(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】グリピカン-3特異的変形アプタマー及びその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 15/115 20100101AFI20240927BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240927BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20240927BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240927BHJP
A61K 31/7072 20060101ALI20240927BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240927BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240927BHJP
C12Q 1/68 20180101ALN20240927BHJP
【FI】
C12N15/115 Z ZNA
A61K45/00
A61K31/7068
A61K31/7088
A61K31/7072
A61P35/00
A61P1/16
C12Q1/68
(21)【出願番号】P 2022526479
(86)(22)【出願日】2020-11-06
(86)【国際出願番号】 KR2020015536
(87)【国際公開番号】W WO2021091319
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-05-09
(31)【優先権主張番号】10-2019-0142363
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522179655
【氏名又は名称】アプタマー サイエンシズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APTAMER SCIENCES INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジョ ウン イ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨンドン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ダ ソム
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジョン キュン
(72)【発明者】
【氏名】リ,テギュン
(72)【発明者】
【氏名】リム,ソ リョン
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0136239(US,A1)
【文献】国際公開第2010/143714(WO,A1)
【文献】特表2017-517260(JP,A)
【文献】特表2017-506074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリピカン-3(Glypican-3、GPC3)に特異的に結合する核酸アプタマー及び抗癌剤を含む変形アプタマーであって
、配列番号7、及び配列番号20~配列番号25からなる群から選択されるいずれか一つの塩基配列を含
む、変形アプタマー。
【請求項2】
請求項
1に記載の変形アプタマーを有効成分として含む、肝癌予防または治療用薬学組成物。
【請求項3】
配列番号6
、配列番号10、配列番号11、及び配列番号13~配列番号
19からなる群から選択されるいずれか一つの塩基配列を含む、グリピカン-3に特異的に結合する核酸アプタマー。
【請求項4】
請求項
3に記載の核酸アプタマーを有効成分として含む、グリピカン-3検出用組成物。
【請求項5】
肝癌の診断または予後に必要な情報を提供するための、請求項
4に記載のグリピカン-3検出用組成物。
【請求項6】
請求項
4に記載の検出用組成物を含む、肝癌診断用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリピカン-3(Glypican-3、GPC3)特異的変形アプタマー及びそれを用いた肝癌の予防または治療に関する。
【背景技術】
【0002】
肝癌は、肝臓で一次的に発生した原発性の悪性腫瘍を総称する。そのうち、肝細胞に起源した「肝細胞癌」の比率が約77%、胆管癌が16%、それ以外の癌腫は稀で、肝癌は大部分肝細胞癌(Hepatocellular carcinoma, HCC)と見ることができる。肝細胞癌の主要原因は、慢性B型肝炎、慢性C型肝炎、肝硬変、アルコール肝疾患などである。
【0003】
肝癌は、大部分手術や組織検査なしに治療するため、組織サンプルを得るのが容易でなく、慢性肝炎や肝硬変の同伴など考慮すべき臨床データが他の癌腫に比べて多く臨床研究が容易ではないため、肝癌に関する研究は他の癌腫に比べて相対的に不十分であった。
【0004】
また、肝癌は、同伴疾患である慢性肝炎と肝硬変症を伴い、早期に周囲の血管を侵犯して急激に進行する腫瘍の生物学的特性により治療難易度が非常に高い。
【0005】
肝細胞癌の治療は、肝切除あるいは肝移植手術、局所治療、肝動脈化学塞栓術及びその他の頚動脈治療、放射線治療、全身治療などが施行される。全身治療は、リンパ節、肺などの肝臓外転移があって局所治療が不可能な患者を対象とし、複合抗癌療法が主に使われた。しかし、化学療法の客観的反応率は10%未満であることが伝えられ、生存期間を延長させるという証拠はなかった。
【0006】
それ以後、肝細胞癌が高度の血管性腫瘍という点が明らかになり、ネクサバール(成分名:ソラフェニブ)、レンビマ(成分名:レンバチニブ)のようにVEGFR(血管内皮細胞増殖因子受容体)を主要ターゲットとする分子標的治療剤が開発された。これは、進行・転移性肝癌での治療代案となった。
【0007】
しかし、初期には症状がほとんどないため、大部分が、癌が進行して症状が現れた後に治療が開始される肝癌の特性上、肝癌後期(Late-stage HCC)で効果的な治療方法が必要な実情であり、併せて、既存の治療剤に対する補助または新たな機序による治療方法が求められる。
【0008】
一方、グリピカン-3(Glypican-3、GPC3)は、細胞分裂と成長を調節するGPI(glycosyl-phosphatidylinositol)-固定HSPG(heparan sulfate proteoglycan)であり、グリピカンファミリーに属する。GPC3は、N末端サブユニット及びC末端サブユニットで構成され、Wnt信号経路、IGF、FGF媒介及びTGF-β2信号伝達に関与することが知られている。GPC3は、HCC特異的マーカーであり、これを標的とする抗癌剤が多数研究されている。
【0009】
現在、多数の製薬会社でGPC3に対するモノクローナル抗体(mAb)、ADS(antibody drug conjugates)及びCAR-Tcell(chimeric antigen receptor T-cell)などが開発中であり、現在、前臨床または臨床段階にある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】J Korean Med Assoc 2013 November; 56(11): 1001-1011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、現在までGPC3を用いた効果的なHCC標的抗癌剤は開発されずにいる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、新たな肝癌治療剤を開発するために多方面に努力した結果、目的とする肝癌細胞に特異的に薬物を伝達して抗癌効果を示す肝癌治療剤を開発することにより、本発明を完成した。
【0013】
本発明の一つの目的は、グリピカン-3(Glypican-3、GPC3)に特異的に結合する核酸アプタマー及び前記核酸アプタマーと結合した抗癌剤を含む、変形アプタマーを提供することにある。
【0014】
本発明のもう一つの目的は、前記変形アプタマーを有効成分として含む、肝癌予防または治療用薬学組成物を提供することにある。
【0015】
本発明のもう一つの目的は、前記核酸アプタマーを提供することにある。
【0016】
本発明のもう一つの目的は、前記核酸アプタマーを有効成分として含む、グリピカン-3検出用組成物を提供することにある。
【0017】
本発明のもう一つの目的は、肝癌の診断または予後に必要な程度を提供するために、検査対象体由来の生物学的試料からグリピカン-3の含量を検出する段階;前記含量検出結果を対照群試料のグリピカン-3の含量検出結果と比較する段階;及び前記対照群の試料と比較し、前記対象体由来試料の含量水準に変化がある場合、前記対象体を肝癌の診断または予後と関連付ける段階を含む、グリピカン-3を検出する方法を提供することにある。
【0018】
本発明のもう一つの目的は、グリピカン-3検出用組成物を含む、肝癌診断用キットを提供することにある。
【発明の効果】
【0019】
本発明のグリピカン-3特異的変形アプタマーは、グリピカン-3に特異的に結合して肝癌細胞に細胞内在化し、アプタマーに結合している抗癌剤を通じて抗癌活性を示すため、正常の肝細胞には影響なしにGPC3が発現された肝癌細胞のみに選択的抗癌効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】GPC3特異的アプタマーライブラリのタンパク質結合親和力を示した図である。NT#はヌクレオチドの数(長さ)を意味する。濃度別タンパク質において最も低い濃度2つは除いた。
【
図2】GPC3特異的アプタマーライブラリ中、2428-12-10(40mer)及びこの配列を一部切断した12-12(35mer)のタンパク質結合親和力を示した図である。
【
図3】ゲムシタビンが結合した12-10変形アプタマーの模式図である。2次元予測プログラム上、化学的置換の有無は表記されず、一般の塩基で表した。
【
図4】ゲムシタビンが結合した12-10変形アプタマーのタンパク質結合親和力を示した図である。
【
図5】ゲムシタビンが結合した12-10変形アプタマーの抗癌効果を示した図である。
【
図6】GPC3特異的アプタマーライブラリ中、2428-12-10(12-10)を多様な長さに切断して作製したアプタマーライブラリに対する細胞結合を示した図である。
【
図7】GPC3特異的アプタマーライブラリ中、2428-12-10(12-10)を多様な長さに切断して作製したアプタマーライブラリに対する細胞内在化を示した図である。
【
図8】ゲムシタビンが結合した12-12変形アプタマーの模式図である。2次元予測プログラム上、化学的置換の有無は表記されず、一般の塩基で表した。
【
図9】ゲムシタビンが結合した12-12変形アプタマーに対する細胞結合を示した図である。12-12は12-12アプタマー、SCはスクランブルされた12-12アプタマーである。
【
図10】ゲムシタビン3つが結合した変形アプタマー(12-12 G(3))に対する細胞内在化を示した図である。12-12は12-12アプタマー、SCはスクランブルされた12-12アプタマーである。
【
図11】ゲムシタビン3つが結合した変形アプタマー(12-12 G(3))に対する経時による細胞内在化を示した図である。12-12は12-12アプタマー、SCはスクランブルされた12-12アプタマーである。
【
図12】ゲムシタビン3つが結合した変形アプタマー(12-12 G(3))の濃度別(10nM~1μM)よる抗癌効果を示した図である。12-12は12-12アプタマー、Gemcitabineはゲムシタビン単独である。
【
図13】ゲムシタビン3つが結合した変形アプタマー(12-12 G(3))の濃度別(31.75nM~2μM)による抗癌効果を示した図である。12-12は12-12アプタマー、Gemcitabineはゲムシタビン単独である。
【
図14】アプタマー配列内の塩基の置換位置及び対象(Nap-dU、C3リンカー、2-F、2-0-Me)によるタンパク質結合親和力及び細胞結合を示した図である。
【
図15】タンパク質結合親和力及び細胞結合を考慮して化学的に最適化したアプタマー候補を選別した図である。
【
図16】化学最適化したアプタマーライブラリの細胞結合を示した図である。
【
図17a】化学最適化したアプタマーライブラリ(combi 1~5)の細胞内在化を示した図である。
【
図17b】化学最適化したアプタマーライブラリ(combi 6~10)の細胞内在化を示した図である。
【
図18】ゲムシタビンが結合した化学最適化したアプタマーライブラリに対するタンパク質結合親和力を示した図である。
【
図19】ゲムシタビンが結合した化学最適化したアプタマーライブラリに対する細胞結合を示した図である。
【
図20】化学最適化したアプタマーライブラリ(combi 1~3)に対する細胞内在化を示した図である。Controlは無処理、1212は12-12アプタマー、SCはスクランブルされた12-12アプタマーである。
【
図21】ゲムシタビンが3つまたは5つ結合した化学最適化したアプタマーライブラリ(combi 4)に対する細胞内在化を示した図である。Controlは無処理、1212は12-12アプタマー、SCはスクランブルされた12-12アプタマーである。
【
図22】ゲムシタビンが3つまたは5つ結合した化学最適化したアプタマーライブラリ(combi 5)に対する細胞内在化を示した図である。Controlは無処理、1212は12-12アプタマー、SCはスクランブルされた12-12アプタマーである。
【
図23】ゲムシタビンが3つまたは5つ結合した化学最適化したアプタマーライブラリ(combi 4~5)に対する抗癌効果を示した図である。
【
図24】ゲムシタビンが3つ結合した化学最適化したアプタマー(Combi 11 G(3))に対する抗癌効果を示した図である。
【
図25】ゲムシタビンが3つまたは5つ結合した化学最適化したアプタマーライブラリ(combi 4~5)のHep3Bに対する細胞周期を分析した図である。
【
図26】ゲムシタビンが3つまたは5つ結合した化学最適化したアプタマーライブラリ(combi 4~5)のHepG2に対する細胞周期を分析した図である。
【
図27】ゲムシタビンが3つまたは5つ結合した化学最適化したアプタマーライブラリ(combi 4~5)のA431に対する細胞周期を分析した図である。
【
図28】化学最適化したアプタマーライブラリ(12-12,combi 5 G(3))に対するマウス血清安定性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を具体的に説明すると次の通りである。一方、本発明で開示されたそれぞれの説明及び実施形態は、それぞれの異なる説明及び実施形態にも適用され得る。即ち、本発明で開示された多様な要素の全ての組合わせが本発明の範囲に属する。また、下記記述された具体的な記述により本発明の範囲は制限されない。
【0022】
前記目的を達成するための本発明の一の様態は、グリピカン-3(Glypican-3、GPC3)に特異的に結合する核酸アプタマー及び前記核酸アプタマーと結合した抗癌剤を含む、変形アプタマーを提供することにある。
【0023】
本発明において、用語「グリピカン-3」は、細胞分裂と成長を調節するGPI(glycosyl-phosphatidylinositol)-固定HSPG(heparan sulfate proteoglycan)であり、N末端サブユニット及びC末端サブユニットで構成され、Wnt信号経路、1GF、FGF媒介及びTGF-β2信号伝達に関与することが知られている。
【0024】
本発明において、用語「アプタマー」、または「核酸アプタマー」は「Chemical Antibody」であり、特定の化合物からタンパク質まで多様な種類の標的リガンドに高い特異度と親和度で結合できる特性を有する長さの短い(20~80個の塩基)単一鎖核酸分子を意味する。アプタマーはSELEX(Systematic evolution of ligands by exponential enrichment)を通じて生体外(In Vitro)で製造できる。前記「核酸アプタマー」は「アプタマー」に含まれ、前記「アプタマー」、または「核酸アプタマー」は混用され得る。
【0025】
アプタマーは、標的タンパク質に対してナノモル(nM)~フェムトモル(fM)水準の高い結合力と選択性を有するという点で抗体と類似の特性を有するオリゴ核酸分子とみなされる。一方、抗体と比較すると、アプタマーは次のような様々な長所を有している。(1)化学的合成が容易でかつ比較的小さく単純な分子であるため、様々な必要な変形が容易に可能であり、(2)SELEX過程を通じて選択性と親和度を極大化することができ、(3)化学的合成により作られるため、純度が高く、(4)機器分析を通じて作られた物質を同定することができ、(5)動物に注入して抗体を生成し難い毒素などに対するアプタマーの開発が可能であり、(6)熱に安定して室温で長期間の保存も可能であり、(7)生体内免疫反応(Immunogenicity)をほぼ引き起こさず、(8)一旦特定物質に特異的に結合するアプタマーを分離すれば、自動化したオリゴマー合成方法で低費用と一貫性で再生産が可能で経済的である。
【0026】
アプタマーの選別過程には、一般に、1014~1015個程度の互いに異なる配列、即ち、多様性を有するライブラリから一本鎖核酸プール(pool)を確保する過程が必要である。このための方法として様々な方法が用いられているが、一般に、非対称PCRを用いて一方の鎖のみを増幅させる方法、二本鎖核酸の一本鎖の終端部にビオチン(biotin)を付けた後、ストレプトアビジン(streptavidin)で取り囲んだビード(bead)を用いて一本鎖のみを選択的に分離する方法が最も多く用いられている。
【0027】
その後、確保したライブラリを標的分子に結合させて結合力の高いアプタマーを選び出す選択過程を行う。標的分子がタンパク質である場合には、通常、タンパク質に標識されたビオチンをストレプトアビジンビードを用いてプルダウン(Pull down)する。標的タンパク質と変形核酸ライブラリの結合を誘導した後、バッファで洗い落として標的タンパク質に結合していない変形核酸ライブラリを除去する。
【0028】
プレート(Plate)の場合も同様に、核酸ライブラリと標的タンパク質の結合を誘導した後、バッファで洗い落として標的タンパク質に結合しない核酸を除去する。このような方法を用いてリガンドに対して親和度を有するアプタマーを得ることができる。通常、5-15回の選別-増幅過程を繰り返すと、高い親和度を有するアプタマーを得ることができる。選別過程が終了すると、増幅した核酸をクローニングした後、個々のクローンから配列分析を通じてその配列を確認し、アプタマーを合成して標的分子との親和度及び結合力を測定する。
【0029】
本発明において、用語「標的分子」とは、本発明のアプタマーで検出できる物質を意味する。具体的には、前記標的分子は、分離された試料内に存在するもので、捕獲アプタマーが結合できるタンパク質、ペプチド、炭水化物、多糖類、糖タンパク質、ホルモン、受容体、抗原、抗体、ウイルス、補助因子(cofactor)、薬物、染料、成長因子及び規制物質(controlled substance)からなる群から選択される一つ以上のものであってもよいが、これに制限されない。本発明の目的上、前記標的分子は、グリピカン-3、そのリガンドまたはその受容体であってもよい。
【0030】
本発明の目的上、前記グリピカン-3に特異的に結合する核酸アプタマーは、配列番号1の変異体、即ち、配列番号1からなる塩基配列の変異体塩基からなるものであってもよいが、これに制限されない。
【0031】
本発明において、前記配列番号1は配列番号1の塩基配列前後への無意味な配列の追加または自然に発生し得る突然変異、あるいはその潜在性突然変異(silent mutation)を除くものではなく、配列番号1の塩基配列を含むポリヌクレオチドと互いに同一または対応する活性を有する場合であれば、本発明の配列番号1に該当することは当業者に自明である。具体的な例としては、本発明の配列番号1は、前記配列番号1の塩基配列またはこれと80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の相同性または同一性を有する塩基配列で構成されるポリヌクレオチドであってもよい。また、このような相同性または同一性を有し、前記アプタマーに対応する効能を示す塩基配列であれば、一部の配列が欠失、変形、置換または付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドも本出願の配列番号1の範囲内に含まれることは自明である。
【0032】
即ち、本発明において「特定配列番号で記載された塩基配列からなるポリヌクレオチド」と記載されていても、当該配列番号の塩基配列からなるポリヌクレオチドと同一あるいは対応する活性を有する場合であれば、一部の配列が欠失、変形、置換または付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドも本発明で用いられることは自明である。例えば、「配列番号1の塩基配列からなるポリヌクレオチド」は、これと同一あるいは対応する活性を有する場合であれば、「配列番号1の塩基配列からなるポリヌクレオチド」に属することは自明である。
【0033】
前記配列番号1の変異体は、前記配列番号1をなすヌクレオチドのいずれか一つ以上が化学的または物理的に変形(modification)された形態を含んでもよい。例えば、前記変異体は、配列番号1の塩基配列において一つ以上のヌクレオチドの切断;配列番号1の塩基配列において一つ以上のヌクレオチド内の塩基構造のピリミジン基の5番目の炭素位置でナフチル基への置換;一つ以上のヌクレオチドが糖と塩基を有さないリンカーへの置換;一つ以上のヌクレオチド内の糖の構造の2番目の炭素位置でOH基が-Methoxy(メトキシ)-F(fluorine、フッ素)またはMethoxyethyl(メトキシエチル)のいずれか一つ以上への置換;一つ以上のヌクレオチド内の塩基構造のピリミジン基の5番目の炭素位置でベンジル基への置換;からなる群から選択されるいずれか一つ以上の置換による変形を含むものであってもよい。
【0034】
前記ナフチル基は、下記化学式1で表されるものであってもよい。
【0035】
【0036】
前記リンカーは、下記化学式2で表されるものであってもよい。
【0037】
【0038】
前記ベンジル基は、下記化学式3で表されるものであってもよい。
【0039】
【0040】
具体的には、前記一つ以上のヌクレオチド内の塩基構造のピリミジン基の5番目の炭素位置でナフチル基への置換は、前記ピリミジン基の5番目の炭素位置で5-(N-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-ジオキシウリジン(5-(N-naphthylmethylcarboxyamide)-2’-deoxyuridine)への置換であってもよいが、これに制限されない。
【0041】
具体的には、前記「配列番号1の変異体」は、変異位置及び個数に限定されないため、配列番号6、配列番号6の変異体、及び配列番号10~19からなる群から選択されるいずれか一つであってもよいが、これに限定されない。また、前記グリピカン-3特異的核酸アプタマーは、配列番号1の変異体からなるものであってもよいため、配列番号6、配列番号6の変異体、及び配列番号10~19からなる群から選択されるいずれか一つであってもよいが、これに限定されない。
【0042】
また、前記グリピカン-3特異的アプタマーまたは変形アプタマーは、血清内の安定性の増進のために、5’末端、3’末端、または両末端がいずれも変形されて血清内の安定性が増強されたものであってもよい。前記変形は、5’末端、3’末端、または両末端にPEG(polyethylene glycol)、idT(inverted deoxythymidine)、LNA(Locked Nucleic Acid)、2’-メトキシヌクレオシド、2’-アミノヌクレオシド、2’F-ヌクレオシド、アミンリンカー、チオールリンカー、及びコレステロールなどからなる群から選択された1種以上が結合して変形したものであってもよい。具体的には、前記アプタマーの3’末端にidTを結合させたものであってもよいが、これに制限されない。
【0043】
本発明の目的上、前記グリピカン-3特異的アプタマーは、グリピカン-3に特異的に結合して細胞内在化を誘導できる。
【0044】
本発明において、用語、「変形アプタマー」とは、前述した核酸アプタマー及び抗癌剤を含むアプタマーを意味する。本発明の目的上、変形アプタマーは配列番号1の変異体からなる核酸アプタマー;配列番号6からなる核酸アプタマー;配列番号6の変異体からなる核酸アプタマー;または配列番号10~配列番号19のいずれか一つからなる核酸アプタマー及び抗癌剤を含む変形アプタマーであってもよいが、これに限定されない。具体的には、前記変形アプタマーは、配列番号2~配列番号5、配列番号7~配列番号9、及び配列番号20~配列番号25からなる群から選択されるいずれか1つ以上を含むものであってもよいが、これらに限定されない。
【0045】
本発明において、用語「抗癌剤」は、肺癌(例えば、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、悪性中皮腫)、中皮腫、膵臓癌(例えば、膵管癌、膵臓内分泌腫瘍)、咽頭癌、喉頭癌、食道癌、胃癌(例えば、乳頭腺癌、粘液性腺癌、腺扁平上皮癌)、十二指腸癌、小腸癌、大腸癌(例えば、結腸癌、直腸癌、肛門癌、家族性大腸癌、遺伝性非ポリポーシス大腸癌、消化管間質腫瘍)、乳癌(例えば、浸潤性乳管癌、非浸潤性乳管癌、炎症性乳癌)、卵巣癌(例えば、上皮性卵巣癌腫、精巣外胚細胞腫瘍、卵巣性胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍)、精巣腫瘍、前立腺癌(例えば、ホルモン依存性前立腺癌、ホルモン非依存性前立腺癌)、肝癌(例えば、肝細胞癌、原発性肝癌、肝外胆管癌)、甲状腺癌(例えば、甲状腺髄質癌腫)、腎臓癌(例えば、腎細胞癌腫)、腎盂と尿管の移行上皮癌腫、子宮癌(例えば、子宮頸癌、子宮体癌、子宮肉腫)、脳腫瘍(例えば、髓母細胞腫、神経膠腫、松果体星細胞腫瘍、毛様細胞性星細胞腫、びまん性星細胞腫、退形成性星細胞腫、下垂体腺腫)、網膜芽細胞腫、皮膚癌(例えば、基底細胞癌、悪性黒色腫)、肉腫(例えば、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、軟部組織肉腫)、悪性骨腫瘍、膀胱癌、血液癌(例えば、多発性骨髄腫、白血病、悪性リンパ腫、ホジキン病、慢性骨髄増殖疾患)、原発性不明癌など、末梢神経障害を副作用として引き起こす癌の予防剤及び治療剤を含む。前記抗癌剤の例としては、ゲムシタビン(Gemcitabine)(ゲムシタビン注)、シタラビン(Cytarabine)、カルボプラチン(Carboplatin)(パラプラチン)、シスプラチン(Cisplatin)(プラチノール、プラチノール-AQ)、クリゾチニブ(Crizotinib)(ザーコリ)、シクロホスファミド(Cyclophosphamide)(シトキサン、ネオサル)、ドセタキセル(Docetaxel)(タキソテレール)、ドキソルビシン(Doxorubicin)(アドリアマイシン)、エルロチニブ(Erlotinib)(タルセバ)、エトポシド(Etoposide)(ベプシド)、フルオロウラシル(5-fluorouracil,5-FU)、イマチニブメシレート(Imatinib mesylate)(グリベック)、イリノテカン(irinotecan)(カンプトサール)、リポソーム-カプセル化ドキソルビシン(ドキシル)、メトトレキサート(Methotrexate)(ポレックス、メキセート、アメトプテリン)、パクリタキセル(Paclitaxel)(タキソール、アブラキサン)、ソラフェニブ(Sorafenib)(ネクサバール)、スニチニブ(Sunitinib)(スーテント)、トポテカン(Topotecan)(ハイカムチン)、トラベクテジン(Trabectedin)(ヨンデリス)、ビンクリスチン(Vincristine)(オンコビン、ビンカサルPFS)、及びビンブラスチン(Vinbrastine)(ベルバン)などがあるが、これに限定されず、公知の抗癌剤であれば制限なく使用することができる。具体的には、前記抗癌剤は、ゲムシタビン、シタラビン、カルボプラチン、シスプラチン、クリゾチニブ、シクロホスファミド、ドセタキセル、ドキソルビシン、エルロチニブ、エトポシド、フルオロウラシル、イマチニブメシレート、イリノテカン、リポソーム-カプセル化ドキソルビシン、メトトレキサート、パクリタキセル、ソラフェニブ、スニチニブ、トポテカン、トラベクテジン、ビンクリスチン、及びビンブラスチンからなる群から選択されるいずれか一つ以上であってもよく、より具体的にはゲムシタビンであってもよいが、これに限定されない。
【0046】
前記抗癌剤は、前記核酸アプタマーに1個以上結合するものであってもよく、具体的には、2個以上結合するものであってもよく、より具体的には3個以上結合するものであってもよいが、これに制限されない。
【0047】
前記抗癌剤は、前記核酸アプタマーの5’末端、3’末端または両末端のいずれか一つ以上の末端に共有結合、イオン結合、金属結合、ファンデルワールス結合及び水素結合のいずれか一つ以上の化学結合を通じて結合したり、前記アプタマーの塩基配列内の一つ以上の塩基が置換されて結合したものであってもよいが、これに制限されない。
【0048】
本発明の目的上、前記変形アプタマーは、核酸アプタマーの塩基配列内の一つ以上の塩基が抗癌剤に置換されて結合したものであってもよく、例えば、核酸アプタマーの塩基配列内の一つ以上のシトシンまたはグアニンが抗癌剤に置換されて結合したものであってもよい。
【0049】
具体的には、前記抗癌剤は、前述した前記核酸アプタマーの末端またはアプタマー内の置換される塩基一つの位置に2個以上が連続して結合したものであってもよく、2個以上連続して結合時に、抗癌剤間は共有結合、イオン結合、金属結合、ファンデルワールス結合及び水素結合のいずれか一つ以上の化学結合を通じて結合されてもよいが、これに制限されない。
【0050】
また、前記抗癌剤は、前記核酸アプタマーの塩基配列内の独立して存在する1個以上の塩基が置換されて結合したものであってもよく、2個以上の塩基が置換されて結合したものであってもよい。
【0051】
前記独立して存在する2個以上の塩基が置換された場合には、抗癌剤が連続または不連続で置換されてもよく、抗癌剤が不連続に置換された場合には、前記抗癌剤間の化学結合はなされないこともあるが、これに制限されない。
【0052】
前述したように核酸アプタマーの塩基配列内の一つ以上の塩基が抗癌剤で置換された変形アプタマーは、核酸アプタマーと同様にグリピカン-3に特異的に結合可能であり、核酸アプタマーの末端に抗癌剤が結合した変形アプタマーに比べて生体内で抗癌剤が安定して存在し、グリピカン-3を発現する肝癌細胞に内在化後にアプタマーが分解されて抗癌剤が放出されることにより癌細胞特異的抗癌効果を示すようになるため、抗癌剤の無作為的なアポトーシス及びこれによる副作用を防止し、癌細胞選択的なアポトーシスがなされる。
【0053】
本発明において、前記グリピカン-3特異的アプタマーは、配列番号2~配列番号25からなる群から選択されるいずれか一つの塩基配列を含むものであってもよいが、これに制限されない。具体的には、前記グリピカン-3特異的核酸アプタマーは、配列番号6及び配列番号10~配列番号19からなる群から選択されるいずれか1つの塩基配列を含むものであってもよいが、これに限定されない。
【0054】
本発明において、前記変形アプタマーは、前記核酸アプタマーを含むものであってもよく、配列番号2~配列番号5、配列番号7~配列番号9、及び配列番号20~配列番号25からなる群から選択されるいずれか一つの塩基配列を含むものであってもよいが、これに限定されない。
【0055】
本発明のもう一つの様態は、本発明の変形アプタマーの製造方法を提供することである。
ここで用いられる用語は前述した通りである。
【0056】
本発明による変形アプタマーは、当業界において公知となった方法で製造することができ、例えば、一般的なオリゴヌクレオチド合成方法、核酸アプタマーと抗癌剤とを反応させる方法などにより製造できるが、これに制限されない。
【0057】
前記オリゴヌクレオチド合成方法は、具体的には、核酸アプタマーの合成時に抗癌剤を塩基の代わりに添加してアプタマー配列内の抗癌剤を含む変形アプタマーを製造するものであってもよいが、これに制限されない。
【0058】
前記核酸アプタマーと抗癌剤を反応させる方法は、具体的には、グリピカン-3に特異的に結合するアプタマー塩基配列を有する核酸アプタマーを準備するアプタマー準備段階;及び前記核酸アプタマーと抗癌剤を反応させて変形アプタマーを形成する変形アプタマー形成段階を含んでなるものであってもよい。前記変形アプタマーの形成段階は、例えば、核酸アプタマーにアセトニトリル(acetonitrile)で溶解させた抗癌剤と活性剤(activator)を添加して数分間反応させるものであってもよいが、これに制限されない。
【0059】
本発明のもう一つの様態は、本発明の変形アプタマーを有効成分として含む、肝癌予防または治療用薬学組成物を提供することである。
【0060】
ここで用いられる用語は前述した通りである。
【0061】
本発明の薬学組成物は、肝癌の「予防」(prevention)及び/または「治療」(treatment)の用途を有する。予防的用途において、本発明の薬学組成物は、本発明に記載の疾患、障害、または状態を有するか、または発病の危険性があると疑われる個体に投与される。すなわち、肝癌の発病の危険性がある個体に投与することができる。治療用途において、本発明の薬学組成物は、本発明に記載の障害を既に発症している患者のような個体に本発明に記載の疾患、障害、または状態の症状を治療するか、または少なくとも部分的に停止させるために十分な量で投与される。そのような使用に有効な量は、疾患、障害または状態の重症度及び経過、以前の治療、個体の健康状態と薬物に対する反応性、ならびに医師または獣医の判断にかかっているものである。
【0062】
本発明の薬学組成物の製造に通常用いる適切な担体、賦形剤または希釈剤をさらに含むことができる。この時、前記組成物に含まれる有効成分の含量は特にこれに制限されないが、組成物の全重量に対して0.0001重量%~10重量%であり、望ましくは0.001重量%~1重量%を含んでもよい。
【0063】
前記薬学組成物は、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、油剤、凍結乾燥剤及び坐剤からなる群から選択されるいずれか一つの剤形を有することができ、経口または非経口の様々な剤形であってもよい。製剤化する場合には、普通用いる充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いて調剤される。経口投与のための固形製剤には錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は一つ以上の化合物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混ぜて調剤される。また、単純な賦形剤以外にステアリン酸マグネシウム、タルクなどのような潤滑剤も用いられる。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、よく用いられる単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に種々の賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれてもよい。非経口投与のための製剤としては、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが用いられる。坐剤の基剤としては、ウィテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが用いられる。
【0064】
本発明の組成物は、個体に薬学的に有効な量で投与できる。
【0065】
本発明において用語、「薬学的に有効な量」とは、医学的治療に適用可能な合理的な受恵/リスクの比率で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量の水準は個体の種類及び重症度、年齢、性別、疾病の種類、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時に用いられる薬物を含む要素及びその他医学分野においてよく知られている要素により決定されてもよい。本発明の組成物は、個別治療剤として投与したり、他の治療剤と併用して投与されてもよく、従来の治療剤とは順次的または同時に投与されてもよい。そして単一または多重投与されてもよい。前記要素をいずれも考慮して副作用なしに最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、当業者により容易に決定され得る。本発明の組成物の好ましい投与量は、患者の状態及び体重、疾病の程度、薬物の形態、投与経路及び期間によって異なり、投与は1日に1回投与することもでき、数回に分けて投与することができる。前記組成物は、肝癌の予防または治療を目的とする個体であれば、特に限定されず、いずれのものにも適用可能である。投与の方式は、当業界の通常の方法であれば、制限なく含む。例えば、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳血管内注射により投与され得る。
【0066】
本発明の薬学組成物が、肝癌が発病して進行したり、発病し得る可能性が高い個体に投与され、肝癌の発生を防止したり発生の程度を緩和することができる。
【0067】
本発明の薬学組成物において、有効成分であるグリピカン-3特異的変形アプタマーは、薬学組成物内に100nM~500nMの濃度で含まれてもよい。前記濃度範囲より低い濃度では肝癌細胞に対するグリピカン3選択的抗癌効果が示されるのに十分ではないことがあり、前記濃度範囲より高い濃度では表皮癌細胞に対して細胞毒性を示すことがある。
【0068】
本発明のもう一つの様態は、グリピカン-3特異的アプタマーを含む組成物を個体に投与する段階を含む、肝癌の予防または治療方法を提供することである。
【0069】
ここで用いられる用語は前述した通りである。
【0070】
本発明において「個体」とは、肝臓癌が発病しているか、発病し得るヒトを除く全ての動物を意味し、本発明の薬学組成物を肝癌の疑わしい個体に投与することにより、個体を効率的に治療することができる。
【0071】
本発明において用語、「投与」とは、任意の適切な方法で肝癌の疑わしい個体に本発明の薬学組成物を導入することを意味し、投与経路は目的の組織に到達できる限り、経口または非経口の多様な経路を通じて投与されてもよい。
【0072】
本発明の薬学組成物は薬学的に有効な量で投与でき、前記薬学的に有効な量は前述した通りである。
【0073】
本発明の薬学組成物は、肝癌を予防または治療を目的とする個体であれば特に限定されず、いずれのものにも適用可能である。例えば、サル、犬、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウス、牛、羊、豚、ヤギのような非ヒト動物、鳥類及び魚類などいずれのものにも用いることができ、前記薬学組成物は、非経口、皮下、腹腔内、肺内及び鼻腔内に投与され得、局部的治療のために、必要であれば病変内への投与を含む適した方法により投与され得る。本発明の前記薬学組成物の好ましい投与量は、個体の状態及び体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路及び期間によって異なるが、当業者により適宜選択され得る。例えば、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳血管内注射により投与され得るが、これに制限されるものではない。
【0074】
本発明の薬学組成物の適した総1日使用量は、正しい医学的判断の範囲内で処置医により決定されてもよく、一般に、0.001~1000mg/kgの量、望ましくは0.05~200mg/kg、より望ましくは0.1~100mg/kgの量を一日1回~数回に分けて投与できる。
【0075】
本発明のもう一つの様態は、配列番号2~配列番号25からなる群から選択されるいずれか一つの塩基配列を含む、グリピカン-3に特異的に結合する核酸アプタマーを提供することである。
【0076】
ここで用いられる用語は前述した通りである。
【0077】
本発明のもう一つの様態は、本発明の核酸アプタマーを有効成分として含む、グリピカン-3検出用組成物を提供することである。
【0078】
本発明のグリピカン-3検出用組成物は、前述した核酸アプタマー以外にも核酸アプタマーの安定した保管及び保存のための当業界に公知となった担体及び/又は保存剤、安定剤などを含んでもよい。
【0079】
また、前記核酸アプタマーには検出可能な標識が付着されてもよい。アプタマーに検出可能な標識を付着させることにより、標的分子とアプタマーの結合有無及び結合程度を容易に観察及び測定することが可能である。前記検出可能な標識は、当業界に知られた検出方法により検出され得るモイエティであってもよく、特に限定されない。前記検出可能な標識は、例えば、発色酵素(ペルオキシダーゼ(peroxidase)、アルカリフォスファターゼ(alkalinephosphatase)等)、蛍光物質(FITC、RITC、ローダミン(rhodamine)、テキサスレッド(Texas Red)、フルオレセイン(fluorescein)、フィコエリスリン(phycoerythrin)、量子ドット(quantum dots))、クロモフォア(chromophore)、シアニン(Cyanine)及び放射性同位元素(124I,125I,111In,99mTc,32P,35S等)で構成された群から選択される少なくともいずれか一つであってもよいが、これに制限されず、具体的には、前記アプタマーの5’末端にCy5を結合させたものであってもよ
い。
【0080】
前記検出用組成物は、器官、組織、細胞をはじめとして、標的分子、標的分子を含む標的物質を検出することができ、具体的には、癌細胞または腫瘍と連関して発現される標的物質を検出でき、より具体的には、肝癌と連関して発現されるグリピカン-3を含む標的物質を検出できるが、これに制限されない。
【0081】
即ち、前記検出用組成物は、グリピカン-3イメージング用のものであってもよいが、これに制限されない。
【0082】
また、前記検出用組成物は細胞内の蛍光を測定して細胞を検出でき、この時、前記細胞はグリピカン-3を発現する細胞であってもよく、より具体的にグリピカン-3を発現する癌細胞であってもよい。前記癌細胞は、例えば、肝癌細胞であってもよいが、これに制限されない。
【0083】
即ち、前記検出用組成物は、グリピカン-3をイメージングして肝癌を診断するものであってもよいが、これに制限されない。
【0084】
本発明のもう一つの様態は肝癌の診断または予後に必要な程度を提供するために、検査対象体由来の生物学的試料からグリピカン-3の含量を検出する段階;前記含量検出結果を対照群試料のグリピカン-3の含量検出結果と比較する段階;及び前記対照群試料と比較して、前記対象体由来試料の含量水準に変化がある場合、前記対象体を肝癌の診断または予後と関連付ける段階を含む、グリピカン-3を検出する方法を提供することである。
【0085】
ここで用いられる用語は前述した通りである。
【0086】
前記試料は個体から分離された細胞、血液、体液または組織を含むものであってもよく、グリピカン-3を含むものであってもよいが、これに制限されない。
【0087】
前記グリピカン-3検出に必要な情報を提供する方法は、本発明のアプタマーを含む検出用組成物を試料と接触させ、前記アプタマー及び試料内グリピカン-3の複合体形成を確認することによりグリピカン-3を検出し、グリピカン-3の検出に必要な情報を提供することであってもよいが、これに制限されない。
【0088】
前記アプタマー及びグリピカン-3の複合体の形成は、当業界に公知となった方法、例えば、比色法(colorimetric method)、電気化学法(electrochemical method)、蛍光法(fluorometric method)、発光法(luminometry)、粒子計数法(particle counting method)、吸光法(absorbance measurement)、分光法(spectrometric method)、ラマン分光法(Raman spectroscopic method)、表面プラズモン共鳴法(surface plasmon resonance method)、干渉計法(interferometric method)、肉眼測定法(visual assessment)、閃光計測法(scintillation counting method)、または酵素免疫測定法(Enzyme-Linked Aptamer Sorbent Assay)により確認することができるが、これに制限されない。
【0089】
本発明のもう一つの様態は、グリピカン-3検出用組成物を含む、肝癌診断用キットを提供することである。
【0090】
ここで用いられる用語は前述した通りである。
【実施例】
【0091】
以下、本発明を実施例により、より詳細に説明する。しかし、これら実施例は本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれら実施例により制限されるものではなく、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者にとって明白なものである。
【0092】
実施例1.GPC3特異的アプタマーの選別
1-1.タンパク質結合親和力(binding affinity)の分析
GPC3に特異的であると予想されるアプタマーライブラリ7つ[2428-12-09、2428-12-10、2428-12-11、2424-30-01、2424-30-05、2424-30-06、2424-30-07、計40 mer]の中でGPC3に最も特異的に結合するアプタマーを選別するために、RI(Registered Importer)標識を通じたタンパク質結合アッセイ(binding assay)を行った。具体的には、各候補アプタマー配列のオリゴヌクレオチド3’部分にRI標識及び非標識のオリゴヌクレオチド部分を除去するために、プレートにα-32P 0.25μl、末端デオキシヌクレオチド転移酵素(DNA nucleotidylexotransferaseまたはterminal transferase) 0.25μl、10X NEB 緩衝液1μl(New England Biolabs,USA)、CoCl2 1μl、鋳型(アプタマー配列)7.5μl(計10μl)を入れてホイル(Foil)でプレートを封止した後、37℃で30分間インキュベーションした(酵素インキュベーション)。再度70℃で10分間インキュベーションした後(酵素インキュベーション)、インキュベーションした各試料を30μlの蒸溜水で希釈した。マイクロスピン(Microspin)G-50カラムの下部を除去し、チューブ(tube)を被せた。800rcfで1分間回転させた後、チューブを除去した。レジン(resin)に試料を入れて常温で、800rcfで2分間回転させた。
【0093】
RI標識及び非標識のオリゴヌクレオチド部分が除去されたアプタマーを100μ1の1X SB18T0,05で20,000cpmまで希釈した。95℃で5分間、続いて、37℃で15分間アプタマーを加熱及び冷却させた。タンパク質(GPC3)100nMを4.64倍に段階希釈(serial dilution)して計8ポイントで各ウェルに30μlずつ添加した。加熱及び冷却が終わったアプタマーに200μlの1X SB18T0.05を添加した後、これを各ウェルに30μlずつ入れて計60μlになるようにした。アプタマー2μlを対照群(input control)としてナイロンフィルタに落とした。37℃で30分間インキュベーションした。インキュベーションの間、1X SB18T0.05 30μlをフィルタプレートに予め入れた。インキュベーション後にゾルバックス(Zorbax)レジンを5.5μl入れ、1400rpmで1分間反応させた。ゾルバックス-タンパク質-アプタマー(Zorbax-protein-aptamer)をフィルタプレートに入れて吸引(suction)した後、1X SB18T0.05 200μlで洗浄した。ナイロンフィルタを露出させ、フィルタプレートをホスフォイメージャー(phosphorimager)で17時間一晩中スクリーニングした。スクリーンを分析し、各タンパク質濃度による結合程度を導き出した(percentage bound値)。
【0094】
その結果、
図1のようにタンパク質濃度が高いほど多くのアプタマーが結合したことが示され、候補中、2428-12-10が最大結合能力(maximum binding capacity,Bmax)0.79、解離定数(dissociation constant,Kd)1.50で最も優れた結合力を示した。
【0095】
最も優れた結合力を示した2428-12-10(以下、12-10と命名、40mer、配列番号1)アプタマー及びこの配列を一部切断した12-12(35mer)アプタマーに対する結合親和力を前記方法で確認した。具体的には、GPC3にシアニン5(Cy5)NHSエステル(GE Healthcare, Little Chalfont,UK)を結合させてGPC3-Cy5を製造した。Cy5の合成は、一般的なオリゴヌクレオチド合成と同様の方法で合成した。合成された最終粉末に最小量の水(約50μl)を添加して再懸濁し、その後、GPC3-Cy5 100nMを4.64の段階に段階希釈し、各タンパク質濃度による結合程度を導き出した。
【0096】
その結果、
図2のようにタンパク質の濃度が高いほど多くのアプタマーが結合したことが示され、12-10と12-12のKd値が同様に示されたことを確認した。
【0097】
1-2.GPC3特異的アプタマー及び変形アプタマーのタンパク質結合親和力の分析
12-10(40mer)アプタマーに抗癌剤が結合した変形アプタマーを製造した。変形アプタマーはオリゴヌクレオチド合成方法を用いて製造し、オリゴヌクレオチド合成時にアプタマー配列内の塩基2つが抗癌剤[ゲムシタビン、gemcitabine(2’,2’-difluoro 2’deoxycytidine)]で置換されるようにして変形アプタマーを形成させた。この時、ゲムシタビンが置換される位置は、ゲムシタビンが置換されてもアプタマーの構造形成に影響がない位置を予測して塩基配列CまたはGの中から選定した後、3’末端、ループ(Loop)、5’末端(end)または塩基対(Pair)の部分にゲムシタビンが2つずつそれぞれ置換されて結合した12-10 G(2)アプタマー(配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5)(
図3)を製造した(
図3)。前記アプタマー配列は下記表1の通りであった。
【0098】
【0099】
前記配列においてnで示される塩基は、ジオキシウリジンのピリミジン基の5番目の炭素位置にベンジル基が導入された塩基(BzdU)であり、前記化学式3で表される。Sで表される塩基はゲムシタビンが置換された塩基である。
【0100】
その後、製造された12-10 G(2)変形アプタマー(配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5)及び対照群として12-10に対して実施例1-1の方法によりタンパク質結合親和力を分析した。
【0101】
その結果、
図4のようにゲムシタビンの位置に応じて結合親和力が変わることを確認することができた。この結果により塩基対の部分と5’末端はゲムシタビンで置換される場合、タンパク質との結合力に影響を与える位置であることを確認した。
【0102】
1-3.GPC3特異的アプタマー及び変形アプタマーの抗癌効能の分析
12-10 G(2)変形アプタマー100μM(配列番号2、配列番号3)及び対照群として無処理群(12-10)、ゲムシタビンの数を合せるために2倍の濃度である200nMのゲムシタビンを単独処理したゲムシタビン処理群が肝細胞に選択的抗癌効能を示すかを確認するために、細胞毒性を分析した。具体的には、Huh-7細胞(ATCC,Rockville,MD,USA)を96ウェルプレートに1x10
4/mlでシーディングし、10% FBS (Gibco,Grand Island,NY,USA)と1%の抗生剤(ペニシリン/ストレプトマイシン)が含まれたDMEM(Gibco,Grand Island,NY,USA)培地を用いて5% CO
2、37℃の条件下に培養した。翌日、アプタマーストック(100μM)を5X SB18緩衝液と混合して80μMに製造した後、95℃で5分加熱し、常温で15分間以上冷却した。培養した細胞から培地を除去し、無血清培地100μlを添加した後、37℃で1時間5% CO
2の条件で培養した。無血清培地を除去した後、1X PBS 100μlで洗浄した。KRPH緩衝液100μlを添加し、37℃で1時間5% CO
2の条件で培養した。アプタマーを所望の濃度の2倍になるようにKRPH緩衝液で希釈した後、1Xになるように96ウェルプレートに添加して37℃で4時間5% CO
2の条件で培養した。アプタマー処理後にKRPH緩衝液を除去して後、培養培地100μlを入れて37℃で3日間5% CO
2の条件で培養した。6日後にCCK-8(Cell Counting Kit-8)キット溶液10μlずつを各ウェルに入れた後、37℃で3時間5% CO
2の条件で培養した。マイクロプレートリーダで450nMでアポトーシスの水準を測定した。
[0103]
その結果、
図5のように3’末端とループ部分に結合した複合体のアポトーシス効能はほぼ同様に示され、ゲムシタビンによる抗癌効能が十分に示されることを確認することができた。
[0104]
実施例2.長さ最適化したGPC3特異的アプタマーの選別
2-1.細胞結合(cell binding)の分析
12-10アプタマー及び12-10アプタマーを多様な長さに切断して製作したアプタマーライブラリ5つ[12-10(40mer)、12-12(35mer)、12-11(29mer)、12-13(24mer)、12-14(23mer)、12-15(18mer)]に対して細胞結合力を分析した。各アプタマー配列は、実施例1-1の方法により5’末端にCy5を標識した。100mm
2の培養皿にHuh-7細胞(ATCC,Rockville,MD,USA)2x10
6/mlをシーディングし、10% FBS(Gibco,Grand Island,NY,USA)と1%の抗生剤(ペニシリン/ストレプトマイシン)が含まれたDMEM培地(Gibco,Grand Island,NY,USA)を用いて5% CO
2、37℃の条件下で培養した。アプタマーストック5μMと5X SB18緩衝液を混合してアプタマー4μMを作った後、95℃で5分間加熱し、常温で15分間以上冷却した。アプタマー4μMをKRPH緩衝液(HEPES 20mM,KH
2PO
4 5mM,MgSO
4 1mM,CaCl
2 1mM,NaCl 136mM,KCl 4.7mM,pH 7.4)で、25nMに希釈した。培養した細胞の培養液を除去し、PBS(Phosphate-buffered saline)4mlを入れて洗浄後にPBS4mlを除去した。再度冷たいPBSまたは温かいPBS 4mlを入れてスクレーパー(scraper)で細胞を掻き取り、それぞれチューブに集めた後、ピペッティング(pipetting)した。試料の数だけFACs(Fluorescence-activated cell sorting)チューブに分けて添加した後、4℃で2000rpm、4分間遠心分離した。上清を除去した後、KRPH緩衝液15mlに25nMアプタマー及び対照群(31-08(40mer)アプタマー)をそれぞれ500μlずつ入れてピペッティングした。ホイルでチューブの外側を包んで光を遮断した後、4℃で30分間インキュベーションした。インキュベーション後、4℃で2000rpm、4分間遠心分離し、上清を除去した。冷たい1x PBS 2mlを入れて洗浄し、4℃で2000rpm、4分間遠心分離し、上清を除去する過程を3回繰り返した。3回目で上清除去後、1~2mlのFACs緩衝液(1% BSA,1X PBS)に入れてFACsチューブに移して氷上に置いた。650-670nmでCy5を測定した。
[0105]
その結果、
図6のように12-12(35mer)の細胞結合力が最も優れていることを確認した。
[0106]
2-2.細胞内在化(internalization)の分析
12-10アプタマーを多様な長さに切断して製作したアプタマー5つ[12-12(35 mer),12-11(29 mer),12-13(24 mer), 12-14(23 mer)及び12-15(18 mer)]に対して細胞内在化を分析した。具体的には、6ウェルプレートを準備し、丸いカバーガラス(cover glass)を6ウェルプレート内に置いた。実施例1-3の方法によりHuh-7細胞を6ウェルプレートに培養した。アプタマーストック5μMと5X SB18緩衝液を混合してアプタマー4μMを作った後、95℃で5分間加熱し、常温で15分間以上冷却した。翌日、培養した細胞から培地を除去した後、無血清培地を入れて37℃で1時間5% CO
2の条件で培養した。無血清培地を除去し、1X PBS2mlを入れて洗浄した。KRPH緩衝液を入れて37℃で1時間5% CO
2の条件で培養した。4μMのアプタマーを25nMになるように希釈した後、37℃で1時間または4時間5% CO
2の条件で培養した。1X PBS2mlで3回繰り返して洗浄した。洗浄は、攪拌機(shaker)で光を遮断した状態で、常温で10分間行った。その後、4℃で10分間4%のパラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)を処理して固定した。1X PBS2mlを用いて3回繰り返して洗浄した。透過化(Permeabilization)溶液(0.2% Triton X-100 in 1X PBS)を入れて常温で15分間インキュベーションした後、1X PBS2mlで3回繰り返して洗浄した。ブロッキング(Blocking)溶液(3% BSA,1X PBS)を入れて37℃で20分間5% CO
2の条件でインキュベーションした。1X PBS2mlで1回洗浄した。150nMのリソトラッカー(Lysotracker)を含むブロッキング(Blocking)溶液を処理した後、37℃で1時間5% CO
2の条件でインキュベーションした。1X PBS2mlで3回繰り返して洗浄し、DAPI(4’,6-diamidino-2-phenylindole)染色した。カバーガラスを慎重に取り外してマニキュア処理した。
【0103】
その結果、
図7のように12-12(35mer)の細胞内在化が最も優れていることを確認した。
【0104】
2-3.GPC3特異的アプタマー及び変形アプタマーの細胞結合及び細胞内在化の分析
GPC3に対する結合親和力、細胞結合及び細胞内在化が優れていることが確認された12-12(35mer)アプタマーに実施例1-2の方法により抗癌剤を結合させ、ゲムシタビンが3、5、7個ずつそれぞれ置換されて結合した12-12 G(3)、12-12 G(5)、12-12 G(7)アプタマー(配列番号7、配列番号8、配列番号9)を製造した(
図8)。各ライブラリの3’末端にはidTが付着されて合成された。
【0105】
その後、12-12 G(3)、12-12 G(5)、12-12 G(7)アプタマー及び対照群として無処理群(3’末端にidTが付着された12-12、配列番号6)、12-12-Cy5、スクランブルされた12-12(Scrambled 35mer)に対して実施例2-1の方法により細胞結合を分析した。前記アプタマー配列は下記表2の通りであった。
【0106】
【0107】
前記配列おいてnで表される塩基は、ジオキシウリジンのピリミジン基の5番目の炭素位置にベンジル基が導入された塩基(BzdU)であり、前記化学式3で表される。Sで表される塩基はゲムシタビンが置換された塩基である。
【0108】
その結果、
図9のようにゲムシタビン3つが結合した変形アプタマーが最も優れた細胞結合を示すことを確認した。
【0109】
また、ゲムシタビン3つが結合した変形アプタマー12-12 G(3)及び対照群として12-12アプタマー、スクランブルされた12-12(SC)に対して実施例2-2の方法により細胞内在化を分析した。
【0110】
その結果、
図10のようにゲムシタビン3つが結合した変形アプタマー12-12 G(3)の細胞内在化が優れていることを確認し、
図11のように内在化開始後、1、2、4時間後、確認した結果でもゲムシタビン3つが結合した変形アプタマー12-12 G(3)の細胞内在化が優れていることを確認した。
【0111】
本実施例の結果においてゲムシタビンの数が増加するほど細胞結合力が低くなることを確認した。
【0112】
2-4.GPC3特異的アプタマー及び変形アプタマーの抗癌効能の分析
タンパク質結合親和力、細胞結合及び細胞内在化が優れていることが確認された変形アプタマー12-12 G(3)及び対照群として無処理群、12-12単独、ゲムシタビン単独が肝癌細胞及び表皮癌細胞に対してGPC3選択的抗癌効能を示すかを確認するために、細胞毒性を分析した。具体的には、HepG2、Hep3B及びA431細胞(ATCC,Rockville,MD,USA)を96ウェルプレートに1x104/mlでシーディングし、10% FBS(Gibco,Grand Island,NY,USA)と1%の抗生剤(ペニシリン/ストレプトマイシン)が含まれたDMEM(Gibco,Grand Island,NY,USA)培地を用いて5% CO2、37℃の条件下に培養した。翌日、アプタマーストック(100μM)を5X SB18緩衝液と混合して80μMで製造した後、95℃で5分間加熱し、常温で15分間以上冷却した。培養した細胞から培地を除去し、無血清培地100μlを添加した後、37℃で1時間5% CO2の条件で培養した。無血清培地を除去した後、1X PBS 100μlで洗浄した。KRPH緩衝液100μlを添加し、37℃で1時間5% CO2の条件で培養した。アプタマーを所望の濃度の2倍になるようにKRPH緩衝液で希釈した後、1Xになるように96ウェルプレートに添加し、37℃で4時間5% CO2の条件で培養した。アプタマー処理後にKRPH緩衝液を除去して後、培養培地100μlを入れて37℃で6日間5% CO2の条件で培養した。6日後にCCK-8キット溶液10μ1ずつを各ウェルに入れた後、37℃で3時間5% CO2の条件で培養した。マイクロプレートリーダで、450nMでアポトーシスの水準を測定した。
【0113】
その結果、
図12のように10nM~1μM濃度のゲムシタビン3つが結合した変形アプタマー12-12 G(3)は、10M~1μM濃度の12-12または30nM~3μM濃度のゲムシタビンに比べてHepG2アポトーシス効果に優れており、表皮癌細胞であるA431に対してはアポトーシスを示さなかった。
【0114】
また、
図13のように31.75M~2μM濃度のゲムシタビン3つが結合した変形アプタマー12-12 G(3)は、同一の濃度の12-12またはゲムシタビンに比べてHepG2アポトーシス効果に優れており、表皮癌細胞であるA431に対してはアポトーシスを示さなかった。
【0115】
実施例3.化学最適化したGPC3特異的アプタマーの選別
3-1.塩基が置換されたアプタマーライブラリの製作
GPC3に対する結合親和力、細胞結合及び細胞内在化に優れることが確認された12-12(35mer)アプタマーを化学的に最適化するために、アプタマー配列内に置換を導入した。具体的には、アプタマー配列内にNap-dUを導入したライブラリ12個、C3リンカーを導入したライブラリ11個、2-Fを配列中の塩基Gにのみ導入したライブラリ7つ、2-Fを配列中の塩基Cにのみ導入したライブラリ7つ、2-Fを配列中の塩基Aにのみ導入したライブラリ8つ、2-0-Meを配列中の塩基Gにのみ導入したライブラリ7つ、2-0-Meを配列中の塩基Cにのみ導入したライブラリ7つ、2-0-Meを配列中の塩基Aにのみ導入したライブラリ8つを製作した。各ライブラリの5’末端にはCy5、3’末端にはidTが付着されて合成された。
【0116】
3-2.塩基が置換されたアプタマーライブラリに対するタンパク質結合親和力の分析
実施例3-1のアプタマーライブラリのタンパク質結合親和力を分析するためにNap-dU、2-F、2-0-Meを導入したライブラリに対してqPCR(Quantitative Polymerase Chain Reaction)結合アッセイ、C3リンカーを導入したライブラリに対してMST(Microscale Thermophoresis)アッセイを行った。具体的には、qPCRを用いたタンパク質結合アッセイは、qPCRマスターミックス[最終濃度基準:1X KOD緩衝液、0.2mM dNTP、0.2μM 5’、3’プライマー、5mM MgCl2,1X SYBRグリーン、0,025U/μl KODポリメラーゼ、D.W.(KAPA SYBR FAST qPCR Master Mix,Sigma, Madrid,Spain)]を用いて行った。アプタマー(20nM)5μlと1X SB18T0.05
95μlを混合して濃度が10fmole(1010コピー)であるアプタマーを準備し、95℃で5分間、70℃で5分間、48℃で5分間、その後、37℃で放置して加熱及び冷却した。GPC3 100nMを4.64倍で段階希釈した、計8ポイントを各ウェルに30μlずつ添加した。加熱及び冷却されたアプタマーに1X SB18T0.05 200μlを添加した後、これを各ウェルに30μlずつ入れ、ウェル当たり含まれたGPC3及びアプタマーが計60μlになるようにした。37℃で30分間インキュベーションしてGPC3及びアプタマー間の結合が起こるように反応させた。インキュベーション後、10mg/mlのTALONビード(bead)(Clontech)を5.5μlずつ各ウェルに入れ、1400rpmで5分間反応させた。フィルタプレートに反応させたTALONビードGPC3-アプタマー混合物を入れて吸込ませた。その後、1X SB18T0.05 200μlで洗浄後に SB18T0.05緩衝液を除去した。フィルタプレートに残った緩衝液を除去するために、フィルタプレートの下にディープウェルプレート(deep well plate)を嵌めた後、1000rpmで1分間遠心分離した。新たなディープウェルプレートに8mM HCl 20μlを添加し、遠心分離したフィルタプレートを嵌めた。フィルタプレートに20mM NaCl 80μlを添加した後、1000rpmで5分間反応させ、その後、1000rpmで2分間遠心分離してアプタマーを溶離(elution)させた。溶離されたアプタマーを1010コピーになるように濃度を合せた後、1010コピーから108コピーまで10倍ずつ3.2mMNaClを利用して希釈させ、各濃度のアプタマー(1010コピー、109コピー、108コピー)をqPCRプレートのウェルの2行目にそれぞれ10μl添加した。各タンパク質と結合させない純粋アプタマー(standard)1010コピー、109コピー、108コピーをqPCRプレートのウェルの最初の行にそれぞれ10μl添加した。その後、qPCR混合物を全てのウェルに10μlずつ添加し、ウェル内の総体積が20μlになるようにした後にqPCRを行った。qPCRの条件は96℃で45秒間、55℃で10秒間、70℃で1時間1回、その後、96℃で15秒間、70℃で1分間40回繰り返した。その後、実施例1-1の方法によりBmax及びKd値を算出した。
【0117】
MSTを行うために、5μMアプタマー24μlと5X SB18緩衝液6μlを混合して4μMアプタマー30μlを製造した後、95℃で5分間、その後、常温で10分間加熱及び冷却した。アプタマーの5’末端にCy5を標識し、1X SB18T0.05緩衝液を用いて標識されたアプタマーを4nM、GPC3を200nMの濃度にそれぞれ希釈した。200nM GPC3 10μlを新たなPCRチューブに20μlずつ配分し、1X SB18T0.05緩衝液を用いて1/2段階希釈した。希釈されたGPC3に4nMアプタマーを10μlずつ添加し、計20μ1になるようにした。20μlのGPC3-アプタマー混合物をMST毛細管(capillary)に投与し、毛細管スキャン(Start capillary scan)を用いて適正な蛍光値を決定した後、MSTを測定し、Kd及びKdコンフィデンス(confidence)値を導き出した。
【0118】
その結果、
図14のように、12-12(35mer)アプタマーライブラリのタンパク質結合親和力が確認された。
【0119】
3-3.化学最適化したアプタマーライブラリの選別
実施例3-2の結果と実施例3-1のアプタマーライブラリに対して実施例2-1の方法によりHepG2細胞結合を分析した結果を総合し、タンパク質結合親和力及び細胞結合を考慮してアプタマー配列内の塩基の置換位置及び対象(Nap-dU、C3リンカー、2-F、2-0-Me)を導き出し、優れたタンパク質結合親和力及び細胞結合を示すことができるものと予想されるアプタマーライブラリ10個(combi 1~10、配列番号10~19)を選別した(
図15)。
【0120】
選別されたアプタマー中、combi 1~5に対して実施例2-1の方法により細胞結合分析及び実施例2-2の方法により細胞内在化分析を行った。
【0121】
その結果、
図16のようにHepG2でcombi 5の細胞結合が12-12と最も類似したことを確認し、
図17aのようにHep3B細胞でcombi 5の細胞内在化が最も多く行われたことを確認した。combi 4でも優れた細胞内在化が確認された。また、
図17bのようにCombi 6~10番で細胞内在化を確認した。また、Combi 6~10番でGPC3が多く発現された肝癌特異的細胞(HepG2,Hep3B)の選択的な細胞内在化が生じることを確認し、GPC3の発現が低いA431細胞には細胞内在化が示されなかった。そのうち、Combi 8とCombi 9において細胞内在化が最も多く生じたことを確認した。
【0122】
実施例4.化学最適化したGPC3特異的変形アプタマーの選別
4-1.タンパク質結合親和力、細胞結合、細胞内在化及び抗癌効能の分析
優れたタンパク質結合親和力及び細胞内在化が確認されたアプタマーライブラリcombi 4、5及び8に実施例1-2の方法により抗癌剤を結合させて変形アプタマーを製造した。具体的には、combi 4、5及び8にゲムシタビンを3つまたは5つ結合させて変形アプタマーを製造した。また、アプタマー配列内の塩基の一部がメトキシエチル(Methoxyethyl、MOE)で置換されたアプタマーライブラリ(配列番号20)にゲムシタビンを3つ結合させて変形アプタマーを製造した。前記アプタマー配列は、下記表3の通りであった。
【0123】
【0124】
前記配列においてMeで表された塩基は2番目の炭素位置に-Me(メトキシ)基が導入された塩基(2-0-Me,2-0-Methoxy-DNA)である。Fで表された塩基は2番目の炭素位置に-F(フッ素)基が導入された塩基(2-F,2-Fluorine-DNA)である。moeで表される-18-塩基は2番目の炭素位置に-moe(メトキシエチル)基が導入された塩基(2-moe,2-Methoxyethyl-DNA)である。Yで表された塩基はピリミジン基の5番目の炭素位置に5-(N-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-ジオキシウリジン(5-(N-naphthylmethylcarboxyamide)-2’-deoxyuridine)が導入された塩基(Nap-dU)であり、前記化学式1で表される。Wで表される塩基は3番目の炭素位置にリンカー(C3 linker)が導入された塩基(C3 linker-DNA)であり、前記化学式2で表される。nで表される塩基はジオキシウリジンのピリミジン基の5番目の炭素位置にベンジル基が導入された塩基(BzdU)であり、前記化学式3で表される。Sで表される塩基はゲムシタビンが置換された塩基である。
【0125】
製造された変形アプタマーに対し実施例3-2の方法によりMSTを用いたタンパク質結合分析、実施例2-1の方法により細胞結合分析及び実施例2-2の方法によりHepG2、A431で細胞内在化の分析を行った。
【0126】
その結果、
図18のようにcombi 4及び5にゲムシタビンを3つ結合させた場合、Kdは12-12アプタマーと類似の水準であったが、ゲムシタビンを5つ結合させた場合には、結合力が低いことが示された。
【0127】
また、
図19のようにcombi 4及び5にゲムシタビンを3つ結合させた場合が(combi 4 Gem(3)、Combi 5 Gem(3))5つ結合させた場合(Combi 4 Gem(5),Combi_5 Gem(5))より細胞結合力に優れており、combi 4とcombi 5との間の細胞結合力を比較してみると、ゲムシタビンが結合していない時の細胞結合力と同様に、combi 5において細胞結合力に優れた。
図20~
図22でもゲムシタビンを3つ結合させたcombi 4及び5(Combi_4 Gemcitabine(3),Combi_5 Gemcitabine(3))で優れた細胞内在化が確認された。
【0128】
ゲムシタビンを3つまたは5つ結合させたcombi 4及び5ゲムシタビンが3つ結合したcombi 11が肝癌細胞及び表皮癌細胞に対してGPC3選択的アポトーシス効能を示すかを確認するために、実施例1-3の方法によりアポトーシス効能を分析した。
【0129】
その結果、
図23のようにゲムシタビンを3つまたは5つ結合させたcombi 4及び5(Combi 4_G(3),Combi 5_G(3),Combi 4_G(5),Combi 5_G(5))は、表皮癌細胞であるA431に対しては500nMの濃度までアポトーシス効果を示さなかったが、GPC3が発現された肝癌細胞に対しては100nMの濃度からアポトーシスを示した。アプタマーに結合したゲムシタビンの数が増えるほどアポトーシス効果にも強くなることを確認した。
【0130】
また、
図24のようにゲムシタビンが3つ結合したcombi 11は肝癌細胞に対して200nMの濃度からアポトーシスを示すことを確認した。
【0131】
4-2.細胞周期の分析
ゲムシタビンを3つまたは5つ結合させたcombi 4及び5が肝癌細胞の細胞周期に及ぼす影響を確認するために細胞周期を分析した。具体的には、6ウェルプレートにHep3B、HepG2、A431細胞1x106/wellをシーディングし、10% FBSと1%の抗生剤(ペニシリン/ストレプトマイシン)が含まれたDMEM培地を用いて5% CO2、37℃の条件下に培養した。翌日、変形アプタマーストック100μMと5X SB18緩衝液を混合してアプタマー80μMを作った後、95℃で5分間加熱し、常温で15分間以上冷却した。培養した細胞の培養液を除去し、無血清培地で交換した後、37℃で1時間5% CO2の条件で培養した。無血清培地を除去し、1X PBS2mlを入れて洗浄後にKRPH緩衝液2mlを入れて37℃で1時間5% CO2の条件で培養した。アプタマーを入れた後に再度37℃で4時間5% CO2の条件で培養した。KRPH緩衝液を除去し、1X PBS 2mlを入れて洗浄してPBSを除去した。再度1X PBS2mlを入れてスクレーパーで細胞を掻き取ってFACsチューブに集めた後、4℃で2000rpm、4分間遠心分離した。1/500で希釈したRNAase AとPBSで50μg/mlに希釈したヨウ化プロピジウム(Propidium iodide)をFACsチューブに500ul添加してピペッティングした。光を遮断した条件で常温に30分間インキュベーションした後、細胞周期を測定した。
【0132】
その結果、
図25~27のようにゲムシタビンを3つまたは5つ結合させたcombi 4及び5(combi 4_G(3),Combi 5_G(3),Combi 4_G(5),Combi 5_G(5))は、肝癌細胞に対しては細胞周期の進行をG1/S段階で抑制したが、表皮癌細胞に対しては細胞周期抑制を示さなかった。これを通じてゲムシタビンの数の増加による細胞周期抑制効果の増加を確認し、GPC3が発現されない他の癌細胞では比較群であるゲムシタビン単独処理と比較した時、細胞周期抑制効果を奏しないことから、GPC3が発現された細胞に対する選択性が示されることを確認した。
【0133】
4-3.血清安定性の分析
12-12、combi 5アプタマー及びゲムシタビンを3つまたは5つ結合させたcombi 4、5変形アプタマーがヒト血清内で安定するかを確認するために血清安定性を分析した。具体的には、100%のヒト血清に10uMの変形アプタマー10μlを入れて37℃で0、1、3、6、12、24時間インキュベーションした。インキュベーション後、10μMの対照群アプタマー5μlを入れ、蒸溜水で250μlになるように体積を合せた。フェノール:クロロフォーム:イソアミルアルコール(25:24:1)を同じ体積で250ul添加して攪拌した。各試料を16000xgで10分間遠心分離した。上清を新チューブに移して完全に乾燥させた。5xサンプル緩衝液と蒸溜水で希釈後、95℃で5分間沸かした後、冷した。尿素PAGE(Polyacrylamide gel Electrophoresis)で、220Vで25分間サンプル分離した後、SYBRゴールドに染色してGel DocTM EZシステムで確認した。
【0134】
その結果、
図28のようにヒト血清において12-12アプタマーは6時間の半減期を維持したが、化学的最適化したCombi 5 G(3)の場合、半減期が約64時間で安定性が増加したことを確認した。これは、最適化前の12-12より約10倍以上改善された結果を示した。
【0135】
本実施例の結果によりGPC3の有無による選択的な抗癌効果とゲムシタビンの数依存的なアポトーシス効果を確認した。
【0136】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施されることが理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明の範囲は前記詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導かれるあらゆる変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈すべきである。
【配列表】