(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】バッテリの温調方法、及び制御装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/633 20140101AFI20240927BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240927BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20240927BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240927BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20240927BHJP
【FI】
H01M10/633
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/651
(21)【出願番号】P 2022181122
(22)【出願日】2022-11-11
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】大垣 徹
(72)【発明者】
【氏名】高地 修平
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-126170(JP,A)
【文献】特開2016-167420(JP,A)
【文献】特開2018-113799(JP,A)
【文献】特開2006-244829(JP,A)
【文献】特開2019-193319(JP,A)
【文献】国際公開第2021/024732(WO,A1)
【文献】特開2016-113040(JP,A)
【文献】特開2012-191781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/60-10/667
B60L1/00-3/12
B60L7/00-13/00
B60L15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと、前記バッテリを温調可能な温調装置とを備える車両の放置中に、前記温調装置を制御して前記バッテリの温調を行うバッテリの温調方法であって、
コンピュータが、
前記車両周辺の今後の外気温の推移をあらわす外気温情報を取得し、
前記外気温情報に基づき、前記外気温が閾値温度となる時期である交点時期を探索し、
前記外気温情報に基づき、前記バッテリが前記閾値温度に達する毎に所定の温調を行うと仮定した場合の、今後の前記バッテリの温度推移を予測し、
前記交点時期の探索結果と、前記バッテリの温度推移の予測結果とに基づき、前記温調装置による前記バッテリの温調プランを作成し、
前記温調プランに基づき、前記温調装置を制御する、
処理を実行し、
前記温調プランを作成する処理では、
前記閾値温度に一度達した前記バッテリが前記閾値温度に再度達する時期である再到達時期が前記交点時期の前にあるか否かを判定し、
前記再到達時期が前記交点時期の前にあると判定した場合に、前記再到達時期が前記交点時期に近づくように、前記バッテリが前記閾値温度に一度達したときに行う温調の内容を調整した前記温調プランを作成する、
バッテリの温調方法。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリの温調方法であって、
前記温調プランを作成する処理では、前記再到達時期が前記交点時期の前にあると判定した場合に、前記再到達時期が前記交点時期と一致するように、前記バッテリが前記閾値温度に一度達したときに行う温調の内容を調整した前記温調プランを作成する、
バッテリの温調方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のバッテリの温調方法であって、
前記コンピュータが、
前記外気温情報を取得できない場合に、前記バッテリが前記閾値温度に達する毎に前記所定の温調を行うように前記温調装置を制御する処理をさらに実行する、
バッテリの温調方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載のバッテリの温調方法であって、
前記温調プランを作成する処理では、
前記交点時期が3つ以上探索された場合に、時系列的に隣合う前記交点時期同士の間の各期間について、前記再到達時期が前記期間内にあるか否かを判定し、
前記再到達時期が前記期間内にあると判定した場合に、前記再到達時期が前記期間の終了時期である前記交点時期に近づくように、前記期間において前記バッテリが前記閾値温度に一度達したときに行う温調の内容を調整した前記温調プランを作成する、
バッテリの温調方法。
【請求項5】
バッテリと、前記バッテリを温調可能な温調装置とを備える車両の放置中に、前記温調装置を制御して前記バッテリの温調を行う制御装置であって、
前記制御装置は、
前記車両周辺の今後の外気温の推移をあらわす外気温情報を取得し、
前記外気温情報に基づき、前記外気温が閾値温度となる時期である交点時期を探索し、
前記外気温情報に基づき、前記バッテリが前記閾値温度に達する毎に所定の温調を行うと仮定した場合の、今後の前記バッテリの温度推移を予測し、
前記交点時期の探索結果と、前記バッテリの温度推移の予測結果とに基づき、前記温調装置による前記バッテリの温調プランを作成し、
前記温調プランに基づき、前記温調装置を制御する、
処理を行う処理部を備え、
前記処理部は、
前記温調プランを作成する際に、
前記閾値温度に一度達した前記バッテリが前記閾値温度に再度達する時期である再到達時期が前記交点時期の前にあるか否かを判定し、
前記再到達時期が前記交点時期の前にあると判定した場合に、前記再到達時期が前記交点時期に近づくように、前記バッテリが前記閾値温度に一度達したときに行う温調の内容を調整した前記温調プランを作成する、
制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリの温調方法、及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の気候変動に対する具体的な対策として、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化している。自動車等の車両においても、CO2排出量の削減やエネルギー効率の向上が要求され、駆動源の電動化が進んでいる。例えば、駆動輪を駆動する駆動源としてのモータ(「トラクションモータ」とも称される)と、このモータに電力を供給する電源としてのバッテリとを備える電気自動車が開発されている。
【0003】
バッテリが高温状態になると、バッテリの劣化が著しく進行し得る。また、SOC(State Of Charge)がある程度高い状態でバッテリが低温状態になった場合にも、バッテリの劣化が著しく進行し得る。このような劣化の進行を抑制する観点から、車両に搭載されたバッテリは、車両が放置されているとき(例えば駐車中)にも、適切な温度にしておくことが望ましい。
【0004】
駐車時におけるバッテリの劣化を抑制する技術として、例えば、下記特許文献1には、駐車開始後から所定時間経過するまでの駐車時間内の車載電池の温度を予測し、予測した車載電池の温度に基づいて、充電を実施する場合の車載電池の温度をさらに予測し、この予測に基づいて車載電池の充電計画を作成するようにした技術が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2には、複数の駐車方向の候補それぞれに対し、バッテリの温度と気象要素の情報に基づきバッテリの温度推移を推定し、複数の駐車方向の候補のうち、バッテリの温度が所定の温度範囲内に維持されると推定される候補を運転手に報知するようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-075282号公報
【文献】特開2016-116357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術では、車両の放置中にバッテリを適切な温度に維持しつつも、バッテリの温調を行う温調装置の消費電力を削減する観点から改善の余地があった。
【0008】
本発明は、車両の放置中にバッテリを適切な温度に維持しつつも、バッテリの温調を行う温調装置の消費電力を削減可能なバッテリの温調方法、及び制御装置を提供する。そして、延いてはエネルギー効率の改善に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、
バッテリと、前記バッテリを温調可能な温調装置とを備える車両の放置中に、前記温調装置を制御して前記バッテリの温調を行うバッテリの温調方法であって、
コンピュータが、
前記車両周辺の今後の外気温の推移をあらわす外気温情報を取得し、
前記外気温情報に基づき、前記外気温が閾値温度となる時期である交点時期を探索し、
前記外気温情報に基づき、前記バッテリが前記閾値温度に達する毎に所定の温調を行うと仮定した場合の、今後の前記バッテリの温度推移を予測し、
前記交点時期の探索結果と、前記バッテリの温度推移の予測結果とに基づき、前記温調装置による前記バッテリの温調プランを作成し、
前記温調プランに基づき、前記温調装置を制御する、
処理を実行し、
前記温調プランを作成する処理では、
前記閾値温度に一度達した前記バッテリが前記閾値温度に再度達する時期である再到達時期が前記交点時期の前にあるか否かを判定し、
前記再到達時期が前記交点時期の前にあると判定した場合に、前記再到達時期が前記交点時期に近づくように、前記バッテリが前記閾値温度に一度達したときに行う温調の内容を調整した前記温調プランを作成する、
バッテリの温調方法である。
【0010】
また、本発明の他の一態様は、
バッテリと、前記バッテリを温調可能な温調装置とを備える車両の放置中に、前記温調装置を制御して前記バッテリの温調を行う制御装置であって、
前記制御装置は、
前記車両周辺の今後の外気温の推移をあらわす外気温情報を取得し、
前記外気温情報に基づき、前記外気温が閾値温度となる時期である交点時期を探索し、
前記外気温情報に基づき、前記バッテリが前記閾値温度に達する毎に所定の温調を行うと仮定した場合の、今後の前記バッテリの温度推移を予測し、
前記交点時期の探索結果と、前記バッテリの温度推移の予測結果とに基づき、前記温調装置による前記バッテリの温調プランを作成し、
前記温調プランに基づき、前記温調装置を制御する、
処理を行う処理部を備え、
前記処理部は、
前記温調プランを作成する際に、
前記閾値温度に一度達した前記バッテリが前記閾値温度に再度達する時期である再到達時期が前記交点時期の前にあるか否かを判定し、
前記再到達時期が前記交点時期の前にあると判定した場合に、前記再到達時期が前記交点時期に近づくように、前記バッテリが前記閾値温度に一度達したときに行う温調の内容を調整した前記温調プランを作成する、
制御装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両の放置中にバッテリを適切な温度に維持しつつも、バッテリの温調を行う温調装置の消費電力を削減可能なバッテリの温調方法、及び制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】温調対象となるバッテリ11を搭載する車両10を示す図である。
【
図2】制御装置19によって取得される外気温情報があらわす外気温推移の第1例を示す図である。
【
図3】制御装置19によって探索される交点時期の一例を示す図である。
【
図4】制御装置19が通常冷却制御を行うと仮定した場合の今後のバッテリ11の温度推移の一例を示す図である。
【
図5】再到達時期を交点時期に近づけた温調プランの一例を示す図である。
【
図6】再到達時期を交点時期と一致させた温調プランの一例を示す図である。
【
図7A】制御装置19によって取得される外気温情報があらわす外気温推移の第2例を示す図である。
【
図7B】処理対象期間Ttar11におけるバッテリ11の温調を最適化した温調プランの一例を示す図である。
【
図7C】処理対象期間Ttar11および処理対象期間Ttar12におけるバッテリ11の温調を最適化した温調プランの一例を示す図である。
【
図7D】処理対象期間Ttar11、処理対象期間Ttar12、および処理対象期間Ttar13におけるバッテリ11の温調を最適化した温調プランの一例を示す図である。
【
図8】制御装置19によって取得される外気温情報があらわす外気温推移の第3例を示す図である。
【
図9】制御装置19が通常加温制御を行うと仮定した場合の今後のバッテリ11の温度推移の一例を示す図である。
【
図10】再到達時期を交点時期と一致させた温調プランの他の一例を示す図である。
【
図11】処理対象期間Ttar21、処理対象期間Ttar22、および処理対象期間Ttar23におけるバッテリ11の温調を最適化した温調プランの一例を示す図である。
【
図12】制御装置19が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のバッテリの温調方法、及び制御装置の一実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図面は、符号の向きに見るものとする。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではなく、また、実施形態で説明されている特徴の組み合わせのすべてが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち2つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、以下では、同一または類似の要素には同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略または簡略化することがある。
【0014】
[車両]
まず、本発明の温調方法による温調(温度調節)対象となるバッテリを搭載する車両の一例について説明する。
図1に示すように、本実施形態の車両10は、充放電可能な二次電池であるバッテリ11と、バッテリ11の電力が供給されることによって駆動輪DWを駆動可能なモータ13と、バッテリ11とモータ13との間で授受される電力を変換する電力変換装置12と、を備える電気自動車である。
【0015】
バッテリ11は、例えば、外部電源PSから受け付けた電力Pによって充電可能に構成される。外部電源PSは、例えば、所定の電圧(例えば100~200[V])且つ所定の周波数(例えば50~60[Hz])を有する交流を供給する商用電源である。
【0016】
具体的に説明すると、車両10は、外部電源PSと電気的に接続可能に構成される。車両10と外部電源PSとの電気的な接続は、物理的なコネクタやケーブルなどによって実現されてもよいし、非接触の電力伝送(Wireless Power Transfer)によって実現されてもよい。非接触の電力伝送を採用した場合、その電力伝送の方式としては、電磁誘導型、磁気共鳴型、電磁誘導型及び磁気共鳴型の組み合わせなどを用いることができる。
【0017】
外部電源PSから受け付けた電力Pは、例えば、車両10が備える充電器(図示省略)によって交流から直流へ変換されるとともにバッテリ11の充電に適した電圧へ変換された後に、バッテリ11へ供給される。これにより、車両10は、外部電源PSから受け付けた電力Pによってバッテリ11を充電することができる。
【0018】
バッテリ11は、複数の蓄電セルを直列接続することで高電圧(例えば100~400[V])を出力可能に構成され、電力変換装置12を介してモータ13と接続される。バッテリ11の蓄電セルとしては、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などを用いることができる。なお、車両10には、例えば、バッテリ11の温度(以下、「バッテリ温度」とも称する)を検出するバッテリ温度センサ11aも設けられており、バッテリ温度センサ11aによって検出されたバッテリ温度を示す検出信号が後述の制御装置19へ送られるようになっている。これにより、制御装置19は、バッテリ温度センサ11aによって検出されたバッテリ温度を取得可能である。
【0019】
電力変換装置12は、インバータを含んで構成され、バッテリ11から出力される直流を交流へ変換し、変換した交流を、交流モータ(例えば三相交流モータ)によって実現されるモータ13へ供給する。また、電力変換装置12は、例えばDC/DCコンバータをさらに含んで構成され、バッテリ11とモータ13との間で授受される電力の電圧を変換してもよい。
【0020】
モータ13は、車両10が備える動力伝達装置(図示省略)を介して駆動輪DWと連結され、電力が供給されることによって車両10を走行させる駆動力(走行用の駆動力)Dを駆動輪DWへ出力する。したがって、車両10は、バッテリ11の電力をモータ13へ供給することによってモータ13が出力する駆動力によって走行することができる。すなわち、モータ13は、いわゆる「トラクションモータ」である。
【0021】
また、モータ13は、車両10の制動に伴って回生発電を行い、発電した電力(交流)を電力変換装置12へ出力することもできる。この場合、電力変換装置12は、モータ13から出力される交流を直流に変換し、変換した直流をバッテリ11へ供給する。これにより、車両10は、車両10の制動に伴ってモータ13が発電した電力によってバッテリ11を充電することもできる。
【0022】
さらに、車両10は、バッテリ11を温調可能な温調装置15と、車両10の現在位置を特定可能なGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機16と、車両10の外部装置との通信が可能な通信装置17と、車両10全体を統括制御する制御装置19と、を備える。
【0023】
温調装置15は、制御装置19の制御に従ってバッテリ11の温調を行う。本実施形態では、温調装置15は、バッテリ11を冷却可能な冷却装置15aと、バッテリ11を加温可能な加温装置15bとを備え、バッテリ11の温調として、バッテリ11の冷却と加温とを実行可能に構成される。冷却装置15aとしては、例えば、バッテリ11に冷却風を吹きつけるファンを用いてもよいし、LLC(Long Life Coolant)などの冷却水が循環する水冷式の冷却装置を用いてもよい。また、加温装置15bとしては、例えば、電力が供給されることにより発熱する電気ヒータを用いることができる。
【0024】
GNSS受信機16は、GNSS衛星から受信した信号に基づき車両10の現在位置を特定し、車両10の現在位置を示す位置情報(以下、単に「位置情報」とも称する)を後述の制御装置19へ出力する。なお、車両10は、ナビゲーション装置をさらに備えていてもよい。この場合、ナビゲーション装置は、例えば、GNSS受信機16によって特定された現在位置から、車両10のユーザ(例えば運転者)によって設定された目的地までの経路(以下、「誘導経路」とも称する)を、地図データなどを参照して決定し、決定した誘導経路をディスプレイに表示することによってユーザに案内する。
【0025】
通信装置17は、ネットワーク20を介して車両10の外部装置と通信可能な車載通信機であり、制御装置19の制御に従って車両10の外部装置と通信する。ネットワーク20は、例えば移動体通信網とすることができるが、これに限られず、インターネット、WAN(Wide Area Network)、Wi-Fi(登録商標)を含むLAN(Local Area Network)などであってもよい。
【0026】
本実施形態では、通信装置17は、各地域の気象情報を配信するサービス提供者によって管理される気象情報センタのサーバ100と通信し得る。このサーバ100は、例えば、各地域の今後の気温の推移をあらわす情報を配信可能に構成される。
【0027】
制御装置19は、電力変換装置12、モータ13、温調装置15、および通信装置17を含む車両10全体を統括制御するコンピュータであり、本発明の制御装置の一例である。制御装置19は、ECU(Electric Control Unit)などによって構成され、処理部19a、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの記憶部19b、および制御装置19の内部と外部とのデータの入出力を制御するI/F部19c(インタフェース部)を備える。
【0028】
処理部19aは、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサであり、記憶部19bに記憶されたプログラムを実行する。記憶部19bには、処理部19aが実行するプログラムのほか、処理部19aが処理に使用するデータなどが格納される。なお、制御装置19は、1つのECUによって実現されてもよいし、複数のECUが協調動作することによって実現されてもよい。
【0029】
例えば、制御装置19(換言すると処理部19a)は、車両10の放置中に温調装置15を制御してバッテリ11の温調を行う。ここで、車両10の放置中とは、例えば、車両10のイグニッション電源がオフであるときであり、車両10の駐車中ということもできる。制御装置19によるバッテリ11の温調方法の詳細については後述するため、ここでの説明を省略する。
【0030】
また、制御装置19は、所定のタイミングで通信装置17を制御してサーバ100と通信することによって、車両10周辺の今後の外気温の推移をあらわす外気温情報(以下、単に「外気温情報」とも称する)をサーバ100から取得する。一例として、制御装置19は、GNSS受信機16から受け付けた位置情報を含む配信要求を、通信装置17を介してサーバ100へ送信する。サーバ100は、この配信要求を受け付けると、車両10の現在位置が属する地域(例えば市町村)の今後の気温の推移をあらわす情報を、外気温情報として配信要求元の通信装置17へ送信する。そして、通信装置17は、サーバ100から受け付けた外気温情報を制御装置19へ出力する。これにより、制御装置19は外気温情報を取得することができる。
【0031】
[バッテリの温調方法]
バッテリ11が劣化すると、車両10の航続可能距離が短くなり、車両10の利便性が低下し得る。バッテリ11が劣化した際にはバッテリ11を交換することも考えられるが、バッテリ11のようなトラクションモータに電力を供給するバッテリは、一般的に大容量且つ高出力のバッテリであり、その交換には多額の費用が発生し得る。
【0032】
車両10の利便性低下の抑制、車両10の維持コストの削減、あるいは車両10を売却する際のリセールバリューの確保の観点から、バッテリ11の劣化はできるだけ抑制することが望まれる。特に、車両10のライフサイクルの大半を占め得る放置時(例えば駐車時)におけるバッテリ11の温調は、バッテリ11の劣化抑制の観点から重要である。
【0033】
そこで、制御装置19は、車両10の放置中には、以下に説明する温調方法によって温調装置15を制御することでバッテリ11の温調を行う。これにより、車両10の放置中にバッテリ11が高温状態となったり低温状態となったりすることを回避して、バッテリ11を適切な温度に維持することが可能となる。したがって、車両10のライフサイクルの大半を占め得る放置時におけるバッテリ11の劣化を抑制でき、バッテリ11が劣化することによる車両10の利便性低下、車両10の維持コストの増大、あるいは車両10のリセールバリューの低下を抑制して、車両10の商品性の向上を図れる。
【0034】
(1-1.バッテリの冷却が行われる場合の温調方法の一例)
まず、車両10の放置中のバッテリ11の温調として、バッテリ11の冷却が行われる場合の一例について、
図2~
図6を参照しながら説明する。例えば、気温の高い高温地域にて車両10が放置されている際に、以下のようなバッテリ11の冷却が行われ得る。
【0035】
まず、制御装置19は、例えば車両10のイグニッション電源がオフとされた際に、ネットワーク20を介してサーバ100から外気温情報を取得する。ここでは、
図2に示す外気温推移Tout1をあらわす外気温情報が取得されたものとする。
【0036】
外気温推移Tout1は、現在である時期t0から24時間後までの(すなわち現在から1日分の)、車両10周辺の外気温の推移をあらわしている。一般的に、1日における気温は、日中に高くなり、早朝および夜間には日中に比べて低くなる。このため、外気温推移Tout1は、山なりの外気温をあらわすものとなっている。
【0037】
また、外気温推移Tout1があらわす外気温のうちの一部の期間(例えば日中)の外気温は、バッテリ11の高温状態に対する耐久性などを勘案してあらかじめ定められた高温側閾値温度THiを超えるものとなっている。高温側閾値温度THiは、閾値温度の一例であり、例えば30[℃]とすることができる。
【0038】
車両10の放置中にバッテリ11の温調を行わないようにした場合、バッテリ温度は、外気温を主な熱源として、外気温に対し時間差を伴った時遅れで推移する。
図2に示すバッテリ温度推移Tbat’は、外気温推移Tout1に対して、バッテリ11の温調(ここでは冷却)を行わないようにした場合のバッテリ11の温度推移をあらわしている。
【0039】
図2に示す例では、外気温推移Tout1があらわす外気温の一部が高温側閾値温度THiを超えるものとなっていることから、バッテリ温度推移Tbat’があらわすバッテリ温度の一部も高温側閾値温度THiを超えるものとなっている。
【0040】
このように、車両10の放置中にバッテリ11の温調を行わなければバッテリ温度が高温側閾値温度THiを超えてしまう場合、制御装置19は、車両10の放置中に冷却装置15aによってバッテリ11を冷却することで、バッテリ温度が高温側閾値温度THiを超えないようにする。これにより、車両10の放置中にバッテリ温度が高温側閾値温度THiを超えることを抑制して、バッテリ温度が高温側閾値温度THiを超えることによるバッテリ11の劣化を抑制することが可能となる。
【0041】
具体的に説明すると、この場合、まず、制御装置19は、取得した外気温情報に基づき、外気温が高温側閾値温度THiとなる時期である交点時期を探索する。すなわち、この場合の交点時期は、グラフ上で外気温と高温側閾値温度THiとの交点に対応する時期ということもできる。
【0042】
例えば、
図3に示すように、取得された外気温情報が外気温推移Tout1をあらわすものであれば、交点時期としては、交点時期Ct1および交点時期Ct2が探索される。ここで、交点時期Ct1は、高温側閾値温度THi未満だった外気温が上昇して高温側閾値温度THiとなる時期であり、交点時期Ct2よりも時系列的に前の1番目の交点時期である。また、交点時期Ct2は、高温側閾値温度THiよりも高かった外気温が低下して高温側閾値温度THiとなる時期であり、交点時期Ct1の次の(すなわち2番目)の交点時期である。
【0043】
次に、制御装置19は、取得した外気温情報に基づき、バッテリ11が高温側閾値温度THiに達する毎に所定の冷却を行うと仮定した場合の、今後のバッテリ11の温度推移を予測する。以下、バッテリ11が高温側閾値温度THiに達する毎に所定の冷却を行う制御を「通常冷却制御」とも称する。
【0044】
図4に示すように、通常冷却制御は、例えば、バッテリ11が高温側閾値温度THiに達する時期(
図4に示す例では時期t1および時期t2aのそれぞれ)から、単位時間あたりPa[W]の冷却量で期間Tm1にわたってバッテリ11を冷却するように冷却装置15a(すなわち温調装置15)を動作させる制御である。
【0045】
Pa[W]は、例えば、車両10の放置時における冷却装置15aの上限冷却量とすることができるが、これに限られず、上限冷却量未満の所定の冷却量としてもよい。また、Pa[W]および期間Tm1は、例えば、車両10の製造者によって制御装置19に対してあらかじめ設定される。
【0046】
ここでは、通常冷却制御を行うと仮定した場合の今後のバッテリ11の温度推移として、
図4に示すバッテリ温度推移Tbat_N1が予測されたものとする。なお、制御装置19は、外気温推移Tout1、通常冷却制御による冷却量、バッテリ11の熱容量(熱マス)などに基づき、バッテリ温度推移Tbat_N1を予測することができる。
【0047】
一例として、時期txにおけるバッテリ温度Tx[℃]は、時期txからΔt[s]だけ前の時期である時期tx-1のバッテリ温度Tx-1[℃]を用いて、下記(1)式に示すようにあらわすことができる。
【0048】
【0049】
上記(1)式において、Q[W]は、時期txにおいてバッテリ11に生じる熱量であり、例えば、時期txにおける温調装置15による冷却量又は加温量と、時期txにおける外気温による冷却量又は加温量と、時期txにおけるバッテリ11の自己発熱量との総和である。また、C[J/K]は、バッテリ11の熱容量である。
【0050】
制御装置19は、例えば、現在からΔt[s](例えば600[s])間隔の各時期のバッテリ温度を、上記(1)式を用いて順次求めることにより、今後のバッテリ11の温度推移を予測することができる。
【0051】
次に、制御装置19は、交点時期の探索結果と、通常冷却制御を行うと仮定した場合のバッテリ11の温度推移の予測結果とに基づき、温調装置15による今後のバッテリ11の温調内容をあらわす温調プランを作成する。温調プランには、例えば、温調装置15をいつ、どのように動作させるかを示す情報が含まれる。
【0052】
温調プランの作成に際し、制御装置19は、例えば、まず、時系列的に隣合う交点時期同士の間の期間を処理対象期間として設定する。これにより、ここでは、
図5に示すように、交点時期Ct1から交点時期Ct2までの期間が処理対象期間Ttar1として設定される。
【0053】
次に、制御装置19は、設定した処理対象期間Ttar1内に、高温側閾値温度THiに一度達したバッテリ11が高温側閾値温度THiに再度達する時期である再到達時期があるか否かを判定する。すなわち、制御装置19は、処理対象期間Ttar1の開始時期となる交点時期Ct1の後、且つ処理対象期間Ttar1の終了時期となる交点時期Ct2の前に再到達時期があるか否かを判定する。
【0054】
図5に示すバッテリ温度推移Tbat_N1では、処理対象期間Ttar1内の、時期t1においてバッテリ11が高温側閾値温度THiに一度達し、その後の時期t2aにおいてバッテリ11が高温側閾値温度THiに再度達している。この場合、時期t2aが再到達時期となる。よって、この場合、制御装置19は、処理対象期間Ttar1の終了時期となる交点時期Ct2の前に再到達時期があると判定する。
【0055】
このように、制御装置19は、設定した処理対象期間Ttar1の終了時期となる交点時期Ct2の前に再到達時期があると判定した場合には、バッテリ11が高温側閾値温度THiに一度達した時期t1から行う冷却を、当初の期間Tm1に対して期間ΔTm11だけ延長した温調プランPL1aを作成する。ΔTm11は、例えば、車両10の製造者によって制御装置19に対してあらかじめ設定される。
【0056】
図5に示すバッテリ温度推移Tbat1は、温調プランPL1aに基づくバッテリ11の温調を行うと仮定した場合、すなわち、時期t1から期間Tm1+期間ΔTm11の冷却を行うと仮定した場合の、今後のバッテリ11の温度推移をあらわしている。なお、制御装置19は、外気温推移Tout1、温調プランPL1aによる冷却量、バッテリ11の熱容量などに基づき、バッテリ温度推移Tbat1を予測することができる。
【0057】
図5に示すように、温調プランPL1aに基づくバッテリ11の温調を行うようにした場合には、通常冷却制御を行うようにした場合(すなわち時期t1から期間Tm1の冷却を行うようにした場合)に比べて、時期t1からの冷却によってバッテリ温度をより低下させることができる。これにより、温調プランPL1aに基づくバッテリ11の温調を行うようにした場合には、
図5中の白抜き矢印に示すように、再到達時期を、当初の時期t2aから、時期t2aよりも後の時期t2bへシフトさせることができる。換言すると、再到達時期を、処理対象期間Ttar1の終了時期となる交点時期Ct2に近づけることができる。
【0058】
ところで、温調プランPL1aに基づくバッテリ11の温調が行われると仮定した場合にも、再到達時期(ここでは時期t2b)は、処理対象期間Ttar1の終了時期となる交点時期Ct2の前にある。このような場合、制御装置19は、例えば、時期t1から行う冷却を、当初の期間Tm1に対して期間ΔTm11よりもさらに延長した温調プランを新たに作成する。そして、制御装置19は、このような処理を、再到達時期が交点時期Ct2に一致するまで繰り返す。
【0059】
図6に示すバッテリ温度推移Tbat2は、時期t1から行う冷却を当初の期間Tm1に対して期間ΔTm12(ただしΔTm12>ΔTm11)だけ延長すると仮定した場合の、今後のバッテリ11の温度推移をあらわしている。
【0060】
図6に示すように、時期t1から期間Tm1+期間ΔTm12の冷却を行うと仮定した場合に、再到達時期が交点時期Ct2と一致したとする。この場合、制御装置19は、時期t1から行う冷却を当初の期間Tm1に対して期間ΔTm12だけ延長した温調プランPL1bを、バッテリ11の温調に実際に用いる温調プランとして採用する。
【0061】
よって、この場合、制御装置19は、温調プランPL1bに基づき温調装置15を制御して、バッテリ11の温調を行う。より具体的には、制御装置19は、時期t1から、単位時間あたりPa[W]の冷却量で期間Tm1+期間ΔTm12にわたって冷却装置15aを動作させる。これにより、
図6に示すように、制御装置19は、時期t0から24時間後までの期間に、冷却装置15aを1回動作させるだけで、バッテリ温度が高温側閾値温度THiを超えないようにすることができる。よって、
図4に示した通常冷却制御によって冷却装置15aを動作させるようにした場合に比べて、冷却装置15aを動作させる機会を減らし、冷却装置15aの消費電力を削減することが可能となる。
【0062】
また、
図6に示すように、制御装置19は、温調プランPL1bに基づき冷却装置15aを動作させることで、外気温が高温側閾値温度THi以下となる交点時期Ct2におけるバッテリ温度を高温側閾値温度THiとすることができる。これにより、制御装置19は、冷却装置15aによる過剰な冷却を抑制し、冷却装置15aの消費電力を削減することが可能となる。
【0063】
具体的に説明すると、車両10の放置中にバッテリ温度が上昇する主な熱源は、外気温である。このため、交点時期Ct2におけるバッテリ温度を高温側閾値温度THi以下としておけば、その後は自然放熱によってバッテリ11を高温側閾値温度THi以下に保てる。換言すると、交点時期Ct2におけるバッテリ温度が高温側閾値温度THiを下回るような冷却装置15aによる冷却は、過剰な冷却となり得る。
【0064】
よって、制御装置19は、上記のように交点時期Ct2におけるバッテリ温度が高温側閾値温度THiとなるようにすることで、バッテリ11を適切な温度に維持するのに外気温をできるだけ活用するようにして、冷却装置15aによる過剰な冷却を抑制し、冷却装置15aの消費電力を削減することが可能となる。
【0065】
なお、以上に説明した例では、再到達時期を交点時期Ct2と一致させた温調プランPL1bまで作成し、温調プランPL1bに基づき冷却装置15aを制御するようにしたが、これに限られない。例えば、制御装置19は、再到達時期を交点時期Ct2に近づけた温調プランPL1aを作成し、温調プランPL1aに基づき冷却装置15aを制御するようにしてもよい。このようにしても、通常冷却制御を行うようにした場合に比べて、交点時期Ct2におけるバッテリ温度を高温側閾値温度THiに近づけることができるため、バッテリ11を適切な温度に維持するのに外気温をできるだけ活用するようにして、冷却装置15aによる過剰な冷却を抑制し、冷却装置15aの消費電力を削減することが可能となる。
【0066】
また、例えば、通信装置17がネットワーク20に接続できないなどして、制御装置19が外気温情報を取得できない事態も発生し得る。そこで、制御装置19は、外気温情報を取得できない場合には、通常冷却制御によって冷却装置15aを制御するようにしてもよい。例えば、この場合、制御装置19は、バッテリ温度センサ11aによって検出されるバッテリ温度を所定の周期で取得し、取得したバッテリ温度が高温側閾値温度THiに達したと判定すると、単位時間あたりPa[W]の冷却量で期間Tm1にわたって冷却装置15aを動作させればよい。このようにすれば、外気温情報を取得できない場合にも、制御装置19は、バッテリ11が高温側閾値温度THiを超えないようにすることができ、バッテリ11を適切な温度に維持することが可能となる。
【0067】
また、以上に説明した例では、バッテリ11が高温側閾値温度THiに一度達した時期から行う冷却の期間を延長することによって、再到達時期を処理対象期間の終了時期となる交点時期に近づけるようにしたが、これに限られない。例えば、バッテリ11が高温側閾値温度THiに一度達した時期から行う冷却によるバッテリ11の目標温度を下げることによって、再到達時期を処理対象期間の終了時期となる交点時期に近づけるようにしてもよい。通常冷却制御についても、例えば、バッテリ11が高温側閾値温度THiに達する毎に所定の目標温度までバッテリ11を冷却する制御としてもよい。
【0068】
また、以上に説明した例では、おおよそ1日分の期間に対応する温調プランを制御装置19が作成するようにしたが、これに限られない。制御装置19は、複数日分の期間に対応する外気温情報を取得できた場合、その外気温情報に基づき、複数日分の期間に対応する温調プランを作成してもよい。このようにすれば、例えば、車両10が長期間放置される場合にも、放置中の各日の気温(換言すると天候)を考慮して、温調装置15による過剰な温調を抑制することが可能となる。
【0069】
(1-2.バッテリの冷却が行われる場合の温調方法の他の一例)
以下、複数日分の期間に対応する温調プランを制御装置19が作成するようにした場合の一例について、
図7A~
図7Dを参照しながら説明する。
【0070】
ここでは、制御装置19が、
図7Aに示す外気温推移Tout2をあらわす外気温情報を取得したとする。外気温推移Tout2は、現在である時期t0からおおよそ3日間分の車両10周辺の外気温の推移をあらわしている。
【0071】
また、
図7Aに示すバッテリ温度推移Tbat’は、外気温推移Tout2に対して、バッテリ11の温調(ここでは冷却)を行わないようにした場合の、今後のバッテリ11の温度推移をあらわしている。そして、
図7Aに示すバッテリ温度推移Tbat_N2は、通常冷却制御を行うと仮定した場合の、今後のバッテリ11の温度推移をあらわしている。
【0072】
図7Aに示すように、取得された外気温情報が外気温推移Tout2をあらわすものであった場合には、交点時期として、交点時期Ct11、交点時期Ct12、交点時期Ct21、交点時期Ct22、交点時期Ct31、および交点時期Ct32(すなわち3つ以上の交点時期)が探索される。このように、制御装置19は、交点時期が3つ以上探索された場合には、時系列的に隣合う交点時期同士の間の各期間について、
図2~
図6などを用いて説明した処理を行う。
【0073】
具体的に説明すると、まず、制御装置19は、
図7Bに示すように、1日目の交点時期Ct11から交点時期Ct12までの期間を処理対象期間Ttar11として設定する。そして、制御装置19は、設定した処理対象期間Ttar11内に再到達時期があるか否かを判定し、再到達時期があると判定した場合には、その再到達期間を処理対象期間Ttar11の終了時期である交点時期Ct12に一致させるような温調プランを作成する。これにより、制御装置19は、処理対象期間Ttar11におけるバッテリ11の温調を最適化した温調プランを作成することができる。なお、
図7Bに示すバッテリ温度推移Tbatαは、処理対象期間Ttar11におけるバッテリ11の温調を最適化した温調プランに基づくバッテリ11の温調が行われると仮定した場合の、今後のバッテリ11の温度推移をあらわしている。
【0074】
その後、制御装置19は、
図7Cに示すように、2日目の交点時期Ct21から交点時期Ct22までの期間を処理対象期間Ttar12として設定し、処理対象期間Ttar12についてもバッテリ11の温調を最適化した温調プランを作成する。なお、
図7Cに示すバッテリ温度推移Tbatβは、処理対象期間Ttar11および処理対象期間Ttar12におけるバッテリ11の温調を最適化した温調プランに基づくバッテリ11の温調が行われると仮定した場合の、今後のバッテリ11の温度推移をあらわしている。
【0075】
その後、制御装置19は、
図7Dに示すように、3日目の交点時期Ct31から交点時期Ct32までの期間を処理対象期間Ttar13として設定し、処理対象期間Ttar13についてもバッテリ11の温調を最適化した温調プランを作成する。これにより、制御装置19は、処理対象期間Ttar11、処理対象期間Ttar12、および処理対象期間Ttar13におけるバッテリ11の温調を最適化した温調プランを作成することができる。
【0076】
そして、制御装置19は、処理対象期間Ttar11、処理対象期間Ttar12、および処理対象期間Ttar13におけるバッテリ11の温調を最適化した温調プランに基づき冷却装置15aを動作させることで、
図7D中のバッテリ温度推移Tbatγであらわすようにバッテリ温度を推移させることが可能となる。
【0077】
以上に説明したように、例えば、制御装置19は、交点時期が3つ以上探索された場合には、時系列的に隣合う交点時期同士の間の各期間について、
図2~
図6などを用いて説明した処理を行う。これにより、制御装置19は、交点時期を3つ以上含むような複数日分の期間におけるバッテリ11の温調を最適化した温調プランを作成することができる。よって、車両10が長期間放置される場合にも、バッテリ11を適切な温度に維持するのに外気温をできるだけ活用するようにして、冷却装置15aによる過剰な冷却を抑制し、冷却装置15aの消費電力を削減することが可能となる。すなわち、制御装置19は、車両10の放置中の各日の気温を考慮して、温調装置15による過剰な温調(ここでは冷却装置15aによる過剰な冷却)を抑制することが可能となる。
【0078】
(2-1.バッテリの加温が行われる場合の温調方法の一例)
次に、車両10の放置中のバッテリ11の温調として、バッテリ11の加温が行われる場合の一例について、
図8~
図10を参照しながら説明する。例えば、バッテリ11のSOC(State Of Charge)がある程度高い状態で、気温の低い低温地域にて車両10が放置されている際に、以下のようなバッテリ11の加温が行われ得る。なお、基本的な流れは、バッテリ11の加温が行われる場合も、以上に説明したバッテリ11の冷却が行われる場合と同様であるので、以下の説明は適宜簡略化または省略する。
【0079】
ここでは、
図8に示す外気温推移Tout3をあらわす外気温情報が取得されたものとする。外気温推移Tout3は、現在である時期t0から24時間後までの(すなわち現在から1日分の)、車両10周辺の外気温の推移をあらわしている。
【0080】
外気温推移Tout3があらわす外気温のうちの一部の期間の外気温は、バッテリ11の低温状態に対する耐久性などを勘案してあらかじめ定められた低温側閾値温度TLoを下回るものとなっている。低温側閾値温度TLoは、閾値温度の他の一例であり、例えば-10[℃]とすることができる。なお、制御装置19は、バッテリ11のSOCに応じて低温側閾値温度TLoを異ならせてもよい。
【0081】
外気温推移Tout3に対して、バッテリ11の温調(ここでは加温)を行わないようにした場合、バッテリ温度は低温側閾値温度TLoを下回るものとなり得る。このように、車両10の放置中にバッテリ11の温調を行わなければバッテリ温度が低温側閾値温度TLoを下回ってしまう場合、制御装置19は、車両10の放置中に加温装置15bによってバッテリ11を加温することで、バッテリ温度が低温側閾値温度TLoを下回らないようにする。これにより、車両10の放置中にバッテリ温度が低温側閾値温度TLoを下回ることを抑制して、バッテリ温度が低温側閾値温度TLoを下回ることによるバッテリ11の劣化を抑制することが可能となる。
【0082】
具体的に説明すると、この場合、まず、制御装置19は、取得した外気温情報に基づき、外気温が低温側閾値温度TLoとなる時期である交点時期を探索する。すなわち、この場合の交点時期は、グラフ上で外気温と低温側閾値温度TLoとの交点に対応する時期ということもできる。
【0083】
例えば、
図8に示すように、取得された外気温情報が外気温推移Tout3をあらわすものであれば、交点時期としては、交点時期Ct3および交点時期Ct4が探索される。ここで、交点時期Ct3は、低温側閾値温度TLoよりも高かった外気温が低下して低温側閾値温度TLoとなる時期であり、交点時期Ct4よりも時系列的に前の1番目の交点時期である。また、交点時期Ct4は、低温側閾値温度TLo未満だった外気温が上昇して低温側閾値温度TLoとなる時期であり、交点時期Ct3の次の(すなわち2番目)の交点時期である。
【0084】
次に、制御装置19は、取得した外気温情報に基づき、バッテリ11が低温側閾値温度TLoに達する毎に所定の加温を行うと仮定した場合の、今後のバッテリ11の温度推移を予測する。以下、バッテリ11が低温側閾値温度TLoに達する毎に所定の加温を行う制御を「通常加温制御」とも称する。
【0085】
図9に示すように、通常加温制御は、例えば、バッテリ11が低温側閾値温度TLoに達する時期(
図9に示す例では時期t3および時期t4aのそれぞれ)から、単位時間あたりPb[W]の加熱量で期間Tm2にわたってバッテリ11を加温するように加温装置15b(すなわち温調装置15)を動作させる制御である。
【0086】
Pb[W]は、例えば、車両10の放置時における加温装置15bの上限加熱量とすることができるが、これに限られず、上限加熱量未満の所定の加熱量としてもよい。また、Pb[W]および期間Tm2は、例えば、車両10の製造者によって制御装置19に対してあらかじめ設定される。
【0087】
ここでは、通常加温制御を行うと仮定した場合の今後のバッテリ11の温度推移として、
図9に示すバッテリ温度推移Tbat_N3が予測されたものとする。なお、制御装置19は、外気温推移Tout3、通常加温制御による加熱量、バッテリ11の熱容量などに基づき、バッテリ温度推移Tbat_N3を予測することができる。
【0088】
次に、制御装置19は、交点時期の探索結果と、通常加温制御を行うと仮定した場合のバッテリ11の温度推移の予測結果とに基づき、温調プランを作成する。温調プランの作成に際し、制御装置19は、例えば、まず、時系列的に隣合う交点時期同士の間の期間を処理対象期間として設定する。これにより、ここでは、
図10に示すように、交点時期Ct3から交点時期Ct4までの期間が処理対象期間Ttar2として設定される。
【0089】
次に、制御装置19は、設定した処理対象期間Ttar2内に、低温側閾値温度TLoに一度達したバッテリ11が低温側閾値温度TLoに再度達する時期である再到達時期があるか否かを判定する。すなわち、制御装置19は、処理対象期間Ttar2の開始時期となる交点時期Ct3の後、且つ処理対象期間Ttar2の終了時期となる交点時期Ct4の前に再到達時期があるか否かを判定する。
【0090】
図10に示すバッテリ温度推移Tbat_N3では、処理対象期間Ttar2内の、時期t3においてバッテリ11が低温側閾値温度TLoに一度達し、その後の時期t4aにおいてバッテリ11が低温側閾値温度TLoに再度達している。この場合、時期t4aが再到達時期となる。よって、この場合、制御装置19は、処理対象期間Ttar2の終了時期となる交点時期Ct4の前に再到達時期があると判定する。
【0091】
このように、制御装置19は、設定した処理対象期間Ttar2の終了時期となる交点時期Ct2の前に再到達時期があると判定した場合には、
図10に示すように、バッテリ11が低温側閾値温度TLoに一度達した時期t3から行う加温を調整する(例えば時期t3からの加温を当初の期間Tm2に対して期間ΔTm21だけ延長する)ことで、再到達期間を処理対象期間Ttar2の終了時期である交点時期Ct4に一致させるような温調プランPL2を作成する。これにより、制御装置19は、処理対象期間Ttar2におけるバッテリ11の温調を最適化した温調プランを作成することができる。
【0092】
図10に示すバッテリ温度推移Tbat3は、処理対象期間Ttar2におけるバッテリ11の温調を最適化した温調プランPL2に基づくバッテリ11の温調を行うと仮定した場合の、今後のバッテリ11の温度推移をあらわしている。
【0093】
この場合、制御装置19は、温調プランPL2に基づき温調装置15を制御して、バッテリ11の温調を行う。より具体的には、制御装置19は、時期t3から、単位時間あたりPb[W]の加熱量で期間Tm2+期間ΔTm21にわたって加温装置15bを動作させる。これにより、
図10に示すように、制御装置19は、時期t0から24時間後までの期間に、加温装置15bを1回動作させるだけで、バッテリ温度が低温側閾値温度TLoを下回らないようにすることができる。よって、
図9に示した通常加温制御によって加温装置15bを動作させるようにした場合に比べて、
図10に示すように、加温装置15bを動作させる機会を減らし、加温装置15bの消費電力を削減することが可能となる。
【0094】
また、
図10に示すように、制御装置19は、温調プランPL2に基づき加温装置15bを動作させることで、外気温が低温側閾値温度TLo以上となる交点時期Ct4におけるバッテリ温度を低温側閾値温度TLoとすることができる。これにより、制御装置19は、バッテリ11を適切な温度に維持するのに外気温をできるだけ活用するようにして、加温装置15bによる過剰な加温を抑制し、加温装置15bの消費電力を削減することが可能となる。
【0095】
なお、以上に説明した例では、再到達時期を交点時期Ct4と一致させた温調プランPL2を作成し、温調プランPL2に基づき加温装置15bを制御するようにしたが、これに限られない。例えば、制御装置19は、再到達時期を交点時期Ct4と一致させずとも近づけた温調プランを作成し、作成した温調プランに基づき加温装置15bを制御するようにしてもよい。このようにしても、通常加温制御を行うようにした場合に比べて、交点時期Ct4におけるバッテリ温度を低温側閾値温度TLoに近づけることができるため、バッテリ11を適切な温度に維持するのに外気温をできるだけ活用するようにして、加温装置15bによる過剰な加温を抑制し、加温装置15bの消費電力を削減することが可能となる。
【0096】
また、制御装置19は、外気温情報を取得できない場合には、通常加温制御によって加温装置15bを制御してもよい。例えば、この場合、制御装置19は、バッテリ温度センサ11aによって検出されるバッテリ温度を所定の周期で取得し、取得したバッテリ温度が低温側閾値温度TLoに達したと判定すると、単位時間あたりPb[W]の加熱量で期間Tm2にわたって加温装置15bを動作させればよい。このようにすれば、外気温情報を取得できない場合にも、制御装置19は、バッテリ11が低温側閾値温度TLoを下回らないようにすることができ、バッテリ11を適切な温度に維持することが可能となる。
【0097】
また、以上に説明した例では、バッテリ11が低温側閾値温度TLoに一度達した時期から行う加温の期間を延長することによって、再到達時期を処理対象期間の終了時期となる交点時期に近づけるようにしたが、これに限られない。例えば、バッテリ11が低温側閾値温度TLoに一度達した時期から行う加温によるバッテリ11の目標温度を上げることによって、再到達時期を処理対象期間の終了時期となる交点時期に近づけるようにしてもよい。通常加温制御についても、例えば、バッテリ11が低温側閾値温度TLoに達する毎に所定の目標温度までバッテリ11を加温する制御としてもよい。
【0098】
(2-2.バッテリの加温が行われる場合の温調方法の他の一例)
前述したように、複数日分の期間に対応する温調プランを制御装置19が作成するようにした場合など、交点時期が3つ以上探索された場合には、制御装置19は、時系列的に隣合う交点時期同士の間の各期間について、
図10などを用いて説明した処理を行うようにしてもよい。
【0099】
例えば、
図11に示すように、取得された外気温情報が外気温推移Tout4をあらわすものであり、交点時期として、交点時期Ct41、交点時期Ct42、交点時期Ct51、交点時期Ct52、交点時期Ct61、および交点時期Ct62(すなわち3つ以上の交点時期)が探索されたとする。
【0100】
この場合、制御装置19は、交点時期Ct41から交点時期Ct42までの処理対象期間Ttar21、交点時期Ct51から交点時期Ct52までの処理対象期間Ttar22、および、交点時期Ct61から交点時期Ct62までの処理対象期間Ttar23のそれぞれの処理対象期間についてバッテリ11の温調を順次最適化した温調プランを作成するようにしてもよい。
【0101】
処理対象期間Ttar21、処理対象期間Ttar22、および処理対象期間Ttar23におけるバッテリ11の温調を最適化した温調プランに基づき温調装置15(ここでは加温装置15b)を動作させることで、バッテリ温度を、
図11に示すバッテリ温度推移Tbatδであらわすように推移させることが可能となる。これに対して、
図11に示すバッテリ温度推移Tbat_N4は、通常加温制御を行うと仮定した場合の、今後のバッテリ11の温度推移をあらわしている。
【0102】
以上に説明したように、例えば、制御装置19は、交点時期が3つ以上探索された場合には、時系列的に隣合う交点時期同士の間の各期間について、
図10などを用いて説明した処理を行う。これにより、制御装置19は、交点時期を3つ以上含むような複数日分の期間におけるバッテリ11の温調を最適化した温調プランを作成することができる。よって、車両10が長期間放置される場合にも、バッテリ11を適切な温度に維持するのに外気温をできるだけ活用するようにして、加温装置15bによる過剰な加温を抑制し、加温装置15bの消費電力を削減することが可能となる。すなわち、制御装置19は、車両10の放置中の各日の気温を考慮して、温調装置15による過剰な温調(ここでは加温装置15bによる過剰な加温)を抑制することが可能となる。
【0103】
[制御装置が実行する処理の一例]
次に、制御装置19が実行する処理の一例について、
図12を参照しながら説明する。制御装置19は、例えば、車両10のイグニッション電源がオフであるときに(すなわち車両10の放置中に)、
図10に示す一連の処理を実行する。
【0104】
まず、制御装置19は、通信装置17がネットワーク20に接続可能であるか否かを判定する(ステップS1)。通信装置17がネットワーク20に接続不可と判定した場合(ステップS1:No)、制御装置19は、通常温調制御によって温調装置15を制御することでバッテリ11を温調し(ステップS2)、
図10に示す一連の処理を終了する。ここで、通常温調制御は、前述した通常冷却制御と通常加温制御とのうちの一方または両方を含む。
【0105】
すなわち、ネットワーク20に接続不可と判定した場合、換言すると、ネットワーク20を介して外気温情報を取得できない場合、制御装置19は、温調プランを作成せずに、バッテリ温度センサ11aによって検出されるバッテリ温度を監視しながら、必要に応じて温調装置15を適宜動作させる。これにより、制御装置19は、外気温情報を取得できない場合にも、バッテリ11を適切な温度に維持することができる。
【0106】
一方、通信装置17がネットワーク20に接続可能と判定した場合(ステップS1:Yes)、制御装置19は、ネットワーク20を介してサーバ100から外気温情報を取得する(ステップS3)。
【0107】
次に、制御装置19は、取得した外気温情報に基づき交点時期を探索する(ステップS4)。そして、制御装置19は、ステップS4の処理によって複数の交点時期が探索されたか否かを判定する(ステップS5)。複数の交点時期が探索されなかったと判定した場合(ステップS5:No)、すなわち、探索された交点時期が1つ以下であった場合、制御装置19は、ステップS2の処理へ進む。
【0108】
一方、複数の交点時期が探索されたと判定した場合(ステップS5:Yes)、制御装置19は、通常温調制御を行うと仮定した場合の今後のバッテリ11の温度推移を予測する(ステップS6)。
【0109】
次に、制御装置19は、カウンタのカウント値Nに1を設定し(ステップS7)、時系列的に前からN番目の交点時期からN+1番目の交点時期までの期間を処理対象期間として設定する(ステップS8)。これにより、例えば、カウント値Nが1である場合には、1番目の交点時期から2番目の交点時期までの期間が処理対象期間として設定される。
【0110】
次に、制御装置19は、ステップS6の処理またはステップS13の処理(後述)によって予測したとおりにバッテリ11が温度推移すると仮定した場合に、ステップS8の処理によって設定した処理対象期間内に再到達時期があるか否かを判定する(ステップS9)。
【0111】
例えば、このとき、制御装置19は、1番目の交点時期から2番目の交点時期までの期間を処理対象期間として設定していれば、ステップS6の処理によって予測したとおりにバッテリ11が温度推移すると仮定して、処理対象期間内に再到達時期があるか否かを判定する。一方、制御装置19は、他の期間(例えば2番目の交点時期から3番目の交点時期までの期間)を処理対象期間として設定していれば、ステップS13の処理によって予測したとおりにバッテリ11が温度推移すると仮定して、処理対象期間内に再到達時期があるか否かを判定する。
【0112】
処理対象期間内に再到達時期がないと判定した場合(ステップS9:No)、制御装置19は、そのままステップS11の処理へ進む。一方、処理対象期間内に再到達時期があると判定した場合(ステップS9:Yes)、制御装置19は、再到達期間を処理対象期間の終了時期である交点時期に一致させるような温調プランを作成して(ステップS10)、ステップS11の処理へ進む。
【0113】
次に、制御装置19は、処理対象期間として設定可能な期間が残っているか否かを判定する(ステップS11)。処理対象期間として設定可能な期間が残っていないと判定した場合(ステップS11:No)、制御装置19は、ステップS10の処理によって作成した温調プランに基づき温調装置15を制御することでバッテリ11を温調し(ステップS12)、
図10に示す一連の処理を終了する。
【0114】
一方、処理対象期間として設定可能な期間が残っていると判定した場合(ステップS11:Yes)、制御装置19は、ステップS10の処理によって作成した温調プランに基づくバッテリ11の温調が行われると仮定した場合の今後のバッテリ11の温度推移を予測する(ステップS13)。そして、制御装置19は、カウント値Nに1を加算して(ステップS14)、ステップS8の処理へ進み、処理対象期間として設定可能な期間がなくなるまで上記の処理を繰り返す。
【0115】
以上に説明したように、本実施形態によれば、車両10の放置中にバッテリ11を適切な温度に維持しつつも、温調装置15の消費電力を削減することを可能にする。そして、延いては車両10のエネルギー効率の改善に寄与することができる。
【0116】
なお、本実施形態で説明したバッテリの温調方法は、あらかじめ用意されたプログラムをコンピュータで実行することにより実現できる。本プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶され、記憶媒体から読み出されることによって実行される。また、本プログラムは、フラッシュメモリ等の不揮発性(非一過性)の記憶媒体に記憶された形で提供されてもよいし、インターネットなどのネットワークを介して提供されてもよい。本プログラムを実行するコンピュータは、車両10に含まれるものであってもよいし、車両10と通信可能な外部装置(例えばサーバ)に含まれるものでもあってもよい。
【0117】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明が前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、前述した実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0118】
例えば、前述した実施形態では、本発明の制御装置を、車両10に搭載された制御装置19によって実現した例を説明したが、これに限られない。例えば、本発明の制御装置を、制御装置19と通信可能なサーバ100によって実現してもよい。この場合、例えば、前述した制御装置19の各処理を、サーバ100のCPUなどによって実現される処理部が行えばよい。また、本発明の制御装置は、制御装置19とサーバ100とが協働することによって実現されてもよく、例えば、前述した制御装置19の処理のうちの一部がサーバ100によって実行されてもよい。
【0119】
また、前述した実施形態では、制御装置19が外気温情報をサーバ100から直接取得するものとしたが、これに限られない。例えば、制御装置19は、サーバ100と通信可能な他の装置(例えば車両10のユーザの端末装置)を介して外気温情報を取得してもよい。
【0120】
また、前述した実施形態では、温調装置15が、バッテリ11の温調として、バッテリ11の冷却と加温とを実行可能であるものとしたが、これに限られない。例えば、温調装置15が、バッテリ11の温調として、バッテリ11の冷却と加温とのうちの一方のみを実行可能なようにしてもよい。
【0121】
また、制御装置19は、
図7A~
図7Dや
図11に示した複数日に対応する温調プランを作成する際と同様の処理を、一日に対応する温調プランを作成する際にも行うようにしてもよい。このようにすれば、複数日に限らず、一日の中で外気温が複数回大きく変化する場合にも、バッテリ11を適切な温度に維持するのに外気温をできるだけ活用するようにして、温調装置15の消費電力を削減することが可能となる。
【0122】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、前述した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0123】
(1) バッテリ(バッテリ11)と、前記バッテリを温調可能な温調装置(温調装置15、冷却装置15a、加温装置15b)とを備える車両(車両10)の放置中に、前記温調装置を制御して前記バッテリの温調を行うバッテリの温調方法であって、
コンピュータ(制御装置19)が、
前記車両周辺の今後の外気温の推移(外気温推移Tout1、Tout2、Tout3、Tout4)をあらわす外気温情報を取得し(ステップS3)、
前記外気温情報に基づき、前記外気温が閾値温度(高温側閾値温度THi、低温側閾値温度TLo)となる時期である交点時期(交点時期Ct1、Ct2、Ct3、Ct4、Ct11、Ct12、Ct21、Ct22、Ct31、Ct32、Ct41、Ct42、Ct51、Ct52、Ct61、Ct62)を探索し(ステップS4)、
前記外気温情報に基づき、前記バッテリが前記閾値温度に達する毎に所定の温調(通常冷却制御、通常加温制御)を行うと仮定した場合の、今後の前記バッテリの温度推移(バッテリ温度推移Tbat_N1、Tbat_N2、Tbat_N3、Tbat_N4)を予測し(ステップS6)、
前記交点時期の探索結果と、前記バッテリの温度推移の予測結果とに基づき、前記温調装置による前記バッテリの温調プランを作成し(ステップS10)、
前記温調プランに基づき、前記温調装置を制御する(ステップS12)、
処理を実行し、
前記温調プランを作成する処理では、
前記閾値温度に一度達した前記バッテリが前記閾値温度に再度達する時期である再到達時期が前記交点時期の前にあるか否かを判定し、
前記再到達時期が前記交点時期の前にあると判定した場合に、前記再到達時期が前記交点時期に近づくように、前記バッテリが前記閾値温度に一度達したときに行う温調の内容を調整した前記温調プランを作成する、
バッテリの温調方法。
【0124】
(1)によれば、閾値温度に一度達したバッテリがその閾値温度に再度達する再到達時期が交点時期の前にあると判定した場合に、再到達時期が交点時期に近づくように、バッテリが閾値温度に一度達したときに行う温調の内容を調整した温調プランを作成し、作成した温調プランに基づき、温調装置を制御することができる。これにより、車両の放置中に、バッテリを適切な温度に維持するのに外気温をできるだけ活用するようにして、温調装置による過剰な温調を抑制し、温調装置の消費電力を削減することが可能となる。よって、車両の放置中にバッテリを適切な温度に維持しつつも、バッテリの温調を行う温調装置の消費電力を削減することを可能にする。
【0125】
(2) (1)に記載のバッテリの温調方法であって、
前記温調プランを作成する処理では、前記再到達時期が前記交点時期の前にあると判定した場合に、前記再到達時期が前記交点時期と一致するように、前記バッテリが前記閾値温度に一度達したときに行う温調の内容を調整した前記温調プランを作成する、
バッテリの温調方法。
【0126】
(2)によれば、車両の放置中に、バッテリを適切な温度に維持するのに外気温をできるだけ活用するようにして、温調装置による過剰な温調を抑制し、温調装置の消費電力を削減することが可能となる。
【0127】
(3) (1)または(2)に記載のバッテリの温調方法であって、
前記コンピュータが、
前記外気温情報を取得できない場合に、前記バッテリが前記閾値温度に達する毎に前記所定の温調を行うように前記温調装置を制御する処理をさらに実行する、
バッテリの温調方法。
【0128】
(3)によれば、外気温情報を取得できない場合にも、車両の放置中にバッテリを適切な温度に維持することを可能にする。
【0129】
(4) (1)または(2)に記載のバッテリの温調方法であって、
前記温調プランを作成する処理では、
前記交点時期が3つ以上探索された場合に、時系列的に隣合う前記交点時期同士の間の各期間について、前記再到達時期が前記期間内にあるか否かを判定し、
前記再到達時期が前記期間内にあると判定した場合に、前記再到達時期が前記期間の終了時期である前記交点時期に近づくように、前記期間において前記バッテリが前記閾値温度に一度達したときに行う温調の内容を調整した前記温調プランを作成する、
バッテリの温調方法。
【0130】
(4)によれば、車両が長期間放置される場合にも、バッテリを適切な温度に維持するのに外気温をできるだけ活用するようにして、温調装置による過剰な温調を抑制し、温調装置の消費電力を削減することが可能となる。
【0131】
(5) バッテリ(バッテリ11)と、前記バッテリを温調可能な温調装置(温調装置15、冷却装置15a、加温装置15b)とを備える車両(車両10)の放置中に、前記温調装置を制御して前記バッテリの温調を行う制御装置(制御装置19)であって、
前記制御装置は、
前記車両周辺の今後の外気温の推移(外気温推移Tout1、Tout2、Tout3、Tout4)をあらわす外気温情報を取得し(ステップS3)、
前記外気温情報に基づき、前記外気温が閾値温度(高温側閾値温度THi、低温側閾値温度TLo)となる時期である交点時期(交点時期Ct1、Ct2、Ct3、Ct4、Ct11、Ct12、Ct21、Ct22、Ct31、Ct32、Ct41、Ct42、Ct51、Ct52、Ct61、Ct62)を探索し(ステップS4)、
前記外気温情報に基づき、前記バッテリが前記閾値温度に達する毎に所定の温調(通常冷却制御、通常加温制御)を行うと仮定した場合の、今後の前記バッテリの温度推移(バッテリ温度推移Tbat_N1、Tbat_N2、Tbat_N3、Tbat_N4)を予測し(ステップS6)、
前記交点時期の探索結果と、前記バッテリの温度推移の予測結果とに基づき、前記温調装置による前記バッテリの温調プラン(温調プランPL1a、PL1b、PL2)を作成し(ステップS10)、
前記温調プランに基づき、前記温調装置を制御する(ステップS12)、
処理を行う処理部(処理部19a)を備え、
前記処理部は、
前記温調プランを作成する際に、
前記閾値温度に一度達した前記バッテリが前記閾値温度に再度達する時期である再到達時期が前記交点時期の前にあるか否かを判定し、
前記再到達時期が前記交点時期の前にあると判定した場合に、前記再到達時期が前記交点時期に近づくように、前記バッテリが前記閾値温度に一度達したときに行う温調の内容を調整した前記温調プランを作成する、
制御装置。
【0132】
(5)によれば、閾値温度に一度達したバッテリがその閾値温度に再度達する再到達時期が交点時期の前にあると判定した場合に、再到達時期が交点時期に近づくように、バッテリが閾値温度に一度達したときに行う温調の内容を調整した温調プランを作成し、作成した温調プランに基づき、温調装置を制御することができる。これにより、車両の放置中に、バッテリを適切な温度に維持するのに外気温をできるだけ活用するようにして、温調装置による過剰な温調を抑制し、温調装置の消費電力を削減することが可能となる。よって、車両の放置中にバッテリを適切な温度に維持しつつも、バッテリの温調を行う温調装置の消費電力を削減することを可能にする。
【符号の説明】
【0133】
10 車両
11 バッテリ
19 制御装置
19a 処理部