(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】希土類磁性体の窒化方法および窒化型希土類磁性体
(51)【国際特許分類】
H01F 41/02 20060101AFI20240927BHJP
C23C 8/24 20060101ALI20240927BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20240927BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240927BHJP
B22F 1/14 20220101ALI20240927BHJP
H01F 1/059 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01F41/02 G
C23C8/24
C22C38/00 303S
B22F1/00 W
C22C38/00 303D
B22F1/14 200
H01F1/059 160
B22F1/14 100
(21)【出願番号】P 2023514950
(86)(22)【出願日】2021-04-19
(86)【国際出願番号】 CN2021088065
(87)【国際公開番号】W WO2022126949
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】202011491056.3
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517366220
【氏名又は名称】横店集団東磁股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼永▲陽▼
(72)【発明者】
【氏名】李▲軍▼▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】孔佳元
(72)【発明者】
【氏名】李玉平
(72)【発明者】
【氏名】▲韓▼相▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼文洪
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-106325(JP,A)
【文献】特開平04-233709(JP,A)
【文献】特開平07-029715(JP,A)
【文献】特開2014-122392(JP,A)
【文献】米国特許第05137587(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00- 8/00
B22F 10/00-12/90
C22C 1/04- 1/05
C22C 5/00-25/00
C22C 27/00-28/00
C22C 30/00-30/06
C22C 33/02
C22C 35/00-45/10
C23C 8/00-12/02
H01F 1/00- 1/117
H01F 1/40- 1/42
H01F 41/00-41/04
H01F 41/08
H01F 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)真空引きを行い、希土類磁性体を入れた反応器に窒素源を添加し、3段階加熱処理を行うことにより、半製品を得、前記3段階加熱処理の加熱温度が段階的に向上するステップと、
(2)ステップ(1)における前記半製品を第1設定温度まで昇温した後、温度を第2設定温度まで調節し、真空引きを行い、不活性ガスを導入し、第2設定温度下で保温することにより、窒化型希土類磁性体を得、前記第2設定温度は第1設定温度より低いステップと、を含み、
前記3段階加熱処理の各ステップは、いずれも保温を含み、保温が終了した後、次のステップの昇温を行う、希土類磁性体の窒化方法。
【請求項2】
ステップ(2)で、前記第1設定温度は、830~860K(ただし、860Kを含まない)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(1)で、前記希土類磁性体の一般式はReTmであり、ただし、Reは、希土類金属であり、Tmは、3d遷移元素および/または4d遷移元素である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記窒化型希土類磁性体の一般式はReTmNである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(1)で、前記真空引きにより、反応器の圧力を1000Pa以下に低下させ、
ステップ(1)で、窒素源には、気体窒素源および/または固体窒素源が含まれ、
前記気体窒素源は、窒素含有ガスであり、
前記固体窒素源には、炭酸水素アンモニウムおよび/または塩化アンモニウムが含まれる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記気体窒素源には、窒素ガスおよび/またはアンモニアガスが含まれる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記気体窒素源には、水素ガスがさらに含まれる、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(1)で、前記窒素源は、気体窒素源であり、前記気体窒素源の反応器における圧力は0.001~10MPaである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(1)で、前記窒素源は、固体窒素源であり、前記3段階加熱処理
の後に、圧力が0.001~10MPaになるまで、反応器に保護性ガスを導入し、前記保護性ガスはアルゴンガスである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(1)で、前記3段階加熱処理の第1段階における温度は330~470Kであり、
ステップ(1)で、前記3段階加熱処理の第1段階における保温時間は0~24h(ただし、0を含まない)であり、
ステップ(1)で、前記3段階加熱処理の第2段階における温度は670~730K(ただし、730Kを含まない)であり、
ステップ(1)で、前記3段階加熱処理の第2段階における保温時間は0~24h(ただし、0を含まない)であり、
ステップ(1)で、前記3段階加熱処理の第3段階における温度は730~830K(ただし、830Kを含まない)であり、
ステップ(1)で、前記3段階加熱処理の第3段階における保温時間は0~24h(ただし、0を含まない)である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(2)で、前記第1設定温度は830~840Kであり、
ステップ(2)で、前記第1設定温度まで昇温する昇温時間は0~24h(ただし、0を含まない)である、請求項2~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(2)で、前記真空引きにより、反応器の圧力を1000Pa以下に低下させ、
ステップ(2)で、前記不活性ガスを導入して反応器の圧力を0.001~1MPaに調節し、
ステップ(2)で、前記第2設定温度は600~700Kであり、
ステップ(2)で、前記第2設定温度下で保温する保温時間は0~24h(ただし、0を含まない)である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(2)で、第2設定温度下で保温した後、室温まで冷却させることをさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
(1)希土類磁性体を反応器に入れ、1000Pa以下まで真空引きを行い、窒素含有ガスを導入し、370~420Kまで昇温して0.1~5h保温し、690~710Kまで昇温して0.1~5h保温し、750~780Kまで昇温して0.1~5h保温し、半製品を得るステップと、
(2)ステップ(1)における前記半製品を、0.5~5hで830~840Kまで昇温した後、温度を620~670Kまで調節し、真空引きを行い、反応器の圧力を1000Pa以下に低下させ、不活性ガスを導入して反応器の圧力を0.001~1MPaに調節し、第2設定温度下で0.5~5h保温し、室温まで冷却させ、窒化型希土類磁性体を得るステップと、を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の希土類磁性体の窒化方法により得られる、窒化型希土類磁性体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、磁性材料の技術分野に属し、希土類磁性体の窒化方法および窒化型希土類磁性体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、科学技術の進歩および発展に伴い、磁性材料の使用範囲が広くなってきており、人々の生活は、磁性材料から切り離せなくなっている。磁性材料は、永久磁気材料および軟磁気材料に分けられ、性能によって用途が異なる。希土類磁性材料は、優れた磁気性能を有するため、広く使用されている。
【0003】
最もよく用いられる希土類永久磁気材料は、NdFeBであり、現在永久磁気性能である磁気エネルギー積が最も高い希土類永久磁気材料である。しかしながら、地殻における希土類元素の含有量が少なく、採掘および精製のコストが高いことから、NdFeB材料は高性能であると同時にコストも高い。
【0004】
サマリウム鉄窒素磁性体は、ネオジム鉄ホウ素磁性体のキュリー温度が低く、酸化しやすく、コストが高いなどの欠陥を回避し、次世代希土類永久磁気材料の研究ホットスポットになっている。窒素原子の導入は、サマリウム鉄合金の結晶構造を変化させないが、格子膨張を引き起こし、合金の強磁性結合交換作用を高め、合金のキュリー温度を大幅に向上させ、異方性フィールドを高め、サマリウム鉄合金の永久磁気性能を向上させる鍵となっている。そのため、窒化処理プロセスは、サマリウム鉄窒素磁性体の製造において重要な役割を果たしている。現在、国内外の比較的成熟した窒化プロセスは、まず、機械的方法で合金粉末を得、次に窒化処理を行うが、固体粉末窒化には、窒化が不均一、不完全で、効率が悪く、粉末が酸化しやすいなどの欠陥が存在する。
【0005】
希土類-鉄-窒素材料には、SmFeN、NdFeN、CeFeNなどが含まれ、材料の永久磁気性能を利用するものもあれば、材料の軟磁気性能を利用するものもある。しかしながら、その製造方法は、いずれも、製造過程で、希土類鉄合金を形成した後、合金に対して窒化処理を行う。
【0006】
現代の通信用のコンピュータ、携帯電話、ネットワーク機器などは、使用過程で電磁干渉および電磁放射を発生する。電磁干渉及び放射を効果的に低減し除去するために、高い複素透磁率を有する吸収材を使用する必要がある。現在、広く用いられたフェライト材料には、周波数帯域が狭く、高周波での複素透磁率が低いなどの欠陥が存在するが、金属軟磁気材料は、渦電流損失が存在することに起因して高周波での軟磁気性能が低い。CeFeNなどの材料は、高周波で、高い透磁率および広い共振周波数を確保することができると共に、広い周波数バンド内の電磁シールド、および信号ノイズの低下を実現することができ、現代技術のニーズを満たし、計器、メーター、通信などの分野で広く用いられている。
【0007】
希土類遷移金属磁性材料は、窒化後に優れた磁気性能を示すが、窒化過程で発生する窒素含有量が不十分であることおよび窒素元素の不均一な分布は、材料の性能に大きく影響する。
【0008】
CN101699578Aは、化学式がR2Fe17N3-δである希土類鉄窒素高周波軟磁気材料、その複合材料および製造方法を開示しており、まず、10~30%wtの希土類元素および70~90%wtの鉄を含む材料を鉄基合金に溶解製錬し、その後、小粒子に粉砕した後、粉末に研磨して窒化処理を行い、処理温度が250~550℃であることを開示している。しかし、この方法により得た製品の窒素含有量及び均一性はさらに改良する余地がある。
【0009】
CN107557551Aは、サマリウム鉄窒素系永久磁気材料の製造方法を開示しており、準安定サマリウム鉄合金に対して大きな塑性変形を行った後、窒化処理および焼鈍結晶化処理を行い、大きな塑性変形による欠陥を利用して、窒素原子の進入および拡散に寄与し、合金の窒化量および均一性を顕著に向上させることを開示している。しかし、この方法はプロセスが複雑すぎて、製造コストが上昇する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願は、希土類磁性体の窒化方法および窒化型希土類磁性体を提供することを目的とする。本願に係る方法は、希土類磁性体が窒化された後の窒素含有量が不十分であり、窒素元素の分布が不均一であるという問題を解決することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
その目的を達成するために、本願は、以下の技術案を講じた。
【0012】
第1態様として、本願は、
(1)真空引きを行い、希土類磁性体を入れた反応器に窒素源を添加し、3段階加熱処理を行うことにより、半製品を得、前記3段階加熱処理の加熱温度が段階的に向上するステップと、
(2)ステップ(1)における前記半製品を第1設定温度まで昇温した後、温度を第2設定温度まで調節し、真空引きを行い、不活性ガスを導入し、第2設定温度下で保温することにより、窒化型希土類磁性体を得、前記第2設定温度は第1設定温度より低いステップと、を含む希土類磁性体の窒化方法を提供する。
【0013】
本願に係る方法において、3段階加熱処理は、主な窒化過程であり、合金の表面に吸着された窒素含有ガス分子が拡散して合金(希土類磁性体)の内部に進入し、窒素含有合金(すなわち、半製品)を形成することを確保することができ、これにより、窒素元素が粉末表面に吸着された後、拡散動力学を合理的に利用し、窒素元素の侵入深さを向上させることにより、窒素含有量を向上させることができる。第1設定温度下で加熱することは、均一化処理ステップであり、窒素の吸着と合金への拡散をさらに促進することで、窒素元素の合金内での分布をより均一にすることができる。第2設定温度下での加熱は、合金内での窒素元素の拡散を均一にすることができる。
【0014】
本願に係る方法において、ステップ(2)で、温度を第2設定温度まで調節し、真空引きを行う方法は、第2設定温度まで直接冷却させた後に真空引きを行ってもよいし、まず室温まで冷却させて真空引きを行った後、第2設定温度まで加熱してもよい。
【0015】
本願に係る方法において、得られた窒化型希土類磁性体における3つの異なる箇所を選択し、窒素含有量検出装置を用いて、窒素の質量分率を測定することにより、窒素の分布が均一であるか否かを考察することができる。
【0016】
本願において、ステップ(1)で、前記希土類磁性体は、塊または粉末であってもよく、効果がより良いため、粉末であることが好ましい。
【0017】
以下は、本願の好適な技術案であり、本願に係る技術案を限定するものではない。以下の好適な技術案によれば、本願の技術目的及び有益な効果をより良く達成し実現することができる。
【0018】
本願の好適な技術案として、ステップ(1)で、前記希土類磁性体の一般式はReTmであり、ただし、Reは希土類金属であり、Tmは3d遷移元素および/または4d遷移元素である。前記3d遷移元素は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、CuまたはZnのうちの少なくとも1種を含む。前記4d遷移元素とは、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、AgまたはCdのうちの少なくとも1種を指す。
【0019】
好ましくは、前記窒化型希土類磁性体の一般式はReTmNである。本願では、相を形成できれば、ReとTmの具体的な比率は限定されない。
【0020】
好ましくは、ステップ(1)で、前記真空引きにより、反応器の圧力を1000Pa以下、たとえば900Pa、500Pa、100Pa、50Pa、10Pa、5Paなどに低下させ、10Pa以下に低下させることが好ましい。
【0021】
好ましくは、ステップ(1)で、窒素源には、気体窒素源および/または固体窒素源が含まれる。
【0022】
好ましくは、前記気体窒素源は、窒素含有ガスである。
【0023】
好ましくは、前記気体窒素源には、窒素ガスおよび/またはアンモニアガスが含まれる。
【0024】
好ましくは、前記気体窒素源には、水素ガスがさらに含まれる。
【0025】
好ましくは、前記固体窒素源には、炭酸水素アンモニウムが含まれる。
【0026】
好ましくは、ステップ(1)で、前記窒素源は、気体窒素源であり、反応器における前記気体窒素源の圧力は0.001~10MPa、たとえば0.001MPa、1MPa、2MPa、5MPa、8MPaまたは10MPaなどであり、0.01~2MPaであることが好ましい。
【0027】
好ましくは、ステップ(1)で、前記窒素源は、固体窒素源であり、前記3段階加熱処理の前に、圧力が0.001~10MPa、たとえば0.001MPa、1MPa、2MPa、5MPa、8MPaまたは10MPaなど、好ましくは、0.01~2MPaになるまで、反応器に保護ガスを導入する。
【0028】
本願の好適な技術案として、ステップ(1)で、前記3段階加熱処理の第1段階における温度は330~470K、たとえば330K、350K、380K、400K、420K、450Kまたは470Kなどであり、370~420Kであることが好ましい。
【0029】
好ましくは、ステップ(1)で、前記3段階加熱処理の第1段階における保温時間は0~24h(ただし、0を含まない)であり、たとえば0.1h、0.5h、1h、5h、10h、20hまたは24などであり、0.1~5hであることが好ましい。
【0030】
本願において、ステップ(1)の3段階加熱のうち、第1段階加熱の目的は、後続の窒化時に合金の酸化を防止するために、ReTm合金に吸着されたガス、特に酸素ガスを排出することにある。
【0031】
本願の好適な技術案として、ステップ(1)で、前記3段階加熱処理の第2段階における温度は670~730K(ただし、730Kを含まない)であり、たとえば670K、680K、690K、700K、710Kまたは720Kなどであり、690~710Kであることが好ましい。
【0032】
好ましくは、ステップ(1)で、前記3段階加熱処理の第2段階における保温時間は0~24h(ただし、0を含まない)であり、たとえば0.1h、0.5h、1h、5h、10h、20hまたは24hなどであり、0.1~5hであることが好ましい。
【0033】
本願において、ステップ(1)の3段階加熱のうち、第2段階加熱の作用は、ReTmおよびN元素雰囲気を予熱して吸着させ、窒素含有雰囲気をReTmの表面に十分に吸着させることにある。
【0034】
本願の好適な技術案として、ステップ(1)で、前記3段階加熱処理の第3段階における温度は730~830K(ただし、830Kを含まない)であり、たとえば730K、740K、750K、760K、770K、780K、790K、800K、810Kまたは820Kなどであり、750~780Kであることが好ましい。
【0035】
好ましくは、ステップ(1)で、前記3段階加熱処理の第3段階における保温時間は0~24h(ただし、0を含まない)であり、たとえば0.1h、0.5h、1h、5h、10h、20hまたは24hなどであり、0.1~5hであることが好ましい。
【0036】
本願において、ステップ(1)の3段階加熱のうち、第3段階加熱の目的は、合金の表面に吸着されたガス分子を、拡散により合金の内部に進入させて、ReTmN合金を形成することにある。
【0037】
本願の好適な技術案として、ステップ(2)で、前記第1設定温度は830~860K(ただし、860Kを含まない)であり、たとえば830K、835K、840K、845Kまたは850Kなどであり、830~840Kであることが好ましい。本願において、第1設定温度が高すぎると、ReTmNがReNおよびTm相に分解し、生成物が所望の成分から逸脱する。第1設定温度が低すぎると、Nの含有量が低く、不均一になる。
【0038】
好ましくは、ステップ(2)で、前記第1設定温度まで昇温する昇温時間は0~24h(ただし、0を含まない)であり、たとえば1h、5h、10h、15h、20hまたは24hなどであり、0.5~5hであることが好ましい。
【0039】
本願の好適な技術案として、ステップ(2)で、前記真空引きにより、反応器の圧力を1000Pa以下、たとえば900Pa、500Pa、100Pa、50Pa、10Pa、5Paなどに低下させ、10Pa以下に低下させることが好ましい。
【0040】
好ましくは、ステップ(2)で、前記不活性ガスを導入して反応器の圧力を0.001~1MPa、たとえば0.001MPa、0.01MPa、0.1MPa、0.5MPaまたは1MPaなどに調節する。
【0041】
好ましくは、ステップ(2)で、前記第2設定温度は600~700K、たとえば600K、610K、620K、630K、640K、650K、660K、670K、680K、690Kまたは700Kなどであり、620~670Kであることが好ましい。
【0042】
好ましくは、ステップ(2)で、前記第2設定温度下で保温する保温時間は0~24h(ただし、0を含まない)であり、たとえば1h、5h、10h、15h、20hまたは24hなどであり、0.5~5hであることが好ましい。
【0043】
本願の好適な技術案として、ステップ(2)では、第2設定温度下で保温した後、室温まで冷却させることがさらに含まれる。
【0044】
本願に係る方法の更なる好適な技術案として、前記方法は、
(1)希土類磁性体を反応器に入れ、1000Pa以下まで真空引きを行い、窒素含有ガスを導入し、370~420Kまで昇温して0.1~5h保温し、690~710Kまで昇温して0.1~5h保温し、750~780Kまで昇温して0.1~5h保温し、半製品を得るステップと、
(2)ステップ(1)における半製品を、0.5~5hで830~840Kまで昇温した後、温度を620~670Kまで調節し、真空引きを行い、反応器の圧力を1000Pa以下に低下させ、不活性ガスを導入して、反応器の圧力を0.001~1MPaに調節し、第2設定温度下で0.5~5h保温し、室温まで冷却させ、窒化型希土類磁性体を得るステップと、を含む。
【0045】
第2態様として、本願は、第1態様に係る希土類磁性体の窒化方法により得られる窒化型希土類磁性体を提供する。
【発明の効果】
【0046】
従来技術と比べ、本願は、以下の有益な効果を有する。
【0047】
本願に係る希土類磁性体の窒化方法は、窒素の含有量を向上させながら、窒素元素を磁性体中でより均一に分布させることができ、従来技術における希土類磁性体が窒化された後に窒素含有量が不十分であり、窒素元素の分布が不均一であるという問題を解決することができる。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本願をより良く説明し、本願の技術案を理解しやすくするために、以下、本願について更に詳細に説明する。ただし、下記実施例は、本願の簡単な例に過ぎず、本願の保護範囲を代表または限定するものではなく、本願の保護範囲は、特許請求の範囲に準ずる。
【0049】
以下は、本願の典型的であるが非限定的な実施例である。
【0050】
実施例1
【0051】
本実施例では、以下の方法に従って希土類磁性体の窒化を行う。
【0052】
(1)Sm2Fe17合金塊を窒化炉に投入し、真空引きにより、圧力を95Paまで低下させ、真空引き系を閉じ、1.2MPaのアンモニアガスを導入した。
【0053】
(2)450Kまで昇温し、2時間保温した。
【0054】
(3)450Kでの保温が終了した後、710Kまで昇温し、1時間保温した。
【0055】
(4)710Kでの保温が終了した後、780Kまで昇温し、5時間保温し、半製品を得た。
【0056】
(5)780Kでの保温が終了した後、1時間で850Kまで昇温した。
【0057】
(6)850Kでの保温が終了した後、680Kまで冷却させ、窒化炉内のガスを抽出し、真空引きにより、圧力を90Paまで低下させ、0.05MPaのアルゴンガスを導入し、3時間保温した。
【0058】
(7)680Kでの保温が終了した後、室温まで冷却させ、窒化したSmFeN合金を取り出すとともに、3つの異なる箇所からサンプリングし、窒素含有量検出装置を用いて窒素の質量分率を測定した。テスト結果を表1に示す。
【0059】
実施例2
【0060】
本実施例では、以下の方法に従って希土類磁性体の窒化を行う。
【0061】
(1)Sm2Fe17合金粉末(粉末粒度0.1μm~10mm)を窒化炉に投入し、真空引きにより圧力を9Paまで低下させ、真空引き系を閉じ、1.2MPaのアンモニアガスを導入した。
【0062】
(2)420Kまで昇温し、2時間保温した。
【0063】
(3)420Kでの保温が終了した後、680Kまで昇温し、1時間保温した。
【0064】
(4)680Kでの保温が終了した後、750Kまで昇温し、4時間保温した。
【0065】
(5)750Kでの保温が終了した後、1時間で830Kまで昇温し、半製品を得た。
【0066】
(6)830Kでの保温が終了した後、670Kまで冷却させ、窒化炉内のガスを抽出し、真空引きにより、圧力を9Paまで低下させ、0.03MPaのアルゴンガスを導入し、1時間保温した。
【0067】
(7)670Kでの保温が終了した後、室温まで冷却させ、窒化したSmFeN合金粉末を取り出すとともに、3つの異なる箇所からサンプリングし、窒素含有量検出装置を用いて窒素の質量分率を測定した。テスト結果を表1に示す。
【0068】
実施例3
【0069】
ステップ(6)以外、その他は、実施例2と同様である。本実施例におけるステップ(6)では、830Kでの保温が終了した後、室温まで冷却させ、窒化炉内のガスを抽出し、真空引きにより、圧力を10Pa以下に低下させ、0.03MPaのアルゴンガスを導入し、670Kまで昇温し、1時間保温した。
【0070】
実施例4
【0071】
ステップ(1)以外、その他は、実施例2と同様である。本実施例におけるステップ(1)では、真空引き系を閉じ、1.2MPaのアンモニアガスおよび水素ガスの混合ガス(混合モル比1:1)を導入した。
【0072】
実施例5
【0073】
Sm2Fe17合金粉末をSmFe9合金粉末に置き換える以外、実施例2と同様な条件下でSmFeN合金を製造した。
【0074】
実施例6
【0075】
Sm2Fe17合金粉末をCe2Fe17合金粉末に置き換える以外、実施例2と同様な条件下でCeFeN合金を製造した。
【0076】
実施例7
【0077】
Sm2Fe17合金粉末をNd2Fe17合金粉末に置き換える以外、実施例2と同様な条件下でNdFeN合金を製造した。
【0078】
実施例8
【0079】
Sm2Fe17合金粉末をNdFe12合金粉末に置き換える以外、実施例2と同様な条件下でNdFeN合金を製造した。
【0080】
実施例9
【0081】
本実施例では、以下の方法に従って希土類磁性体の窒化を行う。
【0082】
(1)Sm2Fe17合金粉末(粉末粒度0.1μm~10mm)を窒化炉に投入し、真空引きにより、圧力を5Paまで低下させ、真空引き系を閉じ、0.01MPaの窒素ガスおよびアンモニアガスの混合ガス(混合モル比1:1)を導入した。
【0083】
(2)400Kまで昇温し、0.1時間保温した。
【0084】
(3)400Kでの保温が終了した後、700Kまで昇温し、0.1時間保温した。
【0085】
(4)700Kでの保温が終了した後、770Kまで昇温し、0.1時間保温した。
【0086】
(5)770Kでの保温が終了した後、0.5時間で840Kまで昇温し、半製品を得た。
【0087】
(6)840Kでの保温が終了した後、650Kまで冷却させ、窒化炉内のガスを抽出し、真空引きにより、圧力を5Paまで低下させ、0.01MPaのアルゴンガスを導入し、0.5時間保温した。
【0088】
(7)650Kでの保温が終了した後、室温まで冷却させ、窒化したSmFeN合金粉末を取り出すとともに、3つの異なる箇所からサンプリングし、窒素含有量検出装置を用いて窒素の質量分率を測定した。テスト結果を表1に示す。
【0089】
実施例10
【0090】
本実施例では、以下の方法に従って希土類磁性体の窒化を行う。
【0091】
(1)Sm2Fe17合金粉末(粉末粒度0.1μm~10mm)を窒化炉に投入し、真空引きにより、圧力を5Paまで低下させ、真空引き系を閉じ、2MPaのアンモニアガスを導入した。
【0092】
(2)370Kまで昇温し、5時間保温した。
【0093】
(3)370Kでの保温が終了した後、690Kまで昇温し、5時間保温した。
【0094】
(4)690Kでの保温が終了した後、770Kまで昇温し、5時間保温した。
【0095】
(5)770Kでの保温が終了した後、5時間で835Kまで昇温し、半製品を得た。
【0096】
(6)835Kでの保温が終了した後、620Kまで冷却させ、窒化炉内のガスを抽出し、真空引きにより、圧力を5Paまで低下させ、1MPaのアルゴンガスを導入し、5時間保温した。
【0097】
(7)620Kでの保温が終了した後、室温まで冷却させ、窒化したSmFeN合金粉末を取り出すとともに、3つの異なる箇所からサンプリングし、窒素含有量検出装置を用いて窒素の質量分率を測定した。テスト結果を表1に示す。
【0098】
実施例11
【0099】
ステップ(1)で、Sm2Fe17合金粉末(粉末粒度0.1μm~10mm)と質量の炭酸水素アンモニウムを混合して窒化炉に投入し、真空引きにより、圧力を9Paまで低下させ、真空引き系を閉じ、1.2MPaのアルゴンガスを導入する以外、実施例2と同様な条件下でSmFeN合金を製造した。
【0100】
比較例1
【0101】
本比較例と実施例2との相違点は、ステップ(2)およびステップ(3)の操作を行わず、ステップ(3)で750Kまで昇温し、4時間保温することである。
【0102】
比較例2
【0103】
本比較例と実施例2との相違点は、ステップ(5)の操作を行わず、ステップ(6)で750Kから室温まで直接冷却させることである。
【0104】
比較例3
【0105】
本比較例と実施例2との相違点は、ステップ(3)の操作を行わず、ステップ(4)における温度を420Kに変更して保温し、420Kでの保温が終了した後、750Kまで昇温し、4時間保温することである。
【0106】
テスト方法
【0107】
各々の実施例および比較例では、得られた窒化型希土類磁性体に対して、3つの異なる箇所からサンプリングし、窒素含有量検出装置を用いて窒素の質量分率を測定した。テスト結果を表1に示す。
【0108】
【0109】
上述した実施例および比較例から分かるように、実施例に係る希土類磁性体の窒化方法により、窒素含有量を向上させながら、窒素元素を磁性体中でより均一に分布させることができ、従来技術において希土類磁性体が窒化された後に窒素含有量が不十分であり、窒素元素の分布が不均一であるという問題を解決することができる。
【0110】
実施例7および実施例8の製品において窒素含有量が低いのは、用いられた希土類元素の種類が実施例1と異なるためである。それらの窒素含有量は、実施例1と比較できない。
【0111】
比較例1は、半製品を製造する際に多段加熱を行わず、1段階加熱のみを行ったことに起因して、排気が不完全であり、窒素元素の吸着が不十分であり、窒化後の窒素含有量が極めて低く、窒化効果が良くない。
【0112】
比較例2は、均一化処理を行わない(すなわち、第1設定温度下で加熱しない)ことに起因して、窒素含有量の変動が大きく、均一ではない。
【0113】
比較例3は、半製品を製造する際に2段階加熱のみを行うことに起因して、窒素元素の吸着が不十分であり、窒化後の窒素含有量が低い。
【0114】
本願は、上記実施例により本願の詳細方法を説明するが、本願は上記詳細方法に限定されず、即ち、本願が上記詳細方法に依存しなければ実施できないことを意味するものではないことを出願人より声明する。