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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】抵抗溶接機及び抵抗溶接機の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/25 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B23K11/25
B23K11/25 515
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023109217
(22)【出願日】2023-07-03
【審査請求日】2024-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】阿部 正行
(72)【発明者】
【氏名】矢野 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】澤井 康男
(72)【発明者】
【氏名】福田 純平
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-20358(JP,A)
【文献】米国特許第4894508(US,A)
【文献】特開2014-140890(JP,A)
【文献】特開2015-199090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/00 - 11/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接対象の母材を挟む第1及び第2の電極と、
前記第1及び第2の電極によって挟まれた前記母材を加圧するよう、前記第1及び第2の電極間を加圧する加圧装置と、
前記第1及び第2の電極間に通電する電源部と、
前記第1の電極の温度を計測する放射温度計と、
前記母材を溶接するときに前記第1及び第2の電極間に流す電流値及び通電時間と、前記通電時間内における前記第1の電極の制限温度とを通電条件として、予め設定されている第1の通電条件に従って前記母材を溶接しているとき、前記通電時間内に前記放射温度計が計測する前記第1の電極の温度が前記制限温度に達しなければ、前記第1及び第2の電極間に前記通電時間だけ前記電流値の電流を流すよう前記電源部を制御し、前記通電時間内に前記放射温度計が計測する前記第1の電極の温度が前記制限温度に達すれば、前記制限温度に達した時点で、前記第1の通電条件に続く第2の通電条件が設定されていれば前記第2の通電条件に従った溶接へと移行させ、前記第2の通電条件が設定されていなければ、通電を停止するよう前記電源部を制御する制御部と、
を備える抵抗溶接機。
【請求項2】
前記制御部は、前記放射温度計が計測する前記第1の電極の温度にエラーが発生したと判定すると、前記第1及び第2の電極間の通電を停止するよう前記電源部を制御し、かつ、前記第1及び第2の電極間の加圧を解除するよう前記加圧装置を制御する請求項1に記載の抵抗溶接機。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1及び第2の電極間の通電を開始した後に所定の初期時間が経過した時点で、前記第1の電極の温度が最低初期温度に達していなければ、前記第1の電極の温度にエラーが発生したと判定する請求項2に記載の抵抗溶接機。
【請求項4】
溶接対象の母材を第1の電極と第2の電極とによって挟み、
加圧装置によって前記第1及び第2の電極間を加圧することにより、前記第1及び第2の電極によって挟まれた前記母材を加圧し、
前記母材を溶接するときに前記第1及び第2の電極間に流す電流値及び通電時間と、前記通電時間内における前記第1の電極の制限温度とを通電条件として、予め設定されている第1の通電条件に従って前記母材の溶接を開始し、
放射温度計によって前記第1の電極の温度を計測し、
前記第1の通電条件で設定されている前記通電時間内に、前記放射温度計が計測する前記第1の電極の温度が前記第1の通電条件で設定されている前記制限温度に達したか否かを判定し、
前記第1の電極の温度が前記制限温度に達しなければ、前記第1及び第2の電極間に前記通電時間だけ、前記第1の通電条件で設定されている前記電流値の電流を流すよう電源部を制御し、
前記第1の電極の温度が前記制限温度に達すれば、前記第1の電極の温度が前記制限温度に達した時点で、前記第1の通電条件に続く第2の通電条件が設定されていれば前記第2の通電条件に従った溶接へと移行させ、前記第2の通電条件が設定されていなければ、通電を停止するよう前記電源部を制御する
抵抗溶接機の制御方法。
【請求項5】
前記放射温度計が計測する前記第1の電極の温度にエラーが発生したと判定すると、前記第1及び第2の電極間の通電を停止するよう前記電源部を制御し、かつ、前記第1及び第2の電極間の加圧を解除するよう前記加圧装置を制御する請求項4に記載の抵抗溶接機の制御方法。
【請求項6】
前記第1及び第2の電極間の通電を開始した後に所定の初期時間が経過した時点で、前記第1の電極の温度が最低初期温度に達していなければ、前記第1の電極の温度にエラーが発生したと判定する請求項5に記載の抵抗溶接機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗溶接機及び抵抗溶接機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているような、複数の素線よりなる電線等の母材に電極を接触させて加圧力をえ、母材に電流を流すことで発生する抵抗発熱を利用して母材を接合する抵抗溶接機が普及している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-49980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
抵抗溶接機によって母材を接合するとき、電極の過熱によって母材または電極が破損することを防止することが必要である。特に、抵抗溶接機によって複数の母材を順次接合すると電極の過熱が発生しやすい。母材または電極が破損することを防止することができる抵抗溶接機及び抵抗溶接機の制御方法の登場が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1またはそれ以上の実施形態の第1の態様は、溶接対象の母材を挟む第1及び第2の電極と、前記第1及び第2の電極によって挟まれた前記母材を加圧するよう、前記第1及び第2の電極間を加圧する加圧装置と、前記第1及び第2の電極間に通電する電源部と、前記第1の電極の温度を計測する放射温度計と、前記母材を溶接するときに前記第1及び第2の電極間に流す電流値及び通電時間と、前記通電時間内における前記第1の電極の制限温度とを通電条件として、予め設定されている第1の通電条件に従って前記母材を溶接しているとき、前記通電時間内に前記放射温度計が計測する前記第1の電極の温度が前記制限温度に達しなければ、前記第1及び第2の電極間に前記通電時間だけ前記電流値の電流を流すよう前記電源部を制御し、前記通電時間内に前記放射温度計が計測する前記第1の電極の温度が前記制限温度に達すれば、前記制限温度に達した時点で、前記第1の通電条件に続く第2の通電条件が設定されていれば前記第2の通電条件に従った溶接へと移行させ、前記第2の通電条件が設定されていなければ、通電を停止するよう前記電源部を制御する制御部とを備える抵抗溶接機を提供する。
【0006】
1またはそれ以上の実施形態の第2の態様は、溶接対象の母材を第1の電極と第2の電極とによって挟み、加圧装置によって前記第1及び第2の電極間を加圧することにより、前記第1及び第2の電極によって挟まれた前記母材を加圧し、前記母材を溶接するときに前記第1及び第2の電極間に流す電流値及び通電時間と、前記通電時間内における前記第1の電極の制限温度とを通電条件として、予め設定されている第1の通電条件に従って前記母材の溶接を開始し、放射温度計によって前記第1の電極の温度を計測し、前記第1の通電条件で設定されている前記通電時間内に、前記放射温度計が計測する前記第1の電極の温度が前記第1の通電条件で設定されている前記制限温度に達したか否かを判定し、前記第1の電極の温度が前記制限温度に達しなければ、前記第1及び第2の電極間に前記通電時間だけ、前記第1の通電条件で設定されている前記電流値の電流を流すよう電源部を制御し、前記第1の電極の温度が前記制限温度に達すれば、前記第1の電極の温度が前記制限温度に達した時点で、前記第1の通電条件に続く第2の通電条件が設定されていれば前記第2の通電条件に従った溶接へと移行させ、前記第2の通電条件が設定されていなければ、通電を停止するよう前記電源部を制御する抵抗溶接機の制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
1またはそれ以上の実施形態に係る抵抗溶接機及び抵抗溶接機の制御方法によれば、母材または電極が破損することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、1またはそれ以上の実施形態に係る抵抗溶接機を示すブロック図である。
図2図2は、1またはそれ以上の実施形態に係る抵抗溶接機が、スキップ機能が選択された1つの通電条件に従ってワークを溶接するときの電流値及び電極の温度の変化の一例であり、設定されている通電時間内に電極の温度が制限温度に達しない場合を示す特性図である。
図3図3は、1またはそれ以上の実施形態に係る抵抗溶接機が、スキップ機能が選択された1つの通電条件に従ってワークを溶接するときの電流値及び電極の温度の変化の一例であり、設定されている通電時間内に電極の温度が制限温度に達した場合を示す特性図である。
図4図4は、1またはそれ以上の実施形態に係る抵抗溶接機が、スキップ機能が選択された2つの通電条件に従ってワークを溶接するときの電流値及び電極の温度の変化の一例であり、設定されている通電時間内に電極の温度が制限温度に達しない場合を示す特性図である。
図5図5は、1またはそれ以上の実施形態に係る抵抗溶接機が、スキップ機能が選択された2つの通電条件に従ってワークを溶接するときの電流値及び電極の温度の変化の一例であり、設定されている通電時間内に電極の温度が制限温度に達した場合を示す特性図である。
図6図6は、スキップ機能が選択された2つの通電条件に従ってワークを溶接する場合を例として、1またはそれ以上の実施形態に係る抵抗溶接機の動作、または1またはそれ以上の実施形態に係る抵抗溶接機の制御方法を示すフローチャートである。
図7図7は、抵抗溶接機が、キープ機能が選択された3つの通電条件に従ってワークを溶接する場合において、3つの通電条件における目標設定温度を達成するための電流値の第1の制御方法を示す特性図である。
図8図8は、抵抗溶接機が、キープ機能が選択された3つの通電条件に従ってワークを溶接する場合において、3つの通電条件における目標設定温度を達成するための電流値の第2の制御方法を示す特性図である。
図9図9は、1またはそれ以上の実施形態に係る抵抗溶接機が、スキップ機能が選択された通電条件とキープ機能が選択された通電条件に従ってワークを溶接するときの電流値及び電極の温度の変化の一例を示す特性図である。
図10図10は、図4と同様の通電条件が設定されているときに、1またはそれ以上の実施形態に係る抵抗溶接機が、電極の温度にエラーが発生したと判定して通電を停止させた場合を示す特性図である。
図11図11は、図6に示すフローチャートに付加することが好ましい、1またはそれ以上の実施形態に係る抵抗溶接機の動作、または1またはそれ以上の実施形態に係る抵抗溶接機の制御方法を示す部分的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、1またはそれ以上の実施形態に係る抵抗溶接機及び抵抗溶接機の制御方法について、添付図面を参照して説明する。
【0010】
図1において、抵抗溶接機100は、制御部10、操作部11、電源部20、電極41(第1の電極)、電極42(第2の電極)、加圧装置50、放射温度計60、測定器70を備える。電極41と電極42との間には、溶接対象の母材の一例として、複数の素線よりなる電線30が円筒状の圧着端子31に挿入されたワークWが配置されている。電極42はベース43によって支持されている。電源部20と電極41とは導通路21で接続され、電源部20と電極42とは導通路22で接続されている。制御部10は、マイクロプロセッサで構成することができる。電源部20は、トランスを備える電源回路で構成することができる。
【0011】
加圧装置50は、例えばエアシリンダによって電極41に対して加圧する。電極42がベース43によって支持されているから、加圧装置50が電極41に対して加圧することと、電極41及び42によって挟まれたワークWを加圧するよう、電極41及び42間を加圧することができる。
【0012】
図1に示す例では、電極41を正極、電極42を負極として、電源部20は電極41と電極42との間に直流電流を流すように構成されている。電極41を負極、電極42を正極としてもよい。電源部20は、電極41と電極42との間に交流電流を流すように構成されていてもよい。導通路22にはトロイダルコイルよりなる電流センサ44が取り付けられている。導通路21に電流センサ44が取り付けられていてもよい。電流センサ44が検出する電流値は測定器70に供給される。電極41及び電極42と測定器70とがツイスト線またはビニル電線で接続されて、測定器70に電極41と電極42との間の電圧値が供給される。
【0013】
放射温度計60は、電極41から放射される赤外線の強度を測定することにより、電極41の温度を計測する。放射温度計60は、電極41の温度を示すアナログ温度データを制御部10に供給する。制御部10は、入力されたアナログ温度データをそのまま測定器70に供給する。加圧装置50には、荷重を電気信号に変換するロードセルと、変位量を測定する変位量センサが搭載されている。加圧装置50は、ロードセルによって電気信号に変換された加圧力を示すアナログ値を測定器70に供給する。加圧装置50は、変位量センサが測定した変位量を示すデジタル値を測定器70に供給する。
【0014】
測定器70は、入力された電流値、電圧値、アナログ温度データ、加圧力を示すアナログ値、変位量を示すデジタル値を処理して、ワークWの溶接時にこれらの情報をモニタリングするために、測定器70が備える表示部に表示することができる。測定器70は、加圧力が設定値に達したり、変位量が設定値に達したりすると、制御部10に対して溶接の停止を指示する。制御部10は、溶接の停止が指示されると、電極41と電極42との間の通電を停止するよう電源部20を制御し、加圧装置50による加圧を解除する。
【0015】
ユーザは、操作部11によって、制御部10に、ワークWを溶接するときの電流値、通電時間、制限温度または目標設定温度よりなる通電条件を設定する。制御部10に制限温度が設定されており、予め設定した通電時間内に電極41の温度が制限温度に達したとする。このとき、制御部10は、予め設定した通電時間だけ電極41と電極42との間に通電するよう電源部20を制御するのではなく、電極41の温度が制限温度に達した時点で、その通電条件での通電を切り上げるように構成されている。この通電を切り上げる機能をスキップ機能と称することとする。制御部10に目標設定温度が設定されているとき、制御部10は、通電時間内の電極41の温度を目標設定温度に維持するように電源部20を制御するように構成されている。この電極41の温度を目標設定温度に維持する機能をキープ機能と称することとする。
【0016】
ユーザは、各通電条件において、スキップ機能を働かせるかキープ機能を働かせるかを選択することができる。制御部10は、制限温度が設定されればスキップ機能を働かせ、目標設定温度が設定されればキープ機能を働かせる。
【0017】
まず、ユーザが、各通電条件においてスキップ機能を働かせるように設定している場合を説明する。図2は、時刻t0から時刻t1までの期間#1において1つの通電条件(第1の通電条件)を設定してワークWを溶接し、その後の期間#2において通電を停止する場合の一例を示している。期間#1においてスキップ機能を働かせるよう設定されている。図2に示す通電条件は、電流値をCv1(第1の値)、時刻t0から時刻t1までの通電時間をTL1、制限温度をTp1としている。通電時間TL1は、時刻t0から時刻t01までの電流値を0からCv1まで線形的に逓増させるアップスロープの時間と、時刻t01から時刻t1までの電流値をCv1の一定値とする時間とを含む。
【0018】
通電時間TL1の最初にアップスロープの時間を設けることは必須ではなく、時刻t0から電流値Cv1の電流を流してもよい。但し、通電時間TL1の最初にアップスロープの時間を設けると、ワークWが緩やかに加熱されて電極41及び42とワークWとの間の接触状態を安定させることができる。
【0019】
制御部10は、ワークWを加圧するよう加圧装置50を制御し、放射温度計60から供給されるアナログ温度データによって電極41の温度を監視しながら、図2に示す通電条件に従って電極41と電極42との間に通電するよう電源部20を制御する。図2は、通電時間TL1内に電極41の温度が制限温度Tp1に達しない場合を示している。電極41の温度は通電の継続に伴って逓増するものの、時刻t1の時点で制限温度Tp1に達していない。制御部10は、通電時間TL1の通電の後、時刻t1から時刻t3までのダウンスロープで電流値をCv1から0まで線形的に逓減させて通電を停止させる。電極41の温度は時刻t1を過ぎて非線形的に逓減する。
【0020】
図3は、制御部10に図2と同じ通電条件を設定して、制御部10がワークWを溶接するよう図2と同様に電極41と電極42との間に通電したときに、予め設定されていた通電時間TL1内に電極41の温度が制限温度Tp1に達した場合を示している。
【0021】
図3に示すように、時刻t02で電極41の温度が制限温度Tp1に達している。例えば放射温度計60が適切な位置からずれていると電極41の温度を正確に測定できず電極41の温度が上昇することがある。このとき、制御部10は、通電時間TL1だけ通電するのではなく、電極41の温度が制限温度Tp1に達した時刻t02から時刻t23までのダウンスロープで電流値をCv1から0まで線形的に逓減させて通電を停止させる。制御部10が図3に示すように通電を制御することにより、通電時間はTL1よりも短いTL10とされる。時刻t02から時刻t23までのダウンスロープの傾きは、予め設定されていた時刻t1から時刻t3までのダウンスロープの傾きと同じである。
【0022】
このように、制御部10は、通電時間TL1内に電極41の温度が制限温度Tp1に達すると、制限温度Tp1に達した時点である時刻t02以降、電流値をCv1から0まで逓減させるので、ワークWまたは電極41及び42が破損することを防止することができる。
【0023】
図4は、2つの通電条件を設定してワークWを溶接して、その後通電を停止する場合の一例を示している。図4は、時刻t0から時刻t1までの期間#1において最初の通電条件(第1の通電条件)を設定し、時刻t1から時刻t2までの期間#2において第1の通電条件に続く2つ目の通電条件(第2の通電条件)を設定してワークWを溶接し、その後の期間#3において通電を停止する場合の一例を示している。期間#1及び#2においてスキップ機能を働かせるよう設定されている。
【0024】
第1の通電条件では、電流値をCv1(第1の値)、時刻t0から時刻t1までの通電時間をTL1、制限温度をTp1(第1の制限温度Tp1)としている。第2の通電条件では、電流値をCv1より大きいCv2(第2の値)、時刻t1から時刻t2までの通電時間をTL2、制限温度をTp1よりも高いTp2(第2の制限温度Tp2)としている。通電時間TL1と通電時間TL2とは同じ時間であってもよいし、異なる時間であってもよい。
【0025】
通電時間TL1は、時刻t0から時刻t01までの電流値を0からCv1まで線形的に逓増させるアップスロープの時間と、時刻t01から時刻t1までの電流値をCv1の一定値とする時間とを含む。なお、図4における電流値Cv1は、図2及び図3における電流値Cv1と同じでなくてよい。例えば、図4における電流値Cv1を、図2及び図3における電流値Cv1より小さな値としてよい。通電時間TL2は、時刻t1から時刻t2までの電流値をCv2の一定値とする時間よりなる。
【0026】
制御部10は、ワークWを加圧するよう加圧装置50を制御し、放射温度計60から供給されるアナログ温度データによって電極41の温度を監視しながら、図4に示す通電条件に従って電極41と電極42との間に通電するよう電源部20を制御する。図4は、通電時間TL1内に電極41の温度が第1の制限温度Tp1に達せず、通電時間TL2内に電極41の温度が第2の制限温度Tp2に達しない場合を示している。制御部10は、電流値Cv2の通電時間TL2の通電の後、時刻t2から時刻t3までのダウンスロープで電流値をCv2から0まで線形的に逓減させて通電を停止する。電極41の温度は時刻t2を過ぎて非線形的に逓減する。
【0027】
図5は、制御部10に図4と同じ通電条件を設定して、制御部10がワークWを溶接するよう図4と同様に電極41と電極42との間に通電したときに、予め設定されていた通電時間TL1内に電極41の温度が第1の制限温度Tp1に達し、さらに、予め設定されていた通電時間TL2内に電極41の温度が第2の制限温度Tp2に達した場合を示している。
【0028】
図5に示すように、時刻t02で電極41の温度が第1の制限温度Tp1に達している。このとき、制御部10は、第1の通電条件で通電時間TL1だけ通電するのではなく、電極41の温度が第1の制限温度Tp1に達した時刻t02から即座に第2の通電条件による通電へと移行させる。通電時間TL1は、時刻t0から時刻t01までのアップスロープの時間と時刻t01から時刻t02までの電流値をCv1の一定値とする時間とよりなる通電時間TL10に短縮される。
【0029】
第2の通電条件による通電へと移行した後、時刻t12で電極41の温度が第2の制限温度Tp2に達している。このとき、制御部10は、時刻t02から通電時間TL2だけ通電するのではなく、電極41の温度が第2の制限温度Tp2に達した時刻t12から時刻t23までのダウンスロープで電流値をCv2から0まで線形的に逓減させて通電を停止する。制御部10が図5に示すように通電を制御することにより、第2の通電条件による通電へと移行した後の通電時間はTL2よりも短いTL20に短縮される。時刻t12から時刻t23までのダウンスロープの傾きは、予め設定されていた時刻t2から時刻t3までのダウンスロープの傾きと同じである。
【0030】
このように、制御部10は、第1の通電条件での通電において、通電時間TL1内に電極41の温度が第1の制限温度Tp1に達すると、第1の制限温度Tp1に達した時点である時刻t02で即座に第2の通電条件による通電へと移行させるので、ワークWまたは電極41及び42が破損することを防止することができる。さらに、制御部10は、第2の通電条件での通電において、通電時間TL2内に電極41の温度が第2の制限温度Tp2に達すると、第2の制限温度Tp2に達した時点である時刻t12以降、電流値をCv2から0まで逓減させるので、ワークWまたは電極41及び42が破損することを防止することができる。
【0031】
図示しないが、第1の通電条件での通電で通電時間TL1内に電極41の温度が第1の制限温度Tp1に達し、第2の通電条件での通電で通電時間TL2内に電極41の温度が第2の制限温度Tp2に達しないことがある。この場合は、図5における時刻t0から時刻t02までの通電時間TL10の通電と、電流値Cv2での時刻t02から通電時間TL2の通電とが組み合わせられる。
【0032】
また、第1の通電条件での通電で通電時間TL1内に電極41の温度が第1の制限温度Tp1に達せず、第2の通電条件での通電で通電時間TL2内に電極41の温度が第2の制限温度Tp2に達することがある。この場合は、図4における時刻t0から時刻t1までの通電時間TL1の通電と、図5における時刻t02から時刻t12までの通電時間TL20の通電と同様の通電とが組み合わせられる。
【0033】
図示しないが、制御部10は、3つまたはそれ以上の通電条件を設定してワークWを溶接して、その後通電を停止するように電源部20を制御してもよい。
【0034】
図6に示すフローチャートを用いて、ユーザが各通電条件においてスキップ機能を選択し、2つの通電条件を設定してワークWを溶接する場合を例として、抵抗溶接機100の動作、または抵抗溶接機100が実行する制御方法を説明する。図6において、処理が開始されると、制御部10は、ステップS1にて、抵抗溶接機100を初期化して、加圧装置50による加圧力、第1及び第2の通電条件を設定する。制御部10は、ステップS2にて、設定した加圧力でワークWを加圧するよう加圧装置50を制御する。制御部10は、ステップS3にて、第1の通電条件で電極41と電極42との間に通電するよう電源部20を制御する。
【0035】
制御部10は、ステップS4にて、電極41の温度を監視して、ステップS5にて、電極41の温度が第1の制限温度Tp1まで上昇したか否かを判定する。電極41の温度が第1の制限温度Tp1まで上昇しなければ(NO)、制御部10は、ステップS6にて、第1の通電時間TL1が経過したか否かを判定する。第1の通電時間TL1が経過しなければ(NO)、制御部10は、ステップS5及びS6の処理を繰り返す。ステップS5にて電極41の温度が第1の制限温度Tp1まで上昇すれば(YES)、またはステップS6にて第1の通電時間TL1が経過すれば(YES)、制御部10は、ステップS7にて、第2の通電条件で電極41と電極42との間に通電するよう電源部20を制御する。
【0036】
ステップS7に続けて、制御部10は、ステップS8にて、電極41の温度を監視して、ステップS9にて、電極41の温度が第2の制限温度Tp2まで上昇したか否かを判定する。電極41の温度が第2の制限温度Tp2まで上昇しなければ(NO)、制御部10は、ステップS10にて、第2の通電時間TL2が経過したか否かを判定する。第2の通電時間TL2が経過しなければ(NO)、制御部10は、ステップS9及びS10の処理を繰り返す。ステップS9にて電極41の温度が第2の制限温度Tp2まで上昇すれば(YES)、またはステップS10にて第2の通電時間TL2が経過すれば(YES)、制御部10は、ステップS11にて、電極41と電極42との間に流す電流値を低減させて通電を停止させる。
【0037】
制御部10は、ステップS12にて、ワークWの加圧を解除するよう加圧装置50を制御する。制御部10は、ステップS13にて、ワークWを溶接しているときの監視結果を出力させるよう測定器70を制御する。監視結果の出力とは、例えば測定器70が備える表示部に監視結果を表示することである。
【0038】
次に、ユーザが、各通電条件においてキープ機能を働かせるように設定している場合を説明する。図7は、ユーザが各通電条件においてキープ機能を選択し、期間#1~#3で3つの通電条件を設定してワークWを溶接する場合において、3つの通電条件における目標設定温度Tp11、Tp12、Tp13を達成するための電流値の第1の制御方法を示している。目標設定温度Tp11は第1の制限温度Tp1より低い温度であり、目標設定温度Tp12は第2の制限温度Tp2より低い温度である。目標設定温度Tp13は、電流値Cv2より大きい電流値を設定する3つ目の通電条件で設定される第3の制限温度より低い温度である。
【0039】
図7に示すように、制御部10は、電流値を間欠的に0%まで低減させ、電流値を0%とする時間を調整することによって、3つの通電条件における電極41の温度がほぼ目標設定温度Tp11、Tp12、Tp13となるように電源部20を制御する。
【0040】
図8に示すように、制御部10は、電流値を間欠的に50%まで低減させ、電流値を50%とする時間を調整することによって、3つの通電条件における電極41の温度がほぼ目標設定温度Tp11、Tp12、Tp13となるように電源部20を制御してもよい。電流値の低減量は50%に限定されることはなく、0%を超え、100%未満の任意の低減量でよい。
【0041】
ユーザは、ある通電条件においてスキップ機能を働かせるように設定し、他の通電条件においてキープ機能を働かせるように設定してもよい。図9は、2つの通電条件を設定してワークWを溶接して、その後通電を停止する場合の一例を示している。
【0042】
図9においては、時刻t0から時刻t1までの期間#1において、スキップ機能を働かせるよう設定された第1の通電条件が設定され、時刻t1から時刻t2までの期間#2において、キープ機能を働かせるように設定された第2の通電条件が設定されている。図9においては、期間#3においてダウンスロープを設けることなく通電を即座に停止するように設定されている。
【0043】
図9は、図5と同様に、通電時間TL1内に電極41の温度が第1の制限温度Tp1に達した場合を示している。制御部10は、電極41の温度が第1の制限温度Tp1に達した時刻t02から即座に第2の通電条件による通電へと移行させる。制御部10は、期間#2において、電極41の温度を目標設定温度Tp12に維持するように電流値を制御する。
【0044】
このように、スキップ機能とキープ機能とは各通電条件において任意に選択可能である。
【0045】
何らかの理由で、通電開始後に放射温度計60が計測する電極41の温度が所定時間経過しても高くならないことがある。制御部10は、入力されるアナログ温度データに基づいて電極41の温度を監視することにより、放射温度計60が電極41の温度を正しく計測していないと想定されるとき、計測温度にエラーが発生したと判定することが好ましい。
【0046】
図10に示すように、図4と同様の通電条件が設定されている場合を例とする。制御部10には、通電開始の時刻t0から所定の初期時間TLiが経過した時点で最低初期温度Tpiが設定されている。制御部10は、初期時間TLiが経過した時点でアナログ温度データが示す電極41の温度が最低初期温度Tpiに達していなければ、電極41の温度にエラーが発生したと判定する。放射温度計60が電極41の温度を正しく計測していない可能性があるから、図10に示す初期時間TLiが経過した時点での温度は、電極41の実際の温度を正しく示していないことがある。
【0047】
そこで、制御部10は、電極41の温度にエラーが発生したと判定すると、電極41と電極42との間の通電を即座に停止するよう電源部20を制御する。さらに、制御部10は、ワークWの加圧を即座に解除するよう加圧装置50を制御する。これによって、ワークWと電極41及び42の焼損を防ぐことができる。さらに、制御部10は、電極41の温度が異常に高温となったときにエラーが発生したと判定して、電極41と電極42との間の通電を停止し、ワークWの加圧を解除するよう、電源部20及び加圧装置50を制御してもよい。
【0048】
図11に示すように、図6に示すフローチャートに、ステップS21及びS22を設けることが好ましい。図11において、制御部10は、図6のステップS4に続けて、ステップS21にて、初期時間TLiに電極41の温度が最低初期温度Tpi以上に上昇したか否かを判定する。初期時間TLiに電極41の温度が最低初期温度Tpi以上に上昇すれば(YES)、制御部10は処理を図6のステップS5に移行させる。初期時間TLiに電極41の温度が最低初期温度Tpi以上に上昇しなければ(NO)、制御部10は、ステップS22にて、電極41と電極42との間の通電及びワークWの加圧を緊急停止させて、処理を終了させる。
【0049】
本発明は以上説明した1またはそれ以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 制御部
11 操作部
20 電源部
21,22 導通路
41 電極(第1の電極)
42 電極(第2の電極)
43 ベース
44 電流センサ
50 加圧装置
60 放射温度計
70 測定器
【要約】
【課題】母材または電極が破損することを防止することができる抵抗溶接機を提供する。
【解決手段】溶接対象の母材であるワークWを溶接するときに第1の電極41及び第2の電極42間に流す電流値及び通電時間と、通電時間内における第1の電極41の制限温度とを通電条件とする。制御部10は、予め設定されている第1の通電条件に従ってワークWを溶接しているとき、通電時間内に放射温度計60が計測する第1の電極41の温度が制限温度に達しなければ、第1の電極41及び第2の電極42間に通電時間だけ設定されている電流値の電流を流すよう電源部20を制御する。制御部10は、第1の電極41の温度が制限温度に達すれば、制限温度に達した時点で、第1の通電条件に続く第2の通電条件が設定されていれば第2の通電条件に従った溶接へと移行させ、第2の通電条件が設定されていなければ、通電を停止するよう電源部20を制御する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11