(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】トリゴネリンを使用して細胞内NAD+を産生する組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/455 20060101AFI20240927BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240927BHJP
A61K 36/48 20060101ALI20240927BHJP
A61K 36/74 20060101ALI20240927BHJP
A61K 36/02 20060101ALI20240927BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20240927BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20240927BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20240927BHJP
【FI】
A61K31/455
A61P43/00 111
A61P43/00 107
A61K36/48
A61K36/74
A61K36/02
A61K36/185
A23L33/10
A23L33/105
(21)【出願番号】P 2021577012
(86)(22)【出願日】2020-07-03
(86)【国際出願番号】 EP2020068786
(87)【国際公開番号】W WO2021004921
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-06-27
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】ファイギ, ジェローム
(72)【発明者】
【氏名】メンブレス, マテュー
(72)【発明者】
【氏名】ソレンティーノ, ヴィンチェンツォ
(72)【発明者】
【氏名】クリステン, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ジネール, マリア ピラール
(72)【発明者】
【氏名】モコ, ソフィア
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-529469(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108014109(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A23L
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物において細胞内ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)を増加させる方法において使用するための組成物であって、
前記方法が、前記組成物を前記哺乳動物に投与する工程を含み、
トリゴネリンを本質的に含む又はトリゴネリンを含む、組成物。
【請求項2】
経腸投与用に配合されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
食品製品、栄養補助食品、経口栄養補助食品(ONS)、医療用食品、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
トリゴネリンの少なくとも一部分が単離されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
トリゴネリンの少なくとも一部分が、前記組成物中の植物抽出物又は藻類抽出物によって提供される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
トリゴネリンの少なくとも一部分が、前記組成物中のトリゴネリン豊富な植物抽出物又は藻類抽出物によって提供される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記トリゴネリンが、コーヒー、コロハ、又は藻類の抽出物から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
トリゴネリンが、少なくとも
25%~50%のトリゴネリンを含むコロハの抽出物から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
トリゴネリンが、化学的に合成されたものであり、少なくとも
90%のトリゴネリンを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記哺乳動物がヒトであり、前記方法が、前記ヒトの体重1kg当たり1.0mg~10.0gのトリゴネリンを提供する量の前記組成物を投与することを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記哺乳動物がヒト以外の哺乳動物であり、前記方法が、前記哺乳動物の体重1kg当たり1.0mg~1.0gのトリゴネリンを提供する量の前記組成物を投与することを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前
記細胞の少なくとも一部分が、肝臓、腎臓、脳、及び骨格筋からなる群から選択される少なくとも1つの身体部分の一部である、請求項1~
11のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物の、単位剤形。
【請求項14】
食品製品、栄養補助食品、経口栄養補助食品(ONS)、医療用食品、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項
13に記載の単位剤形。
【請求項15】
前記方法が、(i)1つ以上の細胞におけるミトコンドリアエネルギーの増加、(ii)1つ以上の細胞における代謝疲労に関連する生理学的状態の改善、(iii)1つ以上の細胞における代謝疲労の治療又は予防、(iv)筋肉疲労の治療又は予防、(v)運動性の改善、及び(vi)寿命の延びからなる群から選択される少なくとも1つの結果を達成する
、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[背景技術]
[0001]本開示は、概して、トリゴネリンを使用して細胞内NAD+/NADHを産生する組成物及び方法に関する。細胞及び組織における細胞内NAD+レベルを増加させて、細胞及び組織の生存並びに/又は細胞及び組織全体の健康を改善することができる。
【0002】
[0002]ニコチン酸及びニコチンアミドは、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)のビタミン形態である。真核生物は、キヌレニン経路を介してトリプトファンからNAD+をデノボ合成することができ、ナイアシンの補充は、トリプトファン不足の食事を摂る集団において生じ得るペラグラを予防する。ニコチン酸は、ホスホリボシル化されてニコチン酸モノヌクレオチド(NaMN)になり、これが次にアデニル化されてニコチン酸アデニンジヌクレオチド(NaAD)を生成し、これが次にアミド化されてNAD+を生成する。
【0003】
[0003]NAD+は、還元-酸化反応及びエネルギー代謝に関連した複数種の酵素の機能に不可欠な酵素補因子である。NAD+は、アミノ酸、脂肪酸、及び炭水化物の細胞代謝において電子担体として機能する。NAD+は、サーチュイン(下位生物における代謝機能及び寿命延長に関与するタンパク質脱アセチル化酵素ファミリー)の活性化因子及び基質として機能する。NAD+の補酵素活性、並びにその生合成及びバイオアベイラビリティの厳密な調節により、NAD+が老化プロセスに関与していることは明らかであり、代謝をモニタリングするのに重要な系となっている。
【0004】
[発明の概要]
[0004]本開示は、トリゴネリンを本質的に含む又はトリゴネリンを含む組成物を提供する。一部の実施形態では、トリゴネリンの少なくとも一部分は、組成物中の植物抽出物、例えば、コーヒー抽出物、麻抽出物、カボチャ種子抽出物、及び/又はコロハ種子抽出物のうちの1種以上のうちの1種以上、例えば、トリゴネリン豊富な植物抽出物によって提供される。
【0005】
[0005]好ましい実施形態では、トリゴネリンの少なくとも一部分は、コロハ抽出物から提供される。
【0006】
[0006]一部の実施形態では、トリゴネリンの少なくとも一部分は、藻類素材、例えば、コンブ(Laminariaceae)抽出物から提供される。
【0007】
[0007]一実施形態では、組成物は、食品製品、栄養補助食品、経口栄養補助食品(ONS)、医療用食品、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0008】
[0008]別の実施形態では、本開示は、哺乳動物において、細胞内ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)を増加させるための方法であって、トリゴネリンを本質的に含む又はトリゴネリンを含む組成物を、NAD+の生合成を増加させるのに有効な量で、哺乳動物に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0009】
[0009]NAD+の生合成の増加は、個体、例えば、ヒト(例えば、治療を受けているヒト)、ペット若しくはウマ(例えば、治療を受けているペット又はウマ)、又は畜牛若しくは家禽(例えば、農業で使用されている畜牛又は家禽)に対して、1つ以上の利点を提供することができる。上記1つ以上の利点は、ミトコンドリアエネルギーの増加、代謝疲労の治療又は予防、筋肉疲労の治療又は予防、1つ以上の細胞における代謝疲労に関連する生理学的状態の改善、運動性の改善、又は寿命の改善のうちの少なくとも1つを含むことができる。好ましくは、NAD+の生合成は、哺乳動物の1つ以上の細胞、例えば、肝臓、腎臓、脳、及び骨格筋からなる群から選択される少なくとも1つの身体部分の一部である1つ以上の細胞において増加される。
【0010】
[0010]一実施形態では、組成物は、経腸投与される。
【0011】
[0011]一実施形態では、組成物は、食品製品、栄養補助食品、経口栄養補助食品(ONS)、医療用食品、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0012】
[0012]別の実施形態では、本開示は、トリゴネリンを本質的に含む又はトリゴネリンを含む組成物の単位剤形を提供し、当該単位剤形は、哺乳動物においてNAD+の生合成を増加させるのに有効な量のトリゴネリンを含有する。組成物は、食品製品、栄養補助食品、経口栄養補助食品(ONS)、医療用食品、及びこれらの組み合わせからなる群から選択できる。
【0013】
[0013]別の実施形態では、本開示は、(i)1つ以上の細胞におけるミトコンドリアエネルギーの増加、(ii)1つ以上の細胞における代謝疲労に関連する生理学的状態の改善、(iii)1つ以上の細胞における代謝疲労の治療又は予防、(iv)筋肉疲労の治療又は予防、(v)運動性の改善、及び(vii)寿命の改善からなる群から選択される少なくとも1つの結果を達成する方法を提供する。好ましくは、1つ以上の細胞の少なくとも一部分は、肝臓、腎臓、脳、及び骨格筋からなる群から選択される少なくとも1つの身体部分の一部である。本方法は、トリゴネリンを本質的に含む又はトリゴネリンを含む組成物を、NAD+の生合成を増加させるのに有効な量で、個体に経口投与する工程を含む。
【0014】
[0014]本開示によって提供される1つ以上の実施形態の利点は、酸化的代謝に関する効果を増強すること、及びDNA損傷を防ぐことである。
【0015】
[0015]本開示によって提供される1つ以上の実施形態の別の利点は、年齢とともに減少するNAD+プールを補充することである。
【0016】
[0016]本開示によって提供される1つ以上の実施形態の更に別の利点は、老化に伴う代謝の減速を補うのを助けることである。
【0017】
[0017]本開示によって提供される1つ以上の実施形態の別の利点は、脂肪酸代謝を高めるのを助けることである。
【0018】
[0018]本開示によって提供される1つ以上の実施形態の更に別の利点は、体が脂肪を代謝し、除脂肪体重を増加させるのを助けることである。
【0019】
[0019]本開示によって提供される1つ以上の実施形態の別の利点は、心臓の健康の維持を助けることである。
【0020】
[0020]本開示によって提供される1つ以上の実施形態の更に別の利点は、血液中の健康なLDLコレステロールレベル及び脂肪酸レベルの支持に役立つことである。
【0021】
[0021]追加の特徴及び利点は、以降の発明の詳細な説明及び図面に記載され、これらにより明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
[0022]
【
図1】トリゴネリンでの処理時のヒト及びゼブラフィッシュにおけるNAD+濃度の酵素定量。 Figure1のAは、用量5μM、50μM、500μM、及び1mMのトリゴネリンで6時間処理したヒト骨格筋筋管(HSMM)におけるNAD+濃度の酵素定量を示す。 Figure1のBは、用量500μM及び1mMのトリゴネリンで16時間処理したゼブラフィッシュ幼生(DPF4)におけるNAD+濃度の酵素定量を示す。 #、
*は、対照との差を示す(一元配置分散分析、p<0.1、p<0.05)。データは平均±SEMとして表した。
【
図2-1】同位体で標識したトリゴネリンでの処理時の筋管におけるNAD+濃度及び安定同位体標識のNAD+への取り込みについての液体クロマトグラフィー-質量分析測定。 Figure2のAは、2名の異なるドナーからのヒト骨格筋筋管(HSMM)を用量500μMのトリゴネリンで6時間処理したときのNAD+の、対照と比較した相対濃度を、液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC-MS)で測定した結果を示す。 Figure2のBは、同位体標識した500μMのトリゴネリン(13C-カルボニル、C2H3)で6時間処理したときのNAD+(13C-カルボニル)の部分標識を示す(Σi.m
i/(n.Σm
i)、i=アイソトポログ、m=アイソトポログの存在度)。天然の存在度に対して補正し、最大取り込みに対して正規化したものと対象と比較し、百分率で表示する。LC-MSで測定した。 Figure2のCは、NAD+(13C-カルボニル)への標識の取り込みを評価するために使用したトリゴネリン安定同位体トレーサー(13C-カルボニル、C2H3)の構造を示す。いずれの構造でも、同位体標識した原子(Dは重水素又は2Hに対応し、13Cは炭素-13に対応する)が強調表示されている。
**、
****は、それぞれの対照との差を示す(対応のないt検定、それぞれp<0.01、p<0.0001)。データは平均±SEMとして表した(n=3)。
【
図2-2】同位体で標識したトリゴネリンでの処理時の筋管におけるNAD+濃度及び安定同位体標識のNAD+への取り込みについての液体クロマトグラフィー-質量分析測定。 Figure2のAは、2名の異なるドナーからのヒト骨格筋筋管(HSMM)を用量500μMのトリゴネリンで6時間処理したときのNAD+の、対照と比較した相対濃度を、液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC-MS)で測定した結果を示す。 Figure2のBは、同位体標識した500μMのトリゴネリン(13C-カルボニル、C2H3)で6時間処理したときのNAD+(13C-カルボニル)の部分標識を示す(Σi.m
i/(n.Σm
i)、i=アイソトポログ、m=アイソトポログの存在度)。天然の存在度に対して補正し、最大取り込みに対して正規化したものと対象と比較し、百分率で表示する。LC-MSで測定した。 Figure2のCは、NAD+(13C-カルボニル)への標識の取り込みを評価するために使用したトリゴネリン安定同位体トレーサー(13C-カルボニル、C2H3)の構造を示す。いずれの構造でも、同位体標識した原子(Dは重水素又は2Hに対応し、13Cは炭素-13に対応する)が強調表示されている。
**、
****は、それぞれの対照との差を示す(対応のないt検定、それぞれp<0.01、p<0.0001)。データは平均±SEMとして表した(n=3)。
【
図3】トリゴネリン(Trig)処理時の肝臓及び筋肉におけるNAD+取り込みの酵素定量。強制経口投与(Figure3のA、Figure3のC)又は腹腔内投与(Figure3のB、Figure3のD)により250mg/kgのトリゴネリンを受けてから120分後のマウスにおけるNAD+の酵素定量。
*は、対照との差を示す(対応のないt検定、p<0.05)。データは平均±SEMとして表した。
【
図4】化学合成したトリゴネリンでの又はトリゴネリン豊富なコロハ種子抽出物での処理後の、ヒト初代筋芽細胞において測定されたNAD
+。 Figure4のAは、異なる用量の合成トリゴネリン一水和物で16時間処理したヒト骨格筋筋管(HSMM)及びNAD
+の定量を示す。 Figure4のBは、トリゴネリン豊富なコロハ種子抽出物(40.45%トリゴネリン)を異なる用量で用い16時間処理したヒト骨格筋筋管(HSMM)及びNAD+の定量を示す。
*、
**、
****は、対照との差を示す(一元配置分散分析、それぞれp<0.05、p<0.01、p<0.001)。データは平均±SDとして表した。
【
図5】300mg/kgのトリゴネリンクロリド(Trig)又は等モル量のコロハ種子抽出物の強制経口投与の120分後に測定したC57BL/6JRjマウスの肝臓におけるNAD+レベル。
*、
**、
****は、対照との差を示す(一元配置分散分析、それぞれp<0.05、p<0.01、p<0.001)。データは平均±SDとして表した。
【
図6】1mMのトリゴネリンクロリド(Trig)で処理した1日目の成体ワーム、及び8日目の高齢ワームで測定した線虫(C.elegans)全溶解物のNAD+レベルの、日齢を合わせた対照との比較。
*、
**、
****は、対照との差を示す(一元配置分散分析、それぞれp<0.05、p<0.01、p<0.001)。データは平均±SDとして表した。
【
図7-1】線虫の生存率、平均速度、距離、及び運動性。 Figure7のAは、1mMのトリゴネリンクロリド(Trig)で処理した線虫の生存曲線は、寿命が21%延びている。 Figure7のBは、1mMのトリゴネリンクロリドで処理したワームの成体期の1日目に実施した自発的運動性アッセイ(spontaneous mobility assay)で測定された平均速度の対照との比較。 Figure7のCは、高齢期における自発的運動性アッセイ中に移動した距離。 Figure7のDは、8日目及び11日目の老齢ワームで評価した刺激後運動スコアにより、物理的刺激に応答したワームの割合を示す。
*、
**は、それぞれの対照との差を示す(スチューデント検定、それぞれp<0.05、p<0.01)。 Figure7のA及びDでは、データは平均±SDとして表した。 Figure7のB及びCでは、データは平均±SEMとして表した。
【
図7-2】線虫の生存率、平均速度、距離、及び運動性。 Figure7のAは、1mMのトリゴネリンクロリド(Trig)で処理した線虫の生存曲線は、寿命が21%延びている。 Figure7のBは、1mMのトリゴネリンクロリドで処理したワームの成体期の1日目に実施した自発的運動性アッセイ(spontaneous mobility assay)で測定された平均速度の対照との比較。 Figure7のCは、高齢期における自発的運動性アッセイ中に移動した距離。 Figure7のDは、8日目及び11日目の老齢ワームで評価した刺激後運動スコアにより、物理的刺激に応答したワームの割合を示す。
*、
**は、それぞれの対照との差を示す(スチューデント検定、それぞれp<0.05、p<0.01)。 Figure7のA及びDでは、データは平均±SDとして表した。 Figure7のB及びCでは、データは平均±SEMとして表した。
【
図8】線虫のミトコンドリアDNA対核DNA比(mt/nDNA)
図8は、8日目の老齢ワームにおける核でコードされている遺伝子(act-1)に対するミトコンドリアでコードされている遺伝子(nduo-1)の比を示す。
*は、対照との差を示す(スチューデント検定、p<0.05)。データは平均±SDとして表した。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[0044]定義
[0045]以下、いくつかの定義を示す。しかしながら定義が以下の「実施形態」の項にある場合もあり、上記の見出し「定義」は、「実施形態」の項におけるそのような開示が定義ではないことを意味するものではない。
【0024】
[0046]本明細書に記載する全ての百分率は、別途記載のない限り、組成物の総重量によるものである。本明細書で使用するとき、「約」、「およそ」、及び「実質的に」は、数値範囲内、例えば、参照数字の-10%から+10%の範囲内、好ましくは-5%から+5%の範囲内、より好ましくは、参照数字の-1%から+1%の範囲内、最も好ましくは参照数字の-0.1%から+0.1%の範囲内の数を指すものと理解される。
【0025】
[0047]本明細書における全ての数値範囲は、その範囲内の全ての整数又は分数を含むと理解されるべきである。更に、これらの数値範囲は、この範囲内の任意の数又は数の部分集合を対象とする請求項をサポートすると解釈されたい。例えば、1~10という開示は、1~8、3~7、1~9、3.6~4.6、3.5~9.9などの範囲をサポートするものと解釈されたい。
【0026】
[0048]本開示及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「1つの」、すなわち「a」、「an」及び「the」には、別段の指示がない限り、複数の参照物も含まれる。したがって、例えば、「1つの構成成分(a component)」又は「その構成成分(the component)」についての言及は、2つ以上の構成成分を含む。
【0027】
[0049]用語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含んでいる(comprising)」は、排他的なものではなく、他を包含し得るものとして解釈されるべきである。同様にして、用語「含む(include)」、「含む(including)」及び「又は(or)」は全て、このような解釈が文脈から明確に妨げられない限りは他を包含し得るものであると解釈される。しかしながら、本明細書に開示されている組成物は、本明細書において具体的に開示されていない要素を含まない場合がある。したがって、「含む/備える(comprising)」という用語を用いた実施形態の開示は、特定されている構成要素「を本質的に含む(consisting essentially of)」実施形態、及び「を含む(consisting of)」実施形態の開示を含む。本明細書で開示される任意の実施形態は、本明細書で開示される任意の他の実施形態と組み合わせることができる。
【0028】
[0050]「X及び/又はY」という文脈で使用される用語「及び/又は」は、「X」若しくは「Y」又は「X及びY」と解釈されるべきである。同様に、「X又はYのうちの少なくとも1つ」は、「X」若しくは「Y」又は「X及びY」と解釈されるべきである。例えば「代謝疲労又は筋肉疲労のうちの少なくとも1つ」は、「代謝疲労」若しくは「筋肉疲労」、又は「代謝疲労及び筋肉疲労の両方」と解釈されるべきである。
【0029】
[0051]本明細書において使用する場合、用語「例」及び「例えば~など(such as)」は、その後に用語の列挙が続くときは特に、単に例示的かつ説明的なものにすぎず、排他的又は網羅的なものとみなされるべきではない。本明細書で使用するとき、別の状態「に関連する/伴う(associated with)」又は「と関連付けられる(linked with)」状態は、これらの状態が同時に起こることを意味し、好ましくは、これらの状態が同じ基礎症状によって引き起こされることを意味し、最も好ましくは、特定されている状態のうちの一方が他方の特定されている状態によって引き起こされることを意味する。
【0030】
[0052]用語「食品」、「食品製品」、及び「食品組成物」は、ヒトなどの個体による摂取が意図され、かかる個体に対して少なくとも1種の栄養素を提供する、製品又は組成物を意味する。食品製品は、典型的には、タンパク質、脂質、炭水化物のうちの少なくとも1種を含み、任意に1種以上のビタミン及びミネラルを含む。本明細書に記載されている多くの実施形態を含む本開示の組成物は、本明細書に開示されている要素、並びに本明細書に記載されている又は記載されていなくとも食生活において有用である任意の追加の又は任意選択の原材料、構成成分又は要素を含む、それらを含む(consisting of)、又はそれらを本質的に含むことができる。
【0031】
[0053]本明細書で使用するとき、用語「単離された」は、単離されていない場合に、例えば自然界においてその化合物と一緒に見られ得る、1種以上の別の化合物又は成分から分けられていることを意味する。好ましくは、例えば「単離された」は、特定されている化合物が、自然界で典型的に一緒に見られる細胞材料の少なくとも一部分から分離されていることを意味する。一実施形態では、単離された化合物は、何らかのその他の化合物を含まない。
【0032】
[0054]「予防」は、状態又は障害のリスク、発生率及び/又は重症度の低減を含む。「処置/治療(treatment)」、「処置する/治療する(treat)」及び「緩和すること(to alleviate)」という用語は、(標的とする病態又は障害の発症を予防する及び/又は遅らせる)予防用の(prophylactic)処置又は予防的な(preventive)処置と、診断された病態又は疾患を治癒させる、遅らせる、その症状を減弱する、かつ/又はその進行を止める治療的手段を含む、治癒的、治療的又は疾患修飾処置との両方;並びに疾患にかかるリスクを有する、又は疾患にかかったと推測される患者の処置に加えて、病気である、又は疾患若しくは医学的状態に罹患していると診断された患者の処置を含む。この用語は、必ずしも完治するまで対象が処置/治療されることを意味するものではない。「処置/治療」及び「処置/治療する」という用語はまた、疾患に罹患してはいないが不健康な状態を招きやすい可能性のある個体の健康を維持及び/又は促進することも指す。「処置/治療」、「処置/治療する」及び「緩和すること」という用語はまた、1つ以上の主たる予防的又は治療的手段の相乗作用、又は別の増強作用を含むことも意図している。「処置/治療」、「処置/治療する」及び「緩和すること」という用語は更に、疾患若しくは状態の、食事による管理(dietary management)、又は疾患若しくは状態の予防(prophylaxis若しくはprevention)のための、食事による管理を含むことも意図している。治療は患者に関連するものであってもよく、又は医師に関連するものであってもよい。
【0033】
[0055]本明細書で使用するとき、「単位剤形」という用語は、ヒト対象及び動物対象のための投与量単位として好適な物理的に小分けされた単位を指し、各単位は、薬学的に許容可能な希釈剤、担体、又はビヒクルとともに、所望の効果をもたらすのに十分な量の、所定量の本明細書に開示される組成物を含有する。単位剤形の仕様は、使用される具体的な化合物、達成しようとする効果、及びホスト体内の各化合物に関連する薬力学によって決まる。
【0034】
[0056]本明細書で使用するとき、「有効量」とは、欠乏を予防する、個体の疾患若しくは医学的状態を治療する、又はより一般的には、症状を軽減させる、疾患の進行を管理する、又は個体に対して栄養学的、生理学的若しくは医学的利益をもたらす、量である。相対的用語「改善された」、「増加」された、「増進された」などは、本明細書に開示される組成物、すなわちトリゴネリンを含む組成物の、トリゴネリンを有さないこと以外は同一である組成物と比較した効果を指す。本明細書で使用するとき、「促進すること」とは、本明細書に開示される組成物の投与前の値と比較して増強又は誘導することを指す。
【0035】
[0057]「対象」又は「個体」は、哺乳動物、好ましくはヒトである。用語「老齢」は、ヒトに関連して、少なくとも60歳、好ましくは63歳超、より好ましくは65歳超、最も好ましくは70歳超の年齢を意味する。ヒトの文脈での「中高年者(older adult)」という用語は、45歳以上、好ましくは50歳より上、より好ましくは55歳より上の出生後年齢を意味し、高齢の個体を含む。
【0036】
[0058]「運動性」(Mobility)は、ある場所から別の場所まで独力で安全に移動する能力である。
【0037】
[0059]「代謝疲労(metabolic fatigue)」は、1つ以上の細胞内の、基質の不足による、及び/又は1つ以上の細胞内の、ミトコンドリア機能を妨害する代謝産物の蓄積による、1つ以上の細胞(例えば、肝臓、腎臓、脳、骨格筋のうちの1種以上)におけるミトコンドリア機能の低下を意味する。
【0038】
[0060]本明細書で使用するとき、「トリゴネリン」は、1-メチルピリジン-1-イウム-3-カルボキシレートを含む任意の化合物であり、例えば、その任意の塩(例えば、塩化物若しくはヨウ化物塩)及び/又はその中の環が還元され得る形態を含む。
【0039】
[0061]一部の実施形態では、トリゴネリンは、式1の構造によって表され、ハロゲン(例えばヨウ化物又は塩化物)などのアニオン(X-)を有する塩を確立することができる。式1の構造は、3-カルボキシ-1-メチルピリジニウム、N-メチルニコチン酸、1-メチルピリジン-3-カルボン酸、1-メチルピリジン-1-イウム-3-カルボン酸、ピリジニウム3-カルボキシ-1-メチル-ヒドロキシド分子内塩(8CI)、1-メチルニコチン酸、3-カルボキシ-1-メチルピリジニウムとしても知られている。
【0040】
【0041】
[0062]一部の実施形態では、トリゴネリンは、その分子内塩形態の式2の構造によって表される。式2の構造はまた、カフェアリン(Caffearine)、ギネシン、N-メチルニコチネート、トリゲノリン、コフェアリン(Coffearine)、トリゴネリン、コフェアリン(Coffearin)、ベタインニコチネート、ニコチン酸ベタイン、1-メチルピリジニウム-3-カルボキシレート、ニコチン酸N-メチルベタイン、1-メチルピリジニオ-3-カルボキシレート、1-メチル-3-ピリジニウムカルボキシレート、N-メチルニコチン酸、トリゲネリン、カフェアリン(Caffearin)、3-カルボキシ-1-メチルピリジニウムヒドロキシド分子内塩、N’-メチルニコチネート、1-メチルピリジン-1-イウム-3-カルボキシレート、3-カルボキシ-1-メチルピリジニウムヒドロキシド分子内塩、ピリジニウム3-カルボキシ-1-メチル-ヒドロキシド分子内塩、1-メチルピリジン-3-カルボン酸、1-メチルピリジン-1-イウム-3-カルボン酸、1-メチルニコチネート、トリゴネリン(S)、N-メチル-ニコチネート、ピリジン-3-カルボキシ-1-メチル-ヒドロキシド分子内塩(8CI)、N’-メチルニコチン酸、N-メチルニコチン酸ベタイン、ニコチン酸N-メチルベタイン、1-メチル-ニコチン酸アニオン、ピリジニウム3-カルボキシ-1-メチル-分子内塩、1-メチル-5-(オキシラトカルボニル)ピリジニウム-3-イド、ピリジニウム3-カルボキシ-1-メチル-分子内塩、3-カルボキシ-1-メチル-ピリジニウムヒドロキシド分子内塩としても知られる。
【0042】
【0043】
[0063]一部の実施形態では、任意選択的に「トリゴネリン」は、その代謝産物及び熱分解生成物、例えば、ニコチンアミド、ニコチンアミドリボシド、1-メチルニコチンアミド、1-メチル-2-ピリドン-5-カルボキサミド(Me2PY)、1-メチル-4-ピリドン-5-カルボキサミド(Me4PY)、並びに1-メチル-ピリジニウム(NMP)及び1,4-ジメチルピリジニウムなどのアルキル-ピリジニウムを含むことができ;ただし、本明細書で後述するように、一部の実施形態は、これらのトリゴネリンの代謝産物及び熱分解生成物のうちの1種以上を除外する。
【0044】
[0064]実施形態
[0065]本開示は、トリゴネリンを本質的に含む組成物及びトリゴネリンを含む組成物を提供する。本開示の別の態様は、トリゴネリンを本質的に含む又はトリゴネリンを含む組成物の単位剤形であり、当該単位剤形は、必要とする哺乳動物において、細胞内NAD+を増加させるのに有効な量のトリゴネリンを含有する。
【0045】
[0066]NAD+の生合成の増加は、個体、例えば、ヒト(例えば、治療を受けているヒト)、ペット若しくはウマ(例えば、治療を受けているペット又はウマ)、又は畜牛若しくは家禽(例えば、農業で使用されている畜牛又は家禽)に対して、1つ以上の利点を提供することができる。上記1つ以上の利点は、ミトコンドリアエネルギーの増加、代謝疲労の治療又は予防、筋肉疲労の治療又は予防、1つ以上の細胞における代謝疲労に関連する生理学的状態の改善、運動性の改善、又は寿命の改善のうちの少なくとも1つを含むことができる。好ましくは、NAD+の生合成は、哺乳動物の1つ以上の細胞、例えば、肝臓、腎臓、脳、及び骨格筋からなる群から選択される少なくとも1つの身体部分の一部である1つ以上の細胞において増加される。一部の実施形態では、組成物は、老齢の成体又は高齢の個体に投与される。
【0046】
[0067]組成物は、薬理学的に有効な量のトリゴネリンを、薬学的に好適な担体中に含むことができる。水性液体組成物において、トリゴネリン濃度は、好ましくは、水性液体組成物の約0.05重量%~約4重量%、又は約0.5重量%~約2重量%、又は約1.0重量%~約1.5重量%の範囲である。
【0047】
[0068]特定の実施形態では、本方法は、血漿トリゴネリンを、例えば、血漿1L当たり50~6000nmol、好ましくは100~6000molの範囲のレベルまで増加させる処理である。本方法は、体重1kg当たり0.05mg~1g、好ましくは1mg~200mg、より好ましくは5mg~150mg、更により好ましくは10mg~120mg、又は最も好ましくは40mg~80mgの重量範囲で、トリゴネリンを毎日投与することを含み得る。
【0048】
[0069]げっ歯類などのヒト以外の哺乳動物については、一部の実施形態は、ヒト以外の哺乳動物の体重1kg当たり1.0mg~1.0gのトリゴネリン、好ましくは10mg~500mgのトリゴネリン、より好ましくは25mg~400mgのトリゴネリン、最も好ましくは50mg~300mgのトリゴネリンを提供する量の組成物を投与することを含む。
【0049】
[0070]ヒトについては、一部の実施形態は、ヒトの体重1kg当たり1.0mg~10.0gのトリゴネリン、好ましくは10mg~5.0gのトリゴネリン、より好ましくは50mg~2.0gのトリゴネリン、最も好ましくは100mg~1.0gのトリゴネリンを提供する量の組成物を投与することを含む。
【0050】
[0071]一部の実施形態では、トリゴネリンの少なくとも一部は単離されている。追加的に又は代替的に、トリゴネリンの少なくとも一部を化学的に合成することができる。
【0051】
[0072]一実施形態では、組成物は、少なくとも約90%がトリゴネリンである、好ましくは少なくとも約98%がトリゴネリンである、化学合成されたトリゴネリンを含む。
【0052】
[0073]好ましい実施形態では、トリゴネリンの少なくとも一部分は、植物又は藻類抽出物、例えば、コーヒー豆(例えば、コーヒー生豆抽出物)、大根、コロハ種子、エンドウ豆、麻実、オート麦、ジャガイモ、ダリア、シソ種(Stachys)、キョウチクトウ種(Strophanthus)、コンブ種(Laminariaceae)(特にゴヘイコンブ属(Laminaria)及びコンブ属(Saccharina))、海ヤシ(Postelsia palmaeformis)、ニセツルモ(Pseudochrada nagaii)、コンブモドキ(Akkesiphycus)、又はカイナンボク科(Dichapetalum cymosum)のうちの1種以上からの抽出物によって提供される。植物抽出物は、好ましくは、トリゴネリンが濃縮されている。すなわち、出発植物材料は、トリゴネリンに加えて1種以上の他の化合物を含み、濃縮植物材料は、上記1種以上の他の化合物のうちの少なくとも1種に対するトリゴネリンの比が、出発植物材料における比よりも高い。
【0053】
[0074]したがって、組成物の一部の実施形態は、組成物中にトリゴネリンの少なくとも一部を提供する植物素材及び/又は濃縮した植物素材を含む。
【0054】
[0075]好ましい実施形態では、組成物は、組成物中に少なくとも約25~50%のトリゴネリンを提供する濃縮したコロハ抽出物を含む。より好ましい実施形態では、組成物は、少なくとも約28~40%のトリゴネリンを提供する濃縮したコロハ抽出物を含む。
【0055】
[0076]本明細書で使用するとき、「トリゴネリンを本質的に含む組成物」は、トリゴネリンを含有し、NAD+産生に影響するトリゴネリン以外の何らかの追加の化合物を実質的に含まない、又は全く含まない。特定の非限定的な実施形態では、組成物は、トリゴネリンと1種以上の賦形剤とを含む。
【0056】
[0077]一部の実施形態では、トリゴネリンを本質的に含む組成物は、任意選択的に、他のNAD+前駆体、例えば、トリゴネリン誘導体;トリゴネリンの代謝産物及び熱分解生成物、例えば、ニコチンアミド、ニコチンアミドリボシド、1-メチルニコチンアミド、1-メチル-2-ピリドン-5-カルボキサミド(Me2PY)、1-メチル-4-ピリドン-5-カルボキサミド(Me4PY)、並びに1-メチル-ピリジニウム及び1,4-ジメチルピリジニウムなどのアルキル-ピリジニウム;ニコチン酸(「ナイアシン」);又はL-トリプトファンのうちの1種以上を実質的に含まない、又は全く含まない。
【0057】
[0078]一部の実施形態では、トリゴネリンを本質的に含む組成物は、任意選択的に、グリシン;グリシンの官能性誘導体;N-アセチルシステイン;又はN-アセチルシステインの官能性誘導体を、実質的に含まない、又は全く含まない。
【0058】
[0079]一部の実施形態では、トリゴネリンを本質的に含む組成物は、任意選択的に、クロロゲン酸;アントシアニン;25-ヒドロキシビタミンD3;ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP-1)阻害剤化合物;ピペコリン酸;ミオイノシトール;ピペリジン-2-カルボン酸;酒石酸;マンニット;レニエラテン;アデニン;ウロン酸(UA);アデニン;ウラシル;フリーデリン(frideline);ニコチンアミドリボシド;又はa-アミリンのうちの1種以上を実質的に含まない、又は全く含まない。
【0059】
[0080]一部の実施形態では、トリゴネリンを本質的に含む組成物は、任意選択的に、ケトン及びケトン前駆体、例えば中鎖トリグリセリド(MCT);MCT誘導体;ケトンエステル、例えば、モノエステル(例えば、(R)-3-ヒドロキシブチル-(R)-3-ヒドロキシブチレート)、及びアセト酢酸ジエステル(例えば、R,S-1,3-ブタンジオールアセト酢酸ジエステル);ケトン塩;BHB(β-ヒドロキシブチレート)及びその塩、例えばナトリウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、及びこれらの組み合わせ;D-BHB及びその塩、例えばナトリウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、及びこれらの組み合わせ;β-ヒドロキシペンタノエート及びその塩、例えばナトリウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、及びこれらの組み合わせ;D-β-ヒドロキシペンタノエート及びその塩、例えばナトリウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、及びこれらの組み合わせ;β-ケトペンタノエート及びその塩、例えばナトリウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、及びこれらの組み合わせ;ヘキサノイルエチルβ-ヒドロキシブチレート;オクタノイルエチルβ-ヒドロキシブチレート;ヘキサノイルヘキシルβ-ヒドロキシブチレート;アセトアセテート(AcA)及びその塩、例えばナトリウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、及びこれらの組み合わせ;並びにこれらの混合物を、実質的に含まない、又は全く含まない。MCTは3つの脂肪酸部分を含み、各脂肪酸部分は独立して6~12個、6~11個、6~10個、7~12個、7~11個、7~10個、8~12個、8~11個、8~10個の炭素原子を有する。
【0060】
[0081]一部の実施形態では、トリゴネリンを本質的に含む組成物は、任意選択的に、4-ヒドロキシイソロイシン;アセチルコリン;25-α-スピロスタ-3,5-ジエン;3,4,7-トリメチルクマリン;3-ヒドロキシ-4,5-ジメチル-2-フラノン;4-ヒドロキシイソロイシン-ラクトン;4-メチル-7-アセトキシクマリン;7-アセトキシ-4-メチルクマリン;α-ガラクトシダーゼ;α-マンノシダーゼ;アルミニウム;アラビノース;アラキジン酸;ベヘン酸;β-カロテン;β-マンナン;β-シトステロール;ビオチン;カルパイン;コリン;クマリン;シアノコバラミン;d-マンノース;ジガラクトシルミオイノシトール;ジヒドロアクチニジオリド、ジヒドロベンゾフラン;ジオシン;ジオスゲニン;エレメン;エンド-β-マンナナーゼ;フェヌグリーキン;フォラシン;ガラクチノール;ガラクトマンナン;ゲンチアニン;ギトゲニン;グラエクニン-h;グラエクニン-n;ホモオリエンチン;イソビテキシン;ケンペロール;レシチン;リグニン;ルテオリン;ムウロレン;ミオイノシトール;ネオチゴゲニン;ナイアシン;ニコチン酸;オレイン酸;オリエンチン;オリエンチン-アラビノシド;p-クマル酸;パルミチン酸;プロトペクチン;ピリドキシン;ケルセチン;ラフィノース;リボフラビン;ルチン;サポニン;セレニン;スタキオース;ステアリン酸;チアミン;トレオニン;チゴゲニン;トリゴフェノシド;トリゴフォリン(trigoforin);トリゴネロシド;トリリン;ベルバスコース;ビセニン-1;ビセニン-2;ビテキシン;ビテキシン-2’-o-p-クマレート;ビテキシン-7-グルコシド;キサントフィル;ヤモゲニン;ヤモゲニン-3,26-バイグリコシド;及びヤモゲニン-テトロシド(tetroside)のうちの1種以上を実質的に含まない、又は全く含まない。
【0061】
[0082]本明細書で使用するとき、「実質的に含まない」は、組成物中に存在する他の化合物のいずれも、トリゴネリンの量に対して1.0重量%以下、好ましくはトリゴネリンの量に対して0.1重量%以下、より好ましくはトリゴネリンの量に対して0.01重量%以下、最も好ましくはトリゴネリンの量に対して0.001重量%以下であることを意味する。
【0062】
[0083]本開示の別の態様は、細胞内アデニンジヌクレオチド(「NAD+」)を増加させる必要がある哺乳動物において、当該分子を増加させる方法であって、トリゴネリンを本質的に含む又はトリゴネリンを含む組成物を、NAD+の生合成を増加させるのに有効な量で、当該哺乳動物に投与する工程を含む、方法である。この方法は、細胞及び組織の生存並びに/又は細胞及び組織全体の健康を改善するために、細胞及び組織におけるNAD+の細胞内レベルの増加を促進することができる。例えば、NADの細胞内レベルの増加+は、ミトコンドリアエネルギーの増加、代謝疲労の治療又は予防、筋肉疲労の治療又は予防、代謝疲労に関連する生理学的状態の改善、運動性の改善、又は寿命の改善のうちの少なくとも1つを提供することができる。好ましくは、NAD+の生合成は、哺乳動物の1つ以上の細胞、例えば、肝臓、腎臓、脳、及び骨格筋からなる群から選択される少なくとも1つの身体部分の一部である1つ以上の細胞において増加される。
【0063】
[0084]これらの方法は、トリゴネリンを本質的に含む又はトリゴネリンを含む組成物を投与する工程から本質的になり得る。本明細書で使用するとき、「トリゴネリンを本質的に含む又はトリゴネリンを含む組成物を投与する工程を本質的に含む方法」とは、NAD+産生に影響するトリゴネリン以外の任意の追加の化合物が、トリゴネリンの投与から1時間以内に投与されないこと、好ましくは、トリゴネリンの投与から2時間以内に投与さないこと、より好ましくはトリゴネリンの投与から3時間以内に投与されないこと、最も好ましくはトリゴネリンの投与と同日に投与されないこと、を意味する。任意選択的に本方法から除外され得る化合物の非限定的な例としては、組成物自体からの除外に関して上述したものが挙げられる。
【0064】
[0085]本開示の別の態様は、個体におけるミトコンドリア機能を改善する方法である。本方法は、トリゴネリンを本質的に含む又はトリゴネリンを含む組成物の有効量を、個体に投与する工程を含む。
【0065】
[0086]本明細書に開示される組成物及び方法のそれぞれにおいて、組成物は、好ましくは、食品添加物、食品原材料、機能性食品、ダイエタリーサプリメント、医療用食品、ニュートラシューティカルズ、経口栄養補助食品(ONS)又は栄養補助食品などの食品製品である。
【0066】
[0087]組成物は、1週間に少なくとも1日、好ましくは1週間に少なくとも2日、より好ましくは1週間に少なくとも3日若しくは4日(例えば、1日おき)、最も好ましくは1週間に少なくとも5日、1週間に6日、又は1週間に7日、投与してよい。投与期間は、少なくとも1週間、好ましくは少なくとも1カ月間、より好ましくは少なくとも2カ月間、最も好ましくは少なくとも3カ月間、例えば、少なくとも4カ月間であり得る。一部の実施形態では、投与は、少なくとも毎日であり、例えば、対象は、1日当たり1回以上の投与、一実施形態では1日当たり複数回の投与を受け得る。一部の実施形態では、投与は、個体の残りの寿命にわたって継続される。別の実施形態では、投与は、医学的状態について検出可能な症状がなくなるまで行われる。具体的な実施形態では、投与は、少なくとも1つの症状について検出可能な改善が見られるまで行われ、更なる場合においては、寛解を維持するために継続される。
【0067】
[0088]本明細書に開示される組成物は、経腸的に、例えば経口的に、又は非経口的に対象に投与されてもよい。非経口投与の非限定的な例としては、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、関節内、滑液嚢内、眼内、髄腔内、局所、及び吸入によるものが挙げられる。したがって、組成物の形態の非限定的な例としては、自然食品、加工食品、天然果汁、濃縮物及び抽出物、注射液、マイクロカプセル、ナノカプセル、リポソーム、硬膏、吸入形態、点鼻スプレー、点鼻液、点眼液、舌下錠、及び持続放出性製剤が挙げられる。
【0068】
[0089]本明細書に開示される組成物には、治療目的での投与のための様々な製剤のいずれかを使用することができる。より詳細には、医薬組成物は、適切な薬学的に許容可能な担体又は希釈剤を含むことができ、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏剤、液剤、坐剤、注射剤、吸入剤、ゲル剤、マイクロスフェア、及びエアゾール剤などの固体、半固体、液体又は気体形態の製剤として処方され得る。したがって、組成物の投与は、経口、頬側、直腸内、非経口、腹腔内、皮内、経皮、及び気管内投与を含む様々な方法で達成することができる。活性薬剤は、投与後に全身性のものであってもよく、又は局所投与の使用、壁内投与の使用、若しくは埋め込み部位において有効用量を保持するように作用する埋入物(インプラント)の使用によって局在化させてもよい。
【0069】
[0090]医薬剤形では、化合物は、薬学的に許容可能な塩として投与されてもよい。これらはまた、別の薬学的に活性な化合物と適切に関連させて使用してもよい。以下の方法及び添加物は、単なる例示であり、決して限定するものではない。
【0070】
[0091]経口製剤では、化合物は、単独で使用することができ、又は、錠剤、散剤、顆粒剤若しくはカプセル剤を製造するための適切な添加剤と組み合わせて、例えば、乳糖、マンニトール、トウモロコシデンプン、若しくはバレイショデンプンなどの従来の添加剤と、結晶セルロース、セルロースの機能性誘導体、アラビアゴム、トウモロコシデンプン又はゼラチンなどの結合剤と、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、又はカルボキシメチルセルロースナトリウムなどの崩壊剤と、タルク又はステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤と、及び所望であれば、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤及び香味物質と組み合わせて、使用することができる。
【0071】
[0092]化合物は、水性又は非水性溶剤中に、例えば、植物油若しくは他の類似の油、合成脂肪族酸グリセリド、高級脂肪族酸のエステル又はプロピレングリコールなどに、また所望であれば、可溶化剤、等張化剤、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤、及び保存剤などの従来の添加剤と一緒に、溶解、懸濁又は乳化することによって、注射用の製剤として処方することができる。
【0072】
[0093]化合物は、吸入により投与されるエアゾール製剤において利用することができる。例えば、化合物は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、及び窒素などの加圧された許容可能な噴射剤中に配合することができる。
【0073】
[0094]更に、化合物は、乳化基剤又は水溶性基剤などの様々な基剤と混合することによって坐剤として製造することができる。化合物は、坐剤によって直腸内に投与することができる。坐剤は、ココアバター、カーボワックス、及びポリエチレングリコールなどの、体温では融解するが室温では凝固するビヒクルを含むことができる。
【0074】
[0095]シロップ剤、エリキシル剤、及び懸濁剤などの経口又は直腸内投与用の単位剤形が提供されてもよく、各投与量単位、例えば、小さじ1杯、大さじ1杯、錠剤又は坐剤は、規定量の組成物を含有する。同様に、注射又は静脈内投与用の単位剤形は、滅菌水、生理食塩水又は別の薬学的に許容可能な担体による溶液としての組成物中に化合物を含んでもよく、各投与量単位、例えばmL又はLは、化合物のうちの1種以上を含有する組成物を規定量含有する。
【0075】
[0096]非ヒト動物を対象とする組成物としては、動物の必要栄養量を補給する食品組成物、動物用トリート(例えば、ビスケット)、及び/又はダイエタリーサプリメントが挙げられる。組成物は、ドライ組成物(例えば、キブル)、セミモイスト組成物、ウェット組成物、又はそれらの任意の混合物であってよい。一実施形態では、組成物は、グレイビー、飲料水、飲料、ヨーグルト、粉末、顆粒、ペースト、懸濁液、噛むもの(chew)、一口で食べるもの(morsel)、トリート、スナック、ペレット、丸薬、カプセル、錠剤、又は他の適切な送達形態のものなどのダイエタリーサプリメントである。ダイエタリーサプリメントは、高濃度のUFA及びNORCと、ビタミンB類及び抗酸化物質とを含み得る。これにより、かかるダイエタリーサプリメントを動物に少量投与することが可能になり、あるいは動物に投与する前に希釈することができる。ダイエタリーサプリメントは、動物に投与する前に、水又は他の希釈剤と混合する必要がある場合があり、又は混合することができる。
【0076】
[0097]「ペットフード」又は「ペットフード組成物」は、約15%~約50%の粗タンパク質を含む。粗タンパク質材料は、大豆ミール、ダイズタンパク質濃縮物、トウモロコシグルテンミール、小麦グルテン、綿実、及びピーナッツミールなどの植物性タンパク質、又はカゼイン、アルブミン、及び肉タンパク質などの動物性タンパク質を含み得る。本明細書で有用な肉タンパク質の例としては、豚肉、子羊、ウマ、家禽、魚、及びこれらの混合物が挙げられる。組成物は、約5%~約40%の脂肪を更に含むことができる。組成物は、炭水化物源を更に含み得る。組成物は、約15%~約60%の炭水化物を含み得る。そのような炭水化物の例としては、米、トウモロコシ、ミロ、ソルガム、アルファルファ、大麦、大豆、キャノーラ、オート麦、小麦、及びこれらの混合物などの穀物又は穀草類が挙げられる。組成物はまた、乾燥乳清及び他の乳製品副産物などの他の材料を任意に含み得る。
【0077】
[0098]一部の実施形態では、ペットフード組成物の灰分は、1%未満~約15%であり、一態様では、約5%~約10%の範囲である。
【0078】
[0099]含水率は、ペットフード組成物の性質に応じて変更し得る。一実施形態では、組成物は、完全なものでありかつ栄養的にバランスのとれたペットフードであり得る。この実施形態では、ペットフードは、「ウェットフード」、「ドライフード」、又は中間含水率の食品であり得る。「湿潤食品」は、典型的には缶又はホイル袋で販売されるペットフードを表し、典型的には約70%~約90%の範囲の水分含有量を有する。「ドライフード」は、ウェットフードと同様の組成のものであるが、典型的には約5%~約15%又は20%の範囲の限定された含水率を含むペットフードを表し、そのため、例えば、小さいビスケット状のキブルとして提供される。一実施形態では、組成物の含水率は約5%~約20%である。ドライフード製品は、比較的常温保存可能であり、微生物又は真菌による劣化又は汚染に対して耐性を有するような様々な含水率の様々な食品を含む。コンパニオンアニマル向けのペットフード又はスナックフードなどの、押し出し成形された食品製品であるドライフード製品組成物も含まれる。
【0079】
[0100]実施例
[0101]以下の非限定的な例は、細胞栄養のためのトリゴネリンを本質的に含む又はトリゴネリンを含む組成物の概念を展開及び支持する科学データを提示する。
【0080】
[0102]実施例1
[0103]トリゴネリンでの処理後のヒト及びゼブラフィッシュにおけるNAD+濃度の酵素定量。
[0104]ヒト初代筋芽細胞を、1ウェル当たり3,000個の細胞密度で、384ウェルプレートの骨格筋細胞用培地(SKM-M、AMSbio)に播種した。1日後、分化用培地(Gibco No.31330-028)を使用して培地を4日間変更し、分化を誘導した。細胞をトリゴネリン(sigma #T5509)で6時間処理した。生物発光アッセイ(Promega NAD/NADH-Glo(商標)#G9071)を用いNADを測定した。これをFigure1のAに示す。
【0081】
[0105]野生型ゼブラフィッシュ由来の胚を、標準的な実験室条件下、28℃で飼育し、6ウェルプレートで受精後96時間飼育した(n=20~25)。幼生をトリゴネリン(sigma #T5509)で16時間処理した。比色NAD定量アッセイ(Biovision NAD/NADH Quantitation Colorimetric Kit #k337-100)を用いNADを測定した。これをFigure1のBに示す。
【0082】
[0106]実施例2
[0107]ヒト筋芽細胞の分化のトリゴネリンによる増進。
[0108]2名の異なるドナー由来のヒト初代筋芽細胞を、1ウェル当たり200,000個の細胞密度で、6ウェルプレートの骨格筋細胞用培地(SKM-M、AMSbio)に播種した。1日後、分化用培地(Gibco No.31330-028)を使用して培地を4日間変更し、分化を誘導した。細胞を、同位体標識したトリゴネリン(13Cカルボニル;メチル上に32H)で6時間処理した。
【0083】
[0109]細胞抽出物を、Vanquish UHPLC+集束LCシステム(Thermo Scientific)で、寸法150×2.1mm、5μmの親水性液体クロマトグラフィー(HILIC)iHILIC-Fusion(P)カラム(Hilicon)と前部のガードカラム(iHILIC-fusion(P),Hilicon)とを用いて分離した。代謝産物の分離は、0.25mL/分の流量及び35℃の温度で、順相に線形の溶媒勾配を適用することによって達成された。移動相としての溶媒Aは、10mMの酢酸アンモニウム及び0.04%(v/v)の水酸化アンモニウムを含む水(pH約9.3)とし、溶媒Bはアセトニトリルとした。
【0084】
[0110]溶出した代謝産物は、加熱エレクトロスプレーイオン化(H-ESI)源を有するOrbitrap Fusion Lumos質量分析計(Thermo Scientific)を、ポジティブモード及びネガティブモードで用いて、200m/zで60,000の分解能で分析した。機器の制御及びデータ分析は、Xcalibur(Thermo Scientific)を使用して行った。
【0085】
[0111]Figure2のAは、500μMのトリゴネリンで処理したときのヒト筋管におけるNAD+レベルの増進を示す。Figure2のBに示すように、トリゴネリンはNAD+前駆体として作用する。このヒト細胞モデルにおいて500μMの標識トリゴネリン(13C-カルボニル、C2H3)で処理したとき、6時間後の同位体の分布が対照とは異なる。前駆体からの13C原子(トリゴネリン(13C-カルボニル、C2H3))のNAD+(NAD+(13C-カルボニル))への明らかな取り込みが存在する。13C濃縮の割合(%)として表した場合、NAD+の[13C]同位体濃縮は、ベースライン条件におけるNAD+と比較して高い(45%)。標識の取り込みは、AccuCore(Suら、Anal Chem 2017)を使用して、天然の存在度について補正した。同位体標識したトレーサの構造、トリゴネリン(13C-カルボニル、C2H3)、及び形成された、同位体標識されたNAD+(13C-カルボニル)をFigure2のCに示す。
【0086】
[0112]実施例3
[0113]トリゴネリンの経口投与又は腹腔内投与後の肝臓及び筋肉におけるNAD+濃度。
[0114]10週齢のC57BL/6JRjの雄性マウスに給餌し(Safe 150)、次いで、トリゴネリン(250mg/kg、n=5/群)を強制経口投与又は腹腔内注射した。処理の120分後、組織を採取し、液体窒素中で瞬間凍結した。比色NAD定量アッセイ(Biovision NAD/NADH Quantitation Colorimetric Kit #k337-100)を用い、腓腹筋及び肝臓におけるNADを測定した。
図3は、強制経口投与(Figure3のA、Figure3のC)又は腹腔内投与(Figure3のB、Figure3のD)により250mg/kgのトリゴネリンを受けてから120分後のマウスにおけるNAD+の酵素定量を示す。
【0087】
[0115]実施例4
[0116]化学合成したトリゴネリンでの又はトリゴネリン豊富なコロハ種子抽出物での処理後にヒト初代筋芽細胞において測定されたNAD+。
[0117]ヒト初代筋芽細胞を、1ウェル当たり12,000個の細胞密度で、96ウェルプレートの骨格筋細胞用培地(SKM-M、AMSbio)に播種した。1日後、培地を4日間変更して分化を誘導する。種々の用量で合成トリゴネリン一水和物(Figure4のA)、又は40.45%のトリゴネリンを含有するトリゴネリン豊富なコロハ種子抽出物(Figure4のB)を用いて、細胞を16時間処理した。比色NAD+定量アッセイ(Biovision NAD+/NADH Quantitation Colorimetric Kit #k337-100)を用い、NAD+を測定した。
【0088】
[0118]本実験は、化学合成したトリゴネリンと、コロハ種子抽出物由来のトリゴネリンとの両方が、対照と比較して、NAD+含有量の有意な増加を示すことを実証した。コロハ種子抽出物は、化学合成したトリゴネリンよりも低用量でより強力であった。
【0089】
[0119]実施例5
[0120]化学合成したトリゴネリンでの又はトリゴネリン豊富なコロハ種子抽出物での処理後にマウス肝臓において測定されたNAD+。
[0121]10週齢のC57BL/6JRjの雄性マウスに、トリゴネリン(sigma #T5509)又はトリゴネリン豊富なコロハ種子抽出物(40.45%トリゴネリン)を強制経口投与した(300mg/kgでのトリゴネリンの等モル、n=8/群)。120分の処理後、肝臓を採取し、液体窒素中で瞬間凍結した。Dall,M.ら(Mol Cell Endocrinol,2018.473:p.245-256)によるものを調整した酵素法を用いて、肝臓におけるNAD+を測定した。
【0090】
[0122]本実験は、化学合成したトリゴネリンと、コロハ種子抽出物由来のトリゴネリンとの両方が、対照と比較して、肝臓におけるNAD+含有量の有意な増加を示したことを実証した。
【0091】
[0123]実施例6
[0124]生存率、速度、運動性、及び刺激後運動を測定するための線虫試験。
[0125]1つの条件につき約100匹のワームを使用してワームの寿命試験を実施し、1日おきに手作業で採点した。実験終了までの長期曝露のレジメンにおいて、野生型N2ワームの成体期の1日目に、トリゴネリン処理及び実験測定を開始した。Figure7のAは、対照とトリゴネリンで処理したワームとを比較した、ワームの平均生存率(日)を示す。1mMのトリゴネリンクロリドで処理した線虫の生存曲線では、寿命が21%延びている。
【0092】
[0126]線虫運動性試験は、Movement Trackerソフトウェア(Mouchiroud,L.ら、Curr Protoc Neurosci 77,8.37.1-8.37.21(2016))を用い実施した。実験を少なくとも2回繰り返した。実験終了までの長期曝露のレジメンにおいて、野生型N2ワームの成体期の1日目に、トリゴネリン処理及び実験測定を開始した。
【0093】
[0127]Figure7のBは、1mMのトリゴネリンクロリドで処理したワームの成体期の1日目に実施した自発的運動性アッセイで平均速度を測定し、対照と比較した。1mMのトリゴネリンクロリドで処理した線虫は、対照と比較して平均速度が増大した。
【0094】
[0128]Figure7のCは、1mMのトリゴネリンクロリドで処理した線虫では、後期高齢期における自発的運動性アッセイ中に移動した距離が、対照と比較して有意に増加したことを示した。
【0095】
[0129]1つの条件につき45~60匹のワームを、ポーキング(poking)後の運動性について手作業で採点した。任意の繰り返し刺激に応答することができなかったワームは、死亡しているとして採点した。結果は、少なくとも2つの独立した実験から得られたデータを表すものとした。実験終了までの長期曝露のレジメンにおいて、野生型N2ワームの成体期の1日目に、トリゴネリン処理及び実験測定を開始した。
【0096】
[0130]Figure7のDから、8日目及び11日目の老齢ワームについて評価した刺激後運動スコアでは、1mMのトリゴネリンクロリドで処理した線虫は、対照よりも物理的刺激への応答性が高いことを示すことがわかる。
【0097】
*、**は、それぞれの対照との差を示す(スチューデント検定、それぞれp<0.05、p<0.01)。
【0098】
[0131]実施例7
[0132]トリゴネリンを用いた処理による筋原線維及びミオシンの構造の完全性の改善。
[0133]加齢に伴うミオシン構造の形態変化は、典型的には、高塩濃度下での筋原線維及びミオシンのATPase活性において観察され、筋原線維構造は、高齢になると組織化されにくくなる。
【0099】
[0134]RW1596(myo-3p:GFP)ワームを、1日目(若齢成体)及び11日目(高齢成体)に回収し、筋肉の完全性評価を実施した。ワームをテトラミソールで固定し、共焦点顕微鏡法により分析して、GFP蛍光イメージングによって示される筋線維形態を評価した。実験終了までの長期曝露のレジメンにおいて、野生型N2ワームの成体期の1日目に、1mMのトリゴネリンクロリドを用いたトリゴネリン処理及び実験測定を開始した。
【0100】
[0135]本発明者らは、GFPタグを付与したミオシンの形態学的構造の、蛍光顕微鏡法による観察により、トリゴネリン処理した11日齢のワームにおいて、日齢が一致する対照ワームと比較して改善された、より組織化された筋原線維構造を見ることができた。
【0101】
[0136]実施例8
[0137]対照及びトリゴネリン処理した線虫におけるミトコンドリアDNA対核DNAの比。
[0138]リアルタイムPCRにより、野生型N2ワームにおけるmtDNAコピー数の絶対的定量を実施した。各サンプルにおけるnduo-1及びact-1の相対値を比較して、核ゲノム当たりのミトコンドリアDNAの相対レベルを表す比を作成した。各生体データ点について、少なくとも2回の技術的反復の平均を使用した。各実験は、少なくとも10の独立した生体試料(別個のワーム)で実施した。実験終了までの長期曝露のレジメンにおいて、野生型N2ワームの成体期の1日目に、1mMのトリゴネリンクロリドを用いたトリゴネリン処理及び実験測定を開始した。
【0102】
[0139]
図8は、8日目の老齢ワームにおける核にコードされている遺伝子(act-1)に対するミトコンドリアにコードされている遺伝子(nduo-1)の比を示す。
*は、対照との差を示す(スチューデント検定、p<0.05)。データは平均±SDとして表した。
【0103】
[0140]トリゴネリン処理群では、核発現に対するミトコンドリア発現は、対照群よりも高かった。
【0104】
[0141]本明細書で説明されている現在の好ましい実施形態に対する様々な変更及び変形が、当業者には明らかとなる点を理解されたい。かかる変更及び変形は、本発明の主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、かつ意図される利点を損なわずに、行うことができる。それゆえ、そのような変更及び変形は、添付の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。