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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】製剤中のヒト血清アルブミン
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/42 20170101AFI20240927BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 39/395 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
A61K47/42
A61K47/26
A61K47/12
A61K9/08
A61K39/395 H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021552538
(86)(22)【出願日】2020-03-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-27
(86)【国際出願番号】 US2020020752
(87)【国際公開番号】W WO2020180850
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】62/813,843
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507302748
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】キム ドロシー
(72)【発明者】
【氏名】マーロウ マイケル
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-504056(JP,A)
【文献】特表2018-506295(JP,A)
【文献】特開平06-056883(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0101181(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0312226(US,A1)
【文献】J. Pharmaceutical Sci.,Vol.105,2016年,pp.1657-1666
【文献】J. Biol. Chem.,1975年,Vol.250(6),pp.2333-2338
【文献】J. Lipid Res.,1975年,Vol.16,pp.165-179
【文献】Eur. J. Biochem. ,1990年,Vol.189,pp.343-349
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00
A61K 39/395
A61K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)活性薬剤、ポリソルベート、および少なくとも1つのリパーゼを含み、脂肪酸粒子を形成する可能性がある水性製剤を得ること、および
(b)有効量のヒト血清アルブミンを前記製剤に添加すること
を含む、脂肪酸粒子を形成する可能性がある前記水性製剤中の脂肪酸粒子の形成を低減する方法。
【請求項2】
前記脂肪酸粒子が、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される遊離脂肪酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記製剤中の遊離脂肪酸の分子のヒト血清アルブミンの分子に対する比が、約6:1~約1:1である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記製剤中のヒト血清アルブミンの濃度が、少なくとも約5.5mg/mLである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
可視粒子または肉眼で見えない(sub-visible)粒子を形成する脂肪酸粒子を低減することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
有効量のヒト血清アルブミンが、前記脂肪酸粒子に含有される少なくとも0.5モルの遊離脂肪酸に結合する、1モルのヒト血清アルブミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも10μmのサイズの脂肪酸粒子の形成を低減することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ラマン分光法を用いて脂肪酸粒子を検出することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリソルベートが、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
(a)活性薬剤、ポリソルベート、および少なくとも1つのリパーゼを含み、脂肪酸粒子を形成する可能性がある水性製剤を得ること、および
(b)有効量のヒト血清アルブミンを前記製剤に添加すること
を含む、水性製剤中に形成される脂肪酸粒子を可溶化する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明は、概して、薬物製剤中の脂肪酸粒子の形成を除去、低減、または防止するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
望ましくない副作用を最小限に抑えながら、薬物製剤の製造、保管、取り扱い、及び投与特性を改善するために、薬物製剤の設計には多くの課題がある。例えば、製剤開発は、安定性を増加させ、しばしば凝集をもたらす化学的または物理的変化の発生を低減し、その後、肉眼で見えない(sub-visible)粒子または可視粒子の増加をもたらし得る溶液条件及び添加剤または賦形剤を同定することを求める。
【0003】
製剤化された注射用薬物製品における粒子の形成の防止及び低減は、特に困難であり、数年にわたって製薬業界内の議論及び調査の焦点となってきた。合成または生物学的物質から構成され、様々な供給源に由来する可視粒子またはさらに肉眼で見えない粒子は、患者において免疫原性の可能性を高めることができ、薬物製品の品質に様々な影響を及ぼす可能性がある。かかる可能性のある不純物の1つは、製造、出荷、保管、取り扱い、または投与中に形成される脂肪酸粒子であり得る。脂肪酸粒子は、有害な免疫原性の作用を引き起こし、貯蔵寿命に影響を及ぼす可能性がある。
【0004】
タンパク質製剤中の脂肪酸粒子の形成を低減または防止するための改善された方法、及び脂肪酸粒子のレベルを低減させたタンパク質製剤の必要性が存在することを理解されたい。
【発明の概要】
【0005】
概要
保管中だけでなく、製造、出荷、取り扱い、及び投与中にも、薬物製剤の安定性を維持することは、大きな課題である。薬物製品の中でも、タンパク質生物製剤はその成功及び汎用性によって人気を得ている。治療用タンパク質は、最も急速に成長しているクラスの薬物であり、薬物市場の約3分の1を占めている。タンパク質生物製剤開発の主要な課題の1つは、可視粒子及び肉眼で見えない粒子の存在によって影響を受ける可能性のあるタンパク質の限られた安定性を克服することである。これは、タンパク質性粒子及び非タンパク質性粒子の両方の粒子の潜在的な免疫原性に対する懸念が高まっていることに起因する。かかる粒子の形成の軽減は、薬物製剤の開発における重要なステップであり得る。1つの課題の例は、製剤中の脂肪酸粒子の形成を防止または低減することである。
【0006】
本開示は、製剤中の脂肪酸粒子の形成を防止または低減する方法を提供する。
【0007】
1つの例示的な実施形態において、製剤中の脂肪酸粒子の形成を防止または低減する方法は、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤にヒト血清アルブミンを添加することを含み得る。
【0008】
本実施形態の一態様において、製剤中の脂肪酸粒子の形成を防止または低減する方法は、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤に有効量のヒト血清アルブミンを添加することを含み得る。
【0009】
本実施形態の一態様において、製剤中の脂肪酸粒子の形成を防止または低減する方法は、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤にヒト血清アルブミンを添加することを含み得、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤は、ポリソルベートを含み得る。
【0010】
本実施形態の一態様において、製剤中の脂肪酸粒子の形成を防止または低減する方法は、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤にヒト血清アルブミンを添加することを含み得、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリソルベートを含む。
【0011】
本実施形態の一態様において、製剤中の脂肪酸粒子の形成を防止または低減する方法は、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤にヒト血清アルブミンを添加することを含み得、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤は、約0.001%w/v~約1%w/vのポリソルベートを含む。
【0012】
本実施形態の一態様において、製剤中の脂肪酸粒子の形成を防止または低減する方法は、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤にヒト血清アルブミンを添加することを含み得、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤は、ポリソルベート及び少なくとも1つのタンパク質を含む。
【0013】
本実施形態の一態様において、製剤中の脂肪酸粒子の形成を防止または低減する方法は、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤にヒト血清アルブミンを添加することを含み得、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤は、ポリソルベート及び抗体を含む。
【0014】
本実施形態の一態様において、製剤中の脂肪酸粒子の形成を防止または低減する方法は、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤にヒト血清アルブミンを添加することを含み得、脂肪酸粒子は遊離脂肪酸を含む。
【0015】
本実施形態の一態様において、製剤中の脂肪酸粒子の形成を防止または低減する方法は、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤にヒト血清アルブミンを添加することを含み得、この脂肪酸粒子は遊離脂肪酸を含み、遊離脂肪酸の分子のヒト血清アルブミンの分子に対する比は、約6:1~約1:1であり得る。
【0016】
本実施形態の一態様において、製剤中の脂肪酸粒子の形成を防止または低減する方法は、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤にヒト血清アルブミンを添加することを含み得、脂肪酸粒子は、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される遊離脂肪酸を含む。
【0017】
本実施形態の一態様において、製剤中の脂肪酸粒子の形成を防止または低減する方法は、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤にヒト血清アルブミンを添加することを含み得、製剤は、少なくとも約5.5mg/mLのヒト血清アルブミンを含み得る。
【0018】
本実施形態の一態様において、製剤中の脂肪酸粒子の形成を防止または低減する方法は、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤にヒト血清アルブミンを添加することを含み得、製剤は非経口製剤であり得る。
【0019】
本実施形態の一態様において、製剤中の脂肪酸粒子の形成を防止または低減する方法は、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤にヒト血清アルブミンを添加することを含み得、脂肪酸粒子は可視粒子または肉眼で見えない粒子である。
【0020】
本実施形態の一態様において、製剤中の脂肪酸粒子の形成を防止または低減する方法は、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤にヒト血清アルブミンを添加することを含み得、脂肪酸粒子は、ラマン分光法によって検出可能であり得る。
【0021】
本開示は、少なくとも一部において、脂肪酸粒子を製剤中に可溶化する方法を提供する。
【0022】
1つの例示的な実施形態において、製剤中の脂肪酸粒子を可溶化する方法は、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤にヒト血清アルブミンを添加することを含み得る。
【0023】
本実施形態の一態様において、製剤中の脂肪酸粒子を可溶化する方法は、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤に有効量のヒト血清アルブミンを添加することを含み得る。
【0024】
本実施形態の一態様において、製剤中の脂肪酸粒子を可溶化する方法は、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤にヒト血清アルブミンを添加することを含み得、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤は、ポリソルベートを含み得る。
【0025】
本実施形態の一態様において、製剤中の脂肪酸粒子を可溶化する方法は、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤にヒト血清アルブミンを添加することを含み得、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリソルベートを含み得る。
【0026】
本実施形態の一態様において、製剤中の脂肪酸粒子を可溶化する方法は、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤にヒト血清アルブミンを添加することを含み得、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤は、約0.001%w/v~約1%w/vのポリソルベートを含み得る。
【0027】
本実施形態の一態様において、製剤中の脂肪酸粒子を可溶化する方法は、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤にヒト血清アルブミンを添加することを含み得、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤は、ポリソルベート及び少なくとも1つのタンパク質を含み得る。
【0028】
本実施形態の一態様において、製剤中の脂肪酸粒子を可溶化する方法は、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤にヒト血清アルブミンを添加することを含み得、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤は、ポリソルベート及び抗体を含む。
【0029】
本実施形態の一態様において、製剤中の脂肪酸粒子を可溶化する方法は、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤にヒト血清アルブミンを添加することを含み得、脂肪酸粒子は遊離脂肪酸を含み得る。
【0030】
本実施形態の一態様において、製剤中の脂肪酸粒子を可溶化する方法は、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤にヒト血清アルブミンを添加することを含み得、脂肪酸粒子は遊離脂肪酸を含み得、遊離脂肪酸の分子のヒト血清アルブミンの分子に対する比は、約6:1~約1:1であり得る。
【0031】
本実施形態の一態様において、製剤中の脂肪酸粒子を可溶化する方法は、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤にヒト血清アルブミンを添加することを含み得、脂肪酸粒子は、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される遊離脂肪酸を含み得る。
【0032】
本実施形態の一態様において、製剤中の脂肪酸粒子を可溶化する方法は、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤に少なくとも約5.5mg/mLのヒト血清アルブミンを添加することを含み得る。
【0033】
本実施形態の一態様において、製剤中の脂肪酸粒子を可溶化する方法は、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤にヒト血清アルブミンを添加することを含み得、製剤は非経口製剤であり得る。
【0034】
本実施形態の一態様において、製剤中の脂肪酸粒子を可溶化する方法は、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤にヒト血清アルブミンを添加することを含み得、脂肪酸粒子は可視粒子または肉眼で見えない粒子である。
【0035】
本実施形態の一態様において、製剤中の脂肪酸粒子を可溶化する方法は、脂肪酸粒子を形成する可能性がある製剤にヒト血清アルブミンを添加することを含み得、脂肪酸粒子は、ラマン分光法によって検出可能である。
【0036】
本開示は、少なくとも一部において、(i)活性薬剤及び(ii)ヒト血清アルブミンを含む製剤を提供する。
【0037】
1つの例示的な実施形態において、製剤は、(i)活性薬剤、(ii)ヒト血清アルブミン、及び(iii)ポリソルベートを含み得る。
【0038】
本実施形態の一態様において、製剤は、(i)抗体、(ii)ヒト血清アルブミン、及び(iii)ポリソルベートを含み得る。
【0039】
本実施形態の一態様において、製剤は、(i)活性薬剤、(ii)ヒト血清アルブミン、及び(iii)ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、またはそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリソルベートを含み得る。
【0040】
本実施形態の一態様において、製剤は、(i)抗体、(ii)ヒト血清アルブミン、及び(iii)ポリソルベートを含み得、製剤は、非経口経路によって投与され得る。
【0041】
本実施形態の一態様において、製剤は、(i)抗体、(ii)ヒト血清アルブミン、(iii)ポリソルベート、及び(iv)リパーゼ酵素を含み得る。
【0042】
本実施形態の一態様において、製剤は、(i)活性薬剤、及び(ii)少なくとも約5.5mg/mLのヒト血清アルブミンを含み得る。
【0043】
本実施形態の一態様において、製剤は、(i)活性薬剤、(ii)少なくとも約5.5mg/mLのヒト血清アルブミン、及び(iii)約0.001%w/v~約1%w/vのポリソルベートを含み得る。
【0044】
本実施形態の一態様において、製剤は、(i)活性薬剤、(ii)ヒト血清アルブミン、及び(iii)ポリソルベートを含み得、製剤は、遊離脂肪酸を有する脂肪酸粒子をさらに含み得、遊離脂肪酸の分子のヒト血清アルブミンの分子に対する比は、約6:1~約1:1であり得る。
【0045】
本実施形態の一態様において、製剤は、(i)抗体、(ii)ヒト血清アルブミン、及び(iii)ポリソルベートを含み得、ポリソルベートは、分解して脂肪酸粒子を形成し得る。
【0046】
本実施形態の一態様において、製剤は、(i)抗体、(ii)ヒト血清アルブミン、(iii)ポリソルベート、及び(iv)リパーゼ酵素を含み得、リパーゼ酵素は、ポリソルベートを加水分解して脂肪酸粒子を形成し得る。
【0047】
本実施形態の一態様において、製剤は、(i)抗体、(ii)ヒト血清アルブミン、及び(iii)ポリソルベートを含み得、製剤は、脂肪酸粒子をさらに含み得る。
【0048】
本実施形態の一態様において、製剤は、(i)抗体、(ii)ヒト血清アルブミン、及び(iii)ポリソルベートを含み得、製剤は、遊離脂肪酸を含む脂肪酸粒子をさらに含み得る。
【0049】
本実施形態の一態様において、製剤は、(i)抗体、(ii)ヒト血清アルブミン、及び(iii)ポリソルベートを含み得、製剤は、約6~約22個の炭素を有する脂肪族脂肪酸を含む脂肪酸粒子をさらに含み得る。
【0050】
本実施形態の一態様において、製剤は、(i)抗体、(ii)ヒト血清アルブミン、及び(iii)ポリソルベートを含み得、製剤は、オレイン酸を含む脂肪酸粒子をさらに含み得る。
【0051】
本実施形態の一態様において、製剤は、(i)抗体、(ii)ヒト血清アルブミン、及び(iii)ポリソルベートを含み得、製剤は、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、及びそれらの組み合わせから選択される遊離脂肪酸を含む脂肪酸粒子をさらに含み得る。
【0052】
[本発明1001]
有効量のヒト血清アルブミンを製剤に添加することを含む、脂肪酸粒子を形成する可能性がある前記製剤中の脂肪酸粒子の形成を防止または低減する方法。
[本発明1002]
前記製剤が、ポリソルベートを含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記製剤が、1つ以上の追加のタンパク質を含む、本発明1001の方法。
[本発明1004]
前記脂肪酸粒子が、遊離脂肪酸を含む、本発明1001の方法。
[本発明1005]
前記脂肪酸粒子が、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される遊離脂肪酸を含む、本発明1001の方法。
[本発明1006]
前記製剤中の前記ヒト血清アルブミンの濃度が、少なくとも約5.5mg/mLである、本発明1001の方法。
[本発明1007]
約6~約22個の炭素原子を有する遊離脂肪酸を含む脂肪酸粒子の形成を低減する、本発明1001の方法。
[本発明1008]
前記製剤が、非経口製剤である、本発明1001の方法。
[本発明1009]
可視粒子または肉眼で見えない(sub-visible)粒子を形成する脂肪酸粒子を低減する、本発明1001の方法。
[本発明1010]
1モルの前記ヒト血清アルブミンが、前記脂肪酸粒子に含有される少なくとも0.5モルの遊離脂肪酸に結合する、本発明1001の方法。
[本発明1011]
前記脂肪酸粒子が、少なくとも10μmのサイズである、本発明1001の方法。
[本発明1012]
前記脂肪酸粒子が、ラマン分光法によって検出される、本発明1001の方法。
[本発明1013]
前記ポリソルベートが、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、本発明1002の方法。
[本発明1014]
前記製剤中の前記ポリソルベートの濃度が、約0.001%w/v~約1%w/vである、本発明1002の方法。
[本発明1015]
前記追加のタンパク質が、抗体である、本発明1003の方法。
[本発明1016]
前記追加のタンパク質が、モノクローナル抗体である、本発明1003の方法。
[本発明1017]
前記追加のタンパク質が、ポリクローナル抗体である、本発明1003の方法。
[本発明1018]
前記製剤中の前記遊離脂肪酸の分子の前記ヒト血清アルブミンの分子に対する比は、約6:1~約1:1である、本発明1005の方法。
[本発明1019]
製剤中に形成される脂肪酸粒子を可溶化する方法であって、前記製剤に有効量のヒト血清アルブミンを添加することを含む、前記方法。
[本発明1020]
活性薬剤と、
ポリソルベートと、
ヒト血清アルブミンと
を含む、製剤。
[本発明1021]
前記活性薬剤が、モノクローナル抗体を含む、本発明1020のタンパク質製剤。
[本発明1022]
前記活性薬剤が、ポリクローナル抗体を含む、本発明1020のタンパク質製剤。
[本発明1023]
前記活性薬剤が、治療用抗体を含む、本発明1020のタンパク質製剤。
[本発明1024]
前記ポリソルベートが、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、本発明1020のタンパク質製剤。
[本発明1025]
前記製剤が、リパーゼ酵素をさらに含む、本発明1020のタンパク質製剤。
[本発明1026]
前記タンパク質製剤中の前記ヒト血清アルブミンの濃度が、少なくとも約5.5mg/mLである、本発明1020のタンパク質製剤。
[本発明1027]
前記製剤が、非経口製剤である、本発明1020のタンパク質製剤。
[本発明1028]
前記ポリソルベートが、分解して脂肪酸粒子を形成する、本発明1020のタンパク質製剤。
[本発明1029]
前記脂肪酸粒子が、遊離脂肪酸を含む、本発明1028のタンパク質製剤。
[本発明1030]
前記遊離脂肪酸が、約6~約22個の炭素を有する脂肪族酸である、本発明1029のタンパク質製剤。
[本発明1031]
前記遊離脂肪酸が、オレイン酸である、本発明1029のタンパク質製剤。
[本発明1032]
前記遊離脂肪酸が、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、本発明1029のタンパク質製剤。
[本発明1033]
前記製剤中の前記遊離脂肪酸の分子の前記ヒト血清アルブミンの分子に対する比が、約6:1~約1:1である、本発明1029のタンパク質製剤。
[本発明1034]
前記タンパク質製剤中の前記ポリソルベートの濃度が、約0.001%w/v~1%w/vである、本発明1020のタンパク質製剤。
本発明のこれら及び他の態様は、以下の説明及び添付の図面と併せて考慮すると、よりよく認識及び理解されるであろう。以下の説明は、様々な実施形態及びその多数の具体的な詳細を示すが、例示として与えられ、限定するものではない。多くの置換、修正、追加、または再配置は、本発明の範囲内で行われ得る。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】例示的な実施形態による、PS80の分解を促進することによって脂肪酸粒子を生成するクロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)リパーゼの能力を評価するための、リパーゼ濃度の時間の関数としての450nmにおける吸光度のプロットを示す。
図2】例示的な実施形態に従って調製された脂肪酸に起因する粒子の組成物を同定するための、ラマンシフト(1/cm)の関数としてのラマン強度(a.u.)のプロットを示す。
図3】例示的な実施形態に従って調製されたポリソルベート含有溶液に添加された様々なFAF-HSA濃度に対する時間の関数としての450nmにおける吸光度のプロットを示す。
図4】例示的な実施形態に従って調製されたポリソルベート含有溶液に添加された様々なSA-HSA濃度に対する時間の関数としての450nmにおける吸光度のプロットを示す。
図5】HSAを添加しない様々なポリクローナルIgG濃度に対する時間の関数としての450nmにおける吸光度のプロットを示す。
図6】凍結乾燥されていない(パネルA)及び凍結乾燥されている(パネルB)モノクローナル抗体を含む製剤に対する時間の関数としての450nmにおける吸光度のプロットを示す。
図7】例示的な実施形態による、様々なポリクローナルIgG濃度への4.5mg/mLのFAF-HSA(パネルA)及び7.5mg/mLのFAF-HSA(パネルB)の添加時の時間の関数としての450nmにおける吸光度のプロットを示す。
図8】例示的な実施形態による、予め形成された脂肪酸粒子に添加された様々な血清濃度に対する時間の関数としての450nmにおける吸光度のプロットを示す。
図9】溶液中のヒト血清及び予め形成された遊離脂肪酸粒子を含む製剤に対する時間の関数としての450nmにおける吸光度のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
詳細な説明
薬物製品の中でも、タンパク質ベースの生物製剤は、モノクローナル抗体(mAb)を用いた過去数年間の臨床試験のかなりの増加によって証明されるように、高いレベルの選択性、効力、及び有効性を提供する重要な薬物のクラスである。タンパク質ベースの生物製剤をクリニックに導入することは、発見、プロセス及び製剤開発、分析的特徴付け、ならびに前臨床毒性学及び薬理学を含む様々な研究開発の分野にわたって協調的な努力を必要とする複数年にわたる取り組みであり得る。臨床的及び商業的に実行可能な生物製剤の重要な一態様は、製造プロセスならびに貯蔵寿命の観点からの薬物製品の安定性である。多くの精製タンパク質と同様に、mAbの天然の立体構造の安定性は、比較的小さく、典型的には、20~25kcal/mol程度である(Kristi L.Lazar,Thomas W.Patapoff & Vikas K.Sharma,Cold denaturation of monoclonal antibodies,2 MABS 42-52(2010))。これは、しばしば、製品品質への影響を最小限に抑えて、製造及び保管に必要な異なる溶液条件及び環境を通じてmAbの物理的及び化学的安定性を向上させるのに役立つ適切なステップを必要とし、これには、より高い固有の安定性を有する分子の同定、タンパク質工学、及び製剤開発を含む。製剤開発は、mAb安定性を増加させ、しばしば凝集をもたらし、その後、肉眼で見えない粒子または可視粒子の増加をもたらし得る化学的または物理的変化の発生を低減する溶液条件及び添加剤または賦形剤を同定することを求める。
【0055】
特に製剤化された薬物製品における可視粒子及び肉眼で見えない粒子は、数年間にわたって製薬業界内の議論及び調査の焦点となり、品質上の懸念を引き起こす可能性がある。合成または生物学的材料から構成され、様々な供給源に由来する粒子は、患者において免疫原性の効果の可能性を高め(S.Bukofzer et al.,Industry Perspective on the Medical Risk of Visible Particles in Injectable Drug Products,69 PDA JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCE AND TECHNOLOGY 123-139(2015)、S.E.Langille,Particulate Matter in Injectable Drug Products,67 PDA JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCE AND TECHNOLOGY 186-200(2013))、薬物製品に様々な影響を及ぼす可能性がある。タンパク質性粒子及び非タンパク質性粒子を含むことができる製剤中の可視粒子及び肉眼で見えない粒子の形成には、いくつかの原因があり得る。そのような粒子は、潜在的な免疫原性に関する懸念の増加につながり得る。米国薬局方(USP)及び欧州薬局方(Ph.Eur.)は、現在、10μmより大きい粒子についてのみ非経口溶液中の濃度限界を定義しており、規制当局は、1~10μmのミクロン粒子の定量的特性評価、及び100nm~1000nmのサブミクロン粒子の定性的特性評価をますます期待しており、すでに開発フェーズの初期段階にある(USP<788>.In:The United States Pharmacopoeia,National Formulary.2009;Ph.Eur.2.9.19)。
【0056】
薬物製剤中の可視粒子及び肉眼で見えない粒子は、遊離脂肪酸含有量及びその後の脂肪酸粒子形成に関連し得る。遊離脂肪酸及び関連する脂肪酸粒子形成は、ポリソルベートを含むタンパク質製剤において生じ得る。市販されているモノクローナル抗体治療薬の70%超は、吸着及び凝集等の界面応力からタンパク質を保護するために、0.001%~0.1%のポリソルベートを含有する。ポリソルベートの多くの調製物は、種々の脂肪酸鎖の混合物を含有し、例えば、ポリソルベート80は、オレイン脂肪酸、パルミチン脂肪酸、ミリスチン脂肪酸、及びステアリン脂肪酸を含有し、モノオレイン酸分画は、ポリ分散混合物の約58%を占める(Nitin Dixit et al.,Residual Host Cell Protein Promotes Polysorbate 20 Degradation in a Sulfatase Drug Product Leading to Free Fatty Acid Particles,105 JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES1657-1666(2016))。ポリソルベートは、pH及び温度に依存する様式で自動酸化しやすく、加えて、UV光への曝露は、不安定性をもたらし得(Ravuri S.k.Kishore et al.,Degradation of Polysorbates 20 and 80:Studies on Thermal Autoxidation and Hydrolysis,100 JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES 721-731(2011))、ソルビタン頭部基と共に溶液中に遊離脂肪酸をもたらす。したがって、ポリソルベートは、遊離脂肪酸及びその後の脂肪酸粒子形成をもたらす、自動酸化及び加水分解による粒子形成に寄与し得る。ホスホリパーゼB様2(PLBL2)及びリポタンパク質リパーゼ(Josephine Chiu et al.,Knockout of a difficult-to-remove CHO host cell protein,lipoprotein lipase,for improved polysorbate stability in monoclonal antibody formulations,114 BIOTECHNOLOGY AND BIOENGINEERING 1006-1015(2016))などの様々な宿主細胞タンパク質によるポリソルベートの加水分解は、ある特定の条件下で遊離脂肪酸を生じ得る(Nitin Dixit et al.,Residual Host Cell Protein Promotes Polysorbate 20 Degradation in a Sulfatase Drug Product Leading to Free Fatty Acid Particles,105 JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES 1657-1666(2016))。これらの遊離脂肪酸、及び同様に低溶解度によるPS20沈殿物の分解から生じる長鎖脂肪酸(とりわけ、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩)(Nidhi Doshi,Barthelemy Demeule & Sandeep Yadav,Understanding Particle Formation:Solubility of Free Fatty Acids as Polysorbate 20 Degradation Byproducts in Therapeutic Monoclonal Antibody Formulations,12 MOLECULAR PHARMACEUTICS 3792-3804(2015)、Steven R.Labrenz,Ester Hydrolysis of Polysorbate 80 in mAb Drug Product:Evidence in Support of the Hypothesized Risk After the Observation of Visible Particulate in mAb Formulations,103 JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES 2268-2277(2014))は、現在のモデルにおいて、薬物中の脂肪酸粒子形成に潜在的につながり得る。
【0057】
いくつかの報告では、ポリソルベート20またはポリソルベート80のいずれかを含有する薬物製品中に、可視粒子及び肉眼で見えない粒子が存在することが詳細に報告されている(Xiaolin Cao et al.,Free Fatty Acid Particles in Protein Formulations,Part 1:Microspectroscopic Identification,104 JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES 433-446(2015)、Christine C.Siska et al.,Free Fatty Acid Particles in Protein Formulations,Part 2:Contribution of Polysorbate Raw Material,104 JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES 447-456(2015)、Nidhi Doshi,Barthelemy Demeule & Sandeep Yadav,Understanding Particle Formation:Solubility of Free Fatty Acids as Polysorbate 20 Degradation Byproducts in Therapeutic Monoclonal Antibody Formulations,12 MOLECULAR PHARMACEUTICS 3792-3804(2015)、Nitin Dixit et al.,Residual Host Cell Protein Promotes Polysorbate 20 Degradation in a Sulfatase Drug Product Leading to Free Fatty Acid Particles,105 JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES1657-1666(2016)、Anthony Tomlinson et al.,Polysorbate 20 Degradation in Biopharmaceutical Formulations:Quantification of Free Fatty Acids,Characterization of Particulates,and Insights into the Degradation Mechanism,12 MOLECULAR PHARMACEUTICS 3805-3815(2015)、Troii Hall et al.,Polysorbates 20 and 80 Degradation by Group XV Lysosomal Phospholipase A 2 Isomer X1 in Monoclonal Antibody Formulations,105 JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES 1633-1642(2016))。分光法によって特徴付けられ、脂肪酸からなることが示されている粒子(Nidhi Doshi,Barthelemy Demeule & Sandeep Yadav,Understanding Particle Formation:Solubility of Free Fatty Acids as Polysorbate 20 Degradation Byproducts in Therapeutic Monoclonal Antibody Formulations,12 MOLECULAR PHARMACEUTICS 3792-3804(2015)、Anthony Tomlinson et al.,Polysorbate 20 Degradation in Biopharmaceutical Formulations:Quantification of Free Fatty Acids,Characterization of Particulates,and Insights into the Degradation Mechanism,12 MOLECULAR PHARMACEUTICS 3805-3815(2015)、純粋なタンパク質(Xiaolin Cao et al.,Free Fatty Acid Particles in Protein Formulations,Part 1:Microspectroscopic Identification,104 JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES 433-446(2015))、または脂肪酸及びタンパク質の混合物は、ポリソルベートの加水分解が製剤化された薬物製品中の粒子の出現に直接寄与する可能性があることを示唆した。宿主細胞タンパク質、具体的にはリパーゼが、考えられる根本原因として挙げられる(Nitin Dixit et al.,Residual Host Cell Protein Promotes Polysorbate 20 Degradation in a Sulfatase Drug Product Leading to Free Fatty Acid Particles,105 JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES1657-1666(2016))。したがって、現在の米国薬局方(USP)基準では、残存宿主細胞タンパク質は<100ppmであるが(Catalin Doneanu et al.,Analysis of host-cell proteins in biotherapeutic proteins by comprehensive online two-dimensional liquid chromatography/mass spectrometry,4 MABS 24-44(2012))、微小レベルの宿主細胞リパーゼの存在は、ポリソルベート加水分解をもたらし、遊離長鎖脂肪酸の放出をもたらす可能性がある。さらに、USPによって定められた粒子含有量の基準は、10μMを超えるサイズについて6000粒子/容器及び25μMを超えるサイズについて600粒子/容器に制限を設け(USP General Chapter 788,Particulate Matter in Injections)、宿主細胞リパーゼの存在が貯蔵寿命に影響を及ぼす可能性があることを示唆する(S.Bukofzer et al.,Industry Perspective on the Medical Risk of Visible Particles in Injectable Drug Products,69 PDA JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCE AND TECHNOLOGY 123-139(2015))。
【0058】
ポリソルベート調製物の全体的な均質性ならびにポリソルベートの固有の長期安定性は、遊離脂肪酸含有量に関する問題をもたらし得る。脂肪酸粒子を含有する薬物製品の安全性及び有効性は完全には評価されていないが、品質の懸念の可能性を回避することは明らかに有利である。脂肪酸粒子が患者において免疫原性応答を生じるかどうかは未だ不明であるが、一般に、薬物製品中の微粒子は望ましくないと考えられている。
【0059】
脂肪酸粒子の形成を軽減するか、または予め形成された粒子を迅速かつ完全に可溶化するための既知の方法が存在しないために、本明細書に開示されるように、効果的かつ効率的な方法及び製剤を開発した。脂肪酸粒子を迅速に生成するための実験システム、及び生物製剤的製剤との関連でのヒト血清アルブミンの新規使用もまた開示される。
【0060】
別段の記載がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものに類似または同等の任意の方法及び物質を実施または試験に使用することができるが、特定の方法及び物質がここに記載されている。記載される全ての出版物は参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
「a」という用語は、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきであり、「約」及び「およそ」という用語は、当業者に理解されるように、標準的な変化を可能にすると理解されるべきであり、範囲が提供される場合、端点が含まれる。
【0062】
生物製剤中の脂肪酸粒子の存在は、企業から規制者、提供者、及び患者までの業界企業全体にわたって実質的な懸念であり得るので、かかる脂肪酸粒子、及びかかる脂肪酸粒子のレベルを低減させ得る製剤の形成を防止及び/または低減する方法、及び/またはかかる脂肪酸粒子の形成を防止する方法は、薬物製品開発において重要である。
【0063】
いくつかの例示的な実施形態において、本開示は、活性薬剤を含む、脂肪酸粒子のレベルを低減させる及び/またはかかる脂肪酸粒子の形成を防止することができる製剤を提供する。
【0064】
本明細書で使用される場合、「製剤」という用語は、1つ以上の薬学的に許容されるビヒクルと共に製剤化される活性薬剤を指す。
【0065】
本明細書で使用される場合、「活性薬剤」という用語は、薬物製品の生物学的に活性な成分を含むことができる。活性薬剤は、薬理学的活性を提供することを意図しているか、そうでなければ疾患の診断、治癒、軽減、治療、もしくは予防に直接的な効果を有することを意図しているか、または動物の生理機能の回復、矯正、もしくは変更に直接的な効果を有することを意図している、薬物製品に使用される任意の物質または物質の組み合わせを指すことができる。活性薬剤を調製するための非限定的な方法は、発酵プロセス、組換えDNA、天然資源からの単離及び回収、化学合成、またはこれらの組み合わせを使用することを含むことができる。
【0066】
いくつかの例示的な実施形態において、活性薬剤は、タンパク質であってもよい。
【0067】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」という用語は、共有結合したアミド結合を有する任意のアミノ酸ポリマーを含むことができる。タンパク質は、一般に「ポリペプチド」として当該技術分野で既知の1つ以上のアミノ酸ポリマー鎖を含む。「ポリペプチド」とは、アミノ酸残基、関連する天然に存在する構造変異体、及びペプチド結合を介して連結されたそれらの合成非天然の類似体、関連する天然に存在する構造変異体、及びそれらの合成非天然の類似体からなるポリマーを指す。「合成ペプチドまたはポリペプチド」は、非天然のペプチドまたはポリペプチドを指す。合成ペプチドまたはポリペプチドは、例えば、自動ポリペプチドシンセサイザーを使用して合成することができる。様々な固相ペプチド合成方法は、当業者に知られている。タンパク質は、単一の機能的生体分子を形成するために、1つまたは複数のポリペプチドを含有してもよい。タンパク質は、生物製剤タンパク質、研究または療法で使用される組換えタンパク質、トラップタンパク質及び他のキメラ受容体Fc融合タンパク質、キメラタンパク質、抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、及び二重特異性抗体のうちのいずれかを含み得る。別の例示的な態様において、タンパク質は、抗体断片、ナノボディ、組換え抗体キメラ、サイトカイン、ケモカイン、ペプチドホルモン等を含むことができる。タンパク質は、昆虫バキュロウイルス系、酵母系(例えば、ピキア属(Pichia)の種)、哺乳類系(例えば、CHO細胞及びCHO-K1細胞などのCHO誘導体)などの組換え細胞ベースの産生系を使用して産生することができる。生物製剤タンパク質及びその産生を論じる最近の総説については、Ghaderi et al.,“Production platforms for biotherapeutic glycoproteins.Occurrence,impact,and challenges of non-human sialylation,”(Darius Ghaderi et al.,Production platforms for biotherapeutic glycoproteins.Occurrence,impact,and challenges of non-human sialylation,28 BIOTECHNOLOGY AND GENETIC ENGINEERING REVIEWS147-176(2012))を参照されたい。いくつかの実施形態において、タンパク質は、修飾、付加体、及び他の共有結合部分を含む。これらの修飾、付加体、及び部分は、例えば、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、グリカン(例えば、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、ニューラミン酸、N-アセチルグルコサミン、フコース、マンノース、及び他の単糖類)、PEG、ポリヒスチジン、FLAGtag、麦芽糖結合タンパク質(MBP)、キチン結合タンパク質(CBP)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)myc-エピトープ、蛍光標識、及び他の染料等を含む。タンパク質は、組成物及び溶解度に基づいて分類され得、したがって、球状タンパク質及び線維性タンパク質などの単純タンパク質、核タンパク質、糖タンパク質、ムコタンパク質、色素タンパク質、リンタンパク質、金属タンパク質、及びリポタンパク質などの複合タンパク質、ならびに一次由来タンパク質及び二次由来タンパク質などの誘導タンパク質を含むことができる。
【0068】
いくつかの例示的な実施形態において、タンパク質は、抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、抗体断片、モノクローナル抗体、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0069】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互接続された4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖、及び2つの軽(L)鎖、ならびにその多量体(例えば、IgM)を含む免疫グロブリン分子を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてHCVRまたはVと略記される)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、C1、C2、及びC3の3つのドメインを含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてLCVRまたはVと略記される)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(C1)を含む。V及びV領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる、超可変性の領域にさらに細分化され、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存性の高い領域とともに散在させることができる。各V及びVは、アミノ末端からカルボキシ末端へとFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4の順序で配置された3つのCDR及び4つのFRで構成される。本発明の異なる実施形態において、抗big-ET-1抗体(またはその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一であってもよく、または天然もしくは人工的に修飾されていてもよい。アミノ酸コンセンサス配列は、2つ以上のCDRの横並び分析に基づいて定義され得る。
【0070】
本明細書で使用される「抗体」という用語には、完全抗体分子の抗原結合断片も含まれる。抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合断片」などの用語は、本明細書で使用される場合、抗原に特異的に結合して複合体を形成する任意の天然に存在する、酵素的に入手可能な、合成的、または遺伝子操作されたポリペプチドもしくは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合断片は、例えば、タンパク質分解消化などの任意の好適な標準技術、または抗体可変ドメイン及び任意の定常ドメインをコードするDNAの操作及び発現を伴う組換え遺伝子操作技術を使用して、完全な抗体分子から導出され得る。かかるDNAは既知であり、及び/または例えば商業的供給源、DNAライブラリ(例えば、ファージ抗体ライブラリを含む)から容易に入手可能であるか、または合成することができる。DNAは、例えば、1つ以上の可変ドメイン及び/または定常ドメインを好適な構成に配置するために、またはコドンを導入するために、システイン残基を作製するために、アミノ酸を改変するために、付加するために、または欠失させるために、などの理由で、化学的に、または分子生物学的技術を使用することによって、配列決定及び操作され得る。
【0071】
本明細書で使用される場合、「抗体断片」は、例えば、抗体の抗原結合領域または可変領域などのインタクト抗体の一部を含む。抗体断片の例としては、限定されないが、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、scFv断片、Fv断片、dsFvダイアボディ、dAb断片、Fd’断片、Fd断片、及び単離された相補性決定領域(CDR)領域、ならびに抗体断片から形成されるトリアボディ、テトラボディ、直鎖抗体、一本鎖抗体分子、及び多重特異性抗体が挙げられる。Fv断片は、免疫グロブリン重及び軽鎖の可変領域の組み合わせであり、ScFvタンパク質は、免疫グロブリン軽及び重鎖可変領域がペプチドリンカーによって連結された組換え単鎖ポリペプチド分子である。いくつかの例示的な実施形態において、抗体断片は、親抗体と同じ抗原に結合する断片である親抗体の十分なアミノ酸配列を含有し、いくつかの例示的な実施形態において、断片は、親抗体と同等の親和性で抗原に結合し、及び/または抗原への結合について親抗体と競合する。抗体断片は、任意の手段によって産生され得る。例えば、抗体断片は、インタクトな抗体の断片化によって酵素的または化学的に産生されてもよく、及び/または部分的抗体配列をコードする遺伝子から組換え的に産生されてもよい。代替的または追加的に、抗体断片は、完全にまたは部分的に合成的に産生され得る。抗体断片は、任意に、一本鎖抗体断片を含んでもよい。代替的または追加的に、抗体断片は、例えば、ジスルフィド結合によって一緒に連結された複数の鎖を含んでもよい。抗体断片は、任意に、多分子複合体を含んでもよい。機能的抗体断片は、典型的には、少なくとも約50アミノ酸を含み、より典型的には、少なくとも約200アミノ酸を含む。
【0072】
「二重特異性抗体」という語句は、2つ以上のエピトープに選択的に結合することができる抗体を含む。二重特異性抗体は、一般に、2つの異なる重鎖を含み、各重鎖は、2つの異なる分子(例えば、抗原)上または同じ分子上(例えば、同じ抗原上)のいずれかで異なるエピトープに特異的に結合する。二重特異性抗体が2つの異なるエピトープ(第1のエピトープ及び第2のエピトープ)に選択的に結合することができる場合、第1の重鎖の第1のエピトープに対する親和性は、一般に、第2のエピトープに対する第1の重鎖の親和性よりも少なくとも1~2または3または4桁低くなり、逆もまた同様である。二重特異性抗体によって認識されるエピトープは、同じまたは異なる標的上(例えば、同じまたは異なるタンパク質上)にあり得る。二重特異性抗体は、例えば、同じ抗原の異なるエピトープを認識する重鎖を組み合わせることによって作製することができる。例えば、同じ抗原の異なるエピトープを認識する重鎖可変配列をコードする核酸配列を、異なる重鎖定常領域をコードする核酸配列に融合させることができ、そのような配列を、免疫グロブリン軽鎖を発現する細胞内で発現させることができる。
【0073】
典型的な二重特異性抗体は、3つの重鎖CDR、それに続いてC1ドメイン、ヒンジ、C2ドメイン、及びC3ドメインをそれぞれ有する2つの重鎖、ならびに抗原結合特異性を付与しないが、各重鎖と会合することができるか、または各重鎖と会合することができ、かつ重鎖抗原結合領域によって結合されるエピトープのうちの1つ以上と結合することができるか、または各重鎖と会合し、1つまたは両方の重鎖の1つまたは両方のエピトープへの結合を可能にすることができる免疫グロブリン軽鎖を有する。BsAbは、Fc領域(IgG様)を有するもの及びFc領域を欠くものの2つの主要なクラスに分類することができ、後者は通常、Fcを含むIgG及びIgG様二重特異性分子よりも小さい。IgG様bsAbは、限定されないが、トリオマブ、knobs into holes IgG(kih IgG)、クロスマブ、オルト-Fab IgG、二重可変ドメインIg(DVD-Ig)、Two-in-oneまたは二重作用Fab(DAF)、IgG-単鎖Fv(IgG-scFv)、またはκλ-ボディ等の異なるフォーマットを有することができる。非IgG様の異なるフォーマットとしては、タンデムscFv、ダイアボディフォーマット、一本鎖ダイアボディ、タンデムダイアボディ(TandAb)、二重親和性リターゲティング分子(DART)、DART-Fc、ナノボディ、またはdock-and-lock(DNL)法によって産生される抗体(Gaowei Fan,Zujian Wang & Mingju Hao,Bispecific antibodies and their applications,8 JOURNAL OF HEMATOLOGY & ONCOLOGY 130;Dafne Muller & Roland E.Kontermann,Bispecific Antibodies,HANDBOOK OF THERAPEUTIC ANTIBODIES 265-310(2014))が挙げられる。
【0074】
BsAbの産生方法は、2つの異なるハイブリドーマ細胞株の体細胞融合に基づくクアドローマ技術、化学的架橋剤を含む化学的コンジュゲーション、及び組換えDNA技術を利用した遺伝的アプローチに限定されない。bsAbの例としては、参照により本明細書に組み込まれる以下の特許出願に開示されるものが挙げられる:2010年6月25日に出願された米国特許出願第12/823838号、2012年6月5日に出願された米国特許出願第13/488628号、2013年9月19日に出願された米国特許出願第14/031075号、2015年7月24日に出願された米国特許出願第14/808171号、2017年9月22日に出願された米国特許出願第15/713574号、2017年9月22日に出願された米国特許出願第15/713569号、2016年12月21日に出願された米国特許出願第15/386453号、2016年12月21日に出願された米国特許出願第15/386443号、2016年7月29日に出願された米国特許出願第15/22343号、及び2017年11月15日に出願された米国特許出願第15814095号。低レベルのホモ二量体不純物は、二重特異性抗体の製造中にいくつかのステップで存在し得る。このようなホモ二量体不純物の検出は、通常の液体クロマトグラフィー法を使用して実行すると、ホモ二量体不純物の存在量が少ないこと、及びこれらの不純物と主要種との共溶出のため、インタクトな質量分析を使用して行うと、困難である可能性がある。
【0075】
本明細書で使用される場合、「多重特異性抗体」または「Mab」は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有する抗体を指す。そのような分子は、通常、2つの抗原にのみ結合するが(すなわち、二重特異性抗体、BsAb)、三重特異性抗体及びKIH三重特異性などの追加の特異性を有する抗体も、本明細書に開示されるシステム及び方法によっても対処することができる。
【0076】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術を通じて産生される抗体に限定されない。モノクローナル抗体は、当該技術分野で利用可能または既知の任意の手段によって、任意の真核生物、原核生物、またはファージクローンを含む単一のクローンに由来し得る。本開示に有用なモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え、及びファージディスプレイ技術、またはそれらの組み合わせの使用を含む、当該技術分野で既知の多種多様な技法を使用して調製することができる。
【0077】
いくつかの例示的な実施形態において、製剤は活性薬剤を含むことができ、活性薬剤は小分子であることができる。本明細書で使用される場合、「低分子」という用語は、1500kDa未満の分子量を有する低分子化学化合物を指すことができる。
【0078】
いくつかの例示的な実施形態において、製剤は、タンパク質製剤であってもよい。
【0079】
本明細書で使用される場合、「タンパク質製剤」という用語は、1つ以上の薬学的に許容されるビヒクルと一緒に製剤化され得る治療用タンパク質を指す。いくつかの実施形態において、治療用タンパク質は、治療レジメンにおける投与に適切な単位用量の量で存在することができる。
【0080】
いくつかの他の実施形態において、製剤は、緩衝剤、膨張剤、張度調整剤、界面活性剤、可溶化剤、及び防腐剤を含むがこれらに限定されない賦形剤をさらに含むことができる。他の追加の賦形剤もまた、機能に基づいて選択することができ、製剤との適合性は、例えば、全体が参照により本明細書に取り込まれる、Remington:The Science and Practice of Pharmacy.Nineteenth Ed(Easton,Pa.:Mack Publishing Company,1995)、Hoover,John E.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,(Easton,Pa.:Mack Publishing Co 1975)、Liberman,H.A.and Lachman,L.,Eds.,Pharmaceutical Dosage Forms(New York,N.Y.:Marcel Decker 1980)、及びPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Seventh Ed(Lippincott Williams & Wilkins 1999)に見出される。
【0081】
いくつかの例示的な実施形態において、製剤は安定であり得る。
【0082】
製剤の安定性は、活性薬剤の化学的安定性、物理的安定性、または機能的安定性を評価することを含み得る。本発明の製剤は典型的には、活性薬剤の高いレベルの安定性を示す。
【0083】
タンパク質製剤に関して、「安定」という用語は、本明細書で使用される場合、製剤内のタンパク質が、本明細書で定義される例示的な条件下での保管後に、許容可能な程度の化学構造または生物学的機能を保持することができることを指す。製剤は、その中に含有されるタンパク質が、所定の時間保管した後、その化学構造または生物学的機能の100%を維持しなくても、安定し得る。ある特定の状況下では、規定された時間の保管後、タンパク質の構造または機能の約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の維持は、「安定」とみなされ得る。
【0084】
いくつかの例示的な実施形態において、製剤は、疾患または障害の治療、予防及び/または改善のために使用され得る。本発明の医薬製剤の投与によって治療及び/または予防することができる例示的な非限定的な疾患及び障害としては、感染症、呼吸器疾患、神経原性、神経障害性、または侵害受容性疼痛に関連する任意の状態に起因する疼痛、遺伝性障害、先天性障害、がん、ヘルペス状、慢性特発性蕁麻疹、強皮症、肥厚性瘢痕、ホイップル病、良性前立腺肥大症、軽度、中等度または重度の喘息、アレルギー反応などの肺疾患、川崎病、鎌状赤血球疾患、チャーグ・ストラウス症候群、グレーブス病、子癇前症、シェーグレン症候群、自己免疫リンパ増殖症候群、自己免疫溶血性貧血、バレット食道炎、自己免疫性ブドウ膜炎、結核、ネフローゼ、慢性リウマチ関節炎を含む関節炎、クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、炎症性疾患、HIV感染、AIDS、LDLアフェレーシス、PCSK9活性化変異(機能獲得型変異、「GOF」)による障害、ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症(heFH)による障害、原発性高コレステロール血症、脂質異常、胆汁うっ滞性肝疾患、ネフローゼ症候群、甲状腺機能低下症、肥満、アテローム性動脈硬化症、心血管疾患、神経変性疾患、新生児発症多系炎症性障害(NOM ID/CINCA)、マックル・ウェルズ症候群(MWS)、家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)、家族性地中海熱(FMF)、腫瘍壊死因子受容体関連周期性熱症候群(TRAPS)、全身型若年性突発性関節炎(スティル病)、1型糖尿病、2型糖尿病、自己免疫疾患、運動ニューロン疾患、眼疾患、性感染症、結核、VEGFアンタゴニストによって改善、阻害、または低減される疾患または状態、PD-1阻害剤によって改善、阻害、または低減される疾患または状態、インターロイキン抗体によって改善、阻害、または低減される疾患または状態、NGF抗体によって改善、阻害、または低減される疾患または状態、PCSK9抗体によって改善、阻害、または低減される疾患または状態、ANGPTL抗体によって改善、阻害、または低減される疾患または状態、アクチビン抗体によって改善、阻害、または低減される疾患または状態、GDF抗体によって改善、阻害、または低減される疾患または状態、Fel d 1抗体によって改善、阻害、または低減される疾患または状態、CD抗体によって改善、阻害、または低減される疾患または状態、C5抗体によって改善、阻害、または低減される疾患または状態、あるいはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0085】
いくつかの例示的な実施形態において、製剤は、患者に投与することができる。投与は、任意の経路を介して行われ得る。非限定的な投与経路としては、経口、局所、または非経口が挙げられる。ある特定の非経口経路を介した投与は、滅菌シリンジまたは連続注入システム等の何らかの他の機械的デバイスによって推進される針またはカテーテルを介して、本発明の製剤を患者の体内に導入することを含み得る。本発明によって提供される製剤は、シリンジ、注射器、ポンプ、または非経口投与のための当該技術分野で認識される任意の他のデバイスを使用して投与し得る。本発明の製剤は、肺または鼻腔内で吸収するためのエアゾールとしても投与し得る。製剤は、頬側投与等の粘膜を介した吸収のために投与してもよい。
【0086】
いくつかの例示的な実施形態において、ヒト血清アルブミンは、脂肪酸粒子の形成を防止することができる。いくつかの例示的な実施形態において、ヒト血清アルブミンは、予め形成された脂肪酸粒子を可溶化することができる。本明細書で使用される場合、「ヒト血清アルブミン」または「HSA」は、肝臓で合成される単量体タンパク質を含み得る。ヒト血清アルブミンは、濃度が最大50g/Lの血清の主要な巨大分子構成成分であり得、血管内と血管外空間との間を常に流動している(Angelica M.Merlot,Danuta S.Kalinowski & Des R.Richardson,Unraveling the mysteries of serum albumin-more than just a serum protein,5 FRONTIERS IN PHYSIOLOGY(2014))。様々な生物学的活性のうち、HSAは、脂肪酸を含む低溶解度分子を全身に輸送し得る(Maja Thim Larsen et al.,Albumin-based drug delivery:harnessing nature to cure disease,4 MOLECULAR AND CELLULAR THERAPIES(2016))。HSAは、3つの高親和性、1つの中親和性、及び5つの低親和性部位からなる9つの異なる脂肪酸結合部位を含有し得る(Eileen S.Krenzel,Zhongjing Chen & James A.Hamilton,Correction to Correspondence of Fatty Acid and Drug Binding Sites on Human Serum Albumin:A Two-Dimensional Nuclear Magnetic Resonance Study,52 BIOCHEMISTRY 2382-2382(2013))。
【0087】
いくつかの例示的な実施形態において、製剤は、ポリソルベートをさらに含むことができる。
【0088】
本明細書で使用される場合、「ポリソルベート」は、撹拌、凍結融解プロセス、及び空気/水界面などの様々な物理的ストレスから抗体を保護するために製剤開発で使用される一般的な賦形剤を指す(Emily Ha,Wei Wang & Y.John Wang,Peroxide formation in polysorbate 80 and protein stability,91 JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES 2252-2264(2002)、Bruce A.Kerwin,Polysorbates 20 and 80 Used in the Formulation of Protein Biotherapeutics:Structure and Degradation Pathways,97 JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES 2924-2935(2008)、Hanns-Christian Mahler et al.,Adsorption Behavior of a Surfactant and a Monoclonal Antibody to Sterilizing-Grade Filters,99 Journal of Pharmaceutical Sciences 2620-2627(2010))。ポリソルベートは、ポリオキシエチレンソルビタン頭部基等のポリオキシエチレン-ソルビタンの脂肪酸エステル、及び飽和モノラウレート側鎖(ポリソルベート20;PS20)または不飽和モノオレエート側鎖(ポリソルベート80;PS80)のいずれかからなる非イオン性両親媒性界面活性剤を含むことができる。いくつかの例示的な実施形態において、ポリソルベートは、0.001%~1%(重量/体積)の範囲で製剤中に存在し得る。ポリソルベートはまた、種々の脂肪酸鎖の混合物を含有することができ、例えば、ポリソルベート80は、オレイン脂肪酸、パルミチン脂肪酸、ミリスチン脂肪酸及びステアリン脂肪酸を含有し、モノオレイン酸分画は、ポリ分散混合物の約58%を占める(Nitin Dixit et al.,Residual Host Cell Protein Promotes Polysorbate 20 Degradation in a Sulfatase Drug Product Leading to Free Fatty Acid Particles,105 JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES 1657-1666(2016))。ポリソルベートの非限定的な例としては、ポリソルベート-20、ポリソルベート-40、ポリソルベート-60、ポリソルベート-65、及びポリソルベート-80が挙げられる。
【0089】
ポリソルベートは、pH及び温度に依存する様式で自動酸化しやすく、加えて、UV光への曝露は、不安定性をもたらし得(Ravuri S.k.Kishore et al.,Degradation of Polysorbates 20 and 80:Studies on Thermal Autoxidation and Hydrolysis,100 JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES 721-731(2011))、ソルビタン頭部基と共に溶液中に遊離脂肪酸をもたらす。ポリソルベートから生じる遊離脂肪酸は、6~20個の炭素を有する任意の脂肪族脂肪酸を含むことができる。遊離脂肪酸の非限定的な例としては、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0090】
いくつかの例示的な実施形態において、脂肪酸粒子は、少なくとも5μmのサイズであり得る。さらに、これらの脂肪酸粒子は、可視(>100μm)、肉眼で見えない(<100μm、これはミクロン(1~100μm)及びサブミクロン(100nm~1000nm)に細分される)ならびにナノメートル粒子(<100nm)(Linda Narhi,Jeremy Schmit & Deepak Sharma,Classification of protein aggregates,101 JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES 493-498)として、それらのサイズに従って分類され得る。
【0091】
いくつかの例示的な実施形態において、脂肪酸粒子は可視粒子であり得る。可視粒子は、目視検査によって決定することができる。
【0092】
いくつかの例示的な実施形態において、脂肪酸粒子は、肉眼で見えない粒子であり得る。肉眼で見えない粒子は、米国薬局方(USP)に従って、光遮断法によって監視することができる。
【0093】
いくつかの例示的な実施形態において、脂肪酸粒子は、ポリソルベートから形成することができる。いくつかの具体的な例示的な実施形態において、脂肪酸粒子は、リパーゼ酵素の存在下でポリソルベートから形成され得る。本明細書で使用される場合、「リパーゼ」は、脂肪の加水分解を触媒することができる酵素を指す。リパーゼは、動物から植物、微生物まで、基本的にあらゆる形態の生命に見出すことができる。哺乳類リパーゼスーパーファミリーは、位置及び基質特異性によって分化した7つの異なるクラスからなることができる。CHO-K1 mRNAの解析により、変異型を含む137のリパーゼ及びホスホリパーゼが見出されている(Benjamin G.Kremkow et al.,CHOgenome.org 2.0:Genome resources and website updates,10 BIOTECHNOLOGY JOURNAL 931-938(2015))。精製された生物製剤薬物製品におけるポリソルベート分解に特異的に関与するリパーゼが同定されておらず、いくつかが見出される可能性があり、製造プロセス及び生物製剤自体の影響が示唆される。いくつかの異なるリパーゼは、市販の供給源から入手可能な哺乳類、真菌、及び細菌起源からスクリーニングすることができる。
【0094】
いくつかの例示的な実施形態において、脂肪酸粒子は、ラマン分光法によって検出することができる。本明細書で使用される場合、「ラマン分光法」という用語は、ラマン散乱法に基づく分光法を指す。ラマン分光法は、指紋領域(2000~400cm-1)内のバンドの存在及び位置を同定することができるラマンスペクトルを提供することができ、これは、ラマンスペクトルのデータベースと比較することによって、分析された物質の化学的同定を可能にする(C.V.Raman & K.S.Krishnan,A New Type of Secondary Radiation,121 NATURE 501-502(1928)、Zai-Qing Wen,Raman spectroscopy of protein pharmaceuticals,96 JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES 2861-2878(2007))。
【0095】
例示的な実施形態
本明細書に開示される実施形態は、試料中のタンパク質を迅速に特徴付けるための組成物、方法、及びシステムを提供する。
【0096】
本明細書で使用される場合、「含む(include)」、「含む(includes)」、及び「含む(including)」という用語は、非限定的であることが意図され、それぞれ「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含む(comprising)」を意味すると理解される。
【0097】
いくつかの例示的な実施形態において、本開示は、有効量のヒト血清アルブミンを製剤に添加することを含む、製剤中の脂肪酸粒子の形成を防止または低減する方法を提供する。
【0098】
いくつかの例示的な実施形態において、本開示は、有効量のヒト血清アルブミンを製剤に添加することを含む、製剤中の脂肪酸粒子を可溶化する方法を提供する。
【0099】
いくつかの例示的な実施形態において、本開示は、(i)活性薬剤及び(ii)ヒト血清アルブミンを含む製剤を提供する。
【0100】
いくつかの具体的な例示的な実施形態において、活性医薬成分は、小分子であってもよい。いくつかの他の具体的な例示的な実施形態において、活性医薬成分は、タンパク質であってもよい。いくつかの例示的な実施形態において、活性医薬成分は、治療用タンパク質であり得る。
【0101】
いくつかの例示的な実施形態において、製剤は、抗体を含むことができる。いくつかの具体的な例示的な実施形態において、製剤は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片、二重特異性抗体、多重特異性抗体、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される抗体を含むことができる。
【0102】
いくつかの例示的な実施形態において、製剤は、少なくとも1つの活性薬剤を含むことができる。いくつかの具体的な例示的な実施形態において、製剤は、2つの活性薬剤を含むことができる。
【0103】
いくつかの例示的な実施形態において、製剤は、疾患または障害の治療に使用することができる。
【0104】
いくつかの例示的な実施形態において、製剤は、疾患または障害の予防に使用され得る。
【0105】
いくつかの例示的な実施形態において、製剤は、患者に投与することができる。
【0106】
いくつかの具体的な例示的な実施形態において、製剤は、患者に経口投与することができる。
【0107】
いくつかの例示的な実施形態において、製剤は、非経口経路を介して患者に投与することができる。いくつかの具体的な実施形態において、製剤は、静脈内経路を介して患者に投与することができる。いくつかの具体的な実施形態において、製剤は、皮下経路を介して患者に投与することができる。いくつかの具体的な実施形態において、製剤は、筋肉内経路を介して患者に投与することができる。
【0108】
いくつかの例示的な実施形態において、製剤は、液体配合物であってもよい。いくつかの例示的な実施形態において、製剤中の活性薬剤の量は、約0.01mg/mL~約600mg/mLの範囲であり得る。いくつかの具体的な実施形態において、製剤中の活性薬剤の量は、約0.01mg/mL、約0.02mg/mL、約0.03mg/mL、約0.04mg/mL、約0.05mg/mL、約0.06mg/mL、約0.07mg/mL、約0.08mg/mL、約0.09mg/mL、約0.1mg/mL、約0.2mg/mL、約0.3mg/mL、約0.4mg/mL、約0.5mg/mL、約0.6mg/mL、約0.7mg/mL、約0.8mg/mL、約0.9mg/mL、約1mg/mL、約2mg/mL、約3mg/mL、約4mg/mL、約5mg/mL、約6mg/mL、約7mg/mL、約8mg/mL、約9mg/mL、約10mg/mL、約15mg/mL、約20mg/mL、約25mg/mL、約30mg/mL、約35mg/mL、約40mg/mL、約45mg/mL、約50mg/mL、約55mg/mL、約60mg/mL、約65mg/mL、約70mg/mL、約5mg/mL、約80mg/mL、約85mg/mL、約90mg/mL、約100mg/mL、約110mg/mL、約120mg/mL、約130mg/mL、約140mg/mL、約150mg/mL、約160mg/mL、約170mg/mL、約180mg/mL、約190mg/mL、約200mg/mL、約225mg/mL、約250mg/mL、約275mg/mL、約300mg/mL、約325mg/mL、約350mg/mL、約375mg/mL、約400mg/mL、約425mg/mL、約450mg/mL、約475mg/mL、約500mg/mL、約525mg/mL、約550mg/mL、約575mg/mL、または約600mg/mLであり得る。
【0109】
いくつかの例示的な実施形態において、製剤は、脂肪酸粒子を形成することができる。いくつかの具体的な例示的な実施形態において、脂肪酸粒子は、遊離脂肪酸を含むことができる。いくつかの他の具体的な例示的な実施形態において、遊離脂肪酸の分子のヒト血清アルブミンの分子に対する比は、約6:1~約1:1である。いくつかの具体的な例示的な実施形態において、遊離脂肪酸の分子のヒト血清アルブミンの分子に対する比は、約0.5:1、約0.6:1、約0.7:1、約0.8:2、約0.9:1、約1:1、約2:1、約2:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、または約10:1である。いくつかの具体的な例示的な実施形態において、脂肪酸粒子はオレイン酸を含むことができる。
【0110】
いくつかの具体的な例示的な実施形態において、脂肪酸粒子は、飽和直鎖脂肪族酸を含むことができる。いくつかの他の具体的な例示的な実施形態において、脂肪酸粒子は、最大20個の炭素原子を有する飽和直鎖脂肪族酸を含むことができる。いくつかの他の特定の具体的な実施形態において、遊離脂肪酸は、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、またはそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの脂肪酸を含むことができる。
【0111】
いくつかの具体的な例示的な実施形態において、脂肪酸粒子は、不飽和直鎖脂肪族酸を含むことができる。いくつかの具体的な例示的な実施形態において、脂肪酸粒子は、最大20個の炭素原子を有する不飽和直鎖脂肪族酸を含むことができる。いくつかの例示的な実施形態において、遊離脂肪酸粒子は、ステアリドン酸、リノールエライジン酸、パルミトレイン酸、ワクセニン酸、パウリン酸、エラジン酸、ゴンド酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、アラキドン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、及びそれらの組み合わせを含むことができる。
【0112】
いくつかの例示的な実施形態において、製剤中のヒト血清アルブミンの濃度は、少なくとも約2.5mg/mLであり得る。いくつかの具体的な例示的な実施形態において、製剤中のヒト血清アルブミンの濃度は、少なくとも約2.5mg/mL、少なくとも約2.6mg/mL、少なくとも約2.7mg/mL、少なくとも約2.8mg/mL、少なくとも約2.9mg/mL、少なくとも約3.0mg/mL、少なくとも約3.1mg/mL、少なくとも約3.2mg/mL、少なくとも約3.3mg/mL、少なくとも約3.4mg/mL、少なくとも約3.5mg/mL、3.6mg/mL、少なくとも約3.7mg/mL、少なくとも約3.8mg/mL、少なくとも約3.9mg/mL、少なくとも約4.0mg/mL、少なくとも約4.1mg/mL、少なくとも約4.2mg/mL、少なくとも約4.3mg/mL、少なくとも約4.4mg/mL、少なくとも約4.5mg/mL、4.6mg/mL、少なくとも約4.7mg/mL、少なくとも約4.8mg/mL、少なくとも約4.9mg/mL、少なくとも約5.0mg/mL、少なくとも約5.1mg/mL、少なくとも約5.2mg/mL、少なくとも約5.3mg/mL、少なくとも約5.4mg/mL、少なくとも約5.5mg/mL、5.6mg/mL、少なくとも約5.7mg/mL、少なくとも約5.8mg/mL、少なくとも約5.9mg/mL、少なくとも約6.0mg/mL、少なくとも約6.1mg/mL、少なくとも約6.2mg/mL、少なくとも約6.3mg/mL、少なくとも約6.4mg/mL、少なくとも約6.5mg/mL、6.6mg/mL、少なくとも約6.7mg/mL、少なくとも約6.8mg/mL、少なくとも約6.9mg/mL、少なくとも約7.0mg/mL、少なくとも約7.1mg/mL、少なくとも約7.2mg/mL、少なくとも約7.3mg/mL、少なくとも約7.4mg/mL、または少なくとも約7.5mg/mLであり得る。
【0113】
いくつかの例示的な実施形態において、製剤中のヒト血清アルブミンは、製剤中の脂肪酸粒子の形成を低減することができる。
【0114】
いくつかの例示的な実施形態において、製剤中のヒト血清アルブミンは、製剤中の脂肪酸粒子を可溶化することができる。
【0115】
いくつかの例示的な実施形態において、製剤中のヒト血清アルブミンは、ポリソルベートの分解によって生成された遊離脂肪酸に結合し、それらを隔離して、溶液中の有効濃度を臨界ミセル濃度未満のレベルまで低下させることができる。
【0116】
いくつかの例示的な実施形態において、製剤中のヒト血清アルブミンは、脂肪酸シンクとして機能することができる。
【0117】
いくつかの例示的な実施形態において、製剤中のヒト血清アルブミンは、可視の/肉眼で見えない脂肪酸粒子の出現を排除することができる。
【0118】
いくつかの例示的な実施形態において、製剤中のヒト血清アルブミンは、ヒト血清アルブミンを含まない製剤よりも製剤の貯蔵寿命を延長することができる。
【0119】
いくつかの例示的な実施形態において、製剤は、さらにポリソルベートを含むことができる。いくつかの具体的な実施形態において、ポリソルベートは、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、及びそれらの組み合わせから選択することができる。いくつかの例示的な実施形態において、製剤中のポリソルベートの濃度は、約0.001%w/v~約1%w/vであり得る。いくつかの具体的な実施形態において、製剤中のポリソルベートの濃度は、約0.001%w/v、約0.002%w/v、約0.003%w/v、約0.004%w/v、約0.005%w/v、約0.006%w/v、約0.007%w/v、約0.008%w/v、約0.009%w/v、約0.01%w/v、約0.011%w/v、約0.012%w/v、約0.013%w/v、約0.014%w/v、約0.015%w/v、約0.016%w/v、約0.017%w/v、約0.018%w/v、約0.019%w/v、約0.02%w/v、約0.021%w/v、約0.022%w/v、約0.023%w/v、約0.024%w/v、約0.025%w/v、約0.026%w/v、約0.027%w/v、約0.028%w/v、約0.029%w/v、約0.03%w/v、約0.031%w/v、約0.031%w/v、約0.032%w/v、約0.033%w/v、約0.034%w/v、約0.035%w/v、約0.036%w/v、約0.037%w/v、約0.038%w/v、約0.039%w/v、約0.04%w/v、約0.041%w/v、約0.042%w/v、約0.043%w/v、約0.044%w/v、約0.045%w/v、約0.046%w/v、約0.047%w/v、約0.048%w/v、約0.049%w/v、約0.05%w/v、約0.051%w/v、約0.052%w/v、約0.053%w/v、約0.054%w/v、約0.055%w/v、約0.056%w/v、約0.057%w/v、約0.058%w/v、約0.059%w/v、約0.06%w/v、約0.061%w/v、約0.062%w/v、約0.063%w/v、約0.064%w/v、約0.065%w/v、約0.066%w/v、約0.067%w/v、約0.068%w/v、約0.069%w/v、約0.07%w/v、約0.071%w/v、約0.072%w/v、約0.073%w/v、約0.074%w/v、約0.075%w/v、約0.076%w/v、約0.077%w/v、約0.078%w/v、約0.079%w/v、約0.08%w/v、約0.081%w/v、約0.082%w/v、約0.083%w/v、約0.084%w/v、約0.085%w/v、約0.086%w/v、約0.087%w/v、約0.088%w/v、約0.089%w/v、約0.09%w/v、約0.091%w/v、約0.092%w/v、約0.093%w/v、約0.094%w/v、約0.095%w/v、約0.096%w/v、約0.097%w/v、約0.098%w/v、約0.099%w/v、約0.1%w/v、約0.11%w/v、約0.12%w/v、約0.13%w/v、約0.14%w/v、約0.15%w/v、約0.16%w/v、約0.17%w/v、約0.18%w/v、約0.19%w/v、約0.2%w/v、約0.21%w/v、約0.22%w/v、約0.23%w/v、約0.24%w/v、約0.25%w/v、約0.26%w/v、約0.27%w/v、約0.28%w/v、約0.29%w/v、約0.3%w/v、約0.31%w/v、約0.4%w/v、約0.41%w/v、約0.42%w/v、約0.43%w/v、約0.44%w/v、約0.45%w/v、約0.46%w/v、約0.47%w/v、約0.48%w/v、約0.49%w/v、約0.5%w/v、約0.51%w/v、約0.52%w/v、約0.53%w/v、約0.54%w/v、約0.55%w/v、約0.56%w/v、約0.57%w/v、約0.58%w/v、約0.59%w/v、約0.6%w/v、約0.61%w/v、約0.62%w/v、約0.63%w/v、約0.64%w/v、約0.65%w/v、約0.66%w/v、約0.67%w/v、約0.68%w/v、約0.69%w/v、約0.7%w/v、約0.71%w/v、約0.72%w/v、約0.73%w/v、約0.74%w/v、約0.75%w/v、約0.76%w/v、約0.77%w/v、約0.78%w/v、約0.79%w/v、約0.8%w/v、約0.81%w/v、約0.82%w/v、約0.83%w/v、約0.84%w/v、約0.85%w/v、約0.86%w/v、約0.87%w/v、約0.88%w/v、約0.89%w/v、約0.9%w/v、約0.91%w/v、約0.92%w/v、約0.93%w/v、約0.94%w/v、約0.95%w/v、約0.96%w/v、約0.97%w/v、約0.98%w/v、約0.99%w/v、または約1%w/vであり得る。
【0120】
いくつかの例示的な実施形態において、製剤はさらに、リパーゼ酵素を含むことができる。
【0121】
いくつかの例示的な実施形態において、製剤は、ポリソルベート、及びリパーゼ酵素をさらに含み得、リパーゼ酵素は、ポリソルベートを加水分解して脂肪酸粒子を形成し得る。
【0122】
特許、特許出願、公開された特許出願、受託番号、技術記事、及び学術記事を含む種々の刊行物は、本明細書を通して引用される。これらの引用文献のそれぞれは、参照により、その全体が、あらゆる目的のために、本明細書に組み込まれる。
【0123】
本発明は、以下の実施例を参照することによって、より完全に理解されるであろう。しかしながら、それらは本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例
【0124】
物質及び試薬調製。全ての反応を、別段の指示がない限り、25mMのTris、pH7.5、100mMのKCl、20mMのCaCl(TKC緩衝液)を含有する緩衝水溶液中で実行した。クロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)リパーゼはEMD Millipore(Billerica,MA)から購入し、凍結乾燥脂肪酸フリーのヒト血清アルブミン(FAF-HSA)及びヒト血清はSigma-Aldrich(St.Louis,MO)から購入した。超精製ポリソルベート20(PS20)及びポリソルベート80(PS80)をCroda(Edison,NJ)から入手した。IgGを用いた実験のために、Sigma-Aldrich(St.Louis,MO)から購入したヒト凍結乾燥ポリクローナルIgGを、150mM NaCl及び35mM Tris pH8.0で製造業者の推奨に従って再構成し、25mM Tris、100mM KCl、pH7.5で平衡化したZebaスピン脱塩カラム(Thermo Fisher Scientific)上で脱塩した。
【0125】
試薬の精製。凍結乾燥されたC.ビスコサム(C.viscosum)リパーゼを約1mLのTKC反応緩衝液中で再構成し、同じ緩衝液中で平衡化されたSuperdex Increase 200 10/300SECカラムで精製した。精製したリパーゼ画分をプールし、タンパク質濃度(4.2mg/mL)を、0.95の吸光係数を使用して、UVλ=280nmのNanodrop One C分光光度計で測定した。アリコートを-20℃で10%(v/v)グリセロール中に保管した。FAF-HSA濃度は、0.531の吸光係数を使用して、UVλ=280nmのNanodrop OneCを用いて決定した。
【0126】
濁度測定による粒子検出。プレートベースのアッセイを使用して、経時的に、典型的には2~4時間、450nmでの吸光度を監視することによって粒子の存在を検出した。アッセイは、光散乱の基本原理(濁度の評価)に基づいて、約20nmより大きい粒子を検出する。0.4~5μg/mLの範囲の最終濃度で、0.1%ポリソルベート80を含有するTKC緩衝液に精製したリパーゼを添加した。吸光度を、25℃に保持されたSpectra Max 340プレートリーダー上で断続的に振とうさせて、5分間隔で測定した。ベースライン値は、リパーゼを添加せずに0.1%ポリソルベート80の吸光度を測定することによって確立した。機器の制御、データの取得、及び分析は、SoftMax Proソフトウェア(バージョン6.5)を使用して行った。
【0127】
商業的供給源からの哺乳類、真菌、及び細菌由来のいくつかの異なるリパーゼをスクリーニングした。細菌リパーゼの選択は、主に、急速なポリソルベート加水分解及びその後の粒子形成に基づいており、生物製剤薬物製品の設定において数ヶ月から数年を要し得る粒子形成を制御するための条件を同定するための明らかな利点を提供した。加えて、細菌リパーゼは、粒子形成に強く影響するより広範囲の溶液条件に適していた。特に、酸性頭部基の静電反発を中和するのに役立つカリウムの存在は必須である。
【0128】
実施例1。粒子形成におけるクロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)リパーゼによるポリソルベート80の加水分解。
PS80を含有する溶液中の粒子の形成は、リパーゼによる加水分解により生じ得る(Nitin Dixit et al.,Residual Host Cell Protein Promotes Polysorbate 20 Degradation in a Sulfatase Drug Product Leading to Free Fatty Acid Particles,105 JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES 1657-1666(2016))。
【0129】
粒子形成は、多段階のプロセスである。最初に、リパーゼは、脂肪酸エステル結合でPS80の加水分解を触媒して、ソルビタン環及び脂肪酸鎖を放出する。第二に、複数の遊離脂肪酸が凝集して粒子を形成する。クロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)リパーゼの活性を試験するために、0.1%のPS80を0.4~5μg/mLの様々な濃度のリパーゼと共にインキュベートし、450nmでの吸光度を数時間にわたって監視した。
【0130】
溶液中の粒子の存在を検出するために、試料の濁度を吸光度分光法で監視した。試料を25℃でインキュベートし、450nmでの吸光度を120分間にわたって取得した。0~1μgの異なる濃度のリパーゼを使用した。リパーゼを含有しない試料を対照として使用した。
【0131】
450nmでのシグナルの増加は、粒子形成に起因する溶液濁度の増加を示す。図1は、リパーゼ濃度の増加が、最終濁度の上昇、及び用量依存性応答の初期増加を観察するのに必要な時間の減少の両方をもたらしたことを示す。さらに、リパーゼを含有しない試料を対照として使用した(△)が、時間の経過と共に濁度が増加せず、ベースライン吸光度レベルを提供した。
【0132】
実施例2。形成した粒子の組成の同定
2.1 粒子の調製。
粒子は、2.5μg/mLのリパーゼをTKC緩衝液中のPS80と共に室温で3時間インキュベートし、続いて遠心分離することによって調製した。上清を廃棄し、ペレットを1回緩衝液で洗浄し、超音波処理によって再構成した。IgGの存在下での粒子生成のために、ヒトポリクローナルIgGを7.5mg/mLの最終濃度まで添加した。機械的に分散したペレットを、5μmのポリカーボネート膜フィルター(RapID;Monmouth Junction,NJ)上に堆積させた。ラマン分光法を、RapID Single Particle Explorerと785nm単色レーザーを使用して、50×対物レンズで100%強度/10秒の露光時間で粒子に行い、試料に特有のスペクトルを生成した。
【0133】
2.2 ラマン分光法。
ラマン分光法を用いて、リパーゼをPS80とインキュベートした後の粒子構成成分を同定した。この方法は、非弾性光散乱を使用して各分子に固有のエネルギースペクトルを生成し、次いで様々な化学構造の指紋を含む参照ライブラリと比較される。200粒子中156粒子のラマンスペクトルは、オレイン酸のスペクトルと非常に類似していることが同定された(図2)。図2に見られるような黒色トレースは、内部参照のオレイン酸である。1650cm-1のピークは、直鎖炭化水素鎖中のC=C結合の数に直接比例し、したがって、不飽和オレイン酸炭化水素鎖のシグネチャである。他に同定された種には、ラウリン酸及びパルミチン酸が含まれ、これらはいずれもポリソルベートの分解産物でもある。
【0134】
実施例3。HSAによる粒子形成の防止。
HSAは、脂肪酸に対するいくつかの高親和性及び低親和性結合部位を含有し、したがって、ポリソルベートの加水分解時の粒子形成を阻害し得る脂肪酸シンクとして作用する可能性を有する。粒子形成を防止するためのHSAの有効性を試験するために、0.1%のPS80を、増加した濃度のFAF-HSAの存在下25℃で0.5μgのリパーゼと共にインキュベートし、450nmで6時間にわたる吸光度を測定することによって溶液の濁度を監視した。
【0135】
図3は、様々なFAF-HSA濃度に対する時間の関数として、450nmにおける吸光度をプロットするグラフを示す。FAF-HSAを含まない試料(◇)は、吸光度の上限(約0.4nm)を提供する。図3に見られるように、粒子の外観に対するHSAの効果は、用量依存的応答であり、エラーバーは、2つの反復からの標準誤差を表す。対照試料は、FAF-HSAを含有せず、6時間後に約0.4ODの最終吸光度を示した。FAF-HSAの添加は、最終吸光度の低下(濁度の低下)、及び濃度依存的様式での濁度の開始の時間的遅延の両方をもたらした。特に、7.5mg/mLのFAF-HSAを含有する試料は、この期間にわたって、いかなる顕著な吸光度も示さなかった。同様の結果を、PS80の代わりにPS20で得た(データ図示せず)。
【0136】
実施例4。脂肪酸結合部位の部分的な飽和は、HSAが粒子形成を軽減することを防止する。
HSAが粒子形成を阻害する分子機構をさらに定義するために、3つの高親和性結合部位との化学量論比でステアリン酸で事前インキュベートしたHSAを含有する溶液の濁度変化の測定を実行した。オレイン酸はより直接的な比較となるが、モノ不飽和脂肪酸の溶解性は、遊離脂肪酸の試料への移行を最小限に抑えることを困難にし、したがって、等しい数の炭化水素を有する飽和分子であるステアリン酸が同等の代替物として選択された。
【0137】
エタノール中の70mMの純粋なステアリン酸(Sigma)をFAF-HSAに3:1のモル比で添加し、室温で30~60分間、25℃でインキュベートし、次いで22,000rcfで4分間遠心分離して、非結合のステアリン酸をペレット化し、続いて0.5mgのリパーゼ及び0.1%のPS80を添加することによってステアリン酸を充填したHSA(SA-HSA)を調製し、450nmでの吸光度を6時間監視した。
【0138】
図4のプロットは、様々なSA-HSA濃度に対する時間の関数として450nmにおける吸光度を示し、SA-HSAを含まない試料(〇)は吸光度の上限(約0.5)を提供し、エラーバーは3回の反復からの標準誤差を表す。
【0139】
FAF-HSAが7.5mg/mLで完全な阻害を伴う用量依存的な濁度の減少を示したのに対し、SA-HSAを含有する全ての試料において濁度の増加が検出され、粒子形成が阻害されなかったことを示した(図4)。加えて、濁度の開始に要する時間は、等量のFAF-HSAを含有する試料と比較して短かった(図3)。
【0140】
実施例5。HSAを含まない抗体調製物における粒子形成の軽減
粒子形成の軽減は、ポリソルベート/リパーゼ混合物に添加されるHSAの濃度に直接比例するように思われたが、任意のタンパク質が粒子形成を非特異的に防止できる可能性が残った。この効果がHSAに特異的であるか、または任意のタンパク質種の一般的な特性である可能性があるかを決定するために、2番目に豊富な循環血清タンパク質であるヒトポリクローナルIgG(N.Leigh Anderson & Norman G.Anderson,The Human Plasma Proteome:History,Character,and Diagnostic Prospects,1 MOLECULAR & CELLULAR PROTEOMICS 845-867(2002)でHSAを置き換え、溶液を濁度について経時的に監視した。
【0141】
IgGを用いた実験のために、Sigma-Aldrich(St.Louis,MO)から購入したヒトポリクローナルIgGを、150mM NaCl及び35mM Tris pH8.0で製造業者の推奨に従って再構成し、25mM Tris、100mM KCl、及びpH7.5で平衡化したZebaスピン脱塩カラム(Thermo Fisher Scientific)上で脱塩した。
【0142】
HSAに対する脂肪酸粒子軽減の特異性を試験するために、異なる濃度のヒトポリクローナルIgGを、25℃で0.5μgのリパーゼ及び0.1%のPS80を含有する溶液に添加し、450nmでの吸光度を6時間監視した。
【0143】
リパーゼ及びPS80を含むが、IgGを含まない陽性対照試料(図5、◇)を使用して、吸光度の上限(約0.5)を提供した。PS80及び10mg/mLのIgGを含むが、リパーゼ(赤い△)を含まない試料を使用して、450nmにおけるベースライン吸光度を示す陰性対照を提供した。
【0144】
FAF-HSAを含有する試料について観察された濁度の低下とは対照的に、ポリ-IgGを含有する全ての試料は、吸光度の増加を急速に示し、それが粒子形成を防止しないことを示した(図5)。驚くべきことに、濁度の見かけのレベルは、IgGを含有しない陽性対照と比較して、穏やかなポリ-IgG濃度依存的増加を示したが、吸光度の増加が粒子数の増加または平均粒子サイズの増加によって引き起こされたかどうかを決定することは困難である。陰性対照において凝集は観察されなかった(図5、赤い△)。
【0145】
濁度の増加は、タンパク質凍結乾燥に起因する可能性が高い。濁度の増加がタンパク質の処理方法(すなわち、凍結乾燥)に起因するものであるかどうかを決定するために、精製した溶液状態から未修飾の溶液状態mAbと、ポリIgG調製に使用した製造業者の凍結乾燥プロセスを模倣した溶液状態mAbとの2通りの方法で調製した。モノクローナル抗体を凍結乾燥し、ポリクローナルIgG製造業者の指示に従って再構成して処理を複製した後、25℃で0.5μgのリパーゼ及び0.1%のPS80を含有する溶液に添加し、450nmでの吸光度を6時間監視した。図6のパネルAは、凍結乾燥されていないモノクローナル抗体を示す。図6のパネルBは、凍結乾燥された同じモノクローナル抗体を示す。プロットは、様々なモノクローナルIgG濃度に対する時間の関数として、450nmにおける吸光度を示す。リパーゼ及びPS80を含むが、IgGを含まない陽性対照試料(◇)は、吸光度の上限(約0.55)を提供する。PS80及び10mg/mLのIgGを含むが、リパーゼを含まない陰性対照試料(赤い△)は、450nmにおけるベースライン吸光度を示す。凍結乾燥された物質は、ポリ-IgGと同様の上昇を示し、この上昇が凍結乾燥プロセスに起因する可能性が高いことを実証した。
【0146】
実施例6。HSAをインビトロで用いた抗体調製物における粒子形成の軽減
HSAがポリクローナルIgGの存在下で粒子形成を軽減することができるかどうかを評価するために、ポリクローナルIgGの濃度を増加させるアッセイ、HSA、ポリクローナルIgG、リパーゼ、及びPS80を用いた試験を行った。
【0147】
4.5mg/mLのFAF-HSA及び7.5mg/mLのFAF-HSAを、25℃でポリクローナルIgG、0.5μgのリパーゼ、及び0.1%のPS80を含有する試料に添加し、450nmでの吸光度を6時間監視した。
【0148】
図7は、様々なポリクローナルIgG濃度に4.5mg/mLのFAF-HSA及び7.5mg/mLのFAF-HSAを添加する時間の関数としての450nmにおける吸光度のプロットを示す。リパーゼ及びPS80を含むが、IgGを含まない陽性対照試料(◇)は、吸光度の上限(約0.5)を提供し、エラーバーは、2つの複製からの標準誤差を表す。
【0149】
HSAの粒子阻害活性は、ポリクローナルIgGの不在下で観察されたものと類似しており(図3)、HSAが別の血清タンパク質の存在下でも粒子の形成を阻害することを示した。
【0150】
実施例7。HSAをインビボで用いた抗体調製物における粒子形成の軽減
上述の迅速なリパーゼ媒介粒子形成及び検出アッセイは、HSAがインビトロで粒子の形成を防止することができることを実証した。より関連性の高いインビボ設定への最初のステップとして、HSAが既存の粒子を可溶化することができるかどうかを評価した。
【0151】
溶液中で予め形成された粒子を可溶化するHSAの能力を試験するために、粒子を調製し(物質及び方法を参照)、希釈して、約0.5ODの最大吸光度を得た。図8に示すように、事前に形成された粒子をFAF-HSAと共にインキュベートし、450nmでの吸光度を6時間監視した(表示されるデータは2.5時間を示す)。リパーゼ及びPS80を含むが、HSAを含まない陽性対照試料(図8、▲)は、吸光度の上限(約0.5)を提供する。PS80及び7.5mg/mLのHSAを含むがリパーゼを含まない陰性対照試料(図8、赤い△)は、450nmでベースライン吸光度を示し、エラーバーは3回の反復からの標準誤差を表す。
【0152】
高レベルの脂肪酸粒子を含有する溶液にFAF-HSAを添加すると、溶液の濁度は急速に低下したが、全ての濃度のFAF-HSAがベースラインレベルに達したわけではなかった(図8)。3.5mg/mL以下のHSA濃度で観察されたプラトーは、事前に形成された粒子が完全に可溶化されなかったことを示す。濁度アッセイの制限内で、事前に形成された粒子を完全に破壊するために、5.5mg/mLを超えるHSA濃度が必要であった。
【0153】
実施例8。ヒト血清によるHSAインビボでの抗体調製物における粒子形成の軽減
実施例7と同様の実験をヒト血清でも行ったが、これは生理学的状態をより密接に表している。特に、血清中に存在するアルブミンは、多数の異なる低溶解性化合物と結合している。
【0154】
事前に形成した粒子を、正常なヒト血清と共にインキュベートし、図9に示すように、450nmでの吸光度を6時間監視した(さらなる変化は観察されなかったため、データを2.5時間まで示した)。リパーゼ及びPS80を含むが、血清を含まない陽性対照試料(△)は、吸光度の上限(約0.6)を提供する。PS80及び21%のヒト血清を含むがリパーゼを含まない陰性対照試料を含めた(データは図示せず)、0.25ODの吸光度を得た。エラーバーは3回の複製からの標準誤差を表す。ヒト血清のベースライン吸光度により、各濃度の血清もリパーゼなし、PS80なし、または粒子なしで分析し、図9に示す結果はバックグラウンド減算シグナルを示す。
【0155】
血清を含有する全ての試料は濁度の低下を示したが、少なくとも14%の血清を含む試料のみが、1.5時間以内に実質的に粒子がないことを示すベースラインを得ることができた。ヒト血清中の50mg/mLアルブミンの上限を仮定すると、これは、ゼロ濁度ベースラインを得るのに必要なFAF-HSAの量と一致する約7.5mg/mLアルブミンに等しい。
【0156】
したがって、生物製剤業界におけるヒト血清アルブミンの新規かつ潜在的に有益な使用が発見された。HSAは、脂肪酸粒子の形成を軽減することができ、賦形剤としてのHSAの包含は、ある特定のポリソルベート含有薬物製品の貯蔵寿命を延長するのに役立ち得ることを示す。重要なことに、HSAはまた、溶液中に既存の粒子を可溶化することができ、生理学的濃度のHSAは、存在する場合、薬物製品の投与後に粒子を効率的かつ効果的に排除し得ることを示唆する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9