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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】液体用の輸送及び貯蔵容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/04 20060101AFI20240927BHJP
   B65D 90/20 20060101ALI20240927BHJP
   B65D 19/28 20060101ALI20240927BHJP
   B65D 19/38 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B65D77/04
B65D90/20
B65D19/28 A
B65D19/38 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023520340
(86)(22)【出願日】2021-08-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-20
(86)【国際出願番号】 EP2021072531
(87)【国際公開番号】W WO2022083915
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】102020127721.0
(32)【優先日】2020-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510094263
【氏名又は名称】プロテクナ エスアー
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フリードリヒ シュテファン
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/085938(WO,A1)
【文献】特表2019-510703(JP,A)
【文献】特開平08-318945(JP,A)
【文献】特開2007-055688(JP,A)
【文献】特開2013-119435(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102010048609(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0073510(US,A1)
【文献】国際公開第2012/085941(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03109184(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 19/00-19/44
B65D 77/04
B65D 88/00-90/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック製の内側容器(11)のためのパレット型下部構造(29)を備える液体用の輸送及び貯蔵容器(10)であって、
前記内側容器(11)は、
4つの側壁(12,13,14,15)と、
下側及び上側ベース(16,17)と、
前記上側ベース(17)に形成された密封可能な充填ソケット(19)と、
前記側壁(12)の下部に形成された排出口ソケット(20)とを有し、
前記排出口ソケット(20)は、ネジ切り取付具(21)を備えており、
前記輸送及び貯蔵容器は、
前記内側容器(11)を受け入れるための金属製の水平棒及び垂直棒(23,24)を有する格子状シェル(22)を備え、
前記垂直棒(24)の端部は、中空部材(34)で形成され、前記格子状シェル(22)の下縁及び上縁輪郭部(28,26)に溶接され、
前記垂直棒(24)の上側端部は、前記上縁輪郭部(26)に接続される接続部(25)を有し、
前記接続部(25)は、変形することによって中空部材(34)から形成される平坦断面を有し、
少なくとも2つの垂直棒(24)は、前記内側容器(11)の上側ベース(17)を覆って延在し、中空部材(33)によって形成される横棒(30)によって、前記接続部(25)において接続され、
いずれの部位でも、前記垂直棒(24)の接続部(25)は、ネジ接続部(32)を介し、前記中空部材(33)を平坦部分に変形することによって前記横棒(30)の端部に形成された接続部(31)に接続され、
前記横棒(30)の前記接続部(31)は、
前記内側容器(11)の前記上側ベース(17)上を延びる長手部(37)に対して隙間を空けて曲がり、
前記垂直棒(24)の前記接続部(25)に向かって延設され、
そして、前記横棒(30)の前記接続部(31)は、前記垂直棒(24)の接続部(25)の通路開口部(40)を通って案内される接続ネジ(39)とネジ係合を形成するための壁面を含む締結開口部を有しており、
前記横棒(30)を介して互いに接続される前記垂直棒(24)及び前記横棒(30)の少なくとも一方は、前記接続部(25,31)に隣接して形成される遷移部(36,35)において前記接続ネジ(39)に作用する剪断力を減少させるための断面凹部を有し、
前記横棒(30)の前記遷移部(35)における前記断面凹部は、前記締結開口部(41)から突出するネジ端部(42)に対向して形成され、前記遷移部(35)が前記ネジ端部(42)に近づいたときに前記ネジ端部(42)を受ける働きをし、
前記横棒(30)の前記遷移部(35)における前記横棒(30)の長手方向縁部間に形成される凹部(44)又は窪みとして、前記断面凹部が形成され、
前記凹部(44)又は窪みは、前記遷移部(35)の全幅に延びていない
ことを特徴とする液体用の輸送及び貯蔵容器(10)。
【請求項2】
プラスチック製の内側容器(11)のためのパレット型下部構造(29)を備える液体用の輸送及び貯蔵容器(10)であって、
前記内側容器(11)は、
4つの側壁(12,13,14,15)と、
下側及び上側ベース(16,17)と、
前記上側ベース(17)に形成された密封可能な充填ソケット(19)と、
前記側壁(12)の下部に形成された排出口ソケット(20)とを有し、
前記排出口ソケット(20)は、ネジ切り取付具(21)を備えており、
前記輸送及び貯蔵容器は、
前記内側容器(11)を受け入れるための金属製の水平棒及び垂直棒(23,24)を有する格子状シェル(22)を備え、
前記垂直棒(24)の端部は、中空部材(34)で形成され、前記格子状シェル(22)の下縁及び上縁輪郭部(28,26)に溶接され、
前記垂直棒(24)の上側端部は、前記上縁輪郭部(26)に接続される接続部(25)を有し、
前記接続部(25)は、変形することによって中空部材(34)から形成される平坦断面を有し、
少なくとも2つの垂直棒(24)は、前記内側容器(11)の上側ベース(17)を覆って延在し、中空部材(33)によって形成される横棒(30)によって、前記接続部(25)において接続され、
いずれの部位でも、前記垂直棒(24)の接続部(25)は、ネジ接続部(32)を介し、前記中空部材(33)を平坦部分に変形することによって前記横棒(30)の端部に形成された接続部(31)に接続され、
前記横棒(30)の前記接続部(31)は、
前記内側容器(11)の前記上側ベース(17)上を延びる長手部(37)に対して隙間を空けて曲がり、
前記垂直棒(24)の前記接続部(25)に向かって延設され、
そして、前記横棒(30)の前記接続部(31)は、前記垂直棒(24)の接続部(25)の通路開口部(40)を通って案内される接続ネジ(39)とネジ係合を形成するための壁面を含む締結開口部を有しており、
前記横棒(30)を介して互いに接続される前記垂直棒(24)及び前記横棒(30)の少なくとも一方は、前記接続部(25,31)に隣接して形成される遷移部(36,35)において前記接続ネジ(39)に作用する剪断力を減少させるための断面凹部を有し、
前記垂直棒(24)の前記遷移部(36)の前記断面凹部は、前記接続部(25,31)を所定の曲げ点の周りに前記内側容器(11)から離れるように旋回させることを可能にする所定の曲げ点を形成し、前記横棒(30)を介して前記接続部(25,31)に剪断力が作用したときに、前記上縁輪郭部(26)に平行な軸の周りに外向きに旋回する
ことを特徴とする液体用の輸送及び貯蔵容器(10)。
【請求項3】
前記所定の曲げ点は、前記遷移部(36)における前記垂直棒(24)の外面(46)に配置され、前記上縁輪郭部(26)に対して平行に延びる溝(45)として形成される
ことを特徴とする請求項に記載の液体用の輸送及び貯蔵容器(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック製の内側容器のためのパレット型下部構造を備える液体用の輸送及び貯蔵容器に関し、前記内側容器は、4つの側壁と、下側及び上側ベースと、前記上側ベースに形成された密封可能な充填ソケットと、前記側壁の下部に形成された排出口ソケットとを有し、前記排出口ソケットは、ネジ切り取付具を備えており、前記輸送及び貯蔵容器は、前記内側容器を受け入れるための金属製の水平棒及び垂直棒を有する格子状シェルを備え、
前記垂直棒の端部は、中空部材で形成され、前記格子状シェルの下縁及び上縁輪郭部に溶接され、
前記垂直棒の上側端部は、前記上縁輪郭部に接続される接続部を有し、
前記接続部は、変形することによって中空部材から形成される平坦断面を有し、
少なくとも2つの垂直棒は、前記内側容器の上側ベースを覆って延在し、中空部材によって形成される横棒によって、接続部において接続され、
いずれの部位でも、ネジ接続部を介して中空部材を平坦部分に変形することによって、前記横棒の端部に形成された接続部に接続される垂直棒の接続部とを有し、
前記横棒の前記接続部は、前記内側容器の前記上側ベース上を延びる長手部に対して隙間を空けて曲がり、前記垂直棒の前記接続部に向かって延設され、
前記横棒の前記接続部は、前記垂直棒の接続部の通路開口部を通って案内される接続ネジとネジ係合を形成するための壁面を含む締結開口部を有している。
【背景技術】
【0002】
上記型式の輸送及び貯蔵容器(IBCとも呼ばれる)は、輸送及び貯蔵容器を使用する際に、既定の安全基準が遵守されていることを確実にするために、型式に依存する適合性試験を受ける。このような適合性試験の過程で、特に、輸送及び貯蔵容器の圧縮強度は、増加した液体内圧を内側容器に加えて行われ、その結果、それに対応して内側容器に作用する変形力は、内側容器を収容する格子状シェルによって吸収されなければならない。垂直棒の接続部と横棒の接続部との間に形成されるネジ接続部は、接続部の領域においてネジ接続部に剪断力が作用するため過大な応力を受けることになり、これにより横棒の接続部に形成されるネジ孔幅が拡がり、接続ネジと横棒の接続部との間のネジ結合が解除され、その結果、対応する部品の破損が発生する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、横棒と格子状シェルとの間に形成されたネジ接続部の破損に対する安全性の改善を特徴とする輸送及び貯蔵容器を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1の特徴を有する、本発明による輸送及び貯蔵容器によって達成される。
【0005】
本発明によれば、横棒又は横棒を介して互いに接続された垂直棒は、中空部材に向かう遷移領域における、接続部に隣接して形成された遷移部において、接続ネジに作用する剪断力を減少させるための断面凹部を有する。
【0006】
ネジ接続部の部品安全性に関連する剪断力が、内側容器が増大した液体内圧のために膨張するときに横棒の変形が生じるという事実によって本質的に引き起こされることが試験により知られており、前記変形は、横棒の接続部に隣接する遷移部が横棒の接続部の締結開口部から突出するネジ端部と接触するように生じ、その結果、変形力が遷移部を介して剪断力として接続ネジに作用し、締結開口部の壁部拡大の結果として、接続ネジと横棒の接続部との間のネジ係合が解除される。
【0007】
垂直棒の遷移部、横棒の遷移部、又は、垂直棒の遷移部及び横棒の遷移部の両方に形成することができる、本発明による断面凹部によって、横棒の遷移部と接続ネジとの間の物理的接触発生を防止することができ、それによって、接続ネジに対して加わる有害な剪断力を回避することができる。
【0008】
本発明の好ましい実施形態によれば、横棒の遷移部における断面凹部は、締結開口部から突出するネジ端部に対向して形成され、遷移部がネジ端部に近づくと、ネジ端部を受け入れるように機能する。このような断面凹部の実施形態は、横棒とネジ端部とが接触することなく、横棒の変形経路が、内側容器拡張の結果として増加することを可能にする。従って、横棒とネジ端部との間の物理的接触が回避されるか、又は物理的接触が生じる前に横棒の変形可能経路が増大される。
【0009】
横棒の遷移部の断面凹部は、横棒の長手方向端部間に形成される、窪み又は凹部として形成することができる。窪みは、遷移部の全幅に亘って凹部又はへこみが延在する場合と比較して、遷移部の領域において横棒の曲げ剛性の増大が維持されると、特に有利である。
【0010】
本発明の他の実施形態によれば、垂直棒の遷移部の断面凹部は、所定の曲げ点を形成し、それにより、接続部の、所定の曲げ点の周りで内側容器から離れ、横棒を介して接続部に剪断力が作用したときに上縁輪郭部に平行な軸の周りを外側へ旋回することを可能にする。このような実施形態では、垂直棒の遷移部の曲げ剛性が低下すると、垂直棒の接続部が、横棒の変形と同じ方向に所定の曲げ点の周りで外向きの旋回運動を行うことになるので、ネジ接合部の強度に悪影響を与える横棒とネジ端部との間の物理的接触が発生しないか、又は遅延される。
【0011】
所定の曲げ点が、その領域において望まれる曲げ剛性の低下が達成されるように、遷移部における垂直棒の外面上に配置され、かつ上縁輪郭部に対して平行に延びる溝として形成されると、特に有利であることが証明されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】上縁輪郭部上に横棒が設けられた格子状シェルを備える輸送及び貯蔵容器を示す斜視図である。
図2】格子状シェルに形成された横棒の接続領域を示す拡大図である。
図3図2に示す横棒の接続領域に係る、図2のIII-III線断面図である。
図4図1に示した輸送及び貯蔵容器の内側容器に内圧を加えた場合の、図3に示した横棒の接続領域を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、使い捨て容器として使用することができ、再使用可能な容器としても使用することができる、液体用の輸送及び貯蔵容器10を示し、この液体用の輸送及び貯蔵容器10はプラスチック製の内側容器11を備え、この内側容器11は、4つの側壁12,13,14及び15と、下側及び上側ベース16,17と、上側ベース17上に形成されて蓋18で密閉可能な充填ソケット19と、前側側壁13の下部に形成された排出口ソケット20とを備え、排出口ソケット20は、ネジ切り取付具21を有する。輸送及び貯蔵容器10は、内側容器11を受容するための金属製の水平棒23及び垂直棒24と交差することによって形成された外側格子状シェル22をさらに備える。垂直棒24は、上側の接続部25を介して格子状シェル22の上縁輪郭部26に溶接され、下側接続部27を介して下縁輪郭部28に溶接される。さらに、格子状シェル22は、その下縁輪郭部28を介してパレット型下部構造29に接続される。
【0015】
図1に示すように、格子状シェル22には、内側容器11の上側ベース17を覆うように延在し、かつ本実施形態においては互いに平行に延在し、図2に示すように、それらの長手方向端部の各々に形成されたネジ接続部32を介して垂直棒24の上側の接続部25に力嵌め方式で接続された、2本の横棒30が設けられている。図3に示すように、横棒30の接続部31及び垂直棒24の接続部25は、それぞれ中空部材33及び34よりなる、横棒30及び垂直棒24の平坦部によってそれぞれ形成され、中空部材33及び34よりなる長手部37及び38から遷移部35及び36によって、それぞれ距離が保たれている。
【0016】
特に図3に示すように、横棒30の接続部31は、横棒30の長手部37に対して、横棒30の接続部31と垂直棒24の接続部25とが本質的に平行な平面に延在するように曲げられ、接続部31,25は、垂直棒24の接続部25に形成された通路開口部40と横棒30の接続部31に形成された締結開口部41とを通って延在する接続ネジ39によって、力嵌め方式で互いに接続される。
【0017】
力嵌めを行うために、接続ネジ39は、ネジ孔として形成された締結開口部41に、締結開口部41を貫通するネジ端部42を備え、締結開口部41の壁部43とネジ端部42との間にネジ係合が生じるようになっている。
【0018】
特に、図2及び図3は、輸送及び貯蔵容器10の本実施形態において、横棒30の接続部31と長手部37との間に形成される遷移部35、及び、垂直棒24の接続部25と長手部38との間に形成される遷移部36の両方が、窪み44又は溝45として形成される断面凹部を有し、窪み44が、締結開口部41から突出するネジ端部42に対向して形成され、溝45が、内側容器11とは反対側に面し、上縁輪郭部26と平行に延びる垂直棒24の外面46に形成されることを示す。
【0019】
内側容器11が増加した液体内圧を受ける場合における、凹部44及び溝45の有利な効果を説明するために、図4は、ネジ接続部32の領域における変形状態を概略的に示す。ネジ接続部32の変形されていない状態(図3に図示)と変形状態(図4に図示)とを比較すると、横棒30の遷移部35に凹部44を形成しているので、ネジ端部42と遷移部35との間に物理的接触を形成することなく、変形時に遷移部35がネジ端部42に近づくことが可能になる。凹部44は、遷移部35がネジ端部42に近づいたときにネジ端部42が突き出ることができるように、遷移部35内に自由空間を形成する。
【0020】
さらに、図3図4との比較から、遷移部36内の垂直棒24の外面46上に形成された溝45が所定の屈曲点を形成し、これにより、内側容器11の膨張の結果、横棒30を介して接続部25,31に剪断力が作用したときに、上縁輪郭部26と平行な軸の周りを外方へ、所定の屈曲点を中心に接続部31,25が旋回することが可能となり、前述の凹部44内への突出の可能性に加えて、接続ネジ39のネジ端部42も、この旋回運動によって、横棒30の遷移部35への接近を回避することができる。
【0021】
上述したことから導き出せるように、横棒30の遷移部35における凹部44の形成と、垂直棒24の遷移部36における溝45の形成の両方は、横棒30の遷移部35とネジ端部42との間の物理的接触を回避することを可能にし、図示された実施形態における凹部44と溝45との同時形成は、特に有利な効果が、重複して発揮されることを可能にする。
図1
図2
図3
図4