(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】仮想3次元軌道上を走行するバリアフリー市街動力車
(51)【国際特許分類】
B60P 3/00 20060101AFI20240927BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B60P3/00 A
G08G1/00 X
(21)【出願番号】P 2023132762
(22)【出願日】2023-08-17
【審査請求日】2023-08-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】305037318
【氏名又は名称】山田 明
(72)【発明者】
【氏名】山田 明
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-311909(JP,A)
【文献】特開2007-237862(JP,A)
【文献】特開2019-026051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-25/00
B60P 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)
走行ユニットで支えられたフラットな床面には、車椅子、ベビーバギー、歩行補助具、買い物用のキャリーを置くための平らなスペース
を備え、
(2)
走行ユニットは、リンク、ストラットで車輪を支え、
・走行時には、床を適当な高さに保持するが、
・乗り降り時には、床を、
路面に平行に、路面まで下げることで、
段差なく、バリアフリーとすることができる。
以上(1)、(2)の特徴を備えたことを特徴とする、バリアフリーの市街動力車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バリアフリー動力車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人力、あるいは動物の力による交通機関は、産業革命以降、機械動力で動く交通機関となり、公共交通機関は、鉄道、電車、市街電車、バス、タクシーと分化、発展してきた。
その後、車社会といわれるような、誰もが車に乗る社会が現出したのは当然の流れであった。
ところが、ここにきて、運転手の老化という現象で、そんな車社会の限界が突然見えることとなった。
自動運転技術が次の解決策と考えられてはいるが、実はそんな簡単なものではないと考える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
本発明に関する公知技術として次の特許文献をあげることができる。
【文献】特開2022-061407
【文献】特開2020-189501
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
まず、現状の欠点を列記する。
日本において、車社会という概念ができたのは、戦後のことである。それから約70年が経過している。
日本で自動車が広く普及しはじめたのは、今からおよそ30年、40年ほど前のことである。今更ながら、驚くことだが、運転者が例えば90歳というような高齢に達するという経験は、人類にとって、実ははじめての経験だったのである。
高齢者はやがて運転免許返納を求められ、車に乗れない状態が出現することになる。
俗に言う、「梯子を外された」状況がここに出現するのである。
【0005】
ここ50年ほどの間に、人々と商品(生活資材)との間の関係は激しく変化した。
商店と商品の構造変化については、次の2つの点が重要である。
1:ITの普及によって、ITの画面で品物を発注し、届けてもらう形態ができた。
2:車社会を前提として、都市の中心地から離れた場所に、大きな店舗が作られる形態になった。
IT社会、車社会は、駐車場つきの大型店舗を有利にし、従来の小さな商店の並ぶ商店街は「シャッター街」となってしまった。
【0006】
東京のような都会では、地下鉄、バスなどの豊富な交通インフラがあって、「電車+徒歩」でも生活にほぼ支障がないが、地方では車での移動が当たり前になり、車がなければ通勤もできず、買い物さえできなくなる構造となってしまっていた。
【0007】
車万能の社会であり、日常の生活用品の買い物ですら街の中心から離れた場所に、大規模店、ショッピングモールができる時代、免許を返納した高齢者、免許を持たない若年者、車に乗れない人々、自分で歩けない子供、子供をベビーバギーに乗せた人たち、老人を抱えた人たちは、交通弱者となってしまったのである。
【0008】
特に高齢者では、足腰が弱くなり、杖をついたり、歩行用のカートを用いたり、生活のための物資を買うにも、ショッピング用のカートを用意したりが当たり前になってしまう。さらには車椅子などを利用するケースも稀ではなくなる。(参考
図15)。
ところが、こうした歩行補助具やベビーバギーなどは、バスにもタクシーにも簡単には乗せることができない。わずか20センチ程度の段差すら、登ったり、バギーを押し上げるのは、彼らにとって容易ではないのだ。
【0009】
そもそも、車椅子に乗るような人は、普通、体力がないので車椅子を折りたたむことさえできないのだ。
結局、車椅子に乗った人は、エレベーター付きの介護専用車でないと移動ができないことになる。さらに、電動車椅子などは、重いものでは重量が百キロ程度もあり、人の手で持ち上げるには数人が必要である。
これら、車社会の中に取り残され、放置されている、交通弱者の救済、免許返納難民の救済の方法について考えねばならない。
【0010】
公共の交通機関として、大都市では地下鉄、市街電車があるが、地方ではバスと高価なタクシーが中心である。最近ではミニバス、実験的には自動運転のミニバスなども動き始めているが、まだまだ十分ではない。
【0011】
●「ポスト車社会」に向かって。
【0012】
バスとタクシーの中間帯に、市街電車的な、小さなバスのような乗り物、ラッシュ時の多人数と日中、夜の少人数をうまく使いわけることができる、柔軟な構造をもった、公共の交通機関が必要である。
俗に言われた、車社会の次の社会、「ポスト車社会」を今から考えねばならない。
それこそが、次世代の都市交通の形である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
●本発明のコンセプト。
【0014】
車両の走る路面には、二つの種類がある。
1:不安定路面(変形路面、でこぼこ路面、石だらけの路面)
2:安定路面(固定路面、平面路面)
不安定路面(変形路面、でこぼこ路面)とは、5センチ程度の石が、表面の土の中にいくつも混じっているような路面である。砂、砂利の路面、ぬかるんだ路面、石ころだらけの河原、などである。
【0015】
それに対して、安定路面(固定路面、平面路面)とは、容易には変形しない路面、アスファルト、コンクリート、継ぎ目の目立たない石畳、そして鉄道レール、モノレールなどである。
【0016】
初期の鉄道は、ほとんどの路面が石ころ混じり、泥だらけの道であったとき、そこに枕木を置いて鉄のテールを敷くことで、あたかも水の上を走るがごとくスムーズに車両を走らせることができた。
初期の機関車の車輪のサイズは、自動車エンジンのクランクシャフトに車輪をつけたような構造で、満足な変速機もなかったので、直径は大きく作られた。
また、このころの習慣、一般常識として、機械部品は非常に重厚に作られた。
【0017】
現在一般化している自動車は、その完成時、石ころ混じりの非舗装路をも走るため、直径30センチから50センチの車輪を用いている。この30から50センチの車輪直径は時速100キロを超える高速走行でも効果があり、この直径は常識であるとされてきた。
【0018】
ところが、周囲を見渡すと、現在では、路面の多くが安定路面(固定路面、平面路面)になっているのである。そうすると、石ころだらけ、泥だらけの変形路面を走らないという条件で考えられてきた、動力車の基本形態を考え直す余地が、ここにある。
しかも、半導体とソフトによる細かな制御が可能となっているので、車輪部分を軽く作り、道路の細かな凹凸を認識し、高速演算し、凹凸に合わせて振動できるようにする方式が可能となった。
モーターが軽くなり、制御も簡単になったので、車輪の操縦性を制御することも容易である。
【0019】
ここで、この発明の目標をかかげる。
1)石ころだらけのような変形路面を走らず、アスファルトやコンクリートの上、鉄道のレールなどの安定路面(固定路面、平面路面)の上を走る。
2)高速道路などを走らない。また高速(たとえば時速70キロ以上)で走行することを考えない。
3)客車の車輪を小さくし、バネ下重量を軽くし、地面からの情報を電子制御で受け取り、未来予測しながら、車高を一定に保ち、不快な振動を和らげる。
4)乗客が乗り降りする時、客室の床を地面スレスレまで下げる機能を持ち、バリアフリーとし、車椅子、買い物カゴ、買い物ワゴン、子供のバギー、をはじめ、一人乗り電動車、自転車などの乗り物までも、段差なく乗り込ませることができる車両を考える。
5)連結車両とし、客車をいくつか転結することで、運搬する人数を、柔軟に変えることができ、かつ客車の連結の組みかえが容易に行え、路線を変更できるようにして、細かな対応ができるようにする。
6)路面には、他の車からも見えるように、帯状の2次元レールが引かれており、それを読み取り、さらにGPSおよび周辺の視野を分析することで、仮想3次元軌道(レール)を作構成する。
その仮想3次元軌道(レール)上を、コントローラー(ハンドル)を前後に動かす程度の軽い指示で、正確な走行を行う。
【0020】
以上をまとめると、本発明では、
1)車体をリフトアップするバリアフリー市街動力車。
2)先導車と、連結装置によって連結された後続車、客車によって構成される市街動力車。
3)仮想3次元レール上を走行する市街動力車システム。
などという考え方で、これらの難問を解決しようと試みる。
【0021】
以下、図を参照しながら説明を行う。
【0022】
バリアフリー車
●客席床部分と走行ユニットの特徴
【0023】
ここに説明するバリアフリー市街動力車の、客席部分の床は、薄く平坦に構成されている。
たとえばハニカム構造、あるいはそれに似た複合材料のような軽く、堅固なものが望まれる。
この平坦な床に、走行ユニット(
図7)が複数個とりつけられている。
走行ユニットは、それぞれ異なったものでもよいが、同一、あるいは類似のもののほうが、部品の共通化が図れ、安くできるだろう。
【0024】
図1は、運転席部分とか客席部分がくっついているものである。
図2は、スライドできる構造でつなげてあるもの(
図2)である。
走行ユニットは、
図7にある。
図3、
図4は、走行時は前の大きな車輪で駆動し、その後ろには小さな車輪を備えた走行ユニットを複数とりつけているものである。
【0025】
図3では、一台の運転席(先導車)部分1と、その後ろに1台から複数台連結される客車部分2からなる。(
図3)
運転席部分と客車部分は連結装置7で連結され、さらに客席部分同士も連結装置7によって連結されることで、一連の車列を構成することができる。
【0026】
この走行ユニット、脚部は、一般の乗用車などに比較して、車輪部を小さくし、リンク構造で支える、(
図3)、(
図7)、あるいはストラット、伸縮性ショックアブソーバーのようなもので支える構造となっている。(
図4)
通常の乗用車では、シートから最低地上高までの高さは40センチぐらいはある。そのため、シートの下に車輪が収納できるようにするには、最大30センチぐらい、通常的には20から25センチの直径のタイヤなら収納することが可能である。
逆に言えば、走行ユニットの大きさも最大で高さ30センチメートル程度に形成できると、そっくり座席下の部分に収納できる。
もっとも、走行ユニットそのものを、ボディの外に出してしまう方法もある。そのときは、ボディ内部が広くとれる。
【0027】
走行ユニットは、走行時には床を地面から20センチほど持ち上げて走行するが、乗客が乗り降りする時には、リンクを折りたたむ、あるいはストラットを縮めるかすることで、フラットな床面を、路面スレスレまで下げることで、バリアフリーとすることができる。
図1、
図2、
図3、
図4では、上が走行時、下が乗り降り時の図として、比較している。
床の端にフラップ状の板があれば、さらに路面からシームレスに移動ができるようになる。
【0028】
走行ユニットは、フラットな床構造の数箇所に、ほぼ同様、類似の構造のものを3個以上とりつける方法がある。客車の長さ、客席の列数などとも関係するが、4個とか6個、8個などとりつける。(
図1、
図2、
図3、
図4、
図7、
図8)
この走行ユニット
図7は、リンクを折り畳んだ時、客席の椅子の下位置に収納されるのが好ましい。あるいは車体前後の壁に近く邪魔にならない位置にとりつけられるのが好ましい。
車輪はおおむね直径30センチ以下、できれば20から25センチ程度であると、折りたたんだり、伸縮性ショックアブソーバーの先に取り付けて、折りたたんだり、収納したりするとき、椅子のクッションの下位置等にあわせることもできて、好都合である。
【0029】
車輪の方向を変える場合、回転軸Eを使い、走行ユニット全体を回転させる場合と、回転軸Fを使い、車輪部のみ回転させる場合、さらに両方を回転させる場合が考えられる。
【0030】
いずれの回転軸を使うにせよ、車輪が小さく、操舵機能があるので、進行方向(車体の前後方向)に直角方向にも操舵することもでき、これによって通常の軌道から外れ、新たな軌道まで移動することができ、瞬時に客車の組み換えを行うことができる。
鉄道では、レーンチェンジする際に、複雑な構造のレールを用意する必要があったが、仮想3次元レールでは、IT上でレーンチェンジの路線を瞬時に作り出すことが可能である。
【0031】
図8下段に、連結装置を切り離し、客車の車輪を90度傾けることで、進行方向(車体の前後方向)と直角に平行移動できる状態となった客車を示している。
図9は、軌道29から軌道30へ移動している様子を上から見た図で示している。
(
図8の下図、
図9)
【0032】
●走行のセンサー
【0033】
走行は、センサー部17(
図7)で、路面に描かれた線をスキャンし、それに向かって車を操舵し、もうひとつのセンサー17で、結果的に3次元レールからずれていないか再度確認、補正する機能を持つ。
【0034】
さらに、センサー部17では、路面からの距離も測定し、路面の凸凹の逆位相の振動を車輪部に与え、かつ客車を支える4輪、あるいは6輪、8輪全体のバランスをみて、床が路面に平行になるように制御できることから、スムーズな走行を可能にする。
【0035】
走行ユニットは、できれば、それぞれが操舵機能を持ち、制御によって、前の車輪が走行したのとほぼ同じ軌跡を走行するよう組まれており、一般的な車や牽引車のように、内輪差などは発生しない。そのため、軌道上を忠実に走行することができる。
図7のE、Fが操舵の回転軸である。
すべての走行ユニットが動力操舵、動力回転、動力位置補正を行うのがベストであるが、一部を従動にすることもできる。
【0036】
さらに、床と縣架装置の取付部分を、調節可能とすることで、左右車輪の幅を調整できるため、車輪を通常のゴムタイヤではなく、金属レールに合うような車輪とすることで、既存のレールの上を走ることもできる。
図7のJとIの移動で、軸間距離が調整可能である。(
図7)
また、走行ユニットのリンクを利用することで、軸間距離を調整することもできる。(
図11)
【0037】
連結器7は、従来のような単純なものではなく、複数個備え、電子制御され、一種の背骨や手足の関節のように運転席と客車部分が緊密に連結され、電子的に開放と連結を行えるようにできている。
連結器7’’(
図14)は一台の後部にあり、電磁クラッチで車両とつながり、前の車両と後ろの車両を繋ぐ長さを変えることで、前後の車両の繋がり角度、連結の角度を変えることができる。
【0038】
図2の、スライド型連結器7''''を備えた車両では、客車のみを上下させることもできる。
【0039】
また、この連結器部分が伸縮できる構造になった連結器7’’(
図14)を用いると、車輪が操舵しなくても、前の車室と後ろの車室の関係位置を変化させることができる。
図14中段に示すように、前後の車室を折れ曲がったように調整することで、曲がった軌道に沿うように車列を変形でき、仮想軌道レールを忠実にトレースできる。また、この部分を動力で動かすことで、一種の操舵性を得ることもできる。
【0040】
また、リンク式の走行装置の場合、走行装置の回転軸を調整し、リンクを走行方向から90度近く回転させ、タイヤ部分を客車の外に大きく張り出させることもできる。
図10。このように張り出させた状態を
図11に示す。
このように張り出させることで、昆虫の足のような動きにすることもできる。
【0041】
仮想3次元軌道車両
【0042】
仮想3次元レールの特徴
【0043】
このような車両を、公共交通機関として自動車用の道路上を走らせるには、仮想3次元軌道なるものがあると都合がいい。次に、この仮想3次元軌道について述べる。
【0044】
●仮想3次元レール
【0045】
普通の自動車走行用の道路の上に、ペンキのような塗料で帯状の線が描かれている。
これが2次元(平面)レールである。この2次元レールは、スキャナー読み取り装置で読み取ることができる。
このペンキ等による線は、一般走行の車に、ここは、バリアフリーの市街電動車が走る場所であることを示すという副産物的な効果もある。
【0046】
この路線はITのGPSの地図上にも書き込まれている。
さらに周囲の環境背景をも認識し、それを書き込むこともできる。
このようにして、ITの地図上に仮想3次元レールが完成され、路線が敷設される。
【0047】
この仮想レールの上を走る車は、道路上の色の帯をスキャンして、その上をトレース走行する。さらに、GPSで位置確認を行い、周辺の景色を加味して、自分のいる位置を確認でき、あたかも3次元のレールの上にのせられているように、路線レールの上を極めて正確にトレース走行できる。
【0048】
2次元の線が消えかかっていたりしても、GPS、風景と合わせて瞬時に補正ができる。
また、軌道上に他の車が止まっていても、その風景とGPS解析で、塞がれた仮想レールの脇に、新たな仮想レールを新設し、障害物を避けて、元の仮想3次元レールに戻れるようにすることができる。
【0049】
ハンドルなしで、前後のコントローラーだけで運転が可能である。
自動運転にすることもできるが、客席に歩行不自由者が座るので、人が運転席にいて、運転したほうが安全である。ハンドル操作がなく、前進、停止、後退だけの操作であり、自動ブレーキ装置があるので、運転そのものは容易である。
【0050】
この仮想3次元レールは、普通の車両と路面を共有することになる。
走行の際には、路面上で、組み換えを行う必要、前に駐停車している車を追い越す必要も出てくる。この場合は、追い越し、組み換えなどの路線を瞬時に作り出し、道路上の2車線を使ってそれを行う。
図13上の段には、仮想3次元軌道車の、一番後部に積まれた、2車線使用のことわりを示す拡張板と、追い越し禁止札を示し、下の段では、札の向こう側で車両が進行方向(車体の前後方向)と直角に平行移動している図を示した。
図9は、同じように、路面上で平行移動して編成の組み換えを行っている様子を上から見たところを示している。
【0051】
編成の組み換えの時、走行ユニット6は、どのような角度にも動くことができるので、客車等が進行方向(車体の前後方向)と直角に移動できる。
レール上に障害物があった場合でも、それを避けるために、即座に新設の路線を作り、その新しい路線上に移動したり、車列の中の客車を組み換え、編成の数を変えたり、編成の順序を変えたりすることが容易にできる。
【0052】
従来の3次元レール(主に鉄レール)では、敷設に非常な経費がかかるが、2次元レールはペイントだけであり、それすらも無しで済ませようと思えば済ますこともできる。
この2次元レール(仮想3次元レール)の特徴、長所は、なんといってもその柔軟性である。
ある路線から別の路線に、路線変更するのに、IT上の操作が容易であり、かつ走行ユニットの調整のみで横移動組み換えが可能なので、さまざまな路線上に移動できる点である。
従来、電車はレール切り替えが必要ではあるが、運転そのものは前進・後進だけであった。
一方、路線バスは、路線については、どのような道でも走れるが、操縦する技術が必要であった。
本発明の仮想3次元レールでは、路線はIT上にあり、変更も可能であり、さまざまな路線にすぐに移行ができる特色がある。かつ、操縦はIT上で自動で行える。
【0053】
図6はこの仮想3次元レール上を走る車両の走行の概念図を示している。路線が集中している街中では、一列に繋がって長い編成になっており、各路線部に分岐したあたりからは、切り離されて短い編成になる。
今までのバスのやり方(
図5)では、路線が集中していても、末端部に行くバスが並列で重複して走る必要があったが、
図6の方式では、集中する場所では、並列に走行することをやめて、長い編成の車両を使い、必要に応じて分岐する方法を用いる。
【0054】
朝晩のラッシュ時には、人が多い場所に、長い編成を集中的に用い、人数を優先した席配分にしてラッシュの時間帯を過ごすことができる。
一方、ラッシュ明けからは、各路線部に、短い編成の車両を分散し、広いスペースで、歩行の補助具、自転車などもいっしょに運べるようにする。
日中、乗る人が少ない場合、こうした小さな編成で動かすことで経費削減ができる。また、このような各路線部では、スマホで情報を集め、リクエスト方式をとり、乗る人が集まった時に運行するというような方法も取れるし、自動運転にすることもできる。
【0055】
仮想軌道上を走行する車両の運転では、車の前進、後進を操るコントローラー、そして緊急のブレーキだけで、十分に望む場所まで走行移動することができる。タブレット状の案内板に、どこに進むかを入力すれば、自動的に路線が選ばれ、前進のコントローラーを動かせば路線通りに運行する。
前方の障害物に対して、自動ブレーキ設備、信号機の解読装置を持っているので、遊園地のゴーカート以下の操作で動かすことができ、運転免許等の特殊技能は不要であり、極めて安全である。
【0056】
しかも、スマホ登録が瞬時にできるので、自分の望む場所まで、仮想軌道を延長でき、前後指示だけで、ほぼ自動運転が可能である。
【0057】
現在、自動運転のバスなどが動いているが、多くの市街車の中を、自由走行の車と混じって、車線変更などを行いながら動くのは非常にむつかしい。常時路線変更が必要になるからである。
さらに、さまざまなトラブルが生じる可能性があり、結局、人間の管理が必要になる。
【0058】
この発明における仮想3次元軌道は、決まったレール(通常の3次元レール)の上を動くのと同じである。
軌道上に万が一障害物があった場合でも、それを感知し、自動ブレーキがかかる。そして、それをよける軌道は瞬時にIT上に作成され、運転手はブレーキをゆるめ、進むかどうかを判断すればよい。追い越す場合は、2車線を利用して、追い越しをかける。
【0059】
乗客は、スマホなどで自分の行きたい駅を登録する。それによって、市街動力車は、路線の選択を行い、乗客それぞれにあわせて、いくつかの路線を探し出し、路線が異なるものは、組み換えを行うことで、お客を行きたい場所にとどけることができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
自動運転の技術が発展しているが、車の運転が完全自動化したときには、また異なる、新たな問題が発生する。それは、ドア・ツー・ドアになったとき、人の体はどうなるかということになる。
結局人間には、足を使って動く運動が必要となる。そうであってみれば、ドア・ツー・ドアではなく、自分で歩く、という行為をともなった、このような公共交通機関があったほうがよいことになる。
自動運転は、5体ともに健全な人が乗るには無理がない。
しかし、歩行に問題を抱えた人、扱いにくい荷物を抱えた人、心臓や他の臓器に問題が発生する可能性の高い人、歩行具やキャリア、自転車、手押し車などを乗せるには、無人の自動運転は危険そのものである。
この市街電車は、バリアフリーで、かつ乗客に歩く楽しみを与えることができる点がその最大のメリットである。
【0061】
ここで、もう一度整理を行う。
【0062】
以上をまとめると、
(請求項1)
(1)座席以外に、車椅子、ベビーバギー、歩行補助具、買い物用のキャリーなどを置くための平らなスペースのあるフラットな床面を持ち、
(2)リンク、ストラットなどで車輪を支え、
・走行時には、床面を適当な高さに保持するが、
・乗り降り時には、床面を、路面スレスレまで下降させることによって、
バリアフリーの床面を形成することができる、走行ユニットを、複数個以上備えて、床面を支えている、
以上(1)、(2)の特徴を備えたことを特徴とする、バリアフリーの市街動力車。
(請求項2)
走行ユニット全体、もしくは車輪部の、少なくともどちらか一方に、操舵機構をもち、
車輪部のいずれかに、動力回転ができるものがあることにより、
進行方向(車体の前後方向)と直角方向にも、進行方向と逆方向にも操舵することができることで、
走行路線の変更が容易にできることを特徴とする、請求項1掲載の、バリアフリーの市街動力車。
(請求項3)
走行ユニットが、
(3)走行ユニットの、リンク部を折りたたんだ、あるいはストラットを縮めたとき、
コンパクトなサイズとなり、座席の下に、大部分が収納できるような構造になっている、もしくは、
(4)車両の四隅、
(5)あるいは車両の外部に取り付けられる形状、
であることによって、座席以外に広い床面を形成でき、乗り降り時に、そのフラットな床面を路面スレスレまで下降させることができる構造になっていることを特徴とする、請求項1、請求項2掲載の、バリアフリーの市街動力車。
(請求項4)
駆動部をもつ運転席部と、床面を路面スレスレまで下降させることができる客席部からなり、
客席部の後部に連結装置を備え、連結車両を形成することができることを特徴とする、請求項1、請求項2、請求項3掲載の、バリアフリーの市街動力車。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図2】動力車部分とつなげられた客車部分。スライドで、客車部分のみ上下できる。走行時と、乗り降り時。
【
図3】リンクで支えているバリアフリー車を比較した図。上:走行時、下:床を下げてバリアフリーにした状態。
【
図4】ストラットで支えているバリアフリー車を比較した図。上:走行時、下:床を下げてバリアフリーにした状態。
【
図8】バリアフリー車。上:走行時、中:乗降時、下:横移動の図。
【
図9】組み換えの説明図 上:連結時、下:組み換え移動時。
【
図10】走行ユニット、アームを回転させたところ。
【
図11】アームを回転させ、車輪の軸間距離を変化させているところ。
【
図13】2車線利用で連結変更時、車両後部に禁止札が出るところ。
【
図14】操舵性のある連結器で操舵したところ。上:直進時。 中:曲がるとき。 下:連結器をつけたようす。
【
図15】参考図:車社会における交通弱者の概念図。バリアーが苦痛な人々の図。けが人、歩行難渋者、荷物車保持者、荷物車保持者、歩行車利用者、幼児バギー随伴者、車椅子移動者、介護随伴者など、歩行に障害、苦痛のある人々。
【符号の説明】
【0064】
a 通常人
b,c,d,e,f,g,h,i,j.k,l 歩行不自由者
1運転車
2客車
2’平行移動した客車
3運転装置
4運転手
5乗客
6走行ユニット
6’走行ユニットを折りたたんだ状態
6’’車輪を走行方向と直角にして、組み換え状態にしたところ
7連結機構
7’連結装置を切り離し、組み換え状態にしたところ
7’’操舵機能を備えた連結器
7'''電磁クラッチ
7’’’’前部と後部の単純な接続、もしくはスライドなどによる結合
7’’’’’前部と後部の間の隔壁
8走行時の車高
8’走行ユニットを折りたたみ、地面スレスレにボディをおろした様子
8’’車輪方向を進行方向(車体の前後方向)直角にしたときの車高
12走行ユニット、車台との連結部
12'走行ユニット連結部を動かして、軸間距離を変えたところ
13 アーム
14 アーム
15 予備の操舵回転軸
16 車輪、レール用の車輪
17 車高用の読み取り装置
18 昇降機、ショックアブソーバー
(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、路線の終点と路線のバス
19 学校、会社など、乗客の多い場所
20 バス
(6)、(7)重複している路線部
21重複部の長い連結
22、23、24、25、26 切り離されて、短くなった連結。
27 追い越し禁止札用のパンタグラフ
28 追い越し禁止札
A リンク軸
B リンク軸
C リンク軸
D 車軸
E リンク基部回転部
F 車輪部回転部
G 前
H 後
I、J 進行方向に直角方向の移動
【要約】 (修正有)
【課題】バスと自家用車の中間に、歩行障害などを持つ人々が利用しやすい公共交通機関を提供する。
【解決手段】道路上に引いた2次元の帯および、IT上に敷設された仮想3次元レールの上を走行する市街電車、市街動力車であり、客車部は、フラットな板状の床に、走行ユニット6を複数個とりつける。走行ユニット6は、比較的小さな車輪と、複数のリンク、またはストラットなどで、構成され、走行時には、床を持ち上げて走行するが、停車時、乗り降り時には、床が地面に触れる程度まで下げられ、バリアフリーとなり、歩行困難者、さまざまな歩行補助具を用いている人たちにも乗り降りしやすくなる車両である。
【選択図】
図1