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▶ マリノフスキー、イヴァンの特許一覧

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  • 特許-懸濁液を製造するための方法及び装置 図1
  • 特許-懸濁液を製造するための方法及び装置 図2
  • 特許-懸濁液を製造するための方法及び装置 図3
  • 特許-懸濁液を製造するための方法及び装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】懸濁液を製造するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A47J 43/046 20060101AFI20240927BHJP
   B02C 19/00 20060101ALI20240927BHJP
   A47J 43/07 20060101ALI20240927BHJP
   B02C 18/08 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
A47J43/046
B02C19/00 101Z
A47J43/07
B02C18/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023550063
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2021087701
(87)【国際公開番号】W WO2022179744
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2024-07-23
(31)【優先権主張番号】102021104742.0
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523110798
【氏名又は名称】マリノフスキー、イヴァン
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マリノフスキー、イヴァン
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第204445411(CN,U)
【文献】中国実用新案第204363747(CN,U)
【文献】欧州特許出願公開第03513689(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第102551538(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第00367600(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0289984(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 43/00-43/28
B02C 19/00
B02C 18/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミルク代替製品を製造するための方法であって、
蛋白質及び脂肪を含む少なくとも一つの植物部位を粉砕するステップであって、前記少なくとも一つの植物部位は、ヘーゼルナッツ、クルミ、クリ、マカデミアナッツ、麻の実、及びブナの実のような本物のナッツから選択され、並びに/又は、前記少なくとも一つの植物部位は、アーモンド及びココナッツのような種子から選択され、並びに/又は、前記少なくとも一つの植物部位は、米、オート麦、スペルト小麦、及びキビのような穀物から選択され、並びに/又は、前記少なくとも一つの植物部位は、大豆、ピーナッツ、カシュー、ルピナス、ブラジルナッツ、ペカン、及びピスタチオのようなさらなる種子から選択される、ステップと、
水と前記少なくとも一つの植物部位とが前記ミルク代替製品を形成するように前記少なくとも一つの植物部位を前記水と混合するステップと、
前記少なくとも一つの植物部位から残った残りかすを前記ミルク代替製品から分離するステップと
を含み、
前記少なくとも一つの植物部位がつぶされてパルプになり、一方、2~15バールの圧力の下で、前記水が圧送されて前記パルプの中を通り、前記残りかすを保持するフィルタ(29)を通ることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記パルプが乱流状態で前記フィルタ(29)を通って流れることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも一つの植物部位が、殻、皮、スペルト、又は芒のような乾燥成分を含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記水及び/又は前記パルプが加熱されることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ミルク代替製品に乳化剤及び/又は油が添加されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも一つの植物部位が少なくとも部分的にモルト化及び/又は焼成されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸濁液を製造するための方法に関するものであり、本方法は、植物部位のいくつかの部分を粉砕し、水と植物部位とが懸濁液を形成するように植物部位を水と混合し、植物部位から残った残りかすを懸濁液から分離することを含む。本発明はさらに、懸濁液を製造するための装置に関するものであり、本装置は、混合チャンバと、混合チャンバ内に配置され、水と植物部位とが懸濁液を形成するように、粉砕された植物部位の一部分を水と混合するように構成された混合要素と、混合チャンバに配置され、植物部位から残った残りかすが混合チャンバ内に残るように、懸濁液を混合チャンバから出すように構成された出口とを備える。
【背景技術】
【0002】
上述の方法の一般的なタイプの方法を実施することを容易にする一般的な装置は、ドイツ、デュッセルドルフのSpring Lane GmbHによって「Mandelmilchbereiter Mila」という製品名で提供されている。この知られている装置は、回転可能なブレードとして構成された混合要素が内部に配置された混合チャンバを含む。懸濁液を製造するために、植物部位は混合チャンバに入れられ、水は装置の外側に配置された貯蔵容器内に入れられる。混合チャンバを閉じ、装置のスイッチを入れた後、混合チャンバが加熱され、混合チャンバ内に含まれる植物部位がブレードによって粉砕され、水が貯蔵容器から供給される。残りかすを沈殿させた後、懸濁液は混合チャンバからガラスビーカーに排出される。その後、混合チャンバ内に残っている残りかすは、貯蔵容器からの水で洗い流されて一体化された捕集容器に入る。
【0003】
懸濁液を製造するためのこの知られている装置を使用すると、残りかすを沈殿させる必要があることにより、非常に時間がかかる。加えて、懸濁液はガラスビーカー内に出たとき非常に高温であり、さらに時間が経たないと消費することができない。
【0004】
米国特許出願公開第2010/023209(A1)号は、コーヒーを冷却するための上述したタイプの方法を開示しており、混合要素は最初にコーヒーの粉末と水とを混合してパルプにし、パルプは熟成期間中に連続的に攪拌され、その後、ポンプで送られてフィルタを通る。
【0005】
EP3068274B1は、粉末状の補助食品を使用して飲料を製造するための同様の装置を使用する。補助食品は、水とともに、回転可能なマガジンから取り外し可能な混合チャンバに部分的に供給され、両方の成分は、混合チャンバに組み込まれた混合要素によって混合される。
【0006】
GB790,969Aは、肉が漏斗を通って供給され、粉砕され混合チャンバにポンプで送られ、高温の蒸気を用いて混合チャンバで調理され、その後サイクロンで蒸気流から沈殿させる連続的な方法を提案している。DE69700474T2、AT63446E、DE69924362T2、及びDE2106429Cは、混合要素を使用することなく、水が圧をかけられてコーヒーの粉末又は調合した茶を通ってコーヒー及び茶を調製する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2010/023209(A1)号
【文献】EP3068274B1
【文献】GB790,969A
【文献】DE69700474T2
【文献】AT63446E
【文献】DE69924362T2
【文献】DE2106429C
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、懸濁液の製造を加速することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
知られている方法を改良して、本発明により、植物部位がつぶされてパルプになり、一方、2~15バールの正圧の水を圧送してパルプの中を通し、残りかすを保持するフィルタを通すことが提案されている。植物部位の成分、特に澱粉と蛋白質は、つぶされたパルプに高濃度で供給され、パルプを通って流れる水によって素早く洗い流される。したがって、懸濁液の製造が著しく加速される。
【0010】
知られている方法では、混合チャンバには常に出来上がった懸濁液の全量が含まれる。植物成分はマッシュとして濃縮された状態で混合チャンバに供給されるので、本発明による方法を実施するための混合チャンバ、したがって装置の大きさは、知られている装置と比較して著しく小さくすることができる。
【0011】
本発明による方法は、例えばヘーゼルナッツ、クルミ、クリ、マカデミアナッツ、麻の実、及びブナの実のような蛋白質及び脂肪を含む本物のナッツ、アーモンド及びココナッツのような種子、米、オート麦、スペルト小麦、及びキビのような穀物、並びに大豆、ピーナッツ、カシュー、ルピナス、ブラジルナッツ、ペカン、及びピスタチオのようなさらなる種子、並びにそれらの混合物をベースとするミルク代替製品の製造に適している。
【0012】
本発明による方法では、水が圧送されて、生成されるパルプの中を通っている間、植物部位をつぶす。従来技術よりも大きさが小さな混合チャンバで、混合要素が植物部位とより強く接触する。したがって、パルプ及び懸濁液の製造はさらに加速される。植物部位は、規定の蜜度を達成するために、水にさらす前に混合チャンバ内でつぶすことができる。さらに、予め作られたパルプを混合チャンバに入れることができる。
【0013】
本発明による方法により、パルプが乱流状態でフィルタを通ることは有利である。したがって、フィルタに残りかすが堆積することが防止される。
【0014】
植物部位が、殻、皮、スペルト、又は芒のような乾燥成分を含むことが有利である。乾燥成分は、フィルタを通過するパルプの洗浄特性を改善する。
【0015】
本発明による方法は水及び/又はパルプを加熱することが有利である。高い温度は、植物部位の成分を懸濁液中に流し込むのに有利である。加えて、懸濁液は、このようにして、温かい飲料として直ちに製造することができる。
【0016】
本発明による方法では、懸濁液に乳化剤が添加されることが有利である。乳化剤は、水中での小さな脂肪滴の形成を助け、懸濁液の偏析を妨げる。本発明による方法では、脂肪滴は、例えば、ナッツを使用するとき、植物部位の成分であり得る。大豆レシチンを乳化剤用に使用することができる。
【0017】
加えて、本発明による方法による懸濁液に油を添加することができる。油を添加することは、懸濁液の脂肪含量を増加させるのに役立つ。
【0018】
本発明による方法によれば、植物部位は少なくとも部分的に膨潤、発芽、モルト化、発酵、酵素処理、焙煎、及び/又は焼成することができる。植物部位の個々の処理は、懸濁液の内容物及び味に影響を及ぼす。
【0019】
本発明によれば、知られている装置を改良して、水が、2~15バールの正圧下で、入口から混合チャンバを通って出口まで押圧可能であるように、混合チャンバが水用の出口及び入口を除いて圧密であり、混合チャンバが、出口の上流で残りかすを保持するためのフィルタを含むことが提案されている。本発明による装置は、本発明による前述の方法の1つを実施することを容易にし、上述した利点によって特徴付けられる。
【0020】
本発明による装置のフィルタは穴のあいた金属板であることが有利である。穴のあいた金属板は、穴の数と形状を選択することにより、本発明による方法に容易に適合可能である。金属板の流路断面は、混合チャンバ内の懸濁液の滞留時間を制御する。一方、金属板の滑らかな表面は洗浄を容易にする。これに代えて、フィルタは、例えば、金網、布片、若しくはフリース、又はこれら代替物の組み合わせとすることができる。
【0021】
混合要素は、フィルタを通るパルプの流れを発生させることが有利である。したがって、混合要素は2つの技術的機能を果たす。これに代えて又はこれに加えて、パルプの流れは、混合チャンバへの制御された水の注入によって引き起こすことができる。
【0022】
本発明による装置は、水用の加圧ポンプを含むことが有利である。水は、その場合、圧力をかけずに装置に供給することができる。加圧ポンプは、特にピストンポンプとすることができる。これに代えて、加圧ポンプは蠕動ポンプとすることができる。本発明によるこのタイプの装置は、特にメンテナンスが少なくて済む。さらにこれに代えて、本装置のための水は、加圧システム、例えば公共飲料水網から直接供給することができる。
【0023】
本発明による装置は、水用の貯蔵容器を含むことが有利である。この貯蔵容器は、装置と一体化させることも、取り外し可能にすることもできる。
【0024】
以下、本発明を図面を参照しながら有利な実施例に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明による装置の等角図である。
図2】本発明による装置の3つの正投影図である。
図3】本発明による装置の断面図である。
図4】本発明による装置の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に示す本発明による装置1は、ハウジング2に含まれる水用の貯蔵容器3と、混合要素5を有する混合チャンバ4と、混合要素5用の駆動装置6と、貯蔵容器3から混合チャンバ4内に水を送り出すための圧力ポンプ7と、懸濁液(図示せず)を混合チャンバ4から出すための出口8とを含む。
【0027】
貯蔵容器3は、半透明の合成材料から作られ、直径9が100mm、高さ10が200mm、壁厚が3mmの円筒形状で、取り外し可能なカバー11を有する。貯蔵容器3は、ハウジング2の基部12から取り外し可能であり、底13に配置されたバルブを含み、バルブは、取り外された貯蔵容器3をしっかりと閉じ、基部12の上に置かれた後、貯蔵容器を開ける。
【0028】
基部12は、高さ14が100mm、長さ15が220mm、幅16が100mmの直方体形状を有し、貯蔵容器3の直径9を有する円筒面を有する両端17で凸状になっている。基部要素12は、上側18の後端17で貯蔵容器3を受ける。
【0029】
基部12は、側面19に取り外し可能な残りかす容器20を含む。残りかす容器20は合成材料から作られ、高さ21が90mmで直径が70mmの、長手方向軸に沿って切断された半円筒の形状を含む。
【0030】
基部12の前側23は、上側18に円筒状上部24を含み、円筒状上部24は、貯蔵容器3の直径9を有し、高さ25が70mmであり、混合チャンバ24を含む。上部24は上方に移行して、高さ27が30mmのカバー26となる。カバー26はヒンジ28によって上部24と接続され、貯蔵容器3の方へ枢動可能である。
【0031】
カバー26は、カバー26が閉じられたときに混合チャンバ4を圧密に閉じるフィルタ29を含む。フィルタ29は鋼板から作られ、約200個の直径0.3mmの穴30を含む。カバー26はフィルタの上方に回収チャンバ31を含み、回収チャンバはカバー26の前面に取り付けられた突出部32の出口8に通じている。
【0032】
基部12内の導水管は、貯蔵容器3のバルブから圧力ポンプ7を通って混合チャンバ4内に通じている。圧力ポンプ7は、最大15バールの出力圧力で毎分650mlのポンプ能力を有する電動ピストンポンプである。
【0033】
残りかす通路は、混合チャンバ4の底33から残りかす容器20内へ基部12内を通っている。残りかす通路はバルブフラップによって混合チャンバ4に接続されている。最後に、基部12は、混合要素5用の駆動装置6として、混合チャンバ4の下にある速度20,000RPMで出力600ワットの電気モータと、制御ユニットと、残りかす容器20から離れる方向を向く側面34にあるロッカースイッチ35とを含む。
【0034】
混合チャンバ4内の混合要素5は、2つの下方に突出したアームと2つの上方に曲げられたアーム36とを含むプレス加工されて曲げられた板金から作られた回転ブレードである。フィルタ29の方に向けられた、上方に曲げられたアーム36の回転方向37に対する後縁には、追加の渦面38が形成される。導水管には追加のヒータ39が取り付けられている。
【0035】
本発明による装置1を始動させ、本発明による方法を実施するために、貯蔵容器3は最初に水で満たされ、基部12の上に置かれる。次いで、バルブが開かれ、導水管が水で満たされる。導水管にあるセンサ(図示せず)は、制御ユニットに水位を知らせる。次いで、植物部位の準備された部分、すなわち40gのアーモンドが、開いている混合チャンバ4に入れられ、混合チャンバ4はカバー26によって閉じられる。
【0036】
カバー26にあるセンサは、混合チャンバ4が圧密に閉じていることを制御ユニットに知らせ、制御ユニットは、5秒間、混合要素5を使用して植物部位を刻んで乾燥させ、植物部位を粉砕し、その後、混合要素5がまだ回転している間に、圧力ポンプ7を使用して150mlの水を混合チャンバ4に送り込む。
【0037】
水がパルプの中を流れる間に、そこに含まれる澱粉及び蛋白質が溶解し、懸濁液が形成される。パルプからの脂肪は、小さな液滴として流水中に分散される。混合要素5の乱流面38は、フィルタ29に残った残りかすが堆積するのを防ぐ。懸濁液はフィルタ29と回収チャンバ31を通って出口8から出て、飲料容器に捕集される。
【0038】
その後、混合要素5がまだ回転し、圧力ポンプ7がまだ動いている間に、残りかす通路へのフラップバルブが開かれ、混合チャンバ4内に残っている残りかす及びフィルタ29に付いている残りかすが残りかす容器20に洗い流される。
【0039】
異なる植物部位を使用するとき、懸濁液の製造量と製造時間は異なることがある、及び/又は、水を加える前の乾燥初期粉砕は省略することができる。温かい飲料を製造するために、水は80℃まで連続して可変可能に加熱可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 装置
2 ハウジング
3 貯蔵容器
4 混合チャンバ
5 混合要素
6 駆動装置
7 圧力ポンプ
8 出口
9 貯蔵容器の直径
10 貯蔵容器の高さ
11 貯蔵容器のカバー
12 ハウジングの基部
13 貯蔵容器の底
14 基部の高さ
15 基部の長さ
16 基部の幅
17 基部の端部
18 基部の上側
19 側面
20 残りかす容器
21 残りかす容器の高さ
22 残りかす容器の直径
23 基部の前側
24 上部
25 上部の高さ
26 カバー
27 カバーの高さ
28 ヒンジ
29 フィルタ
30 穴
31 回収チャンバ
32 突出部
33 混合チャンバの底
34 側面
35 ロッカースイッチ
36 アーム
37 混合要素の回転方向
38 渦面
39 加熱要素
図1
図2
図3
図4