(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】樹状細胞の成熟
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0784 20100101AFI20240927BHJP
C12N 5/02 20060101ALI20240927BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240927BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240927BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C12N5/0784
C12N5/02
A61K39/00 H
A61P35/00
A61P31/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023001054
(22)【出願日】2023-01-06
(62)【分割の表示】P 2020523834の分割
【原出願日】2018-07-13
【審査請求日】2023-02-03
(32)【優先日】2017-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520013102
【氏名又は名称】バイオクローンズ プロプライエタリー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100218578
【氏名又は名称】河井 愛美
(72)【発明者】
【氏名】デーダ キールタン アンカ ジャイラム
(72)【発明者】
【氏名】トマジッキオ ミケーレ
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-515110(JP,A)
【文献】国際公開第2010/049152(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/136845(WO,A1)
【文献】特表2013-519363(JP,A)
【文献】特表2004-538000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Toll様受容体3(TLR-3)アゴニスト、IFN-α、IFN-γ、CD40L、IL-1βおよびToll様受容体-7/8(TLR-7/8)アゴニストの存在下で未成熟樹状細胞を培養するステップを含む、成熟樹状細胞を産生するインビトロの方法
であって、TLR-3アゴニストが、poly[I]:poly[CxU];poly[I]:poly[GxU];poly[A]:poly[UxC];poly[A]:poly[UxG];poly[U]:poly[AxC];poly[U]:poly[IxU];poly[C]:poly[GxA];poly[C]:poly[GxU];poly[G]:poly[CxA];およびpoly[G]:poly[CxU]からなる群から選択される高分子量dsRNAポリマーであり、xが3~40の整数である、方法。
【請求項2】
TLR-3アゴニストがリタトリモドであり、TLR-7/8アゴニストがR848である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
未成熟樹状細胞が末梢血単核細胞のサンプルから培養される、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
サンプルがヒトまたは動物から単離され
たサンプルであって、ヒトに対する医療行為を除く、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
樹状細胞が抗原の存在下で培養される、請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
抗原が癌抗原または感染症抗原である、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
TLR-3アゴニスト、IFN-α、IFN-γ、CDL40、IL-1βおよびTLR-7/8アゴニストを含む、樹状細胞成熟カクテル
であって、TLR-3アゴニストが、poly[I]:poly[CxU];poly[I]:poly[GxU];poly[A]:poly[UxC];poly[A]:poly[UxG];poly[U]:poly[AxC];poly[U]:poly[IxU];poly[C]:poly[GxA];poly[C]:poly[GxU];poly[G]:poly[CxA];およびpoly[G]:poly[CxU]からなる群から選択される高分子量dsRNAポリマーであり、xが3~40の整数である、樹状細胞成熟カクテル。
【請求項8】
TLR-3アゴニストがリタトリモドであり、TLR-7/8アゴニストがR848である、請求項
7に記載の樹状細胞成熟カクテル。
【請求項9】
樹状細胞成熟カクテルが、抗原の存在下で未成熟樹状細胞のインビトロ成熟のために使用される、請求項
7または8に記載の樹状細胞成熟カクテル。
【請求項10】
抗原が癌抗原または感染症抗原である、請求項
9に記載の樹状細胞成熟カクテル。
【請求項11】
未成熟樹状細胞を抗原に曝露するステップ;および請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法に従って、または請求項
7~8のいずれか1項に記載の樹状細胞成熟カクテルを用いて、樹状細胞を成熟させるステップを含む、インビトロで成熟抗原提示樹状細胞を産生する方法。
【請求項12】
抗原が癌抗原または感染症抗原である、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
未成熟樹状細胞が抗原を捕捉および処理するように誘導するために十分な時間、未成熟樹状細胞が抗原に曝露される、請求項
11または
12に記載の方法。
【請求項14】
インビトロで未成熟樹状細胞を抗原に曝露するステップ;請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法に従って、または請求項
7~8のいずれか1項に記載の樹状細胞成熟カクテルを用いて、十分な数の樹状細胞が抗原提示成熟樹状細胞になるまで未成熟樹状細胞を成熟させるステップ;および抗原提示成熟樹状細胞を薬学的に許容される製剤に製剤化するステップを含む、対象における細胞性免疫応答を誘導するためのワクチンを製造する方法。
【請求項15】
抗原が癌抗原または感染症抗原であり、細胞性免疫応答が癌または感染症に対するものである、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
請求項
11から
13のいずれか1項に記載の方法に従って製造された、抗原提示成熟樹状細胞。
【請求項17】
請求項
11から
13のいずれか1項に記載の方法により産生された抗原提示成熟樹状細胞を含む、ワクチン。
【請求項18】
適切な希釈剤、賦形剤またはアジュバントをさらに含む、請求項
17に記載のワクチン。
【請求項19】
対象における癌または感染症に対する免疫応答を誘導する
ための方法で使用するための、請求項
17または
18に記載のワクチン
であって、前記方法が免疫原的に有効な量のワクチンを対象に投与することを含む、ワクチン。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
樹状細胞(DC)は、自然免疫系と後天性免疫系を関連付ける強力な抗原提示細胞である。B、Tリンパ球およびNK細胞の強力な刺激剤として、それらは免疫応答の開始、特異性、および調節に極めて重要である(Banchereau and Steinman(1998))。末梢組織においては、それらは抗原の取り込み、処理、および提示に対して準備された未熟な状態で見出される。抗原に遭遇して処理されると、樹状細胞は劇的に変化して成熟細胞となる。この過程で、抗原は免疫反応を誘発する他の免疫機能細胞に提示される。特に、成熟した樹状細胞は、流出する二次リンパ器官に向かって移動し、T細胞、B細胞、およびNK細胞と相互作用する(Mellman and Steinman(2001))。出願人は、樹状細胞の抗原提示能力を用い、インビボで癌およびその他の感染症を標的にし、根絶することが可能であることを示した。
【0002】
出願人は、癌および感染症に対する樹状細胞ワクチンを開発した。本発明において、Toll様受容体(TLR)-3アゴニスト(アンプリゲン;Ampligen)、インターロイキン(IL)-1β(IL-1β)、インターフェロン(IFN)-α、IFN-γ、CD40LおよびTLR-7/8アゴニスト(R848)を含む樹状細胞成熟カクテルを使用して、エクスビボで樹状細胞(DC)を成熟させる方法が、癌および感染症に対する免疫療法的介入としての使用のために記載される。癌に対するワクチンとしての樹状細胞の使用は、新しい治療法では無いものの、成熟剤の特定の組み合わせは以前に記載されていない。
出願人は、その樹状細胞ワクチンが癌細胞に対して殺腫瘍性であるというインビトロの前臨床証拠を持っている。本発明の成熟カクテルで成熟した樹状細胞は、癌細胞に対する抗腫瘍Tヘルパー応答を分極することができる最適な成熟表現型を示した。出願人はさらに、これらの成熟樹状細胞が高レベルのTh1エフェクターサイトカイン、IFN-γおよびIL-12p70を産生したという証拠を提示する。これらは樹状細胞ワクチンがインビボで抗腫瘍Th1 CD8+ T細胞応答を活性化およびプライミングする能力の指標となる(Curtsinger et al.(1999),Schmidt and Mescher(1999),Xiao et al.(2009))。さらに、IL-12p70は、CD8+エフェクター機能、T細胞活性化の調節に不可欠であることが示されており、乳癌患者の間でより好ましい臨床転帰の重要な指標であることが示されている(Curtsinger et al.(1999),Schmidt and Mescher(1999),Xiao et al.(2009),Kristensen et al.(2012))。
【0003】
本発明の主な利点は、出願人が、他の種類の癌および感染症に容易に適用することができるモデル成熟法および成熟カクテルを開発したことである。成熟カクテルは、研究者の所望の標的である癌または感染症由来の抗原と組み合わせて使用することができる。本技術は安全であり、他の病気に直接移行できる。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様において、(i)Toll様受容体-3(TLR-3)アゴニスト、IFN-α、IFN-γ、CD40L、IL-1βおよびToll様受容体-7/8(TLR-7/8)アゴニストの存在下で未成熟樹状細胞を培養するステップを含む、成熟樹状細胞を産生するインビトロ方法が提供される。
本発明の一実施形態では、TLR-3アゴニストはアンプリゲン(登録商標)(リタトリモド;ritatolimod)であり、TLR-7/8アゴニストはR848である。TLR-3アゴニストは、poly[I]:poly[CxU];poly[I]:poly[GxU];poly[A]:poly[UxC];poly[A]:poly[UxG];poly[U]:poly[AxC];poly[U]:poly[IxU];poly[C]:poly[GxA];poly[C]:poly[GxU];poly[G]:poly[CxA];およびpoly[G]:poly[CxU]からなる群から選択される高分子量dsRNAポリマーであってもよく、ここで、xは平均して3~40の数、好ましくは6~20の数である。より好ましくは、dsRNAポリマーはpoly[I]:poly[C12U]およびpoly[C]:poly[I12U]からなる群から選択することができる。
【0005】
本発明の第2の実施形態では、未成熟樹状細胞は、末梢血単核細胞のサンプルから培養される。サンプルはヒトまたは動物から単離されることが理解されよう。
本発明の第3の実施形態では、樹状細胞は抗原の存在下で培養される。好ましい実施形態では、抗原は癌抗原または感染症抗原である。
【0006】
癌は、副腎皮質癌腫および褐色細胞腫を含む副腎癌;肛門癌;虫垂癌;胆管細胞癌、肝外胆管癌および肝内胆管癌を含む胆管癌;尿管癌を含む膀胱癌;軟骨肉腫、ユーイング肉腫、骨形成肉腫、骨肉腫、間葉性軟骨肉腫および骨肉腫を含む骨癌;未分化星細胞腫、星状細胞腫、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、頭蓋咽頭腫、びまん性星細胞腫、上衣細胞腫、胚細胞腫瘍、多形性膠芽腫、神経膠腫、低悪性度星細胞腫、髄芽腫、髄膜腫、混合神経膠腫、乏突起膠腫、末梢神経癌、毛様細胞性星細胞腫、松果体腫瘍および下垂体癌を含む脳癌;非浸潤性乳管癌腫、男性乳癌、髄様癌、浸潤性乳癌腫、浸潤性小葉癌腫、炎症性乳癌腫、侵襲性または浸潤性乳癌、上皮内小葉癌腫、転移性乳癌、粘液癌腫、パジェット病、乳頭癌腫、トリプルネガティブ乳癌および管状癌腫を含む乳癌;子宮頸癌;腸癌、大腸癌および直腸癌を含む結腸直腸癌;食道癌;眼の癌;胆嚢癌;消化管カルチノイド癌および消化管間質腫瘍を含む消化管癌;頸部癌、扁桃癌および転移性扁平上皮頸部癌を含む頭頸部癌;血管内皮腫;ホジキン病を含むホジキンリンパ腫;腸癌;腎細胞癌腫、腎盂癌および尿管癌を含む腎癌;軟髄膜転移;急性顆粒球性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、有毛細胞白血病および骨髄異形成症候群を含む白血病;肝臓癌;腺癌腫、腺肉腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌および燕麦細胞癌を含む肺癌;皮膚黒色腫および転移性黒色腫を含む黒色腫;中皮腫;骨髄癌を含む多発性骨髄腫;神経芽細胞腫;神経内分泌腫瘍;B細胞リンパ腫、リンパ節癌、リンパ腫、菌状息肉腫およびT細胞リンパ腫を含む非ホジキンリンパ腫(NHL);眼癌;眼の黒色腫;口唇癌、口腔癌、顎癌、カポジ肉腫、口癌、粘膜黒色腫、唾液腺癌、舌癌を含む口腔癌;卵管癌、卵巣上皮癌、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣原発腹膜癌腫、卵巣性索間質腫瘍および腹膜癌を含む卵巣癌;膵島細胞癌を含む膵臓癌;副鼻腔癌;骨盤癌;陰茎癌;原発性中枢神経系リンパ腫;前立腺癌;線維肉腫および滑膜肉腫を含む軟部肉腫;副鼻腔癌;基底細胞癌腫、皮膚リンパ腫、扁平上皮癌腫およびメルケル細胞癌腫を含む皮膚癌;小腸癌;血管肉腫、類上皮肉腫、脂肪肉腫を含む軟部肉腫;平滑筋肉腫および横紋筋肉腫;脊柱癌、脊髄の癌、脊髄腫瘍を含む脊髄癌;カルチノイド腫瘍および胃の癌を含む胃癌;精巣癌;下咽頭癌、喉頭癌、鼻腔癌、鼻咽頭癌、中咽頭癌、咽頭の癌を含む咽頭癌;胸腺腫または胸腺癌;副甲状腺癌を含む甲状腺癌;卵管癌;尿道癌;子宮内膜癌、子宮腺癌、子宮肉腫および子宮肉腫を含む子宮癌;膣癌ならびに外陰癌からなる群から選択することができることが理解されよう。
【0007】
さらに、感染症は、ウイルス感染症、寄生虫感染症、真菌感染症、または細菌感染症からなる群から選択することができることが理解されよう。好ましくは、感染症は、結核、HIV-1、マラリア、エボラウイルスおよびインフルエンザからなる群から選択される。
【0008】
本発明の第2の態様では、TLR-3アゴニスト、IFN-α、IFN-γ、CDL40、IL-1βおよびTLR-7/8アゴニストを含む樹状細胞成熟カクテルが提供される。
【0009】
本発明の一実施形態では、TLR-3アゴニストはアンプリゲン(登録商標)(リンタトリモド)であり、TLR-7/8アゴニストはR848である。TLR-3アゴニストは、poly[I]:poly[CxU];poly[I]:poly[GxU];poly[A]:poly[UxC];poly[A]:poly[UxG];poly[U]:poly[AxC];poly[U]:poly[IxU];poly[C]:poly[GxA];poly[C]:poly[GxU];poly[G]:poly[CxA];およびpoly[G]:poly[CxU]からなる群から選択される高分子量dsRNAポリマーであってもよく、ここで、xは3~40の整数、好ましくは6~20の数である。より好ましくは、dsRNAポリマーはpoly[I]:poly[C12U]およびpoly[C]:poly[I12U]からなる群から選択することができる。
本発明のさらなる実施形態では、樹状細胞成熟カクテルは、抗原の存在下で未成熟樹状細胞のインビトロ成熟に使用される。好ましい実施形態では、抗原は癌抗原または感染症抗原である。
【0010】
本発明の第3の態様では、(i)未成熟樹状細胞を抗原に曝露するステップ、および(ii)本明細書に記載の方法に従うか、または本明細書に記載の樹状細胞成熟カクテルを用いた樹状細胞を成熟させるステップを含む、インビトロで成熟抗原提示樹状細胞を産生する方法が提供される。
本発明の一実施形態では、抗原は癌抗原または感染症抗原である。
本発明のさらなる実施形態では、未成熟樹状細胞は、未成熟樹状細胞が抗原を捕捉および処理するよう誘導するために十分な時間、抗原に曝露される。
本発明の第4の態様では、(i)インビトロで未成熟樹状細胞を抗原に曝露するステップ、(ii)十分な数の樹状細胞が抗原提示成熟樹状細胞になるまで、樹状細胞成熟カクテルを用いて未成熟樹状細胞を成熟させるステップ、(iii)抗原提示成熟樹状細胞を薬学的に許容される製剤に製剤化するステップを含む、対象において細胞性免疫応答を誘導するためのワクチンを製造する方法が提供される。
本発明の別の実施形態では、抗原は癌抗原または感染症抗原である。
【0011】
本発明の第5の態様では、本明細書に記載の樹状細胞成熟カクテルを用いて、および/または本明細書に記載の方法に従って産生された抗原提示成熟樹状細胞が提供される。
本発明の第6の態様では、本明細書に記載の樹状細胞成熟カクテルを用いて、および/または本明細書に記載の方法により産生される抗原提示成熟樹状細胞を含むワクチンが提供される。
一実施形態では、ワクチンは、適切な希釈剤、賦形剤またはアジュバントをさらに含んでもよい。
本発明の第7の態様では、免疫原的に有効な量のワクチンを対象に投与することを含む、対象における癌または感染症に対する免疫応答を誘導する方法において使用するための、本発明のワクチンまたは本発明の抗原提示成熟樹状細胞が提供される。
本発明の第8の態様では、本明細書に記載のワクチンまたは本発明の抗原提示成熟樹状細胞の免疫原的に有効な量を対象に投与することを含む、対象における癌または感染症に対する免疫応答を誘導する方法が提供される。
ここで、本発明の非限定的な実施形態を例示目的のみで以下の図を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】異なるIL-4およびGM-CSF濃度の存在下で単球から分化した未成熟樹状細胞の形態学的可視化を示す図である。単球はPBMCから濃縮され、示されるIL-4とGM-CSFの異なる濃度を含有するR-10中で、37℃で5日間、培養された。細胞はその後、サイトスピンを使用して、コーティングされたカバースリップ上に濃縮した。細胞を透過処理した後、標準的なヘマトキシリンおよびエオシン染色法を使用して染色した。染色された細胞は、光学顕微鏡(倍率100倍)(Nikon)を使用して視覚化した。画像は、2人の個々のドナーからのサンプルを表す。
【
図2】アンプリゲン(登録商標)、IFN含有カクテルおよびR848を用いて成熟させた樹状細胞は、アンプリゲン(登録商標)およびIL-1βまたはR848およびIL1-βを用いて成熟させた樹状細胞と比較して、より高いレベルの共刺激分子を発現することを示す図である。未成熟樹状細胞は単球から分化された。iDCは、100μg/mLアンプリゲン(登録商標)および10ng/mL IL-1β(Amp+IL-1β)、2.5μg/mL R848および10ng/mL IL-1β(R848+IL-1β)、IFN含有カクテル(10ng/mL IFN-α、25ng/mL IFN-α、1μg/mL CD40Lおよび10ng/mL IL-1β)、100μg/mLアンプリゲン(登録商標)およびIFN含有カクテル(Amp+IFN-カクテル)、または100μg/mLアンプリゲン(登録商標)、IFN含有カクテルおよび2.5μg/mL R848(Amp+IFN-カクテル+R848)を含むか含まないCellGro培地で、37℃で48時間、成熟させた。単球、未成熟樹状細胞および成熟樹状細胞は、ヘマトキシリンおよびエオシン(HE)染色に供されたかまたは、共焦点顕微鏡のために、CD14 PE-CY7(単球)、CD40 FITC(未熟および成熟DC)および/若しくはCD83 APC(成熟DC;A)を用いて染色された。成熟表現型もフローサイトメトリーによって決定された(B)。ヒストグラムは、2つの独立した実験および4人のドナーのサンプルからのプールされた結果を示している。統計的有意性は、Dunnettの事後検定による一元配置分散分析によって決定され、ここで、
*、
**、
***はそれぞれp<0.05、p<0.01、またはp<0.001を示す。エラーバーは標準偏差を表す。光学顕微鏡倍率:100倍(油浸);スケールバー=20μm。共焦点倍率:63倍(油浸);スケールバー=10μm。
【
図3】アンプリゲン(登録商標)、IFN含有カクテルおよびR848を用いて成熟した樹状細胞は、アンプリゲン(登録商標)またはR848およびIL-1βのみを用いて成熟した樹状細胞と比較して、より高いレベルのTh1エフェクターサイトカイン、IL-12p70およびIFN-γを発現する。樹状細胞は単球から分化させ、前述のように成熟させた。(A)上清からのIL-12p70のレベルは、製造業者の指示に従ってMabtechのELIZAPRO IL-2p70検出キットを使用して決定した。(B)IFN-γ ELISPOTアッセイでは、iDCを96ウェルELISPOTプレートに一ウェルあたり2x10
5、1x10
5または0.5x10
5細胞で播種し、示したように37℃で48時間、成熟させた。細胞を洗浄し、製造業者(Mabtech)の指示に従ってプレートを処理した。ヒストグラムは、4人のドナーからのプールされた結果を示している。統計的有意性は、Dunnettの事後検定による一元配置分散分析によって決定され、ここで、
*、
***はそれぞれp<0.05またはp<0.001を示す。エラーバーは標準偏差を表す。iDCs=未熟DC、Amp=アンプリゲン(登録商標)、IFN含有カクテル=IFN-γ、IFN-Y、CD40LおよびIL-Ιβ。注:IFN-γELISPOTアッセイでは、組換えIFN-γはIFN含有カクテルから除外された。
【
図5】アンプリゲン(登録商標)、IFN含有カクテル、R848および腫瘍特異的溶解物を用いたか、またはIFNカクテルのみを用いて成熟させた乳癌患者の樹状細胞は、腫瘍特異的溶解物のみで成熟させたiDCまたは樹状細胞と比較して、より高いレベルの共刺激分子を発現する。未成熟樹状細胞を単球から分化させ、100μg/mLの腫瘍特異的溶解物を含むかまたは含まないCellGro培地で、37℃で6時間インキュベートした。その後、細胞をIFN含有カクテルのみ(10ng/mL IFN-α、25ng/mL IFN-γ、1μg/mL CD40Lおよび10ng/mL IL-1β)、または100μg/mL アンプリゲン(登録商標)、IFN含有カクテルおよび2.5μg/mL R848(Amp+IFNカクテル+R848)を用いるか用いないで、37℃で42時間、成熟させた。成熟表現型は、フローサイトメトリーによって決定された。統計的有意性は、Dunnettの事後検定による一元配置分散分析によって決定され、ここで、
*、
**、
***はそれぞれp<0.05、p<0.01、またはp<0.005を示す。エラーバーは標準偏差を表す。
【
図6】アンプリゲン(登録商標)、IFNカクテル(IFN-α、IFN-γ、CD40LおよびIL-1β)、R848および腫瘍特異的溶解物で成熟させた樹状細胞は、未成熟樹状細胞(iDC)または腫瘍特異的溶解物のみ(溶解物のみ)またはIFN含有カクテルのみで成熟させた樹状細胞と比較して、Th1エフェクターサイトカイン、IL-12p70をより高レベルで発現する。未成熟樹状細胞または成熟樹状細胞の上清からのIL-12p70のレベルを、MabtechのELIZAPRO IL-12p70検出キットを製造業者の指示に従って使用して決定した。ヒストグラムは、4人のドナーからプールされた結果を示す。統計的有意性は、Dunnettの事後検定またはWilcoxon順位和t検定を使用した一元配置分散分析によって決定され、ここで、
*、
***はそれぞれp<0.05またはp<0.001を示す。エラーバーは標準偏差を表す。
【
図7】腫瘍特異的樹状細胞プライミングCD8+ T細胞は、T細胞受容体によってHER-2およびMUC-1抗原を認識できることを示した図である。エフェクター細胞が生成され、CD8+ T細胞のTCRによって認識される抗原は、CD8 FITC、CD3 PerCP/Cy5.5、HER-2 APC四量体、およびMUC-1 PE四量体による染色によって製造業者の指示に従って決定された。抗原提示のレベルは、フローサイトメトリーによって決定された。ヒストグラムAは、3人のドナーでの3つの個別の実験からプールされた結果を示し、ヒストグラムBは、2人のドナーでの2つの個別の実験からプールされた結果を示す。統計的有意性は、Dunnettの事後検定による一元配置分散分析によって決定され、ここで、
*、
***はそれぞれp<0.05またはp<0.005を示す。エラーバーは標準偏差を表す。
【
図8】エクスビボでアンプリゲン(登録商標)、IFNカクテル、R848、および腫瘍特異的溶解物で成熟させた樹状細胞と共培養されたステージ1、2、および3の乳癌患者のPBMCは、インビトロで細胞傷害性Tリンパ球を介した原発性乳癌細胞の細胞死をもたらす。成熟した樹状細胞を図のレジェンド2に示すように調製した。その後、成熟した樹状細胞を37℃で7日間、1:10の比率でPBMCと共培養した。原発性乳癌細胞は、1:10の比率でプライミングされたPBMC(エフェクター細胞)と共に若しくは無し(PBMC無し)でインキュベートするか、または原発性細胞は様々な比率でエフェクターT細胞と共に37℃で4時間インキュベートした。LDHアッセイ(Cytotoxicity Detection KitPlus LDH;Roche、Germany)を使用して細胞毒性(AおよびB)を決定し、Becton Dickinsonのアポトーシス検出キットを使用したフローサイトメトリーにより、原発性乳癌細胞の細胞死(CおよびD)を測定した。エラーバーは標準偏差を表す。
【
図9】本明細書に開示される成熟方法で成熟させた樹状細胞は、IL12p70発現により評価されるように、国際公開第2014136845号に記載されているものよりも高い有効性を有することを示す図である。前に示したように未成熟樹状細胞を調製した。未成熟樹状細胞に100μg/mlのMCF-7溶解物をロードした。37℃で6時間インキュベートした後、細胞をIFN含有カクテルまたはアンプリゲン(登録商標)、IFN含有カクテルおよびR848を用いて37℃で42時間成熟させた。未成熟樹状細胞または成熟樹状細胞の上清からのIL-12p70のレベルは、Mabtech(USA)のELIZAPRO IL-12p70検出キットを製造業者の指示に従って使用して決定した。統計的有意性は、Dunnettの事後検定の分散分析を用いて測定した。
*はp<0.05を表す。エラーバーは標準偏差を表す。
【
図10】PPD、アンプリゲン、IFNカクテルおよびR848またはIFNカクテルのみで成熟した樹状細胞は、高レベルの成熟マーカーCD86およびCD83を産生することを示す図である。本文に示されるように成熟樹状細胞を調製し、成熟表現型をフローサイトメトリーにより決定した。ヒストグラムは、3つの独立した実験および3人のドナーのサンプルからのプールされた結果を示す。エラーバーは標準偏差を表す。
【
図11】PPDおよび完全なカクテルでプライミングおよび成熟させた樹状細胞は、高レベルのTh1エフェクターサイトカインIL-12p70を産生することを示す図である。IL-17p70のレベルは、成熟樹状細胞の培養上清から、IL-12p70 ELISAPRO検出キットを製造業者の取扱説明書(Mabtech、米国)に従って使用して決定された。ヒストグラムは、3つの独立した実験および3人のドナーのサンプルからのプールされた結果を示す。エラーバーは標準偏差を表す。
【
図12】介入で成熟させた樹状細胞はエフェクター細胞をプライミングする能力を持ち、インビトロで結核菌を殺菌的に封じ込めることを示す図である。エフェクター細胞は、37℃で7日間、成熟樹状細胞でプライミングするかまたはプライミングしなかった。その後、エフェクター細胞を、結核菌に感染したMDMと37℃で24時間共培養した。結核菌の封じ込めは、標準的な方法を使用したCFUのカウントにより決定された。ヒストグラムは、3つの独立した実験および3人のドナーのサンプルからのプールされた結果を示す。エラーバーは標準偏差を表す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで、本発明のすべてではないがいくつかの実施形態が示される添付の図面を参照して、以下に本発明をより十分に記載する。
記載された本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるべきではなく、修正および他の実施形態が本発明の範囲内に含まれることが意図される。本明細書において特定の用語が使用されるが、それらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用され、限定の目的ではない。
【0014】
本明細書全体および以下の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数形を含む。
本明細書で使用される用語および表現は、説明を目的とするものであり、限定と見なされるべきではない。本明細書で使用される用語「含む」、「含有する」、「有する」および「含まれる」およびその変形の使用は、その後に列挙される項目およびその同等物ならびに追加項目を包含することを意味する。
本発明は、樹状細胞成熟カクテルならびに癌および感染症に対する抗原を提示する成熟樹状細胞を調製するための樹状細胞成熟カクテルを使用する方法に関する。
本明細書に記載の技術および方法論は、免疫応答を高める成熟樹状細胞の調製を支援する。
【0015】
出願人は、癌および他の感染症に対する免疫療法的介入として使用するための成熟樹状細胞を首尾よく調製するために、本発明の方法が有用であることを示した。
本発明の成熟カクテルはこれまで記載されておらず、他の既知の成熟カクテルよりも有効であることが示される成熟剤の独特な組み合わせを提示する。
本発明の成熟カクテルは、Toll様受容体-3アゴニスト(アンプリゲン(登録商標))、インターロイキン1β(IL-1β)、インターフェロンα(INF-α)、インターフェロンγ(INF-γ)CD40LおよびToll様受容体7/8アゴニスト(R848)を含む。
【0016】
「細胞培養」という用語は、宿主体の外側の人工的環境で親組織から解離した細胞の維持および成長、培養、または拡大を指す。これは、インビトロ環境または、エクスビボ環境であり得る。「細胞培養」という用語の使用は一般的であり、「組織培養」という用語と互換的に使用できる。「細胞培養」および「組織培養」の両方の用語は、個々の細胞、細胞のグループ、異なるまたは同様の細胞タイプ、組織、および器官のグループまたは混合物を指す場合に使用できる。
用語「増殖培地」、「細胞培養培地」、「培養培地」、または「組織培養培地」は互換的に使用することができ、細胞、組織、または器官を培養するための栄養溶液を指す。
【0017】
本発明のワクチンまたは成熟樹状細胞は、単独で、または他の化合物と組み合わせて、アジュバントまたは薬学的に許容される担体などの任意の担体の存在下で、哺乳動物、例えば人間または動物への投与に適した形態で提供することができる。
本明細書で使用する「薬学的に許容される担体」または「賦形剤」には、生理学的に適合性の、ありとあらゆる抗菌剤および抗真菌剤、コーティング、分散媒、溶媒、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。「薬学的に許容される担体」は、対象への成熟樹状細胞またはワクチンの投与に安全に使用され得る固体または液体の充填剤、希釈剤またはカプセル化物質を含んでもよい。薬学的に許容される担体は、エアロゾル、嚢内、大槽内、頭蓋内、筋肉内、鼻腔内、眼窩内、腹腔内、脊髄内、くも膜下腔内、静脈内、脳室内、眼内、経口、非経口、皮下、舌下または局所的な投与に適したものであり得る。薬学的に許容される担体には、滅菌水溶液の調製のための滅菌水溶液、分散液および滅菌粉末が含まれる。薬学的に活性な物質の調製のための媒体および薬剤の使用は、当該分野で周知である。任意の従来の培地または薬剤が成熟樹状細胞と適合しない場合、本発明のワクチンにおけるそれらの使用は企図されない。補助的な活性化合物もまた、ワクチンに取り込むことができる。
【0018】
抗原提示成熟樹状細胞またはワクチンを、癌または感染症の予防的治療を受ける対象、癌または感染症に罹患している患者、および癌または感染症に関連する状態の前兆である対象に投与するのに適した製剤は、本発明の範囲内である。エアロゾル、嚢内、大槽内、頭蓋内、筋肉内、鼻腔内、眼窩内、腹腔内、脊髄内、くも膜下腔内、静脈内、脳室内、眼内、経口、非経口、皮下、舌下、または局所的な投与のような任意の適切な投与経路を使用してもよい。
本明細書で使用される「対象」という用語は、哺乳動物、例えば、ヒトまたは動物を含む。
【0019】
ワクチン製剤については、本発明の抗原提示成熟樹状細胞の有効量を、単独でまたは他の化合物と組み合わせて、免疫学的アジュバント、例えば水酸化アルミニウムジメチルジオクタデシルアンモニウムまたはフロイント不完全アジュバントとともに提供することができる。本発明の抗原提示成熟樹状細胞はまた、免疫原性を高めるために、適切な担体および/またはウシ血清アルブミン若しくはキーホールリンペットヘモシアニンなどの他の分子と連結されてもよい。
いくつかの実施形態では、本発明による抗原提示成熟樹状細胞またはワクチンは、使用説明書とともに、任意で担体および/またはアジュバントとともにキットで提供されてもよい。
【0020】
本発明による抗原提示成熟樹状細胞またはワクチンの「有効量」には、治療的有効量、免疫学的有効量、または予防的有効量が含まれる。
「治療的有効量」とは、癌または感染症またはそのような癌または感染症に関連する状態の治療のような、所望の治療結果を達成するために必要な用量および期間で、有効な量を指す。治療の結果は、例えば、癌または感染症に関連する病理の発達の遅れ、免疫系の刺激、または治療的利益を決定する他の方法によって測定され得る。抗原提示成熟樹状細胞の治療的有効量は、個体の病状、年齢、性別および体重、ならびに個体において抗原提示成熟樹状細胞が所望の応答を誘発する能力などの要因によって異なり得る。投与計画は、最適な治療反応を提供するために調整されてもよい。治療的有効量はまた、治療的に有益な効果が、任意の抗原提示成熟樹状細胞の毒性または有害効果を上回る量である。
【0021】
本発明の抗原提示成熟樹状細胞またはワクチンのいずれかの用量は、対象の症状、年齢および体重、治療または予防される障害の性質および重症度、投与経路、治療中の疾患およびワクチンの形態に依存して異なる。本発明の抗原提示成熟樹状細胞またはワクチンのいずれも、単回投与または複数回投与で投与され得る。本発明の抗原提示成熟樹状細胞またはワクチンの用量は、当業者に知られる技術により、または本明細書で教示されるように容易に決定され得る。
「免疫原的に有効な量」とは、所望の免疫応答を達成するのに必要な用量および期間で、有効な量を意味する。所望の免疫応答には、免疫応答、例えばTまたはB細胞応答の刺激または誘発が含まれ得る。
「予防的有効量」とは、感染症に関連する状態の発症の予防のような、所望の予防結果を達成するのに必要な用量および期間で、有効な量を指す。典型的には、予防的投与量は疾患の前または初期の段階で対象に使用されるので、予防的有効量は治療的有効量よりも少なくなり得る。
用量の値は、緩和される状態の重症度によって異なり得る。いずれか特定の対象については、個々の必要性および本発明の抗原提示成熟樹状細胞またはワクチンを投与する者または投与を管理する者の判断に従って、特定の用量計画を経時的に調整してもよい。本明細書に記載の用量範囲は例示のみであり、選択され得る用量範囲を限定するものではない。ワクチン中の抗原提示成熟樹状細胞の量は、個体の病状、年齢、性別、体重などの要因によって異なり得る。用量計画は、最適な治療反応を提供するために調整されてもよい。例えば、単回用量を投与してもよいし、複数回用量を経時的に投与してもよい。投与の容易さおよび用量の均一性のために、用量単位形態でワクチンを処方することが有利になり得る。
【0022】
「予防する」という用語は、癌または感染症、または他の医学的疾患または状態に関連して使用される場合、当技術分野で十分に理解されており、組成物を投与されていない対象と比較して、対象における状態の発症の頻度を減らすかまたは発症を遅らせる組成物の投与を含む。疾患の予防には、例えば、治療集団の対未治療対照集団における癌または感染症の診断数の減少、および/または治療集団の対未治療対照集団における癌または感染症の発症の遅延が含まれる。
「予防的または療法的」治療という用語は、当業者に周知であり、本発明の抗原提示成熟樹状細胞またはワクチンの1つまたは複数の対象への投与を含む。抗原提示成熟樹状細胞またはワクチンが、望ましくない状態(例えば、対象の疾患または他の望ましくない状態)の臨床症状発現の前に投与される場合、治療は予防的である、すなわち、望ましくない状態の発生に対して宿主を保護するものであり、一方で、望ましくない状態の症状発現後に投与される場合、治療は療法的である(すなわち、それは既存の望ましくない状態またはその副作用を軽減、改善、または安定化することを意図している)。
【0023】
本発明の抗原提示成熟樹状細胞またはワクチンの毒性および療法有効性は、LD50およびED50を決定するなど、細胞培養における標準的な製薬手順または実験動物を使用することによって決定することができる。細胞培養および/または動物研究から得られたデータを使用して、対象に使用するための用量範囲を策定してもよい。本発明の抗原提示成熟樹状細胞またはワクチンの用量は、好ましくは、ED50を含むが毒性をほぼまたは全く持たない循環濃度の範囲内にある。用量は、利用される用量形態および利用される投与経路に依存して、この範囲内で変わり得る。本発明のワクチンにおいて、治療有効用量は、細胞培養アッセイから最初に推定され得る。
以下の例は、例示目的として提供され、制限のために提示するものではない。
【実施例】
【0024】
(実施例1)
血液由来の単球から未成熟樹状細胞(iDC)を生成するために必要な最適な培養条件の決定。
循環樹状細胞は、通常、循環PBMCの非常に小さな集団(<1%)のみを代表する。このため、実験目的に十分な数の細胞を生成するために、IL-4およびGM-CSFを含有するCellGro(登録商標)(CellGenix,USA)の存在下で細胞を37℃で5日間インキュベートすることにより、樹状細胞を単球から分化させることにした。その後、光学顕微鏡を使用して未成熟樹状細胞を表現型特性評価した(
図1)。異なる濃度のIL-4およびGM-CSFの非存在下または存在下で培養された細胞の形態の違いを視覚化するために、標準的なヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色技術を使用して細胞を染色し、光学顕微鏡(ニコン)を使用して視覚化した。IL-4およびGM-CSFの非存在下で培養された細胞は、100μg/mL IL-4およびGM-CSFの存在下で培養された細胞と比較した場合、形態的に異なっていた(
図1)。処理された細胞は形がより大きく見えたが、より重要なことに細胞の外側に樹状突起が見えた。12.5、25、および50μg/mLのIL-4およびGM-CSFの存在下で培養された細胞の一部も樹状突起を発現したが、100μg/mL IL-4およびGM-CSFの存在下で細胞を培養した場合に観察されたものよりもはるかに低い頻度であった(
図1)。
【0025】
成熟樹状細胞を生成するための成熟方法の最適化。
樹状細胞の成熟表現型をex vivoで最適化できるかどうかを判断するために、アンプリゲン(登録商標)、R848、またはインターフェロン(IFN)含有カクテル(IFN-α、IFN-γ、CD40LおよびIL-1β)の様々な組み合わせで樹状細胞を成熟させた。単球、未成熟樹状細胞および成熟樹状細胞は、形態学的に互いに異なっていた(
図2A)。未成熟および成熟樹状細胞は単球より大きく、細胞の表面に樹状突起がはっきりと見えた。成熟樹状細胞は、より顕著な樹状突起を有し、未成熟樹状細胞とは構造的に異なっていた。
次に、我々はフローサイトメトリーを使用して、成熟樹状細胞が高レベルの共刺激分子CD80、CD86、CCR7、CD83を発現しているか否かを決定することを望んだ(
図2B)。HLA-DRおよびCD40の両方の発現レベルは、試験したすべての治療条件について、iDCで観察されたレベルを超えて増加した(データは示さず)。細胞をアンプリゲン(登録商標)と組み合わせたIFN含有カクテルで成熟させると、アンプリゲン(登録商標)およびIL-1β単独の場合よりも重要な成熟マーカーCD86、CD80およびCD83の統計的に有意な増加が観察された。IFN含有カクテルを成熟に含めると、CCR7のレベルも有意に増加した。
【0026】
ワクチンがインビボでどれだけうまく働くかの重要な予測因子である、成熟樹状細胞がIL-12p70およびIFN-γを産生するか否かの決定。
成熟樹状細胞が生物学的に活性なIL-12p70およびIFN-γを産生する能力は、樹状細胞ワクチンがどれだけ臨床的に有効であり得るかの直接的な指標である。何故なら、それは抗腫瘍反応を促進する可能性を持つインビボでのエフェクターT細胞を活性化する能力を持っているためである(Curtsinger et al.(1999),Schmidt and Mescher(1999),Xiao Z et al.(2009))。このため、我々は、それぞれIL12p70 ELISAおよびIFN-γELISPOTアッセイを使用して、成熟樹状細胞からのIL12-p70およびIFN-γの相対発現レベルを決定することを望んだ(
図3)。
【0027】
iDCおよび非成熟樹状細胞は検出可能なIL12p70を産生しなかったが、アンプリゲン(登録商標)+IL-1βおよびR848+IL-1βの存在下では、上清中におよそ0.05ng/mLから0.15ng/mLのIL12p70が検出された(
図3A)。樹状細胞をIFN含有カクテル単独またはアンプリゲン(登録商標)および/またはR848と組み合わせて成熟させた場合、2~6ng/mLの間のIL12-p70発現の著しい増加が検出された。アンプリゲン(登録商標)、IFN含有カクテルおよびR848の存在下では、アンプリゲン(登録商標)およびIL-1β単独と比較して、IL12p70発現のおよそ40倍の増加が検出された(
図3A)。
アンプリゲン(登録商標)/IL-1βおよびR848/IL-1β単独の存在下では、成熟樹状細胞は10
6成熟樹状細胞当たりおよそ500SFUのIFN-γを産生した(
図3B)。しかしながら、IFN含有カクテルのみの存在下、またはアンプリゲン(登録商標)および/またはR848との組み合わせでは、およそ3~5倍のIFN-γの増加が観察された。
【0028】
(実施例2)
前臨床試験患者とサンプル。
前臨床試験では、ステージ1、2、および3の乳癌を有する152人の女性患者に研究への同意を求めた(
図4)。25人の患者は辞退し、112人はホルモン治療中、化学療法中、HIV+、免疫不全、遺伝的障害の所有または個人的な理由で試験対象患者基準を満たしていなかった。研究に同意して採用された残りの15人のうち、さらに2人は応募を取り下げ、2人は、応募時にホルモン治療を受けていることを明らかにしていなかったか、研究を完了するためには生検材料が十分でなかったため、除外された。残りの11人の女性患者を前臨床試験に含めた。
【0029】
研究コホートの個体群統計を表1に示す。患者の年齢の中央値は48歳であった。患者は非浸潤性のステージ2乳癌を有する可能性が高く、腫瘍は、免疫組織化学(IHC)によって決定されるエストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)およびヒト表皮成長受容体2(HER-2)を含む異なる乳癌抗原を発現した。原発性乳癌細胞はすべて、高レベルのmucin-1(MUC-1)および、フローサイトメトリーによって決定される上皮マーカー(上皮細胞接着分子;Ep-CAM)および上皮前駆マーカー(インテグリンアルファ6;CD49f)の不定のレベルを発現した。乳癌患者は、異なるHLAタイプも発現し(表1)、全員が研究への募集時に正常なヘモグロビンレベル、白血球数および赤血球数を有していた(データは示さず)。本発明者らは、各患者をHLAタイプ分けし、研究に使用されるHER-2およびMUC-1四量体(HLA-A02)にマッチングさせることができた。成熟樹状細胞およびCD8+T細胞上のMUC-1およびHER-2の抗原提示を示すために、四量体アッセイを使用した。したがって、四量体アッセイは、HLA-02陽性の個人に対してのみ実施された。
【0030】
アンプリゲン(登録商標)、IFN含有カクテルおよびR848またはIFN含有カクテルのみで成熟した乳癌患者の樹状細胞は、高レベルの重要な共刺激分子を発現する。
前臨床試験に十分な量の単球を得るために、各患者はColbe Spectra Optia(登録商標)Apheresis Systemを使用した標準的な白血球除去法に同意した。白血球除去に続いて、PBMCを洗浄し、単球をプラスチック付着により単離した。未成熟樹状細胞への分化後、37℃で6時間、100g/mLの腫瘍特異的溶解物(溶解物)を含めるかまたは含めないで成熟させた。
【0031】
【表1】
その後、細胞を、IFNカクテルのみ、またはアンプリゲン(登録商標)、IFN含有カクテルおよびR848を含めるかまたは含めないで、37℃で42時間、成熟させた。成熟表現型は、フローサイトメトリーによって決定された(
図5)。腫瘍特異的溶解物のみ、IFN含有カクテルのみ、またはアンプリゲン(登録商標)、腫瘍特異的溶解物、IFN含有カクテルおよびR848と共に成熟させた樹状細胞は、iDCと比較して有意に高いCD40レベルを発現した(データは示さず)。
さらに重要なことは、アンプリゲン(登録商標)、腫瘍特異的溶解物、IFN含有カクテルおよびR848またはIFN含有カクテル単独を用いて成熟させた樹状細胞は、有意に高いレベルの重要成熟マーカー、CD80(74%;p<0.05)、CD86(82%;p<0.005)、CCR7(50%;p<0.05)およびCD83(77%;p<0.005)を、iDC(それぞれ51%対6%対22%対1.8%)または腫瘍特異的溶解物のみで成熟した樹状細胞(それぞれ65%対14%対33%対7%;
図5)と比較して、発現した。
【0032】
乳癌患者の成熟樹状細胞は、高レベルのTh1エフェクターサイトカインIL-12p70を産生する。
生物学的に活性なIL-12p70を産生する成熟樹状細胞の能力は、抗腫瘍応答を促進させる可能性を持つエフェクターT細胞をインビボで活性化する能力を持つため、樹状細胞ワクチンがどれだけ臨床的に有効であり得ることの直接的な指標である(Curtsinger et al.(1999),Schmidt and Mescher(1999),Xiao Z et al.(2009))。IL-12p70は、CD8+エフェクター機能、T細胞活性化の調節に不可欠であることが示されており、乳癌患者の間でより好ましい臨床転帰の重要な指標であることが示されている(Curtsinger et al.(1999),Schmidt and Mescher(1999),Xiao Z et al.(2009),Kristensen et al.(2012))。IL-12p70の活性化は、TLRおよびIFN-γによって調節される(Hayes et al.(1995),Mosca et al.(2000),Snijders et al.(1998))。この理由から、本発明者らは、IL12p70 ELISAを使用して、成熟樹状細胞の上清からIL12-p70の相対的発現レベルを決定することを望んだ(
図6)。
【0033】
腫瘍特異的溶解物のみで成熟した未成熟樹状細胞または樹状細胞は、検出可能なレベルのIL-12p70を産生しなかった(
図6)。しかしながら、樹状細胞は腫瘍特異的溶解物であるアンプリゲン(登録商標)、IFNカクテルおよびR848で成熟し、有意に高いレベルのIL-12p70(1.21ng/ml、SD=0.3~3.7、p<0.005;
図6)を発現した。IFNカクテルのみで細胞を成熟させた場合、IL-12p70の平均濃度は0.6ng/mlであり、これは腫瘍特異的溶解物、アンプリゲン(登録商標)、IFN含有カクテルおよびR848で成熟した細胞とは顕著に異なっていた(p<0.005)。
【0034】
腫瘍特異的溶解物成熟樹状細胞でプライミングされたCD8+T細胞のT細胞受容体(TCR)は、MHC-1特異的四量体上のHER-2およびMUC-1抗原を検出できる。
主要組織適合性-1複合体(major histocompatability-1 complex;MHC-1)特異的四量体はHLA-02陽性であり、その結果、マッチングした患者サンプルのみを抗原提示について分析した。樹状細胞は単球から分化し、37℃で6時間、腫瘍特異的溶解物を用いるかまたは用いずに成熟させた。その後、前述のように、細胞をアンプリゲン(登録商標)、IFNカクテル、およびR848で成熟させた。エフェクター細胞を、PBMCと成熟樹状細胞を1:10(成熟DC:PBMC)の比で、37℃で7日間共培養することにより生成した。HER-2(4.5%;p<0.005)およびMUC-1(19%;p<0.05)四量体の両方が、腫瘍特異的溶解物成熟樹状細胞でプライミングされたCD8+T細胞上のTCRによって検出された(
図7A)。腫瘍特異的溶解物の非存在下で成熟させた樹状細胞でプライミングされたCD8+T細胞のTCRにより、HER-2(3%;p<0.05)およびMUC-1(11%)抗原認識において1.3および1.9倍の減少が観察された。
【0035】
アンプリゲン(登録商標)、IFN-カクテル、R848および腫瘍特異的溶解物成熟樹状細胞でプライミングしたTリンパ球での原発性乳癌細胞の細胞傷害性T細胞媒介細胞殺傷。
本発明者らは、成熟樹状細胞でプライミングしたエフェクター細胞が、インビトロで原発性乳癌細胞に対して殺腫瘍性であるTリンパ球媒介細胞傷害性応答を誘発できるかどうかを決定することを望んだ。エフェクター細胞を示されたとおりに生成し、LDHアッセイ(Cytotoxicity Detection KitPlus LDH;Roche,Germany;
図8AおよびB)を使用して原発性乳癌細胞の細胞傷害性が決定され、Becton Dickinsonのアポトーシス検出キットを使用したフローサイトメトリーにより原発性乳癌細胞の細胞死が測定された(
図8CおよびD)。
PBMCがアンプリゲン(登録商標)/IFN-カクテル/R848/腫瘍特異的溶解物成熟樹状細胞でプライミングされた場合、乳癌原発性細胞の細胞傷害性の中央値レベルは、エフェクター細胞非存在下でインキュベートされた原発性細胞と比較して75%であった(
図8A;p<0.01)。対照的に、細胞傷害性のレベルは、PBMCがプライミングされていない状態(樹状細胞無しのPBMC)または腫瘍特異的溶解物またはIFN含有カクテルのみで成熟された樹状細胞でプライミングされた場合、それぞれ10%、11%および15%であった。また、PBMCをアンプリゲン(登録商標)/IFN-カクテル/R848/腫瘍特異的溶解物成熟樹状細胞でプライミングしたときに観察された細胞傷害性のレベルが用量依存的であることも示した(
図8B)。
アンプリゲン(登録商標)/IFN-カクテル/R848/腫瘍溶解物成熟樹状細胞でプライミングされたPBMCがインビトロで原発性乳癌細胞に対する細胞傷害性応答を誘発できることを示したので、我々はこれらの細胞がインビトロで殺腫瘍性であるか否かを決定することを望んだ。アンプリゲン(登録商標)/IFN-カクテル/R848/腫瘍溶解物成熟樹状細胞でプライミングしたエフェクター細胞では、エフェクター細胞と共に培養していない原発性細胞と比較して、細胞傷害性媒介原発性乳癌細胞殺傷の2倍の増加(p<0.05)が観察された(
図8C)。また、PBMCがアンプリゲン(登録商標)/IFN-カクテル/R848/腫瘍溶解物成熟樹状細胞でプライミングされた場合、原発性乳癌細胞殺傷の用量依存性増加が観察された(
図8D)。
【0036】
成熟樹状細胞は無菌であり、エンドトキシン/マイコプラズマを含まず、凍結保存は成熟表現型や生存率に影響しない。
フェーズI/Ila臨床試験では、ワクチンは2か月間に渡って投与される。この理由のため、我々は2か月の凍結保存が樹状細胞の成熟表現型または生存率に影響を与えるか否かを決定することを望んだ。表2に示すように、凍結保存は樹状細胞の成熟表現型または生存率に影響しない。共刺激マーカー、CD80、CD86、CCR7およびCD83の発現レベルは、それぞれ84%、86%、68%および77%で維持されていた。平均生存率は74%であり、すべてのワクチン製剤が無菌であり、エンドトキシン/マイコプラズマを含まないことを示している。
【0037】
本発明は、本発明者らが、エクスビボでアンプリゲン(登録商標)、IL-1β、IFN-γ、IFN-α、CD40L、R848および腫瘍特異的溶解物を用いて乳癌患者由来樹状細胞を最適に成熟させたことを示す。これらの成熟樹状細胞は抗原を提示することができ、PBMCをプライミングする能力を持っていたため、Th1細胞傷害性Tリンパ球を介したインビトロでの患者の原発性乳癌細胞の死滅をもたらした。本発明者らはさらに、成熟樹状細胞が無菌であり、エンドトキシン/マイコプラズマを含まず、2か月の凍結保存後にそれらの表現型および高い生存率を維持したことを示した。患者由来の原発性細胞をインビトロで使用した樹状細胞ワクチンの有効性を以前に試験した研究はない。
【表2】
【0038】
(実施例4)
提案の成熟方法を使用した樹状細胞成熟カクテルの市販カクテルに対する有効性を支持するインビトロデータ
本明細書に記載の成熟方法の有効性を証明するために、本発明の成熟を、IFNγ、IFNα、CD40LおよびIL-1βを含むカクテルからなる特許出願番号WO2014136845A1に開示された方法と比較した。特許カクテルには、Toll様受容体(TLR)-3アゴニスト、アンプリゲン(登録商標)またはTLR-7アゴニスト、R848は含有されていない。
【0039】
未熟樹状細胞は、特許明細書に示されるように調製された。未成熟樹状細胞に、主要出願の方法で示されるように調製された100μg/mlのMCF-7溶解物をロードした。37℃で6時間インキュベートした後、細胞をIFN含有カクテル(25ng/ml IFN-γ、10ng/ml IFN-α、1μg/mL CD40Lおよび10ng/mL IL-1β;特許出願番号WO2014136845A1)、または100μg/mL アンプリゲン(登録商標)、IFN含有カクテルおよび2.5μg/mL R848で成熟させた。37℃で42時間後、上清を収集し、-80℃で保存した。その後、IL-12p70のレベルを、Mabtech(USA)からのIL-12p70酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を製造業者の取扱説明書に従って使用して決定した。
予想どおり、未成熟樹状細胞から非常に低いレベルのIL-12p70が検出された(
図1)。しかしながら、アンプリゲン(登録商標)、IFN含有カクテルおよびR848で成熟した樹状細胞から検出されたIL-12p70のレベルは2ng/mlに近かった。特許出願番号WO2014136845A1に記載された成熟方法で成熟した樹状細胞から観察されたIL12p70のレベルは、本明細書に記載された方法よりも2.1倍低かった(
図1;p<0.05)。このデータは、この特許に開示される成熟方法が、いかなる現在特許されている成熟方法よりもはるかに優れていることを証明している。結果として、これらの樹状細胞は臨床現場で非常に高い有効性を有することが期待されるであろう。
【0040】
(実施例5)
健康なボランティアからの樹状細胞は、精製タンパク質誘導体、IFN含有カクテル、およびR848を用いて最適にプライミングおよび成熟させることができる。
PBMCおよび未成熟樹状細胞は、前に示したように調製した。細胞を精製タンパク質誘導体(PPD)で、37℃で6時間プライミングし、その後、37℃で42時間、IFN含有カクテル(10ng/mL IFNα、25ng/mL IFNγ、1μg/mL CD40Lおよび10ng/mL IL-1β)、100μg/mL アンプリゲン(登録商標)および/または2.5μg/mL R848 アンプリゲン(登録商標)(組み合わせて完全カクテルと呼ぶ)を用いるかまたは用いずにまたは組み合わせて成熟させた(
図10)。12μg/ml精製タンパク質誘導体でプライミングされ、完全カクテルまたはIFNカクテルのみで成熟させた樹状細胞は、未成熟樹状細胞と比較して、高レベルのCD86(それぞれ87%[p<0.01]および91%[p<0.005])およびCD83(それぞれ76%および84%[p<0.05]))を発現した(10.4%対24%;
図10)。非プライミング/成熟のままの細胞または精製タンパク質誘導体のみでプライミングされた細胞は、未成熟樹状細胞と同レベルのCD86(それぞれ13.6%および38.4%)およびCD83(それぞれ33%および31%)を発現した。
【0041】
精製タンパク質誘導体および完全カクテルでプライミングおよび成熟した樹状細胞は、高レベルの重要なTh1エフェクターサイトカインIL-12p70を産生する。
精製タンパク質誘導体および完全カクテルを用いて樹状細胞を最適に成熟させることができることを示したので、これらの樹状細胞が高いレベルのIL12-p70を産生する能力があるか否かを決定したいと望んだ。精製タンパク質誘導体および完全カクテルでプライミング/成熟した樹状細胞が、0.32ng/mlのIL-12p70を産生したことを示す(
図11)。対照的に、IFN含有カクテルのみで成熟した樹状細胞から産生されるレベルは、およそ2倍低かったが、サンプル数が少ないために有意性は確立できなかった(n=3)。ここに示したデータは、ワクチンがTBに対するTh-1免疫応答を支援するという証拠を提供しているが、これは、CD8+エフェクター機能、T細胞活性化の調節に重要であることが示されており、より好ましい癌患者の臨床転帰における重要な指標であることが示されている。
精製タンパク質誘導体および完全カクテルで成熟させた樹状細胞は、エフェクター細胞をプライミングする能力を持ち、インビトロで結核菌を封じ込める。
【0042】
高レベルのTh-1エフェクターサイトカインIL-12p70を発現する樹状細胞をインビトロで最適に成熟できることを示したので、我々は成熟樹状細胞がインビトロでエフェクター細胞をプライミングして、結核菌の封じ込めが増加するか否かを決定したいと望んだ。精製タンパク質誘導体および完全カクテルで成熟させた樹状細胞でプライミングされたエフェクター細胞は、プライミングされていないままであるか、または精製タンパク質誘導体若しくはIFN含有カクテルで成熟させた樹状細胞でプライミングしたエフェクター細胞と比較して、エフェクターを介した封じ込めを2倍増加させた(p<0.05;
図12)。
【0043】