(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】カメラ連動照明制御システム
(51)【国際特許分類】
H05B 45/20 20200101AFI20240927BHJP
H05B 45/10 20200101ALI20240927BHJP
H05B 47/125 20200101ALI20240927BHJP
H05B 47/19 20200101ALI20240927BHJP
【FI】
H05B45/20
H05B45/10
H05B47/125
H05B47/19
(21)【出願番号】P 2022193338
(22)【出願日】2022-12-02
【審査請求日】2023-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2021196885
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022020730
(32)【優先日】2022-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000140269
【氏名又は名称】株式会社遠藤照明
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 圭介
(72)【発明者】
【氏名】原田 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】春田 昌也
(72)【発明者】
【氏名】上野 眞人
(72)【発明者】
【氏名】青木 亮介
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-119877(JP,A)
【文献】特開2010-212095(JP,A)
【文献】特開2017-139202(JP,A)
【文献】特開2015-216132(JP,A)
【文献】特表2017-504153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/00
H05B 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ、画像認識機能を備える装置、照明制御装置
、及
び対象物照明装置を備えたカメラ連動照明制御システムであって、
前記対象物照明装置の照明光によって、対象物が存在しうる対象領域を照明し、
前記カメラによって
前記対象領域を撮影して対象
領域画像を取得し、
前記画像認識機能を備える装置は、
前記対象領域画像の画素を複数個の色領域に分類し、前記色領域のうち前記対象物以外の色領域を除外し、残りの前記色領域のうち、分類された色空間に存在する画素数が最も多い色領域の平均値の色である代表色を対象物の色として認識し、
前記照明制御装置は
、前記対象物の色に応じて
、前記照明光の色度を制御
し、
前記対象物照明装置は、前記照明制御装置によって制御された前記照明光を前記対象領域に照射する、
カメラ連動照明制御システム。
【請求項2】
カメラ、画像認識機能を備える装置、照明制御装置、及び対象物照明装置を備えたカメラ連動照明制御システムであって、
前記対象物照明装置の照明光によって、対象物が存在しうる対象領域を照明し、
前記カメラによって前記対象領域を撮影して対象領域画像を取得し、
前記画像認識機能を備える装置は、前記対象領域画像より、前記対象物の種類、又は前記対象物の色を認識し、
前記照明制御装置は、前記対象物の種類、又は前記対象物の色に応じて、前記照明光の色度を制御し、
前記画像認識機能を備える装置により、
前記対象領域画像において前記対象物が存在しないと認識された場合、前記照明制御装置は、前記照明光の全光束を、前記対象物が存在する場合の全光束より小さくする、又は前記照明光を消灯するように制御
する、
カメラ連動照明制御システム。
【請求項3】
前記対象物照明装置は、前記対象物の撮影の際に、黒体放射軌跡上の色度の前記照明光で前記対象物を照射する、
請求項1
又は2に記載のカメラ連動照明制御システム。
【請求項4】
前記照明制御装置は、前記
対象領域画像における前記対象物の明るさに応じて、前記照明光の調光を行う、
請求項1
又は2に記載のカメラ連動照明制御システム。
【請求項5】
前記対象物照明装置が複数あり、
前記画像認識機能を備える装置は、前記カメラによって撮影され
た画像より前記対象領域を複数切り出して前記対象物照明装置と対応付け、各対象領域について前記対象物の色を認識し、
前記照明制御装置は、前
記対象領域について個別に前記照明光の制御を行う、
請求項1
又は2に記載のカメラ連動照明制御システム。
【請求項6】
前記照明制御装置は、前記対象物の色度座標と当該色度座標に近い黒体放射軌跡上の色度座標との色偏差に応じて、前記照明光の色度を前記色度座標の色偏差と同じ方向に変化させる、
請求項1
又は2に記載のカメラ連動照明制御システム。
【請求項7】
前記カメラ連動照明制御システムは、さらに全般照明装置を備え、
前記全般照明装置の照明光の色度を変化させる場合に、前記対象物照明装置の前記照明光の色度も同じ方向に変化させる、
請求項1
又は2に記載のカメラ連動照明制御システム。
【請求項8】
前記全般照明装置の照明光の色度の変化は、スケジュール運転による変化である、
請求項
7に記載のカメラ連動照明制御システム。
【請求項9】
前記対象物照明装置は、3色以上の発光素子として、少なくとも第1の発光素子と、第2の発光素子と、第3の発光素子を備え、
前記発光素子がそれぞれ発する光の混色により、前記照明光の色温度及び色偏差の制御が可能である、
請求項1
又は2に記載のカメラ連動照明制御システム。
【請求項10】
前記対象物照明装置において、
前記第1の発光素子、前記第2の発光素子、前記第3の発光素子が発する光は、いずれも相関色温度が2000K以上6000K以下であり、
前記第1の発光素子、前記第2の発光素子、前記第3の発光素子が発する光のうち、最も色偏差Duvが大きいものと最も色偏差Duvが小さいものの色偏差Duvの差は、10以上50以下である、
請求項
9に記載のカメラ連動照明制御システム。
【請求項11】
前記第1の発光素子、前記第2の発光素子、前記第3の発光素子が発する光の色偏差Duvが、-50以上+20以下である、
請求項
9に記載のカメラ連動照明制御システム。
【請求項12】
前記第1の発光素子、前記第2の発光素子、前記第3の発光素子が発する光のそれぞれのスペクトルは、波長490以上波長570nm以下の領域の最大値に対して、波長570以上波長600nm以下の領域の最大値の比率が、0.25以上である、
請求項
9に記載のカメラ連動照明制御システム。
【請求項13】
前記対象物照明装置は、さらに、相関色温度が2000K以上6000K以下であり、色偏差Duvが、-50以上+20以下である光を発する第4の発光素子を備え、
前記第1の発光素子と、前記第2の発光素子と、前記第3の発光素子と、前記第4の発光素子が発する光の光量比が制御可能である、
請求項
9に記載のカメラ連動照明制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラと照明装置を備えたカメラ連動照明制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
照明装置とカメラを連動させて、カメラで撮像した画像情報に基づいて照明装置の制御を行うシステムが提案されている。特許文献1には、カメラ及び画像処理部を人位置検知手段として用い、人の位置に対応する照明装置を点灯するように照明制御を行うシステムが提案されている。
【0003】
特許文献2には、肉類を鮮やかに見せる照明装置が記載されている。
【0004】
特許文献3には、照明対象物である料理の種類に対応づけられた発光態様データに基づいて発光部が駆動される照明システムが記載されている。
【0005】
特許文献4には、青色光と赤色光と緑色光とのスペクトル成分が所定の比率で混合された暖色系の第1の光源と、青色光と赤色光と緑色光とのスペクトル成分が第1の光源とは異なる比率で混合された高色温度の第2の光源と、青色光のスペクトル成分のみを有する第3の光源を用いて、食材ごとに最適な光を照射することができる照明装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-007123号公報
【文献】特開2013-127855号公報
【文献】特開2013-077387号公報
【文献】特許5507148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えばスーパーマーケットでは、展示されている商品に最も適した照明を行うことが望ましく、商品の種類に応じて照明光の色を最適化した照明装置は市販されている。しかし、例えば果物売り場では、春の果物の販売を中止して夏の果物を並べたり、売れ行きに応じて展示される場所を広げる必要がある。その際に、照明装置も取り換える必要があるという課題があった。
【0008】
そこで、本発明は、対象物に応じて照明装置を取り換えることなく、照明光を対象物に適した色度とすることができる、カメラ連動照明制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、カメラ、画像認識機能を備える装置、照明制御装置及び照明光を照射する対象物照明装置を備えたカメラ連動照明制御システムであって、
前記カメラによって対象物を撮影し、
前記画像認識機能を備える装置は、前記カメラによって撮影された画像より、対象領域を切り出して、前記対象領域において、前記対象物又は前記対象物の色を認識する対象物認識を行い、
前記照明制御装置は、前記対象物認識によって得られた前記対象物又は前記対象物の色に応じて、前記照明光の色度を制御する、
カメラ連動照明制御システムである。
【0010】
本発明は、カメラ、画像認識機能を備える装置、照明制御装置及び照明光を照射する対象物照明装置を備えたカメラ連動照明制御システムであって、
前記カメラによって対象物を撮影し、
前記画像認識機能を備える装置は、前記カメラによって撮影された画像より、学習データにより得られた識別能力により対象物画像領域を抽出し、前記対象物画像領域の色度を算出して、
前記照明制御装置は、前記照明光を前記対象物画像領域の色度に近づける照明制御を行う、
カメラ連動照明制御システムである。
【0011】
本発明は、カメラ、画像認識機能を備える装置、照明制御装置及び照明光を照射する対象物照明装置を備えたカメラ連動照明制御システムであって、
前記カメラによって対象物を撮影し、
前記画像認識機能を備える装置は、前記カメラによって撮影された画像より、学習データにより得られた識別能力により対象物画像領域を抽出するとともに対象物の種類を識別し、
前記照明制御装置は、前記照明光を前記対象物の種類に応じて決められた色度とする照明制御を行う、
カメラ連動照明制御システムである。
【0012】
本発明は、カメラ、画像認識機能を備える装置、照明制御装置及び照明光を照射する対象物照明装置を備えたカメラ連動照明制御システムであって、
前記画像認識機能を備える装置は、前記カメラによって撮影された、対象物を含む対象領域の画像について、前記画像中の前記画素の、赤色成分の平均値、緑色成分の平均値、青色成分の平均値の少なくとも一つを算出し、
前記照明制御装置は、前記赤色成分の平均値、前記緑色成分の平均値、前記青色成分の平均値の少なくとも一つを用いて、前記照明光の色度を制御する、
カメラ連動照明制御システムである。
【0013】
本発明は、カメラ、画像認識機能を備える装置、照明制御装置及び照明光を照射する対象物照明装置を備えたカメラ連動照明制御システムであって、
前記画像認識機能を備える装置は、前記カメラによって撮影された、対象物の種類又は前記対象物に対する照明条件を示す対象物識別部材を認識し、
前記照明制御装置は、前記対象物識別部材が示す前記対象物の種類又は前記対象物に対する照明条件に応じて、前記照明光の色度を制御する、
カメラ連動照明制御システムである。
【0014】
本発明において、前記画像認識機能を備える装置が、前記対象領域又は前記対象物画像領域を、2以上の代表色の領域に分割して、前記対象物認識又は前記対象物の種類の識別を行う、カメラ連動照明制御システムであってもよい。
【0015】
本発明において、前記対象物照明装置は、前記対象物の撮影の際に、黒体放射軌跡上の色度の照明光で前記対象物を照射する、カメラ連動照明制御システムであってもよい。
【0016】
本発明において、前記照明制御装置は、前記画像における前記対象物の明るさに応じて、前記照明光の調光を行う、カメラ連動照明制御システムであってもよい。
【0017】
本発明において、前記対象物照明装置が複数あり、
前記画像認識機能を備える装置は、前記カメラによって撮影された前記画像より前記対象領域を複数切り出して前記対象物照明装置と対応付け、各対象領域について前記対象物認識を行い、
前記照明制御装置は、前記各対象領域について個別に前記照明光の制御を行う、カメラ連動照明制御システムであってもよい。
【0018】
本発明において、前記照明制御装置は、前記対象物の色度座標と当該色度座標に近い黒体放射軌跡上の色度座標との色偏差に応じて、前記照明光の色度を前記色度座標の色偏差と同じ方向に変化させる、カメラ連動照明制御システムであってもよい。
【0019】
本発明において、前記対象物認識は、前記対象物の代表色、前記対象物の色の分布、前記対象物のサイズ、前記対象物の形状の少なくとも一つを用いて行う、カメラ連動照明制御システムであってもよい。
【0020】
本発明において、前記カメラ連動照明制御システムはさらに全般照明装置を備え、
前記全般照明装置の照明光の色度を変化させる場合に、前記対象物照明装置の照明光の色度も同じ方向に変化させる、カメラ連動照明制御システムであってもよい。
【0021】
本発明において、前記全般照明装置の照明光の色度の変化は、スケジュール運転による変化である、カメラ連動照明制御システムであってもよい。
【0022】
本発明において、前記画像認識機能を備える装置により、前記対象物が存在しないと認識された場合、
前記照明制御装置は、前記照明光の全光束を、前記対象物が存在する場合の全光束より小さくする、又は前記照明光を消灯する、カメラ連動照明制御システムであってもよい。
【0023】
本発明において、前記照明制御装置は、前記緑色成分の平均値が大きい場合に、前記照明光の色温度を増大させる、カメラ連動照明制御システムであってもよい。
【0024】
本発明において、前記照明制御装置は、前記赤色成分の平均値が大きい場合に、前記照明光の色温度を低下させる、カメラ連動照明制御システムであってもよい。
【0025】
本発明において、前記照明制御装置が、前記画素の赤色成分の標準偏差、前記画素の緑色成分の標準偏差の少なくとも一つを用いて、前記照明光の色度を制御する、カメラ連動照明制御システムであってもよい。
【0026】
本発明において、前記対象物照明装置が、3色以上の発光素子として、少なくとも第1の発光素子と、第2の発光素子と、第3の発光素子を備え、
前記3色の発光素子がそれぞれ発する光の混色により、前記照明光の色温度及び色偏差の制御が可能である、カメラ連動照明制御システムであってもよい。
【0027】
本発明において、前記対象物照明装置において、
前記第1の発光素子、前記第2の発光素子、前記第3の発光素子が発する光は、いずれも相関色温度が2000K以上6000K以下であり、
前記第1の発光素子、前記第2の発光素子、前記第3の発光素子が発する光のうち、最も色偏差Duvが大きいものと最も色偏差Duvが小さいものの色偏差Duvの差は、10以上50以下である、カメラ連動照明制御システムであってもよい。
【0028】
本発明において、前記第1の発光素子、前記第2の発光素子、前記第3の発光素子が発する光の色偏差Duvが、-50以上+20以下である、カメラ連動照明制御システムであってもよい。
【0029】
本発明において、前記第1の発光素子、前記第2の発光素子、前記第3の発光素子が発する光のそれぞれのスペクトルは、波長490以上波長570nm以下の領域の最大値に対して、波長570以上波長600nm以下の領域の最大値の比率が、0.25以上である、カメラ連動照明制御システムであってもよい。
【0030】
本発明において、前記対象物照明装置は、さらに、相関色温度が2000K以上6000K以下であり、色偏差Duvが、-50以上+20以下である光を発する第4の発光素子を備え、
前記第1の発光素子と、前記第2の発光素子と、前記第3の発光素子と、前記第4の発光素子が発する光の光量比が制御可能である、カメラ連動照明制御システムであってもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明においては、対象物照明装置の照明光を対象物の色合いに適した色度に制御することができ、それにより対象物が望ましい色合いで見えるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】実施形態1のカメラ連動照明制御システムの構成図
【
図2】実施形態1のカメラ連動照明制御システムによる画像認識と照明のフローチャート
【
図3】実施形態1のカメラ連動照明制御システムにおける領域設定のために撮影された画像
【
図4】実施形態1のカメラ連動照明制御システムにおける、対象物と背景が写された画像
【
図5】実施形態1のカメラ連動照明制御システムにおける色度制御を説明するための色度図
【
図6】赤・黄白色・青白色の3色の色度を説明する色度図
【
図7】実施形態2のカメラ連動照明制御システムの構成図
【
図8】全般照明装置のスケジュール運転の例を示すグラフ
【
図9】全般照明装置及び対象物照明装置の色度制御を説明するための色度図
【
図10】実施形態1における、対象物又は対象領域を照射する照明条件を指示する2次元バーコードを用いる方法の説明図
【
図11】実施形態1における、対象物又は対象領域を照射する照明条件を指示するLED信号送信機を用いる方法の説明図
【
図12】実施形態3における、料理とおいしく感じる照明光の色温度の関係を示す説明図
【
図13】実施形態4のカメラ連動照明システムの構成図
【
図15】実施形態4の対象物照明装置に用いる光源の平面図
【
図16】実施形態4の対象物照明装置に用いる3色のLEDの色度図
【
図17】実施形態4の対象物照明装置に用いるLED(D、F)のスペクトル図
【
図18】実施形態4の対象物照明装置に用いるLED(D、E)のスペクトル図
【
図19】実施形態4の対象物照明装置に用いる3色のLEDの色度図(全色度領域)
【
図21】実施形態5のカメラ連動照明システムに用いる対象物照明装置の構成図
【
図22】実施形態5の対象物照明装置の灯体の分解斜視図
【
図23】実施形態5の対象物照明装置に用いる4色のLEDの色度図
【
図24】実施形態5の対象物照明装置において得られた合成スペクトル
【
図25】実施形態6のカメラ連動照明制御システムの構成図
【
図26】実施形態6のカメラ連動照明制御システムによる画像認識と照明のフローチャート
【
図27】実施形態6のカメラ連動照明制御システムにおける画像セグメンテーションの説明図
【
図28】実施形態7のカメラ連動照明制御システムの構成図
【
図29】実施形態7のカメラ連動照明制御システムにおける画像セグメンテーションの説明図
【
図30】実施形態7のカメラ連動照明制御システムによる画像認識と照明のフローチャート
【
図31】実施形態7のカメラ連動照明制御システムにおける、肉のトレイがある冷蔵ケースの写真とその画像セグメンテーションの説明図
【発明を実施するための形態】
【0033】
<実施形態1>
<用途>
実施形態1のカメラ連動照明制御システム100の構成を
図1に示す。これは、カメラで対象物を撮影し、対象物の色に適した色合いの光を照明するカメラ連動照明制御システムである。
【0034】
<構成>
カメラ連動照明制御システム100は、天井190に設置されたカメラ110、カメラ・照明制御装置130、対象物照明装置160A・160B、ゲートウェイ155、人の手元にあるカメラ制御装置用モニタ132、第2照明制御装置150などを備える。
【0035】
<対象物照明装置>
単数又は複数の対象物照明装置160(台数は何台であってもよいが、例えば2台の場合、対象物照明装置160A・160Bとする)は、例えばスポットライトであり、それぞれ照明光162A・162B(A・Bを区別しない場合は照明光162とする)により、対象領域183A・183B(A・Bを区別しない場合は対象領域183とする)における対象物180A・180B(A・Bを区別しない場合は対象物180とする)を照射する。対象物照明装置160は照明光の色度を変化させることができ、特に色温度以外の要素である色偏差Duv(後述)の変化が可能なものが好ましい。そのような照明光の色度の変化は、第2照明制御装置150又はカメラ・照明制御装置130を用いて行われる。
【0036】
<対象物>
対象物180A・180Bは、それぞれ背景182A・182B(A・Bを区別しない場合は背景182とする)の上に載置されている。
【0037】
<照明制御装置>
第2照明制御装置150はタブレット型端末装置であって、入力部と表示部を兼ねたタッチパネルディスプレイを備えるとともに、内部に制御部、記憶部、無線通信部を備える。第2照明制御装置150において、照明制御ソフトウエアを動作させることにより、対象物照明装置160などの明るさ(全光束)や色合いを制御することができる。照明制御ソフトウエアによって、時間により制御内容を変えるスケジュール制御を行うこともできる。なお、第2照明制御装置150はコンピュータやスマートフォン等であってもよい。
【0038】
<ゲートウェイ>
第2照明制御装置150が対象物照明装置160に、直接(ゲートウェイ155を介さず)照明制御信号を送ることも可能だが、特に第2照明制御装置150がタブレットなど可搬式のものである場合、固定した位置に設置されたゲートウェイ155に例えばスケジュール制御の情報を無線通信152によって送信し、ゲートウェイ155がその内容を記憶しておき、所定の時間になったら照明制御信号を無線通信154によって対象物照明装置160に送信してもよい。可搬式の第2照明制御装置150から正常に無線通信できない場合があるからである。
【0039】
<カメラとカメラ・照明制御装置>
カメラ110は例えば魚眼レンズ付きカメラであって、視野112内における画像113を撮影し、カメラ・照明制御装置130に送信する。
【0040】
カメラ・照明制御装置130は、カメラ制御の機能と照明制御の機能を有する装置であり、画像認識機能も備えている。その機能は、ハードウエアであるコンピュータと、ソフトウエアにより実現される。その出力装置として、例えばカメラ制御装置用モニタ132を備え、画像113や制御内容を表示する。カメラ・照明制御装置130は、通信線157を介してゲートウェイ155に接続されている。
【0041】
カメラ・照明制御装置130は、カメラ制御装置用モニタ132を備えず、別のPCやタブレットと通信することにより操作してもよい。
【0042】
<照明制御の構成>
対象物照明装置160は、タブレットなどからなる第2照明制御装置150、あるいはカメラ・照明制御装置130によって予め設定された動作を行う。その動作は、例えば中継器であるゲートウェイ155に記憶されている。ゲートウェイ155は、カメラ・照明制御装置130又は第2照明制御装置150から指示が来た場合に、その指示に対して予め設定されている動作を対象物照明装置160に伝え、対象物照明装置160は、第2照明制御装置150とカメラ・照明制御装置130の指示に応じて動作する。なお、これらの機器の通信は、カメラ110とカメラ・照明制御装置130の間の通信線117、カメラ・照明制御装置130とゲートウェイ155の間の通信線157、第2照明制御装置150とゲートウェイ155間の無線通信152、ゲートウェイ155と対象物照明装置160間の無線通信154で行われるが、有線通信を無線通信にしてもよく、無線通信を有線通信にしてもよい。また、通信として、赤外線や可視光による通信を行うこともできる。
【0043】
<画像認識・照明のフローチャート>
カメラ連動照明制御システム100による画像認識と照明のフローチャートを
図2に示す。S1~S5は初期設定であり、部屋の模様替えによる対象領域の変更などがあった場合に行なう。S6以降は各対象領域ごとに行う(カメラ110は全体の画像を取得するが)。S11からS6、あるいはS9からS6のループは、対象物を変更したときに手動で行うか、店舗の場合開店前に1日1回行う、一定時間間隔で行うなど、適宜行うとよい。
【0044】
「S1.初期照明」で、対象物照明装置160A・160Bを点灯する。
【0045】
「S2.初期画像の取得」で、カメラ110により画像113が撮像され、画像データがカメラ・照明制御装置130に入力する。
【0046】
「S3.領域設定」で、
図3に示す、領域設定のために撮影された画像113を、カメラ制御装置用モニタ132に映し出す。画像113には魚眼レンズ画像特有の歪みがあるが、オペレータは対象物180A・180Bを含むなるべく小さい領域として、例えば矩形・円形といった形状の対象領域183A・183Bを手入力で指定し、カメラ・照明制御装置130に記憶させる。ここで設定された対象領域の座標は、後ほど撮影される画像における対象領域の切り出しに対しても適用される。
【0047】
対象領域を手動で設定する方法の他、自動で設定することもできる。
図4に対象物180と背景182が写された画像を示す。画像認識機能が、背景182がある部分を認識して、対象領域183とすることができる。その際、背景のパターンとしては、画像認識機能が認識しやすい「特徴的な背景」を使うと、比較的低価格の画像認識機能を有する装置でも背景を認識できるという利点がある。「特徴的な背景」として、ここでは白色(W)、薄い灰色(WD)、灰色(D)を格子状にしたパターンを使っている。この場合、画像認識機能はCNで示すコーナー部などを認識し、規則的なパターンより「背景」であることを認識できる。
【0048】
「S4.領域と照明装置の対応づけ」で、カメラ制御装置用モニタ132により、対象領域183Aと対象物照明装置160A、対象領域183Bと対象物照明装置160B(他に対象物照明装置と対象領域があれば同様)の対応付けを行う。
【0049】
これにより、カメラ・照明制御装置130がゲートウェイ155を介して対象物照明装置160A・160Bを制御する事が可能になる。
【0050】
「S5.背景画像の取得」では、対象物を除いた状態で全体の画像を撮影する。これにより、対象物のない状態における対象領域183A・183Bの画像を得ることができる。
【0051】
「S6.対象領域の照明光の色偏差をゼロにする」は、「S10.対象物の認識」において、対象物の色度を正確に認識するための望ましいステップだが、必須ではない。「色偏差をゼロにする」とは、後述する「黒体放射軌跡BBL」近傍の照明光とすることである。
【0052】
「S7.対象画像の取得」で、カメラ110が、対象物が載置された状態における画像113を取得する。
【0053】
「S8.対象画像の領域切り出し」で、カメラ・照明制御装置130が、S3で領域設定がなされた対象領域183A・183Bの画像を切り出す。
【0054】
「S9.対象領域の背景画像と対象画像の比較」で、カメラ・照明制御装置130がS5において取得した背景画像と対象画像を、対象領域について比較する。ここで、「対象画像」は
図4に示すようなものである。
【0055】
対象画像において、対象物180が載置されていれば、背景画像と「違う」となり、次のステップ(対象物の認識)に進む。
【0056】
一方、対象画像において、対象物180が載置されていなければ、「同じ」となるため、S6に戻り、対象領域の照明光の色偏差をゼロにする。対象物がない状態なので、色を強調する必要がなく、自然な色で照明することが望ましいからである。
【0057】
<対象物の認識>
「S10.対象物の認識」において、画像認識機能が、対象領域183における対象物180の認識を行う。
【0058】
ここで、「画像認識機能」は、カメラ・照明制御装置130においてソフトウエア的に実行される機能として実現しており、カメラ・照明制御装置130の少なくとも一部が「画像認識機能」となる。一方、「画像認識機能」をカメラ110に内蔵して実現してもよい。また、「画像認識機能」を、カメラ連動照明制御システム100と接続した外部サーバや外部PCにおいて実現してもよい。
【0059】
対象物の認識の方法はいろいろある。一つは、画像認識機能が、形状を認識せずに、画素毎の色のヒストグラムを認識し、背景画像における色の成分以外の色を抽出し、対象物180の色を識別する方法である。ここで、対象物が何かという物の認識まで行わず、どのような色の対象物なのかを検出するだけでもよく、それによっても、後述する「対象物が赤色なら、照明光の色度の色偏差Duvをマイナス側にする」「対象物が緑色・黄色なら、照明光の色度の色偏差Duvをプラス側にする」といった照明制御を行うことができる。
【0060】
対象物の色合いが近い場合には、対象物の大きさ・形状を識別し、それに基づいて対象物及びその色を認識することができる。つまり、サイズが小さい「さくらんぼ」(例として1cm径)とサイズが大きい「りんご」(例として約7cm径)を、サイズに基づいて認識してもよい。また、「さくらんぼ」と「イチゴ」(例として3cm径)を、サイズに基づいて認識してもよい。
【0061】
また、対象物の色合いが近い場合に、「丸いレモン」、「細長いバナナ」といった形状により、対象物を認識することができる。
【0062】
つまり、対象物の色の分布、サイズ、形状の少なくとも一つを用いて対象物を認識することが望ましい。
【0063】
さらに、ディープラーニングと呼ばれる手法を用いて対象物を認識してもよい。AI(Artificial Intelligence)に多くの画像と対象物の関係を予め学習させることにより、画像認識機能としてのAIが対象物を認識することができる。
【0064】
一方、対象物180の認識方法として、対象物180そのものではなく、対象物180を表示する「りんご」という文字の掲示物や、バーコード・2次元バーコードといった掲示物を認識してもよい。
【0065】
図10は、対象物又は対象領域を照射する照明条件を2次元バーコードを用いて識別する方法の説明図である。
図10に示すように、対象領域183の中の広い面積を覆う2次元バーコードであるQRコード(登録商標)184を用意し、このQRコード184をカメラ110で撮影する。QRコード184の面積を大きくしているのは、カメラ110が広角であり、対象領域が小さく映るためであるが、QRコード184はカメラ110で識別可能な大きさであればよい。
【0066】
QRコード184が対象物名(例えば「霜降り牛肉」)を指している場合、カメラ・照明制御装置130は対象物照明装置160の色度を対象物名に対応する色度に制御する。その際、予め対象物名と照明条件(色度、色温度、色偏差、全光束)の対応を示す表が、カメラ・照明制御装置130あるいはカメラ・照明制御装置130がアクセス可能な記憶装置に記憶されている。QRコード184が照明条件そのものを指している場合は、カメラ・照明制御装置130はカメラ110が読み取ったQRコード184が示す照明条件で対象物照明装置160の色度などの照明条件を制御する。
【0067】
なお、QRコード184でなく、対象領域183に対象物や照明条件(色度、色温度、色偏差、全光束)に対応した単数あるいは複数の丸、四角、三角、バツ印などの模様やマークを設けてもよく、具体的には模様やマーク付のテーブルクロスなどの敷物を置いてもよい。
【0068】
また、対象物又は対象領域を照射する照明条件を指示するLED信号送信機185を対象領域に設置してもよい。
図11は、LED信号送信機を用いる方法の説明図である。LED信号送信機185は、例えば対象物名あるいは照明条件に対応する可視光又は赤外線の点滅を行い、その点滅をカメラ110を通じてカメラ・照明制御装置130が解析し、対象物照明装置160の照明条件を制御する。
【0069】
LED信号送信機185は、例えば複数のLEDを備え、1つのLEDが点灯又は点滅した場合には「野菜用」。2つのLEDが点灯又は点滅した場合には「食肉用」といったように、対象領域内で点灯するLEDの個数を照明条件の制御をしてもよい。
【0070】
上述の、対象物を示す掲示物、バーコード・2次元バーコード、模様やマーク、LED信号送信機などを総称して、対象物識別部材と呼ぶこととする。
【0071】
カメラ連動照明制御システム100は、例えば店の営業時間中において常時動作しており、カメラ110が対象物識別部材を自動的に撮影し、カメラ連動照明制御システム100が自動的に照明条件を制御してもよい。例えば店長が新しい店員に、対象領域の商品が売り切れた場合に、対象物識別部材を取り換えて別の商品を陳列することを教育すればよく、新しい店員が照明条件を変化させる指示を手動で行うことなく、カメラ連動照明制御システム100が自動的に別の商品に適した照明条件で照明する。
【0072】
<対象物の色に応じた照明制御>
「S11.認識結果に応じた照明光で対象領域を照明」において、対象物の色に応じた照明制御を行う。対象領域が複数ある場合、各対象領域に対応付けられた対象物照明装置ごとに個別に照明制御を行い、対象領域を照明する。
【0073】
図5は、カメラ連動照明制御システム100における色度制御を説明するための色度図であり、CIE1931色度座標における色度(x、y)を示している。x軸は色度座標のx、y軸は色度座標のy、BBLは黒体放射軌跡、T
CCTは相関色温度、Duvは色偏差(duvの1000倍)を示す。
【0074】
「S6.対象領域の照明光の色偏差をゼロにする」で述べたように、対象物180の認識の際、対象物180の色を正確にとらえるために、対象物照明装置160の発光色は、黒体放射軌跡BBLの近傍の色であることが好ましく、一例として点Zに示す色温度4000K・色偏差Duv=0の光である。つまり、対象物180の認識の前に、別の対象物に合わせた色の光を照射していた場合には、「リセット」して黒体放射軌跡BBLに沿った色としたうえで対象物の色を認識することが好ましい(必須ではない)。
【0075】
「S5.背景画像の取得」で述べたように、対象物180の認識前に、対象物180を載置しない状態で背景182だけをZ点の光で照明し、その画像と対象物180の画像を比較することにより。対象物180の色認識を向上させることができる。その場合、背景182は灰色などの無彩色とすることが好ましい。
【0076】
「S11.認識結果に応じた照明光で対象領域を照明」の話に戻って、認識した対象物が「パン」や「菓子」の場合、照明光の色度座標をN1あるいはN2点とする。対象物が「牛肉」の場合、照明光の色度をM2点とする。対象物が豚肉の場合、照明光の色度をM1点とする。対象物が青魚(イワシ、サバなど)の場合、照明光の色度をF点とする。対象物が葉物野菜の場合、照明光の色度をG点とする。対象物が黄色いレモンの場合、照明光の色度をL点とする。
【0077】
これらの照明光の色度は例であって、食物の種類や状態に応じて他の照明光の色度としてもよい。例えば赤色の食物であっても、リンゴの場合、イチゴの場合、牛肉の場合、イクラの場合、ワインの場合などに応じて、照明光の色度を細かく変えることが好ましい。対象物が緑色であっても、メロンの場合と、葉物野菜の場合で、照明光の色度を細かく変えることが望ましい。対象物が黄色であっても、レモンの場合と、バナナの場合と、卵料理の場合で、照明光の色度を細かく変えることが好ましい。また、照明光の色度は人の好みの影響を受けるので、スーパーマーケット売り場担当者などのユーザーが調整できることが好ましい。その際、売れ行きに応じて調整すればよいが、主な顧客の年齢・性別・目の色(人種)・所得層なども考慮して調整してもよい。
【0078】
食物だけでなく、衣服、車のボディー、文具など、色合いが重視される商品の照明においても、本カメラ連動照明制御システムを用いて、商品の魅力を引き立たせる照明光の色度で照明することにより、商品の売り上げ増につなげることができる。
【0079】
「S9.対象領域の背景画像と対象画像の比較」において、カメラ110により対象物180が存在しないと判断された場合には、対象物照明装置160の照明光の全光束を、対象物180が存在する場合の全光束より小さくする(例えば10分の1にする)、あるいは消灯することが好ましい。その目的は消費電力の削減だけでなく、対象物が商品の場合、商品の売り切れを目に見える形で示すためである。
【0080】
対象物180が存在するか否かは、例えば以下のように判断される。
まず、対象物が存在しない背景画像をあらかじめ撮影し、対象領域を切り出す。
そして、対象領域において、特徴量/ベクトルの算出を行い、算出結果をAとして保存する。
そして、例えば営業時間中の対象領域に対して、一定時間間隔で画像の撮影を行い、対象領域を切り出す。
そして、対象領域において、特徴量/ベクトルの算出を行い、算出結果をBとして保存する。
BとAを比較し、予め設定された閾値より違いが大きいか否かを判断する。
BとAとの差が、閾値より大きくなければ、BとAは類似している、つまり対象物がないと判断する。
【0081】
特徴量/ベクトルの算出方法として、AKAZE(Accelerated KAZE)特徴量検出を用いることができる。これは、入力した画像をモノクロ化(HSV値(「色相(Hue)」「彩度(Saturation)」「明度(Value)」)のVだけの画像)にして、マッチングする方法である。Vだけの画像を使用することは、処理量が削減できる、照明の色による背景画像の色の変化を吸収するといった効果がある。
【0082】
AKAZE特徴量検出では、模様のない、もしくは荒い画像だと正確に類似度が計算できないため、以下の画像相関法を用いてもよい。
【0083】
先ほどのA、Bの画素情報の平均値Aave、Baveを計算する。これは背景画像と対象画像の輝度補正用である。
次に、B*Ave/Bave-Aの平均値=Eを類似度とする。意味的には、輝度補正後に各画素の差分を合計したものとなる。
対象物有無の判断は、E<閾値(画像が似ている)なら対象物なしと判断、E≧閾値(画像が違う)なら対象物ありと判断する。
【0084】
これらのアルゴリズムは、対象物の有無の判断の例として述べたが、対象物が何かを判断することにも用いることができる。
【0085】
「S10.対象物の認識」において、対象物の画像データより代表色を抽出し、代表色から対象物が何かを認識する、K-means法を使うことができる。これは、色空間であるRGB、HSVなどにプロットされた、画像の各画素をN個(Nは2以上)の色領域に分類し、分類された色空間に存在する画素数が最も多い領域の平均値を代表色とする方法である。
【0086】
その場合、対象物以外の背景・トレイ・皿・ラベルなどの色が代表色となる場合があるが、そのような代表色を対象物の色の候補から外す処理を行うことが望ましい。
【0087】
これにより、例えば対象物が牛肉の場合、その代表色が、予め取得されているリンゴの代表色よりも牛肉の代表色に近いと判断して、対象物を識別することができる。
【0088】
以上のように、対象物の色に合わせた照明光の色度とすることが望ましいが、特に、「対象物が赤色なら、照明光の色度の色偏差Duvをマイナス側にする」「対象物が緑色・黄色なら、照明光の色度の色偏差Duvをプラス側にする」制御とすることが好ましい。言い換えると「対象物の色度座標とその色度座標に近い黒体放射軌跡上の色度座標との差である色偏差に応じて、照明光の色度を対象物色の色偏差と同じ方向に変化させる」ことが好ましい。このような照明光の色度は対象物の色合いを強調し、食物の場合はおいしさ、他の対象物の場合は色鮮やかさを引き立たせ、商品の売り上げ増につなげることができる。
【0089】
なお、照明光の色度は、対象物の色そのものではなく、黒体放射軌跡上の色度を対象物の色にわずかに近づけた照明光の色度とするのがよい。例えば上記「葉物野菜」そのものの色度座標の一例は(0.35,0.50)と緑色であるが、上記Gの照明光の色度は(0.37,0.40)と黒体放射軌跡に近い。その方が、対象物を見た人は、通常の白色で照明された状態で対象物の色が鮮やかであると感じる。対象物の色で照明すると、例えば対象物を載せた白色のトレイであっても対象物の色に見えてしまい、非常に不自然な発色になる場合がある。
【0090】
S11において、対象物照明装置160の色度を調色するだけでなく全光束を制御(調光)してもよい。カメラ110は、対象領域183の画像において対象物180が明るい・暗いことを検出することができ、対象物180が適切な明るさになるように、その対象領域を照明する対象物照明装置160の調光を行うことができる。
【0091】
<照明装置の光源>
対象物照明装置160の光源としては、色偏差Duvを可変にできるものを用いる。通常の照明装置として、1色の光源を用いる固定色照明装置、2色の光源を用い色温度可変の調色照明装置があるが、いずれも、色偏差Duvを可変とする機能はない。対象物照明装置160としては、3色以上の光源を有するもの、例えばR・G・B(赤・緑・青)の3原色を用いるものが適している。また、以下に説明するR・Yw・Bw(赤・黄白色・青白色)の3色を用いた照明装置も適している。
【0092】
図6に、R・Yw・Bw(赤・黄白色・青白色)の3色の色度を説明する色度図を示す。原色の赤色(R)の発光素子であるR-LED、非原色の青白色(Bw)の発光素子であるBw-LED、非原色の黄白色(Yw)の発光素子であるYw-LEDを用いており、赤色(R)としては、
図6に示すCIE1931色度座標において、(0.66,0.23)、(0.423,0.355)、(0.5,0.5)と色度境界線Eで囲まれる範囲の色度の色、青白色(Bw)としては、CIE1931色度座標において、(0.336,0.24)、(0.352,0.44)、(0.15,0.2)、(0.2,0.1)で囲まれる範囲の色度の色、黄白色(Yw)としては、CIE1931色度座標において、(0.5,0.5)、(0.423,0.355)、(0.342,0.312)、(0.352,0.44)、(0.37,0.63)及び色度境界線Eで囲まれる範囲の色度の色であることが好ましい。これにより、例えば1800K~12000Kといった黒体放射軌跡に沿った色や、青空や夕日の色といった実用範囲の色を幅広く再現することができるとともに、Duvを変化させることができる。なお、上記R・Yw・Bwの3色を用いることにより、色度境界線に近いB(青色)の光よりBw(青白色)の光の方が視感度が高いため、R・G・Bの三原色の発光素子を用いる場合に比べて、電力光束変換効率(lm/W)を比較的良好にできるという利点を有する。
【0093】
<実施形態2>
<用途>
実施形態2のカメラ連動照明制御システム100Bを
図7に示す。これは、カメラで対象物を撮影し、対象物の色に適した色合いの光を照明するシステムであり、カメラ連動照明制御システム100に対して全般照明装置170A・170B(まとめて全般照明装置170とする)が加わっている。
【0094】
<構成>
カメラ連動照明制御システム100Bのうち、新たな構成要素である全般照明装置170は、室内全体を照明するものであり、例えば通路の上における天井190に設置されている。
【0095】
第2照明制御装置150により、全般照明装置170は、時刻に応じて色温度・調光率が変化するスケジュール運転が行われる。スケジュール運転の例を示すグラフを
図8に示すが、説明を簡単にするため色温度の変化をA、B、Cの3つだけにしている。色温度・調光率が変化する時刻は、日の出・日没時刻などで変化させることが望ましいが、
図8においてはそのような変化を考慮しない、特定の季節の一例を示すに留める。朝である時間帯Aでは色温度を5000K(後述する
図9の点Z(C))と高くするとともに調光率を100%と明るく照明し、昼である時間帯Bでは色温度を4000K(点Z)と少し下げるとともに調光率を90%に落とし、夕方である時間帯Cでは色温度を3000K(点Z(W))と少し下げるとともに調光率を80%に落とした例とする。
【0096】
本実施形態において、全般照明装置170の色温度を変化させる際に、対象物用の対象物照明装置160の色温度も連動させている。
図9は全般照明装置及び対象物照明装置の色度制御を説明するための色度図である。
【0097】
全体照明である全般照明装置170の照明光の色度がZ(C)、Z、Z(W)の時に、対象物の対象物照明装置160の照明光の色度はそれぞれN2(C)、N2、N2(W)とする。これにより、全体照明の照明光の色度と対象物の照明の照明光の色度の差が小さくなる。なお、全体照明の色温度変化と同じ量の相関色温度(TCCT)の変化をする必要はなく、ほぼ同じ方向の変化をすればよい。
【0098】
<実施形態3>
<概要>
本実施形態は、予め、対象物である料理の種類に対して、人がおいしく感じる相関色温度がどうなるかを実験しておき、その結果をカメラ・照明制御装置130に記憶させておく。そして、実際の対象物180である料理をカメラ110で撮影して画素分析を行い、対象物照明装置160を人がおいしく感じる相関色温度に制御するカメラ連動照明制御システム100である。従って制御内容は実施形態1とは異なるが、ハードウエアとしては
図1と同じものを用いるため、各要素の符号としては実施形態1と同じものを用いる。
【0099】
<用途>
本システムを用いて、スーパーマーケットの料理・総菜売り場で料理・惣菜に応じた照明を行うことができる他、レストランでも料理に応じた照明を行うことができる。それにより、客の購買意欲を刺激したり、客の満足度を高めたりすることができる。
【0100】
<おいしく感じる相関色温度の実験>
人が好ましく感じる相関色温度の実験として、10種類の料理(ニンジン・トマト・コーン・葉物野菜を含むサラダなど、素材を加工していない料理を含む)を、4人の被験者に見せ、料理に当てる照明の相関色温度を変化させて、被験者の脳波を測定して、それぞれの被験者の脳波より、見た目でおいしく感じるかどうかを判定した。脳波の測定方法は専門家の指示に従い、判定も専門家に依頼した。また、各料理について自動露出で写真を撮影し、画素のR、G、B値の平均及び標準偏差を解析した。ただし、画素のR、G、B値はそれぞれ0から255の間の値を取る。そのうえで、おいしく感じる相関色温度を画素のRGB値の関数として表すこととした。
【0101】
図12に、本実験の結果として得られた料理とおいしく感じる照明の相関色温度の関係を示す図を示す。横軸は照明光の相関色温度であり、写真で示す料理とそれに対応するおいしく感じる相関色温度を示している。
この実験で得られた、料理の画像データとおいしく感じる照明の相関色温度の関係は、
【0102】
【数1】
で表せることがわかった。ただし、CCTは照明光の相関色温度(単位K)、Rave、Gave、Baveはそれぞれ撮影領域の画素のR値、G値、B値の平均、Rsd、Gsd、Bsdはそれぞれ撮影領域の画素のR値、G値、B値の標準偏差である。
【0103】
この方式は、料理の種類を識別して、料理の種類に応じた相関色温度にする方式ではなく、対象物である料理の画素分析に基づいて相関色温度を調整する方式である。そのため、名称のない料理など、どのような料理であってもおいしく感じる照明の相関色温度を設定することができる。なお、料理の種類を識別して、もともと料理に応じて予め決まっている相関色温度の照明とする方式を併用してもよく、レストランなど料理の種類が決まっている場合にはその方が安定した照明制御が可能である。
【0104】
この数式における各パラメータ自体は実験値なので、料理や被験者が変わることにより変わるが、傾向として以下のことが言えることがわかった。
【0105】
撮影領域の画素R値が多い料理の場合(Raveが大きい場合)、例えば赤色や茶色の面積の多い料理の場合、Raveの係数がマイナスなので、低色温度が好まれる傾向がある。
【0106】
撮影領域の画素G値が多い料理の場合(Gaveが大きい場合)、例えば緑色の葉物野菜などの場合、Gaveの係数がプラスなので、高色温度が好まれる傾向がある。これは本実験で明らかになった新しい知見といえる。事前の予想では、画素の「緑」の多さの色温度に与える影響は比較的中立的、つまり緑の係数は小さいと考えられていたからである。
【0107】
撮影領域の画素B値が多い料理の場合(Baveが大きい場合)、Baveの係数がマイナスなので、青色成分の多い料理に高色温度が好まれる傾向が得られなかった。これも意外な結果だが、多くの料理は見た目が青色ではなく、B値以外のR値、G値も高い料理(例えば白色であるライス)などでBaveが高い場合があることにも関係しているかもしれない。
【0108】
撮影領域の画素のR値、G値、B値の標準偏差(ばらつき)を示すRsd、Gsd、Bsdの係数について、Rsdの係数はプラス、Gsdの係数はマイナス、Bsdの係数はややプラスとなった。従って、撮影領域の各画素のR値のばらつきが大きい(Rsdが大きい)ものでは相関色温度がプラスの方向、撮影領域の各画素のG値のばらつきが大きい(Gsdが大きい)ものでは相関色温度がマイナスの方向が好まれることがわかった。ただし、色とりどりの料理では、Rsd、Gsd、Bsdとも大きくなる傾向があるため、結果としてCCTへの影響がある程度打ち消される場合がある。
【0109】
<おいしく感じる相関色温度にする照明制御>
図1に示したカメラ連動照明制御システム100において、上述の式をカメラ・照明制御装置130、あるいはカメラ・照明制御装置130がアクセス可能なコンピュータやサーバに入れ、カメラ110で対象物180である料理を撮影し、対象領域183を抽出する。その際、対象領域183として、料理の存在する領域、例えばお皿の部分だけを抽出することが好ましいが、スーパーマーケットの総菜コーナー全体やレストランのテーブル全体を対象領域183とし、対象物以外の背景の画素を除外してもよい。背景の画素を除外するため、予め背景を撮影して背景の画素の特徴を認識しておく方法や、手動で背景の画素の色度範囲を設定する方法などがある。
【0110】
対象領域183の、好ましくは背景以外の各画素におけるRGBの値の平均値及び標準偏差を導出し、上記の式に当てはめ、対象物照明装置160の相関色温度を制御する。このような制御を、レストランや、総菜コーナーで行うことにより、料理をおいしく見せることができ、顧客満足の増加や売り上げ増に寄与すると考えられる。
【0111】
なお、上述の式はあくまでも一つの例であって、対象領域の画素の色成分を分析し、その分析結果に基づく照明光の相関色温度制御を含む色度制御を行うことが本実施形態のポイントである。その際に、上述の式の各係数がプラス方向かマイナス方向かという点も比較的重要な点となる。
【0112】
以上の説明では、各画素にR(赤)・G(緑)・B(青)のいずれかの原色系フィルターを有するカメラを用いるものとしたが、各画素にC(シアン)・M(マゼンタ)・Y(イエロー)の3色又はC・M・Y・Gの4色のいずれかの補色系フィルターを有するカメラを用いてもよい。
【0113】
<Duvも合わせて変化させる例>
上述の実験ではCCTのみを変化させたが、Duvもあわせて変化させる予備実験も開始している。
【0114】
Duvの変化の方法として、CCTに段階的に連動させる方法がある。例えば
CCT<3500 → Duv=-6
3500≦CCT<4000 → Duv=-3
4000≦CCT<5000 → Duv=0
5000≦CCT<5500 → Duv=3
5500≦CCT → Duv=6
と、CCTが小さい場合にDuvをマイナス側、CCTが大きい場合にDuvをプラス側に段階的に変化させる方法である。
【0115】
Duvの変化の方法として、CCTに連続的に連動させる手法もある。例えば
CCT<3500 → Duv=-6
3500≦CCT<5500 → Duv=(CCT-3500)*12/2000-6
5500≦CCT → Duv=6
と、CCTが小さい場合にDuvをマイナス側、CCTが大きい場合にDuvをプラス側に連続的に変化させる方法である。
【0116】
どちらの方法によっても、料理が変わることによる照明光の変化による見栄えの変化が明確になり、訴求効果がより強くなる。
【0117】
上述の値は一例であり、例えばDuvがプラス側だと対象物がわずかに緑色がかるのが嫌われる場合があるため、低いCCTでDuvがマイナス側、高いCCTでDuvがゼロになるなど、Duvの値を上記の値からずらしてもよい。
【0118】
<実施形態4>
<基本構成>
本実施形態に係るカメラ連動照明制御システム300の構成図を
図13に示す。カメラ連動照明制御システム300は、カメラ310、カメラ・照明制御装置350、対象物照明装置360及び対象物370を含む。対象物照明装置360はスポットライトであって、灯体361、電源部380、灯体361を電源部380に連結するアーム375よりなる。
【0119】
<カメラ>
天井390に設置されたカメラ310は、カメラ・照明制御装置350と制御信号312で接続されている。カメラ310は対象物370を撮影し、その画像に対し、カメラ内、外部サーバ、あるいはカメラ・照明制御装置350内にある画像認識機能によって、画像中の対象領域内の対象物又は対象物の色度(色分布)の認識がなされる。
【0120】
<カメラ・照明制御装置>
カメラ・照明制御装置350は、タブレット、スマートフォンあるいはPCよりなり、照明制御ソフトウエア351が動作している。カメラ310によって撮影され、画像認識機能によって認識された対象物又は対象物の色度に応じて、照明制御ソフトウエア351が、3色のLEDの発光強度を調節する。3色のLEDの発光強度の条件が、無線の制御信号352として送信される。
【0121】
<灯体>
図14は灯体361の枠367で囲まれた内部が見えるようにした説明図である。灯体361は、ヒートシンク364、その上に設置された光源320、レンズ368、枠367を備える。
図13に記載の通り、光源320から発した光がレンズ368により所定の放射角の照明光362として放射され、対象物370を照明する。
【0122】
<電源部>
図13において、電源部380は、天井390に設置された配線ダクトレール395に、前取付部386、後取付部388により取り付けられ、また給電されている(配線ダクトレールの中は通常見えないが、本図では電源部380の取付状態がわかるように配線ダクトレールを半透明にして図示している)。取付はレバー385を回して行う。
【0123】
電源部380はワイヤレスモジュール382を挿入するスロットを備え、ワイヤレスモジュール382は外部のカメラ・照明制御装置350から送られた無線の制御信号352を電源部380に伝える。
【0124】
電源部380は3色のLEDをそれぞれ独立して駆動するための3chの駆動出力を備える。ワイヤレスモジュール382が制御信号を電源部380に伝送することによって、3chの駆動出力がそれぞれ制御される。
【0125】
<光源>
本実施形態に用いる光源320の平面図を
図15に示す。光源320は、配線パターンを有する基板321上の発光領域322に、3色の発光素子を配置したものである。発光素子としては、CSP(Chip Size Package)型LED323-1(E)、CSP型LED323-2(D)、CSP型LED323-3(F)各17個を
図15のように配置し、基板内部の配線で直列に接続している。光源320は取付穴325を備え、取付穴325にネジを通してヒートシンク364に締結する。光源320は配線端子326-1(CSP型LED323-1用)、配線端子326-2(CSP型LED323-2用)、配線端子326ー3(CSP型LED323-3用)、配線端子326-0(共通端子)を備え、3つの出力を有する電源部380に接続され、各LEDの発光が制御される。
【0126】
<LEDの構造>
実施形態に用いる発光素子であるCSP型LED323-1、CSP型LED323-2、CSP型LED323-3は、InGaNなどからなる青色LEDチップと、青色LEDチップの側面及び上面を覆う蛍光体含有樹脂を備え、各LEDの底面または側面に電流を流すための端子を有するものである。蛍光体としては、青色LEDの光を吸収して緑色の光を発光する緑色、黄色の光を発光する黄色蛍光体、赤色の光を発光する赤色蛍光体のうちの1つまたはいくつかを用いる。
【0127】
以上の各LEDにおいて、黄色系蛍光体としては、例えば(Y1-xGdx)3Al5O12:Ce2+(0≦x≦1)を、緑色系蛍光体としては、例えばLu3Al5O12:Ce2+を、赤色系蛍光体としては例えばSrxCa1-xAlSiN3:Eu3+(0≦x≦1)蛍光体、Sr[LiAl3N4]:Eu2+やK2SiF6:Mn4+蛍光体を好適に用いることができる。量子ドットも好適に用いることができる。
【0128】
<LEDの色度>
図16はこれらのLEDの色度を説明するための色度図(CIE1931色度座標図)であり、黒体放射軌跡の色度を結ぶ線をBBLとして示している。また、BBL上の色温度T
CTに最も近い色に見える色度である相関色温度T
CCTを表す線と、BBLからの色偏差Duvを表す線を示す。
本実施形態に用いる発光素子であるCSP型LED323-1、CSP型LED323-2、CSP型LED323-3の色度は、それぞれ
図16における「E」(肉用LED)、「D」(パン用LED)、「F」(鮮魚LED)である。ただし「肉用、パン用、鮮魚用」は例示にすぎず、「E」は赤い果物、「D」は揚げ物など、様々な対象物にも適している。
【0129】
CSP型LED323-1(D)の色度座標は(0.458.0.407)である。
CSP型LED323-2(E)の色度座標は(0.412、0.327)である。
CSP型LED323-3(F)の色度座標は(0.358、0.342)である。
相関色温度TCCT(単位K(ケルビン))は、EとDは約2700K、Fは約4500K、その差は約1800Kである。
【0130】
BBLからの色偏差Duvは、Dは約-1、Eは約-31、その差は約30である。
また、この3色のLEDは、いずれも色偏差Duvが黒体放射軌跡(BBL=Black Body Locus)よりマイナス側にある。
【0131】
なお、各LEDの色度を、CIE1931における色度座標(x,y)でなくCIE1976における色度座標(u‘,v’)で表示することもでき、両者はu’=4x/(-2x+12y+3),v’=9y/(-2x+12y+3)という変換式で相互に変換可能である。その他の色度座標系で表示してもよい。
【0132】
特に、CSP型LED323-2の色度が、黒体放射軌跡(BBL)から離れた、色偏差Duvが-31とその絶対値が大きな色であることが特徴である。CSP型LED323-2と、比較的黒体放射軌跡に近いCSP型LED323-1、CSP型LED323-3を組み合わせることによって、色偏差を適宜調整することができる。
【0133】
発光素子であるCSP型LED323-1(D)、CSP型LED323-2(E)、CSP型LED323-3(F)の光を適宜組み合わせて、
図16の三角形及びその内側の色度の光を得ることができる。例えば図でDE、EF、EFと示している点の色を食材に合わせて好適に用いることができる。
【0134】
従来、複数の色を合成する照明として、色温度を変える調色照明がある。調色照明では黒体放射軌跡に沿って「色温度」を変えることにより、「寒色・高色温度・蛍光灯の色」から「暖色・低色温度・電球の色」の間を調整して、人に違和感のない照明を実現していた。本実施例ではそのような「居住空間用」の照明とは異なり、人には違和感のある「BBLからの色偏差」を変えた照明により、対象物の色を引き立たせる照明としている。
【0135】
発光素子であるCSP型LED323-1(D)、CSP型LED323-2(E)、CSP型LED323-3(F)はスペクトルにも特徴がある。レンズ368など光学系を介した後の、DとFのスペクトルを
図17、DとEのスペクトルを
図18に示す。各グラフは波長490以上570nm以下の領域のG(緑)の最大値で規格化している。各発光素子のスペクトルは、後述するRGB単色光の合成とは異なり、全波長領域にスペクトル成分を有しているが、波長600以上660nm以下の領域のR(赤)の最大値>波長490以上570nm以下の領域のG(緑)の最大値>波長570以上600nm以下の領域のY(黄)の最大値と、Yを抑えた形状(Yの最大値がR及びGの最大値より小さい)にして、赤色を強調している。従って、D、E、Fを合成したスペクトルも、「R>G>Y」の関係になっている。
【0136】
Gの最大値で光強度を規格化してDとFのスペクトルを比較した
図17より、低色温度のDに比べて高色温度のFは、Rの成分を弱め、Bの成分を強めていることがわかる。
【0137】
Gの最大値で光強度を規格化してDとEのスペクトルを比較した
図18より、Duvの絶対値が小さいDに比べて、Duvのマイナス側の絶対値が大きいEは、B及びRの成分を強めていることがわかる。
【0138】
なお、
図17・
図18の縦軸は光の強度であり、視感度を考慮していない点に注意が必要である。CIE1931比視感度曲線における視感度の係数は、波長450nm(B)で0.06472、波長540nm(G)で0.95447、波長580nm(Y)で0.89636、波長630nm(R)で0.29803と、GとYの係数が1に近く、BやRの係数は小さい。従って、GやY成分の色の、全体の見え方に与える影響は大きい。
【0139】
そのような点も考慮すると、各色のスペクトルにおいて、Yの最大値(視感度を考慮しない値)はGの最大値を1として0.25以上であればよく、0.5以上であることがより好ましい。一方、Yの最大値はGの最大値とRの最大値を結ぶ線より下側にあり、Yの成分が抑えられているのがよく、好ましくはYの最大値がGの最大値より下であることがより好ましい。
【0140】
特徴的なスペクトルを有するD・E・Fの3色の発光素子を使う方式と、原理的にすべての色を出せるRGB(赤・緑・青)方式の違いを、
図19を用いて説明する。
図19のRは赤、Gは緑、Bは青である。RGBを使ってすべての色が得られるので、D・E・Fの3色を使ってもRGB方式と差がないのではないかという疑問があると思われるが、
図19に示すように、D・E・Fの3色で囲まれる領域はRGB3色で囲まれる領域に比べて極めて小さい。
【0141】
色むらを説明するための模式説明図を
図20に示す。光源320‘は3色のLED(E、F、G)からなり、レンズ368’を介して、白色の対象物370‘を照射する。その際、3個のLEDからの光が完全には重ならないため、D-rich、E-rich、F-richとして示した部分が生じる。仮に「RGB」の原色の光源を用いていたら、これらの部分がR-rich、G-rich、B-richとなるが、R・G・Bが異なる原色であることにより、色むらが目立つ。本発明では、原色光源を用いず、限られた色度範囲における3色のLEDを用いることにより、光の重なりが十分でない部分の色度の差がそもそも少ないことにより、色むらを本質的に低減している。
【0142】
R・G・Bの成分だけでなくYの成分も適度に含み、もともと対象物照明に適したスペクトルを有するD、E、Fの照明、あるいはこれらの混色の照明とすることにより、例えば赤色・黄色の果物、緑色系の野菜、赤色系の肉・刺身・サーモン、背の青い魚、茶色系のパン・焼き菓子・揚げ物など、様々な食物をカメラで識別し、その食物に適した照明が実現できる。また、本対象物照明装置は食材用を念頭に開発したものだが、衣服、車のボディー、家具、小物、花など様々な対象物の照明に用いても、きれいに見えるという結果が得られている。ただし「店ではきれいな色だったが家では違う色に見える」という場合があるので、BBLからの色偏差の絶対値の大きいEのような光を調整して足すことが好ましい。本対象物照明装置は「混色」により色偏差の量、つまり色の見え方の微調整ができるので好都合である。
【0143】
また、
図15に示す光源320において、発光領域322に配置された3色のLEDの色度差が小さいため、対象物に照射したときの色むらが小さくなり、ほとんどわからなくなるという利点がある。
【0144】
本発明に用いる各発光素子の相関色温度TCCTは、2000K以上、好ましくは2500K以上がよく、6000K以下、好ましくは5000K以下がよい。
【0145】
本発明に用いる各発光素子のBBLからの色偏差Duv(色偏差duvの1000倍)は、-50以上(絶対値が50以下)、好ましくは-40以上(絶対値が40以下)がよく、+20以下、好ましくは+10以下がよく、最も色偏差の差がある2つの発光素子の色偏差の差が50以下であるとよく、40以下であることが好ましい。このような限られた色偏差の発光素子を用いることにより、色むらが低減できる。一方、様々な色の対象物に対応するためには、最も色偏差の差がある2つの発光素子の色偏差が10以上、好ましくは20以上、さらに好ましくは30以上であるとよい。
【0146】
本発明に用いる最も低色温度の発光素子(実施形態4ではD)と最も高色温度の発光素子(実施形態4ではF)の相関色温度TCCTの差は、様々な色の対象物に対応するためには400K以上、好ましくは800K以上、さらに好ましくは1200K以上がよい。一方、色むらを低減する観点からはその差が3000K以下、好ましくは2000K以下がよい。
【0147】
<実施形態5>
<基本構成>
本実施形態に係るカメラ連動照明制御システムに用いる対象物照明装置560を
図21に示す。対象物照明装置560はスポットライトであって、灯体561、電源部580、灯体561を電源部580に連結するアーム575よりなり、配線ダクトレールに接続可能である。無線で発光色を制御するため、電源部580に着脱可能な無線送受信機であるワイヤレスモジュール582を備え、カメラ310と接続されたカメラ・照明制御装置350を用いて発光色を変化させる。
【0148】
<灯体>
図22は灯体561の分解斜視図である。灯体561は、ヒートシンク564、その上に設置されたプリント基板521、マルチレンズ566及びマルチレンズ内に一体成型された12個のレンズ568を備える。プリント基板521の上に12個の表面実装型LED523が実装されており、それぞれの表面実装型LED523とレンズ568とが対応している。
【0149】
<光源>
図23はLEDの色度を説明するための色度図である。表面実装型LED523は、
図23に示すB27(2700K)、A27(T
CCT=2700K,Duv=-10)、B46(4600K)、A46(T
CCT=4600K、Duv=-10)の4色のLEDがそれぞれ3個ずつよりなる。これにより、
図23に示す四角形内の色度の色、例えばAW30(T
CCT=3000K,Duv=-4)、AW35(T
CCT=3500K,Duv=-5)、AW42(T
CCT=4200K,Duv=-5)を発光することができる。
【0150】
図23において各色の合成により得られたスペクトルの一例として、AW35、つまりT
CCT=3500Kの合成スペクトルを
図24に示す。450nm付近の青色成分をB、550nm付近の緑色成分をG、590nm付近の黄色成分をY、630nm付近の赤色成分をRで示す。衣料品分野においては、自然な色の見え方で対象物を見せるために、全スペクトル領域に光があり演色性Raが90以上であることが好ましく、93以上、さらに95以上であることがより好ましい。そのような条件下ではあるが、衣料品分野では黄ばみが少なく見える白っぽい色が好まれることを考慮し、
図23中の点線で示す典型的な高演色LEDと比べて、わずかにYの成分を減らし、Rの成分を増やしている。その結果として色温度はあまり変化せず、色偏差Duvが-5程度になる。点線で示している半値幅は、約180nmであるが、150nm以上であることが好ましく、特にRのピークを100%とした場合にY(590nm)が50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上であるとよい。
【0151】
ここではBとしている第1の発光素子と、Aとしている第2の発光素子は、色偏差Duvの差が5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい、一方、衣料品、車のボディー、家具、小物、花など普段の照明下で見ることのある対象物について、本対象物照明装置で照明した場合と通常の対象物照明装置で照明した場合で、違和感があまり生じない範囲としては、Duvの差が15以下であることが好ましい。食材用であれば店での色の見え方を重視してDuvの差を15以上とし、特に肉や赤い果物を魅力的に見せることが好ましい。
【0152】
衣料品における色度の制御例として、まず、カメラで撮影された衣料品に用いられる色の傾向より、衣料品のカテゴリーあるいは色度の分布を分析する。そして、一般には、夏物衣料品やカジュアル衣料品は高色温度、冬物衣料品や高級衣料品は低色温度に照明制御するのがよいとされる。また、赤色を際立たせる場合にはDuvをマイナス側にするとよい。このようなカメラ連動照明制御は、衣料品店におけるブランドイメージを踏まえた注文に応じて、制御プログラムを微調整することが望ましい。
【0153】
<実施形態6>
<用途>
本実施形態のカメラ連動照明制御システム600の構成を
図25に示す。これは、カメラで対象物である衣服を撮影し、対象物の色に適した色合いの光を照明するカメラ連動照明制御システムである。
【0154】
<構成>
カメラ連動照明制御システム600は、天井690に設置されたカメラ610、カメラ・照明制御装置630、対象物照明装置660、ゲートウェイ655、人の手元にあるカメラ制御装置用モニタ632などを備える。
【0155】
<カメラとカメラ・照明制御装置>
カメラ610は、視野612内における対象物680の画像613を撮影し、通信線617を介してカメラ・照明制御装置630に送信する。
【0156】
カメラ・照明制御装置630は、カメラ制御の機能と照明制御の機能を有する装置であり、画像認識機能も備えている。その機能は、ハードウエアであるコンピュータと、ソフトウエアにより実現される。その出力装置として、例えばカメラ制御装置用モニタ632を備え、画像613や制御内容を表示する。カメラ・照明制御装置630は、通信線657を介してゲートウェイ655に接続されている。
【0157】
<ゲートウェイ>
ゲートウェイ655は、照明制御信号を無線通信654によって対象物照明装置660に送信する。
【0158】
<対象物照明装置>
対象物照明装置660は、例えばスポットライトであり、照明光662により、対象領域683における対象物680(ここでは衣服である対象物680F)を照射する。対象物照明装置660は照明光の色度を変化させることができ、特に色温度以外の要素である色偏差Duvの変化が可能なものとする。そのような照明光の色度の制御は、カメラ・照明制御装置630を用いて行われる。
【0159】
<動作概要>
カメラ連動照明制御システム600の動作フローチャートを
図26に示す。第1ステップで照明装置を点灯し対象物を照明する。第2ステップで、カメラで対象物を撮影し、画像を取得する。第3ステップで、以下に説明する画像セグメンテーションを行い、対象物画像領域を抽出する。第4ステップで、対象物画像領域内の色を、4分割クラスタリングで分割する(色の近い4つのグループに分ける)。第5ステップで、各クラスタの色度と面積を加重平均することにより、対象物画像領域の平均画像を算出する。第6ステップで、対象物画像領域の平均色度(これを「対象物画像領域の色度」あるいは「対象物の色」とする)に応じた照明光で対象物を照明する。
【0160】
<画像セグメンテーションによる対象物画像領域の識別>
対象物である衣服の領域の識別として、AI技術である画像セグメンテーションを行う。
図27は画像セグメンテーションの説明図である。カメラ610による撮影画像の一部を
図27(a)に示す。この撮影画像の中から、画像に写り込んでいる対象物の領域を
図27(b)の対象物画像領域Fとして抽出し、対象物画像領域Fによって特定された部分について対象物が何かを識別する。
画像セグメンテーションの高い予測精度を実現するためには、学習データが必要である。ここでは衣服の形状を認識する学習をあらかじめ行っておき、画像処理装置(カメラ・照明制御装置630が備えるソフトウエア的な機能、又はカメラ・照明制御装置630がアクセスする外部サーバのソフトウエア的な機能、あるいは独立した画像処理専用装置)は、学習データを参照することにより、画像のどの部分が衣服かどうかを識別し、対象物画像領域Fとする。
【0161】
なお、実施形態7で詳述するように、学習データを参照することにより、単に衣服であると識別するだけでなく、白色のシャツ、紺色のジャケット、赤色のカーディガン、赤と青の混じったパンツなど、衣服の種類と色を識別でき、照明システムは識別された衣服の種類と色に応じた照明光を照射してもよい。その際に用いる学習データは、画像認識機能を備えたカメラ・照明制御装置630に蓄えてもよく、外部サーバに蓄えてもよい。
【0162】
<対象物の色の識別>
「衣服」であると判断された対象物画像領域Fは、例えば青いジャケットと白いシャツの全体を含んでいる場合がある。そこで、色合いの近いグループ、例えば
図27(b)におけるF1とF2などに分類する多分割クラスタリングを行って、平均色度を算出する。なお、多分割クラスタリングの分割数は2以上6以下程度が好ましく、検討では4分割としている。現在の技術では、6以下の分割数とすると、情報量が極端に多くならないため処理速度が速く、識別ミスも少ないという傾向にある。
【0163】
簡単のため2分割クラスタリングとして説明する。第1の色の色度座標(x1,y1)とその面積である画素数a1、第2の色の色度座標(x2,y2)とその面積である画素数a2を求める。それらより、平均的な色度が
(xf、yf)=(a1(x1,y1)+a2(x2,y2))/(a1+a2)
として求まる。
【0164】
この「多分割クラスタリング」は、先に「S10.対象物の認識」において、対象物の画像データより、画像の各画素をN個(Nは2以上の整数)の色領域に分類し、分類された色空間に存在する画素数が最も多い領域の平均値を代表色とする代表色を抽出し、代表色から対象物が何かを認識する、K-means法として説明した技術と同様の技術である。ここでは、予めAIを用いて対象物画像領域を絞り込み、それに対して代表色を抽出しているため、より対象物を適切に判断することができる。
【0165】
<対象物に応じた色度の照明>
カメラ・照明制御装置630は、基準となる色度座標を(xw、yw)とし、照明光の色を、白色よりやや上述の衣服の色(xf、yf)に近づけた色、例えば色度(xw+k(xf-xw)、yw+k(yf-yw))、ただし0<k≦1とし、対象物照明装置660を制御する。対象物照明装置660はその色の照明を行う。ただし、ここで求めた照明光の色が現在の照明光の色とあまり変わらない場合は、細かい照明光の色の変化を避けるために、照明制御を行わないこととしてもよい。
【0166】
基準となる色度座標は、例えば白色(0.33,0.33)や、初期照明の照明光の色度座標であってもよい。また、基準となる色度座標は、例えば夏服を青味のある光で照らしてさわやかさを強調したいのであれば、例えば約4000Kの黒体放射である(0.38,0.38)や(0.43,0.40)などとしてもよい。
【0167】
上記の例ではCIE1931による色度座標を用いたが、CIE1931は座標の差と人が感じる色差が異なる座標系なので、他の色度座標系、例えばCIE1960によるuv座標系や、前述のCIE1976によるu’v’色度座標系を用いてもよい。つまり、基準となる色度座標を(u‘w、v’w)とし、照明光の色を、白色よりやや衣服の色に近づけた色、例えば色度(u‘w+k(u’f-u‘w)、v’w+k(v‘f-v’w))、ただし0<k≦1としてもよい。
【0168】
<実施形態7>
<用途>
本実施形態のカメラ連動照明制御システム600は、実施形態6のものと同じであるため説明を省略する。但し、画像処理は、
図28に示すように、「トレイ681Tに入った肉680M」を対象としている。肉680Mの上にラッピングがされている場合を想定すると、値札ラベル681L1や安売り等を示すラベル681L2が貼られていることがあり、これらを画像処理により除外する必要がある。
【0169】
<画像セグメンテーションによる対象物画像領域の識別>
対象物である肉の領域の識別として、AI技術である画像セグメンテーションを行う。
図29は画像セグメンテーションの説明図である。カメラ610による撮影画像の一部を
図29(a)に示す。この撮影画像の中から、画像に写り込んでいる対象物の領域を
図29(b)の対象物画像領域Mとして抽出する。画像処理装置は、対象物画像領域Mによって特定された部分が何の対象物かを識別する。
画像セグメンテーションの高い予測精度を実現するためには、多数の学習データが必要である。ここでは肉を認識する学習をあらかじめ行っておき、画像処理装置は、学習データにより得られた識別能力に基づいて画像のどの部分が肉かどうかを識別し対象物画像領域Mとする。その際、ラベル681L1やラベル681L2は対象物でないと画像処理装置が判断する。
【0170】
<対象物の色の識別>
画像セグメンテーションにより「肉」であると判断された対象物画像領域Mについて、必要に応じて多分割クラスタリングを行い(行わなくてもよい)画像処理装置はその領域の画素の平均的な色を求める。その平均的な色の色度座標を(xm、ym)とする。
【0171】
<対象物に応じた色度の照明>
第1の制御方法は、カメラ・照明制御装置630は、基準となる色度座標を(xw、yw)とし、照明光の色を、白色よりやや肉の色に近づけた色、例えば色度(xw+k(xm-xw)、yw+k(ym-yw))、ただし0<k≦1とし、対象物照明装置660を制御する。対象物照明装置660はその色の照明を行う。
【0172】
第2の制御方法は、画像セグメンテーション及び必要に応じて行う多分割クラスタリングにより、肉の種類、具体的には赤身の牛肉、霜降りの牛肉、切り落としの豚肉、カツ用の豚肉、鶏のもも肉、鶏の手羽先、なども識別する。その際、多分割クラスタリングにより、赤い肉と白い脂身の分布の情報を用いることができる。対象物認識された肉の種類に応じて、対象物照明装置660は予め設定された肉の種類に応じた色度で対象物680を照明する。この場合のフローを
図30に示す。
【0173】
画像セグメンテーションのように、対象物画像領域を特定する方法を用いる照明制御では、例えば肉が売れて残りが少なくなる場合など、対象物が少なくなり画像における背景の割合が多くなっても、その影響を受けず、照明光の色が変わらないという利点を有している。例えば、
図31(a)は肉のトレイがある冷蔵ケースの写真、
図31(b)は、その写真に対して画像セグメンテーションによって肉の領域を抽出したものである(上半分と下半分に分けて画像セグメンテーションを行っている)。本方式によれば、肉のトレイの数によらず、同じ照明制御を行うことができる。なお、トレイの数がゼロになった場合は、照明の調光率を下げる、照明を消灯する、照明の色合いを標準の色(肉用とする前の色)にする、といった制御を行ってもよい。
【0174】
<変形例その他>
以上、本発明に係る照明器具の実施形態を説明したが、例示した照明器具を例えば以下のようにすることも可能であり、本発明が上述の実施形態で示した通りの照明器具に限られないことは勿論である。
【0175】
(1)図に示した対象物照明装置160の絵は、スポットライトをイメージしたものとし、全般照明装置170の絵は、スクエア形埋込照明装置をイメージしたものとしたが、その他の照明装置、例えばダウンライト、照射方向を変えられるユニバーサルダウンライト、線状のベースライト、投光器、フレキシブルテープライトなど、その形態は限定されない。
【0176】
(2)全般照明装置は、室内照明用の他、屋外照明用であってもよく、設置場所は問わない。
【0177】
(3)3CHの色としてR(赤色)G(緑色)B(青色)の3原色を用いる場合、青色としてはy<0.4、x<0.2であって、青白色より色度境界線E側の色、緑色としてはy>0.4であって黄白色・青白色でない色であってもよい。
【0178】
(4)対象物認識前の照明光は、Z点(色温度4000K)の色に限られない、例えば対象物が肉系であれば予め3500Kの黒体放射軌跡上の色としてもよく、対象物が魚系であれば5000Kとしてもよい。なお、黒体放射軌跡上の色だが、例えばDuvの絶対値が1以下であれば「黒体放射軌跡上の色」であるとみなしてよい。
【0179】
(5)無線通信の中継器であるゲートウェイを用いずに、照明制御装置から直接照明装置に照明制御信号を送信してもよい。
【0180】
(6)無線通信の方式は、例えばブルートゥース(登録商標)あるいはWi-Fi(登録商標)でもよい。
【0181】
(7)カメラ・照明制御装置は、カメラの撮像・画像取得といったカメラ制御の機能と、対象領域の切り分け・対象物の認識といった画像認識機能と、対象物の認識に基づく照明制御といった照明制御の機能が複合した装置である。この3つの機能を、1つのコンピュータにおけるソフトウエアにおいて実現する例を記載しているが、この3つの機能を別の装置が受け持ってもよく、例えば上記「照明制御装置」の機能を「第2照明制御装置」内に設けてもよく、「画像認識機能」の機能をカメラに内蔵したり、例えば図示されていないネットワーク上のサーバによって実現してもよい。つまり本明細書における「装置」あるいは「機能」とは、単なるハードウエアに限られず、ハードウエアとソフトウエアが融合したものも指し、その機能を実現する場所は本願に例示した場所に限定されない。
【0182】
(8)発光素子は、LEDに限られず、有機EL(有機LED)や、蛍光体と励起光源が分離したもの、放電を用いるもの、電子ビームで励起するものなど、発光するものであればよい。
【0183】
(9)各色のLEDとして、実施形態4では一つの基板上にCSP型LEDを実装したもの、実施形態5ではSMD(Surface Mount Device)型LEDをプリント基板に実装したものとしたが、基板上に青色LEDチップを並べ、複数の青色LEDチップを蛍光体入り樹脂で覆った、COB型LEDを用いてもよい。実施形態1~3においても、これらのLEDを用いることができる。
【0184】
(10)複数の発光色のLEDを用いた光源として、3色のLEDと4色のLEDを用いた例を挙げたが、色偏差の異なる2色のLED(例えば実施形態4におけるDとE、FとE、実施形態5におけるA46とB27)だけを用いてもよい。
【0185】
(11)実施形態における各LEDの色度は一例であり、他の色度であってもよい。
【0186】
(12)対象物照明装置の発光色制御方法としては、無線制御の例を示したが、有線制御であってもよい。
【0187】
(13)本願においては、「対象物」という用語は「商品」だけでなく、博物館における美術品や骨とう品、展示会における子供の絵画などの「非売品」などを含んだ概念として用いている。
【0188】
なお、今回開示した上記実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0189】
100、100B、300、600 カメラ連動照明制御システム
110、310、610 カメラ
112、612 視野
113、613 画像
117、617 通信線
130、350、630 カメラ・照明制御装置
132、632 カメラ制御装置用モニタ
150 第2照明制御装置
152、154、654 無線通信
155、655 ゲートウェイ
157、657 通信線
160、160A、160B、360、560、660 対象物照明装置
162、162A、162B、362、662 照明光
170、170A、170B 全般照明装置
180、180A、180B、370、680、680F、680M 対象物
182、182A、182B 背景
183、183A、183B、683 対象領域
184 QRコード(登録商標)
185 LED信号送信機
190、390、690 天井
312、352 制御信号
320 光源
321 基板
322 発光領域
323 CSP型LED
325 取付穴
326 配線端子
351 照明制御ソフトウエア
361、561 灯体
364、564 ヒートシンク
367 枠
368、568 レンズ
375、575 アーム
380、580 電源部
382、582 ワイヤレスモジュール
385 レバー
386 前取付部
388 後取付部
395 配線ダクトレール
521 プリント基板
523 表面実装型LED
566 マルチレンズ
F、M 対象物画像領域