(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H02M3/155 C
(21)【出願番号】P 2023525156
(86)(22)【出願日】2021-05-31
(86)【国際出願番号】 JP2021020656
(87)【国際公開番号】W WO2022254508
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】中村 優太
(72)【発明者】
【氏名】後藤 勝敏
(72)【発明者】
【氏名】黒川 和成
(72)【発明者】
【氏名】鷺谷 吉則
(72)【発明者】
【氏名】加藤 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】長澤 一哉
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/244614(WO,A1)
【文献】特開2020-005475(JP,A)
【文献】特開2019-195242(JP,A)
【文献】特開2018-207763(JP,A)
【文献】特開2019-024283(JP,A)
【文献】特開2013-046541(JP,A)
【文献】特開2019-169997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00 - 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョッパ回路が相数に応じて複数並列に接続された多相変圧回路と、
前記チョッパ回路の相電流を検出する電流センサと、
前記相電流の偏流値を検出する偏流検出部と、
前記多相変圧回路の状態量に応じて故障検知しきい値を可変設定し、前記偏流値を前記故障検知しきい値と比較することにより前記チョッパ回路の故障を判定する故障判定部と
を備える電力変換装置。
【請求項2】
前記電流センサは、前記相電流の合計量を検出し、
前記故障判定部は、前記合計量から得られる前記状態量に基づいて前記故障検知しきい値を設定する請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記電流センサに代えて、前記多相変圧回路の入力電流あるいは出力電流を検出する第2の電流センサをさらに備え、
前記故障判定部は、前記第2の電流センサの検出値に基づいて前記故障検知しきい値を設定する請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記故障判定部は、前記状態量の大小に応じて複数の電流範囲に区分し、当該区分毎に前記故障検知しきい値を設定する請求項1~3のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
故障した前記チョッパ回路を特定する故障特定部をさらに備える請求項1~4のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記故障特定部は、
前記チョッパ回路を構成する半導体スイッチング素子の温度を各々検出する複数の温度センサと、
該温度センサの検出値に基づいて故障した前記半導体スイッチング素子を判定する判定部と
を備える請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記故障判定部は、前記状態量が小さい程、前記故障検知しきい値を小さく設定する請求項1~6のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記状態量は、前記相電流の平均値あるいは実効値である請求項1~7のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記状態量は、前記多相変圧回路の変圧比である請求項1~8のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記多相変圧回路は、多相構成の昇降圧変換回路である請求項1~9のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、スイッチング素子とスイッチング素子に接続されたリアクトルとを備えたチョッパ回路が並列に複数接続された多相コンバータを備える電力変換装置であって、チョッパ回路の一次側に設けられ、各スイッチング素子のオン状態及びオフ状態の双方において各リアクトルに流れる相電流を検出する単一の電流センサと、当該電流センサにより検出された相電流に基づいて各チョッパ回路における相電流の偏流を検出する偏流検出部とを備える電力変換装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の電力変換装置は、各チョッパ回路の相電流のピークを比較することにより相電流の偏流を検出するものなので、相電流が小さくなった場合に偏流の検出精度が低下する。そして、この結果として多相構成のチョッパ回路(多相変圧回路)の故障を誤検知する虞が上昇する。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、多相変圧回路における故障の誤検知を従来よりも低下させることが可能な電力変換装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様の電力変換装置は、チョッパ回路が相数に応じて複数並列に接続された多相変圧回路と、前記チョッパ回路の相電流を検出する電流センサと、前記相電流の偏流値を検出する偏流検出部と、前記多相変圧回路の状態量に応じて故障検知しきい値を可変設定し、前記偏流値を前記故障検知しきい値と比較することにより前記チョッパ回路の故障を判定する故障判定部とを備える。
【0007】
本開示の第2の態様の電力変換装置において、前記電流センサは、前記相電流の合計量を検出し、前記故障判定部は、前記合計量から得られる前記状態量に基づいて前記故障検知しきい値を設定する、としてもよい。
【0008】
本開示の第3の態様の電力変換装置において、前記電流センサに代えて、前記多相変圧回路の入力電流あるいは出力電流を検出する第2の電流センサをさらに備え、前記故障判定部は、前記第2の電流センサの検出値に基づいて前記故障検知しきい値を設定する、としてもよい。
【0009】
本開示の第4の態様の電力変換装置において、前記故障判定部は、前記状態量の大小に応じて複数の電流範囲に区分し、当該区分毎に前記故障検知しきい値を設定する、としてもよい。
【0010】
本開示の第5の態様の電力変換装置において、故障した前記チョッパ回路を特定する故障特定部をさらに備える、としてもよい。
【0011】
本開示の第6の態様の電力変換装置において、前記故障特定部は、前記チョッパ回路を構成する半導体スイッチング素子の温度を各々検出する複数の温度センサと、該温度センサの検出値に基づいて故障した前記半導体スイッチング素子を判定する判定部とを備える、としてもよい。
【0012】
本開示の第7の態様の電力変換装置において、前記故障判定部は、前記状態量が小さい程、前記故障検知しきい値を小さく設定する、としてもよい。
【0013】
本開示の第8の態様の電力変換装置において、前記状態量は、前記相電流の平均値あるいは実効値である、としてもよい。
【0014】
本開示の第9の態様の電力変換装置において、前記状態量は、前記多相変圧回路の変圧比である、としてもよい。
【0015】
本開示の第10の態様の電力変換装置において、前記多相変圧回路は、多相構成の昇降圧変換回路である、としてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、多相変圧回路における故障の誤検知を従来よりも低下させることが可能な電力変換装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る電力変換装置Aの全体構成を示すブロック図である。
【
図2】本開示の第1実施形態における故障検知しきい値Rの設定方法を示す特性図である。
【
図3】本開示の第1実施形態において、リアクトル電流I、偏流値H及び昇圧比に応じた故障診断の信頼性を示す模式図である。
【
図4】本開示の第2実施形態に係る電力変換装置A1の全体構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
最初に、本開示の第1実施形態について
図1~
図3を参照して説明する。第1実施形態に係る電力変換装置Aは、
図1に示すように組電池Pと走行モータMとの間に設けられ、直流電力と三相交流電力とを相互に変換する装置である。この電力変換装置Aは、図示するように昇降圧コンバータD1、インバータD2及び制御駆動回路D3を備えている。このような電力変換装置Aは、例えばハイブリッド自動車や電気自動車等の電動車両に搭載される。
【0019】
ここで、組電池Pは、プラス電極が上記昇降圧コンバータD1の一次側入力端子に接続され、マイナス電極が昇降圧コンバータD1の一次側GND端子に接続されている。この組電池Pは、リチウムイオン電池等の二次電池であり、直流電力の充放電とを行う。
【0020】
走行モータMは、電動車両の走行動力を発生する三相同期電動機であり、インバータD2の負荷である。この走行モータMは、インバータD2から入力される三相駆動電力(U相駆動電力、V相駆動電力及びW相駆動電力)によって回転駆動され、電動車両の駆動輪を回転させる。
【0021】
第1実施形態に係る電力変換装置Aは、このような組電池PとモータMとの間に設けられ、組電池Pから供給される直流電力を三相交流電力に変換してモータMを駆動する力行機能と、モータMの回生電力(三相交流電力)を直流電力に変換して組電池Pに供給する充電機能とを有する。
【0022】
なお、このような電力変換装置Aを構成する昇降圧コンバータD1、インバータD2及び制御駆動回路D3のうち、昇降圧コンバータD1は、本開示の多相変圧回路に相当し、制御駆動回路D3は、本開示の偏流検出部及び故障判定部に相当する構成要素である。
【0023】
昇降圧コンバータD1は、磁気結合インターリーブ型チョッパ回路と言われる多相構成の昇降圧変換回路であり、図示するように第1コンデンサ1、トランス2、4つの変圧用IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)3a~3d、第2コンデンサ4、一次電圧センサ5,二次電圧センサ6及び電流センサ7を備えている。
【0024】
この昇降圧コンバータD1は、制御駆動回路D3から入力される変圧用ゲート信号に基づいて直流電力を昇圧あるいは降圧して入出力する電力変換回路である。すなわち、この昇降圧コンバータD1は、組電池Pから一次側に入力された直流電力を昇圧してインバータD2に出力する昇圧動作と、インバータD2から入力された直流電力を降圧して組電池Pに出力する降圧動作とを択一的に行う。
【0025】
インバータD2は、3相に対応した3つのスイッチングレグ(合計6つの走行用IGBT)を備えており、制御駆動回路D3から入力される走行用ゲート信号に基づいて各走行用IGBTがON/OFF動作することによって、直流電力と三相交流電力との電力変換を行う。すなわち、このインバータD2は、昇降圧コンバータD1から入力される直流電力を三相交流電力に変換して走行モータMに供給する力行動作と、走行モータMから入力された三相交流電力を直流電力に変換して昇降圧コンバータD1に出力する回生動作とを択一的に行う。
【0026】
ここで、昇降圧コンバータD1についてさらに詳しく説明すると、第1コンデンサ1は、一端が組電池Pのプラス電極及びトランス2に接続され、他端が組電池Pのプラス電極に接続されている。このような第1コンデンサ1の両端は、昇降圧コンバータD1における一次側入出力端子である。
【0027】
すなわち、この第1コンデンサ1は、組電池Pに対して並列接続されており、昇圧動作時において組電池Pから昇降圧コンバータD1に入力される直流電力(電池電力)に含まれ得る高周波ノイズを除去し、また降圧動作時においてトランス2から入力される直流電力に含まれるリップルを平滑化する。
【0028】
トランス2は、一次巻線2aと二次巻線2bとを備えており、一次巻線2aの一端及び二次巻線2bの一端が第1コンデンサ1の一端に接続されている。また、一次巻線2aの他端は、第1の変圧用IGBT3aのエミッタ端子及び第2の変圧用IGBT3bのコレクタ端子に接続され、二次巻線2bの他端は、第3の変圧用IGBT3cのエミッタ端子及び第4の変圧用IGBT3dのコレクタ端子に接続されている。
【0029】
このようなトランス2は、一次巻線2aと二次巻線2bとが所定の結合係数kで電磁気的に結合している。すなわち、一次巻線2aは、自身の巻き数等に応じた所定の第1自己インダクタンスLaを有し、二次巻線2bは自身の巻き数等に応じた所定の第2自己インダクタンスLbを有している。また、一次巻線2aと二次巻線2bとは、上述した第1自己インダクタンスLa、第2自己インダクタンスLb及び結合係数kに基づく相互インダクタンスを有している。
【0030】
4つの変圧用IGBT3a~3dのうち、第1の変圧用IGBT3a及び第2の変圧用IGBT3bは、昇降圧コンバータD1におけるA相スイッチングレグを構成している。また、第3の変圧用IGBT3c及び第4の変圧用IGBT3dは、昇降圧コンバータD1におけるB相スイッチングレグを構成している。このようなA相スイッチングレグとB相スイッチングレグとは、互いに逆位相でON/OFF動作するスイッチングアームである。
【0031】
第1の変圧用IGBT3aは、A相スイッチングレグにおける上アームスイッチであり、第2の変圧用IGBT3bは、A相スイッチングレグにおける下アームスイッチである。また、第3の変圧用IGBT3cは、B相スイッチングレグにおける上アームスイッチであり、第4の変圧用IGBT3dは、B相スイッチングレグにおける下アームスイッチである。
【0032】
第1の変圧用IGBT3aは、コレクタ端子が第3の変圧用IGBT3cのコレクタ端子及び第2コンデンサ4の一端に共通接続されており、エミッタ端子が一次巻線2aの他端及び第2の変圧用IGBT3bのコレクタ端子に共通接続され、ゲート端子が制御駆動回路D3の第1変圧用出力端子に接続されている。このような第1の変圧用IGBT3aは、第1変圧用出力端子から入力される第1変圧用ゲート信号に基づいてON/OFFデューティ比が制御される半導体スイッチング素子である。
【0033】
第2の変圧用IGBT3bは、コレクタ端子が一次巻線2aの他端及び第1の変圧用IGBT3aのエミッタ端子に共通接続され、エミッタ端子が第4の変圧用IGBT3dのエミッタ端子、第1コンデンサ1の他端及び第2コンデンサ4の他端に共通接続され、ゲート端子が制御駆動回路D3の第2変圧用出力端子に接続されている。このような第2の変圧用IGBT3bは、第2変圧用出力端子から入力される第2変圧用ゲート信号に基づいてON/OFFデューティ比が制御される半導体スイッチング素子である。
【0034】
第3の変圧用IGBT3cは、コレクタ端子が第1の変圧用IGBT3aのコレクタ端子及び第2コンデンサ4の一端に共通接続され、エミッタ端子が二次巻線2bの他端及び第4の変圧用IGBT3dのコレクタ端子に共通接続され、ゲート端子が制御駆動回路D3の第3変圧用出力端子に接続されている。このような第3の変圧用IGBT3cは、第3変圧用出力端子から入力される第3変圧用ゲート信号に基づいてON/OFFデューティ比が制御される半導体スイッチング素子である。
【0035】
第4の変圧用IGBT3dは、コレクタ端子が二次巻線2bの他端及び第3の変圧用IGBT3cのエミッタ端子に共通接続され、エミッタ端子が第1の変圧用IGBT3aのエミッタ端子、第1コンデンサ1の他端及び第2コンデンサ4の他端に共通接続され、ゲート端子が制御駆動回路D3の第4変圧用出力端子に接続されている。このような第4の変圧用IGBT3dは、第4変圧用出力端子から入力される第4変圧用ゲート信号に基づいてON/OFFデューティ比が制御される半導体スイッチング素子である。
【0036】
このような第1~第4の変圧用IGBT3a~3dは、図示するように各々に還流ダイオードを備えている。すなわち、この還流ダイオードは、各々のIGBTについて、カソード端子がコレクタ端子に接続され、またアノード端子がエミッタ端子に接続されている。このような還流ダイオードは、IGBTがOFF状態の時にアノード端子からカソード端子に還流電流を流す。
【0037】
第2コンデンサ4は、一端が第1の変圧用IGBT3aのコレクタ端子及び第3の変圧用IGBT3cのコレクタ端子に接続され、他端が第2の変圧用IGBT3bのエミッタ端子、第4の変圧用IGBT3dのエミッタ端子及び第1コンデンサ1の他端に共通接続されている。このような第2コンデンサ4の両端は、昇降圧コンバータD1における二次側入出力端子である。
【0038】
このような第2コンデンサ4は、昇圧動作においてA相スイッチングレグ及びB相スイッチングレグから入力される直流電力(昇圧電力)に含まれ得るリップルを平滑化する。また、この第2コンデンサ4は、降圧動作時においてインバータD2から入力される直流電力(回生電力)に含まれ得るリップルを平滑化する。
【0039】
ここで、上述した第1コンデンサ1、トランス2の一次巻線2a及び二次巻線2b、4つの変圧用IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)3a~3d及び第2コンデンサ4のうち、第1コンデンサ1、一次巻線2a、第1、第2の変圧用IGBT3a、3b(A相スイッチングレグ)及び第2コンデンサ4は、第1のチョッパ回路を構成している。
【0040】
また、第1コンデンサ1、二次巻線2b、第3、第4の変圧用IGBT3c、3d(B相スイッチングレグ)及び第2コンデンサ4は、第2のチョッパ回路を構成している。このような第1のチョッパ回路及び第2のチョッパ回路は、相数が2に対応する2相変圧回路(多相変圧回路)を構成しており、当該相数(つまり2)に応じて複数(2つ)並列に接続されている。
【0041】
一次電圧センサ5は、昇降圧コンバータD1の一次側つまり組電池P側の一次電圧V1を検出する電圧センサであり、昇降圧コンバータD1の状態量である一次電圧V1を制御駆動回路D3に出力する。この一次電圧V1は、昇降圧コンバータD1の昇圧動作における入力電圧であり、また昇降圧コンバータD1の降圧動作における出力電圧である。
【0042】
二次電圧センサ6は、昇降圧コンバータD1の二次側つまりインバータD2側の二次電圧V2を検出する電圧センサであり、昇降圧コンバータD1の状態量である二次電圧V2を制御駆動回路D3に出力する。この二次電圧V2は、昇降圧コンバータD1の昇圧動作における出力電圧であり、また昇降圧コンバータD1の降圧動作における入力電圧である。
【0043】
電流センサ7は、トランス2の一次巻線2aに流れる一次電流と二次巻線2bに流れる二次電流との合計量(合計電流)をリアクトル電流Iとして検出する電流センサである。この電流センサ7は、上記リアクトル電流Iを制御駆動回路D3に出力する。
【0044】
上記一次電流は、一次巻線2aに接続されたA相スイッチングレグのON/OFF動作によって一次巻線2aに流れるA相電流Iaであり、昇降圧コンバータD1の一次側から二次側に流れる力行電流あるいは昇降圧コンバータD1の二次側から一次側に流れる回生電流である。
【0045】
また、上記二次電流は、二次巻線2bに接続されたB相スイッチングレグのON/OFF動作によって二次巻線2bに流れるB相電流Ibであり、昇降圧コンバータD1の一次側から二次側に流れる力行電流あるいは昇降圧コンバータD1の二次側から一次側に流れる回生電流である。
【0046】
ここで、図示するように、インバータD2と走行モータMとを接続する三相電力線には各々に電流センサが設けられている。すなわち、U相電力線にはU相電流センサ8が設けられ、V相電力線にはV相電流センサ9が設けられ、またW相電力線にはW相電流センサ10が設けられている。
【0047】
U相電流センサ8は、U相電力線に流れるU相駆動電流あるいはU相回生電流を検出し、その検出値を示すU相電流検出信号を制御駆動回路D3に出力する。V相電流センサ9は、V相電力線に流れるV相駆動電流あるいはV相回生電流を検出し、その検出値を示すV相電流検出信号を制御駆動回路D3に出力する。またW相電流センサ10は、W相電力線に流れるW相駆動電流あるいはW相回生電流を検出し、その検出値を示すW相電流検出信号を制御駆動回路D3に出力する。
【0048】
続いて、制御駆動回路D3の詳細について説明する。この制御駆動回路D3は、図示するように偏流検出部11、平均電流検出部12、制御部13、また2つのゲート信号生成部14、15を備えている。
【0049】
偏流検出部11は、電流センサ7から入力されるリアクトル電流Iに基づいて、当該リアクトル電流Iに含まれるリップル成分に基づいて偏流値Hを検出する。すなわち、この偏流検出部11は、リアクトル電流Iからリップル成分を抽出し、当該リップル成分に含まれる2つのピーク値の差分を偏流値Hとして制御部13に出力する。
【0050】
上述したようにリアクトル電流Iは、トランス2の一次巻線2aに流れるA相電流Iaと二次巻線2bに流れるB相電流Ibとの合計電流である。A相電流Iaは、A相スイッチングレグのON/OFF動作に同期した位相のリップルを含む直流電流であり、またB相電流Ibは、B相スイッチングレグのON/OFF動作に同期した位相のリップルを含む直流電流である。
【0051】
また、A相スイッチングレグとB相スイッチングレグとは互いに逆位相でON/OFF動作するので、A相電流Iaのリップル成分は、B相電流Ibのリップル成分に対して位相が逆位相となる。
【0052】
昇降圧コンバータD1におけるA相スイッチングレグとB相スイッチングレグとが正常に動作している場合つまりA相電流IaとB相電流Ibとが略等しい場合、リアクトル電流Iのリップル成分は、A相電流Iaのリップル成分とB相電流Ibのリップル成分とが合計(加算)されることにより比較的小さな値となる。
【0053】
すなわち、昇降圧コンバータD1におけるA相スイッチングレグとB相スイッチングレグとが正常に動作している場合、A相電流Iaのリップル成分のピーク値とB相電流Ibのリップル成分のピーク値との差分である偏流値Hは、比較的小さなものとなる。
【0054】
これに対して、A相スイッチングレグあるいはB相スイッチングレグのいずれかが故障状態に至ると、A相電流Iaの大きさとB相電流Iの大きさとが異なる大きなになるので、A相電流Iaのリップル成分のピーク値とB相電流Ibのリップル成分のピーク値との差分である偏流値Hは、正常動作時に比べて大きさとなる。なお、このことは上述した特許文献1にも記載されている。
【0055】
このように、リアクトル電流Iの偏流値Hは、A相電流Iaの大きさとB相電流Ibの大きさとの比率に応じて変動する状態量、つまりA相スイッチングレグとB相スイッチングレグとのいずれか一方が故障状態に陥っていることを示す状態量と言えるものである。
【0056】
平均電流検出部12は、電流センサ7から入力されるリアクトル電流Iに基づいて、当該リアクトル電流Iの平均値(電流平均値G)を検出する。すなわち、この平均電流検出部12は、リアクトル電流Iにフィルタ処理の一種である移動平均処理を施すことにより、リップル成分(偏流)を平均化した電流値を電流平均値Gとして制御部13に出力する。
【0057】
制御部13は、一次電圧センサ5から入力される一次電圧V1、二次電圧センサ6から入力される二次電圧V2、電流センサ7から入力されるリアクトル電流I及び上位制御装置から入力される制御指令等に基づいて、第1~第4変圧用ゲート信号の生成に必要な第1~第4変圧用Duty指令値を生成する。
【0058】
これら第1~第4変圧用Duty指令値は、PWM信号である第1~第4変圧用ゲート信号のデューティ比を指定する信号である。制御部13は、このような第1~第4変圧用Duty指令値を第1のゲート信号生成部14に出力する。
【0059】
また、制御部13は、二次電圧センサ6から入力される二次電圧V2、U相電流センサ8から入力されるU相電流検出信号、V相電流センサ9から入力されるV相電流検出信号、W相電流センサ10から入力されるW相電流検出信号及び上位制御装置から入力される制御指令等に基づいて、第1~第4走行用ゲート信号の生成に必要な第1~第4走行用Duty指令値を生成する。
【0060】
これら第1~第4走行用Duty指令値は、PWM信号である第1~第4走行用ゲート信号のデューティ比を指定する信号である。制御部13は、このような第1~第4走行用Duty指令値を第2のゲート信号生成部15に出力する。
【0061】
さらに、制御部13は、昇降圧コンバータD1の故障診断機能を有する。すなわち、この制御部13は、偏流検出部11から入力される偏流値H、平均電流検出部12から入力される電流平均値G、また昇降圧コンバータD1の動作状態に1つである変圧比等に基づいて、A相スイッチングレグとB相スイッチングレグとのいずれか一方が故障状態に陥っているか否かを診断する。
【0062】
次に、本実施形態に係る電力変換装置Aの動作について、
図2及び
図3をも参照して詳しく説明する。
【0063】
制御部13は、一次電圧V1、二次電圧V2、リアクトル電流I及び制御指令等を所定のタイムインターバル順次取り込むことにより、各時刻における第1~第4変圧用Duty指令値を生成し、昇降圧コンバータD1に出力する。また、制御部13は、二次電圧V2、U相電流検出信号、V相電流検出信号、W相電流検出信号及び制御指令等を所定のタイムインターバル順次取り込むことにより、各時刻における第1~第6走行用Duty指令値を生成し、インバータD2に出力する。
【0064】
例えば、昇降圧コンバータD1を昇圧動作かつインバータD2を力行動作させて走行モータMを回転駆動する場合、制御部13は、昇降圧コンバータD1が所定の昇圧比となるように第1~第4変圧用Duty指令値を生成し、またインバータD2が昇降圧コンバータD1から入力される直流電力を所定の駆動電流値の三相交流電力に変換するように第1~第6走行用Duty指令値を生成する。この結果、走行モータMは、制御指令で指定されたトルク及び回転数で回転し、電動車両を走行させる。
【0065】
そして、第1のゲート信号生成部14は、制御部13から入力される第1~第4変圧用Duty指令値に基づいて第1~第4変圧用ゲート信号を生成して昇降圧コンバータD1に出力する。また、第2のゲート信号生成部15は、制御部13から入力される第1~第6走行用Duty指令値に基づいて第1~第6走行用ゲート信号を生成してインバータD2に出力する。
【0066】
ここで、A相スイッチングレグを構成する第1、第2の変圧用IGBT3a、3bを駆動する第1、第2変圧用ゲート信号は、B相スイッチングレグを構成する第3、第4変圧用IGBT3c、3dを駆動する第3、第4変圧用ゲート信号に対して位相が180°異なる。したがって、第1、第2の変圧用IGBT3a、3bと第3、第4変圧用IGBT3c、3dとは、位相が180°異なる状態でON/OFFする。
【0067】
この結果、トランス2の一次巻線2aに流れるA相電流Ia及びトランス2の二次巻線2bに流れるB相電流Ibは、リップル成分の位相が180°異なる関係となる。電流センサ7は、このようなA相電流IaとB相電流Ibとの合計電流であるリアクトル電流Iを常時検出し、偏流検出部11及び平均電流検出部12に出力する。
【0068】
そして、偏流検出部11は、リアクトル電流Iに基づいて偏流値Hを順次検出して制御部13に出力し、平均電流検出部12は、リアクトル電流Iに基づいて電流平均値Gを順次検出して制御部13に出力する。そして、制御部13は、偏流値H及び電流平均値Gに基づいて以下のようA相スイッチングレグとB相スイッチングレグとのいずれか一方が故障状態に陥っているか否かを診断する。
【0069】
すなわち、制御部13は、
図2に示すように、偏流値H及び電流平均値Gに応じてA相スイッチングレグ及びB相スイッチングレグの故障検知しきい値Rを可変設定する。そして、制御部13は、偏流値Hが故障検知しきい値R以上の場合はA相スイッチングレグとB相スイッチングレグとのいずれか一方が故障状態に陥っていると判定し、偏流値Hが故障検知しきい値Rを超えない場合には、A相スイッチングレグ及びB相スイッチングレグがいずれも正常であると判定する。
【0070】
なお、
図2の横軸は電流平均値Gを示しているが、リアクトル電流Iには流れ方向は、昇降圧コンバータD1が昇圧動作をしている場合と降圧動作をしている場合とで異なる。上記故障検知しきい値Rは、この
図2に示すように、リアクトル電流の2つの流れ方向に対して同様に、つまり電流平均値Gが「0」となる縦軸(偏流値Hの軸)に対して左右対称となるように設定されている。
【0071】
また、この故障検知しきい値Rは、図示するように電流平均値Gの大きさ(絶対値)が小さい程小さな値に設定されており、電流平均値Gの大きさ(絶対値)が大きい程大きな値に設定されている。例えば、故障検知しきい値Rは、
図2に示すように、電流平均値Gの大小に応じて大、中、小の3電流領域(大領域、中領域及び小領域)に区分され、各電流範囲について個別に設定されている。
【0072】
このような故障検知しきい値Rの設定方法は、
図3に示すように、同一の昇圧比で比較した場合、リアクトル電流Iが小さい程つまり電流平均値Gの絶対値が小さい程にリアクトル電流Iのリップル成分が小さくなるので、A相スイッチングレグあるいはB相スイッチングレグの故障判定の信頼性が低下するためである。
【0073】
なお、リアクトル電流Iのリップル成分は、
図3に示すように、同一のリアクトル電流Iで比較した場合、昇圧比Sが小さい程に小さくなる。すなわち、A相スイッチングレグあるいはB相スイッチングレグの故障判定の信頼性は、昇圧比Sが小さい程に低下する傾向がある。このことを考慮すると、故障検知しきい値Rを昇圧比Sが小さい程に小さな値に設定してもよい。
【0074】
ここで、本第1実施形態における電流平均値G及び昇圧比Sは、本開示の状態量に相当する。すなわち、電流平均値G及び昇圧比Sは、昇降圧コンバータD1の動作状態を示す量である。
【0075】
さらに、リアクトル電流Iが小さい場合つまり電流平均値Gの絶対値が小さい場合には、A相スイッチングレグとB相スイッチングレグとのいずれか一方が故障状態に陥っている場合の偏流値Hと、A相スイッチングレグ及びB相スイッチングレグがいずれも正常である場合の偏流値Hとに有意な差異が発生しないことが懸念される。
【0076】
このような場合を考慮すると、
図2に領域Tm、Tsとして示すように、電流平均値Gに故障診断を行わない領域を設定してもよい。これら2つの領域Tm、Tsのうち、領域Tmは、図示するように電流平均値Gにおいて領域Tsよりもより小さくかつより狭い領域に設定されるものであり、昇圧比を大、中、小の3領域に区分した場合に中以上の場合に設定される診断不実行領域である。
【0077】
一方、領域Tsは、電流平均値Gにおいて領域Tmを包含すると共に領域Tmよりもより広い領域に設定されるものであり、昇圧比が小の場合に設定される診断不実行領域である。昇圧比が小の場合は昇圧比が中以上の場合よりも偏流値Hが小さくなる傾向があるので、昇圧比が小の場合には、昇圧比が中以上の場合よりも電流平均値Gのより広い範囲で診断を停止させる。
【0078】
このような第1実施形態によれば、第1、第2のチョッパ回路の状態量に応じて故障検知しきい値Rを可変設定し、偏流値Hを故障検知しきい値Rと比較することにより第1、第2のチョッパ回路を構成するA相スイッチングレグあるいはB相スイッチングレグの故障を判定するので、A相スイッチングレグとB相スイッチングレグにおける故障の誤検知を従来よりも低下させることが可能である。
【0079】
〔第2実施形態〕
次に、本開示の第2実施形態について
図4を参照して説明する。この
図4は、第2実施形態に係る電力変換装置A1の全体構成を示しており、第1実施形態に係る電力変換装置Aの全体構成を示す
図1と同一の構成要素については同一符号を付している。
【0080】
図4を
図1と対比すると分かるように、第2実施形態に係る電力変換装置A1は、第1実施形態に係る電力変換装置Aに4つの温度センサ16~19を追加し、また第1実施形態に係る電力変換装置Aの制御部13に代えて制御部13Aを備える。
【0081】
このような4つの温度センサ16~19及び制御部13Aは、本開示の故障特定部を構成している。また、4つの温度センサ16~19及び制御部13Aのうち、4つの温度センサ16~19は、本開示の温度センサに相当し、また制御部13Aは、本開示の判定部に相当する。
【0082】
すなわち、4つの温度センサ16~19及び制御部13Aは、第1のチョッパ回路のA相スイッチングレグあるいは第2のチョッパ回路のB相スイッチングレグのうち、いずれのスイッチングレグが故障したかを特定する。また、4つの温度センサ16~19及び制御部13Aは、故障したチョッパ回路のスイッチングレグについて上アームスイッチと下アームスイッチのうち、故障したスイッチ(半導体スイッチング素子)を特定するものである。
【0083】
また、このような4つの温度センサ16~19及び制御部13Aのうち、4つの温度センサ16~19は、第1,第2のチョッパ回路を構成する第1~第4の変圧用IGBT3a~3d(半導体スイッチング素子)の温度を各々検出するものである。
【0084】
第1の温度センサ16は、第1の変圧用IGBT3aの動作温度を検出するセンサであり、検出値を第1温度検出信号として制御部13Aに出力する。また、第2の温度センサ17は、第2の変圧用IGBT3bの動作温度を検出するセンサであり、検出値を第2温度検出信号として制御部13Aに出力する。
【0085】
第3の温度センサ18は、第3の変圧用IGBT3cの動作温度を検出するセンサであり、検出値を第3温度検出信号として制御部13Aに出力する。また、第4の温度センサ19は、第4の変圧用IGBT3dの動作温度を検出するセンサであり、検出値を第4温度検出信号として制御部13Aに出力する。
【0086】
一方、制御部13Aは、第1実施形態の制御部13Aの機能に加えて、故障した変圧用IGBTを特定する機能を備える。この制御部13Aは、4つ(複数)の温度センサ16~19の検出値に基づいて故障した半導体スイッチング素子つまり第1~第4の変圧用IGBT3a~3dのいずれかを判定する。
【0087】
すなわち、制御部13Aは、偏流値Hを故障検知しきい値Rと比較することによりA相スイッチングレグあるいはB相スイッチングレグの故障を判定すると、後処理として故障と判定したスイッチングレグを構成する2つの変圧用IGBTのうち、いずれが故障したかを第1~第4温度検出信号に基づいて判定する。
【0088】
例えば、A相スイッチングレグを構成する第1の変圧用IGBT3aがOFF状態(開状態)に固定される故障(開故障)をした場合、第1の変圧用IGBT3aにはA相電流Iaが通電されなくなるので、動作温度が正常時よりも大幅に低下する。これに対して、故障していない他の第2~第4の変圧用IGBT3b~3dの動作温度には大きな変化は発生しない。
【0089】
制御部13Aは、このような第1~第4の変圧用IGBT3a~3dの動作温度を第1~第4温度検出信号に基づいて評価することにより、故障した変圧用IGBTを特定する。そして、制御部13Aは、故障した変圧用IGBTを上位制御装置に通知する。
【0090】
このような第2実施形態によれば、第1実施形態と同様にA相スイッチングレグとB相スイッチングレグにおける故障の誤検知を従来よりも低下させることが可能であることに加え、故障した変圧用IGBTを特定することが可能なので、昇降圧コンバータD1の修理を容易に行うことができる。
【0091】
なお、本開示は上記各実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形が考えられる。
(1)上記各実施形態では、第1、第2のチョッパ回路の動作状態を示す状態量として電流平均値Gを採用したが、本開示はこれに限定されない。電流平均値Gつまりリアクトル電流Iの平均値に代えてあるいは電流平均値Gに加えて、リアクトル電流Iの実効値や変圧比(昇圧比あるいは降圧比)を第1、第2のチョッパ回路の状態量とし、このような状態量に応じて故障検知しきい値Rを可変設定してもよい。
【0092】
(2)上記各実施形態では、平均電流検出部12で生成した電流平均値Gを状態量としたが、本開示はこれに限定されない。例えば、昇降圧コンバータD1の昇圧動作時における入力電流つまり組電池Pの出力電流(バッテリ電流)を検出する電流センサ(第2の電流センサ)を別途設け、当該第2の電流センサの検出値を状態量としてもよい。上記バッテリ電流は、リップル成分がリアクトル電流Iに比べて十分に小さいので、故障検知しきい値Rを可変設定するための状態量として採用することが可能である。
【0093】
また、昇降圧コンバータD1の昇圧動作時における出力電流つまりインバータD2の入力電流を検出する電流センサ(第2の電流センサ)を別途設け、当該第2の電流センサの検出値を状態量としてもよい。上記出力電流は、リップル成分がリアクトル電流Iに比べて十分に小さいので、故障検知しきい値Rを可変設定するための状態量として採用することが可能である。
【0094】
(3)上記各実施形態では、トランス2の一次巻線2aに流れる一次電流つまりA相スイッチングレグに流れるA相電流Iaと二次巻線2bに流れる二次電流つまりB相スイッチングレグに流れるB相電流Ibとの合計量を検出する電流センサ7を採用した。すなわち、この電流センサ7は、A相電流Ia及びB相電流Ibという2つの相電流の合成電流をリアクトル電流Iとして検出するものである。しかしながら、本開示における電流センサは、電流センサ7に限定されない。例えば、A相電流IaとB相電流Ibとを個別に検出する2つの電流センサを採用してもよい。
【0095】
(4)上記各実施形態では、本開示を2相変圧回路に適用した場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。すなわち、本開示は、2相変圧回路以外の多相変圧回路、例えば3相変圧回路や4相変圧回路、さらには5相構成以上の変圧回路にも適用することができる。
【0096】
(5)上記各実施形態では、半導体スイッチング素子としてIGBTを採用する昇降圧コンバータD1(多相変圧回路)に本開示を適用した場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。本開示は、IGBT以外の半導体スイッチング素子、例えばMOSトランジスタを採用する多相変圧回路にも適用可能である。
【0097】
(6)上記各実施形態では、多相変圧回路の一種である昇降圧コンバータD1に本開示を適用した場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。本開示は、昇圧動作のみを行う多相昇圧回路や降圧動作のみを行う多相降圧回路にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本開示は、電力変換装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0099】
A、A1 電力変換装置
D1 昇降圧コンバータ
D2 インバータ
D3 制御駆動回路
1 第1コンデンサ
2 トランス
2a 一次巻線
2b 二次巻線
3a~3d 変圧用IGBT
4 第2コンデンサ
5 一次電圧センサ
6 二次電圧センサ
7 電流センサ
8 U相電流センサ
9 V相電流センサ
10 W相電流センサ
11 偏流検出部
12 平均電流検出部
13 制御部
14、15 ゲート信号生成部