(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/21 20060101AFI20240927BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20240927BHJP
A61K 8/20 20060101ALI20240927BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61K8/21
A61K8/55
A61K8/20
A61Q11/00
(21)【出願番号】P 2023082065
(22)【出願日】2023-05-18
(62)【分割の表示】P 2019076997の分割
【原出願日】2019-04-15
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内野 陽介
(72)【発明者】
【氏名】近藤 瑛里
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-112841(JP,A)
【文献】特開2012-232937(JP,A)
【文献】特開2010-215568(JP,A)
【文献】特開2017-105755(JP,A)
【文献】特開2004-224779(JP,A)
【文献】特開平10-298044(JP,A)
【文献】特表平07-502020(JP,A)
【文献】特開2008-074773(JP,A)
【文献】特開2008-156251(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0067169(US,A1)
【文献】特開2017-066036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(D):
(A)フッ化ナトリウム
(B)グリセロリン酸カルシウム
(C)水
(D)塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウム 合計で0.1質量%以上1.5質量%以下
を含有し、
成分(B)の含有量と成分(A)のフッ素原子換算量(A’)との質量比((B)/(A’))が3以上6以下であり、
キシリトールの含有量が1質量%未満であ
るか、或いはキシリトールを含有せず、
縮合リン酸又はその塩の含有量が0.05質量%未満であ
るか、或いは縮合リン酸又はその塩を含有しない口腔用組成物。
【請求項2】
成分(B)の含有量と成分(A)のフッ素原子換算量(A’)との質量比((B)/(A’))が、3以上5.0以下である請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
25℃におけるpHが、5.0以上10.0以下である請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
アニオン界面活性剤の含有量が、1質量%未満であ
るか、或いはアニオン界面活性剤を含有しない請求項1~3のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項5】
成分(A)の含有量が、0.05質量%以上2.5質量%以下である請求項1~4のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項6】
成分(B)の含有量が、0.1質量%以上5質量%以下である請求項1~5のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項7】
成分(A)のフッ素原子換算量(A’)と成分(D)の含有量との質量比((A’)/(D))が、0.05~0.75である請求項1~6のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内においてフッ素イオンを供給して歯表面にてエナメル質に有効に作用させると、ハイドロキシアパタイトの水酸基をフッ素に置換し、フルオロキシアパタイトに変化させて再石灰化を促進することが可能となり、またカルシウムイオンの供給も再石灰化の促進に有効である。そのため、フッ素イオンの供給が可能なフッ化ナトリウムや、カルシウムイオンの供給が可能なグリセロリン酸カルシウムは、ともに従来より種々の口腔用組成物において用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、フッ化ナトリウムとグリセロリン酸カルシウムを併用し、かつ縮合リン酸又はその塩とカチオン性殺菌剤を用いた液体口腔用組成物が開示されており、優れた再石灰化促進効果とう蝕原因菌に対する持続的な殺菌効果との両立を試みている。また、特許文献2には、フッ化ナトリウム等のフッ素イオン供給化合物とグリセロリン酸カルシウムに加え、さらにキシリトールを用いることにより、歯表面へのフッ素イオン取り込み量の効果的な増大を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-66036号公報
【文献】特開2017-105755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、口腔用組成物として良好な使用感を確保しつつ、歯表面へのフッ素イオン取り込み量を有効に増大させようとするにあたり、上記特許文献1のような組成物では、不要にフッ化カルシウムやリン酸カルシウム等が析出してフッ素イオン取り込み量が減じられてしまうおそれがある。一方、上記特許文献2の組成物であっても、キシリトールが歯表面へのフッ素イオン取り込み量の増大に寄与するものの、その含有量によっては甘味が必要以上に増強する等、組成物の風味が大きく左右されて、使用感が低下してしまうおそれがある。
そのため、組成物の使用感を過度に損なうリスクを回避すべく、キシリトールの含有量を減じたとしても、歯表面へのフッ素イオン取り込み量の増大を充分に図ることのできる組成物の実現が望まれている。
【0006】
したがって、本発明は、キシリトールの含有制限により組成物の良好な使用感を確保するなかでも、歯表面へのフッ素イオン取り込み量を充分に増大させることのできる口腔用組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者らは、種々検討したところ、所定の条件下、口腔用組成物にフッ化ナトリウムとグリセロリン酸カルシウムを含有させつつ、さらに塩化ナトリウムや塩化カリウムを特定量で含有させることにより、キシリトールの含有を制限しても、フッ素イオンの取り込み量を有効に増大させることのできる口腔用組成物が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の成分(A)~(D):
(A)フッ化ナトリウム
(B)グリセロリン酸カルシウム
(C)水
(D)塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウム 合計で0.1質量%以上1.5質量%以下
を含有し、
成分(B)の含有量と成分(A)のフッ素原子換算量(A’)との質量比((B)/(A’))が3以上6以下であり、
キシリトールの含有量が1質量%未満であり、縮合リン酸又はその塩の含有量が0.05質量%未満である口腔用組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の口腔用組成物によれば、組成物中にフッ化カルシウムが析出してしまうのを有効に抑制して、フッ素イオンとカルシウムイオンを有効に存在させて、歯表面においてフッ化カルシウムの微細な結晶を形成させることにより、歯表面へのフッ素取り込み量を有効かつ効率的に増大させることができる。したがって、過度な甘味の増強を回避等して良好な使用感を確保しつつ、歯表面においてはフッ素イオンを効果的に作用させ、再石灰化のさらなる促進を有効に図ることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本明細書において、「良好な使用感」とは、本発明の口腔用組成物を口腔内に適用した際、過度な量で存在するキシリトールによって必要以上に甘味が増強したり、或いはその他の成分に起因して塩味や苦味が発現したりすることもなく、自然な違和感のない無味無臭に近似したような風味を保持していることを意味する。
【0011】
本発明の口腔用組成物は、成分(A)として、フッ化ナトリウムを含有する。かかる成分(A)は、口腔内において速やかにフッ素イオンを供給し、後述する成分(D)の介在が寄与することにより、成分(B)のグリセロリン酸カルシウムが供給するカルシウムイオンとともに、歯表面において微結晶のフッ化カルシウムを効果的に形成しつつ、組成物中でのフッ化カルシウムの析出を有効に抑制することができる。そのため、歯表面におけるフッ素取り込み量を効率的かつ顕著に増大させることが可能となる。
【0012】
成分(A)の含有量は、微結晶のフッ化カルシウムを有効に形成させる観点から、発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.15質量%以上であり、よりさらに好ましくは0.2質量%以上である。また成分(A)の含有量は、フッ化カルシウムの析出を有効に抑制して、フッ素取り込み量を有効に増大させる観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは2.5質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.5質量%以下である。そして、成分(A)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.05質量%以上2.5質量%以下であり、より好ましくは0.1~1.5質量%であり、さらに好ましくは0.15~1.0質量%であり、よりさらに好ましくは0.2~0.5質量%である。
【0013】
本発明の口腔用組成物は、成分(B)として、グリセロリン酸カルシウムを含有する。これにより、成分(A)が供給するフッ素イオンとともに、歯表面において微結晶のフッ化カルシウムを良好に形成し、フッ素取り込み量を有効に増大させることができる。
【0014】
成分(B)の含有量は、微結晶のフッ化カルシウムを有効に形成させる観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.15質
量%以上であり、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、よりさらに好ましくは0.25質量%以上であり、よりさらに好ましくは0.3質量%以上であり、よりさらに好ましくは0.35質量%以上である。また成分(B)の含有量は、フッ化カルシウムの析出を有効に抑制して、フッ素取り込み量を有効に増大させる観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下であり、よりさらに好ましくは2質量%以下であり、よりさらに好ましくは1質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.6質量%以下である。そして、成分(B)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.1質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.15~4質量%であり、さらに好ましくは0.2~3質量%であり、よりさらに好ましくは0.25~2質量%であり、よりさらに好ましくは0.3~1質量%であり、よりさらに好ましくは0.35~0.6質量%である。
【0015】
成分(B)の含有量と成分(A)のフッ素原子換算量(A’)との質量比((B)/(A’))は、フッ化カルシウムの析出を抑制しつつ結晶の微細化を図り、歯表面におけるフッ素取り込み量の増大を有効に図る観点から、3以上であって、好ましくは3.5以上であり、より好ましくは4以上である。また成分(B)の含有量と成分(A)のフッ素原子換算量(A’)との質量比((B)/(A’))は、6以下であって、好ましくは5.8以下であり、より好ましくは5.5以下であり、より好ましくは5.0以下である。そして、成分(B)の含有量と成分(A)のフッ素原子換算量(A’)との質量比((B)/(A’))は、3以上6以下であって、好ましくは3.5~5.8であり、より好ましくは4~5.5であり、より好ましくは4~5.0である。
【0016】
本発明の口腔用組成物は、成分(C)として、水を含有する。水の含有量を調節することにより、成分(A)のフッ素イオンと成分(B)のカルシウムイオンの供給を促進しながら、後述する成分(D)の介在によるフッ素取り込み量の増大への寄与を高め、歯表面におけるフッ素取り込み量の増大を有効に図ることができる。
【0017】
成分(C)の含有量は、成分(D)の介在によるフッ素取り込み量の増大への寄与を高める観点、及び成分(A)のフッ素イオンと成分(B)のカルシウムイオンによってフッ化カルシウムの結晶の微細化を有効に図る観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは55質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは65質量%以上であり、よりさらに好ましくは68質量%以上であり、好ましくは99.5質量%以下であり、より好ましくは98質量%以下であり、さらに好ましくは97質量%以下である。そして、成分(C)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは55質量%以上99.5質量%以下であり、より好ましくは60~98質量%であり、さらに好ましくは65~97質量%であり、よりさらに好ましくは68~97質量%である。
【0018】
本発明の口腔用組成物は、成分(D)として、塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムを合計で0.1質量%以上1.5質量%以下含有する。
本来、成分(A)のフッ素イオンと成分(B)のカルシウムイオンとが組成物中において共存すると、互いに強いイオン結合性を示すことから、フッ化カルシウムを形成しやすく、かかる析出物の生成は、歯表面へのフッ素取り込み量が減じられてしまう要因となる。しかしながら、さらに組成物中に電離度の高いかかる成分(D)を特定量で介在させると、詳細なメカニズムについては定かではないものの、フッ素イオンやカルシウムイオンのイオン強度等に影響を及ぼし、フッ化カルシウムの析出を抑制するのに大いに寄与するものと推定される。その結果、フッ素イオンとカルシウムイオンとが効率的に微結晶のフッ化カルシウムと化して歯表面に良好に吸着するため、敢えてキシリトールを用いずとも、歯表面におけるフッ素取り込み量の効果的な増大を図ることが可能になると考えられる。
【0019】
かかる成分(D)として、塩化ナトリウム又は塩化カリウムのいずれか一方を単独で含有していてもよく、双方を含有してもよいが、フッ素吸着量の観点から、塩化ナトリウムが好ましい。
【0020】
成分(D)の含有量は、かかる成分(D)を充分に作用させて、歯表面へのフッ素取り込み量を有効に増大させる観点から、本発明の口腔用組成物中に、合計で0.1質量%以上であって、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.35質量%以上である。また、成分(D)の含有量は、フッ化カルシウムの析出を効果的に抑制する観点から、本発明の口腔用組成物中に、合計で1.5質量%以下であって、好ましくは1.3質量%以下であり、より好ましくは1.2質量%以下である。そして、成分(D)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、合計で0.1質量%以上1.5質量%以下であって、好ましくは0.2~1.3質量%であり、より好ましくは0.35~1.2質量%である。
【0021】
成分(A)のフッ素原子換算量(A’)と成分(D)の含有量との質量比((A’)/(D))は、歯表面におけるフッ素取り込み量の増大を有効に図る観点から、好ましくは0.05~0.75であり、より好ましくは0.06~0.3であり、さらに好ましくは0.07~0.2であり、さらに好ましくは0.08~0.15である。
【0022】
本発明の口腔用組成物は、キシリトールの含有量が1質量%未満である。このように、本発明の口腔用組成物においてキシリトールの含有を制限することにより、組成物の使用感が低下してしまうのを抑制する一方、本発明の口腔用組成物であれば、フッ化カルシウムの微粒子化を促進して歯表面におけるフッ素取り込み量を増大させることのできるキシリトールの代替成分として、特定量の上記成分(D)が主としてその役割を担い、歯表面において、フッ素取り込み量を充分に増大させることができる。
【0023】
キシリトールの含有量は、歯表面へのフッ素取り込み量を充分に確保する観点から、本発明の口腔用組成物中に、1質量%未満であって、好ましくは0.8質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、或いは本発明の口腔用組成物は、キシリトールを実質的に含有しないのが好ましい。
【0024】
本発明の口腔用組成物は、縮合リン酸又はその塩の含有量が0.05質量%未満である。縮合リン酸又はその塩は、本発明の口腔用組成物において、形成されたフッ化カルシウムの微結晶が歯表面へと吸着するのを阻害するおそれがあることが判明したため、本発明の口腔用組成物では、その含有を制限するものである。
【0025】
かかる縮合リン酸としては、具体的には、例えばピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸等の直鎖状のポリリン酸、トリメタリン酸、テトラメタリン酸等の環状のポリリン酸が挙げられ、その塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
【0026】
縮合リン酸又はその塩の含有量は、歯表面へのフッ素取り込み量を充分に確保する観点から、本発明の口腔用組成物中に、0.05質量%未満であって、好ましくは0.03質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以下であり、或いは本発明の口腔用組成物は、縮合リン酸又はその塩を実質的に含有しないのが好ましい。
【0027】
本発明の口腔用組成物は、成分(A)以外のフッ素化合物及び多価金属塩の合計含有量が0.02質量%未満であると好ましい。成分(A)以外のフッ素化合物や多価金属塩が過剰に存在すると、成分(D)が介在するなかでは、成分(A)と成分(B)による微結晶のフッ化カルシウムの形成が阻害されるおそれがあり、歯表面におけるフッ素取り込み量が減じられる要因となり得ることから、本発明の口腔用組成物では、成分(A)以外のフッ素化合物及び多価金属塩の含有を制限することが好ましい。
【0028】
成分(A)以外のフッ素化合物としては、具体的には、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化アンモニウム等のフッ素イオン供給化合物、及びモノフルオロリン酸ナトリウム等の含フッ素化合物である、フッ素化合物が挙げられる。また、多価金属塩としては、具体的には、銅、鉄、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、及び錫から選ばれる1種又は2種以上の塩が挙げられる。これら成分(A)以外のフッ素化合物及び多価金属塩の合計含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.02質量%未満であり、より好ましくは0.015質量%以下であり、さらに好ましくは0.005質量%以下であり、或いは本発明の口腔用組成物は、成分(A)以外のフッ素化合物及び多価金属塩を含有しないのが好ましい。
【0029】
本発明の口腔用組成物は、成分(D)が介在するなか、成分(A)と成分(B)により有効かつ効率的に微結晶のフッ化カルシウムを形成させて、歯表面におけるフッ素取り込み量の増大を一層高める観点から、アニオン界面活性剤の含有を制限するのが好ましい。かかるアニオン界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム等が挙げられる。アニオン界面活性剤の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、同様の理由で、好ましくは1質量%未満であり、より好ましくは0.6質量%未満であり、さらに好ましくは0.4質量%未満であり、よりさらに好ましくは0.2質量%未満であり、よりさらに好ましくは0.08質量%未満であり、或いは本発明の口腔用組成物は、アニオン界面活性剤を実質的に含有しないのが好ましい。
【0030】
本発明の口腔用組成物は、研磨剤を含有しないか、或いは、成分(A)以外のフッ素化合物及び多価金属塩の合計含有量の制限内において、研磨剤を含有することができる。かかる研磨剤としては、研磨性シリカ(吸油量50~150mL/100g、JISK5101-13-2(2004年制定)により、吸収される煮あまに油の量による)、第2リン酸カルシウム・2水和物及び無水物、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、酢酸マグネシウム、第2リン酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライト等の研磨剤等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0031】
本発明の口腔用組成物は、上記成分の他、本発明の効果を阻害しない範囲で、カチオン界面活性剤やヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油やショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤等である界面活性剤;グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール;ソルビトール、ラクトール、エリスリトール等の糖アルコール;アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ペクチン、トラガントガム、アラビアガム、及びグアーガム等の粘結剤;増粘性シリカ;サッカリンナトリウム等の甘味剤;香料;色素;薬効成分を適宜含有することができる。
【0032】
本発明の口腔用組成物の25℃におけるpHは、成分(D)が介在するなか、成分(A)と成分(B)により有効かつ効率的に微結晶のフッ化カルシウムを形成させて、歯表面におけるフッ素取り込み量の増大を一層高める観点から、好ましくは5.0以上であり、より好ましくは6.0以上であり、さらに好ましくは6.5以上である。また本発明の口腔用組成物の25℃におけるpHは、組成物の変色等を回避する観点から、好ましくは10.0以下であり、より好ましくは9.6以下であり、さらに好ましくは9.3以下であり、さらに好ましくは9.0以下である。
なお、本発明の口腔用組成物のpHは、pH電極を用いて25℃で測定した値であり、本発明の口腔用組成物が液体口腔用組成物である場合には、組成物を希釈せずに測定した
値を意味し、本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合には、イオン交換水又は蒸留水からなる精製水により10質量%の濃度の水溶液に調整した後に測定した値を意味する。
【0033】
本発明の口腔用組成物の形態としては、練歯磨剤や粉歯磨剤等の歯磨組成物、或いは洗口液や液状歯磨剤等の液体口腔用組成物等が挙げられる。なかでも、本発明のもたらす効果を歯茎又は口腔内粘膜へ充分に行き渡らせる観点から、液体口腔用組成物であるのが好ましい。口腔内への適用方法は、塗布、歯ブラシによるブラッシング、又は含嗽のいずれであってもよい。
また、本発明の口腔用組成物の製造方法は、特に制限されず、成分(A)~(D)について上記含有量と同様の量を配合し、さらに必要に応じてその他の成分を配合すればよく、次いで常法によりこれらを適宜混合すればよい。
【実施例】
【0034】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0035】
[実施例1~4、比較例1~5]
表1に示す処方にしたがって、各口腔用組成物を製造した。得られた口腔用組成物を用い、下記方法にしたがって測定及び評価を行った。
結果を表1に示す。
【0036】
《pHの測定》
各液体口腔用組成物20mlを希釈せずに、pH/ION METER F53(HORIBA社製)を用いてpHを測定した。
【0037】
《フッ素吸着量の測定》
ハイドロキシアパタイト粉末(BIO-RAD社製Bio-Gel HTP hydroxyapatite)10mgに各口腔用組成物1mlを2分間作用させた後、遠心分離にて上澄み溶液を廃液した。さらにハイドロキシアパタイト粉末を水で3回すすぎ洗浄し、自然乾燥させた。次いで、ハイドロキシアパタイト粉末を1N塩酸1mlで1分間処理して溶解させ、さらに中和処理した後、ハイドロキシアパタイト粉末に吸着したフッ素量をフッ素イオン電極(ionplus-Fluoride(ORION社製))を用い、イオンアナライザー(Expandable ionAnalyzer EA940(ORION社製))により定量(mg/gHAP)した。
【0038】
《味の評価》
実施例1~4の各口腔用組成物をパネラーの口に含ませたところ、すべて過度に甘味が増強したり、或いはその他の成分に起因して塩味や苦味が発現したりすることがないことが確認された。
【0039】
【0040】
[処方例1~3]
表2に示す処方にしたがって、本発明の口腔用組成物を製造した。
【0041】