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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】永久磁束要素による量子チューニング
(51)【国際特許分類】
   H10N 60/00 20230101AFI20240927BHJP
   H10N 60/12 20230101ALI20240927BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20240927BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H10N60/00 G
H10N60/12 A ZAA
H01L27/04 L
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022549652
(86)(22)【出願日】2021-03-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-01
(86)【国際出願番号】 EP2021056073
(87)【国際公開番号】W WO2021190938
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】16/829,439
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(74)【代理人】
【識別番号】100120710
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】ホルメス、スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】サダナ、デヴェンドラ
(72)【発明者】
【氏名】マッカイ、デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ハーツバーグ、ジャレッド
(72)【発明者】
【氏名】ベデル、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ニン
【審査官】脇水 佳弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-523747(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0054201(US,A1)
【文献】国際公開第2009/072550(WO,A1)
【文献】MOOIJ, J. E. et al.,Josephson Persistent-Current Qubit,Science,1999年,Vol. 285,p.1036-1039,DOI: 10.1126/science.285.5430.1036
【文献】ABDO, Baleegh et al.,Active protection of a superconducting qubit with an interferometric Josephson isolator,Nature Communications,2019年,10:3154,p. 1-10,DOI: 10.1038/s41467-019-11101-3
【文献】EVANS, A. Benjamin et al.,A highly tunable silicone-based magnetic elastomer with nanoscale homogeneity,Journal of Magnetism and Magnetic Materials,2012年,Vol. 324,p. 501-507,DOI: 10.1016/j.jmmm.2011.08.045
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 60/00
H10N 60/12
H01L 21/822
H01L 27/04
Science Direct
IEEE Xplore
Scopus
nature.Com
SCIENCE
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
キュービット・デバイスと、
前記キュービット・デバイスに近接した、前記キュービット・デバイス上へ第1の磁束を放出する永久磁石であり、前記キュービット・デバイスの動作周波数が前記第1の磁束に基づく、前記永久磁石と、
前記永久磁石に近接した、前記永久磁石上へ第2の磁束を放出する電磁石であり、前記第2の磁束が前記第1の磁束をチューニングする、前記電磁石と
を含むシステム。
【請求項2】
前記永久磁石がナノ粒子磁石である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ナノ粒子磁石が、シリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第2の磁束の存在下で前記ナノ粒子磁石に電流を流し、それによって前記第1の磁束の強度を変化させる電極
をさらに含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の磁束が所定の強度に達したことに基づいて、前記電極が前記電流を除去し、前記電磁石が前記第2の磁束を除去する、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記キュービット・デバイスが超伝導量子干渉デバイス・ループである、請求項1ないし5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
前記キュービット・デバイスが第1の基板上にあり、前記永久磁石および前記電磁石が第2の基板上にある、請求項1ないし6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
前記キュービット・デバイスおよび前記永久磁石が第1の基板上にあり、前記電磁石が第2の基板上にある、請求項1ないし6のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
方法であって、
キュービット・デバイスに近接した永久磁石によって、前記キュービット・デバイス上へ第1の磁束を放出することであり、前記キュービット・デバイスの動作周波数が前記第1の磁束に基づく、前記放出することと、
前記永久磁石に近接した電磁石によって、前記永久磁石上へ第2の磁束を放出することであり、前記第2の磁束が前記第1の磁束をチューニングする、前記放出することと
を含む方法。
【請求項10】
前記永久磁石がナノ粒子磁石である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ナノ粒子磁石が、シリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
電極によって、前記第2の磁束の存在下で前記ナノ粒子磁石に電流を流し、それによって前記第1の磁束の強度を変化させること
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の磁束が所定の強度に達したことに基づいて、前記電極によって前記電流を除去し、前記電磁石によって前記第2の磁束を除去すること
をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記キュービット・デバイスが超伝導量子干渉デバイス・ループである、請求項9ないし13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記キュービット・デバイスが第1の基板上にあり、前記永久磁石および前記電磁石が第2の基板上にある、請求項9ないし14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記キュービット・デバイスおよび前記永久磁石が第1の基板上にあり、前記電磁石が第2の基板上にある、請求項9ないし14のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
装置であって、
ジョセフソン接合デバイスに近接した、前記ジョセフソン接合デバイス上へチューニング可能な永久磁場を放出するナノ粒子磁石であり、前記ジョセフソン接合デバイスの動作周波数が前記チューニング可能な永久磁場に基づく、前記ナノ粒子磁石と、
前記ナノ粒子磁石に近接した、前記チューニング可能な永久磁場をチューニングする磁束コイルと
を含む装置。
【請求項18】
前記ナノ粒子磁石が、シリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子を含む、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記ナノ粒子磁石が前記磁束コイルの磁場にさらされているときに前記ナノ粒子磁石に電流を流し、それによって前記チューニング可能な永久磁場の値を変化させる電極
をさらに含む、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記チューニング可能な永久磁場がしきい値に達したことに基づいて、前記電極が前記電流を除去し、前記磁束コイルが前記磁場を除去する、請求項19に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本主題開示は量子チューニング(quantum tuning)に関し、より詳細には、永久磁束要素による量子チューニングに関する。
【背景技術】
【0002】
量子回路性能の向上に役立てるため、キュービット動作周波数の正確なチューニング(例えば磁束チューニング)を実施することができる。一般に、単一接合キュービット・デバイス(例えば単一のジョセフソン接合)は固定動作周波数を有する。他方、さまざまな多接合キュービット・デバイスは、多接合キュービット・デバイスがさらされている磁束(例えば磁場)の関数である可変動作周波数を有しうる。例えば、SQUIDループ(例えば並列に結合された2つのジョセフソン接合などの超伝導量子干渉デバイス(superconducting quantum interference device)ループ)は、ループを通り抜ける磁束(例えば2つのジョセフソン接合間を通る磁束)に基づくもしくは依存する、またはその両方である、全体的な動作周波数を有しうる。したがって、このようなキュービット・デバイスの動作周波数は、それらのキュービット・デバイスがさらされている磁束を制御/変調することによって制御/変調することができる。
【0003】
さまざまなケースにおいて、量子回路のそれぞれのキュービット・デバイスは、個別化された/独立した動作周波数を達成するために、個別化された/独立した磁束チューニングを必要としうる。さらに、量子回路性能を最適にするには、それぞれのキュービット・デバイスの個別化された/独立したそれぞれの動作周波数が、個別化された/独立した期間にわたって持続することが必要となりうる。このような磁束チューニングを容易にするため、キュービット・デバイスごとに個別化された/独立した磁束が必要とされうる。さまざまなケースにおいて、それぞれの磁束が関連する期間にわたって持続すること、それぞれの磁束が、その関連するキュービット・デバイスだけに向かって導かれること(そうでない場合には、例えば、隣接するキュービット・デバイスに誤って影響が及ぶことがあり、これによってノイズが導入され、コヒーレンスが低下しうる)、それぞれの磁束が、その関連するキュービット・デバイスの全体にわたって均一であること(そうでない場合には、例えばコヒーレンスが低下しうる)、およびそれぞれの磁束が、その関連するキュービット・デバイスの動作周波数をシフトさせるのに十分な強度を有すること、が要求されうる。
【0004】
従来、キュービット・デバイスの磁束チューニングは、電磁石(例えば電流が流されているときには磁束を発生させ、電流が流されていないときには磁束を発生させない磁束コイル)によって容易にされている。キュービット・デバイスの磁束チューニングを容易にするために電磁石に電流が流され、それによって電磁石は、キュービット・デバイス上へ磁束を放出する。この磁束は、キュービット・デバイスの動作周波数をシフトさせ、変化させ、キュービット・デバイスの動作周波数に作用し、もしくはそれ以外の態様でキュービット・デバイスの動作周波数に影響を及ぼし、またはこれらの組合せを達成する。例えば、磁束にさらされていないとき、キュービット・デバイスの動作周波数は第1の値をとりうる。電磁石の磁束にさらされたとき、キュービット・デバイスの動作周波数は第1の値から第2の値に変化しうる。第2の値は、電磁石によって放出された磁束の強度および/もしくは向きに依存し、ならびに/または電磁石によって放出された磁束の強度および/もしくは向きに基づきうる(例えば、第2の値は、キュービット・デバイスがさらされている磁束に応じて、第1の値よりもはるかに高い値から第1の値よりもわずかに高いだけの値の範囲をとることがあり、もしくは、キュービット・デバイスがさらさている磁束に応じて、第1の値よりもはるかに低い値から第1の値よりもわずかに低いだけの値の範囲をとることがあり、またはその両方であることがある)。電磁石によって放出される磁束の強度もしくは向きまたはその両方は、電磁石に流される電流を制御/変調することによって制御/変調される。
【0005】
磁束チューニングを容易にするこのような従来のシステム/技術は、電流の持続する流れもしくは能動的な流れまたは持続する能動的な流れを必要とする。つまり、従来のシステムで使用されている電磁石は、電磁石に電流が能動的に流されているときにだけ磁束を放出することができる。電磁石に電流が流されなくなると、電磁石は磁束の放出を停止し、それによってキュービット・デバイスの動作周波数はその元の/最初の値に戻る。したがって、従来のシステム/技術では、キュービット・デバイスが変調/制御された動作周波数を必要とする期間の全体にわたって電流を流す必要がある。
【0006】
能動的に流れる電流の使用はいくつかの技術的問題を提示する。具体的には、能動的に流れる電流は熱を発生させる。量子回路を適正に動作させるためにはしばしば、量子回路の周囲環境を極低温に維持する必要があるため、能動的に流れる電流によって発生する追加の熱は、量子回路がその上に実装されたチップもしくは構成要素またはその両方の周囲の局所温度を上昇させ、この局所温度の上昇が量子回路の適正な動作を妨げることがある。さらに、能動的に流れる電流は不安定であることがある。例えば、電流の大きさもしくは位相またはその両方は、(例えば電圧調整器もしくは電流調整器またはその両方が実装されているときでも)摂動を経験することがあり、この摂動が、電磁石によって放出される磁束の対応する摂動を引き起こすことがあり、この磁束の摂動が、キュービット・デバイスの動作周波数の対応する摂動を引き起こすことがある。キュービット・デバイスの動作周波数のこのような摂動は、量子回路の性能に負の影響を与えることがある。
【0007】
さまざまな事例において、本発明の実施形態は、先行技術におけるこれらの問題のうちの1つまたは複数の問題を解決することができる。
【発明の概要】
【0008】
以下に、本発明の1つまたは複数の実施形態の基本的理解を提供する概要を示す。この概要が、鍵となる要素もしくは決定的に重要な要素を識別すること、または、この概要が、特定の実施形態の範囲もしくは特許請求の範囲を限定することは意図されていない。その唯一の目的は、後に示すより詳細な説明に対する前置きとして、着想を、簡略化された形で示すことにある。本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態では、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にするデバイス、システム、コンピュータ実施方法(computer-implemented method)、装置もしくはコンピュータ・プログラム製品またはこれらの組合せが説明される。
【0009】
1つまたは複数の実施形態によれば、システムが提供される。このシステムはキュービット・デバイスを含むことができる。さまざまな態様において、このシステムはさらに、キュービット・デバイスに近接した永久磁石を含むことができる。さまざまな態様において、永久磁石は、キュービット・デバイス上へ第1の磁束を放出することができる。さまざまなケースにおいて、キュービット・デバイスの動作周波数は第1の磁束に基づきうる。さまざまな態様において、このシステムはさらに、永久磁石に近接した電磁石を含むことができる。さまざまな態様において、電磁石は、永久磁石上へ第2の磁束を放出することができる。さまざまな態様において、第2の磁束は第1の磁束をチューニングすることができる。さまざまな実施形態において、永久磁石をナノ粒子磁石とすることができる。さまざまな実施形態において、ナノ粒子磁石は、シリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子を含むことができる。さまざまな実施形態において、このシステムはさらに、第2の磁束の存在下でナノ粒子磁石に電流を流す電極を含むことができる。さまざまな態様において、第1の磁束の強度は、ナノ粒子磁石が電流および第2の磁束にさらされたことに基づいて変化しうる。さまざまな実施形態において、第1の磁束が所定の強度に達したことに基づいて、電極は電流を除去することができ、電磁石は、第2の磁束を除去することができる。
【0010】
1つまたは複数の実施形態によれば、上で説明したシステムを方法として実施することができる。
【0011】
1つまたは複数の実施形態によれば、装置が提供される。さまざまな態様において、この装置は、ジョセフソン接合デバイスに近接したナノ粒子磁石を含むことができる。さまざまな態様において、ナノ粒子磁石は、ジョセフソン接合デバイス上へチューニング可能な永久磁場を放出することができる。さまざまな事例において、ジョセフソン接合デバイスの動作周波数は、チューニング可能な永久磁場に基づきうる。さまざまな態様において、この装置はさらに、ナノ粒子磁石に近接した磁束コイルを含むことができる。さまざまな態様において、磁束コイルは、チューニング可能な永久磁場をチューニングすることができる。さまざまな実施形態において、ナノ粒子磁石は、シリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子を含むことができる。さまざまな実施形態において、この装置はさらに電極を含むことができる。この電極は、ナノ粒子磁石が磁束コイルの磁場にさらされているときにナノ粒子磁石に電流を流すことができる。さまざまな態様において、チューニング可能な永久磁場の値は、ナノ粒子磁石が電流および磁束コイルの磁場にさらされたことに基づいて変化しうる。さまざまな実施形態において、チューニング可能な永久磁場がしきい値に達したことに基づいて、電極は電流を除去することができ、磁束コイルは磁場を除去することができる。
【0012】
上述のとおり、キュービット・デバイスの磁束チューニングを容易にする従来のシステム/技術は、電磁石によって、キュービット・デバイス上へ磁束(例えば磁場)を放出することを含む。この電磁石は、電磁石に電流が流されているときには磁束を放出し、電磁石に電流が流されていないときには磁束を放出しない。さらに、キュービット・デバイスの動作周波数は、キュービット・デバイスが電磁石の磁束にさらされたときに最初の値から変調された値にシフトし、キュービット・デバイスが電磁石の磁束にさらされなくなると、変調された値から最初の値に戻る。したがって、従来のシステム/技術は、磁束チューニングを容易にするために、持続する電流もしくは能動的に流れる電流または持続する能動的に流れる電流を必要とする。これは、キュービット・デバイスの動作周波数を変調された値に維持したい期間の全体にわたって電流が流れていなければならないためである。
【0013】
上で説明したとおり、持続する電流もしくは能動的に流れる電流または持続する能動的に流れる電流は、磁束チューニング分野の技術的問題を提示する。具体的には、能動的に流れる電流は過度の熱を発生させる。この熱は、量子回路の性能に負の影響を及ぼすことがある(例えば、量子回路は一般に絶対零度に近い温度で実施され、過度の熱は、このような温度を望ましくなく上昇させることがある)。さらに、能動的に流れる電流は、量子性能を最適にするのに十分な安定性を欠いていることがある(例えば、1つの期間にわたって持続する能動的に流れる電流の大きさもしくは位相またはその両方は摂動を経験することがあり、この摂動が、電磁石によって放出される磁束の対応する摂動を引き起こし、この磁束の摂動が、キュービット・デバイスの動作周波数の対応する摂動を引き起こす)。
【0014】
本発明のさまざまな実施形態は、先行技術のこれらの問題のうちの1つまたは複数の問題を解決することができる。さまざまな態様において、本発明の実施形態は、永久磁束要素による量子チューニングを提供することができる。さまざまな事例において、永久磁束要素による量子チューニングは、持続する電流もしくは能動的に流れる電流または持続する能動的に流れる電流を必要とすることなしに、キュービット・デバイスの磁束チューニングを容易にすることができる(例えば、永久磁束要素による量子チューニングは、1つの期間の間、その期間の全体にわたって電流が流れている必要なしに、キュービット・デバイスの動作周波数を変調された値に維持することができる)。
【0015】
さまざまなケースにおいて、本発明の実施形態は、チューニング可能な永久磁石を電磁石とともに実施することによって、持続する電流もしくは能動的に流れる電流または持続する能動的に流れる電流なしで、キュービット・デバイスの磁束チューニングを容易にすることができる。具体的には、さまざまな態様において、チューニング可能な永久磁石は、キュービット・デバイス上へ第1の磁束を放出することができる。さまざまなケースにおいて、キュービット・デバイスの動作周波数は第1の磁束に基づきうる。チューニング可能な永久磁石は永久磁石であるため、第1の磁束を発生させるためにチューニング可能な永久磁石に起誘導電流を流す必要はない(例えば、第1の磁束は、チューニング可能な永久磁石によって、電流を費やすことなしに発生させることができる)。第1の磁束にさらされたとき、キュービット・デバイスの動作周波数は、最初の値から変調された値にシフトすることができる(例えば、変調された値は、第1の磁束の大きさもしくは向きまたはその両方に基づきうる)。このように、適当な任意の期間の間、持続する電流もしくは能動的に流れる電流または持続する能動的に流れる電流を必要とすることなしに、その適当な期間の間、キュービット・デバイスの動作周波数を変調された値にセットすることができる(例えば、キュービット・デバイスが第1の磁束にさらされている間、キュービット・デバイスの動作周波数は変調された値に留まることができ、チューニング可能な永久磁石は、電流を流す必要なしに第1の磁束を維持することができる)。したがって、従来のシステム/技術を苦しめている過度の加熱または不安定性を生じることなく、キュービット・デバイスの動作周波数を最初の値から変調された値にシフト/遷移させることができる。
【0016】
さまざまな実施形態において、キュービット・デバイスの動作周波数をリアルタイムでin situチューニングすることが望ましいことがある。さまざまな事例において、本発明のさまざまな実施形態は、チューニング可能な永久磁石とともに電磁石を利用することによって、このようなリアルタイム・チューニングを容易にすることができる。具体的には、さまざまな実施形態において、チューニング可能な永久磁石が第2の磁束の存在下に置かれている間にチューニング可能な永久磁石に電流を流すことによって、チューニング可能な永久磁石の第1の磁束を制御すること、変化させること、変調することもしくはチューニングすること、またはこれらの組合せを達成することができる。さまざまな態様において、電磁石が、チューニング可能な永久磁石上へ第2の磁束を放出することができ、電極が、チューニング可能な永久磁石に電流を流すことができる。さまざまなケースにおいて、チューニング可能な永久磁石が電流と第2の磁束の両方にさらされたとき、第1の磁束の値もしくは強度またはその両方は変化しうる(例えば、電流の大きさもしくは位相またはその両方および第2の磁束の大きさもしくは向きまたはその両方に基づいて、この変化の大きさもしくは符号またはその両方を制御することができる)。このようにして、チューニング可能な永久磁石の第1の磁束の強度(例えば大きさもしくは向きまたはその両方)を制御/調整することができる。さらに、さまざまな事例において、チューニング可能な永久磁石の第1の磁束は、電極および電磁石の電源が切られた後であっても(例えば、電極に関連した電流および電磁石に関連した電流の流れが停止した後であっても)、この変化した強度/値を保持することができる。
【0017】
さまざまな実施形態において、チューニング可能な永久磁石は、シリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子を含むことができる。例えば、シリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子が外部磁場にさらされている間にシリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子に電流を流すことによって、シリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子を磁化することができる。シリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子は、電流および外部磁場が除去された後であってもこの磁化を維持することができる。
【0018】
このようにすると、持続する電流もしくは能動的に流れる電流または持続する能動的に流れる電流を必要とすることなしに、キュービット・デバイスのリアルタイム磁束チューニングもしくはin situ磁束チューニングまたはリアルタイムin situ磁束チューニングを容易にすることができる。具体的には、本発明のさまざまな実施形態は、チューニング可能な永久磁石の磁束の強度/値を遷移させたいときに、(例えば電磁石および電極に関連した)電流を短期間、流すことができ、これにより、それに対応してキュービット・デバイスの動作周波数を遷移させることができる。次いで、本発明のさまざまな実施形態は、電流を流すことなしに(例えばチューニング可能な永久磁石によって)、キュービット・デバイスの新たに遷移した動作周波数を維持することができる。例えば、本発明の実施形態は、チューニング可能な永久磁石が電磁石からの外部磁束にさらされている間にチューニング可能な永久磁石に電極から電流を流すことによって、チューニング可能な永久磁石の磁束を変化させることができる。チューニング可能な永久磁石の磁束が望みどおりにセットされた後、(例えば電流が流れていないように)電極および電磁石を遮断することができ、チューニング可能な永久磁石は、その新たにセットされた磁束を保持することができる。さまざまなケースにおいて、この新たにセットされた磁束により、キュービット・デバイスの動作周波数はそれに対応して新たな値にシフトすることができ、電流を費やすことなしに、チューニング可能な永久磁石によってその新たな値を維持することができる。
【0019】
したがって、本発明のさまざまな実施形態は、(例えば電極および電磁石によって)キュービット・デバイスの動作周波数を1つの値から別の値に変化/遷移させるためにだけ電流を費やすことによって、磁束チューニングを容易にすることができる。キュービット・デバイスの動作周波数を望みどおりに変化/遷移させた後、本発明のさまざまな実施形態は、電流を費やすことなしに(例えばチューニング可能な永久磁石によって)、その変化/遷移した動作周波数を維持することができる。全く対照的に、磁束チューニングを容易にする従来のシステム/技術は、キュービット・デバイスの動作周波数を変調したい期間の全体にわたって持続する電流もしくは能動的に流れる電流または持続する能動的に流れる電流を必要とする電磁石だけに専ら依存する(例えば、従来のシステム/技術では、キュービット・デバイスの動作周波数を1つの値から別の値に変化/遷移させるためだけでなく、変化/遷移後にその新たな動作周波数を維持するためにも、電流を絶えず流す必要がある)。本発明のさまざまな実施形態は、能動的に電流を流さない磁束チューニングを提供することができるため、このような実施形態は、従来のシステム/技術に比べて小さい過度の加熱および低い不安定性を経験することがあり、その結果、従来のシステム/技術に比べて量子回路の性能が向上しうる。したがって、本発明のさまざまな実施形態は、磁束チューニング分野において先行技術に優る具体的な技術的改良を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態による、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にする例示的で非限定的なシステムのブロック図である。
図2】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態による、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にする例示的で非限定的な方法の流れ図である。
図3】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態による、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にする目的に使用することができるシリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子を含む、例示的で非限定的な中間構造体のブロック図である。
図4】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態による、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にする目的に使用することができるシリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子を含む、例示的で非限定的な中間構造体のブロック図である。
図5】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態による、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にする目的に使用することができるシリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子を含む、例示的で非限定的な中間構造体のブロック図である。
図6】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態による、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にする目的に使用することができるシリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子を含む、例示的で非限定的な中間構造体のブロック図である。
図7】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態による、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にする目的に使用することができるシリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子を含む、例示的で非限定的な中間構造体のブロック図である。
図8】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態による、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にする目的に使用することができるキュービット・デバイスを含む、例示的で非限定的な中間構造体のブロック図である。
図9】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態による、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にする目的に使用することができるキュービット・デバイスを含む、例示的で非限定的な中間構造体のブロック図である。
図10】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態による、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にする目的に使用することができるキュービット・デバイスを含む、例示的で非限定的な中間構造体のブロック図である。
図11】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態による、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にする目的に使用することができるキュービット・デバイスを含む、例示的で非限定的な中間構造体のブロック図である。
図12】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態による、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にする目的に使用することができるキュービット・デバイスを含む、例示的で非限定的な中間構造体のブロック図である。
図13】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態による、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にする目的に使用することができるキュービット・デバイスを含む、例示的で非限定的な中間構造体のブロック図である。
図14】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態による、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にする目的に使用することができるキュービット・デバイスを含む、例示的で非限定的な中間構造体のブロック図である。
図15】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態による、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にする目的に使用することができる磁束コイルを含む、例示的で非限定的な中間構造体のブロック図である。
図16】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態による、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にする目的に使用することができる磁束コイルを含む、例示的で非限定的な中間構造体のブロック図である。
図17】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態による、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にする目的に使用することができる磁束コイルを含む、例示的で非限定的な中間構造体のブロック図である。
図18】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態による、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にする目的に使用することができる磁束コイルを含む、例示的で非限定的な中間構造体のブロック図である。
図19】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態による、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にする目的に使用することができる磁束コイルを含む、例示的で非限定的な中間構造体のブロック図である。
図20】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態による、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にする目的に使用することができる磁束コイルを含む、例示的で非限定的な中間構造体のブロック図である。
図21】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態による、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にする目的に使用することができる磁束コイルを含む、例示的で非限定的な中間構造体のブロック図である。
図22】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態による、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にする目的に使用することができる磁束コイルを含む、例示的で非限定的な中間構造体のブロック図である。
図23】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態による、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にする例示的で非限定的なデバイスのブロック図である。
図24】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態による、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にする例示的で非限定的な方法の流れ図である。
図25】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態を容易にすることができる例示的で非限定的な動作環境のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の詳細な説明は例示だけが目的であり、以下の詳細な説明が、実施形態を限定すること、または実施形態の用途もしくは使用を限定すること、あるいはその両方を限定することは意図されていない。さらに、上記の「背景技術」もしくは「発明の概要」または「発明を実施するための形態」に示された明示のまたは暗示の情報によって拘束されることも意図されていない。
【0022】
次に、図面を参照して1つまたは複数の実施形態を説明する。全体を通じて、同じ要素を指すために同じ参照符号が使用されている。以下の説明では、説明の目的上、1つまたは複数の実施形態のより完全な理解を提供するために、数多くの特定の詳細が示される。しかしながら、さまざまなケースにおいて、それらの特定の詳細なしで1つまたは複数の実施形態を実施することができることは明白である。
【0023】
キュービット・デバイス(例えばSQUIDループ)の磁束チューニングは、キュービット・デバイスを磁束にさらすことを含み、キュービット・デバイスの動作周波数は、磁束の大きさもしくは位相またはその両方の関数である。したがって、キュービット・デバイスがさらされている磁束を制御もしくは変調または制御および変調することによって、キュービット・デバイスの動作周波数を制御もしくは変調または制御および変調することができる。
【0024】
上で説明したとおり、磁束チューニングを容易にする従来のシステム/技術は、電磁石によってキュービット・デバイス上へ磁束を放出することを含む。この電磁石はしばしば、電流にさらされているときには磁束を発生させ、電流にさらされていないときには磁束の発生を停止する磁束コイルである。したがって、従来のシステム/技術は、能動的に流れる電流を、キュービット・デバイスの動作周波数を変調させたい期間の全体にわたって持続させることによってのみ、磁束チューニングを容易にすることができる(例えば、従来のシステム/技術では、キュービット・デバイスの動作周波数を変調された値に遷移させることと、キュービット・デバイスの動作周波数をその変調された値に維持することの両方のために、電流を費やす必要がある)。上で説明したとおり、能動的に流れる電流をこのように持続させると、量子回路の過度の加熱が引き起こされることがある(例えば、オームの法則によれば、ゼロでない抵抗を有する導体を流れる電流は一部のエネルギーを熱として放散させる)。さらに、能動的に流れる電流をこのように持続させると、キュービット・デバイスの動作周波数の不安定性が引き起こされることもある(例えば、電流の大きさもしくは位相またはその両方は、電圧/電流調整器が使用されているときでも摂動を経験することがあり、この摂動が、電磁石によって発生した磁場の対応する摂動を引き起こし、この磁場の摂動が、キュービット・デバイスの動作周波数の対応する摂動を引き起こす)。これらは、磁束チューニングを容易にする従来のシステム/技術に影響を及ぼす望ましくない技術的問題である。
【0025】
本発明のさまざまな実施形態は、先行技術のこれらの問題のうちの1つまたは複数の問題を解決することができる。さまざまな態様において、本発明の実施形態は、チューニング可能な永久磁石と電磁石の両方を利用して、キュービット・デバイスの磁束チューニングを容易にすることができる。具体的には、さまざまな事例において、チューニング可能な永久磁石は、キュービット・デバイス上へ第1の磁束を放出することができ、キュービット・デバイスの動作周波数は第1の磁束に基づく(例えばキュービット・デバイスをSQUIDループとすることができる)。さまざまな態様において、キュービット・デバイスが第1の磁束にさらされていないとき、キュービット・デバイスの動作周波数は最初の値にあることができる。キュービット・デバイスが第1の磁束にさらされたとき、キュービット・デバイスの動作周波数は、最初の値から変調された値にシフトすることができる。永久磁石は、起誘導場または起誘導電流がない場合でもその磁気属性を保持するため、チューニング可能な永久磁石は、電流を持続的に費やすことを必要とすることなく、第1の磁束を維持することができ、したがってキュービット・デバイスの動作周波数を変調された値に保つことができる。チューニング可能な永久磁石は、第1の磁束を発生させ維持するのに、持続する電流もしくは能動的に流れる電流または持続する能動的に流れる電流に依存しないため、チューニング可能な永久磁石は、従来のシステム/技術を苦しめている過度の加熱または不安定性を経験することなしに、キュービット・デバイスの動作周波数を変調された値に保つことができる。
【0026】
さまざまなケースにおいて、変調された値は、第1の磁束の大きさもしくは向きまたはその両方に依存しうる(例えば、第1の磁束の大きさと向きの1つの組合せによって、変調された値を最初の値よりも小さくすることができ、第1の磁束の大きさと向きの別の組合せによって、変調された値を最初の値よりも大きくすることができる)。さまざまなケースにおいて、対応してもしくは適当に第1の磁束を変調することによって、または対応してかつ適当に第1の磁束を変調することによって(例えば第1の磁束の強度を適切に変化させる/チューニングすることによって)キュービット・デバイスの動作周波数の適当な任意の変調された値を達成することができるような形で、変調された値は第1の磁束の関数でありうる。
【0027】
第1の磁束のこのような変調/チューニングを容易にするため、本発明のさまざまな実施形態は電磁石を使用することができる。具体的には、さまざまな態様において、チューニング可能な永久磁石の第1の磁束の強度もしくは値またはその両方は、チューニング可能な永久磁石が外部磁場と電流の両方にさらされていることに基づいて変化しうる。したがって、さまざまな実施形態において、電極が、チューニング可能な永久磁石に電流を流すことができ、電磁石が、チューニング可能な永久磁石上へ第2の磁束を放出することができる。さまざまな事例において、チューニング可能な永久磁石が、電極からの電流と電磁石からの第2の磁束の両方にさらされたときに、第1の磁束の強度/値(例えば大きさもしくは向きまたはその両方)は変化することがあり、この変化により、キュービット・デバイスの動作周波数はそれに対応して変化しうる。さまざまな実施形態において、チューニング可能な永久磁石の第1の磁束は、電極および電磁石の電源が切られた後であっても(例えば電極が電流を除去し、電磁石が第2の磁束を除去した後であっても)、この変化した強度/値を保持することができる。上で説明したとおり、チューニング可能な永久磁石の第1の磁束のこの変化した強度/値は、キュービット・デバイスの動作周波数の対応する変化を引き起こしうる。
【0028】
さまざまな実施形態において、チューニング可能な永久磁石は、シリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子(例えば約40%のマンガン)を含むことができる。さまざまな事例において、シリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子は、外部磁場の存在下で電流にさらされたときに磁化されうる。さまざまな態様において、マンガン・ナノ粒子の磁気属性(例えば、磁化されたマンガン・ナノ粒子によって発生した結果として生じる磁場/磁束の大きさもしくは向きまたはその両方)は、マンガン・ナノ粒子に流された電流の大きさもしくは位相またはその両方、およびマンガン・ナノ粒子がさらされている外部磁場の大きさもしくは向きまたはその両方に依存しうる。さまざまな態様において、外部磁場の存在下でマトリックスに電流を流すことにより、シリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子をin situで特定の磁場強度にチューニングすることができる。
【0029】
全体として、チューニング可能な永久磁石は、キュービット・デバイス上へ第1の磁束を放出することができ(例えばキュービット・デバイスの動作周波数は第1の磁束の関数である)、電磁石および電極を利用して第1の磁束をチューニングすることができ、それによって第1の磁束は、キュービット・デバイスの動作周波数をチューニングする。したがって、本発明のさまざまな実施形態は、持続する電流もしくは能動的に流れる電流または持続する能動的に流れる電流を必要としない、キュービット・デバイスの磁束チューニングを容易にすることができる。その代わりに、本発明のさまざまな実施形態は、(例えば電極および電磁石によって)電流を短期間、費やして、チューニング可能な永久磁石の第1の磁束を遷移させる/チューニングする/変調することができ、それに対応して、第1の磁束が、キュービット・デバイスの動作周波数を遷移させる/チューニングする/変調する。第1の磁束(したがってキュービット・デバイスの動作周波数)を望みどおりに遷移させ/チューニングし/変調した後、電極および電磁石の電源を切ることができ、それによって電流を費やすことを停止させることができる。チューニング可能な永久磁石は、電極からの電流および電磁石からの第2の磁束がない場合でも、その新たに遷移させた/チューニングした/変調した磁束を保持することができるため、チューニング可能な永久磁石は、持続する電流もしくは能動的に流れる電流または持続する能動的に流れる電流なしで、キュービット・デバイスの動作周波数を、その新たに遷移させた/チューニングした/変調した値に維持することができる。持続する電流もしくは能動的に流れる電流または持続する能動的に流れる電流をこのように排除することによって、さまざまなケースにおいて、量子回路の過度の加熱を軽減し、量子動作周波数の安定性を向上させることができる。全く対照的に、従来のシステム/技術は、磁束チューニングを容易にするために電磁石だけを実施し、これには、絶えず流れる電流が必要である。
【0030】
言い換えると、従来のシステム/技術は、キュービット・デバイスの動作周波数を遷移させる/チューニングすることと、その遷移させた/チューニングした動作周波数を維持することの両方のために電流を必要とし、一方、本発明のさまざまな実施形態は、キュービット・デバイスの動作周波数を遷移させる/チューニングするためだけに電流を必要とし、電流を流すことなしに、新たに遷移させた/チューニングした動作周波数を維持することができる。したがって、本発明のさまざまな実施形態は、従来の磁束チューニング・システム/技術に優る具体的な技術的改良を構成する。
【0031】
非限定的で例示的な例として、キュービット・デバイスを(例えば適当な任意の正数zおよびtを表す)t単位の時間の間、zHzで動作させることが望まれていると仮定する。さらに、キュービット・デバイスが、(例えばx≠zの適当な任意の正数xを表す)xHzのベース動作周波数を有すると仮定する。さまざまな態様において、チューニング可能な永久磁石は、キュービット・デバイス上へ第1の磁束を放出することができる。第1の磁束が、(適当な任意の数Bを表す)初期強度Bを有すると仮定する。さまざまな事例において、キュービット・デバイスが強度Bの磁束にさらされたときに、キュービット・デバイスの動作周波数はxHzから(例えばy≠x≠zの適当な任意の正数yを表す)yHzにシフトし、キュービット・デバイスが強度B’の磁束にさらされたときに、キュービット・デバイスの動作周波数はzHzにシフトすると仮定する。したがって、目標は、チューニング可能な永久磁石の第1の磁束を強度Bから強度B’にチューニングすることでありうる。さまざまな態様において、この目標は、電極および電磁石によって容易にすることができる。さまざまな事例において、第1の磁束(例えば第1の磁束の強度)は、電流(例えば電流の大きさもしくは位相またはその両方)および第2の磁束(例えば第2の磁束の強度)の関数でありうる。したがって、さまざまな態様において、電極によって発生した電流および電磁石によって発生した第2の磁束によってチューニング可能な永久磁石の第1の磁束が強度B’にシフトするように、電流および第2の磁束を適当に制御/選択することができる。電極および電磁石はこのプロセスの間に電流を消費しうる/費やしうる。第1の磁束の強度をB’にシフトさせた後、電極および電磁石の電源を切ることができる(例えば電流を消費する/費やすことを停止することができる)。さまざまな実施形態において、チューニング可能な永久磁石(例えばシリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子)は、電極および電磁石の電源が切られた後も強度B’を保持することができる。この時点で、キュービット・デバイスは、強度B’を有する第1の磁束にさらされているため、キュービット・デバイスの動作周波数はzHzにシフトすることができる。チューニング可能な永久磁石の第1の磁束が強度B’に留まる間、キュービット・デバイスの動作周波数はzHzに留まることができる。チューニング可能な永久磁石の第1の磁束は、電流を費やすことなしに強度B’を保持することができるため、キュービット・デバイスの動作周波数は、電流を費やすことなしにzHzに留まることができる。t単位の時間が満了した後、キュービット・デバイスの動作周波数をシフトさせたい適当な任意の値に関して上記のプロセスを繰り返すことができる。
【0032】
全く対照的に、従来のシステム/技術は単に、電磁石によって(例えば電磁石に流す適当な電流を選択することによって)、キュービット・デバイス上へ強度B’の磁束を放出するだけであろう。これによってキュービット・デバイスの動作周波数はzHzにシフトするであろう。しかしながら、キュービット・デバイスの動作周波数をzHzに維持するためには、t単位の時間の全体にわたって電磁石の電源を入れたままにしなければならない。すなわち、t単位の時間の全体にわたって電流を絶えず消費する(例えば電流を能動的に流す)ことによってのみ、電磁石は、キュービット・デバイスの動作周波数をzHzに維持することができる。上述のとおり、このように電流を絶えず流すと、量子回路の望ましくない加熱もしくはキュービット・デバイスの動作周波数の望ましくない不安定性、またはその両方が生じうる。本発明のさまざまな実施形態は、このように電流を絶えず流さなくともキュービット・デバイスの動作周波数をzHzに維持することができるため、本発明のさまざまな実施形態は、従来のシステム/技術を苦しめている過度の加熱もしくは不安定性またはその両方を回避することができる。したがって、本発明のさまざまな実施形態は、磁束チューニング分野における具体的な技術的改良を構成する。
【0033】
さまざまな態様において、本発明の実施形態を以下のように実施することができる。(例えば適当な任意の冷却機構によって)量子回路を動作温度(例えば20mK)まで冷却することができる。(例えば適当な任意の量子周波数測定技術によって)キュービット・デバイスの現在の動作周波数を測定することができ、キュービット・デバイスのターゲット動作周波数を選択することができる。キュービット・デバイスがさらされている、チューニング可能な永久磁石(例えばシリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子)の磁束をチューニングするように、本発明のさまざまな実施形態を実施することができる。本明細書で説明したとおり、チューニング可能な永久磁石が外部磁場にさらされている間にチューニング可能な永久磁石(例えばシリコン-マンガン・ナノ粒子膜)に電流を流すことによって、チューニング可能な永久磁石の磁束のチューニングを容易にすることができる。チューニング可能な永久磁石が所望の磁束強度、所定の磁束強度もしくはしきい磁束強度、またはこれらの組合せに達した後に、電流および外部磁場を除去することができる。チューニング可能な永久磁石の磁束のこの所望の強度、所定の強度もしくはしきい強度、またはこれらの組合せによって、キュービット・デバイスの動作周波数は、対応する値、所望の値、所定の値もしくはしきい値、またはこれらの組合せをとりうる。このようにして、さまざまな態様において、適当な任意の数の他のキュービット・デバイスをチューニングすることができる。次いで、さまざまな事例において、量子回路を望みどおりに動作させることができる。
【0034】
さまざまな態様において、シリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子を含むチューニング可能な永久磁石を以下のように製作/製造することができる。さまざまな事例において、シリコン・ウェーハに、適当なサイズのトレンチをパターニングにより形成することができる。このトレンチの中に適当なシリコン-マンガン膜を堆積させることができ、化学機械平坦化を実施することができる。水素(例えばH)中でこのシリコン-マンガン膜をアニールして、マンガン・ナノ粒子を形成することができる。いくつかの事例では、シリコン・ウェーハ上に超伝導体膜(例えばニオブ)を堆積させ、それをパターニング/エッチングして、シリコン-マンガン膜に結合されたワイヤ/電極を形成することができる。さまざまなケースにおいて、シリコン-マンガン膜に近接したシリコン・ウェーハ上の位置に、キュービット・デバイス(例えばアルミニウム/酸化アルミニウム/アルミニウム・ジョセフソン接合)をパターニング/エッチング/堆積により形成することができる。他のさまざまなケースでは、別個の基板上にキュービット・デバイスをパターニング/エッチング/堆積により形成することができる。
【0035】
さまざまな態様において、電磁石/磁束コイルを以下のように製作/製造することができる。いくつかの事例では、基板上に超伝導体膜(例えばニオブ)を堆積させることができ、それをパターニングおよびエッチングして適当なコイル形状にすることができる。さまざまなケースにおいて、誘電体(例えばシリコンまたは酸化シリコン)を堆積させることができる。次いで、この誘電体に適当なバイアをパターニングおよびエッチングにより形成して、コイルの中心/内側リードおよびコイルの縁/外側リードとの接点を提供することができる。さまざまな態様において、超伝導体(例えばニオブ)を堆積させることができ、次いでそれをパターニング/エッチングして、ワイヤ、すなわち中心/内側リードに接触した1つのワイヤおよび縁/外側リードに接触した別のワイヤを形成することができる。
【0036】
さまざまな態様において、チューニング可能な永久磁石を基板にパターニングにより形成し、位置合せしてキュービット・チップに接着することができる。めっき堆積中に(例えば外部磁場によって)、または、デバイス製造後に(例えば電磁石からの)限局された外部磁場によってチューニング可能な永久磁石を処理することによって、それぞれのチューニング可能な永久磁石の磁場強度を調整することができる。さまざまな態様において、チューニング可能な永久磁石は、シリコン-マンガン膜(例えばマンガン・ナノ粒子を含むシリコン・マトリックス)を含むことができる。外部磁場の存在下でシリコン-マンガン膜に電流を流すことによって、マンガン・ナノ粒子の磁化を容易にすることができる。磁化後、追加の電流または外部磁場がない場合でも、シリコン-マンガン膜は安定した磁場強度を保持することができる。
【0037】
さまざまな態様において、本発明の実施形態の可能な非限定的な用途は、キュービット・デバイスの動作周波数をチューニングすること、デバイス領域からの準粒子斥力のための構造体を提供すること、3~5個のマヨラナ・フェルミオン(majorana fermion)デバイスの機能を可能にする外部場を提供すること、NIST磁気ジョセフソン接合ニューロモーフィック・デバイスの機能を可能にする外部場を提供すること、磁石トラップを使用して常伝導金属の特定の領域に超伝導体を製造し、準粒子をトラップしてコヒーレンスを改良すること、もしくは、さまざまな態様において、磁場がない場合のデバイス周波数を極低温で測定し、デバイスを周囲温度にし、必要に応じてチューニング可能な永久磁石の場強度を調整し、次いで、動作させるためにデバイスを極低温に戻すこと、またはこれらの組合せを含みうる。
【0038】
本発明のさまざまな実施形態は、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にする新規のシステム/技術であって、抽象的でなく、自然現象でなく、自然法則でなく、人間による一組の頭脳行為として実行することができない、新規のシステム/技術を含む。その代わりに、本発明のさまざまな実施形態は、持続する電流もしくは能動的に流れる電流または持続する能動的に流れる電流を必要としないチューニング可能な永久磁石を使用してキュービット・デバイスの磁束チューニングを容易にするシステム/技術を含む。このような持続する電流もしくは能動的に流れる電流または持続する能動的に流れる電流は、量子回路およびその環境の過度の加熱、もしくはキュービット・デバイスの動作周波数の不安定性、またはその両方など、磁束チューニングの技術的問題を生じさせうる。本発明のさまざまな実施形態は、持続する電流もしくは能動的に流れる電流または持続する能動的に流れる電流を必要としないため、本発明のさまざまな実施形態は、従来のシステム/技術を苦しめている過度の加熱および不安定性の問題を排除することもしくは軽減すること、または排除し軽減することができ、それによって先行技術に優る具体的な技術的改良を構成しうる。本発明のさまざまな実施形態は、チューニング可能な永久磁石によってキュービット・デバイス上へ第1の磁束を放出することにより、これらの技術的改良を達成することができる。ここで、キュービット・デバイスの動作周波数は第1の磁束の関数である。チューニング可能な永久磁石は、電流を費やす/消費することなしに第1の磁束を放出すること/発生させることができる。したがって、第1の磁束は、電流を費やす/消費することなしに、キュービット・デバイスの動作周波数を変調された値にシフトさせ、動作周波数をその変調された値に維持することができる。さまざまな実施形態において、電極および電磁石を利用して、チューニング可能な永久磁石の第1の磁束をチューニングすることができる。具体的には、電極は、チューニング可能な永久磁石に電流を流すことができ、電磁石は、チューニング可能な永久磁石上へ第2の磁束を放出することができる。さまざまな実施形態において、チューニング可能な永久磁石(例えばシリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子)の第1の磁束は、電極に関連した電流および電磁石に関連した第2の磁束の関数でありうる。このように、電極および電磁石を制御/利用して、チューニング可能な永久磁石の第1の磁束を望みどおりにシフトさせる/変化させることができ、これにより、それに対応してキュービット・デバイスの動作周波数をシフトさせる/変化させることができる。第1の磁束が望みどおりにシフト/変化したことに基づいて、電極および電磁石の電源を切ることができ(例えば電流を消費する/費やすことを停止することができ)、チューニング可能な永久磁石は、その新たにシフト/変化させた第1の磁束を保持することができる。チューニング可能な永久磁石は、持続する電流もしくは能動的に流れる電流または持続する能動的に流れる電流がない場合でも、その新たにシフト/変化させた第1の磁束を保持することができるため、チューニング可能な永久磁石は、持続する電流もしくは能動的に流れる電流または持続する能動的に流れる電流なしで、キュービット・デバイスの新たにシフト/変化させた動作周波数を維持することができる。このように、本発明の実施形態は、持続する電流もしくは能動的に流れる電流または持続する能動的に流れる電流なしで磁束チューニングを容易にすることができ、これによって、過度の加熱および/もしくは不安定性の問題を軽減することならびに/または排除することができる。したがって、本発明の実施形態は、磁束チューニングを容易にする新規のシステム/技術であって、量子コンピューティング・システムの機能を改良し、それによって先行技術に優る具体的な技術的改良を構成する、新規のシステム/技術を提供する。
【0039】
さまざまな態様において、本開示の図は、例示的で非限定的な図に過ぎず、必ずしも一定の倍率では描かれていないことを認識すべきである。
【0040】
図1は、本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態による、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にすることができる例示的で非限定的なシステム100のブロック図を示している。示されているように、さまざまな態様において、システム100は、永久磁石104、電磁石112およびキュービット・デバイス102を含むことができる。本明細書に記載されているように、さまざまな事例において、持続する電流もしくは能動的に流れる電流または持続する能動的に流れる電流なしで(例えばキュービット・デバイス102の動作周波数をチューニング/変調したい期間の間、電流を消費する/費やすことなしに)キュービット・デバイス102の磁束チューニングを容易にするように、永久磁石104および電磁石112を実施することができる。
【0041】
さまざまな実施形態において、キュービット・デバイス102は、磁束チューニングを実行する対象とすることができる適当な任意のキュービット・デバイスとすることができる。例えば、キュービット・デバイス102を、並列に結合された2つの(または3つ以上の)ジョセフソン接合を含むSQUIDループ(例えば超伝導量子干渉デバイス・ループ)とすることができる。このようなケースでは、SQUIDループの全体的な動作周波数が、ループを通り抜ける(例えば並列のジョセフソン接合間を通る)外部磁束の関数でありうる。さまざまな実施形態において、キュービット・デバイス102を、キュービットとして機能する適当な任意の量子デバイスであって、キュービット・デバイス102がさらされている外部磁束の関数である動作周波数、もしくはそれ以外の態様でキュービット・デバイス102がさらされている外部磁束に基づく動作周波数、またはその両方である動作周波数を有する、適当な任意の量子デバイスとすることができる。いくつかの実施形態では、複数のキュービット・デバイス102を実施することができる(例えば、いくつかのケースでは、1つの永久磁石104がいくつかのキュービット・デバイス102に対応することができる)。
【0042】
示されているように、さまざまな実施形態において、永久磁石104は、キュービット・デバイス102上へ第1の磁束106(例えば第1の磁場)を放出することができる。キュービット・デバイス102の動作周波数は、キュービット・デバイス102がさらされている外部磁束の関数でありうるため、キュービット・デバイス102の動作周波数は第1の磁束106に基づきうる(例えば、第1の磁束106の大きさもしくは向きまたはその両方によって、キュービット・デバイス102の動作周波数を制御すること、調整すること、シフトさせること、変化させること、遷移させることもしくは変調すること、もしくはこれらの組合せを達成することができる)。そのため、さまざまな態様において、永久磁石104の第1の磁束106を制御/変調することにより、これに対応してキュービット・デバイス102の動作周波数を制御/変調することができる。さまざまな態様において、永久磁石104を、チューニング可能な永久磁石とすることができる。さまざまな事例において、永久磁石104を、(例えばシリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子を含む)チューニング可能なナノ粒子磁石とすることができる。
【0043】
さまざまな実施形態において、永久磁石104は、電流を費やすことなく、電流を消費することなく、もしくはそれ以外の態様で電流に依存することなく、またはこれらの組合せで、第1の磁束106を放出すること、発生させること、もしくは維持すること、またはこれらの組合せを達成することができる。これは、永久磁石が、電磁石とは違い、起誘導電流または起誘導場がない場合であっても、その磁気属性/特性を保持することができるためである。したがって、さまざまな事例において、永久磁石104の第1の磁束106は、電流を消費する/費やすことなしに(例えば永久磁石104に電流を流すことなしに)、キュービット・デバイス102の動作周波数を初期状態から変調された状態へシフトさせることができ、キュービット・デバイス102の動作周波数を、変調された状態に保つ/維持することができる。
【0044】
さまざまな実施形態において、永久磁石104を、チューニング可能なナノ粒子磁石などのチューニング可能な永久磁石とすることができる。さまざまな実施形態において、永久磁石104は、シリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子を含むことができる。さまざまな態様において、外部磁場の存在下でマトリックスに電流を流すことによって、マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子をin situで特定の磁場強度にチューニングすることができる。言い換えると、さまざまな事例において、マンガン・ナノ粒子が外部磁場にさらされている間にシリコン・マトリックスに電流を流すことによって、マンガン・ナノ粒子を制御可能に磁化することができる。結果として生じるマンガン・ナノ粒子の磁気特性は、(例えば、マンガン・ナノ粒子に流す電流の属性を制御すること、およびマンガン・ナノ粒子がさらされる外部磁場の属性を制御することにより、それに対応して、結果として生じるマンガン・ナノ粒子の磁気属性を制御することができるような態様の)外部磁場および電流の関数でありうる。さまざまな態様において、シリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子は、マンガン・ナノ粒子が電流もしくは外部磁場またはその両方にさらされなくなった後であっても、その磁気属性を保持することができる。したがって、さまざまな実施形態において、電磁石112および電極108によって、永久磁石104の第1の磁束106を、さまざまな事例において、チューニングすること、変調すること、もしくは制御すること、またはこれらの組合せを達成することができる。さまざまな態様において、永久磁石104はマンガンを40%含むことができ、もしくは約40%含むことができ、またはその両方であることができる。さまざまな態様において、永久磁石104は、35%以上から50%以下までの間のマンガンを含むことができる。さまざまな実施形態において、永久磁石104は、適当な任意の割合/百分率のマンガン・ナノ粒子を含むことができる。さまざまな実施形態において、シリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子を含む膜を、キュービット・デバイス102に近接したモジュール/基板上に、またはキュービット・デバイス102と同じチップ/基板上に構築することができる。
【0045】
示されているように、さまざまな実施形態において、永久磁石104を電極108に結合することができる。本明細書で説明したとおり、電極108を電磁石112とともに利用して、永久磁石104の第1の磁束106をチューニングすること、変調すること、もしくは制御すること、またはこれらの組合せを達成することができる。示されているように、いくつかのケースでは、電極108が、正リード(例えば図1では「+」によって示されている)および負リード(例えば図1では「-」によって示されている)を有することができる。さまざまな事例において、電極108は、永久磁石104に電流110を流すことができる(例えば、電流110は、電極108を通って正リードから負リードまで流れることができる)。上で説明したとおり、磁化された後、永久磁石104は、電流を費やす/消費することなく第1の磁束106を放出することができる。したがって、電極108は、第1の磁束106を維持するため、もしくは第1の磁束106を連続的に放出するため、またはその両方を達成するために、永久磁石104に電流110を流す必要がない(例えば、磁化の後、永久磁石104は、電極108の電源が切られて永久磁石104に電流110が流れないようにされた後でも、第1の磁束106を出力することができる)。
【0046】
示されているように、さまざまな実施形態において、電磁石112(例えば磁束コイル)は、永久磁石104上へ第2の磁束114(例えば第2の磁場)を放出することができる。本明細書で説明したとおり、永久磁石104は第1の磁束106を放出することができる。さまざまな実施形態において、永久磁石104が外部磁場(例えば第2の磁束114)の存在下に置かれている間に永久磁石104に電流(例えば電流110)を流すことによって、永久磁石104の第1の磁束106をチューニングすること、変調すること、もしくは制御すること、またはこれらの組合せを達成することができる。そのため、さまざまなケースにおいて、電流110の属性/特性および第2の磁束114の属性/特性を制御/変調することにより、それに対応して、第1の磁束106の属性/特性を制御/変調することができる。永久磁石104を変化させる/制御する/チューニングするのに十分な強度を第2の磁束114が有することを保証するため、さまざまな態様において、別の磁石(例えば別の電磁石または別の永久磁石)によって電磁石112を補うことができる。
【0047】
電磁石は、起誘導電流または起誘導場の存在下でのみ磁場を放出する/発生させることができるため、さまざまな事例において、示されているように、電磁石112を電極116に結合することができる。さまざまなケースにおいて、電極116は、正リード(例えば図1では「+」によって示されている)および負リード(例えば図1では「-」によって示されている)を有することができる。さまざまな事例において、電極116は、電磁石112に電流118を流すことができる(例えば、電流118は、電極116を通って正リードから負リードまで流れることができる)。さまざまな態様において、電流118は、電磁石112が第2の磁束114を放出するために流れることができる(例えば、電磁石112は、第2の磁束114を発生させるために電気を消費する/費やすことができる)。さまざまな事例において、電流118の属性/特性を制御/変調することにより、それに対応して、第2の磁束114の属性/特性を制御/変調することができる。
【0048】
全体として、永久磁石104は、キュービット・デバイス102上へ第1の磁束106を放出することができる。キュービット・デバイス102の動作周波数は、第1の磁束106の属性/特性(例えば大きさもしくは向きまたはその両方)の関数でありうるため、第1の磁束106によって、キュービット・デバイス102の動作周波数を、変調された値にシフトさせることができる(例えば、第1の磁束106の属性を制御することにより、それに対応して、キュービット・デバイス102の動作周波数を制御することができる)。さまざまな態様において、磁化された後に、永久磁石104は、電気を消費する/費やすことなしに第1の磁束106を放出することができる(例えば、電極108の電源を切って電流110が流れていないようにすることができ、電極116の電源を切って電流118が流れていないようにし、それによって電磁石112が第2の磁束114を放出しないようにすることができる)。したがって、所与の期間の間、電流を能動的に流す必要なしに、または電流を持続させる必要なしに、永久磁石104の第1の磁束106は、この所与の期間の間、キュービット・デバイス102の動作周波数を、変調された値に維持する/保つことができる。さまざまなケースにおいて、キュービット・デバイス102の動作周波数を異なる変調された値にシフトさせることが望ましいことがある。さまざまな態様において、このシフトを容易にするために、電極108および電磁石112を使用することができる。上で説明したとおり、さまざまな実施形態において、永久磁石104が外部磁場(例えば第2の磁束114)にさらされている間に永久磁石104に電流(例えば電流110)を流すことによって、永久磁石104の第1の磁束106を制御可能にチューニングすること、変調すること、もしくは変化させること、またはこれらの組合せを達成することができる。したがって、電極108は、永久磁石104に電流110を流すことができ、電磁石112は、永久磁石104上へ第2の磁束114を放出することができる(この放出は例えば、電極116が電磁石112に電流118を流すことによって容易にすることができる)。本明細書で説明したとおり、第1の磁束106は、電流110および第2の磁束114の関数でありうる(例えば、電流110の大きさもしくは位相またはその両方および第2の磁束114の大きさもしくは向きまたはその両方を制御することによって、第1の磁束106の大きさもしくは向きまたはその両方を制御することができる)。第1の磁束106を適切にチューニングした/変化させた後、電極108の電源を切ることおよび電磁石112の電源を切ることができ、第1の磁束106は、その新たにチューニングした/変化させた属性を保持することができる。さまざまなケースにおいて、第1の磁束106の新たにチューニングした/変化させた属性によって、キュービット・デバイス102の動作周波数を、異なる変調された値にシフトさせることができる。さまざまなケースにおいて、永久磁石104の第1の磁束106は、電気を費やす/消費することなしに(例えば電極108および電磁石112の電源を切ることができる)、キュービット・デバイス102の動作周波数をこの異なる変調された値に維持することができる。
【0049】
システム100は、電流を(例えば電極108および電磁石112によって)費やして/消費して、キュービット・デバイス102の動作周波数を1つの値から別の値に制御可能に遷移させることができ、また、電流を費やす/消費することなしに(例えば電流を能動的に流すことなしに)、(例えば永久磁石104によって)キュービット・デバイス102の動作周波数をこの新たな値に維持すること/持続させることができる。全く対照的に、磁束チューニングを容易にする従来のシステム/技術では、キュービット・デバイス102の動作周波数を1つの値から別の値に遷移させることと、キュービット・デバイス102の動作周波数をその新たな値に維持することの両方のために、電流を消費する/費やす必要がある(例えば、動作周波数を新たな値に維持するために電流を能動的に流す必要がある)。本発明のさまざまな実施形態は、キュービット・デバイス102の動作周波数を新たな値に維持したい期間の全体にわたって電流を連続的に流すことなしに磁束チューニングを容易にすることができるため、本発明のさまざまな実施形態は、従来のシステム/技術に有害な影響を及ぼす過度の加熱または不安定性を経験しない。
【0050】
上記の原理の説明に資するため、以下の非限定的な例を考える。永久磁石104の第1の磁束106が、(適当な任意の正数Bを表す)Bの初期強度を有すると仮定する。さらに、キュービット・デバイス102が強度Bの磁場にさらされたときに、キュービット・デバイス102の動作周波数が、(適当な任意の正数fを表す)fにシフトすると仮定する。したがって、第1の磁束106によって、キュービット・デバイス102の動作周波数は値fをとりうる。説明したとおり、永久磁石104は、電流を費やす/消費することなしに第1の磁束106を放出することができる(例えば、永久磁石104が第1の磁束106を連続的に出力するのに電極108および電磁石112の電源を入れる必要はない)。そのため、永久磁石104は、電流を費やす/消費することなしに、適当な任意の期間の間、キュービット・デバイス102の動作周波数をfに維持することができる。ここで、キュービット・デバイス102の動作周波数を(適当な任意の正数fを表す)fにシフトさせることが望まれていると仮定し、また、(適当な任意の正数Bを表す)強度Bの磁場にキュービット・デバイス102がさらされたときに、キュービット・デバイス102の動作周波数がfにシフトすると仮定する。動作周波数のこのシフトを容易にするため、第1の磁束106の強度をBにシフトさせるように、電極108および電磁石112を実施することができる。具体的には、電極108の電源を入れて永久磁石104に電流110を流すことができ、(例えば電極116および電流118によって)電磁石112の電源を入れて、永久磁石104上へ第2の磁束114を放出することができる。さまざまな事例において、電流110および第2の磁束114によって第1の磁束106が強度Bをとるように、電流110および第2の磁束114の属性/特性を適当に選択もしくは制御すること、または選択および制御することができる。第1の磁束106の強度がBにシフトした後、(例えば永久磁石104が電流110または第2の磁束114にさらされないように)電極108および電磁石112の電源を切ることができる。さまざまな態様において、電流110および第2の磁束114がなくても、第1の磁束106は強度Bを保持することができる(例えば、永久磁石104は、シリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子を含むことができる)。さまざまな事例において、強度Bを有する第1の磁束106によって、キュービット・デバイスの動作周波数はfにシフトすることができる。第1の磁束106は、電流を消費する/費やすことなしに強度Bを保持することができるため、永久磁石104は、持続する電流もしくは能動的に流れる電流または持続する能動的に流れる電流なしで、適当な任意の期間の間、キュービット・デバイス102の動作周波数をfに保つことができる。一方、従来のシステム/技術は、単に電磁石を使用して、キュービット・デバイス102上へ強度Bの磁束を放出するだけであろう。これによって、キュービット・デバイス102の動作周波数はfにシフトするであろうが、動作周波数をfに保ちたい期間の全体にわたって電流を絶えず流す必要があるであろう(例えば、電流がない場合、電磁石は磁束の放出を停止するであろう)。
【0051】
このように、本発明のさまざまな実施形態は、磁束チューニング期間の全体にわたって電流を絶えず流す必要なしにキュービット・デバイス102の磁束チューニングを容易にすることができる。対照的に、従来のシステム/技術は電磁石だけに依存しており、したがって磁束チューニング期間の全体にわたって電流を絶えず流す必要がある。上で説明したとおり、これによって過度の加熱および不安定性が生じうる。本発明のさまざまな実施形態は、持続する電流もしくは能動的に流れる電流または持続する能動的に流れる電流の必要性を排除し、その結果、このような過度の加熱および不安定性がより小さくなる。したがって、本発明のさまざまな実施形態は先行技術の技術的問題を解決し、したがって磁束チューニング分野における具体的な技術的改良を構成する。
【0052】
さまざまな実施形態において、装置は、チューニング可能な永久磁場(例えば106)を放出するナノ粒子磁石(例えば104)を含むことができる。さまざまな態様において、ジョセフソン接合デバイス(例えば102)の動作周波数は、チューニング可能な永久磁場に基づきうる。さまざまな事例において、この装置はさらに、チューニング可能な永久磁場をチューニングすることができる磁束コイル(例えば112)を含むことができる。さまざまな実施形態において、ナノ粒子磁石は、シリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子を含むことができる。さまざまな実施形態において、この装置はさらに、ナノ粒子磁石が磁束コイルの磁場(例えば114)にさらされているときにナノ粒子磁石に電流(例えば110)を流すことができる電極(例えば108)を含むことができる。それによって、この電極は、チューニング可能な永久磁場の値を変化させることができる。さまざまな実施形態において、チューニング可能な永久磁場がしきい値に達したことに基づいて、電極は電流を除去することができ、磁束コイルは磁場を除去することができる。
【0053】
さまざまな態様において、キュービット・デバイス102のアレイを磁束チューニングするように、本発明の実施形態を実施することができる。例えば、量子回路が、キュービット・デバイス102の(適当な任意の正の整数mおよびnを表す)m×nアレイを基板上に含む場合、永久磁石104の対応するm×nアレイおよび電磁石112の対応するm×nアレイを、キュービット・デバイス102のm×nアレイをチューニングするように実施することができる。
【0054】
さまざまな態様において、永久磁石104がキュービット・デバイス102と電磁的に相互作用することができ、電磁石112が永久磁石104と電磁的に相互作用することができるような適当な任意の物理的構成で、キュービット・デバイス102、永久磁石104もしくは電磁石112またはこれらの組合せを配置することができる。
【0055】
図2は、本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態による、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にする例示的で非限定的な方法200の流れ図を示している。さまざまな態様において、システム100によって方法200を容易にすることができる。
【0056】
さまざまな実施形態において、操作202は、キュービット・デバイス(例えば102)の磁束チューニングを容易にするために、チューニング可能な永久磁石(例えば104)によって、キュービット・デバイス上へ第1の磁束(例えば106)を放出することを含むことができる。チューニング可能な永久磁石は、磁束を放出するのに起誘導電流を必要としないため、さまざまなケースにおいて、起誘導電流なしで(例えば電極108および電磁石112の電源を切ることができる)、キュービット・デバイスの磁束チューニングを容易にすることができる。
【0057】
さまざまな態様において、操作204は、(例えば電極108によって)チューニング可能な永久磁石に第1の電流(例えば110)を流すことを含むことができる。
【0058】
さまざまな事例において、操作206は、電磁石(例えば112)によって、チューニング可能な永久磁石上へ第2の磁束(例えば114)を放出することを含むことができる。さまざまなケースにおいて、第2の電極(例えば116)によって電磁石に第2の電流(例えば118)を流すことによって、この放出を容易にすることができる。
【0059】
さまざまな実施形態において、操作208に示されているように、チューニング可能な永久磁石が第1の電流と第2の磁束の両方にさらされたときに、第1の磁束の強度はこれに対応して変化しうる。さまざまな態様において、チューニング可能な永久磁石は、シリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子を含むことができる。これは、外部磁場の存在下でシリコン・マトリックスに電流を流すことによって、シリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子を制御可能に磁化することができるためである。
【0060】
さまざまな態様において、操作210は、第1の磁束が所定のしきい値もしくは所望の強度またはその両方に達したことに基づいて、(例えば電極108によって)第1の電流を除去し、電磁石によって第2の磁束を除去することを含むことができる。さまざまな態様において、第2の電流を除去することによって、電磁石が第2の磁束を除去することを容易にすることができる。
【0061】
図3~7は、本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態による、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にする目的に使用することができるシリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子を含む、例示的で非限定的な中間構造体のブロック図を示している。すなわち、図3~7は、シリコン・マトリックスに埋め込まれたマンガン・ナノ粒子によってチューニング可能な永久磁石(例えば102)をどのように製造することができるのかを、例示的かつ概観的に示している。図3~7は例示的で非限定的な図に過ぎないことを認識すべきである。簡潔にするため、パターニング、堆積、エッチング、平坦化、アニール、ならびに/または超伝導体製造および/もしくは半導体製造のその他の態様に関するよく知られたさまざまな詳細は省く。
【0062】
図3は、初期基板構造体の断面図302および初期基板構造体の対応する上面図304を示している。断面図302は断面306からとったものである。示されているように、この製造プロセスは基板308から開始することができる。基板308は、シリコン、サファイヤもしくは他の適当なウェーハ材料またはこれらの組合せを含むことができる。示されているように、基板308上に酸化シリコン研磨ストップ310を堆積させることができる。さまざまな態様において、酸化シリコン研磨ストップ310は、その代わりに、より容易なめっきを容易にするためのチタン、窒化チタン、銅、もしくは他の適当な材料またはこれらの組合せを含むことができる。示されているように、酸化シリコン研磨ストップ310上にレジスト層312を堆積させ、適当な形状のトレンチを形成するためにレジスト層312をパターニングすることができる。図3に示された例では、上面図304に長方形のトレンチ・パターンが示されている。
【0063】
図4は、(例えば図3から続く)中間基板構造体の断面図402および中間基板構造体の対応する上面図404を示している。断面図402は断面406からとったものである。示されているように、反応性イオン・エッチング(もしくは例えば他の適当なエッチング技術またはこれらの組合せ)を実施して、基板308にトレンチ408をエッチングによって形成することができる。さらに、レジスト層312を剥離することができる。
【0064】
図5は、(例えば図4から続く)中間基板構造体の断面図502および中間基板構造体の対応する上面図504を示している。断面図502は断面506からとったものである。示されているように、中間基板構造体上およびトレンチ408の中にシリコン-マンガン膜508を(例えば同時蒸着によって)堆積させることができる。さまざまな事例において、シリコン-マンガン膜508を、マンガンが添加されたドープト・ポリシリコンとすることができる。さまざまな態様において、シリコン-マンガン膜はマンガンを約40%含むことができる。他のさまざまな態様では、シリコン-マンガン膜がマンガンを約50%含むことができる。他のさまざまな例では、適当な任意のマンガン百分率を実施することができる。
【0065】
図6は、(例えば図5から続く)中間基板構造体の断面図602および中間基板構造体の対応する上面図604を示している。断面図602は断面606からとったものである。示されているように、化学機械研磨もしくは化学機械平坦化またはその両方を実施して、酸化シリコン研磨ストップ310よりも上の部分のシリコン-マンガン膜508を除去することができる。その結果は、トレンチ408の中にシリコン-マンガン膜508が位置することでありうる。さまざまな実施形態において、この中間基板構造体を水素(例えばH)中で摂氏400度のアニールにかけることができる。さまざまな態様において、このアニールによって、シリコン-マンガン膜508の中のマンガンを凝集させてマンガン・ナノ粒子にすることができる。さまざまな態様において、適当な任意のアニール温度を実施することができる。
【0066】
図7は、(例えば図6から続く)中間基板構造体の断面図702および中間基板構造体の対応する上面図704を示している。断面図702は断面706からとったものである。示されているように、酸化シリコン研磨ストップ310を(例えば希薄フッ化水素酸(dilute hydrofluoric acid)(DHF)浸漬によって)剥離することができ、いくつかのケースでは、これによって酸化シリコン研磨ストップ310の中の存在しうる金属汚染物も除去することができる。
【0067】
さまざまな態様において、上記の操作の結果は、トレンチ408を占有する、マンガン・ナノ粒子を含むシリコン-マンガン膜508の形成となりうる。シリコン-マンガン膜508が外部磁場(例えば114)にさらされている間に、もしくはそれ以外の態様でシリコン-マンガン膜508が外部磁場(例えば114)の存在下に置かれている間に、またはその両方の間にシリコン-マンガン膜508に電流(例えば110)を流すことによって、(上で説明したように)マンガン・ナノ粒子を磁化することができる。この電流および外部磁場によって磁化された後、トレンチ408の中のシリコン-マンガン膜508はそれ自体の磁場(例えば106)を放出することができる。さまざまな実施形態において、シリコン-マンガン膜508がさらされている電流および外部磁場を制御することによって、マンガン・ナノ粒子の磁気属性を制御することができる。さまざまな態様において、外部磁場の軸上で(例えば外部磁場の軸に沿ってもしくは外部磁場の軸に対して平行に、またはその両方で)電流を流すことによって、マンガン・ナノ粒子の磁気属性をリセットすることができる。
【0068】
図8~14は、本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態による、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にする目的に使用することができるキュービット・デバイスを含む、例示的で非限定的な中間構造体のブロック図を示している。すなわち、図8~14は、キュービット・デバイス102をどのように形成することができるのかを、例示的かつ概観的に示している。図8~14は、シリコン-マンガン膜508と同じ基板上に(例えば永久磁石104と同じ基板上に)キュービット・デバイス102をどのように形成することができるのかを示しているが、本明細書に記載された製造操作を実施して、別個の適当な任意の基板上にキュービット・デバイス102を形成することもできることを認識すべきである。図8~14は例示的で非限定的な図に過ぎないことを認識すべきである。簡潔にするため、パターニング、堆積、エッチング、平坦化、アニール、ならびに/または超伝導体製造および/もしくは半導体製造のその他の態様に関するよく知られたさまざまな詳細は省く。
【0069】
図8は、(例えば図7から続く)中間基板構造体の断面図802および中間基板構造体の対応する上面図804を示している。断面図802は断面806からとったものである。示されているように、基板308上に超伝導体808(例えばニオブ、バナジウム、タンタル、窒化タンタル、タングステン、チタン、窒化チタンもしくは他の適当な超伝導体材料またはこれらの組合せ)を堆積させ(かつシリコン-マンガン膜508を覆い)、超伝導体808上にレジスト層810を堆積させることができる。上面図804に示されているように、適当な形状の2組のワイヤ(例えば電極)を形成するために、レジスト層810にパターン、すなわちシリコン-マンガン膜508に対応する第1の一組のワイヤ812のための第1のパターンおよび第2の一組のワイヤ814のための第2のパターンを形成することができる。
【0070】
図9は、(例えば図8から続く)中間基板構造体の断面図902および中間基板構造体の対応する上面図904を示している。断面図902は断面906からとったものである。示されているように、反応性イオン・エッチングを実施して、超伝導ワイヤ908および超伝導ワイヤ910をエッチングによって形成し、レジスト層810を剥離することができる。示されているように、その結果は、シリコン-マンガン膜508が一対の超伝導ワイヤ908(例えば電極)を有することができることとなりうる。やはり示されているように、基板308上に第2の一組の超伝導ワイヤ910を置くことができ、これを、キュービット・デバイス102を形成するために使用することができる。
【0071】
図10は、(例えば図9から続く)中間基板構造体の断面図1002および中間基板構造体の対応する上面図1004を示している。断面図1002は断面1006からとったものである。示されているように、中間基板構造体上にリフトオフ・レジスト層1008を堆積させることができ、リフトオフ・レジスト層1008上にフォトレジスト/ハードマスク層1010を堆積させることができる。さまざまな態様において、リフトオフ・レジスト層1008およびフォトレジスト/ハードマスク層1010を使用して、(例えば2角度蒸着(double-angle evaporation)による)キュービット・デバイス102の製造を容易にすることができる。
【0072】
図11は、(例えば図10から続く)中間基板構造体の断面図1102および中間基板構造体の対応する上面図1104を示している。断面図1102は断面1106からとったものである。さまざまな態様において、2角度蒸着を容易にすることができる。具体的には、さまざまな態様において、ジョセフソン接合電極層1108(例えばアルミニウムもしくは他の適当なジョセフソン接合材料またはこれらの組合せ)を、第1の角度で(例えば図11では右上から左下への角度で)堆積させることができる。
【0073】
図12は、(例えば図11から続く)中間基板構造体の断面図1202および中間基板構造体の対応する上面図1204を示している。断面図1202は断面1206からとったものである。示されているように、ジョセフソン接合電極層1108を酸化し、その結果、酸化された層1208(例えば酸化アルミニウム)を形成することができる。
【0074】
図13は、(例えば図12から続く)中間基板構造体の断面図1302および中間基板構造体の対応する上面図1304を示している。断面図1302は断面1306からとったものである。示されているように、中間基板構造体上に、第2のジョセフソン接合電極層1308(例えばアルミニウムもしくは他の適当なジョセフソン接合材料またはこれらの組合せ)を、第2の角度で(例えば図13では左上から右下への角度で)堆積させることができる。
【0075】
図14は、(例えば図13から続く)中間基板構造体の断面図1402および中間基板構造体の対応する上面図1404を示している。断面図1402は断面1406からとったものである。示されているように、リフトオフ・レジスト層1008およびフォトレジスト/ハードマスク層1010を剥離/除去することができる。示されているように、その結果は、この段階で、基板308が、一対の電極(例えば910)に結合されたジョセフソン接合1408(例えばアルミニウム/酸化アルミニウム/アルミニウム・ジョセフソン接合)を有することとなりうる。さまざまな態様において、ジョセフソン接合1408をキュービット・デバイス102と考えることができる。図14は、普通は固定動作周波数を有するであろう単一のジョセフソン接合1408だけを示しているが、これは単に図解を容易にするためであり、上で説明した製造操作(例えば2角度蒸着もしくは他の適当な技術またはこれらの組合せ)を実施して、磁束チューニング可能な適当な任意のキュービット・デバイスを基板308上に製造することができることを認識すべきである。やはり示されているように、この段階で基板308は、一対の電極(例えば908)に結合されたシリコン-マンガン膜508をトレンチ408の中に有することができる。この集合的構造体を、チューニング可能なナノ粒子磁石1410と考えることができる。さまざまな態様において、チューニング可能なナノ粒子磁石1410を永久磁石104と考えることができる。
【0076】
図15~22は、本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態による、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にする目的に使用することができる磁束コイルを含む、例示的で非限定的な中間構造体のブロック図を示している。すなわち、図15~22は、電磁石112(例えば磁束コイル)をどのように形成することができるのかを、例示的かつ概観的に示している。図15~22は、シリコン-マンガン膜508とは異なる基板上に(例えば永久磁石104とは異なる基板上に)電磁石112をどのように形成することができるのかを示しているが、本明細書に記載された操作を実施して、永久磁石104が形成された基板と同じ基板を含む適当な任意の基板上に電磁石112を形成することができることを認識すべきである。図15~22は例示的で非限定的な図に過ぎないことを認識すべきである。簡潔にするため、パターニング、堆積、エッチング、平坦化、アニール、ならびに/または超伝導体製造および/もしくは半導体製造のその他の態様に関するよく知られたさまざまな詳細は省く。
【0077】
図15は、初期基板構造体の断面図1502および初期基板構造体の対応する上面図1504を示している。断面図1502は断面1506からとったものである。示されているように、基板1508は、シリコン、サファイヤもしくは他の適当なウェーハ材料またはこれらの組合せを含むことができる。基板1508上に超伝導体1510(例えばニオブ、バナジウム、タンタル、窒化タンタル、タングステン、チタン、窒化チタンもしくは他の適当な超伝導体またはこれらの組合せ)を堆積させることができる。示されているように、超伝導体1510上にレジスト層1512を堆積させることができ、レジスト層1512を適当な任意の磁束コイル形状にパターニングすることができる。示された例では、レジスト層1512が螺旋形にパターニングされている。
【0078】
図16は、(例えば図15から続く)中間基板構造体の断面図1602および中間基板構造体の対応する上面図1604を示している。断面図1602は断面1606からとったものである。示されているように、反応性イオン・エッチング(もしくは例えば他の適当なエッチング技術またはこれらの組合せ)を使用して超伝導体1510をエッチングすることができ、レジスト層1512を剥離することができる。その結果は超伝導コイル1608となりうる。示されているように、超伝導コイル1608は、中心/内側リード(例えば超伝導コイル1608の中心に位置する超伝導材料1510の終点)および縁/外側リード(例えば超伝導コイル1608の左外縁に位置する超伝導材料1510の終点)を有する。
【0079】
図17は、(例えば図16から続く)中間基板構造体の断面図1702および中間基板構造体の対応する上面図1704を示している。断面図1702は断面1706からとったものである。示されているように、中間基板構造体の上に誘電体1708(例えば非晶質シリコン、二酸化シリコンもしくは他の適当な誘電体材料またはこれらの組合せ)を堆積させることができる。
【0080】
図18は、(例えば図17から続く)中間基板構造体の断面図1802および中間基板構造体の対応する上面図1804を示している。断面図1802は断面1806からとったものである。示されているように、中間基板構造体の上にレジスト層1808を堆積させることができ、超伝導コイル1608の中心/内側リードおよび超伝導コイル1608の縁/外側リードに達するバイアを形成するためにレジスト層1808をパターニングすることができる。示されているように、続いて、誘電体1708を貫いて中心/内側リードに達するバイアを形成するエッチングにおいて、パターニングされたトレンチ1810を使用することができ、続いて、誘電体1708を貫いて縁/外側リードに達するバイアを形成するエッチングにおいて、パターニングされたトレンチ1812を使用することができる。
【0081】
図19は、(例えば図18から続く)中間基板構造体の断面図1902および中間基板構造体の対応する上面図1904を示している。断面図1902は断面1906からとったものである。示されているように、反応性イオン・エッチング(もしくは例えば他の適当なエッチング技術またはこれらの組合せ)を使用して、バイアをエッチングによって形成することができ、レジスト層1808を剥離することができる。示されているように、その結果は、誘電体1708を貫いて超伝導コイル1608の中心/内側リードに達するバイア1908および誘電体1708を貫いて超伝導コイル1608の縁/外側リードに達するバイア1910となりうる。さまざまな態様において、バイア1908もしくは1910またはその両方が均一である必要はない。いくつかのケースでは、より伝導性のエリア/接触を提供するために、超伝導コイル1608の頂部の近くでそれらのバイアを長くし、もしくは大きくし、または長くかつ大きくすることができる。
【0082】
図20は、(例えば図19から続く)中間基板構造体の断面図2002および中間基板構造体の対応する上面図2004を示している。断面図2002は断面2006からとったものである。示されているように、中間基板構造体上に超伝導体2008(例えばニオブ、バナジウム、タンタル、窒化タンタル、タングステン、チタン、窒化チタンもしくは他の適当な超伝導体またはこれらの組合せ)を堆積させることができる。さまざまな態様において、超伝導コイル1608のリードに結合したワイヤ/電極を形成するために超伝導体2008を使用することができる。
【0083】
図21は、(例えば図20から続く)中間基板構造体の断面図2102および中間基板構造体の対応する上面図2104を示している。断面図2102は断面2106からとったものである。示されているように、レジスト層2108を堆積させ、レジスト層2108を、超伝導コイル1608のリードに接触する適当な形状のワイヤにパターニングすることができる。上面図2104に示されているように、超伝導コイル1608の中心/内側リードに接触する超伝導ワイヤ(例えば電極)をエッチングによって形成するために、レジスト層2108の垂直に示された部分を使用することができ、超伝導コイル1608の縁/外側リードに接触する超伝導ワイヤ(例えば電極)をエッチングよって形成するために、レジスト層2108の水平に示された部分を使用することができる。
【0084】
図22は、(例えば図21から続く)中間基板構造体の断面図2202および中間基板構造体の対応する上面図2204を示している。断面図2202は断面2206からとったものである。示されているように、反応性イオン・エッチング(もしくは例えば他の適当なエッチング技術またはこれらの組合せ)を使用して超伝導体2008をエッチングすることができ、レジスト層2108を剥離することができる。示されているように、その結果は、磁束コイル2208(例えばその中心/内側リードに結合された電極およびその縁/外側リードに結合された電極を有する超伝導コイル1608)となりうる。さまざまな態様において、磁束コイル2208を電磁石112と考えることができる。
【0085】
さまざまな態様において、(例えば図15~22に関して上で論じた製造操作とは対照的に)リフトオフおよびフライオーバー・ワイヤリング構造体を使用して磁束コイル2208を製造することもできる。
【0086】
図23は、本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態による、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にする例示的で非限定的なデバイスのブロック図を示している。さまざまな態様において、図23は、本発明のさまざまな実施形態で実施することができるいくつかの例示的で非限定的な構成を示している。
【0087】
構成2300aに示されているように、キュービット・デバイス102を第1の基板2302に結合することができ(例えば第1の基板2302上に製造することができ)、永久磁石104および電磁石112を第2の基板2304に結合する(例えば第2の基板2304上に製造する)ことができる。さまざまな態様において、示されているように、永久磁石104と電磁石112が互いに電磁的に相互作用することができるような態様で、永久磁石104と電磁石112を、第2の基板2304の異なるチップ面に製造することができる。さまざまな事例において、永久磁石104とキュービット・デバイス102が互いに電磁的に相互作用することができるような態様で、エア・ブリッジ間隙(air bridge gap)を使用して(例えば適当なスペーサを用いて)、第1の基板2302の上方に第2の基板2304を接着することができる。熱伝導属性を改善するために(例えば熱の放散を助けるために)、さまざまな態様において、第1の基板2302の下に金属膜(例えば銅)を適用することができる。さまざまな態様において、第1の基板2302と第2の基板2304の間に、チップ・エリアを空所にしたスペーサ・ウェーハ(図示せず)を、スペーサ領域のためのカーフ・エリア(kerf area)を使用して置くことができる。さまざまな態様において、有機接着剤もしくは銀エポキシまたはその両方を実施することができる。
【0088】
構成2300bに示されているように、キュービット・デバイス102および永久磁石104を第1の基板2302に結合する(例えば第1の基板2302上に製造する)ことができ、電磁石112を第2の基板2304に結合する(例えば第2の基板2304上に製造する)ことができる。さまざまな事例において、永久磁石104と電磁石112が互いに電磁的に相互作用することができるような態様で、エア・ブリッジ間隙を使用して(例えば適当なスペーサを用いて)、第1の基板2302の上方に第2の基板2304を接着することができる。この場合も、適当なスペーサを実施することができる。
【0089】
永久磁石104と電磁石112の間の外部電磁相互作用を可能にするため、構成2300cに示されているように、第1の基板2302と第2の基板2304を背中合わせに互いに接着することができる。さまざまな態様において、これによって、磁気アライメントを、キュービット・デバイスごとに別々にセットすることを可能にすることができる。第1の基板2302を第2の基板2304に接着するために、さまざまな事例において、適当な接着剤接着層を実施することができる。さまざまなケースにおいて、スピンオン有機材料を用いた単純な低温接着を使用することができる。さまざまな態様において、150nmのオーバレイを、標準接着機器を用いて実施することができる。さまざまな態様において、キュービット・デバイス102のワイヤ/電極(例えばコンタクト・パッド)に上方から接触すること、および電磁石112のワイヤ/電極(例えば、コンタクトパッド)に下方から接触することが可能でありうる。
【0090】
図23は例示的で非限定的な図に過ぎず、必ずしも一定の倍率では描かれていないことを認識すべきである。本発明のさまざまな実施形態において他の適当な構成を実施することができる。さまざまな態様において、キュービット・デバイス102に空間的に十分に近接した位置に永久磁石104を置く適当な任意の構成を実施することができ、この場合、永久磁石104とキュービット・デバイス102の間の「十分な空間的近接」は、永久磁石104がキュービット・デバイス102と電磁的に相互作用することができる(例えば永久磁石104がキュービット・デバイス102上に第1の磁束106を放出することができる)ような適当な任意の物理的距離を含みうる。さまざまな態様において、永久磁石104とキュービット・デバイス102の間の「十分な空間的近接」は、動作状況(例えばキュービット・デバイス102のサイズ、永久磁石104の強度もしくはサイズまたはその両方)によって変化しうることを認識すべきである。さまざまな態様において、永久磁石104に空間的に十分に近接した位置に電磁石112を置く適当な任意の構成を実施することができ、この場合、電磁石112と永久磁石104の間の「十分な空間的近接」は、電磁石112が永久磁石104と電磁的に相互作用することができる(例えば電磁石112が永久磁石104上へ第2の磁束114を放出することができる)ような適当な任意の物理的距離を含みうる。さまざまな態様において、電磁石112と永久磁石104の間の「十分な空間的近接」は、動作状況(例えば永久磁石104のサイズ、電磁石112の強度もしくはサイズまたはその両方)によって変化しうることを認識すべきである。
【0091】
図24は、本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態による、永久磁束要素によって量子チューニングを容易にする例示的で非限定的な方法2400の流れ図を示している。さまざまな態様において、システム100によって方法2400を実施することができる。
【0092】
さまざまな実施形態において、操作2402は、キュービット・デバイス(例えば102)に近接した永久磁石(例えば104)によって、キュービット・デバイス上へ第1の磁束(例えば106)を放出することを含むことができる。さまざまな態様において、キュービット・デバイスの動作周波数は第1の磁束に基づきうる。
【0093】
さまざまな事例において、操作2404は、永久磁石に近接した電磁石(例えば112)によって、永久磁石上へ第2の磁束(例えば114)を放出することを含むことができる。さまざまな態様において、第2の磁束は第1の磁束をチューニングすることができる。
【0094】
さまざまな態様において、操作2406は、電極(例えば108)によって、第2の磁束の存在下で永久磁石に電流(例えば110)を流すことを含むことができる。さまざまなケースにおいて、これによって第1の磁束の強度を変化させることができる。
【0095】
さまざまな事例において、操作2408は、第1の磁束が所定の強度に達したことに基づいて、電極によって電流を除去し、電磁石によって第2の磁束を除去することを含むことができる。
【0096】
さまざまな態様において、以下の短い議論は、本発明のさまざまな実施形態で実施することができるいくつかの例示的で非限定的な定量値を提供しうる。さまざまな実施形態において、キュービット・デバイス102に1磁束量子(例えば2×10-15 T-m)を適用することは有益となりうる。10×10μmのSQUIDループについて言うと、これには、SQUIDループにおいて0.2ガウスが必要となりうる。さまざまな事例において、約1%の精度で磁束(例えば106)をセットすることは有益となりうる(このことは例えば、0.002ガウス未満の刻み幅で磁場が調整可能であるべきであることを意味している)。1Hzにおいてルート-Hz当たり約1microPhi0(2×10-21 T-m)の1/f特性を有する、固有磁束ノイズによってセットされた限度よりも、安定性が良好であることは有益となりうる(fはキュービット・デバイス102の動作周波数である)。粗い近似として、全体の2乗平均平方根安定性が1microPhi0のレベルよりも低いこと、または10×10μmループ内の場安定性が2×10-7ガウス2乗平均平方根よりも低いことは有益となりうる。
【0097】
さまざまな実施形態において、永久磁石104をex situでチューニングすることができる。
【0098】
本明細書に記載されたさまざまな実施形態の追加の文脈を提供するため、図25および以下の議論は、本明細書に記載された実施形態のさまざまな実施形態を実施することができる適当なコンピューティング環境2500の短い全般的な説明を提供することが意図されている。以上では、1台または数台のコンピュータ上で実行することができるコンピュータ実行可能命令の一般的な文脈で実施形態を説明したが、他のプログラム・モジュールと組み合わせて、もしくはハードウェアおよびソフトウェアの組合せとして、またはその両方で、実施形態を実施することもできることを当業者は認識するであろう。
【0099】
一般に、プログラム・モジュールは、特定のタスクを実行し、または特定の抽象データ型を実装する、ルーチン、プログラム、構成要素、データ構造などを含む。さらに、本発明の方法は、シングルプロセッサまたはマルチプロセッサ・コンピュータ・システム、ミニコンピュータ、メインフレーム・コンピュータ、インターネット・オブ・シングス(IoT)デバイス、分散コンピューティング・システム、パーソナル・コンピュータ、ハンドヘルド・コンピューティング・デバイス、マイクロプロセッサ・ベースのまたはプログラム可能な家庭用電子機器などを含む、他のコンピュータ・システム構成を用いて実施することもできることを当業者は認識するであろう。これらのコンピュータ・システム構成の各々は、1つまたは複数の関連デバイスに動作可能に結合されていることがありうる。
【0100】
本明細書の実施形態の示された実施形態は、通信ネットワークを通してリンクされたリモート処理デバイスによってある種のタスクが実行される分散コンピューティング環境で実施することもできる。分散コンピューティング環境では、ローカル・メモリ・ストレージ・デバイスとリモート・メモリ・ストレージ・デバイスの両方にプログラム・モジュールを置くことができる。
【0101】
コンピューティング・デバイスは通常、さまざまな媒体を含み、それらの媒体は、コンピュータ可読ストレージ媒体、機械可読ストレージ媒体もしくは通信媒体またはこれらの組合せを含みうる。本明細書ではこれらの2つの用語が、以下のように互いに異なって使用される。コンピュータ可読ストレージ媒体または機械可読ストレージ媒体は、コンピュータがアクセスすることができる使用可能な任意のストレージ媒体であることができ、揮発性媒体と不揮発性媒体、取外し可能媒体と取外し不能媒体の両方を含む。例として、限定はされないが、コンピュータ可読ストレージ媒体または機械可読ストレージ媒体は、コンピュータ可読または機械可読の命令、プログラム・モジュール、構造化データまたは非構造化データなどの情報を記憶するための任意の方法または技術に関連して実装することができる。
【0102】
コンピュータ可読ストレージ媒体は、限定はされないが、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、リード・オンリー・メモリ(ROM)、電気的に消去可能なプログラマブル・リード・オンリー・メモリ(EEPROM)、フラッシュ・メモリもしくは他のメモリ技術、コンパクト・ディスク・リード・オンリー・メモリ(CD-ROM)、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)、Blu-rayディスク(BD)もしくは他の光学ディスク・ストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク・ストレージもしくは他の磁気ストレージ・デバイス、固体状態ドライブもしくは他の固体状態ストレージ・デバイス、あるいは所望の情報を記憶する目的に使用することができる他の有形もしくは非一過性の媒体または有形かつ非一過性の媒体を含みうる。この点に関して、ストレージ、メモリまたはコンピュータ可読媒体に対して使用される本明細書における用語「有形」または「非一過性」は、修飾語(modifier)として、伝搬するだけの一過性の信号自体を排除し、それ自体が伝搬するだけの一過性の信号ではない全ての標準ストレージ、メモリまたはコンピュータ可読媒体に対する権利を放棄しないと理解される。
【0103】
コンピュータ可読ストレージ媒体には、その媒体によって記憶された情報に対するさまざまな操作のために、例えばアクセス・リクエスト、問合せまたは他のデータ検索プロトコルを介して、1台または数台のローカルまたはリモート・コンピューティング・デバイスがアクセスすることができる。
【0104】
通信媒体は通常、変調されたデータ信号などのデータ信号、例えば搬送波または他の輸送機構の中のコンピュータ可読命令、データ構造体、プログラム・モジュール、または他の構造化データもしくは非構造化データを具体化し、任意の情報送達または移送媒体を含む。用語「変調されたデータ信号」は、データ信号の特性のうちの1つまたは複数の特性を有する信号であって、1つまたは複数の信号の中に情報をコード化するように設定または変更された信号を指す。例として、通信媒体は、限定はされないが、有線ネットワークまたは直接有線接続などの有線媒体、ならびに音響、RF、赤外線および他の無線媒体などの無線媒体を含む。
【0105】
再び図25を参照すると、本明細書に記載された態様のさまざまな実施形態を実施するための例示的な環境2500はコンピュータ2502を含み、コンピュータ2502は、処理ユニット2504、システム・メモリ2506およびシステム・バス2508を含む。システム・バス2508は、限定はされないがシステム・メモリ2506を含むシステム構成要素を処理ユニット2504に結合する。処理ユニット2504は、市販のさまざまなプロセッサのうちの任意のプロセッサとすることができる。デュアル・マイクロプロセッサおよびその他のマルチ・プロセッサ・アーキテクチャを処理ユニット2504として使用することもできる。
【0106】
システム・バス2508は、いくつかのタイプのバス構造体のうちの任意のバス構造体とすることができ、そのバス構造体はさらに、市販のさまざまなバス・アーキテクチャのうちの任意のバス・アーキテクチャを使用してメモリ・バス(メモリ・コントローラ有りまたは無し)、周辺バスおよびローカル・バスと相互接続することができる。システム・メモリ2506はROM2510およびRAM2512を含む。ROM、消去可能なプログラマブル・リード・オンリー・メモリ(EPROM)、EEPROMなどの不揮発性メモリに基本入出力システム(BIOS)を記憶することができ、BIOSは、起動中などにコンピュータ2502内の要素間の情報転送を助ける基本ルーチンを含む。RAM2512はさらに、スタティックRAMなど、データをキャッシュするための高速RAMを含むことができる。
【0107】
コンピュータ2502はさらに、内部ハード・ディスク・ドライブ(HDD)2514(例えばEIDE、SATA)、1つまたは複数の外部ストレージ・デバイス2516(例えば、磁気フロッピー(R)・ディスク・ドライブ(FDD)2516、メモリ・スティックまたはフラッシュ・ドライブ・リーダ、メモリ・カード・リーダなど)、および例えば固体状態ドライブ、光ディスク・ドライブなどのドライブ2520を含み、ドライブ2520は、CD-ROMディスク、DVD、BDなどのディスク2522からの読出しまたは書込みができる。あるいは、固体状態ドライブが含まれている場合、別個にあるのでなければディスク2522は含まれないであろう。内部HDD2514はコンピュータ2502内に置かれているように示されているが、適当なシャシ(図示せず)内で外部使用されるように内部HDD2514を構成することもできる。さらに、環境2500には示されていないが、HDD2514に加えてまたはHDD2514の代わりに、固体状態ドライブ(SSD)を使用することもできる。HDD2514、外部ストレージ・デバイス2516およびドライブ2520を、それぞれHDDインタフェース2524、外部ストレージ・インタフェース2526およびドライブ・インタフェース2528によってシステム・バス2508に接続することができる。外部ドライブ実装用のインタフェース2524は、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)インタフェース技術と米国電気電子技術者協会(IEEE)1394インタフェース技術のうちの少なくとも一方または両方を含むことができる。他の外部ドライブ接続技術も本明細書に記載された実施形態の企図に含まれる。
【0108】
これらのドライブおよびそれらの関連コンピュータ可読ストレージ媒体は、データ、データ構造体、コンピュータ実行可能命令などの不揮発性ストレージを提供する。コンピュータ2502に関して、これらのドライブおよびストレージ媒体は、適当なデジタル形式のデータの記憶に対応する。上記のコンピュータ可読ストレージ媒体の説明は、対応するそれぞれのタイプのストレージ・デバイスに関するものであるが、現在存在しているものであるのかまたは将来に開発されるものであるのかを問わず、コンピュータが読むことができる他のタイプのストレージ媒体をこの例示的な動作環境で使用することもできること、さらに、そのようなストレージ媒体は、本明細書に記載された方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を含むことができることを当業者は理解すべきである。
【0109】
これらのドライブおよびRAM2512に、オペレーティング・システム2530、1つまたは複数のアプリケーション・プログラム2532、他のプログラム・モジュール2534およびプログラム・データ2536を含む、いくつかのプログラム・モジュールを記憶することができる。これらのオペレーティング・システム、アプリケーション、モジュールもしくはデータまたはこれらの組合せの全部または部分をRAM2512にキャッシュすることもできる。本明細書に記載されたシステムおよび方法は、市販のさまざまなオペレーティング・システムまたはオペレーティング・システムの組合せを利用して実施することができる。
【0110】
任意選択で、コンピュータ2502はエミュレーション技術を含むことができる。例えば、オペレーティング・システム2530のハードウェア環境をハイパーバイザ(図示せず)または他の中間物がエミュレートすることができ、任意選択で、エミュレートされたハードウェアが、図25に示されたハードウェアとは異なることができる。そのような実施形態では、オペレーティング・システム2530が、コンピュータ2502にホストされた多数の仮想機械(VM)のうちの1つVMを含むことができる。さらに、オペレーティング・システム2530は、Java(R)実行時環境または.NETフレームワークなどの実行時環境をアプリケーション2532に対して提供することができる。実行時環境は、その実行時環境を含む任意のオペレーティング・システム上でアプリケーション2532を実行することを可能にする首尾一貫した実行環境である。同様に、オペレーティング・システム2530はコンテナをサポートすることができ、アプリケーション2532はコンテナの形態をとることができ、コンテナは、例えばアプリケーションのためのコード、実行時、システム・ツール、システム・ライブラリおよび設定を含む、ソフトウェアの軽量の独立型実行可能パッケージである。
【0111】
さらに、コンピュータ2502は、トラステッド・プロセシング・モジュール(trusted processing module)(TPM)などのセキュリティ・モジュールとともにイネーブルすることができる。例えば、TPMを用いて、ブート構成要素は、時間的に次のブート構成要素をハッシュし、次のブート構成要素をロードする前に、セキュアな値との結果の一致を待つ。このプロセスは、コンピュータ2502のコード実行スタックの中の任意の層で起こることができ、例えば、アプリケーション実行レベルまたはオペレーティング・システム(OS)カーネル・レベルで適用され、それによってコード実行の任意のレベルでセキュリティをイネーブルする。
【0112】
ユーザは、1つまたは複数の有線/無線入力デバイス、例えばキーボード2538、タッチ・スクリーン2540およびポインティング・デバイス、例えばマウス2542によってコンピュータ2502にコマンドおよび情報を入力することができる。他の入力デバイス(図示せず)は、マイクロフォン、赤外線(IR)リモート・コントロール、無線周波(RF)リモート・コントロールまたは他のリモート・コントロール、ジョイスティック、仮想現実コントローラもしくは仮想現実ヘッドセットまたはその両方、ゲーム・パッド、スタイラス・ペン、イメージ入力デバイス、例えばカメラ、ジェスチャ・センサ入力デバイス、視覚運動センサ入力デバイス、感情または顔検出デバイス、バイオメトリック入力デバイス、例えば指紋または虹彩スキャナなどを含みうる。これらの入力デバイスおよび他の入力デバイスはしばしば、システム・バス2508に結合することができる入力デバイス・インタフェース2544を通して処理ユニット2504に接続されるが、それらの入力デバイスを、パラレル・ポート、IEEE1394シリアル・ポート、ゲーム・ポート、USBポート、IRインタフェース、BLUETOOTH(R)インタフェースなどの他のインタフェースによって接続することもできる。
【0113】
モニタ2546または他のタイプのディスプレイ・デバイスを、ビデオ・アダプタ2548などのインタフェースを介してシステム・バス2508に接続することもできる。モニタ2546に加えて、コンピュータは通常、スピーカ、プリンタなどの他の周辺出力デバイス(図示せず)を含む。
【0114】
コンピュータ2502は、リモート・コンピュータ2550などの1台または数台のリモート・コンピュータへの有線通信もしくは無線通信またはその両方を介した論理接続を使用して、ネットワーク化された環境で動作することができる。リモート・コンピュータ2550は、ワークステーション、サーバ・コンピュータ、ルータ、パーソナル・コンピュータ、ポータブル・コンピュータ、マイクロプロセッサ・ベースのエンターテイメント機器、ピア・デバイスまたは他の一般的なネットワーク・ノードであることができ、通常は、コンピュータ2502に関して説明した多くの要素または全ての要素を含むが、簡潔にするため、メモリ/ストレージ・デバイス2552だけが示されている。図示された論理接続は、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)2554もしくはより大きなネットワーク、例えばワイド・エリア・ネットワーク(WAN)2556、またはその両方への有線/無線接続性を含む。このようなLANおよびWANネットワーキング環境は、事業所および会社では普通であり、イントラネットなどの企業内コンピュータ・ネットワークを容易にし、それらのネットワークは全て、グローバル通信ネットワーク、例えばインターネットに接続することができる。
【0115】
LANネットワーキング環境で使用されるときには、有線通信ネットワーク・インタフェースもしくはアダプタ2558または無線通信ネットワーク・インタフェースもしくはアダプタ2558、あるいはその両方を通して、コンピュータ2502をローカル・ネットワーク2554に接続することができる。アダプタ2558は、LAN2554への有線または無線通信を容易にすることができ、LAN2554はさらに、アダプタ2558と無線モードで通信するためにLAN2554上に配置されたワイヤレス・アクセス・ポイント(AP)を含むことができる。
【0116】
WANネットワーキング環境で使用されるときには、コンピュータ2502がモデム2560を含むことができ、またはコンピュータ2502を、WAN2556上での通信、例えばインターネットを経由した通信を確立するための他の手段を介してWAN2556上の通信サーバに接続することができる。モデム2560は、内部または外部の有線または無線デバイスであることができ、入力デバイス・インタフェース2544を介してモデム2560をシステム・バス2508に接続することができる。ネットワーク化された環境では、コンピュータ2502に関して示されたプログラム・モジュールまたはその部分を、リモート・メモリ/ストレージ・デバイス2552に記憶することができる。示されたネットワーク接続は例であり、コンピュータ間の通信リンクを確立する他の手段を使用することもできることが理解される。
【0117】
LANまたはWANネットワーキング環境で使用されるとき、コンピュータ2502は、上で説明した外部ストレージ・デバイス2516に加えて、または外部ストレージ・デバイス2516の代わりに、限定はされないが、情報の記憶または処理の1つまたは複数の態様を提供するネットワーク仮想機械などの、クラウド・ストレージ・システムまたは他のネットワーク・ベースのストレージ・システムにアクセスすることができる。一般に、コンピュータ2502とクラウド・ストレージ・システムとの間の接続は、LAN2554またはWAN2556上で、例えばそれぞれアダプタ2558またはモデム2560によって確立することができる。コンピュータ2502を関連クラウド・ストレージ・システムに接続すると、外部ストレージ・インタフェース2526は、アダプタ2558もしくはモデム2560またはその両方の助けを借りて、クラウド・ストレージ・システムによって提供されたストレージを、他のタイプの外部ストレージと同様に管理することができる。例えば、クラウド・ストレージ・ソースがあたかもコンピュータ2502に物理的に接続されているかのようなクラウド・ストレージ・ソースへのアクセスを提供するように、外部ストレージ・インタフェース2526を構成することができる。
【0118】
コンピュータ2502は、無線通信するように動作可能に配置された任意の無線デバイスまたは実体、例えばプリンタ、スキャナ、デスクトップ・コンピュータもしくはポータブル・コンピュータまたはその両方、ポータブル・データ・アシスタント、通信衛星、無線で検出可能なタグに関連づけられた機器または位置(例えばキオスク、新聞販売所、商店の棚など)、および電話機と通信するように動作可能であることができる。これは、ワイヤレス・フィデリティ(Wireless Fidelity)(Wi-Fi)およびBLUETOOTH(R)無線技術を含むことができる。したがって、この通信を、従来のネットワークと同様の予め定められた構造、または単純に少なくとも2台のデバイス間のアドホック通信とすることができる。
【0119】
本発明は、インテグレーションの可能な任意の技術的詳細レベルにおいて、システム、方法、装置もしくはコンピュータ・プログラム製品、またはこれらの組合せであることがある。コンピュータ・プログラム製品は、本発明の態様をプロセッサに実行させるためのコンピュータ可読プログラム命令をその上に有するコンピュータ可読ストレージ媒体を含むことができる。このコンピュータ可読ストレージ媒体は、命令実行デバイスが使用するための命令を保持および記憶することができる有形のデバイスとすることができる。このコンピュータ可読ストレージ媒体は例えば、限定はされないが、電子ストレージ・デバイス、磁気ストレージ・デバイス、光学ストレージ・デバイス、電磁気ストレージ・デバイス、半導体ストレージ・デバイスまたはこれらの適当な任意の組合せとすることができる。コンピュータ可読ストレージ媒体のより具体的な例の非網羅的なリストはさらに、ポータブル・コンピュータ・ディスケット、ハード・ディスク、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、リード・オンリー・メモリ(ROM)、消去可能なプログラマブル・リード・オンリー・メモリ(EPROMまたはフラッシュ・メモリ)、スタティック・ランダム・アクセス・メモリ(SRAM)、ポータブル・コンパクト・ディスク・リード・オンリー・メモリ(CD-ROM)、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)、メモリ・スティック、フロッピー(R)・ディスク、機械的にコード化されたデバイス、例えばパンチカードまたはその上に命令が記録された溝の中の一段高くなった構造体、およびこれらの適当な任意の組合せを含みうる。本明細書で使用されるとき、コンピュータ可読ストレージ媒体は、それ自体が一過性の信号、例えば電波もしくは他の自由に伝搬する電磁波、ウェーブガイドもしくは他の伝送体内を伝搬する電磁波(例えば光ファイバ・ケーブル内を通る光パルス)、または電線を通して伝送される電気信号であると解釈されるべきではない。
【0120】
本明細書に記載されたコンピュータ可読プログラム命令は、コンピュータ可読ストレージ媒体から対応するそれぞれのコンピューティング/処理デバイスにダウンロードすることができ、またはネットワーク、例えばインターネット、ローカル・エリア・ネットワーク、ワイド・エリア・ネットワークもしくは無線ネットワークまたはこれらの組合せを介して外部コンピュータもしくは外部ストレージ・デバイスにダウンロードすることができる。このネットワークは、銅伝送ケーブル、光伝送ファイバ、無線伝送、ルータ、ファイアウォール、スイッチ、ゲートウェイ・コンピュータもしくはエッジ・サーバ、またはこれらの組合せを含むことができる。それぞれのコンピューティング/処理デバイス内のネットワーク・アダプタ・カードまたはネットワーク・インタフェースは、コンピュータ可読プログラム命令をネットワークから受信し、それらのコンピュータ可読プログラム命令を、対応するそれぞれのコンピューティング/処理デバイス内のコンピュータ可読ストレージ媒体に記憶するために転送する。本発明の動作を実行するためのコンピュータ可読プログラム命令は、アセンブラ命令、命令セット・アーキテクチャ(ISA)命令、機械命令、機械依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、もしくは集積回路用のコンフィギュレーション・データであることができ、またはSmalltalk(R)、C++などのオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語または同種のプログラミング言語などの手続き型プログラミング言語を含む、1つまたは複数のプログラミング言語の任意の組合せで書かれた、ソース・コードもしくはオブジェクト・コードであることができる。このコンピュータ可読プログラム命令は、全体がユーザのコンピュータ上で実行されてもよく、一部がユーザのコンピュータ上で実行されてもよく、独立型ソフトウェア・パッケージとして実行されてもよく、一部がユーザのコンピュータ上で、一部がリモート・コンピュータ上で実行されてもよく、または全体がリモート・コンピュータもしくはリモート・サーバ上で実行されてもよい。上記の最後のシナリオでは、リモート・コンピュータを、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)もしくはワイド・エリア・ネットワーク(WAN)を含む任意のタイプのネットワークを介してユーザのコンピュータに接続されたものとすることができ、またはこの接続を、外部コンピュータに対して(例えばインターネット・サービス・プロバイダを使用してインターネットを介して)実施することができる。いくつかの実施形態では、本発明の態様を実行するために、例えばプログラム可能論理回路、フィールドプログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)またはプログラム可能論理アレイ(PLA)を含む電子回路が、このコンピュータ可読プログラム命令の状態情報を利用してその電子回路をパーソナライズすることにより、このコンピュータ可読プログラム命令を実行することができる。
【0121】
本明細書では、本発明の態様が、本発明の実施形態による方法、装置(システム)およびコンピュータ・プログラム製品のフローチャートもしくはブロック図またはその両方の図を参照して説明される。それらのフローチャートもしくはブロック図またはその両方の図のそれぞれのブロック、およびそれらのフローチャートもしくはブロック図またはその両方の図のブロックの組合せは、コンピュータ可読プログラム命令によって実施することができることが理解される。これらのコンピュータ可読プログラム命令は、コンピュータまたは他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサによって実行されるこれらの命令が、フローチャートもしくはブロック図またはその両方の1つまたは複数のブロックに指定された機能/動作を実施する手段を生成するように、汎用コンピュータ、専用コンピュータまたは他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサに提供されて機械を作り出すことができる。これらのコンピュータ可読プログラム命令はさらに、その中に命令が記憶されたコンピュータ可読ストレージ媒体が、フローチャートもしくはブロック図またはその両方の1つまたは複数のブロックに指定された機能/動作の態様を実施する命令を含む製品を含むように、コンピュータ可読ストレージ媒体に記憶され、コンピュータ、プログラム可能データ処理装置もしくは他のデバイスまたはこれらの組合せに特定の方式で機能するように指示することができる。これらのコンピュータ可読プログラム命令はさらに、コンピュータ、他のプログラム可能装置または他のデバイス上で実行される命令が、フローチャートもしくはブロック図またはその両方の1つまたは複数のブロックに指定された機能/動作を実施するように、コンピュータによって実施されるプロセスを生成するために、コンピュータ、他のプログラム可能データ処理装置または他のデバイス上にロードされ、コンピュータ、他のプログラム可能装置または他のデバイス上で一連の動作ステップを実行させることができる。
【0122】
添付図中のフローチャートおよびブロック図は、本発明のさまざまな実施形態によるシステム、方法およびコンピュータ・プログラム製品の可能な実施態様のアーキテクチャ、機能および動作を示している。この点に関して、それらのフローチャートまたはブロック図のそれぞれのブロックは、指定された論理機能を実施するための1つまたは複数の実行可能命令を含む、命令のモジュール、セグメントまたは部分を表しうる。いくつかの代替実施態様では、これらのブロックに示された機能を、図に示された順序とは異なる順序で実施することができる。例えば、連続して示された2つのブロックを、実際には、実質的に同時に実行することができ、または、含まれる機能によってはそれらのブロックを逆の順序で実行することもできる。それらのブロック図もしくはフローチャートまたはその両方の図のそれぞれのブロック、ならびにそれらのブロック図もしくはフローチャートまたはその両方の図のブロックの組合せを、指定された機能もしくは動作を実行しまたは専用ハードウェアとコンピュータ命令の組合せを実施するハードウェアベースの専用システムによって実施することができることにも留意すべきである。
【0123】
以上に、1台のコンピュータ上もしくは複数のコンピュータ上またはその両方で実行されるコンピュータ・プログラム製品のコンピュータ実行命令の一般的な文脈で主題を説明したが、他のプログラム・モジュールと組み合わせて本開示を実施することもできることを当業者は認識するであろう。一般に、プログラム・モジュールは、特定のタスクを実行し、もしくは特定の抽象データ型を実装し、またはその両方を実行する、ルーチン、プログラム、構成要素、データ構造体などを含む。さらに、本発明のコンピュータ実施方法は、シングルプロセッサまたはマルチプロセッサ・コンピュータ・システム、ミニコンピューティング・デバイス、メインフレーム・コンピュータ、コンピュータ、ハンドヘルド・コンピューティング・デバイス(例えばPDA、電話機)、マイクロプロセッサ・ベースのまたはプログラム可能な家庭用または産業用電子機器などを含む、他のコンピュータ・システム構成を用いて実施することもできることを当業者は認識するであろう。示された態様は、通信ネットワークを通してリンクされたリモート処理デバイスによってタスクが実行される分散コンピューティング環境で実施することもできる。しかしながら、全部ではないにせよ、本開示の一部の態様を、独立型コンピュータ上で実施することもできる。分散コンピューティング環境では、ローカル・メモリ・ストレージ・デバイスとリモート・メモリ・ストレージ・デバイスの両方にプログラム・モジュールを置くことができる。
【0124】
本出願で使用されるとき、用語「構成要素」、「システム」、「プラットホーム」、「インタフェース」などは、1つもしくは複数の特定の機能を有する実体であって、コンピュータに関係した実体もしくはオペレーショナル・マシン(operational machine)に関係した実体を指すことができ、またはそのような実体を含むことができ、またはその両方であることができる。本明細書に開示された実体は、ハードウェア、ハードウェアとソフトウェアの組合せ、ソフトウェア、または実行中のソフトウェアであることができる。例えば、構成要素は、限定はされないが、プロセッサ上で実行されるプロセス、プロセッサ、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、プログラムもしくはコンピュータ、またはこれらの組合せであることができる。例として、サーバ上で実行されるアプリケーションとサーバの両方が構成要素であることがある。プロセスもしくは実行スレッドまたはその両方の中に、1つまたは複数の構成要素が存在することができ、構成要素は、1つのコンピュータ上に限局されていること、もしくは2つ以上のコンピュータ間に分散化されていること、またはその両方であることができる。他の例では、さまざまなデータ構造がその上に記憶されたさまざまなコンピュータ可読媒体から、対応するそれぞれの構成要素を実行することができる。構成要素は、ローカル・プロセスもしくはリモート・プロセスまたはその両方を介して、例えば1つまたは複数のデータ・パケット(例えば、ローカル・システム内で、分散システム内で、もしくはインターネットなどのネットワークを横切って、またはこれらの組合せで、他のシステムとともに、信号を介して別の構成要素と対話している1つの構成要素からのデータ)を有する信号に従って通信することができる。別の例として、構成要素は、電気または電子回路によって操作される機械部品によって提供される特定の機能を有する装置であることができ、この電気または電子回路は、プロセッサによって実行されるソフトウェアまたはファームウェア・アプリケーションによって操作される。このような場合、プロセッサは、装置内または装置外に置くことができ、ソフトウェア・アプリケーションまたはファームウェア・アプリケーションの少なくとも一部を実行することができる。別の例として、構成要素は、機械部品を含まない電子構成要素を介して特定の機能を提供する装置であることができ、それらの電子構成要素は、電子構成要素の機能を少なくとも部分的に与えるソフトウェアまたはファームウェアを実行するためのプロセッサまたは他の手段を含むことができる。一態様では、構成要素が、例えばクラウド・コンピューティング・システム内で、仮想機械を介して電子構成要素をエミュレートすることができる。
【0125】
さらに、用語「または」は、排他的な「または」ではなく包括的な「または」を意味することが意図されている。すなわち、特段の記載がある場合、または文脈から明白である場合を除き、「XがAまたはBを使用する」は、自然な包括的置換(natural inclusive permutation)のうちのいずれかを意味することが意図されている。すなわち、XがAを使用する場合、XがBを使用する場合、またはXがAとBの両方を使用する場合、「Xが、AまたはBを使用する」は、上記のいずれの事例の下でも満たされる。さらに、特段の記載がある場合、または単数形を指示していることが文脈から明白である場合を除き、本明細書および添付図面で使用される冠詞「a」および「an」は、一般に、「1つまたは複数」を意味すると解釈すべきである。本明細書で使用されるとき、用語「例」もしくは「例示的な」またはその両方は、例、事例または例示として役立つものであることを意味するために利用される。誤解を避けるために言うと、本明細書に開示された主題はこのような例によって限定されない。さらに、「例」もしくは「例示的な」またはその両方として本明細書に記載された任意の態様または設計を、他の態様または設計よりも好ましいまたは有利であると解釈する必要は必ずしもなく、あるいは、そのような態様または設計が、当業者に知られている等価の例示的な構造体および技術を排除することも意味しない。
【0126】
本明細書で使用されるとき、「プロセッサ」という用語は、限定はされないが、シングルコア・プロセッサ、ソフトウェア・マルチスレッド実行機能を有するシングルコア・プロセッサ、マルチコア・プロセッサ、ソフトウェア・マルチスレッド実行機能を有するマルチコア・プロセッサ、ハードウェア・マルチスレッド技術を有するマルチコア・プロセッサ、パラレル・プラットホーム、および分散共用メモリを有するパラレル・プラットホームを含む、実質的に任意のコンピューティング処理ユニットまたはデバイスを指しうる。さらに、プロセッサは、本明細書に記載された機能を実行するように設計された集積回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号処理プロセッサ(DSP)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)、コンプレックス・プログラマブル・ロジック・デバイス(CPLD)、ディスクリート・ゲートまたはトランジスタ・ロジック、ディスクリート・ハードウェア構成要素、またはこれらの任意の組合せを指しうる。さらに、プロセッサは、空間使用を最適化し、またはユーザ機器の性能を強化するために、限定はされないが、分子ベースおよび量子ドット・ベースのトランジスタ、スイッチおよびゲートなどのナノスケール・アーキテクチャを利用することができる。プロセッサを、コンピューティング処理ユニットの組合せとして実施することもできる。本開示では、「ストア」、「ストレージ」、「データ・ストア」、「データ・ストレージ」、「データベース」などの用語、ならびに構成要素の動作および機能に関連する実質的に任意の他の情報ストレージ構成要素が、「メモリ」またはメモリを含む構成要素として具体化された実体である「メモリ構成要素」を指すために利用される。本明細書に記載されたメモリもしくはメモリ構成要素またはその両方は、揮発性メモリもしくは不揮発性メモリであることができ、または揮発性メモリと不揮発性メモリの両方を含むことができることを認識すべきである。例として、不揮発性メモリは、限定はされないが、リード・オンリー・メモリ(ROM)、プログラマブルROM(PROM)、消去可能なプログラマブルROM(EPROM)、電気的に消去可能なプログラマブルROM(EEPROM)、フラッシュ・メモリまたは不揮発性のランダム・アクセス・メモリ(RAM)(例えば強誘電体RAM(FeRAM))を含むことができる。揮発性メモリはRAMを含むことができ、RAMは、例えば外部キャッシュ・メモリとして機能することができる。例として、限定はされないが、スタティックRAM(SRAM)、ダイナミックRAM(DRAM)、シンクロナスDRAM(SDRAM)、ダブル・データ・レートSDRAM(DDR SDRAM)、エンハンストSDRAM(ESDRAM)、Synchlink DRAM(SLDRAM)、ダイレクトRambus RAM(DRRAM)、ダイレクトRambusダイナミックRAM(DRDRAM)およびRambusダイナミックRAM(RDRAM)など、多くの形態のRAMが使用可能である。さらに、本明細書のシステムまたはコンピュータ実施方法の開示されたメモリ構成要素は、限定はされないが、これらのタイプのメモリおよび他の適当なタイプのメモリを含むことが意図されている。
【0127】
以上に説明したことは、システムおよびコンピュータ実施方法の単なる例を含む。当然ながら、本開示を説明するために、構成要素またはコンピュータ実施方法の考えうるあらゆる組合せを記載することは不可能だが、本開示の他の多くの組合せおよび置換が可能であることを当業者は理解することができる。さらに、詳細な説明、特許請求の範囲、付録および図面において用語「含む(includes)」、「有する(has)」、「所有する(possesses)」などが使用される範囲で、このような用語は、用語「備える/含む(comprising)」が、請求項中で転換語(transitional word)として使用されているときに解釈されるのと同様に、包括的であることが意図されている。
【0128】
さまざまな実施形態の以上の説明は例示のために示したものであり、以上の説明が網羅的であること、または、以上の説明が、開示された実施形態だけに限定されることは意図されていない。当業者には、記載された実施形態の範囲および思想を逸脱しない多くの変更および変形が明らかとなろう。本明細書で使用した用語は、実施形態の原理、実用的用途、もしくは市販されている技術にはない技術的改善点を最もよく説明するように、または本明細書に開示された実施形態を当業者が理解できるように選択した。
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