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特許7561821感染に対する免疫応答を評価するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】感染に対する免疫応答を評価するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20240927BHJP
   G01N 15/14 20240101ALI20240927BHJP
   G01N 33/49 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G01N33/48 M
G01N15/14 C
G01N33/49 H
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022500897
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(86)【国際出願番号】 US2020041548
(87)【国際公開番号】W WO2021011356
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】62/873,575
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510005889
【氏名又は名称】ベックマン コールター, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Beckman Coulter, Inc.
【住所又は居所原語表記】250 S. Kraemer Boulevard, Brea, CA 92821, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】テヒドア, リリアナ
(72)【発明者】
【氏名】マガリ, ロバート ティー.
(72)【発明者】
【氏名】カレアガ, ダイアナ
(72)【発明者】
【氏名】シン, サンヒュク
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-504992(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0128906(US,A1)
【文献】特表2006-506069(JP,A)
【文献】特表2014-515103(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0160464(US,A1)
【文献】Elliott D. Crouser et al.,Improved Early Detection of Sepsis in the ED With a Novel Monocyte Distribution Width Biomarker,Chest,2017年09月,152(3),pp.518-526,doi: 10.1016/j.chest.2017.05.039.
【文献】PARK, D.-H.,Screening of sepsis using leukocyte cell population data from the Coulter automatic blood cell analyzer DxH800,Int J Lab Hematol.,2011年08月,33(4),pp.391-9,doi: 10.1111/j.1751-553X.2011.01298.x.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48~33/98
G01N 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染に対する炎症応答を特徴付けるための方法であって、
a.フローセルを通して体液試料を流すこと;
b.前記フローセル内の前記体液試料中の複数の細胞を照射すること;
c.少なくとも上方中角光散乱(UMALSを含む、前記複数の細胞の個々の細胞からの光散乱を測定すること;
d.前記光散乱の測定値に少なくとも部分的に基づいて、前記複数の細胞内の前記個々の細胞を同定すること;および
e.細胞集団パラメーターとして前記UMALSの測定値を分析すること
を含み、前記細胞集団パラメーターが、無核赤血球として同定された細胞に対する上方中角光散乱の測定値の標準偏差(NNRBC-UMALS-SD)であり、前記NNRBC-UMALS-SDが45未満である場合、感染に対する前記炎症応答が異常であることを示す、方法。
【請求項2】
前記体液試料が、全血である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
細胞集団パラメーターが、無核赤血球(NNRBCとして分類された前記複数の細胞由来の細胞に対して分析される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
記NNRBC-UMALS-SDが43未満である場合、感染に対する前記炎症応答が異常であることを示す、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記体液試料内の単球の集団に対して測定された体積の分布幅(MDW)がMDW基準範囲内にあるか否かを決定することをさらに含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記NNRBC-UMALS-SDがNNRBC-UMALS-SD基準範囲外にあり、前記MDWがMDW基準範囲外にある場合、感染に対する前記炎症応答が異常であることを示す、請求項に記載の方法。
【請求項7】
記NNRBC-UMALS-SDが43未満であり、単球の体積の前記分布幅が19チャネルより大きい場合、感染に対する前記炎症応答が異常であることを示す、請求項5~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記体液試料中の白血球細胞数(WBC)が、正常基準範囲内であるか否かを決定することをさらに含む、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
記NNRBC-UMALS-SDが43未満であり、前記WBCが4,000細胞/mm未満であるか、または12,000細胞/mmより多い場合、感染に対する前記炎症応答が異常であることを示す、請求項に記載の方法。
【請求項10】
a.NNRBC-UMALS-SD、MDW、およびWBCを決定すること;
b.前記NNRBC-UMALS-SD、前記MDW、および前記WBCの各々をそれぞれの基準範囲と比較すること;
c.少なくとも前記NNRBC-UMALS-SD、前記MDW、および前記WBCの組合せが、感染に対する前記炎症応答を特徴付けるために提供されること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
記NNRBC-UMALS-SDがNNRBC-UMALS-SD基準範囲外にあり、前記MDWがMDW基準範囲外にあり、前記WBCがWBC基準範囲外にある場合、感染に対する前記炎症応答が異常であることを示す、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
局所決定の規則が、前記NNRBC-UMALS-SD、前記MDW、および前記WBCがそれぞれの基準範囲内にすべてがあるわけではない、またはすべてがそれぞれの基準範囲外にある場合、前記感染に対する炎症応答を特徴付けるために適用される、請求項10~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
a.請求項1~12のいずれかに記載の方法の前記フローセルを通過する細胞に起因する少なくとも上方中角光散乱(UMALSを測定するためのトランスデューサーモジュール;および
b.請求項1~12のいずれかに記載の方法を実行するための非一時的なコンピューター可読媒体上の命令とともに構成されるプロセッサー
を含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、米国特許商標庁への2019年7月12日出願の「systems and methods for evaluating immune response to infection」と題された仮特許出願第62/873,575号に関連し、この仮出願に基づく利益を主張している。
【背景技術】
【0002】
背景
敗血症は、感染に対する宿主応答の調節異常に起因する生命を脅かす臓器機能不全である。敗血症は、世界的な健康管理の危機であり、毎年世界で3000万人より多くの人に影響を及ぼす。敗血症の発症は、年率1.5%で増加しているため、重要な世界的な健康管理の関心事となっている。敗血症は、死亡率が高く、前立腺がん、乳がん、およびHIV/AIDSを合わせたものより多くの個体を死亡させる。
【0003】
ヒトの犠牲に加えて、敗血症は、健康管理の機関に費用がかかる。敗血症関連の費用は、長期的な入院、ICU入院、再入院、ならびに広範な検査および患者のモニタリングを含み得るが、240億ドルを越える。
【0004】
敗血症は、一連の徴候および症状により定義される症候群である。敗血症は、感染に関連するが、敗血症の単一の原因は存在せず、細菌、ウイルス、または真菌の感染から生じ得る。当然のことながら、すべての感染が敗血症をもたらすわけではなく、敗血症の病因は、現在の時点で十分に特徴付けられていない。さらに、敗血症に特有の公知のバイオマーカーは存在しない。臨床家は、発熱、白血球数(WBC)、および精神状態の変化(AMS)のような非特異的な指標に依存して、敗血症を有し得る患者を同定することができる。これらの検査は、非敗血性感染、外傷、熱傷、がんなどのいくつかの場合を含む、敗血症以外の様々な状態にこれらの指標が存在するという点で非特異的である。プロカルシトニン(PCT)およびC反応性タンパク質(CRP)に対する検査を含む診断検査が利用可能であるが、望ましくは、敗血症に対して特異的でも感受性でもない。すなわち、利用可能な診断検査は、望ましくないが高い割合で、敗血性ではない患者に対して検査が陽性である場合と、敗血性である、または敗血症を発症している患者に対して検査が陰性である場合の両方がある。
【0005】
臨床家が、流行性感冒、外傷、がん、および非敗血性炎症を含む、他の状態から敗血症を区別する助けとなり得る診断検査の必要性は、依然として存在する。
【発明の概要】
【0006】
簡単な要旨
一部の態様では、本開示は、細胞集団パラメーターの変形形態を評価するためのシステムに関する。システムは、複数の細胞を含有する液体の流れが通過するフローセルを含み得る。システムは、細胞がフローセルを通過する場合、光源、および光散乱を検出するための1つまたは複数のセンサーを含み得る。1つまたは複数のセンサーは、上方中角光散乱(upper median angle light scatter)(UMALS)を検出するためのセンサーを含み得る。システムは、1つまたは複数の光散乱の測定値に少なくとも部分的に基づいて無核赤血球(NNRBC)を同定するためのプロセッサーを含み得る。プロセッサーは、複数の同定されたNNRBCに対してUMALSセンサーの1つまたは複数の測定値をさらに収集することができる。プロセッサーは、複数の同定されたNNRBCに対してUMALSの測定値に対する標準偏差を計算することができる。
【0007】
第1の態様によると、一部の実施形態は、感染に対する炎症応答を特徴付けるための方法を提供し得る。一部の実施形態では、このような方法は、フローセルを通して体液試料を流すこと、およびフローセル内の体液試料中の複数の細胞を照射することを含み得る。一部の実施形態では、このような方法は、少なくともUMALS光散乱を含む、複数の細胞の個々の細胞からの光散乱を測定することをさらに含み得る。一部の実施形態では、このような方法は、光散乱の測定値に少なくとも部分的に基づいて複数の細胞内の個々の細胞を同定することをさらに含み得る。一部の実施形態では、このような方法は、細胞集団パラメーターとしてUMALS光散乱の測定値を分析することをさらに含み得る。
【0008】
第2の態様によると、第1の態様に関して記載されたような一部の実施形態では、体液試料は、全血であり得る。
【0009】
第3の態様によると、第1または第2の態様のいずれかに関して記載されたような一部の実施形態では、細胞集団パラメーターは、NNRBCとして分類された複数の細胞由来の細胞に対して分析することができる。
【0010】
第4の態様によると、第1から第3の態様のいずれかに関して記載されたような一部の実施形態では、細胞集団パラメーターは、NNRBC-UMALS-SDであり得る。
【0011】
第5の態様によると、第4の態様に関して記載されたような一部の実施形態では、方法は、NNRBC-UMALS-SDパラメーターをNNRBC-UMALS-SD基準範囲と比較することを含み得、感染に対する炎症応答は、NNRBC-UMALS-SDがNNRBC-UMALS-SD基準範囲外にある場合、異常として特徴付ける。
【0012】
第6の態様によると、第4または第5の態様のいずれかに関して記載されたような一部の実施形態では、感染に対する炎症応答は、NNRBC-UMALS-SDが、43未満である場合、異常として特徴付けることができる。
【0013】
第7の態様によると、第4から第6の態様のいずれかに関して記載されたような一部の実施形態では、方法は、体液試料内の単球の集団に対する測定された体積の分布幅(MDW)が、MDW基準範囲内であるか否かを決定することをさらに含み得る。
【0014】
第8の態様によると、第7の態様に関して記載されたような一部の実施形態では、方法は、NNRBC-UMALS-SDがNNRBC-UMALS-SD基準範囲外にあり、MDWがMDW基準範囲外にある場合、異常として感染に対する炎症応答を特徴付けることを含み得る。
【0015】
第9の態様によると、第7または第8の態様に関して記載されたような一部の実施形態では、感染に対する炎症応答は、NNRBC-UMALS-SDが、43未満であり、単球の体積の分布幅が、19チャネルより大きい場合、異常として特徴付ける。
【0016】
第10の態様によると、第4から第8の態様のいずれかに関して記載されたような一部の実施形態では、方法は、体液試料中の白血球細胞数(WBC)が、正常基準範囲内であるか否かを決定することをさらに含み得る。
【0017】
第11の態様によると、第10の態様に関して記載されたような一部の実施形態では、感染に対する炎症応答は、NNRBC-UMALS-SDが、43未満であり、WBCが、4,000細胞/mm未満であるか、または12,000細胞/mmより多い場合、異常として特徴付けることができる。
【0018】
第12の態様によると、第1の態様に関して記載されたような一部の実施形態では、方法は、NNRBC-UMALS-SD、MDW、およびWBCを決定することを含み得る。一部のこのような実施形態では、方法は、NNRBC-UMALS-SD、MDW、およびWBCの各々をそれぞれの基準範囲と比較することをさらに含み得る。一部のこのような実施形態では、方法は、少なくともNNRBC-UMALS-SD、MDW、およびWBCの組合せに基づいて感染に対する炎症応答を特徴付けることをさらに含み得る。
【0019】
第13の態様によると、第12の態様に関して記載されたような一部の実施形態では、感染に対する炎症応答は、NNRBC-UMALS-SDが、NNRBC-UMALS-SD基準範囲外にあり、MDWが、MDW基準範囲外にあり、WBCが、WBC基準範囲外にある場合、異常として特徴付けることができる。
【0020】
第14の態様によると、第12から第13の態様のいずれかに関して記載されたような一部の実施形態では、局所決定の規則は、NNRBC-UMALS-SD、MDW、およびWBCが、それぞれの基準範囲内にすべてがあるわけではない、またはすべてがそれぞれの基準範囲外にある場合、感染に対する炎症応答を特徴付けるために適用され得る。
【0021】
第15の態様によると、一部の実施形態では、第1から第14の態様のいずれかに関して記載された方法のフローセルを通過する細胞に起因する少なくともUMALS光散乱を測定するためのトランスデューサーモジュールを含む、システムを提供することができる。一部のこのような実施形態では、システムは、第1から第14の態様のいずれかに関して記載された方法を実行するための非一時的なコンピューター可読媒体上の命令とともに構成されるプロセッサーを含み得る。
【0022】
第16の態様によると、第15の態様に関して記載されたような一部の実施形態では、トランスデューサーモジュールは、RF伝導率を測定するための手段を含み、RF伝導率を測定するための手段は、第1から第14の態様のいずれかに記載の方法のフローセルを通過する細胞のRF伝導率を測定するのに動作可能であり、トランスデューサーモジュールに含まれる第2のフローセルを通過する細胞のRF伝導率を測定するのにも動作可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本開示の態様に従う例示的な細胞分析プロセスのフローチャートである。
【0024】
図2図2は、本開示の態様に従う例示的な細胞分析システムの概略図である。
【0025】
図3図3は、本開示の態様に従う例示的なトランスデューサーモジュールおよび関連するコンポーネントの図である。
【0026】
図4図4は、本開示の態様に従う例示的なモジュールシステムの簡略化したブロック図である。
【0027】
図5図5は、本開示の態様に従って設定された例示的な患者のデータから患者の状態によるNNRBC UMALS標準偏差のボックスプロットである。
【0028】
図6図6は、本開示の態様に従って、NNRBC UMALS SD、MDW、ならびにNNRBC UMALS SDおよびMDWの組合せに対して敗血症に対する感度対特異度のプロットを伴うROC曲線である。
【0029】
図7図7は、本開示の態様に従う例示的な可能なアルゴリズムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な説明
目的を実現するための従来の努力により、敗血症に対する診断検査は、血液学的細胞分析を含む。異常な白血球数(WBC)は、多くの場合、感染に関連するが、敗血症に特異的ではない。より近年では、未成熟な顆粒細胞のような他の細胞集団の評価が、患者が敗血症を有するか、または敗血症を発症している可能性を評価するのに考慮すべき要因として提案されている。他の提案として、敗血症の潜在的な指標として、単球の体積分布幅または好中球の体積分布幅のような細胞集団パラメーターを調べることが挙げられる。これらの血液学的アプローチは、単球、リンパ球、および好中球を含む白血球に焦点を合わせる傾向があり、これは、感染に対する免疫応答に関与することが公知である。
【0031】
驚くべきことに、無核赤血球(NNRBC)のUMALS光散乱の測定値は、単独でまたは他の血液細胞集団パラメーターと組み合わせてのいずれの場合でも、敗血症の良好な予測因子であることが見出された。特に、NNRBCの集団に対するUMALS光散乱の測定値の標準偏差は、敗血症の良好な予測因子であり得る。UMALSは、時折、細胞の粒状性に関連するので、顆粒細胞およびその前駆細胞に対して、UMALSは、結果的に、妥当な目的の細胞の特徴付けであると思われる。しかし、NNRBCは、感染に反応して粒状化せず、典型的には、赤血球サイズの変化および細胞が老化する形態により不均一集団である。NNRBCのUMALSの測定値が、患者が敗血症を有する、または敗血症を発症するリスクのある可能性への洞察を提供すると考える明確な理由は存在せず、特に、NNRBCのUMALSの測定値に対する標準偏差の変化が、敗血症の患者または敗血症を発症する患者を同定する助けとなると考える理由はない。
【0032】
患者由来の血液試料は、例えばスライド上の血液のスメアを作り、スライドを目視で検査することにより、手動で分析することができる。手動のオペレーターにより、おそらくスライド上の細胞の計数および/または分級を容易にする視覚補助を使用することにより、細胞数を求め、例えば赤血球、血小板、白血球のような種類により細胞を同定することができる。しかし、患者由来の血液試料の分析を自動化することが望ましい。自動化プロセスの利便性だけでなく、自動化または半自動化の細胞分析システムは、例えば、血液試料中の格段な数の細胞を計数するか、または、ヒトが比較可能な試料サイズで収集することが非常に困難もしくは不可能である個々の細胞および/もしくは細胞集団についての情報を集約することができる。これらの能力は、試料サイズに基づいて頑健である分布幅のような細胞集団の統計に十分なデータポイントを作成することが重要である。
【0033】
細胞分析システムは、細胞を同定する、計数する、および/または特徴付ける様々な技術を使用することができる。例えば、細胞分析システムは、電気インピーダンスを使用して、フローセル内の問合せゾーン(interrogation zone)を通過する細胞の体積および量を決定することができる。別の例として、細胞分析システムは、静止したシステムまたはフローセルのいずれにおいても、細胞の光学的表現をとらえ、光学的表現を分析して(ヒトが理解可能か否か、またはヒトが理解可能な画像に変換する対象となるか否か)、問合せゾーンにおいて細胞をサイズおよび量を決定するイメージング技術を使用し得る。また別の例として、細胞分析システムは、フローセルを通過する細胞を照射し、細胞を通過する光の伝送および/または散乱を測定するフローサイトメトリーを使用することができる。光散乱は、異なる種類、サイズ、もしくは特徴付けの異なる細胞を本質的に区別することができる、または、細胞は、蛍光マーカーのようなマーカーとともに調製して、マーカーによりマークされた、もしくはマークされていない細胞の特徴に基づいて細胞の同定、定量、および/もしくは特徴付けを容易にすることができる。細胞分析システムは、これらの技術、ならびに/または細胞を計数する、同定する、および/もしくは特徴付ける他の技術の組合せを使用することができる。例えば、細胞分析システムは、血液試料中の細胞を分析するために電気インピーダンスおよび光散乱の組合せを使用することができる。技術の組合せを使用する場合、その技術は、シリアルの進行(例えば、同じ試料もしくは試料のアリコートが多数の別個の問合せゾーンを通過する)、もしくはパラレルの進行(例えば、試料の異なるアリコートが本質的に同時に多数の別個の問合せゾーンを通過する)で設定されたハードウェアを利用することができる、または、2つまたはそれより多くの技術を、本質的に同時(例えば、本質的に同時に同じフローセルにおいて同じ試料もしくは試料のアリコートから電気インピーダンスおよび光散乱の両方を測定するためにフローセルを搭載することができる)に利用することができる。これに関して、本質的に同時にとは、処理が、同じ試料または同じ試料の異なるアリコートに対して重複する時間間隔で実行していることを意味する。異なる技術を調整して、正確に同時に、または等しい期間の時間間隔で起こすことは、本発明の実行では必須ではない。
【0034】
分析用の試料は、細胞を含有する任意の生体流体であり得る。生体流体は、例えば、血液であり得る。試料は、全血、例えば、抗凝固剤の可能な添加を除いて処理または修正して、血液が凝固するのを妨げていない血液であり得、これは、分析用のフローセルを通る血液の流れを複雑にする。試料は、例えば、希釈、濃縮、成分(例として血漿、血清、および細胞)への分離;(例えば、サイトメトリーマーカー、ある特定の細胞の種類を破壊/除去する溶解、1つまたは複数の細胞の出現を修正する染色剤などとともに)球形化剤(sphering agent)での前処置により処理することができる、あるいは、分析用の試料を調製するのに有用であり得る。血液は、ヒトの血液または非ヒトの動物の血液であり得る。一部の状況では、試料は、尿、関節液、唾液、胆汁、脳脊髄液、羊水、精液、粘液、喀痰、リンパ液、房水、涙、膣分泌物、胸膜液、囲心腔液、腹腔液などのような、血液ではない体液由来であり得る。血液と同様に、血液ではない体液をサンプリングする場合、血液ではない体液を処置する、例えば濃縮するか、または遠心分離により細胞を濃縮して、所望の細胞濃度を達成するか、または分析用の細胞のある特定の亜集団を濃縮もしくは修正することができる。全血の評価の起こり得る利点は、比較的小さい試料において分析に利用可能な細胞が比較的多いことであり得る。血液ではない体液および/または処理済みの血液の分析の起こり得る利点は、目的のある特定の細胞の事前分離および/または細胞の数の減少であり得るが、それは、異なる体液で通常生じる細胞の種類および数の差異のためである。より少数の細胞が、例えば、個々の細胞を特徴付けるのに有用であり得る。
【0035】
一部の態様では、フローセルを通過する細胞は、光散乱を使用して分析される。図1に示す通り、細胞集団の変形形態を評価するための方法100は、フローセルを通して試料を流す110ことを含み得る。フローセルを通して流れる試料内の細胞は、可視光線で照射120され得る。細胞分析システムは、細胞がフローセルにおいて照射されるので、分析器が光伝送および/または散乱を測定130することを可能にする1つまたは複数のセンサーを含み得る。細胞分析システムは、細胞がフローセルを通して流れるので、試料内の複数の細胞に対して光伝送および/または散乱を収集140するリモートプロセッサーで通信するためのプロセッサーまたは手段を含み得る。プロセッサーは、光伝送および/または散乱に少なくとも部分的に基づいて細胞を同定150するアルゴリズムを使用し得る。プロセッサーまたは別個のプロセッサーは、特定の細胞または特定の細胞の種類の集団(例えば単球、好中球、赤血球)に対して光伝送および/または散乱のデータを分析160し得る。分析は、例えば、細胞体積もしくは光散乱のような特定の測定値、および/または単球、好中球、もしくはNNRBCのような特定の細胞の種類に対して、極値、範囲、標準偏差、分布幅などのようなパラメーターを計算することを含むことができる。例えば、細胞分析システムは、NNRBCとして同定された細胞に対して、光散乱、またはUMALSのような光散乱の特定の角度の標準偏差を計算し得る。一部の態様では、測定130は、画像分析、電気インピーダンス、高周波(RF)応答、マーカーを伴うまたは伴わず、単独または組合せもしくは補助的な組合せで、光伝送および/または光散乱の測定を伴うまたは伴わないフローサイトメトリーのような、細胞サイズおよび/または粒状の代替的測定を含むことができる。
【0036】
図2は、細胞分析システム200を概略的に示す。本明細書に示す通り、システム200は、調製システム210、トランスデューサーモジュール220、および分析システム230を含む。システム200が、概して3つのコアなシステムブロック(210、220、および230)について記載する一方、当業者は、システム200が、中央制御プロセッサー、表示システム、流体システム、温度制御システム、ユーザー安全性制御システムなどのような他のシステムのコンポーネントを含み得ることは容易に理解する。動作時に、全血試料(WBS)240は、分析用のシステム200に提示することができる。一部の例では、WBS 240は、システム200に吸引される。例示的な吸引技術は、当業者に公知である。吸引後、WBS 240は、調製システム210に送達することができる。調製システム210は、WBS 240を得て、さらなる測定および分析用にWBS 240を調製することに含まれる動作を実行することができる。例えば、調製システム210は、トランスデューサーモジュール220への提示用にWBS 240を1つまたは複数の所定のアリコートに分離し得る。一部の態様では、調製システム210は、WBS 240の組成物に変化させることはできない。あるいは、調製システム210は、適切な試薬をアリコートの1つまたは複数に添加し得るようにチャンバーを混合することを含み得る。例えば、アリコートが、白血球のサブセット集団の分化を検査すべきである場合、溶解試薬(例えばERYTHROLYSE、赤血球溶解緩衝剤)をアリコートに添加して、RBCを破壊し、除去することができる。調製システム210はまた、試薬および/または混合チャンバーの温度を制御する温度制御コンポーネントを含み得る。適切な温度制御は、調製システム210の動作の一貫性を改善することができ、試料において、例えば蛍光マーカー、染色剤、または溶解での細胞の前処置を容易にすることができる。
【0037】
一部の例では、1つまたは複数の所定のアリコートは、調製システム210からトランスデューサーモジュール220に転送することができる。下記に詳述する通り、トランスデューサーモジュール220は、個々に通過するWBSから細胞の光伝送および/または光散乱の測定を実行することができる。測定された光伝播(例えば光伝送、光散乱)パラメーターは、データ処理のために、分析システム230に提供または伝送することができる。一部の例では、分析システム230は、コンピューターの処理機能、および/または図4に示されるシステムについて本明細書に記載され、さらに下記に記載されるもののような1つもしくは複数のモジュールもしくはコンポーネントを含むことができ、これは、測定されたパラメーターを評価し、血液細胞の構成要素の少なくとも1つを同定および列挙し、アリコート内の1つまたは複数の細胞集団に対して細胞集団パラメーターを計算することができる。本明細書に示す通り、細胞分析システム200は、アリコート内の1つまたは複数の細胞集団に対して測定値および/または計算されたパラメーター、例えば、単球の体積分布幅、好中球の体積分布幅、未成熟な顆粒細胞の計数もしくはパーセンテージ、および/またはNNRBCに対するUMALS測定値の標準偏差を含有するレポート250を作成または出力することができる。一部の例では、トランスデューサーモジュール220由来の過剰な生体試料は、外部(あるいは内部の)廃棄システム260に向けることができる。例示的な細胞分析システムは、Beckman Coulter DxH血液学分析器であり、これは、直流インピーダンスを測定して、細胞質の粒度および核構造に対する細胞体積、伝導率、および光散乱を決定する。
【0038】
敗血症に特異的な公知のバイオマーカーが存在しない(例えば、血液細胞中のマラリア原虫を同定することがマラリア感染を決定的に示すという意味)ので、敗血症を決定的に診断することができる血液学的分析は現在存在しない。しかし、患者試料中の1つまたは複数の細胞集団を同定する、列挙する、および/または特徴付けることは、臨床的な徴候および症状ならびに他の検査または特徴付けの研究と潜在的に組み合わせて、敗血症の臨床的な疑いまたは敗血症の発症を確実に増加または低減することができる情報をもたらし得る。特に、敗血症が臨床症状に基づいて定義される症候群であり、細胞集団の変化が敗血症の臨床症状の前に観察され得るので、細胞集団データは、敗血症の発症のリスクの高い患者を同定する助けとなり得、予防処置を可能にする。予防処置が、多くの場合、課題をもたらす、抗生物質、抗ウイルス薬、および/または抗真菌薬の投与を含むので有利である。例えば、敗血症ではない、または敗血症を発症していない患者への抗生物質の過剰使用は、抗菌剤耐性の発生に寄与し得る。さらに、一部の薬は、副作用を有し得る、または重症である、もしくはその臨床状態が低下している患者に対して危険であり得る有害事象を誘引し得る。したがって、臨床家が通知された臨床処置の計画を開発する助けとなり得る検査は、検査自体が決定的な診断ではないとしても価値がある。さらに、敗血症を発症する間または発症に先立って患者において変化する細胞集団を特徴付けおよび/または列挙することは、敗血症の病因もしくは進行の調査、または感染に対する細胞応答の観察のような非診断的目的で有用であり得る。
【0039】
一部の態様では、患者試料の分析により、臨床家は、処置レジメンを開始および/または変更することができる。処置レジメンは、患者の状態に対処する目的で1つまたは複数の薬または治療剤の個体への投与を含み得る。様々な治療法のいずれも、本明細書に考察するような異常なNNRBC UMALSの標準偏差を有すると同定された個体を処置するのに使用することができる。例示的な療法として、液剤、昇圧薬、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、ビタミン類(チアミンを含む)、ミネラル類、ステロイド類(コルチコステロイドを含む)、およびその組合せの投与が挙げられる。一部の例では、患者は、患者試料の分析に基づいた、専門的な観察のために入院することを含む、より厳格なまたはより厳格ではないモニタリングを受けることができる。本明細書で使用される場合、NNRBC UMALSの標準偏差は、感染に対する免疫応答の機能不全および/または敗血症に関連しない場合、正常と考えられる。NNRBC UMALSの標準偏差は、感染に対する免疫応答の機能不全および/または敗血症に関連する場合、異常と考えられる。
【0040】
図3は、トランスデューサーモジュールおよびより詳細な関連するコンポーネントをより詳細に図示する。本明細書に示す通り、システム300は、ビーム314を放射するレーザー312のような光源または照射源を有するトランスデューサーモジュール310を含む。レーザー312は、例えば、635nm、5mW、固体レーザーであり得る。一部の例では、システム300は、得られるビーム322がフローセル330の細胞問合せゾーン332に焦点を合わせ、位置決めするように、ビーム314を調整するフォーカスアライメントシステム320を含み得る。一部の例では、フローセル330は、調製システム302から試料アリコートを受け取る。様々な流体機構および技術は、フローセル330内の試料アリコートの流体力学的フォーカシングに対して利用することができる。
【0041】
一部の例では、アリコートは、概して、その構成要素が一度に細胞問合せゾーン332を通過するように細胞問合せゾーン332を通して流れる。いくつかの場合、システム300は、米国特許第5,125,737号;米国特許第6,228,652号;米国特許第7,390,662号;米国特許第8,094,299号;および米国特許第8,189,187号に記載され、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、トランスデューサーモジュールまたは血液分析機器の細胞問合せゾーンまたは他の特徴を含み得る。例えば、細胞問合せゾーン332は、およそ50×50ミクロンを測定し、およそ65ミクロンの長さ(流れの方向に測定)を有する、正方形の横断面で定義することができる。フローセル330は、細胞問合せゾーン332を通過する細胞のDCインピーダンスおよび/またはRF伝導率の測定を実行するための第1および第2の電極334、336を有する電極アセンブリを含み得る。電極334、336からのシグナルは、分析システム304に伝送することができる。電極アセンブリは、それぞれ低周波電流および高周波電流を使用して細胞の体積および伝導率の特徴付けを分析することができる。例えば、低周波DCインピーダンスの測定値は、細胞問合せゾーンを通過する個々の各細胞の体積を分析するのに使用することができる。高周波RF電流の測定値は、細胞問合せゾーンを通過する細胞の伝導率を決定するのに使用することができる。細胞壁が高周波電流に対する導体として作用するので、高周波電流は、電流が細胞壁および各細胞内部を通過することから細胞成分の絶縁性における差異を検出するのに使用することができる。高周波電流は、核および粒状の構成要素、ならびに細胞内部の化学組成を特徴付けるのに使用することができる。
【0042】
図3の光源は、レーザーとして記載されているが、光源として、あるいはまたは追加的に、キセノンランプ、LEDランプ、白熱ランプ、または任意の他の好適な光源が挙げられ、同じまたは異なる種類のランプ(例えば、多数のLEDランプまたは少なくとも1つのLEDランプおよび少なくとも1つのキセノンランプ)の組合せを含む。図3に示す通り、例えば、入射ビーム322は、細胞問合せゾーン332を通過する細胞を照射し、ゾーン332から放射する角度の範囲α内の光伝播(例えば、散乱、伝送)をもたらす。例示的なシステムは、吸光または軸上光損失の測定に関連する光を含む、角度の範囲α内の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれより多くの角度の範囲内の光を検出することができる、センサーアセンブリを搭載する。示す通り、光伝播340は、必要に応じて光散乱検出器ユニット350Aならびに光散乱および/または伝送検出器ユニット350Bを有する、光検出アセンブリ350により検出することができる。一部の例では、光散乱検出器ユニット350Aは、上方中角光散乱(UMALS)を検出および測定するための光活性領域またはセンサーゾーンを含み、例えば、光は、約20~約42°の範囲内の光ビームの軸に対する角度で散乱あるいは伝播する。一部の例では、UMALSは、問合せゾーンを通して流れる細胞を照射する入射ビームの軸に対して約20~約43°の角度の範囲内で伝播する光に相当する。光散乱検出器ユニット350Aはまた、下方中角光散乱(lower median angle light scatter)(LMALS)を検出および測定するための光活性領域またはセンサーゾーンを含み、例えば、光は、約10~約20°の範囲内の光ビームの軸に対する角度で散乱あるいは伝播する。一部の例では、LMALSは、問合せゾーンを通して流れる細胞を照射する入射ビームの軸に対して約9~約19°の角度の範囲内で伝播する光に相当する。
【0043】
UMALSおよびLMALSの組合せは、中角光散乱(median angle light scatter)(MALS)として定義され、これは、問合せゾーンを通して流れる細胞を照射する入射ビームの軸に対して約9°~約43°の角度での光散乱または伝播であり得る。当業者は、これらの角度(および本明細書に記載される他の角度)が、問合せ、センシング、および分析システムの構成に基づいていくらか変化し得ることを理解する。
【0044】
図3に示す通り、光散乱検出器ユニット350Aは、低角の光散乱または伝播340が光散乱検出器ユニット350Aを超えて通過し、それにより達することを可能にする開口部351を含み、光散乱および伝送検出器ユニット350Bにより検出されることができる。一部の実施形態によると、光散乱および伝送検出器ユニット350Bは、下方角光散乱(LALS)を検出および測定するための光活性領域またはセンサーゾーンを含み、例えば、光は、約5.1°未満の照射された光ビームの軸に対する角度で散乱または伝播する。一部の例では、LALSは、問合せゾーンを通して流れる細胞を照射する入射ビームの軸に対して約9°未満の角度で伝播する光に相当する。一部の例では、LALSは、問合せゾーンを通して流れる細胞を照射する入射ビームの軸に対して約10°未満の角度で伝播する光に相当する。一部の例では、LALSは、問合せゾーンを通して流れる細胞を照射する入射ビームの軸に対して約1.9°±0.5°の角度で伝播する光に相当する。一部の例では、LALSは、問合せゾーンを通して流れる細胞を照射する入射ビームの軸に対して約3.0°±0.5°の角度で伝播する光に相当する。一部の例では、LALSは、問合せゾーンを通して流れる細胞を照射する入射ビームの軸に対して約3.7°±0.5°の角度で伝播する光に相当する。一部の例では、LALSは、問合せゾーンを通して流れる細胞を照射する入射ビームの軸に対して約5.1°±0.5°の角度で伝播する光に相当する。一部の例では、LALSは、問合せゾーンを通して流れる細胞を照射する入射ビームの軸に対して約7.0°±0.5°の角度で伝播する光に相当する。各例では、LALSは、約1.0°またはそれより大きい角度で伝播する光に相当し得る。すなわち、LALSは、約1.0°~約1.9°;約1.0°~約3.0°;約1.0°~約3.7°;約1.0°~約5.1°;約1.0°~約7.0°;約1.0°~約9.0°;または約1.0°~約10.0°の角度で伝播する光に相当し得る。
【0045】
一部の実施形態によると、光散乱および伝送検出器ユニット350Bは、細胞を通して軸方向に伝送するか、または入射された光ビームの軸に対して約0°の角度で、照射した細胞から伝播する光を検出および測定するための光活性領域またはセンサーゾーンを含み得る。一部の例では、光活性領域またはセンサーゾーンは、入射された光ビームの軸に対して約1°未満の角度で細胞から軸方向に伝播する光を検出および測定することができる。いくつかの場合、光活性領域またはセンサーゾーンは、入射された光ビームの軸に対して約0.5°未満の角度で細胞から軸方向に伝播する光を検出および測定することができる。このような軸方向に伝送または伝播する光の測定値は、軸上光損失(ALLまたはAL2)に相当する。先に組み込まれる米国特許第7,390,662号に示す通り、光が粒子と相互作用する場合、入射光のいくつかは、散乱するプロセスを通した方向に変化し(すなわち光散乱)、光の一部は、粒子により吸収される。これらのプロセスの両方は、入射ビームからエネルギーを除去する。ビームの入射軸に沿って見た場合、光損失は、前方の吸光または軸上光損失と呼ばれ得る。軸上光損失の測定技術のさらなる態様は、米国特許第7,390,662号の第5コラム58行目から第6コラム4行目に記載されている。
【0046】
したがって、細胞分析システム300は、光伝播の測定値を得るための手段であって、ALLおよび多数の別個の光散乱または伝播角度を含む、様々な角度のいずれかまたは様々な角度の範囲のいずれか以内で生体試料の照射した細胞から放射する光に対する光散乱および/または光伝送を含む、手段を提供する。例えば、光検出アセンブリ350は、適切な回路および/または処理ユニットを含むが、UMALS、LMALS、LALS、MALS、およびALLを検出および測定するための手段を提供する。
【0047】
ワイヤーまたは他の伝送もしくは接続機構は、電極アセンブリ(例えば電極334、336)、光散乱検出器ユニット350A、ならびに/または光散乱および伝送検出器ユニット350Bから処理用の分析システム304にシグナルを伝送することができる。例えば、測定されたDCインピーダンス、RF伝導率、光伝送、および/または光散乱パラメーターは、データ処理のために、分析システム304に提供または伝送することができる。一部の例では、分析システム304は、コンピューターの処理機能、および/または図4に示されるシステムについて本明細書に記載されるもののような1つもしくは複数のモジュールもしくはコンポーネントを含むことができ、これは、測定されたパラメーターを評価し、生体試料の構成要素を同定および列挙し、生体試料の要素を特徴付けるデータのサブセットを1つまたは複数の目的の特徴またはパラメーターと相関させることができる。本明細書に示す通り、細胞分析システム300は、WBC、MDW、またはNNRBCに対するUMALS標準偏差のような試料に対して作製された測定値または計算されたパラメーターを提示するレポート306を作成または出力することができる。一部の例では、トランスデューサーモジュール310由来の過剰な生体試料は、外部(あるいは内部の)廃棄システム308に向けることができる。一部の例では、細胞分析システム300は、先に組み込まれる米国特許第5,125,737号;米国特許第6,228,652号;米国特許第8,094,299号;および米国特許第8,189,187号に記載されるもののようなトランスデューサーモジュールまたは血液分析機器の1つまたは複数の特徴を含み得る。
【0048】
図4は、モジュールシステム600に対する個々のシステム要素が別個またはより統合された手法でどのように実行し得るかを広く示す例示的なモジュールシステムの簡略化したブロック図である。モジュールシステム600は、細胞分析システムの一部またはシステムとの接続性であり得る。モジュールシステム600は、細胞分析に関するデータを作成するか、または入力を受け取るのに非常に適している。一部の例では、モジュールシステム600は、1つもしくは複数のプロセッサー604、ユーザーインターフェース入力デバイスのような1つもしくは複数の入力デバイス606、および/または、ユーザーインターフェース出力デバイスのような1つもしくは複数の出力デバイス608を含む、バスサブシステム602を介して電気的に連結するハードウェア要素を含む。一部の例では、システム600は、診断システム642からのシグナルを受信する、および/または診断システム642にシグナルを送信することができる、ネットワークインターフェース610および/または診断システムインターフェース640を含む。一部の例では、システム600は、本明細書に開示される技術の1つまたは複数の態様を実行するように構成されたプログラムのような、例えばメモリ614のワーキングメモリ612内に現在位置すると本明細書で示されるソフトウェア要素、オペレーティングシステム616、および/または他のコード618を含む。メモリ614は、非一時的である、および/またはハードウェアのような有形媒体に実装することができる。
【0049】
一部の実施形態では、モジュールシステム600は、本明細書に開示される様々な技術の機能性をもたらす基本プログラミングおよびデータ構築物を記憶することができる記憶サブシステム620を含み得る。例えば、方法の態様の機能性を実行するソフトウェアモジュールは、本明細書に開示される場合、記憶サブシステム620に記憶され得る。これらのソフトウェアモジュールは、1つまたは複数のプロセッサー604により実行することができる。分散環境では、ソフトウェアモジュールは、複数のコンピューターシステムに記憶され、複数のコンピューターシステムのプロセッサーにより実行され得る。記憶サブシステム620は、メモリサブシステム622およびファイル記憶サブシステム628を含むことができる。メモリサブシステム622は、プログラム実行中の使用説明書およびデータの記憶用の主要なランダムアクセスメモリ(RAM)626、ならびに固定した使用説明書を記憶するリードオンリーメモリ(ROM)624を含む、いくつかのメモリを含み得る。ファイル記憶サブシステム628は、プログラムおよびデータファイル用の持続的な(不揮発性)記憶装置をもたらすことができ、必要に応じて患者、処置、評価、または他のデータを実施し得る有形記憶媒体を含むことができる。ファイル記憶サブシステム628は、ハードディスクドライブ、関連するリムーバブル媒体を伴うフロッピー(登録商標)ディスクドライブ、コンパクトデジタルリードオンリーメモリ(CD-ROM)ドライブ、光学ドライブ、DVD、CD-R、CD-RW、固体リムーバブルメモリ、他のリムーバブル媒体カートリッジまたはディスクなどを含み得る。ドライブの1つもしくは複数、またはすべては、モジュールシステム600に連結した他の位置で他に接続するコンピューターの遠隔位置に位置することができる。一部の例では、システムは、1つまたは複数のプロセッサーにより実行される場合、1つまたは複数のプロセッサーが本明細書に開示される技術または方法のいかなる態様も実行させることができる使用説明書の1つまたは複数の配列を記憶するコンピューター可読記憶媒体または有形記憶媒体を含み得る。本明細書に開示される技術の機能性を実行する1つまたは複数のモジュールは、ファイル記憶サブシステム628により記憶することができる。一部の実施形態では、ソフトウェアまたはコードは、モジュールシステム600が通信ネットワーク630と通信することを可能にするプロトコールを提供する。必要に応じて、このような通信は、ダイアルアップまたはインターネット接続通信を含み得る。
【0050】
システム600は、本開示の方法の様々な態様を実行するように構成することができる。例えば、プロセッサーコンポーネントまたはモジュール604は、センサー入力デバイスもしくはモジュール632から、ユーザーインターフェース入力デバイスもしくはモジュール606から、ならびに/または、必要に応じて診断システムインターフェース640、ならびに/もしくはネットワークインターフェース610および通信ネットワーク630を介して診断システム642から、細胞パラメーターシグナルを受信するように構成されたマイクロプロセッサー制御モジュールであり得る。一部の例では、センサー入力デバイスは、Beckman Coulter DxH(商標)血液学分析器のような、多数の光角度の検出パラメーターを得るために搭載された細胞分析システムに含まれ得る、またはシステムの一部であり得る。一部の例では、ユーザーインターフェース入力デバイス606および/またはネットワークインターフェース610は、Beckman Coulter DxH(商標)血液学分析器のような、多数の光角度の検出パラメーターを得るために搭載された細胞分析システムにより作成された細胞パラメーターシグナルを受信するように構成され得る。一部の例では、診断システム642は、Beckman Coulter DxH(商標)血液学分析器のような、多数の光角度の検出パラメーターを得るために搭載された細胞分析システムを含み得る、またはシステムの一部であり得る。
【0051】
プロセッサーコンポーネントまたはモジュール604はまた、本明細書に開示される技術または当業者に公知の技術のいずれかによって必要に応じて処理された、細胞パラメーターシグナルを、センサー出力デバイスもしくはモジュール636、ユーザーインターフェース出力デバイスもしくはモジュール608、ネットワークインターフェースデバイスもしくはモジュール610、診断システムインターフェース640、または任意のそれらの組合せに伝送するように構成することができる。本開示の実施形態によるデバイスまたはモジュールの各々は、プロセッサーにより処理されるコンピューター可読媒体の1つまたは複数のソフトウェアモジュール、またはハードウェアモジュール、または任意のそれらの組合せを含むことができる。Windows(登録商標)、MacIntosh、およびUnix(登録商標)のような通常使用される様々なプラットフォームのいずれも、通常使用される様々なプログラミング言語のいずれかとともに使用して、本開示の実施形態を実行することができる。
【0052】
ユーザーインターフェース入力デバイス606は、例えば、タッチパッド、キーボード、マウス、トラックボール、グラフィックタブレットのようなポインティングデバイス、スキャナー、ジョイスティック、ディスプレイに組み込まれたタッチスクリーン、音声認識システム、マイクのような音声入力デバイス、および他の種類の入力デバイスを含み得る。ユーザー入力デバイス606はまた、有形記憶媒体または通信ネットワーク630からコンピューターで実行可能なコードをダウンロードすることができ、コードは、本明細書に開示される方法またはその態様のいずれかを実施する。端末のソフトウェアが、時折アップデートされ、適宜端末にダウンロードされ得ることは理解されよう。一般に、用語「入力デバイス」の使用は、様々な従来の専用デバイス、および情報をモジュールシステム600に入力する方法を含むことを意図している。
【0053】
ユーザーインターフェース出力デバイス606は、例えば、表示サブシステム、プリンター、ファクシミリ装置、または音声出力デバイスのような非視覚的な表示を含み得る。表示サブシステムは、ブラウン管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)のようなフラットパネルデバイス、投影デバイスなどであり得る。表示サブシステムはまた、音声出力デバイスを介するような非視覚的な表示を提供し得る。一般に、用語「出力デバイス」の使用は、様々な従来の専用デバイス、および情報をモジュールシステム600からユーザーに出力する方法を含むことを意図している。一部の例では、細胞分析システムは、ユーザーインターフェース出力デバイスを直接的に含まず、その代わりに、ネットワーク、コンピュータープロセッサー、または非一時的なコンピューター可読記憶媒体にデータを転送すると同時に、ヒトユーザー用のデータ表示は、そのデバイスまたは細胞分析システムからのデータを最初の転送の後にさらに転送するデバイスに関連して起こる。データが表示されないまま分析器から転送される場合、転送されたデータは、未処理のセンサーデータ、または処理済みのデータ、または未処理および処理済みのデータの組合せであり得る。
【0054】
バスサブシステム602は、モジュールシステム600の様々なコンポーネントおよびサブシステムが意図に沿って、または所望に応じて互いに通信させる機構を提供する。モジュールシステム600の様々なサブシステムおよびコンポーネントは、同じ物理的な位置である必要はないが、分散したネットワーク内の様々な場所に分散することができる。バスサブシステム602が単一のバスとして概略的に示すが、バスサブシステムの代替的な実施形態は、多数のバスを利用することができる。
【0055】
ネットワークインターフェース610は、外部ネットワーク630または他のデバイスに対するインターフェースを提供することができる。外部通信ネットワーク630は、必要または所望に応じて他のシステムと通信を行うように構成することができる。ゆえに、モジュールシステム600から電子パケットを受信し、必要または所望に応じてモジュールシステム600へと任意の情報を転送することができる。本明細書に示す通り、通信ネットワーク630および/または診断システムインターフェース642は、Beckman Coulter DxH(商標)細胞分析システムのような、多数の光角度の検出パラメーターを得るために搭載された診断システム642に情報を伝送または診断システム642から情報を受信することができる。非限定例として、外部通信ネットワーク630を使用して、細胞分析システムと、研究データベース、臨床検査情報システム(LIS)、電子医療記録(EMR)などとの間でデータを伝送することができる。一部の例では、通信は、細胞分析システムから他のシステムへと流れる情報を伴う一方向であり得る。一部の例では、通信は、外部システムから流れる情報(例えば作製された特定の測定値または計算された集団パラメーターに対するオーダー)を伴う一方向であり得、これは、細胞分析システムに遠隔である、または細胞分析システムに物理的に隣接する可能性がある。一部の例では、通信は、双方向であり得る。一部の例では、外部デバイスにより細胞分析システムに通信させた情報は、細胞測定の有意性を評価するのに有用な患者の情報を含み得る。例えば、血液学パラメーターに対するいくつかの基準範囲は、一般的な成人集団に対して小児集団または特定の患者亜集団で異なり得、細胞分析システムは、さらなる再検討に対して分析結果にフラグを立てるか否かを決定する場合の患者の情報を考慮することができる。
【0056】
システムの内部でこのような基礎構造の通信リンクを提供することに加えて、通信ネットワークシステム630はまた、インターネットのような他のネットワークとの接続を提供することができ、有線、無線、モデム、および/または他の種類のインターフェース接続を含むことができる。
【0057】
実質的な変形形態が特定の要件に従って使用することができることは、当業者には明らかであろう。例えば、カスタマイズしたハードウェアも使用することができる、および/または、特定の要素をハードウェア、ソフトウェア(アプレットのようなポータブルソフトウェアを含む)、ファームウェア、またはそれらの組合せにおいて実行することができる。さらに、ネットワーク入力/出力デバイスのような他のコンピューティングデバイスへの接続を利用することができる。モジュール端末システム600それ自体は、コンピューター端末、パーソナルコンピューター、ポータブルコンピューター、ワークステーション、ネットワークコンピューター、または任意の他のデータ処理システムを含む様々な種類のものであり得る。コンピューターおよびネットワークの絶え間なく変化する性質により、図4に示すモジュールシステム600の説明は、本開示の1つまたは複数の実施形態を図示する目的で、具体例としてのみ意図されている。モジュールシステム600の多くの他の構成は、図4に示すモジュールシステムより多いまたはより少ないコンポーネントを有する可能性がある。モジュールシステム600のモジュールもしくはコンポーネントのいずれか、またはこのようなモジュールもしくはコンポーネントの任意の組合せは、本明細書に開示される細胞分析システムの実施形態のいずれかに連結するか、または統合する、あるいは実施形態のいずれかとの接続性であるように構成することができる。関連して、上述したハードウェアおよびソフトウェアのコンポーネントのいずれかは、他の位置で使用される他の医学的な評価または処置システムに統合するか、または連係するように構成することができる。
【0058】
一部の実施形態では、モジュールシステム600は、入力モジュールで患者の1つまたは複数の細胞分析パラメーターを受信するように構成することができる。細胞分析パラメーターデータは、同じ患者の先の臨床検査の結果;他の種類の分析器もしくは臨床検査での分析由来の臨床検査の結果;患者の苦痛、診断歴、バイタル、もしくは理学的検査知見のような患者についての非臨床検査データ、またはそれらの組合せを含む可能性のある追加の情報に関して、未処理のセンサーデータまたは部分的に分析されたセンサーデータをさらに処理および/または評価する評価モジュールに伝送することができる。WBC、MDW、NNRBC UMALS標準偏差、および他の細胞集団パラメーターのような細胞分析は、出力モジュールを介してシステムユーザーに出力することができる。一部の例では、モジュールシステム600は、例えば処置モジュールを使用することにより、1つもしくは複数の細胞分析パラメーターおよび/または予測された敗血症の状態に基づいて、患者に対する初期処置もしくは誘導プロトコール、または調整された処置プロトコールを決定することができる。処置は、出力モジュールを介してシステムユーザーに出力することができる。必要に応じて、処置のある特定の態様は、出力デバイスにより決定され、処置システムまたは処置システムのサブデバイスに伝送することができる。患者に関する様々なデータのいずれも、モジュールシステム内に入力することができ、年齢、体重、性別、処置歴、病歴などを含む。処置レジメンまたは診断評価のパラメーターは、このようなデータに基づいて決定することができる。
【0059】
トランスデューサーモジュール300の分析システム304またはモジュールシステム600の他のコードプログラム618またはその両方は、トランスデューサーモジュール300により作成されたセンサーデータを処理するための1つまたは複数のアルゴリズムを含み得る。1つまたは複数のアルゴリズムは、センサーデータを処理して、細胞を同定および計数することができる。例えば、個々の細胞は、細胞のサイズおよびある特定の表面特性の指標をもたらす光散乱および/または光伝送データに基づいて同定可能であり得る。別の例として、電気インピーダンスは、細胞のサイズの指標をもたらし得る。高周波伝導率は、顆粒細胞および有核対無核細胞を区別するのに有用であり得る細胞の構成要素の指標をもたらし得る。マーカー、染色剤、画像分析、または他の測定技術は、例えば、NNRBC、WBC、単球、好中球などとして細胞を同定するのに使用することができる。アルゴリズムは、問合せ期間の所与の細胞の種類と一致するシグナルの数を計数することができ、これは、フローセルを通った時間もしくはイメージング時間により定義することができる、または試験した体液の体積により定義することができる、またはその両方である。
【0060】
一部の例では、作成されたシグナルは、連続値または順序値であり、シグナルの大きさまたは他の特性は、さらに分析することができる。例えば、より高い電気インピーダンス値は、典型的には、より大きな細胞を示し、特定の細胞を同定するのに有用であり得る。電気インピーダンス値はまた、細胞体積に相関し、したがって試料中の多くの細胞にわたるシグナルの大きさもまた、細胞の亜集団についての有用な情報を伝え得る。例えば、電気インピーダンス値は、細胞の亜集団が感染に対する免疫応答についての情報を伝え得るので、単球および単球に対する体積の分布の特徴を同定する助けとなり得る。
【0061】
図7は、本開示の実行における潜在的な使用の例示的なアルゴリズムに対するフローチャートである。示す通り、単一のアルゴリズム700は、示された動作のすべてを包含するが、異なるアルゴリズムまたは異なるソフトウェアでさえ使用することができ、特に、様々な動作は、異なるハードウェア上に存在し得る、または異なるハードウェアにより処理され得る異なるアルゴリズムまたは異なるソフトウェアにより実行することができる。アルゴリズム700は、センサーシグナルから細胞の種類を同定705する。アルゴリズム700は、NNRBCを計数710することができる。アルゴリズム700は、NNRBC-UMALS-SDを計算715することができる。アルゴリズム700は、計算されたNNRBC-UMALS-SDをNNRBC-UMALS-SD基準範囲と比較720することができる。アルゴリズム700は、NNRBC-UMALS-SD基準範囲に関して正常または異常としてNNRBC-UMALS-SDを分類725する。
【0062】
アルゴリズム700は、単球を計数730することができる。アルゴリズム700は、MDWを計算735することができる。アルゴリズム700は、計算されたMDWをMDW基準範囲と比較740することができる。アルゴリズム700は、MDW基準範囲に関して正常または異常としてMDWを分類745する。
【0063】
アルゴリズム700は、白血球を計数750することができる。アルゴリズム700は、白血球数をWBC基準範囲と比較755することができる。アルゴリズム700は、WBC基準範囲に関して正常または異常としてWBCを分類760する。
【0064】
アルゴリズム700は、NNRBC-UMALS-SD、MDW、およびWBCが、それぞれの基準範囲に関してすべて正常であるか否かを決定765することができる。はいの場合、この目的に関して、結果は、正常であり770、患者は、敗血症と同定されない775。NNRBC-UMALS-SD、MDW、およびWBCに1つまたは複数が、それぞれの基準範囲に関して異常である場合、そのときは、この目的に関して結果は異常であり780、アルゴリズムは、全体または局所決定の規則を適用し得る785。全体決定の規則は、アルゴリズム700により処理されたすべてのデータに均一に適用される閾値である。対照的に、局所決定の規則は、異なる施設または異なる専門家が、感染に対する異常な免疫応答を有するとして患者を同定する、または敗血症であるもしくは敗血症を発症するリスクが高いとして患者を同定するための異なる規則を確立することを可能にすることを認めることができる。局所決定の規則は、施設がアルゴリズムの特異度(起こり得る敗血症の多くのまたはすべての場合を包括的に同定する能力)、および感度(多くのまたはすべての非敗血性の場合を除外する能力)を適応して、それぞれ、偽陰性または偽陽性を減らすことを可能にする。多くのまたはすべての場合では、NNRBC-UMALS-SD、MDW、およびWBCのすべてが異常である場合、結果は異常としてフラグを立て、結果を使用して敗血症と同定する場合、患者は、敗血症を有するまたは敗血症を発症するリスクが高いとして同定されることが想定される。結果がすべて正常でもすべて異常でもない場合、決定の規則により、以下の表の各行における転帰Aまたは転帰Bのいずれかを適用する。
【表1】
【0065】
全体の結果が、異常としてアルゴリズム700により同定される場合、これは、別個の分析結果(例えば、敗血症を示したか?はい/いいえ)として提示され得る、または、臨床検査技師および/もしくは臨床家により再検討をもたらすフラグ(例えば、結果が感染に対する異常な免疫応答を示す、および/もしくは起こり得る敗血症を示すことを示しているレポート中の文字もしくは他の記号もしくは指標)として提示され得る。当然のことながら、一部の例では、アルゴリズム700は、いかなる決定の規則を適用することはできず、臨床検査技師および/または臨床家に細胞分析の結果を解明するように譲る。
【0066】
上述した通り、細胞分析の比較的新規の使用は、患者が、短期間(1週間またはそれ未満)、敗血症を有するか、または(類似の年齢の健康的な人と比較して)敗血症を発症するリスクが高い可能性の評価である。このような評価は、今のところ、白血球、または単球もしくは未成熟な顆粒細胞のような白血球の亜集団を中心としている。
しかし、本発明者らは、驚くべきことに、NNRBCに対するUMALSの測定値の標準偏差(NNRBC-UMALS-SD)もまた、敗血症を予測し得ることを見出した。図5に示す通り、NNRBC-UMALS-SDは、健康な患者と比較して敗血症の患者において顕著に異なり、全身性炎症反応症候群(SIRS)または感染を有するが敗血症ではない患者と区別可能である。
【0067】
図6は、AUC-ROC曲線であり、MDW、NNRBC-UMALS-SD、ならびに患者の敗血症の状態を評価するためにMDWおよびNNRBC-UMALS-SDを閾値に対して各々比較するモデルの関係を示す。このデータセットに基づいて、さらに下記に記載される通り、MDWおよびNNRBC-UMALS-SDを合わせるモデルは、およそ83%の場合で敗血症を他の状態と正確に区別することができるべきである。この分析は、図5とともに、EDへの提示の際に実行された鑑別できる全血球計算を有する、少なくとも12時間入院していた18~89歳の成人患者を含むピボタル臨床試験において収集されたデータに由来する。合計2,158名の対象が登録され、敗血症-2基準で対照(n=1,088)、全身性炎症反応症候群(SIRS)(n=441)、感染(n=244)、敗血症(n=385);および、敗血症-3基準で対照(n=1,529)、感染(n=386)、敗血症(n=243)に分類された。
【0068】
本発明者らが知る限り、対照と比較して、NNRBCのような敗血性集団から循環する細胞の不均一細胞集団における光散乱パラメーターの変化を調べた先行研究は存在しない。先行研究は、血液学的分析器を使用して、特定のリンパ球、単球、または好中球の細胞集団のような、敗血症の期間の特定の細胞の種類における光散乱の変化を調べた(Zonneveld R, Molema G, Plotz FB: Analyzing neutrophil morphology, mechanics, and motility in sepsis: options and challenges for novel bedside technologies. Crit Care Med 2016; 44: 218-228に概説)。細胞表面の顆粒状態について、敗血症と、任意の細胞の種類における細胞表面の顆粒状態との間に特定の相関関係を実証する仮説主導型の研究は存在しない。
【0069】
敗血症が、循環する細胞のいくつかの変化を起こすことが十分に立証されている。理論に束縛されることを望まないが、膜タンパク質および脂質組成物の変化、Na/Clポンプ濃度の変化、細胞の種類の比の変化、ならびに免疫細胞の活性化状態の変化は、光散乱に影響を及ぼし得る細胞の粒度の変化の潜在的な原因であり得る。これらの潜在的な生物学的な機構またはそれらの組合せのいずれも、NNRBCパラメーターにおける観察された光散乱の差異を起こし得る。それにもかかわらず、光散乱の測定値を得て、NNRBC-UMALS-SDのような特定の細胞集団パラメーターを計算することは、自然では起こらないプロセスを含む。本発明者らは、例えば血液スメアのスライドの再検討を介するNNRBCの粒度のヒトによって行われる目視試験が敗血症患者および非敗血症患者を区別するのに有用であることは示していない。粒度は、血液スメアの再検討を介して評価することができるが、主観的であり、標準化されない。標準偏差は、目視により評価することはできない。本研究では、平均のNNRBC UMALS測定値は、NNRBC-UMALS-SDと同様に敗血症患者を同定するのに効果的ではなく、細胞の比較的小さい試料での粒度に対するヒトの印象または推定が本目的では当てにならないことを示唆した。
【0070】
一部の例では、NNRBC-UMALS-SD基準範囲は、45に等しいもしくはそれより大きい、または43に等しいもしくはそれより大きい、または41.74に等しいもしくはそれより大きい、または41.5に等しいもしくはそれより大きい、または40に等しいもしくはそれより大きく、これらの閾値未満の値は、異常と考え得る、感染に対する異常な免疫応答に関連し得る、および/または、敗血症もしくは敗血症のリスクが高いことを示し得る。一部の例では、NNRBC-UMALS-SDは、WBCまたはMDWのような1つまたは複数の他のパラメーターと同様と考えられ得る。MDWに対して、19より大きい、または20より大きい、または21より大きい値は、患者が敗血症であるか、または敗血症を発症するリスクが高いことを示し得る。MDWは、収集されたシグナルに基づいて「チャネル」において測定されて、単球の体積を決定することができる。当然のことながら、単球の体積分布幅が異なって測定される場合、画像分析により、単位および正常範囲の両方を変更することができる。WBCに対して、4,000細胞/mm未満であるか、または12,000細胞/mmより多い値は、患者が敗血症であるか、または敗血症を発症するリスクが高いことを示し得る。当業者は、これらの範囲が例示的であり、使用される特定の測定方法ならびに測定を行うのに使用される特定のハードウェア(例えば光源、センシングハードウェア)に基づいて変化することは理解するであろう。一部の例では、これらのパラメーターの基準範囲だけでなく測定の単位は、使用されるトランスデューサーモジュールのデザインに基づいて変更することができる。これら3つの基準の2つまたはそれより多くを使用することで、これら3つの基準のうち1つのみの使用と比較して、敗血症の予測に対する細胞分析の感度および/または特異度を上昇させることができる。
【0071】
NNRBC-UMALS-SDは、単独でまたは他の細胞分析と組み合わせて、臨床家によるqSOFAおよび理学的検査(例えば、発熱、精神状態の変化、頻脈、頻呼吸、低血圧、または検出できない、もしくは細胞分析、血液化学、イムノアッセイもしくは他の臨床検査から検出できるか不確かであり得る他の症状を探すこと)のような評価を含む、ケアの現在の標準と併用して使用することができる。「敗血症-2」の共通定義を使用して、ケアの標準は、SIRSに対する患者の評価を含む。患者は、以下の基準の2つまたはそれより多くを満たす場合、SIRSを有すると考えられる:38℃より高いもしくは36℃より低い体温、毎分90拍(bpm)より多い心拍、毎分20呼吸(呼吸/分)より多い呼吸数、および、血液1マイクリットル当たり4,000(4,000/mm3)未満の白血球数(WBC)(白血球減少)または12,000/mm3より多い白血球数(白血球増加)。敗血症-2の下、患者が最低2つのSIRS基準および持続性感染(細菌、ウイルス、もしくは真菌)を満たす場合、患者は、敗血性と考えられる。「敗血症-3」の共通定義を使用して、ケアの標準は、逐次臓器障害評価(SOFA)または迅速なSOFA(qSOFA)を含む。qSOFAは、試験で陽性の結果となった各症状に対して1点とし、0~3点のスケールでスコア化する。これらの症状は、22呼吸/分より多い呼吸数、100mmHgより小さいまたはそれに等しい収縮期動脈血圧、および精神状態の変化である。qSOFAスコアが少なくとも2点である患者が24%の病院での死亡率を有し、患者の3%が2点未満のqSOFAスコアであることが決定された。典型的には、qSOFAスコアが少なくとも2点である場合、そのときは、患者は、完全なSOFA試験で評価される。SOFA試験は、0~24点のスケールでスコア化し、特定の臓器系(呼吸器、心臓血管、肝臓、腎臓、血液凝固、および中枢神経系)を評価することを含む。SOFAスコアも2点より大きいまたはそれに等しく、感染を有するまたは感染を有すると疑われる場合、そのときは、患者は、敗血症-3の下、敗血性と考えられる。一部の態様では、NNRBC-UMALS-SDは、WBCおよび/またはMDWのような他の細胞分析パラメーターを伴うまたは伴わずに使用して、ケアの標準が明確に診断とならない場合、患者の敗血症の状態へのさらなる洞察を提供することができる。例えば、敗血症-2基準の下、例えば血液培養を使用する感染を決定的に同定できないこと、または、例えば患者の状態が非常に悪く血液培養の結果までの数日を待てない場合の、感染を確認する試験を待つことができないこと、NNRBC-UMALS-SDは、敗血症の他の指標を断言するまたは敗血症を発症することにより、予防処置または高められた患者のモニタリング(例えば専門的なモニタリングのための入院)を開始することにおいて臨床的な信頼性を得ることができる。
【0072】
本明細書に開示される寸法および値は、記載された正確な数値に厳密に限定されると理解すべきではない。代わりに、別段特定されない限り、このような各寸法は、記載した値、および、本明細書に記載される検査法または検査法が明示的に開示されない場合の工業標準な検査法を使用して得られる測定値の再現性による少なくともばらつきを含む値周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味することを意図する。
【0073】
本明細書に引用されるすべての文献は、任意の相互参照または関連する特許もしくは出願を含むが、明示的に除外されない、または別段限定されない限り、その全体を参照により本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、これが本明細書に開示もしくは請求されるあらゆる発明に関する先行技術である、またはこれが、単独でもしくは任意の他の参照文献との任意の組合せで、任意のこのような発明を教示、示唆、もしくは開示することを承認するものではない。さらに、本文書における用語のあらゆる意味または定義が、参照により組み込まれる文献における同じ用語のあらゆる意味または定義と対立する程度まで、本文書における用語に与えられた意味または定義が適用される。
【0074】
本発明の特定の実施形態を図示し、説明している一方、様々な他の変更および修正が本発明の精神および範囲から逸脱することなく行うことができることは当業者には明らかであろう。したがって、添付の特許請求の範囲において、本発明の範囲内にあるこのような変更および修正のすべてを網羅することを意図している。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7