については適宜選択可能であるとする。
【0068】
樹脂層100F2には、担持体110が含有されている。担持体110には、有効成分が吸着している。一方、樹脂層100F1には、担持体110が含有されていない。
【0069】
樹脂層100F1の水溶性が樹脂層100F2の水溶性よりも低いため、樹脂層100F1の分解に要する時間は樹脂層100F2の分解に要する時間よりも長い。すなわち、フィルム10Fによれば、樹脂層100F1,100F2の各々の水溶性を調整することによって、有効成分の放出開始タイミング及び放出速度を調整することができる。
【0070】
なお、フィルム10Fは、2層で構成されているが、3層以上で構成されてもよい。例えば、フィルム10Fにおいて、樹脂層100F2のうち樹脂層100F1が積層されていない面にも別の樹脂層100F1が積層されていてもよい。
【0071】
<7-2.特徴>
以上のように、フィルム10Fにおいては、樹脂層100F1の水溶性樹脂として樹脂層100F2の水溶性樹脂よりも水に溶けにくい樹脂が用いられているため、フィルム10Fの使用開始後における有効成分の放出開始タイミング及び放出速度の推移が所望のものとなる。
【0072】
なお、フィルム10Fは、例えば、共押出法、ラミネート加工、コーティング、印刷又は3Dプリンタによって製造することができる。
【0073】
[8.変形例]
上記実施の形態の思想は、以上で説明された実施の形態に限定されない。以下、上記実施の形態の思想を適用できる変形例の一例について説明する。
【0074】
<8-1>
上記実施の形態1-7の各々においては、いわゆるフィルムが開示された。しかしながら、上記実施の形態1-7の各々に開示されている技術は、いわゆるシートに適用されてもよい。「シート」とは、例えば、厚さ250μm以上のプラスチックの薄い板状のものをいう。すなわち、上記実施の形態1-7においてそれぞれ開示されているフィルム10,10A,10B,10C,10D,10E,10Fは「シート」であってもよい。
【0075】
<8-2>
上記実施の形態1-7の各々において、担持体を含有している樹脂層内においては、1種類の担持体のみが含有されていた。しかしながら、担持体を含有している各樹脂層内において、含有されている担持体の種類は必ずしも1種類である必要はない。例えば、担持体を含有している各樹脂層内において、含有されている担持体の種類は複数種類であってもよい。
【0076】
<8-3>
上記実施の形態1-7の各々において、フィルムの少なくとも一方の面には保護フィルムが貼られていてもよい。
【0077】
図9は、一方の面に保護フィルム115が貼られたフィルム10Gの断面の一例を模式的に示す図である。フィルム10Gにおいては、担持体110を含有する樹脂層100G(分解性樹脂)の一方の面に保護フィルム115が貼られている。フィルム10Gによれば、少なくとも一方の面に保護フィルム115が貼られており、フィルム10Gの保管時に湿気等に起因して樹脂層100G(分解性樹脂)の分解が進行しにくいため、フィルム10Gの劣化を抑制することができる。また、フィルム10Gによれば、少なくとも一方の面に保護フィルム115が貼られているため、フィルム10Gが巻き取られて保管される場合に、ブロッキングの発生を抑制することができる。
【0078】
<8-4>
上記実施の形態1-7の各々において、フィルムは、表面にアルミニウムの微粒子が蒸着されたパウチ(アルミ蒸着パウチ)に収容されてもよい。
【0079】
図10は、パウチ200に収容されたフィルム10を模式的に示す図である。
図10に示されるように、フィルム10は、パウチ200に収容されている。パウチ200の表面には、アルミニウムの微粒子が蒸着されている。すなわち、パウチ200は、アルミ防湿袋である。これにより、表面にアルミニウムの微粒子が蒸着されたパウチ200にフィルム10が収容され、フィルム10の保管時に湿気等に起因して分解性樹脂の分解が進行しにくいため、フィルム10の劣化を抑制することができる。
【0080】
<8-5>
上記実施の形態1-7の各々において、フィルムの外周辺部に汎用樹脂の層が形成されてもよい。汎用樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)及びポリ塩化ビニル(PVC)が挙げられる。
【0081】
図11は、外周辺部に汎用樹脂層120が形成されたフィルム10Hの断面を模式的に示す図である。
図11に示されるように、フィルム10Hは、樹脂層100H1,100H2を含んでいる。樹脂層100H1,100H2の各々は、分解性樹脂を主成分とする。樹脂層100H1,100H2の各々には、有効成分を吸着した担持体110が含有されている。樹脂層100H1,100H2の各外周辺を覆う位置には、汎用樹脂層120が形成されている。なお、外周辺の一部において、汎用樹脂層120が形成されていなくてもよい。樹脂層100H1,100H2の各々と汎用樹脂層120とは、密着している。これにより、フィルム10Hの外周辺部(エッジ部)において、樹脂層100H1,100H2の各々が自然分解することを抑制することができる。
【0082】
<8-6>
上記実施の形態2-7の各々において、平面視における各樹脂層の面積は必ずしも同一である必要はない。例えば、一方の樹脂層の面積が他方の樹脂層の面積よりも小さくてもよい。
【0083】
図12は、平面視における各樹脂層の面積が互いに異なる第1のパターンであるフィルム10Iの断面を模式的に示す図である。
図12に示されるように、フィルム10Iは、樹脂層100I1,100I2を含んでいる。樹脂層100I1,100I2の各々は、分解性樹脂を主成分とする。樹脂層100I1,100I2の各々には、有効成分を吸着した担持体110が含有されている。平面視における樹脂層100I2の面積は、平面視における樹脂層100I1の面積よりも小さい。その結果、樹脂層100I1と樹脂層100I2との境界部分には、段部130が形成されている。
【0084】
例えば、樹脂層100I1,100I2の分解要因が樹脂層100I2側からフィルム10Iに接しているとする。この場合に、仮に樹脂層100I1,100I2の平面視における面積が同一であると、樹脂層100I2の分解が完了するまで樹脂層100I1の分解が開始されない。すなわち、樹脂層100I2の分解が完了するまで、樹脂層100I1によって包埋されている有効成分が放出されない。しかしながら、フィルム10Iにおいては、樹脂層100I1と樹脂層100I2との境界部分に段部130が形成されている。したがって、樹脂層100I2の分解が完了していなくても、段部130において、樹脂層100I1の分解が進行する。その結果、樹脂層100I1に包埋されている有効成分を比較的早いタイミングで放出することができる。
【0085】
図13は、平面視における各樹脂層の面積が互いに異なる第2のパターンであるフィルム10Jの断面を模式的に示す図である。
図13に示されるように、フィルム10Jは、樹脂層100J1,100J2を含んでいる。樹脂層100J1,100J2の各々は、分解性樹脂を主成分とする。樹脂層100J1,100J2の各々には、有効成分を吸着した担持体110が含有されている。樹脂層100J2には、孔H1が形成されている。そのため、平面視における樹脂層100J2の面積は、平面視における樹脂層100J1の面積よりも小さい。このような構成であっても、樹脂層100J2の分解が完了する前に、孔H1において樹脂層100J1の分解が進行するため、樹脂層100J1に包埋されている有効成分を比較的早いタイミングで放出することができる。
【0086】
<8-7>
上記実施の形態1-7の各々において、フィルムの表面に細孔が形成されてもよい。フィルムの表面に細孔を形成することによって、分解性樹脂の露出面積が大きくなり、分解性樹脂の分解を促進させることができる。
【0087】
図14は、表面に複数の細孔S1が形成されたフィルム10Kの断面を模式的に示す図である。
図14に示されるように、フィルム10Kは、樹脂層100Kを含んでいる。樹脂層100Kは、分解性樹脂を主成分とする。樹脂層100Kには、有効成分を吸着した担持体110が含有されている。フィルム10Kの表面には、複数の細孔S1が形成されている。複数の細孔S1が形成されているため、樹脂層100Kの露出面積が大きくなり、樹脂層100Kの分解が促進される。
【0088】
<8-8>
上記実施の形態1-7の各々におけるフィルムは、基材フィルム上に形成されてもよい。基材フィルムは、分解性樹脂を主成分としない。したがって、実施の形態1-7の各々におけるフィルムが分解した後に、基材フィルムのみが残ることとなる。フィルムが基材フィルム上に形成されるため、分解途中におけるフィルム全体の強度低下を抑制することができる。また、分解性樹脂の分解が完了した場合に基材フィルムが残るため、残った基材フィルムを回収することによって分解性樹脂の分解が完了したことを確認することができる。
【0089】
以上、本発明の実施の形態について例示的に説明した。すなわち、例示的な説明のために、詳細な説明及び添付の図面が開示された。よって、詳細な説明及び添付の図面に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須でない構成要素が含まれることがある。したがって、それらの必須でない構成要素が詳細な説明及び添付の図面に記載されているからといって、それらの必須でない構成要素が必須であると直ちに認定されるべきではない。
【0090】
また、上記実施の形態は、あらゆる点において本発明の例示にすぎない。上記実施の形態は、本発明の範囲内において、種々の改良や変更が可能である。すなわち、本発明の実施にあたっては、実施の形態に応じて具体的構成を適宜採用することができる。
【0091】
[9.実施例等]
<9-1.実施例1>
以下の材料及び製造手順によって、実施例1における尿素吸着徐放フィルムを得た。
【0092】
(9-1-1.材料)
水溶性樹脂としては、三菱ケミカル(株)製のPVOH(ゴーセノールGL-05)の15wt%水溶液を100部準備した。担持体としては、フタムラ化学(株)製の活性炭(太閤S)を10部準備した。有効成分としては、水溶性の尿素25部を準備した。離型フィルムとしては、ニッパ(株)製のシリコーン系グレードJシリーズの「J6」タイプを準備した。
【0093】
(9-1-2.製造手順)
まず、(1)活性炭の10wt%水溶液に尿素を25g投入し均一攪拌し、ディスパージョンを作成した。(2)作成したディスパージョンを25℃に設定した真空オーブンに投入し、30分かけて真空引きし、活性炭に尿素を吸着担持させるために、その状態で24時間静置した。(3)(2)で作成したものにPVOHを所定量入れ、攪拌しながら80℃に昇温することによって、PVOH溶液を作成した。(4)離型フィルム上に所望の厚みでPVOH溶液をコートし、100℃環境で10分乾燥させることで、尿素吸着徐放フィルムを得た。
【0094】
(9-1-3.測定方法)
測定装置として、(株)島津製作所製の液体クロマトグラフィ(LC10)を用いた。まず、(1)実施例1における尿素吸着徐放フィルムを水に浸漬静置し、所定タイミングにおける水溶液をサンプリングした。(2)液体クロマトグラフィによってサンプリングされた水溶液の強度測定を行ない、尿素標準液に関して作成した検量線を用いて水溶液中の尿素濃度を算出した。(3)飽和濃度における溶出率を尿素溶出率100%とし、(2)で算出した濃度に対応する尿素溶出率を算出した。
【0095】
図15は、尿素溶出率の変化を示す図である。
図15を参照して、実線は、実施例1に関する尿素溶出率の変化を示す。点線は、尿素を直接水に投入した場合における尿素溶出率の変化を示す。この実験を通じて、実施例1における尿素吸着徐放フィルムは、尿素溶出率が約100%になるまでに15時間を要することが分かった。すなわち、実施例1における尿素吸着徐放フィルムが徐放性能を有することが確認された。
【0096】
<9-2.実施例2>
以下の材料及び製造手順によって、実施例2におけるフィルムを得た。
【0097】
(9-2-1.材料)
生分解性樹脂としては、Novamont S.p.A.社製の「マタービー」を準備した。担持体としては、フタムラ化学(株)製の活性炭(太閤S)を準備した。有効成分としては、塩化カリウムを準備した。
【0098】
(9-2-2.製造手順)
まず、(1)飽和状態の塩化カリウム水溶液に活性炭を浸漬し1日放置した。その後、活性炭のろ過及び乾燥を行ない、塩化カリウム吸着活性炭を得た。(2)その後、マタービー及び塩化カリウム吸着活性炭(マタービーに対して5wt%)を押出成形機を用いて160℃で混練及び製膜した。その結果、厚さ250μmのフィルムを得た。
【0099】
(9-2-3.測定方法)
実施例2におけるフィルムを3cm四方に切り分け、アルカリ水溶液に浸漬し、分解の加速試験を行なった。一定期間経過する毎に浸漬溶液中のカリウムイオンの濃度を、テトラフェニルホウ酸ナトリウム水溶液を用いた沈殿法により測定した。計算値より得られる最大の成分含有量を100%とした場合の、成分の溶出率は
図16に示す通りとなった。
【0100】
図16は、カリウムイオンの溶出率の変化を示す図である。
図16を参照して、各プロットは、各日数経過時点におけるカリウムイオンの溶出率を示す。実線は、カリウムイオンの溶出率の変化を示す近似曲線である。この実験を通じて、実施例2におけるフィルムは、カリウムイオンの溶出率が、例えば、45%に達するのに約3日を要することが分かった。すなわち、実施例2におけるフィルムが徐放性能を有することが確認された。
【符号の説明】
【0101】
10,10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H,10I,10J,10K フィルム、100,100A1,100A2,100B1,100B2,100C1,100C2,100D1,100D2,100E1,100E2,100F1,100F2,100G1,100G2,100H1,100H2,100I1,100I2,100J1,100J2,100K 樹脂層、110,110C1,110C2,110D1,110D2 担持体、115 保護フィルム、120 汎用樹脂層、130 段部、200 パウチ、C1 崩壊部、H1 孔、S1 細孔。