(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】放射線撮像装置および放射線撮像システム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/42 20240101AFI20240927BHJP
A61B 6/00 20240101ALI20240927BHJP
【FI】
A61B6/42 500S
A61B6/00 520Z
(21)【出願番号】P 2023118512
(22)【出願日】2023-07-20
(62)【分割の表示】P 2019093913の分割
【原出願日】2019-05-17
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 英之
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-086544(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0079610(US,A1)
【文献】特開2012-024231(JP,A)
【文献】特開2017-127444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素と、前記複数の画素を行単位で駆動するための複数の行信号線が接続された駆動回路と、前記駆動回路を制御するための制御部と、を含む放射線撮像装置であって、
放射線の照射前に、前記制御部は、前記複数の画素のうち放射線の照射中に入射した放射線の線量を計測するための検出画素を設定するために前記駆動回路に選択信号を供給し、前記駆動回路は、前記選択信号に応じ
た動作
を行うことによって、前記複数の行信号線のうち前記検出画素が接続された行信号線を選択した状態になり、
放射線の照射中に、前記制御部は、前記駆動回路に駆動信号を供給し、前記駆動回路は、前記駆動信号に応じて
、前記複数の行信号線のうち
前記動作を行うことよって既に選択されている行信号線に接続された前記検出画素を駆動し、これによって、前記放射線撮像装置は、前記検出画素から入射した放射線の線量を計測するための信号を取得することを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項2】
放射線の照射の終了後に、前記制御部は、前記複数の画素から信号を読み出すために、前記複数の行信号線が順に選択されるように前記駆動回路を動作させることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項3】
前記検出画素を含む複数の検出画素が設定され、
前記複数の行信号線は、前記複数の検出画素のうちそれぞれ対応する検出画素に接続された2つ以上の行信号線を含み、
放射線の照射中に、前記制御部は、前記駆動回路が前記複数の検出画素のうち前記2つ以上の行信号線にそれぞれ接続された検出画素を個別に駆動するように、前記駆動回路に前記駆動信号を供給することを特徴とする請求項1または2に記載の放射線撮像装置。
【請求項4】
前記検出画素を含む複数の検出画素が設定され、
前記複数の行信号線は、前記複数の検出画素のうちそれぞれ対応する検出画素に接続された2つ以上の行信号線を含み、
放射線の照射前に、前記制御部は、前記駆動回路に並行して前記2つ以上の行信号線を選択させることを特徴とする請求項1または2に記載の放射線撮像装置。
【請求項5】
前記検出画素を含む複数の検出画素が設定され、
前記複数の検出画素は、前記複数の行信号線のうち互いに異なる行信号線に接続された2つ以上の検出画素を含み、
放射線の照射中に、前記制御部は、前記駆動回路が前記2つ以上の検出画素を同時に駆動するように、前記駆動回路に前記駆動信号を供給することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項6】
前記駆動回路が、シフトレジスタを含むことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項7】
前記駆動回路は、前記選択信号に応じて、前記複数の行信号線のうち前記検出画素が接続された行信号線まで前記シフトレジスタを進行させることによって、前記複数の行信号線のうち前記検出画素が接続された行信号線を選択した状態になることを特徴とする請求項6に記載の放射線撮像装置。
【請求項8】
ユーザによって放射線の照射開始が指示され、かつ、放射線が照射される前に、前記制御部は、前記駆動回路に前記複数の行信号線のうち前記検出画素が接続された行信号線を選択させることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項9】
ユーザによって放射線の照射開始が指示される前に、前記制御部は、前記駆動回路に、前記駆動信号を供給することによって、前記複数の画素のそれぞれをリセットするリセット動作を行うことを特徴とする請求項8に記載の放射線撮像装置。
【請求項10】
放射線または光を電荷に変換するための変換素子および前記電荷に応じた電気信号を出力するためのスイッチ素子をそれぞれ含む複数の画素と、前記複数の画素を行単位で駆動するための複数の駆動回路と、前記複数の駆動回路を制御するための制御部と、を含む放射線撮像装置であって、
前記複数の画素は、放射線の照射中に入射した放射線の線量を計測するための検出画素を含み、
前記複数の駆動回路は、前記検出画素が接続された第1行信号線を含む2つ以上の行信号線が接続された第1駆動回路を含み、
放射線の照射前に、前記制御部は、前記第1駆動回路に選択信号を供給し、前記第1駆動回路は、前記選択信号に応じ
た動作
を行うことによって、前記第1行信号線を選択した状態になり、
放射線の照射中に、前記制御部は、前記第1駆動回路に駆動信号を供給し、前記第1駆動回路は、
前記動作を行うことよって既に選択されている前記第1行信号線に接続された前記検出画素の前記スイッチ素子を
前記駆動信号に応じて導通させ、これによって、前記放射線撮像装置は、前記検出画素から入射した放射線の線量を計測するための信号を取得することを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項11】
放射線または光を電荷に変換するための変換素子および前記電荷に応じた電気信号を出力するためのスイッチ素子をそれぞれ含む複数の画素と、前記複数の画素を行単位で駆動するための複数の駆動回路と、前記複数の駆動回路を制御するための制御部と、を含む放射線撮像装置であって、
前記複数の画素は、放射線の照射中に入射した放射線の線量を計測するための検出画素を含み、
前記複数の駆動回路は、
前記検出画素が接続された第1行信号線を含む2つ以上の行信号線が接続された第1駆動回路と、前記検出画素が接続されていない第2駆動回路
と、を含み、
放射線の照射前に、前記制御部は、前記第1駆動回路に選択信号を供給し、前記第1駆動回路は、前記選択信号に応じて動作を行うことによって、前記第1行信号線を選択した状態になり、
放射線の照射中に、前記制御部は、前記第1駆動回路に駆動信号を供給し、前記第1駆動回路は、前記動作を行うことよって既に選択されている前記第1行信号線に接続された前記検出画素の前記スイッチ素子を前記駆動信号に応じて導通させ、これによって、前記放射線撮像装置は、前記検出画素から入射した放射線の線量を計測するための信号を取得し、
放射線の照射中に、前記制御部は、前記第2駆動回路に前記駆動信号を供給しないことを特徴とす
る放射線撮像装置。
【請求項12】
放射線画像を取得するために行列状に配された複数の画素と、
前記複数の画素を行単位で駆動するための複数の行信号線がそれぞれ接続された複数の駆動回路と、
前記複数の駆動回路を制御するための制御部と、を含む放射線撮像装置であって、
放射線の照射前に、前記制御部は、前記複数の画素から選択される、放射線の照射中に入射した放射線の線量を計測するための2つ以上の検出画素を設定するために、前記複数の駆動回路のうち前記検出画素を駆動する2つ以上の駆動回路のそれぞれに、前記複数の行信号線のうち前記検出画素が接続された行信号線を選択させておき、
放射線の照射中に、前記制御部は、前記複数の行信号線のうち選択されている行信号線に接続された画素を駆動させるために前記2つ以上の駆動回路にそれぞれ供給される駆動信号を、前記2つ以上の駆動回路に個別に供給することによって、前記放射線撮像装置は、前記検出画素のそれぞれから入射した放射線の線量を計測するための信号を取得し、
放射線の照射の終了後に、前記制御部は、前記複数の画素から信号を読み出すために、前記複数の行信号線が順に選択されるように前記複数の駆動回路を動作させることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項13】
前記放射線撮像装置は、前記複数の画素から取得される信号に基づいて、入射した放射線の線量を計測する演算部をさらに含み、
前記演算部によって計測された放射線の線量が、予め設定された線量に到達した場合、または、予め設定された線量に到達することが予想された場合、前記放射線撮像装置は、前記放射線撮像装置に放射線を照射するための放射線発生装置に、放射線の照射を停止するための信号を送信することによって露出制御を行うことを特徴とする請求項1乃至12の何れか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項14】
請求項1乃至13の何れか1項に記載の放射線撮像装置と、
前記放射線撮像装置からの信号を処理する信号処理部と、
を備えることを特徴とする放射線撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮像装置および放射線撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療画像診断や非破壊検査において、半導体材料によって構成される平面検出器(フラットパネルディテクタ:FPD)を用いた放射線撮像装置が広く使用されている。こうした放射線撮像装置において、放射線撮像装置に入射する放射線をリアルタイムで計測することが知られている。放射線量をリアルタイムで検出することによって、放射線の照射中に入射した放射線の積算線量を把握し自動露出制御(Automatic Exposure Control:AEC)を行うことが可能となる。AECを行う際に、高い時間分解能を必要とする場合がある。特許文献1には、AEC用に設定された検出素子が接続されたゲート線に対して、曝射開始から連続してハイレベルの信号を供給し、検出素子を連続してオン動作させることが示されている。特許文献1に示される動作は、常に検出素子から信号を取得できるため、高い時間分解能が実現できる可能性がある。また、特許文献2には、放射線の照射中に、AEC用に設定された複数のセンサから、出力に応じた値が閾値を超えたセンサを有効センサグループから除外することが示されている。有効センサグループを構成するセンサの数を減らすことによって、サンプリング頻度を上げることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-75556号公報
【文献】特開2016-15721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
AECを行う際に、複数の関心領域を設定する場合がある。特許文献1に示される動作では、信号をAECに用いられる検出素子が接続されたゲート線に常にハイレベルの信号が供給されるため、当該検出素子が接続されたゲート線以外に接続された検出素子から独立して信号を取得すことができない。つまり、特許文献1に示される動作は、複数の関心領域を設定する場合、同じゲート線に接続された検出素子を用いる必要があり、関心領域の設定の自由度が低くなってしまう。特許文献2に示される動作では、複数の関心領域の設定の自由度は高いが、有効センサグループから信号を取得するための複雑な回路構成が必要となりうる。
【0005】
本発明は、AECにおいて、複数の関心領域から高速に信号を取得するのに有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の画素と、前記複数の画素を行単位で駆動するための複数の行信号線が接続された駆動回路と、前記駆動回路を制御するための制御部と、を含む放射線撮像装置に関する。放射線の照射前に、前記制御部は、前記複数の画素のうち放射線の照射中に入射した放射線の線量を計測するための検出画素を設定するために前記駆動回路に選択信号を供給し、前記駆動回路は、前記選択信号に応じた動作を行うことによって、前記複数の行信号線のうち前記検出画素が接続された行信号線を選択した状態になる。放射線の照射中に、前記制御部は、前記駆動回路に駆動信号を供給し、前記駆動回路は、前記駆動信号に応じて、前記複数の行信号線のうち前記動作を行うことよって既に選択されている行信号線に接続された前記検出画素を駆動し、これによって、前記放射線撮像装置は、前記検出画素から入射した放射線の線量を計測するための信号を取得する。
【発明の効果】
【0007】
上記手段によって、AECにおいて、複数の関心領域から高速に信号を取得するのに有利な技術を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る放射線撮像装置を用いた放射線撮像システムの構成例を示す図。
【
図2】
図1の放射線撮像装置の構成例を示す等価回路図。
【
図3】比較例の放射線撮像装置の制御部と駆動回路との接続例を示す等価回路図。
【
図4】
図3の制御部と駆動回路との動作例を示すタイミング図。
【
図5】
図1の放射線放射線撮像装置の動作例を示すフロー図。
【
図6】
図1の放射線撮像装置の制御部と駆動回路との接続例を示す等価回路図。
【
図7】
図6の制御部と駆動回路との動作例を示すタイミング図。
【
図9】
図1の放射線撮像装置の制御部と駆動回路との接続例を示す等価回路図。
【
図10】
図9の制御部と駆動回路との動作例を示すタイミング図。
【
図11】
図1の放射線撮像装置の制御部と駆動回路との接続例を示す等価回路図。
【
図12】
図11の制御部と駆動回路との動作例を示すタイミング図。
【
図13】
図1の放射線撮像装置の配置例を示す模式図。
【
図17】
図11の制御部と駆動回路との動作例を示すタイミング図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
また、本発明における放射線には、放射線崩壊によって放出される粒子(光子を含む)の作るビームであるα線、β線、γ線などの他に、同程度以上のエネルギを有するビーム、例えばX線や粒子線、宇宙線なども含みうる。
【0011】
第1の実施形態
図1~12を参照して、本発明の一部の実施形態における放射線撮像装置について説明する。
図1には、本実施形態における放射線撮像装置100を用いた放射線撮像システムSYSの構成例のブロック図が示されている。放射線撮像システムSYSは、放射線撮像装置100、制御用コンピュータ200、放射線制御装置300、放射線発生装置400を含む。
【0012】
放射線撮像装置100は、放射線を検出する検出部112、検出部112からの電荷情報を演算して露光情報を出力する演算部117、露光情報に基づいて検出部112の駆動や放射線の照射を制御するための制御部116を含む。検出部112には、放射線画像を取得するために、放射線を検出するセンサを含む複数の画素が行列状に配され、入射した放射線に応じた信号を出力する。演算部117は、放射線の照射中に検出部112から出力された信号に基づいて、入射した放射線の線量を計測する。演算部117としては、FPGAやDSP、プロセッサなどの、デジタル信号処理回路が用いられてもよい。演算部117は、サンプルホールド回路やオペアンプなどのアナログ回路を用いて構成してもよい。また、
図1に示される構成では、演算部117は放射線撮像装置100に含まれるが、演算部117が有する機能は、制御用コンピュータ200に備えられていてもよい。制御部116は、制御用コンピュータ200から入力する信号に基づいて検出部112を制御する。また、演算部117が出力した露光情報を用いて、制御部116は、検出部112の駆動方法を変更しうる。
【0013】
制御用コンピュータ200は、放射線撮像システムSYSの全体の制御を行う。また、制御用コンピュータ200は、ユーザ(放射線技師など)が放射線撮像システムSYSを用いた放射線画像の撮像におけるユーザインタフェースとして機能しうる。例えば、ユーザが、制御用コンピュータ200に放射線画像の撮像の条件などを入力し、入力された撮像の条件に応じて、制御用コンピュータ200が、放射線撮像装置100や放射線発生装置400を制御する。さらに、制御用コンピュータ200は、放射線撮像装置100から出力される放射線画像を生成するための信号を処理する信号処理部を備えていてもよい。制御用コンピュータ200は、放射線撮像装置100から出力される放射線画像を生成するための信号を処理し、制御用コンピュータ200に含まれる表示部や外部のディスプレイなどに、放射線撮像装置100が撮像した放射線画像を表示させる。
【0014】
放射線制御装置300は、制御用コンピュータ200から出力される信号に応じて放射線発生装置400を制御する。放射線発生装置400は、放射線制御装置300から出力される信号に応じて、放射線を曝射する。
【0015】
図2は、放射線撮像装置100の構成例を示す等価回路図である。
図2では、説明の簡便化のために3行×3列の画素を備える検出部112を示す。しかしながら、実際の放射線撮像装置はより多画素であり、例えば17インチの放射線撮像装置では約3500行×約3500列の画素を有している。
【0016】
検出部112は、行列状に配された複数の画素PIXを備える二次元検出器である。それぞれの画素PIXは、放射線または光を電荷に変換する変換素子102と、その電荷に応じた電気信号を出力するスイッチ素子101と、を含む。本実施形態では、変換素子102に照射された光を電荷に変換する光電変換素子として、ガラス基板などの絶縁性基板上に配されアモルファスシリコンなどの半導体材料を主材料とするMIS型フォトダイオードを用いるが、PIN型フォトダイオードでもよい。また、変換素子102は、光電変換素子の放射線入射側に放射線を光電変換素子が感知可能な波長帯域の光に変換するシンチレータなどの波長変換体を含む。波長変換体は、画素PIXごとに配されていてもよいし、複数の画素PIXで共用される一体構造のものであってもよい。また、変換素子102は、上述のような間接型の変換素子に限られることはなく、放射線を直接電荷に変換する直接型の変換素子が用いられてもよい。スイッチ素子101は、制御端子と2つの主端子を有するトランジスタが用いられうる。本実施形態において、スイッチ素子101には、薄膜トランジスタ(TFT)が用いられる。変換素子102の一方の電極はスイッチ素子101の2つの主端子の一方に電気的に接続され、他方の電極は共通のバイアス配線Bsを介してバイアス電源103と電気的に接続される。行方向に並ぶ複数のスイッチ素子101(例えば、T11、T12、T13。)は、それらの制御端子が、1行目の行信号線Vg1に共通に電気的に接続されており、駆動回路114からスイッチ素子101の導通状態を制御する駆動信号が行信号線Vg1を介して行単位で与えられる。列方向に並ぶ複数のスイッチ素子101(例えば、T11、T21、T31。)は、他方の主端子が1列目の列信号線Sig1に電気的に接続されており、スイッチ素子101が導通状態である間に、変換素子の電荷に応じた信号を、列信号線Sig1を介して読出回路113に出力する。列方向に配された列信号線Sig1~Sig3は、複数の画素PIXから出力される信号を並列に読出回路113に伝送する。
【0017】
読出回路113には、検出部112から並列に出力された信号を増幅する増幅回路106が、列信号線Sigごとに設けられている。また、増幅回路106は、出力された電気信号を増幅する積分増幅器105、積分増幅器105から入力する信号を増幅する可変増幅器104、増幅された信号をサンプルしホールドするサンプルホールド回路107を含む。積分増幅器105は、画素PIXから読み出された信号を増幅して出力する演算増幅器、積分容量、リセットスイッチを含む。積分増幅器105は、積分容量の値を変えることによって増幅率を変更することが可能である。積分増幅器105の反転入力端子に画素PIXから出力された電気信号が入力し、正転入力端子に基準電源111から基準電圧Vrefが入力され、出力端子から増幅された信号が出力される。また、積分容量が演算増幅器の反転入力端子と出力端子の間に配置される。サンプルホールド回路107は、サンプリングスイッチ、サンプリング容量を含む。また、読出回路113は、それぞれの増幅回路106から並列に読み出された信号を順次出力して直列の信号の画像信号として出力するマルチプレクサ108、画像信号をインピーダンス変換して出力するバッファ増幅器109を含む。バッファ増幅器109から出力されたアナログ電気信号である画像信号Voutは、A/D変換器110によってデジタルデータに変換される。例えば、放射線の照射中のデジタルデータは、演算部117に出力され、露光制御などに用いられうる。また、例えば、放射線の照射後のデジタルデータは、制御用コンピュータ200へ出力され、制御用コンピュータ200は、取得した信号を処理し放射線画像を生成しうる。
【0018】
また、放射線撮像装置100は、電源部として増幅回路の基準電源111、バイアス電源103を含む。基準電源111は、各演算増幅器の正転入力端子に基準電圧Vrefを供給する。バイアス電源103は、バイアス配線Bsを介して変換素子102に共通にバイアス電圧Vsを供給する。
【0019】
駆動回路114は、制御部116から入力する制御信号CPV、OE、DIOに応じて、スイッチ素子101を導通状態にする導通電圧Vcomと非道通状態とする非導通電圧Vssを含む駆動信号を、行信号線Vgに出力する。これによって、駆動回路114は、スイッチ素子101の導通状態および非導通状態を制御し、検出部112に配された複数の画素PIXを行単位で駆動する。駆動回路114の構成、および、制御部116と駆動回路114との接続に関しては後述する。
【0020】
制御信号CPVは、駆動回路に用いられるシフトレジスタのシフトクロックである。制御信号DIOは、シフトレジスタにシフトクロックに応じてシフトを開始させるための信号である。制御信号OEは、シフトレジスタの出力端を制御する信号である。以上の制御信号CPV、DIO、OEによって、制御部116は、駆動回路114による検出部112の駆動の所要時間、走査方向を設定する。また、制御部116は、読出回路113に制御信号RC、制御信号SH、制御信号CLKを供給し、読出回路113のそれぞれの構成要素の動作を制御する。ここで、制御信号RCは積分増幅器のリセットスイッチの動作を、制御信号SHはサンプルホールド回路107の動作を、制御信号CLKはマルチプレクサ108の動作を制御するものである。
【0021】
次いで、放射線撮像装置100の制御部116と駆動回路114との接続、および、自動露出制御(AEC)を用いた駆動方法について説明する。本実施形態の制御部116と駆動回路114との接続、および、駆動方法を説明する前に、まず、比較例について説明する。
図3は、比較例における制御部116と駆動回路114との接続を示す等価回路である。
【0022】
図3に示される構成において、放射線撮像装置100は、1つの検出部112に対して複数(7つ)の読出回路113a~113gと複数(7つ)の駆動回路114a~114gとを含む。それぞれの駆動回路114a~114gには、複数の画素PIXを行単位で駆動するための複数の行信号線Vgがそれぞれ接続される。駆動回路114a~114gには、制御部116から制御信号CPV、OEを供給する信号線がそれぞれ並列に接続され、制御信号DIOを供給する信号線が直列に接続されている。つまり、制御部116と駆動回路114とは、3つの信号線によって接続されている。
【0023】
検出部112には、外付けのAECチャンバの関心領域に相当する座標に関心領域1~5が配されている。関心領域1~5には、それぞれ露出制御に用いるための画素(以下、検出画素と呼ぶ場合がある。)が配されている。ここでは、説明の簡単化のために5つの関心領域があるとして説明するが、関心領域の数は、これに限られることはなく、4つ以下であってもよいし、6つ以上であってもよい。また、関心領域の位置も、
図3に示される位置に限られることはなく、任意の位置に設定されうる。本実施形態において、露出制御用の検出画素は、放射線画像を取得するための画素PIXの中から適宜選択される。しかしながら、これに限られることはなく、検出部112に複数のAEC専用の画素を配し、その中から任意の画素を選択してもよい。
【0024】
関心領域1~5に配される検出画素には、それぞれスイッチ素子101を制御する行信号線Vgb(R1)~Vgf(R5)が接続されている。駆動回路114bが行信号線Vgb(R1)を介して関心領域1の検出画素を駆動する。同様に駆動回路114cが行信号線Vgc(R2)を介して関心領域2の検出画素を、駆動回路114dが行信号線Vgd(R3)を介して関心領域3の検出画素を、駆動回路114eが行信号線Vge(R4)を介して関心領域4の検出画素を、駆動回路114fが行信号線Vgf(R5)を介して関心領域5の画素をそれぞれ駆動する。
【0025】
図4には、比較例における駆動回路114の動作を示すタイミング図が示される。
図5は、本実施形態および比較例における放射線撮像装置100の動作を示すフロー図である。
図3~5を用いて比較例におけるAECの駆動について説明する。
【0026】
まず、S501においてユーザによる放射線画像の撮像の条件の設定など、撮像の準備が完了すると、放射線撮像装置100は、S502に遷移する。S502において、放射線撮像装置100は、空読みを開始する。空読みとは、検出部112のそれぞれの画素PIXのスイッチ素子101においてON/OFF動作を繰り返し、画素PIXの暗電流をリセットするリセット動作である。制御部116は、フレーム単位で駆動回路114aに制御信号DIOを供給し、駆動回路114a~114gごとに制御信号CPV、OEを供給し順次走査させる。ここで、
図4に示される「Vga(0)」は、
図3に示される駆動回路114aに接続された行信号線の1本に対応する。例えば、駆動回路114aが、512chの駆動回路である場合、駆動回路114aには、行信号線Vga(0)~Vga(511)の512本の行信号線に接続がされ、512ch分を順次走査する。他の駆動回路114b~114gも、基本的に同様である。検出画素も、それぞれ行信号線Vgb(R1)~Vgf(R5)を介して順次走査され、暗電流がリセットされる。放射線撮像装置100は、ユーザによる曝射スイッチの押下など、放射線の照射開始を示す信号が入力される(S503)まで、空読みを行う。
【0027】
次いで、S503において、ユーザによって曝射スイッチの押下など放射線の照射開始が指示されると、放射線撮像装置100は、S504に遷移する。S504において、放射線撮像装置100は、AECを用いて放射線画像の取得を行う。
図4に示されるように、制御部116は、まず、準備動作を行い、次いで、蓄積動作を行う。準備動作とは、制御部116が、関心領域1に設定された検出画素が接続された行信号線Vgb(R1)まで、制御信号DIOと複数回の制御信号CPVを駆動回路114に供給し、シフトレジスタを進行させる動作である。制御部116は、1つ目の検出画素が接続された行信号線Vgb(R1)までシフトレジスタを進行させると、準備が完了したことを知らせる曝射許可信号を制御用コンピュータ200に送信する。この曝射許可信号に応じて、制御用コンピュータ200は、放射線制御装置300を介して放射線発生装置400に放射線の照射を開始させる。本実施形態において、放射線撮像装置100は、曝射許可信号を制御用コンピュータ200に送信するが、曝射許可信号を放射線制御装置300に直接送信し、これに応じて、放射線発生装置400が、放射線の照射を開始してもよい。
【0028】
放射線の照射が開始されると、制御部116は、関心領域1~5に配された検出画素から、順次、信号を読み出すための動作を行う。同時に、検出画素として設定された画素が接続された行信号線以外の行信号線に接続された画素は、放射線画像を取得するための蓄積動作を開始する。具体的には、制御部116は、制御信号CPVを出力しシフトレジスタを進行させ、駆動回路114が行信号線Vgb(R1)~f(R5)選択した時点で、制御信号OEを出力し、検出画素のスイッチ素子101のゲートがONとなる信号を送り検出画素を駆動する。そして、制御部116は、フレーム単位で制御信号DIOを駆動回路114aに供給し、AECのための信号の取得を繰り返す。このとき、読出回路113は、検出画素から入射した放射線に応じた信号(電荷)を読み出し、演算部117は、検出画素から取得される信号に基づいて、入射した放射線の線量を計測する。例えば、演算部117、検出画素ごとに信号を加算していく。演算部117によって計測された放射線の線量が、予め設定された線量に到達した場合、放射線撮像装置100の制御部116は、放射線撮像装置100に放射線を照射するための放射線発生装置400に、放射線の照射を停止するための信号を送信する。具体的には、演算部117によって加算された信号が予め定められた閾値に到達した時点で、制御部116は、制御用コンピュータ200に曝射停止信号を送信する(S505)。この曝射停止信号に応じて、制御用コンピュータ200は、放射線制御装置300を介して放射線発生装置400からの放射線の照射を停止させる(S506)。本実施形態において、放射線撮像装置100は、曝射停止信号を制御用コンピュータ200に送信するが、曝射停止信号を放射線制御装置300に直接送信し、これに応じて、放射線発生装置400が、放射線の照射を停止してもよい。また、演算部117によって計測された放射線の線量が、予め設定された線量に到達することが予想された場合に、制御部116は、曝射停止信号を制御用コンピュータ200に送信してもよい。
【0029】
放射線の照射が終了すると、制御部116は、本読み動作を行う。本読み動作は、駆動回路114から行信号線Vgに順次、スイッチ素子101がON動作する導通電圧Vcomを印加し、それぞれの行信号線に接続された画素の変換素子102から、放射線の照射中に蓄積した信号(電荷)を読出回路113に読み出す動作である。読出回路113に読み出された信号は、デジタルデータに変換されて画像情報として制御用コンピュータ200に転送される。制御用コンピュータ200は、取得した画像情報から放射線画像を生成し、ディスプレイなどに表示する。
【0030】
次に、比較例と対比する形で、
図5~12を用いて本実施形態の放射線撮像装置100の制御部116と駆動回路114との接続、および、AECを用いる駆動方法について説明する。
図6、9、11は、本実施形態における制御部116と駆動回路114との接続を示す等価回路である。
図7、10、12は、
図6、9、11のそれぞれの接続に応じた、駆動回路114の動作を示すタイミングチャート図である。
【0031】
まず、
図6、7を用いて、本実施形態の制御部116と駆動回路114との接続、および、AECを用いた駆動方法について説明する。
図3に示される比較例では、制御部116から制御信号CPV、DIO、OEのそれぞれに対応する3つの信号線によって制御信号CPV、DIO、OEが、それぞれの駆動回路114a~114gにされていた。一方、
図6に示される本実施形態では、制御部116から7つの駆動回路114a~114gに対して、それぞれ3つずつ計21本の信号線によって制御信号CPVa~CPVg、DIOa~DIOg、OEa~OEgが供給されている。つまり、制御部116と駆動回路114とは、21本の信号線によって接続されている。
【0032】
放射線画像の撮像は、比較例と同様に
図5に示されるフロー図に従って行われる。撮像の準備が完了する(S501)と、制御部116は、駆動回路114a~114gに対して空読みを開始させる(S502)。このとき、制御部116は、比較例と異なり、駆動回路114a~114gごとに制御信号DIOを供給する。また、制御部116は、駆動回路114a~114gごとに制御信号CPV、OEを入力し順次走査させる。
【0033】
次いで、S503において、ユーザによって曝射スイッチの押下など放射線の照射開始が指示されると、放射線撮像装置100は、S504に遷移する。S504において、放射線撮像装置100は、AECを用いて放射線画像の取得を行う。
図7に示されるように、制御部116は、まず、準備動作を行い、次いで、蓄積動作を行う。
【0034】
本実施形態における準備動作について詳しく説明する。S504に遷移すると、放射線の照射前に、制御部116は、複数の画素PIXから放射線の照射中に入射した放射線の線量を計測し、露出制御を行うための2つ以上の検出画素を設定するために、複数の駆動回路114a~114gのうち検出画素を駆動する2つ以上の駆動回路によって構成される駆動回路群に選択信号を供給する。具体的には、制御部116は、駆動回路114a~114gのうち関心領域1~5に配された検出画素が接続された駆動回路群の駆動回路114b~114fのそれぞれに、選択信号として機能する制御信号DIOb~DIOf、CPVb~CPVfを出力する。これによって、駆動回路114b~114fのシフトレジスタを進行させ、駆動回路群に含まれる駆動回路114b~114fのそれぞれに、複数の行信号線Vgのうち検出画素が接続された行信号線Vgb(R1)~Vgf(R5)を選択させる。このとき、
図7に示されるように、制御部116は、駆動回路群に含まれる駆動回路114b~114fに並行して選択信号(制御信号DIO、CPV)を供給してもよい。制御部116からそれぞれの駆動回路114a~114gに個別に制御信号DIO、CPVを供給可能な接続関係のため、駆動回路群に含まれる駆動回路114b~114fに並行して選択信号(制御信号DIO、CPV)を供給できる。これによって、準備動作の時間を短くすることができる。また、駆動回路114a~114gごとに、選択信号(制御信号DIO、CPV)を供給する信号線が独立している。このため、制御部116は、駆動回路群に含まれる駆動回路114b~114fのそれぞれに複数の行信号線Vgのうち検出画素が接続された行信号線Vgb(R1)~Vgf(R5)を選択させる間に、駆動回路群に含まれない駆動回路114a、114gに、選択信号(制御信号DIO、CPV)を供給しなくてもよい。検出画素が接続された行信号線Vgb(R1)~Vgf(R5)の選択が完了すると、準備が完了したことを知らせる曝射許可信号を制御用コンピュータ200に送信する。この曝射許可信号に応じて、制御用コンピュータ200は、放射線制御装置300を介して放射線発生装置400に放射線の照射を開始させる。上述したが、曝射許可信号は、放射線撮像装置100から放射線制御装置300に直接送信されてもよい。
【0035】
放射線の照射が開始されると、制御部116は、関心領域1~5に配された検出画素から、順次、信号を読み出すための動作を行う。同時に、検出画素として設定された画素が接続された行信号線以外の行信号線に接続された画素は、放射線画像を取得するための蓄積動作を開始する。具体的には、放射線の照射中に、制御部116は、複数の行信号線Vgのうち選択された行信号線Vgb(R1)~Vgf(R5)に接続された画素を駆動させるための駆動信号として機能する制御信号OEb~OEfを、駆動回路群に含まれるそれぞれの駆動回路114b~114fごとに個別に供給する。これによって、放射線撮像装置100は、検出画素のそれぞれから露出制御を行うための信号を取得する。放射線の照射中に、制御部116は、駆動回路群(駆動回路114b~114f)に含まれない駆動回路114a、114gに駆動信号(制御信号OE)を供給しない。また、放射線の照射中、駆動回路114b~114fが、検出画素が接続された行信号線Vgb(R1)~Vgf(R5)を選択しているため、制御部116は、駆動回路群に含まれる駆動回路114b~114fに選択信号(制御信号DIO、CPV)を供給しない。つまり、放射線の照射中に、制御部116は、すべての駆動回路114a~114gに、選択信号(制御信号DIO、CPV)を供給しなくてもよい。
【0036】
制御部116は、
図7に示されるように、制御信号OEb~OEgの順走査を1フレームとして検出画素からAECのための信号を読み出す動作を繰り返す。つまり、検出画素のそれぞれは、複数の駆動回路114a~114gのうちそれぞれ異なる駆動回路114に接続されうる。同時に、読出回路113は、検出画素から入射した放射線に応じた信号(電荷)を読み出し、演算部117は、検出画素ごとに取得される信号を加算していく。演算部117によって加算された信号が予め定められた閾値に到達した時点で、制御部116は、制御用コンピュータ200に曝射停止信号を送信する(S505)。この曝射停止信号に応じて、制御用コンピュータ200は、放射線制御装置300を介して放射線発生装置400からの放射線の照射を停止させる(S506)。上述したように、曝射停止信号は、放射線撮像装置100から放射線制御装置300に直接送信されてもよい。また、曝射停止信号を送信するための閾値は、関心領域1~5において共通であってもよいし、関心領域ごとに異なっていてもよい。放射線画像の撮像の条件などに応じて、適宜、設定されればよい。
【0037】
放射線の照射が終了すると、制御部116は、本読み動作を行う。本読み動作は、駆動回路114から行信号線Vgに順次、スイッチ素子101がON動作する導通電圧Vcomを印加し、それぞれの行信号線に接続された画素の変換素子102から、放射線の照射中に蓄積した信号(電荷)を読出回路113に読み出す動作である。読出回路113に読み出された信号は、デジタルデータに変換されて画像情報として制御用コンピュータ200に転送される。制御用コンピュータ200は、取得した画像情報から放射線画像を生成し、ディスプレイなどに表示する。
【0038】
ここで、本実施形態の効果について説明する。AECのために検出画素から信号を読み出す際に、上述の比較例では、検出部112のすべての行信号線Vgに対してシフトレジスタを直列に進行させた。一方、
図6、7に示されるように、本実施形態では、準備動作でシフトレジスタを予め検出画素が接続された行信号線Vgb(R1)~Vgf(R5)まで進行させ、駆動回路114b~114fに行信号線Vgb(R1)~Vgf(R5)を選択させておく。このため、シフトレジスタを進行が不要になり、放射線の照射中は、制御信号OEをそれぞれの駆動回路114b~114f(駆動回路群)に供給するのみで、AEC用の信号の読み出しが可能になる。
【0039】
例えば、AECを行う際に、3584列の検出部112を512chの駆動回路114を7つ使用し、5つの関心領域1~5を走査する場合を考える。シフトレジスタ進行させる制御信号CPVの供給、および、駆動回路114に画素PIXを駆動する導通電圧Vcomを出力させる制御信号OEの供給を1ステップとすると、比較例では1フレームの走査に3584ステップが必要になる。一方、本実施形態では、5ステップで1フレームを走査することができる。つまり、放射線の照射中に、複数の関心領域の検出画素から信号を高速に読み出すことができる。これによって、一定の照射量や照射時間に対しては、読み出し回数を増やすことができるため、より精度の高いAECが可能となる。また、1フレームの走査時間を短縮することができるため、照射時間が短い場合であっても、AECを行うことが可能となる。
【0040】
このように、本実施形態において、AECを行う際の関心領域の設定の自由度を高くしながら、複雑な回路構成を必要とせず、複数の関心領域から高速に信号を取得することが可能となる。これによって、高い精度と使い勝手のよいAECが行える放射線撮像装置100が実現する。
【0041】
本実施形態において、放射線の照射が開始されると、制御部116は、関心領域1~5に配された検出画素から、順次、信号を読み出すための動作を行い、演算部117は、検出画素ごとに取得される信号を加算していく。つまり、それぞれの関心領域ごとに、制御部116は、演算部117によって加算された信号が予め定められた閾値に到達するか否かを判定してもよい。しかしながら、関心領域の設定はこれに限られることはない。例えば、演算部117は、関心領域1~5のそれぞれの検出画素から出力される信号を合算(平均化)し、制御部116は、合算(平均化)された信号の累計値を閾値と比較することによって、露出制御を行ってもよい。つまり、
図8に示されるように、関心領域1~5の領域を含む1つの関心領域6を用いて、制御部116は、演算部117によって加算された信号が予め定められた閾値に到達するか否かを判定してもよい。放射線画像の撮像の条件などに応じて、適宜、関心領域1~5と関心領域6とが使い分けられうる。関心領域1~5と関心領域6との使い分けは、例えば、ユーザが、S501において制御用コンピュータ200を操作することによって行われてもよい。また、制御部116が、S501において入力された撮像の条件に応じて、関心領域1~5または関心領域6を選択してもよい。例えば、患者のポジショニングに応じて、立位であれば関心領域1~5を用いて露出制御を行い、臥位であれば関心領域6を用いて露出制御を行ってもよい。
【0042】
関心領域6を用いる場合、制御部116は、
図7に示される動作と同様の動作を行ってもよい。演算部117は、それぞれの検出画素から取得した信号を合算または平均化した信号を加算していく。演算部117によって加算された信号が予め定められた閾値に到達した時点で、制御部116は、制御用コンピュータ200に曝射停止信号を送信すればよい。また、関心領域6を用いる場合、それぞれの検出画素から出力される信号は、上述のように合算されうる。このため、検出画素が同じ列信号線Sigに接続されている場合であっても、同時に信号を読み出すことが可能である。そこで、制御部116は、駆動回路114b~114fに制御信号OEb~OEfを同時に入力し、検出画素のそれぞれから露出制御を行うための信号を1ステップで取得してもよい。つまり、放射線の照射中に、制御部116は、複数の行信号線Vgのうち選択された行信号線に接続された画素を駆動させるための駆動信号(制御信号OE)を、駆動回路群に含まれるそれぞれの駆動回路114に同時に供給する。これよって、検出画素のそれぞれから入射した放射線の線量を計測するための信号が、5つの検出画素から1ステップで取得できる。結果として、それぞれの検出画素から1回、信号を読み出す1フレームが1ステップごととなり、より精度が高いAECが実現できる。
【0043】
次いで、
図6、7に示される制御部116と駆動回路114との接続、および、AECを用いた駆動方法の変形例について
図9、10を用いて説明する。上述の
図6では、それぞれの駆動回路114a~114gに対して、制御部116は、3つずつの信号線を用いて制御信号DIO、CPV、OEを個別に供給することを説明した。つまり、制御部116は、複数の駆動回路114a~114gのそれぞれの駆動回路ごとに個別に、駆動信号(制御信号OE)および選択信号(制御信号DIO、CPV)を供給可能な構成を備えていた。一方、
図9に示される構成では、制御部116から関心領域1~5として設定される領域の画素PIXに接続された5つ駆動回路114b~fに対して、それぞれ3つずつ計15本の信号線が接続されている。また、関心領域として設定されない領域の画素PIXに接続された駆動回路114a、114gに対しては、制御信号CPVa、OEaを供給する信号線が並列に接続され、制御信号DIOaを供給する信号線が直列に接続されている。つまり、複数の画素PIXは、検出画素として設定可能な画素と、検出画素として設定不可能な画素と、を含む。これに対応して、制御部116は、複数の駆動回路114a~114gのうち検出画素として設定可能な画素を駆動する駆動回路114b~114gごとに個別に、駆動信号(制御信号OE)および選択信号(制御信号DIO、CPV)を供給可能な構成を備える。
【0044】
このようにすることで、
図6に示される制御部116と駆動回路114との接続に対して、制御信号を供給するための信号線の数が減らすことができ、回路の縮小やコストを下げることができる。特に関心領域が設定されない領域の画素に接続される駆動回路114の数が多い場合、その効果は大きくなる。
【0045】
図10に示されるように、S504のAECを用いた放射線画像の取得において、
図6に示される接続形態と同様に、複数の関心領域1~5に配された検出画素から信号を高速に読み出すことができる。また、
図10に示されるように、制御部116は、駆動回路群に含まれる駆動回路114b~114fに並行して選択信号(制御信号DIO、CPV)を供給し、準備動作の時間を短くしてもよい。
【0046】
これによって、一定の照射量や照射時間に対しては、読み出し回数を増やすことができるため、より精度の高いAECが可能となる。また、1フレームの走査時間を短縮することができるため、照射時間が短い場合であっても、AECを行うことが可能となる。また、
図9に示される構成においても、上述と同様に、関心領域1~5を1つの関心領域6として用いることもできる。この場合、制御部116は、
図10に示される動作と同様の動作を行ってもよいし、駆動回路114b~114fに制御信号OEb~OEfを同時に入力し、検出画素のそれぞれから露出制御を行うための信号を1ステップで取得してもよい。
【0047】
次に、
図6、7に示される制御部116と駆動回路114との接続、および、AECを用いた駆動方法のさらなる変形例について
図11、12を用いて説明する。
図11に示される構成では、
図6に示される構成と比較して、制御部116から駆動回路114a~114gに制御信号CPVを供給する信号線が1つになっている。また、制御信号DIOを供給する信号線も1つである。一方、制御部116から関心領域1~5として設定される領域の画素PIXに接続された5つ駆動回路114b~fに対して、制御信号OEb~OEfを供給する信号線は、それぞれ個別に配されている。また、関心領域として設定されない領域の画素PIXに接続された駆動回路114a、114gに対しては、制御信号OEaを供給する信号線が並列に接続されている。つまり、複数の画素PIXは、検出画素として設定可能な画素と、検出画素として設定不可能な画素と、を含む。これに対応して、制御部116は、複数の駆動回路114a~114gのうち検出画素として設定可能な画素を駆動する駆動回路114b~114gごとに個別に、駆動信号(制御信号OE)を供給可能な構成を備える。
【0048】
このようにすることで、準備動作において、駆動回路114b~114fに検出画素が接続された信号線Vgb(R1)~Vgf(R5)を選択させるためのステップ数は増加してしまう。しかしながら、
図6、8に示される構成に対して、制御信号を供給するための信号線の数をさらに減らすことができ、回路の縮小やコストをさらに下げることができる。
【0049】
図12に示されるように、S504のAECを用いた放射線画像の取得において、
図6に示される接続形態と同様に、複数の関心領域1~5に配された検出画素から信号を高速に読み出すことができる。これによって、一定の照射量や照射時間に対しては、読み出し回数を増やすことができるため、より精度の高いAECが可能となる。また、1フレームの走査時間を短縮することができるため、照射時間が短い場合であっても、AECを行うことが可能となる。また、
図11に示される構成においても、上述と同様に、関心領域1~5を1つの関心領域6として用いることもできる。この場合、制御部116は、
図12に示される動作と同様の動作を行ってもよいし、駆動回路114b~114fに制御信号OEb~OEfを同時に入力し、検出画素のそれぞれから露出制御を行うための信号を1ステップで取得してもよい。
【0050】
第2の実施形態
図13(a)~16を参照して、本発明の一部の実施形態における放射線撮像装置について説明する。本実施形態において、放射線撮像装置100の構成については、上述の第1の実施形態と同様であってもよいため、ここでは説明を省略する。
【0051】
図13(a)~13(d)は、被写体と放射線撮像装置100との配置関係を示す模式図である。
図13(a)に対して、
図13(b)~13(d)は、それぞれ放射線撮像装置100が、被写体に対して90°ずつ回転して配されている様子が描かれている。
図14~16は、本実施形態における駆動回路114の動作を示すタイミングチャート図である。空読み動作、準備動作、本読み動作は、上述の第1の実施形態と同様であってもよいため、ここでは説明を省略する。また、
図14~16に示されるタイミング図は、
図11に示される制御部116と駆動回路114a~114gとの接続における動作を示したものである。
【0052】
図13(a)に示される配置において、上述の
図12のタイミング図で示される動作が行われるとする。これに対して、
図13(b)~13(d)に示されるような被写体と放射線撮像装置100との配置となったとき、それぞれ
図14~16のタイミング図で示される駆動が行われてもよい。具体的には、
図13(a)の配置関係において、関心領域1→2→3→4→5の順序での検出画素から読み出しが行われる場合を考える。この場合、
図13(b)の配置関係において、関心領域4→1→3→5→2の順序で、検出画素から読み出しが行われるように
図14に示される駆動を行ってもよい。同様に、
図13(c)の配置関係において、関心領域5→4→3→2→1の順序で、検出画素から読み出しが行われるように
図15に示される駆動を行ってもよい。また、同様に、
図13(d)の配置関係において、関心領域2→5→3→1→4の順序で、検出画素から読み出しが行われるように
図16に示される駆動を行ってもよい。このように放射線撮像装置100を駆動することによって、被写体の部位に対して、常に一定の順序で関心領域から信号を読み出すことができ、精度よくAECを行うことができる。
【0053】
被写体と放射線撮像装置100との配置関係に応じた関心領域から信号を読み出す順番は、ユーザが任意で設定してもよい。また、例えば、
図13(a)~13(d)に示されるように、放射線撮像装置100が、複数の画素PIXが配された検出部112の面内方向の向きを検出するための回転検出部120をさらに含んでいてもよい。この場合、制御部116は、回転検出部120が検出した向きに応じて、検出画素から信号を取得する順番を変更してもよい。また、回転検出部120は、単独で面内方向の向きを検出してもよいし、撮影台などとの接続状況に応じて回転方向を認識してもよい。また、制御部116と駆動回路114との接続は、
図6、9、11に示される構成の何れであってもよい。
【0054】
被写体と放射線撮像装置100との配置関係によって、AECを行う際の検出画素から信号を読み出す順番を変更する。これによって、AECを行う際の関心領域の設定の自由度を高くしながら、複雑な回路構成を必要とせず、複数の関心領域から高速に信号を取得することが可能となる。これによって、高い精度と使い勝手のよいAECが行える放射線撮像装置100が実現する。
【0055】
第3の実施形態
図13(a)、17を参照して、本発明の一部の実施形態における放射線撮像装置について説明する。本実施形態において、放射線撮像装置100の構成については、上述の第1の実施形態と同様であってもよいため、ここでは説明を省略する。
図17は、本実施形態における駆動回路114の動作を示すタイミングチャート図である。空読み動作、準備動作、本読み動作は、上述の第1の実施形態と同様であってもよいため、ここでは説明を省略する。また、
図17に示されるタイミング図は、
図11に示される制御部116と駆動回路114a~114gとの接続における動作を示したものである。
【0056】
被写体に対して
図13(a)のように放射線撮像装置100が配された場合、関心領域1は左肺上部、関心領域2は右肺上部、関心領域3は背骨、関心領域4は左腹部、関心領域5は右腹部をそれぞれ透過した放射線によってAECが行われる。ここで、放射線は、被写体の部位ごとの透過率に応じて放射線撮像装置100に入射する。一般的に被写体の部位ごとの透過率は、概ね左肺上部=右肺上部>左腹部=右腹部>背骨のようになる。このため、
図12に示される駆動で検出画素から信号を読み出した場合の1回あたりの信号値は、関心領域1=2>4=5>3となりうる。1回あたりのサンプリングされた信号値が多い場合、信号(電荷情報)が飽和して正しく判定できない場合がある。また、1回あたりのサンプリングされた信号値が小さい場合、信号がノイズに埋もれて放射線の照射の終了を正しく判定できなくなる可能性がある。
【0057】
そこで、
図17に示される駆動方法では、関心領域1、2、関心領域3、関心領域4、5で、制御部116が制御信号OEb~OEfを供給する間隔を変えている。つまり、検出画素は、例えば関心領域1に配される検出画素と関心領域3に配される検出画素とを含み、放射線の照射中に、制御部116は、関心領域1に配される検出画素と関心領域3に配される検出画素とで、信号を取得するサンプリング周期を異ならせてもよい。被写体の透過率が、肺上部:右肺上部:背骨:左腹部:右腹部=3:3:1:2:2であった場合、制御部116は、制御信号OEb~OEfを供給する間隔をOEb:OEc:OEd:OEf:OEg=3:3:1:2:2とする。これによって、被写体の放射線の透過率の影響を抑制しながら、それぞれの関心領域1~5に配された検出画素から、適切な信号を読み出すことができる。
【0058】
関心領域ごとの放射線の透過率の設定は、ユーザが任意で設定してもよい。また、AECを用いた撮影中に、読み出された信号の信号値から制御部116が自動で認識してもよい。また、制御部116と駆動回路114との接続は、
図6、9、11に示される構成の何れであってもよい。
【0059】
本実施形態においても、AECを行う際の関心領域の設定の自由度を高くしながら、複雑な回路構成を必要とせず、複数の関心領域から高速に信号を取得することが可能となる。これによって、高い精度と使い勝手のよいAECが行える放射線撮像装置100が実現する。
【0060】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0061】
100:放射線撮影装置、114:駆動回路、116:制御部