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  • 特許-ポリマーの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ポリマーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/01 20060101AFI20240927BHJP
   C08F 220/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C08F2/01
C08F220/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023175567
(22)【出願日】2023-10-10
(62)【分割の表示】P 2022094341の分割
【原出願日】2018-08-23
(65)【公開番号】P2023171538
(43)【公開日】2023-12-01
【審査請求日】2023-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】寺西 直史
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-543021(JP,A)
【文献】特開2013-185005(JP,A)
【文献】特開2013-144785(JP,A)
【文献】特開2012-107163(JP,A)
【文献】特開2015-127425(JP,A)
【文献】特開2015-000895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-2/60、6/00-246/00、301/00
B01J 10/00-12/02、14/00-19/32
G03C 3/00
G03F 7/004-7/04、7/06、7/075-7/115、
7/16-7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の液体を混合可能な流路を備えるマイクロリアクターを用い、重合開始剤の存在下で2種以上のモノマーを含むモノマー成分をラジカル重合するポリマーの製造方法であって、
前記モノマー成分が、酸分解性基を有するモノマー及び[-C(=O)-O-]、[-S(=O) -O-]、又は[-C(=O)-O-C(=O)-]を少なくとも有する脂環式骨格を有するモノマーを含み、
前記マイクロリアクターが基板型のマイクロミキサーであり、
前記流路の断面形状が矩形であり、
前記マイクロリアクターが、モノマー成分を導入する第1導入口と、前記第1導入口よりも下流に位置する他の導入口とを備え、
前記第1導入口と前記他の導入口とにモノマー成分を導入することを特徴とするポリマーの製造方法(ただし、重合開始剤及び連鎖移動剤の存在下でモノマー成分をラジカル重合するポリマーの製造方法を除く)
【請求項2】
前記第1導入口と前記他の導入口とに導入するモノマー成分が2種以上の(メタ)アクリル系モノマーを含む請求項1に記載のポリマーの製造方法。
【請求項3】
前記第1導入口と前記他の導入口とに導入するモノマー成分に含まれるモノマーが同一であり、各モノマーの含有比率の誤差が±5%以内である請求項1又は2に記載のポリマーの製造方法。
【請求項4】
ポリマーの分子量分布(Mw/Mn)が1.45以下である、請求項1~のいずれか1項に記載のポリマーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリレートポリマーの最も一般的な製造方法として、原料モノマー、重合開始剤、必要に応じて連鎖移動剤を重合溶媒に溶解し、加熱して重合させる方法、いわゆる一括重合法(バッチ式重合法)が知られている。しかし、一括重合法では反応媒体全体にわたる反応温度の制御が困難であることから、反応温度の微妙な変化によってラジカル発生量に差異が生じ、得られるポリマーの分子量分布が広範となる(ポリマーの分子量が不均一になる)という欠点があった。また、反応温度の制御が困難であることは、ロット間における品質の差にもつながっていた。
【0003】
さらに、原料として反応性に差のある2種以上のモノマーを仕込んだ場合、重合反応の初期に形成されるポリマーは反応性の高いモノマーに由来する単位の含有比率が高いものとなり、重合反応の後期に形成されるポリマーは反応性の低いモノマーに由来する単位の含有比率が高いものとなる。一括重合法はその反応系が大きいことからモノマーの存在比率の制御が困難であるため上記のような影響を受けやすく、最終的に得られるポリマーの共重合組成が不均一となるという欠点があった。
【0004】
上記問題の解決手段として、原料モノマー、重合開始剤、必要に応じて連鎖移動剤を混合して、又は別々に温度に保持した系内に供給して重合させる方法、いわゆる滴下重合法(セミバッチ式重合法)が挙げられる。滴下重合法としては、例えば、モノマーを予備加熱して滴下する方法や、モノマーを一定温度に保持した重合溶媒中に滴下する方法が知られている(特許文献1、2)。
【0005】
滴下重合法は一括重合法と比べて反応系が小さいことから、原料となるモノマーが2種以上であってもその反応系中の存在比率を容易に制御でき、均一なポリマーが得られる点で有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-269855号公報
【文献】特開2004-355023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フォトレジスト用樹脂には、光学的性質、化学的性質、塗布性や基板あるいは下層膜に対する密着性等の物理的な性質に加え、現像液に対する溶解性の向上の観点から分子量分布が狭いことが求められている。特に、微細で精密な形状が要求される半導体材料の製造工程において、ポリマーの共重合組成が均一であり、且つ分子量分布が狭いことは現像液に対する溶解性の精密な制御を可能とし、さらに超微細加工を可能とする。また、レジストパターンが微細化されるにつれて、フォトレジスト用樹脂の品質に対する要求がより高まっており、ロット間における分子量の差が小さいフォトレジスト用樹脂が求められている。このため、フォトレジスト用樹脂の製造方法としては上述の滴下重合法が一般的に用いられている。しかしながら滴下重合法では反応温度の制御が困難であり、より高い均一性が求められるフォトレジスト用樹脂の製造方法としては不十分であった。
【0008】
また、フロー式重合法の1つとしてマイクロリアクターを用いた重合方法が知られているが、該方法は反応温度の制御に優れるものの、その重合反応は通常のバッチ法(例えば前記の一括重合法)と同様に進行することから、フォトレジスト用樹脂における共重合組成の均一性の観点からは不十分であった。
【0009】
この様に、共重合組成が均一であって、且つ分子量分布が狭いポリマーが強く求められているのにもかかわらず、その製造方法についてはこれまで確立されていない。
【0010】
したがって、本発明の目的は、共重合組成が均一であって、且つ分子量分布が狭いポリマーを得るためのポリマーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、重合開始剤の存在下で、特定の反応条件により2種以上のモノマーを含むモノマー成分をラジカル重合することにより、共重合組成が均一であって、且つ分子量分布が狭いポリマーを得ることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0012】
すなわち、本発明は、複数の液体を混合可能な流路を備えるマイクロリアクターを用い、重合開始剤の存在下で2種以上のモノマーを含むモノマー成分をラジカル重合するポリマーの製造方法であって、
前記マイクロリアクターが、モノマー成分を導入する第1導入口と、前記第1導入口よりも下流に位置する他の導入口とを備え、
前記第1導入口と前記他の導入口とにモノマー成分を導入することを特徴とするポリマーの製造方法を提供する。
【0013】
前記第1導入口と前記他の導入口とに導入するモノマー成分は、2種以上の(メタ)アクリル系モノマーを含むことが好ましい。
【0014】
前記第1導入口と前記他の導入口とに導入するモノマー成分に含まれるモノマーは、同一であって、各モノマーの含有量の誤差が±5%以内であることが好ましい。
【0015】
本発明では、重合開始剤及び連鎖移動剤の存在下でラジカル重合することが好ましい。
【0016】
本発明では、前記連鎖移動剤が、シアノ基を含まず、チオカルボニルチオ基を含む連鎖移動剤であって、前記重合開始剤が、シアノ基を含まない重合開始剤であることが好ましい。
【0017】
本発明では、前記連鎖移動剤が、シアノ基及びチオカルボニルチオ基を含む連鎖移動剤であることが好ましい。
【0018】
本発明では、ポリマーの分子量分布(Mw/Mn)が1.45以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、共重合組成が均一であって、且つ分子量分布が狭いポリマーを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施例にて用いたマイクロリアクターを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、複数の液体を混合可能な流路を備えるマイクロリアクターを用い、重合開始剤の存在下で2種以上のモノマーを含むモノマー成分をラジカル重合するポリマーの製造方法であって、前記マイクロリアクターが、モノマー成分を導入する第1導入口と、前記第1導入口よりも下流に位置する他の導入口とを備え、前記第1導入口と前記他の導入口とにモノマー成分を導入することを特徴とする。前記他の導入口としては、第2導入口、第3導入口、第4導入口等の第N導入口(Nは2以上の整数を示す)が挙げられる。本発明では、重合開始剤及び連鎖移動剤の存在下でラジカル重合してもよい。
【0022】
第1導入口と第2導入口との間に位置する流路では、第1導入口により導入されたモノマー成分がラジカル重合する(第1反応と称する)。第2導入口の下流に位置する流路(マイクロリアクターが第3導入口を備える場合は、第2導入口と第3導入口との間に位置する流路)では、第1反応により生じた反応物と、第2導入口により導入されたモノマー成分とがラジカル重合する(第2反応と称する)。また、第3導入口の下流に位置する流路(マイクロリアクターが第4導入口を備える場合は、第3導入口と第4導入口との間に位置する流路)では、第2反応により得られた反応物と、第3導入口により導入されたモノマー成分とがラジカル重合する(第3反応と称する)。この様に、第N導入口の下流に位置する流路では、第N-1導入口と第N導入口との間に位置する流路において生じた反応物と、第N導入口により導入されたモノマー成分とがラジカル重合する(第N反応と称する、Nは上記に同じ)。
【0023】
第1反応により生じた反応物は、後述のポリマー鎖伸長反応により、そのポリマー鎖が伸長されることとなる。すなわち、前記反応物はポリマーの核としての役割を有する。このため、第1反応は「ポリマー核形成反応」と言い換えることができる。
【0024】
第N反応(第2反応以降の反応)は、主として直前の反応により生じる反応物のポリマー鎖を伸長する反応である。このため、第N反応は「ポリマー鎖伸長反応」と言い換えることができる。ただし、第N反応には、直前の反応により生じる反応物のポリマー鎖を伸長する反応以外の反応として、ポリマーの核となり得る新たな反応物を形成する反応を含んでいてもよい。すなわち、第N導入口により導入されたモノマー成分は前記のポリマー鎖を伸長する反応にのみ使用される必要は無く、未反応のモノマー成分とラジカル重合することにより、新たなポリマー(ポリマー核)を形成してもよい。
【0025】
2種以上のモノマーを含むモノマー成分がラジカル重合することによりポリマーが生成するが、該ポリマーに含まれるモノマー単位の比率は使用するモノマーの反応性や濃度、時間等の反応条件により変化する。例えば、使用するモノマーの反応性が大きく異なる場合、重合反応の初期に形成されるポリマーは反応性の高いモノマーに由来する単位の含有比率が高いものとなり、重合反応の後期に形成されるポリマーは反応性の低いモノマーに由来する単位の含有比率が高いものとなる。この様に、反応条件によりポリマーに含まれるモノマー単位の比率が異なることになり、未反応のモノマー比率も異なることとなる。
【0026】
上記の状況は第1反応、すなわちポリマー核形成反応においても起こり得ることであるが、ポリマー鎖伸長反応においてモノマー成分を導入することにより、第1反応により生じた各モノマーの濃度の差を調整し、常に同じ組成のポリマーが生成し続けるように制御することが可能である。
【0027】
重合開始剤としては、公知乃至慣用のラジカル重合開始剤を使用することができ、例えば、シアノ基を含む重合開始剤、シアノ基を含まない重合開始剤が挙げられる。重合開始剤は1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0028】
シアノ基を含む重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル))、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等のシアノ基を含むアゾ系化合物が挙げられる。
【0029】
シアノ基を含まない重合開始剤としては、公知乃至慣用の重合開始剤を使用することができ、例えば、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、ジブチル-2,2’-アゾビスイソブチレート等のシアノ基を含まないアゾ系化合物が挙げられる。また、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;1,1-ビス(tert-ヘキシルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール;P-メンタンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン等のハイドロパーオキサイド又はジアルキルパーオキサイド;イソブチリルパーオキサイド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、tert-ヘキシルパーオキシネオデカネート等のパーオキシエステル;ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート等のシアノ基を含まない過酸化物系化合物が挙げられる。また、過酸化水素、過硫酸アンモニウム等のシアノ基を含まないレドックス系化合物が挙げられる。
【0030】
連鎖移動剤としては、ラジカル重合において用いられる公知乃至慣用の連鎖移動剤を使用することができ、例えば、チオカルボニルチオ基を含む連鎖移動剤(シアノ基及びチオカルボニルチオ基を含む連鎖移動剤、シアノ基を含まず、チオカルボニルチオ基を含む連鎖移動剤)等が挙げられる。連鎖移動剤は1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0031】
シアノ基及びチオカルボニルチオ基を含む連鎖移動剤としては、例えば、2-シアノ-2-プロピル4-シアノベンゾジチオエート、4-シアノ-4-(フェニルカルボノチオイルチオ)ペンタン酸、2-シアノ-2-プロピルベンゾジチオエート、4-シアノ-4-(フェニルカルボノチオイルチオ)ペンタン酸N-スクシンイミジルエステル等のシアノ基を含むジジチオベンゾエート系の連鎖移動剤;4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸、2-シアノ-2-プロピルドデシルトリチオカーボネート、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタノール、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタノエート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(4-シアノ-4-ペンタノエートドデシルトリチオカーボネート)、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(4-シアノ-4-ペンタノエートドデシルトリチオカーボネート)、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(4-シアノ-4-ペンタノエートドデシルトリチオカーボネート)、シアノメチルドデシルトリチオカーボネート等のシアノ基を含むトリチオカルボネート系の連鎖移動剤;シアノメチルメチル(フェニル)カルバモジチオエート、シアノメチルジフェニルカルバモジチオエート、1-スクシンイミジル-4-シアノ-4-[N-メチル-N-(4-ピリジル)カルバモチオイルチオ]ペンタノエート、2-シアノプロパン-2-イルN-メチル-N(ピリジン-4-イル)カルバモジチオエート、シアノメチルメチル(4-ピリジル)カルバモジチオエート等のシアノ基を含むジチオカルバメート系の連鎖移動剤;シアノ基を含むキサンタート系の連鎖移動剤等が挙げられる。この中でも、得られるポリマーの分子量分布の観点からは、4-シアノ-4-(フェニルカルボノチオイルチオ)ペンタン酸、2-シアノ-2-プロピルベンゾジチオエート、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸、2-シアノ-2-プロピルドデシルトリチオカーボネートが好ましい。
【0032】
シアノ基を含まず、チオカルボニルチオ基を含む連鎖移動剤としては、例えば、2-フェニル-2-プロピルベンゾジチオエート、1-(メトキシカルボニル)エチルベンゾジチオエート、ベンジルベンゾジチオエート、エチル-2-メチル-2-(フェニルチオカルボニルチオ)プロピオネート、メチル-2-フェニル-2-(フェニルカルボノチオイルチオ)アセテート、エチル-2-(フェニルカルボノチオイルチオ)プロピオネート、ビス(チオベンゾイル)ジスルフィド等のシアノ基を含まないジジチオベンゾエート系の連鎖移動剤;2-(ドデシルチオカルボニルチオイルチオ)プロピオン酸、2-(ドデシルチオカルボニルチオイルチオ)-2-メチルプロピオン酸、メチル-2-(ドデシルチオカルボニルチオイルチオ)-2-メチルプロピオネート、2-(ドデシルチオカルボニルチオイルチオ)-2-メチルプロピオン酸 N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(2-メチル-2-プロピオン酸ドデシルトリチオカーボネート)、ポリ(エチレングリコール)ビス[2-(ドデシルチオカルボニルチオイルチオ)-2-メチルプロピオネート]、2-(ドデシルチオカルボニルチオイルチオ)-2-メチルプロピオン酸3-アジド-1-プロパノールエステル、2-(ドデシルチオカルボニルチオイルチオ)-2-メチルプロピオン酸ペンタフルオロフェニルエステル、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル2-(ドデシルチオカルボニルチオオイルチオ)-2-メチルプロピオネート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル 2-(ドデシルチオカルボニルチオオイルチオ)-2-メチルプロピオネート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル 2-(ドデシルチオカルボニルチオオイルチオ)-2-メチルプロピオネート、ポリ(エチレングリコール)ビス[2-(ドデシルチオカルボニルチオイルチオ)-2-メチルプロピオネート]、ビス(ドデシルスルファニルチオカルボニル)ジスルフィド等のシアノ基を含まないトリチオカルボネート系の連鎖移動剤;ベンジル 1H-ピロール-1-カルボジチオ酸、メチル2-プロピオネートメチル(4-ピリジニル)カルバモジチオエート、N,N’-ジメチルN,N’-ジ(4-ピリジニル)チウラムジスルフィド等のシアノ基を含まないジチオカルバメート系の連鎖移動剤;シアノ基を含まないキサンタート系の連鎖移動剤等が挙げられる。この中でも、得られるポリマーの分子量分布の観点からは、エチル-2-メチル-2-(フェニルチオカルボニルチオ)プロピオネートが好ましい。
【0033】
本発明において、連鎖移動剤として、シアノ基及びチオカルボニルチオ基を含む連鎖移動剤を使用した場合に得られるポリマーは、シアノ基を末端(ポリマー末端)に有するポリマーである。シアノ基は、溶媒(例えば、フォトレジスト用溶媒)に対して難溶解性を示すことから、シアノ基を末端に有するポリマーは溶媒に対する溶解性が悪い傾向がある。しかしながら、前記ポリマーにおいては、前記連鎖移動剤がポリマーの重合度調節能が高いことから共重合組成が均一であって、且つ分子量分布の狭いポリマーが得られる傾向がある。その結果、前記ポリマーは溶媒(例えば、フォトレジスト用溶媒)に対する溶解性が高い傾向がある。
【0034】
一方、連鎖移動剤として、シアノ基を含まず、チオカルボニルチオ基を含む連鎖移動剤を使用し、さらに重合開始剤として、シアノ基を含まない重合開始剤を使用した場合、シアノ基を末端に有しないポリマーが得られる。したがって、前記ポリマーは溶媒に対する溶解性が高い傾向がある。
【0035】
本発明は、溶媒の非存在下で行ってもよいし、溶媒(重合溶媒)の存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、グリコール系溶媒(グリコール系化合物)、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、アミド系溶媒、スルホキシド系溶媒、炭化水素系溶媒、これらの混合溶媒等が挙げられる。重合溶媒は1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0036】
グリコール系溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が挙げられる。エステル系溶媒には、乳酸エチル等の乳酸エステル系溶媒;3-メトキシプロピオン酸メチル等のプロピオン酸エステル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の酢酸エステル系溶媒等が挙げられる。ケトン系溶媒には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。エーテル系溶媒には、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン等の鎖状エーテル;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル等が挙げられる。アミド系溶媒には、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。スルホキシド系溶媒には、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。炭化水素系溶媒には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。この中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコール系溶媒;乳酸エチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;及びこれらの混合溶媒が好ましく用いられる。
【0037】
(ポリマー核形成反応)
本発明のポリマー核形成反応、すなわち第1反応は、第1導入口からマイクロリアクターに導入されたモノマー成分がラジカル重合する反応である。第1導入口から導入されたモノマー成分は、マイクロリアクター系中に存在する重合開始剤によりラジカル重合が開始され、反応物(ラジカル重合物)が形成される。モノマー成分をマイクロリアクターに導入する手段は特に限定されないが、導入路(以下、「モノマー導入路」と称することがある)を介してマイクロリアクターに導入する手段が挙げられる。
【0038】
重合開始剤を前記マイクロリアクターに導入する手段は特に限定されないが、例えば、導入路(以下、「重合開始剤導入路」と称することがある)を介してマイクロリアクターに導入する手段が挙げられる。重合開始剤のマイクロリアクターへの導入は特に制限されないが、例えば、[1]モノマー成分のマイクロリアクターへの導入前、[2]モノマー成分のマイクロリアクターへの導入と同時、[3]モノマー成分のマイクロリアクターへの導入後が挙げられ、特に、効率的にモノマー成分と重合開始剤とを混合することが可能となり、反応時間や反応温度の制御が容易となる点で[2]が好ましい。
【0039】
重合開始剤及び連鎖移動剤の存在下でラジカル重合させる場合、連鎖移動剤の導入手段は重合開始剤の導入手段として説明したものと同様であり、例えば、導入路(以下、「連鎖移動剤導入路」と称することがある)を介してマイクロリアクターに導入する手段が挙げられる。なお、前記導入路は重合開始剤導入路と同一であってもよい。すなわち、予め重合開始剤及び連鎖移動剤を含む溶液を調製し、前記溶液を、導入路(以下、「重合開始剤等導入路」と称することがある)を介してマイクロリアクターに導入する手段であってもよい。連鎖移動剤を使用することにより、重合反応を調節することができ、より共重合組成が均一で分子量分布の狭いポリマーを得ることが可能となる。
【0040】
本反応(ポリマー核形成反応)の反応温度、すなわち第1導入口と第2導入口との間に位置する流路の温度は特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0~200℃が好ましく、20~180℃がより好ましく、40~160℃がさらに好ましく、60~140℃が特に好ましく、80~120℃が最も好ましい。
【0041】
本反応におけるモノマー成分のモル濃度(モノマーの合計モル濃度)は特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.01~5.0mol/Lが好ましく、0.05~3.0mol/Lがより好ましく、0.1~2.0mol/Lが特に好ましい。濃度が上記範囲内であることにより、単位時間あたりのポリマーの生成量が良好となる傾向がある。一方、濃度が5.0mol/Lよりも濃い場合は反応溶液の粘度が上昇することや、モノマー成分が溶解しないといった問題がある。また、濃度が0.01mol/L未満である場合は、反応速度が低下し、ポリマーの生成量が低下する(反応が十分に進まない)という問題がある。なお、上記はマイクロリアクターに導入した直後の流路におけるモノマー成分のモル濃度を指す。
【0042】
本反応における反応溶液の流量は特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.001~10mL/minが好ましく、0.005~3mL/minがより好ましく、0.01~1mL/minが特に好ましい。流量が上記範囲内であることにより、モノマー成分と重合開始剤との迅速な混合が実現される傾向があり、さらに、圧力損失が抑制される傾向がある。なお、上記はマイクロリアクターに導入した直後の流路における反応溶液の流量を指す。
【0043】
本反応における滞留時間は特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、1~180minが好ましく、5~120minがより好ましく、8~90minが特に好ましい。滞留時間が上記範囲内であることにより、得られるポリマーの平均分子量が狭くなる傾向がある。
【0044】
本反応における重合開始剤の濃度は特に制限されず、モノマー成分の構成及び濃度に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.0001~3.0mol/Lが好ましく、0.0005~1.5mol/Lがより好ましく、0.001~0.5mol/Lがさらに好ましく、0.005~0.2mol/Lが特に好ましい。濃度が上記範囲内にあることにより、マイクロリアクターの流路の閉塞を抑制することができるとともに、得られるポリマーの平均分子量が狭くなる傾向がある。なお、上記はマイクロリアクターに導入した直後の流路における重合開始剤の濃度を指す。
【0045】
本反応における連鎖移動剤の濃度は特に制限されず、モノマー成分の構成及び濃度に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.0001~3.0mol/Lが好ましく、0.0005~1.5mol/Lがより好ましく、0.001~0.5mol/Lがさらに好ましく、0.005~0.2mol/Lが特に好ましい。濃度が上記範囲内にあることにより、マイクロリアクターの流路の閉塞を抑制することができるとともに、得られるポリマーの平均分子量が狭くなる傾向がある。なお、上記はマイクロリアクターに導入した直後の流路における連鎖移動剤の濃度を指す。
【0046】
本反応における重合開始剤及び連鎖移動剤の濃度の合計は特に制限されず、モノマー成分の構成及び濃度に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.0001~3.0mol/Lが好ましく、0.0005~1.5mol/Lがより好ましく、0.001~0.5mol/Lがさらに好ましく、0.005~0.2mol/Lが特に好ましい。濃度が上記範囲内にあることにより、マイクロリアクターの流路の閉塞を抑制することができるとともに、得られるポリマーの平均分子量が狭くなる傾向がある。なお、上記濃度はマイクロリアクターに導入した直後の流路における濃度を指す。
【0047】
本発明における重合開始剤及び連鎖移動剤とモノマーとの濃度比率(重合開始剤及び連鎖移動剤/モノマー)は特に制限されないが、例えば、0.001~100.0mol%が好ましく、0.01~50.0mol%がより好ましく、0.05~30.0mol%がさらに好ましく、0.1~20.0mol%が特に好ましい。濃度比率が上記範囲内にあることにより、マイクロリアクターの流路の閉塞を抑制することができるとともに、得られるポリマーの平均分子量が狭くなる傾向がある。なお、上記はマイクロリアクターに導入した直後の流路における重合開始剤及び連鎖移動剤の濃度を指す。
【0048】
(ポリマー鎖伸長反応)
ポリマー鎖伸長反応、すなわち第N反応(Nは2以上の整数)は、第N導入口の下流に位置する流路において、第N-1導入口と第N導入口との間に位置する流路において生じた反応物と、第N導入口により導入されたモノマー成分とがラジカル重合する反応である。モノマー成分をマイクロリアクターに導入する手段は特に限定されないが、導入路を介してマイクロリアクターに導入する手段が挙げられる。例えば、第2反応は、第2導入口の下流に位置する流路(マイクロリアクターが第3導入口を備える場合は、第2導入口と第3導入口との間に位置する流路)において、第1導入口と第2導入口との間に位置する流路において生じた反応物と、第2導入口により導入されたモノマー成分とがラジカル重合する反応である。また、モノマー成分をマイクロリアクターに導入する手段として、導入路を介してマイクロリアクターに導入する手段が挙げられる。
【0049】
第1導入口と他の導入口とに導入するモノマー成分は、含まれるモノマーが同一であることが好ましく、含まれるモノマーが同一であって、各モノマーの含有量の誤差が±5%以内であることがより好ましく、含まれるモノマーが同一であって、各モノマーの含有量の誤差が±1%以内であることがさらに好ましく、含まれるモノマー及びその含有量が同一(実質的に同一)であることが特に好ましい。なお、「モノマーの含有量の誤差」とは、第1導入口に導入するモノマー成分に含まれる特定のモノマーの含有量(重量%)を基準とする、他の導入口に導入するモノマー成分に含まれる前記の特定のモノマーの含有量(重量%)の誤差を意味する。例えば、第1導入口に導入するモノマー成分に含まれるモノマーAの含有量が50重量%、他の導入口に導入するモノマー成分に含まれるモノマーAの含有量が51重量%である場合、誤差(%)は(51/50-1)×100=2%となる。また、「各モノマーの含有量の誤差が±5%以内である」こととは、モノマー成分に含まれる全てのモノマーにおいて、それぞれの含有量の誤差が±5%以内であることを意味する。例えば、モノマー成分にモノマーA及びモノマーBが含まれる場合、モノマーAの含有量の誤差が±5%以内であり、且つモノマーBの含有量の誤差が±5%以内であることを意味する。
【0050】
本反応(ポリマー鎖伸長反応)の反応温度、すなわち第N導入口の下流(例えば、第2導入口と第3導入口の間)に位置する流路の温度は特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0~200℃が好ましく、20~180℃がより好ましく、40~160℃がさらに好ましく、60~140℃が特に好ましく、80~120℃が最も好ましい。なお、本反応の反応温度はポリマー核形成反応の反応温度と同じであってもよい。
【0051】
本反応におけるモノマー成分のモル濃度(モノマーの合計モル濃度)は特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.01~5.0mol/Lが好ましく、0.05~3.0mol/Lがより好ましく、0.1~2.0mol/Lが特に好ましい。濃度が上記範囲内であることにより、単位時間あたりのポリマーの生成量が良好となる傾向がある。一方、濃度が5.0mol/Lよりも濃い場合は反応溶液の粘度が上昇することや、モノマー成分が溶解しないといった問題がある。また、濃度が0.01mol/L未満である場合は、反応速度が低下し、ポリマーの生成量が低下する(反応が十分に進まない)という問題がある。なお、上記はマイクロリアクターに導入した直後の流路におけるモノマー成分のモル濃度を指す。
【0052】
本反応における反応溶液の流量は特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.001~10mL/minが好ましく、0.005~3mL/minがより好ましく、0.01~1mL/minが特に好ましい。流量が上記範囲内であることにより、モノマー成分と重合開始剤との迅速な混合が実現される傾向があり、さらに、圧力損失が抑制される傾向がある。なお、上記はマイクロリアクターに導入した直後の流路における反応溶液の流量を指す。
【0053】
本反応における滞留時間は特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、1~180minが好ましく、5~120minがより好ましく、8~90minが特に好ましい。滞留時間が上記範囲内であることにより、得られるポリマーの平均分子量が狭くなる傾向がある。
【0054】
本反応における重合開始剤の濃度は特に制限されず、モノマー成分の構成及び濃度に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.0001~3.0mol/Lが好ましく、0.0005~1.5mol/Lがより好ましく、0.001~0.5mol/Lがさらに好ましく、0.005~0.2mol/Lが特に好ましい。濃度が上記範囲内にあることにより、マイクロリアクターの流路の閉塞を抑制することができるとともに、得られるポリマーの平均分子量が狭くなる傾向がある。なお、上記はマイクロリアクターに導入した直後の流路における重合開始剤の濃度を指す。
【0055】
本反応における連鎖移動剤の濃度は特に制限されず、モノマー成分の構成及び濃度に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.0001~3.0mol/Lが好ましく、0.0005~1.5mol/Lがより好ましく、0.001~0.5mol/Lがさらに好ましく、0.005~0.2mol/Lが特に好ましい。濃度が上記範囲内にあることにより、マイクロリアクターの流路の閉塞を抑制することができるとともに、得られるポリマーの平均分子量が狭くなる傾向がある。なお、上記はマイクロリアクターに導入した直後の流路における連鎖移動剤の濃度を指す。
【0056】
本反応における重合開始剤及び連鎖移動剤の濃度の合計は特に制限されず、モノマー成分の構成及び濃度に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.0001~1.0mol/Lが好ましく、0.0003~0.5mol/Lがより好ましく、0.0005~0.3mol/Lがさらに好ましく、0.001~0.1mol/Lが特に好ましい。濃度が上記範囲内にあることにより、マイクロリアクターの流路の閉塞を抑制することができるとともに、得られるポリマーの平均分子量が狭くなる傾向がある。なお、上記はマイクロリアクターに導入した直後の流路における重合開始剤及び連鎖移動剤の濃度を指す。
【0057】
本反応における重合開始剤及び連鎖移動剤とモノマーとの濃度比率(重合開始剤及び連鎖移動剤/モノマー)は特に制限されないが、例えば、0.001~100.0mol%が好ましく、0.01~50.0mol%がより好ましく、0.05~30.0mol%がさらに好ましく、0.1~20.0mol%が特に好ましい。濃度比率が上記範囲内にあることにより、マイクロリアクターの流路の閉塞を抑制することができるとともに、得られるポリマーの平均分子量が狭くなる傾向がある。なお、上記はマイクロリアクターに導入した直後の流路における重合開始剤及び連鎖移動剤とモノマーの濃度比率を指す。
【0058】
ポリマーの回収方法は特に限定されないが、例えば、沈殿(再沈殿を含む)を用いる方法が挙げられる。例えば、反応溶液を溶媒(沈殿溶媒)中に添加してポリマーを沈殿させるか、又は該ポリマーを再度適当な溶媒に溶解させ、この溶液を溶媒(再沈殿溶媒)中に添加して再沈殿させるか、あるいはまた、反応溶液中に溶媒(再沈殿溶媒や重合溶媒)を添加して希釈することにより目的のポリマーを得ることができる。沈殿又は再沈殿溶媒は有機溶媒及び水のいずれであってもよく、また混合溶媒であってもよい。
【0059】
沈殿又は再沈殿溶媒は特に限定されないが、重合溶媒と同一の溶媒であってもよいし、異なる溶媒であってもよい。沈殿又は再沈殿溶媒としては、例えば、重合溶媒として例示された有機溶媒(グリコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、アミド系溶媒、スルホキシド系溶媒、炭化水素系溶媒);ハロゲン化炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素等);ニトロ化合物(ニトロメタン、ニトロエタン等);ニトリル(アセトニトリル、ベンゾニトリル等);カーボネート(ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等);カルボン酸(酢酸等);これらの溶媒を含む混合溶媒等が挙げられる。
【0060】
中でも、沈殿又は再沈殿溶媒として、少なくとも炭化水素(特に、ヘキサンやヘプタン等の脂肪族炭化水素)もしくは、アルコール(特に、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等)を含む溶媒が好ましい。このような少なくとも炭化水素を含む溶媒において、炭化水素(例えば、ヘキサンやヘプタン等の脂肪族炭化水素)と他の溶媒(例えば、酢酸エチル等のエステル類等)との比率は、例えば前者/後者(体積比:25℃)=10/90~99/1、好ましくは前者/後者(体積比:25℃)=30/70~98/2、さらに好ましくは前者/後者(体積比:25℃)=50/50~97/3である。
【0061】
また、沈殿又は再沈殿溶媒としては、アルコール(特に、メタノール)と水との混合溶媒、グリコール系溶媒(特に、ポリエチレングリコール)と水との混合溶媒も好ましい。この場合の有機溶媒(アルコール又はグリコール系溶媒)と水との比率(体積比:25℃)は、例えば、前者/後者(体積比:25℃)=10/90~99/1、好ましくは前者/後者(体積比:25℃)=30/70~98/2、さらに好ましくは前者/後者(体積比:25℃)=50/50~97/3である。
【0062】
沈殿(再沈殿を含む)で得られたポリマーは、必要に応じて、リンス処理や、ポリマーを溶媒でほぐして分散させながら撹拌して洗浄する処理(「リパルプ処理」と称する場合がある)に付される。リパルプ処理後にリンス処理を施してもよい。重合により生成したポリマーを溶媒でリパルプすることや、リンスすることにより、ポリマーに付着している残存モノマーや低分子量オリゴマー等を効率よく除くことができる。
【0063】
本発明においては、中でも、リパルプ処理やリンス処理溶媒として、少なくとも炭化水素(特に、ヘキサンやヘプタン等の脂肪族炭化水素)、アルコール(特に、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等)、又はエステル類(特に、酢酸エチル等)を含む溶媒が好ましい。
【0064】
沈殿(再沈殿を含む)、リパルプ処理、又はリンス処理の後、例えば、必要に応じて溶媒をデカンテーション、濾過等で溶媒を取り除き、乾燥処理を施してもよい。
【0065】
(マイクロリアクター)
マイクロリアクターは、複数の液体を混合可能な流路を備えるマイクロリアクターを使用することができる。前記マイクロリアクターは流れに沿って流路の異なる位置に複数の導入口を備え、少なくともモノマー成分をマイクロリアクターに導入する導入口(第1導入口)、及び前記第1導入口よりも下流に位置する、モノマー成分をマイクロリアクターに導入する他の導入口(第N導入口)を備える。前記マイクロリアクターは前記他の導入口を1つ備えていてもよいし、2以上を備えていてもよい。また、必要に応じて、前記流路に連通し、前記第1導入口又は他の導入口を経て前記流路に液体を導入するための導入路を備えてもよい。前記導入路としては、例えば、前記の重合開始剤導入路、連鎖移動剤導入路、重合開始剤等導入路、及びモノマー導入路等が挙げられる。なお、マイクロリアクターが導入路を備える場合、前記の導入口(例えば、第1導入口、第2導入口)は、前記導入路と流路との合流部を意味する。また、さらに必要に応じて、前記の流路、導入口、及び導入路以外の構成を含んでいてもよい。
【0066】
流路の断面形状は特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円形、矩形、半円形、三角形等が挙げられる。
【0067】
マイクロリアクターは、第1導入口の上流、第1導入口と同じ位置、又は第1導入口の下流(第1導入口と第2導入口との間)に重合開始剤をマイクロリアクターへ導入する導入口を備えていてもよいが、流路における重合開始剤の濃度を一定に保つ観点から、第1導入口と同じ位置に重合開始剤をマイクロリアクターへ導入する導入口を備えていることが好ましい。また、連鎖移動剤を用いる場合も同様であり、第1導入口の上流、第1導入口と同じ位置、又は第1導入口の下流に連鎖移動剤をマイクロリアクターへ導入する導入口を備えていてもよいが、第1導入口と同じ位置に連鎖移動剤をマイクロリアクターへ導入する導入口を備えていることが好ましい。
【0068】
マイクロリアクターは、第N導入口(例えば、第2導入口)と同じ位置又は第N導入口の下流に重合開始剤をマイクロリアクターへ導入する導入口を備えていてもよいし、備えていなくてもよい。重合開始剤をマイクロリアクターへ導入する場合は、流路における重合開始剤の濃度を一定に保つ観点から、第N導入口と同じ位置に重合開始剤をマイクロリアクターへ導入する導入口を備えていることが好ましい。また、連鎖移動剤を用いる場合も同様であり、第N導入口と同じ位置又は第N導入口の下流に連鎖移動剤をマイクロリアクターへ導入する導入口を備えていてもよいが、第1導入口と同じ位置に連鎖移動剤をマイクロリアクターへ導入する導入口を備えていることが好ましい。
【0069】
マイクロリアクターとしては、複数の液体を混合可能な流路を備える限り特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マイクロミキサー(基板型のマイクロミキサー、管継手型のマイクロミキサー等)、分岐したチューブ等が挙げられる。
【0070】
基板型のマイクロミキサーは、内部又は表面に流路が形成された基板からなり、マイクロチャンネルと称される場合がある。基板型のマイクロミキサーとしては、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、国際公開第96/30113号パンフレットに記載される混合のための微細な流路を有するミキサー;文献「“マイクロリアクターズ”三章、W.Ehrfeld,V.Hessel,H.Lowe著、Wiley-VCH社刊」に記載されるミキサー等が挙げられる。
【0071】
基板型のマイクロミキサーには、流路以外に、前記流路に連通し、前記流路に複数の液体を導入するための導入路が形成されていることが好ましい。すなわち、前記導入路の数に応じて、前記流路の上流側が分岐した構成が好ましい。前記導入路の数としては特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、混合を所望する複数の液体を別々の導入路から導入し、流路で合流させて混合することが好ましい。なお、1つの液体を予め流路に仕込んでおき、それ以外の液体を導入路により導入する構成としてもよい。
【0072】
管継手型のマイクロミキサーは、内部に形成された流路を備え、必要に応じて前記内部に形成された流路とチューブとを接続する接続手段を備える。前記接続手段における接続方式としては特に制限されず、公知のチューブ接続方式の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ねじ込み式、ユニオン式、突合わせ溶接式、差込み溶接式、ソケット溶接式、フランジ式、食込み式、フレア式、メカニカル式等が挙げられる。
【0073】
管継手型のマイクロミキサーの内部には、前記流路以外に、前記流路に連通し、前記流路に複数の液体を導入する導入路が形成されていることが好ましい。すなわち、前記導入路の数に応じて、前記流路の上流側が分岐された構成が好ましい。前記導入路の数が2つである場合には、前記管継手型のマイクロミキサーとして例えばT字型やY字型を用いることができ、前記導入路の数が3つである場合には、例えば十字型を用いることができる。なお、1つの液体を予め流路に仕込んでおき、それ以外の液体を導入路により導入する構成としてもよい。
【0074】
マイクロミキサー(例えば流路)の材質としては特に制限されず、耐熱性、耐圧性、耐溶剤性、及び加工容易性等の要求に応じて適宜選択することができ、例えば、ステンレス鋼、チタン、銅、ニッケル、アルミニウム、シリコン、及びテフロン(登録商標)、PFA(パーフロロアルコキシ樹脂)等のフッ素樹脂、TFAA(トリフルオロアセトアミド)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等が挙げられる。
【0075】
マイクロミキサーは、その微細構造によって精確に反応溶液の流れを制御するものであるため、微細加工技術によって製作されていることが好ましい。微細加工技術としては特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(a)X線リソグラフィと電気メッキを組み合わせたLIGA技術、(b)EPON SU8を用いた高アスペクト比フォトリソグラフィ法、(c)機械的マイクロ切削加工(ドリル径がマイクロオーダーのドリルを高速回転するマイクロドリル加工等)、(d)Deep RIEによるシリコンの高アスペクト比加工法、(e)Hot Emboss加工法、(f)光造形法、(g)レーザー加工法、及び(h)イオンビーム法等が挙げられる。
【0076】
マイクロミキサーとしては、市販品を利用することができ、例えば、インターディジタルチャンネル構造体を備えるマイクロリアクター、インスティテュート・ヒュール・マイクロテクニック・マインツ(IMM)社製シングルミキサー及びキャタピラーミキサー;ミクログラス社製ミクログラスリアクター;CPCシステムス社製サイトス;山武社製YM-1型ミキサー,YM-2型ミキサー;島津GLC社製ミキシングティー及びティー(T字コネクタ);マイクロ化学技研社製IMTチップリアクター;東レエンジニアリング開発品マイクロ・ハイ・ミキサー;スウェージロック社製ユニオンティー等が挙げられる。
【0077】
マイクロリアクターとしては、マイクロミキサーを単独で使用してもよく、さらにその下流にチューブリアクターを連結し、流路を延長する構成としてもよい。前記チューブリアクターを前記マイクロミキサーの下流に連結することで、流路の長さを調節することができる。混合された液体の滞留時間(反応時間)は、前記流路の長さに比例する。
【0078】
チューブリアクターとは、マイクロミキサーにより迅速に混合された溶液が、その後の反応を行うための必要な時間を精密に制御(滞留時間制御)するためのリアクターである。チューブリアクターとしては特に制限されず、例えば、チューブの内径、外径、長さ、材質等の構成は、所望する反応に応じて適宜選択することができる。前記チューブリアクターとしては、市販品を利用することができる。前記チューブリアクターの材質としては特に制限されず、前記マイクロミキサーの材質として例示したものを好適に利用することができる。
【0079】
流路は、複数の液体を拡散により混合する機能、及び反応熱を除熱する機能を有する。流路内における液体の混合方式としては特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば層流による混合、乱流による混合が挙げられる。中でも、より効率的に反応制御や除熱を行える点で、層流による混合(静的混合)が好ましい。なお、マイクロリアクターの流路は微小であるため、導入路から導入された複数の液体同士はおのずと層流支配の流れとなりやすく、流れに直交する方向に拡散して混合される。層流による混合において、さらに、流路内に分岐点及び合流点を設けることで流れる液体の層流断面を分割するような構成とし、混合速度を高める構成としてもよい。なお、マイクロリアクターの流路において乱流による混合(動的混合)を行う場合には、流量や流路の形状(接液部分の3次元形状や流路の屈曲等の形状、壁面の粗さ等)を調整することによって、層流から乱流へと変化させることができる。前記乱流による混合は、前記層流による混合と比べて混合効率がよく混合速度が速いという利点を有する。
【0080】
ここで、流路の内径が小さい方が分子の拡散距離を短くできるので、混合に要する時間を短縮させて混合効率を向上させることができる。さらに、体積に対する表面積の比が大きくなり、例えば反応熱の除熱等の温度制御を容易に行うことができる。一方で、前記流路の内径が小さ過ぎると液体を流す時の圧力損失が増加するとともに、送液に使用するポンプとして特別な高耐圧のものが必要となるため、製造コストが高くなることがある。また、反応物による流路の閉塞が生じる傾向が高くなる。さらに、送液流量が制限されることによりマイクロミキサーの構造が制限されることがある。
【0081】
流路の内径としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、50μm~15mmが好ましく、100μm~10mmがより好ましく、200μm~5mmがさらに好ましく、500μm~3mmが特に好ましい。前記内径が50μm未満であると、圧力損失が増大することがある。前記内径が15mmを超えると、単位体積当たりの表面積が小さくなり、その結果、迅速な混合や反応熱の除熱が困難になることがある。一方、内径が上記範囲内である場合は、流路に導入したモノマー成分と重合開始剤(及び連鎖移動剤)との混合が迅速に進むとともに、効率的に反応熱を除熱でき、反応熱の制御が容易となる傾向がある。
【0082】
流路の断面積としては特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、5000μm2~800mm2が好ましく、0.75mm2~30mm2がより好ましい。断面積が上記範囲内である場合は、流路に導入したモノマー成分と重合開始剤(及び連鎖移動剤)との混合が迅速に進むとともに、効率的に反応熱を除熱でき、反応熱の制御が容易となる傾向がある。
【0083】
マイクロリアクターにおける流路の長さ(全長)には特に制限されず、最適反応時間に応じて適宜調整することができるが、例えば、0.5~500mが好ましく、1~400mがより好ましい。ポリマー核形成反応(第1反応)における流路の長さは、例えば、0.1~125mが好ましく、0.3~100mがより好ましく、0.5~80mがさらに好ましい。ポリマー鎖伸長反応(例えば、第2反応)における流路の長さは、例えば、0.1~125mが好ましく、0.3~100mがより好ましく、0.5~80mがさらに好ましい。
【0084】
導入路は、流路に連通し、複数の液体を前記流路に導入する機能を有する。なお、前記導入路において、前記流路に連通する側とは別の一端は、通常、混合を所望する液体を含む容器につながっている。
【0085】
導入路の内径としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、50μm~15mmが好ましく、100μm~10mmがより好ましく、200μm~5mmがさらに好ましく、500μm~3mmが特に好ましい。なお、マイクロリアクターが複数の導入路を有する場合には、それぞれの導入路の内径は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0086】
流路及び導入路以外の構成としては特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、送液に使用するポンプ、温度調整手段、反応促進手段、センサー、製造されたポリマーを貯蔵するためのタンク等が挙げられる。
【0087】
ポンプとしては特に制限されず、工業的に使用されうるものから適宜選択することができるが、送液時に脈動を生じないものが好ましく、例えば、プランジャーポンプ、ギアーポンプ、ロータリーポンプ、ダイヤフラムポンプ等が挙げられる。
【0088】
温度調整手段としては特に制限されず、反応温度に応じて適宜選択することができ、例えば、恒温槽、循環サーキュレーター、熱交換器等が挙げられる。例えば、前記反応温度が80℃である場合にはオイルバスを用いることが好ましい。また、得られたポリマーを回収するために冷却する場合には、水又は氷水を満たした恒温層が好ましい。
【0089】
反応促進手段としては、混合する液体や所望する反応に応じて、適宜選択することができるが、例えば、振動エネルギー付与手段、加熱手段、光照射手段、電圧印可手段等が挙げられる。電圧印可手段を備えたマイクロリアクターとしては、例えば、特開2006-104538に開示されるマイクロフロー電気化学リアクター等が挙げられる。前記センサーとしては特に制限されず、例えば、温度センサー、流量センサー、流路内の圧力を測定するための圧力センサー等が挙げられる。
【0090】
(モノマー成分)
本発明のモノマー成分は、2種以上のモノマーを含むことを特徴とする。モノマー成分を構成するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル系モノマー、芳香族ビニルモノマー、カルボン酸ビニルエステル、共役ジエン系モノマー、オレフィン系モノマー、ハロゲン化ビニル、及びハロゲン化ビニリデン等が挙げられるが、その反応性の観点から(メタ)アクリル系モノマーであることが好ましい。すなわち、前記第1導入口と前記他の導入口とに導入するモノマー成分は、2種以上の(メタ)アクリル系モノマーを含むことが好ましい。
【0091】
(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;1-メチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、1-エチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、1-イソプロピルシクロペンチル(メタ)アクリレート、1-プロピルシクロペンチル(メタ)アクリレート、1-メチルシクロへキシル(メタ)アクリレート、1-エチルシクロへキシル(メタ)アクリレート、1-イソプロピルシクロへキシル(メタ)アクリレート、1-プロピルシクロへキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;γ-ブチロラクトン(メタ)アクリレート等の環状エステル基を有する(メタ)アクリレート;3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジルアクリレート、オキセタニル(メタ)アクリレート等の環状エーテル基を有する(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロカクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類;メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソオクチルオキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のエチレングリコール(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。また、上記以外にも、後述のフォトレジスト用樹脂にて説明されるモノマーが例示される。
【0092】
芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、アルキルスチレン(o-、m-及びp-メチルスチレン等のビニルトルエン類、2,4-ジメチルスチレン等のビニルキシレン類、p-エチルスチレン、p-イソプロピルスチレン、p-ブチルスチレン、p-t-ブチルスチレン等)、α-アルキルスチレン(α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン等)、アルコキシスチレン(o-、m-及びp-メトキシスチレン、p-t-ブトキシスチレン等)、ハロスチレン(o-、m-及びp-クロロスチレン、p-ブロモスチレン等)、スチレンスルホン酸又はそのアルカリ金属塩等を挙げることができる。
【0093】
カルボン酸ビニルエステルとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のC1-10カルボン酸ビニルエステル等を挙げることができる。
【0094】
共役ジエン系モノマーとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、ネオプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、ピペリエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、フェニル-1,3-ブタジエン等のC4-16ジエン等を挙げることができる。
【0095】
オレフィン系モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン(イソブテン等)等のC2-10アルケン等を挙げることができる。
【0096】
ハロゲン化ビニルとしては、例えば、フッ化ビニル、塩化ビニル、臭化ビニル等を挙げることができる。ハロゲン化ビニリデンとしては、フッ化ビニリデン、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン等を挙げることができる。
【0097】
本発明は、共重合組成が均一であって、且つ分子量分布の狭いポリマーを得ることができるため、フォトレジスト用樹脂の製造に特に適する。このため、前記モノマー成分は、酸の作用によりその一部が脱離して極性基を生じる基(「酸分解性基」と称する場合がある)を有するモノマーを含むことが好ましい。これにより、前記のポリマー(フォトレジスト用樹脂)は、酸の作用により極性が増大してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する。
【0098】
前記極性基としては、例えば、フェノール性水酸基、カルボキシ基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等の酸性基;アルコール性水酸基等が挙げられる。中でも、カルボキシ基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、スルホン酸基が好ましい。
【0099】
前記酸分解性基としては、前記極性基の水素原子を酸で脱離する基に置換した基が好ましい。前記酸分解性基としては、例えば、-C(RI)(RII)(RIII)、-C(RIV)(RV)(ORVI)等が挙げられる。前記式中、RI~RIII、RVIは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルケニル基を表す。RIV及びRVは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルケニル基を表す。RI~RIIIのうちの少なくとも2つの基は、互いに結合して環を形成してもよい。また、RIVとRVとは、互いに結合して環を形成してもよい。
【0100】
前記酸分解性基の炭素原子数は特に限定されないが、4以上が好ましく、より好ましくは5以上である。前記炭素原子数の上限は特に限定されないが、20が好ましい。
【0101】
前記RI~RVIのアルキル基は、炭素数1~8のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、へキシル基、オクチル基等が挙げられる。
【0102】
前記RI~RVIのシクロアルキル基は、単環式炭化水素基でも、多環式(橋かけ環式)炭化水素基でもよい。単環式炭化水素基としては、炭素数3~8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。多環式炭化水素基としては、炭素数6~20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α-ピネル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、アンドロスタニル基等が挙げられる。なお、シクロアルキル基中の少なくとも1つの炭素原子が酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
【0103】
前記RI~RVIのアリール基は、炭素数6~14のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。
【0104】
前記RI~RVIのアラルキル基は、炭素数7~12のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0105】
前記RI~RVIのアルケニル基は、炭素数2~8のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、シクロへキセニル基等が挙げられる。
【0106】
前記RI~RIIIのうちの少なくとも2つの基が互いに結合して形成される環、及びRIVとRVとが結合して形成される環としては、シクロアルカン環が好ましい。前記シクロアルカン環としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等の単環式のシクロアルカン環;ノルボルナン環、トリシクロデカン環、テトラシクロドデカン環、アダマンタン環等の多環式のシクロアルカン環が好ましい。
【0107】
なお、RI~RVIにおけるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、及び前記シクロアルカン環は、それぞれ、置換基を有していてもよい。
【0108】
前記酸分解性基としては、中でも、t-ブチル基、t-アミル基、及び下記式(I)~(IV)で表される基が好ましい。
【0109】
【化1】
【0110】
前記式(I)~(IV)中のR2~R7、Ra、n、p、及び環Z1は、それぞれ、後述の式(a1)~(a4)中のR2~R7、Ra、n、p、及び環Z1と同じものを示す。
【0111】
前記酸分解性基は、スペーサーを介して設けられていてもよい。前記スペーサーとしては、後述の式(1)中のAとして例示及び説明された連結基と同じものを示す。
【0112】
前記酸分解性基を有するモノマーとしては、例えば、下記式(1)で表されるモノマーが挙げられる。
【0113】
【化2】
【0114】
前記式(1)中、R1は前記酸分解性基を示す。また、前記式(1)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を示す。前記ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。前記炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、ペンチル、イソアミル、s-アミル、t-アミル、ヘキシル基等が挙げられる。ハロゲン原子を有する炭素数1~6のアルキル基としては、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル基等の前記アルキル基を構成する水素原子の1個又は2個以上がハロゲン原子で置き換えられた基(ハロ(C1-6)アルキル基)等が挙げられる。
【0115】
前記式(1)中、Aは単結合又は連結基を示す。前記連結基としては、例えば、カルボニル基(-C(=O)-)、エーテル結合(-O-)、エステル結合(-C(=O)-O-)、アミド結合(-C(=O)-NH-)、カーボネート結合(-O-C(=O)-O-)、これらが複数個連結した基、及びアルキレン基とこれらが結合した基等が挙げられる。前記アルキレン基としては、例えば、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基や、1,2-シクロペンチレン、1,3-シクロペンチレン、シクロペンチリデン、1,2-シクロへキシレン、1,3-シクロへキシレン、1,4-シクロへキシレン、シクロヘキシリデン基等の2価の脂環式炭化水素基(特に2価のシクロアルキレン基)等が挙げられる。
【0116】
前記式(1)で表されるモノマーとしては、中でも、下記式(a1)~(a4)で表されるモノマーからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーが好ましい。なお、前記「式(a1)~(a4)で表されるモノマーからなる群より選択される少なくとも1種のモノマー」を、「モノマーa」と称する場合がある。
【0117】
【化3】
【0118】
前記式(a1)~(a4)で表されるモノマー中、Rは、前記式(1)中のRと同様に、水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を示し、Aは単結合又は連結基を示す。前記式(a1)~(a4)中のAとしては、中でも、単結合、アルキレン基とカルボニルオキシ基が結合した基(アルキレン-カルボニルオキシ基)が好ましい。R2~R4は同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を示す。なお、R2及びR3は互いに結合して環を形成してもよい。R5、R6は同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を示す。R7は-COORc基を示し、前記Rcは置換基を有していてもよい第3級炭化水素基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、又はオキセパニル基を示す。nは1~3の整数を示す。nが2又は3である場合、2個又は3個のR7は、それぞれ、同一であってもよいし異なっていてもよい。Raは環Z1に結合している置換基であって、同一又は異なって、オキソ基、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、又は保護基で保護されていてもよいカルボキシ基を示す。pは0~3の整数を示す。環Z1は炭素数3~20の脂環式炭化水素環を示す。pが2又は3である場合、2個又は3個のRaは、それぞれ、同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0119】
前記Raにおけるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ペンチル、イソアミル、s-アミル、t-アミル、n-ヘキシル基等の炭素数1~6のアルキル基等が挙げられる。
【0120】
前記Raにおけるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、1-ヒドロキシエチル、3-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシプロピル、4-ヒドロキシブチル、6-ヒドロキシヘキシル基等のヒドロキシC1-6アルキル基等が挙げられる。
【0121】
前記Raにおけるヒドロキシ基、及びヒドロキシアルキル基が有していてもよい保護基としては、例えば、メチル、エチル、t-ブチル基等のC1-4アルキル基;ヒドロキシ基を構成する酸素原子とともにアセタール結合を形成する基(例えば、メトキシメチル基等のC1-4アルキル-O-C1-4アルキル基);ヒドロキシ基を構成する酸素原子とともにエステル結合を形成する基(例えば、アセチル基、ベンゾイル基等)等が挙げられる。
【0122】
前記Raにおけるカルボキシ基の保護基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ペンチル、イソアミル、s-アミル、t-アミル、ヘキシル基等のC1-6アルキル基;2-テトラヒドロフラニル基、2-テトラヒドロピラニル基、2-オキセパニル基等が挙げられる。
【0123】
前記R2~R6における炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、ペンチル、イソアミル、s-アミル、t-アミル、ヘキシル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基等が挙げられる。本発明においては、中でもC1-4アルキル基が好ましく、より好ましくはC1-3アルキル基、さらに好ましくはC1-2アルキル基である。
【0124】
前記R2~R6における炭素数1~6のアルキル基が有していてもよい置換基としては例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換ヒドロキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ基等のC1-4アルコキシ基等)、シアノ基等が挙げられる。置換基を有する炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル基等の前記アルキル基を構成する水素原子の1個又は2個以上がハロゲン原子で置き換えられたハロ(C1-6)アルキル基;ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、メトキシメチル、2-メトキシエチル、エトキシメチル、2-エトキシエチル、シアノメチル、2-シアノエチル基等が挙げられる。
【0125】
2及びR3が互いに結合して環を形成している場合、前記環としては、例えば、置換基を有していてもよい炭素数3~12の脂環式炭化水素環が挙げられる。
【0126】
前記Rcにおける第3級炭化水素基としては、例えば、t-ブチル基、t-アミル基等が挙げられる。
【0127】
前記Rcにおける第3級炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換ヒドロキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ基等のC1-4アルコキシ基等)、シアノ基等が挙げられる。
【0128】
前記環Z1における炭素数3~20の脂環式炭化水素環としては、例えば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環等の3~20員(好ましくは3~15員、特に好ましくは5~12員)程度のシクロアルカン環;シクロプロペン環、シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環等の3~20員(好ましくは3~15員、特に好ましくは5~10員)程度のシクロアルケン環等の単環の脂環式炭化水素環;アダマンタン環;ノルボルナン環、ノルボルネン環、ボルナン環、イソボルナン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等のノルボルナン環又はノルボルネン環を含む環;パーヒドロインデン環、デカリン環(パーヒドロナフタレン環)、パーヒドロフルオレン環(トリシクロ[7.4.0.03,8]トリデカン環)、パーヒドロアントラセン環等の多環の芳香族縮合環が水素添加された環(好ましくは完全水素添加された環);トリシクロ[4.2.2.12,5]ウンデカン環等の2環系、3環系、4環系等の橋架け炭化水素環(例えば、炭素数6~20程度の橋架け炭化水素環)等の2~6環程度の橋かけ環式炭化水素環等が挙げられる。
【0129】
また、前記モノマー成分は、[-C(=O)-O-]、[-S(=O)2-O-]、又は[-C(=O)-O-C(=O)-]を少なくとも有する脂環式骨格を有するモノマーを含むことが好ましい。前記脂環式骨格を有するモノマーを使用すると、ポリマー(フォトレジスト用樹脂)に、より高い基板密着性及び耐エッチング性を付与することができる。なお、前記[-C(=O)-O-]、[-S(=O)2-O-]、又は[-C(=O)-O-C(=O)-]を少なくとも有する脂環式骨格を有するモノマーを、「モノマーb」と称する場合がある。
【0130】
前記モノマーbは、中でも、下記式(b1)~(b5)で表されるモノマーからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーであることが好ましい。下記式(b1)~(b5)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を示し、Aは単結合又は連結基を示す。Xは非結合、メチレン基、エチレン基、酸素原子、又は硫黄原子を示す。Yはメチレン基、又はカルボニル基を示す。Zは、2価の有機基(例えば、式(a1)~(a4)で表されるモノマー中のAに含まれていてもよいアルキレン基として例示及び説明されたアルキレン基(特に、炭素数1~3の直鎖状のアルキレン基)等)を示す。V1~V3は、同一又は異なって、-CH2-、[-C(=O)-]、又は[-C(=O)-O-]を示す。ただし、V1~V3のうち少なくとも1つは[-C(=O)-O-]である。R8~R14は、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、フッ素原子を有していてもよいアルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシ基、又はシアノ基を示す。
【0131】
【化4】
【0132】
式(b1)~(b5)で表されるモノマー中のR、Aとしては、式(a1)~(a4)で表されるモノマー中のR、Aと同様の例が挙げられる。また、式(b1)~(b5)で表されるモノマー中のR8~R14におけるアルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、及び保護基で保護されていてもよいカルボキシ基としては、式(a1)~(a4)で表されるモノマー中のRaにおける例と同様の例が挙げられる。
【0133】
前記R8~R14におけるアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル基等の前記アルキル基を構成する水素原子の1個又は2個以上がフッ素原子で置き換えられた基[フルオロ(C1-6)アルキル基]等が挙げられる。
【0134】
前記式(b1)~(b4)で表されるモノマー中、前記R8~R11は、それぞれ、1個又は2個以上有していてもよく、1~3個が好ましい。また、前記式(b1)~(b4)で表されるモノマー中、前記R8~R11を2個以上有する場合、2個以上の前記R8~R11は、それぞれ、同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0135】
モノマーbの中でも、式(b1)で表され、且つR8がシアノ基、アミド基を有する基、イミド基を有する基、又はフルオロ(C1-6)アルキル基等の電子吸引性基であるモノマー;式(b2)で表されるモノマー;式(b3)で表され、且つYがカルボニル基であるモノマー;式(b4)で表されるモノマー;及び式(b5)で表されるモノマーは、ポリマー(フォトレジスト用樹脂)に優れた基板密着性、及び耐エッチング性を付与することができるとともに、アルカリ現像液への溶解性に優れ、微細パターンを高精度に形成することができる点で好ましい。
【0136】
前記式(b1)において、R8がシアノ基、アミド基を有する基、イミド基を有する基、又はフルオロ(C1-6)アルキル基等の電子吸引性基である場合、前記R8は、式(b1)中の*を付した炭素原子に少なくとも結合していることが特に好ましい。
【0137】
前記モノマー成分は、さらに、モノマーcを含んでいてもよい。前記モノマーcは下記式(c1)で表されるモノマーである。前記モノマー成分がモノマーcを含む場合、ポリマー(フォトレジスト用樹脂)に、より高い透明性及び耐エッチング性を付与することができる。式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を示す。Aは単結合又は連結基を示す。Rbは保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシ基、又はシアノ基を示し、中でも、ヒドロキシ基、シアノ基が好ましい。qは1~5の整数を示す。環Z2は炭素数6~20の脂環式炭化水素環を示す。qが2~5の整数である場合、2~5個のRbは、それぞれ、同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0138】
【化5】
【0139】
式(c1)で表されるモノマー中のR、Aとしては、式(a1)~(a4)で表されるモノマー中のR、Aと同様の例が挙げられる。また、式(c1)で表されるモノマー中のRbにおける保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシ基としては、式(a1)~(a4)で表されるモノマー中のRaにおける例と同様の例が挙げられる。
【0140】
式(c1)で表されるモノマー中の環Z2は炭素数6~20の脂環式炭化水素環を示し、例えば、シクロヘキサン環、シクロオクタン環等の6~20員(好ましくは6~15員、特に好ましくは6~12員)程度のシクロアルカン環;シクロヘキセン環等の6~20員(好ましくは6~15員、特に好ましくは6~10員)程度のシクロアルケン環等の単環の脂環式炭化水素環;アダマンタン環;ノルボルナン環、ノルボルネン環、ボルナン環、イソボルナン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等のノルボルナン環又はノルボルネン環を含む環;パーヒドロインデン環、デカリン環(パーヒドロナフタレン環)、パーヒドロフルオレン環(トリシクロ[7.4.0.03,8]トリデカン環)、パーヒドロアントラセン環等の多環の芳香族縮合環が水素添加された環(好ましくは完全水素添加された環);トリシクロ[4.2.2.12,5]ウンデカン環等の2環系、3環系、4環系等の橋架け炭化水素環(例えば、炭素数6~20程度の橋架け炭化水素環)等の2~6環程度の橋かけ環式炭化水素環等が挙げられる。前記環Z2としては、中でも、ノルボルナン環又はノルボルネン環を含む環、アダマンタン環が好ましい。
【0141】
(ポリマー)
本発明で得られるポリマーは共重合組成が均一であって、且つ分子量分布が狭いとする特徴を有するため、例えば、溶媒に対する溶解性が極めて高いという特性を有する。このため、前記ポリマーはフォトレジスト用樹脂等として好適に利用可能である。
【0142】
ポリマーの重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、例えば、1000~50000であることが好ましく、より好ましくは1500~40000、さらに好ましくは2000~20000、特に好ましくは2500~10000、最も好ましくは3000~6000である。ポリマーの分子量分布(Mw/Mn)は特に限定されないが、例えば、2.00以下であることが好ましく、より好ましくは1.45以下、さらに好ましくは1.20以下である。本発明で得られるポリマーをフォトレジスト用樹脂として用いる場合、分子量分布(Mw/Mn)が1.45以下であることにより、アルカリ現像液への溶解性に優れ、微細パターンを高精度に形成することができる点で好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、例えば、GPCにより、標準物質としてポリスチレンを用いて測定することができる。
【0143】
(フォトレジスト用樹脂組成物)
本発明で得られるポリマーは、上述の通りフォトレジスト用樹脂として利用することができる。すなわち、本発明で得られるポリマーと、感放射線性酸発生剤とを含む組成物はフォトレジスト用樹脂組成物として利用可能である。
【0144】
感放射線性酸発生剤としては、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等の放射線による露光により、効率よく酸を発生する慣用乃至公知の化合物を使用することができ、母核と発生する酸とからなる化合物である。前記母核としては、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩(テトラヒドロチオフェニウム塩を含む)、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等のオニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、ジスルホニルジアゾメタン化合物、ジスルホニルメタン化合物、オキシムスルホネート化合物、ヒドラジンスルホネート化合物等が挙げられる。また、前記露光により発生する酸としては、例えば、アルキルあるいはフッ化アルキルスルホン酸、アルキルあるいはフッ化アルキルカルボン酸、アルキルあるいはフッ化アルキルスルホニルイミド酸等が挙げられる。これらは1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0145】
感放射線性酸発生剤の使用量は、放射線の照射により生成する酸の強度やフォトレジスト用樹脂における各繰り返し単位の比率等に応じて適宜選択でき、例えば、フォトレジスト用樹脂100重量部に対して0.1~30重量部、好ましくは1~25重量部、さらに好ましくは2~20重量部の範囲から選択できる。
【0146】
フォトレジスト用樹脂組成物は、例えば、前記フォトレジスト用樹脂と、感放射線性酸発生剤を、レジスト用溶剤中で混合することにより調製することができる。前記レジスト用溶剤としては、前記重合溶媒として例示したグリコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、これらの混合溶媒等を使用することができる。
【0147】
フォトレジスト用樹脂組成物中のフォトレジスト用樹脂濃度は特に限定されないが、例えば、3~40重量%である。前記のフォトレジスト用樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂(例えば、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、カルボキシ基含有樹脂)等のアルカリ可溶成分、着色剤(例えば、染料)等を含んでいてもよい。
【0148】
(パターン形成方法)
前記のフォトレジスト用樹脂組成物を基材又は基板上に塗布し、乾燥した後、所定のマスクを介して、塗膜(レジスト膜)に露光して(又は、さらに露光後ベークを行い)潜像パターンを形成し、次いでアルカリ溶解することにより、微細なパターンを高い精度で形成することができる。
【0149】
基材又は基板としては、シリコンウェハ、金属、プラスチック、ガラス、セラミック等が挙げられる。フォトレジスト用樹脂組成物の塗布は、スピンコータ、ディップコータ、ローラコータ等の慣用の塗布手段を用いて行うことができる。塗膜の厚みは、例えば0.05~20μm、好ましくは0.1~2μmである。
【0150】
露光には、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等の放射線を利用することができる。
【0151】
露光により感放射線性酸発生剤から酸が生成し、この酸により、フォトレジスト用樹脂組成物の酸の作用によりアルカリ可溶となる重合単位(酸分解性基を有する繰り返し単位)のカルボキシ基等の保護基(酸分解性基)が速やかに脱離して、可溶化に寄与するカルボキシ基等が生成する。そのため、アルカリ現像液による現像により、所定のパターンを精度よく形成できる。
【実施例
【0152】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、樹脂の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフラン溶媒を用いたGPC測定(ゲル浸透クロマトグラフ)により求めた。標準試料にポリスチレンを使用し、検出器としては屈折率計(Refractive Index Detector;RI検出器)を用いた。また、GPC測定には、昭和電工(株)製カラム(商品名「KF-806L」)を3本直列につないだものを使用し、カラム温度40℃、RI温度40℃、テトラヒドロフラン流速0.8mL/分の条件で行った。分子量分布(Mw/Mn)は前記測定値より算出した。
【0153】
本実施例で用いたマイクロリアクターは、T字型の管継手からなるマイクロミキサーと、前記マイクロミキサーの下流に連結されたチューブリアクターとを含む、図1により示されるマイクロリアクターである。具体的には、前記マイクロリアクターは、重合開始剤、又は重合開始剤及び連鎖移動剤の導入路である重合開始剤等導入路1、第1のモノマー導入路2、これらの導入路の合流部(混合部)であるマイクロミキサー3、マイクロミキサー3の下流に連結された流路であるチューブリアクター5、第2のモノマー導入路4、チューブリアクター5と第2のモノマー導入路4の合流部(混合部)であるマイクロミキサー6、マイクロミキサー6の下流に連結された流路であるチューブリアクター7を含む。なお、本実施例で用いたマイクロリアクターは、さらに、重合開始剤等導入路1、第1のモノマー導入路2、及び第2のモノマー導入路4の上流に送液用のポンプを備えているが図1では省略した。また、チューブリアクター5とマイクロミキサー6との接合部、及びチューブリアクター7の下流末端に反応溶液の採取部を備えているが図1では省略した。
【0154】
前記マイクロミキサーとしては、三幸精機工業株式会社製の特注品を使用した(本実施例の記載に基づいて製造を依頼し、同等のものを入手することが可能である)。なお、ミキサーはステンレス製であり、形状はT字型、内径は400μmであった。チューブリアクター5及び7は、ジーエルサイエンス株式会社製ステンレスチューブを使用した。送液用のポンプとしては、ハーバード社製シリンジポンプ Model 11 Plusを使用した。反応温度の調節は、マイクロリアクター全体を恒温槽に埋没させることで行った。
【0155】
[実施例1及び2]
(第1段階目の反応)
重合開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)と、第1のモノマー成分として等モル量のGBLMA(γ-ブチロラクトン(メタ)アクリレート)及びMCPMA(1-メチルシクロペンチル(メタ)アクリレート)の混合物とを、それぞれ重合開始剤等導入路及び第1のモノマー導入路を介してマイクロリアクターに導入した。その後、反応溶液を採取し、残存モノマーの量や反応物(ポリマー)の重量分子量等を測定した。なお、第1段階目の反応におけるモノマーの転化率、ポリマーの重量分子量及び分子量分布、並びにマイクロリアクターの流速等の条件は表1に記載した通りである。
【0156】
(第2段階目の反応)
第1段階目の反応後、さらに第2のモノマー成分として等モル量のGBLMA及びMCPMAの混合物を、第2のモノマー導入路を介してマイクロリアクターに導入した。その後、反応溶液を採取し、残存モノマーの量や反応物(ポリマー)の重量分子量等を測定した。なお、第2段階目の反応におけるモノマーの転化率、ポリマーの重量分子量及び分子量分布、並びにマイクロリアクターの流速等の条件は表2に記載した通りである。
【0157】
[実施例3]
(第1段階目の反応)
重合開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)と、連鎖移動剤としてRAFT-A(2-シアノ-2-プロピル4-シアノベンゾジチオエート)との混合物、第1のモノマー成分として等モル量のGBLMA(γ-ブチロラクトン(メタ)アクリレート)及びMCPMA(1-メチルシクロペンチル(メタ)アクリレート)の混合物とを、それぞれ重合開始剤等導入路及び第1のモノマー導入路を介してマイクロリアクターに導入した。その後、反応溶液を採取し、残存モノマーの量や反応物(ポリマー)の重量分子量等を測定した。なお、第1段階目の反応におけるモノマーの転化率、ポリマーの重量分子量及び分子量分布、並びにマイクロリアクターの流速等の条件は表1に記載した通りである。
【0158】
(第2段階目の反応)
第1段階目の反応後、さらに第2のモノマー成分として等モル量のGBLMA及びMCPMAの混合物を、第2のモノマー導入路を介してマイクロリアクターに導入した。その後、反応溶液を採取し、残存モノマーの量や反応物(ポリマー)の重量分子量等を測定した。なお、第2段階目の反応におけるモノマーの転化率、ポリマーの重量分子量及び分子量分布、並びにマイクロリアクターの流速等の条件は表2に記載した通りである。
【0159】
[実施例4~24]
重合開始剤及び連鎖移動剤、並びに反応条件を表1及び2に記載されたものに変更したこと以外は実施例3と同様にして、第1及び2段階目の反応において得られたポリマーの重量分子量等を測定し、それぞれ表1及び2に記載した。
【0160】
【表1】
【0161】
【表2】
【符号の説明】
【0162】
1 重合開始剤等導入路
2 第1のモノマー導入路
3 マイクロミキサー
4 第2のモノマー導入路
5 チューブリアクター
6 マイクロミキサー
7 チューブリアクター
図1