(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】極性が増加したシリカ系疎水性粉粒体
(51)【国際特許分類】
C01B 33/18 20060101AFI20240927BHJP
C08L 33/08 20060101ALI20240927BHJP
C09D 1/00 20060101ALI20240927BHJP
F16L 59/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C01B33/18 Z
C01B33/18 C
C01B33/18 E
C08L33/08
C09D1/00
F16L59/00
(21)【出願番号】P 2022542369
(86)(22)【出願日】2021-01-06
(86)【国際出願番号】 EP2021050105
(87)【国際公開番号】W WO2021144170
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2023-09-29
(32)【優先日】2020-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビョルン ラザル
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー リジン
(72)【発明者】
【氏名】ウーリッヒ ボアズ
(72)【発明者】
【氏名】ベッティーナ ゲァハルツ カルテ
(72)【発明者】
【氏名】レミ ブリアン
(72)【発明者】
【氏名】マリア ナルジェロ
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/134275(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第3447038(EP,A1)
【文献】特表2010-501510(JP,A)
【文献】特開平08-253309(JP,A)
【文献】特表2012-518127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 - 33/193
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 -101/14
C09D 1/00
F16L 59/00 - 59/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカと、
炭化ケイ素、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、イルメナイト、チタン酸鉄、酸化鉄、ケイ酸ジルコニウム、酸化マンガン、グラファイト、カーボンブラック、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1つのIR-乳白剤と、
を含み、
シリコン原子を含む表面処理剤で疎水化されたシリカ系粉粒体であり、
a)DIN ISO 15901-1に準拠した水銀圧入法により測定した、4nmを超える細孔の累積細孔容積が2.5cm
3/gを超え、
b)タンピング密度が140g/L~290g/Lであり、
c)水素化リチウムアルミニウムとの反応により測定した、BET表面積に対するシラノール基の数d
SiOHが少なくとも0.5SiOH/nm
2であり、
d)BET表面積に対する前記表面処理剤中のシリコン原子の数d
[Si]が少なくとも1.0[Si原子]/nm
2である、
粉粒体。
【請求項2】
ヒュームドシリカ、沈降シリカ、シリカエアロゲル、シリカキセロゲル、およびそれらの混合物から選択されるシリカを30重量%~95重量%含む、請求項1記載の粉粒体。
【請求項3】
炭化ケイ素、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、イルメナイト、チタン酸鉄、酸化鉄、ケイ酸ジルコニウム、酸化マンガン、グラファイト、カーボンブラック、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのIR-乳白剤を1重量%~70重量%含む、請求項1または請求項2記載の粉粒体。
【請求項4】
前記シリコン原子を含む表面処理剤が、オルガノシラン、シラザン、非環式ポリシロキサン、環式ポリシロキサン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~請求項3のいずれか一項記載の粉粒体。
【請求項5】
中央粒径値d
50が10μm~5,000μmである、請求項1~請求項4のいずれか一項記載の粉粒体。
【請求項6】
その少なくとも5重量%が、200μm未満の粒径を有する、請求項1~請求項5のいずれか一項記載の粉粒体。
【請求項7】
炭素含有量が0.5重量%~10重量%である、請求項1~請求項6のいずれか一項記載の粉粒体。
【請求項8】
DIN ISO 15901-1に準拠した水銀圧入法により測定した、4 μm未満の細孔の細孔容積が2cm
3/g~5cm
3/gである、請求項1~請求項7のいずれか一項記載の粉粒体。
【請求項9】
4nmを超える細孔の累積細孔容積に対する4μm未満の細孔の細孔容積のパーセント比が35%を超え、
両細孔容積は、DIN ISO 15901-1に準拠した水銀圧入法により測定されている、請求項1~請求項8のいずれか一項記載の粉粒体。
【請求項10】
417MPaで、DIN ISO 15901-1に準拠した水銀圧入法により測定した骨格密度が少なくとも0.6g/mLである、請求項1~請求項9のいずれか一項記載の粉粒体。
【請求項11】
比d
[si]/d
SiOHが1~10である、請求項1~請求項10のいずれか一項記載の粉粒体。
【請求項12】
a)親水性シリカと、
炭化ケイ素、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、イルメナイト、チタン酸鉄、酸化鉄、ケイ酸ジルコニウム、酸化マンガン、グラファイト、カーボンブラック、およびそれらの混合物からなる群から選択されるIR-乳白剤と、
を含む粉末を乾燥させて密度を高め、タンピング密度が少なくとも80g/Lである親水性粉粒体を生成し、
b)前記工程a)で生成した前記親水性粉粒体を300℃~1,400℃の温度で熱処理し、
c)前記工程b)で熱処理を受けた前記親水性粉粒体を、シリコン原子を含む表面処理剤と水の存在下で疎水化する工程を含み、
前記シリコン原子を含む表面処理剤中の前記シリコン原子に対する前記水のモル比が0.1~100である、請求項1~請求項11のいずれか一項記載のシリカ系粉粒体の製造方法。
【請求項13】
請求項1~請求項11のいずれか一項記載の粉粒体を含む断熱組成物。
【請求項14】
(メタ)アクリレート、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、アラビアガム、カゼイン、植物油、ポリウレタン、シリコーン樹脂、シリコーン系成分および他の有機成分を含むハイブリッドシステム、ワックス、セルロース接着剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される結合剤をさらに含む、請求項13記載の断熱組成物。
【請求項15】
断熱および/または防音のための、請求項1~請求項11のいずれか一項記載の粉粒体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水化されたシリカ系粉粒体と、その調製と、断熱および防音のためのその使用と、その対応する断熱組成物と、に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅、産業プラント、パイプラインなどの効果的な断熱は、重要な経済的課題である。ポリウレタンフォームなどの有機物質をベースにした断熱材の大部分は、可燃性であり、比較的低温でしか使用できない。これらの不利点は、無機酸化物をベースとした、これまであまり普及していない断熱材(例:非常に多孔性の二酸化ケイ素)では生じていない。
【0003】
先行技術の説明
特許文献1は、熱伝導率が50mW/(mK)以下であり、シリカエアロゲル成分と、界面活性剤と、無機配合物または無機結合剤含有配合物のいずれか(例:セメント、石膏、石灰、アクリレート)と、必要に応じて他の成分と、を含む組成物を開示している。具体的には、セメント/グラウト/アクリレート/疎水性エアロゲル材料(重量比:0.24/0.28/0.15/0.33)の高粘性混合物を鋳型で硬化させ、熱伝導率が29.5mW/(mK)の化合物を得ることができる。
【0004】
水性配合物をベースとした断熱組成物の充填剤としては、親水性シリカよりも、疎水化シリカ粒子を使用することが好ましい。親水性シリの場合、シリカ材料の細孔が親水性配合物で容易に満たされ、最終組成物に追加の断熱特性を付与することができない。反対に、疎水化材料の多孔質構造は、水性配合物と混合してもそのままである。
【0005】
断熱シリカ系顆粒を含む組成物に関する1つの技術的課題は、微粉に関連している。配合物中に、比較的小さな粒径の粒子である微粉が存在すると、通常、配合物に添加されるそのような粒子の量が増えるにつれて、急速に粘度が増加する。組成物をスプレー技術で塗布する必要がある場合、そのような微粉を事前に分離しなければならない。これは、かなりの材料損失と、固体粒子の取り扱いに関する付加的な努力を要することを意味する。シリカ系顆粒が断熱組成物に組み込まれる際の摩耗を最小限に抑えることにより、そのような微粉の形成を回避することが望ましい。これは、より機械的に安定したシリカ系顆粒を使用することで実現できる。
【0006】
特許文献2は、疎水性ヒュームド二酸化ケイ素と乳化剤とを含む粒状断熱材料を開示しており、これは、疎水性二酸化ケイ素を乳化剤と混合し、続いて高密度化し、0.25~2.5mmのサイズの顆粒を生成することにより製造される。重要なことに、疎水化シリカ粉末を高密度化して断熱用途に有用な比較的低密度の顆粒を得ることは、不可能であるか、または少なくとも困難である。このような疎水化シリカを含むこのような顆粒は、通常機械的に十分に安定していないか、または通常250~450g/Lの比較的高いタップ密度を有しており、断熱特性に悪影響を及ぼす。
【0007】
特許文献3は、中央粒径値が10~120μm、BET表面積が40~400m2/g、2nmを超える累積細孔容積が0.5~2.5mL/g、タップ密度が220~700g/Lであり、触媒担体として使用する疎水性ヒュームドシリカをベースとした顆粒を記載している。この種の顆粒は、親水性シリカを含む水性分散液を噴霧乾燥し、その後、必要に応じて150~1,100℃の温度で熱処理および/またはシラン化することにより、生成される。実施例3、4および8は、シランで疎水化する前に、700℃で熱処理された疎水化顆粒を示している。これらの顆粒は、細孔容積が1.51~1.68mL/g、タップ密度が300~420g/Lである。このような顆粒は、機械的に安定しているが、物性の特定の組み合わせ(例:比較的高いタップ密度と比較的低い細孔容積)を有しており、断熱用途でそれらを使用する際に不利である。
【0008】
特許文献4は、シリカ粉末を含む湿式混合物と、少なくとも1つの結合剤(例:シラン)と、せいぜい微量の水を含む有機溶媒とを調製し、溶媒を蒸発させ、湿式混合物を造粒することによる、疎水化シリカ断熱成形体(例:シリカ顆粒)の調製を記載している。この湿式混合物の調製中および/または造粒プロセス中に、シリカが疎水化される。このように調製された顆粒は、完全に疎水化されており、例えば、表面に比較的少量の遊離シラノール基を含んでいる。さらに、疎水化シリカからなるそのような顆粒は、付加的な高密度化が行われないので、機械的安定性が不十分である可能性がある。これは、同様に、Hgポロシメトリで測定される、それらの比較的低い骨格密度に反映されている。
【0009】
特許文献5は、シリカと少なくとも1つのIR-乳白剤とを含む高密度混合物を200~1,200℃で熱処理し、続いて、シランで疎水化することにより調製された、機械的安定性が向上した粒状断熱材を開示している。この特許出願の特定の例は、疎水化シリカ系顆粒の調製を示しており、その疎水化工程は、親水性顆粒をHMDSの蒸気で処理することにより実施されている。このようにして調製された顆粒は、機械的に安定している。しかしながら、それらの比較的高い疎水性が原因で、そのような顆粒を極性コーティング系(例:水系ポリマー組成物)に組み込むことが難しい場合がある。
【0010】
疎水性シリカ粉末は、例えば特許文献6または特許文献7に記載されているように、対応する親水性材料を、シランおよび必要に応じて水で処理することにより調製することができる。このような疎水性シリカは、通常、疎水性が高く(メタノール湿潤性が高く)、その結果、極性溶媒との相溶性が低いという特徴がある。このような疎水化シリカ材料と極性系との相溶性を改善するために考えられる方法の1つは、疎水化に使用されるシランの量を減らすことである。特許文献8は、シラノール基密度が0.9~1.7SiOH/nm2粒子表面である部分的に疎水性のシリカの調製を記載しており、これは、水性樹脂に組み込まれることができる。そのような部分的に疎水性の粒子の調製は、0.015~0.15ミリモルに減量したシランを、BET表面積が100m2/gのシリカに使用することにより行われる。得られたシリカは、炭素含有量が0.3~1重量%であり、メタノール湿潤性が比較的低くなっている(メタノール数:0~15)。よって、そのようなシリカ粒子は、表面に疎水性基の大部分が存在しないので極性系と相溶性があるが、疎水性ははるかに低い。特許文献6の教示を考慮すると、高い疎水性と、極性系との良好な相溶性との両方を備えたシリカ粒子を得ることは一般的に不可能であるように見える。
【0011】
特許文献9は、水系配合物に組み込むのに適した断熱材用シリカ系顆粒の製造に関する。水系システムとのこの良好な相溶性は、特許文献9では、熱処理工程を適用して、疎水化シリカ顆粒の表面に存在する疎水性基を少なくとも部分的に熱分解により達成されている。しかし、この方法では、必然的に疎水性が同時に低下する。よって、そのような熱処理顆粒のメタノール湿潤性は、対応する未処理顆粒のメタノール湿潤性(40~45%)よりも著しく低い(20~30%)。高い親水性と高い疎水性の両方を顆粒に持たせることは、特許文献9を発端として難題であるように見える。
【0012】
課題と解決策
よって、高疎水性シリカ系材料と、典型的な水性コーティング配合物(水性アクリレート配合物など)との良好な相溶性には、しばしば課題が残ったままである。よって、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)のような典型的な疎水性処理試薬で疎水化されたシリカ粒子は、混合時に水性アクリレート結合剤系から分離されたままになるか、または最終的な硬化コーティングフィルムに割れを生じさせる。したがって、新たな疎水化シリカ材料、特に機械的に安定した顆粒が必要である。これは、水性配合物と相溶性があり、そして、シリカ材料の装填量が高く、断熱特性に優れ、硬化前後での均質性が高く、かつ低コストの組成物の調製を可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】国際公開番号第2010/126792A2号
【文献】国際公開番号第2006/097668A1号
【文献】欧州特許公開番号第0725037A1号
【文献】国際公開番号第2017/036744A1号
【文献】国際公開番号第2018/134275A1号
【文献】欧州特許公開番号第0686676A1号
【文献】ドイツ特許公開番号第102006039273A1号
【文献】欧州特許公開番号第1433749A1号
【文献】欧州特許公開番号第3447038A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする技術的課題は、機械的安定性が向上し、疎水性が高く、極性が向上した断熱性シリカ系疎水化粉粒体であり、水系断熱組成物などの極性系への組み込みに適した粒径分布を有する粉粒体を提供することである。そのような粉粒体は、それが組み込まれる断熱組成物に良好な断熱特性およびレオロジー特性をもたらすはずである。これらの顆粒は、簡単で経済的に実行可能な方法で入手できる必要もある。別の技術的課題は、顕著な疎水性および撥水性を有するそのような断熱組成物を提供することであり、それは、コーティング層を通した湿気の侵入を効果的に妨げ、かつ処理表面に撥水特性、防汚特性、保護特性、および防食特性を付与する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の技術的課題はすべて、本発明により効果的に解決され得ることがわかった。
【0016】
本発明は、
‐シリカと、
‐炭化ケイ素、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、イルメナイト、チタン酸鉄、酸化鉄、ケイ酸ジルコニウム、酸化マンガン、グラファイト、カーボンブラック、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1つのIR-乳白剤と、
を含み、
シリコン原子を含む表面処理剤で疎水化されたシリカ系粉粒体であり、
a)DIN ISO 15901-1に準拠した水銀圧入法により測定した、4nmを超える細孔の累積細孔容積が2.5cm3/gを超え、
b)タップ密度が140g/L~290g/Lであり、
c)水素化リチウムアルミニウムとの反応により測定した、BET表面積に対するシラノール基の数dSiOHが少なくとも0.5SiOH/nm2であり、
d)BET表面積に対する表面処理剤中のシリコン原子の数d[Si]が少なくとも1.0[Si原子]/nm2である、粉粒体
を提供するものである。
【0017】
本発明に係る疎水化シリカ系粉粒体は、上記の技術的課題を解決する。
本発明に係る疎水化粉粒体は、機械的安定性があり、取り扱い時および液体組成物への組み込み時に実質的な機械的摩滅を受けない。さらに、そのような粉粒体は、水性配合物との相溶性が高く、これにより、例えば断熱組成物に、そのような顆粒を多く装填することができ、同時に、良好な断熱特性と、硬化前後での高い均質性とをもたらす。本発明の疎水化粉粒体を含む断熱組成物は、疎水化粉粒体の微粒子を驚くほど大量に含むことができ、それでもなお比較的低い粘度を有する。そのような組成物の低粘度は、例えばスプレー技術を介した、断熱されるべき表面へのそれらの容易な適用を妨げるものではない。
加えて、液体組成物に組み込む前に微粒子を分離する必要もない。本発明の疎水化シリカ系粉粒体を含む組成物は、顕著な疎水性および撥水性を有し、それは、コーティング層を通した湿気の侵入を効果的に妨げ、かつそのような組成物に撥水特性、防汚特性、保護特性、および防食特性をもたらす。
【0018】
粉粒体
本発明において、用語「粉粒体(granular material)」、「粒状(granulate)」および「顆粒(granules)」は、代替的に使用され、粒状で、容易に注入可能で、流動性のある微粒子固形物を意味すると理解される。本発明の粉粒体は、球形または他の任意の形状(例:ペレット、環状)を有する粒状の粒子であるか、あるいは、例えば統計的な粒度分布を有する、破砕粉粒体の不規則な形状のフラグメントであってよい。本発明の文脈における用語「粉粒体」には、粉末材料、すなわち、平均粒径d50が10μm未満の微粒子は含まれないことが好ましい。
【0019】
4nmを超える細孔の累積細孔容積は、DIN ISO 15901-1に準拠した水銀圧入法によって測定できる。H.L RitterおよびL.C Drake in Ind. Eng. Chem. Anal.第17編(1945年)782~786頁および787~791頁により最初に記載されたこの方法の原理は、加えられた圧力の関数として、多孔質固体に圧入された水銀の体積を測定することが基になっている。加えられた最大の圧力(すなわち、417MPa)で、水銀が浸透できる細孔のみ(すなわち、一般に細孔径が4nmを超える細孔のみ)が検出される。液体水銀は、プローブの多孔質固体の表面を濡らさず、圧力下でのみ細孔に浸透する。加えられるべき圧力は、細孔開口部の開口幅に反比例する。円筒状細孔の場合、細孔半径rpと圧力pの関係は、ウォッシュバーン法(Washburn equation)で求められる。
rp=-(2×σ/p)×cosθ
(式中、rpは細孔半径であり、pは圧力であり、σは水銀の表面張力(0.48N/m)であり、θは水銀の接触角(140度)である。)
【0020】
4nmを超える細孔の累積細孔容積は、最大圧力417MPaでの測定限界まで、DIN ISO 15901-1に準拠した水銀圧入法により測定可能なすべての細孔の累積細孔容積に対応している。
【0021】
DIN ISO 15901-1に準拠した水銀圧入法により測定された本発明のシリカ系粉粒体の4nmを超える細孔の累積細孔容積は、好ましくは2.6cm3/g~10cm3/g、より好ましくは2.6cm3/g~9.5cm3/g、より好ましくは2.6cm3/g~9.0cm3/g、より好ましくは2.6cm3/g~8.5cm3/g、より好ましくは2.6cm3/g~8.0cm3/g、より好ましくは3.0cm3/g~7.5cm3/g、より好ましくは3.5cm3/g~7.0cm3/g、より好ましくは3.5cm3/g~6.5cm3/g、より好ましくは4.0cm3/g~6.0cm3/gである。
【0022】
DIN ISO 15901-1に準拠した水銀圧入法により測定された4μm未満の細孔の累積細孔容積は、この方法により決定可能な4μm未満のすべての細孔の累積細孔容積に対応している。
DIN ISO 15901-1に準拠した水銀圧入法により測定された本発明のシリカ系粉粒体の4μm未満の細孔の累積細孔容積は、好ましくは1.0cm3/g~7.0cm3/g、より好ましくは1.2cm3/g~6.5cm3/g、より好ましくは1.4cm3/g~6.0cm3/g、より好ましくは1.6cm3/g~5.5cm3/g、より好ましくは1.8cm3/g~5.0cm3/g、より好ましくは2.0cm3/g~5.0cm3/g、より好ましくは2.2cm3/g~4.5cm3/g、より好ましくは2.4cm3/g~4.2cm3/g、より好ましくは2.5cm3/g~4.0cm3/g、より好ましくは2.6cm3/g~3.8cm3/gである。
【0023】
本発明の粉粒体の4nmを超える細孔の累積細孔容積に対する4μm未満の細孔の細孔容積のパーセント比(両者の細孔容積は、DIN ISO 15901-1に準拠した水銀圧入法により測定されている)は、好ましくは35%を超え、より好ましくは40%を超え、より好ましくは45%を超え、より好ましくは45%~75%、より好ましくは45%~70%、より好ましくは50%~65%、より好ましくは50%~60%である。4nmを超える細孔の累積細孔容積に対する4μm未満の細孔の細孔容積のパーセント比は、4μm未満の細孔の細孔容積を、4nmを超える細孔の細孔容積で割り、それに100%を掛けることによって求めることができる。
【0024】
材料の試料の骨格密度は、材料の多孔性を考慮しない密度、つまり、試料の質量を試料の体積で割った比率であり、その全細孔の容積は考慮されていない。本発明に係る粉粒体の骨格密度は、4nmを超えるすべての細孔の容積(最大圧入圧力:417MPa)を、材料が占める推定体積から除き、その後、DIN ISO 15901-1に準拠した水銀圧入法による試料の分析結果から計算することができる。
【0025】
417MPaで、DIN ISO 15901-1に準拠した水銀圧入法により測定された本発明の粉粒体の骨格密度は、好ましくは少なくとも0.6g/cm3、より好ましくは少なくとも0.7g/cm3、より好ましくは0.7g/cm3~4.0g/cm3、より好ましくは0.8g/cm3~3.0g/cm3、より好ましくは0.9g/cm3~2.9g/cm3、より好ましくは0.9g/cm3~2.80g/cm3、より好ましくは1.0g/cm3~2.7g/cm3、より好ましくは1.1g/cm3~2.6g/cm3、より好ましくは1.2g/cm3~2.5g/cm3、より好ましくは1.3g/cm3~2.4g/cm3である。
【0026】
本発明に係る粉粒体の比較的高い骨格密度は、例えば、断熱組成物へのそのような顆粒の適用に有益な高い機械的安定性をもたらす。
【0027】
本発明のシリカ系粉粒体のBET表面積に対するシラノール基の数dSiOHは、SiOH基/nm2で表され、シリカ系材料と水素化リチウムアルミニウムとの反応による、特許文献3の8頁17行目~9頁12行目に詳細に記載されている方法によって測定することができる。この方法は、Journal of Colloid and Interface Science、第125巻第1号(1988年)、61~68頁にも詳細に記載されている。
シリカ系材料のシラノール(SiOH)基は、水素化リチウムアルミニウム(LiAlH4)と反応し、この反応中に形成される水素ガスの量、したがって、試料中のシラノール基の量nOH(mmol SiOH/g)が測定される。試験材料の対応するBET表面積(m2/g)を使用して、シラノール基含有量(mmol OH/g)を、BET表面積に対するシラノール基の数dSiOHに簡単に変換できる。
dOH[SiOH/nm2]=(nOH[mmol SiOH/g]×NA/(BET[m2/g]×1021)
(式中、NAは、アボガドロ数(~6.022×1023)である。)
【0028】
本発明のシリカ系粉粒体は、好ましくは、BET表面積dOHに対するヒドロキシル基の数が、少なくとも0.6SiOH/nm2、より好ましくは0.6SiOH/nm2~2.5SiOH/nm2、より好ましくは0.7SiOH/nm2~2.0SiOH/nm2、より好ましくは0.7SiOH/nm2~1.9 SiOH/nm2、より好ましくは0.7SiOH/nm2~1.8SiOH/nm2、より好ましくは0.7SiOH/nm2~1.7SiOH/nm2、より好ましくは0.8SiOH/nm2~1.6 SiOH/nm2、より好ましくは0.9SiOH/nm2~1.5SiOH/nm2である。
【0029】
本発明に係るシリカ系粉粒体は、好ましくは、シラノール基含有量が0.03ミリモルSiOH/gを超え、より好ましくは0.04ミリモルSiOH/g~0.50ミリモルSiOH/g、より好ましくは0.05ミリモルSiOH/g~0.45ミリモルSiOH/g、より好ましくは0.07ミリモルSiOH/g~0.40ミリモルSiOH/g、より好ましくは0.10ミリモルSiOH/g~0.40ミリモルSiOH/g、より好ましくは0.15ミリモルSiOH/g~0.35ミリモルSiOH/gである。
【0030】
粉粒体のBET表面積に対する表面処理剤中のケイ素原子の数d[Si]は、本発明の粉粒体中に存在する表面処理基の表面積に対する相対量を示している。本発明の粉粒体のdSiOHおよびd[Si]の値を分析することは、本発明の粉粒体の親水性と疎水性との両方の特性の程度を特徴づけるのに役立ち、先行技術から知られている材料と比較したその独自性が明確に示される。
【0031】
粉粒体のBET表面積に対する表面処理剤中のケイ素原子数d[Si]は、少なくとも1.0Si原子/nm2、好ましくは1.2Si原子/nm2~10Si原子/nm2、より好ましくは1.3Si原子/nm2~9.0Si原子/nm2、より好ましくは1.4Si原子/nm2~8.0Si原子/nm2、より好ましくは1.5Si原子/nm2~7.0Si原子/nm2、より好ましくは1.8Si原子/nm2~6.0Si原子/nm2、より好ましくは2.0Si原子/nm2~5.0Si原子/nm2である。
【0032】
本発明の粉粒体のBET表面積に対する表面処理剤中のケイ素原子の数d[Si][単位:Si原子/nm2]は、表面処理の存在に関連する粉粒体の炭素含有量から計算することができ(C*、重量%)、表面処理の化学構造、例えば、表面処理剤のケイ素原子あたりの炭素数(NC/Si)を考慮する:
d[Si][Si原子/nm2]=(C*[重量%]×NA)/(MrC[g/モル]×NC/Si×BET[m2/g]×1020)
(式中、MrC=12,011g/モルは炭素の原子量であり、
NAは、アボガドロ数(~6.022*1023)であり、
NC/Siは、表面処理剤中のケイ素原子に対する炭素原子の比である。)
【0033】
よって、クロロトリメチルシラン[(CH3)3SiCl]の場合、NC/Si=3である。ヘキサメチルジシラザン[HMDS、(CH3)3Si)2NH]の場合、NC/Si=3である。ポリメチルジシロキサン[PDMS]の場合、NC/Si=2である。
【0034】
ケイ素原子を含む2つの異なる表面処理剤の混合物の場合、適用された表面処理剤のモル平均NC/Si値が使用されることを除いて、上記と同じ計算方法を使用することができる。よって、HMDSとPDMSの1:1(50:50モル%)モル混合物を表面処理剤として使用する場合、NC/Si値(2*0.5+3*0.5)=2.5を計算に使用しなければならない。
【0035】
表面処理の存在に関連する粉粒体の炭素含有量(C*)は、例えば、内部標準を用いた固体NMR分析(1Hまたは13C NMR分析)を使用して直接測定するか、あるいは、表面処理の存在とは関係のない炭素含有量の抽出による元素分析から炭素含有量を測定できる場合は、それから計算することができる。最も単純で最も一般的なケースでは、元素分析法により測定可能な本発明の粉粒体の炭素含有量はすべて、表面処理剤に由来している。
【0036】
本発明に係る粉粒体は、炭素含有量が0.2重量%~15重量%、好ましくは0.3重量%~12重量%、より好ましくは0.5重量%~10重量%、より好ましくは1.0重量%~8重量%、よりいっそう好ましくは1.2重量%~5重量%、さらに好ましくは1.5重量%~3.5重量%である。炭素含有量は、EN ISO3262-20:2000(第8章)に準拠した元素分析により測定できる。分析試料は、燃焼剤を備えたセラミックるつぼに秤量され、誘導炉内で酸素流下で加熱される。存在する炭素は、CO2に酸化される。CO2ガスの量は、赤外線検出器によって定量化される。SiCは燃焼しないので、炭素含有量の値には影響しない。よって、炭化ケイ素を例えばIR乳白剤として使用する場合、本発明に係る粉粒体の記載した炭素含有量は、炭化ケイ素などの不燃性化合物を除く、粉粒体の全炭素含有成分を指している。
【0037】
本発明に係るシリカ系粉粒体のd[si]/dSiOH比は、好ましくは0.5~10、より好ましくは0.8~7.0、より好ましくは1.0~5.0、より好ましくは1.2~4.5、より好ましくは1.5~4.0、より好ましくは1.7~3.5、より好ましくは1.8~3.4、より好ましくは1.9~3.3、より好ましくは2.0~3.2、より好ましくは2.1~3.1、より好ましくは2.2~3.1である。
【0038】
10を超えるd[si]/dSiOHの高比率は、遊離シラノール基含有量が比較的低く、したがって極性系に対する材料の親和性が低い、高疎水性粒子に対応する。対照的に、1より小さいd[si]/dSiOHの低比率は、遊離シラノール基含有量が比較的高く、極性系との相溶性は良好だが、疎水性の低い高極性材料の特徴である。本発明の粉粒体は、好ましくは、d[si]/dSiOHが1~10であり、水系コーティング配合物などの極性系に組み込まれるのに十分な極性を有しているが、それでもなお、効果的な断熱材料として使用できるほど高い疎水性を有している。
【0039】
本発明の粉粒体はシリカ系であり、すなわち、粉粒体は主成分としてシリカを含んでいる。好ましくは、粉粒体は、少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは60重量%~99重量%、より好ましくは70重量%~98重量%、より好ましくは75重量%~95重量%のシリカを含んでいる。
【0040】
粉粒体の粒径分布は、最大材料装填、粘度、熱伝導率、そしてこのような粉粒体を断熱組成物へ首尾よく適用させるために重要な他のパラメータに実質的な影響を与える可能性がある。最適な粒径分布は、そのような断熱組成物に使用される特定の結合剤、および必要とされる断熱コーティングの厚さにも左右される可能性がある。
【0041】
本発明に係る粉粒体は、好ましくは、数値中央粒径d50が最大で6000μm、より好ましくは10μm~5000μm、より好ましくは20μm~3000μm、より好ましくは30μm~2500μm、より好ましくは40μm~2000μm、より好ましくは50μm~1500μm、より好ましくは80μm~1000μm、より好ましくは100μm~900μm、より好ましくは120μm~800μm、よりいっそう好ましくは150μm~700μm、最も好ましくは200μm~500μmである。顆粒の数値中央粒径は、レーザー回折粒径分析により、ISO13320:2009に準拠して測定できる。測定された粒径分布を使用して中央値d50を規定する。これは、数値中央粒径として、全粒子の50%を超えない粒径を示している。
【0042】
本発明に係る粉粒体は、好ましくは、d10値が5μm~800μm、より好ましくは10μm~500μm、より好ましくは20μm~400μm、より好ましくは30μm~300μm、より好ましくは40μmから200μm、より好ましくは50μm~150μmである。好ましいd90値は、200μm~3000μm、より好ましくは300μm~2000μm、より好ましくは350μm~1500μm、より好ましくは400μm~1000μm、より好ましくは450μm~900μm、より好ましくは500μm~800μmである。d10値およびd50値は、ISO13320:2009に準拠して、レーザー回折粒径分析によって測定できる。測定された粒径分布を使用してd10値およびd90値を規定する。これは、全粒子の10%または90%をそれぞれ超えない粒径を示している。
【0043】
本発明に係る粉粒体は、好ましくは、粒径が10000μm以下、好ましくは7000μm以下、より好ましくは5000μm以下、より好ましくは4000μm以下、より好ましくは3000μm以下、より好ましくは2000μm以下、より好ましくは1500μm以下、より好ましくは1200μm以下である。特定の範囲を超える粒径の粒子が存在しないようにするために、例えば、適切なふるいに通して顆粒をふるい分けることができる。
【0044】
本発明の粉粒体の好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも15重量%が、200μm未満の粒径を有する。この場合、驚くべきことだが、いわゆる微粉、すなわち、粒径が200μm未満の粒子は、液体配合物中の添加剤としての顆粒の使用を邪魔しない。微粉を含むそのような顆粒は、同様のシリカ系顆粒の場合によくあるような、配合物の粘度の実質的な増加を引き起こさない。よって、微粉は、そのような顆粒を液体配合物に組み込む前に、顆粒から分離される必要がない。
さらに、予想外なことに、粉粒体中にそのような微粉が存在すると、そのような顆粒を含む断熱組成物に、高い表面疎水性と顕著な撥水性をもたらす。撥水性の程度は、水接触角を測定することで判断できる。
【0045】
さまざまな粉末状または粗粒状の粉粒体のタンピング密度は、DIN ISO787-11:1995「顔料および増量剤の一般的な試験方法-パート11:タンピング後のタンピング体積および見かけ密度の測定」に準拠して測定できる。これには、攪拌およびタンピング後のベッドの見かけ密度の測定が含まれる。本発明の粉粒体は、タンピング密度が140g/L~290g/L、より好ましくは140g/L~270g/L、より好ましくは150g/L~250g/L、より好ましくは150g/L~240g/L、より好ましくは150g/L~230g/L、より好ましくは160g/L~220g/Lである。
【0046】
本発明の粉粒体は、BET表面積が20m2/gを超え、好ましくは30m 2/g~500m2/g、より好ましくは50m2/g~400m2/g、より好ましくは70m2/g~300m2/g、最も好ましくは80m2/g~200m2/gである。単にBET表面積とも呼ばれる比表面積は、ブルナウアー・エメット・テラー法による窒素吸着により、DIN9277:2014に準拠して測定できる。
【0047】
本発明に係る粉粒体の乾燥減量(LOD)は、好ましくは5.0重量%未満、より好ましくは3.0重量%未満、より好ましくは2.0重量%未満、より好ましくは1.0重量%未満、より好ましくは0.8重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満である。乾燥減量は、ASTM D280-01(方法A) に準拠して測定できる。
【0048】
本発明の疎水化粉粒体の熱伝導率は、EN12667:2001に準拠したベッドの形で、ガード付きホットプレートおよび熱流量計装置を使用する方法により、平均測定温度:10℃、接圧:250Pa、空気雰囲気下、標準圧力(1atm)で測定され、好ましくは70mW/(mK)未満、より好ましくは50mW/(mK)未満、より好ましくは10mW/(mK)~45mW/(mK)、特に好ましくは15mW/(mK)~40mW/(mK)、最も好ましくは20mW/(mK)~35mW/(mK)である。
【0049】
シリカ
シリカは、個別の化合物(二酸化ケイ素)、シリカ系混合酸化物、シリカ系ドープ酸化物、またはそれらの混合物であってよい。
【0050】
シリカは、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、シリカエアロゲル、シリカキセロゲル、パーライト、ケイ酸塩鉱物または粘土鉱物、およびそれらの混合物から選択されてよい。
【0051】
ケイ酸塩鉱物はイオン性固体であり、その陰イオンは主にケイ酸塩陰イオン SiO3
2-で構成されている。各シリコン原子は四面体の中心であり、四面体の角はシリコンに共有結合している4つの酸素原子である。隣接する2つの四面体が頂点を共有していてもよい。SiおよびO原子とは別に、ケイ酸塩鉱物には、アルカリ金属、アルカリ土類およびその他の金属陽イオンが含まれていてもよい。ケイ酸塩鉱物の1つの群は粘土であり、粘土鉱物としても知られ、含水アルミニウムフィロケイ酸塩(層状ケイ酸塩)であり、それは、さまざまな量の鉄、マグネシウム、アルカリ金属、アルカリ土類、およびいくつかの惑星表面またはその近くで見られる他の陽イオンを含む場合がある。粘土鉱物の例は、ハロイサイト、カオリナイト、イライト、モンモリロナイト、バーニキュライト、タルク、セピオライト、パリゴルスカイトおよびパイロフィライトである。
【0052】
本発明に係る粉粒体は、好ましくは、非晶質シリカを含んでいる。非晶質または非結晶性シリカは、例えば石英中に存在するような、結晶性シリカの特徴である長距離規則度を欠いている。
【0053】
本発明に係る粉粒体中に存在する非晶質シリカは、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、シリカエアロゲル、シリカキセロゲル、およびそれらの混合物から選択されることができる。
【0054】
本発明の粉粒体は、好ましくは、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、シリカエアロゲル、シリカキセロゲル、およびそれらの混合物から選択されるシリカを30重量%~95重量%含んでいる。
【0055】
沈殿によって生成される二酸化ケイ素(沈殿シリカ)は、例えば、水ガラス溶液(水溶性ケイ酸ナトリウム)と鉱酸との反応中に生成される。
【0056】
エアロゲルは、いわゆるゾル・ゲル法によって生成されたSiO2ゲルの超臨界乾燥によって生成できる。SiO2ゾル合成の出発物質は、多くの場合、シリコンアルコラートである。このような前駆体の加水分解と、得られた反応種間の縮合とは、ゾル・ゲル 法の主要な基本反応である。テトラメチルオルトシリケートまたはテトラエチルオルトシリケートなどのテトラアルキルオルトシリケートは、ケイ素源として特に適している。テトラアルキルオルトシリケートの加水分解時に生成されるアルコールは、超臨界条件下(メタノールの場合、温度:239.4℃超、圧力:80.9バール超)で除去され、高多孔性のSiO2エアロゲルが生成される。
【0057】
亜臨界条件下で乾燥させることにより、通常キセロゲルと呼ばれる超臨界乾燥エアロゲルとほぼ同じ特性を持つ材料を製造することができる。このようなキセロゲルの調製は、例えば米国特許公報第5565142A1号に記載されている。
【0058】
本発明にとって特に好ましいのは、熱分解法(ヒュームド)シリカおよびシリカ系熱分解法混合酸化物である。ヒュームドシリカは、火炎加水分解または火炎酸化によって調製される。これには、一般に水素/酸素炎中で、加水分解性のまたは酸化可能な出発物質を酸化または加水分解することが含まれる。パイロジェニック法に使用される出発物質は、有機物質と無機物質を含んでいる。四塩化ケイ素が特に適している。このようにして得られた親水性シリカは、非晶質である。ヒュームドシリカは一般に凝集した形をしている。「凝集」とは、発生の最初に形成された一次粒子と呼ばれるものが、その後の反応で互いに強固に結合し、三次元ネットワークを形成することを意味すると理解される。一次粒子は実質的に細孔がなく、その表面に遊離ヒドロキシル基を有する。このような親水性シリカは、必要に応じて、例えば反応性シランで処理することにより、疎水化することができる。
【0059】
H2/O2炎中で、揮発性金属化合物(例:塩化物)の形で少なくとも2つの異なる金属源を同時に反応させることにより、発熱性混合酸化物を生成することも知られている。このような酸化物の一例は、Evonik社がAerosil(登録商標)MOX170の名前で製造しているSiO2/Al2O3混合酸化物である。Aerosil(登録商標)MOX170を製造する場合、SiCl4とAlCl3の混合物を火炎中で直接加水分解する。ドイツ特許公開公報第952 891号、ドイツ特許公開公報第25 33 925号、およびドイツ特許公開公報第27 02 896号に記載されているように、例えばメチルトリクロロシラン、トリクロロシランなどの対応するシランも、塩化物の代わりにまたは塩化物に加えて、原料として使用されてよい。
【0060】
このように調製された混合酸化物のすべての成分(例えば、前述の場合のシリカおよびアルミナ)は、一般に、複数の金属酸化物の機械的混合物、ドープ金属酸化物などの他の種類の材料とは対照的に、混合酸化物材料全体に均一に分布している。後者の場合、例えば複数の金属酸化物の混合物の場合、対応する純粋酸化物の分離領域が存在する可能性があり、これがそのような混合物の特性を決定する。
【0061】
IR乳白剤
本発明の粉粒体は、少なくとも1つのIR乳白剤を含んでいる。そのようなIR乳白剤は、断熱材の赤外線透過率を低下させ、それにより、放射による熱伝達を最小限に抑えることができる。IR乳白剤は、炭化ケイ素、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、イルメナイト、チタン酸鉄、酸化鉄、ケイ酸ジルコニウム、酸化マンガン、グラファイト、カーボンブラック、およびそれらの混合物からなる群から選択される。IR乳白剤の平均粒径は、好ましくは0.1~25μmである。
【0062】
本発明の粉粒体は、1重量%~70重量%、より好ましくは3重量%~65重量%、より好ましくは5重量%~60重量%、より好ましくは10重量%~50重量%、より好ましくは12重量%~30重量%のIR乳白剤を含むことができる。
【0063】
表面処理剤
本発明において、用語「ケイ素原子を含む表面処理剤で疎水化された」は、シリカを含む材料と、ケイ素原子を含む対応する表面処理剤と、の化学反応に関係し、これは、ケイ素原子を含む疎水性基でシリカ表面を完全にまたは部分的に変性することにより、シリカを含む材料に疎水性を付与する。
【0064】
本発明の文脈における用語「疎水化された」または「疎水性」は、水などの極性媒体に対して親和性の低い表面処理粒子に関係している。対照的に、親水性粒子は、水などの極性媒体に対して高い親和性を持っている。疎水性材料の疎水性は、通常、適切な非極性基をシリカ表面に適用することにより得られる。疎水性酸化物(例:シリカ)の疎水性の程度は、例えば国際公開公報第2011/076518A1号の5~6頁に詳細に記載されているように、そのメタノール湿潤性などのパラメータによって測定することができる。純水中では、疎水性シリカは水から完全に分離し、溶媒で濡れることなくその表面に浮いている。対照的に、純粋メタノール中では、疎水性シリカは、溶媒全体に分布しており、完全に濡れている。メタノール湿潤性の測定では、シリカがまだ濡れていない時の最大メタノール含有量を、メタノール/水試験混合物中で測定する。これは、使用したシリカの100%が、試験混合物と接触した後、濡れていない状態で試験混合物から分離したままであることを意味する。メタノール/水混合物中のこのメタノール含有量(体積%)は、メタノール湿潤性と呼ばれる。このようなメタノール湿潤性のレベルが高いほど、シリカはより疎水性になる。メタノール湿潤性が低いほど、材料の疎水性が低くなり、親水性が高くなる。
【0065】
本発明の粉粒体は、好ましくは、メタノール/水混合物中のメタノール湿潤性であるメタノール含有量が10体積%を超え、より好ましくは20体積%~90体積%、より好ましくは30体積%~85体積%、特に好ましくは35体積%~80体積%、最も好ましくは40体積%~75体積%である。
【0066】
ケイ素原子を含む表面処理剤は、好ましくは、オルガノシラン、シラザン、非環状ポリシロキサン、環状ポリシロキサン、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0067】
好ましいオルガノシランの1つのタイプは、一般式:
R’x(RO)ySi(CnH2n+1) (Ia)、および
R’x(RO)ySi(CnH2n-1) (Ib)
(式中、R=アルキル、例えば、メチル-、エチル-、n-プロピル-、i-プロピル-、ブチル-など、
R’=アルキルまたはシクロアルキル、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、ブチル、シクロヘキシル、オクチル、ヘキサデシルなど、
n=1~20、
x+y=3、
x=0~2、および
y=1~3である。)
のアルキルオルガノシランである。
【0068】
式(Ia)および(Ib)のアルキルオルガノシランの中で、特に好ましいのは、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシランである。
【0069】
表面処理に使用されるオルガノシランは、ClまたはBrなどのハロゲンを含んでいてもよい。以下のタイプのハロゲン化オルガノシランが特に好ましい:
‐以下の一般式のオルガノシラン:
X3Si(CnH2n+1) (IIa)、および
X3Si(CnH2n-1) (IIb)
(式中、X=Cl、Br;n=1~20である。)
‐以下の一般式のオルガノシラン:
X2(R’)Si(CnH2n+1) (IIIa)および
X2(R’)Si(CnH2n-1) (IIIb)
(式中、X=Cl、Br;R’=アルキル、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、ブチル、シクロヘキシルなどのシクロアルキルなど;n=1~20である。)
‐以下の一般式のオルガノシラン:
X(R’)2Si(CnH2n+1) (IVa)および
X(R’)2Si(CnH2n-1) (IVb)
(式中、X=Cl、Br;R’=アルキル、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、ブチル、シクロヘキシルなどのシクロアルキルなど;n=1~20である。)
【0070】
式(II)~(IV)のハロゲン化オルガノシランのうち、特に好ましいのは、ジメチルジクロロシランおよびクロロトリメチルシランである。
【0071】
使用されるオルガノシランは、アルキル置換基またはハロゲン置換基の他に、例えばフッ素置換基または複数の官能基も含むことができる。以下の一般式の官能化オルガノシランを使用することが好ましい。
(R’ ’)x(RO)ySi(CH2)mR’ (V)
(式中、R’ ’=メチル、エチル、プロピルなどのアルキル、またはClもしくはBrなどのハロゲン、
R=メチル、エチル、プロピルなどのアルキル、
x+y=3
x=0~2、
y=1~3、
m=1~20、
R’=メチル-、アリール(例えば、フェニルまたは置換フェニル残基)、ヘテロアリール-C4F9、OCF2-CHF-CF3、-C6F13、-O-CF2-CHF2、-NH2、-N3、-SCN、-CH=CH2、-NH-CH2-CH2-NH2、-N-(CH2-CH2-NH2)2、-OOC(CH3)C=CH2、-OCH2-CH(O)CH2、-NH-CO-N-CO-(CH2)5、-NH-COO-CH3、-NH-COO-CH2-CH3、-NH-(CH2)3Si(OR)3、-Sx-(CH2)3Si(OR)3、-SH、-NR1R2R3(式中、R1=アルキル、アリール;R2=H、アルキル、アリール;R3=H、アルキル、アリール、ベンジル、C2H4NR4R5(式中、R4=H、アルキル;R5=H、アルキル)である。)である。)
【0072】
式(V)の官能化オルガノシランのうち、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0073】
一般式R’R2SiNH-SiR2R’(VI)(式中、Rは=メチル、エチル、プロピルなどのアルキル;R’=アルキル、ビニルである。)のシラザンも表面処理剤として適している。式(VI)の最も好ましいシラザンは、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)である。
【0074】
オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D6)などの環状ポリシロキサンも表面処理剤として適している。環状ポリシロキサンの中で、D4を使用することが最も好ましい。
【0075】
別の有用なタイプの表面処理剤は、一般式(VII):
【0076】
【0077】
(式中、Y=H、CH3、CnH2n+1(式中、n=1~20)、Si(CH3)aXb(式中、a=2~3、b=0または1、a+b=3)、
X=H、OH、OCH3、CmH2m+1(式中、m=1~20)、
R、R’=CoH2o+1(式中、o=1~20)などのアルキル、フェニルおよび置換フェニル残基などアリール、ヘテロアリール、(CH2)k-NH2(式中、k=1~10)、H、
u=2~1000、好ましくはu=3~100である。)
のポリシロキサンまたはシリコーンオイルである。
【0078】
式(VII)のポリシロキサンおよびシリコーンオイルの中で、最も好ましくは、ポリジメチルシロキサンが表面処理剤として使用される。そのようなポリジメチルシロキサンは、通常、モル質量が162g/モル~7500g/モル、密度が0.76g/mL~1.07g/mL、粘度が0.6mPa・s~1000000mPa・sである。
【0079】
粉粒体の製造方法
本発明はさらに、以下の工程を有する、請求項1~11のいずれか一項記載のシリカ系粉粒体の製造方法を提供する。
a)親水性シリカと、
炭化ケイ素、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、イルメナイト、チタン酸鉄、酸化鉄、ケイ酸ジルコニウム、酸化マンガン、グラファイト、カーボンブラック、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのIR-乳白剤と、
を含む粉末を乾燥させて密度を高め、タンピング密度が少なくとも80g/Lである親水性粉粒体を生成する工程、
b)工程a)で生成した親水性粉粒体を300℃~1,400℃の温度で熱処理する工程、
c)工程b)で熱処理を受けた親水性粉粒体を、シリコン原子を含む表面処理剤と水の存在下で疎水化する工程。
シリコン原子を含む表面処理剤中のシリコン原子に対する水のモル比は、0.1~100、好ましくは0.2~50、より好ましくは0.4~20、より好ましくは0.5~10、より好ましくは1~5である。
【0080】
本発明の文脈における用語「乾燥させて密度を高める」は、粒状物質の密度(例えば、タンピング密度)を増加させることを目的とする任意の方法を指し、その方法中では、水などの液体を少量しか使用しないか、または全く使用しない。好ましくは、本発明の工程a)では、親水性シリカを含む粉末の質量に対して、15重量%以下、より好ましくは12重量%以下、より好ましくは10重量%以下、より好ましくは8重量%以下、より好ましくは5重量%以下の液体(例:水)を使用する。よって、特許文献3に開示されているような、シリカ粉末の水性分散液の噴霧乾燥によるシリカ粉末の高密度化は、本発明に係る用語「乾燥させて密度を高める」には該当しない。
【0081】
本発明に係る方法の工程a)において、親水性シリカを含む粉末は、例えば脱気または圧密により、高密度化され、タンピング密度が少なくとも80g/L、好ましくは80g/L~400g/L、より好ましくは80g/L~350g/L、より好ましくは80g/L~300g/L、より好ましくは80g/L~250g/L、より好ましくは85g/L~220g/L、より好ましくは90g/L~200g/Lである親水性粉粒体を生成する。
本発明に係る方法の工程a)の主な目的は、本発明の方法によって調製される最終的な疎水化粉粒体の機械的特性および断熱特性にとって重要な、必要とされる粒径およびタンピング密度を有する親水性顆粒を生成することである。
本発明の方法は、親水性シリカと少なくとも1つのIR乳白剤とを含む粉末混合物を調製する別の工程a-1)をさらに含んでいてもよく、これは、本発明に係る方法の工程a)の前に実施される。工程a1)では、シリカと、IR乳白剤と、任意の他の添加剤とを一緒に混合することができる。
本発明に係る方法の工程a1)による、親水性シリカと、少なくとも1つのIR乳白剤および必要に応じて任意の他の添加剤と、のこのような混合は、当業者に知られているすべての適切な混合装置で行うことができる。良好な均質化を可能にする任意のミキサーまたはミル、例えば、ブレードミキサー、プラウシェアミキサー、流動層ミキサー、遠心ミキサー、または空気スィープ式ミキサーなどが、方法の工程a1)を実施するのに適している。特に好適なミキサーは、混合される材料をさらに圧密することができるもの、例えば、プラウバーミキサー、パンミル、またはボールミルなどである。よって、本発明に係る方法の工程a1)およびa)は、1つの工程において、個別の独立した段階として、あるいは組み合わせて実施することができる。
【0082】
本発明に係る方法の工程b)では、工程a)で生成された親水性粉粒体の熱処理を、300℃~1400℃、好ましくは400℃~1350℃、より好ましくは450℃~1300℃、より好ましくは550℃~1280℃、より好ましくは600℃~1250℃、より好ましくは700℃~1200℃、より好ましくは750℃~1200℃、より好ましくは800℃~1190℃、より好ましくは850℃~1180℃、より好ましくは900℃~1150℃の温度で行う。工程b)の持続時間は、適用される温度に左右され、一般的に1分~20時間、好ましくは5分~10時間である。
【0083】
本発明に係る方法の工程b)の熱処理により、遊離シラノール基の数が減り、シリカ系粉粒体の骨格密度が増加し、親水性粉粒体の機械的強度が著しく上昇する。
【0084】
本発明に係る方法の工程b)で生成された親水性粉粒体は、好ましくは、水素化リチウムアルミニウムとの反応により測定した、BET表面積に対するシラノール基の数dSiOHが、2.0SiOH/nm2未満、より好ましくは0.3~1.9SiOH/nm2、より好ましくは0.4~1.8SiOH/nm2、より好ましくは0.5~1.7SiOH/nm2、より好ましくは0.5~1.6SiOH/nm2、より好ましくは0.5~1.5SiOH/nm2、より好ましくは0.6~1.4SiOH/nm2、より好ましくは0.7~1.3SiOH/nm2である。
【0085】
本発明に係る方法では、工程a)および/または工程b)および/または工程c)の後に、特定の粒径を有する1つまたは複数の画分のみを分離し、さらに使用するような方法で、異なる大きさの粉粒体の画分を互いに分離させる。このような分離は、適切なふるいを通してふるい分けることによって実現できる。
【0086】
4000μmより大きい、より好ましくは3000μmより大きい、より好ましくは2000μmより大きい、より好ましくは1500μmより大きい粒子の分離は、本発明に係る方法の工程c)を行う前に実施することが好ましい。このようにして得られたより小さな粒子は、方法の工程c)でさらに使用することができる。一方、分離された大きな粒子は再利用して、方法の前の工程、例えば工程a)でさらに使用することができる。
【0087】
本発明に係る方法の工程c)では、工程b)で熱処理を受けた親水性粉粒体の疎水化を、ケイ素原子を含む表面処理剤と水の存在下で行う。ケイ素原子を含む表面処理剤のケイ素原子に対する水のモル比は、0.01~100、好ましくは0.05~50、より好ましくは0.1~40、より好ましくは0.1~30、より好ましくは0.2~20、より好ましくは0.5~15、より好ましくは0.8~10、より好ましくは0.9~8、より好ましくは1~6である。
【0088】
本発明に係る方法の工程c)においてケイ素原子を含む表面処理剤と水の両方を上記の比率で使用することは、本発明に係る粉粒体の独特の特性、すなわち、その比較的高い疎水性および比較的高い極性を達成するために不可欠である。
【0089】
ケイ素原子を含む表面処理剤および/または水は、好ましくは、本発明に係る方法において液体の形で使用される。
【0090】
本発明に係る方法の工程c)は、10℃~250℃の温度で1分~24時間実施することができる。工程c)の持続時間は、方法および/または目標とする顆粒特性の特定の要件に従って選択することができる。よって、通常、処理温度が低いほど、疎水化時間が長くなる。本発明の好ましい一実施形態では、親水性粉粒体の疎水化は、10~80℃で3~24時間、好ましくは5~24時間行われる。本発明の別の好ましい実施形態では、方法の工程c)は、90~200℃、好ましくは100~180℃、最も好ましくは120~160℃で、0.5~10時間、好ましくは1~8時間行われる。本発明に係る方法の工程c)は、0.1~10バール、好ましくは0.5~8バール、より好ましくは1~7バール、最も好ましくは1.1~5バールの圧力下で行うことができる。最も好ましくは、工程c)は、反応温度で、使用する表面処理剤の自然蒸気圧下、閉鎖系で行われる。
【0091】
本発明に係る方法の工程c)では、工程b)で熱処理を受けた親水性粉粒体に、好ましくは、最初に液体水、次に液体表面処理剤を、または最初に液体表面処理剤、次に液体水を、または水と液体表面処理剤の液体混合物を、周囲温度(約25℃)で噴霧する。その後、混合物を50℃~400℃の温度で1時間~6時間にわたって熱処理する。
【0092】
工程c)の表面処理の別の方法は、工程b)で熱処理を施した親水性粉粒体を、最初に水で、次に表面処理剤で処理するか、または最初に表面処理剤で、次に水で処理するか、または水と表面処理剤との混合物(水および/または表面処理剤は蒸気形態である。)で処理し、続いて、その混合物を50℃~800℃の温度で0.5~6時間にわたって熱処理することにより実施できる。
【0093】
工程c)の疎水化後の熱処理は、例えば窒素などの保護ガス下で行うことができる。表面処理は、噴霧装置を備えた加熱可能なミキサーおよび乾燥機内で、連続的にまたはバッチ式に実施できる。適切な装置は、例えば、プラウシェアミキサー、自由落下ミキサーもしくはプレート、サイクロン、または流動層乾燥機であってよい。
【0094】
使用される表面処理剤の量は、適用される粒子および表面処理剤のタイプに左右され得る。ただし、親水性粉粒体の量に対して、通常、1重量%~15重量%、好ましくは2重量%~10重量%の表面処理剤を使用する。
【0095】
使用される表面処理剤の量は、適用される粒子および表面処理剤のタイプに左右され得る。ただし、工程b)で熱処理を施された親水性粉粒体の量に対して、通常、1重量%~25重量%、好ましくは2重量%~20重量%、より好ましくは5重量%~18重量%の表面処理剤を使用する。
【0096】
使用される水の量も、適用される粒子および表面処理剤のタイプに左右され得る。ただし、工程b)で熱処理を施された親水性粉粒体の量に対して、通常、0.5重量%~15重量%、好ましくは1重量%~12重量%、より好ましくは2重量%~10重量%の水を使用する。
【0097】
水と表面処理剤の必要量は、使用される親水性粉粒体のBET表面積に左右され得る。よって、工程b)で熱処理を施された親水性粉粒体のBET比表面積1m2あたり、0.1μモル~100μモル、より好ましくは1μモル~50μモル、より好ましくは3.0μモル~20μモルの表面処理剤中のケイ素原子と、0.1μモル~500μモル、より好ましくは1μモル~100μモル、より好ましくは10μモル~50μモルの水と、を使用する。
【0098】
断熱組成物
本発明の別の主題は、本発明の疎水化粉粒体を含む断熱組成物である。本発明に係る断熱組成物は、少なくとも1つの結合剤、すなわち、硬化組成物の個々の部分を互いに、必要に応じて1つまたは複数の充填剤および/または他の添加剤に結合させ、それにより硬化組成物の機械的特性を向上させることができる結合剤を含むことができる。そのような結合剤は、有機または無機物質を含むことができる。結合剤は、必要に応じて反応性有機物質を含んでいる。有機結合剤は、例えば、(メタ)アクリレート、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、アラビアゴム、カゼイン、植物油、ポリウレタン、シリコーン樹脂、ワックス、セルロース接着剤、およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。このような有機物質は、例えば、溶媒の蒸発、重合、架橋反応、または別のタイプの物理的または化学的変換により、使用する断熱組成物を硬化させることができる。このような硬化は、例えば、熱によって、またはUV放射もしくは他の放射の作用下で行われ得る。単一(一)成分(1-C)および多成分系の両方、特に二成分系(2-C)を結合剤として適用することができる。本発明にとって特に好ましいのは、水系か、あるいは(好ましくは二成分系としての)水(メタ)アクリレート系結合剤およびエポキシ樹脂との混和性である。
【0099】
(メタ)アクリレートおよびエポキシ樹脂などのほとんどの有機系結合剤材料には、特定の熱的制限があり、150℃を超える温度では使用できない。それとは対照的に、シロキサン系材料(シリコーン樹脂)は、一般に熱安定性が高く、熱劣化することなく約600℃の温度まで適用できる。そのようなオルガノシロキサン結合剤(シリコーン樹脂)、またはシリコーン系と他の有機成分とを含むハイブリッド系は、本発明の組成物での使用に特に好ましい。
【0100】
有機結合剤に加えて、またはその代替物として、本発明の断熱組成物は、無機硬化性物質を含むことができる。鉱物結合剤とも呼ばれるそのような無機結合剤は、有機結合剤と本質的に同じ役割を果たし、添加物質を互いに結合させる役割を果たす。さらに、無機結合剤は、非水硬性結合剤と水硬性結合剤に分けられる。非水硬性結合剤は、空気中でのみ硬化するカルシウム石灰、ドロマイト石灰、石膏、硬石膏などの水溶性結合剤である。水硬性結合剤は、空気中および水の存在下で硬化し、硬化後は水不溶性になる結合剤である。それらには、水硬性石灰、セメント、および石工セメントが含まれる。さまざまな無機結合剤の混合物も、本発明の断熱組成物に使用することができる。
【0101】
本発明の断熱組成物は、疎水化粉粒体を10~90重量%、結合剤および必要に応じて存在する溶媒(好ましくは、水)を合計で10~90重量%含んでいてもよい。このような断熱組成物中の疎水化粉粒体とバインダ/溶媒の重量比は、断熱組成物中に存在する水および/または他の溶媒の量に応じて、著しく変化してもよい。したがって、適用する準備が整っている(「湿った」、「液体の」)断熱組成物では、水または他の溶媒を含んでいてもよい結合剤の比率は、通常より高い。この場合、本発明の断熱組成物は、本発明に係る疎水化粉粒体を10重量%~60重量%、より好ましくは15重量%~50重量%、溶媒と、無機および/または有機結合剤と、を合計で40重量%~90重量%、より好ましくは50重量%~85重量%含んでいてもよい。このような「湿った」断熱組成物を分離されるべき表面に塗布した後、溶媒が通常少なくとも部分的に除去され、「乾燥していて」通常は固体である断熱組成物が残る。その断熱組成物は、20重量%~90重量%、より好ましくは30重量%~70重量%の本発明に係る疎水化粉粒体と、10重量%~80重量%、より好ましくは20重量%~60重量%の無機および/または有機結合剤を含んでいる。
【0102】
断熱組成物の硬化は、少なくとも部分的な重合および/または溶媒の除去によって達成することができる。使用するシステムに応じて、この工程は、好ましくは0~500℃、特に好ましくは5~400℃、非常に特に好ましくは10~300℃の温度で行うことができる。硬化は、空気の存在下または酸素を排除して、例えば窒素または二酸化炭素の保護ガス雰囲気下で行うことができる。上記の工程は、標準圧力下または減圧下、例えば真空下で行うことができる。
【0103】
疎水化粉粒体および結合剤とは別に、本発明に係る断熱組成物は、少なくとも1つの溶媒および/または充填剤および/または他の添加剤をさらに含むことができる。
【0104】
本発明の組成物に使用される溶媒は、水、アルコール、脂肪族および芳香族炭化水素、エーテル、エステル、アルデヒド、ケトン、およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。例えば、使用される溶媒は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、酢酸エチル、およびアセトンであってよい。特に好ましくは、断熱組成物に使用される溶媒は、沸点が300℃未満、特に好ましくは200℃未満である。このような比較的揮発性の溶媒は、本発明に係る断熱組成物の硬化時に容易に蒸発または気化することができる。最も好ましくは、本発明の断熱組成物は、唯一の溶媒として水を含む。
【0105】
本発明の一実施形態では、好ましくはヒュームドシリカをベースとする本発明の疎水化粉粒体と、疎水化シリカエアロゲル粉粒体と、の混合物を断熱組成物中で使用する。このような場合、エアロゲル材料に対する本発明の疎水化粉粒体の比は、好ましくは重量で10:1~1:1である。
【0106】
EN12667:2001に準拠して、ガード付きホットプレートと熱流計装置を使用する方法により、平均測定温度:10℃、接圧:250Paで、空気雰囲気下、標準圧力(1atm)で測定された断熱組成物の熱伝導率は、好ましくは70mW/(mK)未満、より好ましくは50mW/(mK)未満、より好ましくは10mW/(mK)~45mW/(mK)、特に好ましくは15mW/(mK)~40mW/(mK)、最も好ましくは20mW/(mK)~35mW/(mK)である。
【0107】
粉粒体及び断熱組成物の使用
本発明に係る疎水化粉粒体および/またはそれをベースとする断熱組成物は、一般に、断熱および/または遮音、特に、壁、屋根、住宅の遮音および/または断熱、ならびに産業プラント、産業機器の部品、タンク、プロセスパイプ、ダクト、パイプラインなどの断熱に使用することができる。
【0108】
本発明の顆粒を含む断熱組成物は、はけ塗り、噴霧、こて塗り、浸漬コーティングなどの任意の適切な方法により、分離されるべき表面に塗布することができる。
【実施例】
【0109】
分析方法、パラメータの測定/計算
AutoPore V 9600装置(Micomeritics社)を使用して、DIN ISO15901-1に準拠して、水銀圧入法により、4nmを超える細孔の累積細孔容積(4nmを超えるHg-細孔容積)[単位:cm3/g]を測定した。適用した最大圧力(417MPa)で水銀が浸透できる細孔(すなわち、細孔直径が4nmを超える細孔)の細孔容積のみを検出した。
【0110】
4μm未満の細孔の累積細孔容積(4μm未満のHg-細孔容積、単位:cm3/g)を、DIN ISO 15901-1に準拠して、同じ水銀圧入法により測定した。それは、この方法で判別可能な4μm未満のすべての細孔の累積細孔容積に対応している。
【0111】
(最大圧入圧力:417MPaで)4nmを超えるすべての細孔の体積を、材料が占めると推定される体積から除外した後、DIN ISO15901-1に準拠した水銀圧入法による試料の分析結果から、骨格密度[単位:g/cm3]を測定した。
【0112】
ASTM D280-01(方法A)に準拠して乾燥減量(LOD、単位:重量%)を測定した。
【0113】
ブルナウアー・エメット・テラー法による窒素吸着により、DIN9277:2014に準拠してBET比表面積[単位:m2/g]を測定した。
【0114】
DIN ISO787-11:1995に準拠して、タンピング密度[単位:g/L]を測定した。
【0115】
国際公開公報第2011/076518A1号の5~6頁に詳細に記載された方法に従って、メタノール湿潤性[メタノール/水混合物中のメタノールの体積%]を測定した。
【0116】
EN ISO3262-20:2000(第8章)に準拠して、炭素測定システムC632(製造元:LECO社)を使用する元素分析により、炭素含有量[単位:重量%]を測定した。分析試料を、燃焼剤を備えたセラミックるつぼに秤量し、誘導炉内で酸素流下で加熱した。存在する炭素は、CO2に酸化される。CO2ガスの量を赤外線検出器(IR) によって定量化する。SiCは燃焼しないので、炭素含有量の値には影響しない。
【0117】
特許文献3の8頁17行目~9頁12行目に詳細に記載されているように、顆粒の予備乾燥試料と水素化リチウムアルミニウム溶液との反応により、BET表面積に対するシラノール基の数dSiOH[単位:SiOH/nm2]を測定した。
【0118】
本発明の粉粒体のBET表面積に対する表面処理剤中のケイ素原子の数d[Si][単位:Si原子/nm2]を、表面処理の存在に関連する炭素含有量(=全試験試料の元素分析により測定した炭素含有量)から計算し、表面処理の化学構造、例えば、表面処理剤のケイ素原子あたりの炭素原子数(NC/Si)を考慮した:
d[Si][Si原子/nm2]=(C*[重量%]×NA)/(MrC[g/モル]×NC/Si×BET[m2/g]×1020) (3)
(式中、MrC=12,011g/モルは炭素の原子量であり、
NAは、アボガドロ数(~6.022*1023)であり、
NC/Siは、表面処理剤中のケイ素原子に対する炭素原子の比率である。(ヘキサメチルジシラザンの場合、NC/Si=3))
【0119】
BET表面積に対する表面処理剤中のケイ素原子の数(d[Si])を、BET表面積に対するシラノール基の数(dSiOH)で割ることによって、d[Si]/dSiOH比を計算した。
【0120】
EN12667:2001に準拠して、ガード付きホットプレートと熱流計装置を使用する方法により、熱伝導率[mW/(m*K)]を測定した。平均測定温度は10℃、接圧は1000Paであった。測定は、標準圧力の空気雰囲気下で行った。
【0121】
シリカ系材料の調製
比較例1(HMDSで疎水化したシリカ粉末)
HMDSで疎水化したシリカ粉末AEROSIL(登録商標)R812(BET=172m2/g、製造元:EVONIK Resource Efficiency GmbH社)を参照物質として使用した。このシリカ粉末の物理化学的特性を表2に示す。
【0122】
比較例2(HMDSで疎水化したシリカ/SiC顆粒)
混合
1000F炭化ケイ素(Carsimet、製造元:Keyvest社)20重量%と、AEROSIL(登録商標)R812疎水性シリカ(HMDSで疎水化、BET=172m2/g、製造元:EVONIK Resource Efficiency GmbH社)80重量%と、をMinox PSM300HN/1MKプラウシェアミキサーを使用して混合した。
【0123】
高密度化
上記のとおりに生成したAEROSIL(登録商標)R812と炭化ケイ素との混合物を、グレンゼバッハ高密度化ロール(Vacupress VP160/220)で高密度化した。得られた粉粒体のタンピング密度を、適用する接圧、ロール速度、および減圧により166g/Lに調整した。適用した真空は、300ミリバール未満(絶対)であった。ロール速度は5rpmで、圧力は2000Nであった。
【0124】
ふるい分け/分別
所望の画分を得るために、まず、メッシュサイズが3150μmの振動シーヴミル(製造元:FREWITT社)に粉粒体を供給し、粒子の上限を確立するために、この上限よりも大きい粒子を除去した。続いて、粒子画分を分別し、粒径が200~1190μmの粒子画分を得た。これは、Sweco社製の振動ふるいLS18Sモデルを使用して行った。
このように調製したシリカ系粉粒体の物理化学的特性を表2に示す。
【0125】
比較例3(熱処理なし)
混合
1000F炭化ケイ素(Carsimet、製造元:Keyvest社)20重量%と、AEROSIL(登録商標)300親水性シリカ(BET=300m2/g、製造元:EVONIK Resource Efficiency GmbH社)80重量%と、をMinox PSM300HN/1MKプラウシェアミキサーを使用して混合した。
【0126】
高密度化
上記で生成したAEROSIL(登録商標)300と炭化ケイ素との混合物を、グレンゼバッハ高密度化ロール(Vacupress VP160/220)で高密度化した。得られた粉粒体のタンピング密度を、適用する接圧、ロール速度、および減圧により120±5g/Lに調整した。適用した真空は、300ミリバール未満(絶対)であった。ロール速度は5rpmで、圧力は2000Nであった。
【0127】
ふるい分け/分別
所望の画分を得るために、メッシュサイズが1000μmである振動シーヴイミル(製造元:FREWITT社)に粉粒体を供給し、粒子の上限を確立するために、この上限よりも大きい粒子を除去した。
【0128】
疎水化
高密度化工程後の親水性顆粒(100g)を、接地金属バケツに入れ、プロペラミキサーにより200rpmで混合し、25℃で連続攪拌しながら水(8g)をその表面に噴霧し、続いてヘキサメチルジシラザン(HMDS)12gを噴霧した。混合を5分間続けた。その後、圧力補正のために、直径0.5~1mmの穴がいくつかあいている蓋でバケツを密閉し、オーブン内で145℃で6時間保管した。その後、粉粒体を乾燥パンに入れ、120℃のオーブンで窒素雰囲気下3時間乾燥させ、揮発性物質を蒸発させた。
【0129】
このように調製したシリカ系粉粒体の物理化学的特性を表2に示す。
【0130】
比較例4(熱処理あり、疎水化処理なし)
混合
1000F炭化ケイ素(Carsimet、製造元:Keyvest社)20重量%と、AEROSIL(登録商標)300親水性シリカ(BET=300m2/g、製造元:EVONIK Resource Efficiency GmbH社)80重量%と、をMinox PSM300HN/1MKプラウシェアミキサーを用いて混合した。
高密度化
上記で生成した、AEROSIL(登録商標)300と炭化ケイ素との混合物を、グレンゼバッハ高密度化ロール(Vacupress VP160/220)で高密度化した。得られた粉粒体のタンピング密度を、適用する接圧、ロール速度、および減圧により120±5g/Lに調整した。適用した真空は、300ミリバール未満(絶対)であった。ロール速度は5rpmで、圧力は2000Nであった。
焼結/硬化
その後の熱硬化を、Schroder Industrieofen GmbH社製のXR310室窯内で行った。この目的のために、ベッド高さが最大5cmである複数層に温度プログラムを施した。温度勾配は、目標温度である1025℃まで300K/時間であった。保持時間は3時間であった。次いで、試料を、取り出すまで冷却した(積極的な冷却はなし)。得られた焼結顆粒のタンピング密度は、180±10g/Lであった。
ふるい分け/分別
所望の画分を得るために、メッシュサイズが1000μmである振動シーヴイミル(製造元:FREWITT社)に熱硬化粉粒体を供給し、粒子の上限を確立するために、この上限よりも大きい粒子を除去した。
このように調製したシリカ系粉粒体の物理化学的特性を表2に示す。
【0131】
比較例5(熱処理あり、水なし疎水化)
混合
1000F炭化ケイ素(Carsimet、製造元:Keyvest社)20重量%と、AEROSIL(登録商標)300親水性シリカ(BET=300m2/g、製造元:EVONIK Resource Efficiency GmbH社)80重量%と、をMinox PSM300HN/1MKプラウシェアミキサーを用いて混合した。
高密度化
上記で生成した、AEROSIL(登録商標)300と炭化ケイ素との混合物を、グレンゼバッハ高密度化ロール(Vacupress VP160/220)で高密度化した。得られた粉粒体のタンピング密度を、適用する接圧、ロール速度、および減圧により120±5g/Lに調整した。適用した真空は、300ミリバール未満(絶対)であった。ロール速度は5rpmで、圧力は2000Nであった。
ふるい分け/分別
所望の画分を得るために、メッシュサイズが1000μmである振動シーヴイミル(製造元:FREWITT社)に熱硬化粉粒体を供給し、粒子の上限を確立するために、この上限よりも大きい粒子を除去した。
焼結/硬化
その後の熱硬化を、Schroder Industrieofen GmbH社製のXR310室窯内で行った。この目的のために、ベッド高さが最大5cmである複数層に温度プログラムを施した。温度勾配は、目標温度である1025℃まで300K/時間であった。保持時間は3時間であった。次いで、試料を、取り出すまで冷却した(積極的な冷却はなし)。得られた焼結顆粒のタンピング密度は、180±10g/Lであった。
疎水化
高密度化工程後の親水性顆粒(500g)を、接地金属バケツに入れ、プロペラミキサーにより300~500rpmで混合し、25℃で連続攪拌しながらヘキサメチルジシラザン(HMDS)(60g)をその表面に噴霧した。混合を10分間続けた。その後、圧力補正のために、直径0.5~1mmの穴がいくつかあいている蓋でバケツを密閉し、オーブン内で145℃で6時間保管した。その後、粉粒体を乾燥パンに入れ、145℃のオーブンで窒素雰囲気下3時間乾燥させ、揮発性物質を蒸発させた。
粒子画分の分別は、必要な場合は、Sweco社製の振動ふるいLS18Sモデルを使用して行った。
このように調製したシリカ系粉粒体の物理化学的特性を表2に示す。
【0132】
比較例6(熱処理あり、蒸気の形での疎水化)
IR乳白剤を含む疎水化シリカ顆粒の調製は、国際出願番号第PCT/EP2018/051142号と同様に行った。
混合
1000F炭化ケイ素(Carsimet、製造元:Keyvest社)20重量%と、AEROSIL(登録商標)300親水性シリカ(BET=300m2/g、製造元:EVONIK Resource Efficiency GmbH社)80重量%と、をMinox PSM300HN/1MKプラウシェアミキサーを用いて混合した。
高密度化
上記で生成した、AEROSIL(登録商標)300と炭化ケイ素との混合物を、グレンゼバッハ高密度化ロール(Vacupress VP160/220)で高密度化した。得られた粉粒体のタンピング密度を、適用する接圧、ロール速度、および減圧により121g/Lに調整した。適用した真空は、300ミリバール未満(絶対)であった。ロール速度は5rpmで、圧力は2000Nであった。
焼結/硬化
その後の熱硬化を、Schroder Industrieofen GmbH社製のXR310室窯内で行った。この目的のために、ベッド高さが最大5cmである複数層に温度プログラムを施した。温度勾配は、目標温度である900℃まで300K/時間であった。保持時間は3時間であった。次いで、試料を、取り出すまで冷却した(積極的な冷却はなし)。得られた焼結顆粒のタンピング密度は、180g/Lであった。
疎水化
熱硬化顆粒の最終的な疎水化を、気相上で高温で行った。この目的のために、疎水化剤としてのヘキサメチルジシラザン(HMDS、親水性プレートの重量に対し8.6重量%)を蒸発させ、国際公開番号第2013/013714A1号の実施例1の方法に従って減圧法を実施した。試験片を、デシケータ内で100℃を超えるまで加熱し、その後排気した。その後、圧力が300ミリバールに上昇するまで、ガス状HMDSをデシケータに導入した。試料を空気でパージした後、デシケータから取り出した。
ふるい分け/分別
所望の画分を得るために、メッシュサイズが1000μmである振動シーヴイミル(製造元:FREWITT社)に熱硬化粉粒体を供給し、粒子の上限を確立するために、この上限よりも大きい粒子を除去した。
このように調製したシリカ系粉粒体の物理化学的特性を表2に示す。
【0133】
実施例1
本発明に係る粉粒体を比較例5と同様に調製したが、疎水化部分については以下のように行った:
焼結工程後の親水性顆粒(500g)を接地金属バケツに入れ、プロペラミキサーにより300~500rpmで混合し、25℃で連続攪拌しながら水(40g)をその表面に噴霧し、続いてヘキサメチルジシラザン(HMDS)(60g)を噴霧した。混合を10分間続けた。その後、圧力補正のために、直径0.5~1mmの穴がいくつかあいている蓋でバケツを密閉し、オーブン内で145℃で6時間保管した。その後、粉粒体を乾燥パンに入れ、145℃のオーブンで窒素雰囲気下3時間乾燥させ、揮発性物質を蒸発させた。
このように調製したシリカ系粉粒体の物理化学的特性を表2に示す。
【0134】
実施例2
本発明に係る粉粒体を比較例5と同様に調製したが、疎水化部分については以下のように行った:
焼結工程後の親水性顆粒(500g)を接地金属バケツに入れ、プロペラミキサーにより300~500rpmで混合し、25℃で連続攪拌しながら水(40g)をその表面に噴霧し、続いてヘキサメチルジシラザン(HMDS)(37.5g)を噴霧した。混合を10分間続けた。その後、圧力補正のために、直径0.5~1mmの穴がいくつかあいている蓋でバケツを密閉し、オーブン内で145℃で6時間保管した。その後、粉粒体を乾燥パンに入れ、145℃のオーブンで窒素雰囲気下3時間乾燥させ、揮発性物質を蒸発させた。
このように調製したシリカ系粉粒体の物理化学的特性を表2に示す。
【0135】
実施例3
本発明に係る粉粒体を比較例5と同様に調製したが、疎水化部分については以下のように行った:
焼結工程後の親水性顆粒(500g)を接地金属バケツに入れ、プロペラミキサーにより300~500rpmで混合し、25℃で連続攪拌しながら水(20g)をその表面に噴霧し、続いてヘキサメチルジシラザン(HMDS)(40g)を噴霧した。混合を10分間続けた。その後、圧力補正のために、直径0.5~1mmの穴がいくつかあいている蓋でバケツを密閉し、オーブン内で145℃で6時間保管した。その後、粉粒体を乾燥パンに入れ、145℃のオーブンで窒素雰囲気下3時間乾燥させ、揮発性物質を蒸発させた。
このように調製したシリカ系粉粒体の物理化学的特性を表2に示す。
【0136】
実施例4
本発明に係る粉粒体を比較例5と同様に調製したが、疎水化部分については以下のように行った:
焼結工程後の親水性顆粒(500g)を接地金属バケツに入れ、プロペラミキサーにより300~500rpmで混合し、25℃で連続攪拌しながら水(40g)をその表面に噴霧し、続いてヘキサメチルジシラザン(HMDS)60gと3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(MEMO)10gとの混合物を噴霧した。混合を10分間続けた。その後、圧力補正のために、直径0.5~1mmの穴がいくつかあいている蓋でバケツを密閉し、オーブン内で145℃で6時間保管した。その後、粉粒体を乾燥パンに入れ、145℃のオーブンで窒素雰囲気下3時間乾燥させ、揮発性物質を蒸発させた。
粒子画分の分別は、必要な場合(表3を参照)は、Sweco社製の振動ふるいLS18Sモデルを使用して行った。
このように調製したシリカ系粉粒体の物理化学的特性を表2に示す。
【0137】
実施例5
本発明に係る粉粒体を比較例5と同様に調製したが、疎水化部分については以下のように行った:
焼結工程後の親水性顆粒(500g)を接地金属バケツに入れ、プロペラミキサーにより 300~500rpmで混合し、25℃で連続攪拌しながら水(40g)をその表面に噴霧し、続いてヘキサメチルジシラザン(HMDS)60gと3-(グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン(GLYMO)10gとの混合物を噴霧した。混合を10分間続けた。その後、圧力補正のために、直径0.5~1mmの穴がいくつかあいている蓋でバケツを密閉し、オーブン内で145℃で6時間保管した。その後、粉粒体を乾燥パンに入れ、145℃のオーブンで窒素雰囲気下3時間乾燥させ、揮発性物質を蒸発させた。
粒子画分の分別は、必要な場合(表3を参照)は、Sweco社製の振動ふるいLS18Sモデルを使用して行った。
このように調製したシリカ系粉粒体の物理化学的特性を表2に示す。
【0138】
実施例1~5で調製したすべての粉粒体は、高い気孔率、機械的安定性、骨比較的高い値の骨格密度、比較的高い疎水性(高d[Si]、メタノール湿潤性値)、および比較的高い極性(d[SiOH]値)を示した(表1~2)。これらの物理化学的特性により、このような顆粒が、断熱または防音に関連するさまざまな用途に適するようになる。具体的には、水性結合剤系に基づいて調製される断熱コーティングの調製に適する。
【0139】
比較例2の粉粒体は、疎水化シリカ粉末であるAerosil R812(比較例1)をSiCで高密度化することにより調製された。粉末と比べて顆粒中の粒子間空間が減少するので、気孔率の値(4nmを超えるHg細孔)が大幅に減少した(顆粒の場合5.22cm3/g、粉末の場合13.13cm3/g)。タンピング密度と骨格密度は高密度化により増加したが、疎水性と極性は変わらなかった(表1~2)。
【0140】
比較例3の顆粒は、実施例1のものと同様に調製されたが、唯一の違いは、熱処理工程が適用されなかった点である。この試料のタンピング密度、骨格密度、および全体的な機械的安定性は、実施例1で調製された顆粒の値よりも著しく低かった(表1~2)。
【0141】
疎水化工程時に水を使用せずに調製した比較例5および比較例6の顆粒は、本発明の実施例よりも著しく低いdSiOH値を示した。そのため、これらの材料は、水系断熱コーティングなどの極性系への組み込みにあまり適していない。
【0142】
液体断熱組成物の調製:一般手順
混合容器に、必要量のアクリル結合剤分散液(スチレンアクリル分散液Acronal S790、製造元:BASF社、全配合量の50重量%)を投入した。羽根車でゆっくりと攪拌しながら、水(全配合物の17重量%)を添加し、続いて粉粒体(全配合物の32重量%)を段階的に添加する。ミキサーの速度を上げ、渦を維持した。平均繊維長が900μmであるセラミック繊維(Lapinus Rockwool)(全配合物の約1重量%)を添加した。すべての顆粒を、分散液/水媒体内に完全に分散させた。可塑剤、レオロジー制御剤、合体剤などの改質剤を、最適化のために混合工程中に添加することができる。
【0143】
【0144】
【0145】
スチレンアクリル分散液Acronal S790を使用した一般手順と同様に、本発明の粉粒体は、以下の結合剤タイプに組み込むことができ、粉粒体の装填量が高い(最大で全配合物の25~30重量%)対応する断熱組成物をもたらす。
‐Vinnapas224HD(Wacker、ビニルシランと共重合したスチレンアクリル分散液);
‐CE330エポキシ結合剤(二成分、100%固体エポキシ樹脂、製造元:Cornerstone Construction Material, LLC社);
‐100%固体ポリウレタン結合剤;
‐砂が粉粒体に置き換えられたスタッコ水系配合物。
【0146】
固体(乾燥)断熱組成物の調製
断熱組成物の試料を、20cm×20cm×1cmサイズのポリカーボネート基板上に塗布し、スパチュラで圧密して厚さ約3~5cmの湿潤フィルムを作製し、実験台上で24~36時間、20℃、相対湿度および50%で空気乾燥させた。このように調製したすべての断熱組成物は、乾燥フィルム中に84.5体積%の粉粒体を含んでいた。この体積比は、次のように計算した:乾燥した断熱材組成物100g中の顆粒量MG100(グラム単位)と、顆粒の既知のタンピング密度dG(g/L)とから、この組成物100g中の顆粒の体積VG100 を計算した。
VG100=MG100/dG
【0147】
測定した乾燥断熱材組成物100gの体積VC100から、乾燥断熱材組成物中の顆粒の体積比率を次のように計算した:
rG(体積%)=VG100*100%/VC100
乾燥後、すべての試料の熱伝導率測定を行った。
液体および乾燥断熱組成物の調製の結果を表3にまとめる。
【0148】
比較例5の粉粒体を含む組成物は動粘度が比較的高いので、この組成物を噴霧によって塗布することはできなかった。逆に、実施例1、3、4および5の顆粒を含む断熱複合材は、噴霧技術の他に、はけ塗りによっても塗布することができた。これらすべての場合において、厚さ1~2.5mmの乾燥フィルムを製造することができた。
【0149】