(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】コーティングされた微小突起アレイを組み込んだ診断用消耗品およびその方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/08 20060101AFI20240927BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20240927BHJP
G01N 33/49 20060101ALI20240927BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N37/00 101
G01N33/49 Z
G01N33/48 K
(21)【出願番号】P 2021556437
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(86)【国際出願番号】 US2020019665
(87)【国際公開番号】W WO2020190462
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-12-15
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508147326
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】サペ・デ・フリーズ
(72)【発明者】
【氏名】ナイジェル・フェアバンク
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0042766(US,A1)
【文献】特表2012-524894(JP,A)
【文献】国際公開第2018/236833(WO,A1)
【文献】特表2008-544214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/08
G01N 37/00
G01N 33/49
G01N 33/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体サンプルの分析に使用するための診断用消耗品(600)であって:
サンプル調製ステージ(100)を有する基板(101、500)を含み、該サンプル調製ステージ(100)は:
i)流体サンプルを受ける入口ポート(104)と;
ii)調製流体サンプルを吐出する出口ポート(106)と;
iii)入口ポート(104)から出口ポート(106)まで延びるチャネル(102)であって、該入口ポート(104)と出口ポート(106)との間のチャネル(102)の長さの少なくとも一部に沿って間に複数の流路を画成するようにチャネル(102)内に延びる微小突起のアレイ(108)を含み、該微小突起のアレイ(108)は、流体サンプルがチャネル(102)を通って流れて調製流体サンプルを生成するときに流体サンプルと混合するための材料が配置される、チャネル(102)と
を含み、
該入口ポート(104)は、基板(101、500)上の流体チャネル(542)に、該基板(101、500)を通って延びるビア(112)を通して、流体連結され;
該出口ポート(106)は、チャンバ(110)に流体連結され;および
該チャンバ(110)は、基板(101、500)上の流体チャネル(541)に、該基板(101、500)を通って延びるビア(114)を通して、流体連結され、
該診断用消耗品(600)は、該チャネル(102)と流体連通する流体変位要素をさらに含み、該流体変位要素は、流体サンプルをチャネル(102)に圧送するために、診断用消耗品(600)に外部刺激を加えることを可能にする、
ここで、該微小突起は、略円形の断面形状、わずかなテーパーを有する微小ピラーの形態を有し、該チャネルの底面及び上面の両方から延びている微小突起である、
前記診断用消耗品(600)。
【請求項2】
アレイの微小突起(108)は、概ね均一な間隔で配置されている、請求項1に記載の診断用消耗品(600)。
【請求項3】
アレイの微小突起(108)は、チャネル(102)の長さの少なくとも一部に沿って互い違いの列で配置され、各列は、チャネル(102)を通る流れの方向に対して実質的に横向きに配置されており;
好ましくは、
該微小突起(108)の互い違いの列は、実質的に入口ポート(104)と出口ポート(106)との間のチャネル(102)の全長にわたって配置されているか、または
該微小突起(108)の互い違いの列は、微小突起の第1の列(109
1)と、チャネル(102)を通る流れの方向に対して微小突起の第1の列(109
1)から下流側に隣接して配置された微小突起の第2の列(109
2)とを含み、該微小突起の第2の列(109
2)は、第2の列の微小突起(109
2)が第1の列の微小突起(109
1)の間の実質的に中間に配置されるように、微小突起の第1の列(109
1)に対して、チャネル(102)を通る流れの方向に対して横向きの方向にオフセットされており、
好ましくは、
第1の列および第2の列のそれぞれにおいて隣接する微小突起(109
1、109
2)の間の、チャネル(102)を通る流れの方向に対して横向きに測定された分離距離が実質的に等しく;および
該第1の列および第2の列における微小突起(109
1、109
2)は、チャネル(102)を通る流れの方向に対して横向きに測定された断面寸法が、第1の列および第2の列のそれぞれにおいて隣接する微小突起(109
1、109
2)の間の分離距離以上であり、
好ましくは、
微小突起の互い違いの列は、微小突起の第2の列(109
2)の下流側に隣接して配置
された微小突起の第3の列(109
3)をさらに含み;および
該第3の列の微小突起(109
3)は、第1の列の微小突起(109
1)と、チャネル
(102)を通る流れの方向に実質的に整列している、
請求項1に記載の診断用消耗品(600)。
【請求項4】
チャネル(102)は、底面(105)と、該底面(105)に概ね対向する上面(136)と、底面(105)と上面(136)との間に延びる概ね対向する側面(103、107)とを有し;
該チャネル(102)の高さは、チャネル(102)の底面(105)とチャネル(102)の上面(136)との間の距離として画成され;および
微小突起(108)は、チャネル(102)の底面(105)と上面(136)との間のチャネル(102)の高さの少なくとも一部だけ、チャネル(102)内に延びており、
好ましくは、該微小突起(108)は、チャネル(102)の底面(105)と上面(136)の間でチャネル(102)の高さだけ延びており、
該チャネル(102)の上面(136)または底面(105)のいずれかは、基板(101、500)の片面に添着されたカバー層(130)によって形成され;および
該微小突起は、チャネル(102)の上面(136)または底面(105)の他方からカバー層(130)まで延びている、
請求項1に記載の診断用消耗品(600)。
【請求項5】
流体変位要素は、チャネル(102)の下流に真空ポートを含み、該真空ポートは、流体サンプルをチャネル(102)に圧送するために真空源を適用するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の診断用消耗品(600)。
【請求項6】
微小突起のアレイ(108)に配置された材料は、流体サンプルがチャネル(102)を通って流れるときに流体サンプルと反応する試薬を含み、
該流体サンプルは全血であり;
該微小突起のアレイに配置された試薬は、溶血試薬を含み;および
該調製流体サンプルは、溶血血液を含む;かまたは、
該流体サンプルは全血であり;
該微小突起のアレイに配置された試薬は、凝固剤を含み;および
該調製流体サンプルは、全血と凝固剤との混合物を含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の診断用消耗品(600)。
【請求項7】
基板(101、500)は成形されたプラスチック基板を含む、および/または
基板(101、500)は、調製流体サンプル収集容器をさらに含み、該調製流体サンプル収集容器は:
調製流体サンプルを受けるためのサンプル調製ステージ(100)の出口ポート(106)に流体連結された入口ポート(104)と;
調製流体サンプルを収容するチャンバ(110)と
を含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の診断用消耗品(600)。
【請求項8】
微小突起(108)は微小ピラーを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の診断用消耗品(600)。
【請求項9】
基板(101、500)を含む診断用消耗品(600)での流体サンプルの分析方法であって:
該基板(101、500)上の流体チャネル(542)に、該基板(101、500)を通って延びるビア(112)を通して流体連結される、入口ポート(104)を有する診断用消耗品(600)のサンプル調製ステージ(100)の入口ポート(104)で流体サンプルを受けることと;
診断用消耗品(600)のサンプル調製ステージ(100)のチャネル(102)に流体サンプルを流すことにより、材料を流体サンプルに混合することであって、該チャネル(102)は、チャネル(102)の長さの少なくとも一部に沿って間に複数の流路を画成するようにチャネル(102)内に延びる微小突起のアレイ(108)を含み、該微小突起のアレイ(108)は、流体サンプルがチャネル(102)を通って流れて調製流体サンプルを生成するときに流体サンプルと混合するための材料が配置されることと;および、
調製流体サンプルを、チャネル(102)に流体連結された診断用消耗品(600)のチャンバ(110)内に流すことであって、該流体サンプルをチャネル(102)に流すことは、チャネル(102)と流体連通する流体変位要素に外部刺激を加えて、流体サンプルをチャネル(102)に圧送することを含むことと、
ここで、該微小突起は、略円形の断面形状、わずかなテーパーを有する微小ピラーの形態を有し、該チャネルの底面及び上面の両方から延びている微小突起である、
を含む、前記方法。
【請求項10】
流体変位要素は、チャネル(102)と流体連通する圧送ポートを含み、該圧送ポートは、外部圧力源を診断用消耗品(600)に適用して、流体サンプルをチャネル(102)に圧送するように構成されており、
該圧送ポートは、好ましくは、チャネル(102)の下流に真空ポートを含み、診断用消耗品(600)に外部圧力源を適用することは、真空ポートに真空源を適用してチャネル(102)に流体サンプルを圧送することを含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
微小突起のアレイ(108)に配置された材料は、流体サンプルがチャネル(102)を通って流れるときに流体サンプルと反応する試薬を含み、
該微小突起のアレイに配置された試薬は、好ましくは、溶血試薬または凝固剤を含む、
請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
流体サンプルの分析に使用するための診断用消耗品(600)を製造する方法であって:
チャネル(102)の長さの少なくとも一部に沿って間に複数の流路を画成するようにチャネル(102)内に延びる微小突起のアレイ(108)を有するチャネル(102)を備えた基板(101、500)を得ることと;
該微小突起のアレイ(108)に堆積するための材料を含む流体をチャネル(102)内の微小突起のアレイ(108)に適用することと;
該微小突起のアレイ(108)上に材料が配置されるように、微小突起のアレイ(108)上に流体を乾燥定着させることと
を含み、
該基板(101、500)を得ることは、成形プロセスを介して基板(101、500)を形成することを含み、微小突起のアレイ(108)は、成形プロセスにおいてチャネル内に成形され、
該基板(101、500)はプラスチック基板を含み、該成形プロセスは射出成形を含み;
ならびに、
該成形プロセスを介して基板(101、500)を形成することは、該基板(101、500)が:基板(101、500)を通して延びるビア(112)を通して、チャネル(102)内に流体サンプルを受けるためにチャネル(102)と流体連通する入口ポート(104)と;チャネル(102)を、チャンバ(110)と基板(101、500)を通って延びるビア(114)とに流体連結する出口ポート(106);および、外部圧力源を診断用消耗品(600)に適用して流体サンプルをチャネル(102)に圧送するためにチャネル(102)と流体連通する圧送ポートと、を含むように、基板(101、500)を成形することを含む、
ここで、該微小突起は、略円形の断面形状、わずかなテーパーを有する微小ピラーの形態を有し、該チャネルの底面及び上面の両方から延びている微小突起である、
前記方法。
【請求項13】
微小突起のアレイ(108)に流体を適用することは、微小突起のアレイ(108)に流体の所定数の滴を分配することを含み;
該微小突起のアレイ(108)の毛細管現象により、流体が微小突起のアレイ(108)間で分散し、および/または
該流体を乾燥定着させることは、流体の溶媒成分を受動的に蒸発させることを含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
基板(101、500)の片面にカバー層(130)を添着することをさらに含み、カバー層(130)は、チャネル(102)の上面(136)または底面(105)のいずれかを成しており、微小突起(108)は、チャネル(102)の上面(136)または底面(105)の他方からチャネル(102)内に延びる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
微小突起(108)のアレイに配置された材料は、流体サンプルがチャネル(102)を通って流れるときに流体サンプルと反応する試薬を含み、
該微小突起(108)のアレイに配置された試薬は、好ましくは、溶血試薬または凝固剤を含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項16】
使用中に、真空ポートに適用される真空源によって、流体サンプルがチャネル(102)に圧送されるように、圧送ポートは、チャネル(102)の下流で基板(101、50
0)に形成された真空ポートを含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年3月18日出願の米国仮出願第62/819,973号および2019年7月17日出願の米国仮出願第62/875,167号に対する優先権を主張する。上記で参照される特許出願の全文は、参照によって本明細書に明示的に組み入れられる。
【0002】
本出願は、一般に流体デバイス、特に、流体デバイスにおけるサンプル流体調製のためのサンプル調製ステージに関する。
【背景技術】
【0003】
流体デバイスは、多様な用途のいずれかのために流体を制御および/または操作するために使用される。流体デバイスは、デバイス内の流体の流れを制限するチャネルを備えることができる。さらに、またはその代わりに、チャネルの少なくとも1つの寸法(例えば、半径、幅または高さ)がサブミリメートルである場合、および/またはチャネルがサブミリリットルの体積の流体を運ぶ場合、チャネルは微小チャネルと考えることができる。微小チャネルおよび/または他の微小規模の構成部品を備えた流体デバイスは、微小流体デバイスと考えることができる。
【0004】
流体デバイスは、感知機能を提供するために1つまたはそれ以上のセンサを組み込むことができ、かつ/またはそれらと連結できる。例えば、サンプル流体は、センサにさらされるように、流体デバイス内のチャネルを通って流体デバイスの感知領域に送り込むことができる。センサは、流体の1つまたはそれ以上の特性を測定するために、流体デバイスに組み込むことができ、かつ/または感知領域がさらされる別のデバイスの部材とすることができる。1つまたはそれ以上のセンサまたは感知領域を組み込んだ流体デバイスは、診断デバイスとして使用することができる。医療診断デバイスの関連では、流体デバイスは、体液の1つまたはそれ以上の特性を測定するために使用される。例えば、血液サンプルは、血液中の特定の分析物の濃度を測定するために、血液サンプルを制御および/または操作するために、流体デバイスに加えられる。
【0005】
近年、微小流体デバイスは、簡易迅速検査用の診断デバイスとして当分野での使用が注目されている。この分野の流体デバイスは、通常、複数の分析工程を単一のデバイスに統合したものを提供する。流体デバイスは、1つまたはそれ以上のアッセイを実行することができる。本開示の目的のために、アッセイは、液体サンプル中の分析物の量または機能活性を定量化する手順として定義される。アッセイは、サンプルの導入、調製、計量、サンプル/試薬の混合、液体輸送、および検出など、流体デバイスへの種々の操作を含むことができる。
【0006】
典型的な診断アッセイでは、少量の流体を正確に制御しながら操作することを伴うが、これは輸送中の流体の損失、毛細管現象、重力の影響、閉じ込められた空気など、いくつかの要因のより困難になる可能性がある。さらに、混合およびインキュベーションなどのいくつかのアッセイプロセスも、小型流体デバイス特有の課題となり得る。診断用消耗品として使用される使い捨ての流体デバイスでは、これらの課題は、費用対効果が高く、かつ要求されるアッセイ性能を提供するために必要な精度レベルを提供する解決策が必要であることによって、しばしば増大する。測定の効率、信頼性および再現性を向上させることは、診断デバイスの設計において、特に小さなフォームファクタの機器と互換性のある使い捨ての診断用消耗品との関連では重要な検討事項である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様によれば、本開示は、流体サンプルの分析に使用するための診断用消耗品であって、診断用消耗品は:サンプル調製ステージを有する基板を含み、サンプル調製ステージは:i)流体サンプルを受ける入口ポートと;ii)調製流体サンプルを吐出する出口ポートと;iii)入口ポートから出口ポートまで延びるチャネルであって、入口ポートと出口ポートとの間のチャネルの長さの少なくとも一部に沿って間に複数の流路を画成するようにチャネル内に延びる微小突起のアレイを含み、微小突起のアレイは、流体サンプルがチャネルを通って流れて調製流体サンプルを生成するときに流体サンプルと混合するための材料が配置される、チャネルとを含む診断用消耗品を提供する。
【0008】
第2の態様によれば、本開示は、診断用消耗品での流体サンプルの分析方法であって、診断用消耗品のサンプル調製ステージの入口ポートで流体サンプルを受けることと;診断用消耗品のサンプル調製ステージのチャネルに流体サンプルを流すことにより、材料を流体サンプルに混合することとを含み、チャネルは、チャネルの長さの少なくとも一部に沿って間に複数の流路を画成するようにチャネル内に延びる微小突起のアレイを含み、微小突起のアレイは、流体サンプルがチャネルを通って流れて調製流体サンプルを生成するときに流体サンプルと混合するための材料が配置される、分析方法を提供する。
【0009】
第3の態様によれば、本開示は、流体サンプルの分析に使用するための診断用消耗品を製造する方法であって:チャネルの長さの少なくとも一部に沿って間に複数の流路を画成するようにチャネル内に延びる微小突起のアレイを有するチャネルを備えた基板を得ることと;微小突起のアレイに堆積するための材料を含む流体をチャネル内の微小突起のアレイに適用することと;微小突起のアレイ上に材料が配置されるように、微小突起のアレイ上に流体を乾燥定着させることとを含む方法を提供する。
【0010】
第4の態様によれば、本開示は、全血の分析に使用するための診断用消耗品を提供する。診断用消耗品は、全血を受ける入口ポートと、溶血を吐出する出口ポートと、入口ポートから出口ポートまで延びる溶血チャネルとを備えた溶血ステージを有する基板を備える。溶血チャネルは、入口ポートと出口ポートとの間の溶血チャネルの長さの少なくとも一部に沿って間に複数の流路を画成するように溶血チャネル内に延びる微小突起のアレイを備える。微小突起のアレイには、全血が溶血チャネルを通って流れて溶血血液を生成するときに、全血と相互作用するための溶血試薬が配置される。
【0011】
本開示の第5の態様によれば、本開示は、診断用消耗品での全血サンプルの分析方法を提供する。本方法は、診断用消耗品の溶血ステージの入口ポートで全血サンプルを受けることと;診断用消耗品の溶血ステージの溶血チャネルに全血を流すことによって、全血を溶血することとを含む。溶血チャネルは、溶血チャネルの長さの少なくとも一部に沿って間に複数の流路を画成するように溶血チャネル内に延びる微小突起のアレイを備える。微小突起のアレイには、全血が溶血チャネルを通って流れて溶血血液を生成するときに、全血と相互作用するための溶血試薬が配置される。
【0012】
本開示の第6の態様によれば、本開示は、全血サンプルの分析に使用するための診断用消耗品を製造する方法を提供する。本方法は、溶血チャネルの長さの少なくとも一部に沿って間に複数の流路を画成するように溶血チャネル内に延びる微細突起のアレイを有する溶血チャネルを備えた基板を得ることを含む。本方法は、溶血試薬溶液を溶血チャネル内の微小突起物のアレイに適用することと、微小突起のアレイ上に乾燥した溶血試薬が配置されるように、微小突起のアレイ上に溶血試薬溶液を乾燥定着させることとをさらに含む。
【0013】
本開示の実施形態の他の態様および構成は、以下の記述を検討することにより当業者に明らかになるであろう。
【0014】
前述の概要ならびに本出願の例示的実施形態の以下の発明を実施するための形態は、添付の図面と併せて読むとより良く理解されるであろう。本出願を例示するために、本開示の例示的実施形態が図面に示されている。しかし、本出願は、図示されている正確な構成および手段に限定されないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】診断用消耗品の溶血ステージの等角図である。
【
図2】
図1の溶血ステージの溶血チャネルの一部の拡大図である。
【
図4】透明なカバー層付きの
図1の溶血ステージの等角図である。
【
図5】
図4に示す線に沿ってとられた、
図4の溶血ステージの断面図である。
【
図6】
図4の溶血ステージの溶血チャネルの一部の平面図である。
【
図7】溶血チャネルに沿った流れの方向に対して横向きに延びる
図6に示す線に沿ってとられた、
図6の溶血ステージの断面図である。
【
図8】溶血チャネルに沿った流れの方向に対して横向きに延びる線に沿ってとられた、別の溶血チャネルの断面図である。
【
図9】溶血チャネルに沿った流れの方向に対して横向きに延びる線に沿ってとられた、さらに別の溶血チャネルの断面図である。
【
図10】溶血チャネルに沿った流れの方向に対して横向きに延びる線に沿ってとられた、さらに別の溶血チャネルの断面図である。
【
図11】溶血チャネルの別の実施態様の一部の平面図である。
【
図12】
図4の溶血ステージを備えた診断用消耗品用の例示的基板の上部の等角図である。
【
図16】
図12の基板を組み込んだ例示的診断用消耗品の上部の平面図である。
【
図19】全血サンプルの分析に使用するための診断用消耗品を製造する例示的方法を示すフローチャートである。
【
図20】診断用消耗品での全血サンプルの分析のための例示的方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
流体デバイスでは、試薬とサンプル流体の相互作用は、チャネルの1つまたはそれ以上の壁上に試薬を乾燥定着させたチャネルにサンプル流体を流すことによって得られる。流入するサンプルは、試薬に溶解し、再懸濁し、これと反応する。
【0017】
しかし、微小流体チャネル内のサンプル流体の流れは一般的に層流であり、これは、チャネル内での乱流混合はほとんど、または全くなく、試薬とサンプルとの相互作用は拡散によって事実上制限されることを意味する。試薬が、流体の流れが層流であるチャネルの壁上に乾燥定着されただけでは、サンプル中の試薬の濃度は、最初は試薬が乾燥された壁の近くで最も高く、チャネルの断面の中心に向かって低くなり得る。例えば、溶血の場合、これは、溶血試薬がゆっくりと拡散するまで、チャネルの中心を流れる血液は溶血されないままである可能性があることを意味する。これは、COオキシメトリ用の光学測定など、後の分析で完全な溶血が必要であるかまたは望ましい場合、問題となり得る。
【0018】
拡散距離を短くするためにチャネルの断面を小さくすると、完全な溶血に要する時間を潜在的に短縮できるが、チャネルの断面を小さくするとチャネルの流れ抵抗が大きくなり、チャネルの下流でのサンプルの流れ/送達が複雑になり得る。
【0019】
本開示は、部分的には、試薬などの材料をサンプル流体と混合するための構成部品または構造を備えた診断用消耗品に関する。例えば、本明細書に記載されているいくつかの診断用消耗品は、流体サンプルと混合される材料がコーティングされた微小突起のアレイを備えたサンプル調製チャネルを備える。微小突起のアレイは、チャネルの長さに沿って複数の流路を画成する。材料がコーティングされた微小突起アレイは、材料が塗布される追加の表面積を提供し、材料と、サンプル流体がサンプル調製チャネルを通って流れるときに材料がサンプル流体と混合および/または相互作用することが意図されるサンプル流体中の成分との間の拡散距離を短くすることができる。材料は、サンプル(またはその成分、例えば対象分析物)と混合および/または相互作用するものであれば何でもよい。非限定的な例としては、試薬、抗体、界面活性剤、サンプル調整化合物などが挙げられる。例えば、いくつかの実施形態では、これらの診断用消耗品は、血液検査および/または分析のために構成される。そのような実施形態では、材料は、試薬、例えば、全血サンプル中の血球を溶血する洗剤などの溶血試薬、または血液凝固を促進するCelite(商標)(珪藻土)もしくはカオリンなどの凝固剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、これらの診断用消耗品は、乱用薬物の検出のために構成される。例えば、そのような実施形態では、材料は、バルビツレート、カンナビノイド、コカイン代謝物、エタノール、エクスタシー、メタドン、メタンフェタミン、およびオピエートなどの乱用薬物と反応する試薬を含んでもよい。いくつかの実施形態では、これらの診断用消耗品は、例えば、診断カードまたは検査カードの形など、小さなフォームファクタで実現される。いくつかの実施形態では、これらの診断用消耗品は、微小流体デバイスである。
【0020】
診断用消耗品は、内部に他のチャネルおよび/または他の流体構成部品が形成された基板を備えることができる。カバー層が、基板に適用されて、基板の上面および/または底面を封止することができる。基板は、1つまたはそれ以上のセンサを備えた感知領域を含み、かつ/またはそれに結合されてもよい。これらのセンサは、例えば、血液サンプル中の特定の分析物の濃度、またはプロトロンビン時間(PT)試験の一部として一定の凝固レベルに達するのに要する時間など、サンプル流体の1つまたはそれ以上の特性を測定することができる。測定を行うために、診断用消耗品は、診断用消耗品リーダモジュールなどの機器に挿入することができる。次に、血液サンプルを診断用消耗品に挿入することができる。次に、診断用消耗品リーダモジュールは、診断用消耗品を使用および/または制御して、血液サンプルの測定を行うことができる。診断用消耗品と診断用消耗品リーダモジュールとの組み合わせは、血液分析システムと考えることができる。
【0021】
例えば、
図1は、診断用消耗品の溶血ステージ100の一実施例の等角図を示す。溶血ステージ100は、基板101の一部として実現され、全血を受ける入口ポート104および溶血血液を吐出する出口ポート106と、入口ポートと出口ポートとの間の溶血チャネルの長さに沿って間に複数の流路を画成するように溶血チャネル内に延びる微小突起物のアレイ108とを有する溶血チャネル102を備える。微小突起のアレイ108には、全血が溶血チャネル102を通って流れて溶血血液を生成するときに、全血と相互作用するための溶血試薬が配置される。溶血チャネル102の入口ポート104および/または出口ポートは、基板101の他の流体チャネルまたは構成部品に流体連結される。例えば、
図1に示す実施形態では、溶血チャネル102の入口ポート104は、ビア112を介して基板101の別の流体チャネルまたは構成部品に流体連結され、溶血チャネルの出口ポート106は、チャンバ110に流体連結され、このチャンバ110は、ビア114を介して基板101の別の流体チャネルまたは構成部品に流体連結される。例えば、いくつかの実施形態では、ビア114は、チャンバ110の下流の真空ポートに流体連結され、この真空ポートは、血液サンプルを入口ポート104から出口ポート106まで溶血チャネル102を通ってチャンバ110内に引き込むための圧送力として真空を印加することができる真空源の適用のために構成されている。例えば、真空源は、診断用消耗品が挿入されるかまたは別様に係合される診断デバイスによって提供される。このような真空ポートは、外部刺激を診断用消耗品に加えて流体サンプルをチャネルに圧送することを可能にするために、診断用消耗品に組み込まれる流体変位要素の一例に過ぎない。下流の真空ポートの場合、外部刺激は負圧または真空の形態であり、流体サンプルをチャネルに引き込むことによって流体サンプルを圧送する。他の実施態様では、流体変位要素は、チャネルの上流に流体連結された圧送ポートとすることができ、流体サンプルをチャネルに押し出すための正圧源を適用するように構成される。いくつかの実施形態では、負圧源または正圧源を診断用消耗品に直接適用するのではなく、外部刺激は、診断用消耗品の圧送機構を作動させる機械的または電気的な刺激であってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、流体変位要素は、サンプル流体をチャネルへと付勢するために機械的に起動される浮袋であってもよい。例えば、浮袋は、チャネルの上流に流体連結された退出ポートを有することができ、この退出ポートを介して、流体サンプルをチャネルに押し出すために浮袋の可撓性部分を機械的に絞ることによって空気は浮袋から排出される。このような浮袋は、例えば、基板の外面に添着された可撓性カバー層によって覆われた基板101の空洞によって実現される。浮袋を作動させる/絞るための機械的刺激は、診断用消耗品が挿入されるかまたは別様に係合される診断デバイスの機械的アクチュエータ、例えば、電気モータによって提供することができる。
【0022】
溶血チャネル102は、略矩形断面およびその長さに沿った複数の曲がり角を有するチャネルとして
図1に示されているが、溶血チャネルの他の幾何形状も可能である。例えば、いくつかの実施形態では、溶血チャネルはその長さに沿って略直線とすることができる。しかし、チャネルの長さに沿って複数の曲がり角またはカーブを含むことによって、診断用消耗品の限られた面積でより長いチャネルをフィットさせることを容易にできる。
【0023】
チャンバ110に吐出された溶血血液が分析される。例えば、
図1に示す実施例では、チャンバ110は、COオキシメトリなどの光学アッセイのためのキュベットとして構成されている。
【0024】
図2は、
図1の溶血チャネル102の一部の拡大等角図であり、チャネルにおける微小突起のアレイ108の配置を示す。特に、
図2は、本実施例の微小突起が互い違いの列で配置されており、各列は、入口ポート104から出口ポート106までの溶血チャネルを通る流れの方向に対して実質的に横向きに配置されていることを示している。さらに、本実施例では、微小突起108は、間に略均一な間隔を置いて配置される。さらに、
図2は、本実施例では、微小突起108は略円形の断面形状を有し、下から上に向かってわずかなテーパを有する微小ピラーの形態を有することを示している。いくつかの実施形態では、基板101は射出成形によって形成され、微小突起のわずかなテーパ形状は、射出成形型からの基板101の取り外しを容易にすることができる。例えば、
図3は、プラスチック射出成形プロセスによって得られたプラスチック基板に実現された微小突起のアレイ108の一部の走査型共焦点顕微鏡画像である。
図3に示すように、各微小突起は、略円形の断面形状を有し、プラスチック基板を型から取り外すのを容易にするように、下から上に向かってわずかなテーパを有する。同様の理由で、いくつかの実施形態では、
図7を参照して以下に詳述するように、溶血チャネル102の側壁103、107は、下から上に向かって外側にわずかに傾斜していてもよい。
【0025】
図1および
図2に示す実施例では、溶血チャネル102は、底面105と、概ね対向する側面103および107とを有する。いくつかの実施形態では、溶血チャネル102の上面は、カバー層130が溶血チャネル102を覆うように、基板101にカバー層130を添着することによって形成される。
図4は、基板101にカバー層130を添着した
図1および
図2の溶血ステージ100の実施例を示す。
図4に示す実施例では、カバー層130は、溶血チャネル102およびチャンバ110を覆う。製造中、カバー層130が基板101に添着される前に、溶血試薬が微小突起108のアレイ上に堆積され、乾燥定着される。例えば、界面活性剤/洗剤などの溶血試薬を水およびイソプロピルアルコールに溶解した溶液は、カバー層130が基板101に添着されて溶血チャネル102を覆う前に、微小突起108のアレイ上に堆積されて乾燥定着される。
図1~
図4に示す微小突起108のアレイは、強い毛細管現象の特性を有しており、これにより、アレイならびにチャネルの表面103、105および107全体(いくつかの実施形態では、試薬の乾燥定着後に添着される、カバー層130によって形成される上面136を除く)に、溶血試薬溶液を比較的均一に広げることが容易になる。いくつかの実施形態では、溶血試薬溶液は、溶血試薬溶液の所定数の滴をアレイに分配し、アレイの毛細管現象によって溶血試薬溶液をアレイの微小突起間に分散させることによって、微小ピラーに適用される。さらに、この毛細管現象は、チャンバ110に流入するのではなく、微小突起108のアレイが位置するチャネル102の領域に液体試薬溶液を保持する傾向があり、これによってチャンバ110の光学アッセイに影響を与える可能性がある。
【0026】
カバー層130は、チャンバ110内の溶血血液の光学測定を容易にするために、光学的に透明とすることができる。例えば、カバー層130は、ガラス、またはアクリルもしくはアクリルガラスとも呼ばれるポリメチルメタクリレート(PMMA)など、比較的高い光学的な透明性を有する材料で作製される。
【0027】
図1~
図4に示す実施例では、溶血ステージ100は、基板101の「ウェル」120に形成されているため、カバー層130が溶血ステージ100を覆うように基板101に添着されたときに、カバー層130の上面132は、後続の製造工程中にカバー層130の上面132に傷/汚れがつく可能性を回避するよう短い距離を置いて基板101の上面116よりもわずかに下にある。例えば、
図1~
図4に示す実施例では、溶血ステージ100は、「ウェル」120内の「島」119の上面118に形成されており、カバー層130が溶血ステージ100を覆うように上面118に添着されたときに、カバー層130の上面132は、基板101の上面116よりもわずかに下にある。他の配置も可能である。例えば、いくつかの実施形態では、カバー層130の上面132は、基板101の上面116と実質的に同一平面上にあることができる。他の実施形態では、カバー層130の上面132は、基板101の上面116よりもわずかに上にあることができる。カバー層130は、任意の公知の添着手段によって基板101に添着される。例えば、いくつかの実施形態では、カバー層130は、基板101に接着接合されている。
【0028】
図5は、
図4に示す線に沿ってとられた、
図4の溶血ステージ100の断面図である。
図5に示すように、本実施例では、溶血チャネル102は、底面105と、底面105に概ね対向する上面136と、底面105と上面136との間に延びる概ね対向する側面103、107とを有し、微小突起108は、底面105と上面136との間でチャネルの実質的に全高にわたって延びている。より一般的には、微小突起は、チャネルの高さの少なくとも一部だけチャネル内に延びることができ、
図7~
図10を参照して以下でさらに詳細に説明するように、チャネルの上面、チャネルの底面、または場合によってはチャネルの上面および底面の両方から延びることができる。
【0029】
図6は、
図4の溶血ステージ100の溶血チャネル102の一部の平面図である。
図6に示す溶血チャネル102の一部は、微小突起のそれぞれ8つの互い違いの列109
1、109
2、109
3、109
4、109
5、109
6、109
7および109
8を含む。微小突起の互い違いの列109
1~109
8は、各列の微小突起が、隣接する列の微小突起に対して、溶血チャネルを通る流れの方向を横切る方向にオフセットされるように、チャネル102内に配置されている。例えば、4つの微小突起109
2,1、109
2,2、109
2,3および109
2,4を含む微小突起の第2の列109
2は、5つの微小突起109
1,1、109
1,2、109
1,3、109
1,4および109
1,5を含む微小突起の第1の列109
1に対して、第2の列109
2の微小突起が第1の列109
1の微小突起間の実質的に中間に配置されるように、相対的にオフセットされている。さらに、
図6に示すように、微小突起の隔列は、溶血チャネル102を通る流れの方向に実質的に整列している。例えば、第3の列109
3の微小突起は、第1の列109
1の微小突起と、血チャネルを通る流れの方向に実質的に整列しており、第4の列109
4の微小突起は、第2の列109
2の微小突起と実質的に整列している、など。さらに、本実施例では、微小突起108は、溶血チャネル102を通る流れの方向に対して横向きに測定した、列109
1~109
8のそれぞれにおける隣接する微小突起間の分離距離Bよりも大きい断面寸法Aを有し、これは微小突起108のアレイを通る直線的な流路が存在しないことを意味している。さらに、各列の任意の隣接する2つの微小ピラー間の概ね均一な間隔(分離距離B)は、血球が各列を流れるときに、試薬コーティング表面から分離距離Bの半分よりも離れることがないことを意味し、それにより、溶血チャネル102の断面全体でよりばらつきの少ない拡散距離が得られる可能性がある。これは、
図7に実施例として示されているが、
図7は、流れの方向に対して横向きに微小突起の第1の列109
1を通って延びる
図6に示す線に沿ってとられた、
図6の溶血チャネル102の断面図である。
【0030】
図7に示すように、本実施例では、カバー層130の底面によって形成された上面136を除く溶血チャネル102の表面が、乾燥定着された溶血試薬111でコーティングされている。さらに、この図から、溶血チャネル102の側壁103および107と、5つの微小突起109
1,1~109
1,5とが、血球が微小突起の第1の列109
1を横切るときに溶血チャネル102に沿って移動できる6つの流路113
1,1、113
1,2、113
1,3、113
1,4、113
1,5および113
1,6を画成することが見てとれる。
図6および
図7に示すように、第1の列109
1に対する微小突起の第2の列109
2のオフセットは、第2の列の微小突起109
2,1~109
2,4を、第1の列によって画成されるチャネル113
1,2~113
1,5と整列させる。さらに、本実施例における微小突起108の概ね均一な間隔は、血球が微小突起のアレイを通って流れるときに、微小突起の試薬コーティング表面から概ね均一な分離距離の半分よりも離れることがないことを意味する。
【0031】
いくつかの実施形態では、微小突起の間隔は、チャネル内で乾燥定着された試薬と相互作用するようにチャネルを通って流されるサンプル流体の成分の寸法に、少なくとも部分的に基づいて選択される。例えば、ヒト全血の溶血用の溶血チャネルでは、微小突起の間隔は、ヒト赤血球の典型的なサイズに少なくとも部分的に基づいて選択することができる。典型的なヒト赤血球は、概ね円盤状であり、円盤直径がおよそ6~8μm、最も厚い部分の厚さが2~2.5μm、中心部の最小厚さが0.8~1μmである。いくつかの実施形態では、微小突起の間隔は、典型的な赤血球の直径のおよそ10の倍数のオーダーとすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、微小突起の間隔は、60~100μmのオーダーとすることができる。10の倍数および60~100μmの間隔は、単なる非限定的例である。他の倍数および寸法も可能であり、本開示の範囲内で企図されている。
【0032】
図7に示すように、本実施例では、溶血チャネル102の概ね対向する側壁103、107は外側に傾斜しており、微小突起は下から上に向かってわずかなテーパを有しており、これによって、成型により基板が成形される場合、型から基板101を取り外すことを容易にできる。
【0033】
溶血チャネル102内の微小突起によって画成される複数の流路は、単一の細いチャネルに伴うサンプル流れの抵抗が大きいという問題がかなり軽減される。小さなチャネル抵抗の場合を考えると、溶血チャネル102は、試薬溶解の時定数が十分であれば、外部圧力源によって高速で送達された場合でも、血液が完全に溶血した状態となるように十分に長くすることができる。これは、アレイの長さに沿った一連の微小突起によって得られる多数の短距離拡散現象によるものである。
図1~
図7に示す溶血チャネル102により実現された溶血チャネルを用いた実験結果では、5秒未満での完全な溶血が実証された。さらに、血液サンプルが溶血チャネル102を流れると、チャネル内の微小突起のアレイにより、実質的に平坦な前方流で伝播することが確認されている。対照的に、微小突起のないチャネルを流れる血液サンプルは、典型的には、放物線状の前方流で伝播する。
【0034】
図1~
図7の溶血チャネル102の構造は、例として提供されている。さらに、またはその代わりに、他の溶血チャネル構造は診断用消耗品に用いることができる。例えば、
図4~
図7に示す溶血チャネル102では、微小突起108は、基板101によって形成された底面105とカバー層130によって形成された上面136との間で、溶血チャネル102の実質的に全高にわたって延びる。しかし、先述したように、他の実施形態では、微小突起は、チャネルの全高よりも小さく延びることができ、チャネルの上面、チャネルの底面、または場合によってはチャネルの上面および底面の両方から延びることができる。このような代替的実施形態の例を
図8~
図10に示す。
【0035】
図8は、チャネルに沿った流れの方向に対して横向きに微小突起の第1の列を通って延びる横断線に沿ってとられた、別の溶血チャネル202の断面図である。
図7に示す溶血チャネル102と同様に、
図8に示す溶血チャネル202は、基板201によって形成された底面205と、カバー層230の底面によって形成された上面236と、底面205と上面236との間に延びる概ね対向する側壁203、207とを有する。さらに、この図から、微小突起の第1の列は、血球が微小突起の第1の列を横切るときに溶血チャネル202に沿って移動し得る6つの流路213
1,1、213
1,2、213
1,3、213
1,4、213
1,5および213
1,6を画成する5つの微小突起209
1,1、209
1,2、209
1,3、209
1,4および209
1,5を備えることが見てとれる。この図から、微小突起の第2の列が、第1の列の微小突起の間に画成された流路213
1,2~213
1,5と実質的に整列するように、第1の列の微小突起に対してオフセットされた4つの微小突起209
2,1、209
2,2、209
2,3および209
2,4を備えることも見てとれる。しかし、本実施例では、微小突起の高さ217は、チャネルの上面236と微小突起との間にギャップ219があるように、チャネル202の全高215よりも小さく延びている。
【0036】
図9は、チャネルに沿った流れの方向に対して横向きに微小突起の第1の列を通って延びる横断線に沿ってとられた、さらに別の溶血チャネル302の断面図である。本実施例では、微小突起は、溶血チャネル302の底面305Aおよび上面305Bの両方から延びている。特に、本実施例では、チャネル302の底面305Aは第1の基板301Aによって形成され、チャネル302の上面305Bは第2の基板301Bによって形成されている。微小突起308Aの第1のアレイは、底面305Aからチャネル302内に延びており、微小突起308Bの第2のアレイは、上面305Bからチャネル302内に延びている。第1のアレイ308Aおよび第2のアレイ308Bのそれぞれにおける微小突起は、互い違いの列に配置されている。本実施例では、第1の基板301Aの微小突起308Aの第1のアレイにおける微小突起の各列は、第2の基板301Aの微小突起308Bの第2のアレイにおける微小突起の対応する列と実質的に整列されている。
【0037】
溶血チャネル402の底面405Aおよび上面405Bの両方から微小突起が延びている、溶血チャネル402における微小突起の代替的配置を
図10に示す。本実施例では、第1の基板401Aの微小突起408Aの第1のアレイにおける微小突起の各列は、第2の基板401Bの微小突起408Bの第2のアレイにおける微小突起の対応する列に対してオフセットされている。特に、この配置では、第1の基板401Aの微小突起408Aの第1のアレイの微小突起は、第2の基板401Bの微小突起408Bの第2のアレイの微小突起間の空間に向かって延びており、その逆もまた同様である。
【0038】
図6~
図10に示す実施形態では、微小突起の各列の最初および最後の微小突起は、溶血チャネル102の側壁103および107から離間されており、この間隔が潜在的な流路として機能している。例えば、
図6および
図7を再度参照すると、第1の列109
1において、側壁103と第1の微小突起109
1,1との間に流路113
1,1が画成される一方、側壁107と第5の微小突起109
1,5との間に流路113
1,5が画成されていることが見てとれる。同様に、第2の列109
2において、側壁103と第1の微小突起109
2,1との間に第1の流路が画成される一方、側壁107と第5の微小突起109
2,5との間に第5の流路が画成されている。
図6で見てとれるように、本実施形態の微小突起109は、奇数列109
1、109
3、109
5、109
7のそれぞれにおいて、列の最も外側の微小突起とチャネル102の側壁103および107との間の間隔が、その列の微小突起間の分離距離よりも小さいが、偶数列109
2、109
4、109
6、109
8のそれぞれにおいて、列の最も外側の微小突起とチャネルの側壁との間の間隔は、その列の微小突起間の分離距離よりも大きいように分布する。例えば、側壁103と第1の列109
1の第1の微小突起109
1,1との間の流路113
1,1を画成する間隔は、第1の列の隣接する微小突起間の分離距離よりも小さいが、側壁103と第2の列109
2の第1の微小突起109
2,1との間の流路を画成する間隔は、第2の列の隣接する微小突起間の分離距離よりも大きい。これにより、側壁103および107の近傍では、流れのパターンの均一性が低下し得る。しかし、最も外側の微小突起とチャネルの側壁との間の流路は、いくつかの点で、隣接する微小突起間の分離距離よりも大きくなることがあるが、一般に、流路のより大きな幅は、そこでの累積的な試薬とサンプルとの相互作用が不十分になるほど大きくはない。例えば、いくつかの実施形態では、最も外側の微小突起とチャネルの側壁との間の流路を画成する最大の間隔は、隣接する微小突起間の分離距離の200%以下、いくつかの実施形態では、隣接する微小突起間の分離距離の175%以下、いくつかの実施形態では、隣接する微小突起間の分離距離の150%以下、いくつかの実施形態では、隣接する微小突起間の分離距離の125%以下、またはさらにより小さくてもよい。
【0039】
他の実施形態では、微小突起とチャネルの側壁との間に間隔がなくてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、微小突起またはその少なくとも一部が、チャネルの側壁のうちの1つまたはそれ以上の部材を形成してもよい。そのような実施形態の実施例は
図11に示されており、
図11は、隔列109
2、109
4、109
6、109
8などが、第1の側壁103の部材として形成された第1の部分的な微小突起と、第2の側壁107の部材として形成された第2の部分的な微小突起とをさらに備えるという点で、
図6に示す溶血チャネル102とは異なる溶血チャネル102を示す。例えば、
図6の微小突起の第2の列109
2の4つの微小突起109
2,1~109
2,4に加えて、
図11の微小突起の第2の列109
2は、第1の部分的な微小突起109
2,0と第2の部分的な微小突起109
2,5とをさらに備える。側壁に部分的な微小突起を含めることによって、チャネルの側壁近傍で流れのパターンおよびサンプルと試薬の相互作用距離をより均一にすることができるが、製造性に悪影響を及ぼすことがある。例えば、このような実施形態を射出成形によって繰り返し確実に製造することがより困難になることがある。
【0040】
上述した、
図1~
図11に示す例示的な実施形態は、全血サンプルを溶血するための溶血ステージとして記述されているが、同じまたは類似の構造を他の流体サンプル調製機能に使用することができる。例えば、同じ構造は、例えば微小突起のアレイに堆積される材料を溶血試薬から凝固剤に変更することによって、活性化凝固時間(ACT)試験のために全血サンプルを凝固剤と混合するために使用することができる。このような場合、チャンバ110内の全血と凝固剤との得られた混合物の凝固は、診断デバイスの外部にある光学源およびセンサを用いて光学的に、かつ/またはチャネル102の下流のどこかに位置する1つもしくはそれ以上の電気化学センサを用いて測定することができる。
【0041】
ここで、
図1~
図7の溶血ステージを組み込んだ基板および診断用消耗品の非限定的実施例を、
図12~
図18を参照して説明する。この例示的実施態様は例示のみを目的として提供されており、溶血ステージ、基板および/または診断用消耗品の他の実施態様および構成が可能であり、本開示内で企図されていることを理解されたい。
【0042】
図12~
図15は、複数の感知領域を含む診断用消耗品用の例示的基板500を示す。
図12および
図13は基板500の等角図であり、
図14および
図15は基板の平面図である。
図12および
図14は、基板500の上面502の図であり、
図13および
図15は、基板の底面504の図である。用語「上面」および「底面」は、単に参照を容易にするために本明細書で使用されており、基板500の特定の向きを必要としたり、または示唆したりするものではない。基板500は、上面502が垂直方向上方を向き、底面504が垂直方向下方を向いた状態で動作するように設計されるが、すべての実施態様においてそうでなくてもよい。さらに、基板500の上面502および底面504の向きが基板の製造、収納および/または輸送に与え得る影響は最小限であるか、または全くない。
【0043】
基板500は、およそクレジットカードのサイズおよび形状の直角プリズムであるものとして図示されているが、これは一例に過ぎない。さらに、またはその代わりに、基板500は、例えば、三角形または円形などの他の形状とすることができる。基板500は、例えば、プラスチック、セラミック、ガラスおよび/または金属で作製される。基板500は、単一の一体的な本体または部材であり得る。基板500の寸法は、任意の特定の範囲または値に限定されない。基板500の長さおよび幅は、上面502および底面504の面積を画成すると考えられる。いくつかの実施態様では、基板500の長さおよび/または幅は、センチメートルのオーダーである。いくつかの実施態様では、基板500の長さおよび/または幅は、ミリメートルのオーダーである。基板500の他の長さおよび/または幅も可能である。基板500の厚さは、基板の上面502と底面504との間の距離として測定される。いくつかの実施態様において、基板500の厚さは、センチメートルのオーダーである。いくつかの実施態様において、基板500の厚さは、ミリメートルのオーダーである。いくつかの実施態様において、基板500の厚さは、マイクロメートルのオーダーである。基板500の他の厚さも可能である。基板500の上面502および底面504は、実質的に平坦であるものとして図示されているが、すべての実施形態においてそうでなくてもよい。さらに、またはその代わりに、例えば、基板の上面および/または底面は、三角形、円錐形および/または半球形の形状とすることができる。したがって、基板の厚さは、その長さおよび/または幅に沿って変化し得る。基板500は透明であるものとして図示されているが、さらに、またはその代わりに、基板は、全体的または部分的に、半透明または不透明とすることができる。
【0044】
基板500は、チャンバ110の一部が光感知領域576として機能する
図1~
図7の溶血ステージ100を備える。基板500は、サンプル流体入力ポート506、サンプル流体リザーバ508、流体リザーバ510、弁孔512、2つのバブルトラップ514、516、別の感知領域518、廃液リザーバ520、543、複数のポンプ連結ポート522、523、複数のビア112、114、524、526、528、530、532、534、536、545、および複数のチャネル538、540、541、542、544、546、548、550、552、554、556、558、560、562をさらに備える。
図12~
図15では、実線を用いて各図において直接見える構成部品を示し、破線を用いて、基板500の少なくとも一部によって隠れている構成部品を示す。
【0045】
チャネル538、540、541、542、544、546、548、550、552、554、556、558、560、562は、基板100内の1つまたはそれ以上の流体を輸送するために設けられている。チャネル540、541、542、548、552、558は、基板500の上面502にあるトレンチまたは溝である。チャネル540、541、542、548、552、558は、
図12および
図14において、基板500の上面502で開いているものとして図示されている。同様に、チャネル538、544、546、550、554、556、560、562は、基板500の底面504にあるトレンチまたは溝であり、
図13および
図15において、基板の底面で開いている。チャネル538、540、541、542、544、546、548、550、552、554、556、558、560、562のいずれかまたはすべてが、微小流体チャネルであり得る。例えば、チャネル538、540、541、542、544、546、548、550、552、554、556、558、560、562のいずれかまたはすべての幅および/または高さは、マイクロメートルのオーダーであり得る。さらに、または代わりに、チャネル538、540、541、542、544、546、548、550、552、554、556、558、560、562のいずれかまたはすべてのチャネルの幅および/または高さは、ミリメートルまたはセンチメートルのオーダーとすることができる。チャネルまたは他の流体構成部品の断面積は、一般に、流体の流れの方向に垂直なチャネルの内部面積として測定される。チャネル538、540、541、542、544、546、548、550、552、554、556、558、560、562は
図12~
図15では略矩形断面で図示されているが、これらのチャネルのうちの1つまたはそれ以上は、例えば半円または三角形などの他の断面形状をすることもできる。
【0046】
ビア112、114、524、526、528、530、532、534、536、545は、基板500を通って延びる貫通孔またはボアである。ビアを用いて、基板500の2つ以上の構成部品を流体連結することができる。例えば、ビア112は、チャネル542と溶血チャネル102とを流体連結し、ビア114は、チャンバ110とチャネル541とを流体連結し、ビア526は、チャネル538とチャネル540とを流体連結し、ビア528は、チャネル540とチャネル544とを流体連結し、ビア530は、チャネル552とチャネル554とを流体連結し、ビア532は、チャネル548とチャネル556とを流体連結し、ビア534は、チャネル546とチャネル548とを流体連結し、ビア536は、チャネル560と廃液リザーバ520とを流体連結し、ビア545は、チャネル562と廃液リザーバ543とを流体連結する。さらに、またはその代わりに、ビアを用いて、基板500の構成部品を基板の上面502および/または底面504に流体連結することができる。例えば、ビア524は、サンプル流体リザーバ508を基板500の底面504に流体連結する。円形孔として図示されているが、さらに、またはその代わりに、ビアは、例えば、矩形または三角形などの他の形状とすることができる。ビアの直径は、各ビアが連結する1つまたはそれ以上の構成部品の幅と同様であり得る。例えば、ビア526の直径は、チャネル538および/またはチャネル540の幅と同様であり得る。しかしながら、ビアの直径は、各ビアが連結する構成部品の幅とは異なり得る。
【0047】
サンプル流体入力ポート506は、血液サンプルを基板500に送達するために設けられている。サンプル流体入力ポート506は、基板500の上面502の円錐形または円筒形の開口部である。サンプル入力ポート506は、チャネル538に連結されている。サンプル入力ポート506は、シリンジまたは毛細管(図示せず)などの、血液サンプルを送達する血液サンプル送達デバイスの端部と係合するようなサイズおよび形状であり得る。例えば、シリンジの場合、サンプル入力ポート506とシリンジとの間のこの係合は、血液サンプルがシリンジから推進または圧送されたときに、血液サンプルがチャネル538内に押し込まれ、サンプル入力ポートからこぼれないような封止を形成し得る。いくつかの実施形態では、ガスケット構成部品は、サンプル送達デバイスとの封止係合を容易にするために、サンプル入力ポート506に設置される。
【0048】
サンプル流体リザーバ508は、チャネル540に連結された比較的幅広の長いチャネルまたはチャンバであり得る。サンプル流体リザーバ508は、矩形の断面で図示されているが、他の断面形状も可能である。サンプル流体リザーバ508は、基板500内に送達された後の血液サンプルを収納するために設けられる。ビア524は、血液サンプルの添加によって変位されたときに、空気をサンプル流体リザーバ508から逃がすための空気抜きとして機能し得る。動作中、血液サンプルは、例えば、ミリ秒、秒、または分のオーダーである時間の間、サンプル流体リザーバ508内に留まることができる。
【0049】
流体リザーバ510は、チャネル550に連結された比較的幅広の長いチャネルまたはチャンバであり得る。流体リザーバ510は、半円形の断面を有するU字形チャネルとして図示されているが、他の幾何形状も可能である。いくつかの実施形態では、流体リザーバ510は、較正用流体もしくは洗浄用流体および/または較正用流体もしくは洗浄用流体を封止する流体パックを収納するために設けられる。流体パックは、流体パック領域578によって提供される浅い凹みに位置し得る。流体リザーバ510が較正用流体を収納する実施形態では、較正用流体を用いて、基板500に含まれ、かつ/または連結される1つまたはそれ以上のセンサを較正できる。較正用流体は、既知の濃度の1つまたはそれ以上の分析物を有する流体を含み得る。これらの分析物は、基板500を用いて測定される血液サンプル中の分析物に対応し得る。流体リザーバ510が洗浄用流体を収納する実施形態では、洗浄用流体を用いて、基板500の1つまたはそれ以上の領域を洗浄できる。例えば、洗浄用流体を用いて、抗原と抗体との相互作用領域から未結合成分を洗い流すことができる。
【0050】
弁孔512は、基板500の厚さを通って延びるビアまたはボアであり得る。チャネル550およびチャネル552は、弁孔512によって流体連結される。弁孔512は、弁(図示せず)を収容し、かつ/または連結するようなサイズおよび形状であり得る。この弁は、チャネル550からチャネル552への流体の流れを制御できる。弁が閉じているとき、チャネル550とチャネル552との間の流体の流れを遮断できる。弁が開いているとき、チャネル550とチャネル552との間の流体の流れが可能になる。いくつかの実施態様では、弁は、弁の封止が裂けて流体がチャネル552に流入するまで、閉じることができる。
【0051】
2つのバブルトラップ514、516は、基板500内でのバブルの動きを抑制するために設けられている。バブルトラップ514、516のいずれかに入る各バブルは、バブルトラップ内の1つまたはそれ以上のバリアによって、さらに下流に移動することが防止される。したがって、バブルトラップ514、516を出る流体は、気泡を含み得ない。バブルトラップ514は、チャネル544、546を流体連結し、バブルトラップ516は、チャネル554、556を流体連結している。
【0052】
感知領域518は、チャネル548およびチャネル558に連結されたチャネルを備える。感知領域518は、基板500の厚さを通って延び、したがって、
図12~
図15において、基板の上面502および底面504で開いているものとして図示されている。感知領域518は、感知領域内の流体の特性を測定する1つまたはそれ以上のセンサを備え、かつ/または連結される。例えば、センサは、チャネル548からチャネル558に流れる流体中の1つまたはそれ以上の分析物の濃度を測定し得る。さらに、またはその代わりに、感知領域518は、アッセイ領域と呼ぶことができる。
【0053】
廃液リザーバ520は、チャネル558に流体連結されており、感知領域518を通って流れた流体を収納する。廃液リザーバ520は、
図12~
図15では、矩形の断面を有する蛇行したチャネルとして図示されているが、廃液リザーバ520の他の幾何形状も可能である。
【0054】
ポンプ連結ポート522、523は、1つまたはそれ以上の外部圧送システムへの連結を提供する。例えば、これらの圧送システムは、診断用消耗品リーダモジュールに設けられる。チャネル560は、ポンプ連結ポート522に流体連結され、チャネル562は、ポンプ連結ポート523に流体連結される。圧送システムは、ポンプ連結ポート522、523に流体連結するチャネルまたはチューブを備え得る。いくつかの実施形態では、圧送システムは、基板500の1つまたはそれ以上のチャネル内の流体をポンプ連結ポート522、523に向かって引っ張る真空圧送システムを備え得る。
【0055】
光感知またはアッセイ領域576は、基板500を組み込んだ診断用消耗品に別の感知機能を提供する。チャネル542は、ビア112を介して、チャネル540を溶血チャネル102に流体連結する。溶血チャネル102は、光感知領域576内のチャンバ110に流体連結される。チャネル541は、ビア545を介して、チャンバ110と廃液リザーバ543を流体連結する。チャネル562は、ビア114を介して、廃液リザーバ543をポンプ連結ポート523に流体連結する。作動中、血液サンプルの少なくとも一部は、光感知領域576において光学的に分析されるために、チャネル542、溶血チャネル102を通って、チャンバ110内に向けられる。
【0056】
図16および
図17は、
図12~
図15に示す基板500を組み込んだ例示的診断用消耗品600の平面図を示す。
図18は、
図16および
図17に示す診断用消耗品600の溶血ステージ100の平面図である。診断用消耗品600は、血液分析および/または検査のための組み立てられた診断カードまたは試験カードと考えることができる。いくつかの実施態様では、診断用消耗品600は、微小流体デバイスである。診断用消耗品600は、例えば、診断用消耗品リーダモジュール(図示せず)によって受けられるようなサイズおよび形状であることによって構成される。
図16は、診断用消耗品600の上面602の図であり、
図17は、診断用消耗品の底面604の図である。基板500に加えて、デバイス600は、溶血ステージ100を覆うカバー層130、上部カバー層606、下部カバー層608、センサアレイ610、較正用流体パック612(平行ハッチングを用いて示す)、および弁614(クロスハッチングを用いて示す)を備える。基板500の多くの構成部品は、明確にするために、
図16および
図17では標識付けされていない。
【0057】
先述したように、溶血試薬は、カバー層130が基板500に添着される前に、溶血チャネル102内の微小突起のアレイ108上に堆積され、乾燥定着される。本実施例では、カバー層130は、溶血チャネルの下流のチャンバ110内での光感知を容易にするために透明である。他の実施形態では、溶血ステージ用のカバー層は、透明、半透明、不透明、またはそれらの組み合わせとすることができる。
【0058】
基板500の上面502および底面504の少なくとも一部は、それぞれ上部カバー層606および下部カバー層608を用いて封止される。上部および下部カバー層606、608は、液密(および場合によっては気密)封止を提供するために、液体(および場合によっては気体)に対して不透過性であり得る。いくつかの実施態様では、上部および下部カバー層606、608は、接着剤を使用して基板500に接着されるプラスチック、金属および/またはセラミックフィルムを備え得る。例えば、いくつかの実施態様では、上部カバー層606および/または下部カバー層608は、接着ラベルまたはステッカーとして実現される。接着剤の非限定的例としては、アクリル接着剤およびシリコーン接着剤が挙げられる。上部および下部カバー層606、608は、基板600の1つまたはそれ以上の構成部品の周りに封止を形成し得る。例えば、上部カバー層606は、サンプル流体リザーバ508、バブルトラップ514、516、感知領域518、廃液リザーバ520、およびチャネル540、541、542、548、552、558を少なくとも部分的に封止し得る。下部カバー層608は、サンプル入力ポート506、流体リザーバ510、バブルトラップ514、516、およびチャネル538、544、546、550、554、556、560、562を、少なくとも部分的に封止し得る。上部カバー層606は実質的に透明であるものとして図示され、下部カバー層608は実質的に不透明であるものとして図示されているが、これは一例に過ぎない。一般的には、上部カバー層606および下部カバー層608のいずれかまたは両方が、透明、半透明、不透明、またはそれらの組み合わせであり得る。
図16では、破線を用いて、上部カバー層606の下にある構成部品を示す。
【0059】
本実施例では、電極モジュールとも呼ばれるセンサアレイ610が、基板500の底面504に接着されている。センサアレイ610は、感知領域518の少なくとも一部に重なり、封止する。下部カバー層608は、センサアレイ610と重ならない。センサアレイ610は、スマートカードのチップモジュール技術を用いて作製される。本実施例では、センサアレイ610は、任意の接着剤でエポキシ箔要素616に積層された金被覆銅金属箔を含む。金属箔は、電極要素618のアレイに形成される。各電極要素618は、例えば、消耗品リーダモジュール内の測定回路への電気接続を形成する接続端部を有することができる。電極要素618の接続端部は、明確にするために標識付けされていない。複数のセンサ620は、電極要素618に連結されている。センサ620は各々、基板500の感知領域518の上に位置する。使用時には、センサ620を用いて、感知領域518内の較正用流体および/またはサンプル流体の1つまたはそれ以上の特性を測定することができる。センサ620は、ガス、電解質および/または代謝産物の濃度を測定するために使用される電気化学センサとすることができる。センサ620は、例えば、ナトリウム、カリウム、イオン化カルシウム、塩化物、尿素、TCO2、pH値および/もしくはCO2分圧を測定する電位差センサ;O2分圧、グルコース、クレアチニンおよび/もしくは乳酸を測定する電流測定センサ;ならびに/またはヘマトクリット値を測定する電気伝導度センサを備え得る。電極618およびセンサ620の数および幾何形状は、単なる例として提供されている。同じモジュール作製技術を用いて、多くの異なる電極/センサの数および幾何形状を有するセンサアレイを作製することができる。
【0060】
較正用流体パック612は、基板500の較正用流体パック領域578と下部カバー層608との間に挟まれている。較正用流体パック612は、流体リザーバ510およびチャネル550を充填することができる。較正用流体パック612は、経時的に較正用流体の安定性を向上させるために、較正用流体を封止して収納するために設けられる。例えば、較正用流体パック612は、二酸化炭素などの気体が較正用流体の中および/または外に浸透するのを抑制することができる。
【0061】
基板500の上面502は、サンプル入力ポート506の位置に対応する孔622を除いて、上部カバー層606によって実質的に封止されている。この孔622により、シリンジまたは毛細管などの血液サンプル送達デバイスをサンプル入力ポート506に連結して、診断用消耗品600に血液サンプルを送達することができる。さらに、上部カバー層606は、光感知領域576の位置に対応する第2の孔633も備える。先述のように、サンプル入力ポート506は、サンプル入力ポート506とサンプル送達デバイスとの間の封止係合を容易にするガスケット構成部品を備えることができる。例えば、ガスケット構成部品は、サンプル入力ポート506に設置され、サンプル送達デバイスと封止係合するようなサイズおよび形状のゴムまたはシリコーン構成部品であってもよい。
【0062】
基板500の底面504は、センサアレイ610およびビア524が下部カバー層によって封止されていないことを除いて、下部カバー層608によって実質的に覆われている。下部カバー層608は、切れ目または裂け目624、626を備える。裂け目624、626は、下部カバー層608を、裂け目に近接した領域において、より可鍛性および加工性を高くするために設けられる。裂け目624の位置は、弁614の位置に対応している。裂け目624は、弁614に隣接する下部カバー層608の部分をより柔軟にすることができ、したがって、弁をより容易に操作することを可能にできる。裂け目626の位置は、流体リザーバ510の位置に対応している。裂け目626は、流体リザーバ510に隣接する下部カバー層608の部分をより柔軟にすることができ、したがって、較正用流体パック612をより容易に操作することを可能にできる。下部カバー層608は、基板500のポンプ連結ポート522、523の位置に対応するポンプ孔628、630をさらに備える。ポンプ連結ポート522、523は、ポンプ孔628、630を介して、カードリーダモジュール内のポンプに連結される。ポンプ孔628、630は、ポンプとポンプ連結ポート522、523との間に封止を形成するようなサイズおよび形状であり得る。下部カバー層608は、溶血ステージ100のカバー層130と重なっているが、光感知領域576に対応し、上部カバー層606の孔633と概ね位置合わせされた孔632を備える。孔632、633と光感知領域576の領域における基板500およびカバー層130の透明性とにより、光感知領域内での光感知が容易になる。
【0063】
本実施例では、1次元バーコード634が下部カバー層608に印刷されている。バーコード634は、診断用消耗品600がカードリーダモジュールに挿入されたときに、カードリーダモジュールによって読み取られる。バーコード634は、診断用消耗品600を認証し、および/または診断用消耗品に関する情報を提供し得る。例えば、バーコード634は、診断用消耗品600が製造された日付を示すことができる。バーコード634は、下部カバー層608または診断用消耗品の他の場所に存在し得る機械可読コードの一例である。機械可読コードの他の例としては、2次元バーコードが挙げられる。さらに、またはその代わりに、無線識別(RFID)チップまたはタグが使用できる。
【0064】
いくつかの実施形態では、診断用消耗品600は以下のように操作される。第一に、診断用消耗品600は、ポータブルまたは卓上型の診断カードリーダモジュールなどの診断モジュールの対応するスロットに挿入される。診断モジュールは、診断用消耗品600を認証するためにバーコード634をスキャンしてもよい。第二に、較正用流体パック612に収納されている較正用流体は、感知領域618に推進または圧送される。この工程は、第1のアクチュエータ要素を使用して、裂け目624に近接した領域で下部カバー層608を押すことによって、診断モジュールが弁614を操作することを含むことができる。弁614の操作は、弁内の栓を破裂させることができ、これにより弁を開く。次に、較正用流体の少なくとも一部が、較正用流体パック612から、チャネル550、弁512、チャネル552、ビア530、チャネル554、バブルトラップ516、チャネル556、ビア532、チャネル548を通って、感知領域518内に押し出されるか、または圧送される。較正用流体を較正用流体パック612から押し出すことは、診断モジュール内のプランジャなどの第2のアクチュエータ要素を使用して、裂け目626に近接した領域で下部カバー層608を圧縮することによって実行される。較正用流体が感知領域518にあるとき、センサ620の1つまたはそれ以上と接触し得る。診断モジュールは、電極618に接触する回路を備えることができ、これはセンサ620から較正用流体の測定値を返す。これらの測定値を用いて、診断消耗品600のために診断モジュールを較正し、それによって異なる診断消耗品間の変動を補償することができる。第1のアクチュエータ要素および第2のアクチュエータ要素は、診断モジュール内のモータ駆動システムによって制御される。診断モジュールはまた、温度制御の形態、例えば、感知領域518内の流体の温度を調整するためにセンサアレイ610と接触しているヒータ、および/または光感知領域内の流体の温度を調整するために光感知領域576と接触しているか、もしくは近位にあるヒータもさらに備えることができる。この温度制御は、感知領域518内のセンサ620、または光感知領域576内のサンプルの1つまたはそれ以上の特性を測定するように構成された診断用消耗品モジュール内の光センサによって行われる測定に一貫性を与えるのに役立ち得る。いくつかの実施態様では、感知領域518内の流体および/または光感知領域576内の流体の温度は、およそ体温、例えば、およそ摂氏37度に維持される。
【0065】
較正後、診断モジュールは、血液サンプルをサンプル流体入力ポート506に注入するようにユーザに指示することができる。血液サンプルの少なくとも一部は、チャネル538、ビア526、チャネル540を通って、サンプル流体収納リザーバ508内に流れることができる。診断モジュール内の真空ポンプは、ポンプ孔628を介してポンプ連結ポート522に連結される。この真空ポンプがオンになると、真空ポンプは、較正用流体を感知領域518から廃液リザーバ520に引き込むことができる。さらに、真空ポンプは、サンプル流体リザーバ508および/またはチャネル540(流体リザーバ508が通気されていない場合)から、ビア528、チャネル544、バブルトラップ514、チャネル546、ビア534、チャネル548を通って、感知領域518内に血液サンプルを引き込むことができる。次に、診断モジュールおよびセンサ620は、例えば、血液サンプルの測定を実行して、血液サンプル中の特定の分析物の濃度を決定することができる。本実施形態では、ポンプ連結ポート523は、流体サンプル(全血)をチャネル102を介してチャンバ110内に圧送するために、外部刺激(真空圧)を診断用消耗品に加えることを可能にする診断用消耗品のサンプル流体変位要素として機能する。先述したように、他の実施形態では、圧送ポート、またはチャネル102の上流に流体連結され、血液サンプルをチャネルに押し出すための正圧源を適用するために構成された機械的に作動可能な浮袋など、他の種類の流体変位要素を用いて血液サンプルをチャネル102に圧送することができる。
【0066】
光学アッセイは、診断用消耗品600の光感知領域576内の血液サンプルに対して実行される。例えば、ポンプ孔630を介してポンプ連結ポート523に連結されている診断モジュール内の真空ポンプを用いて、ポンプ連結ポート523に真空圧を印加して、サンプル流体リザーバ508および/またはチャネル540から、チャネル542、ビア112、溶血チャネル102を介して、チャンバ110内の光感知領域576内に血液サンプルの一部を引き込むことができる。血液サンプルが溶血チャネル102を通って流れると、溶解し、再懸濁し、微小突起のアレイ上に乾燥定着された溶血試薬と反応して溶血血液を生成し、これはチャンバ110内に吐出される。次に、診断モジュール内の光源および検出器が、光感知領域576内の溶血血液サンプルに対して光学測定を行うことができる。いくつかの実施形態では、例えば、血液サンプル中の総ヘモグロビン(tHb)、オキシヘモグロビン(O2HB)、カルボキシヘモグロビン(COHb)、メトヘモグロビン(MetHb)、デオキシヘモグロビン(HHb)、酸素飽和度(SO2)および/または総ビリルビン(tBili)の濃度を測定するために、光感知領域576においてCOオキシメトリを行うことができる。これにより、診断用消耗品600を用いて行われる検査が完了し得る。診断用消耗品600は、使用後に廃棄される使い捨ての診断デバイスとすることができる。しかし、再利用可能なデバイスも企図されている。先述したように、溶血ステージ100と同じまたは類似の構造は、代わりに、溶血試薬ではなく凝固剤を使用し、結果として得られる全血と凝固剤の混合物の凝固時間を、チャネル102の下流で測定することによって、ACT試験のために全血サンプルを凝固剤と混合するために使用される。
【0067】
上記実施形態は、主に診断用消耗品に関する。方法を含む他の実施形態も企図されている。
【0068】
図19は、例えば、全血サンプルの分析に使用するための診断用消耗品を製造する例示的方法700を示すフローチャートである。いくつかの実施態様では、診断用消耗品は、微小流体デバイスとすることができる。方法700は、複数の工程702、704、706、708を含む。
【0069】
工程702は、溶血チャネルの長さの少なくとも一部に沿って間に複数の流路を画成するように溶血チャネル内に延びる微細突起のアレイを有する溶血チャネルを備えた基板を得ることを含む。いくつかの実施形態では、基板を得ることは、成形プロセスを介して基板を形成することを含み、微小突起のアレイは、成形プロセスにおいて溶血チャネル内に成形される。
【0070】
工程704は、溶血試薬溶液を溶血チャネル内の微小突起物のアレイに適用することを含む。溶血試薬溶液を適用することは、例えば、溶血試薬溶液の所定数の滴を微小突起のアレイに分配することを含むことができる。いくつかの実施形態では、微小突起のアレイの毛細管現象により、溶血試薬溶液が微小突起物のアレイ間で分散する。
【0071】
工程706は、微小突起のアレイ上に乾燥した溶血試薬が配置されるように、微小突起のアレイ上に溶血試薬溶液を乾燥定着させることを含む。いくつかの実施形態では、溶血試薬溶液は、溶血試薬溶液の溶媒成分を受動的に蒸発させることによって乾燥定着させることができる。
【0072】
工程708は、基板の片面にカバー層を添着して、溶血チャネルの上面または底面のいずれかを形成することを含む任意の工程である。微小突起は、溶血チャネルの上面または底面の他方から溶血チャネル内に延びる。
【0073】
方法700の例示的な操作は、例示的実施形態を示す。例示された操作を実行する様々な方法および実行できる他の操作の実施例が、本明細書に記載されている。さらなる変形は、明らかであるか、または明らかになり得る。
【0074】
例えば、方法700は、溶血血液サンプルを調製する溶血チャネルを備えた診断用消耗品を製造するための実施例を示しているが、同様の操作を行って、物質を流体サンプルと混合および/または相互作用させるサンプル調製チャネルを備えた他の種類の診断用消耗品を製造することができる。例えば、工程704で微小突起のアレイに溶血試薬溶液を適用するのではなく、凝固剤などの別の材料を含む流体を微小突起に適用することができ、流体は、微小突起のアレイ上に材料が配置されるように、工程706では微小突起上に乾燥定着される。
【0075】
図20は、診断用消耗品での全血サンプルの分析のための例示的方法800を示すフローチャートである。いくつかの実施態様では、診断用消耗品は、微小流体デバイスとすることができる。方法800は、複数の工程802、804、806、808を含む。
【0076】
工程802は、診断用消耗品の溶血ステージの入口ポートで全血サンプルを受けることを含む。
【0077】
工程804は、診断用消耗品の溶血ステージの溶血チャネルに全血を流すことによって、全血を溶血することを含む。溶血チャネルは、間に複数の流路を画成するように溶血チャネル内に延びる溶血試薬がコーティングされた微小突起のアレイを備える。溶血試薬は、血液が溶血チャネルを通って流れるときに、全血と相互作用し、溶血血液を生成する。溶血チャネルは、例えば、上記で詳細に説明した溶血チャネル102、202、302および/または402と同様であり得る。いくつかの実施形態では、溶血チャネルに全血を流すことは、溶血チャネルを介して全血を圧送することを含む。例えば、全血は、診断用消耗品に外部圧力源を適用することにより、溶血チャネルを介して圧送することができる。外部圧力源は、溶血チャネルの下流に流体連結された診断カードの真空ポートに真空を印加する真空源とすることができる。
【0078】
工程806は、溶血血液を、溶血チャネルに流体連結されたチャンバ内に流すことを含む任意の工程である。チャンバは、上記で詳細に説明したチャンバ110と同様であり得る。例えば、チャンバは、光学アッセイで使用するためのキュベットとして構成される。
【0079】
工程808は、光学的に透明なチャンバの少なくとも一部を介して、チャンバ内で溶血血液の光学アッセイを行うことを含む任意の工程である。例えば、チャンバは、光学的に透明な上面および底面を有することができ、光学アッセイを行うことは、チャンバの光学的に透明な上面および底面を介してチャンバ内の溶血血液を通過した光の分光分析を行うことを含むことができる。このような光学アッセイは、例えば、血液サンプル中のtHb、O2HB、COHb、MetHb、HHbおよび/またはtBiliの濃度を測定するためのCOオキシメトリアッセイであり得る。
【0080】
方法800の例示的な操作は、例示的実施形態を示す。例示された操作を実行する様々な方法および実行できる他の操作の実施例が、本明細書に記載されている。さらなる変形は、明らかであるか、または明らかになり得る。
【0081】
例えば、方法800は、全血サンプルを溶血する工程を含む診断用消耗品での全血サンプルの分析のための実施例を示しているが、同様の操作は、全血サンプルまたは1つもしくはそれ以上の物質を流体サンプルと混合および/もしくは相互作用させることを必要とする他の種類の流体サンプルの他の種類の分析のために行うことができる。例えば、工程802の操作と同様に、流体サンプルは診断用消耗品のサンプル調製ステージの入口ポートで受けられ、次に、工程804の操作と同様に、材料が配置された微小突起のアレイを備えたサンプル調製ステージのチャネルを通して流体サンプルを流すことにより、材料が流体サンプルに混合される。流体サンプルがチャネルを通って流れると、微小突起に配置された材料が流体サンプルと混合され、調製流体サンプルが生成される。例えば、先述したように、いくつかの実施形態では、流体サンプルは全血とすることができ、微小突起に配置された材料は、凝固時間試験を行うために全血と混合するための凝固剤とすることができる。
【0082】
本開示は、主に、血液分析システム用の診断用消耗品における溶血チャネルに関するものであるが、さらに、またはその代わりに、本明細書に記載された実施形態は、診断用消耗品または他の種類の分析システムにおける他の種類の流体サンプル調製チャネルに関し得る。特に、試薬がコーティングされた微小突起を備えたチャネルは、診断用消耗品での試薬の相互作用を介したサンプル流体の調製が有利となる種々の用途のいずれかで使用することができる。例えば、抗原に対して親和性を有する抗体試薬は、抗原を含むことができるサンプル流体がチャネルを通って流れたときに、サンプル流体中に存在し得る抗原が露出し、微小突起アレイの抗体試薬と相互作用するように、チャネル内の微小突起のアレイ上に乾燥定着させることができる。チャネルから吐出された流体の下流分析は、例えば、抗原と抗体との結合を検出するために行うことができる。
【0083】
例示的実施形態
以下は、本開示の追加の例示的実施形態の非限定的なリストを提供する:
例示的実施形態1。流体サンプルの分析に使用するための診断用消耗品であって:
サンプル調製ステージを有する基板を含み、サンプル調製ステージは:
i)流体サンプルを受ける入口ポートと;
ii)調製流体サンプルを吐出する出口ポートと;
iii)入口ポートから出口ポートまで延びるチャネルであって、入口ポートと出口ポートとの間のチャネルの長さの少なくとも一部に沿って間に複数の流路を画成するようにチャネル内に延びる微小突起のアレイを含み、微小突起のアレイは、流体サンプルがチャネルを通って流れて調製流体サンプルを生成するときに流体サンプルと混合するための材料が配置される、チャネルと
を含む診断用消耗品。
例示的実施形態2。アレイの微小突起は、概ね均一な間隔で配置されている、例示的実施形態1に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態3。アレイの微小突起は、チャネルの長さの少なくとも一部に沿って互い違いの列で配置され、各列は、チャネルを通る流れの方向に対して実質的に横向きに配置されている、例示的実施形態1または2に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態4。微小突起の互い違いの列は、実質的に入口ポートと出口ポートとの間のチャネルの全長にわたって配置されている、例示的実施形態3に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態5。微小突起の互い違いの列は、微小突起の第1の列と、チャネルを通る流れの方向に対して微小突起の第1の列から下流側に隣接して配置された微小突起の第2の列とを含み、微小突起の第2の列は、第2の列の微小突起が第1の列の微小突起の間の実質的に中間に配置されるように、微小突起の第1の列に対して、溶血チャネルを通る流れの方向に対して横向きの方向にオフセットされている、例示的実施形態3に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態6。第1の列および第2の列のそれぞれにおいて隣接する微小突起の間の、溶血チャネルを通る流れの方向に対して横向きに測定された分離距離が実質的に等しく;
第1の列および第2の列における微小突起は、チャネルを通る流れの方向に対して横向きに測定された断面寸法が、第1の列および第2の列のそれぞれにおいて隣接する微小突起の間の分離距離以上である、例示的実施形態5に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態7。微小突起の互い違いの列は、微小突起の第2の列の下流側に隣接して配置された微小突起の第3の列をさらに含み;
第3の列の微小突起は、第1の列の微小突起と、チャネルを通る流れの方向に実質的に整列している、例示的実施形態6に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態8。チャネルは、底面と、底面に概ね対向する上面と、底面と上面との間に延びる概ね対向する側面とを有し;
チャネルの高さは、チャネルの底面とチャネルの上面との間の距離として画成され;
微小突起は、チャネルの底面と上面との間のチャネルの高さの少なくとも一部だけ、チャネル内に延びている、例示的実施形態1~7のいずれか1つに記載の診断用消耗品。
例示的実施形態9。微小突起は、チャネルの底面と上面の間でチャネルの高さだけ延びている、例示的実施形態8に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態10。チャネルの上面または底面のいずれかは、基板の片面に添着されたカバー層によって形成され;
微小突起は、チャネルの上面および底面の他方からカバー層まで延びている、例示的実施形態9に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態11。チャネルと流体連通する流体変位要素をさらに含み、流体変位要素は、流体サンプルをチャネルに圧送するために、診断用消耗品に外部刺激を加えることを可能にする、例示的実施形態1~10のいずれか1つに記載の診断用消耗品。
例示的実施形態12。流体変位要素は、チャネルの下流に真空ポートを含み、真空ポートは、流体サンプルをチャネルに圧送するために真空源を適用するように構成されている、例示的実施形態11に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態13。微小突起のアレイに配置された材料は、流体サンプルがチャネルを通って流れるときに流体サンプルと反応する試薬を含む、例示的実施形態1~12のいずれか1つに記載の診断用消耗品。
例示的実施形態14。流体サンプルは全血であり;
微小突起のアレイに配置された試薬は、溶血試薬を含み;
調製流体サンプルは、溶血血液を含む、例示的実施形態13に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態15。流体サンプルは全血であり;
微小突起のアレイに配置された試薬は、凝固剤を含み;
調製流体サンプルは、全血と凝固剤との混合物を含む、例示的実施形態13に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態16。基板は成形されたプラスチック基板を含む、例示的実施形態1~15のいずれか1つに記載の診断用消耗品。
例示的実施形態17。微小突起は微小ピラーを含む、例示的実施形態1~16のいずれか1つに記載の診断用消耗品。
例示的実施形態18。基板は、調製流体サンプル収集容器をさらに含み、調製流体サンプル収集容器は:
調製流体サンプルを受けるためのサンプル調製ステージの出口ポートに流体連結された入口ポートと;
調製流体サンプルを収容するチャンバと
を含む、例示的実施形態1~17のいずれか1つに記載の診断用消耗品。
例示的実施形態19。診断用消耗品での流体サンプルの分析方法であって:
診断用消耗品のサンプル調製ステージの入口ポートで流体サンプルを受けることと;
診断用消耗品のサンプル調製ステージのチャネルに流体サンプルを流すことにより、材料を流体サンプルに混合することとを含み、チャネルは、チャネルの長さの少なくとも一部に沿って間に複数の流路を画成するようにチャネル内に延びる微小突起のアレイを含み、微小突起のアレイは、流体サンプルがチャネルを通って流れて調製流体サンプルを生成するときに流体サンプルと混合するための材料が配置される、方法。
例示的実施形態20。調製流体サンプルを、チャネルに流体連結された診断用消耗品のチャンバ内に流すことをさらに含む、例示的実施形態19に記載の方法。
例示的実施形態21。流体サンプルをチャネルに流すことは、チャネルと流体連通する流体変位要素に外部刺激を加えて、流体サンプルをチャネルに圧送することを含む、例示的実施形態19または20に記載の方法。
例示的実施形態22。流体変位要素は、チャネルと流体連通する圧送ポートを含み、圧送ポートは、外部圧力源を診断用消耗品に適用して、流体サンプルをチャネルに圧送するように構成されている、例示的実施形態21に記載の方法。
例示的実施形態23。圧送ポートは、チャネルの下流に真空ポートを含み、診断用消耗品に外部圧力源を適用することは、真空ポートに真空源を適用してチャネルに流体サンプルを圧送することを含む、例示的実施形態22に記載の方法。
例示的実施形態24。微小突起のアレイに配置された材料は、流体サンプルがチャネルを通って流れるときに流体サンプルと反応する試薬を含む、例示的実施形態19~23のいずれか1つに記載の方法。
例示的実施形態25。微小突起のアレイに配置された試薬は、溶血試薬または凝固剤を含む、例示的実施形態24に記載の方法。
例示的実施形態26。流体サンプルの分析に使用するための診断用消耗品を製造する方法であって:
チャネルの長さの少なくとも一部に沿って間に複数の流路を画成するようにチャネル内に延びる微小突起のアレイを有するチャネルを備えた基板を得ることと;
微小突起のアレイに堆積するための材料を含む流体をチャネル内の微小突起のアレイに適用することと;
微小突起のアレイ上に材料が配置されるように、微小突起のアレイ上に流体を乾燥定着させることと
を含む方法。
例示的実施形態27。微小突起のアレイに流体を適用することは、微小突起のアレイに流体の所定数の滴を分配することを含む、例示的実施形態26に記載の方法。
例示的実施形態28。微小突起のアレイの毛細管現象により、流体が微小突起のアレイ間で分散する、例示的実施形態26または27に記載の方法。
例示的実施形態29。流体を乾燥定着させることは、流体の溶媒成分を受動的に蒸発させることを含む、例示的実施形態26~28のいずれか1つに記載の方法。
例示的実施形態30。基板の片面にカバー層を添着することをさらに含み、カバー層は、チャネルの上面または底面のいずれかを成しており、微小突起は、チャネルの上面または底面の他方からチャネル内に延びる、例示的実施形態26~29のいずれか1つに記載の方法。
例示的実施形態31。微小突起のアレイに配置された材料は、流体サンプルがチャネルを通って流れるときに流体サンプルと反応する試薬を含む、例示的実施形態26~30のいずれか1つに記載の方法。
例示的実施形態32。微小突起のアレイに配置された試薬は、溶血試薬または凝固剤を含む、例示的実施形態31に記載の方法。
例示的実施形態33。基板を得ることは、成形プロセスを介して基板を形成することを含み、微小突起のアレイは、成形プロセスにおいてチャネル内に成形される、例示的実施形態26~32のいずれか1つに記載の方法。
例示的実施形態34。基板はプラスチック基板を含み、成形プロセスは射出成形を含む、例示的実施形態33に記載の方法。
例示的実施形態35。成形プロセスを介して基板を形成することは、基板が:チャネル内に流体サンプルを受けるためにチャネルと流体連通する入口ポートと;外部圧力源を診断用消耗品に適用して流体サンプルをチャネルに圧送するためにチャネルと流体連通する圧送ポートとを含むように、基板を成形することを含む、例示的実施形態33または34に記載の方法。
例示的実施形態36。使用中に、真空ポートに適用される真空源によって、流体サンプルがチャネルに圧送されるように、圧送ポートは、チャネルの下流で基板に形成された真空ポートを含む、例示的実施形態35に記載の方法。
例示的実施形態37。全血の分析に使用するための診断用消耗品であって:
溶血ステージを有する基板を含み、溶血ステージは:
i)全血を受ける入口ポートと;
ii)溶血血液を吐出する出口ポートと;
iii)入口ポートから出口ポートまで延びる溶血チャネルであって、入口ポートと出口ポートとの間の溶血チャネルの長さの少なくとも一部に沿って間に複数の流路を画成するように溶血チャネル内に延びる微小突起のアレイを含み、微小突起のアレイは、全血が溶血チャネルを通って流れて溶血血液を生成するときに全血と相互作用するための溶血試薬が配置される、溶血チャネルと
を含む診断用消耗品。
例示的実施形態38。アレイの微小突起は、概ね均一な間隔で配置されている、例示的実施形態37に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態39。アレイの微小突起は、溶血チャネルの長さの少なくとも一部に沿って互い違いの列で配置され、各列は、溶血チャネルを通る流れの方向に対して実質的に横向きに配置されている、例示的実施形態37または38に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態40。微小突起の互い違いの列は、実質的に入口ポートと出口ポートとの間の溶血チャネルの全長にわたって配置されている、例示的実施形態39に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態41。各列において、列内の隣接する微小突起間の分離距離は実質的に等しく;
微小突起の隣接する列間の分離距離は、各列内の隣接する微小突起間の分離距離と実質的に等しいように、微小突起は溶血チャネルに配置される、例示的実施形態39または40に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態42。微小突起の互い違いの列は、微小突起の第1の列と、溶血チャネルを通る流れの方向に対して微小突起の第1の列から下流側に隣接して配置された微小突起の第2の列とを含み、微小突起の第2の列は、第2の列の微小突起が第1の列の微小突起の間の実質的に中間に配置されるように、微小突起の第1の列に対して、溶血チャネルを通る流れの方向に対して横向きの方向にオフセットされている、例示的実施形態39~41のいずれか1つに記載の診断用消耗品。
例示的実施形態43。第1の列および第2の列のそれぞれにおいて隣接する微小突起の間の、溶血チャネルを通る流れの方向に対して横向きに測定された分離距離が実質的に等しく;
第1の列および第2の列における微小突起は、溶血チャネルを通る流れの方向に対して横向きに測定された断面寸法が、第1の列および第2の列のそれぞれにおいて隣接する微小突起の間の分離距離以上である、例示的実施形態42に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態44。微小突起の互い違いの列は、微小突起の第2の列の下流側に隣接して配置された微小突起の第3の列をさらに含み;
第3の列の微小突起は、第1の列の微小突起と、溶血チャネルを通る流れの方向に実質的に整列している、例示的実施形態43に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態45。溶血チャネルは、底面と、底面に概ね対向する上面と、底面と上面との間に延びる概ね対向する側面とを有し;
溶血チャネルの高さは、溶血チャネルの底面と溶血チャネルの上面との間の距離として画成され;
微小突起は、溶血チャネルの底面と上面との間の溶血チャネルの高さの少なくとも一部だけ、チャネル内に延びている、例示的実施形態37~44のいずれか1つに記載の診断用消耗品。
例示的実施形態46。微小突起は、溶血チャネルの底面と上面の間で溶血チャネルの高さだけ延びている、例示的実施形態45に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態47。溶血チャネルの上面または底面のいずれかは、基板の片面に添着されたカバー層によって形成され;
微小突起は、溶血チャネルの上面および底面の他方からカバー層まで延びている、例示的実施形態46に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態48。基板は成形されたプラスチック基板を含む、例示的実施形態37~47のいずれか1つに記載の診断用消耗品。
例示的実施形態49。微小突起は微小ピラーを含む、例示的実施形態37~48のいずれか1つに記載の診断用消耗品。
例示的実施形態50。微小ピラーは、略円形断面を有する、例示的実施形態49に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態51。基板は、溶血血液収集容器をさらに含み、溶血血液収集容器は:
溶血血液を受けるための溶血ステージの出口ポートに流体連結された入口ポートと;
溶血血液を収容するチャンバと
を含む、例示的実施形態37~50のいずれか1つに記載の診断用消耗品。
例示的実施形態52。チャンバの少なくとも一部は、溶血血液の光学アッセイを許容するように光学的に透明である、例示的実施形態51に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態53。チャンバは:
光学的に透明な上面および底面を含み、チャンバの光学的に透明な上面または底面の一方は、基板の片面に添着されたカバー層によって形成され、カバー層は、チャンバと実質的に整列された光学的に透明な窓を有する、例示的実施形態52に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態54。光学的に透明な上面または底面の他方は、基板内に成形される、例示的実施形態53に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態55。基板は、溶血血液収集容器の下流に真空ポートをさらに含み、真空ポートは、溶血チャネルを介して溶血血液収集容器内へと全血の流れを生じさせるように真空源を適用するように構成されている、例示的実施形態51~54のいずれか1つに記載の診断用消耗品。
例示的実施形態56。基板は、溶血血液収集容器から過剰な溶血血液を受ける廃液収集容器をさらに含み、廃液収集容器は、溶血血液収集容器の下流および真空ポートの上流に流体連結される、例示的実施形態55に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態57。診断用消耗品での全血サンプルの分析方法であって:
診断用消耗品の溶血ステージの入口ポートで全血サンプルを受けることと;
診断用消耗品の溶血ステージの溶血チャネルに全血を流すことによって、全血を溶血することとを含み、溶血チャネルは、溶血チャネルの長さの少なくとも一部に沿って間に複数の流路を画成するように溶血チャネル内に延びる微小突起のアレイを含み、微小突起のアレイは、全血が溶血チャネルを通って流れて溶血を生成するときに全血と相互作用するための溶血試薬が配置される、方法。
例示的実施形態58。溶血血液を、溶血チャネルに流体連結された診断用消耗品のチャンバ内に流すことをさらに含む、例示的実施形態57に記載の方法。
例示的実施形態59。光学的に透明なチャンバの少なくとも一部を介して、チャンバ内で溶血血液の光学アッセイを行うことをさらに含む、例示的実施形態58に記載の方法。
例示的実施形態60。チャンバは、光学的に透明な上面および底面を含み、光学アッセイを行うことは、チャンバの光学的に透明な上面および底面を介してチャンバ内の溶血血液を通過した光の分光分析を行うことを含む、例示的実施形態59に記載の方法。
例示的実施形態61。溶血チャネルに全血を流すことは、溶血チャネルを介して全血を圧送することを含む、例示的実施形態57~60のいずれか1つに記載の方法。
例示的実施形態62。溶血チャネルに全血を圧送することは、外部圧力源を診断用消耗品に適用することを含む、例示的実施形態61に記載の方法。
例示的実施形態63。診断用消耗品に外部圧力源を適用することは、溶血チャネルの下流で溶血チャネルに流体連結された診断用消耗品の真空ポートに真空源を適用することを含む、例示的実施形態57~62のいずれか1つに記載の方法。
例示的実施形態64。全血サンプルの分析に使用するための診断用消耗品を製造する方法であって:
溶血チャネルの長さの少なくとも一部に沿って間に複数の流路を画成するように溶血チャネル内に延びる微細突起のアレイを有する溶血チャネルを備えた基板を得ることと;
溶血試薬溶液を溶血チャネル内の微小突起物のアレイに適用することと;
微小突起のアレイ上に乾燥した溶血試薬が配置されるように、微小突起のアレイ上に溶血試薬溶液を乾燥定着させることと
を含む方法。
例示的実施形態65。溶血試薬溶液を微小突起のアレイに適用することは、溶血試薬溶液の所定数の滴を微小突起のアレイに分配することを含む、例示的実施形態64に記載の方法。
例示的実施形態66。微小突起のアレイの毛細管現象により、溶血試薬溶液が微小突起物のアレイ間で分散する、例示的実施形態64または65に記載の方法。
例示的実施形態67。溶血試薬溶液を乾燥定着させることは、溶血試薬溶液の溶媒成分を受動的に蒸発させることを含む、例示的実施形態64~66のいずれか1つに記載の方法。
例示的実施形態68。基板の片面にカバー層を添着することをさらに含み、カバー層は、溶血チャネルの上面または底面のいずれかを成しており、微小突起は、溶血チャネルの上面または底面の他方から溶血チャネル内に延びる、例示的実施形態64~67のいずれか1つに記載の方法。
例示的実施形態69。基板を得ることは、成形プロセスを介して基板を形成することを含み、微小突起のアレイは、成形プロセスにおいて溶血チャネル内に成形される、例示的実施形態64~68のいずれか1つに記載の方法。
例示的実施形態70。基板はプラスチック基板を含み、成形プロセスは射出成形を含む、例示的実施形態69に記載の方法。
例示的実施形態71。流体サンプルの分析に使用するための診断用消耗品であって:
サンプル調製ステージを有する基板を含み、サンプル調製ステージは:
i)流体サンプルを受ける入口ポートと;
ii)調製流体サンプルを吐出する出口ポートと;
iii)入口ポートから出口ポートまで延びるチャネルであって、入口ポートと出口ポートとの間のチャネルの長さの少なくとも一部に沿って間に複数の流路を画成するようにチャネル内に延びる複数の微小突起を含み、複数の微小突起は、流体サンプルがチャネルを通って流れて調製流体サンプルを生成するときに流体サンプルと相互作用するための試薬が配置される、チャネルと
を含む診断用消耗品。
例示的実施形態72。微小突起は、概ね均一なアレイで離間される、例示的実施形態71に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態73。微小突起は、入口ポートと出口ポートとの間のチャネルの長さの少なくとも一部に沿って、互い違いに配置されている、例示的実施形態71または72に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態74。微小突起の互い違いの列は、実質的に入口ポートと出口ポートとの間のチャネルの全長にわたって配置されている、例示的実施形態73に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態75。各列において、列内の隣接する微小突起間の分離距離は実質的に等しく;
微小突起の隣接する列間の分離距離は、各列内の隣接する微小突起間の分離距離と実質的に等しいように、微小突起はチャネルに配置される、例示的実施形態73または74に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態76。微小突起の互い違いの列は、微小突起の第1の列と、チャネルを通る流れの方向に対して微小突起の第1の列から下流側に隣接して配置された微小突起の第2の列とを含み、微小突起の第2の列は、第2の列の微小突起が第1の列の微小突起の間の実質的に中間に配置されるように、微小突起の第1の列に対して、チャネルを通る流れの方向に対して横向きの方向にオフセットされている、例示的実施形態73または例示的実施形態74に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態77。第1の列および第2の列のそれぞれにおいて隣接する微小突起の間の、チャネルを通る流れの方向に対して横向きに測定された分離距離が実質的に等しく;
第1の列および第2の列における微小突起は、チャネルを通る流れの方向に対して横向きに測定された断面寸法が、第1の列および第2の列のそれぞれにおいて隣接する微小突起の間の分離距離以上である、例示的実施形態76に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態78。微小突起の互い違いの列は、微小突起の第2の列の下流側に隣接して配置された微小突起の第3の列をさらに含み;
第3の列の微小突起は、第1の列の微小突起と、チャネルを通る流れの方向に実質的に整列している、例示的実施形態77に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態79。溶血チャネルは、底面と、底面に概ね対向する上面と、底面と上面との間に延びる概ね対向する側面とを有し;
チャネルの高さは、チャネルの底面とチャネルの上面との間の距離として画成され;
微小突起は、チャネルの底面と上面との間のチャネルの高さの少なくとも一部だけ、チャネル内に延びている、例示的実施形態76~78のいずれか1つに記載の診断用消耗品。
例示的実施形態80。微小突起は、チャネルの底面と上面の間でチャネルの高さだけ延びている、例示的実施形態79に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態81。チャネルの上面または底面のいずれかは、基板の片面に添着されたカバー層によって形成され;
微小突起は、チャネルの上面および底面の他方からカバー層まで延びている、例示的実施形態80に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態82。基板は成形されたプラスチック基板を含む、例示的実施形態71~81のいずれか1つに記載の診断用消耗品。
例示的実施形態83。微小突起は微小ピラーを含む、例示的実施形態71~82のいずれか1つに記載の診断用消耗品。
例示的実施形態84。微小ピラーは、略円形断面を有する、例示的実施形態83に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態85。基板は、調製サンプル収集容器をさらに含み、調製サンプル収集容器は:
調製流体サンプルを受けるためのサンプル調製ステージの出口ポートに流体連結された入口ポートと;
調製流体サンプルを収容するチャンバと
を含む、例示的実施形態71~84のいずれか1つに記載の診断用消耗品。
例示的実施形態86。チャンバの少なくとも一部は、調製流体サンプルの光学アッセイを許容するように光学的に透明である、例示的実施形態85に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態87。チャンバは:光学的に透明な上面および底面を含み、チャンバの光学的に透明な上面または底面の一方は、基板の片面に添着されたカバー層によって形成され、カバー層は、チャンバと実質的に整列された光学的に透明な窓を有する、例示的実施形態86に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態88。光学的に透明な上面または底面の他方は、基板内に成形される、例示的実施形態87に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態89。基板は、調製サンプル収集容器の下流に真空ポートをさらに含み、真空ポートは、サンプル調製ステージのチャネルを介して調製サンプル収集容器内へと流体サンプルの流れを生じさせるように真空源を適用するように構成されている、例示的実施形態85~88のいずれか1つに記載の診断用消耗品。
例示的実施形態90。基板は、調製流体サンプル収集容器から過剰な調製流体サンプルを受ける廃液収集容器をさらに含み、廃液収集容器は、調製流体サンプル収集容器の下流および真空ポートの上流に流体連結される、例示的実施形態89に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態91。サンプル調製ステージは溶解ステージを含み、試薬は溶解試薬を含む、例示的実施形態71~90のいずれか1つに記載の診断用消耗品。
例示的実施形態92。流体サンプルは全血であり;
試薬は、溶血試薬を含み;
調製流体サンプルは、溶血血液を含む、例示的実施形態91に記載の診断用消耗品。
例示的実施形態93。試薬は少なくとも1つの抗体を含む、例示的実施形態71~90のいずれか1つに記載の診断用消耗品。
【0084】
本明細書に開示された発明概念は、本明細書に記載された、または図面に図示された構成の詳細および構成部品の配置への適用に限定されない。本明細書に開示される発明概念は、他の実施形態が可能であり、種々の方法で実施または実行することができる。また、本明細書で用いられている表現または用語は、説明のためのものであり、決して本明細書で開示され特許請求される発明概念を限定するものとして考えるべきではないと理解すべきである。
【0085】
加えて、多数の具体的詳細は、発明概念の完全な理解をもたらすために記述される。しかしながら、本開示内の発明概念がこれらの具体的詳細なしに実施されることは当業者にとって明らかであろう。他の例では、周知の構成は、本開示を不必要に複雑にすることを避けるために、詳細に記載されていない。
【0086】
本明細書で使用する場合、用語「含む(comprises、comprising)」、「備える、含む(includes、including)」、「有する(has、having)」またはこれらの任意の他の変形は、非排他的包含を網羅するように意図される。例えば、要素のリストを含む組成、プロセス、方法、物品または装置は必ずしもそれらの要素に限定されておらず、明示的に列挙されていないか、またはこれらに固有に存在していない他の要素を含んでもよい。
【0087】
本明細書で使用する場合、用語「およそ(approximately)」、「約(about)」、「実質的に(substantially)」およびこれらの変形は、当該用語で修飾された正確な値だけでなく、そこからのわずかな逸脱、例えば、測定誤差、製造公差、構成部品または構造への磨損、構造に及ぼされる応力、およびこれらの組み合わせによって生じる逸脱も含むことを意図される。
【0088】
明示的に相反する記載がない限り、「または」は包含的なまたはを意味し、排他的なまたはを意味するものではない。例えば、条件AまたはBは以下のいずれか1つにより満たされる:Aは真であり(または存在する)、かつBは偽である(または存在しない)、Aは偽であり(または存在しない)、かつBは真である(または存在する)、およびAとBの両方は真である(または存在する)。包括的なまたはは、条件AまたはBのうちの少なくとも1つと等しいものとして理解される。
【0089】
加えて、「1つの(aまたはan)」の使用は、本明細書の実施形態の要素および構成部品を記述するために利用される。これは単に便宜上なされており、発明概念の一般的な意味を示すためになされている。この記述は、1つまたは少なくとも1つを包含するものとして読まれるべきであり、単数はまた、明らかにそうではないことを意味していない限り、複数を包含する。
【0090】
「一実施形態」または「実施形態」へのいかなる参照も、その実施形態に関連して説明される特定の要素、構成、構造または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書の様々な箇所における表現「一実施形態では」の出現は、必ずしもすべてが同一の実施形態に言及するものではない。