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  • 特許-バイオマス燃焼用添加剤組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】バイオマス燃焼用添加剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C10L 10/04 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
C10L10/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023000682
(22)【出願日】2023-01-05
(65)【公開番号】P2024013183
(43)【公開日】2024-01-31
【審査請求日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】10-2022-0088875
(32)【優先日】2022-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0146722
(32)【優先日】2022-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519024348
【氏名又は名称】株式会社ブルーオーシャン産業
【氏名又は名称原語表記】BLUE OCEAN INDUSTRY, INC.
【住所又は居所原語表記】288, Sandandongseo-ro Gunsan-si Jeollabuk-do Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,クウォンホ
(72)【発明者】
【氏名】ミン,ビョン デ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,サンミン
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/225436(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2022-0079773(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第114231332(CN,A)
【文献】特表2015-506452(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110885709(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 5/40ー 5/48
C10L 10/00ー10/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス内に含まれるアルカリ成分が1,000ppm以上のバイオマス燃料を燃焼させるときに使われる、ボイラーの燃焼炉内でのスラギング現象及びファウリング現象を抑制するための、バイオマス燃焼用添加剤組成物であって、
前記組成物はアルミノシリケートを含み、
前記組成物を熱処理しなくても常温で前記組成物の比表面積が100~180m2/gであり、
前記バイオマス燃焼用添加剤組成物の平均粒径は70~500μmである、
ことを特徴とする、バイオマス燃焼用添加剤組成物。
【請求項2】
前記組成物に含まれる二酸化ケイ素の含有量を前記組成物に含まれる酸化アルミニウムの含有量で割った比が0.78~1.58であることを特徴とする、請求項1に記載のバイオマス燃焼用添加剤組成物。
【請求項3】
前記組成物は、国際標準化機構ISO9277:2010規定に従って測定した比表面積が100~180m2/gであることを特徴とする、請求項1に記載のバイオマス燃焼用添加剤組成物。
【請求項4】
前記組成物は、400℃から800℃まで昇温するときの重量減少率が1%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のバイオマス燃焼用添加剤組成物。
【請求項5】
前記組成物は、前記組成物の総重量に対して、1重量%未満のアルカリ成分をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のバイオマス燃焼用添加剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はバイオマス燃焼用添加剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、ウッドチップ、ウッドペレット、PKS(Palm Kernel Shell)、EFB(Empty Fruit Bunch)などのバイオマスは既存の石炭燃料に比べて二酸化炭素発生量を低めることができるという点で環境に優しい新材生エネルギーとして脚光を浴びているが、バイオマスの燃焼の際、バイオマス内に含有されていたアルカリ成分が燃焼過程で溶融し、溶融したアルカリ成分がボイラーの内壁や熱交換部などに付着してスラギング(Slagging)やファウリング(Fouling)現象を引き起こす。このような現象はボイラーの熱効率を著しく低下させ、燃焼炉内の流動パターンを妨げ、ボイラーの内壁を深刻に損傷させる問題を引き起こしている。
【0003】
また、バイオマス内に含有されるKO、NaOのようなアルカリ成分は揮発性が強くてボイラー内部で滞留する期間が短いので、不均一燃焼を引き起こし、燃焼炉内で発生するアッシュ(ash)と反応してボイラーの内壁をコーティングし、よってボイラーの内壁を含めた金属表面が腐食する問題点が存在した。これに関連して、韓国公開特許第10-2022-0079773号公報には、カオリンのハロイサイトを用いてスラギングまたはファウリング現象を抑制する技術が提示されている。
【0004】
ところが、ハロイサイトは結晶構造の特性上、内部に結晶水が含有されているので、特定の温度以上に熱処理して結晶水を除去したときにはじめて比表面積が増加して吸着率が改善できるので、特定の温度まで熱処理する時間が必要であり、速かにバイオマスのアルカリ成分と反応してスラギング及びファウリングを抑制するのには制約的な面があった。さらに、高温でハロイサイトから結晶水が除去されるとき、ハロイサイトの総量が減少するので、燃焼炉内にハロイサイトを投入するときには強熱減量を勘案してより多量を投入しなければならなかった。
【0005】
したがって、バイオマス燃料の燃焼の際に発生するボイラー内部の熱的不均衡、スラギング、ファウリング現象及び腐食の問題をより効果的に改善することができる新技術の開発が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国公開特許第10-2022-0079773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の技術的思想は上述した問題点を解決するためのものであり、バイオマス内に含有されるアルカリ成分を制御することで、ボイラー内部の熱的不均衡、スラギング、ファウリング現象及び腐食の問題を改善することができる技術を提供することにその目的がある。
【0008】
また、本開示の技術的思想は、カオリンを使わなくてもバイオマスのアルカリ成分を制御することができる技術を提供することに他の目的がある。
【0009】
そして、本開示の技術的思想は、高温で重量減少率が小さく、燃焼用添加剤組成物の投入量の設定が容易である技術を提供することにさらに他の目的がある。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は前述した課題に限定されず、言及しなかった他の技術的課題は後述する内容から本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に明らかに理解可能であろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するために、本発明の一実施形態として、バイオマス燃焼用添加剤組成物は、バイオマス内に含まれるアルカリ成分が1,000ppm以上のバイオマス燃料を燃焼させるときに使われる燃焼用添加剤組成物であって、前記組成物はアルミノシリケートを含み、前記組成物の比表面積が100~180m/gであり得る。
【0012】
また、前記組成物に含まれる二酸化ケイ素の含有量を前記組成物に含まれる酸化アルミニウムの含有量で割った比が0.78~1.58であり得る。
【0013】
また、前記組成物は、国際標準化機構ISO9277:2010規定に従って測定した比表面積が100~180m/gであり得る。
【0014】
また、前記組成物は、400℃から800℃まで昇温するときの重量減少率が1%以下であり得る。
【0015】
また、前記組成物は、前記組成物の総重量に対して、1重量%未満のアルカリ成分をさらに含むことができる。
【0016】
このような目的を達成するために、本発明の他の実施形態として、バイオマス燃料の燃焼方法は、前述したバイオマス燃焼用添加剤組成物をバイオマス燃料と一緒に燃焼させる燃焼段階を含むことができる。
【0017】
上述した課題の解決手段はただ例示的なものであり、本発明を限定しようとする意図と解釈されてはいけない。上述した例示的な実施例の他にも、図面及び発明の詳細な説明に記載した追加の実施例が存在することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上で説明したように、本発明の多様な実施例によれば、バイオマス燃料の燃焼の際、添加剤組成物が、バイオマス内に含有されるアルカリ成分と反応して高融点物質を生成することができる。よって、ボイラー内部の熱的不均衡、スラギング、ファウリング現象及び腐食の問題を改善することができる。
【0019】
また、本発明の多様な実施例によれば、カオリンを使わなくてもバイオマスのアルカリ成分を制御することで、アルカリ成分によるスラギング及びファウリング現象を抑制することができる。
【0020】
さらに、本発明の多様な実施例によれば、高温で重量減少率が小さいので、燃焼用添加剤組成物の投入量の設定が容易であり、強熱減量による損失が少なくカオリンに比べて相対的に少量の添加剤でもアルカリ成分を制御することができる。
【0021】
そして、本発明の多様な実施例によれば、バイオマス燃焼用添加剤組成物内に含まれるアルカリ成分が微量であるため、燃焼の際にスラギングやファウリング現象を引き起こさない利点がある。
【0022】
本発明の効果は以上で言及した効果に限定されず、言及しなかった他の効果は請求範囲の記載から当業者に明らかに理解可能であろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】バイオマス燃料を燃焼させたとき、火力発電所のボイラーの内部に発生するスラギング及びファウリング現象を撮影した写真である。
図2】バイオマス燃料を燃焼させるとき、一実施例による添加剤組成物を一緒に投入したボイラーの内部を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の好適な実施例について添付図面を参照してより具体的に説明するが、既知の技術的部分に関しては、説明の簡潔性のために、説明を省略又は簡略化する。
【0025】
本明細書で、本発明の「一」または「一つの」実施例についての言及は必ずしも同じ実施例についてのものではなく、これらは少なくとも一つを意味するということに留意しなければならない。
【0026】
以下の実施例で、単数の表現は、文脈上明確に他の意味を意味しない限り、複数の表現を含む。
【0027】
以下の実施例で、含むまたは有するなどの用語は明細書上に記載された特徴または構成要素が存在することを意味するものであり、一つ以上の他の特徴または構成要素が付加される可能性を予め排除するものではない。
【0028】
本発明の一実施例によるバイオマス燃焼用添加剤組成物は、バイオマス内に含まれるアルカリ成分が1,000ppm以上のバイオマス燃料を燃焼させるときにバイオマスの燃焼を補助する添加剤として使われ、バイオマス燃料と一緒に投入されて燃焼することができる。
【0029】
一具体例では、バイオマスは植物系バイオマス燃料であり、バイオマス燃料の非限定的な例としては、ウッドチップ、ウッドペレット、PKS、EFBなどを挙げることができる。一具体例によれば、バイオマス燃焼用添加剤組成物は、循環流動層ボイラーまたはストーカー(stoker)ボイラー内でバイオマス燃料と一緒に燃焼することができる。一具体例では、循環流動層ボイラーは100~1,000℃(例えば、100℃、200℃、300℃、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃または1,000℃)の温度で燃焼させるボイラーであり得る。
【0030】
一実施例では、バイオマス燃料の燃焼の際、バイオマス燃焼用添加剤組成物の投入量は、バイオマス燃料100重量部に対して、0.1~10重量部(例えば、0.1重量部、1重量部、2重量部、3重量部、4重量部、5重量部、6重量部、7重量部、8重量部、9重量部または10重量部)を適用することができる。
【0031】
一実施例では、バイオマス内に含有されるアルカリ成分はKO及びNaOのうちの少なくとも1種であり得るが、これに限定されるものではない。また、一実施例で、バイオマス内に含まれるアルカリ成分の含量の上限は特に限定されないが、例えば2,000ppm以下、3,000ppm以下、4,000ppm以下、5,000ppm以下、6,000ppm以下、7,000ppm以下、8,000ppm以下、9,000ppm以下または10,000ppm以下であり得る。
【0032】
仮に、アルカリ成分の含量が1,000ppm未満のバイオマスを燃料として使う場合には、燃料内に含有されるアルカリ成分の量が少ないので、燃焼の際にアルカリ成分によるファウリングやスラギング現象が発生する可能性が低い。したがって、燃料として使用するバイオマス内に含有されるアルカリ成分が1,000ppm未満であれば、ファウリングやスラギング現象を防止するための燃焼用添加剤を使っても費用に対する効果が大きくないことがある。
【0033】
一実施例では、バイオマス燃焼用添加剤組成物はアルミノシリケートを含むことができる。本明細書で、アルミノシリケート(aluminosilicate)はアルミナ(Al)とシリカ(SiO)とが結合したものを意味する。一実施例において、アルミノシリケートは、アルミニウム(Al)元素に対してシリコン(Si)元素の数が1個~5個である構造を有することができる。一実施例では、アルミノシリケートは、バイオマス燃焼用添加剤組成物の総重量に対して、90~94重量%含むことができる。
【0034】
また、一実施例によれば、バイオマス燃焼用添加剤組成物は、国際標準化機構ISO9277:2010規定に従って測定した比表面積が100~180m/gであり得る。具体的な例として、バイオマス燃焼用添加剤組成物の比表面積は、100m/g、110m/g、120m/g、130m/g、140m/g、150m/g、160m/g、170m/gまたは180m/gとして適用することができる。また、バイオマス燃焼用添加剤組成物の比表面積は、前記数値のうちの一つ以上及び前記数値のうちの一つ以下の範囲であることができる。
【0035】
例えば、バイオマス燃焼用添加剤組成物の比表面積の範囲は、100m/g~140m/g、105m/g~135m/g、110m/g~130m/g、115m/g~135m/g、120m/g~150m/g、125m/g~145m/g、100m/g~150m/gまたは100m/g~180m/gの範囲として提供されることができる。一実施例によるバイオマス燃焼用添加剤組成物の比表面積の上限は特に限定されないが、例えば、300m/g以下、250m/g以下、200m/g以下、250m/g以下、200m/g以下、180m/g以下または150m/g以下であり得る。
【0036】
一実施例では、バイオマス燃焼用添加剤組成物の比表面積の数値が大きいほどバイオマスの燃焼の際に発生するアルカリ成分が容易に吸着され、スラギングやファウリング現象を効果的に抑制することができる。バイオマス燃焼用添加剤組成物の比表面積が100m/g未満の場合には、バイオマスから発生するアルカリ成分を物理的に吸着して捕集する効率が低下してスラギングやファウリング現象を充分に制御することができないおそれがある。
【0037】
一実施例では、バイオマス燃焼用添加剤組成物の平均粒径は20~500μmを適用することができる。具体的な例として、バイオマス燃焼用添加剤組成物の平均粒径は、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、200μm、300μm、400μmまたは500μmを適用することができる。もちろん、実施によってはバイオマス燃焼用添加剤組成物の平均粒径を燃焼状況別に異なるように調節して使うことも可能である。
【0038】
一実施例では、アルミノシリケートは、二酸化ケイ素及び酸化アルミニウムを含むことができる。一実施例によれば、アルミノシリケート内に含有される酸化アルミニウムの含量は、アルミノシリケートの総重量に対して、20~60重量%を適用することができる。具体的な例として、酸化アルミニウムの含量は、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%または60重量%を適用することができる。また、酸化アルミニウムの含量は、前記数値のうちの一つ以上及び前記数値のうちの一つ以下の範囲になることができる。
【0039】
例えば、アルミノシリケート内に含まれる酸化アルミニウムの含量の範囲は、20重量%~30重量%、30重量%~40重量%、35重量%~45重量%、40重量%~50重量%または20重量%~60重量%の範囲として提供されることができる。一実施例による酸化アルミニウムは、前記範囲でバイオマスのアルカリ成分を効果的に制御することができる。
【0040】
仮に、アルミノシリケート内に含まれる酸化アルミニウムが20~60重量%の範囲を外れる場合には、バイオマスから出るアルカリ成分を効果的に制御することが容易でない。
【0041】
一実施例では、アルミノシリケート内に含有される二酸化ケイ素の含量は、アルミノシリケートの総重量に対して、40~80重量%を適用することができる。具体的な例として、二酸化ケイ素の含量は、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%または80重量%を適用することができる。また、二酸化ケイ素の含量は、前記数値のうちの一つ以上及び前記数値のうちの一つ以下の範囲になることができる。
【0042】
例えば、アルミノシリケート内に含まれる二酸化ケイ素の含量の範囲は、40重量%~50重量%、50重量%~60重量%、55重量%~65重量%、60重量%~70重量%、55重量%~70重量%または40重量%~80重量%の範囲として提供されることができる。一実施例による二酸化ケイ素は、前記範囲でバイオマスのアルカリ成分を効果的に制御することができる。仮に、アルミノシリケート内に含まれる二酸化ケイ素が40~80重量%の範囲を外れる場合には、バイオマスから出るアルカリ成分を効果的に制御することが容易でない。
【0043】
一実施例によれば、バイオマス燃焼用添加剤組成物がバイオマス燃料と一緒に燃焼するとき、バイオマス内に含有されていたアルカリ成分と化学的に反応することで、バイオマスから放出されたアルカリ成分をカルシライト(KAlSiO)及びルーサイト(KAlSi)のうちの少なくとも1種に転換させることができる。
【0044】
すなわち、バイオマス内に含有されていたアルカリ成分は、バイオマスが燃焼するとき、添加剤組成物と反応して溶融点1600℃以上のカルシライトに転換されるかまたは溶融点1500℃以上のルーサイトに転換されるので、既存にボイラー内でアルカリ成分が溶融して発生したスラギング、ファウリング、及び凝結の問題を改善することができる。
【0045】
一実施例によれば、バイオマス燃焼用添加剤組成物に含まれる二酸化ケイ素の含有量をバイオマス燃焼用添加剤組成物に含まれる酸化アルミニウムの含有量で割った比が0.78~1.58であり得る。
【0046】
具体的な例として、バイオマス燃焼用添加剤組成物に含まれる二酸化ケイ素の含有量をバイオマス燃焼用添加剤組成物に含まれる酸化アルミニウムの含有量で割った比は、0.78、0.79、0.8、0.81、0.82、0.84、0.86、0.88、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.2、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.29、1.3、1.31、1.32、1.34、1.36、1.38、1.4、1.42、1.44、1.46、1.48、1.5、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57または1.58であり得る。また、バイオマス燃焼用添加剤組成物に含まれる二酸化ケイ素の含有量をバイオマス燃焼用添加剤組成物に含まれる酸化アルミニウムの含有量で割った比は前記数値のうちの一つ以上及び前記数値のうちの一つ以下の範囲になることができる。
【0047】
例えば、バイオマス燃焼用添加剤組成物に含まれる二酸化ケイ素の含有量をバイオマス燃焼用添加剤組成物に含まれる酸化アルミニウムの含有量で割った比の範囲は、0.78~1.2、0.58~1.2、0.98~1.2、0.9~1.2、0.9~1.3、1~1.2、1~1.4、1.18~1.58、1.2~1.58、1.38~1.58または0.78~1.58であり得る。一実施例によるバイオマス燃焼用添加剤組成物に含有される二酸化ケイ素の含有量と酸化アルミニウムの含有量との比は前記範囲でバイオマスのアルカリ成分と反応してスラギングやファウリング現象を効果的に抑制することができる。
【0048】
仮に、バイオマス燃焼用添加剤組成物に含まれる二酸化ケイ素の含有量をバイオマス燃焼用添加剤組成物に含まれる酸化アルミニウムの含有量で割った比が0.78~1.58の範囲を外れる場合には、バイオマスから放出されるアルカリ成分と反応して高融点物質(例えば、カルシライト、ルーサイトなど)を生成する効率が低下するので、スラギングやファウリング現象を防止することが容易でない。
【0049】
一具体例によれば、X線蛍光分光法を用いて、バイオマス燃焼用添加剤組成物内に含有される二酸化ケイ素及び酸化アルミニウムの重量を確認することができる。したがって、バイオマス燃焼用添加剤組成物に含まれる二酸化ケイ素の含有量をバイオマス燃焼用添加剤組成物に含まれる酸化アルミニウムの含有量で割った比を算出することができる。
【0050】
一方、一実施例によるバイオマス燃焼用添加剤組成物は、400℃から800℃まで昇温するとき、重量減少率が1%以下、0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、0.2%以下または0.1%以下であり得る。例えば、400℃から800℃まで分当たり10℃の速度で昇温するとき、バイオマス燃焼用添加剤組成物の重量減少率は1%以下であり得る。ここで、バイオマス燃焼用添加剤組成物の重量減少率は下記の式1によって算出することができる。
【0051】
[数1]
バイオマス燃焼用添加剤組成物の重量減少率(%)=(A-B)/A*100
【0052】
(ここで、Aは400℃でバイオマス燃焼用添加剤組成物の重量であり、Bは800℃でバイオマス燃焼用添加剤組成物の重量である)
【0053】
一実施例によるバイオマス燃焼用添加剤組成物の重量減少率の下限は特に限定されないが、例えば、0.001%以上、0.01%以上または0.05%以上であり得る。
【0054】
一実施例によるバイオマス燃焼用添加剤組成物は、カオリン(例えば、カオリナイト、ハロイサイトなど)とは違い、バイオマス燃焼用添加剤組成物内に結晶水を含んでいないので、高温で結晶水が蒸発するのに伴ってバイオマス燃焼用添加剤組成物の総重量が減少する現象がほとんど起こらず、400~800℃で重量減少率が1%以下である。
【0055】
これに対して、カオリンは内部に含有される結晶水が400~800℃で蒸発するのに伴って比表面積の数値が常温の場合に比べて大きくなることはできるが、結晶水が蒸発する温度に到逹するまではカオリンの比表面積が高くなりにくいため、バイオマスに起因するアルカリ成分を早く吸着して除去することが難しい。
【0056】
しかし、一実施例によるバイオマス燃焼用添加剤組成物は、内部に結晶水を含んでいないため、400~800℃でも常温と近似した水準の比表面積(例えば、100~180m/g)を維持することができることから、カオリンに比べて速かにアルカリ成分を吸着して除去することができる。
【0057】
一方、一実施例によるバイオマス燃焼用添加剤組成物は、バイオマス燃焼用添加剤組成物の総重量に対して、1重量%未満のアルカリ成分を不純物として含むことができる。スラギング及びファウリング現象を防止する観点では、バイオマス燃焼用添加剤組成物内にアルカリ成分を含まないことが好ましく、バイオマス燃焼用添加剤組成物内に含まれるアルカリ成分の下限は特に限定されないが、例えば、0.0001重量%以上、0.001重量%以上、0.01重量%以上、0.05重量%以上または0.1重量%以上であり得る。
【0058】
一実施例によれば、バイオマス燃焼用添加剤組成物内に含有されるアルカリ成分が、バイオマス燃焼用添加剤組成物の総重量に対して、1重量%未満であるので、バイオマス燃料の燃焼の際にスラギングやファウリング現象が発生するおそれが少ない。
【0059】
一具体例では、バイオマス燃焼用添加剤組成物は、不純物としてKOを、バイオマス燃焼用添加剤組成物の総重量に対して、1重量%未満含むことができる。他の具体例では、バイオマス燃焼用添加剤組成物は、不純物としてNaOを、バイオマス燃焼用添加剤組成物の総重量に対して、1重量%未満含むことができる。
【0060】
そして、一実施例によるバイオマス燃焼用添加剤組成物は、アルミノシリケート及びアルカリ成分の含量を除いた残りの残量として不可避な不純物を含むことができる。
【0061】
図1はバイオマス燃料を燃焼させたとき、火力発電所ボイラーの内部に発生したスラギング及びファウリング現象を撮影した写真であり、図2はバイオマス燃料を燃焼させたとき、一実施例による添加剤組成物を一緒に投入したボイラーの内部を撮影した写真である。図1及び図2を参照すると、バイオマス燃料のみを燃焼させたときは、ボイラーの内部でスラギングやファウリング現象が発生したが、一実施例による添加剤組成物を使ったボイラーの内部ではアルカリ成分によるスラギング、ファウリング、凝結現象などが発生しなかったことを確認することができる。
【0062】
以下では、具体的な実施例及び実験例に基づいて本発明をより詳細に説明する。下記の実施例及び実験例は本発明の理解を手伝うための一例示に過ぎず、本発明の権利範囲はこれらには限定されない。
【0063】
実施例及び比較例のスラギング及びファウリング抑制実験
<実施例1~5及び比較例1~2>
各実施例及び比較例のバイオマス燃焼用添加剤組成物に含有される二酸化ケイ素及び酸化アルミニウムの重量をX線蛍光分光器(Rigaku社のZSX Primus II)で測定し、バイオマス燃焼用添加剤組成物に含まれる二酸化ケイ素の含有量をバイオマス燃焼用添加剤組成物に含まれる酸化アルミニウムの含有量で割った比を算出して下記の表1に記載した。
【0064】
火力発電所の循環流動層ボイラーを模型化したパイロットテスト機に、各実施例及び比較例のバイオマス燃焼用添加剤組成物をそれぞれ、バイオマス燃料と一緒に投入してスラギング及びファウリング抑制性能を比較した。バイオマス燃料としてアルカリ成分の含有量が1,950ppmであるベトナム産アカシアウッドペレットを使った。バイオマス燃料及び添加剤組成物はそれぞれ2.5kg/hr及び0.075kg/hrの速度で3.5時間投入し、パイロットテストを遂行するうちに燃焼炉及び測定ロードセルの平均温度はそれぞれ850℃及び600℃に維持した。テストが終わった後、ロードセルの重さ変化量を測定することで、ロードセルの表面に形成されたスラギング及びファウリング(すなわち、バイオマス燃料に含有されていたアルカリ成分が溶融してロードセルの表面にアッシュ粒子と一緒に付着した状態で固化したもの)の重さを測定し、その結果を表2に記載した。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
表2を参照すると、バイオマス燃焼用添加剤組成物に含まれる二酸化ケイ素の含有量をバイオマス燃焼用添加剤組成物に含まれる酸化アルミニウムの含有量で割った比が0.78~1.58の範囲内にある実施例1~5は比較例1及び2に比べて相対的にスラギング及びファウリング現象が少なく発生したことが分かる。すなわち、実施例1~5による添加剤組成物はバイオマス燃料の燃焼の際に一緒に添加されて燃焼する場合、アルカリ成分を効果的に制御してスラギングやファウリング現象の発生を抑制することができる。
【0068】
BET法による比表面積測定
<実施例1~5>
各実施例別のサンプル0.1gを100℃で前処理することで、サンプル内の表面水を除去した後、MicrotracBEL社のBELSORP-max II機器を用い、標準分析方法ISO9277:2010に従って各サンプルの比表面積を計3回測定し、その平均値を下記の表3に記載した。
【0069】
【表3】
【0070】
重量減少率測定
<実施例1~5>
熱重量-示差走査熱量分析器(TA Instruments社のSDT Q600)に各実施例別のサンプル200mgを投入し、常温(25℃)で1,000℃まで1分間当たり10℃の速度で昇温し、400℃及び800℃でバイオマス燃焼用添加剤組成物の重量を測定し、各実施例での重量減少率を、前述した式1によって算出し、その結果を下記の表4に記載した。
【0071】
【表4】
【0072】
上述したように、本発明の多様な実施例によれば、バイオマス燃料の燃焼の際、添加剤組成物がバイオマス内に含有されるアルカリ成分と反応して高融点物質を生成することができる。したがって、ボイラー内部の熱的不均衡、スラギング、ファウリング現象及び腐食の問題を改善することができる。
【0073】
また、本発明の多様な実施例によれば、カオリンを使わなくてもバイオマスのアルカリ成分を制御することで、アルカリ成分によるスラギングやファウリング現象を抑制することができる。
【0074】
さらに、本発明の多様な実施例によれば、高温で重量減少率が小さいので、燃焼用添加剤組成物の投入量の設定が容易であり、強熱減量による損失が少ないので、カオリンに比べて相対的に少量の添加剤でもアルカリ成分を制御することができる。
【0075】
そして、本発明の多様な実施例によれば、バイオマス燃焼用添加剤組成物内に含有されるアルカリ成分が微量であるので、燃焼の際にスラギングやファウリング現象を引き起こさない利点がある。
【0076】
また、本発明の多様な実施例によれば、バイオマス燃焼用添加剤組成物は結晶水を含んでいないので、400~800℃の高温にバイオマス燃焼用添加剤組成物を熱処理しなくても常温で100~180m/g水準の比表面積を維持することができ、高い比表面積によってバイオマスの燃焼の際に溶融するアルカリ成分を物理的に吸着して除去することができるので、スラギングやファウリング現象を防止することができる。
【0077】
バイオマス燃焼用添加剤組成物内に結晶水が含有されている場合には、高温で熱処理して結晶水を除去することによって初めて比表面積が大きくなることができるが、本発明の多様な実施例によれば、結晶水を別に処理しなくても比表面積数値が高い特性を有するので、バイオマス燃料の燃焼の際、燃料との迅速な反応によってアルカリ成分を制御することができる利点がある。
【0078】
以上で説明したように、本発明についての具体的な説明は実施例に基づいて開示したが、上述した実施例は本発明の好適な例を説明しただけであるので、本発明が前記実施例にのみ限定されるものと理解されるべきではなく、本発明の権利範囲は、後述する特許請求の範囲及びその均等な概念と理解されなければならないであろう。
図1
図2