(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】プレコートロータリフィルタを用いた懸濁液の濾過装置
(51)【国際特許分類】
B01D 33/06 20060101AFI20240927BHJP
B01D 37/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B01D33/06 E
B01D33/06 A
B01D37/02 D
B01D37/02 E
B01D37/02 F
(21)【出願番号】P 2022551415
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2020055083
(87)【国際公開番号】W WO2021170234
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】522337200
【氏名又は名称】ジー.エス.-トレーディング エス.アー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】アダミ,ニコラス
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭35-007648(JP,A)
【文献】特開平04-022407(JP,A)
【文献】特開平01-249115(JP,A)
【文献】仏国特許発明第01171842(FR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 24/00 - 35/05
B01D 35/10 - 37/04
B01D 46/00 - 46/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸濁液(5)を濾過するための装置(1)であって、前記装置(1)は、濾過ユニット(3)及びコーティングユニット(16)を備え、
前記濾過ユニット(3)は、ロータリフィルタ(2)を有し、
前記コーティングユニット(16)は、プレコート(20)を用いて前記ロータリフィルタ(2)をコーティングするように構成され、前記コーティングユニット(16)は前記濾過ユニット(3)から独立しており、
前記濾過ユニット(3)と前記コーティングユニット(16)との間で前記ロータリフィルタ(2)
の全部を自動的に移動させる手段を含み、
前記コーティングユニット(16)および前記濾過ユニット(3)の各々が、前記ロータリフィルタ(2)を長手方向に収容できるように構成されたタンク(4、17)と、前記ロータリフィルタ(2)に被覆されるプレコート(20)の厚さの検知手段とを含む
装置(1)。
【請求項2】
さらに、前記プレコート(20)を形成するための懸濁液(18)の調製ユニット(19)を含み、前記調製ユニット(19)が前記濾過ユニット(3)から独立していることを特徴とする、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記調製ユニット(19)が、撹拌手段(22)を備えたタンク(21)を含み、このタンクが、流体回路によって前記コーティングユニット(16)に接続されていることを特徴とする、請求項2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記流体回路が、前記懸濁液(18)の調製ユニット(19)のタンク(21)を前記コーティングユニット(16)のタンク(17)に接続する供給管(23)および排出管(24)を含み、これらの管(23、24)の各々がポンプ(25、26)に接続され、このポンプは、前記調製ユニット(19)のタンク(21)と前記コーティングユニット(16)のタンク(17)との間およびその逆に前記プレコート(20)の調製用懸濁液(18)を循環できるように構成されていることを特徴とする、請求項3に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記濾過ユニット(3)と前記コーティングユニット(16)との間でロータリフィルタ(2)を自動的に移動させる前記手段が、前記ロータリフィルタ(2)の回転シャフト(30)に接続された第1および第2のエアジャッキ(28、29)を含み、これらのジャッキが、回転シャフト(30)に垂直な垂直軸(Y)と回転シャフト(30)に垂直な水平軸(X)とに沿ってそれぞれ前記ロータリフィルタ(2)を並進移動できるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記濾過ユニット(3)が、前記ロータリフィルタ(2)にコーティングされる濾過用プレコート(20)の掻き取り手段(11)を備え、この手段は、前記濾過ユニットが含むタンク(4)に結合されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記濾過ユニット(3)のタンク(4)が、濾過される懸濁液(5)のための流入穴(8)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記流入穴(8)が、ポンプ(10)を備えた、濾過される懸濁液(5)の導入管(7)に接続されていることを特徴とする、請求項7に記載の装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機粒子または有機粒子を含んだ液体を、ロータリフィルタを用いて濾過する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、多くの事業分野では、液体生成物の精製および/または、これらの生成物に懸濁する固体物質の多種多様な目的での回収を可能にする濾過方法の実現をめざして、さまざまなプロセス工程が組み込まれている。
【0003】
このため、1つまたは複数のロータリフィルタを用いることからなる解決方法が知られており、この解決方法が、多くの分野で長年にわたって用いられてきた。従来から、ロータリフィルタでの濾過は濾布を用いて簡単に実施することができる。しかし、より効率的で高性能の濾過が求められるさらに精密な用途では、通常、種々の濾過特性および/または吸収特性および/または吸着特性を有する有機化合物および/または無機化合物からなるプレコートで、ロータリフィルタを予めコーティングすることも同様に行われている。
【0004】
この点に関して、現時点で行われているやり方は、ロータリフィルタの表面の濾過用および/または吸収用および/または吸着用のプレコートを濾過用タンク内で直接形成し、ロータリフィルタにコーティングされるプレコートがその用途で必要な厚さに達したらすぐに、濾過すべき原液をタンク内に注入することからなる。
【0005】
この技術は非常に有効で、現在広く普及している。しかし、プレコートの形成開始時ならびに濾過終了時に、プレコートを形成する一定量の無機粒子および/または有機粒子が、プレコートから濾過後の液体に向かって移動する可能性があることが観察されている。一般に、プレコートによって放出されるこうした粒子量はごくわずかであり、大抵の場合は特別な問題を引き起こすことはないが、その一方で、濾過後の液体が何らかの固体粒子によって汚染される可能性を皆無にすることが必要な用途が存在する。
【0006】
たとえば、リサイクルを目的とした、フレキソ印刷用ポリマープレートエッチング浴の濾過の場合がそうである。なぜなら、その場合、使用されるフィルタに被覆される濾過用プレコートを形成するために推奨される生成物の研磨性が高いことが非常に多いからである。ところで、濾過後の液体に2つか3つの粒子が見られるだけで、エッチングの品質、ひいてはその後の印刷品質が完全に損なわれてしまう。
【0007】
同様の懸念は、人間の血液などの生物学的液体の濾過の分野、または、得られる最終生成物の純度が生命維持に必要不可欠である医療用生成物の濾過の分野にも関わる。
【0008】
さらに、程度は低いものの、特定のアルコールなどの飲料水の濾過の分野に関しても同じことがいえる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
こうした状況で、本発明は、既存のものに代わるプレコートロータリフィルタによる濾過方法を提案し、固体物質を含んだ液体生成物を効果的に濾過するとともに、プレコートに由来する無機粒子および/または有機粒子が濾過後の液体中にまったく存在しないようにし、その結果として濾過後の液体の純度を保証可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのため、本発明は、プレコートロータリフィルタを用いて懸濁液を濾過するための装置を対象とし、この装置は、上記ロータリフィルタを実現するための濾過ユニットを含み、さらに、ロータリフィルタにプレコートをコーティングするユニットを含み、上記コーティングユニットが上記濾過ユニットから独立していることを特徴とする。
【0011】
好ましい変形実施形態によれば、本発明による装置は、濾過ユニットとコーティングユニットとの間でロータリフィルタを自動的に移動させる手段を含む。
【0012】
さらに、本発明は、有利には、コーティングユニットおよび濾過ユニットの各々が、ロータリフィルタを長手方向に収容できるように構成されたタンクと、ロータリフィルタに被覆されるプレコートの厚さの検知手段とを含むように同様に構成されている。
【0013】
本発明による装置の付加的な1つの特徴によれば、この装置は、さらに、プレコートを形成するための懸濁液の調製ユニットを含み、該調製ユニットが上記濾過ユニットから独立している。
【0014】
好ましい1つの変形実施形態によれば、調製ユニットは、撹拌手段を備えたタンクを含み、流体回路によってコーティングユニットに接続される。
【0015】
本発明の1つの特徴によれば、流体回路が、懸濁液の調製ユニットのタンクをコーティングユニットのタンクに接続する供給管および排出管を含み、これらの管の各々がポンプに接続され、このポンプは、調製ユニットのタンクとコーティングユニットのタンクとの間およびその逆にプレコート調製用懸濁液を循環できるように構成されている。
【0016】
他方で、本発明の範囲では同様に、濾過ユニットとコーティングユニットとの間でロータリフィルタを自動的に移動させる手段が、ロータリフィルタの回転シャフトに接続された第1および第2のエアジャッキを含み、これらのジャッキが、回転シャフトに垂直な垂直軸と回転シャフトに垂直な水平軸とに沿ってそれぞれロータリフィルタを並進移動できるように構成されることを想定している。
【0017】
本発明による装置の別の1つの特徴は、濾過ユニットが、ロータリフィルタにコーティングされる濾過用プレコートの掻き取り手段を備えており、この手段は、濾過ユニットが含むタンクに結合されている。
【0018】
また、本発明による濾過装置は、濾過ユニットのタンクが、濾過される懸濁液の流入穴を含み、該流入穴が、ポンプを備えた、濾過される懸濁液の導入管に必要に応じて接続可能にされていることをさらに特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら説明する。
【
図1】
図1は、装置に備えられたプレコートロータリフィルタがとりうる2つの位置(それぞれ実線および点線)を示す、本発明による装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すように、この変形実施形態では、本発明による懸濁液の濾過装置1が、濾過ユニット3内で用いられるように構成されたプレコート20を有するロータリフィルタ2を含む。
【0021】
濾過ユニットは、ロータリフィルタ2を長手方向に収容するとともに、濾過される懸濁液5を受容するように成形されたタンク4から構成される。
【0022】
図1に示すように、この変形実施形態では、濾過される懸濁液5が、タンク4の流入穴8と貯蔵タンク6の排出穴9とに接続された管7を介して貯蔵タンク6からタンク4に送られる。懸濁液5は、ポンプ10を介して管7を流れる。
【0023】
濾過ユニット3はまた、プレコート20を徐々に薄くすることができる掻き取りブレード11を備え、これにより、懸濁液5に最初に含まれていてプレコート20に留め置かれた固体粒子を、たとえば容器12に向かって排出できる。
【0024】
懸濁液5の濾過によって得られる精製された液体13は、ロータリフィルタ2の中央管路14の位置で排出され、容器14に集められる。
【0025】
濾過ユニット3が含む専用のセンサ(図示せず)によってプレコート20の特定の厚さが検知されると濾過は自動的に停止される。
【0026】
本発明によれば、装置1は、濾過ユニット3とは独立したコーティングユニット16をさらに含み、濾過時にロータリフィルタを用いる前に、ロータリフィルタ2を覆うプレコート20がコーティングユニット内で形成される。
【0027】
このため、コーティングユニット16はタンク17を含み、このタンクは、ロータリフィルタ2を長手方向に収容するように、また、上記プレコート20を形成するための懸濁液18を受容するように同様に成形されている。
【0028】
これに関して、濾過装置1は、撹拌機22を備えたタンク21からなる懸濁液18の調製ユニット19を備えており、プレコート20を形成する役割を果たす液体生成物Lと固体物質Sとをその中に投入することができる。タンク21は、双方ともポンプ25、26を備えた往路管23および復路管24を含む流体回路によって、コーティングユニット16のタンク17に接続される。
【0029】
図1を参照すると、本発明による装置1は、さらに、濾過ユニット3とコーティングユニット16との間でロータリフィルタ2を自動的に移動させるシステム27を含む。このシステム27は、ロータリフィルタ2の回転シャフトに接続された第1および第2のエアジャッキ28、29からなり、これらのジャッキは、回転軸に垂直な垂直軸Y(矢印F0、F1)に沿って両方向に、また、回転軸に垂直な水平軸X(矢印F2、F3)に沿って両方向にそれぞれロータリフィルタを並進移動可能にするように構成されている。
【0030】
実際には、本発明による装置は、たとえば、フレキソ印刷用ポリマープレートエッチング浴のリサイクルに適用可能であり、この作業は、浴中の懸濁液内のポリマーを完全に除去し、これらの同じ浴を用いて後段で製造されるプレートの品質を保証することをめざしている。
【0031】
装置1の実現に際してはまず、プレコート20でロータリフィルタ2を覆うことを想定している。このため、調製ユニット19のタンク21内で、適切な組成のコーティング懸濁液18が予め調製される。懸濁液が均一になり、所望の濃度に達したら、ロータリフィルタ2がすでに配置されているコーティングユニット16のタンク17に懸濁液を移す。次いでロータリフィルタが作動され、コーティングユニット16が備えるセンサ(図示せず)により測定されるプレコート20の厚さが所望の寸法に到達するまで回転が続けられる。
【0032】
プレコート20を形成する作業が終了すると、ロータリフィルタ2は、ジャッキ28、29によって、コーティングユニット16から濾過ユニット3に向けて移動され、濾過ユニットのタンク4には、濾過される懸濁液5、たとえばポリマープレートエッチング浴が収容されている。濾過作業が進行するにつれて、懸濁液5に含まれる固体粒子は、ロータリフィルタ2のプレコート20に留め置かれる。濾過プロセス全体を通じて、掻き取りブレード11によりプレコート20が恒久的に掻き取られ、固体粒子は容器12へと徐々に排出される。
【0033】
前述のように、プレコート20の厚さが、濾過ユニット3に装備されるセンサによって検知された所定値に達すると、濾過は自動的に停止される。その場合、ロータリフィルタ2はコーティングユニット16に戻され、プレコート20を新たに形成するサイクルのためにそこで洗浄され、その後に新たな濾過段階を続行することができる。
【0034】
以上により、本発明による装置1によって、濾過ユニット3から完全に独立したコーティングユニット16の存在により、ロータリフィルタ2のプレコート20を形成するための固体粒子が、濾過される懸濁液5を汚染する可能性を皆無にできることは明らかである。なぜなら、プレコート20の調製工程と濾過工程はこのように完全に分離され、濾過される懸濁液5は、プレコート20を形成するための懸濁液18とは決して接触しないからである。装置1が、濾過ユニット3とは独立してコーティング懸濁液18の調製ユニット19を同様に含むことで、この長所の取得がさらに有利になる。