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▶ ヴァレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】道路標示検出
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/931 20200101AFI20240927BHJP
   G01S 17/89 20200101ALI20240927BHJP
【FI】
G01S17/931
G01S17/89
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023531697
(86)(22)【出願日】2021-11-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(86)【国際出願番号】 EP2021082504
(87)【国際公開番号】W WO2022112175
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】102020131130.3
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508108903
【氏名又は名称】ヴァレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100208188
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 薫
(72)【発明者】
【氏名】マリオ、ロハス、キニョネス
(72)【発明者】
【氏名】マルク、フーバー
(72)【発明者】
【氏名】ビクトル、トルーソフ
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-105260(JP,A)
【文献】特開2015-199423(JP,A)
【文献】特開2007-316767(JP,A)
【文献】特開2017-220056(JP,A)
【文献】特開2003-036500(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0384304(US,A1)
【文献】GRUYER, Dominique et al.,Map-aided localization with lateral perception,2014 IEEE Intelligent Vehicles Symposium Proceedings,米国,IEEE,2014年07月17日,Pages: 674-680,インターネット: <URL: https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=6856528><DOI: 10.1109/IVS.2014.6856528>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/64
13/00 - 17/95
G01B 11/00 - 11/30
G01C 3/00 - 3/32
G06T 1/00 - 1/40
3/00 - 7/90
G06V 10/00 - 20/90
30/418
40/16
40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1測定タイミングにおける道路標示(17)を示す第1センサデータセットと、第2測定タイミングにおける前記道路標示(17)を示す第2センサデータセットとが、環境センサシステム(4)を使用することにより生成される、道路標示検出のための方法であって、
‐前記第1測定タイミングと前記第2測定タイミングとの間における前記道路標示(17)に対する前記環境センサシステム(4)の運動を特徴付ける少なくとも1つの運動パラメータが決定され、
‐演算ユニット(5)が、
‐前記第1センサデータセットに基づいて、前記第1測定タイミングにおける前記道路標示(17)を幾何学的に記述する第1観測状態ベクトルを生成し、
‐前記第2センサデータセットに基づいて、前記第2測定タイミングにおける前記道路標示(17)を幾何学的に記述する第2観測状態ベクトルを生成し、
‐前記少なくとも1つの運動パラメータおよび前記第1観測状態ベクトルに応じて、前記第2測定タイミングに対する予測状態ベクトルを演算し、
‐前記予測状態ベクトルおよび前記第2観測状態ベクトルに応じて、前記第2測定タイミングに対する補正状態ベクトルを生成する、
ように使用され、
‐前記演算ユニット(5)は、前記第1観測状態ベクトルに応じて、および多次元分布を記述する少なくとも1つのパラメータに応じて、前記第1測定タイミングに対する2つ以上の第1サンプリング状態ベクトルを生成するように使用され、
‐前記予測状態ベクトルは、前記2つ以上の第1サンプリング状態ベクトルに応じて演算される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記演算ユニット(5)は、前記第1センサデータセットに応じて第1多項式を決定して第1時間タイミングにおける前記道路標示(17)を近似するとともに、前記第2センサデータセットに応じて第2多項式を決定して第2時間タイミングにおける前記道路標示(17)を近似するように使用され、
前記第1観測状態ベクトルは前記第1多項式の係数を含み、前記第2観測状態ベクトルは前記第2多項式の係数を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記演算ユニット(5)は、
‐前記少なくとも1つの運動パラメータ、前記第1観測状態ベクトル、および前記予測状態ベクトルに応じて、前記第2測定タイミングに対する予測共分散行列を演算し、
‐前記予測共分散行列および前記第2観測状態ベクトルに応じて、第2測定タイミングに対する補正共分散行列を生成する、
ように使用される、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
‐それぞれの連続した測定タイミングにおける前記道路標示(17)を示す複数のセンサデータセットが、前記環境センサシステム(4)を使用して生成され、前記複数のセンサデータセットは、前記第1センサデータセットおよび前記第2センサデータセットを含み、
‐前記測定タイミングの各々に対して、それぞれの前記測定タイミングとそれぞれの後続の測定タイミングとの間における前記道路標示(17)に対する前記環境センサシステム(4)の前記運動を特徴付ける前記少なくとも1つの運動パラメータが決定され、
‐前記測定タイミングの各々に対して、前記演算ユニット(5)は、それぞれの前記測定タイミングにおける前記道路標示(17)を幾何学的に記述するそれぞれの観測状態ベクトルを、それぞれの前記センサデータセットに基づいて生成するように使用され、
‐最後の測定タイミングを除く前記測定タイミングの各々に対して、前記演算ユニット(5)は、
‐それぞれの前記少なくとも1つの運動パラメータおよびそれぞれの前記測定タイミングの前記観測状態ベクトルに応じて、それぞれの後続の測定タイミングに対する予測状態ベクトルを演算し、
‐それぞれの前記後続の測定タイミングに対する前記予測状態ベクトルと、それぞれの前記後続の測定タイミングの前記観測状態ベクトルとに応じて、それぞれの前記後続の測定タイミングに対する補正状態ベクトルを生成する、
ように使用される、
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
自動車を少なくとも部分的に自動的にガイドするための方法であって、
‐請求項1~のいずれか一項に記載の道路標示検出のための方法であって、前記環境センサシステム(4)が前記自動車(1)に装着される方法のステップと、
‐前記自動車(1)を、前記補正状態ベクトルに応じて、少なくとも部分的に自動的にガイドするステップと、
を備える方法。
【請求項6】
‐前記演算ユニット(5)は、前記補正状態ベクトルに応じて、前記自動車(1)の環境を表す電子マップデータを生成するように使用され、
‐前記自動車(1)は、前記電子マップデータに応じて、少なくとも部分的に自動的にガイドされる、
ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記自動車(1)を少なくとも部分的に自動的にガイドするための1つ以上の制御信号が、前記補正状態ベクトルに応じて生成される、
ことを特徴とする請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
第1測定タイミングにおける道路標示(17)を示す第1センサデータセットと、第2測定タイミングにおける前記道路標示(17)を示す第2センサデータセットと、を生成するように構成された環境センサシステム(4)を備える道路標示検出システムにおいて、
‐前記道路標示検出システム(2)は、前記第1測定タイミングと前記第2測定タイミングとの間における前記道路標示(17)に対する前記環境センサシステム(4)の運動を特徴付ける少なくとも1つの運動パラメータを決定するように構成された少なくとも1つの運動センサシステム(6)を含み、
‐前記道路標示検出システム(2)は演算ユニット(5)を含み、
前記演算ユニット(5)は、
‐前記第1センサデータセットに基づいて、前記第1測定タイミングにおける前記道路標示(17)を幾何学的に記述する第1観測状態ベクトルを生成し、
‐前記第2センサデータセットに基づいて、前記第2測定タイミングにおける前記道路標示(17)を幾何学的に記述する第2観測状態ベクトルを生成し、
‐前記少なくとも1つの運動パラメータおよび前記第1観測状態ベクトルに応じて、前記第2測定タイミングに対する予測状態ベクトルを演算し、
‐前記予測状態ベクトルおよび前記第2観測状態ベクトルに応じて、前記第2測定タイミングに対する補正状態ベクトルを生成する、
ように構成され、
‐前記演算ユニット(5)は、前記第1観測状態ベクトルに応じて、および多次元分布を記述する少なくとも1つのパラメータに応じて、前記第1測定タイミングに対する2つ以上の第1サンプリング状態ベクトルを生成するように構成され、
‐前記予測状態ベクトルは、前記2つ以上の第1サンプリング状態ベクトルに応じて演算される、
ことを特徴とする道路標示検出システム。
【請求項9】
前記環境センサシステム(4)は、ライダーシステムを含む、
ことを特徴とする請求項に記載の道路標示検出システム。
【請求項10】
請求項8または9に記載の道路標示検出システム(2)と、制御ユニットと、を備え、
前記制御ユニットは、前記補正状態ベクトルに応じて自動車(1)を少なくとも部分的に自動的にガイドするための1つ以上の制御信号を生成するように構成されている、電子車両ガイドシステム。
【請求項11】
請求項10に記載の電子車両ガイドシステム(3)、または請求項8または9に記載の道路標示検出システム(2)を備える自動車。
【請求項12】
命令を備えるコンピュータプログラムであって、
前記命令は、
‐請求項8または9に記載の道路標示検出システム(2)により実行されると、前記道路標示検出システム(2)に請求項1~のいずれか一項に記載の方法を実施させる
または、
‐請求項10に記載の電子車両ガイドシステム(3)により実行されると、前記電子車両ガイドシステム(3)に請求項5~7のいずれか一項に記載の方法を実施させる、
コンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のコンピュータプログラムを記憶する、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1測定タイミングにおける道路標示を示す第1センサデータセットと、第2測定タイミングにおける前記道路標示を示す第2センサデータセットとが、環境センサシステムを使用して生成される、道路標示検出のための方法に関する。さらに、本発明は、自動車を少なくとも部分的に自動的にガイドするための方法、道路標示検出システム、電子車両ガイドシステム、コンピュータプログラム、およびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
先進ドライバー支援システム、すなわちADAS、ならびに自動車を自動的または自律的にガイドするためのシステムは、自動車の種々の位置に装着されたカメラやライダーシステム等の環境センサシステムにより生成されたデータを利用している。特に、環境センサシステムが生成したデータは、車両が走行する道路上の道路標示を識別および検出するために使用される。道路標示の位置、形状、および種類は、自動または半自動運転機能にとって重要な入力となる。しかしながら、道路標示の検出、ひいては道路標示の検出結果を利用する後続の機能の信頼性は、外乱やノイズによって損なわれる可能性がある。
【0003】
US7,933,433B2は、車線マーカーを認識する装置が記載されている。この装置は、現在のサイクルに対して予想される車線の中心線位置、中心線形状、および幅に基づいて、車線マーカーに関するデータを抽出することができる。
【発明の概要】
【0004】
したがって、本発明の目的は、信頼性を向上させる、道路標示検出のための改良された概念を提供することである。
【0005】
この目的は、独立請求項のそれぞれの主題により達成される。さらなる実施態様および好適な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0006】
改良された概念によれば、道路標示検出のための方法が提供される。本方法において、第1測定タイミングにおける特に道路上に位置する道路標示を示す第1センサデータセットと、第2測定タイミングにおける前記道路標示を示す第2センサデータセットとが、特に前記道路を走行する自動車の環境センサシステムを使用することにより生成される。前記第1測定タイミングと前記第2測定タイミングとの間における前記道路標示に対する前記環境センサシステムの運動を特徴付ける少なくとも1つの運動パラメータが決定される。演算ユニットが、前記第1センサデータセットに基づいて、第1観測状態ベクトルを生成するように使用され、前記第1観測状態ベクトルは、前記第1測定タイミングにおける前記道路標示を幾何学的に記述する。前記演算ユニットは、前記第2センサデータセットに基づいて、前記第2測定タイミングにおける前記道路標示を幾何学的に記述する第2観測状態ベクトルを生成ように使用される。前記演算ユニットは、前記少なくとも1つの運動パラメータおよび前記第1観測状態ベクトルに応じて、前記第2測定タイミングに対する予測状態ベクトルを演算するように使用される。前記演算ユニットは、前記予測状態ベクトルおよび前記第2観測状態ベクトルに応じて、前記第2測定タイミングに対する補正状態ベクトルを生成するように使用される。
【0007】
道路標示は、車線標示または路面標示とも呼ばれ、例えば、単線、二重線、三重線等、単数または複数の直線または曲線を備え得る。単数または複数の線は連続的であってもよいし、途切れた線分を備えていてもよい。また、同一種類の線および/または異なる種類の線の組み合わせが、道路標示に含まれ得る。
【0008】
環境センサシステムは、当該環境センサシステムの環境を描写、表現、または画像化するセンサデータまたはセンサ信号を生成することができるセンサシステムとして理解され得る。例えば、カメラ、ライダーシステム、レーダーシステム、超音波センサシステム等が環境センサシステムとして考えられ得る。好適には、環境センサシステムは、カメラシステムまたはライダーシステムを備える。
【0009】
環境センサシステムは、第1測定タイミングおよび第2測定タイミングを含む時系列の離散測定タイミングに対応するそれぞれのセンサデータセットを生成し得る。各測定タイミングは、離散的な時点に対応し得る。しかしながら、使用される環境センサシステムのタイプにより、所定の測定タイミングの測定に一定の時間間隔が必要となる場合がある。例えば、環境センサシステムとしてのカメラの場合、各測定タイミングはそれぞれのビデオフレームに対応する。スキャン型ライダーシステムの場合、各測定タイミングは、スキャン期間等に対応し得る。
【0010】
第2測定タイミングは、第1測定タイミングに続く。特に第1測定タイミングに直接的に続く。一般に、環境センサシステムおよび車両は、第1測定タイミングと第2測定タイミングとの間に移動するため、環境センサシステムに対する道路標示の相対位置および/または配向が、第1測定タイミングと第2測定タイミングとの間で変化する。
【0011】
それぞれの観測状態ベクトルを生成するために、演算ユニットは、それぞれのセンサデータセットに応じて道路標示の幾何学的近似(approximation)を決定し得るとともに、近似に従う2つ以上のパラメータを、それぞれの観測状態ベクトルとして記憶し得る。道路標示の幾何学的近似は、例えば、センサシステムに厳密に関連付けられた所定の座標系で実施され得る。
【0012】
例えば、座標系は、縦軸、横軸、および法線軸により定義することができ、3つのすべての軸は互いに対して垂直である。ここで、縦軸および横軸は、例えば、路面に対してほぼ平行な平面を定義し得る。縦軸、横軸、および法線軸は、自動車のそれぞれの軸に同様に対応し得る、または、例えばセンサ較正により決定され得る所定の座標変換によってこれらの軸に変換され得る。
【0013】
道路標示を所定の座標系において近似するため、演算ユニットは、例えば多項式近似を実施し得る。例えば、道路標示は、二次の多項式により近似され得る。この場合、それぞれの多項式の係数は、道路標示または道路標示の所定の点の、座標系の軸のうちの1つ、例えば縦軸からの一定の位置またはオフセットに対応し得る。それぞれの多項式のさらなる係数は、それぞれの点における道路標示の方向および曲率に対応し得る。
【0014】
観測状態ベクトルは、例えば、近似の結果として得られる多項式係数、または多項式係数から導出される量を備え得る。
【0015】
少なくとも1つの運動パラメータは、例えば、車両の単数または複数の運動センサ、例えば、加速度センサ、ヨーレートセンサ等により、または運動センサの出力に応じて決定され得る。例えば、少なくとも1つの運動パラメータは、縦軸方向における環境センサシステムの縦方向速度、および/または横軸方向における環境センサシステムの横方向速度、および/または法線軸に対する環境センサシステムのヨーレートを備え得る。
【0016】
第1観測状態ベクトルに基づいて予測状態ベクトルを演算するために少なくとも1つの運動パラメータを考慮することにより、第1観測状態ベクトルは、少なくとも1つの運動パラメータにより定義される状態ダイナミクスに従う。次いで、予測状態ベクトルを、第2測定タイミングにおける実際の観測に応じて、すなわち、第2観測状態ベクトルに基づいて補正する。このようにして、観測状態ベクトルに不可避的に影響を及ぼす外乱やノイズによるエラーが低減され得る。この結果、運転支援機能や自立走行機能等の後続の適用に対する補正状態ベクトルの信頼性が、第2観測状態ベクトルよりも向上する。
【0017】
少なくとも1つの運動パラメータは、例えばノイズの影響を受け得る。これにより、状態ベクトルの予測の質が低下し得る。しかしながら、結果として予測状態が利用可能となることにより、第2測定タイミングにおける実際の観測に基づいて、すなわち、第2観測状態ベクトルに基づいて、状態ベクトルは補正され得る。したがって、少なくとも1つの運動パラメータをまったく測定できない場合でも、例えば、少なくとも1つの運動パラメータの過去の値または推定値を想定することにより、予測を実施することができる。
【0018】
特に、補正状態ベクトルは、道路標示検出の出力の一部とみなされ得る。第1測定タイミングおよび第2測定タイミングに関して説明した本方法のステップは、道路標示検出の出力に寄与する時系列の補正状態ベクトルを得るように、複数の連続した測定タイミングに対して反復的に、すなわち繰り返し実施され得る。このようにして、自動運転機能またはドライバー支援機能に関する特に信頼性の高い入力が提供される。
【0019】
道路標示をその基本となるパターンについて幾何学的に記述するそれぞれのパラメータにより表すことで、道路標示検出の出力が安定したものとなり得る。特に、状態ベクトルにより表された道路標示により、点群(ポイントクラウド)の点のようなセンサデータ自体の予測と比較して、信頼性の高い予測および補正が可能となる。換言すれば、従来の対象追跡に代えて、道路標示の状態を効果的に追跡することができる。
【0020】
道路標示検出のための方法のいくつかの実施例によれば、前記演算ユニットは、前記第1観測状態ベクトル、および多次元分布を記述する少なくとも1つのパラメータに応じて、前記第1測定タイミングに対する2つ以上の第1サンプリング状態ベクトルを生成するように使用される。前記予測状態ベクトルは、前記2つ以上の第1サンプリング状態ベクトルに応じて演算される。
【0021】
多次元分布を記述する少なくとも1つのパラメータは、例えば、観測された第1状態ベクトルの成分に含まれる量のそれぞれの分散および/または共分散を備え得る。例えば、演算ユニットは、各測定タイミングに対する、特に第1測定タイミングに対する共分散行列を決定してもよい。例えば、第1観測状態ベクトルをx=(a,b,...)として表すと、それぞれの共分散行列は以下のようになる:
【数1】
【0022】
ここで、共分散行列に含まれる
は、例えば、演算ユニットにより、第1測定タイミングに先立つ測定タイミングに対して環境センサシステムが生成したセンサデータセットに基づいて決定され得る。代替的または追加的に、
に対する値は、これらの値が例えば較正から前もって既知である場合、環境センサシステムにより出力され得る。両方のアプローチを組み合わせることも可能である。
【0023】
次に、2つ以上の第1サンプリング状態ベクトルは、例えば以下のようにパラメータ化することができる。
【数2】
ここで、λ=(α(n+κ)-n)はスケーリング・パラメータであり、nは状態ベクトルの次元数であり、αおよびkは、例えばxの成分により与えられ得る平均μからの点の広がりを制御する所定パラメータである。下付き文字iは、共分散行列Sのi番目の列ベクトルを選択する。
【0024】
このようにして、第1観測状態ベクトルは、第1測定タイミングに対する2つ以上の第1サンプリング状態ベクトルとともに、多次元分布を記述する少なくとも1つのパラメータα、κにより記述される対応する分布に対する母集団を形成する。第2測定タイミングに対する予測状態ベクトルを計算するために、第1観測状態ベクトルおよび2つ以上の第1サンプリング状態ベクトルを備える第1の測定タイミングに対する母集団は、少なくとも1つの運動パラメータに応じて、第2測定タイミングに投影され得る。
【0025】
このようにして、センサデータセットにおけるエラーや外乱による影響を効率的に最小とすることができる。特に、観測状態ベクトルの成分の実際の分布が、ガウス分布に従う必要はない。
【0026】
いくつかの実施例によれば、前記演算ユニットは、前記第1センサデータセットに応じて第1多項式を決定して前記第1時間タイミングにおける前記道路標示を近似するとともに、前記第2センサデータセットに応じて第2多項式を決定して前記第2時間タイミングにおける前記道路標示を近似するように使用される。前記第1観測状態ベクトルは前記第1多項式の係数を含む、特に第1多項式のすべての係数を含む。前記第2観測状態ベクトルは前記第2多項式の係数を含む、特に第2多項式のすべての係数を含む。
【0027】
第1多項式および第2多項式は、例えば1次以上の多項式であり、好ましくは2次である。この場合、第1多項式および第2の多項式の係数は、それぞれ一定のオフセット、方向および曲率に関係すると理解され得る。
【0028】
演算ユニットは、適合アルゴリズムを実施して、第1データセットおよび第2データセットにそれぞれ応じた第1多項式および第2多項式を決定し得る。このようにして、道路標示のかなり正確な推定を、高価な演算アプローチを伴うことなく得ることができる。特に、多項式の係数により道路標示を表すことは、環境センサシステムの生の出力を追跡することに比較してより効率的である。
【0029】
いくつかの実施例によれば、前記演算ユニットは、前記少なくとも1つの運動パラメータ、前記第1観測状態ベクトル、および前記予測状態ベクトルに応じて、前記第2測定タイミングに対する予測共分散行列を演算するように使用される。演算ユニットは、前記予測共分散行列および前記第2観測状態ベクトルに応じて、第2測定タイミングに対する補正共分散行列を生成するように使用される。
【0030】
道路標示検出の出力は、補正共分散行列と、可能であれば、さらなる測定タイミングに対するそれぞれの補正共分散行列と、を備え得る。
【0031】
補正共分散行列は、道路標示を記述するパラメータの広がりと分布を評価するための適切な手段、ひいては、ドライバー支援機能または自律運転のための機能において使用するための測定結果の信頼性を評価する手段を提供する。
【0032】
第2時間タイミングに関する予測状態ベクトルに関して説明したように、第2測定タイミングに対する予測共分散行列も、2つ以上の第1サンプリング状態ベクトルに応じて演算され得る。
【0033】
いくつかの実施例によれば、それぞれの連続した測定タイミングにおける前記道路標示を示す複数のセンサデータセットが、前記環境センサシステムを使用して生成され、前記複数のセンサデータセットは、前記第1センサデータセットおよび前記第2センサデータセットを含む。前記測定タイミングの各々に対して、それぞれの前記測定タイミングとそれぞれの後続の測定タイミングとの間における前記道路標示に対する前記環境センサシステムの前記運動を特徴付ける前記少なくとも1つの運動パラメータが決定される。前記測定タイミングの各々に対して、前記演算ユニットは、それぞれの前記測定タイミングにおける前記道路標示を幾何学的に記述するそれぞれの観測状態ベクトルを、それぞれの前記センサデータセットに基づいて生成するように使用される。前記測定タイミングの各々に対して、または最後の測定タイミングを除く前記測定タイミングの各々に対して、前記演算ユニットは、それぞれの前記の測定タイミングとそれぞれの前記後続の測定タイミングとの間のそれぞれの前記少なくとも1つの運動パラメータに応じて、およびそれぞれの前記測定タイミングの前記観測状態ベクトルに応じて、それぞれの後続の測定タイミングに対する予測状態ベクトルを演算するように使用される。前記測定タイミングの各々に対して、または最後の測定タイミングを除く前記測定タイミングの各々に対して、前記演算ユニットは、それぞれの前記後続の測定タイミングに対する前記予測状態ベクトルと、それぞれの前記後続の測定タイミングの前記観測状態ベクトルとに応じて、それぞれの後続の測定タイミングに対する補正状態ベクトルを生成するように使用される。
【0034】
第1観測状態ベクトルおよび第2観測状態ベクトル、ならびに第1測定タイミングおよび第2測定タイミングに関する説明は、複数の連続する測定タイミングの各測定タイミングおよびそのそれぞれの後続の測定タイミングに類似的に適用され得る。特に、最後の測定タイミングを除いて、各測定タイミングは、正確に1つのそれぞれの後続の測定タイミングを有する。このため、道路標示検出方法の結果として、時系列の補正状態ベクトルが得られる。
【0035】
類似的に、時系列の補正共分散行列も、それぞれのさらなる実施例において得られ得る。
【0036】
改良された概念によれば、自動車を少なくとも部分的に自動的にガイドするための方法が、同様に提供される。この目的のために、改良された概念による道路標示検出のための方法が実施され、前記環境センサシステムが前記自動車に装着される。前記自動車は、前記補正状態ベクトルに応じて、特に車両の電子車両ガイドシステムにより、少なくとも部分的に自動的にガイドされる。
【0037】
特に、演算ユニットは、自動車に、例えば電子車両ガイドシステムに含まれる。
【0038】
電子車両ガイドシステムは、車両を完全に自動的、または完全に自律的な態様において、特に車両のドライバーまたはユーザによる手動介入または制御を必要とせずにガイドするように構成された電子システムとして理解され得る。車両は、ステアリング操作、減速操作および/または加速操作、ならびに道路交通の監視および記録、対応する反応等、必要なすべての機能を自動的に実施する。特に、電子車両ガイドシステムは、SAE J3016分類のレベル5に従った完全自動運転モードまたは完全自律運転モードを実施することができる。また、電子車両ガイドシステムは、部分的な自動運転または部分的な自律運転のためにドライバーを支援する先進運転支援システム(ADAS)としても実現され得る。特に、電子車両ガイドシステムは、SAE J3016分類のレベル1から4に従って、部分自動運転モードまたは部分自律運転モードを実現し得る。ここでおよび以下において、SAE J3016は、2018年6月付けのそれぞれの規格を指す。
【0039】
したがって、車両を少なくとも部分的に自動的にガイドすることは、SAE J3016分類のレベル5に従った完全自動運転モードまたは完全自律運転モードに従って車両をガイドすることを含み得る。車両を少なくとも部分的に自動的にガイドすることは、SAE J3016分類のレベル1から4に従った部分自動運転モードまたは部分自律運転モードに従って車両をガイドすることを含み得る。
【0040】
自動車を少なくとも部分的に自動的にガイドすることは、例えば、自動車の横方向制御を含み得る。
【0041】
自動車を少なくとも部分的に自動的にガイドするための方法のいくつかの実施例によれば、前記演算ユニットは、前記補正状態ベクトルに応じて、前記自動車の環境を表す電子マップデータを生成するように使用される。
【0042】
いくつかの実施例によれば、前記自動車は、前記電子マップデータに応じて、少なくとも部分的に自動的にガイドされる、またはさらなる自動車が、前記電子マップデータに応じて、少なくとも部分的に自動的にガイドされる。
【0043】
このようにして、高精細マップであるHD-mapのような電子マップデータを生成する、特に信頼性の高い方法が提供される。
【0044】
いくつかの実施例によれば、前記自動車を少なくとも部分的に自動的にガイドするための単数または複数の制御信号が、特に前記電子車両ガイドシステムの制御ユニットを使用して、前記補正状態ベクトルに応じて、または前記電子マップデータに応じて生成される。
【0045】
単数または複数の制御信号は、例えば、自動車の運動を制御する単数または複数のそれぞれのアクチュエータに供給され得る。
【0046】
改良された概念によれば、道路標示検出システムが、同様に提供される。道路標示検出システムは、第1測定タイミングにおける道路標示を示す第1センサデータセットと、第2測定タイミングにおける前記道路標示を示す第2センサデータセットと、を生成するように構成された環境センサシステムを備える。前記道路標示検出システムは、前記第1測定タイミングと前記第2測定タイミングとの間における前記道路標示に対する前記環境センサシステムの運動を特徴付ける少なくとも1つの運動パラメータを決定するように構成された少なくとも1つの運動センサシステムを備える。前記道路標示検出システムは、演算ユニットを備える。前記演算ユニットは、前記第1所定セグメントに基づいて、前記第1測定タイミングにおける前記道路標示を幾何学的に記述する第1観測状態ベクトルを生成するとともに、前記第2センサデータセットに基づいて、前記第2測定タイミングにおける前記道路標示を幾何学的に記述する第2観測状態ベクトルを生成するように構成される。前記演算ユニットは、前記少なくとも1つの運動パラメータおよび前記第1観測状態ベクトルに応じて、前記第2測定タイミングに対する予測状態ベクトルを演算するとともに、前記予測状態ベクトルおよび前記第2観測状態ベクトルに応じて、前記第2測定タイミングに対する補正状態ベクトルを生成するように構成される。
【0047】
改良された概念による道路標示検出システムのいくつかの実施例によれば、前記環境センサシステムは、ライダーシステムを備える。
【0048】
このような実施例において、第1センサデータセットおよび第2センサデータセットは、ライダーシステムのセンサ信号に基づいて生成されたそれぞれの点群(ポイントクラウド)を備え得る。
【0049】
道路標示検出システムのさらなる実施例は、改良された概念に従う道路標示検出のための方法、および改良された概念に従う自動車を少なくとも部分的に自動的にガイドするための方法から直接得られ、その逆もそれぞれ同様である。特に、道路標示検出システムは、改良された概念に従う方法を実施するように構成され得る、または改良された概念に従う方法を実施する。
【0050】
改良された概念によれば、改良された概念による道路標示検出システムを備えた電子車両ガイドシステムが、同様に提供される。電子車両ガイドシステムは、前記補正状態ベクトルに応じて自動車を少なくとも部分的に自動的にガイドするための単数または複数の制御信号を生成するように構成された制御ユニットを備える。
【0051】
ここで、演算ユニットは制御ユニットを備え得る、または、制御ユニットと演算ユニットとは別個に実現され得る。
【0052】
改良された概念によれば、改良された概念による電子車両ガイドシステムまたは改良された概念による道路標示検出システムを備える自動車が、同様に提供される。
【0053】
改良された概念によれば、第1命令を備える第1コンピュータプログラムが、同様に提供される。第1命令または第1コンピュータプログラムが改良された概念による道路標示システムによりそれぞれ実行されると、第1命令は、道路標示システムに、改良された概念による道路標示検出のための方法を実施させる。
【0054】
改良された概念によれば、第2命令を備える第2コンピュータプログラムが、同様に提供される。第2命令または第2コンピュータプログラムが改良された概念による電子車両ガイドシステムによりそれぞれ実行されると、第2命令は、電子車両ガイドシステムに、改良された概念による自動車を少なくとも部分的に自動的にガイドするための方法を実施させる。
【0055】
改良された概念によれば、コンピュータ読み取り可能な記録媒体が、同様に提供される。コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、改良された概念による第1コンピュータプログラム、および/または改良された概念による第2コンピュータプログラムを記憶する。
【0056】
本発明のさらなる特徴は、特許請求の範囲、図面および図面の説明から明らかである。説明において上述した特徴および特徴の組み合わせ、ならびに図面の説明において後述する特徴および特徴の組み合わせ、および/または図面に単独で示された特徴は、それぞれ指定された組み合わせにおいて改善された概念に包含されるだけでなく、他の組み合わせにおいても包含され得る。したがって、改善された概念の実施態様が包含され、開示されるが、これらの実施態様は、図面に明示的に示されず、説明されないことがあるが、説明された実施態様から分離された特徴の組み合わせから生じ、生成することができる。最初に定式化された請求項の全ての特徴を有していない実施態様および特徴の組み合わせも、改良された概念に包含され得る。さらに、特許請求の範囲の関係で規定された特徴の組み合わせを超える、または逸脱する実施態様および特徴の組み合わせも、改良された概念に包含され得る。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1図1は、改良された概念による電子車両ガイドシステムを備える自動車を概略的に示す。
図2図2は、環境センサシステムの例示的な実施例を概略的に示す。
図3図3は、環境センサシステムの例示的なさらなる実施例を概略的に示す。
図4図4は、ライダーの点群の例を概略的に示す。
図5図5は、道路標示を幾何学的に近似する可能性を概略的に示す。
図6図6は、例示的な道路標示の時系列の状態パラメータを示す。
図7図7は、図6のパラメータの分布を示す。
図8図8は、さらに例示的な道路標示の時系列の状態パラメータを示す。
図9図9は、図8のパラメータ分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は、自動車1を少なくとも部分的に自動的にガイドするための電子車両ガイドシステム3を搭載した自動車1を示す。電子車両ガイドシステム3は、改良された概念による道路標示検出システム2を備えている。
【0059】
道路標示検出システム2は、例えばライダーシステムとして実現された環境センサシステム4を備えている。道路標示検出システム2は、環境センサシステム4に接続した演算ユニット5と、演算ユニット5に接続した単数または複数の運動センサ6と、をさらに備えている。運動センサ6は、単数または複数の加速度センサ、および/またはヨーレートセンサ等を備え得る。
【0060】
図2は、ライダーレーザスキャナとしての環境センサシステム4の例示的な実施例の構成を概略的に示す。図2の左側において発光フェーズが示され、右側において検出フェーズが示されている。
【0061】
環境センサシステム4は、パルス光9を車両1の環境中に発光するように構成された例えば単数または複数の赤外レーザ光源である発光ユニット7を備えている。この目的のために、例えば回転可能なミラーである変調ユニット8が、変調ユニット8の位置に応じて光パルス9を異なる水平方向に偏向するように配置されている。最初にコリメートされたレーザ光9は、焦点がぼけていてもよい。この目的は、非ゼロの方向角を有するビームを生成して、光9が環境中の立体角度範囲10をカバーすることである。
【0062】
センサシステム4は、検出ユニット11をさらに備えている。検出ユニット11は、例えば、範囲10のそれぞれの部分から衝突する光9の反射部分を収集し得るとともに、検出した反射光を対応する検出器信号に変換し得る光検出器のグループまたはアレイを含んでいる。演算ユニット5は、検出器信号を評価して、環境における反射点のそれぞれの位置、およびこの位置の環境センサシステム4からの距離を、例えば飛行時間(TOF、Time of Flight)測定により測定し得る。
【0063】
この結果、図4に概略的に示す点群(ポイントクラウド)16が提供される。点群16は、球面座標系において出力される測定値からなる。飛行時間測定により、それぞれの径方向距離が得られる。変調ユニット8の角度位置により、水平角または方位角が決定される。変調ユニット8に対するそれぞれの検出器12の位置により、極角または鉛直角が決定される。図4は、路面に対して平行な二次元平面に投影されたそれぞれの点群16の例を示している。
【0064】
図3に示すように、道路14を走行する車両1に装着された環境センサシステム4は、スキャンポイントの複数の層を生成し得る。各層は、特定の光学検出器12に対応する。対応する光が道路14の表面から反射したかどうかに応じて、層は地上層15または非地上層20としてそれぞれ表示され得る。したがって、地上層15は、図4に示すように、道路表面14上の道路標示17を示し得る、または表し得る。
【0065】
演算ユニット5は、例えば点群16において示された道路標示17を、図5に示すように二次多項式17’により近似し得る。二次多項式17’を用いることにより、道路標示17は、以下のように近似的に記述され得る。
【数3】
【0066】
ここで、図4に示すように、xおよびyは、センサ環境システム4に堅固に接続したセンサ座標系の縦方向および横方向の座標にそれぞれ対応する。dは、例えばx=0における一定の横方向オフセットを表す。θrは、近似角を表す。x=0における多項式17’に対する接線は、長手方向軸とともに含む。rはx=0における近似曲率半径を表す。したがって、演算ユニット5は、x=(a、b、c)により与えられるそれぞれの測定タイミングに対する観測状態ベクトルを生成し得る。また、環境センサシステムは、演算ユニット5がそれぞれの測定タイミングの共分散行列を決定することを可能にする情報を出力し得る。
【数4】
【0067】
代替的に、演算ユニットは、以前の測定値および対応する状態ベクトルの分布に基づいて、共分散行列を決定してもよい。
【0068】
このようにして、演算ユニット5は、複数の連続する測定タイミングの各々に対して、観測状態ベクトルおよび対応する共分散行列を生成する。さらに、演算ユニット5は、運動センサ6の出力、ひいては環境センサシステム4の出力を連続的に、または繰り返し読み取り、車両1の縦方向速度v、横方向速度v、およびヨーレートωについてのそれぞれの値を決定する。
【0069】
演算ユニットは、非線形状態推定アルゴリズムを適用して、車両1に関する各道路標示17の状態または状況を、個別に予測する。特に、異なる道路標示17間の距離に関する推定は必要ない。標準的なカルマンフィルタのような標準的な線形推定器と比較した場合、このアプローチの利点は、線形システムやガウス分布に限定されないことである。したがって、演算の複雑性を増すことなく、より良好な精度が達成される。状態推定アルゴリズムは、時間投影および時間補正の2つの主要な段階を備えている。
【0070】
演算ユニットは、測定タイミングの各々に対するそれぞれの状態ベクトルに基づいて、以下の規則に従って複数のサンプリング状態ベクトルを生成し得る。
【数5】
【0071】
ここで、λ=(α(n+κ)-n)はスケーリング・パラメータであり、nは状態ベクトルの次元数であり、αおよびkは、例えばxの成分により与えられ得る平均μからの点の広がりを制御する所定パラメータである。下付き文字iは、共分散行列Sのi番目の列ベクトルを選択する。
【0072】
時間投影フェーズにおいて、演算ユニット5は、以下の状態推移関数により表されるシステムの基本となるダイナミクスに従って、観測状態ベクトルおよび所与の測定タイミングk-1のサンプリング状態ベクトルを後続の測定タイミングkに投影することにより、それぞれの予測状態ベクトルを生成する。
【数6】
ここで、Δtは、2つの連続した測定タイミング間の時間を表す。
【0073】
時間投影フェーズの結果は、以下のようになる。
【数7】
ここで、一番目の方程式は、状態ベクトルの推定値、したがって前の測定タイミングの追跡すべき変数を現在の測定タイミングに投影し、二番目の方程式は、状態ベクトルの共分散行列を現在の測定タイミングに投影する。三番目の方程式および四番目の方程式は、状態ベクトルを測定空間に投影して適切な次元に適合させ、碁盤目の方程式は測定の共分散を演算する。簡単な例では、状態ベクトルがすでに測定空間の次元を持っている場合、hは恒等式を表す。さらに
は、xおよび測定タイミングk1のxを列として含む行列を表し、和はiを超え、各加数についてfが行列
のそれぞれの列iに適用される。
は、サンプルを優先するための重みを表す。
は、モデルが記述できずセンサ表現でカバーできない不確実性を表す。
【0074】
時間補正フェーズにおいて、状態ベクトルおよびその共分散行列は、システムのゲインで重み付けされた予測推定値と実際の測定値との差を考慮して更新される。
【数8】
ここで、三番目の方程式はシステムのゲインを計算し、一番目の方程式および二番目の方程式はゲインで重み付けされた推定値と測定値の差を考慮して、状態ベクトルとその共分散を更新する。これらの更新は、推定値の出力が非線形状態推定器の出力を表していると考えることができる。
【0075】
この結果、時系列の補正または更新された状態ベクトルおよび共分散行列が得られる。記述されたアプローチは、それぞれの状態ベクトルによって与えられた各道路標示多項式表現を、一意的なサンプルとしてだけでなく、分布として独立して解釈する。
【0076】
上述のメカニズム、特に特に多項式表現と多項式状態推定の組み合わせにより、このアプローチの出力は、小さいばらつき、特に横方向オフセット、配向、曲率に関する小さい標準偏差を示す各道路標示17の多項式表現を備えている。さらに、時間投影ステップにより、測定できない場合や存在するノイズ量により測定が信頼できない場合でも、信号に一定の連続性を持たせることができる。
【0077】
上述の効果は、種々の走行状況で見ることができる。例えば図6において、車両1が直線道路14を走行し、車線変更およびバックをする運転操作について、状態ベクトルの成分が時間の関数として与えられている。図6の上段は曲率1/(2r)、中段は配向tan(θ)、下段は横方向オフセットdを示している。図6は、時間において捕捉された多項式の検出値を、空の記号で示している。分散はかなり大きい。塗りつぶされた記号は、改良された概念による方法の出力を示している。結果として得た曲線はよりシャープになり、分散は明らかに減少している。
【0078】
図7は上段において、元の値に対するそれぞれの分布18、および曲率1/(2r)に対する非線形状態推定器の出力に対する分布18’を示している。下段において、配向tan(θ)に対するそれぞれの分布19、19’が示されている。
【0079】
図8において、図6に類似した表示が、より深刻な状況、すなわわち、急カーブになる高速道路の出口での状況が示されている。図8は、検出における変化、特に曲率における変化をどのように追跡するかを示すが、改良された概念による方法により、ノイズは大幅に減少している。さらに、配向における急激な変化が、良好に追従されている。
【0080】
図9は、図8の運転状況に関して、上段では曲率についての分布18、18’を、下段では配向についての分布19、19’を示している。ここで、本アプローチは、非ガウス分布についても同様に良好に機能することが明瞭にわかる。
【0081】
特に図面に関して説明したように、改良された概念により、一貫して信頼性高く実際の道路標示に厳密に追従する安定した道路標示検出が可能となる。道路標示は、その基本となるパターンを記述するパラメータのそれぞれのセットにより表され、サイクルからサイクルへのパラメータの変化に対して検出を安定させる非線形状態推定器に適用され得る。
【0082】
改良された概念は、前後の車線変更や急カーブなどの運転操作に対応できる。検出の時系列における急激な変化が減少するか、あるいは回避される可能性さえある。非線形状態推定器を使用する実施例では、非ガウスプロセスに対処することができるが、線形化する必要はない。さらに、線形状態推定器と比較して演算コストは増加しない、または少なくとも大幅に増加しない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9