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特許7561987高い寸法安定性を有するポリイミドフィルム及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】高い寸法安定性を有するポリイミドフィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/02 20060101AFI20240927BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20240927BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240927BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B29C55/02
C08G73/10
C08J5/18 CFG
H05K1/03 610N
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023528935
(86)(22)【出願日】2021-11-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 KR2021095108
(87)【国際公開番号】W WO2022114938
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-05-15
(31)【優先権主張番号】10-2020-0159335
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520160738
【氏名又は名称】ピーアイ・アドバンスド・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユ,デゴン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ドンヨン
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-012827(JP,A)
【文献】特開2005-186574(JP,A)
【文献】国際公開第2008/146637(WO,A1)
【文献】特開2020-152765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 55/02
B29C 55/12
C08G 73/10
C08J 5/18
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃から400℃への昇温過程に続いて400℃から25℃への冷却過程を経る熱機械分析器(TMA)による寸法変化測定において下記式(1)を満たすポリイミドフィルムであって、
前記ポリイミドフィルムは100%乃至120%の範囲の延伸程度を有し、
該延伸は、前記ポリイミドフィルムのMD方向及びTD方向の延伸比率が等しい二軸延伸であり、かつ
該式(1)の値は、延伸程度が100%の場合には-32であり、かつ、延伸程度が120%の場合には-20であるポリイミドフィルム。
式(1)
-32μm≦TD方向の寸法測定値(冷却、50℃)-TD方向の寸法測定値(昇温、50℃)≦-20μm
(前記式1中、
TD方向の寸法測定値(冷却、50℃)は、冷却過程中に50℃で測定されたTD方向の寸法測定値であり、
TD方向の寸法測定値(昇温、50℃)は、昇温過程中に50℃で測定されたTD方向の寸法測定値である。)
【請求項2】
MD方向の熱膨張係数が2~6.5ppm/℃であり、TD方向の熱膨張係数が1~6ppm/℃である、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項3】
前記MD方向の熱膨張係数から前記TD方向の熱膨張係数を差し引いた値が0以上2.5ppm/℃以下である、請求項2に記載のポリイミドフィルム。
【請求項4】
弾性率が5GPa以上11GPa以下であり、
ガラス転移温度が360℃以上400℃以下である、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項5】
ピロメリト酸二無水物(PMDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a-BPDA)、ジフェニルスルホン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物(DSDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、p-ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、m-テルフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、p-テルフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2-ビス〔(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物(BPADA)、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物及び4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物よりなる群から選択される1種以上の二無水物酸成分と、
パラフェニレンジアミン(PPD)、メタフェニレンジアミン、3,3’-ジメチルベンジジン、2,2’-ジメチルベンジジン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、3,5-ジアミノ安息香酸(DABA)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(メチレンジアミン)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジカルボキシ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,3’-ジメトキシベンジジン、2,2’-ジメトキシベンジジン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、1,3-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-Q)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)-4-トリフルオロメチルベンゼン、3,3’-ジアミノ-4-(4-フェニル)フェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジ(4-フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスル
フィド)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス〔2-(4-アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4-ビス〔2-(3-アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4-ビス〔2-(4-アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、3,3’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2-ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(BAPP)、2,2-ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン及び2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンよりなる群から選択される1種以上のジアミン成分をイミド化して反応させることにより得られる、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項6】
3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)及びピロメリト酸二無水物(PMDA)のうちの1種以上を含む二無水物酸成分と、
パラフェニレンジアミン(PPD)及び4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)のうちの1種以上を含むジアミン成分と、を含むポリアミック酸溶液をイミド化反応させて得られる、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項7】
前記二無水物酸成分の総含有量100モル%に対して、前記3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の含有量が40モル%以上60モル%以下であり、前記ピロメリト酸二無水物の含有量が40モル%以上60モル%以下であり、
前記ジアミン成分の総含有量100モル%に対して、前記パラフェニレンジアミンの含有量が80モル%以上90モル%以下であり、前記4,4’-ジアミノジフェニルエーテルの含有量が10モル%以上20モル%以下である、請求項6に記載のポリイミドフィルム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のポリイミドフィルムを製造する方法であって、
二無水物酸成分とジアミン成分から得られるポリアミック酸溶液を提供する工程と、
前記ポリアミック酸溶液を支持体上に流延塗布し、加熱してポリアミック酸溶液の自己
支持性フィルムを製造する工程と、
前記自己支持性フィルムをイミド化し、延伸してポリイミドフィルムを製造する工程と、を含む、ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載のポリイミドフィルムと電気伝導性の金属箔とを含む、フレキシブル金属箔積層板。
【請求項10】
前記金属箔がコーティング、スパッタリングまたは蒸着によって形成される、請求項9に記載のフレキシブル金属箔積層板。
【請求項11】
請求項10に記載のフレキシブル金属箔積層板を含む、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属箔がコーティング、スパッタリングまたは蒸着された後にも平坦性が維持されてシワが発生しないポリイミドフィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド(polyimide、PI)は、強直な芳香族主鎖と共に化学的安定性に非常に優れたイミド環を基に、有機材料の中でも最高レベルの耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、耐化学性、耐候性を有する高分子材料である。
ポリイミドフィルムは、上述した特性が要求される様々な電子デバイスの素材として脚光を浴びている。
ポリイミドフィルムが適用される微小電子部品の例としては、電子製品の軽量化と小型化に対応できるように回路集積度の高いフレキシブルな薄型回路基板が挙げられ、ポリイミドフィルムは、特に薄型回路基板の絶縁フィルムとして広く用いられている。
前記薄型回路基板は、絶縁フィルム上に金属箔を含む回路が形成されている構造が一般的である。このような薄型回路基板を、広い意味でフレキシブル金属箔積層板(Flexible Metal Foil Clad Laminate)と称し、金属箔として薄い銅板を用いるときにはより狭い意味でフレキシブル銅張積層板(Flexible Copper Clad Laminate、FCCL)と称することもある。
【0003】
フレキシブル金属箔積層板の製造方法としては、例えば、(i)金属箔上にポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を流延(casting)又は塗布した後、イミド化するキャスティング法、(ii)スパッタリング(Sputtering)によってポリイミドフィルム上に直接金属層を設けるメタライジング法、及び(iii)熱可塑性ポリイミドを介してポリイミドフィルムと金属箔を熱と圧力で接合させるラミネート法が挙げられる。
特に、メタライジング法は、例えば、厚さ20~38μmのポリイミドフィルム上に銅などの金属をスパッタリングし、タイ(Tie)層、シード(Seed)層を順次蒸着することにより、フレキシブル金属箔積層板を生産する方法であり、回路パターンのピッチ(pitch)が35μm以下の超微細回路を形成させるのに有利な点があり、COF(chip on film)用フレキシブル金属箔積層板を製造するのに広く用いられている。
最近、メタライジング法などによって製造されたフレキシブル金属箔積層板に用いられるポリイミドフィルムは、金属箔の積層後、平坦性が低下してシワが発生するという問題が生じている。
したがって、金属箔の積層後にも平坦性が維持されるポリイミドフィルムが切実に求められている。
以上の背景技術に記載された事項は、発明の背景に対する理解を助けるためのものであって、当該技術の属する分野における通常の知識を有する者に既に知られている従来技術ではない事項を含むことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】韓国特許第10-1375276号公報
【文献】韓国公開特許第2016-0002402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、金属箔がコーティング、スパッタリングまたは蒸着された後にも平坦性が維持されてシワが発生しないポリイミドフィルムを提供することを目的とする。
しかし、本発明が解決しようとする課題は、上述した課題に限定されず、上述していない別の課題は、以降の記載から当業者には明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明の一態様は、25℃から400℃への昇温過程に続いて400℃から25℃への冷却過程を経る熱機械分析器(TMA)による寸法変化測定において、下記式(1)を満たす、ポリイミドフィルムを提供する。
式(1)
TD方向の寸法測定値(冷却、50℃)-TD方向の寸法測定値(昇温、50℃)<0μm
前記式1中、
TD方向の寸法測定値(冷却、50℃)は、冷却過程中に50℃で測定されたTD方向の寸法測定値であり、
TD方向の寸法測定値(昇温、50℃)は、昇温過程初期に50℃で測定されたTD方向の寸法測定値である。
【0007】
本発明の他の態様は、前記ポリイミドフィルムを製造する方法であって、二無水物酸成分とジアミン成分から得られるポリアミック酸溶液を提供する工程と、前記ポリアミック酸溶液を支持体上に流延塗布し、加熱してポリアミック酸溶液の自己支持性フィルムを製造する工程と、前記自己支持性フィルムをイミド化し、延伸してポリイミドフィルムを製造する工程と、を含む、ポリイミドフィルムの製造方法を提供する。
【0008】
本発明の別の態様は、前記ポリイミドフィルムと電気伝導性の金属箔とを含む、フレキシブル金属箔積層板を提供する。
【0009】
本発明の別の態様は、前記フレキシブル金属箔積層板を含む、電子部品を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、特定の寸法変化範囲を有するポリイミドフィルムを提供することにより、金属箔の積層後にも平坦性に優れたポリイミドフィルムを提供する。
このようなポリイミドフィルムは、優れた平坦性のポリイミドフィルムが要求される様々な分野、例えば、メタライジング法によって製造されるフレキシブル金属箔積層板、またはこのようなフレキシブル金属箔積層板を含む電子部品に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本願の実施例1及び実施例2のフィルムの25℃から400℃への昇温過程に続いて400℃から25℃への冷却過程を経る熱機械分析器(TMA)による寸法変化測定の結果グラフである。
図2】本願の比較例1~比較例3のフィルムの25℃から400℃への昇温過程に続いて400℃から25℃への冷却過程を経る熱機械分析器(TMA)による寸法変化測定の結果グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書及び請求の範囲に使用された用語または単語は、通常的且つ辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者はその自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に即して、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈されるべきである。
したがって、本明細書に記載されている実施形態の構成は、本発明の最も好適な一つの
実施形態に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替することができる様々な均等物と変形例が存在し得ることを理解すべきである。
【0013】
本明細書における単数の表現は、文脈上明らかに別段の意味を持たない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、ステップ、構成要素、またはこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、構成要素またはこれらの組み合わせの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
【0014】
本明細書において、「二無水物酸」は、その前駆体または誘導体を含むことが意図されるが、これらは、技術的には二無水物酸ではなくてもよいが、それにも拘らず、ジアミンと反応してポリアミック酸を形成し、このポリアミック酸は再びポリイミドに変換できる。
【0015】
本明細書において、「ジアミン」は、その前駆体または誘導体を含むものと意図されるが、これらは、技術的にはジアミンではなくてもよいが、それにも拘らず、二無水物と反応してポリアミック酸を形成し、このポリアミック酸は再びポリイミドに変換できる。
【0016】
本明細書において、量、濃度、または他の値またはパラメータが範囲、好適な範囲、または好適な上限値及び好適な下限値の列挙として与えられる場合、範囲が別途開示されるかに関係なく、任意の一対の上限範囲限界値または好適な値及び任意の下限範囲値または好適な値で形成されたすべての範囲を具体的に開示するものと理解されるべきである。
数値の範囲が本明細書で言及される場合、別段の記載がない限り、その範囲はその終点及びその範囲内のすべての整数及び分数を含むものと意図される。本発明の範疇は、範囲を定義するときに言及される特定の値に限定されないものと意図される。
【0017】
本発明の一実施形態によるポリイミドフィルムは、25℃から400℃への昇温過程に続いて400℃から25℃への冷却過程を経る熱機械分析器(TMA)による寸法変化測定において、下記式(1)を満たす。
式(1)
TD方向(フィルムの幅方向、MD方向と垂直)の寸法測定値(冷却、50℃)-TD方向の寸法測定値(昇温、50℃)<0μm
前記式1中、
TD方向の寸法測定値(冷却、50℃)は、冷却過程中に50℃で測定されたTD方向の寸法測定値であり、
TD方向の寸法測定値(昇温、50℃)は、昇温過程初期に50℃で測定されたTD方向の寸法測定値である。
【0018】
すなわち、本発明のポリイミドフィルムは、前記式(1)に示すように、TD方向の寸法測定値(冷却、50℃)からTD方向の寸法測定値(昇温、50℃)を差し引いた値が負数である。
このような負数の計算値は、ポリイミドフィルムが昇温後の冷却過程でTD方向に収縮するためである。
【0019】
好ましくは、本発明のポリイミドフィルムの前記式(1)によって計算された値が-5μm以下であり、より好ましくは、前記式(1)による値が-10μm以下であり、さらに好ましくは、前記式(1)による値が-20μm以下であり得る。
【0020】
前記式(1)によって計算された値が負数であるポリイミドフィルムは、コーティング、スパッタリングまたは蒸着による金属箔の積層後にもポリイミドフィルムの平坦性が維持され、シワが殆ど発生しなかった。
【0021】
前記式(1)によって計算された値が0以上であるポリイミドフィルムは、コーティング、スパッタリングまたは蒸着による金属箔の積層後にポリイミドフィルムの平坦性が低下し、シワが多数発生した。
このような0以上の計算値は、ポリイミドフィルムが昇温後の冷却過程でTD方向に膨張するためである。
【0022】
ここで、前記熱機械分析器(TMA)による寸法変化測定は、下記の条件で行われた。
測定モード:引張モード、荷重5g、
試料長さ:15mm、
試料幅:4mm、
昇温開始温度:25℃、
昇温終了温度:400℃(400℃での維持時間はなし)、
冷却終了温度:25℃、
高温及び冷却速度:10℃/min、
測定雰囲気:窒素。
【0023】
本発明のポリイミドフィルムのMD方向(連続製膜方向;フィルムの長手方向、TD方向と垂直)の熱膨張係数(Coefficient of Termal Expansion、CTE)が2~6.5ppm/℃であり、TD方向の熱膨張係数が1~6ppm/℃であり得る。
【0024】
また、前記MD方向の熱膨張係数から前記TD方向の熱膨張係数を差し引いた値が0以上2.5ppm/℃以下であり得る。
【0025】
その他にも、前記ポリイミドフィルムの弾性率は5GPa以上11GPa以下であり、ガラス転移温度は360℃以上400℃以下であり得る。
【0026】
一方、本発明のポリイミドフィルムは、ピロメリト酸二無水物(PMDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a-BPDA)、ジフェニルスルホン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物(DSDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、p-ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、m-テルフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、p-テルフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2-ビス〔(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物(BPADA)、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物及び4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物よりなる群から選択される1種以上の二無水物酸成分と、
パラフェニレンジアミン(PPD)、メタフェニレンジアミン、3,3’-ジメチルベンジジン、2,2’-ジメチルベンジジン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、3,5-ジアミノ安息香酸(DABA)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(メチレンジアミン)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジカルボキシ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,3’-ジメトキシベンジジン、2,2’-ジメトキシベンジジン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、1,3-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-Q)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)-4-トリフルオロメチルベンゼン、3,3’-ジアミノ-4-(4-フェニル)フェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジ(4-フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス〔2-(4-アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4-ビス〔2-(3-アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4-ビス〔2-(4-アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、3,3’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3-
(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2-ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(BAPP)、2,2-ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン及び2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンよりなる群から選択される1種以上のジアミン成分をイミド化して反応させることにより得られる。
【0027】
前記ポリイミドフィルムは、好ましくは、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)及びピロメリト酸二無水物(PMDA)のうちの1種以上を含む二無水物酸成分と、パラフェニレンジアミン(PPD)及び4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)のうちの1種以上を含むジアミン成分と、を含むポリアミック酸溶液をイミド化反応させて得られる。
【0028】
また、前記二無水物酸成分の総含有量100モル%に対して、前記3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の含有量が40モル%以上60モル%以下であり、前記ピロメリト酸二無水物の含有量が40モル%以上60モル%以下であり、
前記ジアミン成分の総含有量100モル%に対して、前記パラフェニレンジアミンの含有量が80モル%以上90モル%以下であり、前記4,4’-ジアミノジフェニルエーテルの含有量が10モル%以上20モル%以下であり得る。
【0029】
本発明におけるポリアミック酸の製造は、例えば、
(1)ジアミン成分全量を溶媒中に入れ、その後、二無水物酸成分をジアミン成分と実質的に同モルとなるように添加して重合する方法、
(2)二無水物酸成分全量を溶媒中に入れ、その後、ジアミン成分を二無水物酸成分と実質的に同モルとなるように添加して重合する方法、
(3)ジアミン成分中の一部成分を溶媒中に入れ、反応成分に対して二無水物酸成分中の一部成分を約95~105モル%の割合で混合した後、残りのジアミン成分を添加し、これに連続して残りの二無水物酸成分を添加することにより、ジアミン成分と二無水物酸成分とが実質的に同モルとなるようにして重合する方法、
(4)二無水物酸成分を溶媒中に入れ、反応成分に対してジアミン化合物中の一部成分を95~105モル%の割合で混合した後、他の二無水物酸成分を添加し、残りのジアミン成分を添加することにより、ジアミン成分と二無水物酸成分とが実質的に同モルとなるように重合する方法、
(5)溶媒中で一部のジアミン成分と一部の二無水物酸成分をいずれか一つが過量となるように反応させ、第1組成物を形成し、別の溶媒中で一部のジアミン成分と一部の二無水物酸成分をいずれか一つが過量となるように反応させて第2組成物を形成した後、第1組成物と第2組成物とを混合し、重合を完結する方法であって、このとき、第1組成物を形成するときにジアミン成分が過剰である場合、第2組成物では二無水物酸成分を過量とし、第1組成物における二無水物酸成分が過剰である場合、第2組成物ではジアミン成分を過量として、第1組成物と第2組成物とを混合して、これらの反応に用いられる全体ジアミン成分と二無水物酸成分とが実質的に同モルとなるようにして重合する方法などが挙げられる。
【0030】
一つの具体例において、本発明によるポリイミドフィルムの製造方法は、
二無水物酸成分とジアミン成分から得られるポリアミック酸溶液を提供する工程と、
前記ポリアミック酸溶液を支持体上に流延塗布し、加熱してポリアミック酸溶液の自己支持性フィルムを製造する工程と、
前記自己支持性フィルムをイミド化し、延伸してポリイミドフィルムを製造する工程と、を含むことができる。
【0031】
前記延伸は、二軸延伸であり、MD方向とTD方向の延伸比率が等しくなるように張力を加える。
このような延伸比率は、前記TMA測定によって前記ポリイミドフィルムのMD方向とTD方向のバランス(balance)を介して確認することができる。
すなわち、延伸を介して得られた前記ポリイミドフィルムのMD方向とTD方向のバランスは、MD方向の熱膨張係数から前記TD方向の熱膨張係数を差し引いた値が0以上2.5ppm/℃以下であることを示す。
【0032】
本発明では、上述したポリアミック酸の重合方法を任意(random)の重合方式として定義することができ、上述した過程で製造された本発明のポリアミック酸から製造されたポリイミドフィルムは、平坦性を高める本発明の効果を最大化させる観点から好ましく適用できる。
ただし、前記重合方法は、上述した高分子鎖内の繰り返し単位の長さが相対的に短く製造されるので、二無水物酸成分に由来するポリイミド鎖が有するそれぞれの優れた特性を発揮するには限界があり得る。したがって、本発明において好ましく用いられるポリアミック酸の重合方法は、ブロック重合方式であり得る。
【0033】
一方、ポリアミック酸を合成するための溶媒は、特に限定されるものではなく、ポリアミック酸を溶解させる溶媒であれば、いずれの溶媒も用いることができるが、アミド系溶媒であることが好ましい。
具体的には、前記有機溶媒は、有機極性溶媒であってもよく、具体的には、非プロトン性極性溶媒(aprotic polar solvent)であってもよく、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-ピロリドン(NMP)、ガンマブチロラクトン(GBL)、ジグリム(Diglyme)よりなる群から選択された1種以上であってもよいが、これらに限定されるものではなく、必要に応じて単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
一つの例において、前記有機溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド及びN,N-ジメチルアセトアミドが特に好ましく使用できる。
【0034】
また、ポリアミック酸製造工程では、摺動性、熱伝導性、COVID-19耐性、ヌープ硬さなどのフィルムの様々な特性を改善する目的で充填材を添加することもできる。添加される充填材は、特に限定されないが、好ましい例としては、シリカ、酸化チタン、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、マイカなどが挙げられる。
充填材の粒径は、特に限定されるものではなく、改質すべきフィルム特性と添加する充填材の種類によって決定すればよい。一般に、平均粒径は、0.05~100μm、好ましくは0.1~75μm、さらに好ましくは0.1~50μm、特に好ましくは0.1~25μmである。
粒径がこの範囲を下回ると、改質効果が現れ難くなり、この範囲を上回ると、表面性が大きく損なわれるか或いは機械的特性が大きく低下する場合がある。
【0035】
また、充填材の添加量に対しても特に限定されるものではなく、改質すべきフィルム特性や充填材の粒径などによって決定すればよい。一般に、充填材の添加量は、ポリイミド100重量部に対して0.01~100重量部、好ましくは0.01~90重量部、さら
に好ましくは0.02~80重量部である。
充填材の添加量がこの範囲を下回ると、充填材による改質効果が現れ難く、この範囲を上回ると、フィルムの機械的特性が大きく損なわれる可能性がある。充填材の添加方法は、特に限定されるものではなく、公知のいずれの方法を用いてもよい。
【0036】
本発明の製造方法において、ポリイミドフィルムは、熱イミド化法及び化学的イミド化法によって製造できる。
また、熱イミド化法と化学的イミド化法とが併行される複合イミド化法によって製造されることもできる。
【0037】
前記熱イミド化法とは、化学的触媒を排除し、熱風や赤外線乾燥機などの熱源でイミド化反応を誘導する方法である。
前記熱イミド化法は、前記ゲルフィルムを100~600℃の範囲の可変的な温度で熱処理して、ゲルフィルムに存在するアミック酸基をイミド化することができ、詳細には、200~500℃、さらに詳しくは300~500℃で熱処理して、ゲルフィルムに存在するアミック酸基をイミド化することができる。
ただし、ゲルフィルムを形成する過程においても、アミック酸の一部(約0.1モル%~10モル%)がイミド化されてもよく、このために、50℃~200℃の範囲の可変的な温度でポリアミック酸組成物を乾燥させることができ、これも前記熱イミド化法の範疇に含まれることが可能である。
【0038】
化学的イミド化法の場合、当該技術分野における公知の方法に従って脱水剤及びイミド化剤を用いて、ポリイミドフィルムを製造することができる。
【0039】
複合イミド化法の一例として、ポリアミック酸溶液に脱水剤及びイミド化剤を投入した後、80~200℃、好ましくは100~180℃で加熱して、部分的に硬化及び乾燥させた後、200~400℃で5~400秒間加熱することにより、ポリイミドフィルムを製造することができる。
【0040】
本発明は、上述したポリイミドフィルムと電気伝導性の金属箔とを含む、フレキシブル金属箔積層板を提供する。
使用する金属箔としては、特に限定されるものではないが、電子機器又は電気機器用途に本発明のフレキシブル金属箔積層板を用いる場合には、例えば、銅又は銅合金、ステンレス鋼又はその合金、ニッケル又はニッケル合金(42合金も含む)、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含む金属箔であってもよい。
【0041】
一般的なフレキシブル金属箔積層板では、圧延銅箔、電解銅箔という銅箔が多く用いられ、本発明においても好ましく用いることができる。また、これらの金属箔の表面には防錆層、耐熱層または接着層が塗布されていてもよい。
【0042】
本発明において前記金属箔の厚さについては特に限定されるものではなく、その用途に応じて十分な機能を発揮することが可能な厚さであればよい。
【0043】
本発明によるフレキシブル金属箔積層板は、前記ポリイミドフィルムの少なくとも一面に金属箔がラミネート、コーティング、スパッタリング又は蒸着されて得られる。
【0044】
また、前記フレキシブル金属箔積層板を2layer用のFCCLとして使用することができ、特に、携帯電話、ディスプレイ(LCD、PDP、OLEDなど)などに使用することができ、FPCB、COF用に使用することができる。
【0045】
前記フレキシブル金属箔積層板を含む電子部品は、例えば、携帯端末用通信回路、コンピュータ用通信回路、または航空宇宙用通信回路であってもよいが、これに限定されない。
【実施例
【0046】
以下、本発明の具体的な製造例及び実施例によって、本発明の作用及び効果をより詳細に説明する。ただし、このような製造例及び実施例は、発明の例示として提示されたものに過ぎず、これによって本発明の権利範囲が限定されるものではない。
【0047】
製造例:ポリイミドフィルムの製造
本発明のポリイミドフィルムは、次の当該技術分野における公知の通常の方法で製造できる。まず、有機溶媒に前述の二無水物酸とジアミン成分とを反応させてポリアミック酸溶液を得る。
この場合、溶媒は、一般にアミド系溶媒であって、非プロトン性極性溶媒(Aprotic solvent)、例えば、N,N’-ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、N-メチル-ピロリドン、又はこれらの組み合わせを使用することができる。
【0048】
前記二無水物酸とジアミン成分の投入形態は、粉末、塊及び溶液の形態で投入することができ、反応初期には粉末形態で投入して反応を行った後、重合粘度調節のために溶液形態で投入することが好ましい。
【0049】
得られたポリアミック酸溶液は、イミド化触媒及び脱水剤と混合されて支持体に塗布され得る。
【0050】
使用される触媒の例としては第三級アミン類(例えば、イソキノリン、β-ピコリン、ピリジンなど)があり、脱水剤の例としては無水酸があるが、これらに限定されない。また、上記で使用される支持体としては、ガラス板、アルミニウム箔、循環ステンレスベルト又はステンレスドラムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
前記支持体上に塗布されたフィルムは、乾燥空気及び熱処理によって支持体上でゲル化される。
前記ゲル化されたフィルムは、支持体から分離されて熱処理されることにより、乾燥及びイミド化が完了する。
前記熱処理を済ませたフィルムは、一定の張力下で熱処理され、製膜過程から発生したフィルム内部の残留応力が除去され得る。
【0052】
具体的には、攪拌機及び窒素注入・排出管を備えた反応器に窒素を注入させながら、DMFを500ml投入し、反応器の温度を30℃に設定した後、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(50mol%)、ピロメリト酸二無水物(50mol%)、パラフェニレンジアミン(13mol%)及び4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(87mol%)を、調節された組成比及び定められた順序で投入して完全に溶解させる。その後、窒素雰囲気下で40℃に反応器の温度を上げて加熱しながら120分間攪拌し続けて一次反応粘度1,500cPのポリアミック酸を製造した。
【0053】
このように製造したポリアミック酸を最終粘度100,000~120,000cPとなるように攪拌した。
準備された最終ポリアミック酸に触媒及び脱水剤の含有量を調節して添加した後、アプリケーターを用いてポリイミドフィルムを製造した。
【0054】
実施例及び比較例
前記製造例によって製造され、但し、下記表1に示すように、実施例及び比較例の延伸程度を調節して、ポリイミドフィルムを製造した。
すなわち、実施例1の延伸程度を100%としたとき、実施例2の延伸程度は120%であり、比較例1~3の延伸程度はそれぞれ150%、140%及び70%であった。
【0055】
【表1】
【0056】
製造されたポリイミドフィルムの熱膨張係数(coefficient of thermal expansion、CTE)、ガラス転移温度、弾性率、及び金属箔積層後の平坦性を測定した。
また、製造されたポリイミドフィルム上にスパッタリングを介して金属層を形成した後、コーティング後のフィルム平坦性(シワ生成量)を確認した。
【0057】
(1)寸法変化の測定
25℃から400℃への昇温過程に続いて400℃から25℃への冷却過程を経る熱機械分析器(TMA)による寸法変化を測定した。
【0058】
(2)熱膨張係数の測定
熱膨張係数(CTE)は、TA社製の熱機械分析器(thermomechanical analyzer)Q400モデルを使用し、ポリイミドフィルムを4mmの幅、20mmの長さに切った後、窒素雰囲気下で0.05Nの張力を加えながら、10℃/minの速度で常温から400℃まで昇温した後、再び10℃/minの速度で冷却しながら50℃~200℃区間の傾きを測定した。
【0059】
(3)フィルム平坦性の測定
目視検査によって製造されたポリイミドフィルムのMD方向へのシワを確認した。
【0060】
(4)ガラス転移温度の測定
ガラス転移温度(T)は、DMAを用いて各フィルムの損失弾性率と貯蔵弾性率を求め、これらのタンジェントグラフにおける変曲点をガラス転移温度として測定した。
【0061】
(5)弾性率の測定
ASTM D882の規定に基づいてポリイミドフィルムの弾性率を測定した。
【0062】
実施例1及び2の寸法変化測定結果グラフをそれぞれ図1a、図1bに示した。また、比較例1~3の寸法変化測定結果グラフをそれぞれ図2a、図2b及び図2cに示した。
図1に示すように、実施例1及び2の式(1)による計算値は、負数に該当した。また、図2に示すように、比較例1~3の式(1)による計算値は、正数に該当した。
【0063】
コーティング後のフィルム平坦性の測定結果、式(1)による計算値が負数である実施例
1及び2のポリイミドフィルムは、式(1)による計算値が正数である比較例1~3のポリイミドフィルムに比べてフィルムの平坦性が非常に優れた(シワの生成量が全くないか殆どなかった)。
【0064】
本発明であるポリイミドフィルム及びポリイミドフィルムの製造方法の実施例は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する当業者が本発明を容易に実施し得るようにする好適な実施例に過ぎず、上述した実施例に限定されるものではないので、本発明の権利範囲が限定されるものではない。したがって、本発明の真正な技術的保護範囲は、添付された特許請求の範囲の技術的思想によって定められるべきである。また、本発明の技術的思想から外れない範囲内で種々の置換、変形及び変更が可能であるのが当業者にとっては明らかであり、当業者によって容易に変更可能な部分も本発明の権利範囲に含まれるのは自明である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、特定の寸法変化範囲を有するポリイミドフィルムを提供することにより、金属箔の積層後にも平坦性に優れたポリイミドフィルムを提供する。
このようなポリイミドフィルムは、優れた平坦性のポリイミドフィルムが要求される様々な分野、例えば、メタライジング法によって製造されるフレキシブル金属箔積層板またはこのようなフレキシブル金属箔積層板を含む電子部品に適用可能である。
図1
図2