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特許7561809電磁波シールドシート、プリント配線板、並びに電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電磁波シールドシート、プリント配線板、並びに電子機器
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20240927BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20240927BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240927BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H05K9/00 R
B32B7/022
B32B27/00 B
C08L101/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022179332
(22)【出願日】2022-11-09
(65)【公開番号】P2024068759
(43)【公開日】2024-05-21
【審査請求日】2023-02-28
【審判番号】
【審判請求日】2023-11-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100124936
【弁理士】
【氏名又は名称】秦 恵子
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 詩織
(72)【発明者】
【氏名】森 祥太
【合議体】
【審判長】篠塚 隆
【審判官】伊藤 隆夫
【審判官】北元 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-59708(JP,A)
【文献】特開2018-41962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護層(A)の一方の面にシールド層(B)が配置された電磁波シールドシートであって、
保護層(A)の他方の表面が以下の(1)~(4)を満たす電磁波シールドシート。
(1)動摩擦係数が0.27~0.6である。
(2)JIS K 5600に準拠して求めた鉛筆硬度が2H~3Hである。
(3)ISO 25178-2:2012に準拠して求めた突出山部高さ(Spk)が0.15~4.6μmである。
(4)ISO 25178-2:2012に準拠して求めた保護層(A)の他方の表面の算術平均高さ(Sa)が、0.08~3.9μmである
【請求項2】
保護層(A)はフィラーを含み、前記フィラーが、セラミック、顔料のいずれかである、請求項1記載の電磁波シールドシート。
【請求項3】
前記フィラーが、保護層(A)の成分全量に対して4~48重量%である請求項2記載の電磁波シールドシート。
【請求項4】
ISO 25178-2:2012に準拠して求めた保護層(A)の他方の表面の表面性状のアスペクト比(Str)が、0.3~1.0である、請求項1~3いずれか1項記載の電磁波シールドシート。
【請求項5】
請求項4記載の電磁波シールドシートを具備する、電磁波シールドシート付きプリント配線板。
【請求項6】
請求項5記載の電磁波シールドシート付きプリント配線板を具備する、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電磁波シールドシートに関する。また、プリント配線板および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末、PC、サーバー等をはじめとする各種電子機器には、プリント配線板等の基板が内蔵されている。これらの基板には、外部からの磁場や電波による誤動作を防止するために、また、電気信号からの不要輻射を低減するために、電磁波シールド構造が設けられている(特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1には、セパレートフィルムの保護層に対する接着力を適度にコントロールして、過剰に大きな接着力や過剰に小さな接着力で接着することによる不具合を防止するシールドフィルムの提供を課題として、一方面全体に凹凸部が形成されたセパレートフィルムの当該凹凸部が形成された面側に、離型剤を介して樹脂をコーティングすることにより保護層を形成し、セパレートフィルムを保護層から剥離したときの保護層の表面粗さ(Ra)が、0.2μm~1.0μmであるシールドフィルムが開示されている。
特許文献2には、指紋の拭き取りによる変色が生じにくい電磁波シールドフィルムの実現を課題として、絶縁層と、シールド層とを備え、絶縁層は表面におけるSaが0.8μm以上である電磁波シールドフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-112576号公報
【文献】特開2018-41962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
折り曲げ可能なプリント配線板に電磁波シールドシートが積層された電磁波シールドシート付きプリント配線板は、通常、電子機器へ組み込まれる際に折り畳まれる工程が発生する。電磁波シールドシートが積層された面を内面として電磁波シールドシート付きプリント配線板が折り畳まれた場合、電磁波シールドシートの保護層同士が接触した状態が生じ、しばしば接触した保護層同士が結着してしまい、歩留まりを低下させるという問題がある。(以下、ブロッキングという)
【0006】
また、電磁波シールドシートを積層したプリント配線板には、コネクタ部分の補強を目的としてステンレス板(SUS板)が積層されることがあり、折り畳み工程時に硬質なSUS板が電磁波シールドシートの保護層と接触し、保護層が傷ついてしまう問題があり、前述のような裂傷を生じない電磁波シールドシートが求められている。
【0007】
更に、電磁波シールドシートを積層したプリント配線板の製造工程では、微細な塵、埃が電磁波シールドシートの保護層表面に付着することがあり、これらの塵、埃が保護層の凹凸にはまり込んで除去が困難となる問題がある。
【0008】
本開示は上記背景に鑑みて成されたものであり、ブロッキング耐性が高く、優れた耐裂傷性と防塵性を兼ね備える電磁波シールドシート、プリント配線板、並びに電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、以下の態様において、本開示の課題を解決し得ることを見出し、本開示を完成するに至った。
[1]:保護層(A)の一方の面側にのみ、シールド層(B)、が配置された電磁波シールドシートであって、170℃30分で加熱後の保護層(A)が以下の(1)~(3)、を満たす電磁波シールドシート。
(1)動摩擦係数が0.01~0.9である。
(2)JIS K 5600に準拠して求めた鉛筆硬度がHB~9Hである。
(3)保護層(A)のシールド層(B)が配置された側とは反対表面における、
ISO 25178-2:2012に準拠して求めた突出山部高さ(Spk)が
0.001以上、10μm未満である。
[2]:ISO 25178-2:2012に準拠して求めた保護層(A)の他方の表面の算術平均高さ(Sa)が0.01~9μmである、[1]記載の電磁波シールドシート。
[3]:ISO 25178-2:2012に準拠して求めた保護層(A)の他方の表面の表面性状のアスペクト比(Str)が0.3~1.0である、[1]記載の電磁波シールドシート。
[4]:[1]~[3]いずれか1項に記載の電磁波シールドシートを具備する、電磁波シールドシート付きプリント配線板。
[5]:[4]記載の電磁波シールドシート付きプリント配線板を具備する、電子機器。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ブロッキング耐性が高く、優れた耐裂傷性と防塵性を兼ね備える電磁波シールドシート、プリント配線板、並びに電子機器を提供できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る電磁波シールドシートの前駆体の一例を示す模式的断面図。
図2】突出山分高さ(Spk)を含む、粗さ曲線の概念図。
図3】本実施形態に係るプリント配線板の要部の一例を示す模式的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示を適用した実施形態の一例について説明する。なお、本開示の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本開示の範疇に含まれる。また、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を含む。また、本明細書において「フィルム」や「シート」は、厚みによって区別されないものとする。また、本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。また、「α層の上に積層されたβ層」とは、α層の直上にβ層が直接積層されている積層構成の他、α層の上に他の層を介してβ層が積層されている積層構成を含む。また、本明細書で特定する数値は、実施例に開示した方法により求められる値である。
【0013】
[[電磁波シールドシート]]
本開示の実施形態に係る電磁波シールドシート(以下、「本シート」とも記す)の前駆体の一例を図1に示す。図1に示すように、電磁波シールドシート前駆体1’は、保護層前駆体(A’)と、この保護層前駆体(A’)の一方の面側にのみシールド層(B)またはシールド層前駆体(B’)を備えるため、保護層前駆体(A’)の他方の面、即ちシールド層(B)等が接していない面は最外層となる。電磁波シールドシート前駆体1’は、プリント配線板等の被着体に加熱して接合され、被着体の電磁波遮蔽部材として機能する。被着体への接合はシールド層前駆体(B’)が接着性を有する場合にはシールド層(B)を介して接合され、シールド層(B)が接着性を有しない場合には接合層前駆体(C’)を利用して接合してもよい。
【0014】
[保護層(A)]、[保護層前駆体(A’)]
本シートの保護層(A)は、被着体に接合された状態で、シールド層(B)やその他の層を保護する機能、およびシールド層(B)が外部導体と電気的に接続することを防止する機能を有する。
【0015】
(1)(保護層(A)の動摩擦係数)
本シートの保護層(A)の他方の表面、即ちシールド層(B)等が接していない面の動摩擦係数が0.01~0.9である。動摩擦係数が0.01~0.9であることで、本シート付きのプリント配線板を折り畳む際、保護層(A)同士が接触しても結着が起こらず、ブロッキング耐性を向上することができる。保護層(A)の170℃30分で加熱後における動摩擦係数は、0.05~0.8であることが好ましく、0.1~0.7であることがより好ましい。
なお、前記動摩擦係数は、保護層前駆体(A’)を具備する電磁波シールドシート前駆体1’を170℃で30分間加熱した場合の値である。
【0016】
保護層(A)の他方の表面の動摩擦係数を前述の範囲とする方法は、特に制限されず、従来公知の方法から適宜選択して用いることができるが、後述するように保護層前駆体(A’)に含有されるフィラーの種類、量を選択、調整する方法が好ましい。
【0017】
(2)(保護層(A)の鉛筆硬度)
JIS K 5600に準拠して求めた本シートの保護層(A)の他方の表面の鉛筆硬度は、HB~9Hである。鉛筆硬度がHB~9Hであることで、保護層(A)に物体が接触して摺動された際にも、保護層(A)が十分硬質であることと適度な応力緩和性により、保護層(A)同士が傷つくことなく、耐裂傷性を向上することができる。保護層(A)の他方の表面の鉛筆硬度は、F~8Hであることが好ましく、H~3Hであることがより好ましい。
前記鉛筆硬度は、動摩擦係数の場合と同様、保護層前駆体(A’)を具備する電磁波シールドシート前駆体1’を170℃で30分間加熱した場合の値である。
【0018】
保護層(A)の他方の表面の鉛筆硬度を前述の範囲とする方法は、特に制限されず、従来公知の方法から適宜選択して用いることができるが、後述するように保護層前駆体(A’)に含有されるバインダー中の硬化剤の種類、量を選択、調整する方法が好ましい。
【0019】
(3)(保護層(A)の突出山部高さ(Spk))
ISO 25178-2:2012に準拠して求めた本シートの保護層(A)の他方の表面の突出山部高さ(Spk)は、0.001以上、10μm未満である。
【0020】
図2に示す通り、突出山部高さ(Spk)は、粗さ曲線についての負荷曲線の中央部分において、負荷面積率Smrの差ΔSmrを40%にして引いた負荷曲線の割線が、最も緩い傾斜となる直線を等価直線とし、等価直線が負荷面積率0%と100%の位置で縦軸と交わる二つの高さ位置の間をコア部としたときに、コア部の上にある突出山部の平均高さと定義される。突出山部高さ(Spk)の値は、後述する実施例で示す方法によって求めることができる。
【0021】
保護層(A)の他方の表面の突出山部高さ(Spk)が10未満であることで、当該表面に物体が接触した際に突出部が引っかかって裂傷の起点となることを抑制することができる。また、Spkが0.001以上であることで当該表面に適度な凹凸を形成することができ、塵埃の付着を抑制し防塵性を高めることができる。保護層(A)の他方の表面の突出山部高さ(Spk)は0.01~7であることが好ましく、0.1~5であることがより好ましい。
前記突出山部高さ(Spk)は、動摩擦係数、鉛筆硬度の場合と同様、保護層前駆体(A’)を具備する電磁波シールドシート前駆体1’を170℃で30分間加熱した場合の値である。
【0022】
保護層(A)の他方の表面の突出山部高さ(Spk)を前述の範囲とする方法は、特に限定されず、種々の方法を採用することができる。例えば、(1)保護層(A)表面をバフ研磨など各種研磨法により研磨する方法;(2)所定の凹凸を有する剥離性基材上に保護層前駆体(A’)および保護層(A)を形成して保護層(A)の表面に凹凸を転写する方法などが挙げられる。前記(2)の方法の一種として、剥離性基材(所定の凹凸は有しない)上にフィラーを含む組成物を塗工して乾燥することで、突出山部高さ(Spk)が0.001以上、10μm未満の表面を形成し、当該表面上に保護層前駆体(A’)形成し、保護層(A)の表面に凹凸を転写する方法なども挙げられる。
【0023】
保護層(A)は、前述の動摩擦係数、鉛筆硬度、突出山部高さ(Spk)を充足するのであれば、特に制限されることなく適宜材料を選択可能であるが、バインダーとフィラーを含んでいることが好ましい。
【0024】
(保護層(A)の算術平均高さ(Sa))
ここで算術平均高さSaは、ISO 25178-2:2012規格にて規定され、線の算術平均高さ(Ra)を面に拡張したパラメータであり、測定対象となる表面の平均面に対して、各点の高さの絶対値の平均により算出される値である。
【0025】
保護層(A)の算術平均高さ(Sa)は、0.01~9μmであることが好ましい。算術平均高さ(Sa)が0.01μm以上であることで、適度な高さの凹凸が形成されることで保護層(A)同士の接点が減少し、ブロッキング耐性が向上する。また、適度な高さの凹凸によって塵、埃の付着が抑制できる。一方、Saが9μm以下であることによって、凹凸に塵、埃が入り込むのを抑制できるため、防塵性が向上する。保護層(A)の算術平均高さ(Sa)は、0.05~6μmであることがより好ましく、0.1~4μmであることが更に好ましい。
【0026】
(保護層(A)の表面性状のアスペクト比(Str))
表面性状のアスペクト比(Str)は、ISO 25178-2:2012規格にて規定され、表面性状の等方性、異方性を表す。Strは0~1の結果をとり、0に近い場合は筋目などの規則性の高い凹凸形状が存在し、1に近い場合は表面の凹凸形状が方向に依存しない状態にあることを示す。
【0027】
保護層(A)の表面性状のアスペクト比(Str)は、0.3~1.0であることが好ましい。表面性状のアスペクト比(Str)が0.3以上であることで、表面凹凸形状に等方性を付与することができ、SUS板が保護層(A)に接触した際の応力を十分拡散できるため、耐裂傷性が向上する。保護層(A)の表面性状のアスペクト比(Str)は、0.4~1.0であることがより好ましく、0.5~1.0であることが更に好ましい。
【0028】
[バインダー]
バインダーは、保護層(A)の基体となりフィラーを分散担持する機能を有する。バインダーは、有機物であることが好ましい。バインダーは前述した機能を有するものであれば、特に組成等は制限されないが、樹脂を含むことが好ましい。本開示における樹脂は、通常は固体、半固体、又は凝固体であり、軟化又は溶融範囲を有する、重量平均分子量(Mw)が5,000以上の有機材料、と定義される。
【0029】
[樹脂]
樹脂は、前述した重量平均分子量(Mw)以外には、特に組成、分子構造等は制限されないが、フィラーを分散担持する機能を発現する観点から、樹脂は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、天然樹脂、エラストマー、であることが好ましく、導電性組成物に優れた接着性を付与する観点からは、樹脂は熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0030】
[熱硬化性樹脂]
熱硬化性樹脂は、樹脂のうち、熱硬化性を有するものである。熱硬化性とは「熱によって、重合及び又は架橋反応を生じ、不可逆的に弾性率が上昇すること」と定義される。
【0031】
前述した熱硬化性は、熱硬化性樹脂が反応性官能基を有する場合には、反応性官能基同士が反応することで発現してもよく、また、熱硬化性樹脂と後述する硬化剤のそれぞれに組み込まれた反応性官能基が反応することによって発現してもよい。
【0032】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ウレア樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、メラミン樹脂、ポリオレフィン樹脂、などが挙げられる。
【0033】
バインダーは、更に硬化剤を含んでいてもよい。本発明における硬化剤は、硬化反応を促進し又は調節する物質であり、分子量、あるいは重量平均分子量(Mw)が5,000未満の物質と定義される。硬化反応とは「加熱又は放射線、触媒などのようなその他の手段によって、プリポリマー又は重合組成物を重合及び又は架橋させ、不可逆的に弾性率を上昇させること」と定義される。バインダー中において、熱等の刺激によって重合及び又は架橋を形成し、導電性組成物に強固な接着性を発現させる観点から、本発明のバインダーは硬化剤を含むことが好ましい。
なお、熱硬化性樹脂や硬化剤を用いる場合、熱硬化性樹脂や硬化剤は保護層前駆体(A’)に含まれていればよく、加熱後の保護層(A)においては、硬化反応時などに消失によって、含まれなくなっていても良い。
【0034】
硬化剤は前記熱硬化性樹脂との組み合わせにより硬化性を発揮する公知の化合物の中から適宜選択すればよい。硬化剤としては、例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物、エピスルフィド化合物、アジリジン化合物、イソシアネート化合物、アミン化合物、イソシアネート化合物、イミダゾール化合物、および酸無水物などが挙げられる。
【0035】
エポキシ化合物としては、例えば、グリジシルエーテル型エポキシ化合物、グリジシルアミン型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、環状脂肪族(脂環型)エポキシ化合物等が好ましい。
【0036】
前記グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、ビスフェノールAD型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、a-1-ナフトールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールA型ノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ化合物、臭素化フェノールノボラック型エポキシ化合物、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン等が挙げられる。
【0037】
前記グリシジルアミン型エポキシ化合物としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、トリグリシジルメタアミノフェノール、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン等が挙げられる。
【0038】
前記グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、例えば、ジグリシジルフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、ジグリシジルテトラヒドロフタレート等が挙げられる。
【0039】
前記環状脂肪族(脂環型)エポキシ化合物としては、例えば、エポキシシクロヘキシルメチル-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(エポキシシクロヘキシル)アジペート等が挙げられる。
【0040】
オキセタン化合物は、例えば、1,4-ビス{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3-エチル-3-{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン、1,3-ビス[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]ベンゼン、4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、(2-エチル-2-オキセタニル)エタノールとテレフタル酸とのエステル化物、(2-エチル-2-オキセタニル)エタノールとフェノールノボラック樹脂とのエーテル化物、(2-エチル-2-オキセタニル)エタノールと多価カルボン酸化合物とのエステル化物等が挙げられる。
【0041】
エピスルフィド化合物は、例えば、ビス(1,2-エピチオエチル)スルフィド、ビス(1,2-エピチオエチル)ジスルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)メタン、ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピルジチオ)メタン、ビス(2,3-エピチオプロピルジチオ)エタン、ビス(6,7-エピチオ-3,4-ジチアヘプチル)スルフィド、ビス(6,7-エピチオ-3,4-ジチアヘプチル)ジスルフィド、1,4-ジチアン-2,5-ビス(2,3-エピチオプロピルジチオメチル)、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルジチオメチル)ベンゼン、1,6-ビス(2,3-エピチオプロピルジチオメチル)-2-(2,3-エピチオプロピルジチオエチルチオ)-4-チアヘキサン、1,2,3-トリス(2,3-エピチオプロピルジチオ)プロパン等が挙げられる。
【0042】
アジリジン化合物は、例えばトリメチロールプロパン-トリ-a-2-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-a-2-アジリジニルプロピオネート、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N’-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)等が挙げられる。
【0043】
アミン化合物は、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メチレンビス(2-クロロアニリン)、メチレンビス(2-メチル-6-メチルアニリン)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、n-ブチルベンジルフタル酸等が挙げられる。
【0044】
イソシアネート化合物は、例えばトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0045】
イミダゾール化合物は、例えば2-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイトなどが挙げられる。
【0046】
酸無水物は、テトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、無水メチルナジック酸、無水トリメリット酸、および無水ピロメリット酸等が挙げられる
【0047】
硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂を100質量部としたときに、1~70質量部であることが好ましく、3~50質量部であることがより好ましく、3~30質量部であることがさらに好ましい。
硬化剤の含有量が1質量部以上であることで、保護層(A)を加熱後に強固な架橋構造を形成することができ、ブロッキング耐性と耐裂傷性を向上することができる。また、硬化剤の含有量が70質量部以下であることで、過剰な架橋構造の形成を抑制し、折り畳み工程時の保護層(A)のクラック発生を抑制できる。
【0048】
[フィラー]
フィラーは保護層(A)中に分散され、保護層(A)の改質に寄与する。
【0049】
フィラーとしては、セラミック、顔料が挙げられる。セラミックは保護層(A)の絶縁性を向上できる点で好ましい。セラミックのなかでも、体積抵抗率が1.0×1010Ω・cm以上であるものが好ましい。セラミックの体積抵抗率が1.0×1010Ω・cm以上であることで、保護層(A)の絶縁性をより向上できる。セラミックの体積抵抗率は、1.0×1012Ω・cm以上であることがより好ましく、1.0×1014Ω・cm以上であることが更に好ましい。体積抵抗率1.0×1010Ω・cm以上の物質としては、酸化アルミニウムまたは三酸化アルミニウム(アルミナ)、二酸化ジルコニウム(ジルコニア)、二酸化ケイ素(シリカ)、炭化ホウ素、窒化アルミ、窒化ホウ素、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化チタン、等のセラミックが挙げられ、その中でも、より好ましい物質は二酸化ジルコニウム(ZrO;体積抵抗率1.0×1012Ω・cm)であり、更に好ましい物質はシリカ(SiO;体積抵抗率1.0×1014Ω・cm)である。セラミックの体積抵抗率はJIS C2141に準拠して測定できる。また、顔料としては、カーボンブラック、カーボングラファイト、カーボンナノチューブ、グラフェンが例示でき、なかでもカーボンブラックは分散性に優れ、保護層(A)を効率的に改質できる点から好適に用いることができる。フィラーの形状は限定されないが、例えば、塊状、不定形状、略球状、球状、真球状が例示できる。
【0050】
フィラーの含有量は、保護層(A)の成分全量に対して1~50重量%であることが好ましい。フィラーの含有量が1重量%であることで、動摩擦係数を0.9以下の範囲とすることが可能となる。また、フィラーの含有量が50重量%であることで鉛筆硬度をH以上とすることが可能となる。フィラーの含有量は、3~40重量%であることがより好ましい。
【0051】
保護層(A)に含まれるフィラーの平均粒子径D50は、0.02~20μmであることが好ましい。フィラーの平均粒子径D50が0.02以上と十分大きいことで、保護層(A)に十分な改質効果を与え、前述(1)~(3)を所望の範囲とすることができる。フィラーの平均粒子径D50は、0.02~10μmであることがより好ましい。
【0052】
保護層(A)の他に任意成分として、シランカップリング剤、防錆剤、還元剤、酸化防止剤、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤、充填剤、難燃剤、染料などを配合できる。
【0053】
[シールド層(B)]
シールド層(B)は、外部からの磁場や電波による誤動作を防止する役割、または/および電気信号からの不要輻射を低減する役割を担う。また前述の通り、被着体への接合はシールド層前駆体(B’)が接着性を有する場合にはシールド層(B)を介して被着体に接合され、シールド層(B)が接着性を有しない場合には後述する接合層前駆体(C’)を利用して接合してもよい。
接着性を有しないシールド層(B)としてはバインダーを含まない金属層(B-1)、接着性を有するシールド層前駆体(B’)としてはバインダーを含む導電樹脂層前駆体(B-2’)から形成される導電樹脂層(B-2)が主に例示できる。バインダーを含まない金属層(B-1)とバインダーを含む導電樹脂層前駆体(B-2’)とをさらに組み合わせてシールド層(B)を形成することもできる。
電磁波シールドシート前駆体1’におけるシールド層前駆体(B’)は、後述する接合層前駆体(C’)の場合と同様に、熱圧着の際、被着体に対する接着性を有し、熱圧着後、被着体に接合できていればよい。
【0054】
[金属層(B-1)]
[金属層(B-1)の成分]
本開示の金属層(B-1)は、例えば、金属箔、金属蒸着膜、金属メッキ膜を使用できる。
金属箔に使用する金属は、例えばアルミニウム、銅、銀、金等の導電性金属が好ましく、一種類の金属、もしくは複数金属の合金のいずれも使用することができる。高周波シールド性およびコストの面から銅、銀、アルミニウムがより好ましく、銅が更に好ましい。銅は、例えば、圧延銅箔または電解銅箔を使用することが好ましい。
金属蒸着膜および金属メッキ膜に使用する金属は、例えばアルミニウム、銅、銀、金等の導電性金属の一種類、もしくは複数金属の合金を使用することが好ましく、銅、銀がより好ましい。金属箔、金属蒸着膜、金属メッキ膜は一方の表面、あるいは両表面を金属、あるいは防錆剤等の有機物で被覆してもよい。
【0055】
[金属層(B-1)の厚み]
金属層(B-1)の厚みは、0.05~5.0μmであることが好ましい。金属層(B-1)の厚みを0.3μm以上とすることで、配線回路基板から発生する電磁波ノイズの波長に対し、透過を抑制することができ、十分な高周波シールド性を発現することができる。金属層(B-1)の厚み下限は、0.5μmがより好ましい。金属層(B-1)の厚みを5.0μm以下とすることで、電磁波シールドシートの折曲性が向上する。金属層の厚み上限は3.5μmがより好ましい。
【0056】
[開口部]
金属層(B-1)は、複数の開口部を有していてもよく、開口率は0.10~20%であることが好ましい。開口部を有することでハンダリフロー耐性が向上する。開口部を有することで、電磁波シールドシートを具備するプリント配線板をハンダリフロー処理した際に、配線回路基板のポリイミドフィルムやカバーレイ接着剤に含まれる揮発成分を外部に逃がし、カバーレイ接着剤および電磁波シールドシートの界面剥離による外観不良の発生を抑制することができる。
【0057】
金属層(B-1)表面から見た開口部の形状は、例えば、真円、楕円、四角形、多角形、星形、台形、枝状等、必要に応じて各形状を形成することができる。製造コストおよび金属層の強靭性確保の観点から、開口部の形状は、真円、および楕円とすることが好ましい。
【0058】
[金属層(B-1)の開口率]
金属層(B-1)の開口率は、下記数式(1)で求めることができる。
数式(1)
(開口率[%])=(単位面積当たりの開口部の面積)/(単位面積当たりの開口部の面積+単位面積当たりの非開口部の面積)×100
【0059】
開口率の測定は、例えば、金属層(B-1)の面方向から垂直にレーザー顕微鏡および走査型電子顕微鏡(SEM)で500~2000倍に拡大した画像を用いて、開口部と非開口部を2直化し、単位面積当たりの2直化した色のピクセル数をそれぞれの面積とすることで求めることができる。
【0060】
[開口部を有する金属層(B-1)の製造方法]
開口部を有する金属層(B-1)の製造方法は、従来公知の方法を適用することができ、金属箔上にパターンレジスト層を形成し金属箔をエッチングして開口部を形成する方法(i)、スクリーン印刷によって所定のパターンに導電性ペーストを印刷する方法(ii)、所定のパターンでアンカー剤をスクリーン印刷しアンカー剤印刷面のみに金属メッキする方法(iii)、および特開2015-63730号公報に記載されている製造方法(iv)等が適用できる。
すなわち、支持体に水溶性、又は溶剤可溶性インクをパターン印刷し、その表面に金属蒸着膜を形成しパターンを除去する。その表面に離形層を形成し電解メッキすることでキャリア付開口部を有する金属層を得ることができるが、これらの中でもパターンレジスト層を形成し金属箔をエッチングする開口部形成方法(i)が、開口部の形状を精密に制御できるため好ましい。但し、その他の方法でも開口部の形状を制御すればよく、金属層(B-1)の製造方法はエッチング工法(i)に制限されるものではない。
【0061】
[導電樹脂層(B-2)]、[導電樹脂層前駆体(B-2’)]
本開示の導電樹脂層(B-2)は、主にバインダーと導電性フィラーを含有し、等方導電性を有する。等方導電性とは電磁波シールドシートを水平に置いた状態で、上下方向および水平方向に導電性を有するものである。
バインダーは、導電樹脂層(B-2)の基体となりフィラーを分散担持する機能を有する。バインダーは、有機物であることが好ましい。導電樹脂層(B-2)に用いるバインダーは、保護層(A)と同様の材料から適宜選択して用いることができる。バインダーとして熱硬化性樹脂や硬化剤を用いる場合、熱硬化性樹脂や硬化剤は導電樹脂層前駆体(B’)に含まれていればよく、加熱後の導電樹脂層(B)には含まれなくなっていても良い。
【0062】
[導電性フィラー]
導電性フィラーである導電性微粒子は、金、白金、銀、銅およびニッケル等の導電性金属、ならびにその合金、ならびに導電性ポリマーの微粒子が好ましい。また単一組成の微粒子ではなく金属や樹脂を核体とし、前記核体の表面を被覆する被覆層を導電性が高い素材で形成した複合微粒子がコストダウンの観点から好ましい。
核体は、ニッケル、シリカ、銅および樹脂から選択することが好ましく、導電性の金属およびその合金がより好ましい。
被覆層は、導電性が優れる素材であればよく、導電性金属または導電性ポリマーが好ましい。導電性金属は、例えば、金、白金、銀、錫、マンガン、およびインジウム等、ならびにその合金が挙げられる。また導電性ポリマーは、ポリアニリン、ポリアセチレン等が挙げられる。これらの中でも導電性の面から銀が好ましい。
導電性微粒子は、単独または2種類以上を併用できる。
【0063】
複合微粒子は、核体100重量部に対して、1~40重量部の割合で被覆層を有することが好ましく、5~30重量部がより好ましい。1~40重量部で被覆すると、導電性を維持しながら、よりコストダウンができる。なお複合微粒子は、被覆層が核体を完全に覆うことが好ましい。しかし、実際には、核体の一部が露出する場合がある。このような場合でも核体表面面積の70%以上を導電性物質が覆っていれば、導電性を維持しやすい。
【0064】
導電性微粒子の形状は、所望の導電性が得られればよく形状は限定されない。具体的には、例えば、球状、フレーク状、葉状、樹枝状、プレート状、針状、棒状、ブドウ状が好ましい。
【0065】
導電性微粒子の平均粒子径は、D50平均粒子径であり、1~100μmが好ましく、3~50μmがより好ましい。
なお、D50平均粒子径は、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置LS13320(ベックマン・コールター社製)を使用し、トルネードドライパウダーサンプルモジュールにて、導電性微粒子を測定して得た数値であり、粒子径累積分布における累積値が50%の粒子径である。なお、屈折率の設定は1.6とした。
【0066】
導電樹脂層(B-2)中の導電フィラーの含有量は、導電樹脂層(B-2)に接着性を付与する場合は、導電樹脂層(B-2)の成分全量に対して20~80重量%であることが、被着体への接着を良好とする観点から好ましく、導電樹脂層(B-2)に接着性を付与しない場合は、導電樹脂層(B-2)の成分全量に対して50~90重量%であることが、電磁波シールド性の観点から好ましい。
【0067】
[接合層(C)]、[接合層前駆体(C’)]
接合層前駆体(C’)は、本シートを被着体に接合する役割を担う。電磁波シールドシート前駆体1’の被着体への接合は、通常、熱圧着により行われる。電磁波シールドシート前駆体1’における接合層前駆体(C’)は、熱圧着の際、被着体に対する接着性を有し、熱圧着後、接合層(C)として被着体に接合できていればよい。
【0068】
接合層(C)は、バインダーを含む。バインダーは、接合層(C)の基体となり、接合層(C)がフィラーを含有する場合には、フィラーを分散担持する機能を有する。バインダーは、有機物であることが好ましい。接合層(C)に用いるバインダーは、保護層(A)と同様の材料から適宜選択して用いることができる。バインダーとして熱硬化性樹脂や硬化剤を用いる場合、熱硬化性樹脂や硬化剤は接合層前駆体(C’)に含まれていればよく、加熱後の接合層(C)には含まれなくなっていても良い。
【0069】
接合層(C)は、シールド層(B)と被着体との電気的接続を担う目的で、導電性フィラーを含んでいてもよい。接合層(C)に用いる導電性フィラーは、シールド層(B)と同様の材料から適宜選択して用いることができる。
この場合、接合層(C)は異方導電性であることが好ましい。異方導電性とは、電磁波シールドシートを水平に置いた状態で、上下方向のみに導電性を有するものである。
【0070】
接合層(C)中の導電フィラーの含有量は、接合層(C)に高い信頼性で電気接続し、且つ接着性を付与する観点から、接合層(C)の成分全量に対して10~50重量%であることが好ましい。
【0071】
(その他の任意の層)
本シートは、更に、他の機能層を備えていてもよい。他の機能層として、ハードコート性、水蒸気バリア性、酸素バリア性、熱伝導性、低誘電率、高誘電率性または耐熱性等の機能を有する層が例示できる。
【0072】
なお、本シートは、異物の付着を防止するために保護層(A)および接合層(C)の両主面に剥離性シートを貼り付けた状態で保存することが一般的である。剥離性シートは、紙やプラスチック等の基材に公知の剥離処理を行ったシートである。
【0073】
[[電磁波シールドシートの製造方法]]、[[電磁波シールドシート前駆体の製造方法]]
以下、本シートの製造方法の一例について説明する。但し、本開示の製造方法は以下の製造方法に限定されるものではない。本シートの前駆体は、保護層前駆体(A’)を形成する工程と、シールド層(B)として機能する金属層(B-1)または導電樹脂層前駆体(B-2’)を形成する工程とを有する。本シートの前駆体が接合層前駆体(C’)を有する場合、接合層前駆体(C’)を形成する工程も有する。
【0074】
本シートの前駆体の積層順が、保護層前駆体(A’)/シールド層(B)またはシールド層前駆体(B’)/接合層前駆体(C’)の順となるようにする。各層の工程順は任意である。各層の積層方法は公知の方法により任意に行うことができる。例えば、保護層前駆体(A’)上にシールド層(B)を形成し、シールド層(B)上に接合層前駆体(C’)を形成したものと、剥離性シート上に接合層前駆体(C’)を形成したものを用意し、これらを保護層前駆体(A’)/シールド層(B)/接合層前駆体(C’)の順になるようにラミネートすることにより形成することができる。
なお、本開示では、本開示の動摩擦係数、鉛筆硬度、突出山部高さ(Spk)を満足するフィルム(ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン等の絶縁性樹脂を成形したフィルム)を保護層(A)として使用し、保護層(A)上にシールド層(B)を形成し、シールド層(B)上に接合層前駆体(C’)を形成したものと、剥離性シート上に接合層前駆体(C’)を形成したものを用意し、これらを保護層前駆体(A’)/シールド層(B)/接合層前駆体(C’)の順になるようにラミネートすることにより、本シートの前駆体を形成することもできる。
【0075】
(保護層前駆体(A’)、保護層(A)の形成工程)
保護層前駆体(A’)、保護層(A)の形成に用いる樹脂組成物を調製する。具体的には、配合成分を混合し、撹拌することにより樹脂組成物を得ることができる。攪拌は、ディスパーマット、ホモジナイザー等の公知の攪拌装置を使用できる。樹脂組成物を調製した後、公知の方法により保護層前駆体(A’)を形成する。例えば、樹脂組成物を剥離性シート上に塗工して乾燥することで保護層前駆体(A’)を形成できる。塗工方法は、例えば、グラビアコート方式、キスコート方式、ダイコート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレード方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、スプレーコート方式、バーコート方式、スピンコート方式、ディップコート方式が例示できる。乾燥工程は、熱風乾燥機、赤外線ヒーター等の公知の乾燥装置を使用できる。また、Tダイのような押出成形機を用いてシート状の保護層前駆体(A’)を形成してもよい。乾燥条件や押出成形条件によっては、保護層(A)を形成することもできる。
【0076】
(金属層(B-1)の形成工程)
金属層(B-1)は、例えば、金属箔、金属蒸着膜、金属メッキ膜等を使用できる。また、真空蒸着、スパッタリング、CVD法、MO(メタルオーガニック)により金属層(B-1)を形成できる。一種または二種以上の導電性フィラーを集積させることにより金属層(B-1)を形成してもよい。導電性フィラーの好適例として、フレーク状粒子、デンドライト状粒子、球状粒子が挙げられる。導電性フィラーは一種単独または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
金属層(B-1)の膜厚を例えば0.05~2μm程度にすることにより、細孔形成工程を別途も受けずにガス透過性を有する微小細孔を金属層(B-1)形成と同時に容易に形成できるが、細孔形成工程を別途設けてもよい。細孔形成方法は、従来公知の方法を適用できる。一例として、金属層(B-1)上にパターンレジスト層を形成し、所望の位置に細孔を形成する方法、所定のパターンでアンカー剤をスクリーン印刷しアンカー剤印刷面に金属メッキする方法、および特開2015-63730号公報に記載されている方法が挙げられる。
【0078】
(導電樹脂層前駆体(B-2’)、導電樹脂層(B-2)の形成工程)
導電樹脂層前駆体(B-2’)、導電樹脂層(B-2)の形成に用いる導電性フィラー含有組成物を調製する。具体的には、配合成分を所定量混合し、攪拌することにより導電性フィラー含有組成物を得ることができる。攪拌は、例えば、保護層前駆体(A’)の場合と同様の撹拌装置により行うことができる。導電性フィラー含有組成物を調製した後、公知の方法により導電樹脂層前駆体(B-2’)を形成する。例えば、導電性フィラー含有組成物を剥離性シート上に塗工して乾燥することで導電樹脂層前駆体(B-2’)を形成できる。被着体との接合に後述する接合層前駆体(C’)を利用する場合には、乾燥条件や押出成形条件を変更し、導電樹脂層(B-2)を形成することもできる。
また、接合層前駆体(C’)上に導電性フィラー含有組成物を塗工して乾燥することで導電樹脂層前駆体(B-2’)を形成してもよい。塗工方法・乾燥方法の好適例として、保護層前駆体(A’)の場合)で説明した塗工例が例示できる。
【0079】
(接合層前駆体(C’)、接合層(C)の形成工程)
接合層前駆体(C’)、接合層(C)の形成に用いる接着剤組成物を調製する。具体的には、配合成分を混合し、攪拌することにより接着剤組成物を得ることができる。攪拌は、例えば、保護層前駆体(A’)の場合と同様の撹拌装置により行うことができる。接着剤組成物を調製した後、公知の方法により接合層前駆体(C’)を形成する。例えば、接着剤組成物を剥離性シート上に塗工して乾燥することで接合層前駆体(C’)を形成できる。塗工方法・乾燥方法の好適例として、保護層前駆体(A’)の場合に説明した塗工例が例示できる。乾燥工程は、熱風乾燥機、赤外線ヒーター等の公知の乾燥装置を使用できる。また、Tダイのような押出成形機を用いてシート状の接合層前駆体(C’)を形成してもよい。
【0080】
[[プリント配線板]]
本開示の実施形態に係る電磁波シールドシート付きプリント配線板の要部の一例を図3に示す。図3に示すように、電磁波シールドシート付きプリント配線板20は、プリント配線板10と電磁波シールドシート2を備える。プリント配線板10は、絶縁性基材11と、この絶縁性基材11上に形成された回路パターン12と、絶縁性基材11および回路パターン12上に形成されたカバーコート層13とを備える。電磁波シールドシート2は、絶縁性基材11に本シートの接合層(C)によって接合されている。
【0081】
電磁波シールドシート2はプリント配線板10に貼付されていればよく接合領域は適宜設計可能であるが、図3の例では、カバーコート層13上に本シートの接合層(C)を用いて接合されている。図3の例では、電磁波シールドシート2は接合層(C)/シールド層(B)/保護層(A)の3層構造からなる。接合方法は任意であるが、通常、熱圧着により接合する。熱圧着により、カバーコート層13に設けられたビア14内部に接合層前駆体(C’)の一部が充填され、接合層(C)となりグランド配線12bの露出面と接合される。
【0082】
絶縁性基材11は、回路パターン12の支持体としての機能を有する。絶縁性基材11は特に限定されない。屈曲性が要求される場合の好適な樹脂の例としてポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイドが例示できる。高周波の信号を伝送する配線回路基板の用途を考慮すると、比誘電率および誘電正接が低い樹脂が好ましく、好適な樹脂の例として挙げたもののなかでも、液晶ポリマーに分類されるものがさらに好ましい。液晶ポリマーとは、加熱溶融時に液晶性を示す高分子を指す。リジッド性が要求される絶縁性基材の場合には、耐熱性に優れるガラスエポキシが好適である。
【0083】
回路パターン12は、信号配線12aおよびグランド配線12bを有する。回路パターン12は、例えば数μm~数十μm厚の銅層により形成されている。信号配線12aは、例えば、一本の信号配線からなるシングルエンド伝送線、2本の信号配線からなる差動伝送線に適用できる。差動伝送線では2本の信号配線を用い、互いに逆位相の電流を流し、信号配線間の電位差を読み取ることから信号配線に付加される電磁波ノイズの影響が低減でき、本開示の電磁波シールドシートと組み合わせることで一層安定な信号伝送を実現できるため、信号配線12aには差動伝送線を用いることが好ましい。
【0084】
カバーコート層13は、プリント配線板10の回路パターン12を覆い外部環境から保護する絶縁材料である。カバーコート層13は公知の絶縁性材料を適宜選定できる。ポリイミド等の耐熱性と柔軟性を備えた樹脂が好適である。好適例として、熱硬化性接着剤付きポリイミドフィルム、熱硬化型もしくは紫外線硬化型のソルダーレジスト、感光性カバーレイフィルムが挙げられる。カバーコート層13の厚みは通常10~100μm程度である。ビア14の開口面積は特に限定されないが、プリント配線板20の小型化の観点からは0.8mm以下が好ましい。下限は特に限定されないが、例えば0.008mm以上である。
【0085】
プリント配線板10への本シートの接合は、例えば、温度150~190℃程度、圧力1~3MPa程度、時間1~60分程度の条件で熱プレス(熱圧着ともいう)する方法が一般的である。熱プレスにより接合層前駆体(C’)とカバーコート層13が密着するとともに、接合層前駆体(C’)が流動してカバーコート層13に形成されたビア14内に充填され、本シートとカバーコート層13およびグランド配線12bとが接合され、電磁波シールドシート付きプリント配線板20が得られる。接合層(C)が導電性を示す場合には、グランド配線12bと電磁波シールドシート2とが電気的に導通する。接合層前駆体(C’)、シールド層前駆体(B’)および保護層前駆体(A’)のいずれか若しくは全てにおいて、バインダー成分に熱硬化性樹脂を含む場合には、熱プレス処理または/および硬化処理により、該当する層が硬化層となる。前記硬化処理は、熱プレス後に150~190℃程度で30~90分間ポストキュアを行う方法が例示できる。
【0086】
電磁波の漏れをより効果的に抑制するために、配線回路基板10の両面に電磁波シールドシート2を設けてもよい。プリント配線板20において、電磁波シールドシート2は電磁波を遮蔽する機能の他に、グランド回路として利用することができる。電磁波シールドシート2をグランド回路として利用することにより、配線回路基板10のグランド回路領域の面積を縮小することが可能となり、小型化およびコストダウンを達成できる。
【実施例
【0087】
本開示をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本開示の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における「部」および「%」は、「質量部」および「質量%」をそれぞれ表し、Mwは重量平均分子量を意味する。表中の配合量は、質量部である。また、樹脂の酸価と重量平均分子量(Mw)とガラス転移温度(Tg)、および導電性フィラーの平均粒子径の測定は次の方法で行なった。
【0088】
《バインダー成分の樹脂の酸価の測定》
JIS K 0070の中和滴定法に準拠し、測定した酸価(mgKOH/g)を固形分換算することで求めた。共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、テトラヒドロフラン/エタノール(容量比:テトラヒドロフラン/エタノール=2/1)混合液100mLを加えて溶解する。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定し、指示薬が淡紅色を30秒間保持した時を終点とした。酸価は次式により求めた(単位:mgKOH/g)。
酸価(mgKOH/g)=(5.611×a×F)/S
ただし、
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0089】
《バインダー成分の樹脂の重量平均分子量(Mw)の測定》
Mwの測定はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)「HPC-8020」(東ソー社製)により行った。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフである。本測定は、カラムに「LF-604」(昭和電工社製:迅速分析用GPCカラム:6mmID×150mmサイズ)を直列に2本接続して用い、流量0.6mL/min、カラム温度40℃の条件で行った。Mwの決定はポリスチレン換算で行った。
【0090】
《バインダー成分の樹脂のガラス転移温度(Tg)》
Tgの測定は、示差走査熱量測定「DSC-1」(メトラー・トレド社製)によって測定した。
【0091】
《フィラーおよび導電性フィラーのD50平均粒子径測定》
50平均粒子径は、レーザー回折・散乱法粒子径測定装置MT3000II(マイクロトラック・ベル社製、測定範囲:0.02μm-2.8mm)を使用した。D50平均粒子径は、累積分布における累積値が50%の粒子径である。なお、屈折率の設定は1.6とした。
【0092】
《原料》
実施例および比較例に用いた原料を以下に示す。表1~3中のP1~P5は、それぞれ以下の熱硬化性樹脂P1~P5に対応する。他の硬化剤、フィラー、導電性フィラーも同様である。
・熱硬化性樹脂P1:酸価10mgKOH/g、Mw47,000、Tg12℃のポリエステル樹脂(トーヨーケム製)
・熱硬化性樹脂P2:酸価13mgKOH/g、Mw51,000、Tg3℃のポリアミド樹脂(トーヨーケム製)
・熱硬化性樹脂P3:酸価5mgKOH/g、Mw61,000、Tg-5℃のポリウレタン樹脂(トーヨーケム製)
・熱硬化性樹脂P4:酸価26mgKOH/g、Mw88,000、Tg32℃のポリウレタン樹脂(トーヨーケム製)
・熱硬化性樹脂P5:酸価18mgKOH/g、Mw38,000、Tg32℃のポリオレフィン樹脂(トーヨーケム製)
・硬化剤H1:エポキシ化合物、「JER828」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量=189g/eq、三菱ケミカル製)
・フィラーF1:カーボンブラック「MA100」(三菱ケミカル製)(平均粒子径=0.042μm)
・フィラーF2:シリカ「AEROSIL R974」(日本アエロジル製)(平均粒子径=0.040μm)
・フィラーF3:ホスフィン酸アルミニウム塩「エクソリットOP935」(クラリアント株式会製)(平均粒子径=0.25μm)
・導電性フィラーM1:銀被覆銅粉:D50=5.7μm、樹枝状(三井金属鉱業製)
・導電性フィラーM2:銀被覆銅粉:D50=11.3μm、フレーク状(DOWAホールディングス製)
[実施例1]
《保護層前駆体(A’)の作製》
固形分換算で熱硬化性樹脂P1を100部、フィラーF1を10部、F2を20部、硬化剤H1を20部容器に仕込み、不揮発分濃度が40%になるように混合溶剤(トルエン:イソプロピルアルコール=2:1(質量比))を加えディスパーで10分攪拌することで樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物をバーコーターで乾燥厚みが5μmになるように剥離性シート上に塗工し、100℃の電気オーブンで2分間乾燥することで保護層前駆体(A’)を得た。乾燥厚みはABSデジマチックインジケータID-CX(ミツトヨ社製)にて測定した。
《シールド層(B)(金属層(B-1))の作製》
得られた「剥離性シート/保護層前駆体(A’)」の保護層前駆体(A’)が露出した表面に、金属層(B-1)である銅めっき層(2.5μm)を形成した。銅めっき層は、電解めっき法により形成し、用いた電解液は硫酸銅、25℃にて7分間の電流印可を行った。
《接合層前駆体(C’)の作製》
固形分換算で熱硬化性樹脂P5を100部、導電性フィラーM1を80部、硬化剤H1を20部容器に仕込み、不揮発分濃度が40%になるように混合溶剤(トルエン:イソプロピルアルコール=2:1(質量比))を加えディスパーで10分攪拌して接着剤組成物を得た。
得られた接着剤組成物をバーコーターで乾燥厚みが10μmになるように「剥離性シート/保護層前駆体(A’)/金属(めっき)層」の金属(めっき)層上に塗工し、100℃の電気オーブンで2分間乾燥することで接合層前駆体(C’)を形成し、電磁波シールドシート前駆体を得た。接合層前駆体(C’)の乾燥厚みは保護層前駆体(A’)と同様の方法により測定した。
【0093】
[実施例2~34、比較例1~4]
表1~3に示すように、保護層前駆体(A’)、接合層前駆体(C’)の種類を変更した以外は、実施例1と同様に行うことで、実施例2~34、比較例1~4の電磁波シールドシートをそれぞれ得た。
尚、実施例20~34については、保護層(A)の作製に用いる剥離性シートを事前にバフ研磨し、Spk、Sa、Strを調整した。
【0094】
[実施例35]
表3に示すように、実施例1と同様の「剥離性シート/保護層前駆体(A’)」という構成の第1の中間積層体を準備した。
厚さ25μmのキャリアフィルム上に厚さ4μmの銅箔が形成されたキャリアフィルム付き銅箔を別途準備し、前記の「剥離性シート/保護層前駆体(A’)」の保護層前駆体(A’)が露出した表面と銅箔面が接するように貼り合わせ、「剥離性シート/保護層前駆体(A’)/銅箔/キャリアフィルム」という構成の第2の中間積層体を準備した。貼り合わせは、温度は90℃、圧力は3kgf/cm2で、熱ラミネーターにより貼り合わせた。
表3に示すように、実施例1と同様の接着剤樹脂組成物を準備した。
前記第2の中間積層体からキャリアフィルムを剥がし、「剥離性シート/保護層前駆体(A’)/銅箔」の銅箔上に、乾燥厚みが10μmになるように前記接着剤樹脂組成物を塗工し、100℃の電気オーブンで2分間乾燥することで接合層前駆体(C’)を形成し、電磁波シールドシート前駆体を得た。
【0095】
[実施例36]
電解銅めっきではなく、銅蒸着処理によって行い、金属層(B-1)である銅蒸着層(0.5μm)を保護層前駆体(A’)上に形成したこと以外は、実施例1と同様にして電磁波シールドシート前駆体を得た。
【0096】
[実施例37]
表3に示すように、実施例1と同様の「剥離性シート/保護層前駆体(A’)」という構成の第1の中間積層体を準備した。
《シールド層(B)(導電樹脂層前駆体(B-2’))の作製》
固形分換算で熱硬化性樹脂P1を100部、導電性フィラーM2を490部、硬化剤H1を20部容器に仕込み、不揮発分濃度が40%になるように混合溶剤(トルエン:イソプロピルアルコール=2:1(質量比))を加えディスパーで10分攪拌して導電樹脂組成物を得た。
得られた導電樹脂組成物をバーコーターで乾燥厚みが3μmになるように剥離性シート上に塗工し、100℃の電気オーブンで2分間乾燥することで「剥離性シート/導電樹脂層前駆体(B-2’)」という構成の第3の中間積層体を準備した。導電樹脂層前駆体(B-2’)の乾燥厚みは保護層前駆体(A’)と同様の方法により測定した。
得られた第3の中間積層体「剥離性シート/導電樹脂層前駆体(B-2’)」の導電樹脂層前駆体(B-2’)と、前記の第1の中間積層体の保護層前駆体(A’)が露出した表面とを貼り合わせた後、導電樹脂層前駆体(B-2’)側の剥離性シートを除去することで、「剥離性シート/保護層前駆体(A’)37/導電樹脂層前駆体(B-2’)」という構成の第4の中間積層体を得た。
《接合層(C)の作製》
表5に示すように、実施例1と同様の接着剤樹脂組成物を準備した。
第4の中間積層体の導電樹脂層前駆体(B-2’)上に前記接着剤樹脂組成物を塗工し、100℃の電気オーブンで2分間乾燥することで接合層前駆体(C’)を形成し、電磁波シールドシート前駆体を得た。
【0097】
[実施例38]
表3に示すように、実施例1と同様の「剥離性シート/保護層前駆体(A’)」という構成の第1の中間積層体を準備した。
《シールド層(B)(導電樹脂層前駆体(B-2’))の作製》
固形分換算で熱硬化性樹脂P1を100部、導電性フィラーM2を220部、硬化剤H1を20部容器に仕込み、不揮発分濃度が40%になるように混合溶剤(トルエン:イソプロピルアルコール=2:1(質量比))を加えディスパーで10分攪拌して導電樹脂組成物を得た。
得られた導電樹脂組成物をバーコーターで乾燥厚みが15μmになるように剥離性シート上に塗工し、100℃の電気オーブンで2分間乾燥することで「剥離性シート/導電樹脂層前駆体(B-2’)」という構成の第3の中間積層体を準備した。
導電樹脂層前駆体(B-2’)の乾燥厚みは保護層前駆体(A’)と同様の方法により測定した。
得られた第3の中間積層体「剥離性シート/導電樹脂層前駆体(B-2’)」の導電樹脂層前駆体(B-2’)と、前記の第1の中間積層体の保護層前駆体(A’)が露出した表面とを貼り合わせ、電磁波シールドシート前駆体を得た。
【0098】
《評価試料の作製》
実施例1~38、比較例1~4で得られた電磁波シールドシート前駆体の接合層前駆体(C)側に、ポリイミドフィルム(カプトン(登録商標)、200H、50μm)と貼り合わせ、170℃、2MPaの条件で30分間加熱プレスを行った。その後、保護層(A)側の剥離性シートを剥がし、各実施例、比較例の評価試料を得た。
【0099】
《動摩擦係数》
評価試料の保護層(A)の動摩擦係数は、HEIDON(新東科学社製)にて測定した。測定は、テストピースの保護層(A)に対して鋼球3点により支持された重さ100gの重りをつけ、保護層(A)上を60cm/分の速度で引っ張り、保護層(A)表面の動摩擦係数を測定した。異なる5カ所を測定値の平均値を動摩擦係数とした。
【0100】
《鉛筆硬度》
評価試料の保護層(A)表面の鉛筆硬度は、JIS K5600-5-4に準拠して荷重750gにて鉛筆硬度試験を実施した。
【0101】
《突出山部高さ(Spk)、算術平均高さ(Sa)、表面性状のアスペクト比(Str)》
評価試料の保護層(A)表面の突出山部高さ(Spk)、算術平均高さ(Sa)、表面性状のアスペクト比(Str)は、以下の方法により求めた。
コンフォーカル顕微鏡(Lasertec社製、OPTELICS HYBRID+、対物レンズ20倍、白色コンフォーカル)を用いて、評価試料の保護層(A)の任意の5か所を測定した後、データ解析ソフト(LMeye8)を用いて表面の傾き補正を行い、ISO 25178-6:2010に準拠して表面性状を測定し、その平均値を得た。なお、Sフィルタのカットオフ波長は0.0025mm、Lフィルタのカットオフ波長は0.8mmとした。
【0102】
<ブロッキング耐性>
幅10cm・長さ10cmの評価試料を2枚用意し、保護層(A)表面同士を重ね合わせた。上下を幅15cm・長さ15cm・厚さ2mmのガラス板で挟み込み、2kgの重りを載せて50℃の雰囲気下に24時間放置した。その後、重ね合わせ面から評価試料同士を引き離し、以下の基準でブロッキング耐性を評価した。
◎:両方の保護層(A)にも外観不良が発生しない。優れている。
〇:一方の保護層(A)の一部に浮きが発生する。良好である。
△:両方の保護層(A)の一部に浮きが発生する。実用可。
×:一方、あるいは両方に破れが発生する。実用不可。
【0103】
<耐裂傷性>
幅10cm・長さ10cmの評価試料を用意し、保護層(A)表面上にステンレス板(SUS304、ヘアライン仕上げ、幅5cm・長さ5cm、厚み100μm)を載せ、更に100gの重りをステンレス板に載せた状態でステンレス板を1回あたり3cmで10回往復で動かした。その後ステンレス板を除去し、保護層(A)表面の傷の個数を目視で数え、以下の基準で耐裂傷性を評価した。
◎:傷の個数が10個以下である。優れている。
〇:傷の個数が11個以上20個以下である。良好である。
△:傷の個数が21個以上30個以下である。実用可。
×:傷の個数が31個以上である。実用不可。
【0104】
<防塵性>
各実施例および比較例の評価試料(幅10cm・長さ10cm)に切り込みを入れて5×5個アレイ状の各区画にわけた後、塵埃試験機(DT-1-CF、スガ試験機製)に投入し、60分塵埃曝露させた。試験用粉体としては、JIS Z8901にて規定される試験用粉体11種(関東ローム)を用いた。
塵埃曝露の評価試料を取出した後、積もった塵埃をエアダスターにより除去し、5×5個アレイ状の各区画を1個ずつ観察し、残留する塵埃の有無を確認し、以下のように評価を行った。
◎:いずれの区画にも塵埃の残留が認められない。優れている。
〇:塵埃の残留が認められた区画が25個中1個以上、3個未満。良好である。
△:塵埃の残留が認められた区画が25個中3個以上、5個未満。実用可。
×:塵埃の残留が認められた区画が5個以上。実用不可。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
【表3】
【0108】
本開示によれば、本実施例に示すように、ブロッキング耐性が高く、優れた耐裂傷性と防塵性を兼ね備える電磁波シールドシート電磁波シールドシートを提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本電磁波シールドシートは、FPCはもとより、リジッドプリント配線板、COF、TAB、フレキシブルコネクタ、液晶ディスプレイ、タッチパネル等に使用できる。また、パソコンのケース、建材の壁および窓ガラス等の建材、車両、船舶、航空機等の電磁波を遮断する部材など、電磁波をシールドする必要がある様々な用途に幅広く利用できる。本開示のプリント配線板は、例えば、液晶ディスプレイ、タッチパネル等のほか、ノートPC、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末等の電子機器に搭載して用いることができる。
【符号の説明】
【0110】
1’:電磁波シールドシート前駆体
2:電磁波シールドシート、
10:プリント配線板、
11:絶縁性基材、
12:回路パターン、
12a:信号配線、
12b:グランド配線、
13:カバーコート層、
14:ビア
20:電磁波シールドシート付きプリント配線板

図1
図2
図3