(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
A61B 5/022 20060101AFI20240927BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20240927BHJP
A61B 5/145 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
A61B5/022 400F
A61B5/02 310V
A61B5/02 A
A61B5/022 400H
A61B5/02 310P
A61B5/145
(21)【出願番号】P 2022575612
(86)(22)【出願日】2022-01-12
(86)【国際出願番号】 JP2022000777
(87)【国際公開番号】W WO2022154019
(87)【国際公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2021005250
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】安島 弘美
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0228089(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0256117(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02ー5/03、5/06-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の血圧値の推定に用いられる学習モデルを生成する電子機器であって、
人間の第1時点の脈波の指標及び前記第1時点より後の第2時点の脈波の指標に基づいて、血圧値と前記血圧値に対応付けられた脈波との関係を示す学習モデルを生成
し、
前記第1時点は空腹時であり、前記第2時点は食後である、電子機器。
【請求項2】
人間の第1時点の脈波の指標及び前記第1時点より後の第2時点の脈波の指標に基づいて生成された学習モデルであって、血圧値と前記血圧値に対応付けられた脈波との関係を示す学習モデルを用いて、
センサによって取得された脈波の指標であって被検者の食前の脈波及び他のタイミングにおける脈波の指標に基づいて、
前記被検者の血圧値を推定する、電子機器。
【請求項3】
前記学習モデルは、前記第1時点の脈波の指標及び前記第2時点の脈波の指標に加え、前記第1時点の血圧値にも基づいて生成される、請求項1
又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記学習モデルは、前記第1時点の脈波の指標及び前記第2時点の脈波の指標に加え、前記第2時点の血圧値にも基づいて生成される、請求項1から
3のいずれかに記載の電子機器。
【請求項5】
前記学習モデルは、前記第1時点の脈波の指標及び前記第2時点の脈波の指標に加え、前記第1時点の血糖値にも基づいて生成される、請求項1から
4のいずれかに記載の電子機器。
【請求項6】
前記学習モデルは、前記第1時点の脈波の指標及び前記第2時点の脈波の指標に加え、前記第2時点の血糖値にも基づいて生成される、請求項1から
5のいずれかに記載の電子機器。
【請求項7】
前記学習モデルは、人間の食後の経過時間に応じて生成される、請求項
1に記載の電子機器。
【請求項8】
前記学習モデルは、人間の空腹時の状態か食後の状態かに応じて生成される、請求項
1又は
7に記載の電子機器。
【請求項9】
前記脈波の指標は、前記脈波の前進波の大きさと前記脈波の反射波の大きさとの比を示す指標である、請求項1から
8のいずれかに記載の電子機器。
【請求項10】
人間の第1時点の脈波の指標及び前記第1時点より後の第2時点の脈波の指標に基づいて生成された学習モデルであって、血圧値と前記血圧値に対応付けられた脈波との関係を示す学習モデルを使用するステップと、
センサによって取得された脈波の指標であって被検者の食前の脈波及び他のタイミングにおける脈波の指標に基づいて、前記被検者の血圧値を推定するステップと、
を含む、電子機器の制御方法。
【請求項11】
電子機器に、
人間の第1時点の脈波の指標及び前記第1時点より後の第2時点の脈波の指標に基づいて生成された学習モデルであって、血圧値と前記血圧値に対応付けられた脈波との関係を示す学習モデルを使用するステップと、
センサによって取得された脈波の指標であって被検者の食前の脈波及び他のタイミングにおける脈波の指標に基づいて、前記被検者の血圧値を推定するステップと、
を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年1月15日に日本国に特許出願された特願2021-5250の優先権を主張するものであり、この先の出願の開示全体を、ここに参照のために取り込む。
【技術分野】
【0002】
本開示は、電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0003】
従来、被検者の手首等の被検部位から生体情報を測定する電子機器が知られている。特に、被検者の手首等の被検部位において検出される脈波から、当該被験者の血圧などを測定又は推定する電子機器が提案されている。例えば、特許文献1は、被検者の脈波から血圧変化を測定する血圧計を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
一実施形態に係る電子機器は、
被検者の血圧値の推定に用いられる学習モデルを生成する電子機器であって、
人間の第1時点の脈波の指標及び前記第1時点より後の第2時点の脈波の指標に基づいて、血圧値と前記血圧値に対応付けられた脈波との関係を示す学習モデルを生成する。
前記第1時点は空腹時であり、前記第2時点は食後である。
【0006】
一実施形態に係る電子機器は、
人間の第1時点の脈波の指標及び前記第1時点より後の第2時点の脈波の指標に基づいて生成された学習モデルであって、血圧値と前記血圧値に対応付けられた脈波との関係を示す学習モデルを用いて、
センサによって取得された脈波の指標であって被検者の食前の脈波及び他のタイミングにおける脈波の指標に基づいて、
前記被検者の血圧値を推定する。
【0007】
一実施形態に係る電子機器の制御方法は、
人間の第1時点の脈波の指標及び前記第1時点より後の第2時点の脈波の指標に基づいて生成された学習モデルであって、血圧値と前記血圧値に対応付けられた脈波との関係を示す学習モデルを使用するステップと、
センサによって取得された脈波の指標であって被検者の食前の脈波及び他のタイミングにおける脈波の指標に基づいて、前記被検者の血圧値を推定するステップと、
を含む。
【0008】
一実施形態に係るプログラムは、
電子機器に、
人間の第1時点の脈波の指標及び前記第1時点より後の第2時点の脈波の指標に基づいて生成された学習モデルであって、血圧値と前記血圧値に対応付けられた脈波との関係を示す学習モデルを使用するステップと、
センサによって取得された脈波の指標であって被検者の食前の脈波及び他のタイミングにおける脈波の指標に基づいて、前記被検者の血圧値を推定するステップと、
を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る電子機器の使用態様を示す図である。
【
図2】被検者の被検部位について説明する図である。
【
図3】一実施形態に係る電子機器の外観を示す図である。
【
図4】一実施形態に係る電子機器の外観を示す図である。
【
図5】一実施形態に係る電子機器の外観を示す図である。
【
図6】一実施形態に係る電子機器の外観を示す図である。
【
図7】一実施形態に係る電子機器及び被検者の手首を示す図である。
【
図8】一実施形態に係る電子機器の断面を示す図である。
【
図9】一実施形態に係る電子機器の断面を示す図である。
【
図10】一実施形態に係る電子機器の使用態様を示す図である。
【
図11】一実施形態に係る電子機器の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図12】センサ部で取得された脈波の一例を示す図である。
【
図13】算出されたAIの時間変動を示す図である。
【
図14】算出されたAIと血糖値の測定結果を示す図である。
【
図15】算出されたAIと血糖値の関係を示す図である。
【
図16】センサ部で取得された脈波の一例を示す図である。
【
図21】一実施形態に係る電子機器の動作を示すフローチャートである。
【
図22】一実施形態に係る電子機器の動作を示すフローチャートである。
【
図23】一実施形態に係るシステムの概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
被検者の脈波から血圧を良好な精度で推定できれば、非常に有益である。本開示の目的は、被検者の血圧を良好な精度で推定し得る電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラムを提供することにある。本開示によれば、被検者の血圧を良好な精度で推定し得る電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラムを提供できる。以下、一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る電子機器の使用態様を説明する図である。すなわち、
図1は、一実施形態に係る電子機器によって被検者が生体情報を測定している様子を示す図である。
【0012】
図1に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、例えば被検者の手首のような箇所を被検部位として、被検者の生体情報を測定することができる。
図1に示す例において、電子機器1は、被検者の左手首の被検部位に当接された状態にある。
図1に示す例において、電子機器1は、被検者の左手の掌から肘側に向かう途中の手首部分を被検部位として、当該被検部位に当接された状態にある。また、後述のように、電子機器1は、例えば測定前のような、被検者の被検部位に当接されていない状態において、テーブル又はデスクの上のような水平面において自立することができる。
【0013】
図1に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、筐体10と、支持部20と、台座部80とを備えている。筐体10は、電子機器1の電源をオン/オフするスイッチ13などを備えてもよい。筐体10は、後述のように、被検者の被検部位における脈動を検出可能なセンサ50を含んでいる。また、支持部20は、背面部22を備え、この部分が被検者などに押圧されてもよい。また、支持部20は、後述のように、伸長可能な伸長部24を備えてもよい。さらに、台座部80は、支持部20を起立させた状態で支持する。電子機器1を構成する各機能部は、さらに後述する。
【0014】
図1に示すY軸の正方向を、適宜、「上」方向とも記す。また、
図1に示すY軸の負方向を、適宜、「下」方向とも記す。すなわち、
図1に示す上方向及び下方向は、被検者の視点から見た上方向及び下方向と、それぞれほぼ同じ方向としてよい。
【0015】
図1において、Z軸の正方向に向く視点から見られる電子機器1の部分を、電子機器1の「背面」と記す。すなわち、
図1において、電子機器1の背面とは、電子機器1の支持部20において背面部22が平面視される部分である。また、
図1において、Z軸の負方向に向く視点から見られる電子機器1の部分を、電子機器1の「正面」と記す。すなわち、
図1において、すなわち、
図1において、電子機器1の正面とは、電子機器1の筐体10において被検者の被検部位に当接する面が平面視される部分である。
【0016】
図1に示すような電子機器1を使用して被検者の生体情報を測定するための準備として、例えば以下のようにしてよい。まず、被検者は、生体情報を測定する方の腕(
図1に示す例においては被検者の左腕)を、例えばテーブル又はデスクのような安定した台などの上に乗せてよい。
図1において、上述のテーブル又はデスクのような台は、例えば図に示すXZ平面に平行な(つまりY軸に垂直な)甲板(天板)を有するものとしてよい。すなわち、被検者は、生体情報を測定する方の腕を、図に示すY軸に垂直な天板を有する台などの上に乗せてよい。この際、被検者の生体情報を測定する方の手(
図1に示す左手)の掌は、図に示すZ軸の負方向側に向くか、又はZ軸の負方向側から幾分Y軸の正方向側に向くようにしてよい。
【0017】
次に、被検者は、電子機器1を、例えばテーブル又はデスクのような安定した台などの上に自立するように載置してよい。電子機器1を自立させる際は、例えば台座部80の底面部が、上述のテーブル又はデスクのような台の甲板(天板)の上に載置されるようにしてよい。この時、被検者は、電子機器1のセンサ50が被検部位における脈動を良好に検出できる位置に配置されるように、電子機器1の筐体10を被検部位に当接させてよい。また、被検者は、被検部位の方を、電子機器1の筐体10に当接させてもよい。この場合、被検者は、生体情報を測定しない方の手(
図1に示す例においては被検者の右手)を用いて、電子機器1の位置決めをしてよい。
【0018】
次に、被検者は、
図1に示すように、生体情報を測定しない方の手(
図1に示す例においては被検者の右手)の指などを用いて、電子機器1の台座部80をテーブル又はデスクのような台の甲板(天板)に押さえつけてよい。これにより、電子機器1の位置は、テーブル又はデスクにおいて固定される。
図1に示す例において、電子機器1の台座部80は、被検者の右手の親指及び人差し指によってテーブル又はデスクに押さえつけられている。また、台座部80は、支持部20を固定した状態で起立させる。したがって、一実施形態に係る電子機器1は、
図1に示すように、被検部位側に押さえつけられた状態で、被検者の生体情報を測定する。被検者が台座部80をテーブル又はデスクに押さえつける指は、右手の親指及び人差し指に限定されない。被検者は、右手の親指及び人差し指以外の指で、台座部80をテーブル又はデスクに押さえつけてもよい。また、被検者がテーブル又はデスクに押さえつけるのは、電子機器1の台座部80に限定されず、例えば支持部20などとしてもよい。電子機器1の台座部80又は支持部20は、適度な押圧力でテーブル又はデスクに押さえつけられれば、任意の態様で押圧されてよい。電子機器1の台座部80又は支持部20は、テーブル又はデスクの他、木、鉄、プラスチック、ガラス、ゴム、樹脂、その他の素材及びこれらの任意の組み合わせからなる台に置かれるとしてよい。
【0019】
電子機器1は、被検者の被検部位に当接されることにより、当該被検部位における脈動を検出することができる。ここで、被検者の被検部位とは、例えば被検者の尺骨動脈又は橈骨動脈が皮下に存在する部位としてよい。また、被検者の被検部位とは、被検者の尺骨動脈又は橈骨動脈が皮下に存在する部位に限定されず、被検者の脈動が検出可能な部位であれば任意の部位としてもよい。
図1は、被検者の手首の皮下において橈骨動脈が配置された部位を被検部位として、電子機器1が当該被検部位に当接された状態を示している。
【0020】
図2は、被検者の被検部位について説明する図である。より詳細には、
図2は、被検者が、電子機器1を使用して生体情報を測定する前に、自らの被検部位において脈動が良好に検出可能な個所を探っている様子の例を示している。すなわち、
図2は、被検者が、自らの左手の被検部位において脈動が良好に検出可能な箇所を、自らの右手の指を用いて探っている様子を示している。
図2において、被検者は、
図1の場合と同様に、自らの左腕をテーブル又はデスクのような台などの上に乗せているものとしてよい。また、
図2において、被検者の腕の皮下に存在する橈骨動脈及び筋は、破線又は鎖線などによって示されている。
【0021】
上述のように、被検者は、電子機器1のセンサ50が脈動を良好に検出可能な位置に配置されるように、電子機器1の筐体10を被検部位に当接させてよい。被検者の被検部位において脈動が良好に検出可能な位置は、被検者によって個体差(個人差)がある。そこで、被検者は、電子機器1を使用して生体情報を測定する前に、自らの被検部位において脈動が良好に検出可能な位置を探るようにしてよい。
【0022】
多くの場合、被検者の手首付近において脈動が良好に検出可能な位置は、皮下に橈骨動脈が走る位置であって、さらに皮下に橈骨茎状突起が存在する位置、又はその近傍になる。橈骨茎状突起の上を橈骨動脈が走っている箇所において、橈骨動脈は比較的硬い橈骨茎状突起の上に載置される。このような位置において、橈骨動脈が脈動により収縮する際の動きは、比較的硬い橈骨茎状突起の側よりも、比較的柔らかい被検者の皮膚の側に伝わり易くなる。したがって、一実施形態に係る電子機器1を使用して被検者の生体情報を測定する際は、上述のような位置を被検部位としてよい。
【0023】
図2に示すように、被検者は、自らの右手の指先によって、自らの左手の手首周辺の例えば図に示す位置において、良好な脈動を探り当てたとする。この場合、被検者は、自らの右手の指先によって良好な脈動を探り当てた位置を被検部位としてよい。このようにして、被検者は、
図1に示すように、電子機器1の筐体10を被検部位に当接させてよい。また、
図2に示す筋の位置が被検部位に多く含まれるようにすると、橈骨動脈の脈動が電子機器1の筐体10(及びセンサ50)に良好に伝わりにくくなり得る。したがって、被検者は、電子機器1の筐体10を被検部位に当接させる際は、電子機器1の筐体10(及びセンサ50)が、なるべく筋を避けて橈骨動脈に押し当てられるように配置してよい。電子機器1の筐体10において、被検者の被検部位に当接させる箇所については、さらに後述する。また、
図1に示すように、電子機器1を使用して被検者の生体情報を測定する際には、被検者は、全身をリラックスさせるような心理状態を心掛けてよく、生体情報を測定する方の手(例えば左手)の掌を軽く開いた状態としてよい。
【0024】
次に、一実施形態に係る電子機器1の構成について、さらに説明する。
図3及び
図4は、
図1に示したような電子機器1が、X軸の負方向に向く視点から見られた状態を示す図である。すなわち、
図3及び
図4は、
図1に示したような電子機器1の右側面を示す図である。また、
図5及び
図6は、
図1に示したような電子機器1が、Z軸の負方向に向く視点から見られた状態を示す図である。すなわち、
図5及び
図6は、
図1に示したような電子機器1の正面を示す図である。
【0025】
図3乃至
図6に示すように、電子機器1は、筐体10及び支持部20並びに台座部80を含んで構成される。電子機器1において、筐体10と支持部20とは、後述のように弾性部材を介して接続される。また、
図3乃至
図6に示すように、支持部20は、筐体10を支持部20の側方に支持する。すなわち、筐体10は、支持部20の側方に支持される。そして、台座部80は、支持部20を起立させる。筐体10、支持部20、及び/又は台座部80は、例えば、セラミック、鉄その他の金属、樹脂、プラスチック又はアルミのような材料によって形成されてよい。筐体10、支持部20、及び/又は台座部80は、硬質かつ軽量の材料によって形成されてよい。筐体10、支持部20、及び/又は台座部80の素材は特に限定されないが、測定装置としての機能を果たす程度の強度を有してよい。また、筐体10、支持部20、及び/又は台座部80の素材は、重量が過度に大きいものではなく、比較的軽量のものとしてよい。
【0026】
電子機器1の筐体10、支持部20、及び台座部80のサイズは、特に限定されないが、持ち運ぶ際の利便性及び/又は測定の容易性などを考慮して、比較的小型としてよい。例えば、電子機器1の全体は、例えば1辺が7cm前後の立方体又は直方体に含まれる程度のサイズとしてよい。しかしながら、一実施形態において、電子機器1の全体のサイズは、上述の大きさよりも大きくしてもよいし、小さくしてもよい。また、電子機器1の筐体10、支持部20、及び台座部80などの各部の形状も、図に示したような形状に限定されるものではなく、測定装置としての機能性及び/又は意匠的な観点などを考慮して、種々の形状としてよい。特に、台座部80は、支持部20を起立させる。このため、台座部80は、筐体10及び支持部20を含む電子機器1を起立させることができる程度の底面積を有するような形状としてよい。さらに、台座部80は、電子機器1が水平面において自立することができる程度の底面積を有してもよい。
【0027】
後述のように、筐体10と支持部20とは、互いにある程度自由に動くことができる。すなわち、電子機器1において、筐体10が固定された状態でも、支持部20はある程度自由に動くことができる。また、電子機器1において、支持部20が固定された状態でも、筐体10はある程度自由に動くことができる。例えば、
図3及び
図4に示すように、電子機器1において、筐体10は、図に示す矢印DU及び/又は矢印DLの方向に、ある程度自由に動くことができる。
【0028】
図3乃至
図6に示すように、電子機器1の支持部20は、例えばその内部に伸長部24を備えてもよい。伸長部24は、支持部20から伸長可能に構成される。
図3及び
図5は、伸長部24を支持部20から伸長させていない状態を示している。一方、
図4及び
図6は、伸長部24を支持部20から伸長させた状態を示している。すなわち、
図3及び
図5において伸長部24を矢印E1の方向に伸長させると、
図4及び
図6に示すように、支持部20から延在するように伸長部24を伸長させることができる。一方、
図4及び
図6において伸長部24を矢印E2の方向に収縮させると、
図3及び
図5に示すように、伸長部24を元の位置に戻すことができる。このように、一実施形態に係る電子機器1において、伸長部24を伸長又は収縮させることにより、支持部20の上下方向の長さを調整可能にしてもよい。
【0029】
また、支持部20の上下方向の長さが伸長部24によって調整可能になることにより、筐体10の上下方向(高さ方向)の位置が調整可能になる。したがって、
図1に示すような被検者の左手首の太さにある程度の個人差があったとしても、被検者の被検部位の上下方向の位置に応じて、筐体10が被検者の被検部位に当接する位置は調整可能になる。このように、一実施形態に係る電子機器1において、支持部20は、矢印E1及び/又は矢印E2のような所定の方向に伸長可能又は収縮可能に構成されることにより、筐体10の高さ方向の位置を調整し得るようにしてもよい。
【0030】
伸長部24は、支持部20から無段階に伸長可能に構成されてもよい。すなわち、伸長部24は、例えば所定の長さまで、任意の位置において位置決め可能に構成されてもよい。このように構成すれば、被検者の被検部位を含む手首の太さに個人差があったとしても、電子機器1において筐体10が被検者の被検部位に当接する位置を細かく調整することができる。
【0031】
また、伸長部24は、支持部20から段階的に伸長可能に構成されてもよい。すなわち、伸長部24は、例えば所定の長さまで、予め定められた複数の所定の位置において位置決めし易い機構を含んで構成されてもよい。例えば、伸長部24は、支持部20から伸縮する際に多段階でロックされる多段式ステーのような機構を含んでもよい。このように構成すれば、被検者が電子機器1を使用して生体情報を測定する際に、例えば前回の測定と同じ測定環境が再現し易くなる。このように、一実施形態に係る電子機器1において、支持部20は、例えば伸長部24を備えることにより、矢印E1及び/又は矢印E2のような所定の方向に段階的に伸長可能又は収縮可能に構成されてもよい。
【0032】
図3乃至
図6に示すように、電子機器1の筐体10は、被検者の被検部位に当接させる部分として、第1当接部11を備えてもよい。第1当接部11は、筐体10の被検部位側に設置されてよい。第1当接部11は、例えば脈あて部のような部材として機能してもよい。また、
図3乃至
図6に示すように、電子機器1の筐体10は、被検者の被検部位又は当該被検部位の近傍に当接させる部分として、第2当接部12を備えてもよい。第2当接部12は、被検者の被検部位において第1当接部11が当接する位置の近傍に当接させてもよい。第2当接部12も、筐体10の被検部位側(被検者の手首側)に設置されてよい。
【0033】
第1当接部11は、上述のように、電子機器1によって被検者の生体情報を測定する際に、被検者の被検部位に適切に当接させる部材である。したがって、第1当接部11は、例えば被検者の尺骨動脈又は橈骨動脈が皮下に存在する部位に適切に当接するような大きさとしてよい。例えば、第1当接部11は、
図5及び
図6に示すように、X軸方向又はY軸方向の幅が1cm乃至1.5cm程度としてもよい。また、第1当接部11は、X軸方向又はY軸方向の幅が1cm乃至1.5cm程度以外でもよい。
【0034】
第1当接部11及び第2当接部12は、例えば、セラミック、鉄その他の金属、樹脂、プラスチック又はアルミのような材料によって形成されてよい。第1当接部11及び第2当接部12は、硬質かつ軽量の材料によって形成されてよい。第1当接部11及び第2当接部12の素材は特に限定されない。第1当接部11及び第2当接部12の素材は、筐体10及び/又は支持部20と同様に、測定装置としての機能を果たす程度の強度を有し、比較的軽量のものとしてよい。
【0035】
また、
図3乃至
図6に示すように、電子機器1の筐体10は、スイッチ13を備えてもよい。スイッチ13は、例えば電子機器1の電源のオン/オフを切り替えるスイッチとしてよい。また、スイッチ13は、例えば電子機器1に生体情報の測定を開始させるスイッチとしてもよい。
図3乃至
図6は、スイッチ13がスライドスイッチによって構成される例を示している。しかしながら、スイッチ13は、例えば押しボタンスイッチなど、任意のスイッチによって構成されてよい。例えば、スイッチ13が押しボタンスイッチによって構成される場合、スイッチ13が押される回数及び/又は押されている時間などに基づいて、電子機器1の各種の動作を対応させてよい。スイッチ13が配置される個所は、
図3乃至
図6に示す例に限定されず、任意の箇所に配置してよい。例えば、スイッチ13は、支持部20に配置してもよい。
【0036】
次に、一実施形態に係る電子機器1によって生体情報の測定が行われる態様について説明する。
【0037】
図7は、被検者が電子機器1によって生体情報の測定を行う際の様子を示している。
図7は、
図1に示した電子機器1を側方から見た状態を、被検者の手首の断面とともに示す図である。すなわち、
図7は、
図1に示したような電子機器1が、X軸の負方向に向く視点から見られた状態を、被検者の手首の断面とともに示す図である。
【0038】
図7に示すように、被検者の左手首は、テーブル又はデスクのような台の甲板(天板)100の上面に載せられている。以下、テーブル又はデスクのような台の甲板(天板)100を、単に「水平面100」とも記す。水平面100とは、水平な面としてよいが、厳密に水平な面のみならず、ほぼ水平な面としてもよい。また、
図7に示すように、電子機器1は、支持部20を起立させる台座部80の下端すなわち底面が水平面100に接するようにして、水平面100において自立している。すなわち、一実施形態に係る電子機器1において、台座部80は、支持部20を起立させてよい。また、台座部80は、電子機器1が水平面100において自立するように、支持部20を起立させるように構成してよい。
図7に示す例は、電子機器1の支持部20において、伸長部24がいくぶん伸長されている状態を示している。例えば被検者の右手などによって台座部80(又は支持部20)が水平面100に押圧された状態で、電子機器1は生体情報の測定を開始することができる。また、電子機器1は、台座部80の底面が水平面100の上面に接しないで(つまり水平面100から浮いた状態で)利用されるとしてもよい。この場合、電子機器1は、例えば被検者の右手などによって
図7に示す矢印Pの方向に押圧されるようにして、生体情報の測定を開始してもよい。
【0039】
図7に示すように、第1当接部11は、被検者の被検部位に直接的又は間接的に接触してよい。また、第2当接部12は、
図7に示すように、第1当接部11が被検者の被検部位に接触している部位の近傍に直接的又は間接的に接触してよい。一般的な被検者の手首の被検部位を含む表面は、
図7に示すように、曲面的な形状を有する。このため、筐体10において第1当接部11と第2当接部12とのZ軸方向の長さを同じにすると、第2当接部12が被検者の手首に接触した状態で、第1当接部11が被検者の手首(被検部位)から浮いた状態になり得る。そこで、一実施形態において、
図7に示すように、第1当接部11のZ軸方向の長さは、第2当接部のZ軸方向の長さよりも長くなる形状としてもよい。このようにすれば、第2当接部12が被検者の手首の一部(例えば
図7に示すSの部分)に接触した状態で、第1当接部11を被検者の被検部位に適切に当接させることができる。
【0040】
このように、一実施形態において、第1当接部11は、例えば
図7に示すZ軸方向に、第2当接部12よりも、筐体10から突出しているようにしてもよい。すなわち、第1当接部11が筐体10からZ軸正方向に突出する長さは、第2当接部12が筐体10からZ軸正方向に突出する長さよりも大きくしてもよい。
【0041】
第1当接部11の形状は、
図3乃至
図7に示したような形状に限定されず、被検者の被検部位に適切に当接させることができる任意の形状としてよい。同様に、第2当接部12の形状も、
図3乃至
図7に示したような形状に限定されず、被検者の手首の一部(例えば
図7に示すSの部分)に適切に当接させることができる任意の形状としてよい。
【0042】
図7に示すように、電子機器1の支持部20は、背面部22を備えてよい。背面部22は、電子機器1において、被検者の指先などによって押圧される箇所としてもよい。すなわち、被検者などは、台座部80又は支持部20を水平面100に押圧していなくても、指先などによって背面部22を押圧することにより、電子機器1による生体情報の測定を行うことができる。
図7に示すように、背面部22は、支持部20の背面(Z軸負方向側を向く面)側に形成されてよい。
図7に示す例においては、背面部22は、支持部20の中央よりもやや上方向(Y軸正方向)の位置に形成されている。しかしながら、背面部22は、例えば支持部20のほぼ中央に形成するなど、電子機器1が生体情報を測定する態様に応じて、種々の位置に形成されてよい。
【0043】
また、
図7に示す例においては、背面部22は、支持部20に形成された浅い凹部として示してある。しかしながら、背面部22の形状は浅い凹部に限定されない。例えば、背面部22は、支持部20に形成された浅い凸部などとして形成してもよい。また、背面部22は、例えば、支持部20に塗料などでペイントされた単なるマークとしてもよい。背面部22は、電子機器1において、被検者の指先などによって押圧される箇所を示すものであれば、任意に構成してよい。
【0044】
電子機器1は、第1当接部11が被検者の手首などの被検部位に当接されて、台座部80又は支持部20が被検者の指先などによって水平面100に押圧されることにより、
図1又は
図7に示したような生体情報の測定時の状態になる。電子機器1が被検者の手首などの被検部位に当接される際は、第1当接部11が被検者の被検部位に当接するように位置決めされてよい。この時、
図7に示すように、第1当接部11は、例えば被検者の尺骨動脈又は橈骨動脈が皮下に存在する部位に当接するように位置決めされてよい。すなわち、一実施形態に係る電子機器1が被検者の生体情報を測定する被検部位とは、例えば被検者の橈骨動脈又は尺骨動脈が皮下に流れる位置としてよい。
【0045】
図8及び
図9は、電子機器1の断面を、被検者の手首の断面とともに示す図である。
図8は、
図7に示した電子機器1の断面を、被検者の手首の断面とともに示す図である。
図9は、台座部80が水平面100に押圧(固定)されることにより、
図8に示した電子機器1の支持部20に、図に示す矢印Pの方向の力がかかる状態を示す断面図である。この矢印Pの方向の力は、被検者の被検部位が電子機器1(の筐体10)を押圧する力の反作用としてもよい。
【0046】
図8及び
図9に示すように、電子機器1は、外観上、筐体10、支持部20、及び台座部80を備えている。また、上述のように、筐体10は第1当接部11及び第2当接部12を備えている。また、支持部20は背面部22及び伸長部24を備えてもよい。
【0047】
さらに、電子機器1の筐体10は、
図8及び
図9に示すように、基板30備えてもよい。基板30は、各種電子部品などを配置することができる一般的な回路基板としてよい。一実施形態において、電子機器1の筐体10は、基板30を内蔵してよい。
【0048】
基板30のZ軸負正向側の面には、各種の電子部品を配置してよい。
図8及び
図9に示す例において、基板30のZ軸負正向側の面には、報知部40、センサ50、制御部52、記憶部54、及び通信部56が配置されている。また、上述したスイッチ13なども、基板30に配置してもよい。
【0049】
報知部40は、被検者などに例えば生体情報の測定結果などの情報を報知する。報知部40は、例えば発光ダイオード(LED)などによる発光部としてよい。また、報知部40は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro-Luminescence Display)、又は無機ELディスプレイ(IELD:Inorganic Electro-Luminescence Display)等の表示デバイスとしてもよい。これらのような表示デバイスを報知部40として採用すれば、例えば、被検者の糖代謝又は脂質代謝の状態のような、比較的詳細な情報を表示することもできる。
【0050】
報知部40は、生体情報の測定結果などの情報のみならず、例えば電子機器1の電源のオン/オフ、又は、生体情報の測定中か否かなどのような情報を、被検者に報知してもよい。この時、報知部40は、例えば生体情報の測定結果などの情報を報知する際とは異なる態様の発光によって、電子機器1の電源のオン/オフ、又は、生体情報の測定中か否かなどのような情報を報知してもよい。
【0051】
一実施形態において、報知部40は、発光部によって構成されていなくてもよい。例えば、報知部40は、スピーカ又はブザーのような音出力部によって構成されてもよい。この場合、報知部40は、各種の音又は音声などによって、被検者などに例えば生体情報の測定結果などの情報を報知してよい。
【0052】
また、一実施形態において、報知部40は、例えばバイブレータ又は圧電素子のような触感呈示部によって構成されてもよい。この場合、報知部40は、各種の振動又は触感フィードバックなどによって、被検者などに例えば生体情報の測定結果などの情報を報知してよい。
【0053】
センサ50は、例えば角速度センサを含み、被検部位から脈動を検出して脈波を取得する。センサ50は、被検者の脈波に基づく第1当接部11(脈あて部)の変位を検出してもよい。また、センサ50は、例えば、加速度センサとしてもよいし、ジャイロセンサのようなセンサとしてもよい。また、センサ50は、角速度センサとしてもよい。センサ50については、さらに後述する。
【0054】
図8及び
図9に示すように、センサ50は基板30に固定される。また、基板30は、筐体10の内部に固定される。さらに、筐体10の外部には第1当接部11が固定される。このため、第1当接部11の動きは、筐体10、及び基板30を経て、センサ50に伝達される。したがって、センサ50は、第1当接部11、筐体10、及び基板30を介して、被検者の被検部位における脈動を検出することができる。
【0055】
図8及び
図9に示す例において、センサ50は、筐体10に内蔵された状態で配置されている。しかしながら、一実施形態において、センサ50は、筐体10に全体として内蔵されていなくてもよい。一実施形態において、センサ50は、筐体10の少なくとも一部に含まれていてもよい。センサ50は、第1当接部11、筐体10、及び基板30の少なくともいずれかの動きが伝達される任意の構成としてもよい。
【0056】
制御部52は、電子機器1の各機能ブロックをはじめとして、電子機器1の全体を制御及び管理するプロセッサである。また、制御部52は、取得された脈波から、脈波の伝播現象に基づく指標を算出するプロセッサである。制御部52は、制御手順を規定したプログラム及び脈波の伝播現象に基づく指標を算出するプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサで構成され、かかるプログラムは、例えば記憶部54等の記憶媒体に格納される。また、制御部52は、算出した指標に基づいて、被検者の糖代謝又は脂質代謝等に関する状態を推定する。制御部52は、報知部40へのデータの報知を行ったりしてもよい。
【0057】
記憶部54は、プログラム及びデータを記憶する。記憶部54は、半導体記憶媒体、及び磁気記憶媒体等の任意の非一過的(non-transitory)な記憶媒体を含んでよい。記憶部54は、複数の種類の記憶媒体を含んでよい。記憶部54は、メモリカード、光ディスク、又は光磁気ディスク等の可搬の記憶媒体と、記憶媒体の読み取り装置との組み合わせを含んでよい。記憶部54は、RAM(Random Access Memory)等の一時的な記憶領域として利用される記憶デバイスを含んでよい。記憶部54は、各種情報及び/又は電子機器1を動作させるためのプログラム等を記憶するとともに、ワークメモリとしても機能する。記憶部54は、例えばセンサ50により取得された脈波の測定結果を記憶してもよい。
【0058】
通信部56は、外部装置と有線通信又は無線通信を行うことにより、各種データの送受信を行う。通信部56は、例えば、健康状態を管理するために被検者の生体情報を記憶する外部装置と通信を行い、電子機器1が測定した脈波の測定結果、及び/又は電子機器1が推定した健康状態を、当該外部装置に送信する。通信部56は、例えばBluetooth(登録商標)又はWi-Fiなどに対応した通信モジュールとしてもよい。
【0059】
基板30のZ軸負方向側の面には、
図8及び
図9に示すように、バッテリ60が配置されてよい。この場合、基板30のZ軸負方向側の面には、バッテリ60を固定するためのバッテリホルダが配置されてもよい。バッテリ60は、例えばCR2032のようなボタン型電池(コイン型電池)など、任意の電源としてよい。また、バッテリ60は、例えば充電可能な蓄電池としてもよい。バッテリ60は、例えばリチウムイオン電池並びにその充電及び放電のための制御回路等を適宜備えてもよい。バッテリ60は、電子機器1の各機能部に電力を供給してよい。
【0060】
報知部40、センサ50、制御部52、記憶部54、通信部56、及びバッテリ60の配置は、
図8及び
図9に示す例に限定されない。例えば、前述の機能部は、基板30の任意の位置に配置してよい。また、前述の機能部は、基板30の両面のいずれかに適宜配置してよい。また、電子機器1が外部機器と有線又は無線により接続される場合、例えばスイッチ13、報知部40、制御部52、記憶部54、及び通信部56などの機能部の少なくとも一部は、適宜、外部機器に備えてもよい。
【0061】
図8及び
図9に示すように、電子機器1において、筐体10のZ軸負方向側の端部は、支持部20のZ軸正方向側の端部に接続されている。
図8及び
図9に示すように、筐体10は、Z軸の負方向側に、支持部20に接続される接続部を有する。また、
図8及び
図9に示すように、支持部20は、Z軸の正方向側に、筐体10の接続部が挿入される開口部を有する。
図8及び
図9に示す例において、筐体10の接続部は、支持部20の開口部よりも小さなサイズにして、筐体10の接続部を支持部20の開口部に挿入した構成にしてある。しかしながら、一実施形態において、筐体10が開口部を有するとともに、支持部20が挿入部を有するような構成としてもよい。この場合、筐体10の開口部を支持部20の挿入部よりも大きなサイズにして、支持部20の挿入部を筐体10の開口部に挿入した構成にしてもよい。Sどちらの場合も、筐体10と支持部20とは、互いに干渉せずにある程度自由に動くことができるように構成してよい。
【0062】
図8及び
図9に示すように、電子機器1において、筐体10と支持部20は、弾性部材70によって互いに接続されている。
図8及び
図9に示す例においては、筐体10と支持部20とが、弾性部材70によって直接接続されている。しかしながら、弾性部材70は、例えば筐体10と、支持部20とを間接的に接続してもよい。例えば、一実施形態において、弾性部材70は、筐体10側の任意の部材と、支持部20側の任意の部材とを互いに接続してよい。弾性部材70は、互いに直交する3つの軸(例えば、Y軸、Y軸、Z軸)のうちの少なくともいずれか1つの軸に沿って変形可能な弾性部材であるとしてよい。弾性部材70は、3次元で変形可能な部材である。
【0063】
図8及び
図9は、弾性部材70が圧縮コイルばねのようなスプリングである例を示している。しかしながら、一実施形態において、弾性部材70は、例えば、ばね、樹脂、スポンジ、又はシリコンシート等のような、適度な弾性を有する任意の弾性体により構成されてもよいし、これらを任意に組み合わせたものとしてもよい。弾性部材70は、例えば、所定の弾性を有する所定の厚さのシリコンシートを形成したものとしてもよい。
【0064】
図8は、支持部20に対して矢印Pの方向の力がかかっていない(又は当該力が非常に弱い)状態を示している。すなわち、
図8は、支持部20が被検部位側に(ほぼ)押圧されていない状態を示している。一方、
図9は、支持部20に対して矢印Pの方向の力がかかっている状態を示している。すなわち、
図9は、支持部20が被検部位側に押圧されている状態を示している。このような押圧力によって弾性部材70は変形するため、
図9に示す弾性部材70のZ軸方向の長さは、
図8に示す弾性部材70のZ軸方向の長さよりも短くなっている。上述のように、
図8又は
図9に示す矢印Pの方向の力は、台座部80又は支持部20が被検者などによって水平面100に押圧(固定)されることにより生じる力としてよい。また、
図8又は
図9に示す矢印Pの方向の力は、被検者が被検部位を電子機器1(の筐体10又は第1当接部11若しくは第2当接部12など)に押圧させる力の反作用としてもよい。
【0065】
図8に示す例では、電子機器1は、筐体10と支持部20とが所定以上の長さの距離に変位しないように、ストッパ機構を備えている。すなわち、
図8に示す電子機器1は、図に示す矢印Pの方向に押圧されていない状態においても、筐体10が支持部20から外れたり脱落したりしないような機構を備えている。
図8は、弾性部材70の復元力がある程度維持されたまま、筐体10と支持部20との距離が固定された状態を示している。この状況においては、筐体10と支持部20との距離は、それ以上の長さの距離に変位しないようになっている。
【0066】
一方、
図8に示す状況において、図に示す矢印Pの方向に押圧力が加わると、
図9に示すように、弾性部材70が縮む方向に変形する。
図9に示す状況において、筐体10の突出部14は、支持部20の受け部26に到達して接している。この状態よりも図に示す矢印Pの方向の押圧力を弱めると、弾性部材70が幾分縮んだまま、筐体10の突出部14が支持部20の受け部26に接しない状態を実現できる。このような状態においては、筐体10は、弾性部材70を介して接続される支持部20に対してある程度自由に変位することができる。したがって、電子機器1は、被検者の被検部位における脈動を良好に検出することができる。
【0067】
図8及び
図9においては、弾性部材70が圧縮コイルばねのようなスプリングであるとした。しかしながら、上述のように、例えば弾性部材70を所定の厚さのシリコンシードなどで構成してもよい。この場合、筐体10及び支持部20と、弾性部材70とは、接着剤又は両面テープなどで接着してもよい。ここで、弾性部材70と他の部材との接着は、弾性部材70の変形に与える影響が少なくなるようにしてよい。すなわち、弾性部材70と他の部材とを接着したとしても、弾性部材70は適度に変形することができるように構成してよい。
【0068】
このように、一実施形態に係る電子機器1は、筐体10と、支持部20と、センサ50と、弾性部材70と、台座部80とを備える。筐体10は、少なくとも一部にセンサ50を含む。センサ50は、被検者の被検部位における脈動を検出可能に構成される。支持部20は、筐体10を支持部20の側方に支持するように構成される。弾性部材70は、筐体10と支持部20との間に介在する。また、台座部80は、支持部20を起立させるように構成される。台座部80は、電子機器1が水平面において自立するように、支持部20を起立させてもよい。
【0069】
図8及び
図9に示すように、電子機器1の支持部20が台座部80によって起立している状態において、筐体10の第1当接部11は、被検者の被検部位、すなわち被検者の橈骨動脈上の皮膚に接触し得る。また、
図8及び
図9に示すように、筐体10は、支持部20の側方に支持される。そして、台座部80又は支持部20が被検者などによって水平面100に押圧されると、台座部80及び支持部20の水平面100における位置は固定される。この状態において、被検者が被検部位を筐体10(又は第1当接部11若しくは第2当接部12など)に押し付けると、台座部80及び支持部20は、被検部位側すなわち矢印Pの方向に力の反作用を生じる。さらに、矢印Pの方向に力がかかる支持部20と、センサ50を含む筐体10との間に配置される弾性体140の弾性力により、(筐体10及び第1当接部11とともに)センサ50は、被検者の被検部位側に付勢される。また、弾性部材70の弾性力により付勢される第1当接部11は、被検者の橈骨動脈上の皮膚に接触している。この場合、第1当接部11は、被検者の橈骨動脈の動き、すなわち脈動に応じて変位する。このため、第1当接部11に連動するセンサ50も、被検者の橈骨動脈の動きすなわち脈動に応じて変位する。例えば、
図8及び
図9に示すように、支持部20に矢印Pの方向の力がかかっている状態で、筐体10は、軸Sを中心として、矢印DU又は矢印DLに示すような方向に変位することができる。ここで、軸Sは、筐体10の第2当接部12が被検者の手首に接する部分としてよい。
【0070】
本実施形態において、第1当接部11に連動するセンサ50は、弾性部材70を介して支持部20に結合されている。このため、センサ50は、弾性部材70の柔軟性によって、ある程度自由な可動域を与えられる。また、弾性部材70の柔軟性によって、センサ50の動きは妨げられにくくなる。さらに、弾性部材70は、適度な弾性を有することにより、被検者の被検部位における脈動に追従して変形する。したがって、本実施形態に係る電子機器1において、センサ50は、被検者の被検部位における脈動を敏感に検出することができる。さらに、本実施形態に係る電子機器1は、脈波に追従して変位することで、被検者のうっ血を無くし、苦痛を無くすことができる。このように、本実施形態では、弾性部材70は、被検者の被検部位における脈動に応じて変形可能であるようにしてよい。また、弾性部材70は、センサ50が被検者の被検部位における脈動を検出可能な程度に弾性変形するようにしてもよい。
【0071】
以上説明したように、一実施形態に係る電子機器1は、小型かつ軽量な測定機器として機能し得る。一実施形態に係る電子機器1は、携帯性に優れるのみならず、被検者の生体情報を極めて簡単に測定することができる。また、一実施形態に係る電子機器1は、測定前などにおいて、自立した姿勢を維持することができる。このため、被検者は、被検部位を第1当接部11に当接させる際に、容易に位置決めすることができる。また、一実施形態に係る電子機器1によれば、測定中において、台座部80又は支持部20が下方に押圧されていればよい。このため、被検者は、測定中において、台座部80又は支持部20を押圧する力の微調整を行う必要はない。したがって、一実施形態に係る電子機器1は、被検者の生体情報を比較的安定して測定することができる。さらに、一実施形態に係る電子機器1は、他の外部機器などと連携せずとも、電子機器1の単独で生体情報を測定することができる。また、この場合、他のケーブルなどのような付属物を形態する必要もない。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、利便性を高めることができる。
【0072】
一実施形態において、電子機器1は、筐体10と支持部20との間にストッパのような機構を備えてもよい。
図8及び
図9においては、例として、筐体10が突出部14を備え、支持部20が受け部26を備える構成を示してある。すなわち、筐体10は、支持部20に接続される接続部の一部において、突出部14を備えている。また、支持部20は、筐体10の接続部が挿入される開口部の一部において、突出部14を受け得る受け部26を備えている。以下、突出部14及び受け部26をまとめて、「ストッパ(14,26)」とも記す。
【0073】
図8及び
図9に示すように、筐体10と支持部20とが接続される筐体10の挿入部及び支持部20の開口部の一部のみにおいて、ストッパ(14,26)が形成される。例えば、
図8及び
図9に示す例では、筐体10と支持部20とが接続される部分の下端にのみストッパ(14,26)が形成されている。一方、筐体10と支持部20とが接続される部分の上端などにはストッパ(14,26)が形成されていない。一実施形態において、筐体10と支持部20とが接続される部分の上端のみならず、筐体10と支持部20とが接続される部分の下端以外の部分には、ストッパ(14,26)が形成されなくてもよい。
【0074】
上述のように、一部分にのみストッパ(14,26)を備えることにより、被検者が被検部位を支持部20に比較的強めに押圧した場合であっても、支持部20に対する筐体10の動きが抑制されにくくなる。例えば、
図8に示す状況では、被検者が被検部位を支持部20に強めに押圧していないため、突出部14と受け部26とは当接していない。一方、
図9に示す状況では、被検者が被検部位を支持部20に強めに押圧している。このため、弾性部材70の変形により筐体10が支持部20に対して変位した結果、突出部14と受け部26とが当接している。このような場合であっても、筐体10と支持部20とは、突出部14と受け部26とが当接している部分以外の部分においては当接していない。このため、支持部20に対する筐体10の動きとして、図に示す矢印DLのような動きは幾分抑制されたとしても、図に示す矢印ULのような動きはほとんど抑制されない。したがって、被検者が被検部位を支持部20に比較的強めに押圧した場合であっても、支持部20に対する筐体10の動きが抑制されにくくなる。
【0075】
図8及び
図9においては、筐体10が突出部14を備え、支持部20が受け部26を備える構成を示したが、これらを逆にする構成としてもよい。すなわち、一実施形態において、筐体10が受け部26を備え、支持部20が突出部14を備える構成としてもよい。
【0076】
このように、一実施形態に係る電子機器1は、ストッパ(14,26)を備えてもよい。ストッパ(14,26)は、突出部14と、受け部26と、を備えてよい。突出部14は、筐体10及び支持部20の一方側に形成されてもよい。受け部26は、筐体10及び支持部20の他方側に形成されてもよい。そして、ストッパ(14,26)において、受け部26は、突出部14を受け得るように構成されてもよい。また、一実施形態において、ストッパ(14,26)は、弾性部材70の変形により筐体10が支持部20に対して変位する際に、筐体10が支持部20に部分的に当接し得るように構成されてもよい。
【0077】
本実施形態において、センサ50は、例えば、ジャイロセンサ(ジャイロスコープ)のような、物体の角度(傾き)、角速度、及び角加速度の少なくともいずれかを、複数の軸について検出するセンサとしてもよい。この場合、センサ50は、被検者の被検部位における脈動に基づく複雑な動きを、複数の軸についてのそれぞれのパラメータとして検出することができる。また、センサ50は、3軸のジャイロセンサと3軸の加速度センサとを組み合わせた6軸センサとしてもよい。
【0078】
図10は、電子機器1の使用態様の一例を示す図である。
図10は、
図1に示した状況が別の視点から見られた様子を拡大して示す図である。
【0079】
例えば、
図10に示すように、電子機器1の筐体10に内蔵されたセンサ50は、α軸、β軸、及びγ軸の3軸のそれぞれを中心とする回転運動を検出してよい。α軸は、例えば、被検者の橈骨動脈にほぼ直交する方向に沿う軸としてよい。また、β軸は、例えば、被検者の橈骨動脈にほぼ平行な方向に沿う軸としてよい。また、γ軸は、例えば、α軸及びβ軸の双方にほぼ直交する方向に沿う軸としてよい。
【0080】
このように、本実施形態では、センサ50は、被検者の被検部位における脈動を、所定の軸を中心とする回転運動の一部として検出してもよい。また、センサ50は、被検者の被検部位における脈動を、少なくとも2軸の回転運動として検出してもよく、3軸の回転運動として検出してもよい。本開示において、「回転運動」とは、必ずしも円の軌道上を1周以上変位するような運動でなくてもよい。例えば、本開示において、回転運動とは、例えば円の軌道上における1周に満たない部分的な変位(例えば弧に沿うような変位)としてもよい。
【0081】
図10に示すように、本実施形態に係る電子機器1は、例えば3軸のそれぞれを中心とする回転運動を、センサ50によって検出することができる。したがって、本実施形態に係る電子機器1は、センサ50によって検出された複数の結果を合算するなどして合成することにより、被検者の脈波の検出感度を高めることができる。このような合算などの演算は、例えば制御部52によって行ってもよい。この場合、制御部52は、センサ50が検出した脈動に基づく脈波の指標を算出してよい。
【0082】
例えば、
図10に示す例において、α軸及びβ軸を中心とするセンサ50の回転運動に基づく信号強度の時間変化は、それぞれ被検者の脈波に基づく顕著なピークを有している。このため、制御部52は、例えばα軸、β軸、及びγ軸についての検出結果をそれぞれ合算することにより、被検者の脈波の検出精度を高めることができる。したがって、本実施形態に係る電子機器1によれば、被検者が脈波を測定する際の有用性を向上することができる。
【0083】
一実施形態において、電子機器1の制御部52は、センサ50が検出した脈動に基づく脈波の指標を算出してもよい。この場合、制御部52は、センサ50が少なくとも2軸の回転運動(例えば3軸の回転運動)として検出した結果を合成(例えば合算)してもよい。本実施形態に係る電子機器1によれば、複数の方向の脈波信号を検出することができる。このため、本実施形態に係る電子機器1によれば、複数の軸についての検出結果を合成することで、1つの軸についての検出結果に比べて、信号強度が高まる。したがって、本実施形態に係る電子機器1によれば、SN比の良好な信号を検出することができ、検出感度を高めることができ、安定した測定が可能となる。
【0084】
また、
図10に示したγ軸についての検出結果において、被検者の脈波に基づくピークは、他のα軸又はβ軸についての検出結果に比べて顕著に現れないことも想定される。このように、γ軸についての検出結果のように信号レベルが低い検出結果を、他の軸についての検出結果に合算すると、SN比が低下することもあり得る。また、信号レベルが低い検出結果は、ほとんどがノイズ成分と見なせる場合もある。このような場合、信号レベルが低い検出結果は、良好な脈波成分を含んでいないこともある。そこで、本実施形態において、制御部52は、複数の軸についての検出結果のうち、検出結果が所定の閾値に満たない軸がある場合、その軸の検出結果を合算しなくてもよい。
【0085】
例えば、ある被検者の脈動を、α軸、β軸、及びγ軸のそれぞれを中心とする回転運動として、センサ50によって検出した場合を想定する。この結果として、α軸、β軸、γ軸についての検出結果におけるピーク値は、それぞれ所定の閾値を超えているものとする。このような場合、制御部52は、α軸についての検出結果、β軸についての検出結果、及びγ軸についての検出結果の全てを合算したものを、センサ50が検出した脈動に基づく脈波の指標として算出してもよい。
【0086】
一方、例えば、ある被検者の脈動を検出した結果として、α軸及びβ軸についての検出結果におけるピーク値は、それぞれ所定の閾値を超えているものとする。しかしながら、γ軸についての検出結果におけるピーク値は、所定の閾値を超えていないものとする。このような場合、制御部52は、α軸についての検出結果及びβ軸についての検出結果のみを合算したものを、センサ50が検出した脈動に基づく脈波の指標として算出してもよい。
【0087】
このような処理を行う場合、制御部52は、各軸についての検出結果を合算に含むか否かの基準となる閾値は、それぞれの軸について別個に設定してもよいし、それぞれの軸について同じものを決定してもよい。いずれの場合も、各軸についての検出結果において、被検者の脈動がそれぞれ適切に検出されるような閾値を、適宜設定してよい。
【0088】
このように、本実施形態に係る電子機器1において、制御部52は、センサ50が少なくとも2軸の回転運動として検出した結果のうち、所定の閾値以上の成分を有するもののみを合成してもよい。このため、本実施形態に係る電子機器1によれば、検出結果のSN比の低下を抑制することができる。したがって、本実施形態に係る電子機器1によれば、被検者が脈波を測定する際の有用性を向上することができる。
【0089】
また、上述のように、複数の軸についての検出結果を合算する際に、それぞれの軸についての検出結果を単にこのまま合算すると、不都合が生じることも想定される。これは、被検者の脈動の向きと、センサ50との位置関係によって、センサ50による検出される結果の極性が整合しないことに起因すると想定される。例えば、センサ50を用いて被検者の右手の脈動を検出した場合と、左手の脈動を検出した場合とで、ある軸についての検出結果の極性が逆転することも想定される。
【0090】
例えば、被検者の脈動を検出した場合、ある軸についての検出結果において、ほぼ周期的に上向きのピークが検出されるとする。しかしながら、同時に、他の軸についての検出結果において、逆に、ほぼ周期的に下向きのピークが検出されることも想定される。このように、複数の軸についての検出結果において極性が逆転する場合、このまま単に合算すると、ピークが打ち消し合って良好な結果が得られないことも想定される。
【0091】
そこで、本実施形態において、制御部52は、複数の軸についての検出結果において極性が逆転する場合、少なくとも1つの軸についての検出結果の極性を反転させてから、他の軸についての検出結果と合算してもよい。例えば、制御部52は、2つの軸についての検出結果において極性が逆転する場合、一方の軸についての検出結果の極性を他方の軸に合わせて反転させてよい。
【0092】
このように、本実施形態に係る電子機器1において、制御部52は、センサ50が少なくとも2軸の回転運動として検出した結果を、それぞれの極性が揃うようにしてから合成してもよい。本実施形態に係る電子機器1によれば、被検者の脈波の検出精度を高めることができる。したがって、本実施形態に係る電子機器1によれば、被検者が脈波を測定する際の有用性を向上することができる。
【0093】
上述のように、少なくとも1つの軸についての検出結果の極性を反転させることにより、複数の軸についての検出結果の極性を揃える処理を行う場合、それぞれの検出結果における極性の向きを判定する必要がある。このような極性の向きの判定は、種々の手法で行うことができる。例えば、制御部52は、各軸についての検出結果のピークが信号強度の正方向側に向いているか、又は負方向側に向いているかを判定してもよい。また、例えば制御部52は、各軸についての検出結果のピークが、信号の平均値よりも大きいか小さいかを判定してもよい。また、少なくとも1つの軸についての検出結果の極性を反転させる際には、制御部52は、極性を反転させる検出結果にマイナス1を乗算してもよい。
【0094】
さらに、制御部52は、上述のように検出結果の極性を適宜反転させた後、当該検出結果の全体に所定値を加減してから、他の軸についての検出結果に合算してもよい。また、制御部52は、複数の軸についての検出結果を合算する前に、それぞれの軸についての検出結果に適宜重み付けなどをしたり、それぞれの軸についての検出結果を適宜補正したりしてもよい。
【0095】
図11は、電子機器1の概略構成を示す機能ブロック図である。
図11に示す電子機器1は、報知部40と、スイッチ13と、センサ50と、制御部52と、記憶部54と、通信部56と、バッテリ60とを備える。これらの機能部については既に説明したとおりである。
【0096】
図12は、電子機器1を用いて手首で取得された脈波の一例を示す図である。
図12は、脈動を検知するセンサ50として、角速度センサを用いた場合について示してある。
図12は、角速度センサで取得された角速度を時間積分したものであり、横軸は時間、縦軸は角度を表す。取得された脈波は、例えば被検者の体動が原因のノイズを含む場合があるので、DC(Direct Current)成分を除去するフィルタによる補正を行い、脈動成分のみを抽出してもよい。
【0097】
取得された脈波から、脈波に基づく指標を算出する方法を、
図12を用いて説明する。脈波の伝播は、心臓から押し出された血液による拍動が、動脈の壁又は血液を伝わる現象である。心臓から押し出された血液による拍動は、前進波として手足の末梢まで届き、その一部は血管の分岐部、血管径の変化部等で反射され反射波として戻ってくる。脈波に基づく指標は、例えば、前進波の脈波伝播速度PWV(Pulse Wave Velocity)、脈波の反射波の大きさP
R、脈波の前進波と反射波との時間差Δt、脈波の前進波と反射波との大きさの比で表されるAI(Augmentation Index)等である。
【0098】
図12に示す脈波は、利用者のn回分の脈拍であり、nは1以上の整数である。脈波は、心臓からの血液の駆出により生じた前進波と、血管分岐又は血管径の変化部から生じた反射波とが重なりあった合成波である。
図12において、脈拍毎の前進波による脈波のピークの大きさをP
Fn、脈拍毎の反射波による脈波のピークの大きさをP
Rn、脈拍毎の脈波の最小値をP
Snで示す。また、
図12において、脈拍のピークの間隔をT
PRで示す。
【0099】
脈波に基づく指標とは、脈波から得られる情報を定量化したものである。例えば、脈波に基づく指標の一つであるPWVは、上腕と足首等、2点の被検部位で測定された脈波の伝播時間差と2点間の距離とに基づいて算出される。具体的には、PWVは、動脈の2点における脈波(例えば上腕と足首)を同期させて取得し、2点の距離の差(L)を2点の脈波の時間差(PTT)で除して算出される。例えば、脈波に基づく指標の一つである反射波の大きさPRは、反射波による脈波のピークの大きさPRnを算出してもよいし、n回分を平均化したPRaveを算出してもよい。例えば、脈波に基づく指標の一つである脈波の前進波と反射波との時間差Δtは、所定の脈拍における時間差Δtnを算出してもよいし、n回分の時間差を平均化したΔtaveを算出してもよい。例えば、脈波に基づく指標の一つであるAIは、反射波の大きさを前進波の大きさで除したものであり、AIn=(PRn-PSn)/(PFn-PSn)で表わされる。AInは脈拍毎のAIである。AIは、例えば、脈波の測定を数秒間行い、脈拍毎のAIn(n=1~nの整数)の平均値AIaveを算出し、脈波に基づく指標としてもよい。
【0100】
脈波伝播速度PWV、反射波の大きさPR、前進波と反射波との時間差Δt、及びAIは、血管壁の硬さに依存して変化するため、動脈硬化の状態の推定に用いることができる。例えば、血管壁が硬いと、脈波伝播速度PWVは大きくなる。例えば、血管壁が硬いと、反射波の大きさPRは大きくなる。例えば、血管壁が硬いと、前進波と反射波との時間差Δtは小さくなる。例えば、血管壁が硬いと、AIは大きくなる。さらに、電子機器1は、これらの脈波に基づく指標を用いて、動脈硬化の状態を推定できると共に、血液の流動性(粘性)を推定することができる。特に、電子機器1は、同一被検者の同一被検部位、及び動脈硬化の状態がほぼ変化しない期間(例えば数日間内)において取得された脈波に基づく指標の変化から、血液の流動性の変化を推定することができる。ここで血液の流動性とは、血液の流れやすさを示し、例えば、血液の流動性が低いと、脈波伝播速度PWVは小さくなる。例えば、血液の流動性が低いと、反射波の大きさPRは小さくなる。例えば、血液の流動性が低いと、前進波と反射波との時間差Δtは大きくなる。例えば、血液の流動性が低いと、AIは小さくなる。
【0101】
本実施形態では、脈波に基づく指標の一例として、電子機器1が、脈波伝播速度PWV、反射波の大きさPR、前進波と反射波との時間差Δt、及びAIを算出する例を示したが、脈波に基づく指標はこれに限ることはない。例えば、電子機器1は、脈波に基づく指標として、後方収縮期血圧を用いてもよい。
【0102】
図13は、算出されたAIの時間変動を示す図である。本実施の形態では、脈波は、角速度センサを備えた電子機器1を用いて約5秒間取得された。制御部52は、取得された脈波から脈拍毎のAIを算出し、さらにこれらの平均値AI
aveを算出した。本実施の形態では、電子機器1は、食事前及び食事後の複数のタイミングで脈波を取得し、取得された脈波に基づく指標の一例としてAIの平均値(以降AIとする)を算出した。
図13の横軸は、食事後の最初の測定時間を0として、時間の経過を示す。
図13の縦軸は、その時間に取得された脈波から算出されたAIを示す。被検者は安静の状態で、脈波は橈骨動脈上で取得された。
【0103】
電子機器1は、食事前、食事直後、及び食事後30分毎に脈波を取得し、それぞれの脈波に基づいて複数のAIを算出した。食事前に取得された脈波から算出されたAIは約0.8であった。食事前に比較して、食事直後のAIは小さくなり、食事後約1時間でAIは最小の極値となった。食事後3時間で測定を終了するまで、AIは徐々に大きくなった。
【0104】
電子機器1は、算出されたAIの変化から、血液の流動性の変化を推定することができる。例えば血液中の赤血球、白血球、血小板が団子状に固まる、又は粘着力が大きくなると、血液の流動性は低くなる。例えば、血液中の血漿の含水率が小さくなると、血液の流動性は低くなる。これらの血液の流動性の変化は、例えば、後述する糖脂質状態、又は熱中症、脱水症、低体温等の被検者の健康状態によって変化する。被検者の健康状態が重篤化する前に、被検者は、本実施の形態の電子機器1を用いて、自らの血液の流動性の変化を知ることができる。
図13に示す食事前後のAIの変化から、食事後に血液の流動性は低くなり、食事後約1時間で最も血液の流動性は低くなり、その後徐々に血液の流動性が高くなったことが推定できる。電子機器1は、血液の流動性が低い状態を「どろどろ」、血液の流動性が高い状態を「さらさら」と表現して報知してもよい。例えば、電子機器1は、「どろどろ」「さらさら」の判定を、被検者の実年齢におけるAIの平均値を基準にして行ってもよい。電子機器1は、算出されたAIが平均値より大きければ「さらさら」、算出されたAIが平均値より小さければ「どろどろ」と判定してもよい。電子機器1は、例えば、「どろどろ」「さらさら」の判定は、食事前のAIを基準にして判定してもよい。電子機器1は、食事後のAIを食事前のAIと比較して「どろどろ」度合いを推定してもよい。電子機器1は、例えば、食事前のAIすなわち空腹時のAIとして、被検者の血管年齢(血管の硬さ)の指標として用いることができる。電子機器1は、例えば、被検者の食事前のAIすなわち空腹時のAIを基準として、算出されたAIの変化量を算出すれば、被検者の血管年齢(血管の硬さ)による推定誤差を少なくすることができるので、血液の流動性の変化をより精度よく推定することができる。
【0105】
図14は、算出されたAIと血糖値の測定結果を示す図である。脈波の取得方法及びAIの算出方法は、
図13に示した実施の形態と同じである。
図14の右縦軸は血中の血糖値を示し、左縦軸は算出されたAIを示す。
図14の実線は、取得された脈波から算出されたAIを示し、点線は測定された血糖値を示す。血糖値は、脈波取得直後に測定された。血糖値は、テルモ社製の血糖測定器「メディセーフフィット」を用いて測定された。食事前の血糖値と比べて、食事直後の血糖値は約20mg/dl上昇している。食事後約1時間で血糖値は最大の極値となった。その後、測定を終了するまで、血糖値は徐々に小さくなり、食事後約3時間でほぼ食事前の血糖値と同じになった。
【0106】
図14に示す通り、食前食後の血糖値は、脈波から算出されたAIと負の相関がある。血糖値が高くなると、血液中の糖により赤血球及び血小板が団子状に固まり、又は粘着力が強くなり、その結果血液の流動性は低くなることがある。血液の流動性が低くなると、脈波伝播速度PWVは小さくなることがある。脈波伝播速度PWVが小さくなると、前進波と反射波との時間差Δtは大きくなることがある。前進波と反射波との時間差Δtが大きくなると、前進波の大きさP
Fに対して反射波の大きさP
Rは小さくなることがある。前進波の大きさP
Fに対して反射波の大きさP
Rが小さくなると、AIは小さくなることがある。食事後数時間内(本実施の形態では3時間)のAIは、血糖値と相関があることから、AIの変動により、被検者の血糖値の変動を推定することができる。また、あらかじめ被検者の血糖値を測定し、AIとの相関を取得しておけば、電子機器1は、算出されたAIから被検者の血糖値を推定することができる。
【0107】
食事後に最初に検出されるAIの最小極値であるAIPの発生時間に基づいて、電子機器1は被検者の糖代謝の状態を推定できる。電子機器1は、糖代謝の状態として、例えば血糖値を推定する。糖代謝の状態の推定例として、例えば食事後に最初に検出されるAIの最小極値AIPが所定時間以上(例えば食後約1.5時間以上)経ってから検出される場合、電子機器1は、被検者が糖代謝異常(糖尿病患者)であると推定できる。
【0108】
食事前のAIであるAIBと、食事後に最初に検出されるAIの最小極値であるAIPとの差(AIB-AIP)に基づいて、電子機器1は被検者の糖代謝の状態を推定できる。糖代謝の状態の推定例として、例えば(AIB-AIP)が所定数値以上(例えば0.5以上)の場合、被検者は糖代謝異常(食後高血糖患者)であると推定できる。
【0109】
図15は、算出されたAIと血糖値との関係を示す図である。算出されたAIと血糖値とは、血糖値の変動が大きい食事後1時間以内に取得されたものである。
図15のデータは、同一被検者における異なる複数の食事後のデータを含む。
図15に示す通り、算出されたAIと血糖値とは負の相関を示した。算出されたAIと血糖値との相関係数は0.9以上であり、非常に高い相関を示した。例えば、
図15に示すような算出されたAIと血糖値との相関を、あらかじめ被検者毎に取得しておけば、電子機器1は、算出されたAIから被検者の血糖値を推定することもできる。
【0110】
次に、一実施形態に係る電子機器1による、被験者の血圧値(及び血糖値)の推定について説明する。
【0111】
脈波の特徴量から血圧値を推定する方法は、既に提案されている(例えば、上述の特許文献1参照)。ここで、被験者が食事を摂取すると、血圧が変動してしまう。食事が血圧変動に与える影響は比較的大きい。このため、食事の影響を考慮した上で、脈波の特徴量から血圧値を推定する方法が望まれている。また、被験者の血圧値を測定する際に、従来型のカフを使うカフ式血圧計がある。一方、上述の電子機器1によれば、カフを用いずに(カフレス式)検出した被験者の脈波から、被験者の血圧値を推定することもできる。以下、上述の電子機器1によって、カフを用いずに検出した被験者の脈波から、被験者の食事の影響も考慮して血圧値(及び血糖値)を推定する方法について、さらに説明する。
【0112】
電子機器1による被験者の血圧値(及び血糖値)の推定は、主として次の2つのフェーズに分けることができる。
(1)学習モデル生成フェーズ:被検者の血圧値(及び血糖値)の推定に用いられる学習モデル(推定式)を、例えばAI(Artificial Intelligence)を用いた機械学習などによって生成するフェーズ
(2)被験者の血圧値(及び血糖値)推定フェーズ:(1)において生成された学習モデル(推定式)を用いて、電子機器1によって取得された脈波に基づいて被験者の血圧値(及び血糖値)推定するフェーズ
以下、これらのフェーズについて、より詳細に説明する。
【0113】
まず、上記(1)学習モデル生成フェーズにおいて、被験者の食事の影響も考慮した学習モデル(推定式)を生成するために、人間の第1時点の脈波の指標及び第2時点の脈波の指標を示すデータを収集してよい。
【0114】
本明細書において、第1時点とは、食事の所定時間前又は所定時間以前としてもよい。所定時間は、適宜設定することができる。例えば、第1時点とは、食事の1時間前、3時間前、6時間前などでもよい。また、例えば、第1時点とは、食事の1時間以前、3時間以前、6時間以前などでもよい。また、本明細書において、第1時点とは、例えば直近の食事から所定時間後又は所定時間以降などとしてもよい。所定時間は、適宜設定することができる。また、例えば、第1時点とは、食事の1時間後、3時間後、6時間後などでもよい。また、例えば、第1時点とは、食事の1時間以降、3時間以降、6時間以降などでもよい。また、本明細書において、第1時点とは、例えば健康診断時など特定の機会を指定してもよい。また、本明細書において、第1時点とは、例えば、空腹時又は被験者が空腹感を認識した時点などとしてもよい。
【0115】
本明細書において、第2時点とは、食後でもよい。特に、本明細書において、第2時点とは、直近の食事から所定時間後又は所定時間以降などとしてもよい。例えば、第2時点とは、食事の1時間後、3時間後、6時間後などでもよい。また、例えば、第2時点とは、食事の1時間以降、3時間以降、6時間以降などとしてもよい。
【0116】
一実施形態において、第1時点及び/又は第2時点は、上述の例に限定されず、例えばユーザ等が適宜設定してもよい。以下、例として、人間の空腹時の脈波の指標及び食後の脈波の指標を示すデータを収集する形態について説明する。すなわち、上記(1)学習モデル生成フェーズにおいて、食事負荷試験を行ってよい。上記(1)学習モデル生成フェーズにおいて収集するデータは、次の3つのパターンに基づくものとしてよい。
第1パターン:食前の脈波の実測値、及び空腹時の血糖値の実測値、並びに、食後の脈波の実測値
第2パターン:食前の脈波の実測値、及び空腹時の血圧値実測値、並びに、食後の脈波の実測値
第3パターン:食前の脈波の実測値、及び、食後の脈波の実測値
上述のパターンは、それぞれ適宜組み合わせて用いてもよい。また、食前又は食後の脈波は、脈拍数としてもよいし、後述の脈波増大係数(A index)としてもよい。
【0117】
上述した実測値を収集する際、脈波については電子機器1によって測定してよい。また、上述した実測値を収集する際、血圧値については任意の血圧計によって測定してよい。また、上述した実測値を収集する際、血糖値については任意の血糖計によって測定してもよいし、例えば健康診断時の測定データなどのような既知のデータを用いてもよい。
【0118】
出願人は、被験者の血圧値(及び血糖値)を推定する実証実験を行った。ここで、食事負荷試験における食事として、朝食を採用した。すなわち、食事負荷試験を行う者は、朝食は摂取せずに、さらに薬も服用しないようにして、午前9:30から午後12:30まで測定を行った。この実証実験においては、まず電子機器1によって脈波を測定し、次に血糖計によって指先の血糖値を測定した。この測定の終了後、食事負荷試験を行う者は、テストミールとして、炭水化物86g、脂質18g、及びタンパク質30gによって構成されるカロリー623kcalの食事を摂取し、その1時間後に同じ項目の測定を行った。脈波の測定は、被検者数を60人として、食事の前後に各2回行い、血糖値の測定は食事の前後に各1回行った。このため、脈波のデータ数は、被検者数を60人として、4×60=240となり、血糖値のデータ数は2×60=120となった。当然、被験者数として、60以外の数値を用いてもよい。
【0119】
次に、電子機器1(のセンサ50)によって取得(検出)される脈波の指標を定義する。出願人は、末梢動脈の脈波形状が食事の影響を受けて、血管内の反射波の指標である脈波増大係数(A index)が変化することに着目した。A indexとは、脈波の前進波の大きさと反射波の大きさとの比を表す指標である。一実施形態に係る電子機器1は、A indexと血糖値の回帰分析を行ってよい。この場合、回帰分析は、AI(Artificial Intelligence)学習の手法のアンサンブル学習としてよい。電子機器1によって取得(検出)される脈波の指標として、次のように3つのA indexを定義する。
【0120】
図16は、
図12と同様に、例えば電子機器1によって検出された脈波の例を示す図である。
図16は、
図12に示した脈波の1周期ぶんのみを示している。例えば、
図16において、P1/P0によって表されるA indexを、第1の脈波増大係数AI1と定義する。また、
図16において、P2/P0によって表されるA indexを、第2の脈波増大係数AI2と定義する。さらに、
図16において、P3/P0によって表されるA indexを、第3の脈波増大係数AI3と定義する。
図16において、P0は、1つの脈波のピークの値を示す。また、P1は、1つの脈波のピーク、すなわち、P0のピーク時間(ピークのタイミング)から100ミリ秒経過後の値を示す。また、P2は、1つの脈波の反射波のピークの値を示す。さらに、P3は、1つの脈波のピーク、すなわち、P0のピーク時間(ピークのタイミング)から120ミリ秒経過後の値を示す。
【0121】
上記(1)学習モデル生成フェーズにおいて、電子機器1は、少なくとも1人以上の人間の空腹時の脈波及び食後の脈波を取得してよい。より精度を向上させるために、電子機器1は、複数の人間の空腹時の脈波及び食後の脈波を取得してよい。出願人が行った実証実験においては、60人による食事負荷試験を行った。
【0122】
一実施形態に係る電子機器1は、上記(1)学習モデル生成フェーズにおいて、機械学習による回帰分析を行ってよい。被験者の血圧値の推定に用いられる学習モデルを生成する場合、すなわち目的変数を例えば血圧値とする場合、説明変数を、例えば被験者の情報として、被験者の年齢、空腹時のデータ、及び食後のデータなどとしてよい。ここで、被験者の情報には、被験者の性別は含めなくてもよい。また、空腹時のデータは、被験者の血糖値、脈拍数、上述の第1の脈波増大係数AI1、第2の脈波増大係数AI2、及び第3の脈波増大係数AI3としてよい。また、食後のデータは、被験者の脈拍数、上述の第1の脈波増大係数AI1、第2の脈波増大係数AI2、及び第3の脈波増大係数AI3としてよい。
【0123】
また、被験者の血糖値の推定に用いられる学習モデルを生成する場合、すなわち目的変数を例えば血糖値とする場合、説明変数を、例えば被験者の情報として、被験者の年齢、空腹時のデータ、及び食後のデータなどとしてよい。ここで、被験者の情報には、被験者の性別は含めなくてもよい。また、空腹時のデータは、被験者の血糖値、脈拍数、上述の第1の脈波増大係数AI1、第2の脈波増大係数AI2、及び第3の脈波増大係数AI3としてよい。また、食後のデータは、被験者の脈拍数、上述の第1の脈波増大係数AI1、第2の脈波増大係数AI2、及び第3の脈波増大係数AI3としてよい。
【0124】
以上のように、一実施形態に係る電子機器1は、同じ説明変数を用いて、被験者の血圧値の推定に用いられる学習モデルと、被験者の血糖値の推定に用いられる学習モデルとを生成することができる。したがって、一実施形態に係る電子機器1は、このような学習モデルを用いて、被験者の血圧値及び血糖値を同時に推定することもできる。
【0125】
次に、上記(2)被験者の血圧値(及び血糖値)推定フェーズについて説明する。上記(2)被験者の血圧値(及び血糖値)推定フェーズは、上記(1)において生成された学習モデル(推定式)を用いて、電子機器1によって取得された脈波に基づいて被験者の血圧値(及び血糖値)推定するフェーズである。
【0126】
図17乃至
図19は、一実施形態に係る電子機器1による血圧値の推定の例として、回帰分析の結果を示す図である。
図17乃至
図19において、横軸は人間の上腕において測定された血圧値(最高血圧)を示し、縦軸は推定された血圧値を示す。
【0127】
図17は、一実施形態に係る電子機器1によって、上述した第1パターンにおいて収集されたデータに基づいて生成した学習モデルを用いて、血圧値を推定した例を示す。すなわち、
図17は、説明変数として、空腹時の血糖値のデータを含む場合について示してある。
図17に示す例において、相関係数の平均は0.87と算出され、変動係数の平均は7.3と算出された。
【0128】
図18は、一実施形態に係る電子機器1によって、上述した第2パターンにおいて収集されたデータに基づいて生成した学習モデルを用いて、血圧値を推定した例を示す。すなわち、
図18は、説明変数として、空腹時の血糖値のデータを含まずに、空腹時の血圧値のデータを含む場合について示してある。
図18に示す例において、相関係数の平均は0.95と算出され、変動係数の平均は4.5と算出された。
【0129】
図19は、一実施形態に係る電子機器1によって、上述した第3パターンにおいて収集されたデータに基づいて生成した学習モデルを用いて、血圧値を推定した例を示す。すなわち、
図19は、説明変数として、空腹時の血糖値のデータを含まずに、空腹時の血圧値のデータも含まない場合について示してある。
図19に示す例において、相関係数の平均は0.80と算出され、変動係数の平均は8.9と算出された。
【0130】
従来、カフレス式の血圧計は、一般的に、食事の影響による血圧の変動に対応することはできない。しかしながら、一実施形態に係る電子機器1によれば、食事負荷試験を行うことにより学習モデル(推定式)を生成するため、食事の影響にも対応することができる。
【0131】
図20は、一実施形態に係る電子機器1による血糖値の推定の例として、回帰分析の結果を示す図である。
図20において、横軸は人間の指先において測定された血糖値を示し、縦軸は推定された血糖値を示す。
【0132】
図20は、一実施形態に係る電子機器1によって、上述した第1パターンにおいて収集されたデータに基づいて生成した学習モデルを用いて、血糖値を推定した例を示す。すなわち、
図20は、説明変数として、
図17と同様に、空腹時の血糖値のデータを含む場合について示してある。
図20に示す例において、相関係数の平均は0.95と算出され、変動係数の平均は12.4と算出された。
図20に示す例は、60人の人間(うち55人は糖尿病)のデータに基づくものである。
図20に示す例において、90%のデータは、推定誤差が±15%以内にとどまることが確認された。
【0133】
次に、一実施形態に係る電子機器1の動作について説明する。
【0134】
図21及び
図22は、一実施形態に係る電子機器1の動作を説明するフローチャートである。
図21は、上記(1)学習モデル生成フェーズにおける電子機器1の動作を説明するフローチャートである。
図22は、上記(2)被験者の血圧値(及び血糖値)推定フェーズにおける電子機器1の動作を説明するフローチャートである。
【0135】
図21に示す動作(学習モデル生成フェーズにおける動作)が開始すると、電子機器1の制御部52は、空腹時の脈波の指標、及び食後の脈波の指標のデータを取得(収集)する(ステップS11)。ここで、空腹時とは、典型的には、例えば食前の時点としてよい。制御部52は、ステップS11において取得されたデータを、例えば記憶部54などに蓄積してもよい。ステップS11において、制御部52は、上述のように、少なくとも1人以上の人間の空腹時の脈波及び食後の脈波を取得してよい。より精度を向上させるために、電子機器1は、複数の人間の空腹時の脈波及び食後の脈波を取得してよい。例えば、電子機器1は、出願人が行った実証実験(臨床試験)のように、60人による食事負荷試験を行ってもよい。また、ステップS11において、制御部52は、人間の脈波、血糖値、血圧値、及び年齢などのような説明変数から適当なものを選択して取得してもよい。この場合、目的変数は人間の血圧値としてよい。データを収集する母集団は、適宜、電子機器1の仕様の範囲(例えば血圧の測定範囲)で、偏りが少ない集団を選定してもよい。また、収集されるデータは、ガウス分布に基づくものとしてもよい。ここで、収集されるデータは、上記(2)被験者の血圧値(及び血糖値)推定フェーズにおいて血圧値(及び血糖値)が推定される被検者のデータを含んでもよいし、当該被験者とは別の人間のデータを含んでもよい。
【0136】
ステップS11において空腹時の脈波の指標、及び食後の脈波の指標のデータが取得(収集)されたら、制御部52は、機械学習による回帰分析を行う(ステップS12)。ステップS12において、制御部52は、例えばAI(Artificial Intelligence)による機械学習を行ってよい。また、ステップS12において、制御部52は、例えば、目的変数及び説明変数を決定してから、機械学習による回帰分析を行ってよい。ここで、目的変数は、例えば血圧値及び/又は血糖値としてよい。
【0137】
機械学習のアンサンブル学習として、例えば、バギング(Bagging)、ブースティング(Boosting)、及びスタッキング(Stacking)などのような手法が知られている。特に、ブースティングの手法において、XGBoostによる回帰分析が良く知られている。一実施形態に係る電子機器1において、例えばXGBoostによる回帰分析を行ってよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、他の手法に基づく機械学習を行ってもよい。このような機械学習の種々の手法は、適宜、既知のものを適用することができる。したがって、機械学習の手法については、より詳細な説明を省略する。
【0138】
ステップS12において回帰分析が行われたら、制御部52は、当該回帰分析の結果に基づいて、学習モデル(推定式)を生成する(ステップS13)。制御部52は、ステップS13において生成された学習モデルを、例えば記憶部54などに記憶してもよい。
【0139】
以上のようにして、一実施形態に係る電子機器1によって、機械学習による学習モデルが得られる。このようにして得られる学習モデルは、例えばその具体的な構造が明らかになっていなくても、ファイルとして出力されるものをそのまま用いてよい。
【0140】
このように、一実施形態に係る電子機器1は、被検者の血圧値の推定に用いられる学習モデル(推定式)を生成する。この場合、一実施形態に係る電子機器1は、人間の空腹時の脈波の指標及び食後の脈波の指標に基づいて、血圧値と前記血圧値に対応付けられた脈波との関係を示す学習モデル(推定式)を生成する。
【0141】
また、一実施形態に係る電子機器1は、被検者の血圧値及び血糖値の推定に用いられる学習モデル(推定式)を生成する。この場合、一実施形態に係る電子機器1は、人間の空腹時の脈波の指標及び食後の脈波の指標に基づいて、血圧値と前記血圧値に対応付けられた脈波との関係、及び、血糖値と前記血糖値に対応付けられた脈波との関係を示す学習モデル(推定式)を生成する。
【0142】
ここで、前記脈波の指標は、前記脈波の前進波の大きさと前記脈波の反射波の大きさとの比を示す指標としてもよい。また、前記学習モデルは、人間の空腹時の血圧値にも基づいて生成されてもよい。また、前記学習モデルは、人間の食後の血圧値にも基づいて生成されてもよい。また、前記学習モデルは、人間の空腹時の血糖値にも基づいて生成されてもよい。また、前記学習モデルは、人間の食後の血糖値にも基づいて生成されてもよい。また、前記学習モデルは、人間の食後の経過時間に応じて生成されてもよい。また、前記学習モデルは、人間の空腹時の状態か食後の状態かに応じて生成されてもよい。
【0143】
次に、
図22に示す動作(被験者の血圧値(及び血糖値)推定フェーズにおける動作)が開始すると、電子機器1の制御部52は、被検者の食前の脈波及び他のタイミングにおける脈波の指標を取得(検出)する(ステップS21)。ステップS21における他のタイミングとは、例えば食後の時点としてもよいし、その他の任意の時点としてもよい。ステップS21において、電子機器1は、センサ50から脈波の指標を取得してよい。また、ステップS21において、制御部52は、取得した脈波の指標を、例えば記憶部54などに記憶してもよい。
【0144】
ステップS21において脈波の指標が取得されたら、制御部52は、学習モデルを取得する(ステップS22)。ステップS22において、制御部52が取得する学習モデルは、
図21のステップS13において生成された学習モデルとしてよい。また、ステップS22において、制御部52は、記憶部に記憶された学習モデルを読み出してもよい。
【0145】
ステップS22において学習モデルが取得又は読み出しされたら、制御部52は、当該学習モデルを用いて、被験者の血圧値(及び血糖値)を推定する(ステップS23)。ステップS23において学習モデルを用いる際、制御部52は、上記(1)学習モデル生成フェーズにおける説明変数に対応する被験者の説明変数を用いてよい。以上のようにして、一実施形態に係る電子機器1によって、被験者の血圧値(及び血糖値)が良好な精度で推定される。
【0146】
このように、一実施形態に係る電子機器1は、被検者の血圧値を推定する。この場合、一実施形態に係る電子機器1は、センサ50によって取得された脈波の指標であって被検者の食前の脈波及び他のタイミングにおける脈波の指標に基づいて、前記被検者の血圧値を推定する。ここで、一実施形態に係る電子機器1は、人間の空腹時の脈波の指標及び食後の脈波の指標に基づいて生成された学習モデルであって、血圧値と前記血圧値に対応付けられた脈波との関係を示す学習モデルを用いて、前記被検者の血圧値を推定する。
【0147】
また、一実施形態に係る電子機器1は、被検者の血圧値及び血糖値を推定する。この場合、一実施形態に係る電子機器1は、センサ50によって取得された脈波の指標であって被検者の食前の脈波及び他のタイミングにおける脈波の指標に基づいて、前記被検者の血圧値及び血糖値を推定する。ここで、一実施形態に係る電子機器1は、人間の空腹時の脈波の指標及び食後の脈波の指標に基づいて生成された学習モデルであって、血圧値と前記血圧値に対応付けられた脈波との関係、及び、血糖値と前記血糖値に対応付けられた脈波との関係を示す学習モデルを用いて、前記被検者の血圧値及び血糖値を推定する。
【0148】
従来、脈波の特徴量を用いて血圧値を推定すると、良好な精度の推定を行うことが困難であった。例えば、被験者が食事をしてしまうと、血圧の推定値が変化してしまうという問題があった。また、脈波の特徴量は測定される個人による差が大きいため、比較的多くの人について同じアルゴリズムを適用すると、やはり推定の精度が担保できないという問題もあった。さらに、血糖値が高い人は血圧が高い傾向にあるなど、他の要因も影響するため、脈波の特徴量だけを用いて血圧値を推定すると、やはり推定の精度が担保できないという問題もあった。
【0149】
しかしながら、一実施形態に係る電子機器1は、食事の影響を考慮し、さらに血糖値の高い人でも良好な精度で血圧値(及び血糖値)を推定することができる。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、被検者の血圧を良好な精度で推定することができる。また、一実施形態に係る電子機器1は、カフレス式のセンサを用いて、被験者の血圧値(及び血糖値)を推定することができる。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、非観血的に被験者の血圧値(及び血糖値)を推定することができる。
【0150】
図25は、一実施形態に係るシステムの概略構成を示す模式図である。
図25に示したシステムは、電子機器1と、サーバ151と、携帯端末150と、通信ネットワークを含んで構成される。
図25に示したように、電子機器1で算出された脈波に基づく指標は、通信ネットワークを通じてサーバ151に送信され、被検者の個人情報としてサーバ151に保存される。サーバ151では、被検者の過去の取得情報、及び/又は様々なデータベースと比較することにより、被検者の血液の流動性並びに糖代謝及び脂質代謝の状態を推定する。サーバ151はさらに被検者に最適なアドバイスを作成する。サーバ151は、被検者が所有する携帯端末150に推定結果及びアドバイスなどを返信する。携帯端末150は受信した推定結果及びアドバイスなどを携帯端末150の表示部から報知する、というシステムを構築することができる。電子機器1の通信機能を利用することで、サーバ151には複数の利用者からの情報を収集することができるため、さらに推定の精度が上がる。また、携帯端末150を報知手段として用いるため、電子機器1は報知部40が不要となり、さらに小型化される。また、被検者の血液の流動性並びに糖代謝及び脂質代謝の状態の推定をサーバ151で行うために、電子機器1の制御部52の演算負担を軽減できる。また、被検者の過去の取得情報をサーバ151で保存できるために、電子機器1の記憶部54の負担を軽減できる。そのため、電子機器1はさらに小型化、簡略化が可能となる。また、演算の処理速度も向上する。
【0151】
本実施形態に係るシステムはサーバ151を介して、電子機器1と携帯端末150とを通信ネットワークで接続した構成を示したが、本発明に係るシステムはこれに限定されるものではない。サーバ151を用いずに、電子機器1と携帯端末150を直接通信ネットワークで接続して構成してもよい。
【0152】
このように、一実施形態に係る電子機器1は、センサ50と、通信部56と、を備えてよい。センサ50は、被検者の脈波を取得する。通信部56は、センサ50によって取得された脈波又は当該脈波の指標であって被検者の食前の脈波及び他のタイミングにおける脈波又は当該脈波の指標の情報を、他の電子機器(例えばサーバ151)に送信する。
【0153】
本開示を完全かつ明瞭に開示するために特徴的な実施例に関し記載してきた。しかし、添付の請求項は、上記実施形態に限定されるべきものでなく、本明細書に示した基礎的事項の範囲内で当該技術分野の当業者が創作しうるすべての変形例及び代替可能な構成を具現化するように構成されるべきである。
【0154】
例えば、上述の実施形態においては、センサ50として角速度センサを備える場合について説明したが、電子機器1の形態はこれに限ることはない。センサ50は、発光部と受光部を含む光学脈波センサを備えていてもよいし、圧力センサを備えていてもよい。また、電子機器1が生体情報を測定する被検部位は、被検者の手首に限らない。首、足首、太もも、耳等、動脈上にセンサ50が配置されていればよい。
【0155】
例えば、上述の実施形態においては、脈波に基づく指標の第1の極値及び第2の極値とこれらの時間とに基づいて、被検者の糖代謝及び脂質代謝の状態を推定したが、電子機器1が実行する処理はこれに限ることはない。一方の極値しか表れない場合、極値が表れない場合もあり、電子機器1は、算出された脈波に基づく指標の時間変動の全体傾向(例えば積分値、フーリエ変換等)に基づいて、被検者の糖代謝及び脂質代謝の状態を推定してもよい。また、電子機器1は、脈波に基づく指標の極値を抽出するのではなく、脈波に基づく指標が所定の値以下になった時間範囲に基づいて、被検者の糖代謝及び脂質代謝の状態を推定してもよい。
【0156】
例えば、上述の実施形態においては、食事前後の血液の流動性を推定する場合について説明したが、電子機器1が実行する処理はこれに限ることはない。電子機器1は、運動前後及び運動中の血液の流動性を推定してもよいし、入浴前後及び入浴中の血液の流動性を推定してもよい。
【0157】
上述の実施形態において、電子機器1が脈波を測定すると説明したが、脈波は必ずしも電子機器1により測定されなくてもよい。例えば、電子機器1は、コンピュータ又は携帯電話機等の情報処理装置と有線又は無線で接続され、センサ50で取得された角速度の情報を情報処理装置に送信してもよい。この場合、情報処理装置が、角速度の情報に基づいて脈波を測定してもよい。情報処理装置は、糖代謝及び脂質代謝の推定処理等を実行してもよい。各種情報処理を電子機器1に接続された情報処理装置が実行する場合、電子機器1は、制御部52、記憶部54、報知部40等を備えていなくてもよい。また、電子機器1が有線により情報処理装置に接続されている場合、電子機器1は、バッテリ60を有さず、情報処理装置から電力が供給されてもよい。
【0158】
また、電子機器1の制御部52は、脈波の指標から、糖脂質代謝、血糖値及び脂質値のうちの少なくともいずれか1つを推定するとしてよい。また、電子機器1は、被検者のダイエットの進行状況を監視するダイエットモニタ、若しくは、被検者の血糖値を監視する血糖計として機能してもよい。
【0159】
以下、本開示の観点について、付記する。
[付記1]
被検者の血圧値の推定に用いられる学習モデルを生成する電子機器であって、
人間の空腹時の脈波の指標及び食後の脈波の指標に基づいて、血圧値と前記血圧値に対応付けられた脈波との関係を示す学習モデルを生成する、電子機器。
[付記2]
人間の空腹時の脈波の指標及び食後の脈波の指標に基づいて生成された学習モデルであって、血圧値と前記血圧値に対応付けられた脈波との関係を示す学習モデルを用いて、
センサによって取得された脈波の指標であって被検者の食前の脈波及び他のタイミングにおける脈波の指標に基づいて、
前記被検者の血圧値を推定する、電子機器。
[付記3]
被検者の血圧値及び血糖値の推定に用いられる学習モデルを生成する電子機器であって、
人間の空腹時の脈波の指標及び食後の脈波の指標に基づいて、血圧値と前記血圧値に対応付けられた脈波との関係、及び、血糖値と前記血糖値に対応付けられた脈波との関係を示す学習モデルを生成する、電子機器。
[付記4]
人間の空腹時の脈波の指標及び食後の脈波の指標に基づいて生成された学習モデルであって、血圧値と前記血圧値に対応付けられた脈波との関係、及び、血糖値と前記血糖値に対応付けられた脈波との関係を示す学習モデルを用いて、
センサによって取得された脈波の指標であって被検者の食前の脈波及び他のタイミングにおける脈波の指標に基づいて、
前記被検者の血圧値及び血糖値を推定する、電子機器。
[付記5]
前記学習モデルは、人間の空腹時の血圧値にも基づいて生成される、付記1から4のいずれかに記載の電子機器。
[付記6]
前記学習モデルは、人間の食後の血圧値にも基づいて生成される、付記1から5のいずれかに記載の電子機器。
[付記7]
前記学習モデルは、人間の空腹時の血糖値にも基づいて生成される、付記1から6のいずれかに記載の電子機器。
[付記8]
前記学習モデルは、人間の食後の血糖値にも基づいて生成される、付記1から7のいずれかに記載の電子機器。
[付記9]
前記学習モデルは、人間の食後の経過時間に応じて生成される、付記1から8のいずれかに記載の電子機器。
[付記10]
前記学習モデルは、人間の空腹時の状態か食後の状態かに応じて生成される、付記1から9のいずれかに記載の電子機器。
[付記11]
被検者の脈波を取得するセンサ部と、
前記センサ部によって取得された脈波又は当該脈波の指標であって被検者の食前の脈波及び他のタイミングにおける脈波又は当該脈波の指標の情報を他の電子機器に送信する通信部と、
を備える電子機器。
[付記12]
前記脈波の指標は、前記脈波の前進波の大きさと前記脈波の反射波の大きさとの比を示す指標である、付記1から11のいずれかに記載の電子機器。
[付記13]
被検者の血圧値の推定に用いられる学習モデルを生成する電子機器の制御方法であって、
人間の空腹時の脈波の指標及び食後の脈波の指標に基づいて、血圧値と前記血圧値に対応付けられた脈波との関係を示す学習モデルを生成するステップを含む、制御方法。
[付記14]
人間の空腹時の脈波の指標及び食後の脈波の指標に基づいて生成された学習モデルであって、血圧値と前記血圧値に対応付けられた脈波との関係を示す学習モデルを使用するステップと、
センサによって取得された脈波の指標であって被検者の食前の脈波及び他のタイミングにおける脈波の指標に基づいて、前記被検者の血圧値を推定するステップと、
を含む、電子機器の制御方法。
[付記15]
被検者の血圧値及び血糖値の推定に用いられる学習モデルを生成する電子機器の制御方法であって、
人間の空腹時の脈波の指標及び食後の脈波の指標に基づいて、血圧値と前記血圧値に対応付けられた脈波との関係、及び、血糖値と前記血糖値に対応付けられた脈波との関係を示す学習モデルを生成するステップを含む、電子機器の制御方法。
[付記16]
人間の空腹時の脈波の指標及び食後の脈波の指標に基づいて生成された学習モデルであって、血圧値と前記血圧値に対応付けられた脈波との関係、及び、血糖値と前記血糖値に対応付けられた脈波との関係を示す学習モデルを使用するステップと、
センサによって取得された脈波の指標であって被検者の食前の脈波及び他のタイミングにおける脈波の指標に基づいて、前記被検者の血圧値及び血糖値を推定するステップと、
を含む、電子機器の制御方法。
[付記17]
被検者の脈波を取得するセンサ部を備える電子機器の制御方法であって、
前記センサ部によって取得された脈波又は当該脈波の指標であって被検者の食前の脈波及び他のタイミングにおける脈波又は当該脈波の指標の情報を他の電子機器に送信するステップを含む、制御方法。
[付記18]
被検者の血圧値の推定に用いられる学習モデルを生成する電子機器に、
人間の空腹時の脈波の指標及び食後の脈波の指標に基づいて、血圧値と前記血圧値に対応付けられた脈波との関係を示す学習モデルを生成するステップを実行させる、プログラム。
[付記19]
電子機器に、
人間の空腹時の脈波の指標及び食後の脈波の指標に基づいて生成された学習モデルであって、血圧値と前記血圧値に対応付けられた脈波との関係を示す学習モデルを使用するステップと、
センサによって取得された脈波の指標であって被検者の食前の脈波及び他のタイミングにおける脈波の指標に基づいて、前記被検者の血圧値を推定するステップと、
を実行させる、プログラム。
[付記20]
被検者の血圧値及び血糖値の推定に用いられる学習モデルを生成する電子機器に、
人間の空腹時の脈波の指標及び食後の脈波の指標に基づいて、血圧値と前記血圧値に対応付けられた脈波との関係、及び、血糖値と前記血糖値に対応付けられた脈波との関係を示す学習モデルを生成するステップを実行させる、プログラム。
[付記21]
電子機器に、
人間の空腹時の脈波の指標及び食後の脈波の指標に基づいて生成された学習モデルであって、血圧値と前記血圧値に対応付けられた脈波との関係、及び、血糖値と前記血糖値に対応付けられた脈波との関係を示す学習モデルを使用するステップと、
センサによって取得された脈波の指標であって被検者の食前の脈波及び他のタイミングにおける脈波の指標に基づいて、前記被検者の血圧値及び血糖値を推定するステップと、
を実行させる、プログラム。
[付記22]
被検者の脈波を取得するセンサ部を備える電子機器に、
前記センサ部によって取得された脈波又は当該脈波の指標であって被検者の食前の脈波及び他のタイミングにおける脈波又は当該脈波の指標の情報を他の電子機器に送信するステップを実行させる、プログラム。
【符号の説明】
【0160】
1 電子機器
10 筐体
11 第1当接部
12 第2当接部
13 スイッチ
14 突出部
20 支持部
22 背面部
24 伸長部
26 受け部
30 基板
40 報知部
50 センサ
52 制御部
54 記憶部
56 通信部
60 バッテリ
70 弾性部材
80 台座部
90 リストレスト部
92 リスト当接部
150 携帯端末
151 サーバ