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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】有機酸含有ドリップシート
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/26 20060101AFI20240927BHJP
   D04H 1/54 20120101ALI20240927BHJP
   A23L 3/3508 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B65D81/26 H
D04H1/54
A23L3/3508
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023194341
(22)【出願日】2023-11-15
【審査請求日】2023-12-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591196315
【氏名又は名称】金星製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】松本 章
(72)【発明者】
【氏名】勝間 敬
(72)【発明者】
【氏名】西田 素子
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-138349(JP,A)
【文献】特開2016-188456(JP,A)
【文献】特開2012-051170(JP,A)
【文献】特開2015-016904(JP,A)
【文献】特開平11-076376(JP,A)
【文献】特開2017-184962(JP,A)
【文献】特表2016-529898(JP,A)
【文献】四釜慶治 松岡有樹 菅原芳明,ミオグロビン・ヘモグロビンの自動酸化反応-その分子構造と結合酸素の安定性-,生物物理 ,日本,一般社団法人 日本生物物理学会,2001年06月26日,第41巻 第2号,p 74- p79,jstage.jst.go.jp/article/biophys/41/2/41_2_74/_pdf/-char/ja
【文献】肉とpHの関係,日本, 株式会社ハマダフードシステム,2024年08月30日,hamadafs.co.jp/publics/index/74/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/26
D04H 1/54
A23L 3/3508
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を保存する際に使用されるドリップシートであって、
前記ドリップシートは、少なくとも1層の吸収シートを備え、
前記吸収シートが有機酸を含有しており、
前記有機酸は、30℃における水への溶解度が、0.3g/100mL~12g/100mLであり、
前記吸収シートの有機酸の含有量が、0.03g/m2以上、0.5g/m 2 以下であり、
前記吸収シート中の有機酸が、有機酸を溶媒に溶解させたものであり、有機酸濃度が飽和濃度未満である有機酸溶液を、吸収シートの基材と接触させた後、溶媒を除去することにより付与されたものであることを特徴とする、有機酸含有ドリップシート。
【請求項2】
前記吸収シートの基材の目付が、20g/m 2 以上、250g/m 2 以下である、請求項1に記載の有機酸含有ドリップシート。
【請求項3】
前記有機酸溶液は、溶液中の有機酸の濃度が、飽和濃度に対して85%以下である、請求項1に記載の有機酸含有ドリップシート。
【請求項4】
前記吸収シートの基材が、エアレイド方式により得られる熱融着性繊維を含有する不織布であり、
前記熱融着性繊維は、繊度が0.5dtex~10.0dtex、繊維長が1.1mm~10.0mmである、請求項1~3のいずれか1項に記載の有機酸含有ドリップシート。
【請求項5】
前記ドリップシートが、吸収シートと、前記吸収シートに積層された液透過性シートとを有し、
前記液透過性シートが、多数の貫通孔を有する樹脂フィルムであり、
前記貫通孔は、被保存体載置面における開口面積が、被保存体非載置面における開口よりも大きく形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の有機酸含有ドリップシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉や魚等の食品を保存する際に使用されるドリップシートに関し、特に食品の変色を防止できるドリップシートに関する。
【背景技術】
【0002】
精肉、鮮魚類の食品を販売する際には、樹脂製トレイ内に食品を配置し、トレイの開口面を透明ラップフィルムで被覆したパッケージの状態で陳列する。ここで、陳列時において、精肉や鮮魚類は、ドリップと呼ばれる赤色の液体が滲出する。ドリップは、肉、魚の冷凍時又は非冷凍時に破壊した細胞膜を通じ、細胞から水分と共に漏出するタンパク質(ミオグロビン)成分である。このようなドリップがトレイ底部に溜まっていると、外観上不潔感を与え購買意欲の低下を招く。また、搬送時には、ドリップがパッケージ外に流出し、衣類、他の物品を汚すおそれがある。さらに、ドリップがトレイ内で腐敗すれば、食品に悪影響を与えたり、悪臭が発生したりするおそれがある。
【0003】
このようなドリップに関する問題を予防するため、食品を販売する際には、食品の下にドリップシートが敷かれている。ドリップシートを敷くことで、ドリップを常時吸収し外観上の清潔感を維持できると共に、ドリップのトレイ底部での滞留やパッケージ外への漏出も防止できる。また、ドリップシートによってドリップがトレイ底部に滞留することがないため、食品に再付着せず、食品を傷めず鮮度を長期間保持できる。
【0004】
ドリップシートとしては、例えば、特許文献1には、上層、中層及び下層の少なくとも3層を有する不織布層を備え、上層は、熱接着性繊維及び有機酸を含み、中層は、熱接着性繊維、パルプ及び有機酸を含み、下層は、熱接着性繊維及びパルプを含み、上層は、中層及び下層に比べ熱接着性繊維の繊維径が大きくかつ中層に比べ有機酸の含有率が高く、中層は、下層に比べパルプの含有率が高いことを特徴とする吸収シートが記載されている(特許文献1(請求項1)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-005991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の吸収シートでは、不織布に有機酸を付与する際に、全ての有機酸が完全に溶解した溶液ではなく、一部の有機酸のみ溶解し大部分の有機酸が溶解していない溶液(具体的には、濃度3質量%のフマル分散液)が使用されている(特許文献1(段落0044)参照)。そのため、不織布に噴霧された有機酸含有液中の有機酸粒子は、上層の繊維と交絡かつ結合し易く、中層及び下層ウエブに到達する前に大部分が上層ウエブに残留している(特許文献1(段落0038)参照)。しかし、大部分の有機酸が上層ウエブに存在しているため、他の部分に吸収されたドリップには有機酸が作用せず、ドリップの腐敗を十分に抑制できなかった。また、このような方法で付与された有機酸は、吸収シートから脱落しやすく、脱落した有機酸が食品に付着すると、食品が変色するという問題があった。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、ドリップの腐敗による悪臭の発生を抑制し、かつ、食品の変色を抑制できる有機酸含有ドリップシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の有機酸含有ドリップシートは、食品を保存する際に使用されるドリップシートであって、前記ドリップシートは、少なくとも1層の吸収シートを備え、前記吸収シートが有機酸を含有しており、前記有機酸は30℃における水への溶解度が0.3g/100mL~12g/100mLであり、前記吸収シートの有機酸の含有量が0.03g/m2以上であり、前記吸収シート中の有機酸が、有機酸を溶媒に溶解させたものであり、有機酸濃度が飽和濃度未満である有機酸溶液を、吸収シートの基材と接触させた後、溶媒を除去することにより付与されたものであることを特徴とする。
【0009】
前記有機酸含有ドリップシートは、吸収シートの厚さ方向全体に有機酸が付されているため、吸収シートに吸収されたドリップの腐敗が抑制され、悪臭の発生が抑制される。また、有機酸の水への溶解度が低いため、未吸収のドリップへと多量の有機酸が溶出してしまい、ドリップの酸性度が急激に高くなることが抑制される。さらに、有機酸は所定の方法によって吸収シートの基材に付与されているため、基材から有機酸が脱落することも抑制される。よって、食品に、酸性度の高いドリップや脱落した有機酸が接触して変色を生じることが抑制される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の有機酸含有ドリップシートを使用すれば、ドリップの腐敗による悪臭の発生を抑制し、かつ、食品の変色を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の有機酸含有ドリップシートの一例の斜視図。
図2図1の有機酸含有ドリップシートの平面拡大図。
図3図2のV-V線の模式的断面図。
図4図1の有機酸含有ドリップシートの他の例の平面拡大図
図5図4のV-V線の模式的断面図。
図6】樹脂フィルムの被保存体載置面を示す図面代用写真(図6(a))、被保存体非載置面を示す図面代用写真(図6(b))。
図7】ドリップシートNo.10(吸収シートNo.10)のSEM画像を示す図面代用写真。
図8】ドリップシートNo.10(吸収シートNo.10)の有機酸脱離試験後のSEM画像を示す図面代用写真。
図9】ドリップシートNo.13(吸収シートNo.13)のSEM画像を示す図面代用写真。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の有機酸含有ドリップシートは、食品を保存する際に使用されるドリップシートであり、前記ドリップシートは、少なくとも1層の吸収シートを備え、前記吸収シートは有機酸を含有している。
前記吸収シートは、ドリップを吸収し、保持する機能を有する。この吸収シートが有機酸を含有することで、吸収シートに吸収されたドリップに有機酸が作用し、ドリップの腐敗を抑制し、悪臭の発生が抑制される。
【0013】
前記有機酸は、30℃における水への溶解度が、0.3g/100mL以上、好ましくは0.4g/100mL以上、より好ましくは0.5g/100mL以上であり、12g/100mL以下、好ましくは11g/100mL以下、より好ましくは10.5g/100mL以下である。前記有機酸の30℃における水への溶解度が0.3g/100mL以上であれば、ドリップの腐敗を抑制し、悪臭の発生を抑制でき、12g/100mL以下であれば有機酸による食品への影響が小さくなり、食品の変色を抑制できる。なお、前記30℃における水への溶解度は、液温が30℃の有機酸の飽和水溶液における有機酸の濃度である。
【0014】
前記有機酸の具体例としては、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、ソルビン酸等が挙げられる。これらの中でも、有機酸としては、フマル酸、アジピン酸およびコハク酸よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0015】
前記吸収シートの有機酸の含有量は、0.03g/m2以上が好ましく、より好ましくは0.04g/m2以上、さらに好ましくは0.05g/m2以上であり、0.5g/m2以下が好ましく、より好ましくは0.3g/m2以下、さらに好ましくは0.2g/m2以下、特に好ましくは0.1g/m2以下である。前記有機酸の含有量が、0.03g/m2以上であればドリップの腐敗を抑制し、悪臭の発生を抑制でき、0.5g/m2以下であれば有機酸による食品への影響が小さくなり、食品の変色を抑制できる。
【0016】
前記吸収シート中の有機酸が、有機酸を溶媒に溶解させたものであり、有機酸濃度が飽和濃度未満である有機酸溶液を、吸収シートの基材と接触させた後、溶媒を除去することにより付与されている。このような方法によって有機酸を付与することにより、吸収シートの基材を構成する吸水性繊維に対しては繊維の内部にまで有機酸が侵入し、また、吸収シートの基材を構成する合成樹脂繊維に対しては繊維の表面に有機酸の被膜が形成される。この結果、吸収シートからのフマル酸の離脱が抑制できる。
【0017】
前記吸収シートの基材としては、特に限定されないが、不織布、エアレイドパルプ、ウェットクレープ紙、ティッシュペーパーなどが挙げられる。
【0018】
前記不織布としては、吸水性繊維のみから構成された不織布、吸水性繊維および合成繊維から構成された不織布、合成繊維から構成された不織布を親水化したものが挙げられる。前記吸水性繊維は、吸水性を有するものであれば特に限定されない。なお、吸水とは、液体の水(または親水性有機溶媒)が繊維中に毛細管現象などで侵入することである。前記吸水性繊維としては、セルロース繊維(パルプ、綿、麻)、レーヨン等が挙げられる。前記合成繊維を構成する樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。前記合成繊維は、単独素材から構成された繊維でもよいし、多種素材から構成された複合繊維でもよい。複合繊維としては、芯鞘型、並列型、偏芯芯鞘型、放射型、中空放射型、海島型、ブレンド型、ブロック型などが挙げられる。
【0019】
不織布の種類は特に限定されず、エアレイド不織布、エアスルー不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布などが挙げられる。
【0020】
前記吸収シートの基材としては、エアレイド方式により得られるエアレイド不織布が好ましく、特に、吸水性繊維および合成繊維から構成されたエアレイド不織布が好ましい。この場合、前記合成繊維として熱融着性繊維を含有することが好ましい。つまり、前記吸収シートの基材としては、エアレイド方式により得られる熱融着性繊維を含有する不織布が好ましい。
前記熱融着性繊維の繊度は、0.5dtex以上が好ましく、より好ましくは1.0dtex以上であり、10.0dtex以下が好ましく、より好ましくは7.0dtex以下である。
前記熱融着性繊維の繊維長は、1.1mm以上が好ましく、より好ましくは2.0mm以上であり、10.0mm以下が好ましく、より好ましくは6.0mm以下である。
【0021】
前記エアレイド不織布は、構成繊維中の吸水性繊維の含有率が、15質量%以上が好ましく、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、特に好ましくは50質量%以上であり、80質量%以下が好ましく、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
【0022】
吸水性繊維以外の構成繊維では、繊維の表面に有機酸の被膜が形成され、これらの有機酸は比較的早期にドリップへと溶出する。これに対して、吸水性繊維の内部にまで侵入した有機酸は、ドリップへの溶出が比較的遅くなる。そのため、構成繊維中の吸水性繊維の含有率が上記範囲内であれば、ドリップの滲出が開始すると、はじめに吸水性繊維以外の繊維の表面に付与された有機酸がドリップへと溶出していき、その後、吸水性繊維の内部に付与された有機酸が徐々にドリップへと溶出する。そのため、ドリップの滲出開始から、長期間にわたって有機酸によるドリップの腐敗防止効果が持続することとなる。
【0023】
前記吸収シートの基材の目付は、20g/m2以上が好ましく、より好ましくは30g/m2以上、さらに好ましくは40g/m2以上であり、250g/m2以下が好ましく、より好ましくは200g/m2以下、さらに好ましくは180g/m2以下である。
【0024】
前記有機酸溶液は、有機酸を溶媒に溶解させたものであり、有機酸濃度が飽和濃度未満である。前記溶媒としては、有機酸を溶解し得るものであれば特に限定されない。前記溶媒としては、水、親水性有機溶媒が挙げられる。前記親水性有機溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール等のアルコール類等が挙げられる。
【0025】
前記有機酸溶液は、有機酸濃度が飽和濃度未満である。なお、飽和濃度は、有機酸溶液と吸収シートの基材とを接触させる際の温度における飽和濃度である。すなわち、有機酸溶液と吸収シートの基材とを接触させる際に、有機酸溶液に含有される有機酸は全て溶媒に溶解していると考えられる。
【0026】
前記有機酸溶液は、溶液中の有機酸の濃度が、飽和濃度に対して85%以下であることが好ましく、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは75%以下である。
溶液中の有機酸の濃度が、飽和濃度に対して85%以下であれば、有機酸溶液の使用量が多くなり、吸収シートの基材の厚さ方向に、より均一に有機酸を付与することができ、有機酸の脱落を一層抑制することができる。
【0027】
前記有機酸溶液を、吸収シートの基材と接触させる方法は、特に限定されず、吸収性シートの基材に有機酸溶液を散布する方法、吸収性シートの基材を有機酸溶液に浸漬する方法等が挙げられる。
【0028】
前記吸収シートの基材から溶媒を除去する方法は、特に限定されず、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥等が挙げられる。
【0029】
前記有機酸含有ドリップシートは、前記吸収シートのみから構成されていてもよいが、前記吸収シートと、前記吸収シートに積層された液透過性シートとを有することが好ましい。液透過性シートを有することで、液透過性シート側に食品を載置すれば、吸収シートに吸収されたドリップが、食品へと逆流(ウェットバック)することが抑制される。
【0030】
前記液透過性シートとしては、多数の貫通孔を有する樹脂フィルムが好ましい。
前記樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。前記樹脂フィルムは、樹脂に、消臭剤、抗菌剤、着色剤、親水剤等の添加剤を配合してもよい。
【0031】
前記樹脂フィルムの厚さは、0.1mm以上が好ましく、より好ましくは0.3mm以上であり、1mm以下が好ましく、より好ましくは0.9mm以下である。
【0032】
前記樹脂フィルムの目付は、20g/m2以上が好ましく、より好ましくは22g/m2以上、さらに好ましくは25g/m2以上であり、70g/m2以下が好ましく、より好ましくは65g/m2以下、さらに好ましくは60g/m2以下である。
【0033】
前記樹脂フィルムが有する貫通孔の開口部の平面視形状は、特に限定されず、三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等の多角形状および角丸多角形;円形、楕円形、長円形等の円形状が挙げられる。また、貫通孔の開口部の平面視形状は、2種以上を組み合わせてもよい。
前記樹脂フィルムが有する貫通孔の平面視形状の寸法は、特に限定されず、適宜調節すればよいが、0.1mm~1.5mmが好ましい。
【0034】
前記貫通孔は、被保存体載置面における開口部の面積が、被保存体非載置面における開口部の面積よりも大きく形成されていることが好ましい。このように構成することで、吸収シートに吸収されたドリップが、食品へと逆流(ウェットバック)することが一層抑制される。
【0035】
前記貫通孔の内壁は、被保存体載置面における開口から被保存体非載置面における開口に向けて、内径が狭くなるようにテーパ状に形成されていることが好ましい。内壁をテーパ状とすることで、ドリップが被保存体載置面側から被保存体非載置面側へと流れやすくなる。
【0036】
前記貫通孔は、被保存体非載置面における開口部に、貫通孔の内方へと突出する突出部を有することが好ましい。前記突出部を有することで、この突出部により、テーパ状の内壁の延長線上に想定される開口部に比べて、被保存体非載置面における開口部はより縮径して形成される。これにより、吸収シートからのドリップの逆流(ウェットバック)を確実に防止することができる。
【0037】
前記有機酸含有ドリップシートが、吸収シートと、前記吸収シートに積層された液透過性シートとを有する場合、吸収シートの基材に有機酸を付与して吸収シートを作製した後、この吸収シートと液透過性シートとを一体化してもよいし、吸収シートの基材と液透過性シートとを一体化した後、吸収シートの基材に有機酸を付与してもよい。
【0038】
吸収シートと液透過性シートとを一体化する方法としては、公知のホットメルト法、熱圧エンボス法、熱接着性樹脂パウダによる方法を適用できる。
これらの中でも、吸収シートの性能を阻害しないために、ホットメルト接着剤を用いたホットメルト法により、吸収シートと液透過性シートとを接着することが好ましい。前記ホットメルト接着剤としては、ポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、合成ゴム等が挙げられる。前記ホットメルト接着剤の塗布量は、1g/m2以上が好ましく、より好ましくは2g/m2以上であり、20g/m2以下が好ましく、より好ましくは15g/m2が好ましい。
【0039】
(実施態様)
図1~3を参照して、本発明の有機酸含有ドリップシートの実施態様の一例を説明する。図1は、本発明の有機酸含有ドリップシートの一例の斜視図である。図2は、図1の有機酸含有ドリップシートの平面拡大図である。図3は、図2のV-V線の模式的断面図である。図面では、矢印xが幅方向を表し、矢印yが長手方向を表し、矢印zが厚み方向を表す。また、矢印x,yにより形成される面上の方向が、平面方向である。図1~3では、厚さ方向の上側が被保存体載置面であり、被保存体載置面側に液透過性シートが配置されている。
【0040】
図1に示した有機酸含有ドリップシート1は、吸収シート2と、前記吸収シート2の被保存体(食品)が載置される側の平面に積層された液透過性シート3とを有する。
【0041】
前記吸収シート2は、基材が、吸水性繊維および合成繊維から構成されたエアレイド不織布であり、この基材に有機酸が付与されている。
また、前記吸収シート2中の有機酸は、有機酸を溶媒に溶解させたものであり、有機酸濃度が飽和濃度未満である有機酸溶液を、吸収シート2の基材と接触させた後、溶媒を除去することにより付与されている。
【0042】
前記液透過性シート3は、多数の貫通孔を有する樹脂フィルムである。前記液透過性シート3は、吸収シート2と接合されている面が被保存体非載置面であり、吸収シート2と反対側の面が被保存体載置面側である。
【0043】
図2、3に示すように、液透過性シート3は、多数の貫通孔4を有している。この貫通孔4は、被保存体載置面における開口部(大径開口部)4aの開口面積が、被保存体非載置面における開口部(小径開口部)4bの開口面積よりも大きく形成されている。なお、大径開口部4aの平面視形状、および、小径開口部4bの平面視形状はいずれも角丸五角形である。
【0044】
図3に示すように、前記貫通孔4の内壁4cは、大径開口部4aから小径開口部4bに向けて、内径が狭くなるように形成されている。なお、図3では、内壁4cが大径開口部4a側に凸に湾曲するように形成されているが、テーパ状に形成されていてもよい。また、前記貫通孔4は、被保存体非載置面における小径開口部4bに、貫通孔4の内方へと突出する突出部4dを有する。
【0045】
図1に示す有機酸含有ドリップシート1は、平面視形状が長方形状であるが、平面視形状は特に限定されず、用途に応じて適宜変更すればよい。また、液透過性シートに形成される貫通孔4の平面視形状は角丸五角形に限定されず、他の形状でもよい。
【0046】
図4、5に、貫通孔4の断面形状の他の例を示す。図4は、図1の有機酸含有ドリップシートの他の例の平面拡大図である。図5は、図4のV-V線の模式的断面図である。
【0047】
図4、5に示すように、他の例においても、液透過性シート3は、多数の貫通孔4を有している。この貫通孔4は、被保存体載置面における開口部(大径開口部)4eの開口面積が、被保存体非載置面における開口部(小径開口部)4fの開口面積よりも大きく形成されている。なお、大径開口部4eの平面視形状、および、小径開口部4fの平面視形状はいずれも略円形状である。
【0048】
図5に示すように、前記貫通孔4の内壁4gは、大径開口部4eから小径開口部4fに向けて、内径が狭くなるように形成されている。図5に示す貫通孔4では、内壁4gが、湾曲部4hと直線部4iを有している。前記湾曲部4hでは、内壁4gが大径開口部4e側に凸に湾曲している。前記直線部4iは、大径開口部4e側から小径開口部4f側に向けて、内径が狭くなるようにテーパ状に形成されている。なお、前記直線部4iは、大径開口部4e側から小径開口部4f側に向けて、内径が一定となるように形成されていてもよい。
【実施例
【0049】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0050】
[吸収シートの基材の作製]
吸収シートの基材として、吸水性繊維および合成繊維から構成されたエアレイド不織布を作製した。
具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)の芯及びポリエチレン(PE)の鞘を有する繊度1.7dtex、長さ3mmの複合繊維(熱融着性繊維)と、セルロース繊維(木材粉砕パルプ)とを均一分散させ、金網上に堆積させ、この堆積物をオーブンにより140℃で10秒間加熱処理し、エアレイド不織布(目付125g/m2)を作製した。エアレイド不織布中のセルロース繊維の含有率は60質量%、熱融着性繊維の含有率は40質量%とした。
【0051】
[ドリップシートの作製]
ドリップシートNo.1
液温25℃のエタノールに、ソルビン酸を溶解させ、濃度3質量%のソルビン酸溶液を調製した。なお、ソルビン酸溶液の濃度は、飽和濃度に対して75%以下である。
上記で得た吸収シートの基材に、ソルビン酸溶液(濃度3質量%)を散布し、乾燥させ、吸収シートNo.1を作製した。吸収シートNo.1のソルビン酸の含有量は、0.3g/m2である。得られた吸収シートNo.1をドリップシートNo.1とした。
【0052】
ドリップシートNo.2
液温25℃のエタノールに、フマル酸を溶解させ、濃度3質量%のフマル酸溶液を調製した。なお、フマル酸溶液の濃度は、飽和濃度に対して75%以下である。
上記で得た吸収シートの基材に、フマル酸溶液(濃度3質量%)を散布し、乾燥させ、吸収シートNo.2を作製した。吸収シートNo.2のフマル酸の含有量は、0.3g/m2である。得られた吸収シートNo.2をドリップシートNo.2とした。
【0053】
ドリップシートNo.3
液温25℃のエタノールに、アジピン酸を溶解させ、濃度3質量%のアジピン酸溶液を調製した。なお、アジピン酸溶液の濃度は、飽和濃度に対して75%以下である。
上記で得た吸収シートの基材に、アジピン酸溶液(濃度3質量%)を散布し、乾燥させ、吸収シートNo.3を作製した。吸収シートNo.3のアジピン酸の含有量は、0.3g/m2である。得られた吸収シートNo.3をドリップシートNo.3とした。
【0054】
ドリップシートNo.4
液温25℃の水に、コハク酸を溶解させ、濃度3質量%のコハク酸水溶液を調製した。なお、コハク酸水溶液の濃度は、飽和濃度に対して75%以下である。
上記で得た吸収シートの基材に、コハク酸水溶液(濃度3質量%)を散布し、乾燥させ、吸収シートNo.4を作製した。吸収シートNo.4のコハク酸の含有量は、0.3g/m2である。得られた吸収シートNo.4をドリップシートNo.4とした。
【0055】
ドリップシートNo.5
液温25℃の水に、シュウ酸・2水和物を溶解させ、濃度3質量%のシュウ酸水溶液を調製した。なお、シュウ酸水溶液の濃度は、飽和濃度に対して75%以下である。
上記で得た吸収シートの基材に、シュウ酸水溶液(濃度3質量%)を散布し、乾燥させ、吸収シートNo.5を作製した。吸収シートNo.5のシュウ酸の含有量は、0.3g/m2である。得られた吸収シートNo.5をドリップシートNo.5とした。
【0056】
ドリップシートNo.6
液温25℃の水に、クエン酸を溶解させ、濃度3質量%のクエン酸水溶液を調製した。なお、クエン酸水溶液の濃度は、飽和濃度に対して75%以下である。
上記で得た吸収シートの基材に、クエン酸水溶液(濃度3質量%)を散布し、乾燥させ、吸収シートNo.6を作製した。吸収シートNo.6のクエン酸の含有量は、0.3g/m2である。得られた吸収シートNo.6をドリップシートNo.6とした。
【0057】
ドリップシートNo.7
液温25℃のエタノールに、リノール酸を分散させ、濃度3質量%のリノール酸分散液を調製した。
上記で得た吸収シートの基材に、リノール酸分散液を散布し、乾燥させ、吸収シートNo.7を作製した。吸収シートNo.7のリノール酸の含有量は、0.3g/m2である。得られた吸収シートNo.7をドリップシートNo.7とした。
【0058】
ドリップシートNo.8
ドリップシートNo.4の製造方法と同様にして、吸収シートNo.4を作製した。この吸収シートNo.4の一方の面に、ホットメルト接着剤(ポリオレフィン)を塗布量が2g/m2となるように塗布し、この上に液透過性シートとして多数の貫通孔を有する樹脂フィルム(厚さ0.5mm、目付22g/m2、貫通孔の平面視形状の寸法0.1mm~1.5mm)を積層した。次いで、ホットメルト法により吸収シートと液透過性シートを接合し、ドリップシートNo.8を作製した。
前記樹脂フィルムは、図2、3に示すような貫通孔を有する。貫通孔は、被保存体載置面(吸収シートと反対側の平面)における大径開口部の開口面積が、被保存体非載置面(吸収シートに接合されている側の平面)における小径開口部の開口面積よりも大きく形成されている。なお、大径開口部の平面視形状、および、小径開口部の平面視形状はいずれも角丸五角形である。また、前記貫通孔の内壁は、大径開口部から小径開口部に向けて、内径が狭くなるようにテーパ状に形成されており、小径開口部には貫通孔の内方へと突出する突出部を有する。図6に樹脂フィルムの被保存体載置面の拡大写真(図6(a))、被保存体非載置面の拡大写真(図6(b))を示した。
【0059】
ドリップシートNo.9
ドリップシートNo.6の製造方法と同様にして、吸収シートNo.6を作製した。この吸収シートNo.6の一方の面に、ホットメルト接着剤(ポリオレフィン)を塗布量が2g/m2となるように塗布し、この上にドリップシートNo.8と同じ液透過性シートをドリップシートNo.8と同様に積層した。次いで、ホットメルト法により吸収シートと液透過性シートを接合し、ドリップシートNo.9を作製した。
【0060】
ドリップシートNo.10
液温25℃の水に、フマル酸を溶解させ、濃度0.5質量%のフマル酸水溶液を調製した。なお、フマル酸水溶液の濃度は、飽和濃度に対して80%以下である。
上記で得た吸収シートの基材に、フマル酸水溶液(濃度0.5質量%)を散布し、乾燥させ、吸収シートNo.10を作製した。吸収シートNo.10のフマル酸の含有量は、0.1g/m2である。得られた吸収シートNo.10をドリップシートNo.10とした。
【0061】
ドリップシートNo.11
液温25℃の水に、フマル酸を溶解させ、濃度0.5質量%のフマル酸水溶液を調製した。なお、フマル酸水溶液の濃度は、飽和濃度に対して80%以下である。
上記で得た吸収シートの基材に、フマル酸水溶液(濃度0.5質量%)を散布し、乾燥させ、吸収シートNo.11を作製した。吸収シートNo.11のフマル酸の含有量は、0.033g/m2である。得られた吸収シートNo.11をドリップシートNo.11とした。
【0062】
ドリップシートNo.12
液温25℃の水に、フマル酸を溶解させ、濃度0.5質量%のフマル酸水溶液を調製した。なお、フマル酸水溶液の濃度は、飽和濃度に対して80%以下である。
上記で得た吸収シートの基材に、フマル酸水溶液(濃度0.5質量%)を散布し、乾燥させ、吸収シートNo.12を作製した。吸収シートNo.12のフマル酸の含有量は、0.024g/m2である。得られた吸収シートNo.12をドリップシートNo.12とした。
【0063】
ドリップシートNo.13
液温25℃の水に、フマル酸を分散させ、濃度3質量%のフマル酸分散液を調製した。なお、フマル酸分散液の濃度は、飽和濃度超である。
上記で得た吸収シートの基材に、フマル酸分散液(濃度3質量%)を散布し、乾燥させ、吸収シートNo.13を作製した。吸収シートNo.13のフマル酸の含有量は、0.1g/m2である。得られた吸収シートNo.13をドリップシートNo.13とした。
【0064】
ドリップシートNo.14
上記で得た吸収シートの基材に有機酸を付与せず、そのままドリップシートNo.14とした。
【0065】
[有機酸の担持態様の確認]
ドリップシートNo.10およびNo.13について、吸収シートの有機酸の担持性を確認するため、有機酸脱離試験を行った。また、吸収シートへの有機酸の付与態様を確認するため、ドリップシートNo.10およびNo.13について走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行った。
【0066】
(有機酸脱離試験)
ドリップシートを長さ12cm、幅7cmに切り出し、試験片を作製した。
前記試験片を、目開き2.00mm(10メッシュ)のふるい網を装着した振動ふるい機(ラボネクト製、小型振動ふるい機「KS-300」)のふるい枠内に配置した。
振動ふるい機を10分間振動させた後、試験片の上面および下面から脱離した有機酸の有無を確認し下記の基準で評価した。
ドリップシートNo.10は、試験片の表面、振動ふるい機の排出口において、有機酸の脱離物が確認されなかった。
ドリップシートNo.13は、試験片の表面または振動ふるい機の排出口にて、有機酸の粒子が確認された。
【0067】
(SEM観察)
図7にドリップシートNo.10(吸収シートNo.10)のSEM写真を示した。図8にドリップシートNo.10(吸収シートNo.10)の有機酸脱離試験後のSEM写真を示した。図9にドリップシートNo.13(吸収シートNo.13)のSEM写真を示した。
図7に示すように、ドリップシートNo.10では、吸収シートの基材を構成する繊維の表面に有機酸の被膜が形成されており、有機酸の粒子は存在していない。そして、図8に示すように、ドリップシートNo.10では有機酸脱離試験後においても、吸収シートの基材を構成する繊維の表面に有機酸の被膜が形成されており、有機酸は脱離していない。
これに対して、図9に示すように、ドリップシートNo.13では、吸収シートの基材を構成する繊維の表面に有機酸の粒子が存在している。そのため、有機酸脱離試験において、これらの有機酸が脱離したと考えられる。
【0068】
[ドリップシートの評価]
上記で作製したドリップシートNo.1~14を用いて食品(肉)の保存を行い、食品の変色度合い、ならびに、悪臭の発生の有無を評価した。
【0069】
(評価方法)
保存する食品として、オーストラリア産の牛もも肉(赤身部)を用いた。前記牛もも肉のブロックを、厚さ1cm、長さ5cm、幅3cm程度にカットし、1時間放置した。その後、カット肉を食品包装用ラップシート(旭化成ホームプロダクツ株式会社製、サランラップ(登録商標)(ポリ塩化ビニリデン))上に載置し、このラップシート越しに、色差計(カラーアナライザーRGB-1002(株式会社佐藤商事製))を用いて、カット肉の下面のR値(R1)を測定した。
次に、純水2L中で成人2名が手洗い(両手で20回こすり洗い)した水1mLを上記カット肉の上面に噴霧した。このカット肉の下面および全側面をドリップシートで覆い、28±2℃、相対湿度70±5%の環境で5時間保存した。
保存後のカット肉およびドリップシートについて、臭気官能テストを行った。臭気官能テストの評価は、腐敗臭がないものを「〇」、微かでも腐敗臭が確認されたものを「×」とした。
また、保存後のカット肉からドリップシートを剥がし、カット肉の前記食品包装用ラップシート上に載置し、このラップシート越しに、前記色差計を用いて、保存後のカット肉の下面のR値(R2)を測定した。なお、色差計での測定は、カット肉の下面の異なる五か所について測定し、その平均値を求めた。変色度合いの評価は、R値の変化率(=(R2-R1)/R1×100)が25%未満を「◎」、25%以上30%未満を「〇」、30%以上45%未満を「×」、45%以上を「××」とした。
【0070】
臭気官能テストおよび色差計の測定結果を表1、2に示した。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
ドリップシートNo.1~4、8、10、11は、吸収シートが有機酸を含有しており、前記有機酸の30℃における水への溶解度が、0.3g/100mL~12g/100mLであり、吸収シートの有機酸の含有量が0.03g/m2以上であり、吸収シート中の有機酸が、有機酸濃度が飽和濃度未満である有機酸溶液を、吸収シートの基材と接触させた後、溶媒を除去することにより付与されたものである。
これらのドリップシートNo.1~4、8、10、11は、ドリップの腐敗による悪臭の発生を抑制されており、かつ、食品の変色を抑制できていた。
【0074】
ドリップシートNo.5、6、9は、吸収シートが含有する有機酸の30℃における水への溶解度が12g/100mL超の場合である。これらのドリップシートNo.5、6、9は、ドリップの腐敗による悪臭の発生は抑制されていたが、ドリップへの有機酸の溶解量が多すぎるため、有機酸によって食品が変色してしまい、食品の変色度合いが大きくなったと考えられる。
【0075】
ドリップシートNo.7は、吸収シートが含有する有機酸の30℃における水への溶解度が0.3g/100mL未満の場合である。このドリップシートNo.7は、有機酸がドリップに溶け出さないため、ドリップが腐敗し、悪臭が発生した。
【0076】
ドリップシートNo.12は、吸収シートの有機酸の含有量が、0.03g/m2未満の場合である。このドリップシートNo.12は、有機酸の含有量が少なすぎるため、ドリップが腐敗し、悪臭が発生したと考えられる。
【0077】
ドリップシートNo.13は、吸収シート中の有機酸が、有機酸濃度が飽和濃度超である有機酸分散液を、吸収シートの基材と接触させた後、溶媒を除去することにより付与された場合である。
このドリップシートNo.13は、フマル酸が大きな粒子で存在するため表面積が小さく、所定時間ではドリップへの溶解が不十分であったため、ドリップが腐敗し、悪臭が発生した。
【0078】
ドリップシートNo.14は、吸収シートが有機酸を含有しない場合である。このドリップシートNo.14は、有機酸が存在しないため、ドリップの腐敗を抑制できず、悪臭が発生した。
【符号の説明】
【0079】
1:有機酸含有ドリップシート、2:吸収シート、3:液透過性シート、4:貫通孔
【要約】
【課題】ドリップの腐敗による悪臭の発生を抑制し、かつ、食品の変色を抑制できる有機酸含有ドリップシートを提供する。
【解決手段】有機酸含有ドリップシートは、食品を保存する際に使用されるドリップシートであって、少なくとも1層の吸収シートを備え、前記吸収シートが有機酸を含有しており、前記有機酸は30℃における水への溶解度が0.3g/100mL~12g/100mLであり、前記吸収シートの有機酸の含有量が0.03g/m2以上であり、前記吸収シート中の有機酸が、有機酸を溶媒に溶解させたものであり、有機酸濃度が飽和濃度未満である有機酸溶液を、吸収シートの基材と接触させた後、溶媒を除去することにより付与されたものであることを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9