(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】プロセスの実施における反復性ストレス障害を低減するための軟組織材料累積損傷モデル
(51)【国際特許分類】
G16H 20/30 20180101AFI20240927BHJP
【FI】
G16H20/30
(21)【出願番号】P 2022534139
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(86)【国際出願番号】 US2020063430
(87)【国際公開番号】W WO2021113725
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-12-04
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハマー, リーサ チャーリー
(72)【発明者】
【氏名】コットン, ジェームズ ディーン
(72)【発明者】
【氏名】ガードナー, リチャード ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】タカタニ, カレン チヨノ
【審査官】鹿谷 真紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09610036(US,B1)
【文献】特開2011-141706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスの実施における、軟組織に対する反復性ストレス障害の可能性を低減する方法(100、400)であって、該方法(100、400)は、
前記軟組織及び前記プロセスに関連する少なくとも1つの反復性ストレスデータセット(ステップ104、216)を取得すること(ブロック402)と、
少なくとも、第1損傷レジームを特徴付ける第1情報、及び第2損傷レジームを特徴付ける第2情報にアクセスすること(ブロック404)であって、前記第1情報は、前記軟組織が前記第1損傷レジームから移行する、所与のストレスでの反復回数を定量化し、前記第2情報は、前記軟組織が前記第2損傷レジームから移行する、所与のストレスでの反復回数を定量化する、情報にアクセスすることと、
少なくとも前記第1情報、前記第2情報、及び前記反復性ストレスデータセット(ステップ106、216)に基づいて、前記軟組織を損傷するのに十分な条件を予測すること(ブロック406)と、
少なくとも前記予測に基づいて、軟組織材料反復性ストレス障害のリスクを低減するための少なくとも1つのガイドライン(ステップ108、224)を決定すること(ブロック408)と、
前記少なくとも1つのガイドライン(224)を前記プロセスに実装すること(ブロック410)と、を含む、
コンピュータが行う方法。
【請求項2】
前記第1損傷レジーム及び前記第2損傷レジームが各々、無損傷レジーム、断裂未満損傷レジーム、又は断裂伝播レジーム、のうちの1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第3損傷レジームを特徴付ける第3情報にアクセスすることを更に含み、前記第3情報は、前記軟組織が前記第3損傷レジームから移行する、所与のストレスでの反復回数を定量化し、
前記第1損傷レジームが無損傷レジームを含み、前記第2損傷レジームが断裂未満損傷レジームを含み、前記第3損傷レジームが断裂伝播レジームを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記反復性ストレスデータセットが、前記軟組織の断面積に加わる力と、前記プロセスの少なくとも1つのタスクの反復回数又は継続時間の少なくとも一方とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、前記軟組織及び前記プロセスに関連する前記少なくとも1つの反復性ストレスデータセットを
生成するために、前記軟組織内の少なくとも1つのストレス分布を推定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのガイドラインが、前記軟組織の姿勢、前記軟組織の所与の運動の反復回数、前記軟組織に印加される力、前記軟組織の所与の姿勢を維持する持続時間、前記軟組織の所与の運動の反復の持続時間、又は前記軟組織に所与の力が印加される持続時間、のうちの少なくとも1つに対する限定を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも、第1損傷レジームを特徴付ける第1情報、及び第2損傷レジームを特徴付ける第2情報にアクセスすることが、超音波データ、コンピュータ化軸断層撮影(CAT)スキャンデータ、磁気共鳴イメージング(MRI)スキャンデータ、破壊試験データ、死体材料データ、動物材料データ、ポリマー代用材料データ、分子動力学モデリング(MDM)データ、又は刊行物データ、のうちの少なくとも1つを取得することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記軟組織が、小円筋腱、棘下筋腱、棘上筋腱、肩甲下筋腱、三角筋腱、上腕二頭筋腱、上腕三頭筋腱、腕橈骨筋腱、回外筋腱、橈側手根屈筋腱、尺側手根屈筋腱、橈側手根伸筋腱、短橈側手根伸筋腱、腸腰筋腱、内閉鎖筋腱、長内転筋腱、短内転筋腱、大内転筋腱、大殿筋腱、中殿筋腱、大腿四頭筋腱、膝蓋腱、ハムストリング腱、縫工筋腱、腓腹筋腱、アキレス腱、ヒラメ筋腱、前脛骨筋腱、長腓骨筋腱、長趾屈筋腱、骨間腱、深指屈筋腱、小指外転筋腱、母指対立筋腱、長母指屈筋腱、伸筋腱、長母指外転筋腱、長母趾屈筋腱、短趾屈筋腱、虫様筋腱、母趾外転筋腱、長趾屈筋腱、小指外転筋腱、眼筋腱、眼瞼挙筋腱、咬筋腱、側頭筋腱、僧帽筋腱、胸鎖乳突筋腱、頭半棘筋腱、頭板状筋腱、顎舌骨筋腱、甲状舌骨筋腱、胸骨舌骨筋腱、腹直筋腱、外腹斜筋腱、腹横筋腱、広背筋腱、又は脊柱起立筋腱、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのガイドラインに、対象に関する一又は複数の人口統計学的変数を適用することによって、前記少なくとも1つのガイドラインを前記対象向けに個別化することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
対象の前記軟組織についての一又は複数の使用データセットを取得することと、
前記使用データセットと前記少なくとも1つのガイドラインとを比較することによって、前記対象の前記軟組織に対する損傷を推定することと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
プロセスの実施における、軟組織に対する反復性ストレス障害を低減するためのコンピュータシステム(500)であって、命令を実行して工程を実施する少なくとも1つの電子プロセッサを備え、前記工程が、
前記軟組織及び前記プロセスに関連する少なくとも1つの反復性ストレスデータセット(ステップ104、216)を取得すること(ブロック402)と、
少なくとも、第1損傷レジームを特徴付ける第1情報、及び第2損傷レジームを特徴付ける第2情報にアクセスすること(ブロック404)であって、前記第1情報は、前記軟組織が前記第1損傷レジームから移行する、所与のストレスでの反復回数を定量化し、前記第2情報は、前記軟組織が前記第2損傷レジームから移行する、所与のストレスでの反復回数を定量化する、情報にアクセスすることと、
少なくとも前記第1情報、前記第2情報、及び前記反復性ストレスデータセットに基づいて、前記軟組織を損傷するのに十分な条件を予測すること(ブロック406)と、
少なくとも前記予測に基づいて、軟組織材料反復性ストレス障害のリスクを低減するための少なくとも1つのガイドライン(224)を決定すること(ブロック408)と、を含み、
これにより、前記少なくとも1つのガイドラインが前記プロセスに実装される、システム。
【請求項12】
前記第1損傷レジーム及び前記第2損傷レジームが各々、無損傷レジーム、断裂未満損傷レジーム、又は断裂伝播レジーム、のうちの1つを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記工程が、
第3損傷レジームを特徴付ける第3情報にアクセスすることを更に含み、前記第3情報は、前記軟組織が前記第3損傷レジームから移行する、所与のストレスでの反復回数を定量化し、
前記第1損傷レジームが無損傷レジームを含み、前記第2損傷レジームが断裂未満損傷レジームを含み、前記第3損傷レジームが断裂伝播レジームを含む、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項14】
前記反復性ストレスデータセットが、前記軟組織の断面積に加わる力と、前記プロセスの少なくとも1つのタスクの反復回数又は継続時間の少なくとも一方とを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記工程は、前記軟組織及び前記プロセスに関連する前記少なくとも1つの反復性ストレスデータセットを
生成するために、前記軟組織内の少なくとも1つのストレス分布を推定することを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
前記少なくとも1つのガイドラインが、前記軟組織の姿勢、前記軟組織の所与の運動の反復回数、前記軟組織に印加される力、前記軟組織の所与の姿勢を維持する持続時間、前記軟組織の所与の運動の反復の持続時間、又は前記軟組織に所与の力が印加される持続時間、のうちの少なくとも1つに対する限定を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
少なくとも、第1損傷レジームを特徴付ける第1情報、及び第2損傷レジームを特徴付ける第2情報にアクセスすることが、超音波データ、コンピュータ化軸断層撮影(CAT)スキャンデータ、磁気共鳴イメージング(MRI)スキャンデータ、破壊試験データ、死体材料データ、動物材料データ、ポリマー代用材料データ、分子動力学モデリング(MDM)データ、又は刊行物データ、のうちの少なくとも1つを取得することを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項18】
前記軟組織が、小円筋腱、棘下筋腱、棘上筋腱、肩甲下筋腱、三角筋腱、上腕二頭筋腱、上腕三頭筋腱、腕橈骨筋腱、回外筋腱、橈側手根屈筋腱、尺側手根屈筋腱、橈側手根伸筋腱、短橈側手根伸筋腱、腸腰筋腱、内閉鎖筋腱、長内転筋腱、短内転筋腱、大内転筋腱、大殿筋腱、中殿筋腱、大腿四頭筋腱、膝蓋腱、ハムストリング腱、縫工筋腱、腓腹筋腱、アキレス腱、ヒラメ筋腱、前脛骨筋腱、長腓骨筋腱、長趾屈筋腱、骨間腱、深指屈筋腱、小指外転筋腱、母指対立筋腱、長母指屈筋腱、伸筋腱、長母指外転筋腱、長母趾屈筋腱、短趾屈筋腱、虫様筋腱、母趾外転筋腱、長趾屈筋腱、小指外転筋腱、眼筋腱、眼瞼挙筋腱、咬筋腱、側頭筋腱、僧帽筋腱、胸鎖乳突筋腱、頭半棘筋腱、頭板状筋腱、顎舌骨筋腱、甲状舌骨筋腱、胸骨舌骨筋腱、腹直筋腱、外腹斜筋腱、腹横筋腱、広背筋腱、又は脊柱起立筋腱、を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項19】
前記工程が、前記少なくとも1つのガイドラインに対象に関する一又は複数の人口統計学的変数を適用することによって、前記少なくとも1つのガイドラインを前記対象向けに個別化することを更に含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項20】
前記工程が、
対象の前記軟組織についての一又は複数の使用データセットを取得することと、
前記使用データセットと前記少なくとも1つのガイドラインとを比較することによって、前記対象の前記軟組織に対する損傷を推定することと、を更に含む、請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001]本出願は、「Soft Tissue Material Cumulative Damage Model for Reducing Repetitive Stress Injuries in Performing a Process(プロセスの実施における反復性ストレス障害を低減するための軟組織材料累積損傷モデル)」と題された2020年12月3日出願の米国実用特許出願第17/110,953号に対する優先権及びかかる米国実用特許出願による利益を主張するものであり、この米国実用特許出願17/110,953号は、「Systems and Methods for Developing a Tendon Material Cumulative Damage Model(腱材料累積損傷モデルを開発するためのシステム及び方法)」と題された2019年12月6日出願の米国仮特許出願第62/944,799号に対する優先権及びかかる米国仮特許出願による利益を主張するものであり、これらの出願の開示は、全体が参照により本書に援用される。
【0002】
[0002]本書に記載の発明主題は、概して材料科学とその人間工学への応用という分野に関する。より詳細には、本書で開示している発明主題は、軟組織材料反復性ストレス障害、及びかかる障害を被るリスクを最小化するためのガイドラインに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]オーバーユース障害、特に棘上筋腱を含む肩のオーバーユース障害は、最も重大な人間工学障害の一部である。したがって、障害の原因となるタスク又はタスクの反復に対処するために、作業現場の動力学、又は、例えば腱にストレスを与える原因となり、かつ結果として腱にストレスを与えうるその他の活動について、理解することが必要である。
【0004】
[0004]この理解を可能にするために、複数の研究分野(医療機器、外科的技法、医薬品、工学技術、材料科学、及び人間工学を含む)の情報が使用されてきた。加えて、これらの研究分野は現在、材料反復性ストレス傷害のモデル及びガイドラインが容易に作成されうる(又はこれらが既に作成されている)ように、相互に関連付けられているわけではない。このことは、研究主体及びその研究対象によって実証されている。例えば、医療、療法、及び薬理の研究は、障害が発生した後の個人のための(又はかかる個人を対象とする)ものである(回復を早めるための外科的処置、理学療法、及び治療)。傷害検出は、患者が傷害を自己申告した後に問題となるのであって、傷害以前にリスクをスクリーニングするためのものではない。伝統的な人間工学的実践行為は傷害を予防しようとするものであるが、それはこれまでのところ、疫学的方法を用いてマクロレベルでしか行われてこなかった。推定された労働曝露に基づいて、人員がいつ、不快レベル又は痛みに基づいて傷害を自己申告するかという推定を創出し、その閾値を下回るガイドラインを作成すると、傷害の大部分は、身体の個々の構成要素ではなく、肩、膝、又は背中全体という、一般化された(generalized)身体領域によって画定される。1990年代から刊行されている技術文書では、反復性ストレス後に生体外腱材料に強度低下が生じることが実証されているが、これは、構造疲労原理と一致している。かかる文書は、モデルを作成するため又は傷害を予防若しくは予測するための、この情報の有用性については報告していない。これらにおいては、腱と非生物学的構造との間の有意な構造的差異及び特性上の差異についても、更なる試験のための腱(入手困難であり、生体組織から取り出されるとすぐに変化し劣化する)の代わりの代用物として使用される可能性がある、加工された(engineered)材料を特定(又は開発)する必要性についても、調査されていない。学際的研究を互いに結びつけ、ギャップを埋め、かつ複数の分野で進化する技術から利益を得る、新たなアプローチが必要とされている。コンピュータ技術の著しい進歩は、材料モデルの作成を一層推し進める。コンピュータ対応の材料モデルにより、既存の材料又は実現可能性のある新たな材料の疲労挙動がシミュレートされうる。超音波検査により、生体内の生物学的材料の材料音響特性の推定が可能になり、かかる材料音響特性は、ある種の機械的特性(弾性率など)と相関付けられうる。作業中の人員を観察し、デジタル身体における生物学的材料の運動をシミュレートするために、モーショントラッキング技術が使用されうる。かかる技術は、作業現場における軟組織障害を防止するためのガイドラインを作成しうるモデルを開発する機会を提示する。このモデルにより、個人の特性を勘案してカスタマイズされたモデルを作成することも可能である。作業モデルは、逆に、つまり、人工腱又は代用腱を構築するための設計要件、及び、かかる腱が動作寿命中にどのように作動するかを知るために、使用されることもある。
【発明の概要】
【0005】
[0005]この開示は、以下の条項による例を含む。
【0006】
[0006]条項1.
プロセスの実施における軟組織の反復性ストレス障害の可能性を低減する方法であって、軟組織及びプロセスに関連する少なくとも1つの反復性ストレスデータセットを取得することと、少なくとも、第1損傷レジームを特徴付ける第1情報、及び第2損傷レジームを特徴付ける第2情報にアクセスすることであって、第1情報は、軟組織が第1損傷レジームから移行する、所与のストレスでの反復回数を定量化し、第2情報は、軟組織が第2損傷レジームから移行する、所与のストレスでの反復回数を定量化する、情報にアクセスすることと、少なくとも第1情報、第2情報、及び反復性ストレスデータセットに基づいて、軟組織を損傷するのに十分な条件を予測することと、少なくともこの予測に基づいて、軟組織材料反復性ストレス障害のリスクを低減するための少なくとも1つのガイドラインを決定することと、プロセスにおいて、少なくとも1つのガイドラインを実装することと、を含む、方法。
【0007】
[0007]条項2.
第1損傷レジーム及び第2損傷レジームが各々、無損傷レジーム、断裂未満(sub-rupture)損傷レジーム、又は断裂伝播レジーム、のうちの1つを含む、条項1に記載の方法。
【0008】
[0008]条項3.
第3損傷レジームを特徴付ける第3情報にアクセスすることを更に含み、第3情報は、軟組織が第3損傷レジームから移行する、所与のストレスでの反復回数を定量化し、第1損傷レジームが無損傷レジームを含み、第2損傷レジームが断裂未満損傷レジームを含み、第3損傷レジームが断裂伝播レジームを含む、条項1又は2に記載の方法。
【0009】
[0009]条項4.
反復性ストレスデータセットが、軟組織の断面積に加わる力と、プロセスの少なくとも1つのタスクの反復回数又は継続時間の少なくとも一方とを含む、条項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【0010】
[0010]条項5.
軟組織及びプロセスに関連する少なくとも1つの反復性ストレスデータセットを取得することが、軟組織内の少なくとも1つのストレス分布を推定することを含む、条項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【0011】
[0011]条項6.
少なくとも1つのガイドラインが、軟組織の姿勢(posture)、軟組織の所与の運動の反復回数、軟組織に印加される力、軟組織の所与の姿勢を維持する持続時間、軟組織の所与の運動の反復の持続時間、又は軟組織に所与の力が印加される持続時間、のうちの少なくとも1つに対する限定を含む、条項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【0012】
[0012]条項7.
少なくとも、第1損傷レジームを特徴付ける第1情報、及び第2損傷レジームを特徴付ける第2情報にアクセスすることが、超音波データ、コンピュータ化軸断層撮影(CAT)スキャンデータ、磁気共鳴イメージング(MRI)スキャンデータ、破壊試験データ、死体材料データ、動物材料データ、ポリマー代用材料データ、分子動力学モデリング(MDM)データ、又は刊行物データ、のうちの少なくとも1つを取得することを含む、条項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【0013】
[0013]条項8.
軟組織が、小円筋腱、棘下筋腱、棘上筋腱、肩甲下筋腱、三角筋腱、上腕二頭筋腱、上腕三頭筋腱、腕橈骨筋腱、回外筋腱、橈側手根屈筋腱、尺側手根屈筋腱、橈側手根伸筋腱、短橈側手根伸筋腱、腸腰筋腱、内閉鎖筋腱、長内転筋腱、短内転筋腱、大内転筋腱、大殿筋腱、中殿筋腱、大腿四頭筋腱、膝蓋腱、ハムストリング腱、縫工筋腱、腓腹筋腱、アキレス腱、ヒラメ筋腱、前脛骨筋腱、長腓骨筋腱、長趾屈筋腱、骨間腱、深指屈筋腱、小指外転筋腱、母指対立筋腱、長母指屈筋腱、伸筋腱、長母指外転筋腱、長母趾屈筋腱、短趾屈筋腱、虫様筋腱、母趾外転筋腱、長趾屈筋腱、小指外転筋腱、眼筋腱、眼瞼挙筋腱、咬筋腱、側頭筋腱、僧帽筋腱、胸鎖乳突筋腱、頭半棘筋腱、頭板状筋腱、顎舌骨筋腱、甲状舌骨筋腱、胸骨舌骨筋腱、腹直筋腱、外腹斜筋腱、腹横筋腱、広背筋腱、又は脊柱起立筋腱、を含む、条項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【0014】
[0014]条項9.
少なくとも1つのガイドラインに対象(subject)に関する一又は複数の人口統計学的変数を適用することによって、少なくとも1つのガイドラインを対象向けに個別化することを更に含む、条項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【0015】
[0015]条項10.
対象の軟組織についての一又は複数の使用データセットを取得することと、この使用データセットと少なくとも1つのガイドラインとを比較することによって、対象の軟組織に対する損傷を推定することと、を更に含む、条項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【0016】
[0016]条項11.
プロセスの実施における軟組織の反復性ストレス障害を低減するためのコンピュータシステムであって、命令を実行して工程を実施する少なくとも1つの電子プロセッサを備え、工程が、軟組織及びプロセスに関連する少なくとも1つの反復性ストレスデータセットを取得することと、少なくとも、第1損傷レジームを特徴付ける第1情報、及び第2損傷レジームを特徴付ける第2情報にアクセスすることであって、第1情報は、軟組織が第1損傷レジームから移行する、所与のストレスでの反復回数を定量化し、第2情報は、軟組織が第2損傷レジームから移行する、所与のストレスでの反復回数を定量化する、情報にアクセスすることと、少なくとも第1情報、第2情報、及び反復性ストレスデータセットに基づいて、軟組織を損傷するのに十分な条件を予測することと、少なくともこの予測に基づいて、軟組織材料反復性ストレス障害のリスクを低減するための少なくとも1つのガイドラインを決定することと、を含み、これにより、プロセスにおいて少なくとも1つのガイドラインが実装される、システム。
【0017】
[0017]条項12.
第1損傷レジーム及び第2損傷レジームが各々、無損傷レジーム、断裂未満損傷レジーム、又は断裂伝播レジーム、のうちの1つを含む、条項11に記載のシステム。
【0018】
[0018]条項13.
工程が、第3損傷レジームを特徴付ける第3情報にアクセスすることを更に含み、第3情報は、軟組織が第3損傷レジームから移行する、所与のストレスでの反復回数を定量化し、第1損傷レジームが無損傷レジームを含み、第2損傷レジームが断裂未満損傷レジームを含み、第3損傷レジームが断裂伝播レジームを含む、条項11又は12に記載のシステム。
【0019】
[0019]条項14.
反復性ストレスデータセットが、軟組織の断面積に加わる力と、プロセスの少なくとも1つのタスクの反復回数又は継続時間の少なくとも一方とを含む、条項11から13のいずれか一項に記載のシステム。
【0020】
[0020]条項15.
軟組織及びプロセスに関連する少なくとも1つの反復性ストレスデータセットを取得することが、軟組織内の少なくとも1つのストレス分布を推定することを含む、条項11から14のいずれか一項に記載のシステム。
【0021】
[0021]条項16.
少なくとも1つのガイドラインが、軟組織の姿勢、軟組織の所与の運動の反復回数、軟組織に印加される力、軟組織の所与の姿勢を維持する持続時間、軟組織の所与の運動の反復の持続時間、又は軟組織に所与の力が印加される持続時間、のうちの少なくとも1つに対する限定を含む、条項11から15のいずれか一項に記載のシステム。
【0022】
[0022]条項17.
少なくとも、第1損傷レジームを特徴付ける第1情報、及び第2損傷レジームを特徴付ける第2情報にアクセスすることが、超音波データ、コンピュータ化軸断層撮影(CAT)スキャンデータ、磁気共鳴イメージング(MRI)スキャンデータ、破壊試験データ、死体材料データ、動物材料データ、ポリマー代用材料データ、分子動力学モデリング(MDM)データ、又は刊行物データ、のうちの少なくとも1つを取得することを含む、条項11から16のいずれか一項に記載のシステム。
【0023】
[0023]条項18.
軟組織が、小円筋腱、棘下筋腱、棘上筋腱、肩甲下筋腱、三角筋腱、上腕二頭筋腱、上腕三頭筋腱、腕橈骨筋腱、回外筋腱、橈側手根屈筋腱、尺側手根屈筋腱、橈側手根伸筋腱、短橈側手根伸筋腱、腸腰筋腱、内閉鎖筋腱、長内転筋腱、短内転筋腱、大内転筋腱、大殿筋腱、中殿筋腱、大腿四頭筋腱、膝蓋腱、ハムストリング腱、縫工筋腱、腓腹筋腱、アキレス腱、ヒラメ筋腱、前脛骨筋腱、長腓骨筋腱、長趾屈筋腱、骨間腱、深指屈筋腱、小指外転筋腱、母指対立筋腱、長母指屈筋腱、伸筋腱、長母指外転筋腱、長母趾屈筋腱、短趾屈筋腱、虫様筋腱、母趾外転筋腱、長趾屈筋腱、小指外転筋腱、眼筋腱、眼瞼挙筋腱、咬筋腱、側頭筋腱、僧帽筋腱、胸鎖乳突筋腱、頭半棘筋腱、頭板状筋腱、顎舌骨筋腱、甲状舌骨筋腱、胸骨舌骨筋腱、腹直筋腱、外腹斜筋腱、腹横筋腱、広背筋腱、又は脊柱起立筋腱、を含む、条項11から17のいずれか一項に記載のシステム。
【0024】
[0024]条項19.
工程が、少なくとも1つのガイドラインに対象に関する一又は複数の人口統計学的変数を適用することによって、少なくとも1つのガイドラインを対象向けに個別化することを更に含む、条項11から18のいずれか一項に記載のシステム。
【0025】
[0025]条項20.
工程が、対象の軟組織についての一又は複数の使用データセットを取得することと、この使用データセットと少なくとも1つのガイドラインとを比較することによって、対象の軟組織に対する損傷を推定することと、を更に含む、条項11から19のいずれか一項に記載のシステム。
【0026】
[0026]本開示は、腱損傷モデルを生成するシステム及び関連方法を対象としている。典型的には、かかるシステム及び関連方法は、腱材料反復性障害を軽減又は最小化するためのガイドラインを作成することを伴う。
【0027】
[0027]本開示は、一態様において、腱損傷モデル(例えば腱損傷蓄積モデルなど)を作成する方法を提供する。この方法は、一又は複数のS‐N曲線データセットから、少なくとも1つの腱の一又は複数の物理的レジームについての一又は複数のS‐N曲線を生成することを含み、所与のS‐N曲線は、腱の故障に至るまでの反復回数に対する、腱に印加されるストレスの大きさの図示(plot)を含む。この方法は更に、腱を描写する一又は複数の反復性ストレスデータセットを生成することと、S‐N曲線又はS‐N曲線から導出されたデータを反復性ストレスデータセットと組み合わせて、一又は複数の条件のもとでの腱に対する損傷(例えば、所与の条件セットのもとでの腱損傷の、物理的若しくは有形の表現又は情報)を予測することによって、腱損傷モデルを生成することと、を含む。しかし、生物学的材料(コラーゲンベースの腱など)に損傷が蓄積される物理的機序は、従来的な結晶型の構造材料の物理的機序(S‐N型挙動モデルはこれに基づいている)とは非常に異なることに、留意すべきである。後者の共通モデルは、(典型的には)金属粒又は金属結晶中の滑動妨害部(glide obstacles)における転位蓄積による損傷蓄積である。適用されるサイクルが多くなるにつれて、転位が構造材料のミクロ構造の不連続部において発生し、妨害部に接したところに徐々に蓄積され、たとえマクロ的ストレスが材料降伏強度を十分に下回っていても、周期的な負荷印加が継続することで、最終的に、累積箇所に小さな裂け目が生じることになる。この裂け目はその後、材料故障として挙動し、最終的には、成長して亀裂となる。従来技術のアプローチでは、軟組織内の疲労をモデル化することが試みられてきたが、かかる試みは、軟組織が金属の疲労特性を有するかのように軟組織を扱っているので、不正確な結果を生む。しかし、金属の疲労と亀裂の機序は、同様の周期的負荷印加を受けるコラーゲンベースの腱において、(S‐N型挙動が観察されるものの)真の類似性(true analogue)を有さない。これは、腱の局所塑性変形に適応する転位がないからである。そうではなく腱であれば、コラーゲン線維の局所的な伸張及びよじれ(これらはミクロ損傷の一形態とみなされうる)によって、周期的な負荷印加に適応する。かかる損傷は、身体によって、コラーゲンの再構成によって修復されうるが、これは時間に基づくものであり、身体内の治癒プロセスを受けることが条件となる。ゆえに、腱構造における損傷蓄積に関する有効なモデルには、a)検出可能な故障(又は断裂)に先立つミクロ損傷蓄積の表現、b)このミクロ損傷を、拮抗する速度で打ち消す治癒プロセスの表現、c)腱における検出可能なマクロ的故障(典型的には、コラーゲン構造の断裂又は裂け目として表現され、痛みと同時に生じることもある)を発生させる、ミクロ損傷の結合及び伸長の表現、d)臨界閾値ストレス強度(Kc)を上回る継続的な周期的負荷が印加される場合の、この断裂又は裂け目の経時的な伸長及び成長の表現(da/dn)、及びe)実働負荷を支える腱の破壊的分離又は有効故障をもたらす、総負荷サイクルの表現、が組み込まれる。この最後のe)は、S‐N疲労型データの通常モードである。上記の各プロセスのモデル構成要素は、損傷蓄積の4つのレジームであって、1)無損傷、2)ミクロ損傷(断裂未満損傷)蓄積、3)成長しつつある断裂若しくは裂け目、細胞マトリクス損傷、又はその他の生物学的損傷という形態の損傷蓄積、及び4)腱構造の破壊的な故障又は分離の状態、の4つのレジームを特定する。かかるモデル構成要素は、数学的に表現され、集合的モデルに統合されうる。かかる集合的モデルは更に、進行中のミクロ損傷及び断裂の存在及び程度を特定しうる検査法又は調査法によって検証される。
【0028】
[0028]本開示は、別の態様では、腱材料反復性ストレス及び/又は腱損傷蓄積を回避するためのガイドラインを作成する方法を提供する。この方法は、一又は複数のS‐N曲線データセットから、少なくとも1つの腱の一又は複数の物理的レジームについての一又は複数のS‐N曲線を生成することを含み、所与のS‐N曲線は、腱の損傷レジームの移行に到達するまでの反復回数に対する、腱に印加されるストレスの大きさの図示を含む。この方法は更に、腱を描写する一又は複数の反復性ストレスデータセットを生成することと、S‐N曲線又はS‐N曲線から導出されたデータを反復性ストレスデータセットと組み合わせて、一又は複数の条件のもとでの腱に対する損傷を予測し、腱損傷モデルを生成することと、を含む。加えて、この方法は更に、腱損傷モデルから腱の腱材料反復性ストレスについての少なくとも1つのガイドラインを作成することであって、このガイドラインが、腱の姿勢、腱の所与の運動の反復回数、腱に印加される力、腱の所与の姿勢を維持する持続時間、腱の所与の運動の反復の持続時間、腱に所与の力が印加される持続時間、及びこれらの組み合わせ、を含む、少なくとも1つのガイドラインを作成することと、これにより、少なくとも1つのガイドラインを取得するために使用される腱損傷モデルを生成することと、を含む。
【0029】
[0029]本開示の方法は様々な態様を含む。一部の態様では、方法は、例えば、物理的レジームについての複数のS‐N曲線を組み合わせて、少なくとも1つの組み合わされたS‐N曲線を生成することを含む。ある種の態様では、方法は、一又は複数の条件のもとでの腱に対する損傷を予測するために、S‐N曲線又はS‐N曲線から導出されたデータを反復性ストレスデータセットと組み合わせる時に、少なくとも1つの累積損傷モデルを適用することを含む。一部の態様では、方法は、医療診断法を含む一又は複数のデータソース(例えば超音波データ、コンピュータ化軸断層撮影(CAT)スキャンデータ、磁気共鳴イメージング(MRI)スキャンデータ、破壊試験データ、死体材料、動物材料、ポリマー代用材料、分子動力学モデリング(MDM)データ、刊行物データ、及びこれらの組合せ)を使用して、S‐N曲線データセットを取得することを含む。
【0030】
[0030]ある種の態様では、腱は棘上筋腱を含む。一部の態様では、腱は、小円筋腱、棘下筋腱、棘上筋腱、肩甲下筋腱、三角筋腱、上腕二頭筋腱、上腕三頭筋腱、腕橈骨筋腱、回外筋腱、橈側手根屈筋腱、尺側手根屈筋腱、橈側手根伸筋腱、短橈側手根伸筋腱、腸腰筋腱、内閉鎖筋腱、長内転筋腱、短内転筋腱、大内転筋腱、大殿筋腱、中殿筋腱、大腿四頭筋腱、膝蓋腱、ハムストリング腱、縫工筋腱、腓腹筋腱、アキレス腱、ヒラメ筋腱、前脛骨筋腱、長腓骨筋腱、長趾屈筋腱、骨間腱、深指屈筋腱、小指外転筋腱、母指対立筋腱、長母指屈筋腱、伸筋腱、長母指外転筋腱、長母趾屈筋腱、短趾屈筋腱、虫様筋腱、母趾外転筋腱、長趾屈筋腱、小指外転筋腱、眼筋腱、眼瞼挙筋腱、咬筋腱、側頭筋腱、僧帽筋腱、胸鎖乳突筋腱、頭半棘筋腱、頭板状筋腱、顎舌骨筋腱、甲状舌骨筋腱、胸骨舌骨筋腱、腹直筋腱、外腹斜筋腱、腹横筋腱、広背筋腱、脊柱起立筋腱、及びこれらの組み合わせ、を含む。一部の態様では、腱は哺乳動物の腱を含む。かかる態様のうちの特定のものにおいては、哺乳動物の腱はヒトの腱を含む。他の態様では、腱は非哺乳動物の腱を含む。
【0031】
[0031]ある種の態様では、方法は、S‐N曲線又はS‐N曲線から導出されたデータ及び反復性ストレスデータセットを、治癒データと組み合わせて、一又は複数の条件のもとでの腱に対する損傷を予測することを含む。本開示は、一部の態様では、対象における腱損傷を予測する方法を提供し、この方法は、対象の少なくとも1つの腱についての一又は複数の使用データセットを取得することと、使用データセットと、前記方法によって作成された腱材料反復性ストレスについてのガイドラインとを比較することによって、対象における腱損傷を予測することと、を含む。ある種の態様では、物理的レジームは、無損傷レジーム、断裂未満損傷レジーム、亀裂開始レジーム、破断レジーム、又は曲線、及びこれらの組み合わせ、を含む。一部の態様では、上記のステップのうちの一又は複数は、少なくとも部分的にコンピュータ実装される。
【0032】
[0032]方法は、一部の態様では、腱損傷モデルから、腱の腱材料反復性ストレスについての少なくとも1つのガイドラインを作成することを含み、このガイドラインは、腱の姿勢及び/又は位置、腱の所与の運動の反復回数、腱に印加される力、腱の所与の姿勢を維持する持続時間、腱の所与の運動の反復の持続時間、腱に所与の力が印加される持続時間、ならびにこれらの組み合わせ、を含む。かかる態様の一部においては、腱材料反復性ストレスについてのガイドラインは、一又は複数の使用条件のセットのもとでの、一又は複数の推奨される腱の使用/休止サイクルを含む。かかる態様のうちのある種のものにおいては、方法は、腱材料反復性ストレスについてのガイドラインを検証することを含む。かかる態様の一部においては、方法は、ガイドラインに所与の対象に関する一又は複数の人口統計学的変数を適用することによって、この対象向けにガイドラインを個別化することを含む。かかる態様のうちのある種のものにおいては、方法は、ガイドラインを作成する時にタスク情報を使用することを含む。かかる態様のうちのある種のものにおいては、タスク情報は工具重量及び/又は力ベクトルを含む。
【0033】
[0033]ある種の態様では、方法は、反復性ストレスデータセットを生成するために、腱における少なくとも1つのストレス分布を推定することを含む。かかる態様の一部においては、方法は、腱の少なくとも1つの寸法を使用して、腱におけるストレス分布を推定することを含む。かかる態様のうちのある種のものにおいては、寸法は腱の少なくとも1つの断面積を含む。かかる態様の一部においては、方法は、腱の故障に至るまでの反復回数に対する腱に印加される少なくとも1つの力の図示を含む、少なくとも1つのサイクル曲線を使用して、腱におけるストレス分布を推定することを含む。かかる態様のうちのある種のものにおいては、力は、腱の一又は複数の姿勢において決定される。かかる態様の一部においては、方法は、推定及び/又はモデリングの技法(有限要素モデリング(FEM)及び/又は筋電図検査(EMG)など)を使用して、力を決定することを含む。かかる態様の一部においては、方法は、腱の前記姿勢において印加される力を決定する時に、タスク情報を使用することを含む。一部の態様では、タスク情報は工具重量及び/又は力ベクトルを含む。
【0034】
[0034]他の態様では、本開示は、コントローラを備えるシステムを提供し、このコントローラは、非一時的コンピュータ実行可能命令を有するコンピュータ可読媒体を備えているか、又はかかるコンピュータ可読媒体にアクセスすることが可能であり、この命令は、少なくとも1つの電子プロセッサによって実行されると、少なくとも、一又は複数のS‐N曲線データセットから、少なくとも1つの腱の一又は複数の物理的レジームについての一又は複数のS‐N曲線を生成することであって、所与のS‐N曲線が、腱の故障に至るまでの反復回数に対する腱に印加されるストレスの大きさの図示を含む、一又は複数のS‐N曲線を生成することと、S‐N曲線又はS‐N曲線から導出されたデータを一又は複数の反復性ストレスデータセットと組み合わせて、腱損傷モデルを生成することと、を実施する。
【0035】
[0035]別の態様では、本開示は、非一時的コンピュータ実行可能命令を有するコンピュータ可読媒体を提供し、この命令は、少なくとも1つの電子プロセッサによって実行されると、少なくとも、一又は複数のS‐N曲線データセットから、少なくとも1つの腱の一又は複数の物理的レジームについての一又は複数のS‐N曲線を生成することであって、所与のS‐N曲線が、腱の故障に至るまでの反復回数に対する腱に印加されるストレスの大きさの図示を含む、一又は複数のS‐N曲線を生成することと、S‐N曲線又はS‐N曲線から導出されたデータを一又は複数の反復性ストレスデータセットと組み合わせて、腱損傷モデルを生成することと、を実施する。
【0036】
[0036]一部の態様では、本書で開示しているシステム又はコンピュータ可読媒体の命令は更に、少なくとも、物理的レジームについての複数のS‐N曲線を組み合わせて、少なくとも1つの組み合わされたS‐N曲線を生成することを実施する。ある種の態様では、本書で開示しているシステム又はコンピュータ可読媒体の命令は更に、少なくとも、一又は複数の条件のもとでの腱に対する損傷を予測するために、S‐N曲線又はS‐N曲線から導出されたデータを反復性ストレスデータセットと組み合わせる時に、少なくとも1つの累積損傷モデルを適用することを実施する。一部の態様では、本書で開示しているシステム又はコンピュータ可読媒体の命令は更に、少なくとも、医療診断法を含む一又は複数のデータソース(例えば超音波データ、コンピュータ化軸断層撮影(CAT)スキャンデータ、磁気共鳴イメージング(MRI)スキャンデータ、破壊試験データ、死体材料、動物材料、ポリマー代用材料、分子動力学モデリング(MDM)データ、刊行物データ、及びこれらの組合せ)を使用して、S‐N曲線データセットを取得することを実施する。一部の態様では、本書で開示しているシステム又はコンピュータ可読媒体の命令は更に、少なくとも、S‐N曲線又はS‐N曲線から導出されたデータ及び反復性ストレスデータセットを、治癒データと組み合わせて、一又は複数の条件のもとでの腱に対する損傷を予測することを実施する。ある種の態様では、本書で開示しているシステム又はコンピュータ可読媒体の命令は更に、少なくとも、対象の少なくとも1つの腱についての一又は複数の使用データセットを取得することと、使用データセットと、腱材料反復性ストレスについてのガイドラインとを比較して、対象における腱損傷を予測することと、を実施する。
【0037】
[0037]一部の態様では、本書で開示しているシステム又はコンピュータ可読媒体の命令は更に、少なくとも、腱損傷モデルから、腱の腱材料反復性ストレスについての少なくとも1つのガイドラインを作成することを実施し、このガイドラインは、腱の姿勢、腱の所与の運動の反復回数、腱に印加される力、腱の所与の姿勢を維持する持続時間、腱の所与の運動の反復の持続時間、腱に所与の力が印加される持続時間、及びこれらの組み合わせ、を含む。ある種の態様では、本書で開示しているシステム又はコンピュータ可読媒体の命令は更に、少なくとも、腱材料反復性ストレスについてのガイドラインを検証することを実施する。かかる態様の一部においては、本書で開示しているシステム又はコンピュータ可読媒体の命令は更に、少なくとも、ガイドラインに所与の対象に関する一又は複数の人口統計学的変数を適用することによって、この対象向けにガイドラインを個別化することを実施する。かかる態様の一部においては、本書で開示しているシステム又はコンピュータ可読媒体の命令は更に、少なくとも、ガイドラインを作成するときにタスク情報を使用することを実施する。かかる態様のうちのある種のものにおいては、本書で開示しているシステム又はコンピュータ可読媒体の命令は更に、少なくとも、反復性ストレスデータセットを生成するために、腱における少なくとも1つのストレス分布を推定することを実施する。かかる態様の一部においては、本書で開示しているシステム又はコンピュータ可読媒体の命令は更に、少なくとも、腱の少なくとも1つの寸法を使用して、腱におけるストレス分布を推定することを実施する。かかる態様の一部においては、本書で開示しているシステム又はコンピュータ可読媒体の命令は更に、少なくとも、腱の故障に至るまでの反復回数に対する腱に印加される少なくとも1つの力の図示を含む、少なくとも1つのサイクル曲線を使用して、腱におけるストレス分布を推定することを実施する。
【0038】
[0038]上記の及び/又はその他の態様及び利点は、以下に記載の例の詳細説明を、添付図面と併せて参照することによって、より明白になり、かつより容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】[0039]本書で開示している一部の態様による、例示的な方法ステップを概略的に示すフロー図である。
【
図2】[0040]本書で開示している一部の態様による、例示的な方法ステップを示す概略図である。
【
図3】[0041]本書で開示している一部の態様による、例示的な方法ステップを示す概略図である。
【
図4】[0042]様々な例による、腱に対する反復性ストレス障害のリスクを低減させるための少なくとも1つのガイドラインを提供する方法を示すフロー図である。
【
図5】[0043]本書で開示しているある種の態様とともに使用されるのに適した、例示的なシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
[0044]これより、例示的な態様について、添付図面を参照しつつ、より網羅的に説明していく。しかし、本開示の例は、多数の異なる形態で具現化されてよく、本書に記載されている例に限定されると解釈すべきではない。むしろ、これらの例は、この開示は網羅的で完全なものとなるよう、かつ本開示の範囲が当業者に十分に伝わるように、提示されている。図面においては、厳密な構造的精度、詳細事項、及び/又は縮尺が維持されているわけではなく、詳細事項の一部は簡略化され、かつ/又は理解を促進するよう図示されていることがある。
【0041】
[0045]ある要素が、別の構成要素「の上にある(on)」、「に関連付けられた(associated with)」「に接続された(connected to)」、「に電気的に接続された(electrically connected to)」、又は「に連結された(coupled to)」と記載されている場合、このある要素は、直接的に、別の構成要素の上にあること、別の構成要素に関連付けられていること、接続されていること、電気的に接続されていること、若しくは連結されていることも、又は、介在する構成要素が存在することもあると、理解されよう。これに対して、ある構成要素が、別の構成要素「の直上にある(directlyon)」、「に直接関連付けられた」「に直接接続された(directly connected to)」、「に直接電気的に接続された(directly electrically connected to)」、又は「に直接連結された(directly coupled to)」と記載されている場合、介在する構成要素は存在しない。本書で使用される場合、「及び/又は(and/or)」という語は、関連して列挙されるアイテムのうちの一又は複数のアイテムのあらゆる組み合わせを含む。
【0042】
[0046]本書では、様々な要素、構成要素、及び/又は方向について説明するために、第1や第2といった語が使用されうるが、これらの語によってかかる要素、構成要素、及び/又は方向が限定されるものではないと、理解されよう。これらの語は、一方の要素、構成要素、及び/又は方向を、他方の要素、構成要素、及び/又は方向から区別するためにのみ使用される。例えば、第1の要素、構成要素、及び/又は方向は、例による教示から逸脱しなければ、第2の要素、構成要素、及び/又は方向と呼ばれる可能性もある。
【0043】
[0047]空間に関連する語(例えば「下方(beneath)」、「下(below)」、「下側(lower)」、「上(above)」、「上側(upper)」など)は、本書では、図面に示している、ある構成要素及び/若しくは特徴と、別の構成要素及び/若しくは特徴、又はその他の構成要素(複数可)及び/若しくは特徴(複数可)との関係について述べる説明を容易にするために使用されうる。これらの空間に関連する語は、図に示している配向(複数可)に加えて、使用されている又は動作しているデバイスの様々な配向を包含することが意図されていると、理解されよう。
【0044】
[0048]本書で使用される場合、所与の「構成要素(component)」及びこれに対応する「構成要素コネクタ(component connector)」とは、少なくとも2つの構成要素であって、互いに、接合され、動作可能に接続され、若しくは別様に関連付けられるよう、構造化されているか、又は別様にそのように動作可能である、少なくとも2つの構成要素のことである。ある種の態様では、1つの構成要素は、複数の構成要素コネクタに接合され、動作可能に接続され、又は別様に関連付けられるよう、構造化されるか、又は別様にそのように動作可能である。一部の態様では、1つの構成要素コネクタは、複数の構成要素に接合され、動作可能に接続され、又は他の方法で関連付けられるよう、構造化されるか、又は別様にそのように動作可能である。
【0045】
[0049]本書で使用される場合、「対象(subject)」とは、哺乳動物種(例えばヒト)、又は鳥類種(例えば鳥)、又は非哺乳動物種(例えば魚、軟体動物、爬虫類、両生類など)といった、動物のことである。より具体的には、対象とは、脊椎動物(例えば、マウス、霊長類、類人猿、又はヒトといった哺乳動物)でありうる。動物とは、家畜(例えば肉牛、乳牛、家禽、ウマ、ブタなど)、スポーツアニマル、及びコンパニオンアニマル(例えばペットやサポートアニマル)を含む。対象とは、健康な個体であることも、疾患若しくは疾患素因を有するか又はそのように疑われる個体であることも、又は、治療を必要としているか又はそのように疑われる個体であることもある。
【0046】
[0050]本書で使用している用語は、単に特定の例を説明するという目的のためのものであり、例を限定することを意図するものではない。本書で使用される場合、単数形の「1つの(a/an)」及び「この/その/前記(the)」は、複数形も含むことを(そうではないことが文脈によって示されていない限りは)意図するものである。更に、「備える」及び/又は「含む」(comprises、comprising、includes、及び/又はincluding)」という語は、この明細書中で使用される場合には、記載されている特徴、整数、ステップ、工程、要素、及び/又は構成要素の存在を示すが、その他の一又は複数の特徴、整数、ステップ、工程、要素、構成要素、及び/又はこれらの群の存在又は追加を排除するものではないと、理解されよう。
【0047】
[0051]本書で使用されている全ての語(技術用語及び科学用語を含む)は、特段に定義されていない限り、例が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。更に、語(例えば、一般的に使用される辞書で定義されている語)は、関連する技術分野の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈すべきであり、理想化された意味又は過度に形式的な意味であると(本書で明確にそのように定義されていない限りは)解釈すべきではないと、理解されよう。
【0048】
[0052]I.導入
[0053]本開示は、ある種の態様では、(例えば異なる姿勢における)力、ストレス分布、ストレスデータ、及び材料(腱など)の性能パラメータ(例えば健康状態、治癒、蓄積損傷、及び被損傷)といった、材料科学原理に基づいて腱使用を決定し、予測するための、方法、システム、コンピュータ可読媒体、及び関連するモデルに関する。本開示は、材料科学原理と腱との間の有用な相関関係を特定する。一部の応用においては、予測モデルは、障害の可能性を阻止するか、さもなければ軽減するためのガイドラインを通知し、確立するために、タスクに関連する人間工学的問題に対処する際に使用される。本開示の多くの部分は、肩部障害及び棘上筋腱を主な対象としているが、本書で開示している方法及び関連態様は、実質的に、任意の軟組織(対象となる椎間板(脊髄板)、靭帯、腱、及び腱系など)にも、バイオミミクリー(biomimicry)応用(例えば人工腱の設計)においても、適用されうる。
【0049】
[0054]更なる導入としては、作業現場において作業を実施するための肩の使用は、過酷な作業環境においては問題となる。肩部損傷は、作業現場外でも(例えば、自宅にいる時、及びスポーツ又はその他の人的活動に参加している時に)しばしば発生する。既存のガイドラインは、作業現場における肩ベースの作業活動の明確かつ許容可能な限度を提供しておらず、姿勢と力と反復との相互作用も、姿勢と力と反復と持続時間と振動との相互作用も、勘案してもいない。肩の運動を単にやめることはできない作業者は、様々な程度の未知のリスクに直面している。したがって、力と反復と姿勢との相互作用及び作業/休止サイクルを含む上肢作業の複雑な特質に対処する、肩関節需要(demand)に関する確実な閾値限度ガイドラインが必要とされている。かかるガイドラインは、生産技術者及び人間工学専門家にとって非常に有用であるが、同時に、内科医、理学療法士、スポーツ医学施術者、スポーツコーチ等にとっても役立つものになりうる。
【0050】
[0055]i.職業的な及び非職業的な肩の不具合は重大問題
[0056]過酷な作業現場(例えば高負荷製造、溶接、漁業、食肉処理、高負荷機械加工、自動車修理、及び塗装の現場)において、肩の不具合が一般的かつ高頻度であることは、これまでに多く文書化されている。アメリカ労働統計局の2013年のデータは、肩部への累積外的損傷が、全ての作業現場筋骨格損傷のうちの15%を占めたことを示している。肩部損傷は、腰背部及び背部一般の損傷だけがそれを上回ったものの、より深刻な傾向があり、より多くの時間損失をもたらしていた。典型的な肩部損傷は21日間の作業日逸失をもたらしていたが、これは、その他の筋骨格損傷の作業逸失(11日間)のほぼ2倍であり、背部損傷の作業逸失(7日間)の3倍であった。被雇用者が逸失する作業日の各々は、被雇用者自身及び彼らの家族のみならず、生産スケジュール、製品品質、及びチームメンバーが障害で不在の場合に追加作業を実施する同僚にも、多大な影響を与える。
【0051】
[0057]ii.肩の機能
[0058]肩の機構が、肉体労働又は工具集約型の組み立てを行う上で人体の最も有用な部分である手の配置、機能、及び制御を可能にしている。手(したがって腕も)及び肩は、溶接し、塗装し、穿孔し、切断し、魚を処理し、又は材料を扱うように動く。工具、手、及び肩システムは、頭上に、又は到達困難な場所に位置付けられることが多い。肩複合体は、腕の重量と、作業を実施するために保持されている工具があればそれと、印加される力とを支持する必要がある。工具が関与する肉体労働の大部分は、作業期間の過程において多数回反復されるべきタスクを含む。
【0052】
[0059]ニュートラルな肩部姿勢では、上腕部が真っ直ぐに体側に沿って垂れている。肩がそのニュートラル位置から外れるたびに、腱には引張力がかかり、腱の内部にストレスが生じる。肩がニュートラル位置から離れるように動くたびに、力及び反復が生じ、腱は累積疲労損傷に曝露される。
【0053】
[0060]iii.リスクガイドラインは不十分
[0061]肩の痛み又は回旋腱板損傷と作業現場の要因とを関連付ける研究により、頭上作業(肘が肩の上に来るものと定義される)、印加される力、反復動作、及び物理的負荷が、重要な寄与要因であると特定されている。しかし、かかる研究の質は様々であり、エビデンスが常に有意な用量‐反応関係(dose‐response relationship)を示すわけではなかった。しかしその後、2つの研究により、上腕部が90度を越えて上昇することと、MRIで検出された腱損傷又はインピンジメント手術という特定の結果とが関連付けられた。ある報告は、特に、回旋腱板の腱不具合結果における作業現場の要因のエビデンスに焦点を合わせて、研究が不足していることを見出した。
【0054】
[0062]特定の結果を伴う研究であっても、かかる研究文書における曝露評価は大雑把でありすぎ、結果分類も、「用量と反応」との間、又は「曝露とリスク」との間に強固な定量的関連付けを確立するのに十分なほど具体的ではない。その結果として、肩需要障害リスクについての現行の既刊のガイドラインは、職業的な人間工学的障害の防止プログラムにおいて使用されるには不十分なものとなっている。かかるガイドラインは、単に頭上の又は伸長した肩姿勢を低減又は排除することを推奨しているだけであり、障害率に有意に影響を与えるためにはどの程度の低減が必要であるかは記載していない。
【0055】
[0063]一部の業界では、反復的な、不器用な、又は負荷がかかる(taxing)肩使用をなくすことは実行不可能であるが、それを改善することは可能である。使用可能なリスク閾値なくしては、障害を防止するために上記のリスク要因がどの程度削減されるべきかという問いは存在し続ける。この種の作業は多大な反復動作(塗装)及び/又は力(穿孔)及び/又は負荷(溶接)を伴いうるので、かかる問いは更に複雑なものになる。有用なガイダンスがあればそれは、リスク要因の相互作用及び作業/休止サイクルも含むはずである。
【0056】
[0064]iv.新たなアプローチ
[0065]疫学的データのみを用いて因果律(causality)を確立することはできないと考えると、代替的なアプローチが必要となる。本書で開示しているモデル及び関連態様は、従来型の疫学的研究が埋めることができなかったギャップの多くを橋渡しするものであり、ある種の態様では、障害を予測し、防止するために、代替的に、累積損傷の疲労モデルを使用する。
【0057】
[0066]「疲労(fatigue)」という語は、この開示全体を通じて、生理学上の疲労(筋肉収縮力が低下したせいで活動を実施できなくなること)ではなく、その機械的な意味(反復的な力による構造劣化)で使用されている。「合力(resultant force)」という語は、腱にかかる引張力であって、工具重量、身体分区の姿勢、及び作業者によって工具に印加される力、によって生じる引張力を示すために使用されている。より一般には、「合力」とは、作業中に軟組織に作用する力の組み合わせのことであり、姿勢(例えば肩の位置)、振動、工具重量、手で印加される力ベクトル、腕の重量などを含む。引張力は肩に関連しているが、その他の軟組織(例えば椎間板)には圧縮力が加わりうる。他の種類の軟組織には、圧縮力と引張力の両方が加わることもある。
【0058】
[0067]v.腱の断裂未満損傷
[0068]人々が身体的活動に従事している時に、軟組織に対する反復性ストレスの効果によって、小さな裂け目(微小外傷又は断裂未満損傷と称されることが多い)が生じる。断裂未満損傷自体は身体に有害ではない。なぜなら、身体は、十分な回復期間があれば、身体自体を修復して強化するからである。これはエクササイズの根本的な利点である。回復期間が不十分であると、腱は損傷され、最終的には障害が発生する。腱の使用(又は過剰使用)にあたっての十分な回復期間はこれまで、不確定であり、未知であり、又は規定されていなかった。
【0059】
[0069]姿勢と力と持続時間と振動と反復との相互作用を勘案している、肩ベースの作業活動の明確かつ許容可能な限度及び休止サイクルを提供する、確実なガイドラインが必要とされている。
【0060】
[0070](特に頭上作業、反復、及び力が存在する)重工業及びスポーツでは、本書で開示している、棘上筋腱の疲労と修復期間に関するモデルは有利である。腱は、材料のように(所与のストレスレベル及びサイクルにおいて疲労故障が予測可能であるように)挙動するが、自己修復が可能でもある。
【0061】
[0071]本書で提示しているアプローチは、例えば、材料科学及び医学の原理を活用して、上記のようなモデルを提案するものである。このモデルは、肩の過剰使用による障害を予測し、防止するために、曝露限度を設定し、使用に適した作業/休止サイクルを作成すために使用されてよく、肩部障害を軽減し、減少させるための既存のアプローチに大きな変化を引き起こしうる。
【0062】
[0072]本書で開示しているモデルは、ある種の態様では、腱挙動の全ての態様を含むわけではない。職業的肩部障害の有病率は、現在行われている限定的な研究量を上回るものであり、航空宇宙技術者、疲労に関する専門家、整形外科医、及び産業人間工学の専門家といった多様なグループ間には、労働者の健康にとって多大な利益となりうる、多数の共同研究の機会がある。
【0063】
[0073]本書で開示しているモデルは、例えば、合理的な腱の負担又はストレス閾値を上回る作業業務を再設計するため、コラーゲンの損傷及び修復の速度に基づいて作業‐休止サイクルを作成するため、このモデルが控え目なもの(conservative)ではない個人を特定するため、ならびに、筋力トレーニングを実装して腱材料の特質を向上させるために、使用されうる。
【0064】
[0074]本開示の技法は腱に限定されるわけではないことに留意されたい。本書に記載しているように、例は限定ではなく例示として、肩部の腱に関連して提示されている。しかし、例は肩部の腱に限定されるわけではない。他の種類の軟組織(椎間板(脊髄板)や靭帯など)も、本書で開示している例を使用する解析及び障害改善の対象となりうる。
【0065】
[0075]II.例示的な方法
[0076]本開示は、色々な、腱損傷モデルを生成する方法、及び腱材料反復性ストレスについてのガイドラインを作成する方法を提示している。かかる方法のある種の態様を、
図1から
図3に概略的に示している。図示しているように、方法100は、一又は複数のS‐N曲線データセットから、少なくとも1つの腱の一又は複数の物理的レジーム(状態)についての一又は複数のS‐N曲線を生成すること(ステップ102、204)を含む。所与のS‐N曲線は、典型的には、腱の故障に至るまでの反復回数に対する、腱に印加されるストレスの大きさの図示を含む。上記の各プロセスのモデル構成要素は、損傷蓄積の4つのレジームであって、1)無損傷、2)ミクロ損傷(断裂未満損傷)蓄積、3)成長しつつある断裂若しくは裂け目、細胞マトリクス損傷、又はその他の生物学的損傷という形態の損傷蓄積、及び4)腱構造の破壊的な故障又は分離の状態、の4つのレジームを特定する。方法100は、腱を描写する一又は複数の反復性ストレスデータセットを生成すること(ステップ104、216)も含む。方法100は、S‐N曲線(222)又はS‐N曲線から導出されたデータを反復性ストレスデータセット(216)と組み合わせて、一又は複数の条件のもとでの腱に対する損傷を予測し、腱損傷モデル(例えば、所与の条件セットのもとでの腱損傷の、物理的又は有形の表現又は情報)を生成すること(ステップ106、216)も含む。ある種の態様では、方法100は、典型的には、腱損傷モデルから、腱の腱材料反復性ストレスについての少なくとも1つのガイドラインを作成すること(ステップ108、224)も含む。本書で使用される場合「ガイドライン(guideline)」という語は、人的活動(製造又はその他のプロセスなど)における腱損傷による障害のリスクから人体組織材料を保護するための、力(例えば振動、工具重量、手で印加される力ベクトル、腕の重量など)、姿勢、位置、頻度、持続時間、及び/又は回復に関する、エビデンスに基づく許容可能な最大限度の、推奨されるセットのことである。一部の態様では、ガイドラインは、腱の姿勢、腱の所与の運動の反復回数、腱に印加される力、腱の所与の姿勢を維持する持続時間、腱の所与の運動の反復の持続時間、腱に所与の力が印加される持続時間、及びこれらの組み合わせ、を含む。同じく図示しているように、方法は、ある種の態様では、所与の筋肉の活動(302)、及び所与の腱の損傷(304)を評価することも含む。
【0066】
[0077]本開示の方法は様々な態様を含む。一部の態様では、方法は、例えば、物理的レジームについての複数のS‐N曲線を組み合わせて、組み合わされたS‐N曲線(222)を生成することを含む。ある種の態様では、方法は、一又は複数の条件のもとでの腱に対する損傷を予測するために、S‐N曲線(204)又はS‐N曲線から導出されたデータを反復性ストレスデータセット(216)と組み合わせる時に、累積損傷モデルを適用することを含む。一部の態様では、方法は、医療診断法を含む一又は複数のデータソース(例えば超音波データ、コンピュータ化軸断層撮影(CAT)スキャンデータ、磁気共鳴イメージング(MRI)スキャンデータ、破壊試験データ、死体材料、動物材料、ポリマー代用材料、分子動力学モデリング(MDM)データ、刊行物データ、及びこれらの組合せ)を使用して、S‐N曲線データセットを取得すること(202、204、206)を含む。
【0067】
[0078]実質的にどの腱も、本書で開示している方法の一部として評価されうる。オプションで使用される例示的な腱の一部は、小円筋腱、棘下筋腱、棘上筋腱、肩甲下筋腱、三角筋腱、上腕二頭筋腱、上腕三頭筋腱、腕橈骨筋腱、回外筋腱、橈側手根屈筋腱、尺側手根屈筋腱、橈側手根伸筋腱、短橈側手根伸筋腱、腸腰筋腱、内閉鎖筋腱、長内転筋腱、短内転筋腱、大内転筋腱、大殿筋腱、中殿筋腱、大腿四頭筋腱、膝蓋腱、ハムストリング腱、縫工筋腱、腓腹筋腱、アキレス腱、ヒラメ筋腱、前脛骨筋腱、長腓骨筋腱、長趾屈筋腱、骨間腱、深指屈筋腱、小指外転筋腱、母指対立筋腱、長母指屈筋腱、伸筋腱、長母指外転筋腱、長母趾屈筋腱、短趾屈筋腱、虫様筋腱、母趾外転筋腱、長趾屈筋腱、小指外転筋腱、眼筋腱、眼瞼挙筋腱、咬筋腱、側頭筋腱、僧帽筋腱、胸鎖乳突筋腱、頭半棘筋腱、頭板状筋腱、顎舌骨筋腱、甲状舌骨筋腱、胸骨舌骨筋腱、腹直筋腱、外腹斜筋腱、腹横筋腱、広背筋腱、脊柱起立筋腱、及びこれらの組み合わせ、を含む。一部の態様では、腱は哺乳動物の腱を含む。かかる態様のうちの特定のものにおいては、哺乳動物の腱はヒトの腱を含む。
【0068】
[0079]ある種の態様では、方法は、S‐N曲線又はS‐N曲線から導出されたデータ及び反復性ストレスデータセットを、治癒データ(212)と組み合わせて、一又は複数の条件のもとでの腱に対する損傷を予測することを含む。本開示は、一部の態様では、対象における腱損傷を予測する方法を提供し、この方法は、対象の少なくとも1つの腱についての一又は複数の使用データセットを取得することと、使用データセットと、前記方法によって作成された腱材料反復性ストレスについてのガイドラインとを比較することによって、対象における腱損傷を予測することと、を含む。ある種の態様では、物理的レジームは、無損傷レジーム、断裂未満損傷レジーム、亀裂開始レジーム、破断レジーム、又は曲線、及びこれらの組み合わせ、を含む。一部の態様では、一又は複数のステップは、少なくとも部分的にコンピュータ実装される。本書では、システム及び関連するコンピュータ可読媒体についても更に説明する。
【0069】
[0080]一部の態様では、方法は、腱損傷モデル(214)から、腱の腱材料反復性ストレスについての少なくとも1つのガイドライン(224)を作成することを含み、このガイドラインは、腱の姿勢、腱の所与の運動の反復回数、腱に印加される力、腱の所与の姿勢を維持する持続時間、腱の所与の運動の反復の持続時間、腱に所与の力が印加される持続時間、及びこれらの組み合わせ、を含む。かかる態様の一部においては、腱材料反復性ストレスについてのガイドラインは、一又は複数の使用条件のセットのもとでの、一又は複数の推奨される腱の使用/休止サイクルを含む。方法は、典型的には、腱材料反復性ストレスについてのガイドラインを検証することを含む。かかる態様の一部においては、方法は、ガイドラインに所与の対象に関する一又は複数の人口統計学的変数を適用すること(226)によって、この対象向けにガイドラインを個別化することを含む。かかる態様のうちのある種のものにおいては、方法は、ガイドラインを作成する時にタスク情報を使用することを含む。かかる態様のうちのある種のものにおいては、タスク情報は工具重量及び/又は力ベクトルを含む。
【0070】
[0081]ある種の態様では、方法は、反復性ストレスデータセットを生成するために、腱における少なくとも1つのストレス分布を推定すること(218)を含む。かかる態様の一部においては、方法は、腱の少なくとも1つの寸法(220)を使用して、腱におけるストレス分布を推定することを含む。かかる態様のうちのある種のものにおいては、寸法は腱の少なくとも1つの断面積を含む。かかる態様の一部においては、方法は、腱の故障に至るまでの反復回数に対する腱に印加される少なくとも1つの力の図示を含む、少なくとも1つのサイクル曲線(210)を使用して、腱におけるストレス分布を推定することを含む。かかる態様のうちのある種のものにおいては、力は、腱の一又は複数の姿勢において決定される(208)。かかる態様の一部においては、方法は、推定及び/又はモデリングの技法(有限要素モデリング(FEM)及び/又は筋電図検査(EMG)など)を使用して、力を決定することを含む。かかる態様の一部においては、方法は、腱のかかる姿勢において印加される力を決定する時に、タスク情報を使用することを含む。一部の態様では、タスク情報は工具重量及び/又は力ベクトルを含む。
【0071】
[0082]一部の態様では、S-N曲線を組み合わせるプロセスは、複数の曲線及び治癒を中心とした累積損傷モデリングを伴う。例示としては、ある例は、反復性ストレスデータセット(このセットは、例えば、あるタスクの途中に対象に生じる可能性がある曝露に対応している可能性がある)であって、
[0083]タスクAの力:150N 反復:50
[0084]タスクBの力:100N 反復:500
[0085]タスクCの力:50N 反復:5000
を含む、反復性ストレスデータセットを含む可能性がある。
【0072】
[0086]反復回数は、ある種の態様では、タスクを観察すること又はサンプリングすることによって導出される。ストレス数値は、一部の態様では、タスク実施中の対象の手/腕の位置のデジタルモデルに、対象が支えている負荷があればそれを加えたものによって導出される。出力は力(N)となる。ストレスは、腱の断面積(この例では50mm2)で力を除算したものである(例えばSSTジオメトリモデル)。これにより、タスクAのストレス=3Mpa、タスクBのストレス=2Mpa、及びタスクCのストレス=1MPaが得られる。この例示では、S-N曲線について、無損傷がどこに発生するかに関する情報、及び4MPaの1000サイクルで(これはS-N曲線に沿った一点である)無損傷レジームが終わる(そして断裂未満損傷が始まる)という情報も、使用可能である。
【0073】
[0087]上記の数値は全て、対象となっている腱の損傷量を確定するために組み合わされる。一部の態様では、このプロセスの一部として、マイナーの法則(Miner’s Rule)が使用される。マイナーの法則では、1を超過すれば、それはすなわち、比較のために選択されたS-N曲線を超過することを意味する。この場合、無損傷レジームが選択されているので、1を超過するということは、無損傷レジームが適用されなくなり、他のレジームのうちの1つが代わりに適用されることを意味する。
【0074】
[0088]上記のタスクは無損傷レジーム限度と組み合わされて、(3MPa*50+2MPA*500+1MPa*5000)/(4MPa*1000)=1.53という値が得られる。これは、>1であるので、無損傷レジームを超過していることを意味する。また、所与のガイドラインに全くの無損傷が望ましいと記載されている場合には、このガイドラインを超過していることになる。ゆえに、>1であれば、次のレジーム(例えば断裂未満損傷)が計算されることが必要になり、その後にはまた次のレジームの計算が必要になるかもしれず、これが破断レジームに至るまで続く。一部の態様では、複数のタスクがその間の休止期間と組み合わされる場合、治癒データも適用される(例えば、曝露の割合の低減、曲線上の低位置点への移動など)。
【0075】
[0089]この例示における上述した計算は、1回のイテレーション(iteration)につき1つのポイントソリューション(ただ1つの数値及び回答)を提供する。モデルの忠実度を向上させるには、このイテレーションが数回実行され、例えばSSTジオメトリの分布、腱にかかる力のデジタルモデル、及び(オプションで)反復における何らかの変動から、サンプリングを行うことが可能である。例えば、これは、モンテカルロシミュレーションと同様に若干異なる確率入力を伴って複数回実行されるモデルでありうる。これにより、周囲に何らかの境界又は区域(band)を有するリスク出力(例えば95%信頼区間など)が提供される。オプションで、その他の変数(人口統計など)もモデルに追加される。
【0076】
[0090]
図4は、様々な例による、プロセスの実施における軟組織の反復性ストレス障害を低減する(例えばなくす)方法400を示すフロー図である。方法400は、方法400に関連して本書で説明しているように実装されると、プロセスを実装する人々に対する障害の可能性を低減するガイドラインを決定するために、かかる軟組織の材料科学的特質を利用しうる。方法400は、例えば
図5に図示されており、
図5を参照して後述するシステム500を使用して、部分的に実装されうる。方法400は、産業衛生の分野における改善をもたらす、コンピュータ外の活動を更に含む。かかる活動は、例えば、軟組織及びプロセスに関連する反復性ストレスデータセット(例えば、軟組織の面積あたりの力及び反復回数についての記述)を取得することと、プロセスにおける個人に対する反復性ストレス障害の可能性を低減するためのガイドラインを実装することと、を含む。
【0077】
[0091]方法400は、例えば製造プロセスの一部を実施する作業者の、反復性ストレス障害を改善するために使用されうる。各作業者は、例えば組み立てライン上で、製造プロセスの一部を形成する一又は複数のタスクを有しうる。各作業者のタスクは、方法400によって作成される一又は複数のガイドラインによって改変されうる。あるいは、方法400は、例えばトレーニングプログラムを実行するアスリートの、反復性ストレス障害を改善するために使用されうる。アスリートは、トレーニングプログラムの一部を形成する一又は複数のエクササイズを有しうる。かかるエクササイズは、方法400によって作成される一又は複数のガイドラインによって改変されうる。一般に、方法400は、人員による反復運動を含むあらゆる種類のプロセス(製造又はスポーツのプロセスに限定されるわけではない)における、反復性ストレス障害を改善するために実践されうる。
【0078】
[0092]方法400は、あらゆる多種多様な軟組織に対する障害を改善するために使用されうる。一部の例によると、方法400は、腱又は腱複合体に対する障害を改善するために使用されうる。かかる腱及び腱複合体の例については、上記で
図1から
図3を参照して提示している。あるいは、方法400は、結合組織又は筋骨格軟組織に対する障害を改善するために使用されうる。一般に、例が実装されうる軟組織の非限定的な例は、腱、腱複合体、椎間板(脊椎板)、及び靭帯を含む。
【0079】
[0093]方法400は、402において、軟組織及びプロセス関連した少なくとも1つの反復性ストレスデータセットを取得する。この反復性ストレスデータセットは、コンピュータファイルの形態(例えば、タブ区切り値書式又はカンマ区切り値(CSV)書式)でありうる。反復性ストレスデータセットは、非限定的な例としては、コンピュータによって固定電子記憶装置から読み取られることによって、又はデータがファイルフォーマットに入力され、コンピュータに記憶されることによって、取得されうる。
【0080】
[0094]一部の例によると、反復性ストレスデータセットの各々は、プロセス全体の一部を形成する1つのタスクを完遂する過程を通じて対象に生じる可能性がある、曝露を表現しうる。この曝露は、反復回数、及び一反復あたりの軟組織にかかる力という形態でありうる。力は、例えばニュートン(N)の単位で表わされうる。あるいは、反復性ストレスデータセットの各々は、反復回数、及び一反復あたりの軟組織にかかるストレスという形態でありうる。このストレスは、姿勢(例えば肩の位置)、振動、工具重量、手で印加される力ベクトル、腕の重量などによるストレスを含む、集合ストレスでありうる。ストレスは、例えばメガパスカル(MPa)の単位で表わされうる。
【0081】
[0095]反復性ストレスデータセットの各々は、各反復での運動についての(例えば記述形式の)記載を更に含みうる。複数の反復性ストレスデータセットは、複数の種類の運動について説明するためのものでありうる。方法400では、コンピュータ可読形式で(例えばユーザ入力によって)反復性ストレスデータセットを獲得し、かかる反復性ストレスデータセットをコンピュータプログラム(これにより、例えばブロック402、404、406、及び少なくともブロック408の一部の動作が実施される)に提供することによって、反復性ストレスデータセット(複数可)が取得されうる。
【0082】
[0096]方法400は、404において、少なくとも2つの損傷レジームを特徴付ける情報にアクセスする。この情報は、コンピュータファイルの形態(例えば、タブ区切り値書式又はカンマ区切り値(CSV)書式の値の対)でありうる。情報は、非限定的な例としては、コンピュータによって固定電子記憶装置から読み取られることによって、又は情報が受信され、コンピュータに記憶されることによって、アクセスされうる。
【0083】
[0097]様々な例によると、方法400は、第1損傷レジームを特徴付ける第1情報、及び第2損傷レジームを特徴付ける第2情報にアクセスしうる。様々な例によると、方法400は更に、第3損傷レジームを特徴付ける第3情報にもアクセスしうる。各情報は、軟組織がそれぞれの損傷レジームから移行する、所与のストレスでの反復回数を定量化しうる。例えば、第1情報は、軟組織が第1損傷レジームから移行する、所与のストレスでの反復回数を定量化してよく、第2情報は、軟組織が第2損傷レジームから移行する、所与のストレスでの反復回数を定量化してよく、第3情報を含む例では、第3情報は、軟組織が第3損傷レジームから移行する、所与のストレスでの反復回数を定量化しうる。
【0084】
[0098]各情報は、軟組織がそれぞれの損傷レジームから移行する、所与のストレスでの反復回数を定量化する曲線の形態でありうる(例えば、独立変数であるストレス及び従属変数である反復を有する)。例えば、各情報は、様々な例によると、本書に記載のS-N曲線の形態でありうる。かかる情報は、コンピュータに記憶される時に、順序対(S、R)のセットの形態であってよく、ここで、Sは、それぞれのレジームから移行するための、ストレスを表わし、Rは反復回数を表わしている。
【0085】
[0099]様々な例によると、第1損傷レジームは無損傷レジームであってよく、第2損傷レジームは断裂未満損傷レジームであってよく、第3損傷レジームを含む例では、第3損傷レジームは断裂伝播レジームでありうる。(様々な例によると、本書に明示的に記載されているものに限らない、2つ以上の損傷レジームの任意の組み合わせが使用されうることに、留意されたい。)無損傷レジームは、軟組織内に、ミクロ損傷(例えば断裂未満損傷)が、それが治癒するのと実質的に同じ速度で発生している状況を表わしうる。無損傷レジームからの移行は、対象の軟組織の治癒速度よりも速い速度で断裂未満損傷が蓄積することを表わしうる。断裂未満レジームは、ミクロ損傷(例えば断裂未満損傷)が蓄積しているが、マクロ的断裂はまだ形成されていない状況を表わしうる。断裂未満レジームからの移行は、マクロ的断裂が形成されたことを表わしうる。断裂伝播レジームは、断裂が既に形成されており、軟組織を通って伝播している状況を表わしうる。断裂伝播レジームからの移行は、軟組織が完全に断裂したことを表わしうる。
【0086】
[00100]無損傷レジームと断裂未満レジームのいずれか又は両方を包含する例では、損傷が発生したと対象が認識する前に、対象の軟組織に対する損傷を予測することが可能であることに、留意されたい。例えば、軟組織は、これらのレジームにおいて損傷されていることがあるが、対象は痛みも不快も感じない。
【0087】
[00101]方法400は、406において、少なくとも、損傷レジームを特徴付ける情報及び反復性ストレスデータセットに基づいて、軟組織を損傷するのに十分な条件を予測する。損傷は、軟組織の治癒速度よりも速い速度でその軟組織に蓄積するミクロ損傷(例えば、第1レジームからの移行)、軟組織に生じるマクロ的断裂(例えば、第2レジームからの移行)、又は、軟組織に生じる完全断裂(例えば、第3レジームからの移行)、のうちのいずれでもありうる。
【0088】
[00102]予測では、かかる条件を決定するために、軟組織の材料科学的特質が利用されうる。一部の例によると、予測は以下のように実施されうる。第1に、既にストレスが得られていなければ、反復性ストレスデータセット中の力データが、ストレス単位に変換されうる。例えば、反復性ストレスデータセットは、一反復あたりの軟組織にかかる力に関するものでありうる。かかる力を軟組織の断面積で除算することによって、反復性ストレスストレスデータセットは、一反復あたりの(かつ/又は一反復あたりの)ストレス単位に変換される。そのためにシステムは、軟組織の断面積データを記憶していることがある。軟組織断面積データは、様々な種類の軟組織の平均断面積、人口統計的集合(例えば性別や年齢など)ごとの特定の断面積、又はかかるデータの組み合わせ、を含みうる。第2に、反復性ストレスデータセットが、損傷レジームを特徴付ける情報と比較される。例えば、SというストレスレベルでのR回の反復を表わす反復性ストレスデータセットでは、このストレスレベルSは、軟組織の現在の損傷レジームを表わす情報における独立変数と見なされてよく、その損傷レジームから移行するための反復回数という観点から、対応する従属変数R’が特定されうる。第3に、特定された従属変数である反復回数R’が、反復性ストレスデータセット中に記載されている反復回数Rと比較される。前者が後者よりも大きければ、軟組織は、その現在の損傷レジームに留まると予測され、したがって、追加の損傷は予測されない。しかし、前者が後者よりも小さいか、後者と等しければ、軟組織は、その反復性損傷レジームから移行すると予測される。この場合、軟組織は損傷を受けることが予測される。ゆえに、軟組織は、ストレスレベルSの場合の、反復性ストレスデータセット中に記載されている反復回数Rが、現在の損傷レジームから移行するための、現在の損傷レジームを特徴付ける情報のSに対応する反復回数R’と一致するか、又はかかる反復回数R’を超過した時に、損傷を受けると予測される。
【0089】
[00103]このプロセスは、複数の反復性ストレスデータセットを含むよう拡張されうる。例えば、様々な反復性ストレスデータセットからの反復とストレスレベルとの積が合計されうる。この合計値は、現在の損傷レジームを特徴付ける情報からのストレスレベルと反復回数との積と比較されうる。合計値の方が大きければ、軟組織は損傷を受けることが予測される。そうでなければ、軟組織は、現在の損傷レジームに留まると予測される。この比較では、
図1から
図3に関連して上記の例において言及したマイナーの法則が用いられうることに、留意されたい。
【0090】
[00104]方法400は、408において、少なくともかかる予測に基づいて、軟組織材料反復性ストレス障害のリスクを低減するための少なくとも1つのガイドラインを決定する。一般に、このガイドラインは、反復性ストレスデータセットのうちの一又は複数における、動作に対応する反復回数及び/又はストレス量を低減するものでありうる。かかるパラメータは、ブロック406に関連して上述した計算により無損傷が予測されるまで、低減されうる。パラメータがそのように低減されることで、ガイドラインの全部又は一部が形成されうる。
【0091】
[00105]一般に、ガイドラインは、いくつかのやり方のうちの任意のもので軟組織にかかる力を低減することによって、軟組織に対するストレスを低減しうる。軟組織にかかる力は、軟組織にかかる合力であって、姿勢(又は位置)、(例えば、腕の及び/又は工具などの物体の保持による)重量、印加される力ベクトル(例えば手で押すこと)、(手持ち工具などの振動する物体を保持することによる)振動などによりもたらされる力でありうる。一部の例によると、この力は、上記のパラメータのいずれに対する限定を行うことによって低減される。
【0092】
[00106]軟組織にかかる力は、代替的に又は追加的には、対象の身体又はその部分の位置及び/又は姿勢に対する限定を行い、ひいては、軟組織の位置及び/又は姿勢に影響を与えることによって低減されうる。様々な例によると、ガイドラインは、軟組織の位置及び/又は軟組織の姿勢の少なくとも一方に対する限定を含みうる。
【0093】
[00107]本書では、「位置(position)」とは、対象の身体又はその部分の定量的特性のことでありうる。例えば、位置は、測定機器を使用して、長さ、角度、又はx-y-z座標といった単位で規定されうる。例えば、腱の位置は、座標において(0cm、5cm、1cm)規定されてよく、この場合、原点(0cm、0cm、0cm)は、腱が上腕骨に付着しているところであり、座標は次の平面における位置に対応している:
x=矢状平面、y=横断面、及びz=冠状面様々な例によると、対象(又は対象の身体の一部分)の位置は、モーショントラッキングシステムを対象に取り付けることによって決定されうる。
【0094】
[00108]「姿勢(posture)」とは、対象の身体又はその部分の定量的特性のことでありうる。姿勢は、特定の目印の相対位置に関して規定されうる。例えば、「頭上作業(overhead work)」と称される特定の姿勢は、対象の肘が対象の肩よりも上にある状況であると規定されうる。一般に、姿勢は、観察され、別の観察又は位置と比較されうるように、定性的に身体位置を規定するものでありうる。様々な例によると、対象(又は対象の身体の一部分)の姿勢は、人間工学専門家又は生産技術者による観察研究によって決定されうる。
【0095】
[00109]代替的に又は追加的に、軟組織にかかる力は、運動、位置、又は姿勢の持続時間に対する限定を行うことによって低減されうる。つまり、ガイドラインは、軟組織の所与の姿勢を維持する持続時間、軟組織の所与の位置を維持する持続時間、軟組織の所与の運動の反復の持続時間、及び/若しくは軟組織に所与の力が印加される持続時間、のいずれか又はこれらの組み合わせに対して、限定を行いうる。
【0096】
[00110]一部の例によると、ガイドラインは強制(imposed)休止期間を含みうる。かかる例は、ミクロ損傷又はマクロ損傷を打ち消す治癒プロセスの表現を利用しうる。この休止期間は、かかる治癒プロセスがいかなる蓄積損傷も打ち消すのに十分な時間を表わしうる。
【0097】
[00111]ガイドラインは、多種多様な形状のうちの任意のもので出力されうる。一部の例によると、ガイドラインは、事前生成された記述式テンプレートを使用して、記述形式で出力される。例えば、反復回数が1000から725に低減されるべきであることを計算結果が示している場合、ガイドラインは、これらの数値を、部分的に「動作Xの反復回数はYからZに低減されるべきである」と書かれたテンプレートに移植しうる(ここで、Xは動作の記載に置き換えられ、Yは1000に、Zは725に置き換えられる)。この形式のガイドラインは、eメール又はその他の人員若しくはプロセスに対して情報を提供する任意の技法により、コンピュータモニタ上に表示されることによって出力されうる。
【0098】
[00112]方法400は、410において、ガイドライン(複数可)をプロセスで実装する。そうするために、方法400は、プロセスが製造プロセスである例では、組み立てライン上の作業者にガイドラインを提供することを含みうる。作業者は次いで、自分のタスクをガイドラインにしたがって変更しうる。プロセスがスポーツトレーニングプロセスである例では、ガイドラインはトレーナーに提供されてよく、トレーナーがアスリートのトレーニング計画をガイドラインにしたがって変更する。更に、ガイドラインは、製造システム、製品、作業タスク、トレーニング計画などを設計するためにも使用されうる。
【0099】
[00113]III.例示的なシステム及びコンピュータ可読媒体
[00114]本開示は、様々なシステム及びコンピュータプログラム製品又は機械可読媒体も提供する。一部の態様では、本書に記載の方法は、例えば、オプションで、少なくとも部分的に、システム、分散型のコンピューティングハードウェア及びアプリケーション(例えばクラウドコンピューティングサービス)、電子通信ネットワーク、通信インターフェース、コンピュータプログラム製品、機械可読媒体、電子記憶媒体、ソフトウェア(例えば機械実行可能なコード若しくはロジック命令)、ならびに/又はこれらに類似したものを使用して、実施されるか又は促進される。
図5には、例示として、少なくともこの出願で開示している方法の態様の実装とともに使用されるのに適した、例示的なシステムの概略図を提示している。図示しているように、システム500は、少なくとも1つのコントローラ又はコンピュータ(例えば、例としてはサーチエンジンサーバであるサーバ502)であって、プロセッサ504、及びメモリ、記憶デバイス、若しくはメモリ506を含む、コントローラ又はコンピュータと、一又は複数の別の通信デバイス514(例えばクライアント側のコンピュータ端末、電話、タブレット、ラップトップ、その他の携帯デバイスなど)であって、サーバ502からリモートに配置され、電子通信ネットワーク512(例えばインターネット又はその他の相互ネットワーク)を通じてサーバ502と通信する、通信デバイス514と、を含む。通信デバイス514は、典型的には、例えばネットワーク512経由でサーバ502と通信する、電子ディスプレイ(例えばインターネット対応型コンピュータなど)を含み、この電子ディスプレイは、本書に記載の方法を実装した結果を表示するために、ユーザインターフェース(例えばグラフィカルユーザインターフェース(GUI)、ウェブベースのユーザインターフェース、及び/又はこれらに類似したもの)を備える。ある種の態様では、通信ネットワークは、例えばハードドライブ、サムドライブ、又はその他のデータストレージ機構を使用する、ある場所から別場所へのデータの物理的伝送も包含する。システム500は、コンピュータ又は機械可読媒体(例えば、サーバ502のメモリ506といった、様々な種類のメモリのうちの一又は複数など)に記憶されたプログラム製品508であって、例えば一又は複数の別の通信デバイス(例えば、概略的にデスクトップコンピュータ又はパーソナルコンピュータとして図示しているコンピュータ514)によって実行可能なファイル(executable)を促進するために、サーバ502によって可読なプログラム製品508も含む。一部の態様では、システム500は、オプションで、直接的に又はサーバ502を通じて検索可能な、少なくとも1つのデータベースサーバ(例えば、対照サンプル又は比較結果のデータ、索引付きのカスタマイズされた療法などといったデータが記憶されているオンラインウェブサイトに関連付けられたサーバ510など)も含む。システム500は、オプションで、サーバ502からリモートに配置された一又は複数の別のサーバであって、その各サーバが、オプションで、その各サーバに対してリモート又はローカルに配置された一又は複数のデータベースサーバ510に関連付けられている、一又は複数の別のサーバも含む。かかる別のサーバは、有利には、地理的に離れたユーザにサービスを提供し、地理的に分散したオペレーションを強化しうる。
【0100】
[00115]当業者には理解されているように、サーバ502のメモリ506は、オプションで、揮発性及び/又は不揮発性のメモリ(例えばRAM、ROM、及び磁気ディスク若しくは光ディスクなどを含む)を含む。同様に、図示しているサーバ502の構成は、単一のサーバとして例示しているがそれは例として付与されているだけであり、他の様々な方法又はアーキテクチャにしたがって構成されたその他の種類のサーバ又はコンピュータも使用されうることが、当業者には理解されている。
図5に概略的に示しているサーバ502は、サーバ又はサーバクラスタ若しくはサーバファームを表わしており、何らかの独立した物理サーバに限定されるわけではない。このサーバサイトは、サーバホスティングプロバイダによって管理されるサーバファーム又はサーバクラスタとしてデプロイされうる。サーバの数、ならびにサーバのアーキテクチャ及び構成は、システム500の使用、需要、及び容量の要件に基づいて増大しうる。当業者には同様に理解されているように、上記の態様におけるコンピュータ514は、例えばラップトップ、デスクトップ、タブレット、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、サーバ、又はその他の種類のコンピュータでありうる。当業者には周知であり、かつ理解されているように、ネットワーク512は、通信ネットワーク及び/又はローカルエリアネットワーク若しくはその他のエリアネットワークの部分を通じて一又は複数の別のコンピュータと通信する複数のコンピュータ/サーバのインターネット、イントラネット、電話通信ネットワーク、エクストラネット、又はワールドワイドウェブを含みうる。
【0101】
[00116]更に当業者に理解されているように、例示的なプログラム製品又はプログラム製品508は、オプションで、ハードウェアの機能を制御する順序演算の一又は複数のセットを提供し、動作を命令するマイクロコード、プログラム、クラウドコンピューティングフォーマット、ルーチン、及び/又はシンボリック言語の形態である。プログラム製品508は更に、例示的な態様によると、その全体が揮発性メモリ内に常駐することを必要とせず、当業者には周知でありかつ理解されている様々な方法にしたがって、必要に応じて選択的にローディングされうる。
【0102】
[00117]更に当業者に更に理解されているように、「コンピュータ可読媒体(computer-readable medium)」又は「機械可読媒体(machine-readable medium)」という語は、命令を実行のためにプロセッサに提供することに関係する、任意の媒体のことである。例示としては、「コンピュータ可読媒体」又は「機械可読媒体」という語は、例えばコンピュータによって読み取られる、本開示の様々な態様の機能又はプロセスを実装するプログラム製品508を記憶することが可能な、配布媒体、クラウドコンピューティングフォーマット、中間記憶媒体、コンピュータの実行メモリ、及びその他の何らかの媒体又はデバイス、を包含する。「コンピュータ可読媒体」又は「機械可読フォーマット」は、不揮発性媒体、揮発性媒体、及び伝送媒体を含むがそれらに限定されるわけではない、多数の形態をとりうる。例えば、不揮発性媒体は、光ディスク又は磁気ディスクを含む。揮発性媒体は、動的メモリ(例えば、所与のシステムのメインメモリ)を含む。伝送媒体は、同軸ケーブル、銅ワイヤ、及び光ファイバを含み、これらはバスを含むワイヤを含む。伝送媒体は、例えば無線及び赤外線のデータ通信などにおいて生成される、音波又は光波の形態をとることもある。コンピュータ可読媒体の例示的な形態は、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、フラッシュドライブ若しくはその他の磁気媒体、CD-ROM、その他の何らかの光媒体、パンチカード、紙テープ、穴パターンを有するその他の何らかの物理媒体、RAM、PROM及びEPROM、FLASH-EPROM、その他の何らかのメモリチップ若しくはカートリッジ、搬送波、又はその他の、コンピュータが読取可能な何らかの媒体、を含む。
【0103】
[00118]プログラム製品508は、オプションで、コンピュータ可読媒体からハードディスク又は類似の中間記憶媒体に複製される。プログラム製品508又はその部分は、実行される場合、オプションで、その配布媒体や中間記憶媒体などから、一又は複数のコンピュータの実行メモリへとローディングされ、コンピュータ(複数可)を、様々な態様の機能又は方法にしたがって作動するよう構成する。かかる工程は全て、例えばコンピュータシステムの分野の当業者には周知されている。
【0104】
[00119]更なる例示としては、ある種の態様では、この出願では、一又は複数のプロセッサと、このプロセッサと通信する一又は複数のメモリ構成要素とを含むシステムが提供される。メモリ構成要素は、典型的には、一又は複数の命令を含み、命令は、実行されると、プロセッサに情報を提供させ、この情報により、少なくとも1つの腱損傷モデル若しくはその構成要素、腱材料反復性ストレスの少なくとも1つのガイドライン若しくはその構成要素、及び/又はこれらに類似したものが(例えば、コンピュータ514などを介して)表示されること、ならびに/又は、別のシステム構成要素及び/若しくはシステムユーザから(例えば、コンピュータ514などを介して)情報を受信することが、行われる。
【0105】
[00120]一部の態様では、プログラム製品508は非一過性のコンピュータ実行可能命令を含み、この命令は、電子プロセッサ504によって実行されると、少なくとも、一又は複数のS‐N曲線データセットから、少なくとも1つの腱の一又は複数の物理的レジームについての一又は複数のS‐N曲線を生成することであって、所与のS‐N曲線が、腱の故障に至るまでの反復回数に対する、腱に印加されるストレスの大きさの図示を含む、一又は複数のS‐N曲線を生成することと、S‐N曲線又はS‐N曲線から導出されたデータを一又は複数の反復性ストレスデータセットと組み合わせて、腱損傷モデルを生成することと、を実施する。
【0106】
[00121]システム500は更に、典型的には、本書に記載の方法の様々な態様を実施するよう構成されている、追加のシステム構成要素を含む。これらの態様の一部では、かかる追加のシステム構成要素のうちの一又は複数がサーバ502からリモートに配置され、電子通信ネットワーク512を通じてサーバ502と通信するが、その一方、他の態様では、かかる追加のシステム構成要素のうちの一又は複数は、サーバ502にローカルに配置され、サーバ502と(すなわち、電子通信ネットワーク512が存在しない状態で)通信するか、又は例えばコンピュータ514と直接通信する。
【0107】
[00122]上記の開示では、分かりやすくするために、かつ理解が得られるように図示及び例を用いてかなり詳しく説明してきたが、この開示を読むことで、本開示の真の範囲から逸脱せずに、形態及び詳細事項における様々な変更が行われうること、及びかかる変更は付随する特許請求の範囲内で実践されうることが、当業者には自明となろう。例えば、全ての方法、システム、及び/若しくは構成要素部品、又はこれらの他の態様は、様々な組み合わせで使用されうる。全ての特許、特許出願、ウェブサイト、その他の刊行物若しくは文書、及び本書で引用されているこれらに類似したものは、その全体が、あらゆる目的のために、参照により援用されるが、その程度は、個々のアイテムのそれぞれが具体的かつ個別に、そのように参照により援用されることが示されたのと、同じ程度である。