(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】量子暗号キー分配方法、装置及びシステム
(51)【国際特許分類】
H04L 9/12 20060101AFI20240927BHJP
H04B 10/70 20130101ALI20240927BHJP
【FI】
H04L9/12
H04B10/70
(21)【出願番号】P 2021574243
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(86)【国際出願番号】 KR2020007846
(87)【国際公開番号】W WO2020256408
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-05-22
(31)【優先権主張番号】10-2019-0071799
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0120521
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】507302759
【氏名又は名称】ケーティー コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シン、チョンファン
(72)【発明者】
【氏名】イ、キョン-ウン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ミン ソ
【審査官】平井 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-251678(JP,A)
【文献】特開2011-050072(JP,A)
【文献】特開2013-255263(JP,A)
【文献】特表2007-526722(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0191496(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 9/00-40
H04B 10/70
G09C 1/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信機(110)及び受信機(120)に対して量子暗号キーを分配する量子暗号キー分配システム(100)であって、
光信号を第1経路(P1)を通過する第1光信号と、前記第1経路(P1)よりも長い第2経路(P2)を通過する第2光信号とに分割して順次に伝送する送信機(110)と
、
量子チャネル(130)を通じて入射した前記第1光信号及び前記第2光信号を、偏光従属素子(123)を経てファラデーミラー(124)で反射させ、再び前記偏光従属素子(123)を経て前記量子チャネル(130)を通じて前記送信機(110)に伝送する受信機(120)とを含み、
前記送信機(110)において前記第1経路(P1)の長さ(LP1)と前記第2経路(P2)の長さ(LP2)との差(dL=LP2-LP1)は、前記偏光従属素子(123)と前記ファラデーミラー(124)との間の距離(=D)の2倍より大きいか等しい値(dL≧2D)を有することを特徴とする、量子暗号キー分配システム(100)。
【請求項2】
前記送信機(110)は、
光信号を生成する光源(111)と、
前記光信号を前記第1光信号と前記第2光信号とに分割し、前記第1光信号を前記第1経路(P1)として出力し、前記第2光信号を前記第2経路(P2)として出力するビームスプリッター(113)とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の量子暗号キー分配システム。
【請求項3】
前記第2経路(P2)には、前記第2光信号の進行経路を延長させる遅延ライン115が備えられることを特徴とする、請求項2に記載の量子暗号キー分配システム。
【請求項4】
前記送信機(110)には偏光ビームスプリッター(116)が備えられ、
前記第1経路(P1)を通じて進行した前記第1光信号を第1偏光として偏光させ、前記第2経路(P2)を通じて進行した前記第2光信号を前記第1偏光と垂直な第2偏光として偏光させることを特徴とする、請求項1に記載の量子暗号キー分配システム。
【請求項5】
前記偏光ビームスプリッター(116)では、
前記受信機(120)から伝送された前記第1光信号を前記第2経路(P2)に進行させ、前記第2光信号を前記第1経路(P1)に進行させることを特徴とする、請求項4に記載の量子暗号キー分配システム。
【請求項6】
前記受信機(120)において、
前記第1光信号又は前記第2光信号が前記偏光従属素子(123)を経て前記ファラデーミラー(124)から反射されて再び前記偏光従属素子(123)を経る間に、
前記偏光従属素子(123)の動作を制御するための制御信号として1回の連続した制御信号が印加されることを特徴とする、請求項1に記載の量子暗号キー分配システム。
【請求項7】
前記受信機(120)には、前記偏光従属素子(123)が複数個備えられ、
前記第1経路(P1)の長さ(LP1)と前記第2経路(P2)の長さ(LP2)との差(dL=LP2-LP1)は、複数の前記偏光従属素子(123)のうち、前記ファラデーミラー(124)から遠くに位置するものと前記ファラデーミラー(124)との間の距離(=D)の2倍より大きいか等しい値(dL≧2D)を有することを特徴とする、請求項1に記載の量子暗号キー分配システム(100)。
【請求項8】
複数の前記偏光従属素子(123)として第1位相変調器(123a)及び光強度変調
器(123b)が含まれ、
前記第1位相変調器(123a)は前記第2光信号に対してのみ位相を変調することを特徴とする、請求項7に記載の量子暗号キー分配システム。
【請求項9】
複数の前記偏光従属素子(123)として第1位相変調器(123a)及び光強度変調器(123b)が含まれ、
前記光強度変調器(123b)は、前記第1光信号と前記第2光信号に対して光強度を変調することを特徴とする、請求項7に記載の量子暗号キー分配システム。
【請求項10】
量子暗号キー分配システム(100)に備えられて受信機(120)と量子暗号キーを分配する送信機(110)であって、
光信号を生成する光源(111)と、
前記光信号を第1光信号と第2光信号とに分割し、前記第1光信号
を第1経路(P1)に出力し、前記第2光信号
を第2経路(P2)に出力するビームスプリッター(113)と、
前記第2経路(P2)に備えられて前記第2光信号の進行経路を延長させる遅延ライン(115)とを含み、
前記第1経路(P1)の長さ(LP1)と前記第2経路(P2)の長さ(LP2)との差(dL=LP2-LP1)は、前記受信機(120)に備えられる偏光従属素子(123)
とファラデーミラー(124)との間の距離(=D)の2倍より大きいか等しい値(dL≧2D)を有することを特徴とする、送信機(110)。
【請求項11】
量子暗号キー分配システム(100)に備えられて送信機(110)と量子暗号キーを分配する受信機(120)であって、
光信号の偏光によって動作特性が変わる偏光従属素子(123)と、
入射した光信号の偏光を90度回転させて反射させるファラデーミラー(124)とを含み、
前記送信機(110)で生成された光信号が第1経路(P1)を通過する第1光信号と、前記第1経路(P1)よりも長い第2経路(P2)を通過する第2光信号とに分割されて順次に伝送されると、量子チャネル(130)を通じて入射した前記第1光信号及び前記第2光信号を前記偏光従属素子(123)を経て前記ファラデーミラー(124)で反射させ、再び前記偏光従属素子(123)を経て前記量子チャネル(130)を通じて前記送信機(110)に伝送し、
前記送信機(110)において前記第1経路(P1)の長さ(LP1)と前記第2経路(P2)の長さ(LP2)との差(dL=LP2-LP1)は、前記偏光従属素子(123)と前記ファラデーミラー(124)との間の距離(=D)の2倍より大きいか等しい値(dL≧2D)を有することを特徴とする、受信機(120)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子暗号キー分配方法、装置及びシステムに関し、より具体的には、量子暗号キー分配システムの受信機に備えられる偏光従属素子を、連続する1回の制御信号で制御して偏光非従属的に駆動させることができる量子暗号キー分配方法、装置及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、個人又は国家間に傍受・盗聴による被害事例が相次ぐ中、保安への関心が大きく増加している。しかし、従来技術に係る保安通信は、外部攻撃によって通信内容が露出されるような相当な危険性を持っており、これを補完するための次世代保安技術として、理論的に非常に高い保安性を保障できる量子暗号通信が脚光を浴びている。
【0003】
これと関連して、量子暗号通信技術のうち、量子暗号キー分配に関する研究も活発に行われている。量子暗号キー分配(Quantum key distribution,QKD)技術は、光子の量子力学的性質を用いて遠隔地のユーザ間に暗号キーを分配し共有する技術である。このとき、量子力学的性質により、攻撃子がユーザ間に分配されている暗号キー情報を取得しようと試みる場合、前記暗号キー情報が変質することがあり、これによって、暗号キーをやり取りするユーザたちにとって攻撃者の存在が感知できる。
【0004】
より具体的に、量子暗号キー分配(QKD)技術では、量子状態を用いて暗号キーを分配するために、量子特性を持っている単一光子(又は、単一光子と類似のレベルの類似単一光子(quasi-single photon))を用いて情報を伝達し、光子の持っている様々な量子特性のうち偏光、位相などを用いて、盗聴から安全に暗号キーを共有する。
【0005】
このため、量子暗号キー分配(QKD)システムは様々な光素子で構成されており、このとき、前記量子暗号キー分配(QKD)システムを構成する様々な光素子は、一般に偏光に従属的な動作特性を有する。このため、量子暗号キー分配(QKD)システムで発生する光子における偏光の変化は、量子暗号キー分配(QKD)システムの性能に相当な影響を与えることになる。
【0006】
例えば、位相を用いて暗号キーを分配する量子暗号キー分配(QKD)システムでは、一般に、光子に暗号キー情報を乗せるために位相変調器(Phase Modulator,PM)を使用する場合が多く、通常、位相変調器(PM)は、光子の偏光状態によって位相変調特性が変わる偏光従属特性を有する。
【0007】
すなわち、前記位相変調器(PM)は、光子の位相を電圧又は電流を用いて制御する素子であり、偏光従属特性により、入力される偏光に従って位相制御値が変わる。このため、位相変調器(PM)に入力される光子の偏光が変わる場合、正確な位相制御が難しくなり、しかも、位相変調器(PM)を用いて暗号キーを生成/分配する量子暗号キー分配(QKD)システムにおいて偏光による位相誤差により、暗号キーの適切な生成/分配が困難となる。
【0008】
また、量子暗号キー分配(QKD)システムにおいて攻撃者の存在を感知するために用いられるおとりデータ(Decoy state)を生成するために用いられる光強度変調器(Intensity modulator,IM)も一般に、偏光に従属的な特性を示す。これにより、光強度変調器(IM)に入射する光子の偏光が変化する場合、光強度変調器(IM)は正確なおとりデータ(Decoy state)が生成し難く、これは量子暗号キー分配(QKD)システムの安定した動作を制限する要素となる。
【0009】
これにより、単方向(1-way)量子暗号キー分配(QKD)システム(すなわち、送信機で単一光子を生成し、受信機で単一光子を検出する構造)では、一般に、偏光従属的な素子の特性を制御するために、送信機及び受信機の両方に対して偏光を適切に保持できる光回線及び素子でシステムを構成し、さらに、量子チャネル(単一光子が伝送される光回線)で発生する偏光歪みを補正するために、受信機には別個の偏光補正機能が備えられる。
【0010】
一方、両方向(2-way)方式の量子暗号キー分配(QKD)システム(送信機で単一光子を生成して送出した後、受信機から反射された光子を前記送信機で検出する構造)では、一般に、量子チャネルで発生する偏光歪みを補正するために、送信機で生成した光信号が受信機に伝達された後、同一回線を通じて再び送信機に伝達される形態で構成されている。これにより、送信機から受信機に伝達される過程で発生した偏光歪みは、同一回線を通じて受信機から送信機に伝達される過程を経ながら、最初に送信機で発生した偏光と同じ偏光に補正される。
【0011】
これにより、両方向(2-way)方式の量子暗号キー分配(QKD)システムでは、同一光回線の使用による偏光補正によって、送信機に位置している干渉計の安定した作動を保障することができるが、受信機では、送信機から受けた光信号を用いて暗号キー情報を光信号の位相に符号化した単一光子を生成するためにそれぞれ位相変調器(PM)と光強度変調器(IM)を使用する際に、前記偏光による誤差を補正しなければならないという問題が残る。
【0012】
これに関して、一般に、両方向(2-way)方式において、受信機は、偏光の歪みを制御するために、入力される光信号の偏光が歪む程度に比例して誤差が発生する素子を使用するとき、受信機に入る光信号と出る光信号に対して2回反復して制御を行うことによって偏光従属素子における偏光による誤差を補正する方法が用いられている。
【0013】
しかしながら、上記のような従来の技術は、高速で動作する2回の制御信号を生成しなければならなく、入る光信号と出る光信号とが重ならない時点において高速で偏光従属素子に対する2回の制御を行わなければならないという不具合があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために創案されたものであり、量子暗号キー分配システムにおいて、両方向(2-way)構造のように光信号が同一光回線を往復する量子暗号キー分配(QKD)システムにおいて偏光従属素子を用いて装置を構成する場合、連続した1回の制御信号で偏光従属素子に対する制御を行って偏光従属特性による誤りを補正することができる量子暗号キー分配方法、装置及びシステムを提供することを目的とする。
【0015】
その他、本発明の細部的な目的は、後述する具体的な内容から、この技術分野における専門家や研究者にとって明らかに把握され理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一実施例による量子暗号キー分配システム(100)は、送信機(110)及び受信機(120)に対して量子暗号キーを分配する量子暗号キー分配システム(100)であって、光信号を第1経路(P1)を通過する第1光信号と、前記第1経路(P1)よりも長い第2経路(P2)を通過する第2光信号とに分割して順次に伝送する送信機(110)と、前記量子チャネル(130)を通じて入射した前記第1光信号及び前記第2光信号を、偏光従属素子(123)を経てファラデーミラー(124)で反射させ、再び前記偏光従属素子(123)を経て前記量子チャネル(130)を通じて前記送信機(110)に伝送する受信機(120)とを含み、前記送信機(110)において前記第1経路(P1)の長さ(LP1)と前記第2経路(P2)の長さ(LP2)との差(dL=LP2-LP1)は、前記偏光従属素子(123)と前記ファラデーミラー(124)との間の距離(=D)の2倍より大きいか等しい値(dL≧2D)を有することを特徴とする。
【0017】
このとき、前記送信機(110)は、光信号を生成する光源(111)と、前記光信号を前記第1光信号と前記第2光信号とに分割し、前記第1光信号を前記第1経路(P1)に出力し、前記第2光信号を前記第2経路(P2)に出力するビームスプリッター(113)とを含むことができる。
【0018】
ここで、前記第2経路(P2)には、前記第2光信号の進行経路を延長させる遅延ライン115が備えられてよい。
【0019】
また、前記送信機(110)には偏光ビームスプリッター(116)が備えられ、前記第1経路(P1)を通じて進行した前記第1光信号を第1偏光として偏光させ、前記第2経路(P2)を通じて進行した前記第2光信号を前記第1偏光と垂直な第2偏光として偏光させることができる。
【0020】
ここで、前記偏光ビームスプリッター(116)では、前記受信機(120)から伝送された前記第1光信号を前記第2経路(P2)に進行させ、前記第2光信号を前記第1経路(P1)に進行させることができる。
【0021】
また、前記受信機(120)において、前記第1光信号又は前記第2光信号が前記偏光従属素子(123)を経て前記ファラデーミラー(124)から反射されて再び前記偏光従属素子(123)を経る間に、前記偏光従属素子(123)の動作を制御するための制御信号として1回の連続した制御信号が印加されてよい。
【0022】
また、前記受信機(120)には前記偏光従属素子(123)が複数個備えられ、前記第1経路(P1)の長さ(LP1)と前記第2経路(P2)の長さ(LP2)との差(dL=LP2-LP1)は、前記複数の偏光従属素子(123)のうち、前記ファラデーミラー(124)から遠くに位置するものと前記ファラデーミラー(124)との間の距離(=D)の2倍より大きいか等しい値(dL≧2D)を有することができる。
【0023】
ここで、前記複数の偏光従属素子(123)として第1位相変調器(123a)及び光強度変調器(123b)が含まれ、前記第1位相変調器(123a)は、前記第2光信号に対してのみ位相を変調することができる。
【0024】
また、前記複数の偏光従属素子(123)として第1位相変調器(123a)及び光強度変調器(123b)が含まれ、前記光強度変調器(123b)は、前記第1光信号及び前記第2光信号に対して光強度を変調することができる。
【0025】
また、本発明の他の実施例による送信機(110)は、量子暗号キー分配システム(100)に備えられて受信機(120)と量子暗号キーを分配する送信機(110)であって、光信号を生成する光源(111)と、前記光信号を第1光信号と第2光信号とに分割し、前記第1光信号を前記第1経路(P1)として出力し、前記第2光信号を前記第2経路(P2)として出力するビームスプリッター(113)と、前記第2経路(P2)に備えられて前記第2光信号の進行経路を延長させる遅延ライン(115)とを含み、前記第1経路(P1)の長さ(LP1)と前記第2経路(P2)の長さ(LP2)との差(dL=LP2-LP1)は、前記受信機(120)に備えられる偏光従属素子(123)と前記ファラデーミラー(124)との間の距離(=D)の2倍より大きいか等しい値(dL≧2D)を有することを特徴とする。
【0026】
また、本発明のさらに他の実施例に係る受信機(120)は、量子暗号キー分配システム(100)に備えられて送信機(110)と量子暗号キーを分配する受信機(120)であって、光信号の偏光によって動作特性が変わる偏光従属素子(123)と、入射した光信号の偏光を90度回転させて反射させるファラデーミラー(124)とを備え、前記送信機(110)で生成された光信号が第1経路(P1)を通過する第1光信号と、前記第1経路(P1)よりも長い第2経路(P2)を通過する第2光信号とに分割されて順次に伝送されると、量子チャネル(130)を通じて入射した前記第1光信号及び前記第2光信号を前記偏光従属素子(123)を経て前記ファラデーミラー(124)で反射させ、再び前記偏光従属素子(123)を経て前記量子チャネル(130)を通じて前記送信機(110)に伝送し、前記送信機(110)において前記第1経路(P1)の長さ(LP1)と前記第2経路(P2)の長さ(LP2)との差(dL=LP2-LP1)は、前記偏光従属素子(123)と前記ファラデーミラー(124)との間の距離(=D)の2倍より大きいか等しい値(dL≧2D)を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一実施例による量子暗号キー分配方法、装置及びシステムでは、両方向(2-way)構造のように光信号が同一光回線を往復する量子暗号キー分配(QKD)システムにおいて偏光従属素子を用いて装置を構成する場合、連続した1回の制御信号で偏光従属素子に対する制御を行い、偏光従属特性による誤りを補正することが可能になる。
【0028】
すなわち、本発明は、量子物理の現象を用いて暗号キーを分配する量子暗号キー分配手法のうち両方向(2-way)方式(又は、プラグアンドプレイ(Plug and Play)方式)のように暗号キー生成に用いられる光信号が同一光回線を2回以上往復する場合、量子暗号キー分配(QKD)システムにおいて用いられる偏光従属素子に対して装置の内部及び外部の光伝送区間で発生する偏光歪むに影響を受けないように偏光従属素子を制御することができる。
【0029】
これにより、本発明では、偏光従属素子を用いて両方向(2-way)手法のように同一光回線を2回以上往復する量子暗号キー分配(QKD)システムを構成するとき、偏光の歪みに関係なく光信号を制御することが可能になる。
【0030】
より具体的に、本発明によれば、量子暗号キー分配(QKD)システムにおいて受信機120で位相変調器(PM)及び光強度変調器(IM)のような偏光従属素子を制御する際、連続した1回の制御信号で偏光非従属的に制御することが可能になる。
【0031】
本発明に関する理解を助けるために詳細な説明の一部として含まれる添付の図面は、本発明に係る実施例を提供し、詳細な説明と共に本発明の技術的思想を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一実施例による量子暗号キー分配システム(100)を説明するための構成図である。
【
図2】本発明の一実施例による量子暗号キー分配システム(100)を説明するための構成図である。
【
図3】本発明の一実施例による量子暗号キー分配システム(100)の具体的な構成を説明するための図である。
【
図4A】本発明の一実施例による量子暗号キー分配システム(100)において偏光従属素子を制御する制御信号を説明するためのグラフである。
【
図4B】本発明の一実施例による量子暗号キー分配システム(100)において偏光従属素子を制御する制御信号を説明するためのグラフである。
【
図5】本発明の一実施例による量子暗号キー分配システム(100)において受信機(120)の偏光従属素子(123)の配置構造を例示する図である。
【
図6】本発明の一実施例による量子暗号キー分配システム(100)における送信機(110)及び受信機(120)を例示する構成図である。
【
図7】本発明の一実施例による量子暗号キー分配システム(100)における送信機(110)及び受信機(120)を例示する構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、様々な変換を加えることができ、様々な実施例を有することができるところ、以下では特定実施例を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0034】
以下の実施例は、本明細書で記述された方法、装置及び/又はシステムに対する包括的な理解を助けるために提供される。ただし、これは例示に過ぎず、本発明を制限するものではない。
【0035】
本発明の実施例を説明するとき、本発明に関連した公知技術についての具体的な説明が本発明の要旨を却って曖昧にし得ると判断される場合には、その詳細な説明を省略するものとする。そして、後述される用語は、本発明における機能を考慮して定義された用語であり、それらはユーザ、運用者の意図又は慣例などによって変わってもよい。したがって、その定義は本明細書全般にわたる内容に基づいて下されるべきであろう。詳細な説明で使われる用語は、単に本発明の実施例を記述するためのものであり、決して制限的であってはならない。特に断りのない限り、単数形態の表現は複数形態の意味も含む。本説明において、“含む”又は“備える”のような表現は、ある特性、数字、段階、動作、要素、これらの一部又は組合せを指すためのものであり、記述された以外の一つ又はそれ以上の他の特性、数字、段階、動作、要素、これらの一部又は組合せの存在又は可能性を排除するものとして解釈されてはならない。
【0036】
また、第1、第2などの用語は様々な構成要素を説明するために使用できるが、これらの構成要素は前記用語によって限定されるものではなく、これらの用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使用される。
【0037】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。
【0038】
図1には、本発明の一実施例による量子暗号キー分配システム100の構成図が例示されている。
【0039】
図1に見られるように、本発明の一実施例による量子暗号キー分配システム100は、送信機110、受信機120及び量子チャネル130を含んで構成されてよく、前記送信機110と前記受信機120とは、前記量子チャネル130を通じて光信号をやり取りしながら量子暗号キーを生成し共有する。
【0040】
このとき、前記送信機110及び前記受信機120はサーバーであるか、前記サーバーに接続するクライアント又は端末装置であってもよく、又はゲートウェイ、ルータなどの通信用装備であるか、ひいては移動性を有する携帯型装置であってもよく、その他にも、量子暗号キーを生成し共有して通信を行うことができる様々な装置を用いて構成されてもよい。
【0041】
また、前記量子チャネル130は、前記送信機110と前記受信機120との間に備えられて光信号を伝達する。前記量子チャネル130は、光ファイバ(optical fiber)を用いて構成されてよいが、本発明は必ずしもこれに限定されず、その他にも光信号を伝達できる媒体であればいずれも前記量子チャネル130を構成するのに用いられてよい。
【0042】
これにより、前記送信機110と前記受信機120は、BB84プロトコルなどの様々なプロトコルを用いて、前記光信号の位相、偏光などを用いて量子暗号キーを生成するのに必要な情報を交換し、量子暗号キーを生成して共有し、攻撃者140の量子暗号キーの奪取及びハッキングの試みを効果的に防止することができる。
【0043】
さらに、量子暗号通信システムでは、前記量子暗号キー分配システム100で生成された量子暗号キーを用いて暗号化及び復号化を行いながら通信を行うことにより、通信システムの保安性を強化させることができる。
【0044】
また、
図2では、本発明の一実施例による量子暗号キー分配システム100のブロック図を例示している。
図2に見られるように、本発明の一実施例による量子暗号キー分配システム100は、送信機110と受信機120に対して量子暗号キーを分配する量子暗号キー分配システム100であって、光信号を、第1経路(P1)を通過する第1光信号と、前記第1経路(P1)よりも長い第2経路(P2)を通過する第2光信号とに分割して順次に伝送する送信機110、及び前記量子チャネル130を通じて入射した前記第1光信号及び前記第2光信号を、偏光従属素子123を経てファラデーミラー124で反射させ、再び前記偏光従属素子123を経て前記量子チャネル130を通じて前記送信機110に伝送する受信機120を含んで構成されてよい。
【0045】
このとき、本発明の一実施例による量子暗号キー分配システム100では、前記送信機110において前記第1経路(P1)の長さ(LP1)と前記第2経路(P2)の長さ(LP2)との差(dL=LP2-LP1)が、前記偏光従属素子123と前記ファラデーミラー124との間の距離(=D)の2倍より大きいか等しい値(dL≧2D)を有することを特徴とする。
【0046】
これにより、本発明の一実施例による量子暗号キー分配方法、装置及びシステムでは、両方向(2-way)構造のように光信号が同一光回線を往復する量子暗号キー分配システム100において偏光従属素子123を用いて受信機120などの装置を構成する場合、不連続する制御信号で2回以上制御を行う必要無しで、連続した1回の制御信号で偏光従属素子123に対する制御を行い、偏光従属特性による誤りを補正することができる。
【0047】
より具体的に、
図3を参照して、本発明の一実施例による量子暗号キー分配システム100をさらに詳しく説明する。
【0048】
まず、
図3に見られるように、前記送信機110は、光信号を生成する光源111、及び該光信号を前記第1光信号と前記第2光信号とに分割し、前記第1光信号を前記第1経路(P1)に出力し、前記第2光信号を前記第2経路(P2)に出力するビームスプリッター(Beam Splitter,BS)113を含んで構成されてよい。
【0049】
さらに、前記第2経路(P2)には、前記第2光信号の進行経路を延長させる遅延ライン(Delay Line,DL)115が備えられてよい。
【0050】
また、
図3に見られるように、前記送信機110には偏光ビームスプリッター(Polarized Beam Splitter,PBS)116が備えられ、前記第1経路(P1)を通じて進行した前記第1光信号を、第1偏光として偏光させ、前記第2経路(P2)を通じて進行した前記第2光信号を、前記第1偏光と垂直な第2偏光として偏光させることができる。
【0051】
このとき、前記偏光ビームスプリッター116では、前記受信機120から伝送された前記第1光信号を前記第2経路(P2)に進行させ、前記第2光信号を前記第1経路(P1)に進行させることができる。
【0052】
また、
図3に見られるように、前記受信機120では、前記第1光信号又は前記第2光信号が第1位相変調器123a、光強度変調器123bなどの偏光従属素子123を経て前記ファラデーミラー(Faraday Mirror,FM)124から反射されて再び前記偏光従属素子123を通る間に、前記偏光従属素子123の動作を制御するための制御信号として1回の連続した制御信号が印加されてよい。
【0053】
また、
図3に見られるように、前記受信機120には前記偏光従属素子123が複数個備えられてよく、このとき、前記第1経路(P1)の長さ(L
P1)と前記第2経路(P2)の長さ(L
P2)との差(dL=L
P2-L
P1)は、前記複数の偏光従属素子123のうち、前記ファラデーミラー124から遠くに位置するもの(例えば、
図3において第1位相変調器123a)と前記ファラデーミラー124との間の距離(=D)の2倍より大きいか等しい値(dL≧2D)を有することができる。
【0054】
さらに、前記受信機120には、前記複数の偏光従属素子123として第1位相変調器123a及び光強度変調器123bが含まれてよく、このとき、前記第1位相変調器123aは前記第2光信号に対してのみ位相を変調することができる。
【0055】
また、
図3を参照して、第2位相変調器(PM
B)114が第1経路(P1)に位置する場合には、前記受信機120において第1位相変調器123aは前記第1光信号に対してのみ位相を変調することができる。
【0056】
また、前記受信機120には、前記複数の偏光従属素子123として第1位相変調器123a及び光強度変調器123bが含まれてよく、このとき、前記光強度変調器123bは前記第1光信号及び前記第2光信号に対して光強度を変調することができる。
【0057】
以下、
図3を参照して、本発明の一実施例による量子暗号キー分配方法、装置及びシステム100を各構成要素別に分けてその動作をより詳しく説明する。
【0058】
まず、
図3に見られるように、本発明の一実施例による送信機110において、レーザー(Laser)生成装置などの光源111で生成された光信号は、サーキュレーター(Circulator,CIR)112を経てビームスプリッター(BS)113に入力されてよい。
【0059】
次いで、前記ビームスプリッター113は、入力された光信号を第1光信号と第2光信号とに分割し、前記第1光信号は、短い経路を有する第1経路(P1)に伝送し(
図3の丸付き数字3)、前記第2光信号は、遅延ライン(DL)を備えている第2経路(P2)に伝送する(
図3の丸付き数字2)。
【0060】
次いで、前記第1光信号と前記第2光信号はさらに偏光ビームスプリッター(PBS)116を経て量子チャネル130に入力される。
【0061】
このとき、前記第1経路(P1)の長さ(LP1)と、前記遅延ライン115を備えている第2経路(P2)の長さ(LP2)との差により、前記第2経路(P2)を通った第2光信号は、前記第2経路(P2)の長さ(LP2)と前記第1経路(P1)の長さ(LP1)との差(dL=LP2-LP1)だけの間隔をもって量子チャネル130に出力される。
【0062】
また、このとき、前記偏光ビームスプリッター(PBS)116により、前記第1経路(P1)を通った第1光信号の出力は垂直(Vertical,V)偏光を有することができ、前記第2経路(P2)を通った第2光信号の出力は、前記第1光信号の偏光と垂直な水平(Horizontal,H)偏光を有することができる。
【0063】
次いで、前記量子チャネル130を通じて受信機120に到達した第1光信号及び第2光信号は、前記量子チャネル130を通りながらそれぞれ任意の偏光V’及びH’に歪んでしまう。また、前記受信機120に入力された第1光信号及び第2光信号は、ストレージライン(Storage line,SL)、第1位相変調器(PMA)123a、光強度変調器(IM)123bを経てファラデーミラー(Faraday Mirror,FM)124に到達する。
【0064】
これにより、前記ファラデーミラー(FM)124では、入射する第1光信号及び第2光信号の偏光をそれぞれ90度回転して反射させるので、先に入射した第1光信号の偏光V’はH’に、後続して入射する第2光信号の偏光はH’からV’に変更して反射される。
【0065】
次いで、前記ファラデーミラー(FM)124から反射された第1光信号及び第2光信号は、前記光強度変調器(IM)123b及び第1位相変調器(PMA)123aに入力される。これにより、前記光強度変調器(IM)123bは、おとりデータ(Decoy state)を生成するために光信号の大きさを調節する。
【0066】
このとき、前記光強度変調器(IM)123bは、おとりデータ(Decoy state)を生成するために、前記第1光信号及び第2光信号の両方に対して光強度を変調することができる。
【0067】
また、前記第1位相変調器(PMA)123aは、暗号キー生成のために、入射した光信号のうち第2光信号に対してのみ位相を変更することができる。これにより、前記第1位相変調器(PMA)123aを通った第2光信号はV’からV’aに位相が変更される。
【0068】
次いで、前記第1光信号及び第2光信号は、可変減衰器(Variable Attenuator,VA)121を経て単一光子(又は、類似単一光子)に変換され、量子チャネル130を通じて再び送信機110に伝送される。
【0069】
これにより、前記送信機110に伝達された単一光子レベルの第1光信号及び第2光信号は、最初に受信機120に伝送される時に移動した光チャネルと同じ経路を経て再び伝送されるので、送信機110から受信機120に伝送される時に歪んだ偏光の程度と同じ偏光歪みが発生し、結果として、量子チャネル130で発生した偏光の歪みが打ち消される。
【0070】
その結果、前記第1光信号の偏光H’はHに、前記第2光信号の偏光V’aはVaの偏光に補正されて再び前記送信機110に到達する。
【0071】
次いで、送信機110の遅延ライン(DL)を備えている第2経路(P2)を通じて元々伝送された第2光信号は、ファラデーミラー(FM)124によって偏光が90度回転するので、前記偏光ビームスプリッター(PBS)116によって第1経路(P1)を通じて移動し、逆に、前記第1経路(P1)を通じて伝送された第1光信号は、前記偏光ビームスプリッター(PBS)116によって第2経路(P2)を通じて遅延ライン(DL)115を経て移動する。結果的に、前記第1光信号及び第2光信号は、送信機110のビームスプリッター(BS)113を基準に同一距離を移動することにより前記ビームスプリッター(BS)113に同時に到達し、第1位相変調器(PMA)123a、第2位相変調器(PMB)114などによる位相変化によって干渉を起こしてしまう。
【0072】
このとき、量子暗号キー分配システム100の受信機120において、偏光従属的な第1位相変調器(PMA)123a及び光強度変調器(IM)123bは、偏光従属特性を補償するために、入る時と出る時にそれぞれ2回の位相制御を行う。これにより、前記第1位相変調器(PMA)123a及び前記光強度変調器(IM)123bに入る光信号と出る光信号の場合、ファラデーミラー(FM)124によって90度の偏光差を持っているため、2回の位相制御によって偏光による位相制御誤差を補償することができる。
【0073】
ところが、前記量子暗号キー分配システム100において、送信機110から伝送される第1光信号及び第2光信号は、第1経路(P1)の長さ(LP1)と第2経路(P2)の長さ(LP2)との差(dL=LP2-LP1)分だけの間隔をもって受信機120に入射する。
【0074】
また、受信機120も、
図3に見られるように、ストレージライン(SL)122、第1位相変調器(PM
A)123a、光強度変調器(IM)123b、ファラデーミラー(FM)124の順に回路を構成できる。
【0075】
このとき、前記偏光従属素子123の配列順序は無関係で、即ち、ストレージライン(SL)122に続いて偏光従属素子123及びファラデーミラー(FM)124を連続的に構成する場合(
図3の丸付き数字1)、この構成において受信機120の第1位相変調器(PM
A)123a、光強度変調器(IM)123b、ファラデーミラー(FM)124を含む距離を‘D’とすれば、該Dを前記dLよりも1/2以上短く構成する場合に、前記第1光信号が第1位相変調器(PM
A)123aを経てファラデーミラー(FM)124に反射されて再び前記第1位相変調器(PM
A)123aを通過する時点まで、前記第2光信号は前記第1位相変調器(PM
A)123aに到達しなくなる。
【0076】
このとき、前記第1位相変調器(PMA)123aと光強度変調器(IM)123bの位置順序は変更されても構わない。これにより、前記光強度変調器(IM)123bが先に位置する場合、前記第1光信号が前記光強度変調器(IM)123bを経てファラデーミラー(FM)124に反射されて再び前記光強度変調器(IM)123bを通過する時点まで、前記第2光信号は前記光強度変調器(IM)123bに到達しなくなる。
【0077】
また、前記受信機120において前記第1位相変調器(PMA)123aは、第2光信号に対してのみ作動できる。これにより、前記DがdLよりも1/2以上短く構成される場合、前記第2光信号が前記第1位相変調器(PMA)123aを経てファラデーミラー(FM)124に反射されて再び前記第1位相変調器(PMA)123aに入る時間において、前記第1光信号は前記第1位相変調器(PMA)123aとファラデーミラー(FM)124との間に位置しなくなる。
【0078】
これにより、連続する1回の制御信号で前記第2光信号の位相を制御し、偏光歪みによる誤差を補償するために、前記第1光信号が前記第1位相変調器(PMA)123aを出た後に、前記第1位相変調器(PMA)123aに‘T’時間の間に制御信号を印加すれば、前記第2光信号は前記‘T’時間の間に前記第1位相変調器(PMA)123aに入り、ファラデーミラー(FM)124から反射後に再び前記第1位相変調器(PMA)123aを経て出るまでに2回の位相制御を受け、偏光による位相誤差を打ち消すことができる。
【0079】
このとき、前記‘T’は、次の式1のように算出されてよい。
T=2N/c+E(c:光回線において光の速度)
【0080】
また、前記受信機120において、おとりデータ(Decoy state)の生成のために、前記光強度変調器(IM)123bは前記第1光信号及び前記第2光信号の両方に対して実行されなければならず、これによって、前記第1光信号及び第2光信号が前記光強度変調器(IM)123bを経て前記ファラデーミラー(FM)124から反射されて再び前記光強度変調器(IM)123bを通過する瞬間まで連続する1回の制御信号をかけると、前記第1光信号及び前記第2光信号は2回の制御を受けることになり、偏光による位相誤差を打ち消すことができる。
【実施例】
【0081】
より具体的に、
図4Aと
図4Bでは、本発明の一実施例による量子暗号キー分配方法、装置及びシステムにおける光信号及び偏光従属素子を制御する制御信号を説明している。
【0082】
まず、
図4Aに見られるように、従来技術において第2光信号が受信機120に入力されて偏光従属素子123を通過する時点(S21)と、ファラデーミラー124から反射されて再び前記偏光従属素子123を通過する時点(S22)との間に、第1光信号が前記偏光従属素子123を通過するため(S12)、前記(S21)と前記(S22)を分けて個別に高速の制御信号(C11)、(C12)で制御しなければならないという不具合があった。
【0083】
これに対し、本発明の一実施例による量子暗号キー分配方法、装置及びシステムでは、
図4Bに見られるように、第2光信号が受信機120に入力されて偏光従属素子123を通過する時点(S21)と、ファラデーミラー124から反射されて再び前記偏光従属素子123を通過する時点(S22)との間に、前記第1光信号が位置しなくなり、前記S21と前記S22を統合して一つの低速制御信号(C11)で制御することができる。
【0084】
以下、
図3、
図4A及び
図4Bを参照して、本発明の一実施例による量子暗号キー分配方法、装置及びシステムをより詳細に説明する。
【0085】
また、以下では前記受信機120に偏光従属素子123として位相変調器(PMA)123aが備えられる場合を挙げて説明するが、本発明が必ずしもこれに限定されるものではない。
【0086】
まず、従来は、
図3のように第2位相変調器(PM
B)114が第2経路(P2)に位置している場合、
図4Aに見られるように、第1光信号が受信機120に入射した後(
図4AのS1)、第2光信号が前記第1位相変調器(PM
A)123aを通過する時点に第1制御信号を印加して前記第2光信号の位相を変調した(
図4Aの(S21))。
【0087】
また、前記第2光信号がファラデーミラー(FM)124から反射されて再び前記第1位相変調器(PM
A)123aを通過する時点に再び第1制御信号を印加して前記第2光信号の位相を変調し(
図4Aの(S22))、前記第2光信号が前記第1位相変調器(PM
A)123aを経る間に2回の位相制御を受けることにより、偏光による位相誤差を補正した。
【0088】
ところが、
図4Aに見られるように、前記第1光信号が前記第1位相変調器(PM
A)123aを通過し、前記ファラデーミラー(FM)124から反射されて再び前記第1位相変調器(PM
A)123aに到達する前に、前記第2光信号が前記第1位相変調器(PM
A)123aに到達することがあった(
図4Aの(S21))。
【0089】
このため、従来では前記第1位相変調器(PMA)123aに対して前記(S21)時点に前記第2光信号に対する第1制御信号を印加した後に除去し、前記(S22)時点に前記第2光信号に対する第2制御信号を印加しなければならないところ、前記第1光信号と第2光信号に対する適切な制御のためには、前記第1位相変調器(PMA)123aに対する制御信号を高速で変換しながら前記第1光信号及び前記第2光信号に対する正確な制御を行わなければならない不具合があった。
【0090】
これに対し、本発明の一実施例による量子暗号キー分配方法、装置及びシステムでは、送信機110において第1経路(P1)の長さ(LP1)と第2経路(P2)の長さ(LP2)との差(dL=LP2-LP1)が、受信機120における偏光従属素子123とファラデーミラー124との間の距離(=D)の2倍より大きいか等しい値(dL≧2D)を有するようにすることによって、連続した1回の制御信号で前記偏光従属素子123に対する制御を行い、偏光従属特性による誤りを補正することができる。
【0091】
より具体的に、
図4Bに見られるように、本発明では、前記受信機120に入射した第1光信号が前記第1位相変調器(PM
A)123aを経て(
図4BのS11)前記ファラデーミラー(FM)124から反射されて再び前記第1位相変調器(PM
A)123aを通過する時点まで(
図4BのS12)、前記第2光信号が前記位相変調器(PM
A)123aに到達できない。
【0092】
これにより、前記第2光信号が前記受信機120に入射する時点に、第1光信号が既に前記第1位相変調器(PM
A)123aを通過するので、
図4Bに見られるように、前記第2光信号に対して連続する1回の制御信号で前記第1位相変調器(PM
A)123aに対する制御を行うことにより、偏光従属特性による誤りを効果的に補正することができる(
図4Bの(C11))。
【0093】
また、以下では前記受信機120に偏光従属素子123として光強度変調器(IM)123bが備えられる場合を挙げて説明するか、本発明が必ずしもこれに限定されるものではない。
【0094】
まず、従来では、
図4Aに見られるように、第1光信号が受信機120に入射すると(
図4AのS1)、前記第1光信号が前記光強度変調器(IM)123bを通過する時点に第1制御信号を印加して前記第1光信号の光強度を変調した(
図4Aの(S11))。
【0095】
また、前記第1光信号がファラデーミラー(FM)124から反射されて再び前記光強度変調器(IM)123bを通過する時点に再び第1制御信号を印加して前記第1光信号の光強度を変調し(
図4Aの(S12))、前記第1光信号が前記光強度変調器(IM)123bを経る間に2回の位相制御を受けることにより、偏光による位相誤差を補正した。
【0096】
ところが、
図4Aに見られるように、前記第1光信号が前記光強度変調器(IM)123bを通過して前記ファラデーミラー(FM)124から反射されて再び前記光強度変調器(IM)123bに到達する前に、前記第2光信号が前記光強度変調器(IM)123bに到達することがあった(
図4Aの(S21))。
【0097】
このため、従来は、前記光強度変調器(IM)123bに対して前記
図4Aの(S11)時点に前記第1光信号に対する第1制御信号を印加した後に除去し、前記
図4Aの(S21)時点に前記第2光信号に対する第2制御信号を印加しなければならないところ、前記第1光信号及び第2光信号に対する適切な制御のためには、前記光強度変調器(IM)123bに対する制御信号を高速で変換しながら前記第1光信号及び前記第2光信号に対する正確な制御を行わなければならない不具合があった。
【0098】
これに対し、本発明の一実施例による量子暗号キー分配方法、装置及びシステムでは、送信機110において、第1経路(P1)の長さ(LP1)と第2経路(P2)の長さ(LP2)との差(dL=LP2-LP1)が、受信機120における偏光従属素子123とファラデーミラー124との間の距離(=D)の2倍より大きいか等しい値を有するようにすることによって(dL≧2D)、連続した1回の制御信号で前記偏光従属素子123に対する制御を行い、偏光従属特性による誤りを補正することができる。
【0099】
これにより、本発明では、両方向(2-way)量子暗号キー分配システム100において、例えば、送信機110に位置する干渉計の遅延ライン(DL)115の長さと、受信機120に位置するファラデーミラー(FM)124と第1位相変調器(PMA)123a、光強度変調器(IM)123bとの間の間隔を調節し、送信機110から伝送した第1光信号及び第2光信号のうち、第1光信号が受信機120のファラデーミラー(FM)124に反射された後、第2光信号が受信機120の第1位相変調器(PMA)123aに到着する前に受信機120の第1位相変調器(PMA)123aを抜け出し得るようにし、第2光信号が第1位相変調器(PMA)123a及び光強度変調器(IM)123bに影響を受ける間に前記第1光信号が影響を受けないように受信機120及び送信機110を設計する。
【0100】
上記では、第1位相変調器123aと光強度変調器123bを取り上げて、第1光信号及び第2光信号に対する制御を行う場合を説明したが、本発明が必ずしもこれに限定されるものではなく、その他様々な偏光従属素子123にも適用可能である。
【0101】
さらに、本発明の一実施例による量子暗号キー分配システム100において、前記受信機120における前記複数の偏光従属素子123は、
図3に示すように連続して配置されてもよいが(
図3の第1位相変調器123a、光強度変調器123b)、その他にも、
図5に示すように、光回線を分離したり或いは方向を変更するビームスプリッター(BS)(
図5の(a))、サーキュレーター(Circulator)(
図5の(b))などの光素子を用いて離隔して配置するなど、様々な形態で構成されてもよく、このとき、各偏光従属素子123は、用いられる用途に応じて第1光信号及び第2光信号を個別に変調したり、又は第1光信号及び第2光信号の両方を変調することができる。
【0102】
また、
図6では、本発明の一実施例による量子暗号キー分配システム100の送信機110の構成図を例示しており、
図7では、本発明の一実施例による量子暗号キー分配システム100の受信機120の構成図を例示している。
【0103】
上の本発明の一実施例による量子暗号キー分配システム100に関する説明において前記送信機110及び受信機120について詳しく説明したところ、以下では本発明の一実施例による量子暗号キー分配システム100の送信機110及び受信機120の構成及び動作を、肝心な要旨を中心に説明する。
【0104】
まず、
図6に見られるように、本発明の一実施例による量子暗号キー分配システム100の送信機110は、量子暗号キー分配システム100に備えられて受信機120と量子暗号キーを分配する送信機110であって、光信号を生成する光源111、前記光信号を第1光信号と第2光信号とに分割し、前記第1光信号を前記第1経路(P1)に出力し、前記第2光信号を前記第2経路(P2)に出力するビームスプリッター113、及び前記第2経路(P2)に備えられて前記第2光信号の進行経路を延長させる遅延ライン115を含んで構成されてよい。
【0105】
このとき、前記第1経路(P1)の長さ(LP1)と前記第2経路(P2)の長さ(LP2)との差(dL=LP2-LP1)は、前記受信機120に備えられる偏光従属素子123と前記ファラデーミラー124との間の距離(=D)の2倍より大きいか等しい値(dL≧2D)を有する。
【0106】
また、
図7に見られるように、本発明の一実施例による量子暗号キー分配システム100の受信機120は、量子暗号キー分配システム100に備えられて送信機110と量子暗号キーを分配する受信機120であって、光信号の偏光によって動作特性が変わる偏光従属素子123、及び入射した光信号の偏光を90度回転させて反射させるファラデーミラー124を含んで構成されてよく、このとき、前記送信機110で生成された光信号が、第1経路(P1)を通過する第1光信号と、前記第1経路(P1)よりも長い第2経路(P2)を通過する第2光信号とに分割されて順次に伝送されると、量子チャネル130を通じて入射した前記第1光信号及び前記第2光信号を、前記偏光従属素子123を経て前記ファラデーミラー124で反射させ、再び前記偏光従属素子123を経て前記量子チャネル130を通じて前記送信機110に伝送する。
【0107】
このとき、前記送信機110において前記第1経路(P1)の長さ(LP1)と前記第2経路(P2)の長さ(LP2)との差(dL=LP2-LP1)は、前記偏光従属素子123と前記ファラデーミラー124との間の距離(=D)の2倍より大きいか等しい値(dL≧2D)を有する。
【0108】
これにより、本発明の一実施例による量子暗号キー分配方法、装置及びシステムでは、両方向(2-way)構造のように光信号が同一光回線を往復する量子暗号キー分配システム100において、偏光従属素子123を用いて受信機120などの装置を構成する場合、連続した1回の制御信号で前記偏光従属素子123に対する制御を行い、偏光従属特性による誤りを補正することが可能になる。
【0109】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎず、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で様々な修正及び変形が可能であろう。したがって、本発明に記載された実施例は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく説明するためのものであり、このような実施例に限定されない。本発明の保護範囲は、添付する特許請求の範囲によって解釈されるべきであり、それと同等な範囲内にある技術思想はいずれも本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきであろう。