(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】鋼材洗浄装置および鋼材の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B08B 3/02 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B08B3/02 D
(21)【出願番号】P 2023025670
(22)【出願日】2023-02-22
【審査請求日】2023-07-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000179915
【氏名又は名称】ジェコス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391015236
【氏名又は名称】大裕株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】萩原 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】笠原 伸正
(72)【発明者】
【氏名】西尾 慧太
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-217443(JP,A)
【文献】特開2001-122085(JP,A)
【文献】特開2008-297884(JP,A)
【文献】特開2003-171966(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0179123(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/02
E04G 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の鋼材が敷き並べられる鋼材設置部と、前記鋼材を洗浄するための洗浄水を噴き出す洗浄機と、前記洗浄機を前記鋼材設置部の任意の平面座標位置に移動させる水平方向移動手段と、を備えた鋼材洗浄装置であって、
前記洗浄機は、前記鋼材設置部に敷き並べられた鋼材の被洗浄面に向けて洗浄水を噴き出す1または複数の固定ノズルと、被洗浄面と交差する方向の面内で弧状の軌跡を描いて揺動しながら洗浄水を噴き出す1または複数の揺動ノズルとを備え、
前記水平方向移動手段は、前記洗浄機を前記鋼材の長手方向と直交する方向に往復動させるための横方向移動手段と、前記洗浄機を前記鋼材の長手方向に移動させるための縦方向移動手段とからなり、前記鋼材設置部は前記鋼材の長手方向に連設される第1区画と第2区画とで構成されている鋼材洗浄装置を用いて、多数本の鋼材をまとめて洗浄するための鋼材の洗浄方法であって、
(1) 洗浄の対象となる複数本の鋼材を前記鋼材設置部の前記第1区画に並列させて敷き並べるステップと、
(2) 前記鋼材洗浄装置の洗浄機を前記横方向移動手段により前記鋼材の長手方向と直交する方向に移動させる工程と、前記縦方向移動手段により所定距離だけ前記鋼材の長手方向に移動させる工程を繰り返して、前記第1区画に敷き並べた複数本の鋼材を洗浄するとともに、洗浄の対象となる次の複数本の鋼材を前記鋼材設置部の前記第2区画に並列させて敷き並べるステップと、
(3) 前記鋼材洗浄装置の洗浄機を前記横方向移動手段により前記鋼材の長手方向と直交する方向に移動させる工程と、前記縦方向移動手段により所定距離だけ前記鋼材の長手方向に移動させる工程を繰り返して、前記第2区画に敷き並べた複数本の鋼材を洗浄するとともに、片面の洗浄が終わった前記第1区画の複数本の鋼材を反転させるステップと、
(4) 前記鋼材洗浄装置の洗浄機を前記横方向移動手段により前記鋼材の長手方向と直交する方向に移動させる工程と、前記縦方向移動手段により所定距離だけ前記鋼材の長手方向に移動させる工程を繰り返して、反転させた前記第1区画の複数本の鋼材を洗浄するとともに、片面の洗浄が終わった前記第2区画の複数本の鋼材を反転させるステップと、
(5) 前記鋼材洗浄装置の洗浄機を前記横方向移動手段により前記鋼材の長手方向と直交する方向に移動させる工程と、前記縦方向移動手段により所定距離だけ前記鋼材の長手方向に移動させる工程を繰り返して、反転させた前記第2区画の複数本の鋼材を洗浄するとともに、両面の洗浄が終わった前記第1区画の複数本の鋼材を撤去するステップと、
(6) 両面の洗浄が終わった前記第2区画の複数本の鋼材を撤去するステップと、
を有することを特徴とする鋼材の洗浄方法。
【請求項2】
請求項
1記載の鋼材の洗浄方法において、前記(6)のステップで、両面の洗浄が終わった前記第2区画の複数本の鋼材を撤去するとともに、洗浄の対象となる次の複数本の鋼材を前記鋼材設置部の前記第1区画に並列させて敷き並べ、以後前記(1)~(6)のステップを必要回数繰り返すことを特徴とする鋼材の洗浄方法。
【請求項3】
請求項
1または
2記載の鋼材の洗浄方法において、前記(3)および(4)のステップでの複数本の鋼材を反転させる作業および前記(5)および(6)のステップでの複数本の鋼材を撤去する作業とともに、片面または両面の洗浄が完了した前記鋼材について、破損部および/または不要な固着物の除去作業を行うことを特徴とする鋼材の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソイルセメント柱列壁や山留壁などを構築するために使用した鋼材を洗浄することができる鋼材洗浄装置および鋼材の洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、土留工事や根切り工事において、構造物の地下部分を構築する際に、地面を掘削して形成した穴が崩れないように固定するために矢板などの鋼材を用いてソイルセメント柱列壁や山留壁などを構築する。
【0003】
その後、地下部分の構造が安定した後、ソイルセメント柱列壁や山留壁などを構築した鋼材は引き抜かれ、洗浄して、また違う現場で再利用される。従来、人手による洗浄も行われており非常に手間のかかる作業であるため、このような鋼材を効率良く洗浄する技術が必要とされている。鋼材を洗浄する技術としては例えば特許文献1~3記載の発明がある。
【0004】
特許文献1には、熱交換器から取り外したチューブバンドルに対し、ノズルから高圧水を噴射して洗浄するチューブバンドル洗浄装置が開示されている。このチューブバンドル洗浄装置は、チューブバンドルの上方の長手方向に延在するガイドレールにアーム支持体が移動可能に設置されている。このアーム支持体からチューブバンドルの一側面側へ斜め下方に第1のアームが延設され、他端面側へ斜め下方に第2のアームが延設され、各アームにベースが移動可能に設置され、各ベースにノズルが設置された構成となっている。
【0005】
そして、各ノズルから高圧水を噴射すると共に、アーム支持体をガイドレールに沿って移動させ、また、各ベースの位置を各アームに沿って所定ピッチで移動させることにより、チューブバンドルの全体を2方向から高圧水で洗浄することができる。
【0006】
また、特許文献2には、パイプ状又は板状の建設足場用の仮設機材を加圧水で洗浄する加圧水噴出ガンを小型軽量化する技術として、支持部に旋回機構を介して支持され、旋回軸芯を中心に所定の旋回角度範囲で旋回自在な装置本体と、その装置本体に旋回軸芯と平行な複数本の回転軸芯を中心に回転自在に並列支持され、内部に加圧水の流路が形成された複数本の棒状ノズルヘッドと、棒状ノズルヘッドの長手方向に複数個形成された噴出ノズルと、複数本の棒状ノズルヘッドを回転駆動するとともに、複数本の棒状ノズルヘッドの流路に加圧水を供給する回転・給水機構と、旋回角度範囲内で装置本体の旋回を固定する固定手段とを備え、複数本の棒状ノズルヘッドを一直線状で配列したときの合計長さが仮設機材の種類のうち最大幅の仮設機材の幅と同等であるようにした加圧水噴出ガンが開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、矢板などの鋼板を対象とした鋼板の洗浄装置として、鋼板配置部と、鋼板配置部の配置面の第一方向に沿った方向かつ配置面に向かう方向に洗浄水を吹き付ける洗浄ノズルと、洗浄ノズルを鋼板配置部の配置面の第一方向に沿った方向と交差する第二方向に移動させる洗浄ノズル横行部と、洗浄ノズル横行部を鋼板配置部の配置面の第一方向に沿って移動させる洗浄ノズル縦行部と、洗浄ノズル縦行部および洗浄ノズル横行部の作動を制御する制御部とを備え、制御部によって、洗浄ノズルの第二方向に沿った横行移動と、第一方向における配置面の長さよりも短い距離だけ移動させる縦行移動の繰り返しを制御するようにした洗浄装置が開示されている。
【0008】
上記洗浄装置は、平行に配置された複数の洗浄ノズルを揺動させることで洗浄効果を高めることができ、かつ複数の洗浄ノズルの吹き出し口が往復移動するときの位相がずれるように制御することで、洗浄の対象となる鋼板の洗浄水が洗い流しやすくなるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2013-029232号公報
【文献】特開2016-107171号公報
【文献】特許第6792594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1記載の洗浄装置は、熱交換器から取り外したチューブバンドルを一本一本洗浄する装置であり、また特許文献2記載の装置は建設足場用の仮設機材を対象としたものであり、矢板などの一般に長尺の鋼材を多数本一度に洗浄できるようにしたものではない。
【0011】
特許文献3記載の洗浄装置は、矢板などの鋼板を対象とした洗浄装置であり、長尺の多数本の鋼板を一度に洗浄できるようにしたものであるが、2本の洗浄ノズルを位相がずれるように揺動させながら、縦横に移動させるため洗浄ノズルの支持機構が偏った負荷を受け安定性を保つことが難しい。
【0012】
また、揺動ノズルのみの場合、被洗浄体に対して高さ距離が増減するため洗浄効果にむらが発生し洗浄の仕上がり程度が安定しない。揺動の偏荷重による反動で装置が安定しにくく、装置破損などのトラブルが発生しやすい。装置を安定させるために過大な支持構造を要する。
【0013】
また、鋼板の片面を洗浄した後、鋼板の半対面を洗浄するためには全ての鋼板を裏返す作業が必要であるため、反転させる作業を行っている間、洗浄作業が一旦停止されるため、作業効率が悪いといった問題がある。
【0014】
本発明は、上述のような背景のもと、ソイルセメント柱列壁や山留壁などの工事で使用した矢板などの鋼材を、多数本まとめて効率良く洗浄することができる鋼材洗浄装置および鋼材の洗浄方法を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の鋼材洗浄装置は、複数本の鋼材が敷き並べられる鋼材設置部と、前記鋼材を洗浄するための洗浄水を噴き出す洗浄機と、前記洗浄機を前記鋼材設置部の任意の平面座標位置に移動させる水平方向移動手段と、を備えた鋼材洗浄装置において、前記洗浄機は、前記鋼材設置部に敷き並べられた鋼材の被洗浄面に向けて洗浄水を噴き出す1または複数の固定ノズルと、被洗浄面と交差する方向の面内で弧状の軌跡を描いて揺動しながら洗浄水を噴き出す1または複数の揺動ノズルとを備えていることを特徴とするものである。
【0016】
水平方向移動手段は、鋼材設置部の任意の平面座標位置に洗浄機を移動させるためのもので、鋼材の長手方向に沿った方向や長手方向と交差する方向などに移動させながら洗浄できるようにしている。水平方向移動手段を設けているため、鋼材の洗浄が終了するまで、鋼材を移動する必要はない。
【0017】
洗浄機は、1または複数の固定ノズルが設けられており、鋼材設置部に敷き並べた鋼材の被洗浄面に対する高さを一定に保って洗浄を行うことができる。固定ノズルの他に、1または複数の揺動ノズルも備えており、鋼材の被洗浄面と交差する方向の面内で弧状の軌跡を描いて揺動しながら洗浄することができる。
【0018】
揺動ノズルに加え、鋼材(被洗浄体)に対する高さを一定に保って洗浄を行う固定ノズルを備えることで、揺動ノズルから噴き出す洗浄水によって洗浄水の流れを発生させながら、固定ノズルからの洗浄水によって局所的に洗浄することができる。強固な汚れなどにも幅広く対応でき、洗浄能力が安定する。
【0019】
鋼材設置部については、仕様や形状などは特に限定されないが、例えば網目構造とすることで、鋼材を洗浄した洗浄水が下方に流れ落ちるようにすることもできる。
【0020】
本発明の鋼材洗浄装置において、前記洗浄機には前記水平方向移動手段に対する上下方向の高さを調整するための洗浄機高さ調整手段が設けられているとよい。
【0021】
洗浄機に水平方向移動手段に対する上下方向の高さを調整するための洗浄機高さ調整手段を設けることで、鋼材のサイズ違いに容易に対応させることができる。また、洗浄機高さ調整手段にアクチュエータを備えることで、例えば排水のために勾配を付けて鋼材設置部に鋼材を敷き並べた場合、勾配の高さの変位に合わせて自動制御で対応することができ、鋼材に対するノズルの高さを一定に保つことで洗浄能力を安定して発揮できる。
【0022】
また、本発明の鋼材洗浄装置において、前記洗浄機には前記固定ノズルの前記鋼材の被洗浄面に対する高さを調整するための固定ノズル高さ調整手段が設けられているとよい。
【0023】
固定ノズル高さ調整手段を設けることによって、鋼材の被洗浄面に対する高さに合わせて洗浄することができる。鋼材の被洗浄面に沿って、固定ノズルの高さを調整することができ、より洗浄能力が向上する。
【0024】
固定ノズルは水平移動に伴い、鋼材の形状や高さに応じて固定ノズルの支持部材をアクチュエータで起伏または直線運動で上下させてもよく、これにより鋼材の洗浄面に対するノズルの高さを常に一定に保つことで洗浄効果を向上できる。
【0025】
上下移動の制御は、所定位置に展開した鋼材に対して予め定めた軌跡を描くようにプログラムして制御してもよい。または、鋼材の高さを距離センサーで事前検知し、その結果に応じて上下させてもよい。
【0026】
また、前記洗浄機には前記鋼材の被洗浄面に対する前記固定ノズルの傾斜角度を調整するための固定ノズル角度調整手段が設けられていてもよい。
【0027】
固定ノズル角度調整手段によって、鋼材の被洗浄面に対する固定ノズルの傾斜角度を調整して、局所的に強固な汚れを落とすことができる。
【0028】
また、前記洗浄機の前記固定ノズルは先端部が複数に分岐し、分岐したノズルが固定ノズルの基部を中心に旋回する固定旋回ノズルであってもよい。
【0029】
また、本発明の鋼材洗浄装置において、前記洗浄機には前記固定旋回ノズルを洗浄機本体に対し水平方向に移動させるための水平方向移動手段が設けられていてもよい。
【0030】
固定ノズルは鋼材に対する高さを変えずに平面的な旋回または円弧モーションや直線運動による揺動の内のいずれかの運動、またはこれらの運動を複合的に行うことで洗浄範囲を広げることができ、効率的に洗浄できる。
【0031】
前記洗浄機は、前記揺動ノズルに対し、揺動ノズルと相反する方向に揺動するカウンターウェイトを備えているとよい。
【0032】
揺動ノズルと相反する方向に揺動するカウンターウェイトを備えることで揺動ノズルの反動を相殺し、揺動ノズルを支持する鋼材洗浄装置全体の構造を反動の衝撃から保護することができ、合理的な構造で鋼材洗浄装置を構成することができる。
【0033】
また、前記洗浄機は、洗浄機全体を軸回りに旋回させるための旋回手段を備えているとよい。洗浄機に旋回手段を備えることで、容易に洗浄方向を変更することができ、例えば鋼材設置部に敷き並べた鋼材を移動させることなく鋼材に対する洗浄方向を変更できる。
【0034】
前記水平方向移動手段は、前記洗浄機を前記鋼材の長手方向と直交する方向に往復動させるための横方向移動手段と、前記洗浄機を前記鋼材の長手方向に移動させるための縦方向移動手段とからなっているとよく、前記鋼材設置部は前記鋼材の長手方向に連設される第1区画と第2区画とで構成されているとよい。
【0035】
横方向移動手段として、両側に支柱と支柱間に梁部材を架設して門型フレームを形成し、両側の支柱間を鋼材設置部として複数本の鋼材を敷き並べ、門型フレームの梁部材の下面側に洗浄水を噴き出す洗浄機を設けて、洗浄機が門型フレームの梁部材に沿って、鋼材の長手方向と直交する方向に往復動できるようにするとよい。
【0036】
また、門型フレームに縦方向移動手段を設ければ、門型フレームを梁部材の直交方向に平行移動させることができてよい。縦方向移動手段としては、例えば、鋼材の長手方向と同じ方向に横方向移動手段が縦方向に移動できるためのレールとなるレール用鋼材を門型フレームの支柱の下部に設置して、門型フレームがレール用鋼材の上を往復移動できるようにするとよい。
【0037】
横方向移動手段や縦方向移動手段は、鋼材設置部に敷設される鋼材の長手方向と長手方向に直交する方向に移動できる手段であればよく、洗浄機がスムーズに鋼材の上方を往復移動できる手段や構成であればよい。
【0038】
本発明の鋼材の洗浄方法は、上述の鋼材洗浄装置を用いて、多数本の鋼材をまとめて洗浄するための方法であって、
(1) 洗浄の対象となる複数本の鋼材を前記鋼材設置部の前記第1区画に並列させて敷き並べるステップと、
(2) 前記鋼材洗浄装置の洗浄機を前記横方向移動手段により前記鋼材の長手方向と直交する方向に移動させる工程と、前記縦方向移動手段により所定距離だけ前記鋼材の長手方向に移動させる工程を繰り返して、前記第1区画に敷き並べた複数本の鋼材を洗浄するとともに、洗浄の対象となる次の複数本の鋼材を前記鋼材設置部の前記第2区画に並列させて敷き並べるステップと、
(3) 前記鋼材洗浄装置の洗浄機を前記横方向移動手段により前記鋼材の長手方向と直交する方向に移動させる工程と、前記縦方向移動手段により所定距離だけ前記鋼材の長手方向に移動させる工程を繰り返して、前記第2区画に敷き並べた複数本の鋼材を洗浄するとともに、片面の洗浄が終わった前記第1区画の複数本の鋼材を反転させるステップと、
(4) 前記鋼材洗浄装置の洗浄機を前記横方向移動手段により前記鋼材の長手方向と直交する方向に移動させる工程と、前記縦方向移動手段により所定距離だけ前記鋼材の長手方向に移動させる工程を繰り返して、反転させた前記第1区画の複数本の鋼材を洗浄するとともに、片面の洗浄が終わった前記第2区画の複数本の鋼材を反転させるステップと、
(5) 前記鋼材洗浄装置の洗浄機を前記横方向移動手段により前記鋼材の長手方向と直交する方向に移動させる工程と、前記縦方向移動手段により所定距離だけ前記鋼材の長手方向に移動させる工程を繰り返して、反転させた前記第2区画の複数本の鋼材を洗浄するとともに、両面の洗浄が終わった前記第1区画の複数本の鋼材を撤去するステップと、
(6) 両面の洗浄が終わった前記第2区画の複数本の鋼材を撤去するステップと、
を有することを特徴とするものである。
【0039】
上述の鋼材洗浄装置の洗浄機を横方向移動手段により鋼材の長手方向と直交する方向に移動させる工程と、縦方向移動手段により所定距離だけ鋼材の長手方向に移動させる工程を繰り返すパターンとしては、例えば、以下のようなパターンが含まれる。
(a) 「横移動(往)→横移動(復)→縦移動」の繰返し。
(b) 「横移動(往)→縦移動→横移動(復)→縦移動」の繰返し。
(c) 「横移動(往)と縦移動→横移動(復)と縦移動」の繰返し(縦横同時移動)。
【0040】
また、鋼材の洗浄方法において、前記(6)のステップで、両面の洗浄が終わった前記第2区画の複数本の鋼材を撤去するとともに、洗浄の対象となる次の複数本の鋼材を前記鋼材設置部の前記第1区画に並列させて敷き並べ、以後前記(1)~(6)のステップを必要回数繰り返すとよい。(1)~(6)のステップを必要回数繰り返すことで、多くの鋼材を効率よく洗浄することができる。
【0041】
前記(3)および(4)のステップでの複数本の鋼材を反転させる作業および前記(5)および(6)のステップでの複数本の鋼材を撤去する作業とともに、片面または両面の洗浄が完了した前記鋼材について、破損部および/または不要な固着物の除去作業を行なってもよい。
【0042】
鋼材を反転させる作業や撤去する作業を行なうタイミングで、現場で溶接にて取付けられたアングルなどの付着物をガス溶断にて取外し、鋼材の破損(曲がり、反りなど)している部分を端部から正常な箇所まで切断して鋼材を整えるステップを行うとよい。
【発明の効果】
【0043】
本発明の鋼材洗浄装置および鋼材の洗浄方法は、以上のような構成からなり、次のような効果が得られる。
【0044】
(1) 鋼材洗浄装置に用いる洗浄機について、固定ノズルと揺動ノズル、あるいは固定旋回ノズルと揺動ノズルを組み合わせることで、敷き並べた多数本の鋼材をむらなく、効率良く洗浄することができる。
【0045】
(2) 揺動ノズルに加え、鋼材に対する高さを一定に保って洗浄を行う固定ノズルを備えることで、一方向への洗浄水の流れを発生させつつ局所的で強固な汚れなどにも幅広く対応でき、洗浄能力が安定する。
【0046】
(3) 洗浄機高さ調整手段を設けることによって、様々なサイズの鋼材に容易に対応させることができる。
【0047】
(4) 固定ノズル高さ調整手段を設けることによって、固定ノズルの縦または横方向の移動に伴い、鋼材の形状や高さに応じて、固定ノズルの支持部材を起伏または直線運動で上下させることができる。鋼材の洗浄面に対する固定ノズルの高さを常に一定に保つことができ、洗浄効果が向上する。
【0048】
(5) 固定ノズル角度調整手段を設けることによって、固定ノズルを一定の角度に保つことができ、特に汚れている部分に角度を合わせて局所的に洗浄することができる。
(6) 固定旋回ノズルを設けることによって、鋼材に対する高さを変えずに、ノズルを平面的に旋回運動させて、さらに洗浄範囲を広げることができる。
(7) 洗浄機に固定旋回ノズルを水平方向に移動させるための水平方向移動手段を設けることによって、前後の直線運動で揺動させて、洗浄範囲を広げることもできる。
【0049】
(8) 洗浄機全体を軸回りに旋回させるための旋回手段を備えることによって、洗浄方向を容易に変更することができる。例えば、鋼材設置部を第1区画と第2区画から構成した場合、第1区画と第2区画の境界側を、洗浄水を流す方向の上流側とし、境界からそれぞれの区画側へ離れる方向の両端側をそれぞれの区画の下流側とすることが、互いの区画への排水の干渉が回避しやすい点などから好ましく、第1区画と第2区画の境界を起点にして、それぞれの区画を上流側から下流側へ向かって洗浄していく場合、第1区画を洗浄した後、洗浄機の方向転換を行うことで、第2区画での作業に円滑に切り替えることができる。
【0050】
(9) 本発明の鋼材の洗浄方法によれば、上述した構成の第1区画と第2区画から構成される鋼材設置部を設け、洗浄機を移動させるための横方向移動手段と縦方向移動手段を備えた鋼材洗浄装置を利用し、第1区画と第2区画で鋼材の設置作業、洗浄作業、片面を洗浄した鋼材の反転作業、両面の洗浄が完了した鋼材の撤去作業などを、工程をずらした並行作業により行うことで、作業に要する人工の減少など、経済的で効率の高い洗浄作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】本発明の鋼材洗浄装置の全体構造を示す平面図である。
【
図4】本発明の鋼材洗浄装置における洗浄機を示したものであり、(a)は揺動ノズルが下方にある時の側面図、(b)は揺動ノズルが斜め前方にある時の側面図、(c)は正面図である。
【
図5】
図4(c)の実施形態において、(a)はA-A断面図、(b)はB-B断面図、(c)はC-C断面図を示している。
【
図6】本発明で用いる鋼材洗浄装置の洗浄機の他の実施形態を示したもので、(a)は揺動ノズルが下方にある時の側面図、(b)は揺動ノズルが斜め前方にある時の側面図、(c)は正面図である。
【
図7】本発明の鋼材洗浄装置が鋼材の長手方向に移動した時の側面図である。
【
図8】本発明の鋼材洗浄装置において、固定ノズルが鋼材の被洗浄面に対する高さを調整する様子を示した断面図である。
【
図9】本発明の鋼材洗浄装置において、固定旋回ノズルがノズルを旋回させながら鋼材の被洗浄面に対する高さを調整する様子を示した断面図である。
【
図10】本発明の鋼材洗浄装置において、固定旋回ノズルを備えた洗浄機を示した側面図である。
【
図11】本発明の鋼材洗浄装置において、前後移動旋回ノズルを備えた洗浄機を示したものであり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【
図12】本発明の鋼材洗浄装置における固定旋回ノズルの先端部の拡大図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【
図13】本発明の鋼材の洗浄方法の作業手順を概略的に示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明の具体的な実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下に示される実施形態に限定されるものではない。
【0053】
図1は、本発明の鋼材洗浄装置1の全体構造を示した平面図であり、
図2は正面図、
図3は側面図である。鋼材設置部41に鋼材40(被洗浄体)を平行に複数本並べている。洗浄機10の水平方向移動手段の1つとして、門型フレーム2を形成している。門型フレーム2は、鋼材設置部41の両側に設けた支柱3と、支柱3間に架設された梁部材4とを備えている。支柱3の下には縦方向移動手段5を備え、縦方向移動手段5は、鋼材設置部の両側に、鋼材の長手方向に沿って、鋼材設置部に並べられた鋼材の長さを超える長さで設けられたレール部材5bの上に、縦方向移動手段5に具備する縦方向移動モータ5aで駆動する図示しない走行ローラを介して載置され、門型フレーム2を梁部材4と直交する方向に平行移動させる。
【0054】
また、門型フレーム2の梁部材4には横方向移動手段6が走行ローラ6bを介して載置され、横方向移動手段6には洗浄機10が吊持される。横方向移動手段6は、横方向移動手段6の移動方向に沿って、横方向移動手段6の移動範囲を超える長さに亘って梁部材4に固定されたチェーンラック6cと噛み合うスプロケット6dを駆動する横方向移動モータ6aを備え、梁部材4に沿って洗浄機10を移動させる。
【0055】
洗浄機10には揺動ノズル30と固定ノズル20とを備えている。揺動ノズル30は
図3に示したように一定の角度に揺動して洗浄水の流れを発生させて、固定ノズル20は鋼材40に対する高さを一定に保ちながら洗浄を行い、局所的で強固な汚れなどにも幅広く対応することができ、効率的に洗浄できる。
【0056】
鋼材40が鋼矢板40aの場合は、例えば凹み部が上側になるように設置しており、洗浄した後、鋼矢板40aを裏返して、図のように凸面を上側になるように置き、また洗浄する。また、H形鋼40bを洗浄する場合は、まず片方の凹み部が上側になるように敷き並べて洗浄し、片側を洗浄した後他方の凹み部が上側になるようにH形鋼40bを反転させてまた洗浄すればよい。
【0057】
図4は、本発明の鋼材洗浄装置1における洗浄機10を示したものであり、(a)は揺動ノズル30が下方にある時の側面図、(b)は揺動ノズル30が斜め前方にある時の側面図、(c)は正面図である。また
図5は、
図4(c)の実施形態において、(a)はA-A断面図、(b)はB-B断面図、(c)はC-C断面図を示している。
【0058】
横方向移動手段6の下に旋回装置14と旋回モータ15を備えており、洗浄機10の向きを容易に旋回できるようにした。旋回装置14の下には昇降装置11が設けられ、洗浄機10を手動で昇降できる昇降ハンドル12を取り付けている。洗浄機10に昇降装置11を設けることによって、様々なサイズの鋼材40に対応することができる。
【0059】
洗浄機10の下部には、一番外側に固定ノズル20を2個設けている。固定ノズル20は、鋼材40に対して一定の角度で洗浄できる。固定ノズル20の内側には、揺動ノズル30を2個設けた。揺動ノズル30に加えて、鋼材40に対する高さを一定に保って洗浄を行う固定ノズル20を備えることで、一方向への洗浄水の流れを発生させつつ、局所的で強固な汚れなどにも幅広く対応でき、洗浄能力が安定する。揺動ノズル30の内側には、ノズル揺動リンク32とカウンターウェイト揺動リンク34があり、中央にカウンターウェイト33と揺動モータ31を設けた。
【0060】
カウンターウェイト33は、揺動ノズル30と相反する方向に揺動して、揺動ノズル30の反動を相殺し、反動の衝撃から鋼材洗浄装置を保護することができる。
【0061】
ノズル揺動リンク32とカウンターウェイト揺動リンク34はそれぞれ、揺動ノズル30とカウンターウェイト33を一つの揺動モータ31で回転駆動する回転板35と連結し、回転板35の回転運動を往復運動に変換して、揺動ノズル30とカウンターウェイト33をそれぞれ相反する方向で、洗浄方向に沿った前後の方向に揺動させる。
【0062】
揺動ノズル30及びカウンターウェイト33の揺動の支点と、回転板35の回転中心と、ノズル揺動リンク32及びカウンターウェイト揺動リンク34の各連結支点との相対位置を、揺動ノズル30とカウンターウェイト33の往復運動の前後の折り返し(前進限と後退限)のタイミングが同一となるように構成することで揺動により発生する反動を相殺することができる。
【0063】
図6は、本発明で用いる鋼材洗浄装置1の洗浄機10の他の実施形態を示したもので、(a)は揺動ノズル30が下方にある時の側面図、(b)は揺動ノズル30が斜め前方にある時の側面図、(c)は正面図である。主な構成要素は、
図4と同じだが、
図6では昇降ハンドル12ではなく、昇降モータ13を設けた洗浄機10である。
【0064】
鋼材洗浄装置1の上部には横方向移動手段6を備えており、横方向移動手段6には横方向移動モータ6aを設けている。横方向移動手段6の下に旋回装置14と旋回モータ15を備えており、洗浄機10の向きを容易に旋回できるようにした。旋回装置14の下には昇降装置11と昇降モータ13を設けており、昇降モータ13によって洗浄機10の昇降位置制御自動化を可能とした。洗浄機10に昇降装置11と昇降モータ13を設けることによって、様々なサイズの鋼材40に容易に対応することができる。
【0065】
洗浄機10の下部には、一番外側に固定ノズル20を2個設けている。固定ノズル20は、鋼材40に対して一定の角度で洗浄できる。固定ノズル20の内側には、揺動ノズル30を2個設けた。揺動ノズル30に加えて、鋼材40に対する高さを一定に保って洗浄を行う固定ノズル20を備えることで、一方向への洗浄水の流れを発生させつつ、局所的で強固な汚れなどにも幅広く対応でき、洗浄能力が安定する。揺動ノズル30の内側には、ノズル揺動リンク32とカウンターウェイト揺動リンク34があり、中央にカウンターウェイト33と揺動モータ31を設けた。
【0066】
ところで、被洗浄面とノズルとの距離は離れる程、被洗浄面に対する洗浄力は減衰する。
図6~11は揺動ノズル30及び固定ノズル20または後述する固定旋回ノズル21を昇降させる昇降モータ13を備えた洗浄機の例を示す。
【0067】
洗浄機を水平方向移動させながら、昇降モータ13によって、洗浄機の水平方向移動に伴う鋼材40の形状による被洗浄面の高さの変位に対応して、ノズルの高さを上下に変位させることができ、鋼材40の被洗浄面に対するノズルの高さを一定に保つことで洗浄力を減衰させることなく高い洗浄効果を維持できる。
【0068】
ノズルの上下運動は、図に示すように直線的な動作で行ってもよく、円弧の軌跡を描くような起伏動作で行うように構成してもよい。また、ノズルの上下運動の制御は、鋼材設置部41の所定位置に敷設した鋼材40に対して、予め定めた軌跡を描くようにプログラムして自動で制御してもよく、被洗浄面の高さを距離センサーで事前に検知し、その結果に応じて昇降するように自動で制御してもよい。
【0069】
鋼材40を洗浄する際、平らな場所に鋼材40を敷き並べて洗浄すると、洗浄水及び落とした汚れが流れずに溜まってしまい円滑に作業できないという問題がある。洗浄作業を効率的に行う為には、洗浄水を汚れと共に流し排水する方向を一律の方向に定めておくことが好ましい。洗浄水の流れ方向は、洗浄機10の各ノズルの噴射方向に角度をつけることと、鋼材設置部41に敷き並べた鋼材40に勾配を設けることによって生じさせることができる。
【0070】
図7は、本発明の鋼材洗浄装置1が、縦方向移動手段の移動方向に、長手方向を沿わせて鋼材設置部41に敷き並べた鋼材40を、鋼材40の長手方向に沿って洗浄を行いながら移動する例を示した側面図である。鋼材40には、鋼材40の長手方向の排水を行う方向に向かって傾斜が設けられている。
【0071】
洗浄機10は、鋼材40の傾斜によって被洗浄面が高くなっている側を上流側、低くなっている側を下流側として、上流側から下流側に向かって洗浄水の流れが発生するようにノズルに角度を設けた状態で洗浄を行いながら、洗浄水の流れ方向に向かって水平移動を行う。このとき、洗浄機10が下流側に移動するにつれてノズルと鋼材40との距離が離れてしまい洗浄力が減衰することになる。
【0072】
そこで、洗浄機10に取り付けた昇降モータ13によって、洗浄機10の移動に伴う鋼材40の勾配による高さの変位に合わせて洗浄機10を昇降させ、鋼材40の被洗浄面とノズルとの距離が一定に保たれるように制御することで、洗浄力を維持した洗浄作業ができる。
【0073】
図8は、本発明の鋼材洗浄装置1において、固定ノズル20が鋼材40の被洗浄面に沿って洗浄する様子を断面図で示している。
【0074】
図6、7で示した昇降モータ13を設けることで、鋼材40の被洗浄面に対する固定ノズル20の高さを調整することができるため、洗浄機10の水平移動に伴い、鋼材40の洗浄面に沿って、鋼材40の洗浄面に対する固定ノズル20の高さを保ちながら、上下に起伏させたり、水平に移動させたりすることができ、図に示したように鋼材40の形状で低くなっている部分に対しても洗浄力を維持することができる。
【0075】
洗浄機10の水平移動に伴う昇降モータ13による制御は、横方向と縦方向のいずれか一方または、両方を同時に移動する場合にも適用することができ、鋼材40の形状などに合わせて固定ノズル20と洗浄面との距離を一定に保ちながら洗浄することで、洗浄効果を向上させることができる。
【0076】
図9は、本発明の鋼材洗浄装置1において、固定旋回ノズル21を旋回させながら鋼材40の被洗浄面に対する高さを調整して洗浄する様子を断面図で示したものである。
図8の場合と同様に、昇降モータ13による制御によって、洗浄機10の水平移動に伴い、鋼材40の洗浄面に沿って、鋼材40の洗浄面に対する固定旋回ノズル21の高さを保ちながら、上下に起伏または水平移動で洗浄することができる。
【0077】
また、固定旋回ノズル21は固定ノズル支持部材23に2つのノズルが取り付けられており、ノズル支持部材23を中心にノズルが旋回するため、円状に洗浄水が噴射され、図に示したように特にフランジ部を効果的に洗浄することができる。このノズル部分もノズル支持部材23に対して角度を調整することができる。
【0078】
図6、7、11に示す例では揺動ノズル30と共に固定ノズル20または固定旋回ノズル21が昇降モータ13によって昇降するように構成されているが、固定ノズル20または固定旋回ノズル21のみを、被洗浄面とノズルとの距離を保って昇降させるように構成してもよい。
【0079】
また、昇降モータ13による揺動ノズル30と固定ノズル20または固定旋回ノズル21の昇降に加えて、固定ノズル20または固定旋回ノズル21のみを個別に昇降させるアクチュエータを別途設けるように構成してもよく、鋼材40のサイズ違い、断面形状、設置勾配などの被洗浄面とノズルとの距離が変位する各種要因に対して別の動作軸で対応することができ、洗浄の動作パターンのバリエーションを増やすことができる。
【0080】
図10は、本発明の鋼材洗浄装置1において、固定旋回ノズル21及び昇降モータ13に備える構成に、さらに上述の固定旋回ノズル21を個別に昇降させるアクチュエータの一例として昇降モータ27を備えた洗浄機10の例を示した側面図である。
【0081】
旋回装置14の下に設けた洗浄機10には、昇降モータ13が設けられており、揺動ノズル30及び固定旋回ノズル21の高さを調節することができる。さらに昇降モータ27により固定ノズル21を個別に昇降させて高さを調整することができる。これにより、例えば、鋼材40の勾配による被洗浄面の高さの変位に対しては昇降モータ13による昇降で対応し、鋼材40の形状による被洗浄面の高さの変位に対しては昇降モータ27による固定旋回ノズル21の昇降で対応するなど、被洗浄面の高さの変位の要因毎に対応する動作軸を使い分けて、より柔軟な動作で洗浄力を維持した洗浄作業ができる。
【0082】
洗浄機10には、揺動ノズル30とカウンターウェイト33が設けられており、カウンターウェイト33が揺動ノズル30と相反する方向に揺動して揺動ノズル30の反動を相殺し、反動の衝撃から装置を保護している。
【0083】
また、揺動ノズル30に加え、固定旋回ノズル21を設けている。
図10の固定旋回ノズル21は、
図9とは異なったタイプであり、固定ノズル支持部材23を中心に水平にアームが2方向にあり、そのアームの先端にノズルが設けられている。固定ノズル支持部材23を中心からのアームの長さを円の半径とした円弧を描くように、固定旋回ノズル21が旋回する。
【0084】
これにより洗浄作業を行う洗浄機10の水平方向移動手段による平面座標位置一箇所当たりの固定ノズルによる洗浄範囲を広げることができ、例えば、鋼材40に付着する汚れの性質に応じて固定旋回ノズル21を採用することで洗浄効率を向上できる。
【0085】
図11は、本発明の鋼材洗浄装置1において、前後移動旋回ノズル22を備えた洗浄機10を示したものであり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
図10と同様に、上部には横方向移動モータ6aにより移動する横方向移動手段6と、その下に旋回装置14を設けている。洗浄機10には、昇降モータ13があり、鋼材40のサイズ違いに容易に対応することができる。また、昇降モータ13によって、例えば
図7のように勾配を付けた場合の縦方向移動時の高さの変位にも自動制御で対応でき、鋼材40に対するノズルの高さを一定に保ち、洗浄能力を安定させる。
【0086】
また、揺動ノズル30と揺動ノズル30を動かすための揺動モータ31を備えている。揺動モータ31の反動を相殺するためのカウンターウェイト33、ノズル揺動リンク32やカウンターウェイト揺動リンク34も設けている。
【0087】
さらに、揺動ノズル30に加え、前後移動旋回ノズル22を設けている。前後移動旋回ノズル22にはノズル前後移動装置24およびノズル前後移動モータ25を設けており、
図11(a)に示したような固定旋回ノズルの旋回に前後移動の複合運動を可能にしたものである。揺動ノズル30で一定の角度で揺動する洗浄水を噴射しながら、前後移動旋回ノズル22が前後移動と旋回の複合動作をしながら洗浄水をさらに噴射することで、固定旋回ノズル21の洗浄作業を行う平面座標位置一箇所当たりの洗浄範囲をさらに広げている。
【0088】
図12は、本発明の鋼材洗浄装置1における固定旋回ノズル21の先端部を拡大して示した図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。図のように、旋回軸心から伸びたアーム26の長さが左右で異なるようにすれば、アーム26が長い方の固定旋回ノズル21からは大きい円弧の流れを、その内側をアーム26が短い方の固定旋回ノズル21が小さい円弧の流れを発生させることができる。
【0089】
固定旋回ノズル21のアーム26の長さは同じでもよいし、図のようにそれぞれのアーム26の長さを変えて、洗浄水の軌跡をずらし分散させることで、より洗浄むらを低減させるようにしてもよい。また、アーム26の本数は、片側1本で構成してもよく、複数本に分岐させて構成してもよい。
【0090】
固定旋回ノズル21の旋回手段としては、モータを備えて旋回させてもよいが、固定旋回ノズル21に角度を設けて、回転フリーで支持し、2つのノズルから噴射される洗浄水の勢いによって、ノズルの噴射の反力が回転力になるようにそれぞれのノズルを同じ方向に回転力が発生する方向に傾け、旋回させるようにしてもよい。アーム26の先端部に設けた固定旋回ノズル21は、ある一定の角度で固定されているが、固定角度を調整可能である。
【0091】
図13は、本発明の鋼材の洗浄方法の作業手順を概略的に示した平面図であり、以下のステップ1~6の手順である。実施例では鋼材設置部41を第1区画42、第2区画43に分けて敷き並べる例を示しているが、区画を分けなくてもよい。
【0092】
〔ステップ1〕
まず、敷地の中央あたりに本発明の鋼材洗浄装置を設置し、鋼材設置部41を第1区画42と第2区画43に分ける。鋼材設置部41の第1区画42に、洗浄対象となる鋼材40を、鋼材洗浄装置1の門型フレーム2の梁部材4と直交する方向に鋼材40の長手方向を沿わせて並列して複数本敷き並べる。
【0093】
〔ステップ2〕
第1区画42に敷き並べた鋼材40に対して、鋼材洗浄装置1の洗浄機10を横方向移動手段6により梁部材4に沿って往復動させながら、門型フレーム2を縦方向移動手段5により所定距離だけ平行移動させる工程を繰り返して、第1区画42に敷き並べた複数本の鋼材40を洗浄する。さらに、洗浄の対象となる次の複数本の鋼材40を鋼材設置部41の第2区画43に並列させて敷き並べる。
【0094】
〔ステップ3〕
鋼材洗浄装置1の洗浄機10を横方向移動手段6により梁部材4に沿って往復動させながら、門型フレーム2を縦方向移動手段5により所定距離だけ平行移動させる工程を繰り返して、第2区画43に敷き並べた複数本の鋼材40を洗浄する。第2区画43に敷き並べた鋼材40を洗浄している間に、片面の洗浄が終わった第1区画42の複数本の鋼材40を反転させる。また、第1区画42に敷き並べた鋼材40の中で、工事現場で溶接にてアングルなどの付着物が取り付けられているものはガス溶断にて取り外し、鋼材40の破損(曲がり、反りなど)している部分を端部から正常な箇所まで切断する。
【0095】
〔ステップ4〕
鋼材洗浄装置1の洗浄機10を横方向移動手段6により梁部材4に沿って往復動させながら、門型フレーム2を縦方向移動手段5により所定距離だけ平行移動させる工程を繰り返して、反転させた第1区画42の複数本の鋼材40を洗浄する。第1区画42に敷き並べた鋼材40を洗浄している間に、片面の洗浄が終わった第2区画43の複数本の鋼材40を反転させる。また、第2区画43に敷き並べた鋼材40の中で、工事現場で溶接にてアングルなどの付着物が取り付けられているものはガス溶断にて取り外し、鋼材40の破損(曲がり、反りなど)している部分を端部から正常な箇所まで切断する。
【0096】
〔ステップ5〕
鋼材洗浄装置1の洗浄機10を横方向移動手段6により梁部材4に沿って往復動させながら、門型フレーム2を縦方向移動手段5により所定距離だけ平行移動させる工程を繰り返して、反転させた第2区画43の複数本の鋼材40を洗浄する。また、第1区画42に敷き並べた鋼材40の中で、工事現場で溶接にてアングルなどの付着物が取り付けられているものはガス溶断にて取り外し、鋼材の破損(曲がり、反りなど)している部分を端部から正常な箇所まで切断して仕上げる。両面の洗浄が終わり、ガス溶断作業が終わった第1区画42の複数本の鋼材40を撤去する。
【0097】
〔ステップ6〕
第2区画43に敷き並べた鋼材40の中で、工事現場で溶接にてアングルなどの付着物が取り付けられているものはガス溶断にて取り外し、鋼材40の破損(曲がり、反りなど)している部分を端部から正常な箇所まで切断して仕上げる。両面の洗浄が終わり、ガス溶断作業が終わった第2区画43の複数本の鋼材40を撤去する。
【0098】
上記の実施例において、鋼材洗浄装置の洗浄機を横方向移動手段により鋼材の長手方向と直交する方向に移動させる工程と、縦方向移動手段により所定距離だけ鋼材の長手方向に移動させる工程を繰り返すパターンは、上述の「課題を解決するための手段」の項で述べた
(a) 「横移動(往)→横移動(復)→縦移動」の繰返し。
のパターンに相当するが、
(b) 「横移動(往)→縦移動→横移動(復)→縦移動」の繰返し。
(c) 「横移動(往)と縦移動→横移動(復)と縦移動」の繰返し(縦横同時移動)。
といった形で鋼材の洗浄を行うこともできる。
【符号の説明】
【0099】
1…鋼材洗浄装置
2…門型フレーム
3…支柱
4…梁部材
5…縦方向移動手段
5a…縦方向移動モータ
5b…レール部材
6…横方向移動手段
6a…横方向移動モータ
6b…走行ローラ
6c…チェーンラック
6d…スプロケット
10…洗浄機
11…昇降装置
12…昇降ハンドル
13…昇降モータ
14…旋回装置
15…旋回モータ
20…固定ノズル
21…固定旋回ノズル
22…前後移動旋回ノズル
23…固定ノズル支持部材
24…ノズル前後移動装置
25…ノズル前後移動モータ
26…アーム
27…昇降モータ(固定ノズル固定旋回ノズル個別昇降用)
30…揺動ノズル
31…揺動モータ
32…ノズル揺動リンク
33…カウンターウェイト
34…カウンターウェイト揺動リンク
35…回転板
40…鋼材(被洗浄体)
40a…鋼矢板
40b…H形鋼
41…鋼材設置部
42…第1区画
43…第2区画