(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】離隔距離処理方法、離隔距離処理装置、表示装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20240927BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20240927BHJP
G06F 16/909 20190101ALI20240927BHJP
G06T 17/05 20110101ALI20240927BHJP
G06Q 50/06 20240101ALI20240927BHJP
【FI】
H02J3/00
H02J13/00 301J
G06F16/909
G06T17/05
G06Q50/06
(21)【出願番号】P 2023131523
(22)【出願日】2023-08-10
【審査請求日】2024-07-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501410779
【氏名又は名称】九州電技開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136180
【氏名又は名称】羽立 章二
(72)【発明者】
【氏名】久保田 豊
(72)【発明者】
【氏名】村田 幸信
(72)【発明者】
【氏名】立木 秀志
【審査官】滝谷 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-31693(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113345094(CN,A)
【文献】特開平5-27676(JP,A)
【文献】特開2004-117373(JP,A)
【文献】特開2023-25767(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第114114291(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
H02J 13/00
G06F 16/909
G06T 17/05
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電線メッシュデータにより特定される送電線位置と、地形メッシュデータにより特定される地上位置との離隔距離を用いる離隔距離処理方法であって、
前記送電線メッシュデータのメッシュは、前記地形メッシュデータのメッシュよりも小さく、
離隔距離処理装置が備える地形処理部が、前記地形メッシュデータにおける各メッシュに対して、当該メッシュに含まれる複数の地点を設定するステップと、
離隔距離処理装置が備える離隔距離処理部が、前記送電線メッシュデータに含まれるメッシュのうち、前記地形処理部が設定した前記各地点との離隔距離が基準値よりも近いものを特定するステップを含む離隔距離処理方法。
【請求項2】
表示装置が備える表示部が、少なくとも一つの地点との離隔距離が基準値よりも近い前記送電線メッシュデータのメッシュと、当該メッシュに最も近い前記地形メッシュデータのメッシュに設定された地点とを線分で結んで表示するステップを含む、請求項1記載の離隔距離処理方法。
【請求項3】
前記送電線メッシュデータが特定する送電線は、当該送電線が横揺れしたときの複数の横揺れ状態を含み、
前記離隔距離処理部は、横揺れ状態のそれぞれに対して、前記送電線メッシュデータに含まれるメッシュのうち、前記地形処理部が設定した前記各地点との離隔距離が基準値よりも近いものを特定する、請求項1記載の離隔距離処理方法。
【請求項4】
前記地形メッシュデータにおける各メッシュに含まれる地点の間の距離は、前記送電線メッシュデータのメッシュの一辺の長さである、請求項1記載の離隔距離処理方法。
【請求項5】
送電線メッシュデータにより特定される送電線位置と、地形メッシュデータにより特定される地上位置との離隔距離を用いる離隔距離処理装置であって、
地形処理部と、離隔距離処理部を備え、
前記送電線メッシュデータのメッシュは、前記地形メッシュデータのメッシュよりも小さく、
前記地形処理部は、前記地形メッシュデータにおける各メッシュに対して、当該メッシュに含まれる複数の地点を設定し、
前記離隔距離処理部は、前記送電線メッシュデータに含まれるメッシュのうち、前記地形処理部が設定した前記各地点との離隔距離が基準値よりも近いものを特定する、離隔距離処理装置。
【請求項6】
請求項5記載の前記離隔距離処理部が特定したメッシュを表示する表示部を備える表示装置であって、
前記表示部は、少なくとも一つの地点との離隔距離が基準値よりも近い前記送電線メッシュデータのメッシュと、当該メッシュに最も近い前記地形メッシュデータのメッシュに設定された地点とを線分で結んで表示する、表示装置。
【請求項7】
コンピュータを、送電線メッシュデータにより特定される送電線位置と、地形メッシュデータにより特定される地上位置との離隔距離を用いる離隔距離処理装置が備える地形処理部及び離隔距離処理部として機能させるためのプログラムであって、
前記送電線メッシュデータのメッシュは、前記地形メッシュデータのメッシュよりも小さく、
前記地形処理部は、前記地形メッシュデータにおける各メッシュに対して、当該メッシュに含まれる複数の地点を設定し、
前記離隔距離処理部は、前記送電線メッシュデータに含まれるメッシュのうち、前記地形処理部が設定した前記各地点との離隔距離が基準値よりも近いものを特定する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、離隔距離処理方法、離隔距離処理装置、表示装置及びプログラムに関し、特に、送電線メッシュデータにより特定される送電線位置と、地形メッシュデータにより特定される地上位置との離隔距離を計算する離隔距離処理方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、オペレータによって入力されるコマンドに従って平面図及び縦断図からなる送電線図面を作成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているように、送電線が地上から十分に離れているかの判断は、オペレータが指定して行われている。縦断図は、例えば、縦が400分の1、横が2000分の1のスケールで作成されており、これを3次元図面で判断することは困難であると考えられている。
【0005】
そこで、本願発明は、メッシュデータを利用して計算される離隔距離を用いて処理を行うことに適した離隔距離処理方法等を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の第1の側面は、送電線メッシュデータにより特定される送電線位置と、地形メッシュデータにより特定される地上位置との離隔距離を用いる離隔距離処理方法であって、前記送電線メッシュデータのメッシュは、前記地形メッシュデータのメッシュよりも小さく、離隔距離処理装置が備える地形処理部が、前記地形メッシュデータにおける各メッシュに対して、当該メッシュに含まれる複数の地点を設定するステップと、離隔距離処理装置が備える離隔距離処理部が、前記送電線メッシュデータに含まれるメッシュのうち、前記地形処理部が設定した前記各地点との離隔距離が基準値よりも近いものを特定するステップを含む。
【0007】
本願発明の第2の側面は、第1の側面の離隔距離処理方法であって、表示装置が備える表示部が、少なくとも一つの地点との離隔距離が基準値よりも近い前記送電線メッシュデータのメッシュと、当該メッシュに最も近い前記地形メッシュデータのメッシュに設定された地点とを線分で結んで表示するステップを含む。
【0008】
本願発明の第3の側面は、第1又は第2の側面の離隔距離処理方法であって、前記送電線メッシュデータが特定する送電線は、当該送電線が横揺れしたときの複数の横揺れ状態を含み、前記離隔距離処理部は、横揺れ状態のそれぞれに対して、前記送電線メッシュデータに含まれるメッシュのうち、前記地形処理部が設定した前記各地点との離隔距離が基準値よりも近いものを特定する。
【0009】
本願発明の第4の側面は、第1から第3のいずれかの側面の離隔距離処理方法であって、前記地形メッシュデータにおける各メッシュに含まれる地点の間の距離は、前記送電線メッシュデータのメッシュの一辺の長さである。
【0010】
本願発明の第5の側面は、送電線メッシュデータにより特定される送電線位置と、地形メッシュデータにより特定される地上位置との離隔距離を用いる離隔距離処理装置であって、地形処理部と、離隔距離処理部を備え、前記送電線メッシュデータのメッシュは、前記地形メッシュデータのメッシュよりも小さく、前記地形処理部は、前記地形メッシュデータにおける各メッシュに対して、当該メッシュに含まれる複数の地点を設定し、前記離隔距離処理部は、前記送電線メッシュデータに含まれるメッシュのうち、前記地形処理部が設定した前記各地点との離隔距離が基準値よりも近いものを特定する。
【0011】
本願発明の第6の側面は、第5の側面の前記離隔距離処理部が特定したメッシュを表示する表示部を備える表示装置であって、前記表示部は、少なくとも一つの地点との離隔距離が基準値よりも近い前記送電線メッシュデータのメッシュと、当該メッシュに最も近い前記地形メッシュデータのメッシュに設定された地点とを線分で結んで表示する。
【0012】
本願発明の第7の側面は、第5の側面の離隔距離処理装置であって、前記送電線メッシュデータが特定する送電線は、当該送電線が横揺れしたときの複数の横揺れ状態を含み、前記離隔距離処理部は、横揺れ状態のそれぞれに対して、前記送電線メッシュデータに含まれるメッシュのうち、前記地形処理部が設定した前記各地点との離隔距離が基準値よりも近いものを特定する。
【0013】
本願発明の第8の側面は、第5又は第7の側面の離隔距離処理装置であって、前記地形メッシュデータにおける各メッシュに含まれる地点の間の距離は、前記送電線メッシュデータのメッシュの一辺の長さである。
【0014】
本願発明の第9の側面は、第5、第7又は第8のいずれかの側面の離隔距離処理装置と、第6の側面の表示装置を備える離隔距離処理システムである。
【0015】
本願発明の第10の側面は、コンピュータを、送電線メッシュデータにより特定される送電線位置と、地形メッシュデータにより特定される地上位置との離隔距離を用いる離隔距離処理装置が備える地形処理部及び離隔距離処理部として機能させるためのプログラムであって、前記送電線メッシュデータのメッシュは、前記地形メッシュデータのメッシュよりも小さく、前記地形処理部は、前記地形メッシュデータにおける各メッシュに対して、当該メッシュに含まれる複数の地点を設定し、前記離隔距離処理部は、前記送電線メッシュデータに含まれるメッシュのうち、前記地形処理部が設定した前記各地点との離隔距離が基準値よりも近いものを特定する。
【0016】
本願発明を第10の側面のプログラムを記録するコンピュータ読み取り可能な記録媒体として捉えてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本願発明の各側面によれば、送電線メッシュデータを小さなメッシュで作成して、地形メッシュデータのメッシュを細かく分けて地点を設定して離隔距離を計算して処理を行うことにより、地形メッシュデータが大きな形状のメッシュ(例えば5mメッシュなど)であっても、十分な精度で離隔距離を計算することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本願発明の実施の形態に係る離隔距離処理システム1の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図1の離隔距離処理装置7の動作の一例を示すフロー図である。
【
図3】表示処理部27による処理の一例を示すフロー図である。
【
図4】送電線処理部13の送電線メッシュデータを生成する処理の一例を説明するための図である。
【
図5】地形処理部17が地形メッシュデータの各メッシュに地点を設定する処理の一例を説明するための図である。
【
図6】表示処理部27による表示処理の一例を説明するための図である。
【
図7】表示装置の他の例を説明するための図である。
【
図8】
図7の表示装置101の動作の一例を示すフロー図である。
【
図9】
図7の表示装置101における表示処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、図面を参照して、本願発明の実施例について説明する。なお、本願発明は、この実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0020】
図1は、本願発明の実施の形態に係る離隔距離処理システム1の構成の一例を示すブロック図である。離隔距離処理システム1は、地理空間情報サーバ3と、測定装置5と、離隔距離処理装置7(本願請求項の「離隔距離処理装置」の一例)と、表示装置9(本願請求項の「表示装置」の一例)を備える。
【0021】
地理空間情報(Geospatial Information)は、地理・空間に関係づけられた情報である。基盤地図情報は、地理空間情報の一例であり、電子地図上における地理空間情報の位置を定めるための基準となる測量の基準点、海岸線、公共施設の境界線、行政区画などの位置情報である。
【0022】
数値標高モデルは、基盤地図情報の一つであり、標高のメッシュデータである。現在、標高及び数値地形について、例えば5mメッシュで提供されている。メッシュデータは、地図上の情報をデジタル化したり、各種統計情報をとったりするために地図上の経緯度方眼として定められた地域メッシュである。5mメッシュは、地域メッシュの一辺が5mの長さのものである。
【0023】
地理空間情報サーバ3は、地理空間情報を提供するサーバである。地理空間情報サーバ3は、例えば基盤地図情報を提供するものである。基盤地図情報が5mメッシュで提供されているため、一般的に、地理空間情報も、5mメッシュで提供されている。
【0024】
測定装置5は、例えば位置を検出しつつ測量処理(例えばレーザー測量、レーダー測量など)によって地表の形状(地形)、植物の状況(樹木の上端など)、標高などを測定する。
【0025】
離隔距離処理装置7は、装置通信部11、送電線処理部13、送電線記憶部15、地形処理部17、地形記憶部19、離隔距離処理部21、不適格組合せ記憶部23、危険組合せ記憶部25及び表示処理部27を備える。
【0026】
装置通信部11は、有線通信及び/又は無線通信により地理空間情報サーバ3、測定装置5及び表示装置9と通信を行う。
【0027】
送電線処理部13は、送電線に関する処理を行う。送電線は、実際に掛けられているものでも、これから掛けることを計画している段階のものでもよい。送電線メッシュデータは、送電線の位置及び形状を特定するメッシュデータである。この例では、送電線メッシュデータは1mメッシュであるとする。本願発明では、送電線記憶部15は、送電線処理部13による処理に用いられるデータを記憶する。
【0028】
地形処理部17は、地表に関する処理を行う。地形メッシュデータは、地形を特定するメッシュデータである。この例では、地形メッシュデータは5mメッシュであるとする。地形処理部17は、例えば、地形メッシュデータにおける処理対象領域の各メッシュに複数の地点を設定する。地形処理部17は、各地点の位置及び標高、植物の状態(実際に測定して得られた状態でも、地表の形状から予想される現在・将来の状態でもよい。)などに関する処理を行う。地形処理部17は、例えば、各地点の位置及び標高を計算する。地形記憶部19は、地形処理部17による処理に用いられるデータを記憶する。
【0029】
離隔距離処理部21は、送電線メッシュデータの各メッシュにより特定される送電線(位置及び標高)と、地形メッシュデータにおける各地点との間の離隔距離を計算する。離隔距離処理部21は、離隔距離が第1基準値よりも近い場合には、不適格な状態であるとする。離隔距離処理部21は、離隔距離が第1基準値よりも遠く、かつ、第2基準値よりも近い場合には、適格であるが危険な状態であるとする。不適格組合せ記憶部23は不適格組合せを記憶する。不適格組合せは、送電線メッシュデータにおいて不適格と判断されたメッシュと、当該メッシュに最も近い地点の組合せである。危険組合せ記憶部25は、危険組合せを記憶する。危険組合せは、送電線メッシュデータにおいて危険と判断されたメッシュと、当該メッシュに最も近い地点の組合せである。
【0030】
なお、第1基準値及び第2基準値は、第1基準値が小さい値であり、第2基準値が大きい値である。また、第1基準値及び第2基準値は、処理対象領域の全体で同じ値でもよく、当該処理対象領域を分割した地域ごとに異なる値であってもよい。例えば、第1基準値及び第2基準値は、各地点での植物の状況に応じて変わる値であってもよい。例えば植物の生育が悪い地域では基準値は小さくてもよいが、植物の生育がよい地域では基準値は大きいことが必要である。例えば、植物の生育が悪い地域では、樹木の上端を20mと想定して2mの余裕を持たせて第1基準値を22mとし、第2基準値を25mとする。例えば、植物の生育がよい地域では、樹木の上端を25mと想定して4mの余裕を持たせて第1基準値を29mとし、第2基準値を32mとする。
【0031】
表示処理部27は、表示装置9において、不適格組合せ及び危険組合せに含まれる送電線メッシュデータ及び地点を表示する。表示処理部27は、表示装置9において、例えば、送電線メッシュデータ及び地形メッシュデータを表示する。不適格組合せに含まれる送電線メッシュデータのメッシュと地点とを黄色の線分で結んで表示する。危険組合せに含まれる送電線メッシュデータのメッシュと地点とを赤色の線分で結んで表示する。不適格組合せにも危険組合せにも含まれない地点は、白で表示する。
【0032】
表示装置9は、表示通信部31、表示制御部33及び表示部35を備える。
【0033】
表示通信部31は、有線通信及び/又は無線通信により離隔距離処理装置7と通信を行う。
【0034】
表示部35は、例えばディスプレイ、タッチパネルなどのように、表示を行うものである。表示制御部33は、表示処理部27の指示に従い、表示部35に対して表示処理を行う。
【0035】
各処理部及び各制御部は、例えば、プログラムによって規定される処理を行うプロセッサなどによって実現することができる。また、各記憶部は、メモリなどの記憶装置によって実現することができる。
【0036】
図2は、
図1の離隔距離処理装置7の動作の一例を示すフロー図である。
【0037】
地形処理部17は、地理空間情報サーバ3及び/又は測定装置5から、地形メッシュデータを取得する(ステップSTA1)。地形処理部17は、地形メッシュデータを地形記憶部19に記憶する。
【0038】
地形処理部17は、地形メッシュデータにおいて、複数の鉄塔の位置及び高さを特定する(ステップSTA2)。各鉄塔の位置及び高さは、利用者の指示に従って設定してもよく、地形メッシュデータから自動的に設定してもよく、地形メッシュデータを用いて利用者の指示を自動的に修正したものであってもよい。地形処理部17は、鉄塔に関するデータを地形記憶部19に記憶する。
【0039】
送電線処理部13は、各鉄塔において送電線が掛けられる位置を特定して、鉄塔間の送電線の位置及び形状を特定する送電線メッシュデータを設定する(ステップSTA3)。ここで、送電線には風などによる横揺れが生じるために、送電線メッシュデータは横揺れによって生じる送電線の複数の横揺れ状態の位置及び形状を特定することを含む。送電線処理部13は、送電線メッシュデータを送電線記憶部15に記憶する。
【0040】
地形処理部17は、地点処理を行う(ステップSTA4)。鉄塔及び送電線の位置が定まるため、地形メッシュデータにおいて鉄塔及び送電線から一定の距離にある範囲を処理対象領域とする。地形処理部17は、地形メッシュデータにおける処理対象領域の各メッシュに複数の地点を設定する。地点間の距離は、地形メッシュデータのメッシュよりも近いものとなる。例えば、地形メッシュデータが5mメッシュであり、地点間の距離は送電線メッシュデータに合わせて1mである。各地点に対して第1基準値及び第2基準値を設定する。第1基準値及び第2基準値は、利用者の指示に従って設定してもよく、地形メッシュデータに分析して得られる日当たりなどによって設定してもよく、地形メッシュデータに植物の生育のよさを示すデータを含めて自動的に設定してもよい。第1基準値は、第2基準値よりも小さい値である。
【0041】
離隔距離処理部21は、送電線メッシュデータから、一つのメッシュを選択する(ステップSTA5)。選択されたメッシュを「対象送電線メッシュ」という。
【0042】
離隔距離処理部21は、対象送電線メッシュと、地形メッシュデータにおける処理対象領域の各メッシュに設定された地点との距離(離隔距離)を計算する(ステップSTA6)。計算された離隔距離で最も短いものを最短離隔距離という。
【0043】
離隔距離処理部21は、最短離隔距離が第1基準値以下か否かを判定する(ステップSTA7)。最短離隔距離が第1基準値以下であるならば、不適格組合せ記憶部23に不適格組合せを記憶してステップSTA11に進む。不適格組合せは、対象送電線メッシュと、当該対象送電線メッシュに最も近い地点との組合せである。対象送電線メッシュに最も近い地点が複数存在する場合には、その地点群において中心となる位置(重心など)に最も近い地点を選択する。最短離隔距離が第1基準値よりも大きいならば、ステップSTA9に進む。
【0044】
ステップSTA9において、離隔距離処理部21は、最短離隔距離が第2基準値以下か否かを判定する。最短離隔距離が第2基準値以下であるならば、危険組合せ記憶部25に危険組合せを記憶してステップSTA11に進む。危険組合せは、対象送電線メッシュと、当該対象送電線メッシュに最も近い地点との組合せである。対象送電線メッシュに最も近い地点が複数存在する場合には、その地点群において中心となる位置(重心など)に最も近い地点を選択する。最短離隔距離が第2基準値よりも大きいならば、ステップSTA11に進む。
【0045】
ステップSTA11において、離隔距離処理部21は、送電線メッシュデータに含まれるすべてのメッシュを選択したか否かを判定する。選択されていないメッシュが存在するならばステップSTA5に戻る。ステップSTA5において、離隔距離処理部21は、選択されていない送電線メッシュデータから一つのメッシュを選択し、その後の処理を行う。すべてのメッシュを判定したならば処理を終了する。
【0046】
図3は、表示処理部27による処理の一例を示すフロー図である。
【0047】
表示処理部27は、地形メッシュデータ、送電線メッシュデータ及び鉄塔に関するデータを読み出す(ステップSTB1、STB2及びSTB3)。
【0048】
表示処理部27は、不適格組合せ及び危険組合せを読み出す(ステップSTB4)。
【0049】
表示処理部27は、表示装置9において、表示処理を行う(ステップSTB5)。例えば、表示処理部27は、送電線メッシュデータ、地形メッシュデータ及び鉄塔に関するデータを表示する。表示処理部27は、表示装置9において、不適格組合せに含まれる送電線メッシュデータのメッシュと地点とを黄色の線分で結んで表示する。危険組合せに含まれる送電線メッシュデータのメッシュと地点とを赤色の線分で結んで表示する。不適格組合せにも危険組合せにも含まれない地点は、白で表示する。
【0050】
図4は、送電線処理部13の送電線メッシュデータを生成する処理の一例を説明するための図である。
【0051】
図4(a)にあるように、鉄塔に関するデータを利用して鉄塔55及び57の位置と、これらの鉄塔に送電線が掛けられる位置を特定する。実際の送電線は、鉄塔55に送電線が掛けられる位置と、鉄塔57に送電線が掛けられる位置とを結ぶ線分59にはならず、中央が下がった形状61になる。送電線メッシュデータは、中央が下がった形状61を特定するメッシュデータである。通常、鉄塔には複数の送電線が掛けられる。送電線メッシュデータは、複数の送電線のそれぞれの形状を特定する。
【0052】
図4(b)にあるように、送電線は、風などによって横揺れを生じる。位置67は、横揺れがない状態での送電線の位置である。点65は、線分59上の点である。横揺れをする場合には、温度低下などによって、送電線は、点65を中心とする一定の半径での円弧上ではなく、大きく横揺れするほど半径が小さくなる。送電線メッシュデータは、複数の横揺れの状態にある送電線の位置及び形状を特定する。この例では、送電線メッシュデータは、15度、30度、60度の横揺れが生じたときの送電線の位置71、73及び75を特定する。横揺れ状態は、例えば鉄塔から遠ざかる状態を考慮する。
【0053】
例えば
図4(a)を参照して、本願発明の判定処理の概要について説明する。地形51は、地形メッシュデータにより特定される。樹木などの植物は、地形51から所定の高さにある樹木先端位置53まで成長することが予想される。離隔距離処理装置7は、離隔距離を利用して送電線の形状61と樹木先端位置53が重なる可能性のある位置63を特定する。
【0054】
従来、平面図及び縦断図を利用して、このような判断を行っていた。しかしながら、縦断図は、例えば、縦が400分の1、横が2000分の1のスケールで作成されており、これを3次元図面で判断することは困難であるとされていた。また、地形メッシュデータが5mメッシュであり、十分な判断の精度が得られないとされていた。さらに、横揺れがない状態(
図4(b)の位置67)のみを対象としていた。
【0055】
離隔距離処理装置7は、送電線メッシュデータのメッシュを地形メッシュデータのメッシュよりも細かいものとし、地形メッシュデータの各メッシュを送電線メッシュデータに合わせて細分化して離隔距離を計算することにより、十分な精度を確保して、離隔距離を計算できるものとした。さらに、横揺れが生じた場合も含めて判定することができる。さらに、地形メッシュデータのメッシュが大きいことから、地形の表示のために必要となる地形メッシュデータのデータ量を少なくすることができる。
【0056】
図5は、地形処理部17が地形メッシュデータの各メッシュに地点を設定する処理の一例を説明するための図である。
【0057】
図5(a)にあるように、地形処理部17は、鉄塔に関するデータを利用して鉄塔55及び57の位置と、これらの鉄塔に送電線が掛けられる位置を結んだ線分59を特定することができる。位置77及び79は、地形メッシュデータにおいて鉄塔及び送電線から一定の距離にある位置である。位置77及び79の間にある範囲を処理対象領域とする。
【0058】
図5(b)にあるように、地形処理部17は、地形メッシュデータにおける処理対象領域の各メッシュに複数の地点を設定する。この例では、処理対象領域の5mメッシュに対して、1mメッシュに分割して1mメッシュの各頂点によって地点を設定する。
【0059】
図6は、表示処理部27による表示処理の一例を説明するための図である。
【0060】
送電線メッシュデータのメッシュ81は、最も近い地点83との離隔距離が第1基準値よりも近いとする。メッシュ81と地点83の組合せは、不適格組合せに含まれる。
【0061】
表示処理部27は、メッシュ81と地点83を結ぶ線分を、不適格組合せの表示として、例えば黄色の実線で表示する。
【0062】
送電線メッシュデータのメッシュ85は、最も近い地点87との離隔距離が第1基準値よりは遠いが第2基準値よりも近いとする。メッシュ85と地点87の組合せは、危険組合せに含まれる。
【0063】
表示処理部27は、メッシュ85と地点87を結ぶ線分を、危険組合せの表示として、不適格組合せとは異なる態様で表示する。例えば、赤色の破線で表示する。
【0064】
図7~
図9を参照して、表示装置の他の例を説明する。この例では、表示装置はウェアラブル端末であり、作業者は表示装置を装着して現場を歩くとする。
【0065】
表示装置101は、位置検出部103と、表示制御部105と、表示部107と、送電線記憶部109と、地形記憶部111と、不適格組合せ記憶部113と、危険組合せ記憶部115を備える。
【0066】
送電線記憶部109、地形記憶部111、不適格組合せ記憶部113及び危険組合せ記憶部115は、それぞれ、
図1の送電線記憶部15、地形記憶部19、不適格組合せ記憶部23及び危険組合せ記憶部25と同じデータを記憶する。ただし、表示装置101における処理に必要のないデータは保持しなくてもよい。
【0067】
図8は、
図7の表示装置101の動作の一例を示すフロー図である。
【0068】
位置検出部103は、表示装置101が存在する位置と、表示装置101の向きを検出する(ステップSTC1)。
【0069】
表示制御部105は、位置検出部103が検出した位置及び向きを参照して、表示される不適格組合せ及び危険組合せを読み出す(ステップSTC2)。
【0070】
表示制御部105は、表示処理を行う(ステップSTC3)。表示制御部105は、不適格組合せに含まれるメッシュと地点を結ぶ線分を表示し、危険組合せに含まれるメッシュと地点を結ぶ線分を不適格組合せとは異なる態様で表示する。
【0071】
図9は、
図7の表示装置101における表示処理の一例を示す図である。表示装置101は、例えば、作業者が装着する眼鏡型のウェアラブル端末121により実現される。
【0072】
送電線メッシュデータのメッシュ123は、最も近い地点125との離隔距離が第1基準値よりも近いとする。メッシュ123と地点125の組合せは、不適格組合せに含まれる。
【0073】
表示制御部105は、メッシュ123と地点125を結ぶ線分を、不適格組合せの表示として、例えば黄色の実線で表示する。
【0074】
送電線メッシュデータのメッシュ127は、最も近い地点129との離隔距離が第1基準値よりは遠いが第2基準値よりも近いとする。メッシュ127と地点129の組合せは、危険組合せに含まれる。
【0075】
表示制御部105は、メッシュ127と地点129を結ぶ線分を、危険組合せの表示として、不適格組合せとは異なる態様で表示する。例えば、赤色の破線で表示する。
【0076】
このように、現場において、作業者は、線分が表示された位置で、離隔距離が十分でない場所を把握することができる。さらに、その線分の上端を見上げれば送電線の位置を特定でき、その線分の下端をたどれば問題となる位置を特定できる。
【符号の説明】
【0077】
1 離隔距離処理システム
3 地理空間情報サーバ
5 測定装置
7 離隔距離処理装置
9 表示装置
11 装置通信部
13 送電線処理部
15 送電線記憶部
17 地形処理部
19 地形記憶部
21 離隔距離処理部
23 不適格組合せ記憶部
25 危険組合せ記憶部
27 表示処理部
31 表示通信部
33 表示制御部
35 表示部
101 表示装置
103 位置検出部
105 表示制御部
107 表示部
109 送電線記憶部
111 地形記憶部
113 不適格組合せ記憶部
115 危険組合せ記憶部
【要約】
【課題】 メッシュデータを利用して計算される離隔距離を用いて処理を行うことに適した離隔距離処理方法等を提案する。
【解決手段】 離隔距離処理装置7は、送電線メッシュデータにより特定される送電線位置と、地形メッシュデータにより特定される地上位置との離隔距離を用いて処理を行う。送電線メッシュデータのメッシュは、地形メッシュデータのメッシュよりも小さい。離隔距離処理装置7が備える地形処理部17は、地形メッシュデータにおける各メッシュに対して、当該メッシュに含まれる複数の地点を設定する。離隔距離処理装置7が備える離隔距離処理部21は、送電線メッシュデータに含まれるメッシュのうち、地形処理部17が設定した各地点との離隔距離が基準値よりも近いものを特定する。
【選択図】
図1