(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】血清学的アッセイにおいてCD47に結合する薬物の干渉を低減するための方法及び試薬
(51)【国際特許分類】
G01N 33/48 20060101AFI20240927BHJP
G01N 33/80 20060101ALI20240927BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240927BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240927BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G01N33/48 B
G01N33/80 ZNA
C12N15/13
C07K16/28
G01N33/53 N
G01N33/53 K
G01N33/53 R
(21)【出願番号】P 2021572418
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(86)【国際出願番号】 US2020036425
(87)【国際公開番号】W WO2020247820
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-06-05
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516237639
【氏名又は名称】エーエルエックス オンコロジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ホン
(72)【発明者】
【氏名】ポンズ, ジャウメ
(72)【発明者】
【氏名】ランドルフ, ソフィア
(72)【発明者】
【氏名】シム, バン ジャネット
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-513640(JP,A)
【文献】RANDALL W. V. et al,Monoclonal anti-CD47 interference in red cell and platelet testing,TRANSFUSION,2018年12月05日,Vol.59,No.2,P.730-737
【文献】PENKA S. PETROVA et al.,TTI-621(SIRPαFc):A CD47-Blocking innate Immune checkpoint inhibitor with Broad Antitumor Activity and Minimal Erythrocyte Binding,CLINICAL CANCER RESERCH,vol.23,no.4,2017年02月15日,p.1068-1079
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬赤血球(RBC)または試薬血小板を使用する
輸血前の血清学的アッセイにおける薬物干渉を低減する方法であって、
(a)薬物に結合し、かつ前記試薬RBCまたは前記試薬血小板の薬物の結合をブロックする薬物中和剤を、前記薬物による治療を受けた対象由来の血漿試料へ添加することと、
(b)前記試薬RBCまたは前記試薬血小板を使用して、ステップ(a)の後に前記血漿試料の前記血清学的アッセイを実行することと、を含み、
前記薬物は、(i)ヒト抗体Fc領
域、及び(ii)ヒトCD47に結合する部分を含
み、
ヒトCD47に結合する前記薬物の部分が、
(1)膜貫通ドメインを欠く野生型SIRPα、または
(2)野生型SIRPαの細胞外ドメインと比較して、1つ以上のアミノ酸置換(複数可)、欠失(複数可)、挿入(複数可)、N末端付加(複数可)及び/またはC末端付加(複数可)を含み、ヒトCD47に結合することができ、かつ膜貫通ドメインを欠く、SIRPαバリアント
を含み、
前記薬物中和剤が、抗SIRPα抗体であるか、またはヒトCD47に結合する前記部分に結合することができるその抗原結合フラグメントである、前記方法。
【請求項2】
赤血球(RBC)及び/または血小板を含有する血液試料の輸血前の血清学的アッセイにおける薬物干渉を低減する方法であって、
(a)薬物による治療を受けた対象の由来の前記血液試料に、抗SIRPα抗体またはその抗原結合フラグメントを追加することと、
(b)ステップ(a)の後に、試薬血漿/抗血清を使用した前記血液試料の前記血清学的アッセイを実行することと
を含み、
前記薬物は、(i)ヒト抗体Fc領域、及び(ii)ヒトCD47に結合する野生型SIRPαまたはそのバリアントの細胞外ドメインを含み、SIRPαバリアントは、野生型SIRPαの細胞外ドメインと比較して、1つ以上のアミノ酸置換(複数可)、欠失(複数可)、挿入(複数可)、N末端付加(複数可)及び/またはC末端付加(複数可)を含み、ヒトCD47に結合することができ、かつ膜貫通ドメインを欠き、
抗SIRPα抗体またはその抗原結合フラグメントは、血液試料中のRBCの表面でCD47に結合した薬物を置換する、前記方法。
【請求項3】
前記抗SIRPα抗体またはその抗原結合フラグメントが、
(a)配列番号6を含む重鎖可変ドメイン(V
H
)と、配列番号7を含む軽鎖可変ドメイン(V
L
)
(b)配列番号21を含む重鎖可変ドメイン(V
H
)と、配列番号22を含む軽鎖可変ドメイン(V
L
)
(c)配列番号21を含む重鎖可変ドメイン(V
H
)と、配列番号22を含む軽鎖可変ドメイン(V
L
)
を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記薬物に対する前記薬物中和剤の親和性が、ヒトCD47に対する前記薬物の親和性よりも高い、請求項1
または3に記載の方法。
【請求項5】
前記薬物中和剤が、前記血漿試料中の前記薬物の量に対してモル過剰量で前記血漿試料に添加される、請求項1
、3及び4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記抗SIRPα抗体
またはその抗原結合フラグメントが、前記血液試料中の前記薬物の量に対してモル過剰量で前記血液試料に添加される、請求項
2または3に記載の方法。
【請求項7】
前記薬物の前記抗体Fc領域がヒトIgG Fc領
域であ
り、任意で前記ヒトIgG Fc領域が、IgG1、IgG2、もしくはIgG4 Fc領域である、請求項1~
6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記
輸血前の血清学的アッセイがABO/Rh判定アッセイ
、
即時スピン(IS)アッセイ
IgG及び補体C3を検出する多重特異性試薬を使用する直接抗グロブリン(DAT)アッセイ、
補体C3を検出する単一特異性試薬を使用する直接抗グロブリン(DAT)アッセイ、
PEG増強血清学的アッセイ、及び/または
前記DATアッセイの後に実施される溶出液試験
である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2019年6月7日に出願された米国仮出願第62/858,871号及び2019年11月12日に出願された米国仮出願第62/934,395号の優先権を主張し、それぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
ASCIIテキストファイルの配列表の提出
ASCIIテキストファイルに関する以下の提出物の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる:配列表のコンピュータ可読形式(CRF)(ファイル名:757972000940SEQLIST.TXT、記録された日付:2020年6月3日、サイズ:26KB)。
【0003】
本発明は、(i)抗体Fc領域及び(ii)ヒトCD47に結合する部分を含む薬物による血清学的アッセイにおける干渉を低減するのに使用するための方法及び試薬に関する。
【背景技術】
【0004】
がんを含む多種多様な疾患の治療として、ますます多くの抗体ベースの薬物が開発されている。このような治療は、治療用抗体の標的が赤血球(RBC)、白血球(WBC)、及び/または血小板などの血液細胞にも発現している場合、血液型判定及び血清学的アッセイを妨げる可能性がある。
【0005】
例えば、CD47、シグナル調節タンパク質-α(SIRPα)に結合し、食作用を阻害する広く発現された細胞表面タンパク質(Jaiswal et al.,Trends Immunol(2010)31(6):212-219;Brown et al.,Trends Cell Biol(2001)11(3):130-135)は、血液腫瘍及び固形腫瘍を含む多種多様な悪性腫瘍で、高レベルで発現される。CD47発現の上昇は、侵攻性疾患とも相関する(Willingham et al.,Proc Natl Acad Sci USA(2012)109(17):6662-6667)。CD47を標的とするいくつかのがん治療法、例えば抗体及び抗体Fc領域を含む融合タンパク質は、SIRPα-CD47相互作用をブロックするために開発されており、それによりマクロファージが食作用機能を実行して腫瘍細胞を除去することが可能になる。
【0006】
CD47は、赤血球(RBC)及び血小板などの血液細胞の表面にも発現されるため(Oldenborg et al.,Science(2000)288(5473):2051~2054)、CD47を標的する抗体Fc領域を含む薬物は、血液型判定及び血清学的試験を妨げ得る。さらに、CD47標的薬(例えば、がんの治療)を投与されている患者は、同時の貧血及び/または血小板減少症を治療するために輸血を必要とすることが多いので、抗CD47薬による血清学的及び血液型判定アッセイへの干渉は、患者の安全上の重大な懸念事項である。したがって、当該技術分野では、抗体Fc領域を含むCD47標識薬物の血清学的アッセイへの干渉を低減するための方法及び試薬を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
試薬赤血球(RBC)または試薬血小板を使用する血清学的アッセイにおける薬物干渉を低減する方法が提供され、当該方法は、(a)薬物に結合し、薬物が試薬RBCまたは試薬血小板に結合するのをブロックする薬物中和剤を、薬物による治療を受けた対象由来の血漿試料に対して添加すること、ならびに(b)ステップ(a)の後に、試薬RBCまたは試薬血小板を使用して血漿試料の血清学的アッセイを実施することを含み、この薬物が、(i)ヒト抗体Fc領域またはそのバリアント、及び(ii)ヒトCD47に結合する部分を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、ヒトCD47に結合する薬物の部分は、野生型SIRPα、SIRPαのバリアント、または野生型のSIRPαもしくはSIRPαのバリアントのフラグメントを含む。いくつかの実施形態では、ヒトCD47に結合する薬物の部分は、SIRPαバリアントを含み、SIRPαバリアントは、野生型SIRPαと比較して、1つ以上のアミノ酸置換(複数可)、挿入(複数可)、欠失(複数可)、N末端伸長(複数可)、及び/またはC末端伸長(複数可)を含む。いくつかの実施形態では、ヒトCD47に結合する薬物の部分は、SIRPαバリアントのフラグメントを含み、このフラグメントは、SIRPαバリアントの細胞外ドメインを含む。いくつかの実施形態では、薬物中和剤は、野生型SIRPα、SIRPαバリアント、または野生型SIRPαまたはSIRPαバリアントのフラグメントに結合し得る抗SIRPα抗体である。
【0009】
いくつかの実施形態では、ヒトCD47に結合する薬物の部分は、野生型のSIRPγ、SIRPγバリアント、または野生型のSIRPγもしくはSIRPγバリアントのフラグメントを含む。いくつかの実施形態では、ヒトCD47に結合する薬物の部分は、SIRPγバリアントを含み、このSIRPγバリアントは、野生型SIRPγと比較して、1つ以上のアミノ酸置換(複数可)、挿入(複数可)、欠失(複数可)、N末端伸長(複数可)、C末端伸長(複数可)または前述の任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ヒトCD47に結合する薬物の部分は、SIRPγバリアントのフラグメントを含み、このフラグメントは、SIRPγバリアントの細胞外ドメインを含む。いくつかの実施形態では、薬物中和剤は、野生型SIRPγ、SIRPγバリアント、または野生型SIRPγもしくはSIRPγバリアントのフラグメントに結合し得る抗SIRPγ抗体である。
【0010】
いくつかの実施形態では、ヒトCD47に結合する薬物の部分は、SIRPβバリアントまたはSIRPβバリアントのフラグメントを含む。いくつかの実施形態では、ヒトCD47に結合する薬物の部分は、SIRPβバリアントを含み、SIRPβバリアントは、野生型SIRPγと比較して、1つ以上のアミノ酸置換(複数可)、挿入(複数可)、欠失(複数可)、N末端伸長(複数可)、C末端伸長(複数可)、または前述の任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ヒトCD47に結合する薬物の部分は、SIRPβバリアントのフラグメントを含み、このフラグメントは、SIRPβバリアントの細胞外ドメインを含む。いくつかの実施形態では、薬物中和剤は、SIRPγバリアントまたはSIRPβバリアントのフラグメントに結合し得る抗SIRPβ抗体である。
【0011】
いくつかの実施形態では、薬物は、抗CD47抗体である。いくつかの実施形態では、薬物中和剤は、抗CD47抗体の抗原結合部分に結合する抗イディオタイプ抗体である。
【0012】
いくつかの実施形態では、薬物中和剤は、ヒトCD47に結合する薬物の部分に結合し得るCD47ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、CD47ポリペプチドは、モノマー、ダイマー、またはオリゴマーである。いくつかの実施形態では、CD47ポリペプチドは、ヒトCD47、マウスCD47、ラットCD47、アカゲザルCD47、またはカニクイザルCD47である。いくつかの実施形態では、CD47ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CD47ポリペプチドは、野生型CD47と比較して、1つ以上のアミノ酸置換、挿入、欠失、N末端伸長、またはC末端伸長を含むCD47バリアントである。いくつかの実施形態では、CD47バリアントは、配列番号2~5のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、薬物に対する薬物中和剤の親和性は、ヒトCD47に対する薬物の親和性よりも高い。いくつかの実施形態では、薬物中和剤は、血漿試料中の薬物の量に対してモル過剰量で血漿試料に添加される。
【0014】
赤血球(RBC)及び/または血小板を含む血液試料の血清学的アッセイにおける薬物干渉を低減する方法も提供され、当該方法は、(a)抗SIRPα抗体を、薬物による治療を受けた対象由来の血液試料に添加することと、(b)ステップ(a)の後に血液試料の血清学的アッセイを実行することと、を含み、この薬物は(i)抗体Fc領域、及び(ii)ヒトCD47に結合する野生型SIRPαまたはそのバリアントの細胞外ドメインを含み、抗SIRPα抗体フラグメントは、血液試料中のRBCの表面でCD47に結合した薬物を置換する。いくつかの実施形態では、抗SIRPα抗体は、(a)配列番号6を含む重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号7を含む軽鎖可変ドメイン(VL)、(b)配列番号21を含む重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号22を含む軽鎖可変ドメイン(VL)、または(c)配列番号23を含む重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号24を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。いくつかの実施形態では、薬物は、野生型SIRPαの細胞外ドメインのバリアントを含む。いくつかの実施形態では、このバリアントは、野生型SIRPαの細胞外ドメインと比較して、1つ以上のアミノ酸置換(複数可)、挿入(複数可)、欠失(複数可)、N末端伸長(複数可)、及び/またはC末端伸長(複数可)を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、抗SIRPα抗体は、血液試料中の薬物の量に対してモル過剰量で血液試料に添加される。
【0016】
試薬赤血球(RBC)、試薬血小板、またはそれらの組み合わせを使用する血清学的アッセイにおける薬物干渉を低減する方法も提供され、当該方法は、(a)試薬赤血球(RBC)、試薬血小板、またはそれらの組み合わせに細胞結合剤を添加することであって、細胞結合剤がヒトCD47に結合し、抗体Fc領域を含まないことと、(b)試薬赤血球(RBC)、試薬血小板、またはステップ(a)のそれらの組み合わせを使用して血漿試料の血清学的アッセイを実施することとを含み、この血漿試料が、薬物による治療を受けた対象由来のものであり、この薬物が、(i)抗体Fc領域及び(ii)ヒトCD47に結合する部分を含む。
【0017】
さらに、試薬赤血球(RBC)、試薬血小板、またはそれらの組み合わせを使用する血清学的アッセイにおける薬物干渉を低減する方法が提供され、当該方法は、(a)細胞結合剤を、細胞結合剤がヒトCD47に結合し、抗体Fc領域を含まない、薬物による治療を受けた対象由来の血漿試料に添加することと、(b)ステップ(a)の後に、試薬赤血球(RBC)、試薬血小板、またはそれらの組み合わせを使用して血漿試料の血清学的アッセイを実施することとを含み、この薬物は(i)抗体Fc領域及び(ii)ヒトCD47に結合する部分を含む。
【0018】
試薬赤血球(RBC)、試薬血小板、またはそれらの組み合わせを含む血液試料の血清学的アッセイにおける薬物干渉を低減する方法も提供され、当該方法は、(a)ヒトCD47に結合し、抗体Fc領域を含まない細胞結合剤を、薬物による治療を受けた対象由来の血液試料に対して添加することと、(b)ステップ(a)の後に血液試料の血清学的アッセイを実施することとを含み、この薬物は、(i)抗体Fc領域及び(ii)ヒトCD47に結合する部分を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、細胞結合剤は、野生型SIRPα、野生型SIRPγ、またはヒトCD47に結合し得る野生型SIRPαもしくは野生型SIRPγのフラグメントを含む。いくつかの実施形態では、細胞結合剤は、ヒトCD47に結合し得るSIRPαバリアントまたはそのCD47結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、SIRPαバリアントは、野生型SIRPαと比較して、1つ以上のアミノ酸置換(複数可)、挿入(複数可)、欠失(複数可)、N末端伸長(複数可)、C末端伸長(複数可)、または前述のそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、細胞結合剤は、ヒトCD47に結合し得るSIRPβバリアントまたはそのCD47結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、SIRPβバリアントは、野生型SIRPβと比較して、1つ以上のアミノ酸置換(複数可)、挿入(複数可)、欠失(複数可)、N末端伸長(複数可)、C末端伸長(複数可)、または前述のそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、細胞結合剤は、ヒトCD47に結合し得るSIRPγバリアントまたはそのCD47結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、SIRPγバリアントは、野生型SIRPγと比較して、1つ以上のアミノ酸置換(複数可)、挿入(複数可)、欠失(複数可)、N末端伸長(複数可)、C末端伸長(複数可)、または前述のそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、このバリアントは、配列番号8~16のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、細胞結合剤は、抗CD47抗体の抗原結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、抗原結合フラグメントは、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、scFv、またはダイアボディである。
【0021】
いくつかの実施形態では、ヒトCD47に対する細胞結合剤の親和性は、ヒトCD47に対する薬物の親和性よりも高い。いくつかの実施形態では、細胞結合剤は、血漿試料中の薬物の量に対してモル過剰量で試薬RBC及び/または試薬血小板に添加される。いくつかの実施形態では、細胞結合剤は、血漿試料中の薬物の量に対してモル過剰量で血漿試料に添加される。いくつかの実施形態では、SIRPα剤は、血液試料中の薬物の量に対してモル過剰量で血液試料に添加される。
【0022】
いくつかの実施形態では、薬物の抗体Fc領域は、ヒトIgG Fc領域またはそのバリアントである。いくつかの実施形態では、ヒトIgG Fc領域は、IgG1、IgG2、もしくはIgG4 Fc領域、またはIgG1、IgG2、もしくはIgG4 Fc領域のバリアントである。
【0023】
いくつかの実施形態では、血清学的アッセイは、ABO/Rh判定アッセイである。いくつかの実施形態では、血清学的アッセイは、即時スピン(IS)アッセイである。いくつかの実施形態では、血清学的アッセイは、IgG及び補体C3を検出する多重特異性試薬を使用する直接抗グロブリン(DAT)アッセイである。いくつかの実施形態では、血清学的アッセイは、補体C3を検出する単一特異性試薬を使用する直接抗グロブリン(DAT)アッセイである。いくつかの実施形態では、血清学的アッセイは、PEG増強血清学的アッセイである。いくつかの実施形態では、血清学的アッセイは、DATアッセイの後に実施される溶出液試験である。
【0024】
配列番号11~20のいずれか1つを含むポリペプチドも提供される。
【0025】
特許出願、特許公開、及びUniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号を含む、本明細書で引用される全ての参考文献は、あたかも個々の参考文献が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】対象から得られた血漿試料を、試薬赤血球(すなわち、特定の細胞表面抗原または細胞表面抗原の群を発現することが既知の赤血球(「RBC」))と混合して、血漿試料中のRBC表面抗原に結合する抗体の存在を検出する血清学的アッセイを示す。あるいは、そのような血清学的アッセイは、試薬RBCの代わりに試薬血小板(すなわち、特定の細胞表面抗原、または細胞表面抗原の群を発現することが既知の血小板)を使用して実施してもよい。
【
図1B】(i)抗体Fc領域、及び(ii)血漿試料中のヒトCD47に結合する部分を含む薬物の存在が、
図1Aのアッセイにどのように干渉するかを示す。
【
図1C】対象から得られた血液試料を、試薬血漿/抗血清(すなわち、特定のRBC表面抗原(複数可)または血小板表面抗原(複数可)に対する抗体を含むことが既知の血漿または抗血清)と順番に混合して、対象のRBC及び/または血小板上の抗原の存在を検出する血清学的アッセイを示す。
【
図1D】(i)抗体Fc領域、及び(ii)血液試料中のヒトCD47に結合する部分を含む薬物の存在が、
図1Cのアッセイをどのように妨害するかを示す。
【
図2】薬物で治療された対象から得られた血漿試料に薬物中和剤を添加することを含む、血清学的アッセイにおける干渉を低減する方法を示す。簡単に説明すると、薬物中和剤は血漿試料中の薬物に結合するので、試薬RBCまたは試薬血小板の表面にあるCD47に結合するために利用可能な遊離薬物はほとんどまたはまったくない。
【
図3A】薬物による治療を受けた対象由来の血漿試料に抗SIRPα抗体を添加することを含む、血清学的アッセイにおける干渉を低減する方法を示す。抗SIRPα抗体は、血漿試料中の薬物に結合するので、試薬RBCまたは試薬血小板の表面にあるCD47に結合するために利用可能な遊離薬物はほとんどまたはまったくない。
【
図3B】薬物による治療を受けた対象由来の血液試料に抗SIRPα抗体を添加することを含む、血清学的アッセイにおける干渉を低減する方法を示す。抗SIRPα抗体は、対象のRBC及び/または血小板の表面でCD47に結合した薬物を置換し、患者の血液試料中の薬物結合RBC及び/または薬物結合血小板の量を最小限に抑える(または試料中の薬物結合RBC及び/もしくは薬物結合血小板を排除する)。
【
図4A】試薬RBCまたは試薬血小板に細胞結合剤を添加することを含む、血清学的アッセイにおける干渉を低減する方法を示す。簡単に説明すると、ヒトCD47に結合し、抗体Fc領域を含まない細胞結合剤は、試薬RBCまたは試薬血小板の表面のCD47に結合する。細胞結合剤による試薬RBC(または試薬血小板)の結合は、薬物が試薬RBC(または試薬血小板)に結合するのをブロックする。
【
図4B】薬物による治療を受けた対象由来の血漿に細胞結合剤を添加することを含む、血清学的アッセイにおける干渉を低減する方法を示す。簡単に説明すると、細胞結合剤は、試薬RBCまたは試薬血小板の表面に発現するCD47への結合について薬物と競合し、かつこのアッセイにおける薬物結合試薬RBCまたは薬物結合試薬血小板の量を最小限に抑える(またはこのアッセイにおける薬物結合試薬RBC及び/または薬物結合試薬血小板を排除する)。
【
図4C】薬物による治療を受けた対象由来の血液試料に細胞結合剤を添加することを含む、血清学的アッセイにおける干渉を低減する方法を示す。簡単に言えば、細胞結合剤は、対象のRBC及び/または血小板の表面に発現されるCD47への結合について薬物と競合し、このアッセイにおける薬物結合RBC及び/または薬物結合血小板の量を最小化する(または排除する)。
【
図5A】SIRPαとCD47との間の相互作用をブロックする例示的な抗SIRPα抗体である抗体Aが赤血球表面上のCD47に結合した薬物Aの干渉を軽減するか否かを決定するために実施した血球凝集実験の結果を示す。
【
図5B】抗体Aが、DLD-1細胞の表面上のCD47に結合した薬物Aを置換するか否かを決定するために実施した実験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
輸血前の血清学的アッセイにおける干渉を軽減する方法
CD47は、トロンボスポンジン-1(TSP-1)、ならびにシグナル調節タンパク質アルファ(SIRPα)を含む免疫細胞上のいくつかの分子と相互作用する膜貫通タンパク質である。CD47に結合すると、SIRPαは、食作用を阻害し、免疫系による健康な細胞の食作用による除去を防ぐシグナル伝達カスケードを開始する。しかし、多くのがんは、CD47を過剰発現し、食細胞のクリアランスを回避する。したがって、CD47を標的とする薬物(例えば、抗CD47抗体及び抗体Fc領域とCD47に結合する部分とを含む融合タンパク質)は、治療上非常に重要である。CD47は、ヒト赤血球(RBC)及び血小板の表面にも発現している。したがって、(i)抗体Fc領域及び(ii)ヒトCD47に結合する部分を含む薬物の対象への投与に続いて、対象の血漿中に存在するか、または対象のRBC及び/もしくは血小板に結合する薬物は、慣用的な輸血前血清学的アッセイにおける障害となり得る。
【0028】
例えば、
図1Aは、対象から得られた血漿試料を、試薬RBCもしくは「参照RBC」(すなわち、特定の細胞表面抗原または細胞表面抗原群を発現することが既知のRBC)または試薬血小板もしくは「参照血小板」(すなわち、特定の細胞表面抗原を発現することが既知の血小板、または細胞表面抗原の群)と混合して、試薬RBCまたは試薬血小板上に発現することが既知の、細胞表面抗原に結合する血漿試料中の抗体の存在を検出する、血清学的アッセイを示す。血漿試料と試薬RBC(または試薬血小板)を混合した後、抗ヒトグロブリン(AHG)を添加し、血漿試料にRBC表面抗原(または血小板表面抗原)に結合する抗体が含まれている場合、試薬RBC(または試薬血小板)の凝集(例えば、クランピング)が起こる。ただし、(i)抗体Fc領域、及び(ii)対象の血漿中のヒトCD47に結合する部分を含む薬物の存在は、アッセイを妨害し、偽陽性の結果をもたらし得る。
図1Bに示すように、対象の血漿と試薬RBC(または試薬血小板)が混合された後、薬物は、試薬RBC(または試薬血小板)の表面に発現されるCD47に結合し得る。混合物にAHGを添加すると、試薬RBC(または試薬血小板)の凝集につながる。
【0029】
図1Cは、対象由来の血液試料を、試薬血漿/抗血清(すなわち、既知のRBC表面抗原(複数可)または既知の血小板表面抗原(複数可)に対する抗体を含む血漿または抗血清)と混合して、対象のRBC及び/または血小板上の抗原の存在を検出する、血清学的アッセイを示す。試薬血漿/抗血清と対象由来の試料とを混合した後、試薬血漿/抗血清中の抗体によって認識される抗原が対象のRBC及び/または血小板に発現している場合、AHGの添加は凝集を引き起こす。(i)抗体Fc領域、及び(ii)対象のRBC及び/または血小板を含む試料中のヒトCD47に結合する部分を含む薬物の存在は、アッセイを妨害し、偽陽性の結果を生じ得る。
図1Dに示すように、対象のRBCまたは血小板上のCD47に結合した薬物は、対象の血液試料と試薬血漿/抗血清とを含む混合物にAHGを添加した後、凝集を引き起こす。
【0030】
以下に記載される方法は、すなわち、
図1B及び
図1Dに示されるように、薬物によって引き起こされる干渉を低減する(そして、いくつかの実施形態では、排除する)。
【0031】
A.輸血前の血清学的アッセイにおける干渉を軽減するために薬物中和剤を使用する方法
いくつかの実施形態では、方法は、(a)薬物に(すなわち、ヒトCD47に結合する部分を含む薬物の一部に)結合する薬物中和剤を、薬物による治療を受けた対象由来の血漿試料に添加することと、(b)ステップ(a)の後に試薬RBC(すなわち、特定の細胞表面抗原または細胞表面抗原の群を発現することが既知のRBC)及び/または試薬血小板(すなわち、特定の細胞表面抗原、または細胞表面抗原の群を発現することが既知の血小板)を使用して血漿試料の血清学的アッセイを実施することとを含み、薬物は、(i)抗体Fc領域及び(ii)ヒトCD47に結合する部分を含む。そのような実施形態は、一般的に
図2に示されている。
図2に示されるように、薬物中和剤は、対象の血漿試料中の薬物(例えば、ヒトCD47に結合する薬物の部分)に結合して、この薬物が試薬RBC及び/または試薬血小板に結合するのをブロックする。試薬RBC及び/または試薬血小板の表面のCD47に結合するために利用できる遊離薬物はほとんどまたはまったくない。試薬RBC及び/または試薬血小板への薬物の結合から生じる干渉は(
図1Bに示されるように)、最小限に抑えられ(または、いくつかの実施形態では排除され)、したがって血清学的アッセイにおける偽陽性結果が防止される。いくつかの実施形態では、薬物中和剤はまた、血清学的アッセイが実施される前に、試薬RBC及び/または試薬血小板に添加される。
【0032】
いくつかの実施形態では、薬物中和剤とは、薬物に結合し得、薬物が試薬RBC及び/または試薬血小板に結合するのをブロックし得る任意の薬剤である。いくつかの実施形態では、薬物中和剤は、血清学的アッセイが実施される前に、試薬RBC及び/または試薬血小板に(例えば、試薬RBC及び/または試薬血小板のみに)添加される。
【0033】
いくつかの実施形態では、方法は、例えば、薬物中和剤が可溶性である溶液中で実施される。いくつかの実施形態では、薬物中和剤が、固相に固定化された後、この方法がマトリックスまたは表面への吸着、共有結合、または非共有結合を介して実行される。いくつかの実施形態では、薬物中和剤は、固相への固定化に続いて薬物に結合し得る。固定化に使用される固相または表面は、本質的に水不溶性であり、かつ例えば、表面、粒子、多孔質マトリックス、セルロースポリマースポンジ(Immuno CAP(登録商標),Phadia)などの形態の支持体を含む、イムノアッセイにおいて有用である任意の不活性支持体または担体であってもよい。一般的に使用される支持体の例としては、小さなシート、セファデックス、ポリ塩化ビニル、プラスチックビーズ、微粒子、アッセイプレート、またはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンから製造された試験管などが含まれる。いくつかの実施形態では、薬物中和剤は、複数の試料を同時に分析するために使用され得る、マルチウェルマイクロタイタープレートなどのマイクロタイタープレート上にコーティングされる。
【0034】
いくつかの実施形態では、薬物は、(i)抗体Fc領域、及び(ii)ヒトCD47に結合するSIRPαバリアント、SIRPβバリアント、またはSIRPγバリアントを含み、そして薬物中和剤は、SIRPαバリアント、SIRPβバリアント、またはSIRPγバリアントに結合し得るCD47ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、薬物は、抗CD47抗体(例えば、抗ヒトCD47抗体)を含み、薬物中和剤は、抗ヒトCD47抗体に結合し得るCD47ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、CD47ポリペプチドは、野生型CD47(「WT CD47-ECD」)の細胞外ドメイン、または薬物に結合し、かつその薬物が試薬RBC及び/もしくは血小板に結合するのをブロックし得るWT CD47-ECDの一部を含む。いくつかの実施形態では、CD47ポリペプチドは、CD47モノマー、CD47ダイマー、またはCD47オリゴマーを含む。いくつかの実施形態では、CD47オリゴマーは、自発的に(例えば、インビトロで)形成されるオリゴマーである。いくつかの実施形態では、CD47オリゴマーは、操作されたオリゴマー、例えば、ペプチド結合またはリンカーを介して連結されたCD47ポリペプチドの連結鎖、多量体化を促進するドメインを含むように操作されたCD47、またはCD47の固体支持体(例えば、ビーズ、ガラス面など)への結合を促進するタグを含むように操作されたCD47である。いくつかの実施形態では、CD47ポリペプチドは、融合ポリペプチド、例えば、CD47(またはそのフラグメント)を含む融合ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、CD47(またはそのフラグメント)及び抗体Fc領域を含む。いくつかの実施形態では、CD47ポリペプチドは、ヒトCD47、マウスCD47、ラットCD47、アカゲザルCD47、カニクイザルCD47、または薬物に結合し、そしてその薬物が試薬RBC及び/または試薬血小板に結合するのをブロックし得る任意の起源のCD47を含む。いくつかの実施形態では、CD47ポリペプチドは、フラグメントが薬物に結合し、その薬物が試薬RBC及び/または試薬血小板に結合するのをブロックし得るという条件で、任意の起源のヒトCD47、マウスCD47、ラットCD47、アカゲザルCD47、カニクイザルCD47、またはCD47のフラグメントを含む。いくつかの実施形態では、CD47ポリペプチドは、バリアントが薬物に結合し得るという条件で、野生型CD47のバリアント(またはそのフラグメント、例えば、WT CD47-ECDのバリアント)である。いくつかの実施形態では、バリアント(またはそのフラグメント)は、野生型CD47(例えば、野生型のヒト、ラット、マウス、アカゲザル、またはカニクイザルCD47)と比較して、1つ以上のアミノ酸置換(複数可)、欠失(複数可)、挿入(複数可)、N末端付加(複数可)及び/またはC末端付加(複数可)を含む。いくつかの実施形態では、バリアント(すなわち、「CD47バリアント」)に存在する1つ以上のアミノ酸置換(複数可)、欠失(複数可)、挿入(複数可)、N末端付加(複数可)及び/またはC末端付加(複数可)は、野生型CD47(例えば、野生型ヒト、ラット、マウス、アカゲザル、またはカニクイザルのCD47)と比較して、CD47バリアントのグリコシル化パターンを変更する。いくつかの実施形態では、CD47バリアントに存在する1つ以上のアミノ酸置換(複数可)、欠失(複数可)、挿入(複数可)、N末端付加(複数可)及び/またはC末端付加(複数可)は、野生型CD47(例えば、野生型ヒト、ラット、マウス、アカゲザル、またはカニクイザルCD47)と比較して薬物のCD47バリアントの親和性を増大させる。
【0035】
いくつかの実施形態では、CD47バリアントは、以下の配列番号1~5のいずれか1つのアミノ酸配列を含む:
(配列番号1)
(配列番号2)
(配列番号3)
(配列番号4)
(配列番号5)
【0036】
本明細書に記載の方法において薬物中和剤として使用し得る例示的なCD47バリアントに関する追加の詳細は、Ho et al.(2015)「‘Velcro’ Engineering of High Affinity CD47 Ectodomain as Signal Regulatory Protein a(SIRPα) Antagonists That Enhance Antibody-Dependent Cellular Phagocytosis.」J Biol Chem.290:12650-12663及びWO2016/179399(これらの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に示される。
【0037】
いくつかの実施形態では、薬物は、(i)抗体Fc領域及び(ii)ヒトCD47に結合するSIRPαバリアントを含み、薬物中和剤は、抗SIRPα抗体(またはその抗原結合フラグメント)である。いくつかの実施形態では、方法は、(a)薬物による治療を受けた対象由来の血漿試料に、抗SIRPα抗体(またはその抗原結合フラグメント)を添加すること、及び(b)ステップ(a)後に、試薬RBC及び/または試薬血小板を使用して、血漿試料の血清学的アッセイを実施することを含む。
図3Aに一般的に示されているように、抗SIRPα抗体(またはその抗原結合フラグメント)は、対象の血漿中に存在する遊離薬物に結合し、試薬RBC及び/または試薬血小板の表面上のCD47に対して利用可能な遊離薬物の量を減少させる(またはいくつかの実施形態では排除する)。試薬RBC及び/または試薬血小板への薬物の結合から生じる干渉は(
図1Bに示されるように)、最小限に抑えられ(または、いくつかの実施形態では排除され)、したがって血清学的アッセイにおける偽陽性の結果を防ぐ。いくつかの実施形態では、抗SIRPα抗体(またはその抗原結合フラグメント)は、血清学的アッセイが実施される前に、試薬RBC及び/または試薬血小板、ならびに対象の血漿に添加される。SIRPα、SIRPβ、及びSIRPγの細胞外ドメインは相同性が高いので、SIRPαと交差反応する抗SIRPβ抗体及び/または抗SIRPγ抗体は、SIRPαと交差反応し得る。したがって、いくつかの実施形態では、SIRPαと交差反応する抗SIRPβ抗体及び/または抗SIRPγ抗体がこの方法で使用される。
【0038】
いくつかの実施形態では、方法は、(a)薬物による治療を受けた対象由来の血液試料に、抗SIRPα抗体(またはその抗原結合フラグメント)を添加すること、及び(b)ステップ(a)後に、試薬血漿/抗血清を使用した血液試料の血清学的アッセイを実施することを含む。
図3Bに一般的に示されるように、抗SIRPα抗体(またはそのフラグメント)は、対象のRBC及び/または血小板の表面上のCD47に結合した薬物を置換し、これによって、例えば、
図1Dに示されるように、薬物によって生じる干渉を低減する(及びいくつかの実施形態では、排除する)。いくつかの実施形態では、抗SIRPα抗体(またはそのフラグメント)を、血清学的アッセイが実施される前に、試薬血漿/抗血清、ならびに対象のRBC及び/または血小板に添加する。SIRPα、SIRPβ、及びSIRPγの細胞外ドメインは高度に相同であるので、抗SIRPβ抗体及び/または抗SIRPγ抗体は、SIRPαと交差反応し得る。したがって、いくつかの実施形態では、SIRPαと交差反応する抗SIRPβ抗体及び/またはSIRPαと交差反応する抗SIRPγ抗体がこの方法で使用される。いくつかの実施形態では、抗SIRPα抗体(またはSIRPαと交差反応する抗SIRPβ抗体またはSIRPαと交差反応する抗SIRPγ抗体)は、血清学的アッセイで使用される抗ヒトグロブリン試薬(AHG)に結合しないFcドメイン(またはその一部)を含む。血清学的アッセイ、及びそのようなアッセイで使用される試薬に関するさらなる詳細は、本明細書の他の場所に示される。
【0039】
いくつかの実施形態では、抗SIRPα抗体(例えば、SIRPαと交差反応する抗SIRPβ抗体及び/またはSIRPαと交差反応する抗SIRPγ抗体など)は、全長抗体である。いくつかの実施形態では、抗SIRPα抗体の抗原結合フラグメントは、例えば、これらに限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fab’-SH、Fv、ダイアボディ、ワンアーム抗体、scFv、scFv-Fc、単一ドメイン抗体、単一重鎖抗体などである。いくつかの実施形態では、抗SIRPα抗体(またはその抗原結合フラグメント)は、ADA(抗薬物抗体)または薬物に結合するNAb(中和抗体)(すなわち、SIRPαバリアントを含む薬物の一部)である。いくつかの実施形態では、抗SIRPα抗体(またはその抗原結合フラグメント)は、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。いくつかの実施形態では、抗SIRPα抗体(またはその抗原結合フラグメント)は、配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。いくつかの実施形態では、抗SIRPα抗体(またはその抗原結合フラグメント)は、配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。
(配列番号6)
(配列番号7)
(配列番号21)
(配列番号22)
(配列番号23)
(配列番号24)
【0040】
本明細書に記載の方法において薬物中和剤として使用され得る他の例示的な抗SIRP抗体(例えば、抗SIRPα抗体、抗SIRPβ抗体、及び/またはSIRPαと交差反応する抗SIRPγ抗体)は、当該技術分野で公知である。そのような抗体に関するさらなる詳細は、例えば、WO2018/057669、US-2018-0105600-A1、US20180312587、WO2018107058、WO2019023347、US20180037652、WO2018210795、WO2017178653、WO2018149938、WO2017068164、及びWO2016063233(これらの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載される。
【0041】
いくつかの実施形態では、薬物は、(i)抗体Fc領域及び(ii)ヒトCD47に結合するSIRPβバリアントを含み、この薬物中和剤は、抗SIRPβ抗体(またはその抗原結合フラグメント)である。いくつかの実施形態では、方法は、(a)薬物による治療を受けた対象由来の血漿試料に、抗SIRPβ抗体(またはその抗原結合フラグメント)を添加すること、及び(b)ステップ(a)後、試薬RBC及び/または試薬血小板を使用した血漿試料の血清学的アッセイを実施することを含む。いくつかの実施形態では、抗SIRPβ抗体(またはその抗原結合フラグメント)は、血清学的アッセイが実施される前に、試薬RBC及び/または試薬血小板、ならびに対象の血漿に添加される。いくつかの実施形態では、抗SIRPβ抗体は、全長抗体である。いくつかの実施形態では、抗SIRPβ抗体の抗原結合フラグメントは、例えば、これらに限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fab’-SH、Fv、ダイアボディ、ワンアーム抗体、scFv、scFv-Fc、単一ドメイン抗体、単一重鎖抗体などである。SIRPα、SIRPβ、及びSIRPγの細胞外ドメインは相同性が高いため、抗SIRPα抗体及び/または抗SIRPγ抗体は、SIRPβと交差反応し得る。したがって、いくつかの実施形態では、SIRPβと交差反応する抗SIRPα抗体及び/またはSIRPβと交差反応する抗SIRPγ抗体を、この方法で使用する。
【0042】
いくつかの実施形態では、薬物は、(i)抗体Fc領域及び(ii)ヒトCD47に結合するSIRPγのバリアントを含み、薬物中和剤は、抗SIRPγ抗体(またはその抗原結合フラグメント)である。いくつかの実施形態では、方法は、(a)薬物による治療を受けた対象由来の血漿試料に対して抗SIRPγ抗体(またはその抗原結合フラグメント)を添加することと、(b)ステップ(a)後、試薬RBC及び/または試薬血小板を使用した血漿試料の血清学的アッセイを実施することと、を含む。いくつかの実施形態では、抗SIRPγ抗体(またはその抗原結合フラグメント)は、血清学的アッセイが実施される前に、試薬RBC及び/または試薬血小板に、ならびに対象の血漿に添加される。いくつかの実施形態では、抗SIRPγ抗体は、全長抗体である。いくつかの実施形態では、抗SIRPγ抗体の抗原結合フラグメントは、例えば、これらに限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fab’-SH、Fv、ダイアボディ、ワンアーム抗体、scFv、scFv-Fc、単一ドメイン抗体、単一重鎖抗体などである。SIRPα、SIRPβ、及びSIRPγの細胞外ドメインは相同性が高いため、抗SIRPβ抗体及び/または抗SIRPα抗体は、SIRPγと交差反応し得る。したがって、いくつかの実施形態では、SIRPγと交差反応する抗SIRPα抗体、及び/またはSIRPγと交差反応する抗SIRPβ抗体を、この方法で使用する。
【0043】
いくつかの実施形態では、薬物は、抗CD47抗体を含み、薬物中和剤は、抗CD47抗体の抗原結合部分に結合する抗イディオタイプ抗体(またはその抗原結合フラグメント)である。いくつかの実施形態では、方法は、(a)抗イディオタイプ抗体(またはその抗原結合フラグメント)を、抗CD47抗体による治療を受けた対象由来の血漿試料に添加することと、(b)ステップ(a)後に、試薬RBC及び/または試薬血小板を使用した血漿試料の血清学的アッセイを実施することと、を含む。いくつかの実施形態では、抗イディオタイプ抗体(またはその抗原結合フラグメント)は、血清学的アッセイが実施される前に、試薬RBC及び/または試薬血小板、ならびに対象の血漿に添加される。いくつかの実施形態では、抗イディオタイプ抗体は、全長抗体である。いくつかの実施形態では、抗イディオタイプ抗体の抗原結合フラグメントは、例えば、これらに限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fab’-SH、Fv、ダイアボディ、ワンアーム抗体、scFv、scFv-Fc、単一ドメイン抗体、単一重鎖抗体などである。
【0044】
いくつかの実施形態では、薬物中和剤に対する薬物の親和性は、薬物に対するヒトCD47(例えば、表面試薬RBC上に発現されるヒトCD47)に対する薬物の親和性よりも高い。いくつかの実施形態では、この薬物に対する薬物中和剤の親和性は、この薬物に対するヒトCD47の親和性よりも少なくとも約10倍、25倍、50倍、100倍、150倍、200倍、250倍、300倍、350倍、400倍、450倍、500倍、550倍、600倍、650倍、700倍、750倍、800倍、850倍、900倍、950倍、または1000倍大きいうちのいずれか1つである。
【0045】
いくつかの実施形態では、対象の血漿に、対象のRBC及び/または血小板を含む試料に、試薬血漿/抗血清に、試薬RBCに、及び/または試薬血小板に添加される薬物中和剤の量は、対象の血漿中または対象のRBC及び/もしくは血小板を含む試料中の薬物の量と比較して、過剰量の薬物中和剤を達成するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、対象の血漿に、対象のRBC及び/及び血小板を含む試料に、試薬血漿/抗血清に、試薬RBCに、及び/または試薬血小板に添加される薬物中和剤の量は、対象の血漿中または対象のRBC及び/または血小板を含む試料中の薬物の実質的に全て(全てなど)を結合するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、対象の血漿に、対象のRBC及び/もしくは血小板を含む試料に、試薬血漿/抗血清に、試薬RBCに、及び/または試薬血小板に添加される薬物中和剤の量は、対象の血漿中、または対象のRBC及び/もしくは血小板を含む試料中の薬物の量に対して、約2倍、5倍、10倍、25倍、50倍、75倍、100倍、150倍、200倍、250倍、300倍、350倍、400倍、450倍、500倍、550倍、600倍、650倍、700倍、750倍、800倍、850倍、900倍、950倍、1000倍、1500倍、2000倍、2500倍、3000倍、3500倍、4000倍、4500倍、または5000倍のモル過剰(モル比または等価など)の薬物中和剤のうちのいずれか1つ(これらの値の間の任意の範囲を含む)を達成するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、対象の血漿に、対象のRBC及び/もしくは血小板を含む試料に、試薬血漿/抗血清に、試薬RBCに、及び/または試薬血小板に添加される薬物中和剤の量は、約100μg/ml、200μg/ml、300μg/ml、400μg/ml、500μg/ml、600μg/ml、700μg/ml、800μg/ml、900μg/ml、1mg/ml、1.25mg/ml、1.5mg/ml、1.75mg/ml、2mg/ml、2.25mg/ml、2.5mg/ml、2.75mg/ml、3mg/ml、3.25mg/ml、3.5mg/ml、3.75mg/ml、4mg/ml、4.25mg/ml、4.5mg/ml、4.75mg/ml、5mg/ml、10mg/ml、20mg/ml、30mg/ml、40mg/ml、50mg/ml、60mg/ml、70mg/ml、80mg/ml、90mg/ml、100mg/ml、150mg/ml、200mg/ml、250mg/ml、300mg/ml、350mg/ml、400mg/ml、450mg/ml、500mg/ml、550mg/ml、600mg/ml、650mg/ml、700mg/ml、750mg/ml、800mg/ml、850mg/ml、900mg/ml、1000mg/ml、1100mg/ml、1150mg/ml、1200mg/ml、1250mg/ml、1300mg/ml、1350mg/ml、1400mg/ml、1450mg/ml、1500mg/ml、1550mg/ml、1600mg/ml、1650mg/ml、1700mg/ml、1750mg/ml、1800mg/ml、1850mg/ml、1900mg/ml、または2000mg/mlの薬物中和剤のうちいずれか1つの濃度(これらの値の間の任意の範囲を含む)を達成するのに十分である。いくつかの実施形態では、少なくとも5μg、10μg、50μg、100μg、200μg、300μg、400μg、500μg、600μg、700μg、800μg、900μg、1mg、1.25mg、1.5mg、1.75mg、2mg、2.25mg、2.5mg、2.75mg、3mg、3.25mg、3.5mg、3.75mg、4mg、4.25mg、4.5mg、4.75mg、5mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、1000mg、1100mg、1150mg、1200mg、1250mg、1300mg、1350mg、1400mg、1450mg、1500mg、1550mg、1600mg、1650mg、1700mg、1750mg、1800mg、1850mg、1900mg、または2000mgの薬物中和剤のいずれか1つを、対象の血漿に、対象のRBC及び/または血小板を含む試料に、試薬血漿/抗血清に、試薬RBCに、及び/または試薬血小板に添加する。いくつかの実施形態では、薬物中和剤は、対象の血漿に、対象のRBC及び/または血小板を含む試料に、試薬血漿/抗血清に、及び/または試薬RBCに対して、ヒトCD47の薬物のKDの少なくとも約4.5倍、5倍、5.5倍、6倍、6.5倍、7倍、7.5倍、8倍、8.5倍、9倍、9.5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、65倍、70倍、75倍、80倍、85倍、90倍、95倍、または100倍過剰(これらの値の間の任意の範囲を含む)のうちいずれか1つを達成する量で添加される。いくつかの実施形態では、薬物中和剤は、対象の血漿に、対象のRBC及び/または血小板を含む試料に、試薬血漿/抗血清に、及び/または試薬RBCに対して、ヒトCD47の薬物のKDの少なくとも約500倍、1000倍、5000倍、104倍、105倍、106倍、107倍、108倍、109倍、または1010倍過剰(これらの値の間の任意の範囲を含む)のうちいずれか1つを達成する量で添加される。いくつかの実施形態では、薬物中和剤は、対象の血漿に、対象のRBC及び/または血小板を含む試料に、試薬血漿/抗血清に、及び/または試薬RBCに対して、薬物の薬物中和剤のKDの約4.5倍、5倍、5.5倍、6倍、6.5倍、7倍、7.5倍、8倍、8.5倍、9倍、9.5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、65倍、70倍、75倍、80倍、85倍、90倍、95倍、または100倍過剰(これらの値の間の任意の範囲を含む)のいずれか1つを達成する量で添加される。いくつかの実施形態では、薬物中和剤は、対象の血漿に、対象のRBC及び/または血小板を含む試料に、試薬血漿/抗血清に、及び/または試薬RBCに対して、薬物の薬物中和剤のKDの約500倍、1000倍、5000倍、104倍、105倍、106倍、107倍、108倍、109倍、または1010倍過剰(これらの値の間の任意の範囲を含む)のいずれか1つを達成する量で添加される。
【0046】
いくつかの実施形態では、薬物中和剤は、薬物のFc領域に結合し得る任意の薬剤である。いくつかの実施形態では、薬物中和剤は、SP-A(サーファクタントプロテインA)またはSP-D(サーファクタントプロテインD)である。
【0047】
いくつかの実施形態では、方法は、本明細書に記載の2つ以上の薬物中和剤を使用することを含む。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、例えば、2つ以上の異なるCD47バリアント(または薬物に結合し得るそのフラグメント)、2つ以上の異なる抗SIRPα抗体(またはその抗原結合フラグメント)、2つ以上の異なる抗SIRPβ抗体(またはその抗原結合フラグメント)、2つ以上の異なる抗SIRPγ抗体(またはその抗原結合フラグメント)、2つ以上の異なる抗イディオタイプ抗CD47抗体(またはその抗原結合フラグメント)、または薬物のFc領域を結合する2つ以上の薬剤を、薬物による治療を受けた対象由来の血漿試料に加えることを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、異なる薬物中和剤の組み合わせ、例えば、可溶性CD47剤及び/または抗SIRPα抗体(またはその結合フラグメント抗原)、及び/または抗SIRPα抗体(またはその結合フラグメント抗原)、及び/または抗SIRPβ抗体(またはその結合フラグメント抗原)、及び/または抗SIRPβ2抗体(またはその結合フラグメント抗原)、及び/または抗SIRPγ抗体(またはその結合フラグメント抗原)及び/または抗イディオタイプ抗CD47抗体(またはその結合フラグメント抗原)ならびに/あるいは薬物のFc領域に結合する薬剤を含む組み合わせを、薬物による治療を受けた対象由来の血漿試料に添加することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、2つ以上の異なる抗SIRPγ抗体(またはその結合フラグメント抗原)を、対象の血漿の試料に、対象のRBC及び/または血小板を含む試料に、試薬血漿/抗血清に、試薬RBCに、及び/または試薬血小板に加えることを含む。
【0048】
B.輸血前血清学的アッセイにおける干渉を軽減するために細胞結合剤を使用する方法。
いくつかの実施形態では、方法は、(a)ヒトCD47に結合し、抗体Fc領域を含まない細胞結合剤を、試薬RBC(すなわち、特定の細胞表面抗原または細胞表面抗原の群を発現することが既知のRBC)及び/または試薬血小板(すなわち、特定の細胞表面抗原、または細胞表面抗原の群を発現することが既知の血小板)に添加することと、(b)ステップ(a)後に、試薬RBC及び/または試薬血小板を使用して血漿試料の血清学的アッセイを実施することとを含み、血漿試料は、薬物による治療を受けた対象由来のものであり、薬物は、(i)抗体Fc領域及び(ii)ヒトCD47に結合する部分を含む。そのような実施形態は、一般的に
図4Aに示されている。
図4Aに示されるように、細胞結合剤は、試薬RBC(及び/または試薬血小板)の表面に発現されるCD47に結合し、薬物が試薬RBC(及び/または試薬血小板)に結合するのをブロックし、それによって(
図1Bに示されるように)試薬RBC及び/または試薬血小板への薬物の結合から生じるであろう干渉を最小化する(または、いくつかの実施形態では排除する)。いくつかの実施形態では、細胞結合剤は、血清学的アッセイが実施される前に、対象の血漿に、ならびに試薬RBC及び/または試薬血小板に添加される。
【0049】
いくつかの実施形態では、方法は、(a)ヒトCD47に結合し、抗体Fc領域を含まない細胞結合剤を、薬物による治療を受けた対象由来の血漿試料に添加することと、(b)ステップ(a)の後に、試薬RBC及び/または試薬血小板を使用する血漿試料の血清学的アッセイを実施することと、を含み、薬物は、(i)抗体Fc領域及び(ii)ヒトCD47に結合する部分を含む。
図4Bに示されるように、細胞結合剤は、試薬RBC(及び/または試薬血小板)の表面に発現されるCD47への結合について薬物と競合し、それにより、試薬RBC及び/または試薬血小板への薬物の結合から生じる干渉を最小化する(または、いくつかの実施形態では、排除する)(
図1Bに示すように)。
【0050】
いくつかの実施形態では、方法は、(a)ヒトCD47に結合し、抗体Fc領域を含まない細胞結合剤を、薬物による治療を受けた対象由来の血液試料に添加することと、(b)ステップ(a)の後に、試薬血漿/抗血清を使用した血液試料の血清学的アッセイを実施することと、を含み、薬物は(i)抗体Fc領域及び(ii)ヒトCD47に結合する部分を含む。
図4Cに示すように、細胞結合剤は、対象のRBC及び/または血小板の表面に発現されるCD47への結合について薬物と競合し、それにより、対象のRBC及び/または血小板に対する薬物の結合から生じる干渉を最小化する(または、いくつかの実施形態では、排除する)(
図1Dに示されているように)。いくつかの実施形態では、細胞結合剤を、血清学的アッセイが実施される前に、試薬血漿/抗血清に対して、ならびに対象由来の血液試料に対して添加する。
【0051】
いくつかの実施形態では、細胞結合剤は、CD47に結合し、薬物がCD47に結合するのをブロックする任意の薬剤である。上記で考察されるように、細胞結合剤は抗体Fc領域を含まない。代替の実施形態では、細胞結合剤は、AHGに結合しない抗体Fc領域バリアントを含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、この方法は、例えば、細胞結合剤が可溶性である溶液中で実施される。いくつかの実施形態では、細胞結合剤は、固相に固定化され、その後、この方法がマトリックスまたは表面への吸着、共有結合、または非共有結合を介して実行される。いくつかの実施形態では、細胞結合剤は、固相への固定化に続いて、CD47に結合し得る。固定化に使用される固相または表面は、本質的に水不溶性であり、例えば、表面、粒子、多孔質マトリックス、セルロースポリマースポンジ(Immuno CAP(登録商標)、Phadia)などの形態の支持体を含む、イムノアッセイにおいて有用である、任意の不活性支持体または担体であり得る。一般的に使用される支持体の例としては、小さなシート、セファデックス、ポリ塩化ビニル、プラスチックビーズ、微粒子、アッセイプレート、またはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどから製造された試験管が挙げられる。いくつかの実施形態では、細胞結合剤は、複数の試料を同時に分析するために使用され得るマルチウェルマイクロタイタープレートなどのマイクロタイタープレート上にコーティングされる。
【0053】
いくつかの実施形態では、細胞結合剤は、SIRPαまたはSIRPγを含む。いくつかの実施形態では、細胞結合剤は、CD47に結合し得るSIRPαまたはSIRPγのフラグメント(例えば、野生型SIRPαの細胞外ドメイン(「WT SIRPα-ECD」)またはそのD1ドメイン、例えば、野生型SIRPγの細胞外ドメイン(「WT SIRPγ-ECD」)またはそのD1ドメイン)を含む。いくつかの実施形態では、細胞結合剤は、ヒトSIRPα、ヒトSIRPγ、マウスSIRPα、マウスSIRPγ、ラットSIRPα、ラットSIRPγ、アカゲザルSIRPα、アカゲザルSIRPγ、カニクイザルSIRPα、カニクイザルSIRPγ、任意の起源のSIRPα、または任意の起源のSIRPγを含み、ただしこれは、SIRPαまたはSIRPγがCD47(例えば、試薬RBC及び/または試薬血小板の表面に発現するヒトCD47)に結合可能である条件である。いくつかの実施形態では、細胞結合剤は、ヒトSIRPα、ヒトSIRPγ、マウスSIRPα、マウスSIRPγ、ラットSIRPα、ラットSIRPγ、アカゲザルSIRPα、アカゲザルSIRPγ、カニクイザルSIRPα、カニクイザルSIRPγ、任意の起源のSIRPα、または任意の起源のSIRPγ、のフラグメントを含み、ただし、これは、フラグメントがCD47(例えば、試薬RBC及び/または試薬血小板の表面に発現するヒトCD47)に結合し得る条件である。いくつかの実施形態では、細胞結合剤は、ヒトCD47へ結合し得る、SIRPαバリアント(またはそのフラグメント、例えば、WT SIRPα-ECDまたはそのD1ドメインのバリアント)、可溶性SIRPβバリアント(またはそのフラグメント、例えば、WTSIRPβ-ECDまたはそのD1ドメインのバリアント)、または可溶性SIRPγバリアント(またはそのフラグメント、例えば、WT SIRPγ-ECDまたはそのD1ドメインのバリアント)である。いくつかの実施形態では、SIRPαバリアント、SIRPβバリアント、またはSIRPγバリアント(またはCD47に結合し得る前述のいずれか1つのフラグメント)は、それぞれ、野生型SIRPα、野生型SIRPβ、または野生型SIRPγと比較して、1つ以上のアミノ酸置換(複数可)、欠失(複数可)、挿入(複数可)、N末端付加(複数可)及び/またはC末端付加(複数可)を含む。いくつかの実施形態では、SIRPαバリアント、SIRPβバリアント、またはSIRPγバリアント(またはCD47に結合し得る前述のいずれか1つのフラグメント)に存在する1つ以上のアミノ酸置換(複数可)、欠失(複数可)、挿入(複数可)、N末端付加(複数可)及び/またはC末端付加(複数可)は、それぞれ、野生型SIRPα、野生型SIRPβ、または野生型SIRPγと比較して、SIRPαバリアント、可溶性SIRPβバリアント、または可溶性SIRPγバリアントのグリコシル化パターンを変更する。いくつかの実施形態では、SIRPαバリアント、SIRPβバリアント、またはSIRPγバリアント(またはCD47に結合し得る前述のいずれかのフラグメント)に存在する1つ以上のアミノ酸置換(複数可)、欠失(複数可)、挿入(複数可)、N末端付加(複数可)及び/またはC末端付加(複数可)は、それぞれ、野生型SIRPα、SIRPβ、またはSIRPγと比較して、ヒトCD47に対するSIRPαバリアント、SIRPβバリアント、またはSIRPγバリアントの親和性を高める。いくつかの実施形態では、細胞結合剤は、モノマー(例えば、野生型SIRPαモノマー、野生型SIRPγモノマー、SIRPαバリアントモノマー、SIRPβバリアントモノマー、SIRPγモノマー、またはCD47に結合し得る前述のいずれか1つのフラグメント)である。いくつかの実施形態では、細胞結合剤は、ダイマー(例えば、野生型SIRPα、野生型SIRPγ、SIRPαバリアント、SIRPβバリアント、SIRPγバリアント、またはCD47に結合し得る前述のいずれか1つのフラグメントのうちいずれかの組み合わせを含むホモダイマーまたはヘテロダイマー)である。いくつかの実施形態では、細胞結合剤は、オリゴマー(例えば、1つ以上の野生型SIRPα、野生型SIRPγ、SIRPαバリアント、SIRPβバリアント、SIRPγバリアント、及び/またはCD47に結合し得る前述のいずれか1つのフラグメントの任意の組み合わせを含むホモオリゴマーまたはヘテロオリゴマー)である。
【0054】
いくつかの実施形態では、細胞結合剤は、SIRPαバリアント、SIRPβバリアント、またはSIRPγバリアントを含む。いくつかの実施形態では、SIRPαバリアント、SIRPβバリアント、またはSIRPγバリアントは、以下の配列番号8~16のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
(配列番号8)
(配列番号9)
(配列番号10)
(配列番号11)
(配列番号12)
(配列番号13)
(配列番号14)
(配列番号15)
(配列番号16)
(配列番号17)
(配列番号18)
(配列番号19)
(配列番号20)
【0055】
他の例示的な可溶性SIRPαバリアント、可溶性SIRPβバリアント、及びSIRPγバリアントは、当該技術分野で公知であり、WO2013/109752、US2015/0071905、USP9,944,911、WO2016/023040、WO2017/027422、US2017/0107270、USP10,259,859、US9845345、WO2016187226、US20180155405、WO2017177333、WO2014094122、US2015329616、US20180312563、WO2018176132、WO2018081898、WO2018081897、US20180141986A1、及びEP3287470A1(その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0056】
いくつかの実施形態では、細胞結合剤は、Fc領域を含まない抗CD47抗体のフラグメントである。いくつかの実施形態では、そのようなフラグメントとしては、例えば、限定するものではないが、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、scFv、またはダイアボディが挙げられる。本明細書で提供される方法で使用され得る例示的な抗CD47抗体フラグメントとしては、限定するものではないが、例えば、マウス5F9(Liu et al.(2015)PLoSOne.10(9):e0137345を参照)、Hu5F9-G4(Forty Seven,Inc.)、B6H12.2、CC2C6、8H7、BRIC126などが挙げられる。いくつかの実施形態では、抗CD47抗体は、AHGに結合しないFc領域を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、ヒトCD47に対する細胞結合剤の親和性は、薬物に対するヒトCD47(例えば、表面試薬RBC及び/または血小板上に発現されるヒトCD47)に対する薬物の親和性よりも高い。いくつかの実施形態では、ヒトCD47に対する細胞結合剤の親和性は、CD47に対する薬物の親和性よりも少なくとも約10倍、25倍、50倍、100倍、150倍、200倍、250倍、300倍、350倍、400倍、450倍、500倍、550倍、600倍、650倍、700倍、750倍、800倍、850倍、900倍、950倍、または1000倍大きい(これらの値の間の任意の範囲を含む)のうちのいずれか1つである。
【0058】
いくつかの実施形態では、対象の血漿に、対象のRBC/血小板を含む試料に、試薬血漿/抗血清に、試薬RBCに及び/または試薬血小板に対して添加される細胞結合剤の量は、対象のRBC/血小板、試薬RBC及び/または試薬血小板上に発現されるCD47の量と比較して、過剰量の細胞結合剤を達成するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、対象の血漿に、対象のRBC/血小板を含む試料に、試薬血漿/抗血清に、試薬RBCに及び/または試薬血小板に対して添加される細胞結合剤の量は、対象のRBC/血小板、試薬RBC及び/または試薬血小板上に発現するCD47の実質的に全て(全てなど)に結合するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、対象の血漿に、対象のRBC/血小板を含む試料に、試薬血漿/抗血清に、試薬RBCに及び/または試薬血小板に対して添加される細胞結合剤の量は、対象のRBC/血小板、試薬RBC及び/または試薬血小板上に発現するCD47の量に対する細胞結合剤の例えば、約2倍、5倍、10倍、25倍、50倍、75倍、100倍、150倍、200倍、250倍、300倍、350倍、400倍、450倍、500倍、550倍、600倍、650倍、700倍、750倍、800倍、850倍、900倍、950倍、1000倍、1500倍、2000倍、2500倍、3000倍、3500倍、4000倍、4500倍、または5000倍のモル過剰(モル比または同等物など)(これらの値の間の任意の範囲を含む)のいずれか1つを達成するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、対象の血漿に、対象のRBC/血小板を含む試料に、試薬血漿/抗血清に、試薬RBCに及び/または試薬血小板に対して添加される細胞結合剤の量は、約100μg/ml、200μg/ml、300μg/ml、400μg/ml、500μg/ml、600μg/ml、700μg/ml、800μg/ml、900μg/ml、1mg/ml、1.25mg/ml、1.5mg/ml、1.75mg/ml、2mg/ml、2.25mg/ml、2.5mg/ml、2.75mg/ml、3mg/ml、3.25mg/ml、3.5mg/ml、3.75mg/ml、4mg/ml、4.25mg/ml、4.5mg/ml、4.75mg/ml、5mg/ml、10mg/ml、20mg/ml、30mg/ml、40mg/ml、50mg/ml、60mg/ml、70mg/ml、80mg/ml、90mg/ml、100mg/ml、150mg/ml、200mg/ml、250mg/ml、300mg/ml、350mg/ml、400mg/ml、450mg/ml、500mg/ml、550mg/ml、600mg/ml、650mg/ml、700mg/ml、750mg/ml、800mg/ml、850mg/ml、900mg/ml、1000mg/ml、1100mg/ml、1150mg/ml、1200mg/ml、1250mg/ml、1300mg/ml、1350mg/ml、1400mg/ml、1450mg/ml、1500mg/ml、1550mg/ml、1600mg/ml、1650mg/ml、1700mg/ml、1750mg/ml、1800mg/ml、1850mg/ml、1900mg/ml、または2000mg/mlの細胞結合剤(これらの値の間のいずれかの範囲を含む)のうちのいずれか1つの濃度を達成するのに十分である。いくつかの実施形態では、少なくとも約5μg、10μg、50μg、100μg、200μg、300μg、400μg、500μg、600μg、700μg、800μg、900μg、1mg、1.25mg、1.5mg、1.75mg、2mg、2.25mg、2.5mg、2.75mg、3mg、3.25mg、3.5mg、3.75mg、4mg、4.25mg、4.5mg、4.75mg、5mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、1000mg、1100mg、1150mg、1200mg、1250mg、1300mg、1350mg、1400mg、1450mg、1500mg、1550mg、1600mg、1650mg、1700mg、1750mg、1800mg、1850mg、1900mg、または2000mgの細胞結合剤のうちのいずれか1つが、対象の血漿に、対象のRBCを含む試料に、試薬血漿/抗血清に、及び/または試薬RBCに対して添加される。いくつかの実施形態では、対象の血漿に、対象のRBC/血小板を含む試料に、試薬血漿/抗血清に、試薬RBC及び/または試薬血小板に添加される細胞結合剤の量は、ヒトCD47の薬物のKDの少なくとも約4.5倍、5倍、5.5倍、6倍、6.5倍、7倍、7.5倍、8倍、8.5倍、9倍、9.5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、65倍、70倍、75倍、80倍、85倍、90倍、95倍、または100倍過剰のいずれか1つ(これらの値の間の任意の範囲を含む)である。いくつかの実施形態では、対象の血漿に、対象のRBC/血小板を含む試料に、試薬血漿/抗血清に、試薬RBCに及び/または試薬血小板に対して添加される細胞結合剤の量は、ヒトCD47の薬物のKDの少なくとも約500倍、1000倍、5000倍、104倍、105倍、106倍、107倍、108倍、109倍、または1010倍過剰(これらの値の間の任意の範囲を含む)のうちのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、対象の血漿に、対象のRBC/血小板を含む試料に、試薬血漿/抗血清に、試薬RBCに及び/または試薬血小板に添加される細胞結合剤の量は、ヒトCD47の細胞結合剤のKDの少なくとも約4.5倍、5倍、5.5倍、6倍、6.5倍、7倍、7.5倍、8倍、8.5倍、9倍、9.5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、65倍、70倍、75倍、80倍、85倍、90倍、95倍、または100倍過剰(これらの値の間の任意の範囲を含む)のうちのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、対象の血漿に、対象のRBC/血小板を含む試料に、試薬血漿/抗血清に、試薬RBCに及び/または試薬血小板に添加される細胞結合剤の量は、ヒトCD47の細胞結合剤のKDの少なくとも約500倍、1000倍、5000倍、104倍、105倍、106倍、107倍、108倍、109倍、または1010倍過剰(これらの値の間の任意の範囲を含む)のうちのいずれか1つである。
【0059】
C.例示的な薬物
本明細書で提供される方法は、(i)抗体Fc領域及び(ii)薬物による治療を受けた対象から得られた血漿またはRBC/血小板を含む試料中のヒトCD47に結合する部分を含む薬物の存在によって引き起こされる血清学的アッセイにおける干渉を低減する(または、いくつかの実施形態では排除する)。いくつかの実施形態では、薬物は、ヒトIgG Fc領域、例えば、IgG1、IgG2、またはIgG4 Fc領域などのIgG Fc領域を含む。いくつかの実施形態では、薬物は、野生型ヒトFc領域(例えば、野生型ヒトIgG Fc領域)と比較して、1つ以上のアミノ酸置換(複数可)、欠失(複数可)、挿入(複数可)、N末端付加(複数可)及び/またはC末端付加(複数可)を含む修飾Fc領域(修飾IgG Fc領域など)を含む。例示的なFc領域は、WO2017177333、WO2014094122、US2015329616、WO2017/027422、US2017/0107270号、及びUSP10,259,859(これらの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0060】
いくつかの実施形態では、ヒトCD47に結合する部分は、膜貫通ドメイン(例えば、ヒトCD47に結合し得る任意の野生型SIRPαの細胞外ドメイン)を欠く野生型SIRPαである。いくつかの実施形態では、ヒトCD47に結合する部分は、ヒトCD47に結合し得、膜貫通ドメインを欠くSIRPαバリアントである。いくつかの実施形態では、SIRPαバリアントは、野生型SIRPαの細胞外ドメインと比較して、1つ以上のアミノ酸置換(複数可)、欠失(複数可)、挿入(複数可)、N末端付加(複数可)及び/またはC末端付加(複数可)を含む。いくつかの実施形態では、SIRPαバリアントは、SIRPα-d1ドメインバリアントである。いくつかの実施形態では、ヒトCD47に対するSIRPαバリアントの親和性は、ヒトCD47に対する野生型SIRPαの親和性よりも高い。
【0061】
いくつかの実施形態では、ヒトCD47に結合する部分は、膜貫通ドメイン(例えば、ヒトCD47に結合し得る任意の野生型SIRPγの細胞外ドメイン)を欠く野生型SIRPγである。いくつかの実施形態では、ヒトCD47に結合する部分は、ヒトCD47に結合し得、膜貫通ドメインを欠くSIRPγバリアントである。いくつかの実施形態では、SIRPγバリアントは、野生型SIRPγの細胞外ドメインと比較して、1つ以上のアミノ酸置換(複数可)、欠失(複数可)、挿入(複数可)、N末端付加(複数可)及び/またはC末端付加(複数可)を含む。いくつかの実施形態では、SIRPγバリアントは、SIRPγ-d1ドメインバリアントである。いくつかの実施形態では、ヒトCD47に対するSIRPγバリアントの親和性は、ヒトCD47に対する野生型SIRPγの親和性よりも高い。
【0062】
いくつかの実施形態では、ヒトCD47に結合する部分は、ヒトCD47に結合し得、膜貫通ドメインを欠くSIRPβバリアントである。いくつかの実施形態では、SIRPγβバリアントは、野生型SIRPβの細胞外ドメインと比較して、1つ以上のアミノ酸置換(複数可)、欠失(複数可)、挿入(複数可)、N末端付加(複数可)及び/またはC末端付加(複数可)を含む。いくつかの実施形態では、SIRPβバリアントは、SIRPβ-d1ドメインバリアントである。
【0063】
例示的なSIRPαバリアント、SIRPβバリアント、及びSIRPγバリアントは、当該技術分野で公知であり、WO2013/109752、US2015/0071905、USP9,944,911、WO2016/023040、WO2017/027422、US2017/0107270、USP10,259,859、US9845345、WO2016187226、US20180155405、WO2017177333、WO2014094122、US2015329616、US20180312563、WO2018176132、WO2018081898、WO2018081897、US20180141986A1、及びEP3287470A1(その内容は、その全体が参照によって本明細書に援用される)に記載されている。
【0064】
上記の方法のいずれかの方法のいくつかの実施形態では、薬物は抗CD47抗体である。いくつかの実施形態では、抗CD47抗体は、AO-176、CC-90002、Hu5F9-G4(5F9とも呼ばれる)、SHR-1603、NI-1701、SRF231、TJC4、またはIBI188である。これら及び他の治療用抗CD47抗体に関する詳細は、WO2018175790A1、US20180142019、US20180171014、US20180057592、US20170283498、US9,518,116、US9,518,117、US20150274826、US20160137733、US9,221,908号、US20140161799、US20160137734、WO2015191861、WO2014093678、WO2014123580、WO2013119714、US9,045,541、WO2016109415、WO2018183182、WO2018009499、WO2017196793、US9663575、US20140140989、WO2018237168、US20180037652、US20190023784、WO2018095428、EP3411071、WO2019042285、WO2016081423、WO2011076781、WO2012172521、WO2014087248、US20140303354、WO2016156537、US20160289727、US20190062428、US20180201677、US9352037、US20170044258、US9650441、及びUS20180105591に記載されている。
【0065】
輸血前検査のための血清学的アッセイ
輸血前の試験は、輸血を目的とした血液製剤が対象(すなわち、輸血のレシピエント)の血液と適合性があることを確認するために実施される。輸血前検査には、ドナー血液とレシピエント血液との間のABO適合性を確認するために使用される血清学的アッセイ、ならびにドナーRBC及び/またはドナー血小板上の抗原と反応する最も臨床的に重要なRBC/血小板同種抗体を検出するために使用されるアッセイが含まれる(Technical Manual,18th ed,AABB,Bethesda,MD,2014参照。)。ドナー/レシピエント輸血適合性を決定するために血清学的アッセイが実施される他の例示的な血液群抗原としては、限定するものではないが、例えば、ケル(Kell)血液群抗原、ダッフィー(Duffy)血液群抗原、ノップス(Knops)血液群抗原、カートライト(Cartwright)血液群抗原、シアナ(Scianna)血液群抗原、インドの血液群抗原、アカゲザル(Rhesus)血液群抗原、ドンブロック(Dombrock)血液群抗原、ラントシュタイナー・ウェイナー(Landsteiner-Wiener)血液群抗原、及びVEL血液群抗原が挙げられる。本明細書で提供される方法は、当該技術分野で公知の多数の血清学的アッセイにおいて、薬物干渉(例えば、(i)抗体Fc領域及び(ii)ヒトCD47に結合する部分を含む薬物による干渉)を低減または防止する。この方法を使用し得る例示的な血清学的アッセイとしては、以下でさらに詳細に記載されるものが含まれる(ただし、これらに限定されない)。
【0066】
典型的には、血清学的アッセイは、例えば、非溶血血液、血漿(例えば、EDTAで抗凝固処理された血漿試料)、凝固血液、または輸血を必要とする対象(例えば、(i)抗体Fc領域及び(ii)ヒトCD47に結合する部分を含む薬物による治療を受けた対象)由来の血清を含む試料を使用して実施される。一般に、対象のABO群及びRh型を最初に決定する。次に、抗体スクリーニング法を、対象の血漿中に存在し得る臨床的に有意な予期されない非ABO血液群抗体を検出するために使用する。スクリーニング試験でそのような抗体の存在が明らかになった場合、その抗体の特異性は、抗体識別パネルを使用して決定される。抗体の特異性が確認された後、適切なABO群及びRh型のドナーユニットを、対応する抗原についてスクリーニングする。その抗原に対して陰性であるユニットは、互換性を確保するために輸血を必要としている対象と交差適合される。
【0067】
血清学的アッセイは、チューブ、スライド、ゲルカラム、またはマイクロタイターウェルプレートで実施してもよく、溶血及び凝集は、陽性(不適合)試験結果を示すシグナルである。抗体でコーティングされた隣接するRBCの結合を反映する反応である凝集反応は、最も一般的に使用されるチューブ法で、肉眼的及び/または顕微鏡的及び0~4+のスケールでスコアリングされ得る。スコアがゼロの場合は、反応性がないことを示し、細胞が滑らかで分散しやすいことを特徴としている。4+のスコアは強い反応性を示し、容易に分散されない1つの固体凝集物によって特徴付けられる。1+、2+、または3+のスコアは、反応性の中間レベルを示し、スコアが高くなると凝集体のサイズが徐々に大きくなることを特徴としている。凝集スコアリングの同様の原則は、カラムに抗IgG抗体を含むゲルカラム(ゲルカード)または赤血球抗原が結合したマイクロタイターウェルプレート(固相)を使用して、血清学的試験を行う場合に適用され得る。さまざまな感度で抗体-RBC抗原相互作用を検出するために、現在さまざまな技術が利用可能である。いくつかの実施形態では、血清学的アッセイは手動で実施される。いくつかの実施形態では、血清学的アッセイは、自動化された機械を介して実行される。
【0068】
例えば、即時スピン(IS)(「即時スピン交差適合」としても知られる)は、例えば、試薬血漿/抗血清(すなわち、既知のRBC及び/または血小板表面抗原に対する抗体を含む血漿)及び対象の血球を混合すること、直ちにこの混合物を室温または37℃で約15~30秒間遠心分離すること、チューブが直接凝集していないか目視検査することを伴うアッセイである。直接凝集は、血漿中の抗体とRBC表面抗原との間に強い相互作用があることを示している。あるいは、対象の血漿及び試薬RBC(すなわち、特定の細胞表面抗原、または細胞表面抗原の群を発現することが既知のRBC)及び/または試薬血小板(すなわち、特定の細胞表面抗原、または細胞表面抗原の群を発現することが既知の血小板)を混合し、遠心分離し、直接凝集について視覚的に評価してもよい。
【0069】
抗ヒトグロブリン(AHG)を使用して、直接凝集を生じない抗体結合RBCを検出する。AHGは、別の種で産生された二次抗ヒトグロブリン抗体である。AHG試薬は、単一クラスのヒトIg(IgGなど)に特異的、または多重特異的、すなわち複数のヒトIgクラス(IgG、IgM、IgAなど)に結合して、補完し得る。AHG血清は、直接抗グロブリン試験(DAT)及び/または間接抗グロブリン試験(IAT)で使用され得る。DATは、赤血球のインビボ感作を示し、洗浄された患者の赤血球の試料をAHGで直接試験することによって実行される。IATは、赤血球と抗体との間のインビトロ反応を示す。IATでは、血清(または血漿)を赤血球とインキュベートし、次にこの赤血球を洗浄して未結合のグロブリンを除去する。AHGの添加による凝集の存在は、特定の赤血球抗原に結合する抗体を示す。一部の方法では、生理食塩水、アルブミン、低イオン強度生理食塩水(LISS)、またはポリエチレングリコール(PEG)などの増強試薬(強化)を添加し、次いで、試料を37℃で10~60分間インキュベートした後に、AHG試験を行う。
【0070】
ABO判定は、抗A及び抗B抗血清(フォワード分類)を使用して、A及びB抗原の存在についてレシピエントの赤血球を試験することを含む。既知のA型及びB型の赤血球を使用した抗A及び抗Bの存在についてレシピエント血漿を検査すること(逆分類)はまた、慣用的なABO血液型検査の一部でもある。
【0071】
輸血レシピエントのRh(D)型は、レシピエントの赤血球を抗Dで試験することによって決定される。ABO分類は通常、即時スピン(IS)を使用して試験される。
【0072】
個体の赤血球に存在しない抗原に対する同種抗体は、妊娠または輸血によって外来赤血球抗原に曝露された人に発生し得る。A群でもB群でもない抗原に対する抗体を検出するために、患者の血漿または血清の試料を、A及びB以外の臨床的に重要な抗原の大部分を発現する選択された市販のO型赤血球に対して試験する。
【0073】
陽性抗体スクリーニングの場合、臨床的に重要な抗体の同定のために、市販のO型試薬RBCの拡大されたパネルを用いて、さらなる血清学的試験を実施する必要がある。次に、抗体の特異性が一度わかれば、対応する抗原について、ドナーユニットをスクリーニングして、抗原を欠くユニットを選択しなければならない。
【0074】
レシピエント赤血球の抗原型判定(表現型タイピング)もまた、個体がどの赤血球抗体を発現する可能性が高いかを決定するために実施され得る。RBC表現型の血清学的アッセイでは、レシピエント細胞を特定の抗体を含む市販の試薬抗血清と混合することを含む。
【0075】
増強なし及び増強ありのIAT(例えば、生理食塩水、LISS、PEG)は、抗体検出及び抗体同定において使用される。
【0076】
「交差適合(クロスマッチ)」とは、患者の血液(血漿)とドナー赤血球との間の適合性を確認する方法を指す。交差適合とは、主にABOの非互換性を検出して防止することを意味する。血清学的交差適合アッセイ(IS交差適合またはAHGフェーズ交差適合のいずれか)には、ドナー赤血球とレシピエント血漿の直接混合、及び即時スピン法またはAHG試験後の溶血及び凝集のスコアが含まれる。
【0077】
本明細書は、当業者が本発明を実施することを可能にするのに十分であると考えられる。本明細書に示され、説明されたものに加えて、本発明の様々な修正は、前述の説明から当業者に明らかになり、添付の特許請求の範囲に含まれる。本明細書で引用された全ての刊行物、特許、及び特許出願は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0078】
実施例1:(i)抗体Fc領域及び(ii)ヒトCD47に結合する部分を含む薬物は、慣用的な血清学的アッセイを妨害する
CD47は、シグナル調節タンパク質-α(SIRPα)に結合し、食作用を阻害する広く発現されている細胞表面タンパク質である(Jaiswal et al.,Trends Immunol(2010)31(6):212-219;Brown et al.,Trends Cell Biol(2001)11(3):130-135)。血液腫瘍及び固形腫瘍を含む多種多様な悪性腫瘍は、CD47発現の上昇を示し、これは進行性疾患と相関する(Willingham et al.,Proc Natl Acad Sci USA(2012)109(17):6662-6667)。CD47を標的とするいくつかのがん治療法は、SIRPα-CD47相互作用をブロックするために開発されており、それによってマクロファージが食細胞機能を実行して腫瘍細胞を除去することを可能にする。重要なことに、CD47は、赤血球(RBC)及び血小板などの表面血球にも発現しているので(Oldenborg et al.,Science(2000)288(5473):2051-2054)、CD47結合薬物は、血液型判定及び血清学的試験を妨害し得る。
【0079】
例えば、CD47標的化薬物は、RBC及び血小板を含む血球の表面で立体障害をブロックするか、及び/または引き起こすことにより、血液型判定及び血清学的試験を妨害し得る。さらに、抗CD47抗体などのFc領域を含む抗CD47薬は、血清学的試験で使用される試薬と相互作用し、血球の凝集及び誤った反応性の読み取りにつながり得る。
【0080】
薬物Aを使用して、CD47を標的とする抗体ベースの薬物が血液型判定及び血清学的アッセイを妨害する程度を決定した。薬物Aは、SIRPαバリアント(すなわち、ヒトSIRPαに由来するCD47結合ドメイン)及びヒト免疫グロブリンIgG1のFc領域に由来するFcバリアントを含む例示的なCD47結合薬物である。
【0081】
材料及び方法
血液型判定及び血清学的アッセイにおける薬物Aによる干渉の検出
薬物Aを、0.1μg/mL、0.5μg/mL、1μg/mL、5μg/mL、または10μg/mLの濃度で、5mLのA、B、及びO型のドナー血液試料と混合した。混合物を2~8℃で一晩インキュベートした。次に、チューブ法を使用したBonfils Reference Labの手順に従って、薬物Aと以下の血液型判定及び血清学的試験との干渉を確認した。
【0082】
血液型判定アッセイ
薬物Aと共にインキュベートされたドナー血液試料(上記のように)を回収し、特定の細胞表面抗原を発現することが既知で、凝集についてスコア付けされる試薬RBCを用いたスライド試験を使用して、ABO及びRhDの判定に供した。
【0083】
抗免疫グロブリン及び補体アッセイ
血漿試料は、薬物Aと共にインキュベートされたドナー血液試料のそれぞれから回収した。次いで、血漿試料を、試薬RBC(Immucor)を用いた血清学的試験に使用した。血漿試料を試薬RBCと混合すること、この混合物を直ちに遠心分離すること、及び遠心分離した混合物を調べて凝集を検出することにより、即時スピン交差適合(または即時スピンフェーズ)を実行した。抗体試験もまた、PEG増強(11.5%PEGw/v)を使用した血漿試料で実施し、続いて抗ヒトグロブリン(AHG)試薬を添加した。ジチオスレイトール(DTT)、フィシン、及び/または同種吸着処理が読み出しに及ぼす影響を確認するために、PEG増強(11.5%PEGw/v)を使用して血漿試料を使用し、続いてAHG試薬を添加して抗体試験の別のセットを実行した。各アッセイには標準プロトコルを使用し、自己対照(すなわち、薬物Aを含むドナー試料の血清を、薬物Aを含むドナー試料のRBCと混合した)を並行して実行した。
【0084】
さらに、RBC試料を、薬物Aと共にインキュベートされたドナー血液試料のそれぞれから回収した。次いで、RBC試料は、RBCを多重特異性AHG試薬(IgG及び補体に結合する)またはAHG試薬(補体にのみ結合する)と組み合わせることを伴う、直接抗グロブリン試験(DAT)に使用した。さらに、各試料のRBCに結合した抗体を溶出し、試薬RBCで試験し、すなわち、自己抗体及び/または同種抗体を検出/識別した。標準プロトコルを使用した。
【0085】
結果
表1に示されるように、薬物Aは、試験された薬物Aの濃度(最大10μg/mL)のいずれにおいても、ABO/RhD判定または即時スピン交差適合(IS)による抗体スクリーニングを妨害しなかった。しかし、薬物Aは、10μg/mLの最高用量でAHG試薬及びPEG増強による抗体スクリーニングを妨害し、3+の反応性レベルを示した。AHG試薬及びPEG増強を用いた抗体スクリーニングアッセイも、自己対照抗体を用いて実施し、薬物Aが用量依存的に反応性のレベルを増大させたことが明らかになった(0.1μg/mLの薬物Aでの弱い反応性から10μg/mLの薬物Aでの4+反応性まで)。
【0086】
DTTもフィシンも、AHG試薬及びPEG増強を用いた抗体スクリーニングアッセイにおいて、10μg/mLの薬物Aによって引き起こされた反応性を解決しなかった。対照的に、同種吸着試験は、PEG増強を伴う抗体スクリーニングアッセイにおいて薬物Aによって引き起こされる反応性を解決し、血清学的試験に対する薬物Aの干渉は、試薬血球への飽和結合によって減少または解決される可能性があることを示唆している。
【0087】
IgGのDAT試験は、薬物Aが用量依存的に反応性を引き起こしたことを示した(0.1μg/mLの薬物Aでの弱い反応性から10μg/mLの薬物Aでの3+反応性まで)。対照的に、試験された薬物Aの濃度(最大10μg/mL)で補体のDAT試験中に反応性は観察されず、このことは、薬物Aの干渉が補体相互作用ではなくIgG抗体-抗原相互作用によって引き起こされることを示唆している。試験した全ての薬物A濃度での溶出液試験で中程度の反応性が観察された(2+から3+の反応性)。
表1:血清学的試験の反応性に関する薬物Aの存在
【0088】
上で考察され、表1に提示された結果は、薬物Aが慣用的な血清学的アッセイを妨害することを示した。干渉は、血球上のCD47への血漿薬物Aの結合に起因する可能性が高く、その後、AHGなどの血清学的試験で一般的に使用されるIgG特異的試薬によって検出される。
【0089】
実施例2:Fc含有タンパク質によって引き起こされる血清学的試験への干渉の軽減
実施例1に提示された結果によって、(i)抗体Fc領域及び(ii)ヒトCD47に結合する部分を含む薬物が、慣用的な血液型判定及び血清学的アッセイに干渉し得ることが示唆された。このような干渉は、輸血を必要とする患者へのドナー血液製剤の供給を遅らせることにより、患者の安全を危険にさらす場合がある。CD47モノマーを含む例示的な薬物中和剤である因子Bが、血清学的試験における薬物Aの干渉を防止または低減する能力を、以下に記載するように評価した。
【0090】
材料及び方法
薬物Aを、10μg/mLの濃度で5mLのドナー全血と組み合わせ、約2℃~8℃で一晩インキュベートした。血漿試料は、薬物Aをスパイクしたドナー全血のそれぞれから得て、アリコートにした。次に、2.75mg/mLまたは0.275mg/mLの濃度で因子Bを使用して、因子Bを1:9の比率(9滴の血漿対1滴の因子B)で血漿試料に添加した。各血漿試料中の因子Bの最終濃度は、それぞれ17.5μMまたは1.75μMであった。血漿試料/因子B混合物を、室温で約30分間インキュベートした。次に、実施例1に記載の血清学的試験を、因子Bで処理された血漿試料に対して実施した。
【0091】
結果
表2に示されるように、17.5μMの濃度の因子Bは、実施例1に記載される血清学的アッセイにおける薬物A(10μg/mL)の干渉を軽減した(表1を参照)。しかし、1.7μMの低濃度では、因子Bは、薬物Aで観察された反応性を排除しなかった(表2を参照)。
表2:反応性の解決におけるCD47因子Bによる薬物Aの中和
【0092】
したがって、上記の結果は、CD47因子Bが、薬物Aを中和し、血清学的試験への干渉を軽減し得ることを示した。
【0093】
実施例3.(i)抗体Fc領域及び(ii)ヒトCD4に結合する部分を含む薬物による干渉を、例示的な可溶性CD47モノマーである薬剤Bまたは例示的な可溶性SIRPαモノマーである薬剤Cを使用する慣用的な血清学的試験において、軽減する
導入
CD47は、自己のマーカーとして機能し、マクロファージ上のその天然の受容体であるシグナル調節タンパク質-α(SIRPα)に結合して食作用を阻害することにより、「私を食べるな」シグナルを提供する、広く発現される細胞表面タンパク質である(Jaiswal et al.,Trends Immunol(2010)31(6):212-219;Brown et al.,Trends Cell Biol(2001)11(3):130-135)。腫瘍細胞は、CD47を過剰発現して、免疫学的監視を回避する(Willingham et al.,Proc Natl Acad Sci USA(2012)109(17):6662-6667)。豊富なCD47発現は、血液腫瘍及び固形腫瘍を含む多種多様な悪性腫瘍で観察されており、CD47発現の上昇は、進行性疾患及び生存確率の低下と相関している(Willingham et al.,Proc Natl Acad Sci USA(2012)109(17):6662-6667;Chao et al.Cell.(2010)142(4):699-713)。
【0094】
CD47は、ヒトRBCの表面に広く発現されている(Oldenborg et al.,Science(2000)288(5473):2051-2054)。患者への投与後に循環する薬物Aの存在下では、レシピエント患者からの薬物Aが、試薬またはドナーRBC上のCD47に結合し得る可能性がある。実施例1及び2で考察されるように、薬物Aは、SIRPαバリアント(すなわち、ヒトSIRPαに由来するCD47結合ドメイン)及びヒト免疫グロブリンIgG1のFc領域に由来するFcバリアントを含む例示的なCD47結合薬物である。薬物Aには、IgG1のFc領域が含まれているため、RBC表面CD47への結合は、抗体-抗原相互作用に似ている場合があり、慣用的な血液型判定及び輸血前血液バンク検査の血清学的試験のスクリーニングにアッセイの干渉を引き起こす。以前のインビトロ研究では、血漿中の薬物Aの存在は、ABO/Rh判定及び即時スピンによる抗体スクリーニングを妨害しないことが示唆された。ただし、10μg/mLの濃度では、血漿中の薬物AがPEG増強による抗体スクリーニングを妨害した。
【0095】
以下に記載の実験を行って、高濃度の薬物Aによって誘発される干渉が、CD47モノマー(すなわち、実施例2及び以下に記載の因子B)または高親和性SIRPαモノマー(すなわち、因子C、これについては以下でさらに詳しく説明する)の添加によって中和され得るか否かを評価した。相関フローサイトメトリー分析を実施して、RBCへの薬物Aの結合が可溶性CD47モノマー(因子B)または可溶性高親和性SIRPαモノマー(因子C)の添加によって排除され得るか否かを評価した。
【0096】
材料及び方法
因子B及び因子Cは、製造業者のプロトコルに基づいて、Expi293発現システム(サーモフィッシャー)を使用してそれぞれ発現された。両方の構築物とも、C末端His6タグを含み、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)によって精製された。全ての精製は、GE AktaAvant25またはAvant150を使用して実行した。使用したIMAC樹脂は、Ni Sepharose6 Fast Flow(GEカタログ番号17-5318-01)であった。まず、平衡緩衝液(20mM Tris pH7、500mM NaCl、5mMイミダゾール)を使用して樹脂を平衡化した。hisタグ付きタンパク質を含む粗上清を、樹脂にロードした。この樹脂は、約20~30カラム容積の平衡化緩衝液、続いて20~30カラム容積の洗浄緩衝液(20mM Tris pH7、500mM NaCl、40mMイミダゾール)で再平衡化した。タンパク質を、約10カラム容積の溶出緩衝液(20mM Tris pH7、500mM NaCl、250mMイミダゾール)で溶出した。溶出したタンパク質を、ゲルろ過により直ちに精製し、1×PBS(137mM塩化ナトリウム、2.7mM塩化カリウム、4.3mMリン酸ナトリウム(二塩基性、無水)、1.4mMリン酸カリウム(一塩基性、無水))に再懸濁した。
【0097】
この研究で使用された患者の血清試料は、病院環境での日常的なケアの一部として収集された。
【0098】
抗Eは、頻繁に特定される臨床的に重要な同種抗体である。抗E陽性の結果を示すプールされた患者血清は、研究用の病院輸血サービスから入手した。
【0099】
この研究で使用されたRBC試薬細胞は、Biorad ID-DiaCell I-II-IIIから入手した。
【0100】
実験プロトコル
BioRad抗体スクリーニングセルI及びIIを使用した抗ヒトグロブリン(AHG)フェーズでのカラム凝集試験(CAT)
薬物Aは、500μg/mLまでの濃度で血清学的血液バンク試験を妨害する可能性について評価された。薬物Aをスパイクした血清は、RBC試薬セルID-DiaCell I-II(Biorad)を使用して、ゲルIAT(ID-Card LISS/Coombs,BIO-RAD)による抗体スクリーニングを受けた。具体的には、25μLの薬物Aスパイク血清(0.1、1.0、10.0、100.0、及び500.0μg/mL)及び低イオン強度生理食塩水(LISS)に懸濁した50μLの0.8%試薬RBCを、LISS/Coombsカードに追加した。37℃で15分間インキュベートした後、カードを1,030rpmで10分間遠心分離した。凝集の強さは、0(凝集なし)、0.5+(非常に弱い凝集)、1+(弱い凝集)、2+(中程度の凝集)、3+(強い凝集)、または4+(非常に強い凝集)に分類された。
【0101】
RBCに結合する薬物Aのフローサイトメトリー分析
フローサイトメトリーを実施して、試薬RBCへの薬物Aの結合及び因子Bまたは因子Cを使用することによる結合の減少を測定した。25μLの薬物Aをスパイクした血清(0.1、1.0、10.0、100.0、及び500.0μg/mL)または、予期しない抗体が陰性である通常の血清試験を、50μLの試薬RBC(ID-DiaCell I)に添加した。10、30、及び50倍モル過剰の因子Bとプレインキュベートした25μLの薬物Aスパイク血清(500.0μg/mL)を、50μLの試験RBC(ID-DiaCell I)に添加した。25μLの薬物Aスパイク血清(500.0μg/mL)を、10、50、100、300、及び500倍モル過剰の因子Cとプレインキュベートした50μLの試薬RBC(ID-DiaCell I)に添加した。その混合物を37℃で15分間インキュベートした後、PBSで4回洗浄した。洗浄した混合物を、0.5μLのFITCコンジュゲートF(ab’)2フラグメントヤギ抗ヒトIgG(Jackson ImmunoResearch,West Grove,PA)とともに4℃で30分間インキュベートし、PBSで2回洗浄した。FACS Canto IIフローサイトメーター(BD Biosciences,San Jose,CA)で試料あたり少なくとも20,000の事象を取得して、RBCは、前方及び側方散乱パラメーターによってゲートした。
【0102】
結果
薬物Aに起因する干渉の確認
RBC抗体スクリーニングを妨害する薬物Aの可能性に関する以前の結果に基づいて(例えば、実施例1を参照)、薬物Aを、赤血球抗体がないことが確認された正常なプールされた血清にスパイクした。この研究で使用された患者の血清試料は、病院状況での日常的なケアの一環として収集された。薬物Aの最終濃度は、0.1、1、10、100、及び500μg/mLであった。最高濃度は、ヒト患者で観察された10mg/kg(QW)用量レベルで観察された247±32.5μg/mLという平均Cmaxを超えた(Jin et al.“Pharmacokinetic and Pharmacodynamic Characterization of DRUG A,a CD47 Blocker,in Patients with Advanced Malignancy and Non-Hodgkin Lymphoma.”(Poster)Society for Immunotherapy of Cancer Annual Meeting,Washington,D.C.,November 7-11,2018参照)。
【0103】
BioRad抗体スクリーニングセルI及びIIを使用する抗ヒトグロブリン(AHG)フェーズでのカラム凝集試験(CAT)を実施した。試験した薬物A濃度全体で、0から4+のスケールで2+から3+の範囲の反応の強度が観察され、薬物AのRBCへの結合、及び薬物AのFc部分とAHG試薬との相互作用に起因する干渉が示唆された(表3)。
表3.抗ヒトグロブリン(AHG)フェーズでのカラム凝集試験で陽性と試験された薬物Aスパイク血清
【0104】
因子Bを使用した干渉の軽減
因子Bは、IgSFドメインを含むCD47モノマーである。溶液中の薬物Aへの因子Bの結合は、因子B-薬物A複合体を形成すると仮定された。また、因子B-薬物A複合体は、RBCで発現される内因性CD47に結合できず、それによって薬物Aが、RBC抗体スクリーニング試験に干渉するのを防ぐとも仮定された。この可能性を試験するために、薬物Aの10倍から500倍のモル比に対応する濃度の因子Bを、薬物Aをスパイクした血清に添加した。室温(RT)で30分間インキュベートした後、BioRad抗体スクリーニングセルI及びIIを使用したAHGフェーズのCATを再度実行した。薬物A干渉の解決は、因子Bの40倍~100倍のモル比で達成された(表4)。
表4.因子Bは、抗ヒトグロブリン(AHG)フェーズでのカラム凝集試験における薬物Aに起因する干渉を軽減する
*NT:試験なし
【0105】
209.82μMの因子B(3.32mg/mL)を中和のために使用した。具体的には、25μLの薬物Aをスパイクした血漿(500μg/mL、160pmol)を、8、16、24、32、及び40μLの因子B(10X、1.6nmol;20X、3.2nmol;30X、4.8nmol;40X、6.4nmol;50X、8.0nmol)とともにインキュベートした。25μLの薬物Aをスパイクした血漿(100μg/mL、32pmol)を、1.6、3.2、4.8、6.4、及び8.0μLの因子B(10X、320pmol;20X、640pmol;30X、960pmol;40X、1.28nmol;50X、1.6nmol)とインキュベートした。25μLの薬物Aをスパイクした血漿(10μg/mL、3.2pmol)を、160、320、480、640、及び800nLの因子B(10X、32pmol;20X、64pmol;30X、96pmol;40X、128pmol;50X、160pmol)とインキュベートした。25μLの薬物Aをスパイクした血漿(1μg/mL、320fmol)を、16、32、48、64、80、160、320、及び480nLの因子B(10X、3.2pmol;20X、6.4pmol;30X、9.6pmol;40X、12.8pmol;50X、16.0pmol;100X、32.0pmol;200X、64.0pmol;300X、96.0pmol)とインキュベートした。25μLの薬物Aをスパイクした血漿(0.1μg/mL、32fmol)を、1.6、3.2、4.8、6.4、8.0、16.0、32.0、及び48.0nLの因子B(10X、320fmol;20X、640pmol;30X、960fmol;40X、1.28pmol;50X、1.60pmol;100X、3.2pmol;200X、6.4pmol;300X、9.6pmol)とインキュベートした。
【0106】
因子Cを使用した干渉の軽減
因子Cは、組換え高親和性SIRPαモノマー(ヒトCD47のKd=14.4pM)である。RBC上で発現されたCD47への因子の結合は、薬物AがRBC上で発現されたCD47に結合するのをブロックし、これによって薬物AがRBC抗体スクリーニング試験に干渉するのを防ぐと仮定された。この可能性を試験するために、BioRad抗体スクリーニングセルI及びIIを、薬物Aの10倍~500倍のモル比に対応する濃度で因子Cとインキュベートした。室温(RT)で30分間インキュベートした後、因子Cでインキュベートした試薬RBCを、薬物Aをスパイクした血清を用いたAHGフェーズのCATで試験した。薬物A干渉の解決は、因子Cの300倍のモル比で達成された(表5)。
表5:因子Cは、カラム凝集試験での薬物Aに起因する干渉を、抗ヒトグロブリン(AHG)フェーズで軽減する
NT:試験せず
【0107】
試薬RBCのCD47上の薬物A結合部位をマスキングするために、345.66μMの因子C(4.77mg/mL)を使用した。具体的には、25μLの薬物Aをスパイクした血漿(500μg/mL、160pmol)を、5、10、15、20、25、50、及び150μLの因子C(10X、1.6nmol;20X、3.2nmol;30X、4.8nmol;40X、6.4nmol;50X、8.0nmol;100X、16.0nmol;300X、48.0nmol)とともにインキュベートした。25μLの薬物Aをスパイクした血漿(100μg/mL、32pmol)を、1、2、3、4、5、10、30、及び50μLの因子C(10X、320pmol;20X、640pmol;30X、960pmol;40X、1.28nmol;50X、1.6nmol;100X.3.2nmol;300X、9.6nmol;500X、16nmol)とともにインキュベートした。25μLの薬物Aをスパイクした血漿(10μg/mL、3.2pmol)を、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1.0、3.0、及び5.0μLの因子C(10X、32pmol;20X、64pmol;30X、96pmol;40X、128pmol;50X、160pmol、100X、320pmol;300X、960pmol;500X、1.6nmol)とともにインキュベートした。25μLの薬物Aをスパイクした血漿(1μg/mL、320fmol)を、10、20、30、40、50、100、300、及び500nLの因子C(10X、3.2pmol;20X、6.4pmol;30X、9.6pmol;40X、12.8pmol;50X、16.0pmol;100X、32.0pmol;300X、96.0pmol;500X、160.0pmol)とともにインキュベートした。25μLの薬物Aをスパイクした血漿(0.1μg/mL、32fmol)を、1、2、3、4、5、10、30、及び50nLの因子C(10X、320fmol;20X、640pmol;30X、960fmol;40X、1.28pmol;50X、1.60pmol;100X、3.2pmol;300X、9.6pmol;500X、16.0pmol)とともにインキュベートした。
【0108】
因子Bまたは因子Cのいずれかを使用した干渉の軽減により、患者の血清中のRBC同種抗体の検出が可能になる
因子Bまたは因子Cによる薬物A干渉の軽減が、真のRBC同種抗体の検出を可能にするか否かを調査するために、例示的なRBC同種抗体である抗Eを含むプールされたヒト血清を、上記と同様の実験で使用した。抗Eは、頻繁に同定される臨床的に重要な同種抗体であり、抗E陽性の結果を伴うプールされた患者血清は、研究用の病院輸血サービスから得た。この研究で使用された患者の血清試料は、日常的なケアの一環として収集された。抗Eを含む患者の血清を、0.1~500μg/mLの薬物Aでスパイクした。AHGフェーズのCATは、BioradI及びIIセルを使用して実行した。Biorad IIセルはE陽性であるが、全ての薬物A濃度の両方の試薬細胞で汎陽性(pan-positivity)が観察された(表6A)。しかし、25μLの薬物A(500μg/ml)のモル比の40倍である32μLの因子B(3.32mg/mL)との、RTで30分間のインキュベーション後、AHGフェーズのCATのみが、Biorad IIセルで明らかに陽性であり、これによって、抗E活性のみが検出され、試験された全ての薬物A濃度で薬物A干渉が解消されたことが示唆される(表6B)。
【0109】
同様の結果が因子Cで観察された。BioRad抗体スクリーニングセルI及びIIを、25μLの薬物A(500μg/ml)の300倍のモル比である150μLの因子C(4.77mg/mL)と共に、室温で30分間インキュベートした。抗Eを含む薬物Aをスパイクした患者血清を用いたAHGフェーズのCATを実行し、Biorad IIセルでのみ陽性を示し、これによって、抗E活性のみが検出され、薬物Aの干渉が試験された全ての薬物A濃度で解決されたことが示唆される(表6C)。
表6A-6C。因子Bまたは因子Cのいずれかを使用した緩和干渉により、患者血清中のRBC同種抗体の検出が可能になる
表6A。
*Biorad IIセルは、E陽性である。
表6B
‡.
*Biorad IIセルはE-陽性である。
‡試験した全ての薬物A濃度について、6.4nmol因子B(500μg/mLの薬物Aの40×モル比)を用いた。
表6C
‡.
*Biorad IIセルは、E陽性である。
‡試験した全ての薬物A濃度について、48nmolの因子C(500μg/mLの薬物Aの300×モル比)を用いた。
【0110】
フローサイトメトリーによるRBCへの薬物Aの結合の相関分析
試薬RBC上で発現されるCD47への薬物Aの結合が、可溶性高親和性SIRPα(因子C)または可溶性CD47(因子B)の存在によって実際に減少するか否かを決定するために、フローサイトメトリー分析を以下のように実施した。薬物Aは、正常血清に対して、0(陰性対照)、0.1、1.0、10、100、及び500μg/mLでスパイクされた。BioRAD Iセルは、薬物Aをスパイクした血清試料とともに37℃で15分間インキュベートした。FITCコンジュゲート抗ヒトIgGを、薬物Aに結合したRBCの染色に使用した。セルをフローサイトメトリーで分析し、MFI(平均蛍光強度)を測定した。
【0111】
薬物AのRBCへの結合に対する因子Bの影響を評価するために、薬物Aをスパイクした血清試料、及びスパイクしていない陰性対照試料を、因子B(薬物Aの10×~50×のモル比範囲の濃度)と共に、室温で15分間、インキュベートした。BioRAD Iセルを血清試料とともに37℃で15分間インキュベートし、フローサイトメトリー分析に供した。
【0112】
薬物AのRBCへの結合に対する因子Cの影響を評価するために、因子C(薬物Aの10×~500×のモル比の範囲の濃度)を37℃で15分間、BioRAD Iセルに加えた。このセルをさらに、薬物Aをスパイクした血清試料、及びスパイクしていない陰性対照試料とともに37℃で15分間インキュベートし、フローサイトメトリー分析に供した。
【0113】
増加したFITCシグナルによって示されるように、RBCは、血清に含まれる薬物Aと結合した。血清にスパイクされる薬物Aの濃度の増大に伴い、MFIの濃度依存性の増大が観察された(表7A)。因子Bと因子Cの両方=RBCへの薬物Aの結合を効果的かつ濃度依存的に低減する(表7B及び7C)。
表7A~7C。因子B及び因子Cは薬物AのRBCへの結合を低減させる
表7A.
表7B.
表7C.
【0114】
結論
BioRad抗体スクリーニングセルI及びIIを使用する抗ヒトグロブリン(AHG)フェーズでのカラム凝集試験(CAT)において、最大500μg/mLまでの濃度の血清中の薬物Aの存在は、この試験を妨害し、そして偽陽性の結果を生じた。組換えCD47モノマー(因子B)または高親和性SIRPαモノマー(因子C)を使用して、この干渉を解決した。さらに、臨床的に関連する同種抗体である抗Eは、薬物Aによる因子Bまたは因子Cのいずれかの干渉の解消後、血清中で検出可能であった。相関フローサイトメトリー分析によって、薬物Aが濃度依存的にRBCに結合することが示唆された。因子Bと因子Cの両方が、RBC上に発現するCD47に結合する薬物Aの干渉の中和と一致して、RBCへの薬物Aの結合を減少させた。
【0115】
引用文献
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Technical Manual.Current Edition.Bethesda:AABB.
【0116】
概要
BioRad抗体スクリーニングセルI及びIIを使用する抗ヒトグロブリン(AHG)フェーズでのカラム凝集試験(CAT)において、血清中の薬物Aの存在は、試験への干渉を示し、偽陽性の結果を引き起こした。組換えCD47モノマー(因子B)または高親和性SIRPαモノマー(因子C)を使用して、この干渉を解決した。さらに、臨床的に関連する同種抗体である抗Eは、因子Bまたは因子Cのいずれかによる干渉の解決後、検出されたままであった。相関フローサイトメトリー分析によって、薬物Aが濃度依存的にRBCに結合することが示唆された。因子Bと因子Cの両方が、ALX干渉の中和と一致して、薬物AのRBCへの結合を減少させた。
【0117】
実施例4.抗SIRPα抗体(またはその抗原結合フラグメント)を使用する慣用的な血清学的試験において、(i)抗体Fc領域及び(ii)ヒトCD4に結合する部分を含む薬物による干渉を軽減する。
【0118】
以下に記載される実験は、より高い濃度で薬物Aによって誘導される干渉が、抗SIRPα抗体(またはそのFabフラグメント)の添加によって中和され得るか否かを評価するために実施した。相関フローサイトメトリー分析を実施して、RBCの表面上のCD47に結合した薬物Aが抗SIRPα抗体(またはそのFabフラグメント)の添加によって置換され得るか否かを評価した。
【0119】
血球凝集アッセイは以下のように実施した:3~3.4%修飾アルサーバー溶液(Bio-Rad)中のプールされたヒト赤血球を、96ウェルプレート(Falcon)において1ウェルあたり40μlで添加した。ウェルを、PBS(Gibco)または薬物Aのいずれかと250ng/mLで、37℃で1時間インキュベートし、その後、各洗浄後に完全にデカントしながらPBSで3回洗浄した。抗体A及びCのFabフラグメント、すなわち、SIRPαとCD47との間の相互作用をブロックする例示的な抗SIRPα抗体を、100μg/mLまたは625μg/mLで開始して、1:2で滴定し、薬物Aでコーティングした赤血球と37℃で1時間インキュベートした後に、PBSで3回洗浄し、残りの液体を完全にデカントする。次に、2滴の抗ヒトグロブリン抗IgG(Bio-Rad)を、各ウェルに添加し、800Gで30秒間回転させた後、ペレットとjpeg画像キャプチャーを静かに取り除いた。抗体Aは、配列番号6を含む重鎖可変ドメイン(VH)と、配列番号7を含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む。抗体Cは、配列番号21を含む重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号22を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。抗体B、すなわち、SIRPαとCD47との間の相互作用をブロックしない例示的な抗SIRPα抗体を用いて並行実験を行った。抗体Bは、配列番号23を含む重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号24を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。抗体A、B、及びCのそれぞれは、SIRPβ及びSIRPγと交差反応する。PBSまたは薬物Aのみとインキュベートした赤血球は、それぞれアッセイの陰性対照及び陽性対照として機能した。
【0120】
図5Aに示すように、SIRPαとCD47との間の相互作用をブロックする抗体Cは、薬物Aの量に対して200倍及び400倍モル過剰で、薬物Aでコーティングされた赤血球に添加されたとき、血球凝集を防止した。SIRPαとCD47との間の相互作用もブロックする抗体Aは、薬物Aの量に対して2500倍モル過剰で、薬物Aでコーティングされた赤血球に添加されたとき、血球凝集を防止した。SIRPαとCD47との間の相互作用をブロックしない抗SIRPα抗体である抗体Bの添加は、薬物Aの量に対して400倍モル過剰で、薬物Aでコーティングされた赤血球に添加されたとき、血球凝集を防止した。
図5Aに示す結果、抗体A、抗体B、及び抗体CのFabがそれぞれ、赤血球の表面のCD47であるCD47赤血球から薬物Aを置換することによって、血球凝集を防止したことが示された。
【0121】
抗体A及び抗体CのFabが赤血球の表面上のCD47に結合した薬物Aを置換し得ることを確認するために、フローサイトメトリー実験を以下のように実施した:薬物Aを、Alexa Fluor 647タンパク質標識キット(ThermoFisher Scientific)を、製造業者の指示に従って用いて、蛍光標識した。DLD-1ヒト結腸上皮細胞を、染色緩衝液(PBS、2%FBS)で1回洗浄し、固定可能な生/死染色(Invitrogen)を含むPBSで、4℃で1時間染色した。次いで、細胞を、染色緩衝液で洗浄し、96ウェルプレート(Falcon)中で、100ng/mLの標識薬物Aと、50μg/mLから開始する1:2滴定の未標識抗体AFabまたは未標識抗体CFabのいずれかと共インキュベートした。4℃で1時間インキュベートした後、細胞を染色緩衝液で2回洗浄し、0.5%パラホルムアルデヒドで固定した。細胞は、Attune(ThermoScientific)で分析し、その後Flowjo10.6を使用してデータ分析を行った。DLD-1細胞の表面のCD47への薬物Aの結合は、Alexa Fluor 647の蛍光強度の中央値によって示された。
図5Bに示すように、抗体A及び抗体Cを薬物A結合細胞に添加すると、DLD-1細胞の表面のCD47に対する薬物Aの結合が減少した。これらの結果は、抗体A及び抗体CがDLD-1細胞の表面上のCD47に結合した薬物Aを置換し得ることを示した。
【0122】
この実施例の結果を総合すると、抗体A、B及びCは、血球の表面上のCD47に結合した薬物Aを置換することによって、慣用的な血清学的アッセイにおける干渉を防ぎ得ることが示される。これらの結果はまた、SIRPα、SIRPβ、及びSIRPγと交差反応する抗体が、血球表面のCD47に結合した薬物Aを置換することにより、慣用的な血清学的アッセイでの干渉を防ぎ得ることも示している。
【0123】
本明細書に記載の各実施形態は、反対に明確に示されない限り、任意の他の実施形態(複数可)と組み合わせてもよい。特に、好ましいかまたは有利であると示される任意の特徴または実施形態は、反対に明確に示されない限り、好ましいかまたは有利であると示される任意の他の特徴(複数可)または実施形態(複数可)と組み合わされてもよい。
【0124】
本出願で引用された全ての参考文献は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【配列表】