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特許7561988自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラ
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/098 20060101AFI20240927BHJP
   F16L 21/02 20060101ALI20240927BHJP
   B60S 1/48 20060101ALN20240927BHJP
   B62D 5/06 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
F16L37/098
F16L21/02 Z
B60S1/48 Z
B62D5/06 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023529075
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(86)【国際出願番号】 JP2022007379
(87)【国際公開番号】W WO2022190866
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】102021004374-1
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BR
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】シウバ,パウロ ジオバネ
(72)【発明者】
【氏名】ノゲイラ,ロドルフォ ジ・ジェズス
(72)【発明者】
【氏名】リマ,チアゴ モンテイロ
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-313010(JP,A)
【文献】特開昭62-228789(JP,A)
【文献】欧州特許第01972846(EP,B1)
【文献】独国特許出願公開第102014107530(DE,A1)
【文献】米国特許第07690694(US,B2)
【文献】米国特許第06155607(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 1/00-59/22
B60S 1/48
B62D 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラ(1)であって、
前記クイックカプラ(1)が、互いに連結された2つの係止部材(21,22)を含むことにより、該クイックカプラ(1)が前記自動車の流体輸送チューブに嵌合可能とされており、該クイックカプラ(1)が該自動車の流体輸送チューブに回転防止安全システムを提供すると共に、
前記係止部材(21)が、
外面(211a)と内面(211b)を有する環状のベース(211)と、
前記内面(211b)によって規定される隙間によって互いに離隔配置された少なくとも4つの外歯(212)と、
前記内面(211b)に含まれる、少なくとも4つの自動ロック式ソケット(214)によって規定される隙間によって、互いに離隔配置された少なくとも4つの内歯(213)と、を含み、
前記外歯(212)と前記内歯(213)が、重ならないように、互いに同心円状に配置されると共に、前記環状のベース(211)の前記内面(211b)から垂直に延びている一方、
前記係止部材(22)が、
外面(221a)と内面(221b)を有する環状のベース(221)と、
前記内面(221b)に含まれる、少なくとも4つの自動ロック式ソケット(224)によって規定される隙間によって、互いに離隔配置された少なくとも4つの内歯(223)と、を含み、
前記内歯(223)が前記環状のベース(221)の前記内面(221b)から垂直に延びていると共に、
前記係止部材(22)の前記内歯(223)が、前記係止部材(21)の前記外歯(212)に対して重ね合わされることにより、該係止部材(22)の該内歯(223)が、該係止部材(21)の前記内歯(213)に対して位置合わせされることを特徴とする、
自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラ(1)。
【請求項2】
前記自動車の流体輸送チューブが、互いに結合された雄型継手管(3)と雌型継手管(4)とを含み、
前記クイックカプラ(1)が、前記係止部材(21)の前記雄型継手管(3)への連結及び前記係止部材(22)の前記雌型継手管(4)への連結によって該雄型継手管(3)及び該雌型継手管(4)に嵌合可能とされており、
前記クイックカプラ(1)が嵌合されることによって、前記雄型継手管(3)と前記雌型継手管(4)の同時かつ不可逆的な結合が行われることを特徴とする、
請求項1に記載の自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラ(1)。
【請求項3】
前記係止部材(21)の各前記外歯(212)が、長方形状の部分(2121a)と三角形状の部分(2121b)を有する側面外形(2121)を呈し、該三角形状の部分(2121b)が、該係止部材(21)と前記係止部材(22)を連結するための凹所を有していると共に、
前記係止部材(21)の各前記内歯(213)が、長方形状の部分(2131a)と三角形状の部分(2131b)を有する側面外形(2131)を呈し、該三角形状の部分(2131b)が、該係止部材(21)と前記雄型継手管(3)の連結を可能にする凹所を有しており、
前記係止部材(22)の各前記内歯(223)が、長方形状の部分(2231a)と三角形状の部分(2231b)の両方を有する側面外形(2231)を呈し、該三角形状の部分(2231b)が、該係止部材(22)と前記雌型継手管(4)の連結を可能にする凹所を有していることを特徴とする、
請求項に記載の自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラ(1)。
【請求項4】
前記係止部材(21)の各前記自動ロック式ソケット(214)が、前記係止部材(22)の各前記内歯(223)の前記三角形状の部分(2231b)の嵌合を許容すると共に、
前記係止部材(22)の各前記自動ロック式ソケット(224)が、前記係止部材(21)の各前記内歯(213)の前記三角形状の部分(2131b)の嵌合を許容することを特徴とする、
請求項に記載の自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラ(1)。
【請求項5】
前記雄型継手管(3)が、より大径とされた端部(31)まで延びる管状体を含み、該端部(31)が、Oリング(5)が配置される少なくとも1つの溝(31a)をその周囲に有していると共に、
前記雄型継手管(3)の前記管状体と前記端部(31)との間には、より大径とされて該雄型継手管(3)の軸及びその該端部(31)の軸の両方に対して垂直なディスク(32)が設けられており、
前記ディスク(32)には、前記雄型継手管(3)の長手方向軸に垂直で、該ディスク(32)の表面に放射状に配された少なくとも3つの湾曲形状の窪み(32a)が設けられていることを特徴とする、
請求項2~のいずれか1項に記載の自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラ(1)。
【請求項6】
前記雌型継手管(4)が、より大径とされたセクター(41)まで延びる、より小径とされた管状体を含み、
前記セクター(41)が、凹所を含み、該凹所が、その端部において、周縁部(42)によって前記雌型継手管(4)の軸に対して垂直に囲まれており、
前記周縁部(42)には、前記雌型継手管(4)の長手方向軸に垂直で、前記湾曲形状の窪み(32a)に対応する少なくとも3つの三角形状の窪み(42a)が設けられていることを特徴とする、
請求項に記載の自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラ(1)。
【請求項7】
前記雄型継手管(3)が、前記端部(31)を介して前記雌型継手管(4)に結合し、
前記セクター(41)の前記凹所が、該端部(31)を完全に覆うまで嵌合しており、
前記ディスク(32)は、該ディスク(32)が完全に覆われるまで前記周縁部(42)に嵌め入れられることを特徴とする、請求項に記載の自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラ(1)。
【請求項8】
前記クイックカプラ(1)の前記回転防止安全システムが、前記雄型継手管(3)の前記湾曲形状の窪み(32a)及び前記雌型継手管(4)の前記三角形状の窪み(42a)によって提供され、
前記雄型継手管(3)が前記雌型継手管(4)に結合するときに、前記湾曲形状の窪み(32a)と前記三角形状の窪み(42a)が互いに噛み合うことを特徴とする、
請求項又はに記載の自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラ(1)。
【請求項9】
前記雄型継手管(3)及び前記雌型継手管(4)の両方が、非可撓性材料又は可撓性材料で優先的に形成されていることを特徴とする、請求項2~のいずれか1項に記載の自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラ(1)。
【請求項10】
前記雄型継手管(3)及び前記雌型継手管(4)の両方が、拡管工程により形成され、続いて、2回目の拡管が行われ、その後、前記溝(31a)を形成するために、形状圧延工程が実施されることを特徴とする、請求項のいずれか1項、又は請求項のいずれか1項に従属する場合の請求項に記載の自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラ(1)。
【請求項11】
力(F1)が前記雄型継手管(3)に加えられると共に、力(F2)が前記雌型継手管(4)に加えられることによって、前記同時かつ不可逆的な結合が維持され、該力(F1)及び該力(F2)は任意の反対方向に加えられており、該同時かつ不可逆的な結合が、該雄型継手管(3)と該雌型継手管(4)との間に最大距離(d)を許容していると共に、
前記力(F1)が、0<(F1)≦2400N間の値を呈し、
前記力(F2)が、0<(F2)≦2400N間の値を呈し、
前記最大距離(d)が、0~2.2mmの範囲内であることを特徴とする、
請求項2~1のいずれか1項に記載の自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラ(1)。
【請求項12】
力(F1)が前記雄型継手管(3)に加えられること、又は力(F2)が前記雌型継手管(4)に加えられることによって、前記同時かつ不可逆的な結合が維持され、該同時かつ不可逆的な結合が、該雄型継手管(3)と該雌型継手管(4)との間に最大距離(d)を許容しており、該最大距離(d)が0~2.2mmの範囲内であると共に、
前記力(F1)が、0~2400N間の値を呈する、又は
前記力(F2)が、0~2400N間の値を呈することを特徴とする、
請求項2~1のいずれか1項に記載の自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、迅速連結器に関し、より具体的には、自動車の流体輸送チューブに使用される革新的なクイックカプラに関するものである。本明細書で提示されるクイックカプラは、熱可塑性ポリマー材料で形成された2つの係止部材を備え、この係止部材を使用して、ボルトや工具などの他の器具を使用することなく自動車用チューブを結合し、強固かつ安全に結合を維持するために、特定の技術的特徴をもって開発されたものである。
【背景技術】
【0002】
自動車産業に従事する専門家に広く知られているように、自動車チューブシステムは、例えば、エアコンホース、油圧ステアリングホース、及びその同等物のために流体を輸送するなど、いくつかの機能を有する。このようなチューブシステムは、流体を輸送するための複雑な構造を備え、自動車内の他の部品と連携するように構成された多様な種類のチューブやホースを含む。従って、自動車チューブシステムには、チューブ、ホース、及び同様の部品を結合するためのコネクタやカプラが必要となる。このようなコネクタの周知の実施例は、雄型と雌型の継手を有するアルミニウム製の2つのフランジを、ボルトとナットで結合したものである。
【0003】
しかし、このような種類のコネクタは、その製造と使用に関して、まだ克服されていない問題がいくつか存在する。このようなクイックカプラは、アルミニウム製のフランジを有する上述のコネクタのように、通常、金属材料で形成されているため、製造するには、ろう付けのような複雑で積極的な冶金工程を利用する必要がある。
【0004】
取り付けに関して、従来技術に記載されているいくつかのコネクタでは、トルクレンチ、ボルト、係止ピンのような、特定の工具や組み付ける部品が必要となる。そのため、組み付けが複雑で時間がかかると共に、ボルトやナットで結合されているため、分解が困難で、メンテナンスに労力を要する。さらに、そのためには、部品を固定するための工具を使用する必要があり、また、自動車チューブシステムのチューブやホースを強固かつ安全に結合する必要もある。
【0005】
このような問題を回避するために、従来技術はいくつかの解決策を提示しており、特に中国登録実用新案第204358306号には、熱可塑性材料で形成され、位置決め突起を備えた弾力性のあるタングと内壁に位置決め突起を備えたスリーブを含む車両用エアコンチューブのクイックカプラが記載されている。
【0006】
別の解決策は、ブラジル国特許公開第10 2017 003694-4号に提示されており、この文献は、同じく熱可塑性材料で形成されるクイックカプラに関するものであり、雄型継手管、少なくともアダプタ、少なくともプラスチッククランプ、少なくとも係止継手、雌型継手管、及び複数のOリングを含む。従来技術における当該文献に開示された技術は、射出成形工程、コールドスタンプ、及び機械的変形と干渉によって製造された部品を提示しており、特にろう付け工程の結果として発生する故障のリスクを低減できる場合がある。さらに、この技術は、特定の工具、ボルト、係止ピンを使用することなく、手で組み付けと分解を行うことができる。このような解決策は、本発明の特許と同じ出願人によって所有されていることに注目すべきである。従って、本明細書で提示される発明は、このような従来技術文献に開示された解決策を改善する目的も有している。
【0007】
しかしながら、従来技術に記載されている、熱可塑性材料製の迅速コネクタを開示する解決策は、アルミニウムフランジを有するコネクタに存在する必須要素である、チューブの回転防止安全システムを欠いている。このような回転防止システムがないと、自動車チューブシステムを構成するチューブが同一軸上で異なる方向に回転する可能性があり、これにより、当該自動車チューブシステムが損なわれ、輸送される液体の漏れが生じ、その結果、エアコンや油圧ステアリングなどの、当該液体に依存する装置で問題が生じる可能性がある。さらに、このような回転防止システムがないと、チューブがねじれ、当初の入念に設計された構成が変化し、他の自動車部品が当該チューブに損傷を与える可能性がある。
【0008】
回転防止安全システムの欠如によって生じる上述の問題は、そのような自動車が使用された場合、特に、自動車チューブシステムの障害によって油圧ステアリングが損傷した場合には、少なくとも、自動車の使用者に顕著な問題をもたらし、重大な事故につながる。
【0009】
露呈したものを考慮すると、従来技術は、自動車チューブシステムのチューブを結合する迅速かつ効率的な方法を提供し、また、その構造及び構成に対する損傷を回避する安全な方法を提供するために、熱可塑性材料で形成された2つの係止部材と回転防止安全システムを備えた、自動車チューブ用クイックカプラの恩恵を明らかに受けるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の主な目的は、金属チューブ、特にエアコンホース、油圧ステアリングホース、及びその同等物などの流体輸送用の自動車チューブに使用される、革新的で使いやすく、高効率なクイックカプラを開示することであり、その主な機能は、電動ドライバーのような補助装置を使用することなく、チューブ端部の部品を迅速に、手で操作できる方法で結合することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するために、本発明のクイックカプラは、互いに連結された2つの係止部材を含み、自動車チューブに嵌合可能とされている。そして、前記係止部材は、クイックカプラに回転防止安全システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラの全体が組み付けられた状態を示す斜視図
図2】自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラの分解斜視図
図3】自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラの分解下方斜視図
図4】自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラの側面図
図5】自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラの縦断面側面図
図6】自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラの縦断面側面図及びその部分詳細図
図7】自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラの正面図
図8】自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラの背面図
図9】自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラの雄型及び雌型継手管を除いた状態を示す斜視図
図10】自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラの雄型及び雌型継手管を除いた状態を示す後方斜視図
図11】自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラに含まれる2つの係止部材を示す分解斜視図
図12】自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラに含まれる2つの係止部材のうちの1つを示す後方斜視図
図13】自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラに含まれる2つの係止部材のうちの1つを示す斜視図
図14】自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラの雌型継手管の縦断面側面図
図15】自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラの雄型継手管の縦断面側面図
図16】自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラの雌型継手管の正面図であって、回転防止安全システムの窪みの詳細を示す図
図17】自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラの型継手管の正面図であって、回転防止安全システムの窪みの詳細を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書の簡単な説明に提示された目的に沿って、第1の態様では、本発明は、自動車の流体輸送チューブ用クイックカプラに関し、金属チューブ、特に自動車の流体輸送用チューブ、例えば、エアコンホース、油圧ステアリングホース及びその同等物に使用されるクイックカプラ(1)を含む。前記クイックカプラ(1)が、互いに連結された2つの係止部材(21,22)を含むことにより、該クイックカプラ(1)が前記自動車の流体輸送チューブに嵌合可能とされており、該クイックカプラ(1)が該自動車の流体輸送チューブに回転防止安全システムを提供する。
【0014】
本発明の一実施形態では、前記自動車の流体輸送チューブが、互いに結合された雄型継手管(3)と雌型継手管(4)とを含み、前記クイックカプラ(1)が、前記係止部材(21)の前記雄型継手管(3)への連結及び前記係止部材(22)の前記雌型継手管(4)への連結によって該雄型継手管(3)及び該雌型継手管(4)に嵌合可能とされており、前記クイックカプラ(1)が嵌合されることによって、前記雄型継手管(3)と前記雌型継手管(4)が同時かつ不可逆的に結合される。
【0015】
本発明の一実施形態では、前記係止部材(21)が、外面(211a)と内面(211b)を有する環状のベース(211)と、前記内面(211b)によって規定される隙間によって互いに離隔配置された少なくとも4つの外歯(212)と、前記内面(211b)に含まれる、少なくとも4つの自動ロック式ソケット(214)によって規定される隙間によって、互いに離隔配置された少なくとも4つの内歯(213)と、を含み、前記外歯(212)と前記内歯(213)が、重ならないように、互いに同心円状に配置されると共に、前記環状のベース(211)の前記内面(211b)から垂直に延びている。一方、前記係止部材(22)は、外面(221a)と内面(221b)を有する環状のベース(221)と、前記内面(221b)に含まれる、少なくとも4つの自動ロック式ソケット(224)によって規定される隙間によって、互いに離隔配置された少なくとも4つの内歯(223)と、を含み、前記内歯(223)が前記環状のベース(221)の前記内面(221b)から垂直に延びていると共に、前記係止部材(22)の前記内歯(223)が、前記係止部材(21)の前記外歯(212)に対して重ね合わされることにより、該係止部材(22)の該内歯(223)が、該係止部材(21)の前記内歯(213)に対して位置合わせされる。
【0016】
本発明の一実施形態では、前記係止部材(21)の各前記外歯(212)が、長方形状の部分(2121a)と三角形状の部分(2121b)を有する側面外形(2121)を呈し、該三角形状の部分(2121b)が、該係止部材(21)と前記係止部材(22)を連結するための凹所を有している。より具体的には、三角形状の部分(2121b)の凹所は、係止部材(22)の外面(221a)と直接的に当接することによって、上記の連結を提供する。さらに、前記係止部材(21)の各前記内歯(213)が、長方形状の部分(2131a)と三角形状の部分(2131b)を有する側面外形(2131)を呈し、該三角形状の部分(2131b)が、該係止部材(21)と前記雄型継手管(3)の連結を可能にする凹所を有している。同様に、前記係止部材(22)の各前記内歯(223)が、長方形状の部分(2231a)と三角形状の部分(2231b)の両方を有する側面外形(2231)を呈し、該三角形状の部分(2231b)が、該係止部材(22)と前記雌型継手管(4)の連結を可能にする凹所を有している。
【0017】
本発明の一実施形態では、前記係止部材(21)の各前記自動ロック式ソケット(214)が、前記係止部材(22)の各前記内歯(223)の前記三角形状の部分(2231b)の嵌合を許容する。同様に、前記係止部材(22)の各前記自動ロック式ソケット(224)が、前記係止部材(21)の各前記内歯(213)の前記三角形状の部分(2131b)の嵌合を許容する。
【0018】
本発明の一実施形態では、前記係止部材(21,22)は、PA11、PA66、PA6などの熱可塑性材料で形成されている。その点において、係止部材(21,22)を構成する熱可塑性材料は、環状のベース(211)と歯(212,213)との間の接合、及び環状のベース(221)と歯(223)との間の接合に可撓性を提供する。係止部材(21,22)は、好ましくは、射出成形工程によって製造される。
【0019】
本発明の別の態様では、前記雄型継手管(3)が、より大径とされた端部(31)まで延びる管状体を含み、該端部(31)が、Oリング(5)が配置される少なくとも1つの溝(31a)をその周囲に有している。前記雄型継手管(3)の前記管状体と前記端部(31)との間には、より大径とされて該雄型継手管(3)の軸及びその該端部(31)の軸の両方に対して垂直なディスク(32)が設けられており、前記ディスク(32)には、前記雄型継手管(3)の長手方向軸に垂直で、該ディスク(32)の表面に放射状に配された少なくとも3つの湾曲形状の窪み(32a)が設けられている。
【0020】
本発明の別の態様では、前記雌型継手管(4)が、より大径とされたセクター(41)まで延びる、より小径とされた管状体を含む。当該セクター(41)には、凹所が設けられており、該凹所が、その端部において、周縁部(42)によって前記雌型継手管(4)の軸に対して垂直に囲まれている。当該周縁部(42)には、前記雌型継手管(4)の長手方向軸に垂直で、前記湾曲形状の窪み(32a)に対応する少なくとも3つの三角形状の窪み(42a)が設けられている。
【0021】
そして、前記雄型継手管(3)が、前記端部(31)を介して前記雌型継手管(4)に結合し、該端部(31)は、前記セクター(41)の前記凹所が、該端部(31)を完全に覆うまで該セクター(41)の該凹所に結合する。同様に、前記結合は、前記周縁部(42)が前記ディスク(32)を完全に覆うように行われる。前記雄型継手管(3)及び前記雌型継手管(4)の両方が、金属のような非可撓性材料で優先的に形成されている。あるいは、前記雄型継手管(3)及び前記雌型継手管(4)の両方が、ゴムやプラスチックのような可撓性材料で形成されてもよい。また、前記雄型継手管(3)及び前記雌型継手管(4)の両方が、拡管工程により形成され、続いて、2回目の拡管が行われ、その後、前記溝(31a)を形成するために、形状圧延工程が実施される。
【0022】
雄型継手管(3)と雌型継手管(4)とを同時かつ不可逆的に結合する(結合を固定する)ために、クイックカプラ(1)を使用することになる。このような状況において、係止部材(21)の内歯(213)が雄型継手管(3)のディスク(32)に結合すると共に、係止部材(22)の内歯(223)が雌型継手管(4)の周縁部(42)に結合する。従って、クイックカプラ(1)の係止部材(21)が雄型継手管(3)に結合されると共に、係止部材(22)が雌型継手管(4)に結合され、係止部材(21,22)が外歯(212)によって互いに連結されることから、クイックカプラ(1)が嵌合された状態で、雄型継手管(3)と雌型継手管(4)が不可逆的に強固に接続された状態を維持する。クイックカプラ(1)は、係止部材(21)の雄型継手管(3)への連結、及び係止部材(22)の雌型継手管(4)への連結により、内歯(213,223)、特にそれぞれの側面外形(2131,2231)の長方形状の部分(2131a,2231a)が可撓性を有することから、雄型継手管(3)及び雌型継手管(4)に迅速に嵌合する。そのためには、内歯(213,223)を動かすために、当該係止部材(21,22)をそれぞれ雄型継手管及び雌型継手管(3,4)に押し付けるだけでよく、内歯(213,223)は初期位置に復帰する。これにより、本発明のクイックカプラ(1)は、簡単かつ効率的な方法で、自動車用流体輸送チューブをしっかりと固定する。
【0023】
好ましい実施形態におけるクイックカプラ(1)の嵌合のために、係止部材(21)は、最初に、雌型継手管(4)の軸に対して垂直に、周縁部(42)に連結される。これにより、係止部材(22)がディスク(32)に連結するために、端部(31)がセクター凹部(41)に嵌め入れられる。
【0024】
特に、クイックカプラ(1)の上述の嵌合は、とりわけ、内歯(213)の側面外形(2131)が三角形状の部分(2131b)を備え、内歯(223)の側面外形(2231)が三角形状の部分(2231b)を備えていることにより行われる。内歯(213)及び内歯(223)は、それぞれ、環状のベース(211)及び環状のベース(221)に接続される長手状の本体部分を有する。さらに、クイックカプラ(1)の上述の嵌合は、長方形状の部分(2131a,2231a)の存在によっても行われる。当該長方形状の部分(2131a,2231a)は、それぞれ、係止部材(21,22)の最も可撓性を有する部分である。従って、当該長方形状の部分(2131a,2231a)は、それぞれの内歯(213,223)の三角形状の部分(2131b,2231b)との組み合わせによって、周縁部(42)とディスク(32)の摺動及び嵌合を可能にし、かつ雄型継手管(3)と雌型継手管(4)の連結が解除されることを阻止する継手を構成している(即ち、嵌合されたクイックカプラ(1)の存在下で不可逆的な結合を構成している)。
【0025】
自動ロック式ソケット(214,224)の両方が存在することは、上述の同時かつ不可逆的な結合と協働する。これは、反対方向(水平又は傾斜の任意の方向)の力(F1)及び力(F2)が、雄型継手管(3)及び雌型継手管(4)の連結を解除するためにそれぞれに加えられたとき、当該自動ロック式ソケット(214,224)が当該連結解除を防止して、不可逆的な結合につながるからである。当該連結解除を防止する、このような不可逆的な結合における自動ロック式ソケット(214,224)の役割をよりよく例示するために、上述の、雄型継手管(3)及び雌型継手管(4)に対する力(F1)及び力(F2)の印加について、以下に、より詳細に説明する。
-力(F1)と力(F2)の反対方向(かつ任意の方向)への作用は、結果として係止部材(21,22)間の互いに対する引き合い運動を促進する。
-係止部材(21,22)の互いに対する引き合い運動の間、周縁部(42)は、係止部材(22)の各内歯(223)の三角形状の部分(2231b)の凹所のそれぞれに力を加える。その結果、各三角形状の部分(2231b)が係止部材(21)の対応する自動ロック式ソケット(214)の方へ移動する。
-係止部材(21,22)の互いに対する引き合い運動の間、ディスク(32)は、係止部材(21)の各内歯(213)の三角形状の部分(2131b)の凹所のそれぞれに力を加える。その結果、各三角形状の部分(2131b)が係止部材(22)の対応する自動ロック式ソケット(224)の方へ移動する。
-周縁部(42)及びディスク(32)によって加えられる当該力は、係止部材(21,22)の互いに対する引き合い運動の間に同時に発生する。
-各三角形状の部分(2231b)が係止部材(21)の対応する自動ロック式ソケット(214)に接触し、各三角形状の部分(2131b)が係止部材(22)の対応する自動ロック式ソケット(224)に接触すると、係止部材(21,22)の引き合い運動は停止する。これにより、当該自動ロック式ソケット(224)が三角形状の部分(2131b)を収容して、係止部材(21)の係止部材(22)に対する移動を停止させると共に、当該自動ロック式ソケット(214)が三角形状の部分(2231b)を収容して、係止部材(22)の係止部材(21)に対する移動を停止させる。
-係止部材(21,22)の引き合い運動が停止された直後に、周縁部(42)とディスク(32)との間の距離(d)を構成するキャビティ(C)が形成され、当該距離(d)は雄型継手管(3)と雌型継手管(4)との間の最大距離に相当し、当該最大距離によって雄型継手管(3)と雌型継手管(4)との間の結合が維持され、当該結合の維持が、かかる同時かつ不可逆な接合を表現したものであることを示している。
【0026】
本発明の一実施形態では、力(F1)及び力(F2)の両方が水平に、反対方向に併存する。
【0027】
本発明の一実施形態では、力(F1)が力(F2)のない状態で加えられ、即ち、力(F2)=0である。かかる構成において、クイックカプラ(1)の挙動は、本明細書に記載の、力(F1)及び(F2)の両方が併存する構成と同様である。
【0028】
本発明の一実施形態では、力(F2)が力(F1)のない状態で加えられ、即ち、力(F1)=0である。かかる構成において、クイックカプラ(1)の挙動は、本明細書に記載の、力(F1)及び(F2)の両方が併存する構成と同様である。
【0029】
本発明の一実施形態では、力(F1)は、力(F2)の存在下又は非存在下で、0~2400N間の値を呈する。
【0030】
本発明の一実施形態では、力(F2)は、力(F1)の存在下又は非存在下で、0~2400N間の値を呈する。
【0031】
本発明の一実施形態では、距離(d)は0~2.2mmの範囲内であり、(d)=0は、周縁部(42)がディスク(32)に当接している状態、即ち、力(F1)及び/又は力(F2)が加えられる前の構成を示す。一方、(d)>0の値は、キャビティ(C)が形成される構成を示す。
【0032】
本発明の別の実施形態では、雄型継手管(3)のOリング(5)がクイックカプラ(1)の密閉を行い、望ましくない不純物の侵入を阻止する。
【0033】
さらに、雄型継手管(3)の湾曲形状の窪み(32a)及び雌型継手管(4)の三角形状の窪み(42a)により、クイックカプラ(1)は、連結されるチューブに回転防止安全システムを提供する。これは、雄型継手管(3)が雌型継手管(4)に結合する際、湾曲形状の窪み(32a)と三角形状の窪み(42a)が合致すると、互いに嵌合するからである。そして、三角形状の窪み(42a)が湾曲形状の窪み(32a)を覆い、これにより、雄型継手管(3)及び/又は雌型継手管(4)は、互いに独立して回転することができない、即ち、異なる方向に回転することができない。従って、クイックカプラ(1)が嵌合されたチューブは損なわれることなく、長期間にわたって維持される。
【0034】
本開示は、本発明の適用を本明細書に記載された詳細に限定するものではなく、特許請求の範囲の範囲内で、他の実施形態に適用し、様々な方法で実施又は実行可能であることが理解されるべきである。本開示では特定の用語が使用されているが、そのような用語は、一般的かつ説明的な意味で解釈されるべきであり、それらを限定する目的で使用されているものではない。
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