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特許7561797磁界検出装置、磁気センサモジュール、電気制御装置、モータ及びトランスミッション
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】磁界検出装置、磁気センサモジュール、電気制御装置、モータ及びトランスミッション
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G01D5/245 110C
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022111560
(22)【出願日】2022-07-12
(65)【公開番号】P2024010301
(43)【公開日】2024-01-24
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132207
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(72)【発明者】
【氏名】岡 禎一郎
(72)【発明者】
【氏名】毛受 良一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真
(72)【発明者】
【氏名】平野 裕幸
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-011843(JP,A)
【文献】特開2019-129641(JP,A)
【文献】特表2015-529325(JP,A)
【文献】特開2018-004414(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102620637(CN,A)
【文献】中国特許第101929834(CN,B)
【文献】中国実用新案第204831171(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00 ~ 5/252
G01B 7/30 ~ 7/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界を発生する磁界発生部と、
前記磁界を検知する磁界検出部と、
前記磁界検出部を露出させるようにして収容する収容部を有する第1筐体と、
移動体を移動可能に収容する第2筐体と
を備え、
前記磁界発生部から発生し、前記磁界検出部に印加される前記磁界の強度又は角度は、前記移動体の移動に伴い変化し、
前記第2筐体は、前記第1筐体が取り付けられる取付部を有し、
前記取付部は、平坦面を有し、
前記収容部は、一方側に開口する開口部を有する凹部として構成され、
前記第1筐体は、前記磁界検出部と前記移動体との間に前記取付部を挟み、前記収容部の前記開口部を前記取付部の前記平坦面に対向させるように前記磁界検出部を取り囲むシール部材を介して前記取付部に取り付けられ、
前記収容部内が、前記収容部の前記開口部が前記シール部材及び前記取付部の前記平坦面により塞がれることで密閉されていることを特徴とする磁界検出装置。
【請求項2】
前記磁界発生部は、前記移動体に設けられ、前記移動体と一体となって移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の磁界検出装置。
【請求項3】
前記磁界発生部は、前記第1筐体内に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の磁界検出装置。
【請求項4】
前記第1筐体及び前記第2筐体のうちの少なくともいずれか一方に、前記第1筐体が前記第2筐体に取り付けられる位置を規定する位置決め部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁界検出装置。
【請求項5】
前記位置決め部は、前記磁界検出部から見て前記シール部材よりも遠位に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の磁界検出装置。
【請求項6】
前記第2筐体の前記取付部は、相対的に厚みの厚い第1取付部と、相対的に厚みの薄い第2取付部とを含み、
前記第1取付部は、前記第2取付部を取り囲むように位置し、
前記位置決め部は、前記第1取付部に相当する位置に設けられており、
前記第1筐体は、前記磁界発生部と前記磁界検出部との間に前記第2取付部を挟むようにして前記取付部に取り付けられていることを特徴とする請求項4に記載の磁界検出装置。
【請求項7】
前記シール部材を構成する材料の熱伝導率が、前記第1筐体を構成する材料の熱伝導率よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の磁界検出装置。
【請求項8】
前記第1筐体は、固定ねじにより前記第2筐体に固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁界検出装置。
【請求項9】
前記第1筐体は、前記位置決め部としての第1ねじ穴を有し、
前記第2筐体は、前記位置決め部としての第2ねじ穴を有し、
前記第1筐体は、実質的に重ね合わせた前記第1ねじ穴及び前記第2ねじ穴に固定ねじを挿入することにより、前記第2筐体に固定されていることを特徴とする請求項4に記載の磁界検出装置。
【請求項10】
前記第1筐体は、前記シール部材が嵌合され得るシール溝を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の磁界検出装置。
【請求項11】
前記シール部材は、エラストマー材料により構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁界検出装置。
【請求項12】
前記シール部材は、フッ素ゴム又はシリコーンゴムにより構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁界検出装置。
【請求項13】
前記第1筐体は、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂又はポリアミド樹脂により構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁界検出装置。
【請求項14】
前記第2筐体は、非磁性材料により構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁界検出装置。
【請求項15】
前記移動体が、所定の回転軸を中心に回転する回転体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁界検出装置。
【請求項16】
前記移動体が、直線移動する直線移動体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁界検出装置。
【請求項17】
移動体の移動に伴い強度又は角度が変化する磁界を検出するために用いられる磁気センサモジュールであって、
磁界発生部から発生する磁界を検知する磁界検出部と、
前記磁界検出部を露出させるようにして収容する収容部を有する第1筐体と
を備え、
前記磁界検出部は、前記磁界発生部から発生し、移動体の移動に伴い強度又は角度が変化した前記磁界が印加される位置に設けられており、
前記収容部は、一方側に開口する開口部を有する凹部として構成され、
前記第1筐体は、前記移動体を移動可能に収容する第2筐体に、前記磁界検出部と前記移動体との間に前記第2筐体を挟み、前記収容部の前記開口部を前記第2筐体の平坦面に対向させるように取付可能に構成されていることを特徴とする磁気センサモジュール。
【請求項18】
移動体の移動に伴い強度又は角度が変化する磁界を検出するために用いられる磁気センサモジュールであって、
磁界発生部から発生する磁界を検知する磁界検出部と、
前記磁界検出部を露出させるようにして収容する収容部を有する第1筐体と
を備え、
前記磁界検出部は、前記磁界発生部から発生し、移動体の移動に伴い強度又は角度が変化した前記磁界が印加される位置に設けられており、
前記第1筐体は、前記磁界検出部を取り囲むようにして設けられているシール部材を有し、
前記収容部は、一方側に開口する開口部を有する凹部として構成され、
前記第1筐体は、前記移動体を移動可能に収容する第2筐体に、前記磁界検出部と前記移動体との間に前記第2筐体を挟み、前記収容部の前記開口部を前記第2筐体の平坦面に対向させるように、かつ前記収容部の前記開口部が前記シール部材及び前記第2筐体の前記平坦面により塞がれることで前記収容部内が密閉されるように取付可能に構成されていることを特徴とする磁気センサモジュール。
【請求項19】
請求項1又は2に記載の磁界検出装置を備えることを特徴とする電気制御装置。
【請求項20】
請求項1又は2に記載の磁界検出装置を少なくとも備え、
前記移動体が、所定の回転軸を中心に回転可能なモータシャフトであり、
前記磁界検出装置は、前記モータシャフトの回転角度を検出することを特徴とするモータ。
【請求項21】
請求項1又は2に記載の磁界検出装置を少なくとも備え、
前記移動体が、所定の回転軸を中心に回転可能なシャフトであり、
前記磁界検出装置は、前記シャフトの回転角度を検出することを特徴とするトランスミッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界検出装置、磁気センサモジュール、電気制御装置、モータ及びトランスミッションに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車におけるステアリングホイール又はパワーステアリングモータの回転位置、トランスミッションのシャフトのトルクの検出等の種々の用途で、対象物の角度と対応関係を有する角度検出値を生成する、例えば磁気式の角度センサが広く利用されている。磁気式の角度センサにおいては、対象物の回転や直線的な運動に連動して方向が回転する回転磁界を発生する磁石等の磁界発生部が用いられ、角度センサが備える磁界検出部が、磁界発生部から発せられる磁界の変化に応じた検出信号を出力する。
【0003】
上記磁気式の角度センサを用いる磁界検出装置として、例えば、図12に示すように、角度センサ101、当該角度センサ101から出力される検出信号を自動車のECU(Electronic Control Unit)に入力するための電気回路基板102等をモジュール化したセンサモジュール100が、上記対象物202を移動可能に収容する筐体201に取り付けられたものが知られている。このモジュール化したセンサモジュール100を密閉構造とすることで、角度センサ101や電気回路基板102等を水、潤滑油、粉塵等から保護することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018-062007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記磁界検出装置において、磁界発生部203と角度センサ101との間の距離を可能な限り短くすることが望まれる。両者間の距離が短いことで、磁界発生部203として小型、安価な磁石を利用することもできる。しかし、上記磁界検出装置においては、センサモジュール100を密閉構造とすることで、角度センサ101や電気回路基板102等を水、潤滑油、粉塵等から保護することができるものの、磁界発生部203と角度センサ101との間に、対象物202を収容する筐体201の隔壁とセンサモジュール100の隔壁とを挟むことになるため、磁界発生部203と角度センサ101との間の距離を短くすることが困難となる。
【0006】
上記課題に鑑みて、本発明は、磁界発生部と磁界検出部との間の距離を相対的に短くすることができ、測定精度を向上させ得る磁界検出装置、磁気センサモジュール、電気制御装置、モータ及びトランスミッションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、磁界を発生する磁界発生部と、前記磁界を検知する磁界検出部と、前記磁界検出部を露出させるようにして収容する収容部を有する第1筐体と、移動体を移動可能に収容する第2筐体とを備え、前記磁界発生部から発生し、前記磁界検出部に印加される前記磁界の強度又は角度は、前記移動体の移動に伴い変化し、前記第2筐体は、前記第1筐体が取り付けられる取付部を有し、前記取付部は、平坦面を有し、前記収容部は、一方側に開口する開口部を有する凹部として構成され、前記第1筐体は、前記磁界検出部と前記移動体との間に前記取付部を挟み、前記収容部の前記開口部を前記取付部の前記平坦面に対向させるように前記磁界検出部を取り囲むシール部材を介して前記取付部に取り付けられ、前記収容部内が、前記収容部の前記開口部が前記シール部材及び前記取付部の前記平坦面により塞がれることで密閉されていることを特徴とする磁界検出装置を提供する。
【0008】
本発明は、移動体の移動に伴い強度又は角度が変化する磁界を検出するために用いられる磁気センサモジュールであって、磁界発生部から発生する磁界を検知する磁界検出部と、前記磁界検出部を露出させるようにして収容する収容部を有する第1筐体とを備え、前記磁界検出部は、前記磁界発生部から発生し、移動体の移動に伴い強度又は角度が変化した前記磁界が印加される位置に設けられており、前記収容部は、一方側に開口する開口部を有する凹部として構成され、前記第1筐体は、前記移動体を移動可能に収容する第2筐体に、前記磁界検出部と前記移動体との間に前記第2筐体を挟み、前記収容部の前記開口部を前記第2筐体の平坦面に対向させるように取付可能に構成されていることを特徴とする磁気センサモジュールを提供する。
【0009】
本発明は、移動体の移動に伴い強度又は角度が変化する磁界を検出するために用いられる磁気センサモジュールであって、磁界発生部から発生する磁界を検知する磁界検出部と、前記磁界検出部を露出させるようにして収容する収容部を有する第1筐体とを備え、前記磁界検出部は、前記磁界発生部から発生し、移動体の移動に伴い強度又は角度が変化した前記磁界が印加される位置に設けられており、前記第1筐体は、前記磁界検出部を取り囲むようにして設けられているシール部材を有し、前記収容部は、一方側に開口する開口部を有する凹部として構成され、前記第1筐体は、前記移動体を移動可能に収容する第2筐体に、前記磁界検出部と前記移動体との間に前記第2筐体を挟み、前記収容部の前記開口部を前記第2筐体の平坦面に対向させるように、かつ前記収容部の前記開口部が前記シール部材及び前記第2筐体の前記平坦面により塞がれることで前記収容部内が密閉されるように取付可能に構成されていることを特徴とする磁気センサモジュールを提供する。
【0010】
本発明は、上記磁界検出装置を備えることを特徴とする電気制御装置を提供する。
本発明は、上記磁界検出装置を少なくとも備え、前記移動体が、所定の回転軸を中心に回転可能なモータシャフトであり、前記磁界検出装置は、前記モータシャフトの回転角度を検出することを特徴とするモータを提供する。
本発明は、上記磁界検出装置を少なくとも備え、前記移動体が、所定の回転軸を中心に回転可能なシャフトであり、前記磁界検出装置は、前記シャフトの回転角度を検出することを特徴とするトランスミッションを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、磁界発生部と磁界検出部との間の距離を相対的に短くすることができる磁界検出装置、磁気センサモジュール、電気制御装置、モータ及びトランスミッションを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る磁界検出装置の概略構成を示す断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態における磁気センサモジュールであって、シール部材を備えない態様の概略構成を示す斜視図である。
図3図3は、本発明の一実施形態における磁気センサモジュールであって、シール部材を備える態様の概略構成を示す斜視図である。
図4図4は、本発明の一実施形態における磁界検出部及び演算処理部の概略構成を示すブロック図である。
図5図5は、本発明の一実施形態に係る磁界検出装置の概略構成を示す分解拡大断面図である。
図6図6は、本発明の一実施形態におけるモータユニットの概略構成を示すブロック図である。
図7図7は、本発明の一実施形態におけるトランスミッションの概略構成を示すブロック図である。
図8】本発明の一実施形態に係る磁界検出装置の他の態様の概略構成を示す断面図である。
図9】本発明の一実施形態に係る磁界検出装置の他の態様の概略構成を示す断面図である。
図10】本発明の一実施形態に係る磁界検出装置の他の態様の概略構成を示す断面図である。
図11】本発明の一実施形態に係る磁界検出装置の他の態様の概略構成を示す断面図である。
図12】従来の磁界検出装置の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の態様1は、磁界を発生する磁界発生部と、前記磁界を検知する磁界検出部と、前記磁界検出部を露出させるようにして収容する収容部を有する第1筐体と、移動体を移動可能に収容する第2筐体とを備え、前記磁界発生部から発生し、前記磁界検出部に印加される前記磁界の強度又は角度は、前記移動体の移動に伴い変化し、前記第2筐体は、前記第1筐体が取り付けられる取付部を有し、前記第1筐体は、前記磁界検出部と前記移動体との間に前記取付部を挟むように、前記磁界検出部を取り囲むシール部材を介して前記取付部に取り付けられ、前記収容部内が、前記シール部材及び前記取付部により密閉されていることを特徴とする磁界検出装置である。
【0014】
本発明の態様2は、上記態様1において、前記磁界発生部は、前記移動体に設けられ、前記移動体と一体となって移動可能であることを特徴とする。
本発明の態様3は、上記態様1において、前記磁界発生部は、前記第1筐体内に設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明の態様4は、上記態様1~3のいずれかにおいて、前記第1筐体及び前記第2筐体のうちの少なくともいずれか一方に、前記第1筐体が前記第2筐体に取り付けられる位置を規定する位置決め部が設けられていることを特徴とする。
本発明の態様5は、上記態様4において、前記位置決め部は、前記磁界検出部から見て前記シール部材よりも遠位に設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明の態様6は、上記態様4又は態様5において、前記第2筐体の前記取付部は、相対的に厚みの厚い第1取付部と、相対的に厚みの薄い第2取付部とを含み、前記第1取付部は、前記第2取付部を取り囲むように位置し、前記位置決め部は、前記第1取付部に相当する位置に設けられていることを特徴とする。
【0017】
本発明の態様7は、上記態様1~6のいずれかにおいて、前記シール部材を構成する材料の熱伝導率が、前記第1筐体を構成する材料の熱伝導率よりも小さいことを特徴とする。
本発明の態様8は、上記態様1~7のいずれかにおいて、前記第1筐体は、固定ねじにより前記第2筐体に固定されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の態様9は、上記態様4~6のいずれかにおいて、前記第1筐体は、前記位置決め部としての第1ねじ穴を有し、前記第2筐体は、前記位置決め部としての第2ねじ穴を有し、前記第1筐体は、実質的に重ね合わせた前記第1ねじ穴及び前記第2ねじ穴に固定ねじを挿入することにより、前記第2筐体に固定されていることを特徴とする。
【0019】
本発明の態様10は、上記態様1~9のいずれかにおいて、前記第1筐体は、前記シール部材が嵌合され得るシール溝を有することを特徴とする。
本発明の態様11は、上記態様1~10のいずれかにおいて、前記シール部材は、エラストマー材料により構成されていることを特徴とする。
本発明の態様12は、上記態様1~11のいずれかにおいて、前記シール部材は、フッ素ゴム又はシリコーンゴムにより構成されていることを特徴とする。
本発明の態様13は、上記態様1~12のいずれかにおいて、前記第1筐体は、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂又はポリアミド樹脂により構成されていることを特徴とする。
本発明の態様14は、上記態様1~13のいずれかにおいて、前記第2筐体は、非磁性材料により構成されていることを特徴とする。
本発明の態様15は、上記態様1~14のいずれかにおいて、前記移動体が、所定の回転軸を中心に回転する回転体であることを特徴とする。
本発明の態様16は、上記態様1~14のいずれかにおいて、前記移動体が、直線移動する直線移動体であることを特徴とする。
【0020】
本発明の態様17は、移動体の移動に伴い強度又は角度が変化する磁界を検出するために用いられる磁気センサモジュールであって、磁界発生部から発生する磁界を検知する磁界検出部と、前記磁界検出部を露出させるようにして収容する収容部を有する第1筐体とを備え、前記磁界検出部は、前記磁界発生部から発生し、移動体の移動に伴い強度又は角度が変化した前記磁界が印加される位置に設けられており、前記第1筐体は、前記移動体を移動可能に収容する第2筐体に、前記磁界検出部と前記移動体との間に前記第2筐体を挟むように取付可能に構成されていることを特徴とする磁気センサモジュールである。
【0021】
本発明の態様18は、移動体の移動に伴い強度又は角度が変化する磁界を検出するために用いられる磁気センサモジュールであって、磁界発生部から発生する磁界を検知する磁界検出部と、前記磁界検出部を露出させるようにして収容する収容部を有する第1筐体とを備え、前記磁界検出部は、前記磁界発生部から発生し、移動体の移動に伴い強度又は角度が変化した前記磁界が印加される位置に設けられており、前記第1筐体は、前記磁界検出部を取り囲むようにして設けられているシール部材を有し、前記第1筐体は、前記移動体を移動可能に収容する第2筐体に、前記磁界検出部と前記移動体との間に前記第2筐体を挟むように、かつ前記収容部内が前記シール部材及び前記第2筐体により密閉されるように取付可能に構成されていることを特徴とする磁気センサモジュールである。
【0022】
本発明の態様19は、上記態様1~16のいずれかの磁界検出装置を備えることを特徴とする電気制御装置である。
本発明の態様20は、上記態様1~16のいずれかの磁界検出装置を少なくとも備え、前記移動体が、所定の回転軸を中心に回転可能なモータシャフトであり、前記磁界検出装置は、前記モータシャフトの回転角度を検出することを特徴とするモータである。
本発明の態様21は、上記態様1~16のいずれかの磁界検出装置を少なくとも備え、前記移動体が、所定の回転軸を中心に回転可能なシャフトであり、前記磁界検出装置は、前記シャフトの回転角度を検出することを特徴とするトランスミッションである。
【0023】
本発明の実施の形態に係る磁界検出装置について、図面を参照しながら説明する。
なお、本実施形態に係る磁界検出装置において、必要に応じ、いくつかの図面中、「X軸、Y軸及びZ軸」を規定している。ここで、X軸及びY軸は、磁石の第1面及び第2面と平行な面内における互いに直交する方向であり、Z軸は、回転軸の軸方向である。また、「平行」とは、対象となる2つの線分、軸、方向、面等が完全な平行状態であることに加え、ほぼ平行であること(交差角度が5°以下の範囲)も含む概念であり、「直交」とは、対象となる2つの線分、軸、方向、面等が完全な直交状態であることに加え、ほぼ直交であること(交差角度が85~95°の範囲)も含む概念であるものとする。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係る磁界検出装置1は、磁気センサモジュール2と、当該磁気センサモジュール2が取り付けられている第2ハウジング31と、第2ハウジング31内に回転可能に収容されている回転体32と、一方向の着磁されている磁石41とを備える。磁石41は、回転体32の一端部32A(磁気センサモジュール2側に位置する端部)に、回転体32と一体的に回転可能に設けられている。本実施形態に係る磁界検出装置1は、回転軸Cを中心として回転する回転体32と一体的に回転する磁石41の回転角度を検出するために用いられる。
【0025】
磁気センサモジュール2は、回転体32と一体的に回転する磁石41から発生し、印加される磁界の角度の変化を検知する磁界検出部51と、磁界検出部51及び演算処理部52(図4参照)を搭載した回路基板53と、磁界検出部51を露出させるようにして当該回路基板53を収容する収容部23を有する第1ハウジング21とを有する。
【0026】
磁界検出部51は、例えば、自由層及び磁化固定層を含む積層構造を有するTMR素子、GMR素子等の磁気抵抗効果素子、ホール素子等を含んでいてもよい。磁界検出部51は、印加される磁界の変動を表す電気信号を演算処理部52(図4参照)に出力する。
【0027】
演算処理部52は、磁界検出部51から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D(アナログ-デジタル)変換部521と、A/D変換部521によりデジタル変換されたデジタル信号を演算処理する演算部522とを含んでいればよい(図4参照)。
【0028】
磁界検出部51から出力される信号(アナログ信号)は、A/D変換部521によりデジタル信号に変換され、当該デジタル信号が演算部522に入力される。演算部522は、A/D変換部521によりアナログ信号から変換されたデジタル信号に基づく演算処理等を行う。この演算部522は、例えば、マイクロコンピュータ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等により構成される。
【0029】
本実施形態において、磁界検出部51と演算処理部52とは、両者が一体的に(モノリシックに)形成されワンチップ化されたものであってもよいし、両者が樹脂封止されワンパッケージ化されたものであってもよいし、両者が別個独立に樹脂封止されたものであってもよい。
【0030】
図2に示すように、第1ハウジング21は、第1面22A及び当該第1面22Aに対向する第2面22Bを有するハウジング本体部22と、ハウジング本体部22の第1面22Aに形成されている収容部23と、ハウジング本体部22の第1面22Aであって、収容部23を取り囲むように形成されているシール溝24と、ハウジング本体部22の外周縁に設けられている複数(本実施形態においては3個)の第1位置決め部25と、ハウジング本体部22の第2面22B側から収容部23に収容されている回路基板53に電気的に接続され、演算処理部52により演算処理された信号等を外部に出力するためのコネクタ部26とを備える。シール溝24には、例えばOリング等のシール部材27が嵌合されている。
【0031】
ハウジング本体部22は、第1面22A側からの平面視において、略円形状を有しており、その実質的に中央に収容部23が形成され、収容部23の外側を取り囲む略円環状のシール溝24が形成されている。
【0032】
収容部23は、平面視略方形状の凹部であり、回路基板53を収容可能な大きさを有する。収容部23の凹部の深さは、回路基板53を収容し、第1ハウジング21が第2ハウジング31の取付部311に取り付けられた際に、回路基板53に搭載されている磁界検出部51が当該取付部311に当接しない程度であって、磁石41と磁界検出部51との間の距離が所望とする長さになる程度であればよい。
【0033】
シール溝24は、第1面22A側からの平面視において、収容部23の外側を取り囲む略円環状の溝である。シール溝24の幅は、シール部材27が嵌合され得る程度であればよい。シール溝24の深さ24Dは、第1ハウジング21が第2ハウジング31の取付部311に取り付けられた際に、シール部材27のつぶし代に応じて適宜設定され得る。
【0034】
複数の第1位置決め部25は、ハウジング本体部22の外周に設けられている。本実施形態においては、3個の第1位置決め部25が、それぞれ120°間隔でハウジング本体部22の外周に設けられている。第1位置決め部25の中心には、固定ねじ6を挿入可能な第1ねじ孔部251が形成されている。第1ねじ孔部251は、第2ハウジング31の取付部311に形成されている第2ねじ孔部33に位置合わせすることで、第1ハウジング21を第2ハウジング31に取り付ける位置を規定する役割を果たす。第1ねじ孔部251と第2ハウジング31の第2ねじ孔部33とを位置合わせし、第1ねじ孔部251及び第2ねじ孔部33に固定ねじ6を挿通して螺合することで、第1ハウジング21及び第2ハウジング31を固定することができる。
【0035】
各第1位置決め部25は、ハウジング本体部22の第1面22Aとの間に段差を有するようにハウジング本体部22の外周に設けられている。当該段差の高さ25Tは、シール溝24の深さ24D、シール部材27の断面直径27D及びシール部材27のつぶし代に応じて適宜設定される。例えば、シール溝24の深さ24DがA(mm)、シール部材27の断面直径27DがB(mm)、シール部材27のつぶし代がC(mm)である場合、段差の高さ25Tは、数式「B-(C+A)」により算出される値であればよい。
【0036】
第1ハウジング21を構成する材料としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂等の合成樹脂等が挙げられる。シール部材27を構成する材料としては、対候性に優れたエラストマー材料であるのが好ましく、第1ハウジング21を構成する材料の熱伝導率よりも小さい熱伝導率を有する材料であるのがより好ましい。このようなエラストマー材料としては、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。本実施形態において、第1ハウジング21と第2ハウジング31の取付部311との間の密閉空間内に磁界検出部51が位置することになるが、磁界検出部51を構成する磁気抵抗効果素子等の抵抗値は温度により変化するため、磁界検出部51に熱が伝わりにくいことが、検出精度の向上のために必要である。この点、シール部材27を構成するエラストマー材料の熱伝導率が、第1ハウジング21を構成する材料の熱伝導率よりも小さいことで、シール部材27を介して形成される密閉空間内に位置する磁界検出部51に熱が伝わりにくくなるため、検出精度を向上させることができる。
【0037】
第2ハウジング31は、一端部32Aに磁石41が設けられた回転体32を回転可能に収容するものであり、略円筒形状を有する。第2ハウジング31の壁部のうち、磁石41に対向する壁部の外面が、第1ハウジング21が取り付けられている取付部311である。
【0038】
取付部311は、相対的に厚みの厚い第1取付部3111と、相対的に厚みの薄い第2取付部3112とを含む。第1取付部3111は、第2取付部3112を取り囲むようにして位置している。第2取付部3112は、磁石41と磁界検出部51との間に位置している。第1取付部3111には、第2位置決め部としての第2ねじ孔部33が形成されている。第2ねじ孔部33は、取付部311に取り付けられる第1ハウジング21の第1ねじ孔部251に対応する位置に形成されている。
【0039】
第1取付部3111の厚さ3111Tは、第2ねじ孔部33を形成することができ、かつ第2ハウジング31の強度に影響を及ぼさない程度に適宜設定される。第2取付部3112の厚さ3112Tは、磁石41と磁界検出部51との間の距離を所望の長さとすることができる程度に適宜設定される。
【0040】
磁石41は、回転軸Cを中心として回転する回転体である回転体32と一体的に回転可能に設けられており、回転体32の回転に連動するようにして回転軸Cを中心として回転する。磁石41は、回転体32の回転軸Cに直交する第1面41Aと、第1面41Aの反対側に位置する第2面41Bとを有する。磁石41の第1面41A及び第2面41Bは、XY平面に平行な面である。磁石41は、第1面41A及び第2面41Bの重心(中心)と回転体32の回転軸Cとを一致させるようにして、回転体32の一端部32Aに取り付けられている(図1等を参照)。磁石41は、回転体32の回転軸Cに直交する一方向(第1面41A及び第2面41Bに平行な一方向)に磁化されている。
【0041】
第2ハウジング31を構成する材料としては、非磁性材料であればよく、例えば、アルミニウム、亜鉛、銅、又はそれらの合金等の非磁性金属材料等であればよい。
【0042】
本実施形態に係る磁界検出装置1は、電気制御装置に備えられ得る。本実施形態における電気制御装置としては、例えば、モータユニット、トランスミッション、電動パワーステアリング装置等の車載用電気制御装置等が挙げられる。本実施形態におけるモータユニット300は、例えば、図6に示すように、モータ301と、磁界検出装置1と、ECU(Electronic Control Unit)302とを含む。このモータユニット300において、モータ301の回転角度が磁界検出装置1により検出され、当該回転角度に関する情報がECU302に送信される。また、本実施形態におけるトランスミッション400は、例えば、図7に示すように、磁界検出装置1と、マニュアルシャフト401と、ECU(Electronic Control Unit)402とを含む。このトランスミッション400において、運転者によるシフト操作に応じてマニュアルシャフト401が回転し、そのマニュアルシャフト401の回転角度が磁界検出装置1により検出され、当該回転角度に関する情報がECU402に送信される。上述したように、本実施形態に係る磁界検出装置1によれば、回転角度を高精度に検出することができるため、上記電気制御装置においてモータやハンドルの回転角度、エンジンのトルク、ギヤの位置等を検出するためのセンサとして特に有用である。
【0043】
本実施形態に係る磁界検出装置1によれば、磁界発生部としての磁石41と磁界検出部51との間の距離を相対的に短くすることができるため、磁石41として相対的に小さなものや、安価なものを用いても磁界検出部51に対し十分に安定した磁界を印加することができ、磁界検出装置1の小型・軽量化や製造コストの低減が可能となる。
【0044】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。また、上記実施形態に開示された各要素の寸法やレイアウトなどは、例示であってこれに限定されるものではない。
【0045】
上記実施形態に係る磁界検出装置1において、収容部23を取り囲むシール溝24にシール部材27が嵌合されているが、この態様に限定されるものではない。例えば、図8に示すように、収容部23の外周縁に連続し、収容部23の凹部の深さよりも浅い段差部にシール部材27が嵌められていてもよい。
【0046】
上記実施形態に係る磁界検出装置1において、第2ハウジング31の取付部311の外面(第1ハウジング21に対向する面)は平坦面であり、第2取付部3112は第2ハウジング31の内側からの凹部として構成されることで相対的に薄く構成されているが、この態様に限定されるものではない。例えば、図9に示すように、第2取付部3112は、第2ハウジング31の取付部311の外面(第1ハウジング21に対向する面)に凹部が形成されることで相対的に薄く構成されていてもよい。この場合において、第1ハウジング21は、凹部として構成される収容部23を備えていなくてもよく、ハウジング本体部22の第1面22A上におけるシール溝24に取り囲まれた領域が収容部23であればよい。これにより、当該収容部23、シール部材27及び第2取付部3112により囲まれた密閉空間23’内に磁界検出部51を位置させることができる。
【0047】
上記実施形態に係る磁界検出装置1において、移動体としての回転体32の一端部32Aに磁石41が設けられ、当該回転体32と一体的に回転する磁石41から発生し、印加される磁界の角度の変化を磁界検出部51において検出する態様を例に挙げて説明したが、この態様に限定されるものではない。例えば、XY平面内において直線移動する移動体32に磁石41が設けられ、当該磁石41が移動体32と一体的に直線移動し、それに伴い磁石41から発生し、印加される磁界の強度又は角度の変化を磁界検出部51において検出するものであってもよい(図10参照)。また、図11に示すように、磁石41は、第1ハウジング21内に設けられ、移動体32に磁性体35が設けられ、移動体32と一体的に磁性体35が直線移動することに伴い、磁石41から発生し、印加される磁界の強度又は角度の変化を磁界検出部51において検出するものであってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…磁界検出装置
2…磁気センサモジュール
21…第1ハウジング(第1筐体)
23…収容部
31…第2ハウジング(第2筐体)
311…取付部
32…回転体
41…磁石
51…磁界検出部
図1
図2
図3
図4
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図6
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