IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アオイ化学工業株式会社の特許一覧 ▶ 鹿島道路株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-道路用緊急補修材 図1
  • 特許-道路用緊急補修材 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】道路用緊急補修材
(51)【国際特許分類】
   E01C 7/26 20060101AFI20240927BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240927BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20240927BHJP
   C08L 45/02 20060101ALI20240927BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
E01C7/26
C08K3/013
C08K5/09
C08L45/02
C08L101/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023180511
(22)【出願日】2023-10-19
【審査請求日】2023-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000100986
【氏名又は名称】アオイ化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000181354
【氏名又は名称】鹿島道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩本 崇公
(72)【発明者】
【氏名】五伝木 一
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 風香
(72)【発明者】
【氏名】林 信也
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04676927(US,A)
【文献】米国特許第05596032(US,A)
【文献】特許第5583978(JP,B2)
【文献】特許第6577975(JP,B2)
【文献】特開2017-082180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 7/26
C08K 3/013
C08K 5/09
C08L 45/02
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨材と、アルカリ性添加材と、アスファルトと、マレイン化油脂肪酸を有するバインダを含む道路補修材であって、
前記バインダは、クマロン・インデン共重合物をさらに含み、
骨材及びアルカリ性添加材は、それぞれその外周囲がアスファルトで覆われ、該アスファルトで覆われた骨材及びアルカリ性添加材は、ぞれぞれの外周囲がさらに前記バインダで覆われている構造を有する、道路補修材。
【請求項2】
前記骨材と、前記アスファルト及び前記バインダとの割合は質量比で100:4.0~100:11.0である、請求項1に記載の道路補修材。
【請求項3】
前記バインダは脱水ひまし油脂肪酸をさらに含み、前記アスファルトと、前記バインダとの割合は質量比で100:60~100:88である、請求項1に記載の道路補修材。
【請求項4】
前記骨材、前記アスファルト及び前記バインダの合計と、前記アルカリ性添加材との割合は質量比で100:1.0~100:15.0である、請求項に記載の道路補修材。
【請求項5】
道路補修材の製造方法であって、
骨材とアルカリ性添加材とを混合する工程1と、
工程1で得られた混合物にアスファルトを添加することにより、前記骨材及び前記アルカリ性添加材をそれぞれアスファルトで覆う工程2と、
さらに工程2で得られた混合物にマレイン化油脂肪酸を有するバインダを添加することにより、アスファルトを該バインダで覆う工程3と
を備える、道路補修材の製造方法。
【請求項6】
道路補修材に使用されるバインダであって、該バインダがマレイン化油脂肪酸を有し、該
バインダと該マレイン化油脂肪酸との質量比は100:10~100:100である、バインダ。
【請求項7】
前記バインダは、クマロン・インデン共重合物をさらに含み、バインダと該クマロン・インデン共重合物との割合は質量比で100:5~100:23である、請求項に記載のバインダ。
【請求項8】
前記バインダは、脱水ひまし油脂肪酸をさらに含み、該脱水ひまし油脂肪酸と前記マレイン化油脂肪酸との割合は質量比で100:14~100:100である、請求項又は請求項に記載のバインダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト舗装に生じたポットホールなどの段差を充てんする常温施工型アスファルト補修合材に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルト舗装は、長期間供用すると紫外線や降雨などによる水分および繰り返しの交通荷重により、損傷し、ひび割れやポットホール(穴)が発生する。交通車両の安全を確保するため、迅速にひび割れやポットホールを補修する必要があり、補修工事に必要な交通規制の時間をできるだけ短時間とすることが望まれている。
これに対して、特許文献1では、アスファルトと、骨材と、カットバック材としてのトール油脂肪酸とセメントとを混合してなり、常温で施工可能な常温施工型アスファルト混合物を提供した。該アスファルト混合物を使用することで、カットバックアスファルトを施工後、急速に固化させることができ、早期に交通開放を可能とする強度を発現することができる。
また、特許文献2には、酸化反応あるいは酸化重合反応性の常温アスファルト混合物が開示されている。特許文献2のアスファルト混合物によれば、雨天、寒暖のような気候条件の影響や煩雑な作業手順を考慮することなく常温に近い温度で調和することができる。そして、アスファルト混合物に反応促進剤を使用することで、当該混合物の高い効果度の達成や硬化養生にかかるまでの時間を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5583978号
【文献】特許第6577975号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、既存の市場における常温合材補修材は供用中に早期破損に至っており、より耐久性の高いものが望まれている。そこで、本発明は、強度を高め、補修面との密着性を向上させる道路補修材を提供し、補修したひび割れ部等を再破損に至りにくい道路補修材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は第1観点として、骨材と、アルカリ性添加材と、アスファルトと、マレイン化油脂肪酸を有するバインダを含む道路補修材であって、
骨材及びアルカリ性添加材は、それぞれその外周囲がアスファルトで覆われ、該アスファルトで覆われた骨材及びアルカリ性添加材は、ぞれぞれの外周囲がさらに前記バインダで覆われている構造を有する、道路補修材に関する。
本発明は第2観点として、前記バインダは、クマロン・インデン共重合物をさらに含む、第1観点に記載の道路補修材に関する。
本発明は第3観点として、前記アスファルトと、前記クマロン・インデン共重合物との割合は質量比で100:4~100:19である、第2観点に記載の道路補修材に関する。
本発明は第4観点として、前記骨材と、前記アスファルト及び前記バインダとの割合は質量比で100:4.0~100:11.0である、第1観点又は第2観点に記載の道路補修材に関する。
本発明は第5観点として、前記バインダは脱水ひまし油脂肪酸をさらに含み、前記アス
ファルトと、前記バインダとの割合は質量比で100:60~100:88である、第1観点又は第2観点に記載の道路補修材に関する
本発明は第6観点として、前記骨材と、前記アスファルト及び前記バインダとの割合は質量比で100:6.0~100:12.0である、第5観点に記載の道路補修材に関する。
本発明は第7観点として、前記骨材、前記アスファルト及び前記バインダの合計と、前記アルカリ性添加材との割合は質量比で100:1.0~100:15.0である、第5観点に記載の道路補修材に関する。
本発明は第8観点として、道路補修材の製造方法であって、骨材とアルカリ性添加材とを混合する工程1と、工程1で得られた混合物にアスファルトを添加することにより、前記骨材及び前記アルカリ性添加材をそれぞれアスファルトで覆う工程2と、さらに工程2で得られた混合物にマレイン化油脂肪酸を有するバインダを添加することにより、アスファルトを該バインダで覆う工程3とを備える、道路補修材の製造方法に関する。
本発明は第9観点として、前記バインダは、クマロン・インデン共重合物をさらに含む、第8観点に記載の道路補修材の製造方法に関する。
本発明は第10観点として、道路補修材において、前記アスファルトと、前記クマロン・インデン共重合物との割合は質量比で100:4~100:19である、第9観点に記載の道路補修材の製造方法に関する。
本発明は第11観点として、骨材と、前記アスファルトおよび前記バインダとの割合は質量比で100:4.0~100:11.0である、第8観点又は第9観点に記載の道路補修材の製造方法に関する。
本発明は第12観点として、前記バインダは脱水ひまし油脂肪酸をさらに含み、前記アスファルトと、前記バインダとの割合は質量比で100:60~100:88である、第8観点又は第9観点に記載の道路補修材の製造方法に関する。
本発明は第13観点として、前記骨材と、前記アスファルト及び前記バインダとの割合は質量比で100:6.0~100:12.0である、第12観点に記載の道路補修材の製造方法に関する。
本発明は第14観点として、前記骨材、前記アスファルト及び前記バインダの合計と、前記アルカリ性添加材との割合は質量比で100:1.0~100:15.0である、第12観点に記載の道路補修材の製造方法に関する。
本発明は第15観点として、道路補修材に使用されるバインダであって、該バインダがマレイン化油脂肪酸を有し、該バインダと該マレイン化油脂肪酸との質量比は100:10~100:100である、バインダに関する。
本発明は第16観点として、前記バインダは、クマロン・インデン共重合物をさらに含み、バインダと該クマロン・インデン共重合物との割合は質量比で100:5~100:23である、第15観点に記載のバインダに関する。
本発明は第17観点として、前記バインダは、脱水ひまし油脂肪酸をさらに含み、該脱水ひまし油脂肪酸と前記マレイン化油脂肪酸との割合は質量比で100:14~100:100である、第15観点又は第16観点に記載のバインダに関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の道路補修材は、マレイン化油脂肪酸を有するバインダを使用することで、従来道路補修材より補修材の曲げ強度を高めることができる。また、クマロン・インデン共重合物をさらに使用することにより、さらなる優れる強度が得られ、補修面との密着性を向上させ、耐久性が高い道路補修材が得られる。これにより、補修した充てん部等の再破損を抑制する効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、道路補修材の各製造の工程断面イメージ図である。
図2図2は、施工後、道路補修材の断面イメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を行った結果、骨材と、アルカリ性添加材と、アスファルトと、バインダとを含有する道路補修材により、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
[骨材]
本発明の道路補修材は、骨材をさらに含む。
骨材としては、特に限定されず公知の骨材を用いることができる。具体的には、骨材として、粗骨材、細骨材及び充填材(フィラー)を用いることができる。ここで、粗骨材とは、粒径が2.5mm以上の骨材である。細骨材とは、粒径が0.075mm以上2.5mm未満の骨材である。充填材とは、粒径が0.15mm未満の鉱物質粉末である。
粗骨材としては、例えば、砕石、玉砕、砂利等を用いることができる。砕石としては、例えば、7号砕石を用いることができる。また、細骨材としては、天然砂、人工砂、スクリーニングス等を用いることができる。充填材としては、例えば、石灰岩微粉末(石粉)等を用いることができる。上記粗骨材及び細骨材として、再生骨材およびスラグ等の副産物を用いることができる。
【0010】
本発明の道路補修材に使用される骨材は、例えば、以下のように設定されている。
充填材の配合割合:0~12重量%
細骨材の配合割合:30~100重量%
粗骨材の配合割合:0~70重量%
【0011】
上記配合割合であれば、骨材同士の噛み合わせが良く、空隙も少ないため骨材のみでも十分な強度が発現される。ただし、骨材の配合割合は上記に限定されるものではなく、骨材の種類に応じて適宜設定しうる。
【0012】
骨材の道路補修材における含有率は、基本的に、道路補修材の全質量に対して、80質量%~95質量%であることが好ましい。
【0013】
[アルカリ性添加材]
本発明の道路補修材は、アルカリ性添加材を含む。
本発明において、アルカリ性添加材としては、入手のし易さや環境面を考慮して、ポルトランドセメント(後述に、セメントとも称する)を使用しているが、これに限定されるものではない。例えば、ナトリウムイオンやカリウムイオン等の金属イオンを含む水溶液、もしくは水を添加することで上記イオンに分解する金属塩を含む粉末、もしくは炭酸水素ナトリウムや炭酸水素カリウム等を使用することができる。
普通ポルトランドセメントは、主な物質として、ケイ酸三カルシウム(3CaO・SiO)、ケイ酸二カルシウム(2CaO・SiO)、カルシウムアルミネート(3CaO・Al)、カルシウムアルミノフェライト(4CaO・Al・Fe)、硫酸カルシウム(CaSO・2HO)を含み、酸化カルシウムCaO分を含む。
【0014】
本発明の道路補修材におけるアルカリ性添加材の含有量として、上記骨材、下記アスファルト及び下記バインダの合計と、アルカリ性添加材との割合は、質量比で100:1.0~100:15.0であり、好ましくは、100:2.5~100:10である。
【0015】
[アスファルト]
アスファルトの種類は、制限されない。アスファルトとしては、公知のアスファルトを利用することができる。例えば、天然アスファルト、および石油アスファルトが挙げられる。本発明の道路補修材に使用されるアスファルトは、改質アスファルトであってもよい。具体的に例えば、ストレートアスファルト、ブローンアスファルト、セミブローンアス
ファルト、およびポリマー改質アスファルトが挙げられる。ポリマー改質アスファルトは、ポリマー(例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、およびエチレン-エチルアクリレート共重合体)を含むアスファルトである。アスファルトは、ストレートアスファルトを含むことが好ましい。または、1種単独、又は2種以上のアスファルトを含んでもよい。
本開示では、入手のし易さやコスト面を考慮して、ストレートアスファルトを使用しているが、これに限定されるものではない。
【0016】
アスファルトの含有率は、制限されなく、用途、および目的とする特性に応じて決定すればよい。道路補修材の運搬性、および道路補修材の施工性の観点から、アスファルトの含有率は、道路補修材の全質量に対して、3質量%以上であることが好ましく、3.4質量%以上であることがより好ましい。
即ち、アスファルトの含有率は、道路補修材の運搬性、道路補修材の施工性、および道路補修材の強度の観点から、3質量%~5質量%であることが好ましく、3.4質量%~4.5質量%であることがより好ましい。
【0017】
[バインダ]
本発明のバインダは、動物性油脂、植物性油脂、さらにマレイン酸で変性した油脂を使用することができる。これらの油脂として、例えば、アマニ油、エノ油、オイチシカ油、オリーブ油、カカオ脂、カポック油、白カラシ油、ゴマ油、コメヌカ油、サフラワー油、シアナット油、シナキリ油、大豆油、茶実油、ツバキ油、コーン油、ナタネ油、パーム油、パーム核油、ひまし油、ひまわり油、綿実油、ヤシ油、木ロウ、落花生油等の植物性油脂;馬脂、牛脂、牛脚脂、牛酪脂、豚脂、山羊脂、羊脂、乳脂、魚油、鯨油等の動物性油脂、マレイン酸で変性した油脂(マレイン化油)が挙げられる。
【0018】
これらの油脂は、1種のみならず2種以上を混合しても道路補修材の油成分になり、使用可能である。
【0019】
本発明のバインダはさらに、1種以上の脂肪酸を含むことができる。脂肪酸は、1つのカルボキシ基を有する脂肪族化合物である。脂肪酸としては、例えば、動植物由来の飽和脂肪酸、及び不飽和脂肪酸の単体および混合物が挙げられる。
【0020】
飽和脂肪酸としては、一般的なものが使用可能である。例えば、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、イコサン酸、ドコサン酸、テトラコサン酸、ヘキサコサン酸、オクタコサン酸、及びトリアコンタン酸などが挙げられる。
不飽和脂肪酸としては、一般的なものが使用可能である。例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、トール油脂肪酸、(脱水)ひまし油脂肪酸、大豆油脂肪酸、桐油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、米糠油脂肪酸、綿実油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、(水添)ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸などの植物由来、あるいは、牛脂などの動物由来の乾性油、半乾性油、または不乾性油脂肪酸などが挙げられる。
さらに、脂肪酸に無水マレイン酸を付加したマレイン化油脂肪酸も挙げられる。
【0021】
脂肪酸のうち、好ましくはマレイン化油脂肪酸が使用される。例えば、HIMALEIN(ハイマレイン) DF-20(伊藤製油株式会社)が挙げられる。
【0022】
マレイン化油脂肪酸を使用する場合に、バインダに含まれるマレイン化油脂肪酸の質量は、基本的に、バインダとマレイン化油脂肪酸との割合は質量比で、100:10~10
0:100である。より好ましくは、100:11.4~100:50である。
【0023】
さらに、マレイン化油脂肪酸を有する上で、好ましくは脱水ひまし油脂肪酸がさらに使用される。この場合に、該脱水ひまし油脂肪酸と前記マレイン化油脂肪酸との割合は質量比で、100:14~100:100である。
【0024】
本発明のバインダはさらに、クマロン・インデン共重合物を含むことができる。
クマロン・インデン共重合物は、重質軽油の組成のうち、スチレン、クマロン、インデンの3種類からなる重合体である。これらは、各モノマーのホモポリマー、各モノマーいずれか2種類の共重合体、あるいは3種の共重合体などの複雑な混合物である。クマロン・インデン共重合物は市販品を用いることができ、例えば、クマロンG-90(新日鐵化学(株)製)、ソフトクマロン25B、SYNTAC HA-35(神戸油化学工業(株)製)が挙げられる。
【0025】
上記バインダに含まれる上記クマロン・インデン共重合物の使用量は、基本的に、バインダと該クマロン・インデン共重合物との割合は質量比で、100:5~100:23である。より好ましくは、100:5.2~100:21.4である。さらに好ましくは、100:5.2~100:17.3である。さらにより好ましくは、100:5.2~100:10.0である。
さらに、クマロン・インデン共重合物がバインダに含まれる場合に、好ましくは、上記アスファルトと、上記クマロン・インデン共重合物との割合が質量比で100:4~100:19である。より好ましくは、100:4.4~100:18.2である。
【0026】
道路補修材に含まれる上記バインダの使用量は、基本的に、道路補修材に含まれるアスファルトと、上記バンダイとの割合は質量比で、100:60~100:88である。より好ましくは、100:66.0~100:85.3である。さらに好ましくは、100:66.8~100:81.2である。さらにより好ましくは、100:76.8~100:81.2である。
【0027】
上記骨材と、上記アスファルトおよび上記バインダとの割合は、質量比で100:4.0~100:15.0であることが好ましく、100:4.0~100:11.0であることがより好ましく、100:6.0~100:12.0であることがさらに好ましく、100:6.6~100:8.0であることがさらにより好ましい。
【0028】
[その他]
本開示の効果を阻害しない範囲で本発明の道路補修材には、必要に応じて、可塑剤、無機充填材、界面活性剤、老化防止材、カーボンブラック、着色剤、再生用添加剤等の配合剤を含有するようにしてもよい。
【0029】
[道路補修材の製造方法]
本発明の道路補修材の製造方法は、前記骨材と前記アルカリ性添加材とを混合する工程1と、工程1で得られた混合物にアスファルトを添加することにより、前記骨材及び前記アルカリ性添加材をそれぞれアスファルトで覆う工程2と、さらに工程2で得られた混合物にマレイン化油脂肪酸を有するバインダを添加することにより、アスファルトを該バインダで覆う工程3とを備える。
また、前記バインダは、クマロン・インデン共重合物をさらに含むことができる。この場合に、前記アスファルトと、前記クマロン・インデン共重合物との割合は質量比で100:4~100:19である。
また、骨材と、前記アスファルトおよび前記バインダとの割合は質量比で100:4.0~100:11.0であることが可能である。
また、前記バインダは、脱水ひまし油脂肪酸をさらに含み、この場合に、前記アスファルトと、前記バインダとの割合は質量比で100:60~100:88である。さらにこの場合に、前記骨材と、前記アスファルト及び前記バインダとの割合は質量比で100:6.0~100:12.0であることが可能である。前記骨材、前記アスファルト及び前記バインダの合計と、前記アルカリ性添加材との割合は質量比で100:1.0~100:15.0であることが可能である。
【0030】
具体的に、図1の道路補修材の製造工程断面イメージ図を参照しながら、本発明の道路補修材1の製造方法を説明する。
【0031】
まず、骨材及びアルカリ性添加材の原料を、略均一になるまで混合し、工程1を行う(図1の(a)を参照)。
【0032】
次いで、工程2では、工程1で混合された骨材及びアルカリ性添加材に、アスファルトを添加し、これらを混合する。これにより骨材及びアルカリ性添加材それぞれの外周囲がアスファルトで被覆される(図1の(b)を参照)。
【0033】
次いで、工程3では、工程2で形成されるアスファルトで被覆される骨材及びアルカリ性添加材にバインダを添加し、これらを混合する。これによりアスファルトの外周囲に、さらにバインダで覆われ、骨材及びアルカリ性添加材が図1の(c)で示される構造に形成される。
【0034】
[道路補修材の施工方法]
施工時には、本発明の道路補修材を事前に製造し、施工現場で道路補修材を補修部分に埋めることができる。または、上記工程1~工程3が全て施工現場で行うこともできる。または、事前に、工程1を行い又は工程1~工程2を行い、残りの工程を施工現場で行うことも可能である。
その後、形成される本発明の道路補修材を施工箇所に敷均し、散水した後、直ちに転圧する。該施工により、本発明の道路補修材が補修面と密着になり、従来の道路補修材より密着性が向上され、強度が高い補修面に形成される。最終的に、断面が図2に示される道路補修材が形成される。なお、図2は道路補修材を分かりやすく理解するためのイメージ図であり、実際とは異なる部分がある。例えば図2ではセメントが大きく描かれているが、実際にセメントのサイズが小さく、骨材の間に埋めるようになる。
【実施例
【0035】
以下、本発明の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0036】
[常温道路補修材の調製]
道路補修材に使用される各成分を下記表1に従いそれぞれ用意する。
・(骨材)
充填材(有垣鉱業株式会社)、骨材における配合割合:3.1重量%
細骨材(砕砂)(株式会社双葉)、骨材における配合割合:37.9重量%
細骨材(細目砂)(名石津建材株式会社)、骨材における配合割合:12.6重量%
粗骨材(6号砕石)(名株式会社祥和コーポレーション)、骨材における配合割合:23.4重量%
粗骨材(7号砕石)(株式会社祥和コーポレーション)、骨材における配合割合:14.1重量%
・(アスファルト)
ストレートアスファルト(ENEOS株式会社)
・(マレイン化油脂肪酸)
HIMALEIN DF-20(伊藤製油株式会社)
・(脱水ひまし油脂肪酸)
DCO-FA -C(伊藤製油株式会社)
・(クマロン・インデン共重合物)
SYNTAC HA-35(神戸油化学工業株式会社)
・(アルカリ性添加材)
普通ポルトランドセメント(宇部三菱セメント株式会社)
下記表1の配合(質量%)により常温道路補修材を調製する。
【0037】
[曲げ強度の測定]
まずは、表1の配合により、実施例1~10及び比較例1~3からなる常温道路補修材(評価対象)を型枠内に充填し、寸法は60×60×240mmである試験体を作製する。次に、試験体に散水し、速やかに締固める。その後、硬化養生として23℃環境で24時間静置する。養生後、(株)島津製作所製オートグラフ万能試験機を用いて、試験体の両端を支えて中央に荷重を加え、0.06N/mm/secの速度にて、曲げ強度を計測する。
【0038】
[せん断付着強度の測定]
せん断付着強度とは、接着面に平行に作用し、被着体同士を反対方向にずれさせようとする荷重であるせん断応力によって、接着接合部が破断したときの強さのことである。道路補修材のせん断付着強度が高ければ、補修面との密着性が高いことを表す。
まずは、被着材としてアスファルト混合物(再生密粒13mm)の100mm×100mm×50mmを準備し、表1の配合により得られる常温道路補修材(実施例1~10及び比較例1~3)をそれぞれ被着材上に50mmの厚みとなるように型枠内に充填する。次に、評価対象に散水し、速やかに締固める。その後、硬化養生として23℃環境で24時間静置する。養生後、(株)島津製作所製オートグラフ万能試験機を用いて、被着材側を固定し、1mm/minの速度にて、評価対象の側面を載荷し、試験体が滑り始める接着界面の最大強度を計測する。
【0039】
常温道路補修材の曲げ強度及びせん断付着強度の結果を表2に、カンタブロ試験の損失率結果を表3にそれぞれ記載した。
【0040】
[カンタブロ試験]
カンタブロ試験は、アスファルト混合物の骨材飛散抵抗性を評価するために行われる試験であり、損失率(カンタブロ損失率)が低いほど、材料の強度が高く、付着が良く、まとまる力が強いことを意味する。即ち、低い損失率が材料の耐久性が高いことを意味する。首都高速道路(株)舗装設計施工要領に記載される「緊急補修材料(常温混合物)の性能試験」により、対象物の常温カンタブロ損失率を算出する。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
[曲げ強度及びせん断付着強度による道路補修材の評価]
表2の曲げ強度及びせん断付着強度の結果から分かるように、比較例1の常温道路補修材にある脱水ひまし油脂肪酸をマレイン化油脂肪酸に変えた実施例1の常温道路補修材では、よい曲げ強度が得られたため、マレイン化油脂肪酸の使用により、曲げ強度が増加したと確認できる。これらの結果から、カルボキシ基が2つのマレイン化油脂肪酸を使用することはカルボキシ基が1つの脂肪酸の使用することより、バインダとしての強度を高めるものと推量される。
【0045】
実施例1及び実施例2にさらにクマロン・インデン共重合物を追加してからなる実施例3及び実施例4では、曲げ強度だけではなく、せん断付着強度(被着材との密着性)も増加したことが分かる。これにより、クマロン・インデン共重合物が添加されることで、実施例3及び実施例4の道路補修材は曲げ強度及び被着材との密着性をさらに向上させることが確認できた。
【0046】
[カンタブロ試験による道路補修材の評価]
損失率が小さいほど、耐久性が高いことを意味する。そのため、道路補修材においてマレイン化油脂肪酸が多ければ多いほど(特に実施例5~7)、カンタブロ試験の結果が良くなる。また、クマロン・インデン共重合物のアスファルトに対する割合が多ければ多いほど、カンタブロ試験の結果が良くなる。
【符号の説明】
【0047】
1、道路補修材
2、骨材
3、アルカリ性添加材
4、アスファルト
5、バインダ
【要約】
【課題】本発明は、強度を高め、さらに補修面との密着性を向上させる道路補修材を提供し、再破損に至りにくい道路補修材及びその製造方法を提供する。本発明は、さらに道路用緊急補修材に使用されるバインダを提供する。
【解決手段】本発明の道路補修材は骨材と、アルカリ性添加材と、アスファルトと、マレイン化油脂肪酸を有するバインダを含む道路補修材であって、骨材及びアルカリ性添加材は、それぞれその外周囲がアスファルトで覆われ、該アスファルトで覆われた骨材及びアルカリ性添加材は、それぞれその外周囲がさらにバインダで覆われている構造を有する。バインダは、クマロン・インデン共重合物をさらに含むことができる。
【選択図】図1
図1
図2