(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ボルト引張工具
(51)【国際特許分類】
B25B 29/02 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B25B29/02
(21)【出願番号】P 2021554653
(86)(22)【出願日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2020054549
(87)【国際公開番号】W WO2020182442
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-01-17
(32)【優先日】2019-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】502212604
【氏名又は名称】アトラス・コプコ・インダストリアル・テクニーク・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】アスプルンド ダニエル
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0095915(US,A1)
【文献】特開2015-193062(JP,A)
【文献】特開平11-062373(JP,A)
【文献】特開2008-095869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 29/02
B25B 21/00
B25B 23/14
B23P 19/06
F16D 43/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースから突出するねじ付きボルト又はピンに張力を加えるように適合されたボルト引張工具であって、
前記ねじ付きボルト又はピンにねじ留めされるように適合された雌ねじを有するボルト受入要素(5)と、
前記ボルトにねじ留めされるナットを受け入れるように適合されたナットソケット(10)と、
前記ボルト受入要素に結合されて軸方向の力を加えるように適合された軸(3)であって、前記軸(3)が雄ねじを含む、軸(3)と、
前記軸と係合するように配置され、前記軸(3)の前記雄ねじ(3a)と協働するように適合された雌ねじ(6a)を有するねじ付きスリーブ(6)であって、前記軸(3)と前記ねじ付きスリーブとの間の相対回転運動が、前記軸(3)と前記ねじ付きスリーブとの間の相対的な軸方向変位をもたらすようになる、ねじ付きスリーブ(6)と、
前記ねじ付きスリーブに結合され、第1の端部(2a)にて前記ワークピースを選択的に支持するように適合された支持スリーブ(2)であって、
前記軸と前記ねじ付きスリーブとの間の相対回転運動により前記支持スリーブが前記ワークピースに接触すると反力が
前記ワークピースに伝達されて、これにより
前記軸によってボルトに加えられる前記軸方向の力を相殺することができるようになる、支持スリーブ(2)と、
前記ナットソケットと前記支持スリーブとの間の相対回転運動を可能にするように前記ナットソケット及び前記支持スリーブを接続するように適合されたカップリング(9)であって、前記カップリングは、
所定の変形しか許容しないことにより前記ナットソケットと前記支持スリーブとの間
の相対
回転運動を
制限する、カップリング(9)と、
を備える、ボルト引張工具。
【請求項2】
前記カップリングは、少なくとも前記
ナットソケットと前記支持スリーブとの間の相対回転運動を
制限するように適合された弾性要素(9a)を含み、前記弾性要素が、前記支持スリーブ及び前記
ナットソケットと係合する、請求項1に記載のボルト引張工具。
【請求項3】
前記弾性要素が、前記
ナットソケットの第1の端部及び前記支持スリーブの第2の端部にて係合するばね要素(9a)である、請求項2に記載のボルト引張工具。
【請求項4】
前記ばねの第1の端部が、前記
ナットソケットに係合し、前記ばねの第2の端部が、前記支持スリーブの長手方向スロットに係合する、請求項3に記載のボルト引張工具。
【請求項5】
前記軸上の前記雄ねじが、前記
軸に接続されるモーターの
出力シャフトの回転方向と反対の方向に向けられる、請求項1から4のいずれか一項に記載のボルト引張工具。
【請求項6】
前記軸及び前記ねじ付きスリーブが、作動スクリュー機構を形成し、前記作動スクリュー機構が、前記ねじ付きスリーブの前記雌ねじと前記軸上の前記雄ねじとの間に配置された少なくとも1つのねじ付きローラー(15)を更に備える遊星ローラースクリューである、請求項1に記載のボルト引張工具。
【請求項7】
前記ボルト受入要素(5)を少なくとも部分的に内包する外側スリーブ(7)を更に備える、請求項1~6のいずれか一項に記載のボルト引張工具。
【請求項8】
前記ボルト受入要素(5)が更に、
前記軸に結合された第1の部材(5a)と、
前記ねじ付きボルト又はピンにねじ留めされるように適合された雌ねじを有するキャビティを含む第2の部材(5b)と、
前記第1及び第2の部材を選択的に接続するカップリングと、
を備える、請求項
7に記載のボルト引張工具。
【請求項9】
前記カップリングは、制限された回転トルクが前記カップリングによって伝達できるように、部材(5a)及び部材(5b)間のトルク制限カップリングである、請求項8に記載のボルト引張工具。
【請求項10】
前記外側スリーブ(7)が前記第2の部材(5b)に結合され、前記トルク制限カップリングが、前記部材(5a)と前記外側スリーブ(7)との間に設けられている、請求項7に従属する場合の請求項9に記載のボルト引張工具。
【請求項11】
前記ナットソケットが、前記ボルト受入要素を支持するように配置されている、請求項1~10のいずれか一項に記載のボルト引張工具。
【請求項12】
前記ナットソケットが、軸受(11)を介して前記ボルト受入要素を支持するように配置され、前記ナットソケットが、前記ボルト受入要素(5)から回転結合解除されるようになる、請求項11に記載のボルト引張工具。
【請求項13】
前記ナットソケットと前記ばね要素(9a)との間の前記カップリングは、前記
ナットソケットが第1の方向に回転するときに、前記ばね要素の第1の端部が前記ナットソケットと係合し、前記
ナットソケットが反対の第2の方向に回転するときに、前記ばね要素の第1の端部が前記ナットソケットを係合解除するようにする一方向結合である、請求項3に記載のボルト引張工具。
【請求項14】
前記ボルトに加えられる前記軸方向の力を測定するための手段を更に備える、請求項1~13のいずれか一項に記載のボルト引張工具。
【請求項15】
前記軸方向の力を測定するための前記手段が、超音波測定装置を含む、請求項14に記載のボルト引張工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ボルトの締め付け、より詳細には、ワークピースから突出しているねじ付きボルト又はピンに張力を加えるためのボルト引張及びボルト引張工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ナット、スクリュー、又はボルトなどのねじ付きファスナーを使用して接合部を締め付ける場合、通常は、接合部に必要な機能を提供するために、特定のクランプ力を実現する必要がある。従って、このような接合部のファスナーは、主として、必要とされる締め付け力レベルに確実に到達できる程度に締め付けることが重要である。
【0003】
しかしながら、一般的な電動工具を使用してボルトを締め付けると、ボルトにトルクが加わる。現在一般的に使用されている電動工具は、工具によって加えられるトルクを測定して、対応するクランプ荷重を計算又は推定することによって、締め付けプロセス中に接合部の望ましい最小締め付け力に実際に到達することを保証する様々な方法を提供するが、到達した実際のクランプ力に関する不確実性が依然として存在し、これは、例えば、ファスナーと接合されている1又は2以上の構成要素との間の摩擦が、接合部ごとに大きく異なる可能性があることに起因する。
【0004】
従って、加えられたトルクと結果として生じるクランプ力の間には多くの要因の関係があるが、最も重要なのは、ねじの摩擦(すなわちナットとボルトの間)とナット又はボルト頭部下の摩擦は、電動工具によって特定のトルクが加えられた後の接合部において達成される実際のクランプ荷重に関してかなりの不確実性を導入することによって、この関係に影響を与えることである。
【0005】
従って、締め付けごとに加えられるトルクの精度に関して十分な注意が払われている場合でも、結果としてクランプ荷重に大きなばらつきが存在している可能性がある。
【0006】
これらの欠点の幾つかを軽減するために、すなわち、接合部にて正確で十分に制御されたクランプ力を得るために、いわゆるボルト引張の使用が提案されている。ボルトの引張を行う際には、ボルトの所望の伸び、従って所望のクランプ荷重を達成するために、ねじ付き要素(例えば、ボルト又はねじピン)に軸方向の引張力が加えられる。このクランプ荷重は、ボルトの伸び及び材料特性から正確に決定することができる。所望の伸び(所望のクランプ力)が得られると、ねじ付き要素はナットによってロックされて、ボルトの伸び状態及びひいてはクランプ力を維持する。
【0007】
このような方法は、一般的に、例えば、石油及びガス産業にてフランジ接合部を締め付けるための大型ボルトに対して実行される。このような場合、一般的に液圧式テンショナーが使用される。しかしながら、このようなテンショナーは、極めて低速であり、作動するのに液圧ポンプが必要になるなどの欠点が伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、改良されたボルト引張工具を提供することが望ましいであろう。詳細には、小型ボルトの引張にも好適な、より速く便利な工具を提供することが望ましいであろう。これらの懸念のうちの1又は2以上に良好に対処するために、独立クレームにおいて定義されたボルト引張工具が提供される。好ましい実施形態は、従属請求項にて定義されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、ワークピースから突出するねじ付きボルト又はピンに張力を加えるためのボルト引張工具が提供される。工具は、ねじ付きボルト又はピンにねじ留めされる雌ねじを有するボルト受入要素と、ボルトにねじ留めされるナットを受け入れるように適合されたナットソケットと、ボルトに結合されて軸方向の力を加えるように適合された、雄ねじを含む軸と、軸上に配置され、軸の雄ねじと協働するように適合された雌ねじを有し、軸とねじ付きスリーブとの間の相対的な回転運動が軸とねじ付きスリーブとの間の相対的な軸方向変位をもたらすようになる、ねじ付きスリーブと、ねじ付きスリーブに接続され、第1の端部にてワークピースを選択的に支持するように適合されて、反力がワークピースに伝達され、これによって軸によりボルトに加えられる軸方向の力を相殺することができるようになる、支持スリーブと、ナットソケット及び支持スリーブを接続するように適合され、ナットソケットと支持スリーブの間の制限された相対運動を可能にする、カップリングと、を備える。
【0010】
第1の態様によれば、ボルト引張工具は、ねじ付き要素への軸方向の力の迅速な適用を可能にするだけでなく、ナットによって張力が加えられた状態、すなわち伸長状態でのボルトの同時ロックを可能にする設計によって、上記の問題に対する本発明の解決策を提供する。これにより、すなわち、構成された部品が適切な順序で自動的に回転できるように工具を設計することにより、工具は、便利でユーザーが使い易い方法で接合部に正確なクランプ荷重を提供する。従って、工具の締め付け及び取り扱いの品質は、当技術分野で知られているものと比較して大幅に容易になり、簡素化することができる。従って、本発明の利点は、既知の工具よりもばらつきがかなり少ない正確なクランプ荷重を接合部に伝達できること、更に、工具が便利で使い易いことを含む。
【0011】
ユーザーが工具を使用するときには、例えばモーター出力シャフトからの回転運動が、軸に適用される。最初に、ある意味で無負荷のステップでは、軸は、記載される他の構成要素、すなわちボルト受入要素、ナットソケット、ねじ付きスリーブ、及び支持スリーブと共に回転し、ナットソケットは、これらの間のカップリングを介して支持スリーブによって回転し、制限された相対運動を可能にする。ナットソケットは、好ましくは、例えば六角形のナットなどのナットに対応する形状を有して、ナットに適合する外形を可能にするナットソケットが、ナット上に適用され、ナットを回転させ、ワークピースの表面に接触する。ナットがワークピースに向かって十分な距離を移動すると直ぐに、ボルト受入要素がねじ付き要素にねじ留めされ、これによりまた、ねじ付き要素に張力を加えるように適合された軸とねじ付き要素との間にカップリングが確立される。このプロセスの間、ナットソケットがワークピースに嵌装されてもはや回転できなくなるので、支持スリーブは、ワークピースに向かう方向に同時に移動し、最終的にはワークピースの接触面に接触する。
【0012】
次に、支持スリーブがワークピースと接触し、従って、支持スリーブの回転が停止すると、ねじ付きスリーブと軸との間の相対回転が起こり、その結果、ボルトに結合されてボルトに軸方向の力が加わるように適合された軸と支持スリーブとの間に軸方向変位が生じ、これにより軸方向の力がボルトに加わるようになる。ナットソケットと支持スリーブとの間の制限された相対運動のみを可能にするカップリングは、ナットをワークピースの接触面に嵌装する状態にし、その結果、工具が取り外されたときに、引張力により達成されるボルトの伸長(ひいてはクランプ荷重)が維持されるようになる。
【0013】
所望のクランプ荷重が達成されると、軸の回転方向を反転することにより、ねじ付き要素からボルト受入要素を緩めて外すことによってボルト引張工具を取り外すことができる。これにより、支持スリーブ又は外側スリーブが取り外されて、再び回転自在になり、従って、ボルト受入要素をボルトから緩めて外し、工具を取り除くことができる。ボルト引張工具は、一部の実施形態では、ハウジング、上記ハウジング内に配置されたモーター、及びモーターに接続された又はモーターにより構成される出力シャフトを備えることができる。この出力シャフトの回転運動は、適切な接続によってボルト引張工具の軸に伝達することができる。モーターは、電気モーター又は空気圧モーターとすることができ、液圧駆動システムもまた、本明細書の範囲内で考えることができる。ボルト引張工具は更に、ハンドヘルド工具又は他の実施形態では固定工具とすることができる。ボルト引張工具は、一部の実施形態では、0.01~300kNm、幾つかの実施形態では20~100kNmの範囲のクランプ荷重を提供するように適合させることができる。
【0014】
幾つかの実施形態では、軸及びねじ付きスリーブは、軸とねじ付きスリーブとの間の相対回転が相対軸方向変位をもたらすように、作動スクリュー機構を共に形成するものとして説明することができる。ナットソケットは、好ましくは、例えば六角形などのナットに対応し、ナットに適合する外形を可能にする形状を有する。しかしながら、当業者であれば、他の形状が考えられることは理解される。当業者は更に、ねじ付き要素、ボルト及びスクリューという用語が、本明細書全体にわたり同義的に使用されることを理解している。
【0015】
一実施形態によれば、制限された相対運動は、制限された相対軸方向及び回転運動であり、カップリングは、少なくとも上記制限された相対回転運動を提供するように適合された弾性要素を含み、上記弾性要素は、支持スリーブ及びソケットを係合する。弾性要素とは、変形後に元の形状に弾性戻りする要素であり、一般に伸縮性又は可撓性要素と呼ばれることを理解されたい。幾つかの実施形態では、弾性要素は、支持スリーブとソケットとの間の相対回転によって偏位される要素とすることができ、すなわち、初期の無負荷状態と比較して角度方向のオフセットによって偏位される要素とすることができる。更に、幾つかの実施形態では、弾性要素は、伸張時にばね又は偏位力を作用する要素、又はより一般的には伸張時にエネルギーを蓄える要素として説明することができる。この効果は、支持スリーブが依然として回転状態のワークピース表面に向かって移動している間に、ナットソケットがワークピース表面に接して停止したときの締め付け段階で弾性要素が伸張され、次いで、このエネルギー、すなわち弾性要素において結果として生じる力が引張段階で利用されて、ナットソケットを連続的に回転させて、ナットをワークピースの表面に接触状態に維持し、従って、工具が取り外された後のボルトの伸びを維持する、という点で、本発明において適切に利用される。すなわち、ボルトが伸張されてナットが表面からわずかに持ち上げられ、ナットが回転できるようになると、蓄積されたエネルギーが解放されて、捩りトルクとして提供される。言い換えると、このような場合のナットソケットと支持スリーブ間の相対運動により、ばね要素の偏位又は張力が発生し、これによって「締め付け」力(すなわち、ナットのロック方向に作用する捩りトルク)がナットソケットに加わり、ボルト又はねじ付き要素が連続的に引張荷重が加わって伸びるときに、ナットをワークピースに接して継続的に維持し、従って、ナットは、伸びるボルトの動きに追従するよう回転して、ねじ付き要素の周りの表面と接触したままとなり、ねじ付き要素への軸方向荷重が解放されると、伸び及びひいてはクランプ荷重が維持される。しかしながら、弾性要素は、最終的にはそれ以上の変形が生じることができない状態になり、相対回転が停止することになるので、許容される相対回転は、制限された相対回転である。軸の回転方向が反転されると直ぐにナットが緩まないという点で、提供されるトルクはまた有利とすることができる。
【0016】
一実施形態によれば、弾性要素は、第1の端部でソケットに係合し、第2の端部で支持スリーブに係合するばね要素である。例としては、いずれかのタイプの捩りばね又はスパイラルばねが挙げられる。従って、相対回転が発生すると、ばねに張力が加わり、この蓄積されたエネルギーを利用して、ナットを「締め付ける」こと、すなわち、ナットをボルトの周囲の表面に接触させたままにすることができる。
【0017】
一実施形態によれば、上記ばねの第1の端部は、上記ソケットと係合し、上記ばねの第2の端部は、上記支持スリーブの長手方向スロットと係合する。これにより、相対的な軸方向運動が許容されるだけでなく、相対的な軸方向運動は、ばねの第2の端部がスロットに沿って移動することによって有利に許容することができる。スロットは、ばねの端部がスロットに係合するよりも長い軸方向長さを有することができる。これにより、初期段階中にナットソケットが停止した後、支持スリーブがワークピース表面に向かって下向きに移動することができる。
【0018】
一実施形態によれば、支持スリーブは、ボルト受入要素に対して軸方向に移動可能である。従って、ボルト受入要素は、例えば、ワークピースから離れて移動して、支持スリーブがワークピースを支持する(すなわち、支持し続ける)間にボルト(又はねじ付き要素)にボルト引張力を加えて、支持を提供し力の平衡をとり、すなわち結果として生じる反力を処理する。
【0019】
更に、幾つかの実施形態では、ボルト受入要素と支持スリーブとの間で相対回転が可能である。これは、支持スリーブの回転を停止できる一方で、ボルト受入要素を回転させることが可能となり、その逆も可能であるという点で有利である。例えば、一実施形態では、支持スリーブがワークピースの接触面を支持するときに支持スリーブの回転を停止することができると同時に、ボルト受入要素の継続的な回転を可能にすることができる。
【0020】
一実施形態によれば、軸の雄ねじは、モーターの回転方向と反対の方向に向けられている。例えば、モーター(及び従って軸)の時計回りの回転方向の場合、ねじは、左ねじとすることができる。軸に対して時計回り方向で回転が提供されると、このような場合、ワークピースから離れる方向の軸の移動が生じる。例えば、ねじ付きスリーブの回転が(支持スリーブによって)停止し、軸とねじ付きスリーブの間に相対回転が発生すると、軸は、ワークピースから離れる方向に移動し、ボルトに張力を加える。ねじ付きスリーブの雌ねじはまた、一部の実施形態では、モーターの回転方向と反対の方向に向けられたねじとすることができる。
【0021】
例えば、一実施形態によれば、軸及びねじ付きスリーブは、作動スクリュー機構を形成する。このような機構において、作動スクリュー機構は、スクリュー機構又はローラースクリュー、例えば、遊星ローラースクリューとすることができ、更に、ねじ付きスリーブの雌ねじと軸の雄ねじとの間に配置されたねじローラーを備える。これは、低摩擦を提供し高速高精度の動きを可能にするスクリューアクチュエータが提供されるという利点がある。このような実施形態では、支持スリーブの回転が停止する箇所(従って、外側スリーブがワークピースを支持する位置に向かって移動し始めるとき)は、ナットソケットと支持スリーブとの間を接続するカップリングによって提供されるトルクと、ローラースクリューの摩擦に起因するトルクとの間を平衡をとることにより決定される。
【0022】
一実施形態によれば、ボルト引張工具は、ボルト受入要素を少なくとも部分的に内包する外側スリーブを更に含む。これは、例えば、ある実施形態では、ボルト受入要素と外側スリーブとの間の相対回転が容易になるという点で有利である。
【0023】
一実施形態によれば、ボルト受入要素は更に、軸に結合された第1の部材、ねじ付きボルト又はピンにねじ留めされるように適合された雌ねじを有するキャビティを含む第2の部材、並びに第1及び第2の部材を選択的に接続するカップリングを備える。これにより、例えば、軸に結合された部材(従って、軸)と第2の部材(従って、ボルト)との間の相対回転及び/又は相対軸方向運動が可能になり、従って、ボルトと軸との間の結合解除が可能になる。一実施形態によれば、カップリングは、第1の部材と第2の部材との間のトルク制限カップリングであり、制限された回転トルクがカップリングによって伝達できるようになる。これは、例えば、ナットをワークピース上で支持し、要素のねじをスクリュー上にねじ留めするために、カップリング上で第1の回転を伝達できる点で有利であり、すなわち、回転に対する抵抗がほとんど又は全くなく、従って、接合部にわたって伝達する必要があるトルクがより小さくなり、他方、雌ねじがボルトにねじ留めされ、回転に対する抵抗が増加すると、トルクが制限されたクラッチがスリップし、従って、ボルトとこの段階でのボルトと軸との間の結合解除が可能になる。
【0024】
一実施形態によれば、外側スリーブは、第2の部材に結合され、トルク制限されたカップリングが第1の部材と外側スリーブとの間に設けられる。
【0025】
例えば、一実施形態では、トルク制限カップリングは、外側スリーブと第1の部材との間に提供されるOリングである。これにより、Oリングによって提供される摩擦は、接合部を介して回転運動を伝達するのに十分であるのに対し、相対回転は、Oリングによって提供される摩擦を克服するのに十分高いトルクレベルで発生する可能性があるので、カップリングを介して伝達されるトルクのレベルは低くなる。
【0026】
一実施形態では、ボルト引張工具は更に、ボルトと第1の部分との間に提供される摩擦低減要素を含む。これは、例えば、不要なロックのリスクが低減されるという点で有利である。このような摩擦低減要素は、例えば、小さな鋼球とすることができる。
【0027】
一実施形態によれば、ナットソケットは、軸受、例えばボール軸受を介してボルト受入要素を支持するように構成され、その結果、上記ナットソケットは、ボルト受入要素から回転結合が解除される。これにより、ナットソケットは、支持スリーブによってのみ回転し、ボルト受入要素の回転の影響を受けないことが確保される。ナットソケットがボルト受入要素を直接支持する実施形態が考えられる。
【0028】
一実施形態によれば、ナットソケットとばね要素との間のカップリングは、ソケットが第1の方向に回転するときに、ばね要素の第1の端部がナットソケットによって係合され、ソケットが反対の第2の方向に回転するときに、ナットソケットによって係合されないような一方向結合を含む。これは、接合部からの工具の取り外しが容易になるという点で有利であり、そうでなければ、工具を反転させたときにナットが緩み、クランプ荷重の一部又は全てが失われるという重大なリスクが発生することになる。
【0029】
一実施形態によれば、ボルト引張工具は、ボルトに加えられる軸方向の力を測定するための手段を更に備える。このような手段は、ボルト引張工具の適切な位置に取り付けられた歪みゲージ、工具に取り付けられたロードセル又はフォースゲージ、或いは印加される力及びひいてはクランプ荷重を示す量を測定するのに適した他のタイプのセンサーを含むことができる。測定のためのこのような手段は、好ましくは、軸方向の引張力を受ける構成要素上及び/又は構成要素内のそれぞれの関心のある量を測定するように配置することができる。例えば、工具が引張力を加えることに起因して、測定手段は、引張荷重、すなわち、例えば軸又はローラースクリューなどのクランプ荷重を受ける工具の1又は2以上の構成要素に配置又は接続することができる。
【0030】
幾つかの実施形態では、モーター又は同様のものに供給される電力の測定などの間接的な測定を利用することができる。他の例には、トルク、角度、油圧、又は電流制御の測定が揚げられる。
【0031】
一実施形態によれば、軸方向の力を測定するための手段は、超音波測定装置を含む。前述の方法は全てそれぞれの利点があるが、全て機械的及び電気的な一連の測定が行われるため、誤差が発生し、引張の正確さ及び精度が低下する。しかしながら、工具は、全クランプ荷重を受けるので、超音波測定を使用してより直接的な測定が可能になる。これにより、クランプ荷重測定の多くの誤差を回避することができる。
【0032】
ボルトの締め付け中に発生するクランプ力を決定するためのボルトの超音波測定は知られている。このような方法を使用する場合、超音波パルスが適切なトランスデューサーによってボルトに送信され、飛行時間と呼ばれることが多い応答時間が監視される。飛行時間はボルトの長さに対応する。従って、測定された飛行時間の何らかの増加は、ボルトの長さの増加、すなわちボルトのクランプ力の増加に対応する。しかしながら、このような超音波法に伴う問題は、超音波メーターとボルトの間に十分な接触を確立するのが困難であることが含まれ、通常は、工具に特別なスクリュー及び/又は特別なプローブを使用する望ましくない必要性につながる。
【0033】
従って、一実施形態では、このような超音波装置は、工具の内部に配置することができる。これは、例えば、従来技術の解決策から知られているような工具上でのこのような特殊なスクリュー及び/又は特殊なプローブを回避でき、従って、測定を容易にすると共に、精度を高めるという点で有利である。例えば、工具が引張力を加えることに起因して、装置は、引張荷重、すなわちクランプ荷重を受ける工具の1又は2以上の構成要素内に配置されるか、又はこれらに接続することができる。言い換えると、超音波装置は、例えば、引張力、すなわちクランプ荷重を受ける工具の1又は2以上の構成要素における超音波の飛行時間を伝達及び/又は測定するように構成することができる。
【0034】
一実施形態によれば、超音波測定装置は、超音波トランスデューサーを含み、軸方向の引張力を受ける構成要素内の超音波の飛行時間を測定するように適合されている。これにより、長さの変化、従ってクランプ荷重を決定することができる。このような実施形態では、測定が実行される構成要素は、例えば、超音波を反射することができる平坦な表面を提供することによって、測定精度を高めるように容易に適合させることができる。
【0035】
一実施形態では、測定は軸上で実行される。別の実施形態では、測定はローラースクリューで行われる。
【0036】
一実施形態では、測定装置は、クランプ負荷信号を監視することによって、ナットが全荷重にさらされたときに発生する弛緩の量を測定するように適合させることができる。
【0037】
本発明の第2の態様によれば、電動工具と共に使用するためのボルト張力機構が提供される。このようなボルト張力機構は、幾つかの実施形態では、出力モーター軸などの電動工具の出力軸に取り付けられるように適合された別個のボルト張力機構とすることができる。このような実施形態では、ボルト張力機構は更に、工具の軸への接続を提供するのに適切な手段を含むことができる。例としては、適切なソケット、チャック又は同様のものが挙げられる。本発明の第2の態様の範囲内で考えられるボルト張力機構の目的、利点及び特徴は、本発明の第1の態様を参照した前述の議論によって容易に理解される。
【0038】
本発明の更なる目的、特徴及び利点は、以下の詳細な開示、図面及び添付の特許請求の範囲を研究すると明らかになるであろう。当業者であれば、本発明の異なる特徴を組み合わせて、以下に記載されるもの以外の実施形態を生成できることは、理解される。
【0039】
本発明は、添付図面を参照しながら、好ましい実施形態に関する以下の例示的で非限定的な詳細な説明を通して、より良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】一実施形態によるボルト引張工具の軸に沿ったより詳細な断面図である。
【
図2】一実施形態によるボルト引張工具の軸に垂直なより詳細な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
全ての図は概略図であり、必ずしも縮尺どおりではなく、一般に本発明を明らかにするために必要な部分のみを示しており、他の部分は省略されるか又は単に示唆されている場合がある。
【0042】
本発明の一実施形態によるボルト引張工具が、
図1及び2に示されている。図示の例示的な実施形態は、M10スクリューの締め付けに適合されており、ここでは所望のクランプ荷重が30~40kNの範囲にある。
【0043】
工具は、第1の端部2aにてワークピースの表面を支持するように適合された支持スリーブ2と、ボルトにねじ留めされるナットを受け入れるように適合され、ねじ付きボルトにねじ留めされて引張工具とボルトを接続する雌ねじを有するボルト受入要素5を支持するように配置されたたナットソケット10とを備える。更に、軸3は、ボルト受入要素に結合され、ここで軸方向の力を加えるように適合されており、雄ねじ(図示せず)を備える。雄ねじと連動する雌ねじ6aを含み、これによりスクリュー型アクチュエータを形成するねじ付きスリーブ6aは、支持スリーブ2に接続されている。
【0044】
図示の実施形態は、軸3に回転運動を適用するための手段MOを、例示的な実施形態においては例えばモーターの出力シャフト(図示せず)に接続することができる中間軸MOの形態で、更に含む。ばね要素9a、図示の実施形態では、巻かれた鋼製ワイヤの形態の捩りばね9aが、ナットソケット10と支持スリーブ2との間に配置されている。
【0045】
図1は、ボルト引張工具の組み立て状態の幾つかの構成要素を断面図で示している。
図1から分かるように、ほとんどの構成要素は、周囲のスリーブ2の内側に(又は囲まれて)配置され、軸3は、支持スリーブ2を通ってねじ付きスリーブ6からボルト受入要素5まで延びる。捩りばね9aは、ナットソケット10上に配置されて取り付けられ、ナットソケット10は、ボルト受入要素5を支持する。
【0046】
図示の実施形態では、ボルト受入要素5は、適切な手段によって軸に接続された第1の要素5a(図では、第1の要素5aは、軸に固定結合されている)と、雌ねじを有し、従ってボルト又はねじ付き要素に取り付けられるように適合されている第2の要素5bと、第1及び第2の要素の周囲にある又は内包する外側スリーブ7と、を備える。更に、要素5aと5bとの間にトルク制限カップリングが配置されて、要素5a及び5bを選択的に接続し、要素5a、5b間で制限された回転トルクを伝達できるようにする。図示の実施形態では、外側スリーブ7は、第2の要素5bに固定され(すなわち、固定結合され)、トルク制限カップリング(図示せず)が、要素5aと外側スリーブ7との間、例えば、要素5aにおいて円周方向溝に設けられる。
図1に示す例示的な事例の場合、トルク制限カップリングは、要素5aとスリーブ7との間に設けられたOリング(図示せず)である。
【0047】
例示の追加の構成要素は、要素5aとスリーブ7の背面との間に設けられた軸方向軸受13と、ボルト(図示せず)とボルト受入要素5の一部との間に設けられた摩擦低減要素14と、を含む。
【0048】
図1はまた、ナットソケットに係合するための第1の端部と、支持スリーブ2に係合するための第2の端部とを備える捩りばね9aを示している。
【0049】
ナットソケット10は、ボルトを取り囲むワークピースの表面を支持するように適合された第1の表面101と、捩りばね9aのための支持ヒールの一部を形成する第2の反対側の表面とを備える。更に、ソケットの上部は、上部が非対称ヒール(上記ナットソケットの円周面に配置された放射状の突起)を含むという点で、一方向カップリングとして説明できるものによってばねの端部と係合するように適合されており、この非対称ヒールは、ソケットが第1の方向(この場合は時計回りの方向)に回転するときに捩りばねの第1の端部に係合し、反対方向の回転が生じたときには端部に係合しないように適合されている。
【0050】
図2に示す断面図では、軸3によって形成される遊星ローラースクリューのローラー15と、ねじ付きスリーブ6と、ねじ付きスリーブ6の雌ねじと軸3上の雄ねじ3aとの間に配置された複数のねじ付きローラー15とが示されている。例示の実施形態は、6つのローラー15を含む。
【0051】
次に、ボルト引張工具の例示的な実施形態の機能について説明する。一般に、モーター出力シャフトからの回転運動は、図示の実施形態では追加の軸MOによって軸3に適用され、また無負荷状態では、例えば、ナット及び/又はボルトを係合せずに工具を駆動するときには、軸3は、他の記載された構成要素、すなわち、ボルト受入要素5、外側スリーブ7、ナットソケット、ねじ付きスリーブ、及び支持スリーブと共に回転し、これらの間では実質的に相対回転は生じない。
【0052】
締め付け動作、より具体的には引張動作が開始されると、例えば六角形などのナットに対応する形状を有し、ナットと適合する形状を可能にするナットソケットが、ナットを覆って取り付けられ、これによってナットを回転させてワークピースの接触面に接触させ、ボルト受入要素がワークピースから突出したねじ付き要素にねじ留めされて、これにより、ねじ付き要素に張力を加えるのに必要とされる、工具とねじ付き要素との間の結合を確立するようにする。
【0053】
ナットソケットが最初にワークピースに嵌装されると、ソケットは、プロセスの段階の間は接触面を支持し、支持スリーブは、依然として接触面に比べてわずかに高い位置に留まって、引き続き回転自在となる。
【0054】
この段階に至るまで、回転は、全ての構成要素(ナットソケットを除く)の間で同期している。しかしながら、ボルト受入要素5、及びより詳細には、ボルト受入要素の第2の部分又は前部5bがボルトに完全にねじ留めされると、トルク制限カップリング(図示せず)、例えばOリングを介して伝達されるトルクが増大して、カップリングが滑り、前部5b及びひいてはこれに接続されたスリーブ7が、第1の要素5aから結合解除されて、静止したままになる。しかしながら、軸3と第1要素5a、ねじ付きスリーブ6、及び支持スリーブ2は、回転し続ける。
【0055】
より具体的には、支持スリーブ2は、捩りばね9aの抵抗に逆らって回転し、捩りばね9aは、現在は静置しているナットソケットと(回転している)支持スリーブ2との間に配置されている。しかしながら、ばねはある程度の変形しか許容せず、支持スリーブ2の回転が止まっているので、許容される相対回転は、制限された相対回転である。
【0056】
その結果、スリーブ6と支持スリーブ2との間のカップリングに起因して、ねじ付きスリーブ6の回転が停止する。これは、ばね要素9aによって提供される回転抵抗に起因したトルクが、遊星ローラースクリューの摩擦抵抗によって提供されるトルクよりも大きいときに発生する。ねじ付きスリーブの回転が止まり、従って、モーターによって回転し続ける軸とねじ付きスリーブの相対回転が発生すると、最初にスリーブ2がワークピースの接触面に接触し、従って、加えられようとしている引張力を相殺し、すなわち反力を処理する支持体を形成する。この接触を達成するのに必要な支持スリーブ2の軸方向の移動は、軸3の雄ねじがモーターの回転方向と反対方向に向けられていることに起因して達成される(図示の実施形態では、雄ねじは左であり、回転方向は時計回りである)。従って、軸3(ねじ付きスリーブ6がロックされている)に対して時計回り方向に回転が提供されると、支持スリーブ2がワークピースに向かう方向に移動することになる。
【0057】
スリーブ2を表面に接触させるステップの後、ボルトの実際の引張が続き、支持スリーブ2が接触面に嵌装された後、ワークピースに向かう方向にそれ以上移動できないことが明らかであるため、代わりに、軸とねじ付きスリーブの間の相対回転により(この場合もねじの向きに起因して)、接触面から離れる方向に軸3が軸方向に変位し、これによりボルトに軸方向の引張力が作用するようになる。
【0058】
引張段階では、ボルトに張力がかかると、ボルトに配置されたナットは、ボルトが延びるにつれて、その結果として接触面から上昇する。しかしながら、ばね要素9aは、スリーブ2がナットソケットに対して回転したときに発生する偏位/ばね力に起因して、ナットをワークピースの接触面に対してロック/嵌装した状態にする。この力は、ナットを継続的に「引き寄せる」ので、従って、表面に対してナットを嵌装ステージにし、又は保持する。
【0059】
所望のクランプ荷重が達成されると、ボルト引張工具を取り外すことができる。これは、モーターの回転方向をこの事例では反時計回りに反転させることで実現される。最初に、これによって遊星ローラースクリューに対する張力が解放され、ナットソケット10の回転が停止することを意味する。これは、支持スリーブ2がもはやワークピース表面に向かって押し付けられず、従って、回転が許容されることに起因する(すなわち、回転がもはやロックされない)。但し、ナットソケット10はナット上に配置されているため、ソケット10は回転できず、従って、接続要素(この場合はばね9a)とナットソケット10との間の係合が必要とすることができ、この反対の反時計回り方向への無制限の相対回転を可能にする。このようなわけで、図示の実施形態のカップリングは、上記の一方向機能を提供する設計を含み、ばね要素の第1の端部が、第1の方向に回転するときにナットソケットによって係合され、ソケットが反対の第2の方向に回転するときにナットソケットによって係合されないようになる。上記のように、例示の実施形態では、これは、ナットソケットの周囲に沿って配置された複数の突出部又は肩部によって達成される。これらの突出部の形状は、時計回りに回転したときのばね9aの第1の端部が実質的に半径方向に延びる表面に係合し、従って、ばね9aが肩部に回転係合することができ、反時計回りに回転したときに上記肩部の傾斜部分に沿ってスライドし、従って、ソケット10とばね9aとの間の係合なしに支持スリーブ2を反時計回り方向に回転可能にするような形状である。これにより、ボルトのねじにねじ留めされるボルト受入要素5が回転することができ、最終的には工具1を取り外すことができるようになる。ボルト係合要素5は、ボルトから完全にねじから外されているので、ナットソケット10も取り外すことができる。
【0060】
本発明は、図面及び上述の説明において詳細に例示され説明されてきたが、このような例示及び説明は、例証又は例示的なものであり、限定とみなすべきではなく、本発明は、開示された実施形態に限定されない。当業者であれば、添付の特許請求の範囲において定義される範囲内で多くの修正、変形及び変更が考えられることは理解される。
【0061】
加えて、開示された実施形態の変形形態は、図面、開示及び添付の特許請求の範囲を検討することにより、特許請求される本発明を実施する際に当業者によって理解及び達成することができる。特許請求の範囲において、「含む」という用語は、他の要素又はステップを除外するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外するものではない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。特許請求の範囲におけるいずれかの参照符号は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきでない。
【符号の説明】
【0062】
3 軸
3a 雄ねじ
5 ボルト受入要素
6 ねじ付きスリーブ
6a 雌ねじ
9 カップリング
10 ナットソケット