(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ロジウムの回収方法
(51)【国際特許分類】
C22B 11/00 20060101AFI20240927BHJP
C22B 15/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C22B11/00 101
C22B15/00 107
(21)【出願番号】P 2023046272
(22)【出願日】2023-03-23
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 輝明
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特許第5413564(JP,B2)
【文献】特開2006-057137(JP,A)
【文献】特開平04-139022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 11/00
C22B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジウムイオン及び
二価の銅イオン
並びに硫酸イオンを含む水溶液に、水溶性ハロゲン化物を添加する工程と、
前記水溶液に銅粉を添加してハロゲン化第一銅を生成させる工程と、
前記水溶液からハロゲン化第一銅を除去する工程と、を備えたロジウムの回収方法。
【請求項2】
前記水溶液から除去された前記ハロゲン化第一銅から銅粉を得る工程と、
得られた前記銅粉を、ロジウムイオン及び銅イオンを含む前記水溶液に添加する工程とを更に備える、請求項1に記載の回収方法。
【請求項3】
前記ハロゲン化第一銅から水酸化第一銅を生成させ、
得られた水酸化第一銅を還元して前記銅粉を得る、請求項2に記載の回収方法。
【請求項4】
水酸化第一銅を、水酸化ナトリウムで安定化された水素化ホウ素ナトリウムで還元する、請求項3に記載の回収方法。
【請求項5】
前記ハロゲン化第一銅が除去された前記水溶液に亜鉛粉を添加して、ロジウムが濃縮された還元物を得る、請求項1に記載の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロジウムイオン及び銅イオンを含む水溶液からのロジウムの回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロジウムは、他の白金族金属、例えば白金等と比較してイオンの状態で水溶液中に存在しやすいことから、水溶液中に他の金属イオン、例えば銅イオンが共存する状態では、ロジウムイオンと銅イオンとの分離に工夫を要する。ロジウム及び銅を含む水溶液からのロジウムの回収方法に関する従来の技術としては例えば特許文献1ないし3に記載のものが知られている。
特許文献1には、ロジウム等の貴金属が溶解している銅溶液に粗銅粉を添加して、貴金属が固体化した一次残渣を得、この一次残渣を使用済み銅電解液による浸出処理に付して、貴金属濃度が一次残渣よりも高まった二次残渣を得、二次残渣から貴金属を回収することが記載されている。
【0003】
特許文献2には、ロジウム及び銅を含む水溶液に硫酸イオンを添加することで、それによって生成する硫酸銅からなる結晶成分と、残部ロジウムを含む液体成分とを分離することが記載されている。
【0004】
特許文献3には、銅とロジウムとを含有する原料を塩素ガスによって浸出させて塩素浸出液を得る工程と、塩素浸出液を溶媒抽出して、銅とロジウムとを分離する処理方法が記載されている。この方法においては、浸出と溶媒抽出との間に、次の工程(1)-(3)を行っている。そして、(3)の工程で分離された脱銅母液を前記溶媒抽出に付している。
(1)塩素浸出液にアルカリを加えて水酸化物の澱物を得る。
(2)水酸化物に硫酸溶液を加えて溶解させ、水酸化物の溶解液を作製する。
(3)水酸化物の溶解液を加熱して濃縮し、次いで冷却することで、析出した硫酸銅結晶と脱銅母液とを分離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-35800号公報
【文献】特開2010-163664号公報
【文献】特開2012-158778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1ないし3に記載の方法によればロジウムの回収が一応可能ではあるが、回収工程が複雑であり、またロジウムの回収効率が必ずしも高いとはいえない。
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する種々の欠点を解消し得るロジウムの回収方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ロジウムイオン及び銅イオンを含む水溶液に、水溶性ハロゲン化物を添加する工程と、
前記水溶液に銅粉を添加してハロゲン化第一銅を生成させる工程と、
前記水溶液からハロゲン化第一銅を除去する工程と、を備えたロジウムの回収方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法によれば、ロジウムイオン及び銅イオンを含む水溶液からのロジウムの回収を、複雑な工程を経ることなく、高い回収率で達成可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、ロジウムイオン及び銅イオンを含む水溶液からのロジウム回収方法に係るものである。本発明の方法は以下の工程に大別される。
(1)ロジウムイオン及び銅イオンを含む水溶液に、水溶性ハロゲン化物を添加する工程(以下「第1工程」ともいう。)。
(2)前記水溶液に銅粉を添加してハロゲン化第一銅を生成させる工程(以下「第2工程」ともいう。)。
(3)前記水溶液からハロゲン化第一銅を除去する工程(以下「第3工程」ともいう。)。
第1工程から第3工程はこの順で行われる。第3工程の完了後は、必要に応じ、後述する付加工程1及び2が行われる。
以下、それぞれの工程について説明する。
【0010】
<第1工程>
本工程においては先ずロジウム回収の対象となる水溶液(以下「回収対象液」ともいう。)を用意する。この水溶液はロジウム(Rh)イオン及び銅(Cu)イオンを含有している。本明細書において、「ロジウムイオン」とは、ロジウムのアクア錯体及びH2O以外の配位子を有する錯体の総称である。同様に「銅イオン」とは、銅のアクア錯体及びH2O以外の配位子を有する錯体の総称である。また、ロジウムイオン及び銅イオンの価数に特に制限はなく、種々の価数のロジウムイオン及び銅イオンが回収対象液中に含まれていてもよい。銅イオンに関しては、主として二価のイオンの状態で回収対象液中に含まれていることが好ましい。
回収対象液は例えば、各種鉱石の浸出液や、各種電子部品のスクラップの浸出液や、排ガス触媒の浸出液であり得る。浸出の際には各種鉱酸による処理が行われる場合がある。そのことに起因して回収対象液は、鉱酸のアニオン、例えば硫酸イオンを含む水溶液であり得る。
【0011】
回収対象液は、一般に100mg/L以上2500mg/L以下のロジウムイオンを含んでいる。また回収対象液は、一般に20000mg/L以上50000mg/L以下の銅イオンを含んでいる。
回収対象液が硫酸イオンを含む場合、回収対象液は一般に150g/L以上250g/L以下の硫酸イオンを含んでいる。回収対象液が硫酸イオンを含む場合、銅イオンは一般に硫酸錯体として存在することが知られている。一方、ロジウムイオンは一般にアクア錯体又はスルファト錯体として存在することが知られている。
【0012】
回収対象液には、ロジウムイオン及び銅イオン以外の金属のイオンが含まれていてもよい。そのような金属としては、例えばAs、Ni、Pb、Sn、Zn、Fe、Sb、Bi、S、Te、Se、Au、Ag、Pt及びPdなどが挙げられる。
【0013】
本工程においては、回収対象液に水溶性ハロゲン化物を添加する。水溶性ハロゲン化物の添加の目的は、後述する第2工程においては、回収対象液に含まれる銅イオンを、水難溶性のハロゲン化第一銅に変換して、回収対象液から除去するためである。この目的のために、水溶性ハロゲン化物としては、第2工程が行われる液温において、水に対する溶解度が20g/100g以上のものが好適に用いられる。そのような水溶性ハロゲン化物としては、例えば第1族金属のハロゲン化物及び第2族金属のハロゲン化物などが挙げられる。水溶性ハロゲン化物として塩酸を用いることもできる。
これらの水溶性ハロゲン化物のうち、特に、第1族金属のハロゲン化物である塩化ナトリウム及び塩化カリウム、並びに第2族金属のハロゲン化物である塩化マグネシウムなどを用いることが、経済性及び後工程での廃水処理の容易さの点から好ましい。
【0014】
回収対象液に添加される水溶性ハロゲン化物の量は、第2工程において水難溶性のハロゲン化第一銅を確実に生成させる観点から、回収対象液中の銅1モルに対してハロゲン化物イオンを3モル以上とすることが好ましい。
また、回収対象液に添加される水溶性ハロゲン化物の量は、ハロゲン化第一銅の再溶解を防止するから、回収対象液中の銅1モルに対してハロゲン化物イオンを5モル以下とすることが好ましく、4モル以下とすることが更に好ましく、3.5モル以下とすることが一層好ましい。
【0015】
回収対象液に水溶性ハロゲン化物を添加するのに先立ち、該回収対象液のpHを調整してもよい。これによって、次工程である第2工程においてハロゲン化第一銅の沈殿を効率よく行うことができる。この観点から、回収対象液のpHを0以下に調整することが好ましく、-0.2以下に調整することが更に好ましく、-0.4以下に調整することが一層好ましい。
【0016】
<第2工程>
本工程においては、水溶性ハロゲン化物が添加された状態の回収対象液に銅粉を添加する。銅粉は、回収対象液に含まれる二価の銅イオンの還元剤として用いられる。金属イオンの還元剤としては、種々の物質が知られているところ、本発明においては還元剤として銅粉を用いることによって、回収対象液に含まれるロジウムイオン及び銅イオンのうち、銅イオンのみを還元することができる。ロジウムイオンは還元されず、銅イオンのみが還元される理由は、銅粉の還元力は非常に弱いことから、イオン化傾向が相対的に卑である銅イオンは還元されるが、イオン化傾向が相対的に貴であるロジウムイオンは還元されないからである。
【0017】
詳細には、銅粉は、二価の銅イオン(Cu2+)を一価の銅イオン(Cu+)にまで還元させることができ、また銅粉自身は二価の銅イオンを還元させることで一価の銅イオンに酸化される。その結果、二価の銅イオンの還元によって生じた一価の銅イオン、及び銅粉の酸化によって生じた一価の銅イオンの双方が、回収対象液に含まれるハロゲン化物イオンと反応して難溶性のハロゲン化第一銅が生成し、残留物が生じない。
【0018】
本工程において用いられる銅粉は、二価の銅イオンを確実に還元させる観点から、金属銅を好ましくは70質量%以上含み、更に好ましくは85質量%以上含み、一層好ましくは95質量%以上含む。
同様の観点から、銅粉は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D50が100μm以下であることが好ましく、50μmであることが更に好ましく、30μm以下であることが一層好ましい。
【0019】
本工程における銅粉の添加量は、本工程を行う温度での回収対象液の酸化還元電位(vs.Ag/AgCl)が、0mV以上100mV以下となるような量であることが好ましい。銅粉を添加すると回収対象液の色は濃い緑色になる。銅粉の添加量を増していくと、液の色は緑色に変化し最終的には薄い鶯色となる。液の色が薄い鶯色になったことは、液中の二価銅イオンの一価銅イオンへの還元が完了したことを意味する。したがって、この液の色がこの色になるまで銅粉を添加することが好ましい。
【0020】
<第3工程>
第2工程において回収対象液に銅粉を添加することで、液中に銅のハロゲン化物、すなわちハロゲン化第一銅が生成する。このハロゲン化第一銅は水難溶性であることから沈殿する。一方、回収対象液中にはロジウムイオンが存在する。そこで第3工程において固液分離の操作を行い、回収対象液から濾液を回収する一方、固形分を回収する。
固形分にはハロゲン化第一銅が含まれ、少量のロジウムも含まれる。
一方、濾液にはロジウムイオンが含まれ、少量の銅も含まれる。濾液に含まれる銅イオンの濃度は、回収対象液に含まれる銅イオンの濃度に対して80%以上低下していることが好ましく、90%以上低下していることが更に好ましく、95%以上低下していることが一層好ましい。
固液分離後の濾液におけるロジウムの分配率は、好ましくは70以上であり、更に好ましくは80%以上であり、一層好ましくは85%以上である。
一方、固液分離後の濾液における銅の分配率は、好ましくは20%以下であり、更に好ましくは15%以下であり、一層好ましくは10%以下である。
固液分離の操作は公知の方法で行うことができる。例えば重力濾過、真空濾過、加圧濾過及び遠心濾過などの濾過法、沈降法、遠心分離法並びに圧搾法などを用いることができる。
【0021】
<付加工程1>
第3工程において、銅イオンが除去されロジウムイオンが含まれる濾液が得られたら、この濾液から金属ロジウムを回収する付加工程1を行うことができる。金属ロジウムの回収には、濾液に還元剤を添加してロジウムイオンを金属ロジウムに還元することが好ましい。この目的のために、還元剤として例えば亜鉛粉及び鉄粉などの金属粉、並びに水素化ホウ素ナトリウムなどの無機還元剤などを用いることが好ましく、特に亜鉛粉を用いることが、ロジウムの回収率が高く、また還元物のロジウム純度を高くし得る点から好ましい。
【0022】
濾液への還元剤の添加に先立ち、濾液のpHを調整することが、還元反応を穏やかに進行させる観点、及び還元によって生成した金属ロジウムの再溶解を抑制する観点から好ましい。この目的のために、濾液のpHを-0.2以上2以下に調整することが好ましく、0以上1.5以下に調整することが更に好ましく、0.5以上1以下に調整することが一層好ましい。pHの調整には各種pH調整剤、例えば水酸化ナトリウムなどを用いることができる。
【0023】
このようにして、ロジウムが濃縮された還元物すなわち、金属塊が得られる。この金属塊に対して公知の精製手段を用いてロジウムの純度を高めることが好ましい。
【0024】
<付加工程2>
第3工程において、回収対象液から除去されたハロゲン化第一銅を含む固形分が得られたら、該固形分から銅粉を再生する付加工程2を行うことができる。本工程において得られた銅粉は、第2工程に供給されて、回収対象液に含まれる銅イオンの還元に用いることが、経済性の観点から好ましい。
【0025】
本工程において、ハロゲン化第一銅を含む固形分から銅粉を生成させるには、先ず該固形分と水とを混合して分散液を得る。この分散液における固形分濃度は、経済性及び反応性の観点から、5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、8質量%以上25質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以上15質量%以下であることが一層好ましい。
【0026】
前記分散液が得られたら、該分散液に塩基性物質を添加する。塩基性物質としては、第1族元素の水酸化物又は第二族元素の水酸化物を用いることができる。次に前記分散液のpH調整を行う。これら一連の操作によって、分散液中に含まれるハロゲン化第一銅から、水難溶性物質である水酸化第一銅を生成させる。pHの調整は、好ましくは5以上10以下、更に好ましくは6以上8以下とする。pHの調整には、各種pH調整剤、例えば塩酸などの酸性物質を用いることができる。
【0027】
このようにして得られた水酸化第一銅を固液分離して分散液から回収する。回収された水酸化第一銅には微量のロジウムが含まれている。
固液分離で回収された水酸化第一銅における銅の分配率は、好ましくは80%以上であり、更に好ましくは90%以上であり、一層好ましくは95%以上である。
また、固液分離で回収された水酸化第一銅におけるロジウムの分配率は、好ましくは90%以上であり、更に好ましくは95%以上であり、一層好ましくは99%以上である。
【0028】
回収された水酸化第一銅は、水と混合されて分散液となる。この分散液に還元剤を添加して、水酸化第一銅を還元して金属銅を得る。
水酸化第一銅の還元には公知の還元剤を用いることができる。そのような還元剤としては、例えばヒドラジン及び水素化ホウ素ナトリウムなどの無機還元剤、並びに亜鉛粉及び鉄粉などの金属粉を用いることができる。これらの還元剤のうち、水酸化ナトリウムで安定化された水素化ホウ素ナトリウムを用いることが好ましい。この理由は、水酸化ナトリウムで安定化された水素化ホウ素ナトリウムを用いた還元によって得られた銅粉を、第2工程に付して銅イオンの還元に用いると、銅イオンを効率的に還元させ得るからである。他の還元剤、例えばヒドラジンを用いた還元によって生成した銅粉を第2工程に付して銅イオンの還元に用いると、十分な還元力が発揮されない場合がある。
【0029】
水酸化ナトリウムで安定化された水素化ホウ素ナトリウムとしては、例えば水酸化ナトリウムを40質量%含み、水素化ホウ素ナトリウムを12質量%含む水溶液を用いることができる。そのような水溶液は「VenSil」の商品名で入手可能である。
【0030】
このようにして銅粉が再生される。得られた銅粉は、そのままの状態で、又は粒径を調整した後に、第2工程に供給することができる。
得られた銅粉は、例えばその全量を第2工程に供給することができる。こうすることで、本発明の方法において銅の供給及び消費のバランスを保つことができるので非常に経済的である。尤も、再生された銅粉の全量を第2工程に供給する必要はなく、その一部を別の用途に向けてもよい。また、第2工程に供給される銅粉は、再生された銅粉100%であることを要せず、別途用意した銅粉と再生された銅粉とを混合したものであってもよい。
【0031】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。
例えば付加工程2においては、水酸化第一銅の還元を、2種類以上の還元剤を組み合わせて行うことができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0033】
〔実施例1〕
(1)第1工程
ロジウムイオンを2130mg/L含み、銅イオンを37200mg/L含み、硫酸イオンを221g/L含む回収対象液を準備した。この回収対象液のpHは-0.2(25℃)であった。この回収対象液に塩化ナトリウムを添加した。塩化ナトリウムの添加量は、回収対象液に対して15%(1モルの銅イオンに対して4.4モルのハロゲン化物イオン)とした。
【0034】
(2)第2工程
温度25℃に保たれた回収対象液に銅粉(純度95%以上)を添加した。銅粉の添加量は、回収対象液のORPが230mV(vs.Ag/AgCl)となる量とした。銅粉の粒径D50は12μmであった。銅粉の添加によって、回収対象液は濃い緑色になり、次いで緑色に変化し、最終的には薄い鶯色となった。そして回収対象液中に塩化第一銅の沈殿が生じた。
【0035】
(3)第3工程
回収対象液を濾過して、濾液及び固形分を回収した。濾液中のロジウムイオンの濃度は、ロジウムイオンが1695mg/Lであり、銅イオンが3220mg/Lであった。
濾液及び固形分におけるロジウムの分配率は、濾液が86%であり、固形分が14%であった。また銅の分配率は、濾液が10%であり、固形分が90%であった。
【0036】
(4)付加工程1
第3工程で回収された濾液に、24%水酸化ナトリウム水溶液を添加した。水酸化ナトリウム水溶液の添加量は液のpHが0.5~1になるように調整した。次に、濾液に亜鉛粉を添加した。亜鉛粉の添加量はORPが-300~-200mV(vs.Ag/AgCl)となるように添加した。これによってロジウムが濃縮された還元物を得た。還元物中のロジウムの純度は40%であった。また、銅の含有量は58%であった。
還元物におけるロジウムの分配率は99.8%であり、銅の分配率は98.8%であった。
【0037】
(5)付加工程2
第3工程で回収された固形分と水とを混合して、固形分濃度15%の分散液を調製した。この分散液に48%水酸化ナトリウム水溶液を添加した。水酸化ナトリウム水溶液の添加量は固形分に対して72%とした。更に、36%塩酸を分散液に添加してpHを6~8に調整した。これによって液中に水酸化第一銅が生成した。
生成した水酸化第一銅を濾過によって回収した。回収された水酸化第一銅における銅の分配率は94%であった。ロジウムの分配率は99%以上であった。
回収された水酸化第一銅と水とを混合して分散液を調製した。分散液の固形分濃度は15%であった。この分散液に、水酸化ナトリウムを40質量%含み、水素化ホウ素ナトリウムを12質量%含む水溶液を添加して銅イオンの還元を行い銅粉を得た。
得られた銅粉を濾過によって回収し、回収された銅粉の全量を前記第2工程に供給したところ、銅イオンの還元が生じたことを確認した。
【0038】
〔比較例1〕
実施例1で用いた回収対象液と同じ液を用意した。この回収対象液に亜鉛粉を添加した。亜鉛粉は、ORPが-300~-200mV(vs.Ag/AgCl)となるように添加した。亜鉛粉の添加によって、ロジウムを含む還元物を得た。還元物中のロジウムの純度は5%であった。また、銅の含有量は91%であった。
【要約】
【課題】ロジウムイオン及び銅イオンを含む水溶液からのロジウムの回収を、複雑な工程を経ることなく、高い回収率で達成すること。
【解決手段】ロジウムイオン及び銅イオンを含む水溶液に、水溶性ハロゲン化物を添加する工程と、前記水溶液に銅粉を添加してハロゲン化第一銅を生成させる工程と、前記水溶液からハロゲン化第一銅を除去する工程と、を備える。前記水溶液の酸化還元電位(vs.Ag/AgCl)が0mV以上100mV以下となるような量の前記銅粉を前記水溶液に添加することが好適である。前記ハロゲン化第一銅が除去された前記水溶液に亜鉛粉を添加して、ロジウムが濃縮された還元物を得ることも好適である。
【選択図】なし