(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】IL-15ベース分子及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/20 20060101AFI20240927BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240927BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240927BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240927BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240927BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240927BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20240927BHJP
C07K 14/54 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
A61K38/20 ZNA
A61K47/68
A61K39/395 U
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
C07K19/00
C07K14/54
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023037991
(22)【出願日】2023-03-10
(62)【分割の表示】P 2021120881の分割
【原出願日】2015-06-30
【審査請求日】2023-04-10
(32)【優先日】2014-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504090190
【氏名又は名称】アルター・バイオサイエンス・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】リウ,バイ
(72)【発明者】
【氏名】ロード,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】シュー,ウェンシン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ヒン シー.
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-541335(JP,A)
【文献】Proc. Natl. Acad. Sci. USA, (2012), 109, [16], p.6187-6192
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/20
A61K 39/395
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体の新生物の処置に使用するための組成物であって、
有効量の
免疫チェックポイント阻害抗体と、有効量のIL-15N72D:IL-15RαSu/Fc複合体(ALT-803)を含んでなり、前記
免疫チェックポイント阻害抗体が
抗プログラム細胞死-1(PD-1)、抗プログラム細胞死-リガンド1(PD-L1)、または抗細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)抗体を含み、前記ALT-803が、ダイマー型IL-15RαSu/Fcと2分子のIL-15N72Dを含むものである、組成物。
【請求項2】
IL-15N72D分子が配列番号3のアミノ酸配列を含むものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
IL-15RαSu/Fcが配列番号6のアミノ酸配列を含むものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
被験体が新生物に罹患しており、該新生物が、膠芽腫、前立腺癌、造血器の癌、B細胞腫瘍、多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、皮膚T細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、固形腫瘍、尿路上皮/膀胱癌、黒色腫、肺癌、腎細胞癌、乳癌、胃及び食道の癌、頭頸部癌、結腸直腸癌、卵巣癌、非小細胞肺癌、B細胞性非ホジキンリンパ腫、並びに頭頸部扁平上皮癌からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ALT-803の有効量が0.1μg/kg~100mg/kgである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ALT-803の有効量が0.1μg/kg~1mg/kgである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
被験体への投与のために医薬組成物として製剤化されており、この組成物が全身、静脈内、皮下、筋肉内、もしくは膀胱内投与されるか、又は点滴によって投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
被験体への投与のために医薬組成物として製剤化されており、この組成物が皮下投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
被験体への投与のために医薬組成物として製剤化されており、この組成物が点滴によって投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記抗体が、イピリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、およびデュルバルマブからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
被験体の新生物の処置に使用するためのキットであって、有効量の
免疫チェックポイント阻害抗体を含む第一のバイアルであって、前記
免疫チェックポイント阻害抗体が
抗プログラム細胞死-1(PD-1)、抗プログラム細胞死-リガンド1(PD-L1)、または抗細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)抗体を含む、第一のバイアル;有効量のIL-15N72D:IL-15RαSu/Fc複合体(ALT-803)を含む第二のバイアルであって、前記ALT-803が、ダイマー型IL-15RαSu/Fcと2分子のIL-15N72Dを含む、第二のバイアル;及びその使用説明書を含んでなる、キット。
【請求項12】
ALT-803および抗体が被験体への投与のために製剤化され、かつ、その製剤が全身、静脈内、皮下、筋肉内、もしくは膀胱内経路による投与、または点滴による投与のためのものである、請求項
11に記載のキット。
【請求項13】
前記抗体が、イピリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、およびデュルバルマブからなる群から選択される、請求項
11に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2014年6月30日に出願された米国特許仮出願第62/018,899号の35U.S.C.§119(e)に基づく優先権の恩典を主張する。この仮出願は、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、一般に、癌及び感染性因子の処置のための治療薬の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書に記載の本発明の前は、癌及び感染細胞に対する免疫活性を増大させるため、及び/又は指向するため新たなストラテジーの開発の急を要する必要性が存在していた。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、少なくとも一部において、抗体と、インターロイキン-15(IL-15)スーパーアゴニスト変異型及びダイマー型IL-15受容体α/Fc融合タンパク質の複合体であるALT-803との併用が、新生物(例えば、膠芽腫、前立腺癌、造血器の癌、B細胞腫瘍、多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、急性骨髄性(myeloid)白血病、慢性リンパ性白血病、皮膚T細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、固形腫瘍、尿路上皮/膀胱癌、黒色腫、肺癌、腎細胞癌、乳癌、胃及び食道の癌、頭頸部癌、結腸直腸癌、卵巣癌、非小細胞肺癌、B細胞性非ホジキンリンパ腫、及び頭頸部扁平上皮癌)又は感染(例えば、ヒト免疫不全ウイルスによるウイルス感染)に対する免疫応答の増強に有用であるという驚くべき知見に基づいている。
【0005】
被験体の新生物又は感染を処置するための方法は、被験体に有効量の抗体(又は抗体様分子)と、IL-15N72D:IL-15RαSu/Fc複合体(ALT-803)を含む有効量の医薬組成物とを投与することにより行われ、ここで、ALT-803は、ダイマー型IL-15RαSu/Fcと2分子のIL-15N72Dを含むものである。一態様において、IL-15N72D分子は配列番号3を含むものである。例示的なIL-15RαSu/Fcは配列番号6を含むものである。
【0006】
被験体は好ましくは、かかる処置を必要とする哺乳動物、例えば、新生物若しくは感染又はその素因を有すると診断された被験体である。哺乳動物は、任意の哺乳動物、例えば、ヒト、霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、並びに家畜又は食料消費のために飼育する動物、例えば、畜牛、ヒツジ、ブタ、ニワトリ及びヤギである。好ましい一実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0007】
本明細書に記載の方法での処置に好適な新生物としては、膠芽腫、前立腺癌、急性骨髄性白血病、B細胞腫瘍、多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、皮膚T細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、固形腫瘍、尿路上皮/膀胱癌、黒色腫、肺癌、腎細胞癌、乳癌、胃及び食道の癌、頭頸部癌、結腸直腸癌、並びに卵巣癌が挙げられる。本明細書に記載の方法を使用して処置される例示的な感染はヒト免疫不全ウイルス(HIV)による感染である。また、本明細書に記載の方法は、細菌感染(例えば、グラム陽性菌又はグラム陰性菌)を処置するためにも有用である(Oleksiewicz et al.2012.Arch Biochem Biophys.526:124-31)。
【0008】
好ましくは、また、本明細書に記載の組成物の投与により、疾患処置後の新生物又は感染の将来の再発が予防される。
【0009】
さらに、本発明の方法は、自己免疫応答と関連している細胞の阻害又は低減により患者に臨床的有益性がもたらされる自己免疫疾患の有効な処置に有用である。かかる細胞としては、白血球、特にB細胞又はT細胞が挙げられ、かかる自己免疫疾患としては、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、乾癬、クローン病、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症、強直性脊椎炎、1型糖尿病及び全身性エリテマトーデスが挙げられる(Chan et al.2010.Nat Rev Immunol.10:301-16)。
【0010】
ALT-803の例示的な有効用量としては、0.1μg/kg~100mg/kg体重、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、500、600、700、800若しくは900μg/kg体重又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90若しくは100mg/kg体重が挙げられる。
【0011】
一部の場合では、ALT-803は毎日、例えば24時間毎に投与される。又は、ALT-803は連続的に、或いは1日数回、例えば、1時間毎、2時間毎、3時間毎、4時間毎、5時間毎、6時間毎、7時間毎、8時間毎、9時間毎、10時間毎、11時間毎、又は12時間毎に投与される。
【0012】
ALT-803の例示的な有効日用量としては、0.1μg/kg~100μg/kg体重、例えば、0.1、0.3、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は99μg/kg体重が挙げられる。
【0013】
或いはまた、ALT-803は、1週間に約1回、例えば7日毎に約1回投与される。又は、ALT-803は、1週間に2回、1週間に3回、1週間に4回、1週間に5回、1週間に6回、又は1週間に7回投与される。ALT-803の例示的な有効週用量としては、0.0001mg/kg~4mg/kg体重、例えば、0.001、0.003、0.005、0.01.0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3又は4mg/kg体重が挙げられる。例えば、ALT-803の有効週用量は0.1μg/kg体重~400μg/kg体重である。或いはまた、ALT-803は固定用量で、又は体表面積に基づいて(すなわち、1m2あたりで)投与される。
【0014】
一部の場合では、被験体は、毎週4回のALT-803の静脈内投薬の後、2週間の休薬期間からなる2回の6週サイクルを受ける。最終的に、担当の医師又は獣医が適切な量及び投薬量レジメンを決定する。
【0015】
本明細書に記載の組成物は、全身、静脈内、皮下、筋肉内、膀胱内投与されるか、又は点滴によって投与される。抗体とALT-803は、同時に投与しても逐次投与してもよい。
【0016】
好ましくは、抗体(Ab)は腫瘍特異的抗体、免疫チェックポイント阻害薬又は抗ウイルス抗体である。好ましい抗体は、重鎖及び軽鎖免疫グロブリン(Ig)タンパク質(齧歯類型、ヒト型、キメラ形態及びヒト化形態が挙げられ得る)で構成されたものである。さらに、本明細書に記載の方法では、抗体様分子、例えば、抗原結合ドメインを含む分子(例えば、一本鎖抗体、Fab、Fv、T細胞受容体結合ドメイン、リガンド結合ドメイン又は受容体結合ドメイン)が使用されることもあり得る。一部の場合では、このようなドメインを好ましくはFcドメインと連結させる。Igは、既知のアイソタイプの任意のもの(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG2a、IgG2b及びIgM)であり得る。疾患部標的化Ab(又は抗体様分子)を使用する本明細書に記載の一部の用途では、Ab(又は抗体様分子)は、Fc受容体と相互作用して抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)及び/又は抗体依存性細胞食作用(ADCP)を媒介し得る重鎖又はFcドメインを含有しているものである。他の場合では、エフェクター分子にコンジュゲートさせた抗体が使用され得る。他の用途、例えば免疫チェックポイントブロッカーの使用では、好ましいAb(又は抗体様分子)は、ADCC又はADCPを有効に媒介できない重鎖又はFcドメイン(例えば、IgG4 Fc)を含有しているものである。
【0017】
一部の特定の実施形態では、抗体の対象の抗原は、細胞表面受容体若しくはリガンドを含む。さらなる一実施形態では、抗原は、CD抗原、サイトカイン若しくはケモカイン受容体若しくはリガンド、成長因子受容体若しくはリガンド、組織因子、細胞接着分子、MHC/MHC様分子、Fc受容体、Toll様受容体、NK受容体、TCR、BCR、正/負の補助刺激受容体若しくはリガンド、デス受容体若しくはリガンド、腫瘍関連抗原又はウイルスコード抗原を含む。
【0018】
好ましくは、腫瘍特異的抗体は、腫瘍細胞上の抗原に結合し得るものである。癌を有する患者の処置に承認されている腫瘍特異的抗体としては、リツキシマブ、オファツムマブ、及びオビヌツズマブ(抗CD20 Ab);トラスツズマブ及びペルツズマブ(抗HER2 Ab);セツキシマブ及びパニツムマブ(抗EGFR Ab);並びにアレムツズマブ(抗CD52 Ab)が挙げられる。同様に、CD20に特異的な抗体-エフェクター分子コンジュゲート(90Y標識イブリツモマブチウキセタン、131I標識トシツモマブ)、HER2に特異的な抗体-エフェクター分子コンジュゲート(トラスツズマブエムタンシン(ado- trastuzumab emtansine))、CD30に特異的な抗体-エフェクター分子コンジュゲート(ブレンツキシマブベドチン)及びCD33に特異的な抗体-エフェクター分子コンジュゲート(ゲムツズマブオゾガマイシン)が、癌の治療に承認されている(Sliwkowski MX,Mellman I.2013 Science 341:1192)。
【0019】
さらに、本発明の好ましい抗体としては、当該技術分野で知られている種々の他の腫瘍特異的抗体が挙げられ得る。癌の処置のための抗体及びそのそれぞれの標的としては、限定されないが、ニボルマブ(抗PD-1 Ab)、TA99(抗gp75)、3F8(抗GD2)、8H9(抗B7-H3)、アバゴボマブ(抗CA-125(模倣物))、アデカツムマブ(抗EpCAM)、アフツズマブ(抗CD20)、アラシズマブペゴール(抗VEGFR2)、アルツモマブペンテタート(pentetate)(抗CEA)、アマツキシマブ(amatuximab)(抗メソテリン)、AME-133(抗CD20)、アナツモマブマフェナトクス(anatumomab mafenatox)(抗TAG-72)、アポリズマブ(抗HLA-DR)、アルシツモマブ(arcitumomab)(抗CEA)、バビツキシマブ(抗ホスファチジルセリン)、ベクツモマブ(bectumomab)(抗CD22)、ベリムマブ(抗BAFF)、ベシレソマブ(besilesomab)(抗CEA関連抗原)、ベバシズマブ(抗VEGF-A)、ビバツズマブメルタンシン(bivatuzumab mertansine)(抗CD44 v6)、ブリナツモマブ(抗CD19)、BMS-663513(抗CD137)、ブレンツキシマブベドチン(抗CD30(TNFRSF8))、カンツズマブ(cantuzumab)メルタンシン(抗ムチンCanAg)、カンツズマブラブタンシン(抗MUC1)、カプロマブ(capromab)ペンデチド(抗前立腺癌細胞)、カルルマブ(抗MCP-1)、カツマキソマブ(抗EpCAM、CD3)、cBR96-ドキソルビシンイムノコンジュゲート(抗Lewis-Y抗原)、CC49(抗TAG-72)、セデリズマブ(抗CD4)、Ch.14.18(抗GD2)、ch-TNT(抗DNA関連抗原)、シタツズマブボガトクス(citatuzumab bogatox)(抗EpCAM)、シクスツムマブ(cixutumumab)(抗IGF-1受容体)、クリバツズマブテトラキセタン(抗MUC1)、コナツムマブ(conatumumab)(抗TRAIL-R2)、CP-870893(抗CD40)、ダセツズマブ(抗CD40)、ダクリズマブ(抗CD25)、ダロツズマブ(抗インスリン様成長因子I受容体)、ダラツムマブ(抗CD38(環状ADPリボースヒドロラーゼ))、デムシズマブ(demcizumab)(抗DLL4)、デツモマブ(detumomab)(抗B-リンパ腫細胞)、ドロジツマブ(drozitumab)(抗DR5)、デュリゴツマブ(duligotumab)(抗HER3)、デュシジツマブ(dusigitumab)(抗ILGF2)、エクロメキシマブ(ecromeximab)(抗GD3ガングリオシド)、エドレコロマブ(抗EpCAM)、エロツズマブ(抗SLAMF7)、エルシリモマブ(elsilimomab)(抗IL-6)、エナバツズマブenavatuzumab)(抗TWEAK受容体)、エノチクマブ(enoticumab)(抗DLL4)、エンシツキシマブ(ensituximab)(抗5AC)、エピツモマブシツキセタン(epitumomab cituxetan)(抗エピシアリン)、エプラツズマブ(抗CD22)、エルツマキソマブ(ertumaxomab)(抗HER2/neu,CD3)、エタラシズマブ(抗インテグリンαvβ3)、ファラリモマブ(faralimomab)(抗インターフェロン受容体)、ファルレツズマブ(抗葉酸受容体1)、FBTA05(抗CD20)、フィクラツズマブ(抗HGF)、フィギツムマブ(抗IGF-1受容体)、フランボツマブ(抗TYRP1(糖タンパク質75))、フレソリムマブ(fresolimumab)(抗TGFβ)、フツキシマブ(futuximab)(抗EGFR)、ガリキシマブ(抗CD80)、ガニツマブ(抗IGF-I)、ゲムツズマブオゾガマイシン(抗CD33)、ギレンツキシマブ(girentuximab)(抗カルボニックアンヒドラーゼ9(CA-IX))、グレムバツムマブベドチン(抗GPNMB)、グセルクマブ(抗IL13)、イバリズマブ(抗CD4)、イブリツモマブチウキセタン(抗CD20)、イクルクマブ(抗VEGFR-1)、イゴボマブ(igovomab)(抗CA-125)、IMAB362(抗CLDN18.2)、IMC-CS4(抗CSF1R)、IMC-TR1(TGFβRII)、イムガツズマブ(imgatuzumab)(抗EGFR)、インクラクマブ(抗セレクチンP)、インダツキシマブラブタンシン(indatuximab ravtansine)(抗SDC1)、イノツズマブオゾガマイシン(抗CD22)、インテツムマブ(intetumumab)(抗CD51)、イピリムマブ(抗CD152)、イラツムマブ(iratumumab)(抗CD30(TNFRSF8))、KM3065(抗CD20)、KW-0761(抗CD194)、LY2875358(抗MET) ラベツズマブ(抗CEA)、ランブロリズマブ(抗PDCD1)、レキサツムマブ(lexatumumab)(抗TRAIL-R2)、リンツズマブ(抗CD33)、リリルマブ(抗KIR2D)、ロルボツズマブ(lorvotuzumab)メルタンシン(抗CD56)、ルカツムマブ(抗CD40)、ルミリキシマブ(抗CD23(IgE受容体))、マパツムマブ(抗TRAIL-R1)、マルゲツキシマブ(margetuximab)(抗ch4D5)、マツズマブ(抗EGFR)、マブリリムマブ(抗GMCSF受容体α-鎖)、ミラツズマブ(抗CD74)、ミンレツモマブ(minretumomab)(抗TAG-72)、ミツモマブ(mitumomab)(抗GD3ガングリオシド)、モガムリズマブ(抗CCR4)、モキセツモマブパスドトクス(moxetumomab pasudotox)(抗CD22)、ナコロマブタフェナトクス(nacolomab tafenatox)(抗C242抗原)、ナプツモマブエスタフェナトクス(naptumomab estafenatox)(抗5T4)、ナルナツマブ(narnatumab)(抗RON)、ネシツムマブ(抗EGFR)、ネスバクマブ(抗アンジオポエチン2)、ニモツズマブ(抗EGFR)、ニボルマブ(抗IgG4)、ノフェツモマブメルペンタン、オクレリズマブ(抗CD20)、オカラツズマブ(ocaratuzumab)(抗CD20)、オララツマブ(抗PDGF-R α)、オナルツズマブ(抗c-MET)、オンツキシズマブ(ontuxizumab)(抗TEM1)、オポルツズマブモナトクス(oportuzumab monatox)(抗EpCAM)、オレゴボマブ(oregovomab)(抗CA-125)、オトレルツズマブ(otlertuzumab)(抗CD37)、パンコマブ(pankomab)(MUC1の抗腫瘍特異性グリコシル化)、パルサツズマブ(parsatuzumab)(抗EGFL7)、パスコリズマブ(pascolizumab)(抗IL-4)、パトリツマブ(抗HER3)、ペムツモマブ(pemtumomab)(抗MUC1)、ペルツズマブ(抗HER2/neu)、ピジリズマブ(抗PD-1)、ピナツズマブベドチン(pinatuzumab vedotin)(抗CD22)、ピンツモマブ(抗腺癌抗原)、ポラツズマブベドチン(抗CD79B)、プリツムマブ(pritumumab)(抗ビメンチン)、PRO131921(抗CD20)、キリズマブ(quilizumab)(抗IGHE)、ラコツモマブ(racotumomab)(抗N-グリコリルノイラミン酸)、ラドレツマブ(radretumab)(抗フィブロネクチンエクストラドメイン-B)、ラムシルマブ(抗VEGFR2)、リロツムマブ(抗HGF)、ロバツムマブ(robatumumab)(抗IGF-1受容体)、ロレデュマブ(roledumab)(抗RHD)、ロベリズマブ(rovelizumab)(抗CD11及びCD18)、サマリズマブ(samalizumab)(抗CD200)、サツモマブ(satumomab)ペンデチド(抗TAG-72)、セリバンツマブ(seribantumab)(抗ERBB3)、SGN-CD19A(抗CD19)、SGN-CD33A(抗CD33)、シブロツズマブ(sibrotuzumab)(抗FAP)、シルツキシマブ(抗IL-6)、ソリトマブ(solitomab)(抗EpCAM)、ソンツズマブ(sontuzumab)(抗エピシアリン)、タバルマブ(抗BAFF)、タカツズマブ(tacatuzumab)テトラキセタン(抗α-フェトプロテイン)、タプリツモマブパプトクス(taplitumomab paptox)(抗CD19)、テリモマブアリトクス(telimomab aritox)、テナツモマブ(tenatumomab)(抗テネイシンC)、テネリキシマブ(teneliximab)(抗CD40)、テプロツムマブ(teprotumumab)(抗CD221)、TGN1412(抗CD28)、チシリムマブ(抗CTLA-4)、チガツズマブ(tigatuzumab)(抗TRAIL-R2)、TNX-650(抗IL-13)、トシツモマブ(抗CS20)、トベツマブ(tovetumab)(抗CD140a)、TRBS07(抗GD2)、トレガリズマブ(tregalizumab)(抗CD4)、トレメリムマブ(抗CTLA-4)、TRU-016(抗CD37)、ツコツズマブ(tucotuzumab)セルモロイキン(抗EpCAM)、ウブリツキシマブ(Ublituximab)(抗CD20)、ウレルマブ(抗4-1BB)、バンチクツマブ(vantictumab)(抗フリズルド受容体)、バパリキシマブ(vapaliximab)(抗AOC3(VAP-1))、バテリズマブ(vatelizumab)(抗ITGA2)、ベルツズマブ(抗CD20)、ベセンクマブ(vesencumab)(抗NRP1)、ビシリズマブ(visilizumab)(抗CD3)、ボロシキシマブ(抗インテグリンα5β1)、ボルセツズマブマホドチン(vorsetuzumab mafodotin)(抗CD70)、ボツムマブ(votumumab)(抗腫瘍抗原CTAA16.88)、ザルツムマブ(抗EGFR)、ザノリムマブ(抗CD4)、ザツキシマブ(zatuximab)(抗HER1)、ジラリムマブ(ziralimumab)(抗CD147(ベイシジン))、RG7636(抗ETBR)、RG7458(抗MUC16)、RG7599(抗NaPi2b)、MPDL3280A(抗PD-L1)、RG7450(抗STEAP1)並びにGDC-0199(抗Bcl-2)が挙げられる。
【0020】
本発明において有用な他の抗体又は腫瘍標的結合性タンパク質(例えば、TCRドメイン)としては、限定されないが、以下の抗原(適応症の癌は非限定的な例を表す):アミノペプチダーゼN(CD13)、アネキシンAl、B7-H3(CD276,種々の癌)、CA125(卵巣癌)、CA15-3(癌腫)、CA19-9(癌腫)、L6(癌腫)、Lewis Y(癌腫)、Lewis X(癌腫)、αフェトプロテイン(癌腫)、CA242(結腸直腸癌)、胎盤のアルカリホスファターゼ(癌腫)、前立腺特異的抗原(前立腺)、前立腺酸性ホスファターゼ(前立腺)、上皮成長因子(癌腫)、CD2(ホジキン病,NHLリンパ腫,多発性骨髄腫)、CD3ε(T細胞リンパ腫、肺、乳房、胃、卵巣の癌,自己免疫疾患,悪性腹水)、CD19(B細胞悪性腫瘍)、CD20(非ホジキンリンパ腫,B細胞腫瘍、自己免疫疾患)、CD21(B細胞リンパ腫)、CD22(白血病,リンパ腫,多発性骨髄腫,SLE)、CD30(ホジキンリンパ腫)、CD33(白血病,自己免疫疾患)、CD38(多発性骨髄腫)、CD40(リンパ腫,多発性骨髄腫,白血病(CLL))、CD51(転移性黒色腫,肉腫)、CD52(白血病)、CD56(小細胞肺癌、卵巣癌,メルケル細胞癌及び液性腫瘍,多発性骨髄腫)、CD66e(癌腫)、CD70(転移性腎細胞癌及び非ホジキンリンパ腫)、CD74(多発性骨髄腫)、CD80(リンパ腫)、CD98(癌腫)、CD123(白血病)、ムチン(癌腫)、CD221(固形腫瘍)、CD227(乳房,卵巣の癌)、CD262(NSCLC及び他の癌)、CD309(卵巣癌)、CD326(固形腫瘍)、CEACAM3(結腸直腸,胃の癌)、CEACAM5(CEA,CD66e)(乳房,結腸直腸及び肺の癌)、DLL4(A様-4)、EGFR(種々の癌)、CTLA4(黒色腫)、CXCR4(CD 184,ヘム腫瘍学(heme-oncology),固形腫瘍)、エンドグリン(CD 105,固形腫瘍)、EPCAM(上皮細胞接着分子,膀胱、頭部、頸部、結腸、NHL 前立腺及び卵巣の癌)、ERBB2(肺,乳房,前立腺の癌)、FCGR1(自己免疫疾患)、FOLR(葉酸受容体,卵巣癌)、FGFR(癌腫)、GD2ガングリオシド(癌腫)、G-28(細胞表面抗原糖脂質,黒色腫)、GD3イディオタイプ(癌腫)、ヒートショックプロテイン(癌腫)、HER1(肺,胃の癌)、HER2(乳房,肺及び卵巣の癌)、HLA-DR10(NHL)、HLA-DRB(NHL,B細胞性白血病)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(癌腫)、IGF1R(固形腫瘍、血液の癌)、IL-2受容体(T細胞白血病及びリンパ腫)、IL-6R(多発性骨髄腫、RA,キャッスルマン病,IL6依存性腫瘍)、インテグリン(種々の癌のανβ3,α5β1,α6β4,α11β3,α5β5,ανβ5)、MAGE-1(癌腫)、MAGE-2(癌腫)、MAGE-3(癌腫)、MAGE 4(癌腫)、抗トランスフェリン受容体(癌腫)、p97(黒色腫)、MS4A1(膜貫通4-ドメインサブファミリーAメンバー1,非ホジキンB細胞リンパ腫,白血病)、MUC1(乳房,卵巣,子宮頸部,気管支及び胃腸の癌)、MUC16(CA125)(卵巣癌)、CEA(結腸直腸癌)、gp100(黒色腫)、MARTI(黒色腫)、MPG(黒色腫)、MS4A1(膜貫通4-ドメインサブファミリーA、小細胞肺癌、NHL)、ヌクレオリン、Neu癌遺伝子産物(癌腫)、P21(癌腫)、ネクチン-4(癌腫)、抗(N-グリコリルノイラミン酸,乳房,黒色腫癌)のパラトープ、PLAP様精巣アルカリホスファターゼ(卵巣,精巣の癌)、PSMA(前立腺腫瘍)、PSA(前立腺)、ROB04、TAG 72(腫瘍関連糖タンパク質72,AML,胃,結腸直腸,卵巣の癌)、T細胞膜貫通タンパク質(癌)、Tie(CD202b)、組織因子、TNFRSF10B(腫瘍壊死因子受容体スパーファミリーメンバー10B,癌腫)、TNFRSF13B(腫瘍壊死因子受容体スパーファミリーメンバー13B,多発性骨髄腫,NHL、他の癌,RA及びSLE)、TPBG(栄養膜糖タンパク質,腎細胞癌)、TRAIL-R1(腫瘍壊死アポトーシス誘導リガンド受容体1,リンパ腫,NHL,結腸直腸,肺の癌)、VCAM-1(CD106、黒色腫)、VEGF、VEGF-A、VEGF-2(CD309)(種々の癌)に結合するものが挙げられる。他の腫瘍関連抗原標的の一例が概説されている(Gerber,et al,mAb 2009 1:247-253;Novellino et al,Cancer Immunol Immunother.2005 54:187-207,Franke,et al,Cancer Biother Radiopharm.2000,15:459-76,Guo,et al.,Adv Cancer Res.2013;119:421-475,Parmiani et al.J Immunol.2007 178:1975-9)。このような抗原の例としては、分化抗原群(CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD9、CD10、CD11a、CD11b、CD11c、CD12w、CD14、CD15、CD16、CDwl7、CD18、CD21、CD23、CD24、CD25、CD26、CD27、CD28、CD29、CD31、CD32、CD34、CD35、CD36、CD37、CD41、CD42、CD43、CD44、CD45、CD46、CD47、CD48、CD49b、CD49c、CD53、CD54、CD55、CD58、CD59、CD61、CD62E、CD62L、CD62P、CD63、CD68、CD69、CD71、CD72、CD79、CD81、CD82、CD83、CD86、CD87、CD88、CD89、CD90、CD91、CD95、CD96、CD100、CD103、CD105、CD106、CD109、CD117、CD120、CD127、CD133、CD134、CD135、CD138、CD141、CD142、CD143、CD144、CD147、CD151、CD152、CD154、CD156、CD158、CD163、CD166、CD168、CD184、CDwl86、CD195、CD202(a,b)、CD209、CD235a、CD271、CD303、CD304)、アネキシンAl、ヌクレオリン、エンドグリン(CD105)、ROB04、アミノペプチダーゼN,様-4(DLL4)、VEGFR-2(CD309)、CXCR4(CD184)、Tie2、B7-H3、WT1、MUC1、LMP2、HPV E6 E7、EGFRvIII、HER-2/neu、イディオタイプ、MAGE A3、p53非変異型、NY-ESO-1、GD2、CEA、MelanA/MARTl、Ras変異型、gp100、p53変異型、プロテイナーゼ3(PR1)、bcr-abl、チロシナーゼ、サバイビン、hTERT、肉腫転座切断点、EphA2、PAP、ML-IAP、AFP、EpCAM、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、ALK、アンドロゲン受容体、サイクリンBl、ポリシアル酸、MYCN、RhoC、TRP-2、GD3、フコシルGMl、メソテリン、PSCA、MAGE Al、sLe(a)、CYPIB I、PLACl、GM3、BORIS、Tn、GloboH、ETV6-AML、NY-BR-1、RGS5、SART3、STn、カルボニックアンヒドラーゼIX、PAX5、OY-TES1、精子タンパク質17、LCK、HMWMAA、AKAP-4、SSX2、XAGE 1、B7H3、レグマイン、Tie2、Page4、VEGFR2、MAD-CT-1、FAP、PDGFR-β、MAD-CT-2、及びFos関連抗原1が挙げられる。
【0021】
さらに、本発明の好ましい抗体としては、当該技術分野で知られた感染細胞と関連している抗原及びエピトープ標的に特異的なものが挙げられる。かかる標的としては、限定されないが、以下の感染性因子:HIVウイルス(特に、HIVエンベロープスパイクに由来する抗原及び/又はgp120及びgp41エピトープ)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、Streptococcus agalactiae、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、Legionella pneumophilia、Streptococcus pyogenes、大腸菌、Neisseria gonorrhoeae、Neisseria meningitidis、肺炎球菌(Pneumococcus)、Cryptococcus neoformans、Histoplasma capsulatum、-influenzae B、Treponema pallidum、ライム病スピロヘータ、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、Mycobacterium leprae、Brucella abortus、狂犬病ウイルス、インフルエンザウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルスI、単純ヘルペスウイルスII、ヒト血清パルボ様ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、アデノウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、エプスタイン-バーウイルス、マウス白血病ウイルス、ムンプスウイルス、水疱性口内炎ウイルス、シンドビスウイルス、リンパ性脈絡髄膜炎ウイルス、疣ウイルス、ブルータングウイルス、センダイウイルス、ネコ白血病ウイルス、レオウイルス、ポリオウイルス、シミアンウイルス40、マウス乳癌ウイルス、デングウイルス、風疹ウイルス、西ナイルウイルス、Plasmodium falciparum、Plasmodium vivax、Toxoplasma gondii、Trypanosoma rangeli、Trypanosoma cruzi、Trypanosoma rhodesiensei、Trypanosoma brucei、Schistosoma mansoni、Schistosoma japonicum、Babesia bovis、Elmeria tenella、Onchocerca volvulus、Leishmania tropica、Trichinella spiralis、Theileria parva、Taenia hydatigena、Taenia ovis、Taenia saginata、Echinococcus granulosus、Mesocestoides corti、Mycoplasma arthritidis、M.hyorhinis、M.orale、M arginini、Acholeplasma laidlawii、M.salivarium並びにM.pneumoniaeに由来するものが挙げられ、重要である。
【0022】
他の実施形態では、抗体(又は抗体様分子)は、免疫チェックポイント分子又はそのリガンドに特異的であり、免疫チェックポイント抑制活性の阻害薬として、又は免疫チェックポイント刺激活性のアゴニストとして作用するものである。かかる免疫チェックポイント分子及びリガンドとしては、PD1、PDL1、PDL2、CTLA4、CD28、CD80、CD86、B7-H3、B7-H4、B7-H5、ICOS-L、ICOS、BTLA、CD137L、CD137、HVEM、KIR、4-1BB、OX40L、CD70、CD27、OX40、GITR、IDO、TIM3、GAL9、VISTA、CD155、TIGIT、LIGHT、LAIR-1、Siglecs及びA2aRが挙げられる(Pardoll DM.2012.Nature Rev Cancer 12:252-264,Thaventhiran T,et al.2012.J Clin Cell Immunol S12:004)。さらに、本発明の好ましい抗体としては、イピリムマブ及びトレメリムマブ(抗CTLA4)、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ、TSR-042、ANB011、AMP-514及びAMP-224(リガンド-Fc融合体)(抗PD1)、MPDL3280A、MEDI4736、MEDI0680及びBMS-9365569(抗PDL1)、MEDI6469(抗OX40アゴニスト)、BMS-986016、IMP701、IMP731及びIMP321(抗LAG3)が挙げられ得る。
【0023】
一態様において、インビトロ又はインビボでの抗体での処置にALT-803を加えることにより、疾患細胞又は疾患関連細胞に対する免疫細胞の細胞傷害性が増大する。一部の場合では、ALT-803は、免疫細胞を刺激して、疾患特異的抗体(又は抗体様分子)によって媒介される腫瘍細胞、感染細胞又は自己免疫疾患関連細胞に対するADCC又はADCP活性を増大させ得るものである。一実施形態では、ALT-803での免疫細胞の処理により、疾患標的特異的抗体によって媒介される疾患細胞又は疾患関連細胞に対するADCC又はADCP活性が少なくとも5%、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも100%増大する。好ましい一実施形態では、免疫細胞をALT-803で処理し、腫瘍細胞を腫瘍特異的抗体媒介性ADCC又はADCPによって死滅させるために使用し、このとき、腫瘍細胞死のレベルは、ALT-803で処理しなかった免疫細胞でみられるレベルよりも少なくとも5%高い、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも100%高い。好ましい実施形態では、被験体における腫瘍特異的ADCC又はADCPは、ALT-803と抗体の投与後、少なくとも5%、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも100%増大する。具体的な実施形態では、NK細胞ベースのADCC活性がALT-803での処置によって増大する。
【0024】
他の場合では、ALT-803は、CD4+及びCD8+ T細胞を刺激して疾患細胞又は疾患関連細胞、例えば腫瘍細胞又は感染細胞を死滅させる。好ましくは、ALT-803での処置は免疫細胞の細胞溶解活性を刺激するものであり、免疫チェックポイントブロッカーでの処置は免疫抑制応答を阻害するものであり、そのため、これらの処置の併用により、腫瘍細胞又は感染細胞に対して高度に有効及び/又は永続的な活性がもたらされる。一部の実施形態では、ALT-803は、インターフェロンガンマ(IFN-γ)及び/又はIL-6の血清レベルを高め、NK細胞及びT細胞の増殖を刺激し、NK細胞及びT細胞の活性化マーカー、例えばCD25、CD69、パーフォリン及びグランザイムの発現を上方調節する。このようなマーカーの誘導により、疾患細胞に対する免疫細胞の応答性又は細胞溶解活性が増強され得る。例えば、本明細書に記載の方法によりNK細胞を刺激して腫瘍細胞又は感染細胞を死滅させる。
【0025】
他の実施形態では、ALT-803は、他の自然免疫細胞、例えば好中球又は単核球細胞の活性及び/又はレベルを誘導する。かかる細胞は、疾患細胞、例えば腫瘍細胞又は感染細胞に対する治療用抗体のADCC及びADCPを媒介することが知られている(Golay,et al.Blood.2013 122:3482-91、Richards,et al,Mol Cancer Ther 2008 7:2517-27)。好ましくは、ALT-803と抗体の併用療法により、少なくとも一部において自然免疫細胞によって媒介される機構により、癌又は感染を有する患者における臨床応答の改善がもたらされる。例えば、本明細書に記載の方法により好中球又は単核球細胞を刺激して腫瘍細胞又は感染細胞を死滅させる。
【0026】
好ましくは、本明細書に記載の方法により、本明細書における組成物の投与前の腫瘍細胞又は感染細胞の数と比べて腫瘍細胞又は感染細胞の数の低減/減少がもたらされる。或いはまた、本明細書に記載の方法により、新生物又は感染の疾患進行の低減がもたらされる。好ましくは、本明細書に記載の方法により、未処置の被験体と比べて被験体の生存期間の長期化がもたらされる。
【0027】
一部の場合では、被験体の新生物又は感染を処置するための方法は、被験体に有効量のカルメット・ゲラン桿菌(BCG)と、ALT-803を含む有効量の医薬組成物とを投与することにより行われ、ここで、ALT-803は、ダイマー型IL-15RαSu/Fcと2分子のIL-15N72Dを含むものである。例えば、被験体はBCG+ALT-803を毎週、膀胱内留置尿道カテーテルにより連続6週間投与される。
【0028】
また、新生物の処置のためのキットであって、有効量のALT-803、抗体、及び新生物の処置のための該キットの使用説明書を備えているキットも提供する。
【0029】
感染の処置のためのキットは、有効量のALT-803、抗体、及び感染の処置のための該キットの使用説明書を備えているものである。
【0030】
本発明の可溶性融合タンパク質複合体の一部の特定の態様では、IL-15ポリペプチドは、天然IL-15ポリペプチドとは異なるアミノ酸配列を有するIL-15変異体である。ヒトIL-15ポリペプチドは、本明細書においてhuIL-15、hIL-15、huIL15、hIL15、IL-15野生型(wt)と称し、その変異体は、天然アミノ酸、成熟体の配列内のその位置及び変異体アミノ酸を用いて呼称する。例えば、huIL15N72Dは、72位にNからDへの置換を含むヒトIL-15を示す。一態様において、IL-15変異体は、例えば、天然IL-15ポリペプチドと比べてIL-15RβγC受容体に対する結合活性の増大によって実証されるようなIL-15アゴニストとしての機能を果たすものである。或いはまた、IL-15変異体は、例えば、天然IL-15ポリペプチドと比べてIL-15RβγC受容体に対する結合活性の低下によって実証されるようなIL-15アンタゴニストとしての機能を果たすものである。
【0031】
標的細胞を死滅させるための方法は、複数の細胞を抗体及びALT-803と接触させ(ここで、該複数の細胞は、さらに、IL-15ドメインによって認識されるIL-15R鎖を有する免疫細胞、又はFcドメインによって認識されるFc受容体鎖を有する免疫細胞、及び抗体(例えば、抗CD20抗体)によって認識される抗原を有する標的細胞を含む)、標的細胞を死滅させることにより行われる。例えば、標的細胞は腫瘍細胞又は感染(例えば、ウイルス感染)細胞である。
【0032】
標的抗原を発現している疾患細胞を死滅させるための方法は、免疫細胞を有効量のIL-15N72D:IL-15RαSu/Fc複合体(ALT-803)で処理し、ALT-803処理した該免疫細胞を、該標的抗原に特異的な抗体及び前記標的抗原を発現している疾患細胞と混合し、該疾患細胞を、ALT-803処理した該免疫細胞と該標的抗原特異的抗体によって媒介されるADCC又はADCPによって死滅させることにより行われる。一態様において、疾患細胞の死滅レベルは、ALT-803で処理しなかった免疫細胞によって媒介されるレベルと比べて少なくとも5%、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも100%増大する。
【0033】
また、本発明により、疾患細胞が疾患関連抗原を発現している患者の疾患を予防又は処置するための方法であって:複数の細胞を抗体及びALT-803と接触させる工程、並びに該患者の疾患が予防又は処置されるのに充分に該疾患細胞を損傷又は死滅させる工程を含む方法を提供する。好ましい実施形態では、ALT-803と抗体での併用療法により疾患進行が低減され得る、及び/又は患者の生存期間が長期化され得る。
【0034】
本発明により、哺乳動物に有効量の抗体と有効量のALT-803を投与することによって該哺乳動物の免疫応答を刺激する方法を提供する。
【0035】
特に定義していない限り、本明細書で用いる科学技術用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されている意味を有する。以下の参考文献は、当業者に、本発明において用いている用語の多くの一般的な定義を示すものである:Singleton et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology(第2版.1994);The Cambridge Dictionary of Science and Technology(Walker編,1988);The Glossary of Genetics,第5版,R.Rieger et al.(編),Springer Verlag(1991);及びHale&Marham,The Harper Collins Dictionary of Biology(1991)。本明細書で用いる場合、以下の用語は、特に指定のない限り、以下の、当該用語について示した意味を有する。
【0036】
「薬剤」により、ペプチド、核酸分子又は低分子化合物を意図する。例示的な治療用薬剤はALT-803である。
【0037】
「ALT-803」により、ダイマー型IL-15RαSu/Fc融合タンパク質と非共有結合により結合しており、免疫賦活活性を有するIL-15N72Dを含むものである複合体を意図する。一実施形態では、IL-15N72D及び/又はIL-15RαSu/Fc融合タンパク質は、参照配列と比べて1、2、3、4つ、又はそれ以上のアミノ酸変異を含むものである。例示的なIL-15N72Dアミノ酸配列は以下に示している。
【0038】
「改善する」により、疾患の発現又は進行が低減、抑制、減弱、減退、停止又は安定化することを意図する。
【0039】
「アナログ」により、同一ではないが、類似した機能的又は構造的特色を有する分子を意図する。例えば、ポリペプチドアナログは、対応する天然に存在するポリペプチドの生物活性を保持しているが、天然に存在するポリペプチドと比べて該アナログの機能を増強させる特定の生化学的修飾を有するものである。かかる生化学的修飾は、例えばリガンド結合を改変することなくアナログのプロテアーゼ耐性、膜透過性又は半減期を増大させ得るものである。アナログは非天然アミノ酸を含むものであってもよい。
【0040】
本発明は、所望の生物活性を示すものである限り抗体又はかかる抗体の断片を包含している。また、本発明にはキメラ抗体、例えばヒト化抗体も包含される。一般的に、ヒト化抗体は、非ヒト供給源に由来する1個以上のアミノ酸残基が導入されたものである。ヒト化は、例えば、当該技術分野で報告されている方法を用いて、齧歯類の相補性決定領域の少なくとも一部分でヒト抗体の対応する領域を置き換えることにより行われ得る。
【0041】
用語「抗体」又は「免疫グロブリン」は、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の両方を包含していることを意図する。好ましい抗体は、その抗原と反応性であるモノクローナル抗体である。また、用語「抗体」は、その抗原と反応性の1種類より多くの抗体の混合物(例えば、その抗原と反応性の異なる型のモノクローナル抗体のカクテル)も包含していることを意図する。さらに、用語「抗体」は、完全体の抗体、その生物学的機能性断片、一本鎖抗体並びに遺伝子組換え抗体、例えば、1種類より多くの種に由来する部分を含むキメラ抗体、二重機能性抗体、抗体コンジュゲート、ヒト化抗体及びヒト抗体も包含していることを意図する。生物学的機能性抗体断片(これもまた使用され得る)は、その抗原に結合するのに充分である抗体由来ペプチド断片である。「抗体」は、本明細書で用いる場合、抗体全体、並びに目的のエピトープ、抗原又は抗原性断片に結合し得る任意の抗体断片(例えば、F(ab’)2、Fab’、Fab、Fv)を包含していることを意図する。
【0042】
分子「に結合する」により、該分子に対して物理化学的親和性を有することを意図する。
【0043】
「検出する」は、検出対象の被検物質の有無又は量を特定することをいう。
【0044】
「疾患」により、細胞、組織又は器官の正常な機能が損傷又は妨害される任意の病状又は障害を意図する。疾患の例としては新生物及び感染が挙げられる。
【0045】
製剤又は製剤成分の「有効量」及び「治療有効量」という用語により、単独又は組み合わせで所望の効果をもたらすのに充分な製剤又は成分の量を意図する。例えば、「有効量」により、未処置の患者と比べて疾患の症状を改善するのに単独又は組み合わせで必要とされる化合物の量を意図する。疾患の治療的処置のための本発明を実施するのに使用される有効量の活性化合物(1種類又は複数種)は、投与様式、被験体の年齢、体重及び一般健康状態に応じて異なる。最終的に、担当の医師又は獣医が適切な量及び投薬量レジメンを決定する。かかる量を「有効」量と称する。
【0046】
「断片」により、ポリペプチド又は核酸分子の一部分を意図する。この一部分は、参照核酸分子又はポリペプチドの全長の好ましくは少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%を含有するものである。例えば、断片は、10、20、30、40、50、60、70、80、90個又は100、200、300、400、500、600、700、800、900個又は1000個のヌクレオチド又はアミノ酸を含有するものであり得る。しかしながら、本発明には、それぞれ完全長のポリペプチド及び核酸の所望の生物活性を示すものである限りポリペプチド断片及び核酸断片もまた包含される。ほぼ任意の長さの核酸断片が使用される。例えば、約10,000、約5,000、約3,000、約2,000、約1,000、約500、約200、約100、約50塩基対の長さ(あらゆる中間の長さを含む)の全長を有する実例としてのポリヌクレオチドセグメントが本発明の多くの実行において含められる。同様に、ほぼ任意の長さのポリペプチド断片が使用される。例えば、約10,000、約5,000、約3,000、約2,000、約1,000、約500、約200、約100又は約50個のアミノ酸長(あらゆる中間の長さを含む)の全長を有する実例としてのポリペプチドセグメントが本発明の多くの実行において含められる。
【0047】
用語「単離された」、「精製された」又は「生物学的に純粋な」は、物質が、その天然状態でみられるときには通常付随している成分を種々の度合で含有していないことをいう。「単離する」とは、元の供給源又は周囲環境からのある度合の分離を表す。「精製する」とは、単離よりも高いある度合の分離を表す。
【0048】
「精製された」又は「生物学的に純粋な」タンパク質は、不純物(あれば)が該タンパク質の生物学的特性に実質的に影響しないような、又は他の有害な帰結を引き起こさないような充分に他の物質を含有していないものである。すなわち、本発明の核酸又はペプチドは、細胞性物質、ウイルス性物質又は組換えDNA手法によって作製した場合の培養培地又は化学合成した場合の化学的前駆物質若しくは他の化学物質を実質的に含有していない場合、精製されている。純度及び均一性は典型的には、分析化学手法、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又は高速液体クロマトグラフィーを用いて測定される。用語「精製された」は、核酸又はタンパク質が電気泳動ゲルにおいて本質的に1つのバンドをもたらすことを表している場合もあり得る。修飾、例えばリン酸化又はグリコシル化に供され得るタンパク質では、種々の修飾により種々の単離タンパク質が生じ得、これらは別々に精製され得る。
【0049】
同様に、「実質的に純粋な」により、ヌクレオチド又はポリペプチドが、天然状態では付随している成分から分離されていることを意図する。典型的には、ヌクレオチド及びポリペプチドは、そのタンパク質及び天然状態では付随している天然に存在する有機分子の少なくとも60%、70%、80%、90%、95%又はさらには99%(重量基準で)を含有していない場合、実質的に純粋である。
【0050】
「単離核酸」により、該核酸が由来する生物体の天然に存在するゲノム内でフランキングしている遺伝子を含有していない核酸を意図する。この用語は例えば:(a)天然に存在するゲノムDNA分子の一部分であるDNAであるが、このDNAが天然に存在する生物体のゲノム内では該分子の一部分にフランキングしている両方の核酸配列にフランキングされていないDNA;(b)ベクター又は原核生物若しくは真核生物のゲノムDNA内に、得られる分子が任意の天然に存在するベクター又はゲノムDNAと同一でないような様式で組み込まれた核酸;(c)独立した分子、例えば、cDNA、ゲノム断片、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって作製された断片又は制限断片;及び(d)ハイブリッド遺伝子、すなわち融合タンパク質をコードしている遺伝子の一部分である組換えヌクレオチド配列を包含している。本発明による単離核酸分子はさらに、合成により作製された分子、並びに化学的に改変されている、及び/又は修飾主鎖を有する任意の核酸も包含している。例えば、単離核酸は、精製されたcDNA又はRNAポリヌクレオチドである。また、単離核酸分子はメッセンジャーリボ核酸(mRNA)分子も包含している。
【0051】
「単離ポリペプチド」により、天然状態では付随している成分から分離されている本発明のポリペプチドを意図する。典型的には、ポリペプチドは、そのタンパク質及び天然状態では付随している天然に存在する有機分子の少なくとも60%(重量基準で)を含有していない場合、単離されている。好ましくは、その調製物は、少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも99%(重量基準で)が本発明のポリペプチドである。本発明の単離ポリペプチドは、例えば、天然の供給源からの抽出、かかるポリペプチドをコードしている組換え核酸の発現によって;又は該タンパク質を化学合成することにより得られ得る。純度は、任意の適切な方法、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、又はHPLC分析によって測定され得る。
【0052】
「マーカー」により、疾患又は障害と関連している発現レベル又は活性の改変を有する任意のタンパク質又はポリヌクレオチドを意図する。
【0053】
「新生物」により、過剰な増殖又はアポトーシスの低減を特徴とする疾患又は障害を意図する。本発明が使用され得る実例としての新生物としては、限定されないが、白血病(例えば、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性(myelocytic)白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病)、真性赤血球増加症、リンパ腫(ホジキン病、非ホジキン病)、ワルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、並びに固形腫瘍、例えば、肉腫及び癌(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮(endothelio)肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、胃及び食道の癌、頭頸部癌、直腸癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭線癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、頸部癌、子宮癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、多形性膠芽腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、神経鞘腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫及び網膜芽腫)が挙げられる。具体的な実施形態では、新生物は多発性骨髄腫、β細胞リンパ腫、尿路上皮/膀胱癌又は黒色腫である。本明細書で用いる場合、「薬剤を得る」の場合のような「得る」とは、該薬剤を合成すること、購入すること、又はその他の様式で取得することを包含している。
【0054】
「低減される」により、少なくとも5%、10%、25%、50%、75%又は100%のマイナスの変化を意図する。
【0055】
「参照」により、標準又は対照の条件を意図する。
【0056】
「参照配列」は、配列比較の根拠として使用される規定の配列である。参照配列は、指定配列のサブセット又は全体;例えば、完全長のcDNA若しくは遺伝子配列のセグメント又は完全なcDNA若しくは遺伝子配列であり得る。ポリペプチドでは、参照ポリペプチド配列の長さは一般的に、少なくとも約16個のアミノ酸、好ましくは少なくとも約20個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも約25個のアミノ酸、なおより好ましくは、約35個のアミノ酸、約50個のアミノ酸又は約100個のアミノ酸である。核酸では、参照核酸配列の長さは一般的に、少なくとも約50個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも約60個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約75個のヌクレオチド、なおより好ましくは、約100個のヌクレオチド若しくは約300個のヌクレオチド又はそのあたり若しくはこれらの間の任意の整数である。
【0057】
「特異的に結合する」により、化合物又は抗体が、本発明のポリペプチドを認識して結合するが、試料(例えば、天然状態で本発明のポリペプチドを含有している生物学的試料)中の他の分子は実質的に認識せず、結合もしないことを意図する。
【0058】
本発明の方法に有用な核酸分子としては、本発明のポリペプチド又はその断片をコードしている任意の核酸分子が挙げられる。かかる核酸分子は、内在性核酸配列と100%同一である必要はないが、典型的には実質的同一性を示すものである。内在性配列と「実質的同一性」を有するポリヌクレオチドは典型的には、二本鎖核酸分子の少なくとも一方の鎖とハイブリダイズし得るものである。「ハイブリダイズする」により、相補的なポリヌクレオチド配列間の二本鎖分子(例えば、本明細書に記載の遺伝子)又はその一部分を形成するための種々のストリンジェンシー条件下での塩基対合を意図する(例えば、Wahl,G.M.and S.L.Berger(1987)Methods Enzymol.152:399;Kimmel,A.R.(1987)Methods Enzymol.152:507を参照のこと)。
【0059】
例えば、ストリンジェント塩濃度は通常、約750mM未満のNaClと75mM未満のクエン酸三ナトリウム、好ましくは約500mM未満のNaClと50mM未満のクエン酸三ナトリウム、より好ましくは約250mM未満のNaClと25mM未満のクエン酸三ナトリウムである。低ストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、有機溶媒(例えば、ホルムアミド)の非存在下で得られ得るが、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、少なくとも約35%のホルムアミド、より好ましくは少なくとも約50%のホルムアミドの存在下で得られ得る。ストリンジェント温度条件としては通常、少なくとも約30℃、より好ましくは少なくとも約37℃、最も好ましくは少なくとも約42℃の温度が挙げられる。さまざまなさらなるパラメータ、例えば、ハイブリダイゼーション時間、界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS))の濃度、及び担体DNAの封入又は除外は当業者によく知られている。種々のストリンジェンシーレベルは、必要に応じたこのような種々の条件を組み合わせることにより得られる。好ましい:一実施形態では、ハイブリダイゼーションは、30℃にて750mMのNaCl、75mMのクエン酸三ナトリウム及び1%のSDS中で行われる。より好ましい一実施形態では、ハイブリダイゼーションは、37℃にて500mMのNaCl、50mMのクエン酸三ナトリウム、1%のSDS、35%のホルムアミド及び100μg/mlの変性サケ精子DNA(ssDNA)中で行われる。最も好ましい一実施形態では、ハイブリダイゼーションは、42℃にて250mMのNaCl、25mMのクエン酸三ナトリウム、1%のSDS、50%のホルムアミド及び200μg/mlのssDNA中で行われる。このような条件に対する有用な変形は当業者に容易に自明であろう。
【0060】
ほとんどの用途では、ハイブリダイゼーション後に行う洗浄工程もまた、ストリンジェンシーはさまざまである。洗浄ストリンジェンシー条件は塩濃度と温度によって規定され得る。上記のように、洗浄ストリンジェンシーは、塩濃度を下げること、又は温度を上げることによって高めることができる。例えば、洗浄工程のためのストリンジェント塩濃度は好ましくは、約30mM未満のNaClと3mM未満のクエン酸三ナトリウム、最も好ましくは約15mM未満のNaClと1.5mM未満のクエン酸三ナトリウムである。洗浄工程のためのストリンジェント温度条件としては通常、少なくとも約25℃、より好ましくは少なくとも約42℃、なおより好ましくは少なくとも約68℃の温度が挙げられる。好ましい一実施形態では、洗浄工程は、25℃にて30mMのNaCl、3mMのクエン酸三ナトリウム及び0.1%のSDS中で行われる。より好ましい一実施形態では、洗浄工程は、42℃にて15mMのNaCl、1.5mMのクエン酸三ナトリウム及び0.1%のSDS中で行われる。より好ましい一実施形態では、洗浄工程は、68℃にて15mMのNaCl、1.5mMのクエン酸三ナトリウム及び0.1%のSDS中で行われる。このような条件に対するさらなる変形は当業者に容易に自明であろう。ハイブリダイゼーション手法は当業者によく知られており、例えば、Benton and Davis(Science 196:180,1977);Grunstein and Hogness(Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 72:3961,1975);Ausubel et al.(Current Protocols in Molecular Biology,Wiley Interscience,New
York,2001);Berger and Kimmel(Guide to Molecular Cloning Techniques,1987,Academic Press,New York);及びSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New Yorkに記載されている。
【0061】
「実質的に同一の」により、ポリペプチド又は核酸分子が参照アミノ酸配列(例えば、本明細書に記載のアミノ酸配列のいずれか1つ)又は参照核酸配列(例えば、本明細書に記載の核酸配列のいずれか1つ)と少なくとも50%の同一性を示すことを意図する。好ましくは、かかる配列は比較に使用される配列と、アミノ酸レベル又は核酸レベルで少なくとも60%、より好ましくは80%又は85%、より好ましくは90%、95%又はさらには99%同一である。
【0062】
配列同一性は典型的には、配列解析ソフトウェア(例えば、ウィスコンシン大学バイオテクノロジーセンター(University of Wisconsin Biotechnology Center)(1710 University Avenue,Madison,Wis.53705)の遺伝学コンピュータグループ(Genetics Computer Group)のSequence Analysis Software Package、BLAST、BESTFIT、GAP又はPILEUP/PRETTYBOXプログラム)を用いて測定される。かかるソフトウェアは、相同性の度合を種々の置換、欠失及び/又は他の修飾に割り当てることにより同一配列又は類似配列をマッチングさせる。同類置換としては典型的には、以下の群:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リシン、アルギニン;及びフェニルアラニン、チロシン内での置換が挙げられる。同一性の度合を調べるための例示的なアプローチの一例では、BLASTプログラムが使用され得、e-3~e-100の確率スコアは密接に関連している配列を示す。
【0063】
「被験体」により哺乳動物、例えば限定されないが、ヒト又は非ヒト哺乳動物、例えば、ウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ又はネコを意図する。被験体は好ましくは、かかる処置を必要とする哺乳動物、例えば、B細胞リンパ腫又はその素因を有すると診断された被験体である。哺乳動物は、任意の哺乳動物、例えば、ヒト、霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、並びに家畜又は食料消費のために飼育する動物、例えば、畜牛、ヒツジ、ブタ、ニワトリ及びヤギである。好ましい一実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0064】
本明細書に示す範囲は、該範囲内のすべての値の省略形であると理解されたい。例えば、1~50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49又は50からなる群の任意の数、数の組み合わせ又は下位範囲を包含していると理解されたい。
【0065】
用語「処置する」及び「処置」は、本明細書で用いる場合、薬剤又は製剤を、有害な病状、障害又は疾患に罹患している臨床症状のある個体に、症状の重症度及び/又は頻度の低減がもたらされるように、症状及び/又はその根本的な原因が解消されるように、及び/又は損傷の改善又は修復が助長されるように投与することをいう。除外はしないが、障害又は病状の処置は、障害、病状又はそれに伴う症状が完全に解消されることを必要としないことは認識されよう。
【0066】
新生物を有する患者の処置としては、以下のとおりであり、わかっている腫瘍を最初の治療(例えば、手術)によって除去した後に存在しているかもしれない残存腫瘍細胞を破壊し、それにより起こり得る癌の再発を予防するための補助療法(adjuvant therapy)(「adjunct therapy」又は「adjunctive therapy」とも称される);外科処置の前に施される癌を縮小させるための術前補助療法;寛解を引き起こすための導入療法(典型的には急性白血病に対して);寛解が得られたら寛解を持続させるために施される強化療法(consolidation therapy)(「intensification therapy」とも称される);寛解の長期化を補助するためにより低用量又はより低頻度での用量で施される維持療法;ファーストライン治療(標準治療とも称される);セカンド(又はサード、フォースなど)ライン治療(サルベージ療法とも称される)は、疾患がファーストライン治療後、応答又は再発しなかった場合に施される;及び癌が有意に小さくなることを期待せず、症状のマネージメントに対処するための待機療法(支持療法とも称される)の任意のものが挙げられ得る。
【0067】
用語「予防する」及び「予防」は、薬剤又は組成物を、特定の有害な病状、障害又は疾患に対して易罹患性であるか、又は素因を有する臨床症状のない個体に投与することをいい、したがって、症状の発生及び/又はその根本的な原因の抑制に関するものである。
【0068】
具体的に記載していない限り、又は文脈から自明でない限り、本明細書で用いる場合、用語「or(又は,若しくは)」は包含的であると理解されたい。具体的に記載していない限り、又は文脈から自明でない限り、本明細書で用いる場合、用語「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「この(the)」は単数形又は複数形であると理解されたい。
【0069】
具体的に記載していない限り、又は文脈から自明でない限り、本明細書で用いる場合、用語「約」は、当該技術分野における通常許容される範囲内、例えば、平均の2標準偏差以内と理解されたい。約は、記載の値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%又は0.01%以内と理解され得る。文脈から明らかでない限り、本明細書に示す数値はすべて、約という用語によって修飾されている。
【0070】
本明細書における可変部の任意の定義における化学基の列挙の記載は、任意の単独の基又は記載の基の組み合わせとしての該可変部の定義を包含している。本明細書における可変部又は態様に関する実施形態の記載は、任意の1つの実施形態として、又は任意の他の実施形態若しくはその一部分との組み合わせでの該実施形態を包含している。
【0071】
本明細書に示す任意の組成物又は方法は、本明細書に示す任意の他の組成物及び方法の1つ以上と組み合わされ得る。
【0072】
移行句「~からなる(comprising)」は、「~を有する(including)」、「~を含む(containing)」又は「~を特徴とする(characterized by)」と同義的であり、包含的又は非限定的であり、記載されていないさらなる要素又は方法工程を排除しない。対照的に、移行句「consisting of(~のみからなる)」は、特許請求の範囲に明記されていない要素、工程又は成分はいずれも排除する。移行句「~から本質的になる(consisting essentially of)」は、請求項の範囲を、請求項に記載の発明の明記された材料又は工程「及び基本的な新規の特徴に実質的に影響しないもの」に限定する。
【0073】
本発明の他の特色及び利点は、その好ましい実施形態の以下の説明及び特許請求の範囲から自明となろう。特に定義していない限り、本明細書で用いる科学技術用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様又は同等の方法及び材料が本発明の実施又は試験において使用され得るが、好適な方法及び材料を以下に記載する。本明細書で挙げた外国の公開特許及び特許出願はすべて、引用により本明細書に組み込まれる。本明細書に記載した受託番号によって示されるGenbank及びNCBIの寄託物は引用により本明細書に組み込まれる。本明細書で挙げた他の既刊の参考文献、文献、手稿及び科学文献はすべて、引用により本明細書に組み込まれる。矛盾する場合は、本明細書(定義を含む)に支配される。また、材料、方法及び実施例は実例にすぎず、限定を意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【
図1】
図1A~
図1Fは、ヒト免疫細胞サブセットのインビトロ増殖に対するALT-803の効果を示す一連の折れ線グラフである。ヒトPBMCを2例の健常ドナー(ドナーA,
図1A,
図1C及び
図1E;ドナーB,
図1B,
図1D及び
図1F)の血液バフィーコートから分離し、RPMI-10中でALT-803とともに、又はなしで5日間(
図1A及び
図1B)又は表示した期間(
図1C,
図1D,
図1E及び
図1F)培養した。ALT-803は、
図1A及び
図1Bに表示した濃度で、並びに
図1C~
図1Fに示した試験では10nMで添加し、RPMI-10を培地対照(Ctrl)として使用した。インキュベーションの終了時、PBMCを、CD4、CD8(T細胞のマーカーとして)及びCD16(NK細胞のマーカーとして)に特異的な蛍光色素標識抗体で染色した。細胞サブセットのパーセンテージを、FACSuiteソフトウェアを備えたFACSverseで解析した。
図1A及び
図1Bでは個々のドナーの三連の試料を解析し、
図1C及び
図1Dでは各時点で単一の試料を解析した。
図1E及び
図1Fは、それぞれ
図1C及び
図1Dで得られた結果から求めたCD4/CD8比を表す。
【
図2】
図2A及び
図2Bは、異なるドナー由来のヒト免疫細胞サブセットのインビトロ増殖に対するALT-803の効果を示すドットプロットを示す。ヒトPBMCを7例の健常ドナーの血液バフィーコートから分離し、単独の培地中又は0.5nMのIL-15若しくはALT-803を含有している培地中で7日間培養した。インキュベーションの終了時、PBMCを計数し、免疫細胞サブセットに特異的な蛍光色素標識抗体で染色した。細胞サブセットのパーセンテージを、FACSuiteソフトウェアを備えたFACSverseで解析し、細胞の絶対カウント数が
図2A及び
図2Bに示したとおりに計算された。
【
図3】
図3A、
図3B、
図3C及び
図3Dは、ALT-803とのインキュベーション後の免疫細胞サブセット上のCD25分子及びCD69分子の上方調節を示す折れ線グラフである。ヒトPBMCを2例の健常ドナー(左パネル及び右パネル)の血液バフィーコートから分離し、表示した濃度のALT-803とともにRPMI-10中で5日間培養した。ALT-803活性化PBMCを、(T細胞のマーカーとしての)CD4及びCD8、(NK細胞のマーカーとしての)CD335、(活性化マーカーとしての)CD25及びCD69に、それぞれ特異的な蛍光色素標識抗体で染色した。CD4
+ T細胞、CD8
+ T細胞及びNK細胞上でのCD25及びCD69の発現の蛍光強度[幾何平均(MFI)]を、FACSuiteソフトウェアを備えたFACSverseで解析した。
【
図4】
図4A~
図4Dは、ヒトCD8
+ T細胞及びNK細胞におけるグランザイムB及びパーフォリンの発現のALT-803による上方調節を示す折れ線グラフである。ヒトPBMCを血液バフィーコートから分離し、RPMI-10中で表示した濃度のALT-803とともに5日間培養した。ALT-803活性化PBMCを、CD8、(NK細胞のマーカーとしての)CD16及びCD335に、それぞれ特異的な蛍光色素標識抗体で染色し、次いで、グランザイムB又はパーフォリンに特異的な蛍光色素標識抗体で細胞内染色した。CD8
+ T細胞(
図4A:ドナー1及び
図4C:ドナー2)とNK細胞(
図4B:ドナー1及び
図4D:ドナー2)上でのグランザイムB及びパーフォリンの発現の平均蛍光強度(MFI:幾何平均)を、FACSuiteソフトウェアを備えたFACSverseで解析した。
【
図5】
図5A、
図5B及び
図5Cは、培養状態のヒト免疫細胞及びマウス免疫細胞によるサイトカイン産生及び細胞増殖に対するALT-803の効果を示す一連の棒グラフである。ヒトPBMC(
図5A)及びマウス脾細胞(
図5B)を、表示したとおりのALT-803を含有する培地中で4日間インキュベートした。細胞培養培地中に分泌されたサイトカインの変化を
図5A及び
図5Bに示す。バイオレット色素希釈法に基づいた細胞増殖応答の変化を
図5Cに示す。
【
図6】
図6A~
図6Dは、DaudiヒトB細胞リンパ腫細胞及びK562ヒト骨髄性(myelogenous)白血病細胞に対してALT-803によって誘導されるヒトPBMCの細胞傷害を示す一連の折れ線グラフ及び棒グラフである。ヒトPBMCをエフェクター細胞として使用し、Celltrace Violetで標識したDaudi及びK562細胞を標的細胞として使用した。ヒトPBMCをK562細胞(
図6A)、Daudi細胞(
図6B)又は10nMのリツキシマブ(抗CD20 Ab)を伴うDaudi細胞(
図6C)と、表示したE:T比で、10nMのALT-803を含む、又は含んでいないRPMI-10中で混合した。この細胞混合物を37℃で3日間インキュベートし、Daudi及びK562標的細胞のバイアビリティを、バイオレット標識標的細胞のヨウ化プロピジウム染色のFACSVerseフローサイトメーターでの解析によって評価した。ヒトPBMCを、バイオレットで標識したK562若しくはDaudi細胞と10:1の比で、又はDaudi細胞+リツキシマブ(ADCC)と2:1の比で10nMのALT-803を含む、又は含んでいないRPMI-10中で混合した。37℃で1~3日間のインキュベーション後、標的細胞の細胞傷害%を調べた(
図6D)。
【
図7】
図7A及び
図7Bは、K562及びDaudi細胞に対するヒトPBMC細胞傷害性のALT-803濃度依存性誘導を示す一連の折れ線グラフである。ヒトPBMCをエフェクター細胞として使用し、Celltrace Violetで標識したDaudi及びK562細胞を標的細胞として使用した。2例のドナー(A及びB)のヒトPBMCを、バイオレット標識K562細胞又はDaudi細胞と20:1のE:T比で、表示した濃度のALT-803を含むRPMI-10中で混合した。37℃で3日間のインキュベーション後、Daudi及びK562標的細胞のバイアビリティを、バイオレット標識標的細胞のヨウ化プロピジウム染色のFACSVerseフローサイトメーターでの解析によって評価した。
【
図8】
図8A~
図8Dは、ALT-803が腫瘍細胞に対する腫瘍特異的AbのADCCを増大させることを示す一連の折れ線グラフである。ドナー1(
図8A)又はドナー2(
図8B)の新鮮ヒトPBMCをバイオレット標識CD20陽性DaudiヒトB細胞リンパ腫細胞とE:T=2:1で、表示した濃度(0.01~10nM)のALT-803だけを、又は10nMのリツキシマブ(抗CD20 Ab)とともに含むRPMI-10中で混合した。37℃で2日間のインキュベーション後、Daudi細胞のバイアビリティを、バイオレット標識Daudi細胞のヨウ化プロピジウム染色のBD FACSVerseでの解析によって評価した。追跡試験において、NK細胞を正常ヒトPBMCからMACSによって単離し、エフェクター細胞として使用した。NK細胞(
図8C)及びNK枯渇PBMC(
図8D)をバイオレット標識Daudi細胞とE:T=1:1で、表示した濃度(0.01又は0.1nM)のALT-803を10nMのリツキシマブ又はHOAT Abとともに、又はなしで含有するRPMI-10中で混合した。細胞を37℃で2日間インキュベートした。Daudi細胞のバイアビリティを、ヨウ化プロピジウムで染色したバイオレット標識Daudi細胞のBD FACSVerseでの分析によって評価した。
【
図9】
図9A及び
図9Bは、ALT-803が、マウス脾細胞による腫瘍細胞に対する腫瘍特異的AbのADCCを増大させることを示す棒グラフ及び折れ線グラフである。
図9Aに示した試験では、PBS、ALT-803(0.2mg/kg)、リツキシマブ(10mg/kg)又はALT-803+リツキシマブでの処置後の腫瘍担持SCIDマウスから脾細胞を単離した。脾細胞とCelltrace Violet標識Daudi細胞をE:T=20:1で、単独の培地又はALT-803(10nM)、リツキシマブ(10nM)若しくはALT-803+リツキシマブを含有している培地の存在下で混合した。2日間37℃で2日間のインキュベーション後、Daudi標的細胞のバイアビリティを評価した。また、脾細胞は、ALT-803(0.2mg/kg)での処置後のBalb/cマウスから単離した(
図9B)。脾細胞とCelltrace Violet標識HER2陽性SK-BR-3ヒト乳癌細胞をE:T=10:1で、単独の培地又は種々の濃度の抗HER2抗体(クローン24D2)、ALT-803若しくは両剤を含有している培地の存在下で混合した。37℃で24時間のインキュベーション後、SK-BR-3標的細胞のバイアビリティを評価した。
【
図10】
図10は、SCIDマウスにおけるヒトBリンパ腫に対するALT-803+抗CD20抗体の抗腫瘍有効性を示す棒グラフである。Daudi細胞腫瘍を担持しているFox Chase SCID雌マウスをPBS、ALT-803(0.2mg/kg)、リツキシマブ(10mg/kg)又はALT-803+リツキシマブで処置した。骨髄中のDaudi細胞を最後の処置後、4日目に測定した。
【
図11】
図11は、SCIDマウスにおけるヒトBリンパ腫に対するALT-803+抗CD20抗体の抗腫瘍有効性を示す棒グラフである。Daudi細胞腫瘍を担持しているFox Chase SCID雌マウスをPBS、リツキシマブ又はリツキシマブ+種々の濃度のALT-803で処置した。骨髄中のDaudi細胞を最後の処置後、4日目に測定した。
【
図12】
図12は、Daudi細胞腫瘍を担持しているマウスのALT-803+抗CD20 Ab療法後の生存期間の長期化を示す折れ線グラフである。Daudi細胞腫瘍を担持しているFox Chase SCID雌マウスをPBS、リツキシマブ(10mg/kg)、ALT-803(0.05mg/kg)又はリツキシマブ+ALT-803で処置した。マウスの生存率をモニタリングし、カプラン・マイヤー生存率曲線をプロットした。
【
図13】
図13A及び
図13Bは、CT26結腸癌肺転移癌を担持しているマウスのALT-803療法及びALT-803+抗CTLA-4 Ab療法後の生存期間の長期化を示す一連の折れ線グラフである。BALB/cCT26結腸癌肺転移癌を担持しているマウスを、PBS、ALT-803、IL-15の単独療法薬並びに抗CTLA4 Ab及び抗PD-L1 Abとの併用療法薬で、図に示したとおりに処置した。マウスの生存率をモニタリングし、カプラン・マイヤー生存率曲線をプロットした。
【
図14】
図14A及び
図14Bは、5T33P骨髄腫腫瘍を担持しているマウスのALT-803+抗PD-L1 Ab療法後の生存期間の長期化を示す一連の折れ線グラフである。
図14Aでは、5T33P骨髄腫腫瘍を担持しているC57BL/6マウスをPBS、ALT-803、IL-15の単独療法薬並びに抗CTLA4 Ab及び抗PD-L1 Ab(0.2mg/マウス)との併用療法薬で、図に示したとおりに処置した。マウスの生存率をモニタリングし、カプラン・マイヤー生存率曲線をプロットした。
図14Bでは、5T33P骨髄腫腫瘍を担持しているC57BL/6マウスをPBS、最適下限のALT-803(0.05mg/kg)、最適下限の抗PD-L1 Ab(5μg)又はALT-803+抗PD-L1 Abの組み合わせで図に示したとおりに処置した。マウスの生存率をモニタリングし、カプラン・マイヤー生存率曲線をプロットした。
【
図15】
図15A及び
図15Bは、腫瘍細胞の表面上のPD1及びCTLA4に対するリガンドの発現を示す一連のグラフである。CT26(
図15A)及び5T33P(
図15B)腫瘍細胞を、PD-L1、CD86及びCD80(赤線)又はアイソタイプ対照(黒線)に対する抗体で染色し、次いで、フローサイトメトリーによって解析した。
【
図17】
図17は、カニクイザルにおけるALT-803の薬物動態プロフィールを示す折れ線グラフである。
【
図18】
図18A~
図18Hは、カニクイザルにおける反復用量でのALT-803での処置後の免疫細胞カウント数の変化及び処置後の回復を示す一連の折れ線グラフである。
【
図19】
図19A及び
図19Bは、ALT-803+チェックポイントブロック療法後の同所性MB49luc膀胱腫瘍を担持しているマウスの生存期間の長期化を示す一連の折れ線グラフである。
図19Aでは、同所性MB49luc膀胱腫瘍を担持しているC57BL/6マウスをPBS、ALT-803、並びに抗CTLA4 Ab及び抗PD-L1 AbとのALT-803併用療法薬で図に示したとおりに処置した。マウスの生存率をモニタリングし、カプラン・マイヤー生存率曲線をプロットした。80日後、ALT-803+抗PD-L1/抗CTLA4-Ab群の生存マウス及び処置未経験の年齢適合マウスに、膀胱内投与にてMB49luc腫瘍細胞で再負荷刺激した。マウスの生存期間をさらにモニタリングした。
図19Bでは、MB49luc膀胱腫瘍を担持しているC57BL/6マウスをPBS、ALT-803、抗PD-1 Ab、抗CTLA-4 Ab又は併用療法薬で図に示したとおりに処置した。マウスの生存率をモニタリングし、カプラン・マイヤー生存率曲線をプロットした。
【
図20】
図20は、MB49luc腫瘍細胞の表面上のPD1及びCTLA4に対するリガンドの発現を示す一連のフローサイトメトリーグラフである。MB49luc腫瘍細胞を、PD-L1、CD86及びCD80(青線)又はアイソタイプ対照(黒線)に対する抗体で染色し、次いで、フローサイトメトリーによって解析した。
【
図21】
図21A~
図21Cは、同系マウス黒色腫モデルにおけるALT-803とTA99の併用効果を示す一連の折れ線グラフである。
図21Aでは、B16F10黒色腫細胞(2×10
5)をC57BL/6マウスの脇腹に皮下注射した。触知できる腫瘍が形成されたら、マウスを無作為化し、0.2mg/kgのALT-803、10mg/kgのTA99、ALT-803+TA99の組み合わせ、又はPBS対照で、試験の10、14、17、21及び24日目に静脈内処置した。
図21B及び
図21Cは、併用療法の抗腫瘍免疫に関与している種々の細胞サブセットのエフェクター機能の評価を示す。CD4
+及びCD8
+ T細胞の枯渇は各々、それぞれラットmAb GK1.5(抗CD4)及び53.6.72(抗CD8a)の腹腔内注射によって行った。NK細胞の枯渇はマウスmAb PK136(抗NK1.1)の腹腔内投与によって行った。マクロファージの枯渇のためには、マウスにクロドネート負荷リポソーム(Clophosome)を腹腔内注射した。枯渇の影響を、腫瘍成長(
図21B)及びマウスの生存率(
図21C)の両方を用いて評価した。生存率曲線は、動物が腫瘍転移により死亡したとき、又は腫瘍が腫瘍量の閾値サイズ(一方向の寸法>20mm)に達したときの試験日を示す。n=8/群。
**:p<0.01;
***:p<0.001。
【
図22】
図22A~
図22Dは、脾臓及び腫瘍微小環境における免疫細胞のALT-803媒介性増加を示す一連の棒グラフである。
図22A~
図22Dでは、マウス(n=6)にB16F10黒色腫細胞(2×10
5)を、試験の0日目(SD0)に注射(皮下)し、TA99、ALT-803、ALT-803+TA99の組み合わせ又はPBSでSD17に静脈内処置した。SD20に、CD8
+ T細胞(CD8a
+)、CD4
+ T細胞(CD4
+)、NK細胞(panNK
+)、B細胞(CD19
+)及びマクロファージ(F4/80
+)のパーセンテージを、脾細胞(
図22A)及びTIL(7-AAD
-CD45
+,
図22B)において、フローサイトメトリーを用いて定量した。脾臓(
図22C)及びTIL(
図22D)のCD8
+ T細胞集団のうちCD8
+CD44
high記憶T細胞のパーセンテージを測定し、プロットした。
【
図23】
図23A~
図23Cは、ALT-803+TA99により再腫瘍負荷刺激からの免疫防御がもたらされることを示す一連の折れ線グラフである。
図23A~
図23Bでは、試験の0日目(SD0)にB16F10細胞(2×10
5)を皮下移植したマウス(n=20)を即座にPBS、TA99又はTA99+ALT-803で静脈内処置した。3週間の処置及び2ヶ月間のモニタリング後、未投薬の動物及び生存動物に、B16F10細胞(2×10
5)の皮下注射によって反対側に再負荷刺激した。腫瘍初期負荷刺激の際の動物の無腫瘍生存率(動物の皮下腫瘤は<50mm
3に維持)(
図23A)及び再負荷刺激の際の腫瘍成長(
図23B)を測定し、プロットした。TB=腫瘍担持。
*:p<0.05;
**:p<0.01;
***:p<0.001。
図23Cでは、マウス黒色腫B16F10細胞(2×10
5/マウス)をC57BL/6マウスの脇腹に試験の-58日目(SD-58)に皮下注射した。マウスにはB16F10細胞を
図23Aのとおりに注射し、ALT-803(0.2mg/kg)及びTA99(10mg/kg)で、週2回、3週間(0日目に開始)静脈内処置した。CD4
+ T細胞、CD8
+ T細胞又はNK細胞を枯渇させるため、抗CD4(GK1.5)、抗CD8(53-6.72)及び/又は抗NK(PK136)を無腫瘍マウスに、腫瘍移植後46日目に腹腔内投与した。無腫瘍マウスの抗腫瘍記憶応答を評価するため、B16F10細胞(2×10
5/マウス)を無腫瘍マウスの反対側に、最初の腫瘍移植後58日間目(SD0)に皮下注射した。B16F10細胞を注射した(injected with)処置未経験のマウスを対照として使用した。生存率曲線に、動物が腫瘍転移により死亡したときの試験日、又は閾値サイズ(腫瘍体積>4000立方mm)をまとめる。n=10/群。
【
図24】
図24A~
図24Eは、ALT-803はCD4
+ T細胞を活性化してそのPD-L1発現を上方調節するが、CD8
+ T細胞上のPD-1発現は低減させることを示す一連の棒グラフである。腫瘍担持マウス(n=6)のTIL(7-AAD
-CD45
+)画分(
図24A及び
図24C)並びに脾臓(
図24B)由来のCD4
+ T細胞(CD4
+)を抗CD25(
図24A)又は抗PD-L1(
図24B及び
図24C)抗体で、被験物質の単回注射後3日目に染色した後、フローサイトメトリー定量を行った。腫瘍担持マウス(n=6)の脾臓(
図24D)及びTIL(7-AAD
-CD45
+)画分(
図24E)由来のCD8
+ T細胞(CD8
+;
図24D及び
図24E)は、抗PD-1(
図24D及び
図24E)抗体で被験物質の単回注射後3日目に染色した後、フローサイトメトリー定量を行った。PD-L1及びPD-1の発現を、平均蛍光強度(MFI)を用いてスコア化する。
*:p<0.05;
**:p<0.01;
***:p<0.001。
【
図25】
図25A~
図25Dは、ALT-803がNK細胞を活性化してNK細胞上のPD-1発現を下方調節することを示す一連の棒グラフである。腫瘍担持マウス(n=6)の脾臓(
図25A及び
図25C)及びTIL(7-AAD
-CD45
+)画分(
図25B及び
図25D)由来のNK細胞(panNK
+;)を抗KLRG1(
図25A及び
図25B)及び抗PD-1(
図25C及び
図25D)抗体で被験物質の単回注射後3日目に染色した後、フローサイトメトリー定量を行った。KLRG1及びPD-1の発現を、平均蛍光強度(MFI)を用いてスコア化する。
*:p<0.05;
**:p<0.01;
***:p<0.001。
【
図26】
図26A~
図26Bは、同系マウス黒色腫モデルにおけるALT-803/TA99と抗PD-L1 mAbの併用効果を示す一連の折れ線グラフである。
図26Aでは、B16F10黒色腫細胞(2×10
5)をC57BL/6マウスの右背側脇腹に皮下注射した。触知できる腫瘍が形成されたら、マウスを無作為化し、0.2mg/kgのALT-803(i.v.)及び10mg/kgのTA99(i.v.)で100μg/マウスの抗PD-L1 Ab 10F.9G2(i.p.)とともに、又はなしで、試験の10、14、17、21及び24日目に処置した。
*:p<0.05;
***:p<0.001。
図26Bは、B16F10細胞におけるPD-L1のインビトロ及びインビボでの発現を示す。インビトロ培養物(実線)並びに腫瘍担持マウス(点線)から収集したB16F10細胞をフルオロフォア標識抗PD-L1抗体(赤)で染色し、フローサイトメトリーに供した。抗体アイソタイプ(黒)を陰性対照として含めた。
【発明を実施するための形態】
【0075】
本発明は、少なくとも一部において、抗体と、インターロイキン-15(IL-15)スーパーアゴニスト変異型及びダイマー型IL-15受容体α/Fc融合タンパク質の複合体であるALT-803との併用が、新生物(例えば、膠芽腫、前立腺癌、造血器の癌、B細胞腫瘍、多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、皮膚T細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、固形腫瘍、尿路上皮/膀胱癌、黒色腫、肺癌、腎細胞癌、乳癌、頭頸部癌、結腸直腸癌、及び卵巣癌)又は感染(例えば、ヒト免疫不全ウイルスによる感染)に対する免疫応答の増強に有用であるという驚くべき知見に基づいている。
【0076】
ALT-803
ALT-803は、IL-2Rβγに対する増大した結合能及び増強された生物活性を有するIL-15変異型を含むものである(米国特許第8,507,222号,引用により本明細書に組み込まれる)。IL-15のこのスーパーアゴニスト変異型は刊行物(J Immunol 2009 183:3598)に報告され、米国特許庁により該スーパーアゴニストに対する特許が発行されており、いくつかの特許出願が係属中である(例えば、米国特許出願第12/151,980号及び同第13/238,925号)。このIL-15スーパーアゴニストを可溶性IL-15α受容体融合タンパク質(IL-15RαSu/Fc)と組み合わせると、インビトロ及びインビボで非常に強力なIL-15活性を有するタンパク質複合体がもたらされる(Han et al.,2011,Cytokine,56:804-810;Xu,et al.,2013 Cancer
Res.73:3075-86,Wong,et al.,2013,OncoImmu
nology 2:e26442)。このIL-15スーパーアゴニスト複合体(IL-15N72D:IL-15RαSu/Fc)はALT-803と称される。薬物動態解析により、該複合体は、マウスにおいてi.v.投与後25時間の半減期を有することが示された。ALT-803は、免疫適格マウスの侵襲性の固形腫瘍モデル及び造血器腫瘍モデルに対して見事な抗腫瘍活性を示す。これは、単独療法として週2回又は毎週のi.v.投薬レジメンを用いて投与してもよく、抗体との併用療法薬として投与してもよい。また、ALT-803の抗腫瘍応答は永続的である。また、ALT-803での処置後に治癒した腫瘍担持マウスは、同じ腫瘍細胞での再負荷刺激に対して高度に耐性であり、ALT-803が、再導入された腫瘍細胞に対して有効な免疫学的記憶応答を誘導することが示された。
【0077】
インターロイキン-15
インターロイキン-15(IL-15)は、エフェクターNK細胞及びCD8+記憶T細胞の発生、増殖及び活性化のための重要なサイトカインである。IL-15はIL-15受容体α(IL-15Rα)に結合し、エフェクター細胞上のIL-2/IL-15受容体β-共通γ鎖(IL-15Rβγc)複合体に対してトランス型で提示される。IL-15とIL-2はIL-15Rβγcに対する結合を共有しており、STAT3経路及びSTAT5経路を介してシグナル伝達する。しかしながら、IL-2はまた、CD4+CD25+FoxP3+ 制御性T(Treg)細胞の維持も補助し、活性化CD8+ T細胞の細胞死を誘導する。このような効果は、腫瘍に対するIL-2の治療活性を制限し得る。IL-15は、このような免疫抑制活性をIL-2と共有していない。さらに、IL-15は、エフェクターCD8+ T細胞に抗アポトーシスシグナル伝達をもたらすことが知られている唯一のサイトカインである。IL-15は単独又はIL-15Rαとの複合体のいずれかで投与すると、実験動物モデルにおいて、充分に確立された固形腫瘍に対して強力な抗腫瘍活性を示し、したがって、潜在的に癌を治癒し得る将来最も有望な免疫療法薬の1つであると認定されている。
【0078】
IL-15ベース癌治療薬の臨床開発を助長するため、IL-15と比べて増大した生物活性を有するIL-15変異型(IL-15N72D)が同定された(Zhu et
al.,J Immunol,183:3598-3607,2009)。このIL-15スーパーアゴニスト(IL-15N72D)の薬物動態及び生物活性は、IL-15N72D:IL-15RαSu/Fc融合複合体(ALT-803)の作出により、該スーパーアゴニスト複合体がインビボで天然サイトカインの少なくとも25倍の活性を有するようにさらに改善された(Han et al.,Cytokine,56:804-810,2011)。
【0079】
Fcドメイン
ALT-803は、IL-15N72D:IL-15RαSu/Fc融合複合体を含むものである。IgGのFc領域と別のタンパク質(種々のサイトカイン及び可溶性受容体など)のドメインを合わせた融合タンパク質が報告されている(例えば、Capon et al.,Nature,337:525-531,1989;Chamow et
al.,Trends Biotechnol.,14:52-60,1996);米国特許第5,116,964号及び同第5,541,087号を参照のこと)。このプロトタイプの融合タンパク質は、IgG Fcのヒンジ領域内のシステイン残基によって連結され、重鎖の可変ドメインとCH1ドメイン及び軽鎖がないIgG分子と同様の分子になっているホモダイマータンパク質である。Fcドメインを含む融合タンパク質のダイマー型の性質は、他の分子との高次相互作用(すなわち、二価結合又は二重特異性結合)をもたらすのに好都合であり得る。構造的相同性のため、Fc融合タンパク質は、同様のアイソタイプを有するヒトIgGのものと同等のインビボ薬物動態プロフィールを示す。免疫グロブリンの中でもIgGクラスは、ヒト血液中に最も多いタンパク質であり、その循環半減期は21日間という長いものであり得る。IL-15若しくはIL-15融合タンパク質の循環半減期を長くするため、及び/又はその生物活性を高めるため、ヒト重鎖IgGタンパク質のFc部分と共有結合させたIL-15RαSuと非共有結合させたIL-15ドメインを含有する融合タンパク質複合体が作製された(例えば、ALT-803)。
【0080】
用語「Fc」は、抗体の非抗原結合断片をいう。かかる「Fc」は、モノマー型形態であってもポリマー型形態であってもよい。天然Fcの元の免疫グロブリン供給源は、好ましくはヒト起源のものであり、任意の免疫グロブリンであってよいが、IgG1及びIgG2が好ましい。天然Fcは、共有結合(すなわち、ジスルフィド結合)及び非共有結合によって連結されてダイマー型形態又はポリマー型形態になったものであり得るモノマー型ポリペプチドで構成されている。天然Fc分子のモノマーサブユニット間の分子間ジスルフィド結合の数は、クラス(例えば、IgG、IgA、IgE)又はサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgA1、IgGA2)にもよるが1~4の範囲である。天然Fcの一例はIgGのパパイン消化により得られるジスルフィド結合型ダイマーである(Ellison et al.(1982),Nucleic Acids
Res.10:4071-9参照)。用語「天然Fc」は、本明細書で用いる場合、モノマー型形態、ダイマー型形態及びポリマー型形態に対する総称である。Fcドメインは、プロテインA、プロテインG、種々のFc受容体及び相補的タンパク質に対する結合部位を含有している。
【0081】
一部の実施形態では、用語「Fc変異体」は、天然Fcから修飾されているが、依然としてサルベージ受容体FcRnに対する結合部位を含んでいる分子又は配列をいう。国際特許出願WO97/34631(1997年9月25日公開)及びWO96/32478には、例示的なFc変異体並びにサルベージ受容体との相互作用が記載されており、引用により本明細書に組み込まれる。したがって、用語「Fc変異体」は、非ヒト天然Fcをヒト化した分子又は配列を含む。さらに、天然Fcは、本発明の融合分子に必要とされない構造的特色又は生物活性をもたらすため除去してもよい部位を含むものである。したがって、一部の特定の実施形態では、用語「Fc変異体」は、(1)ジスルフィド結合の形成、(2)選択された宿主細胞との不適合、(3)選択された宿主細胞内での発現時におけるN末端不均一性、(4)グリコシル化、(5)補体との相互作用、(6)サルベージ受容体以外のFc受容体との結合、(7)抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、又は(8)抗体依存性細胞食作用(ADCP)に影響を及ぼすか、又はこれらに関与している天然Fcの1つ以上の部位又は残基が欠失している分子又は配列を含む。Fc変異体を、本明細書において以下にさらに詳細に記載する。
【0082】
用語「Fcドメイン」は、上記のように、天然Fc及びFc変異体の分子及び配列を包含している。Fc変異体及び天然Fcの場合と同様、用語「Fcドメイン」は、完全体の抗体を消化したものであれ、組換え遺伝子発現又は他の手段によって作製したものであれ、モノマー型形態又はポリマー型形態の分子を包含している。
【0083】
融合タンパク質複合体
本発明によりALT-803を提供し、これはIL-15N72DとIL-15RαSu/Fc間のタンパク質複合体である。一部の特定の実施形態では、ALT-803ポリペプチドは、他のタンパク質ドメインとの融合のための骨格としての機能を果たし得る。かかる融合タンパク質複合体では、第1の融合タンパク質が、インターロイキン-15(IL-15)又はその機能性断片と共有結合させた第1の生物活性ポリペプチドを含むものであり;第2の融合タンパク質が、可溶性インターロイキン-15受容体アルファ(IL-15Rα)ポリペプチド又はその機能性断片と共有結合させた第2の生物活性ポリペプチドを含むものであり、第1の融合タンパク質のIL-15ドメインを第2の融合タンパク質の可溶性IL-15Rαドメインと結合させて可溶性融合タンパク質複合体が形成されている。また、本発明の融合タンパク質複合体は、第1及び第2の融合タンパク質の一方又は両方と連結させた免疫グロブリンのFcドメイン又はその機能性断片も含んでいる。好ましくは、第1と第2の融合タンパク質と連結させたFcドメインが相互作用して融合タンパク質複合体を形成したものである。かかる複合体は、免疫グロブリンのFcドメイン間でのジスルフィド結合の形成によって安定化され得る。一部の特定の実施形態では、本発明の可溶性融合タンパク質複合体は、IL-15ポリペプチド、IL-15変異体又はその機能性断片と可溶性IL-15Rαポリペプチド又はその機能性断片を含み、IL-15及びIL-15Rαポリペプチドの一方又は両方がさらに、免疫グロブリンFcドメイン又はその機能性断片を含むものである。
【0084】
さらなる一実施形態では、第1及び第2の生物活性ポリペプチドの一方又は両方が抗体又はその機能性断片を含むものである。
【0085】
別の実施形態では、抗体ドメインの対象の抗原が細胞表面受容体又はリガンドを含む。
【0086】
さらなる一実施形態では、抗原は、CD抗原、サイトカイン若しくはケモカイン受容体若しくはリガンド、成長因子受容体若しくはリガンド、組織因子、細胞接着分子、MHC/MHC様分子、Fc受容体、Toll様受容体、NK受容体、TCR、BCR、正/負の補助刺激受容体若しくはリガンド、デス受容体若しくはリガンド、腫瘍関連抗原又はウイルスコード抗原を含む。
【0087】
本明細書で用いる場合、用語「生物活性ポリペプチド」又は「エフェクター分子」は、本明細書において論考した所望の効果をもたらし得るアミノ酸配列、例えば、タンパク質、ポリペプチド又はペプチド;糖質又は多糖;脂質又は糖脂質、糖タンパク質又はリポタンパク質を意図する。また、エフェクター分子には化学薬品も包含される。また、生物活性な、又はエフェクターのタンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードしているエフェクター分子核酸も想定される。したがって、好適な該分子としては、調節因子、酵素、抗体又は薬物並びにDNA、RNA及びオリゴヌクレオチドが挙げられる。生物活性ポリペプチド又はエフェクター分子は天然に存在するものであってもよく、既知の成分から、例えば、組換え合成又は化学合成によって合成されるものであってもよく、非相同成分を含むものであってもよい。生物活性ポリペプチド又はエフェクター分子は一般的に、標準的な分子サイズ計測手法(遠心分離又はSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動など)によって判定したとき、約0.1~100KD又はそれより大きく約1000KDまで、好ましくは約0.1、0.2、0.5、1、2、5、10、20、30~50KDである。本発明の所望の効果としては限定されないが、例えば、増大した結合活性を有する本発明の融合タンパク質複合体の形成、標的細胞の死滅(例えば、細胞増殖若しくは細胞死を誘導するため、疾患の予防若しくは処置において免疫応答を起こすため、又は診断目的のための検出分子としての機能を果たすためのいずれかのため)が挙げられる。かかる検出には、アッセイ、例えば、細胞を培養して増殖させる逐次工程を含むアッセイが使用され得る。
【0088】
エフェクター分子と本発明の融合タンパク質複合体との本発明による共有結合により、いくつかの大きな利点がもたらされる。単一のエフェクター分子、例えば既知構造のかかるペプチドを含む本発明の融合タンパク質複合体を作製することができる。さらに、多種多様なエフェクター分子を同様のDNAベクターで作製することができる。すなわち、種々のエフェクター分子のライブラリーを感染細胞又は疾患細胞の認識のための該融合タンパク質複合体と連結させることができる。さらに、治療用途では、本発明の融合タンパク質複合体を被験体に投与するのではなく、該融合タンパク質複合体をコードしているDNA発現ベクターを投与し、該融合タンパク質複合体をインビボで発現させることができる。かかるアプローチにより、組換えタンパク質の調製に典型的に付随する費用のかかる精製工程が回避され、慣用的なアプローチに付随する抗原の取込み及びプロセッシングの複雑さが回避される。
【0089】
記載のように、本明細書に開示の融合タンパク質の成分と抗体、例えば、エフェクター分子コンジュゲート、例えば、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、タンパク質毒素、免疫グロブリンドメイン又は他の生理活性分子及び任意のペプチドリンカーは、ほぼ任意の様式で組織化され得るが、該融合タンパク質又は抗体は意図された機能を有しているものとする。特に、該融合タンパク質の各成分は、所望により、別の成分と少なくとも1つの適切なペプチドリンカー配列によって隔離されていてもよい。さらに、該融合タンパク質は、例えば、該融合タンパク質の修飾、識別及び/又は精製を容易にするためのタグを含むものであってもよい。
【0090】
治療用医薬品
本発明により、治療薬としての使用のためのALT-803を含む医薬組成物を提供する。一態様において、ALT-803は、例えば、薬学的に許容され得るバッファー、例えば生理食塩水で製剤化して全身投与される。好ましい投与経路としては、例えば、連続的持続レベルの該組成物を患者にもたらす膀胱内への点滴、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内又は皮内注射が挙げられる。ヒト患者又は他の動物の処置は、治療有効量の本明細書において確認される治療薬を生理学的に許容され得る担体に含めて用いて行われる。好適な担体及びその製剤は、例えば、E.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。投与される治療用薬剤の量は、投与様式、患者の年齢及び体重、並びに新生物又は感染の臨床症状に応じて異なる。一般的に、該量は、新生物又は感染と関連している他の疾患の処置に使用される他の薬剤で使用されるものの範囲内であるが、一部の特定の場合では、該化合物の高い特異性のため、必要とされる量はより少ない。該化合物は、被験体の免疫応答を増強させる投薬量で、又は当業者に知られた方法によって測定される新生物細胞の増殖、生存若しくは浸潤性が低減される投薬量で投与される。或いはまた、該化合物は、対象のウイルス又は他の病原体による感染が低減される投薬量で投与される。
【0091】
医薬組成物の配合
新生物又は感染の処置ためのALT-803の投与は、他の成分と併せて新生物又は感染の改善、低減又は安定化に有効な濃度の該治療薬がもたらされる任意の適切な手段によるものであり得る。ALT-803は、任意の適切な量で任意の適切な担体物質中に含有され得、一般的に、組成物の総重量の1~95重量%の量で存在させる。該組成物は、非経口(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、膀胱内又は腹腔内)投与経路に適した投薬形態で提供され得る。医薬組成物は慣用的な製薬実務に従って製剤化され得る(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(第20版),A.R.Gennaro編,Lippincott Williams&Wilkins,2000並びにEncyclopedia of Pharmaceutical Technology,J.Swarbrick及びJ.C.Boylan編,1988-1999,Marcel Dekker,New Yorkを参照のこと)。
【0092】
ヒトの投薬量は、ヒトに対する投薬量を動物モデルと比べて加減することは当業者が当該技術分野において常套的と認識しているため、まず、マウス又は非ヒト霊長類に使用される該化合物の量から外挿することにより決定され得る。一部の特定の実施形態では、投薬量は、約0.1μgの化合物/kg体重~約5000μgの化合物/kg体重;又は約1μg/kg体重~約4000μg/kg体重又は約10μg/kg体重~約3000μg/kg体重の間で異なり得ることが想定される。他の実施形態では、この用量は約0.1、0.3、0.5、1、3、5、10、25、50、75、100、150,200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1600、1700、1800、1900,2000、2500、3000、3500、4000、4500又は5000μg/kg体重であり得る。他の実施形態では、用量は約0.5μgの化合物/kg体重~約20μgの化合物/kg体重の範囲内であり得ることが予想される。他の実施形態では、用量は約0.5、1、3、6、10又は20mg/kg体重であり得る。もちろん、この投薬量は、かかる処置プロトコルにおいて常套的に行われるように、最初の臨床試験の結果及び具体的な患者のニーズに応じて上方又は下方に調整され得る。
【0093】
具体的な実施形態では、ALT-803は、非経口投与に適した賦形剤に含めて製剤化される。具体的な実施形態では、ALT-803は、0.5μg/kg~約15μg/kg(例えば、0.5、1、3、5、10又は15μg/kg)で投与される。
【0094】
膀胱癌の処置には、ALT-803は、点滴によって膀胱内に投与される。点滴の方法は知られている。例えば、Lawrencia,et al.,Gene Ther 8,760-8(2001);Nogawa,et al.,J Clin Invest 115,978-85(2005);Ng,et al.,Methods Enzymol 391,304-13 2005;Tyagi,et al.,J Urol
171,483-9(2004);Trevisani,et al.,J Pharmacol Exp Ther 309,1167-73(2004);Trevisani,et al.,Nat Neurosci 5,546-51(2002));(Segal,et al.,1975)。(Dyson,et al.,2005)。(Batista,et al.,2005;Dyson,et al.,2005)を参照のこと。一部の特定の実施形態では、点滴用のALT-803投薬量は約5~1000μg/投薬(dose)の間で異なり得ることが想定される。他の実施形態では、膀胱内用量は約25、50、100,200又は400μg/投薬であり得る。他の実施形態では、ALT-803は、点滴によって膀胱内に、標準治療薬、例えばマイトマイシンC又はカルメット・ゲラン桿菌(BCG)と併用して投与される。
【0095】
医薬組成物は、適切な賦形剤を用いて医薬組成物に製剤化され、投与されると、該治療薬を制御様式で放出する。例としては、単一の単位又は複数単位の錠剤又はカプセル剤組成物、油性の液剤、懸濁剤、乳剤、マイクロカプセル、マイクロスフィア、分子複合体、ナノ粒子、貼付剤及びリポソームが挙げられる。
【0096】
非経口用組成物
ALT-803を含む医薬組成物は、注射、輸注又は埋込み(皮下、静脈内、筋肉内、膀胱内、腹腔内など)により、慣用的な無毒性の薬学的に許容され得る担体及びアジュバントを含有している投薬形態、製剤で、又は適切な送達デバイス若しくは埋入物によって非経口投与され得る。かかる組成物の製剤化及び調製は医薬品製剤化の当業者によく知られている。製剤化は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(上掲)において知得され得る。
【0097】
非経口使用のためのALT-803を含む組成物は、単位投薬形態(例えば、単回用量のアンプル、シリンジ若しくはバッグ)で、又は数回用量を含有しており、適切な保存料が添加され得る(下記参照)バイアルで提供され得る。該組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、輸注デバイス若しくは埋込み用送達デバイスの形態であり得るか、又は使用直前に水若しくは別の適切なビヒクルで再構成するための乾燥粉末として提示され得る。新生物又は感染を低減又は改善するための活性薬剤以外に、該組成物には、非経口に許容され得る適切な担体及び/又は賦形剤が含められ得る。治療用活性薬剤(1種類又は複数種)を、制御放出のためにマイクロスフィア、マイクロカプセル、ナノ粒子、リポソームなどに組み込んでもよい。さらに、該組成物には懸濁化剤、可溶化剤、安定化剤、pH調整剤、張度調整剤及び/又は分散化剤が含められ得る。
【0098】
上記のように、ALT-803を含む医薬組成物は、滅菌注射に適した形態であり得る。かかる組成物を調製するため、適切な抗新生物/抗感染活性治療薬(1種類又は複数種)を非経口に許容され得る液状ビヒクルに溶解又は懸濁させる。中でも、使用され得る許容され得るビヒクル及び溶媒は水、適切な量の塩酸、水酸化ナトリウム又は適切なバッファーの添加によって適切なpHに調整された水、1,3-ブタンジオール、リンゲル液、及び等張性塩化ナトリウムブドウ糖液である。また、水性製剤には、1種類以上の保存料(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、エチル又はn-プロピル)が含有され得る。化合物のうちの1種類が水に溶けにくいか、又はわずかしか溶けない場合、溶解向上剤若しくは可溶化剤が添加され得るか、又は溶媒に10~60%w/wのプロピレングリコールなどが含められ得る。
【0099】
本発明により、本明細書における処方の化合物を含む治療有効量の医薬組成物を被験体(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に投与することを含む、新生物性又は感染性の疾患及び/又は障害或いはその症状の処置方法を提供する。したがって、一実施形態は、新生物性又は感染性の疾患又は障害或いはその症状に苦しんでいるか、又は易罹患性の被験体の処置方法である。該方法は、哺乳動物に、疾患又は障害或いはその症状が処置されるのに充分な量である治療量の本明細書における化合物を、該疾患又は障害が処置されるような条件下で投与する工程を含むものである。
【0100】
本明細書における方法は、被験体(例えば、かかる処置を必要とすると認定された被験体)に、本明細書に記載の化合物又は本明細書に記載の組成物を、かかる効果がもたらされるのに有効な量で投与することを含むものである。かかる処置を必要とする被験体の認定は、被験体又は保険医療の専門家の判断によるものであってもよく、主観的(例えば、意見)又は客観的(例えば、試験若しくは診断法によって測定可能なもの)であってもよい。
【0101】
本発明の治療方法(これは予防的処置を包含している)は一般に、治療有効量の本明細書における化合物、例えば、本明細書における処方の化合物を、これを必要とする被験体(例えば、動物、ヒト)、例えば哺乳動物、特にヒトに投与することを含むものである。かかる処置は、新生物性又は感染性の疾患、障害又はその症状に苦しんでいるか、有するか、易罹患性であるか、又はリスクのある被験体、特にヒトに適切に投与される。「リスクのある」被験体の判定は、診断試験又は被験体若しくは保険医療提供者の意見(例えば、遺伝子検査、酵素若しくはタンパク質マーカー、(本明細書において定義される)マーカー、家族歴など)による任意の客観的又は主観的判定によって行われ得る。ALT-803は、免疫応答の増大が所望される任意の他の障害の処置に使用され得る。
【0102】
一実施形態では、本発明により、処置の進行のモニタリング方法を提供する。該方法は、診断用マーカー(マーカー)(例えば、本明細書における化合物によってモジュレートされる本明細書に記載した任意の標的、タンパク質若しくはそのインジケータなど)のレベル又は診断測定値(例えば、スクリーニング、アッセイ)を、新生物又は感染と関連している障害又はその症状に苦しんでいるか、又は易罹患性の被験体において測定する工程を含むものであり、ここで、該被験体には、該疾患又はその症状が処置されるのに充分な治療量の本明細書における化合物が投与されている。該方法において測定されたマーカーレベルは正常な健常対照又は他の罹患患者のいずれかの既知のマーカーレベルと比較され、被験体の疾患状態が確立され得る。好ましい実施形態では、被験体の第2のマーカーレベルを最初のレベルの測定よりも後の時点で測定し、この2つのレベルを比較して疾患過程又は治療の有効性をモニタリングする。一部の特定の好ましい実施形態では、被験体の処置前のマーカーレベルを本発明による処置の開始前に測定し;次いで、この処置前のマーカーレベルが処置の開始後の被験体のマーカーレベルと比較され、処置の有効性が判定され得る。
【0103】
併用療法
好ましくは、ALT-803は、抗新生物治療薬又は抗感染治療薬、例えば抗体、例えば、腫瘍特異的抗体又は免疫チェックポイント阻害薬と併用して投与される。抗体とALT-803は同時に投与しても逐次投与してもよい。一部の実施形態では、抗体での処置は該疾患の適応症に確立された治療であり、この抗体レジメンにALT-803での処置を加えることにより、患者に対する治療上の有益性が改善される。かかる改善は、個々の患者ベースでの応答の増大又は患者集団における応答の増大として測定され得る。また、併用療法により、より低用量又はより低頻度での用量の抗体で改善された応答がもたらされ、耐容性がより良好な処置レジメンがもたらされ得る。記載のように、ALT-803と抗体の併用療法により、種々の機構、例えば、ADCC、ADCP及び/又はNK細胞、T細胞、好中球若しくは単核球細胞レベル或いは免疫応答の増大によって臨床的活性の増強がもたらされ得る。
【0104】
所望により、ALT-803は、任意の慣用的な治療、例えば限定されないが、手術、放射線療法、化学療法、タンパク質ベース治療又は生物製剤療法と併用して投与される。化学療法薬としては、アルキル化剤(例えば、白金ベース薬、テトラジン、アジリジン、ニトロソウレア、ナイトロジェンマスタード)、代謝拮抗薬(例えば、抗葉酸薬、フルオロピリミジン、デオキシヌクレオシドアナログ、チオプリン)、微小管阻害剤(例えば、ビンカアルカロイド、タキサン)、トポイソメラーゼ阻害薬(例えば、トポイソメラーゼI及びII阻害薬)、細胞傷害性抗生物質(例えば、アントラサイクリン)並びに免疫調節薬(例えば、サリドマイド及びアナログ)が挙げられる。
【0105】
キット又は医薬品システム
ALT-803を含む医薬組成物を新生物又は感染の処置における使用のためのキット又は医薬品システムに一体化してもよい。本発明のこの態様によるキット又は医薬品システムは、内部に1つ以上の容器、例えばバイアル、チューブ、アンプル、ボトル、シリンジ又はバッグが密封されている持ち運び手段、例えば、ボックス、カートン、チューブを備えたものである。また、本発明のキット又は医薬品システムは、ALT-803の使用のための使用説明書を付随して備えていてもよい。
【0106】
組換えタンパク質発現
一般に、本発明の融合タンパク質複合体(例えば、ALT-803の成分)の調製は、本明細書に開示した手順及び認知されている組換えDNA手法によって行われ得る。
【0107】
一般に、組換えポリペプチドは、適切な宿主細胞を、適切な発現媒体内のポリペプチドコード核酸分子又はその断片の全部又は一部で形質転換することによって作製される。分子生物学の分野の当業者には、組換えタンパク質を得るために多種多様な任意の発現系が使用され得ることが理解されよう。使用される厳密な宿主細胞は本発明に重要ではない。組換えポリペプチドは、事実上任意の真核生物宿主(例えば、出芽酵母、昆虫細胞、例えばSf21細胞、又は哺乳動物細胞、例えば、NIH 3T3、HeLa、COS若しくは好ましくはCHO細胞)において作製され得る。かかる細胞は広範な供給元(例えば、American Type Culture Collection,Rockland,Md.;また、例えば、Ausubel et al.,Current Protocol in Molecular Biology,New York:John
Wiley and Sons,1997も参照のこと)から入手可能である。トランスフェクションの方法及び発現媒体の選択は選択される宿主系に依存する。形質転換方法は、例えば、Ausubel et al.(上掲)に記載されている;発現媒体は、例えば、Cloning Vectors:A Laboratory Manual(P.H.Pouwels et al.,1985,追補1987)に示されたものから選択され得る。
【0108】
組換えポリペプチドの作製のための発現系には、さまざまなものが存在する。かかるポリペプチドの作製に有用な発現ベクターとしては、限定されないが、染色体、エピソーム及びウイルス由来のベクター、例えば、細菌のプラスミド、バクテリオファージ、トランスポゾン、酵母エピソーム、挿入エレメント、酵母染色体エレメント、ウイルス、例えばバキュロウイルス、パポバウイルス、例えばSV40、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス及びレトロウイルスに由来するベクター、並びにその組み合わせに由来するベクターが挙げられる。
【0109】
組換えポリペプチドが発現されたら、これは、例えば、アフィニティクロマトグラフィーを用いて単離される。一例では、該ポリペプチドに対して生じる抗体(例えば、本明細書に記載のようにして作製される)をカラムに結合させ、組換えポリペプチドを単離するために使用され得る。アフィニティクロマトグラフィーの前のポリペプチド含有細胞の溶解及び分別は標準的な方法によって行われ得る(例えば、Ausubel et al.(上掲)を参照のこと)。単離されたら、組換えタンパク質を所望により、例えば、高速液体クロマトグラフィーによってさらに精製してもよい(例えば、Fisher,Laboratory Techniques In Biochemistry and Molecular Biology,Work及びBurdon編,Elsevier,1980を参照のこと)。
【0110】
本明細書で用いる場合、本発明の生物活性ポリペプチド又はエフェクター分子には、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、タンパク質毒素、免疫グロブリンドメイン又は他の生物活性タンパク質(酵素など)などの因子が包含され得る。また、生物活性ポリペプチドには、他の化合物とのコンジュゲート、例えば、非タンパク質毒素、細胞傷害剤、化学療法剤、検出可能な標識、放射性物質などとのコンジュゲートも包含され得る。
【0111】
本発明のサイトカインは、細胞によって産生される因子であって、他の細胞に影響を及ぼし、細胞性免疫のいくつかの多重効果の任意の効果を担う任意の因子と定義する。サイトカインの例としては、限定されないが、IL-2ファミリー、インターフェロン(IFN)、IL-10、IL-1、IL-17、TGF及びTNFサイトカインファミリー、及び、IL-1~IL-35、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、TGF-β、TNF-α及びTNF-βが挙げられる。
【0112】
本発明の一態様において、第1の融合タンパク質は、インターロイキン-15(IL-15)ドメイン又はその機能性断片と共有結合させた第1の生物活性ポリペプチドを含むものである。IL-15は、T細胞の活性化と増殖に影響を及ぼすサイトカインである。免疫細胞の活性化と増殖への影響におけるIL-15活性は、いくつかの点でIL-2と同様であるが、根本的な違いが充分に特性評価されている(Waldmann,T A,2006,Nature Rev.Immunol.6:595-601)。
【0113】
本発明の別の態様では、第1の融合タンパク質は、IL-15変異体(本明細書においてIL-15変異型とも称する)であるインターロイキン-15(IL-15)ドメインを含むものである。IL-15変異体は好ましくは、天然(又は野生型)IL-15タンパク質とは異なるアミノ酸配列を含むものである。IL-15変異体は好ましくは、IL-15Rαポリペプチドに結合し、IL-15のアゴニスト又はアンタゴニストとしての機能を果たすものである。好ましくは、アゴニスト活性を有するIL-15変異体はスーパーアゴニスト活性を有するものである。一部の実施形態では、IL-15変異体は、IL-15Rαとの結合に関係なくIL-15のアゴニスト又はアンタゴニストとしての機能を果たし得るものである。IL-15アゴニストは、野生型IL-15と比べて同等又は高い生物活性のものが例示される。IL-15アンタゴニストは、野生型IL-15と比べて低い生物活性のもの、又はIL-15媒介性応答の阻害能があるものが例示される。一部の例では、IL-15変異体はIL-15RβγC受容体に対して、高活性又は低活性で結合するものである。一部の実施形態では、IL-15変異体の配列は、天然IL-15の配列と比べて少なくとも1個のアミノ酸の変化、例えば、置換又は欠失を有し、かかる変化によりIL-15のアゴニスト又はアンタゴニスト活性がもたらされる。好ましくは、該アミノ酸の置換/欠失は、IL-15Rβ及び/又はγCと相互作用するIL-15ドメイン内に存在する。より好ましくは、該アミノ酸の置換/欠失は、IL-15Rαポリペプチドとの結合又はIL-15変異体の産生能に影響しないものである。IL-15変異体を作製するのに好適なアミノ酸の置換/欠失は、IL-15の推定又は既知構造、IL-15と既知構造の相同な分子(IL-2など)との比較に基づいて、合理的若しくはランダム変異誘発及び機能アッセイ(本明細書に示しているような)、又は他の経験的方法によって特定され得る。さらに、好適なアミノ酸置換は、同類又は非同類置換及びさらなるアミノ酸の挿入であり得る。好ましくは、本発明のIL-15変異体は、1個又は1個より多くのアミノ酸の置換/欠失をヒト成熟IL-15配列の6、8、10、61、65、72、92、101、104、105、108、109、111又は112位に含有するものである;特に、D8N(「D8」は、天然のヒト成熟IL-15配列内のアミノ酸と残基の位置を示し、「N」は、IL-15変異体内のその位置の置換されたアミノ酸残基を示す)、I6S、D8A、D61A、N65A、N72R、V104P又はQ108A置換により、アンタゴニスト活性を有するIL-15変異体がもたらされ、N72D置換により、アゴニスト活性を有するIL-15変異体がもたらされる。
【0114】
ケモカインは、サイトカインと同様、他の細胞に曝露されたとき細胞性免疫のいくつかの多重効果の任意の効果を担う任意の化学物質の因子又は分子と定義する。好適なケモカインとしては、限定されないが、CXC、CC、C及びCX3Cケモカインファミリー、及び、CCL-1~CCL-28、CXC-1~CXC-17、XCL-1、XCL-2、CX3CL1、MIP-1b、IL-8、MCP-1、及び、Rantesが挙げられ得る。
【0115】
成長因子としては、特定の細胞に曝露されると影響を及ぼす対象の細胞の増殖及び/又は分化を誘発する任意の分子が包含される。成長因子にはタンパク質分子及び化学物質分子が包含され、一例としては、GM-CSF、G-CSF、ヒト成長因子及び幹細胞成長因子が挙げられる。さらなる成長因子もまた、本明細書に記載の使用に好適であり得る。
【0116】
毒素又は細胞傷害剤には、細胞に曝露されると成長に対して致死効果又は阻害効果を有する任意の物質が包含される。より具体的には、エフェクター分子は、例えば、植物起源又は細菌起源の細胞毒素、例えば、ジフテリア毒素(DT)、志賀毒素、アブリン、コレラ毒素、リシン、サポリン、シュードモナス外毒素(PE)、ヤマゴボウ(pokeweed)抗ウイルスタンパク質、又はゲロニン(gelonin)などであり得る。かかる毒素の生物活性断片は、当該技術分野でよく知られており、例えばDT A鎖及びリシンA鎖が挙げられる。さらに、毒素は、細胞表面で活性な薬剤、例えば、ホスホリパーゼ酵素(例えば、ホスホリパーゼC)などであってもよい。
【0117】
さらに、エフェクター分子は化学療法薬、例えば、ビンデシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メトトレキサート、アドリアマイシン、ブレオマイシン又はシスプラチンなどであってもよい。
【0118】
さらに、エフェクター分子は、診断試験又はイメージング試験に適した検出可能に標識された分子であってもよい。かかる標識としては、ビオチン又はストレプトアビジン/アビジン、検出可能なナノ粒子又は結晶、酵素又はその触媒活性断片、蛍光標識、例えば、緑色蛍光タンパク質、FITC、フィコエリトリン、シコム(cychome)、テキサスレッド又は量子ドット、放射性核種、例えば、ヨウ素-131、イットリウム-90、レニウム-188又はビスマス-212、リン光性若しくは化学発光性分子又はPET、超音波若しくはMRIによって検出可能な標識、例えば、Gd系若しくは常磁性金属イオン系造影剤が挙げられる。例えば、エフェクター又はタグを含むタンパク質の作製及び使用に関する開示については、Moskaug,et al.J.Biol.Chem.264,15709(1989);Pastan,I.et al.Cell 47,641,1986;Pastan et al.,Recombinant Toxins
as Novel Therapeutic Agents,Ann.Rev.Biochem.61,331,(1992);「Chimeric Toxins」Olsnes and Phil,Pharmac.Ther.,25,355(1982);公開PCT出願WO94/29350号;公開PCT出願WO94/04689号;公開PCT出願WO2005046449号及び米国特許第5,620,939号を参照のこと。
【0119】
共有結合により連結させたIL-15とIL-15Rαドメインを含むタンパク質融合体又はコンジュゲート複合体は、いくつかの重要な用途を有する。損傷又は死滅を受け易い細胞又は組織が本明細書に開示の方法によって容易にアッセイされ得る。
【0120】
本発明のIL-15及びIL-15Rαのポリペプチドは、アミノ酸配列が、天然に存在するIL-15及びIL-15Rαの分子、例えば、ヒト、マウス若しくは他の齧歯類又は他の哺乳動物のIL-15及びIL-15Rαの分子に相応に対応するものである。これらのポリペプチド及びコード核酸の配列、例えば、ヒトインターロイキン15(IL15)mRNA--GenBank:U14407.1、ハツカネズミインターロイキン15(IL15)mRNA--GenBank:U14332.1、ヒトインターロイキン-15受容体アルファ鎖前駆体(IL15RA)mRNA--GenBank:U31628.1、ハツカネズミインターロイキン15受容体,アルファ鎖--GenBank:BC095982.1は、文献において知られている。
【0121】
一部の状況では、例えば、sc-TCR又はsc-抗体の結合価を高めるために、本発明のタンパク質融合体又はコンジュゲート複合体を多価にすることが有用であり得る。特に、該融合タンパク質複合体のIL-15ドメインとIL-15Rαドメイン間の相互作用により、多価複合体を生成させる手段がもたらされる。また、多価融合タンパク質は、共有結合又は非共有結合により1~4個のタンパク質(同じ又は異なる)間を一体に、例えば、標準的なビオチン-ストレプトアビジン標識手法を使用することによって、又は適切な固相支持体(ラテックスビーズなど)とのコンジュゲーションによって連結させることによっても作製され得る。また、化学架橋タンパク質(例えば、ナノ粒子と架橋)も好適な多価種である。例えば、そのタンパク質は、修飾され得るタグ配列(ビオチン化BirAタグなど)又は化学反応性側鎖を有するアミノ酸残基(Cys若しくはHisなど)をコードしている配列を含めることにより修飾され得る。かかるアミノ酸タグ又は化学反応性アミノ酸は、該融合タンパク質又は抗体内のさまざまな位置に、好ましくは、生物活性ポリペプチド又はエフェクター分子の活性部位の遠位に配置され得る。例えば、可溶性融合タンパク質のC末端を、タグ又はかかる反応性アミノ酸(1個若しくは複数)を含む他の融合タンパク質と共有結合させ得る。2個以上の融合タンパク質を適切なナノ粒子に化学結合させるのに適切な側鎖を含めると多価分子が得られ得る。例示的なナノ粒子としては、デンドリマー、リポソーム、コア-シェル粒子又はPLGAベース粒子が挙げられる。
【0122】
本発明の別の実施形態では、融合タンパク質複合体のポリペプチドの一方又は両方が免疫グロブリンドメインを含むものである。或いはまた、タンパク質結合ドメイン-IL-15融合タンパク質をさらに、免疫グロブリンドメインと連結させてもよい。好ましい免疫グロブリンドメインは、上記に示したような多重鎖タンパク質が形成されるように他の免疫グロブリンドメインとの相互作用が可能な領域を含むものである。例えば、免疫グロブリン重鎖領域、例えばIgG1 CH2-CH3は、安定的に相互作用してFc領域を作出し得る。また、好ましい免疫グロブリンドメイン、例えばFcドメインは、エフェクター機能、例えばFc受容体若しくは補体タンパク質結合活性を有する領域、及び/又はグリコシル化部位を有する領域を含むものである。一部の実施形態では、融合タンパク質複合体の免疫グロブリンドメインは、Fc受容体若しくは補体結合活性又はグリコシル化を低減又は増大させ、それにより、得られるタンパク質の生物活性に影響を及ぼす変異を含有するものである。例えば、Fc受容体との結合を低減させる変異を含有している免疫グロブリンドメインは、Fc受容体担持細胞に対する結合活性が低い本発明の融合タンパク質複合体を生成させるために使用され得、これは、特異的抗原を認識又は検出するために設計される試薬に好都合であり得る。
【0123】
核酸及びベクター
本発明により、さらに、本発明のタンパク質(例えば、ALT-803の成分)をコードしている核酸配列、特にDNA配列を提供する。好ましくは、該DNA配列を、染色体外複製に適合させたベクター、例えば、ファージ、ウイルス、プラスミド、ファージミド、コスミド、YAC又はエピソームに担持させる。特に、所望の融合タンパク質をコードしているDNAベクターは、本明細書に記載の調製方法を容易にするため、及び有意な量の融合タンパク質を得るために使用され得る。該DNA配列を適切な発現ベクターに、すなわち、挿入したタンパク質コード配列の転写及び翻訳のために必要なエレメントを含むベクターに挿入してもよい。さまざまな宿主-ベクター系が、タンパク質コード配列を発現させるために使用され得る。このようなものとしては、ウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、アデノウイルスなど)に感染させた哺乳動物細胞系;ウイルス(例えば、バキュロウイルス)に感染させた昆虫細胞系;微生物、例えば、酵母ベクターを含有している酵母、又はバクテリオファージDNA、プラスミドDNA若しくはコスミドDNAで形質転換した細菌が挙げられる。使用される宿主-ベクター系に応じて、いくつかの適切な転写エレメント及び翻訳エレメントのうちのいずれか1つが使用され得る。Sambrook et al.(上掲)及びAusubel et al.(上掲)を参照のこと。
【0124】
本発明には、可溶性融合タンパク質複合体の作製方法であって、宿主細胞に、第1及び第2の融合タンパク質をコードしている本明細書に記載のDNAベクターを導入すること、該宿主細胞を培地中で、該融合タンパク質が該細胞内又は該培地中で発現され、第1の融合タンパク質のIL-15ドメインと第2の融合タンパク質の可溶性IL-15Rαドメイン間の結合が可能になるのに充分な条件下で培養し、可溶性融合タンパク質複合体を形成させること、該可溶性融合タンパク質複合体を該宿主細胞又は培地から精製することを含む方法が包含される。
【0125】
一般に、本発明による好ましいDNAベクターは、5’から3’の方向に、生物活性ポリペプチドをコードしている第1のヌクレオチド配列の導入のための第1のクローニング部位と、作動可能に連結されたエフェクター分子コード配列とを含み、これらがホスホジエステル結合によって連結されたヌクレオチド配列を含むものである。
【0126】
DNAベクターにコードさせる融合タンパク質成分をカセット形式で提供してもよい。用語「カセット」により、標準的な組換え法によって各成分を別の成分で容易に置き換えることができることを意図する。特に、カセット形式に構成したDNAベクターは、コードされた融合複合体が、血清型を有する病原体又は血清型発現能を有する病原体に対して使用される場合、特に望ましい。
【0127】
融合タンパク質複合体をコードするベクターを作製するため、生物活性ポリペプチドをコードしている配列を、エフェクターペプチドをコードしている配列と、適切なリガーゼの使用によって連結させる。提示ペプチドをコードしているDNAは、DNAを天然の供給源(適切な細胞株など)から単離すること、又は既知の合成方法(例えばリン酸トリエステル法)によって得られ得る。例えば、Oligonucleotide Synthesis,IRL Press(M.J.Gait編,1984)を参照のこと。また、合成オリゴヌクレオチドを、市販の自動オリゴヌクレオチド合成装置を用いて調製してもよい。単離したら、生物活性ポリペプチドをコードしている遺伝子を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又は当該技術分野で知られた他の手段によって増幅させ得る。生物活性ポリペプチド遺伝子を増幅させるための好適なPCRプライマーは、PCR産物に制限部位を付与し得るものである。PCR産物は好ましくは、エフェクターペプチドのスプライス部位と、生物活性ポリペプチド-エフェクター融合複合体の適正な発現及び分泌に必要なリーダー配列とを含むものである。また、PCR産物は好ましくは、リンカー配列をコードしている配列、又はかかる配列のライゲーションのための制限酵素部位を含むものである。
【0128】
本明細書に記載の融合タンパク質は好ましくは、標準的な組換えDNA手法によって作製される。例えば、生物活性ポリペプチドをコードしているDNA分子を単離したら、この配列は、エフェクターポリペプチドをコードしている別のDNA分子にライゲートされ得る。生物活性ポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列は、エフェクターペプチドをコードしているDNA配列に直接連接させてもよく、より典型的には、本明細書において論考したリンカー配列をコードしているDNA配列を、生物活性ポリペプチドをコードしている配列とエフェクターペプチドをコードしている配列の間に介在させ、適切なリガーゼを用いて連接させてもよい。得られたハイブリッドDNA分子を適切な宿主細胞内で発現させると融合タンパク質複合体が産生され得る。DNA分子は互いに5’から3’の向きに、ライゲーション後にコードポリペプチドの翻訳フレームが改変されない(すなわち、DNA分子が互いにインフレームにライゲートされる)ようにライゲートされる。得られるDNA分子は、インフレーム融合タンパク質をコードしている。
【0129】
また、他のヌクレオチド配列を遺伝子構築物に含めてもよい。例えば、プロモーター配列(これは、エフェクターペプチドと融合させた生物活性ポリペプチドをコードしている配列の発現を制御する)又はリーダー配列(これは、融合タンパク質を細胞表面又は培養培地に指向させる)を、構築物内に含有させ得るか、又は該構築物を挿入する発現ベクター内に存在させ得る。免疫グロブリン又はCMVのプロモーターが特に好ましい。
【0130】
変異体生物活性ポリペプチド、IL-15、IL-15Rα又はFcドメインをコードしている配列を得る際に、当業者には、該ポリペプチドが特定のアミノ酸の置換、付加、欠失及び翻訳後修飾により、生物活性の減損又は低減を伴うことなく修飾され得ることが認識されよう。特に、同類アミノ酸置換、すなわち、1個のアミノ酸の、同様のサイズ、電荷、極性及びコンホメーションの別のアミノ酸との置換では、タンパク質機能が有意に改変されにくいことはよく知られている。タンパク質の構成成分である20個の標準アミノ酸は、以下のような4つの同類アミノ酸グループに大別することができる。無極性(疎水性)のグループには、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン及びバリンが含まれ、極性(無電荷,中性)グループには、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリシン、セリン、トレオニン及びチロシンが含まれ、正電荷を有する(塩基性の)グループには、アルギニン、ヒスチジン及びリシンが含まれ、負電荷を有する(酸性の)グループには、アスパラギン酸及びグルタミン酸が含まれる。タンパク質における同じグループ内での1個のアミノ酸の別のアミノ酸での置換が該タンパク質の生物活性に対して有害な効果を有することはありそうにない。他の場合では、タンパク質の生物活性を低下又は増強させるために、アミノ酸位置に修飾がなされ得る。かかる変更はランダムに導入してもよく、標的残基(1個又は複数)の既知の又は推定される構造的又は機能的特性に基づいた部位特異的変異によって導入してもよい。変異体タンパク質の発現後、修飾による生物活性の変化は、結合アッセイ又は機能アッセイを用いて容易に評価され得る。
【0131】
ヌクレオチド配列間の相同性はDNAハイブリダイゼーション分析によって決定され得、このとき、二本鎖DNAハイブリッドの安定性は、生じる塩基対合の程度に依存する。高温及び/又は低塩含有量の条件は、ハイブリッドの安定性を低下させ、選択したものより低い相同性度合を有する配列のアニーリングが抑制されるように変更され得る。例えば、約55%のG-C含有量を有する配列では、40~50℃、6×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウムバッファー)及び0.1%のSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)のハイブリダイゼーション及び洗浄条件は約60~70%の相同性を示し、50~65℃、1×SSC及び0.1%のSDSのハイブリダイゼーション及び洗浄条件は約82~97%の相同性を示し、52℃、0.1×SSC及び0.1%のSDSのハイブリダイゼーション及び洗浄条件は約99~100%の相同性を示す。また、ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を比較する(及び相同性の度合を測定する)ための広範なコンピュータプログラムが利用可能であり、市販のソフトウェア及び無料ソフトウェアの供給元を示すリストはともに、Ausubel et al.(1999)にみられる。配列比較及び多重配列アラインメントの容易に入手可能なアルゴリズムは、それぞれ、Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschul
et al.,1997)及びClustalWプログラムである。BLASTはワールドワイドウェブのncbi.nlm.nih.govにおいて入手可能であり、ClustalWのバージョンは2.ebi.ac.ukにおいて入手可能である。
【0132】
融合タンパク質の成分は、各々がその意図された機能を発揮し得る限り、ほぼ任意の順序で組織化され得る。例えば、一実施形態では、生物活性ポリペプチドはエフェクター分子のC又はN末端に配置される。
【0133】
本発明の好ましいエフェクター分子は、該ドメインに意図された機能を助長するサイズを有するものである。本発明のエフェクター分子は、さまざまな方法、例えば、よく知られた化学架橋によって作製され、生物活性ポリペプチドと融合され得る。例えば、Chemical Modification of Proteins,Holden-DayのMeans,G.E.and Feeney,R.E.(1974)を参照のこと。また、Chemistry of Protein Conjugation and
Cross-Linking,CRC PressのS.S.Wong(1991)も参照のこと。しかしながら、一般的に、インフレーム融合タンパク質を作製するための組換え操作を使用することが好ましい。
【0134】
記載のように、本発明による融合分子又はコンジュゲート分子は、いくつかの様式で組織化され得る。例示的な構成の一例では、生物活性ポリペプチドのC末端を、エフェクター分子のN末端と作動可能に連結させる。この連結は、所望により、組換え法によって行われ得る。しかしながら、別の構成では、生物活性ポリペプチドのN末端を、エフェクター分子のC末端と連結させる。
【0135】
代替的又は付加的に、必要に応じて1個以上のさらなるエフェクター分子を生物活性ポリペプチド又はコンジュゲート複合体内に挿入してもよい。
【0136】
ベクター及び発現
ALT-803を発現させるために、いくつかのストラテジーが使用され得る。例えば、ALT-803をコードしている構築物が適切なベクター内に、該ベクター内に該構築物を挿入した後、ライゲーションするための切断部を作製するための制限酵素を用いて組み込まれ得る。遺伝子構築物を含有しているベクターは次いで、融合タンパク質の発現のために適切な宿主内に導入される。一般的には、Sambrook et al.(上掲)を参照のこと。好適なベクターの選択は、クローニングプロトコルに関連する要素に基づいて経験的に行われ得る。例えば、ベクターは、使用される宿主と適合性でであり、適正なレプリコンを有するものであるのがよい。ベクターは、発現させる融合タンパク質複合体をコードしているDNA配列に適応できるものでなければならない。好適な宿主細胞としては、真核生物細胞及び原核生物細胞、好ましくは、容易に形質転換され得、培養培地中で急速な増殖を示し得る細胞が挙げられる。具体的には、好ましい宿主細胞としては、例えば大腸菌、枯草菌などの原核生物、及び動物細胞及び酵母株、例えば出芽酵母などの真核生物が挙げられる。哺乳動物細胞、特に、J558、NSO、SP2-O又はCHOが一般的に好ましい。他の適切な宿主としては、例えばSf9などの昆虫細胞が挙げられる。慣用的な培養条件が使用される。Sambrook(上掲)を参照のこと。安定な形質転換細胞株又はトランスフェクト細胞株が次いで、選択され得る。本発明の融合タンパク質複合体を発現している細胞は、既知の手順によって判定され得る。例えば、免疫グロブリンと連結させた融合タンパク質複合体の発現は、連結させた免疫グロブリンに特異的なELISA及び/又はイムノブロッティングによって調べることができる。IL-15又はIL-15Rαドメインと連結させた生物活性ポリペプチドを含む融合タンパク質の発現を検出するための他の方法は本実施例に開示している。
【0137】
上記に一般的に記載したように、宿主細胞は、所望の融合タンパク質をコードしている核酸を増殖させるための調製目的のために使用され得る。したがって、宿主細胞には、融合タンパク質の生成が具体的に意図される原核生物細胞又は真核生物細胞が包含され得る。したがって、宿主細胞として具体的には、酵母、ハエ、ムシ、植物、カエル、哺乳動物の細胞及び該融合体をコードしている核酸を増殖させ得る器官が挙げられる。使用され得る哺乳動物細胞株の非限定的な例としては、CHO dhfr細胞(Urlaub and Chasm,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216(1980))、293細胞(Graham et al.,J Gen.Virol.,36:59(1977))又は骨髄腫細胞様SP2若しくはNSO(Galfre and Milstein,Meth.Enzymol.,73(B):3(1981))が挙げられる。
【0138】
所望の融合タンパク質複合体をコードしている核酸を増殖させ得る宿主細胞はまた、非哺乳動物の真核生物細胞、例えば、昆虫(例えば、Sp.frugiperda)、酵母(例えば、出芽酵母、S.pombe、P.pastoris.,K.lactis、H.polymorpha;Fleer,R.,Current Opinion in
Biotechnology,3(5):486496(1992)に一般的に概説されている)、真菌細胞及び植物細胞も包含している。また、特定の原核生物、例えば、大腸菌及びバチルス属(Bacillus)も想定される。
【0139】
所望の融合タンパク質をコードしている核酸は宿主細胞内に、細胞をトランスフェクトするための標準的な手法によって導入され得る。用語「トランスフェクトする」又は「トランスフェクション」は、核酸を宿主細胞内に導入するためのあらゆる慣用的な手法、例えば、リン酸カルシウム共沈殿、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、ウイルス形質導入及び/又は組込みを包含していることを意図する。宿主細胞をトランスフェクトするための好適な方法は、Sambrook et al.(上掲)及び他の実験教本において知得され得る。
【0140】
種々のプロモーター(転写開始調節領域)が本発明に従って使用され得る。適切なプロモーターの選択は、提案される発現宿主に依存する。非相同供給源に由来するプロモーターは、選択した宿主において機能性である限り、使用してもよい。
【0141】
また、プロモーターの選択は、所望の効率及びペプチド又はタンパク質の産生レベルにも依存する。大腸菌内でのタンパク質の発現レベルを劇的に増大させるためには、tacなどの誘導性プロモーターが多くの場合で使用される。タンパク質の過剰発現は宿主細胞にとって有害となる場合があり得る。そのため、宿主細胞の増殖が制限されることになり得る。誘導性プロモーター系の使用により、遺伝子発現の誘導前に宿主細胞が許容され得る密度まで培養され、それにより高産生物収量を助長することが可能になる。
【0142】
種々のシグナル配列が本発明に従って使用され得る。生物活性ポリペプチドコード配列に相同なシグナル配列が使用され得る。或いはまた、発現宿主内での効率的な分泌及びプロセッシングのために選択又は設計されたシグナル配列を使用してもよい。例えば、適切なシグナル配列/宿主細胞のペアとしては、B.subtilis内での分泌のためのB.subtilis sacBシグナル配列、及び出芽酵母α-接合因子又はP.pastoris分泌のためのP.pastoris酸性ホスファターゼphoIシグナル配列が挙げられる。シグナル配列は、シグナルペプチダーゼ切断部位をコードしている配列を介してタンパク質コード配列に直接連接させてもよく、通常10個より少ないコドンからなる短鎖ヌクレオチドブリッジを介して連接させてもよく、この場合、該ブリッジは、下流のタンパク質配列の正しいリーディングフレームを確保するものである。
【0143】
転写及び翻訳を向上させるためのエレメントは、真核生物のタンパク質発現系について同定されている。例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)プロモーターを非相同プロモーターの両側(either side)1000bpに配置することにより、植物細胞において転写レベルが10~400倍高まり得る。また、発現構築物に適切な翻訳開始配列も含めるのがよい。適正な翻訳開始のためのコザックコンセンサス配列を含めるための発現構築物の修飾により翻訳レベルが10倍増大し得る。
【0144】
発現構築物の一部であっても発現構築物と別個(例えば、発現ベクターに担持させる)であってもよい選択的マーカーが多くの場合で、該マーカーが目的の遺伝子とは異なる部位に組み込まれ得るように使用される。例としては、抗生物質に対する耐性を付与するマーカー(例えば、blaは、大腸菌宿主細胞にアンピシリンに対する耐性を付与し、nptIIは、多種多様な原核生物細胞及び真核生物細胞にカナマイシン耐性を付与する)又は宿主が最少培地で増殖することを可能にするマーカー(例えば、HIS4はP.pastoris又はHis-出芽酵母がヒスチジンの非存在下で増殖することを可能にする)が挙げられる。選択可能マーカーは、その独自の転写開始及び翻訳開始並びに終結の調節領域を有しており、該マーカーの独立した発現が可能である。抗生物質耐性をマーカーとして使用する場合、選択のための該抗生物質の濃度は、抗生物質に応じて一般的には10~600μgの抗生物質/mL培地の範囲で異なる。
【0145】
発現構築物は、既知の組換えDNA手法を使用することにより組織化される(Sambrook et al.,1989;Ausubel et al.,1999)。制限酵素消化及びライゲーションは、2つのDNA断片を連接するために使用される基本工程である。DNA断片の両末端は、ライゲーション前に修飾を必要とするものであってもよく、これは、突出端の埋め込み、ヌクレアーゼ(例えば、ExoIII)による断片の末端部分の除去、部位特異的変異誘発によって、又はPCRにより新たな塩基対を付加することによって行われ得る。選択した断片の連接を助長するためにポリリンカー及びアダプターを使用してもよい。発現構築物は典型的には、制限、ライゲーション及び大腸菌の形質転換の繰り返しを使用して段階的に組織化される。発現構築物の構築に適した数多くのクローニングベクターが当該技術分野で知られており(λZAP及びpBLUESCRIPT SK-1(Stratagene,La Jolla,CA)、pET(Novagen Inc.,Madison,WI)、Ausubel et al.,1999に記載)、具体的な選択は本発明にとって重要ではない。クローニングベクターの選択は、宿主細胞内への発現構築物の導入に選択される遺伝子導入系に影響される。各段階の終了時、得られた構築物は、制限、DNA配列、ハイブリダイゼーション及びPCR解析によって解析され得る。
【0146】
発現構築物は、クローニングベクター構築物(線状又は環状のいずれか)として宿主を形質転換してもよく、クローニングベクターから取り出し、そのままで使用するか、又は送達ベクターに導入してもよい。送達ベクターは、選択した宿主細胞型への発現構築物の導入と維持を助長するものである。発現構築物は宿主細胞内に、いくつかの既知の遺伝子導入系のいずれか(例えば、自然な能力、化学的媒介形質転換、プロトプラスト形質転換、エレクトロポレーション、バイオリスティック形質転換、トランスフェクション又はコンジュゲーション)によって導入される(Ausubel et al.,1999;Sambrook et al.,1989)。選択される遺伝子導入系は、使用される宿主細胞及びベクター系に依存する。
【0147】
例えば、発現構築物は出芽酵母細胞内に、プロトプラスト形質転換又はエレクトロポレーションによって導入され得る。出芽酵母のエレクトロポレーションは容易に行われ、スフェロプラスト形質転換と同等の形質転換効率がもたらされる。
【0148】
本発明により、さらに、目的の融合タンパク質を単離するための生産プロセスを提供する。プロセスでは、調節配列と作動可能に連結させた目的タンパク質コード核酸が導入された宿主細胞(例えば、酵母、真菌、昆虫、細菌又は動物細胞)を、目的の融合タンパク質をコードしているヌクレオチド配列の転写が刺激される生産規模で培養培地中にて培養する。続いて、目的の融合タンパク質を、収集した宿主細胞又は培養培地から単離する。目的のタンパク質を培地又は収集した細胞から単離するためには、標準的なタンパク質精製手法が使用され得る。特に、精製手法は、所望の融合タンパク質を大規模で(すなわち、少なくともミリグラム量で)発現させて、さまざまな実施、例えば、ローラーボトル、スピナーフラスコ、組織培養プレート、バイオリアクター又は発酵槽から精製するために使用され得る。
【0149】
発現したタンパク質融合複合体は、既知の方法によって単離及び精製され得る。典型的には、培養培地を遠心分離又は濾過し、次いで、上清みをアフィニティクロマトグラフィー若しくはイムノアフィニティクロマトグラフィー、例えば、プロテイン-A若しくはプロテイン-Gアフィニティクロマトグラフィー、又は発現した融合複合体に結合するモノクローナル抗体の使用を含む免疫親和性プロトコルによって精製する。本発明の融合タンパク質を既知の手法の適切な組み合わせによって分離及び精製してもよい。このような方法としては、例えば、溶解度を使用する方法(塩析沈殿及び溶媒沈殿など)、分子量の差を使用する方法(透析、限外濾過、ゲル濾過及びSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動など)、電荷の差を使用する方法(イオン交換カラムクロマトグラフィーなど)、特異的親和性を使用する方法(アフィニティクロマトグラフィーなど)、疎水性の差を使用する方法(逆相高速液体クロマトグラフィーなど)並びに等電点の差を使用する方法(等電点電気泳動、金属アフィニティカラム(Ni-NTAなど)など)が挙げられる。これらの方法に関する開示については、一般的に、Sambrook et al.及びAusubel et al.(上掲)を参照されたい。
【0150】
本発明の融合タンパク質は実質的に純粋であることが好ましい。すなわち、該融合タンパク質は、天然状態では付随している細胞置換基(substituent)から、該融合タンパク質が好ましくは少なくとも80%又は90%~95%の均一性(w/w)で存在しているように単離されている。少なくとも98~99%の均一性(w/w)を有する融合タンパク質が、多くの薬学的用途、臨床用途及び研究用途に最も好ましい。実質的に精製されたら、該融合タンパク質は、治療用途のために夾雑物を実質的に含有していないのがよい。部分的又は相当な純度まで精製されたら、該可溶性融合タンパク質は治療的に、又は本明細書に開示のようなインビトロ若しくはインビボアッセイの実施に使用され得る。相当な純度は、さまざまな標準的な手法(クロマトグラフィー及びゲル電気泳動など)によって判定され得る。
【0151】
本発明の融合タンパク質複合体は、癌性であるか、若しくは感染しているか、又は1つ以上の疾患に影響を受ける状態になるかもしれないさまざまな細胞とのインビトロ又はインビボでの使用に適している。
【0152】
ヒトインターロイキン-15(hIL-15)は、抗原提示細胞上に発現されたヒトIL-15受容体α鎖(hIL-15Rα)により、免疫エフェクター細胞に対してトランス型で提示される。IL-15RαはhIL-15に、主に細胞外sushiドメイン(IL-15RαSu)によって高親和性(38pM)で結合する。本明細書に記載のように、IL-15及びIL-15RαSuドメインが、可溶性の複合体(例えば、ALT-803)を作製するために、又はマルチドメイン融合複合体を構築するための骨格として使用され得る。
【0153】
IgGドメイン、特にFc断片は、いくつかの治療用分子(例えば、承認済の生物製剤薬)のダイマー骨格として成功裡に使用されている。例えば、エタネルセプトは、ヒトIgG1のFcドメインと連結させた可溶性ヒトp75腫瘍壊死因子-α(TNF-α)受容体(sTNFR)のダイマーである。このダイマー化により、エタネルセプトがTNF-α活性の阻害においてモノマー型のsTNFRよりも1,000倍まで強力になることが可能になり、この融合体にモノマー型形態よりも5倍長い血清半減期がもたらされる。その結果、エタネルセプトは、インビボでのTNF-αの炎症促進活性の中和及びいくつかの異なる自己免疫性適応症での患者の転帰の改善に有効である。
【0154】
ダイマー化による活性に加えて、Fc断片はまた、補体活性化並びに天然のキラー(NK)細胞、好中球、単球細胞、食細胞及び樹状細胞上にディスプレイされるFcγ受容体との相互作用により、細胞傷害性エフェクター機能ももたらす。抗癌治療用抗体及び他の抗体ドメイン-Fc融合タンパク質との関連において、このような活性は、動物腫瘍モデル及び癌患者で観察される有効性に重要な役割を果たしていると思われる。しかしながら、このような細胞傷害性エフェクター応答は、いくつかの治療用途では充分でない場合がある得る。したがって、Fcドメインのエフェクター活性に対する改善及び拡大、並びに免疫療法用分子による疾患部位における細胞溶解性免疫応答(例えば、NK細胞及びT細胞)の活性又は漸増を増大させるための他の手段の開発に大きな関心がもたれている。
【0155】
ヒト由来免疫賦活治療薬を開発するための取り組みにおいて、ヒトIL-15(hIL-15)とIL-15受容体ドメインを使用した。hIL-15は、hIL-15受容体α-鎖(hIL-15Rα)と高い結合親和性(平衡解離定数(KD)約10-11M)で結合する4つのα-へリックスバンドルを有する小さいサイトカインファミリーの構成員である。得られる複合体は次いで、T細胞及びNK細胞の表面上にディスプレイされたヒトIL-2/15受容体β/共通γ鎖(hIL-15RβγC)複合体に対してトランス型で提示される。このサイトカイン/受容体相互作用により、ウイルス感染細胞及び悪性細胞の根絶に重要な役割を果たすエフェクターT細胞とNK細胞の増殖及び活性化がもたらされる。通常、hIL-15とhIL-15Rαは樹状細胞において共産生されて細胞内で複合体が形成され、該複合体は続いて分泌され、細胞表面上にヘテロダイマー分子としてディスプレイされる。したがって、hIL-15とhIL-15Rαの相互作用の特徴により、このような鎖間結合ドメインがヒト由来免疫賦活複合体として、及び標的に特異的に結合し得る可溶性ダイマー分子を作製するための骨格としての機能を果たしている可能性があることが示唆される。
【0156】
本発明の実施では、特に記載のない限り、充分に当業者の技能の範囲内である分子生物学(組換え手法を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学及び免疫学の慣用的な手法を使用する。かかる手法は、文献、例えば、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」,第2版(Sambrook,1989);「Oligonucleotide Synthesis」(Gait,1984);「Animal Cell Culture」(Freshney,1987);「Methods in Enzymology」「Handbook of Experimental Immunology」(Weir,1996);「Gene Transfer
Vectors for Mammalian Cells」(Miller and Calos,1987);「Current Protocols in Molecu
lar Biology」(Ausubel,1987);「PCR:The Polymerase Chain Reaction」,(Mullis,1994);「Current Protocols in Immunology」(Coligan,1991)に充分に説明されている。これらの手法は、本発明のポリヌクレオチド及びポリペプチドの作製に適用可能であり、そのため、本発明の作製及び実施において考慮され得る。具体的な実施形態に特に有用な手法を以下のセクションに論考する。
【0157】
以下の実施例は、当業者に本発明のアッセイ、スクリーニング及び治療方法をどのようにして行い、使用するかの完全な開示と説明を提供するために示したものであり、本発明者らが自身の発明とみなすものの範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例1】
【0158】
実施例1:ALT-803によるリンパ球の増殖及び活性化の誘導
正常個体由来のヒト血液バフィーコートを使用し、Histopaque-1077を用いて末梢血単核球(PBMC)を単離した。PBMCを、37℃で5%CO2にてRPMI-10培地(RPMI-1640,2-メルカプトエタノール,ペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミン,非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム及び10%ウシ胎仔血清)中で、種々の量のALT-803とともに培養した。「ALT-803」により、ダイマー型IL-15RαSu/Fc融合タンパク質と非共有結合により結合しているIL-15N72Dを含むものである複合体を意図し、ここで、前記複合体は免疫賦活活性を示すものである。任意選択で、IL-15N72D及び/又はIL-15RαSu/Fc融合タンパク質は、参照配列と比べて1、2、3、4つ、又はそれ以上のアミノ酸変異を含むものである。例示的なIL-15N72Dアミノ酸配列を以下に示す(例えば、米国特許出願第13/769,179号(引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。
【0159】
例示的なIL-15N72Dの核酸配列を以下に示す(リーダーペプチドを含む)(配列番号1):
(リーダーペプチド)
【0160】
【0161】
(IL-15N72D)
【0162】
【0163】
(終止コドン)
【0164】
【0165】
例示的なIL-15N72Dのアミノ酸配列を以下に示す(リーダーペプチドを含む)(配列番号2):
(リーダーペプチド)
【0166】
【0167】
(IL-15N72D)
【0168】
【0169】
一部の場合では、リーダーペプチドが成熟IL-15N72Dポリペプチドから切断されている(配列番号3):
(IL-15N72D)
【0170】
【0171】
例示的なIL-15RαSu/Fcの核酸配列(リーダーペプチドを含む)を以下に示す(配列番号4):
(リーダーペプチド)
【0172】
【0173】
(IL-15RαSu)
【0174】
【0175】
(IgG1 CH2-CH3(Fcドメイン))
【0176】
【0177】
(終止コドン)
【0178】
【0179】
例示的なIL-15RαSu/Fcのアミノ酸配列(リーダーペプチドを含む)を以下に示す(配列番号5):
(リーダーペプチド)
【0180】
【0181】
(IL-15RαSu)
【0182】
【0183】
(IgG1 CH2-CH3(Fcドメイン))
【0184】
【0185】
一部の場合では、成熟IL-15RαSu/Fcタンパク質はリーダー配列が欠失している(配列番号6):
(IL-15RαSu)
【0186】
【0187】
(IgG1 CH2-CH3(Fcドメイン))
【0188】
【0189】
リンパ球サブセットの増殖及び活性化を評価するため、ALT-803処理細胞を、表面マーカーに対してBrilliant Violet 510-抗CD4、PECY7-抗CD8、及びBrilliant Violet 421-抗CD16抗体の組み合わせで、その後、FITC-抗グランザイムB抗体での細胞内染色、又は表面マーカーに対してBrilliant Violet-抗CD4、PE-抗CD8、PECY7-抗CD335、PerCP-CY5.5-抗CD69及びAPC-抗CD25抗体の組み合わせで、その後、FITC-抗パーフォリン抗体での細胞内染色のいずれかで染色した。細胞内染色のため、細胞を固定バッファー(2%のパラホルムアルデヒドを含むPBS)で固定し、室温で20分間インキュベートした。固定された細胞を易透化バッファー(0.1%のサポニンと0.05%のアジ化ナトリウムを含むPBS)中で透過処理し、ヒトグランザイムB又はパーフォリンに特異的なFITC標識抗体で染色した。ALT-803活性化PBMCのうちのCD4+ T細胞、CD8+ T細胞及びCD16+ NK細胞のパーセンテージ、並びにCD4+ T細胞、CD8+ T細胞及びCD335+ NK細胞上のCD25及びCD69の活性化マーカーの発現をFACSVerseフロー
サイトメーターでFACSuiteソフトウェアを用いて解析した。
【0190】
0.01~10nMのALT-803を含有している培地中での5日間のインキュベーション後、培地対照と比べて、異なるドナー由来のヒトPBMCにおけるCD4
+ T細胞、CD8
+ T細胞又はNK細胞のパーセンテージに有意な変化はみられなかった(
図1A及び
図1B)。以前の研究では、ALT-803がインビトロでヒトPMBCの増殖性応答を刺激し得ることが示されていたため、このアッセイの感度が高まるように培養物のインキュベーション時間を長くした。
図1C(ドナーA)及び
図1D(ドナーB)に示されるように、10nMのALT-803の存在下での7日間の培養後、ALT-803の非存在下でインキュベートした細胞で観察されるものと比べたとき、PBMC培養物中のCD4
+ T細胞のパーセンテージは減少し、CD8
+ T細胞のパーセンテージは増大した。この所見は、CD4/CD8比を分析した場合、より明白であった(
図1E:ドナーA及び
図1F:ドナーB)。ALT-803の存在下又は非存在下で10日間までインキュベートしたPBMC培養物中のNK細胞のパーセンテージに有意差はなかった(
図1C及びD)。
【0191】
異なるドナー由来のヒト免疫細胞サブセットの増殖性に対するALT-803のインビトロ効果をIL-15と比較した。0.5nMのALT-803又は0.5nMのIL-15のいずれかをヒトPBMC培養物に添加すると、7日間のインキュベーション期間後、リンパ球カウント数の約2倍の増加がもたらされた。ALT-803は、CD8
+ T細胞及びNK細胞サブセットの絶対数の増加においてIL-15と同等に強力であった(
図2A及び
図2B)。また、ALT-803はCD4
+ T細胞の絶対カウント数を有意に増加させたが、IL-15はTreg細胞の絶対カウント数を増加させた。
【0192】
また、ALT-803の免疫賦活効果を理解するため、免疫細胞サブセット上における活性化マーカーCD25とCD69の発現を調べた。
図3A~
図3Dに示されるように、ALT-803でのインビトロ処理により、CD4
+ T細胞、CD8
+ T細胞及びNK細胞によるCD25発現が濃度依存的様式で増大され得た。注目すべきことに、ALT-803によるCD25の上方調節は、CD8
+ T又はNK細胞でみられるものと比べてCD4
+ T細胞において最も有意であった。ALT-803によって誘導されるCD8
+ T細胞によるCD25発現は最小限であった。CD25と対照的に、CD69発現はNK細胞において、ALT-803とのインキュベーションによって高度に上方調節されたが、CD4
+ T細胞によるCD69発現に対しては、処理効果はほとんど又は全くみられなかった。
【0193】
また、この試験は、ALT-803がNK細胞及びCD8
+ T細胞に対し、細胞溶解応答において枢要な役割を果たしているグランザイム及びパーフォリンをより高レベルで発現するように誘導し得るかどうかを評価するためにも実施した。ヒトPBMCを、上記のようにしてインビトロでALT-803により活性化させた後、Ab染色によってCD8
+ T細胞とNK細胞のサブセットを識別し、次いで、ヒトグランザイムB又はパーフォリンに特異的なFITC標識抗体で細胞内染色した。
図4A~
図4Dに示されるように、ALT-803は、CD8
+ T細胞(
図4A及び
図4C)とNK細胞(
図4B及び
図4D)によるグランザイムB及びパーフォリンの発現を濃度依存的様式で上方調節することができた。さらに、グランザイムBの発現のALT-803媒介性誘導は、CD8
+ T細胞及びNK細胞のどちらにおいても、パーフォリンの発現に対するALT-803媒介性効果よりも有意であった。このような所見は、グランザイムB及び/又はパーフォリンのALT-803誘導性発現が、ALT-803とのインキュベーション後のPBMCの細胞傷害性の増強に役割を果たしているのかもしれないという考えと整合する。
【0194】
ヒト及びマウスの免疫細胞に対するALT-803の効果を比較するため、さらなる試験を行った。以前の研究では、ヒトPBMCに対するタンパク質の免疫賦活効果は、該タンパク質が水性形態で存在しているのか固定化された形態で存在しているのかによって有意に異なり得ることが示されていた。したがって、サイトカインの放出及び増殖のアッセイをヒト及びマウスの細胞に対して、ALT-803を可溶性タンパク質として、又はプラスチックに固定化した湿潤若しくは風乾タンパク質調製物として用いて行った。ALT-803は0.08、0.8及び44nMで試験し、これらは、それぞれ、ヒトにおける0.3、3.0及び170μg/kgのi.v.用量での最大血清濃度に相当する。増殖アッセイのため、脾細胞から富化した(CD3+ T Cell Enrichmentカラム,R&D System)ヒトPBMC及びマウスCD3+細胞をCelltrace(商標)Violet(Invitrogen)で標識し、PBS又はALT-803を含めたウェル内で培養した。陽性対照として、27nMの抗CD3 Ab(マウス脾細胞では145-2C11、及びヒトPBMCではOKT3)を同じアッセイフォーマットの別々のウェルに添加した。細胞を4日間インキュベートし、次いでフローサイトメトリーによって解析し、バイオレット色素希釈法に基づいて細胞増殖を測定した。さらに、ヒト及びマウスの免疫細胞を上記のようにして24時間及び48時間培養し、培地中に放出されたサイトカインを、Human and Mouse Th1/Th2/Th17 Cytometric Bead Array Cytokineキットを製造業者の使用説明書(BD Biosciences)に従って用いて測定した。免疫細胞サブセットの分析のため、ヒトPBMCを種々の濃度のALT-803又はIL-15中で培養し、CD4、CD8、CD335、CD16若しくはCD19に特異的な抗体を用いて、又はヒトTregキット(BioLegend)を用いて染色した。また、一部の実験では細胞を、CD69、グランザイムB又はパーフォリンに特異的な抗体でも上記のようにして染色した。
【0195】
固定化したALT-803との1日又は4日間のインキュベーション(
図5A)により、ヒトPBMCによるIFN-γ放出の増加がもたらされた。また、ALT-803で処理したヒトPBMCの4日培養物において可溶性IL-6も増加したが、この効果は用量依存性ではなかった(
図5A)。対照的に、ALT-803は、ヒトPBMCの4日培養物によるTNF-α、IL-4、IL-10又はIL-17Aの放出に対して効果を有しなかった。パラレル培養物で試験した場合、陽性対照の抗CD3 mAbは、IFN-γ、TNF-α、IL-10、IL-4及びIL-17Aの放出を誘導した。ヒト免疫細胞と比べ、マウス脾細胞は、ALT-803とのインキュベーション後、IFN-γ放出に対して同様であるが強度が低い応答を示した(
図5B)。また、ALT-803もマウス脾細胞によるTNF-α産生を誘導したが、IL-6、IL-2、IL-10、IL-4及びIL-17Aレベルに対する有意な効果は示さなかった。逆に、固定化した抗CD3抗体とともにインキュベートしたマウスリンパ球は、試験した全サイトカインの有意に高い放出を示した。総合すると、このような所見は、抗CD3抗体によって誘導される広範なサイトカインプロフィールとは対照的に、ALT-803が主にヒト及びマウスの免疫細胞によるIFN-γ産生を刺激することを示す。
【0196】
また、ALT-803が、ヒト及びマウスのCellTrace(商標)Violetで標識した免疫細胞のインビトロ増殖を誘導する能力も評価した。0.7nM~44nMの可溶性ALT-803とのインキュベーション後、マウスリンパ球の顕著な増殖が明白であった(
図5C)。4日間のインキュベーション期間中、可溶性ALT-803高用量群では、83%までもの細胞が1~6回の細胞分裂を行った。未処理のマウス細胞又は0.07nMの可溶性ALT-803で処理した細胞では、増殖はほとんど又は全く検出されなかった。予測通り、固定化した抗CD3抗体とともにインキュベートしたマウスリンパ球は、強力な増殖性応答を示した。ALT-803用量依存性のリンパ球増殖はヒトPBMC培養物においても観察されたが、この応答は、マウス細胞でみられたものよりもかなり低かった。全般的に、高用量のALT-803に応答して増殖したヒトリンパ球は全体の20%未満であり、この応答は、陽性対照の抗CD3抗体によって誘導されるものより低かった。さらに、異なるドナーの血中リンパ球において、ALT-803及び抗CD3 Abに対する細胞増殖応答はどちらも個体差が観察された。
【実施例2】
【0197】
実施例2:ALT-803及び抗体と併用したALT-803による細胞媒介性細胞傷害の誘導
ALT-803が細胞媒介性細胞傷害に影響を及ぼすかどうかを評価するため、血液バフィーコート由来のヒト単離PBMCをエフェクター細胞として使用した。DaudiヒトB細胞リンパ腫細胞及びK562ヒト骨髄性白血病細胞を標的細胞として使用し、RPMI-10中5μMのCelltrace Violetで37℃にて20分間、製造業者による説明のとおりに標識した。エフェクター細胞をバイオレット標識標的細胞と混合し、37℃で5%CO2にてRPMI-10中、ALT-803とともに又はなしで、表示した期間インキュベートした。一部の実験では、Daudi細胞の表面上に発現されるCD20に特異的な抗CD20 Ab(リツキシマブ,10nM)を、エフェクター:Daudi細胞培養液に添加し、抗CD20 Ab媒介性抗体依存性細胞傷害(ADCC)に対するALT-803の効果を調べた。エフェクター細胞と標的細胞の混合物を遠心分離によって収集し、フェノールレッドなしで2μg/mlのヨウ化プロピジウムを含めたRPMI-10中に再懸濁させた。標的細胞に対するエフェクター細胞の細胞傷害性をフローサイトメトリーによって、ヨウ化プロピジウム陽性染色後の死滅したバイオレット標識標的細胞のパーセンテージを調べることにより評価した。
【0198】
図6A~
図6Dに示されるように、新鮮ヒトPBMCは、ALT-803の非存在下では、Daudi細胞及びK562細胞に対して有する細胞傷害性は弱かった。対照的に、PBMCは、10nMのALT-803の存在下では、Daudi及びK562腫瘍標的細胞に対して非常に強力な細胞傷害性を有していた。Daudi腫瘍細胞はCD20分子を発現し、これは抗CD20 Ab(リツキシマブ)によって認識され得る。本明細書に記載したように、CD20は、造血器腫瘍及び自己免疫疾患の治療用抗体での処置のための確立された標的である。ヒトPBMCは、リツキシマブ単独によって媒介されるADCCによりDaudi細胞を溶解させ得る(
図6C,培地対照)。興味深いことに、ALT-803もまた、Daudi細胞に対するヒトPBMCのリツキシマブ媒介性ADCC活性を有意に増大させることができた。
図6Dに示されるように、PBMCの細胞傷害性及びADCCに対するALT-803媒介性効果の時間依存性の増大が観察され、1日のALT-803とのインキュベーション後では応答はほとんど又は全くみられないが、さらなる日数の各インキュベーションでは標的細胞の死滅の増大が観察された。
【0199】
さらに、K562及びDaudi細胞に対するヒトPBMC細胞傷害性のALT-803濃度依存性誘導を調べた。新鮮ヒトPBMCを、Celltrace Violetで標識したK562細胞又はDaudi細胞と、種々の濃度(0.01nM~10nM)のALT-803を含むRPMI-10培地中で混合した後、3日間インキュベーションした。標的細胞に対するヒトPBMCの細胞傷害性を、フローサイトメトリーによって上記のようにして評価した。
図6A~
図6Dとの結果と整合して、ALT-803は10nMで、Daudi細胞及びK562細胞に対するヒトPBMCの細胞傷害性を増大させることができた(
図7A及び
図7B:ドナーA及びドナーB)。さらに、ALT-803は、0.01nMという低濃度でも、標的細胞に対するヒトPBMCの細胞傷害性の増大が示された。2例の個体に由来するPBMCは、異なるこれらの腫瘍標的細胞に対して有意に異なる細胞傷害活性を示した。ドナーA由来のPBMC(
図7A)の方がずっと高いベースラインを示し、Daudi細胞よりもK562細胞に対してずっと高いALT-803誘導性細胞傷害性を示した。対照的に、ドナーB由来のPBMC(
図7B)は、同様のベースライン及びこれらの2つの異なる標的細胞に対する同様のALT-803誘導性細胞傷害性を示した。この所見は、異なる患者におけるALT-803媒介性臨床応答のばらつきの可能性の理解において重要であり得る。同様の細胞傷害性アッセイを、この分子の臨床的使用の一部としてのALT-803に対する患者の免疫応答の推論評価として組み込む。
【0200】
また、腫瘍特異的ADCCに対するALT-803の濃度依存性効果もさらに評価した。
図8A~
図8Bに示されるように、ALT-803は、0.01nMという低い濃度でヒトDaudi Bリンパ腫細胞に対する抗CD20 mAb(10nM)のADCC活性を増大させることができた。この応答は、Daudi細胞とともに2:1のE:T比でインキュベートしたヒトPMBCエフェクター細胞で観察され、この活性の高感度さを示す。観察された標的腫瘍細胞の死滅を担う免疫エフェクターを特定するため、NK細胞をヒトPBMCからMACSによって単離し、上記のADCCアッセイにおけるエフェクター細胞として使用した。ヒト全PBMCでの結果と同様、NK細胞は、リツキシマブ媒介性ADCC活性によってDaudi細胞を死滅させることができ、これはALT-803の添加によって増強された(
図8C)。対照的に、この設定において、NK細胞枯渇PBMC(無NK細胞)では、Daudi細胞を死滅させる検出可能なADCC活性は示されなかった(
図8D)。さらに、対照抗体HOAT(ヒト化抗ヒト組織因子IgG1 Ab)をNK細胞に添加しても、Daudi細胞に対する検出可能なADCC活性は、ALT-803の添加ありでもなしでも、もたらされなかった。
【0201】
また、ALT-803がヒトDaudi細胞に対するマウス免疫細胞のADCC活性を増大させる能力も調べた。この試験では、SCIDマウスにDaudi細胞(10×10
6/マウス)を試験の0日目(SD0)に移植し、SD15及びSD18にALT-803(0.2mg/kg)、リツキシマブ(10mg/kg)又はALT-803(0.2mg/kg)+リツキシマブ(10mg/kg)で処置した。マウスを2回目の処置後4日目に致死させ、脾細胞を調製した。したがって、脾細胞は、インビボ処置の結果、種々の活性化状態を有し得る。次いで脾細胞をDaudi標的細胞とE:T比20:1で、単独の培地又はリツキシマブ(10nM)、ALT-803(10nM)若しくはリツキシマブ(10nM)+ALT-803(10nM)を含む培地のRPMI-10中で混合した。37℃で2日間のインキュベーション後、Daudi標的細胞のバイアビリティを、BD FACSVerseで、バイオレット標識Daudi細胞のヨウ化プロピジウム染色の分析によって評価した。
図9Aに示されるように、対照処置マウスに由来する脾細胞に対するALT-803の添加では、ヒトDaudi細胞に対する抗CD20 mAb指向性ADCCが増大され得た。さらに、ALT-803でのインビボ刺激により、ヒトDaudi細胞に対する抗CD20 mAb指向性ADCCにおいてより活性な脾細胞がもたらされた。この結果は、ALT-803での処置によって腫瘍特異的ADCC応答が増強され得ることを示すヒト免疫細胞を用いた所見と整合する。
【0202】
ALT-803が他のヒト腫瘍細胞に対する免疫細胞のADCC活性を増大させる能力を調べた。HER-2は、固形腫瘍、例えば、乳癌及び胃又は胃食道接合部の腺癌の治療用抗体での処置のための確立された標的である。HER-2陽性腫瘍に対するADCC活性に対するALT-803の効果を評価するため、HER-2を過剰発現しているSK-BR-3ヒト乳癌細胞株を標的細胞株として使用し、抗ヒトHER-2抗体(クローン24D2)を腫瘍細胞標的化Abとして使用した。活性化エフェクター細胞を得るため、Balb/cマウスに0.2mg/kgのALT-803を試験の(SD)0日目に静脈内注射した。SD3にマウスを致死させ、脾臓を収集した。活性化脾細胞をCellTrace Violet標識SK-BR-3細胞と10:1のE:T比で混合した。細胞を37℃で、種々の濃度の抗HER2抗体(クローン24D2)、ALT-803又は両剤を含有するR10培地中で共培養した。24時間後、細胞混合物を回収し、死細胞をヨウ化プロピジウムで染色した。SK-BR-3死細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーを用いて調べた。
図9Bに示されるように、SK-BR-3細胞と活性化脾細胞との抗HER2 Ab又はALT-803のいずれか単独の存在下でのインキュベーションでは、培地対照と比べてSK-BR-3細胞死はもたらされなかった。しかしながら、ALT-803(0.01~1.0nM)と抗HER2抗体(クローン24D2)(0.1~10nM)の併用処理では、SK-BR-3ヒト乳癌細胞に対する脾臓免疫細胞のADCC活性が有意に増大した。この結果により、ALT-803は、治療が確立されたいくつかの異なる疾患標的に対するADCC応答を増大させ得ることが確認される。
【実施例3】
【0203】
実施例3:腫瘍担持マウスにおけるALT-803+腫瘍特異的抗体での処置の抗腫瘍活性
ALT-803が抗CD20 mAbの抗腫瘍活性を増大させる能力を、Daudi腫瘍を担持させたSCIDマウスにおいてさらに評価した。このマウスは、おそらく腫瘍に対するADCC応答を媒介する機能性のNK細胞を有している。この試験のため、Fox Chase SCID雌マウス(Harlan,C.B-17/IcrHsd-Prkdc-scid:6週齢)にDaudi細胞(10×10
6/マウス)(3マウス/群)を静脈内(i.v.)移植した。腫瘍担持マウスをPBS、ALT-803(0.2mg/kg)、リツキシマブ(10mg/kg)又はALT-803(0.2mg/kg)+リツキシマブ(10mg/kg)で、腫瘍移植後15日目及びその3日後にi.v.処置した。2回目の処置の4日後にマウスを致死させ、骨髄中のDaudi細胞レベルを調べた。大腿骨の骨髄細胞のうちのDaudi細胞のパーセンテージを、PEコンジュゲート抗ヒトHLA-DR抗体(Biolegend)での染色及びフローサイトメトリー分析後に評価した。
図10に示す結果は、ALT-803及び抗CD20 mAbの単独療法で、腫瘍担持マウスの骨髄中のDaudi細胞のパーセンテージが低減され得ることを示す。しかしながら、ALT-803+抗CD20 mAbの併用で最も大きな抗腫瘍活性がもたらされ、骨髄のDaudi細胞は、対照マウスにおける38%からALT-803+リツキシマブ処置マウスにおける5%まで低減された。このモデルでの用量応答試験により、0.02mg/kgという少ないALT-803で抗CD20 mAbの抗腫瘍活性が増大され得ることが確認された(
図11)。
【0204】
また、ALT-803+抗CD20 mAbがDaudi細胞腫瘍を担持しているマウスの生存率を改善する能力も評価した。この試験のため、Fox Chase SCID雌マウスにDaudi細胞(10×10
6/マウス)を静脈内(i.v.)移植した。腫瘍担持マウスをPBS、ALT-803(最適下限の0.05mg/kg)、リツキシマブ(10mg/kg)又はALT-803(0.05mg/kg)+リツキシマブ(10mg/kg)で、腫瘍移植後15日目及びその3日後にi.v.処置した。マウスの生存率(後肢麻痺に基づく疾患率を含む)をモニタリングした。
図12に示されるように、PBS、最適下限のALT-803及びリツキシマブでの単独療法群の腫瘍担持マウスでは26~30日の生存期間中央値が示されたが、最適下限のALT-803+リツキシマブで処置したマウスは50日間を超える平均生存期間を有しており、併用療法により、B細胞リンパ腫を担持しているマウスの生存期間が有意に長くなることを示す。総合すると、この結果により、インビボでのALT-803と腫瘍特異的抗体との併用の相乗的抗腫瘍効果が確認される。また、ALT-803+抗CD20 mAbの併用では、上記の試験の腫瘍担持動物においてなんら有意な毒性の徴候が引き起こされなかったことも注目に値し、これは、この併用の耐容性が良好であることを示す。
【実施例4】
【0205】
実施例4:腫瘍担持マウスにおけるALT-803の免疫チェックポイントブロッカーとの併用での抗腫瘍活性
免疫チェックポイントブロッカー、例えば、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、B7-H3、B7-H4、LAG-3、BTLA、TIM-3、VISTA、IDO、A2aR、HVEM、KIRs、NKG2A、NKG2D、CEACAM-1、2B4、CD200R及びそのリガンド並びに本明細書に記載の他の標的に対する抗体により、免疫抑制シグナルを阻害することによって免疫応答を向上させることが可能であり得る。上記のように、ALT-803は、NK細胞とT細胞の増殖及び活性を向上させる免疫賦活分子である。しかしながら、その有効性は、阻害性チェックポイント及び免疫応答を減弱させ得る経路によって制限される場合があり得る。このような負の調節因子を排除してALT-803の活性を増強させるストラテジーにより、治療上の有益性がもたらされ得よう。
【0206】
ALT-803のCTLA-4-CD80/CD86経路のブロックとの併用での抗腫瘍活性を調べるため、CT26マウス結腸癌細胞株をi.v.注射したBALB/cマウスを用いて肺転移モデルを作製した。4~6匹のマウスの群に2×105個のCT26腫瘍細胞を0日目(SD0)にi.v.注射した。ALT-803群では、各マウスに4μgのi.v.ALT-803を週2回、2週間(SD1に開始)投与した。ALT-803とともに、一部のマウスには抗PD-L1抗体(Ab)(クローン9G2)、抗CTLA-4(クローンUC10-4F10-11)Ab又は両方のいずれかを、100μg/注射(/Ab)のi.v.投与で週2回、2週間(SD1に開始)投与した。組換えヒトIL-15群では、各マウスに5μgのIL-15を腹腔内(i.p.)に毎日、週5回、2週間(SD1に開始)投与した。IL-15とともに、動物には、抗PD-L1 Abと抗CTLA-4 Ab(100μg/注射)の両方のi.v.処置もまた、SD1、SD4、SD8及びSD11に行った。対照マウスにはPBSの注射を行った。マウスを毎日、有効性のエンドポイントとしての生存期間について評価した。
【0207】
図13に示されるように、CT26腫瘍を担持しているBALB/cマウスの生存期間中央値は試験にもよるが15~20日間であった。ALT-803単独での処置では、対照群と比べた場合、腫瘍担持マウスの生存期間が有意に長期化した。ALT-803に抗PD-L1 Abでの処置を加えても、これらのマウスにおける生存期間は改善されないようであった。対照的に、ALT-803と抗CTLA4 Abの併用(抗PD-L1
Abあり、又はなし)では、CT26腫瘍担持マウスの生存期間がPBS群及びALT-803群と比べて有意に長くなった。この腫瘍モデルにおける以前の研究では、抗CTLA4 Ab単独療法では生存期間は改善されないことが示されていた。したがって、ALT-803と抗CTLA4 Abの併用(抗PD-L1 Abはなし)は、腫瘍担持マウスにおける生存期間の長期化によって測定されるように、より有効な抗腫瘍応答をもたらすのに相乗的に作用する。
【0208】
ALT803との併用のPD-1-PD-L1ブロックの効果を、免疫適格C57BL/6マウスの5T33P骨髄腫モデルにおいてさらに評価した。5匹のマウスの群に1×10
7個の5T33P腫瘍細胞をSD0にi.v.注射した。処置はSD4に開始した。IL-15群では、各マウスに5μgのIL-15をi.v.でSD4及びSD11に投与した。IL-15とともに、一部の動物には抗PD-L1 Ab(クローン9G2,200μg/マウス/i.p.注射)又は抗CTLA-4 Ab(クローンUC10-4F10-11,200μg/マウス/i.p.注射)もまた週1回、それぞれSD4とSD11に投与した。ALT-803群では、各マウスに1μg/マウス/注射の最適下限のALT-803の2回のi.v.注射をSD4とSD11に行った。ALT-803とともに、一部のマウスには、抗PD-L1 Ab、抗CTLA-4 Ab又は両方の抗体のいずれかを上記に示したとおりに投与した。さらに、マウスの群に、抗PD-L1 Ab又は抗CTLA-4 Abの単独療法を行い、PBSの注射を行った。マウスを毎日、試験のエンドポイントとしての生存期間及び/又は両後肢の完全麻痺について評価した。
図14Aに示されるように、5T33P腫瘍を担持しているC57BL/6マウスの生存期間中央値は24日であった。最適下限用量のALT-803での処置では動物の生存期間は有意に変化しなかったが、最適下限のALT-803+抗PD-L1 Abの投与では、この試験群の全動物で少なくとも50日間の生存期間がもたらされた。対照的に、ALT-803と抗CTLA4 Abの併用では、マウスの生存期間は有意に長くならなかった。さらに、どちらも最適下限のレベルのALT-803と抗PD-L1 Abを単独療法として、及び併用して試験した場合、5T33P腫瘍を担持しているC57BL/6マウスにおいて、ALT-803+抗PD-L1 Abでの処置後、いずれかの単独療法で処置したマウスと比べて有意に長い生存期間が観察された(
図14B)。したがって、ALT-803+抗PD-L1 Abの併用により、骨髄腫腫瘍を担持しているマウスにおいて相乗的抗腫瘍活性がもたらされる。
【0209】
ALT-803併用療法薬のこれらの2つのモデルにおける相違する活性をよりよく理解するため、腫瘍細胞株を、PD1及びCTLA4受容体のリガンドについて染色した。
図15に示されるように、CT26細胞は、CTLA4に対するリガンドを発現しているが、PD1に対するリガンドは発現していない。対照的に、5T33P腫瘍細胞は、PD-L1を発現しているが、CTLA4に対するリガンドは発現していない。この結果は、これらの各腫瘍モデルにおける抗CTLA4及び抗PD-L1 AbとALT-803との併用の抗腫瘍活性と整合し、免疫チェックポイント受容体のリガンドを有する腫瘍の染色は、ALT-803+免疫チェックポイントブロッカーに対する応答の予測インジケータを示し得ることを示す。
【0210】
また、Zeng et al.2013 Int J Radiat Oncol Biol Phys.,86:343-9に記載された膠芽腫の確立されたモデルを使用し、ALT-803単独療法及びALT-803と抗PD-1 mAbとの併用の試験を、膠芽腫細胞株GL261-lucが頭蓋内移植されたC57BL/6マウスにおいて行った。単独療法としての反復用量のALT-803(3回若しくは4回用量)又は抗PD-1 mAb(3回用量)での処置(腫瘍移植後、7~10日目に開始)では、PBS処理対照と比べた場合、同様の抗腫瘍活性の増大及び同様の動物生存期間の長期化が示された。ALT-803と抗PD1 mAbの併用での処置では、腫瘍担持マウスの生存期間中央値の期間がさらに長くなった。さらに、抗PD-1 mAbと4回用量のALT-803との併用では、長期無腫瘍生存個体(移植後>60日間)のパーセンテージが、抗PD-1 Ab及びALT-803単独療法で処置したマウスで観察された20%の割合から40%の割合に増大した。興味深いことに、「治癒した」マウスは再腫瘍負荷刺激に耐性であり、腫瘍に対する処置誘導性免疫記憶応答が示唆される。この結果は、ALT-803の免疫賦活活性とチェックポイントブロッカー抗PD-1 Abの組み合わせが、膠芽腫腫瘍担持マウスの生存期間の長期化に有益な効果を有することを示唆する。
【0211】
また、ALT-803+チェックポイント阻害薬ブロックの組み合わせでは、上記の試験の腫瘍担持動物においてなんら有意な毒性の徴候が引き起こされなかったことも注目に値し、これは、この併用の耐容性が良好であることを示す。
【実施例5】
【0212】
実施例5:マウスにおけるALT-803の毒性
動物におけるALT-803の安全性プロフィール及び治療指数を評価するため、並びに安全で有効なヒト用量を推定するため、反復用量のALT-803での処置の毒性試験をマウスとカニクイザルにおいて行った。C57BL/6Nマウス(10匹のマウス/性別/群)に0.1、1.0又は4.0mg/kgのALT-803又はPBSを尾静脈から、毎週、連続4週間投与した。最後の注射の4日後(26日目)、身体検査、血液化学検査、血液検査、肉眼検死、体重及び器官重量の測定並びに組織病理検査を含む評価を行った(5匹のマウス/性別/群)。最後の処置の14日後(36日目)、残ったマウスに対して同様の評価を行った。第2の試験において、C57BL/6Nマウス(15匹のマウス/性別/群)を0.1又は1.0mg/kgのALT-803又はPBSの4回の毎週のi.v.注射で処置した。上記のような毒性評価を、最後の注射の4日後(26日目)(10匹のマウス/性別/群)又は4週間後(50日目)(5匹のマウス/性別/群)に行った。
【0213】
ALT-803の安全性プロフィール及び薬力学的プロフィールを、0.1、1.0又は4.0mg/kgのALT-803又はPBSを毎週、連続4週間i.v.注射した健常C57BL/6Nマウスにおいて評価した。4.0mg/kgのALT-803を投与したマウスは、処置開始後4~20日の間に毒性の徴候(すなわち、体重減少、脱毛)及び死亡を示した。死後検死では死因は判定されなかったが、観察結果(すなわち、肺水腫、脾腫)はサイトカイン誘導性の致死性炎症応答と整合した。1.0又は0.1mg/kgのALT-803で処置したマウスでは死亡は観察されなかった。脾臓重量及び白血球(WBC)カウント数の用量依存性増加が最後のALT-803投与の4日後(26日目)にみられた(
図16)。WBCのうち、リンパ球、好中球及び単球の絶対カウント数は各々、1.0mg/kgのALT-803で処置したマウスでは対照と比べて8倍より多く増加した。処置の2週間後(36日目)及び4週間後(50日目)(
図16A~
図16F)、好中球カウント数は、1.0mg/kgのALT-803で処置したマウスでは高値のままであったがリンパ球カウント数は対照レベルに戻った。組織病理学的分析により、脾臓、肝臓、胸腺、腎臓、肺及びリンパ節における免疫細胞増殖及びリンパ球浸潤のALT-803用量依存性刺激が26日目に、及び度合は低いが36日目と50日目に確認された。これらの試験の結果により、マウスにおける1mg/kgまでの反復用量のALT-803での処置の耐用量を規定した。
【実施例6】
【0214】
実施例6:カニクイザルにおけるALT-803の毒性、薬力学(PD)及び薬物動態(PK)
優良試験所基準(Good Laboratory Practice)の規定の下、ALT-803の反復用量のi.v.投与の効果を評価するための試験をカニクイザルにおいて行った。動物(5匹のサル/性別/群)を毎週、連続4週間(1、8、15及び22日目)、0.03若しくは0.1mg/kgのALT-803で処置するか、又はPBSを約3分間のi.v.注射で投与した。試験中の生存期間を通して、動物を、臨床観察結果及び行動の観察結果、食料消費、体重、心臓及び目の機能について評価した。血液検査、化学的評価及び凝固評価(投与前並びに投与後5、26及び36日目)並びに免疫細胞分析のために採血した。免疫原性試験のために血清を得、定量的酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)方法を用いてPK解析を行った。尿検査のために採尿した(投与前並びに4、25及び35日目)。身体検査、肉眼検死、器官重量測定及び組織病理検査を含む臨床病理学評価を、最後の注射の4日後(26日目)(3匹の動物/性別/群)及び2週間後(36日目)(2匹の動物/性別/群)に行った。
【0215】
マウスでの耐用量に対するアロメトリックスケーリング側に基づき、0.1及び0.03mg/kgのALT-803の反復用量i.v.処置の活性プロフィール及び毒性プロフィールを健常カニクイザルにおいて評価した。最初の投与後のPK分析により、ALT-803の1消失半減期はおよそ7.6時間であると推定され、これは、用量レベル間で有意に異ならないようであった(
図17)。0.1mg/kgのALT-803の30nMというC
max値は投与用量の完全回収と整合するが、Cmax及びAUC
INFの値は、0.03mg/kg用量での回収が約30%少ないことを示す。しかしながら、低用量レベルであっても、血清中の6nMというC
maxは、インビトロで免疫細胞の増殖、活性化及び細胞傷害性を刺激することがわかっている0.1nM濃度より50倍超高かった。
【0216】
4週連続で毎週のALT-803の注射を受けたサルは、処置期間の最初の2週間で用量依存性の食欲低下を示した。しかしながら、試験中、群間で、平均体重又は他の用量関連の臨床観察結果又は行動の観察結果(あれば)に有意差はなかった。さらに、器官重量は、ALT-803処置動物において対照と比べて有意に異ならなかった。
【0217】
毎週のALT-803での処置後に観察された最も生物学的に重要な変化は、血中WBC及びリンパ球のカウント数の用量依存性増加であった(
図18A~
図18H)。4週間の投薬期間の終了時、絶対リンパ球カウント数(absolute lymphocyte counts)は、0.1mg/kgのALT-803を受けた動物では1.5倍増加し、次いで2週間の回復期間後、対照レベルに戻った。リンパ球サブセットのうち、NK細胞及びCD4
+及びCD8
+ T細胞カウント数の一過性の用量依存性増加が処置後にみられた(
図18A~
図18F)。また、血中単球カウント数も、0.1mg/kgのALT-803で処置したサルで増加したが、血中好中球レベルは処置群間で異ならなかった。この結果は、報告された主な毒性がグレード3/4の一過的好中球減少症であったマカク属及びアカゲザルに対するIL-15投与の以前の研究と対照的である。
【0218】
血中免疫細胞レベルの変化に加え、最後のALT-803投与の4日後に実施した組織病理検査に基づいて、ALT-803で処置したサルの肝臓、腎臓及び肺の軽度の多病巣性リンパ球浸潤の用量依存性増大がみとめられた。また、ALT-803処置動物では、散在する軽度の肝臓壊死も高頻度でみられた。この時点での臨床化学検査により、ALT-803高用量群では対照と比べて血清アルブミンの減少が示され(0.1mg/kgのALT-801,3.85±0.12g/dL;PBS,4.46±0.13g/dL;P<0.01)、これは、肝臓における炎症応答の結果であり得る。しかしながら、血清肝臓酵素レベルは、ALT-803処置動物では対照と比べて高値ではなかった。ほとんどの動物で骨髄過形成が観察されたが、ALT-803高用量群の方が重症度は高かった。ALT-803処置群の大部分の疾患器官の病変部は、処置後2週間までに、発生率及び重症度が低下し、対照動物における所見と整合した。一般的に、この試験で観察された血中及び組織内リンパ球に対するALT-803媒介性効果は、0.1mg/kgまでで週2回又は10~50μg/kgで毎日のIL-15で処置した非ヒト霊長類で報告された一過性応答と整合する。
【実施例7】
【0219】
実施例7:静脈内及び皮下ALT-803の比較試験
組換えヒトIL-15(rhIL-15)製剤品を用いた進行中の治験で得られているデータは、高Cmax並びに耐容性に影響を及ぼす二次サイトカイン放出(IL-6及びIFN-γ)が誘導されるため、静脈内投与はIL-15に最適でなく、したがって限定的と思われることを示唆している。IL-2を用いた前臨床試験及び臨床試験では、皮下投与の方が安全であり、ずっと良好な耐容性がもたらされることが示されている。例えば、Waldmann及び同僚らは、連続12日間の毎日の静脈内ボーラス輸注を用いて、ヒトにおけるrhIL-15の最初の固形腫瘍での治験を実施した(Conlon et al.,2015.J.Clin.Oncol.,33:74-82)。3.0及び1.0μg/kg/日のコホートで観察された用量制限毒性は、グレード3の低血圧症、血小板減少症、及びアラニントランスアミナーゼ(ALT)とアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)の上昇であった。最大耐用量(MTD)は0.3μg/kg/日と示された。静脈内投与での同じ用量レベルと比べたときのCmaxの低下、及びrIL-15製剤品のより持続的な循環レベルの結果、皮下投与での耐容性の増大が予想される。Cmaxが低下すると、全体的により多くの薬物送達が可能になる。
【0220】
このような所見をALT-803に拡張するため、ALT-803のi.v.(静脈内)及びs.c.(皮下)投与を、薬物動態、免疫賦活及び抗腫瘍有効性について評価するための前臨床試験をC57BL/6マウスにおいて実施した。0.2mg/kgのALT-801で処置したC57BL/6マウスの初期試験では、i.v.投与では5.3時間及びs.c.投与では3.8時間の推定半減期が示された。ALT-803の最大血清濃度は、s.c.投与後20時間の時点で650ng/ml、i.v.投与後20時間の時点では1700ng/mlであった。免疫賦活に関して、s.c.又はi.v.で投与されたALT-803は、CD8+ T細胞及びNK細胞の増殖を等しく誘導することができた。さらに、ALT-803のi.v.投与及びs.c.投与は、同様に免疫細胞を活性化させ、5T33骨髄腫担持マウスの骨髄中の腫瘍量を低減させた。0.2mg/kgまでのALT-803のi.v.投与及びs.c.投与はどちらも、正常マウス及び腫瘍担持C57BL/6マウスにおいて耐容性が良好であった。
【0221】
C57BL/6マウスに毎週4週間s.c.注射した1mg/kgのALT-803の毒物学的効果に関する追跡試験では、C57BL/6マウスを同じALT-803投薬レジメンでi.v.経路を用いて処置した以前の毒物学的試験でみられたものと同様の免疫系関連変化が示された。1mg/kgのALT-803の4回の毎週のs.c.注射後、マウスの死亡は観察されなかった。若干の体重減少及びALT-803の最初のs.c.注射後に猫背の姿勢が観察されたこと以外、この試験中、被験物質に関連する毒性の臨床徴候は観察されなかった。末梢血の検査により、PBS対照と比べてWBC数及びリンパ球カウント数の増加がみられることが示された。全般的に、WBC及びリンパ球の両方について、ALT-803で処置した動物ではPBS注射マウスと比べて9倍の増加がみられた。また、好中球、単球、好酸球及び好塩基球の増加も、s.c.ALT-803処置マウスにおいて観察された。ALT-803処置マウスの脾臓、リンパ節及び肝臓の重量の有意な増加(それぞれ5.5倍、3倍及び1.3倍)が観察された。免疫細胞の同等の広範ベースの増殖及びリンパ系器官の重量の増加が、反復用量のALT-803でのi.v.処置を受けたマウスについて以前に報告された。
【0222】
全般的に、ALT-803の前臨床試験の結果により、s.c.投与では、i.v.投与と比べてCmaxが低くなるが、免疫賦活活性と抗腫瘍有効性は、毒性が悪化することなく保持されることが示された。
【実施例8】
【0223】
実施例8:同所性膀胱腫瘍を担持しているマウスにおけるALT-803と免疫チェックポイントブロッカーとの併用の抗腫瘍活性
実施例4に記載の試験に加え、ALT-803と免疫チェックポイントブロッカーとの併用の抗腫瘍活性を、同所性MB49luc膀胱腫瘍を担持しているマウスにおいて評価した。C57BL/6マウス(n=6/群)に、ポリリシンで膀胱を前処置した後、試験の0日目にMB49luc細胞(3×10
4個の細胞/膀胱)を膀胱内点滴した。PBS、ALT-803(0.2mg/kg,i.v.)又はALT-803(0.2mg/kg)+抗PD-L1及び抗CTLA4 Ab(各々、100μg/注射,i.p.で)を、MB49luc腫瘍細胞の点滴後、7、10、14及び17日目に投与した。マウスを、有効性エンドポイントとしての処置群間生存率を評価するために維持した。ALT-803での処置により、MB49luc担持マウスの生存期間がPBSと比べて有意に長くなった(
図19A)。しかしながら、ALT-803と抗PD-L1及び抗CTLA4
Abとの併用では、単独療法の対照と比べて生存期間がさらに長くなった。この効果は、ALT-803+抗PD1及びALT-803+抗PD1/抗CTLA4 mAbの併用療法でもみられた(
図19B)。
【0224】
さらに、ALT-803+抗PD-L1/抗CTLA4 Ab療法によって腫瘍が治癒したマウスは、さらなる薬物処置なしでも膀胱再腫瘍負荷刺激に耐性であったが、処置未経験の年齢適合マウスでは、腫瘍細胞の点滴後、腫瘍が発生して死亡した(
図19A)。この結果は、ALT-803の単独療法並びに抗PD-L1、抗PD-1及び抗CTLA4 Abとの併用療法が膀胱腫瘍担持マウスの処置(治癒的応答を含む)に有効であったこと、並びにALT-803/抗PD-L1/抗CTLA4 Ab併用療法により、その後の腫瘍負荷刺激に対する免疫記憶応答がもたらされたことを示す。また、ALT-803+チェックポイント阻害薬ブロックの併用では、上記の試験の腫瘍担持動物においてなんら有意な毒性の徴候が引き起こされなかったことも注目に値し、これは、この併用の耐容性が良好であることを示す。
図20に示されるように、MB49luc細胞は、CTLA4及びPD-1のリガンドを発現している。そのため、この結果は、この腫瘍モデルにおける抗CTLA4、抗PD-1及び抗PD-L1 AbとALT-803との併用の抗腫瘍活性と整合する。
【実施例9】
【0225】
実施例9:マウス黒色腫モデルにおけるALT-803と抗gp75抗体TA99の併用療法
同系C57BL/6マウスの皮下B16F10黒色腫腫瘍モデルを使用し、固形腫瘍に対するALT-803+腫瘍抗原特異的治療用抗体の有効性をさらに評価した。また、このモデルは、確立された腫瘍及び再腫瘍負荷刺激に対するT細胞及び他の免疫細胞の活性も評価されるという利点を有する。標的療法のための重要な黒色腫特異的抗原の一例は、メラノソームにおけるメラニン合成に関与している75kDaのタンパク質であるgp75(TYRP-1,チロシナーゼ関連タンパク質-1)である(Kobayashi T,et al.1994.EMBO J.13:5818-25)。TA99(マウスIgG2a)は、ヒト及びマウスgp75に特異的なモノクローナル抗体(mAb)である(Thomson TM,et al.1985.J Invest Dermatol.85:169-74)。この抗体での処置により、同系マウスのマウス皮下B16F10黒色腫が、抗体依存性細胞傷害(ADCC)の活性化によって有効に排除される(Hara I,et al.1995.J Exp Med.182:1609-14)。
【0226】
本明細書に記載の実験は、この活性がALT-803との併用によってさらに増大され得るかどうかを調べ、抗腫瘍有効性を担う免疫応答を評価するために設計した。一般に、C57BL/6NHsdマウス(7週齢の雌)の背側下脇腹に、2×105個のB16F10腫瘍細胞(200μLのPBS中)を試験の0日目(SD0)にs.c.注射した。この試験では、再腫瘍負荷刺激を除くすべての実験で、処置は、週2回、2週間(試験の10、14、17、21及び24日目に)行い、動物の75%より多くが触知できるB16F10腫瘍を有した時点のSD10から開始した。より具体的には、マウスを群に分け、200μLのPBS(i.v.)(ビヒクル対照)、0.2mg/kgのALT-803(i.v.)、10mg/kgのTA99(i.v.)、100μg/マウスの抗PD-L1 mAb 10F.9G2(i.p.)、或いはALT-803、TA99及び/又は10F.9G2の併用療法薬を注射した。枯渇実験では、200μg/マウスの枯渇抗体(抗CD4 GK1.5、抗CD8a 53.6.72及び抗NK1.1 PK136)を1週間毎に1回i.p.注射するか、又は100μL/マウスのClophosome(マクロファージ枯渇用のクロドネート負荷リポソーム)を4日毎に1回i.p.注射し、それぞれ、SD3及びSD9から開始し、実験のエンドポイントまで行った。再腫瘍負荷刺激を伴う実験では、10mg/kgのTA99(i.v.)を週3回投与し、0.2mg/kgのALT-803(i.v.)を週1回、3週間投与した(SD0から開始)。約3ヶ月後、腫瘍初期負荷刺激で生き残った無腫瘍マウスの反対側に、2×105個のB16F10腫瘍細胞(200μLのPBS中)をs.c.注射した。腫瘍体積を、処置の初日から開始して終了時まで毎日測定し、式1/2(長さ×幅2)を用いて計算した。一方向の寸法が>20mmの腫瘍細胞量を担持しているマウスを致死させ、死亡としてカウントした。触知できる腫瘍がないか、又は<50mm3の安定なs.c.量を有するマウスは無腫瘍としてカウントした。
【0227】
初期試験では、確立された腫瘍を担持しているマウス(n=8)を、TA99、ALT-803、TA99+ALT-803又はPBS対照で週2回、2週間処置した(
図21A)。治療的介入の遅れのため、いずれの処置群でも腫瘍退縮は観察されなかった。しかしながら、腫瘍の進行は、TA99(p<0.001)及びALT-803(p<0.001)により、PBS処置群と比べて有意に抑止された。併用療法により、いずれかの単独療法と比べて腫瘍成長の阻害の有意な増強(p<0.001)がもたらされ、ALT-803によって腫瘍に対する抗体依存性免疫のさらなる防御がもたらされることが示唆される。
【0228】
どの免疫細胞サブセットがALT-803/TA99媒介性抗黒色腫免疫を担っているのかを調べるため、処置過程の前及び処置過程中に、細胞型特異的抗体又はリポソームの腹腔内投与によってTリンパ球、NK細胞及びマクロファージを枯渇させた。CD8
+ T細胞、NK細胞及びマクロファージを枯渇させると、併用療法による腫瘍成長の阻害が有意に低下し(p<0.001;
図21B)、3つの細胞サブセットすべてがALT-803とTA99の有効性に寄与していることが示唆される。驚くべきことに、CD4
+ T細胞の枯渇は、枯渇なしのALT-803+TA99処置群と比べて、腫瘍阻害の有意な増強を引き起こしただけでなく(p<0.001;
図21B)、動物の生存率の有意な増大も引き起こした(p<0.01;
図21C)。CD4
+ T細胞が免疫調節機能に大きく関与していることを考慮すると、この所見により、この細胞(又はCD4
+ T細胞サブセット)は、B16F10腫瘍に対する初期のALT-803/TA99媒介性免疫において免疫反応性ではなく免疫抑制性であることが示唆される。
免疫細胞に対する処置の効果を、B16F10黒色腫腫瘍を担持しているマウスから投与治療の3日後に収集した脾細胞及び腫瘍浸潤白血球(TIL)において調べた。ALT-803投与後、PBS対照と比べて、CD8
+ T細胞集団及びNK細胞集団の増加、並びにCD4
+ T細胞集団、B細胞集団及びマクロファージ集団の減少がみられた(
図22A及び
図22B)。予測通り、TA99では、腫瘍関連マクロファージの少量の低減が引き起こされたこと以外、免疫細胞サブセットのパーセンテージは脾細胞又はTILのいずれにおいても変化しなかった。ALT-803/TA99併用では、免疫細胞集団においてALT-803単独と同様の変化が示された。ALT-803は、単独又はTA99との併用で、脾細胞とTILの両方のデータによって裏付けられるように、CD8
+ T細胞の記憶表現型(CD44
high)の有意な増加をもたらした(
図22C及び
図22D)。TILのCD8
+CD44
high T細胞集団のベースラインは脾臓のこの細胞集団よりも2倍多いため、記憶CD8
+ T細胞のALT-803媒介性増殖は、TILではあまり目立たなかった(1.2倍,p<0.01に対して脾臓では2.5倍,p<0.001)。TA99では、TILにおける記憶CD8
+ T細胞のパーセンテージがわずかに低下し(p<0.05)、おそらく、より多くのエフェクターCD8
+ T細胞が、黒色腫に対する抗体依存性免疫に関与するよう推進されたためである。
【0229】
ALT-803増強性免疫記憶が腫瘍細胞に対する長期免疫の改善に寄与し得るかどうかを評価するため、ALT-803+TA99での処置を試験の0日目に、B16F10腫瘍を負荷刺激したマウスの治癒を試みて開始した。この処置レジメンでは、TA99療法にALT-803を加えても、SD60に無腫瘍動物のパーセンテージの中程度の増大が観察されたこと以外、動物の生存率の改善はもたらされなかった(
図23A)。しかしながら、ALT-803+TA99群の生存マウスにB16F10細胞で再負荷刺激すると、処置未経験の年齢適合マウスと比べた場合、腫瘍発生の有意な遅延が観察された(
図23B)。このような所見は、ALT-803での事前処置により免疫細胞応答が誘導され、これは、その後の再腫瘍負荷刺激に供された動物の「ワクチン的」防御に極めて重要であるという仮説を支持する。どの細胞がこの防御的効果に関与しているかを評価するため、枯渇試験を、腫瘍細胞での再負荷刺激前のALT-803+TA99「治療」マウスにおいて実施した。その結果により、PBSを投与したALT-803+TA99「治療」マウスは再B16F10腫瘍負荷刺激から防御されたままであるが、CD8、CD4又はNK細胞を枯渇する抗体で処置したこれらの「治療」マウスでは、皮下への再B16F10腫瘍負荷刺激による死亡に対する免疫防御は示されないことが示された(
図23C)。この結果は、これらの細胞型すべてが、最初の腫瘍移植後にALT-803+TA99での処置によって媒介される防御的効果に関与していることを示す。
【0230】
また、免疫細胞活性化の役割及びPD-1/PD-L1軸も、このモデルにおいて評価した。単回用量のALT-803は、腫瘍浸潤CD4
+ T細胞のCD25
+細胞を上方調節した(p<0.05)が、TA99はこの活性化マーカーを下方調節した(p<0.01;
図24A)。さらに、ALT-803での処置では、CD4
+ T細胞上のPD-L1発現が、末梢(p<0.001;
図24B)及び腫瘍内(p<0.01;
図24C)の両方で有意に増大した。TA99での処置では、TILのみでCD4
+ T細胞上のPD-L1発現の若干の低減がもたらされ(p<0.05)、ALT-803を伴うTA99は、ALT-803単独の影響を変えるのに充分でなかった。したがって、ALT-803及びその治療用抗体との併用の有効性は、おそらく、CD4
+ T細胞によって強化された免疫チェックポイント阻害経路によって制限されている可能性がある。
【0231】
また、CD8
+ T細胞上のPD-1発現に対するALT-803の効果も、B16F10腫瘍担持マウスにおいて評価した。単回用量のALT-803により、PBS対照と比べて脾臓CD8
+ T細胞上のPD-1発現の中程度の低減がもたらされ、未処置マウスに近いレベルまで回復した(
図24C)。また、ALT-803、TA99及びALT-803+TA99併用療法ではすべて、腫瘍浸潤CD8
+ T細胞上のPD-1発現が約3倍低減された(
図24D)。
【0232】
IL-15の重要な抗腫瘍作用機序の1つは、NK細胞の活性化によるものである。NK細胞上の活性化マーカーKLRG1を調べると、B16F10黒色腫は、免疫原性は不充分であるが、脾臓NK細胞上のKLRG1の中程度の増加を誘導し得ることがわかった(p<0.05;
図25A)。ALT-803での処置により、脾臓におけるNK細胞の活性化はさらに増大し(p<0.05;
図25A)、より重要なことには、腫瘍浸潤NK細胞上のKLRG1発現の大きな増大が引き起こされる(4倍,p<0.001;
図25B)。これは、なぜALT-803が、NK細胞が応答に関与している主要な免疫細胞であるB16F10腫瘍に対するTA99媒介性ADCCを有効に追加刺激し得るのかの説明となるかもしれない。CD8
+ T細胞と同様、ALT-803もまた、脾臓(p<0.01;
図25C)及び腫瘍(p<0.05;
図25D)のNK細胞上のPD-1発現を下方調節し、ALT-803がチェックポイント経路による阻害を、さらなるチェックポイントブロックに関係なく、CD8
+ T細胞及びNK細胞のPD-1アームによって内因的に減弱させているのかもしれないことが示唆される。
【0233】
チェックポイントブロックによってALT-803とTA99のコンビナトリアル抗腫瘍機能がさらに増強され得るかどうかを探索するため、確立されたB16F10腫瘍を担持しているマウス(n=8)を、ALT-803+TA99で、抗PD-L1 mAb
10F.9G2とともに、及びなしで遅延介入モデルにおいて処置した(
図26A)。抗PD-L1 mAb単独では、腫瘍成長が少量倍数低速化した(p<0.05)。したがって、B16F10細胞はインビトロ及びインビボともに、PD-L1を構成的に発現させるという観察結果にもかかわらず(
図26B)、抗PD-L1 mAbは、このモデルにおいて黒色腫成長の阻害に対する強力な単独療法薬になり得なかった。腫瘍成長曲線から判断すると、ALT-803+TA99と抗PD-L1 mAbとの併用では、ALT-803+TA99療法と比べた場合、より大きな抗腫瘍活性が示された(p<0.05)。
【0234】
全般的に、これらの試験の結果は、ALT-803を腫瘍特異的抗体と併用すると抗腫瘍活性がもたらされ得、確立された固形腫瘍を担持しているマウスの生存期間が長くなり得ることを示す。また、この処置により、さらなる再腫瘍負荷刺激に対する免疫防御ももたらされる。このような効果は、処置に応答して活性化されて増殖するNK細胞及びT細胞によって媒介される。さらに、チェックポイント阻害薬との治療的併用により、ALT-803+腫瘍特異的抗体レジメンの抗腫瘍有効性がさらに増大され得る。その結果、ALT-803単独療法及びALT-803併用療法ストラテジーは、新生物に対する種々の処置アプローチ、例えば、補助、術前補助、誘導、強化、維持、ファーストライン、セカンドライン以降の処置及び手術、放射線又は化学療法との併用に適用可能である。
【0235】
また、ALT-803単独或いは抗腫瘍抗体及び/又はチェックポイント阻害薬ブロックとの併用では、上記の試験の腫瘍担持動物においてなんら有意な毒性の徴候が引き起こされなかったことも注目に値し、これは、この併用の耐容性が良好であることを示す。
【実施例10】
【0236】
実施例10:悪性腫瘍を有する患者でのALT-803の臨床試験
ALT-803は、悪性腫瘍を有する患者において、以下のとおりに評価中である。
【0237】
ALT-803の多施設臨床試験が、転移性黒色腫及び他の固形腫瘍を有する患者で進行中である。この試験は用量漸増試験として実施中であり、ALT-803の最大耐用量(MTD)又は至適生物学的用量(Optimum Biological Dose)(OBD)を決定するため、各1名の患者を最初の2つのコホートに登録し、最低3名の患者を最後の3つのコホートに登録する。登録患者は、4回の毎週のALT-803の静脈内投与の後、2週間の休薬期間からなる2回の6週間サイクルを受ける。疾患が安定しているか、又は疾患に便益がある患者を、さらに2回までの6週間サイクルを受けるのに適格とする。1名の患者を、0.3μg/kgのALT-803用量レベルに登録した。報告された治験薬に起因する有害事象は一過性の微熱、硬直(rigor)、悪心及び嘔吐であった。次の患者を0.5μg/kg用量レベルに登録した。報告された有害事象はすべて、軽度から中程度の、例えば、悪心、倦怠感及び掻痒であった。3名の患者を登録し、1μg/kgのALT-803用量レベルでの試験処置を完了させた。これらの患者について報告された有害事象はすべて、軽度から中程度の、例えば、悪寒、便秘の悪化及び高血圧であった。この治験の試験プロトコルを、腎細胞癌、非小細胞肺癌及び頭頸部扁平上皮癌を含むように補正した。腎細胞癌を有する1名の患者を含む3名の患者を3μg/kg用量レベルに登録した。これまでに報告されている有害事象は軽度から中程度の、例えば、発熱、倦怠感、嘔吐及び筋肉痛であった。これらのALT-903処置患者のいずれにおいても、用量制限毒性、グレード3/4の毒性又は重症有害事象はみとめられておらず、これは、この処置の耐容性が良好であったことを示す。疾患の安定化が一部の患者で報告されており、処置媒介性の臨床的有益性(例えば、腫瘍量、疾患進行若しくは再発若しくは毒性の低減、又は無増悪生存期間、進行までの期間、応答の持続期間、生存期間若しくは生活の質の増大)が期待される。
【0238】
ALT-803の多施設臨床試験が、自家幹細胞移植(ASCT)後に再発した造血器の悪性腫瘍を有する患者で進行中である。この試験の第1フェーズは、毒性に関する用量漸増の標準的な3+3設計で実施中である。登録患者は、週に1回、4週間投与されるALT-803静脈内投与を受ける。6名の患者が登録されており、1μg/kgのALT-803用量レベルでの試験処置を完了させた。最初の3名の患者について、報告された治験薬に起因する有害事象は発熱、悪寒、硬直及び浮腫であった。ALT-803投与のおよそ4~5時間後にグレード1の発熱が2名の患者に起こり、次いで、ALT-803投与のおよそ6~7時間後におさまった。グレード2の硬直が2名の患者に起こり、グレード2の悪寒が2名の患者に起こり、グレード1の悪寒が1名の患者に起こった。1名の患者のグレード2の硬直には、4回のALT-803投与のうち3回でデメロールが必要とされた。1名の患者にはグレード2の浮腫が起こり、別の患者にはグレード1の浮腫が起こった。最初の3名の患者には無症候性の低血圧症が起こったが、点滴療法後、低血圧症エピソードが再発することなく患者は正常血圧になった。いずれの処置患者にも、輸液による事前の水分補給は行わなかった。また、2回目のALT-803投与後、グレード2の皮膚発疹も1名の患者において観察され、これは移植片対宿主病と整合した。4人目、5人目及び6人目の患者も試験処置を受け、報告された有害事象(AE)はなかった。3名の患者は3μg/kgのALT-803用量レベルで試験処置を完了させた。患者は各投与前に水分補給を受け、報告された有害事象としては、ALT-803投与の6時間後と10時間後のグレード1の発熱と悪寒が挙げられる。3名の患者を登録し、6μg/kgのALT-803用量レベルでの処置を完了させた。このコホートで報告された最も一般的な有害事象としては、軽度から中程度の発熱、硬直及び流感様症状が挙げられる。2名の患者が10μg/kgのALT-803用量レベルで処置されている。第1の患者についてALT-803の最初の投与後に報告された有害事象としては、一過性の発熱、悪心及び嘔吐が挙げられる。有害事象は、投与の3時間後くらいに始まり、およそ4時間持続した。また、この患者には、低グレードの無症候性の低血圧症も起こった。IV輸液を投与すると、血圧はベースラインに戻った。第2の患者にはALT-803の最初の投与後に一過性の発熱と悪寒が起こった。悪寒はデモラール(Demoral)でコントロールした。これらのALT-903処置患者のいずれにおいても、用量制限毒性、グレード3/4の毒性又は重症有害事象はみとめられておらず、これは、この処置の耐容性が良好であったことを示す。このプロトコルを、ALT-803の投与をIV注射から皮下注射に変更し、6μg/kg用量レベルで開始するように補正した。患者の登録は、このコホートに合計3名の患者が登録されるまで、i.v.投与にて10μg/kg用量レベルで継続する。次いで、6μg/kgでの皮下注射の患者の登録を開始する。処置媒介性の臨床的有益性(例えば、腫瘍量、疾患進行若しくは再発若しくは毒性の低減、又は無増悪生存期間、進行までの期間、応答の持続期間、生存期間若しくは生活の質の増大)が期待される。
【0239】
臨床バイオマーカー評価が実施中である。ASCT後に造血器の悪性腫瘍を有する患者の試験では、患者の投与前及び投与後の被検物のNK、CD4+、CD8+及びNKT細胞サブセット並びに血清サイトカインのKi-67分析に関する予備データが入手可能である。ともに血清レベルのIFN-γ及びIL-6が、1μg/kg~6μg/kgのALT-803の用量範囲内で、用量依存的様式で誘導された。Ki67+ NK、CD8+及びCD4+ T細胞は、すべての患者で、≧3μg/kgの用量レベルでのALT-803投与後、増加した。したがって、予備データは、ALT-803は、≧3μg/kgの用量レベルで、この適応症を有する患者に対してNK、T及びNKT細胞の活性化と増殖を一貫して向上させることを示唆する。同様に、血清レベルのIFN-γとIL-6が、固形腫瘍を有する患者においてALT-803の投与後に誘導され、このような患者における処置関連免疫賦活を示す。
【0240】
ALT-803の多施設臨床試験が、再発した、又は不応性の多発性骨髄腫を有する患者で進行中である。この試験の第1フェーズは、MTD又は最小有効用量(MED)を決定するため、及びフェーズIIの2段階の継続試験での用量レベルを指定するための古典的な(3+3)用量漸増試験を含む。用量レベルは1、3、6、10及び20μg/kgのALT-803である。登録患者は、4回の毎週のALT-803の静脈内投与の後、2週間の休薬期間からなる2回の6週間サイクルを受ける。疾患が安定しているか、又は疾患に便益がある患者を、さらに2回までの6週間サイクルを受けるのに適格とする。3名の患者を登録し、1μg/kgのALT-803用量レベルでの試験処置を完了させた。これらの患者について報告された有害事象はすべて、軽度から中程度の、例えば、便秘、悪心、倦怠感、ALCの減少及びWBCカウント数の減少であった。患者はすべて、前投薬を受けている。2名の患者は、3μg/kgのALT-803用量レベルでの処置を受けている。報告された有害事象としては、軽度から中程度の発熱、硬直及び好中球減少症が挙げられる。これらのALT-903処置患者のいずれにおいても、用量制限毒性、グレード3/4の毒性又は重症有害事象はみとめられておらず、これは、この処置の耐容性が良好であったことを示す。処置媒介性の臨床的有益性(例えば、腫瘍量、疾患進行若しくは再発若しくは毒性の低減、又は無増悪生存期間、進行までの期間、応答の持続期間、生存期間若しくは生活の質の増大)が期待される。血清レベルのIFN-γとIL-6が、多発性骨髄腫を有する患者においてALT-803の投与後に誘導され、このような患者における処置関連免疫賦活を示す。
【0241】
ALT-803とカルメット・ゲラン桿菌(BCG)との併用の多施設臨床試験は、BCG未投薬の筋層非浸潤性膀胱癌を有する患者でのものである。この試験の第1フェーズは、ALT-803のMTDを決定するため、及び継続試験フェーズでBCGと併用するALT-803の推奨用量(RD)を決定するための古典的な(3+3)用量漸増試験を含む。用量レベルは100、200及び400μg/点滴のALT-803+標準的なBCG(50mg/点滴)である。継続試験フェーズは、RDレベルのALT-803とBCGとの併用又はBCG単独を受ける患者の非比較無作為化デザインからなる。登録患者はBCG+ALT-803を毎週、膀胱内留置尿道カテーテルにより連続6週間投与される。3名の患者を登録し、100μg/点滴のALT-803+BCGの第1コホートの処置を完了させた。報告された治験薬に起因する有害事象には、軽度の悪心、頭痛、血尿及び尿路痛並びに中程度の非感染性膀胱炎が含まれた。3名の患者が登録されており、200μg/点滴のALT-803+BCGの処置を完了させた。報告された治験薬に起因する有害事象には、軽度の血尿及び尿失禁が含まれた。登録された2名の患者では、400μg/点滴のALT-803コホートの処置が進行中である。このようなALT-903+BCG処置患者のいずれにおいても、用量制限毒性、グレード3/4の毒性又は重症有害事象はみとめられておらず、これは、この処置の耐容性が良好であったことを示す。これらの処置患者の数名は、治療後、少なくとも9ヶ月間、疾患の再発を示さず(この適応症における完全応答とみなす)、処置関連臨床的活性が示唆される。また、一部の患者では、尿中サイトカインの処置関連増加も観察された。処置媒介性の臨床的有益性(例えば、腫瘍量、疾患進行若しくは再発若しくは毒性の低減、又は無増悪生存期間、進行までの期間、応答の持続期間、生存期間若しくは生活の質の増大)が期待される。
【0242】
ALT-803+リツキシマブの多施設臨床試験が、再発した、又は不応性のインドレントB細胞性非ホジキンリンパ腫を有する患者で進行中である。この試験の第1フェーズは、MTD又はMEDを決定するため、フェーズIIの2段階の継続試験での用量レベルを指定するための古典的な(3+3)用量漸増試験を含む。用量レベルは1、3及び6μg/kgのALT-803である。登録患者は、ALT-803の4回の毎週の投与と標準的な静脈内注射によるリツキシマブ(375mg/m2)からなる4週間の導入サイクルを受ける。疾患が安定しているか、又は疾患に便益がある患者を、ALT-803+リツキシマブの単回処置、8週間毎に合計4回のさらなるALT-803とリツキシマブの反復投与からなる4回までの強化処置サイクルを受けるのに適格とする。1名の患者を登録し、現在、1μg/kgのALT-803用量レベルでの処置を受けている。この患者についてこれまでに報告されている有害事象は軽度から中程度の、例えば、浮腫、ALCの減少及びWBCカウント数の減少であった。このALT-903+リツキシマブ処置患者において、用量制限毒性、グレード3/4の毒性又は重症有害事象はみとめられておらず、これは、この処置の耐容性が良好であったことを示す。処置媒介性の臨床的有益性(例えば、腫瘍量、疾患進行若しくは再発若しくは毒性の低減、又は無増悪生存期間、進行までの期間、応答の持続期間、生存期間若しくは生活の質の増大)が期待される。
【0243】
ALT-803+ニボルマブ(抗PD-1 Ab)の多施設臨床試験が、進行した、又は転移性の非小細胞肺癌を有する患者で実施される。この試験の第1フェーズは、ALT-803のMTDを決定するため、及びフェーズIIの2段階の継続試験での用量レベルを指定するための用量漸増試験を含む。用量レベルは6、10及び15μg/kgの皮下ALT-803である。登録患者は、ALT-803の5回の毎週の投与と標準的な2週間毎の静脈内ニボルマブ(3mg/kg)からなる2回の6週間サイクルを受ける。疾患が安定しているか、又は疾患に便益がある患者を、さらに6週間のALT-803+ニボルマブサイクルを受けるのに適格とする。処置媒介性の臨床的有益性(例えば、腫瘍量、疾患進行若しくは再発若しくは毒性の低減、又は無増悪生存期間、進行までの期間、応答の持続期間、生存期間若しくは生活の質の増大)が期待される。
【0244】
他の実施形態
本発明を、その詳細説明に関して説明したが、前述の説明は、実例を示すことを意図したものであって、本発明の範囲を限定することを意図したものではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲によって規定される。他の態様、利点及び変形例は以下の特許請求の範囲の範囲に含まれる。
【0245】
本明細書で言及した特許及び科学文献は、当業者に利用可能な知識を確認するものである。本明細書に挙げた米国特許及び公開又は未公開米国特許出願はすべて、引用により組み込まれる。本明細書に挙げた外国の公開された特許及び特許出願はすべて、引用により本明細書に組み込まれる。本明細書に挙げた受託番号によって示されるGenbank及びNCBIの寄託物は、引用により本明細書に組み込まれる。本明細書に挙げた他の公開された参考文献、文献、手稿及び科学文献はすべて、引用により本明細書に組み込まれる。
【0246】
本発明を、その好ましい実施形態に関して具体的に図示し、説明したが、当業者には、形態及び詳細において種々の変更が、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲を逸脱することなくなされ得ることが理解されよう。
【配列表】