(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】半導体装置、電力変換装置、および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/40 20060101AFI20240927BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20240927BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20240927BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20240927BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L23/40 F
H01L23/36 C
H01L25/04 C
H01L23/12 J
(21)【出願番号】P 2023555883
(86)(22)【出願日】2021-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2021039233
(87)【国際公開番号】W WO2023073752
(87)【国際公開日】2023-05-04
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 達也
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/121159(WO,A1)
【文献】特開2015-220239(JP,A)
【文献】特開2017-199813(JP,A)
【文献】特開2019-207897(JP,A)
【文献】特開2006-41363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/40
H01L 23/36
H01L 25/07
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面および下面を有する第1絶縁材と、
前記第1絶縁材の前記上面上に設けられた第1導体パターンと、
前記第1絶縁材の前記下面上に設けられた第2導体パターンと、
第1接合材により前記第1導体パターンの上面と接合された半導体素子と、
第2接合材により前記第2導体パターンの下面と接合された第1ベース板と、
を備え、
前記第1絶縁材の熱伝導率κ
1と前記第1絶縁材の厚みD
1の比κ
1/D
1はκ
1/D
1≦35×10
4W/(m
2K)を満たし、
前記第1接合材の固相線温度が前記第2接合材の固相線温度以上であり、
前記第1接合材の固相線温度と前記第2接合材の固相線温度の差が40℃以内である、
半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記第1接合材の固相線温度が前記第2接合材の液相線温度以上である、
半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体装置であって、
前記第1絶縁材の熱伝導率κ
1は35W/(m・K)以下であり、
前記第1絶縁材の厚みD
1は100μm以上である、
半導体装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記第1接合材ははんだであり、
前記第2接合材ははんだである、
半導体装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記第1絶縁材はセラミックを含む、
半導体装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記第1絶縁材は絶縁樹脂を含む、
半導体装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記第2導体パターンは前記第1導体パターンより薄い、
半導体装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記第2導体パターンの厚みが0.8mm以下である、
半導体装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記第2接合材の厚みは150μm以下である、
半導体装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記第1ベース板の下面に凹凸が設けられている、
半導体装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記第2導体パターンは、前記第2導体パターンの下面の外周部の少なくとも部分的な領域においては、前記第2接合材によって前記第1ベース板と接合されていない、
半導体装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記半導体素子を封止する封止材を更に備える、
半導体装置。
【請求項13】
請求項12に記載の半導体装置であって、
前記封止材の線膨張係数は前記第2接合材の線膨張係数以下である、
半導体装置。
【請求項14】
請求項12または13に記載の半導体装置であって、
前記封止材は前記第2導体パターンの下面の外周部を少なくとも部分的に覆っている、
半導体装置。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
インナーリードを更に備え、
前記インナーリードは前記半導体素子の上面と第3接合材により接合されている、
半導体装置。
【請求項16】
請求項15に記載の半導体装置であって、
前記第3接合材の固相線温度が前記第2接合材の固相線温度以上であり、
前記第3接合材の固相線温度と前記第2接合材の固相線温度の差が40℃以内である、
半導体装置。
【請求項17】
請求項15または16に記載の半導体装置であって、
前記インナーリードは前記第1導体パターンと第4接合材により接合されており、前記インナーリードにより前記半導体素子の上面と前記第1導体パターンとが接続されている、
半導体装置。
【請求項18】
請求項17に記載の半導体装置であって、
前記第4接合材の固相線温度が前記第2接合材の固相線温度以上であり、
前記第4接合材の固相線温度と前記第2接合材の固相線温度の差が40℃以内である、
半導体装置。
【請求項19】
請求項15から18のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
第2絶縁材、第3導体パターン、第4導体パターン、および第2ベース板を更に備え、
前記第3導体パターンは前記第2絶縁材の下面上に設けられており、
前記第4導体パターンは前記第2絶縁材の上面上に設けられており、
前記第3導体パターンは前記インナーリードの上面と第5接合材により接合されており、
前記第2ベース板は前記第4導体パターンの上面と第6接合材により接合されている、
半導体装置。
【請求項20】
請求項19に記載の半導体装置であって、
前記第2絶縁材の熱伝導率κ
2と前記第2絶縁材の厚みD
2の比κ
2/D
2はκ
2/D
2≦35×10
4W/(m
2K)を満たし、
前記第5接合材の固相線温度が前記第6接合材の固相線温度以上であり、
前記第5接合材の固相線温度と前記第6接合材の固相線温度の差が40℃以内である、
半導体装置。
【請求項21】
請求項20に記載の半導体装置であって、
前記第5接合材の固相線温度が前記第6接合材の液相線温度以上である、
半導体装置。
【請求項22】
請求項20または21に記載の半導体装置であって、
前記第4導体パターンは前記第3導体パターンより薄い、
半導体装置。
【請求項23】
請求項20から22のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記第4導体パターンの厚みが0.8mm以下である、
半導体装置。
【請求項24】
請求項20から23のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記第6接合材の厚みは150μm以下である、
半導体装置。
【請求項25】
請求項1から24のいずれか1項に記載の半導体装置を有する主変換回路と、
制御回路と、
を備え、
前記主変換回路は入力される電力を変換して出力し、
前記制御回路は前記主変換回路を制御する制御信号を前記主変換回路に出力する、
電力変換装置。
【請求項26】
請求項1から24のいずれか1項に記載の半導体装置を製造する半導体装置の製造方法であって、
前記第1接合材を溶融させてから凝固させることで前記第1導体パターンと前記半導体素子との接合をした後に、前記第2接合材を溶融させてから凝固させることで前記第2導体パターンと前記第1ベース板との接合をし、
前記第2導体パターンと前記第1ベース板との前記接合をする際には、前記第1ベース板よりも下側から加熱を行う、
半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置、電力変換装置、および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、モールド型の半導体装置が記載されている。特許文献1では、特にモールド型の半導体装置は小型で信頼性に優れており、取り扱いが容易であることから、空調機器の制御などに広く用いられている、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置の製造過程において、接合材が再溶融し、半導体装置の品質が低下するという問題がある。
【0005】
本開示はこのような問題を解決するためのものであり、製造過程における接合材の再溶融を抑制でき、接合材の再溶融による品質の低下を抑制できる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の半導体装置は、上面および下面を有する第1絶縁材と、第1絶縁材の上面上に設けられた第1導体パターンと、第1絶縁材の下面上に設けられた第2導体パターンと、第1接合材により第1導体パターンの上面と接合された半導体素子と、第2接合材により第2導体パターンの下面と接合された第1ベース板と、を備え、第1絶縁材の熱伝導率κ1と第1絶縁材の厚みD1の比κ1/D1はκ1/D1≦35×104W/(m2K)を満たし、第1接合材の固相線温度が第2接合材の固相線温度以上であり、第1接合材の固相線温度と第2接合材の固相線温度の差が40℃以内である、半導体装置である。
【発明の効果】
【0007】
本開示により、製造過程における接合材の再溶融を抑制でき、接合材の再溶融による品質の低下を抑制できる半導体装置が提供される。
【0008】
また、本願明細書に開示される技術に関連する目的と、特徴と、局面と、利点とは、以下に示される詳細な説明と添付図面とによって、さらに明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図10】実施の形態1の半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図11】実施の形態6の電力変換装置を適用した電力変換システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明において、上および下とは、半導体装置の一方向を上方向とし、その反対方向を下方向として示すものであり、半導体装置の製造時または使用時における上下方向を限定するものではない。
【0011】
<A.実施の形態1>
<A-1.構成>
図2は半導体装置151の上面図である。半導体装置151の内部構造を示すため、
図2においては半導体装置151の備える封止材10は省略されている。
図1は実施の形態1の半導体装置151の断面図であり、
図2のA-A線における断面図である。
【0012】
半導体装置151は、半導体ユニット101と、ベース板11(第1ベース板の一例)と、接合材12(第2接合材の一例)と、を備える。
【0013】
半導体ユニット101は、絶縁基板25、接合材4(第1接合材の一例)、半導体素子5a1、半導体素子5a2、半導体素子5b1、半導体素子5b2、ワイヤ6、ワイヤ7、主端子8a、主端子8b、主端子8c、信号端子9、および封止材10、を備える。
【0014】
半導体素子5a1および半導体素子5a2はSiのIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)であり、半導体素子5b1および半導体素子5b2はSiのダイオードである。半導体素子5a1、半導体素子5a2、半導体素子5b1、および半導体素子5b2を区別する必要がない場合は、半導体素子5a1、半導体素子5a2、半導体素子5b1、および半導体素子5b2をそれぞれ半導体素子5とも呼ぶ。
【0015】
半導体装置151は、IGBTとダイオードを備える代わりに、IGBTとダイオードが一体となったRC-IGBT(Reverse-Conducting IGBT、逆導通IGBT)を備えていてもよい。また、半導体装置151は、SiのIGBTおよびSiのダイオードの代わりに、例えば、SiCまたはGaNのMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)およびSiCまたはGaNのSBDを備えていてもよい。
【0016】
主端子8a、主端子8b、および主端子8cを区別する必要がない場合は、それぞれを主端子8とも呼ぶ。各主端子8は電力用の端子である。
【0017】
絶縁基板25は、上面および下面を有する絶縁材1(第1絶縁材の一例)と、絶縁材1の上面上に設けられた導体パターン2(第1導体パターンの一例)と、絶縁材1の下面上に設けられた導体パターン3(第2導体パターンの一例)と、を備える。絶縁材1と導体パターン2は例えば直接接合により接合されている。絶縁材1と導体パターン3は例えば直接接合により接合されている。
【0018】
各半導体素子5は、接合材4により導体パターン2の上面と接合されている。
【0019】
ワイヤ6は電力用のワイヤである。
図2に示されるように、半導体素子5a1と半導体素子5b1、半導体素子5b1と導体パターン2、導体パターン2と主端子8a、導体パターン2と主端子8c、半導体素子5a2と半導体素子5b2、半導体素子5b2と主端子8b、は、ワイヤ6により接続されている。
【0020】
ワイヤ7は信号用のワイヤである。半導体素子5a1と信号端子9、および半導体素子5a2と信号端子9、はワイヤ7により接続されている。
【0021】
半導体ユニット101において、絶縁材1と、導体パターン2と、導体パターン3の一部と、接合材4と、半導体素子5と、ワイヤ6と、ワイヤ7と、各主端子8の一部と、各信号端子9の一部と、は封止材10に封止されている。半導体ユニット101において、導体パターン3の下面は封止材10から露出している。
【0022】
半導体ユニット101は、接合材12を介してベース板11の上面上に搭載されている。ベース板11は接合材12により導体パターン3の下面と接合されている。
【0023】
絶縁材1は例えば絶縁樹脂である。当該絶縁材樹脂は例えばエポキシ樹脂を主成分とする絶縁材樹脂である。絶縁材1は例えばセラミックである。当該セラミックは例えばAl2O3を主成分とするセラミックである。
【0024】
放熱性を高めるためには、絶縁材1の熱伝導率はより高いものであることが望ましく、また、絶縁材1はより薄いものであることが望ましい。一方、絶縁材1の熱伝導率を高くかつ薄くすると、製造工程において半導体ユニット101の下側から半導体ユニット101に加えられた熱が接合材4へと伝わりやすくなるが、接合材4へと伝わる熱が多いと、接合材4が再溶融するという問題が起きる。製造工程における接合材4の再溶融を抑制するため、絶縁材1の熱伝導率κ
1と絶縁材1の厚みD
1(
図1を参照)の比κ
1/D
1はκ
1/D
1≦35×10
4W/(m
2K)を満たすことが望ましい。例えば、絶縁材1の熱伝導率κ
1は35W/(m・K)以下でありかつ絶縁材1の厚みD
1は100μm以上である。絶縁材1の厚みD
1を100μm以上とすることで、絶縁材1の厚みD
1が100μm未満の場合と比べ絶縁材1の絶縁性能および強度が向上する。絶縁材1として絶縁樹脂を用いれば、絶縁材1の熱伝導率を低くすることが容易であり、接合材4の再溶融の抑制が容易である。
【0025】
導体パターン2の材料は例えば金属である。当該金属は例えばアルミ、アルミ合金、銅、または銅合金である。
【0026】
導体パターン2は接合材4を介して半導体素子5と接している。導体パターン2は、半導体素子5が発する熱を拡散する機能を有する。半導体素子5が発する熱を面内方向に十分に拡散できるよう、導体パターン2は十分な厚みを有することが好ましい。望ましい導体パターン2の厚みは、導体パターン2の面内方向のレイアウトに依存するが、例えば0.4mm~1.2mmである。
【0027】
導体パターン2の上面にディンプルまたはスリット等の凹凸を設けることで、導体パターン2と封止材10との密着性を向上させることができる。
【0028】
導体パターン3の材料は例えば金属である。当該金属は例えばアルミ、アルミ合金、銅、または銅合金である。
【0029】
接合材4は例えばはんだである。接合材4は例えば、鉛フリーでありかつSnを主成分とするはんだである。
【0030】
図2では半導体装置151が4つの半導体素子を備える場合が示されているが、半導体装置151が備える半導体素子は1つでも2つでも3つでもよいし、5つ以上でもよい。
【0031】
ワイヤ6の材料は例えばアルミ、アルミ合金、銅、または銅合金である。
【0032】
ワイヤ6は、アルミと銅を組み合わせたワイヤ、例えば、外周部はアルミで内部は銅である複合材を用いたワイヤであってもよい。
【0033】
ワイヤ6に求められる電流容量にもよるが、望ましいワイヤ6の直径は例えば200μm~1000μmである。ワイヤ6として、延在方向と交差する方向に幅の広いリボン状の形状のワイヤを用いることで、電流容量を増やすことができる。
【0034】
ワイヤ7の材料は例えばアルミ、アルミ合金、銅、または銅合金である。ワイヤ7はワイヤ6とは異なり大電流を流す必要がないため、ワイヤ7の径はワイヤ6の径より小さくてもよい。ワイヤ7の直径は例えば100μm~400μmである。
【0035】
主端子8の材料は例えば銅または銅合金である。軽量化のため、主端子8の材料としてアルミまたはアルミ合金を用いてもよい。主端子8を厚くすることで、主端子8に電流を流した際の主端子8の自己発熱を抑制できる。望ましい主端子8の厚みは例えば0.5mm~2.0mmである。
【0036】
信号端子9の材料は例えば銅または銅合金である。軽量化のため、信号端子9の材料としてアルミまたはアルミ合金を用いても良い。信号端子9は、ワイヤ7と同様、大電流を流す必要が無い。そのため、信号端子9の厚みは1mm程度で十分である。
【0037】
封止材10は例えば樹脂である。当該樹脂は例えばエポキシ系樹脂である。
【0038】
半導体素子5の発熱により封止材10の温度が上昇する。当該温度上昇による封止材10の線膨張係数の変動を抑制するために、望ましい封止材10のガラス転移温度Tgは例えば175℃以上である。
【0039】
封止材10と導体パターン2との剥離の抑制および接合材12のクラックの抑制のために、封止材10の線膨張係数の望ましい値は例えば18~24ppm/℃である。封止材10の線膨張係数が接合材12の線膨張係数以下であることで、接合材12に生じる応力を低減でき、これにより、半導体装置151の信頼性を向上できる。封止材10がガラス転移を起こす場合、当該線膨張係数は封止材10のガラス転移温度Tg以下の温度における線膨張係数を指す。封止材10のフィラーを調整することで、封止材10の線膨張係数を調整できる。
【0040】
接合材12は例えばはんだである。接合材12は例えば、鉛フリーでありかつSnを主成分とするはんだである。
【0041】
接合材12を薄くすることで、製造時に接合材12を溶融させるために必要な熱量を小さくでき、製造コストを下げられる。また、接合材12を薄くすることで、接合材12の熱抵抗を抑えられる。接合材12の厚みは例えば150μm以下である。
【0042】
接合材4の固相線温度は接合材12の固相線温度以上であり、接合材4の固相線温度と接合材12の固相線温度の差は40℃以内である。
【0043】
ベース板11の材料は熱伝導率の高いものであることが望ましい。ベース板11の材料は例えばアルミ、アルミ合金、銅、または銅合金である。熱の拡散および剛性の観点から望ましいベース板11の厚みは例えば2~4mmである。
【0044】
ベース板11の材料が銅または銅合金である場合、ベース板11の表面がNiめっき等のめっきで被覆処理されていれば、ベース板11の酸化および腐食が抑制される。
【0045】
図2に示されるように、ベース板11には、半導体装置151を冷却器等に取り付けるための穴110が設けられている。ベース板11には穴110が設けられていなくてもよい。
【0046】
ベース板11の下面は例えば、
図1に示されるように平坦である。半導体装置151を使用する際は、半導体素子5での損失により熱が発生する。半導体装置151は、例えば、グリス等のTIM(Thermal Interface Material、サーマルインターフェースマテリアル)を介して冷却器に取り付けられ、冷却される。当該冷却器は、空冷式でもよいし水冷式でもよい。半導体装置151は冷却器を含んだものであってもよい。
【0047】
半導体装置151の高電流密度化および高集積化のためには、半導体素子5からの放熱効率が高いことが望ましい。半導体装置151においては、半導体ユニット101にベース板11が取り付けられていることで、半導体素子5からの放熱効率が向上する。そのため、例えば、半導体装置151に取り付けられる冷却器が空冷式冷却器であり冷却器の冷却性能が低くても、半導体装置151の高電流密度化および高集積化が可能である。
【0048】
本実施の形態の半導体装置151では、接合材4の固相線温度が接合材12の固相線温度以上であり、かつ、絶縁材1の熱伝導率κ1と絶縁材1の厚みD1の比κ1/D1がκ1/D1≦35×104W/(m2K)を満たしているため、半導体ユニット101にベース板11を接合する際の加熱による接合材4の再溶融が抑制され、接合材4の再溶融による半導体装置151の品質の低下が抑制される。
【0049】
<A-2.製造方法>
図10は本実施の形態の半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【0050】
まず、ステップS1において、絶縁基板25を準備する。絶縁基板25は、上述のように、絶縁材1と、絶縁材1の上面上に設けられた導体パターン2と、絶縁材1の下面上に設けられた導体パターン3と、を備える絶縁基板である。
【0051】
次に、ステップS2において、絶縁基板25の導体パターン2の上面上に、各半導体素子5を接合材4により接合する。
【0052】
ステップS2では、まず、半導体素子5を、導体パターン2の上面上に、接合材4を間に介して配置する。次に、温度を上昇させ接合材4を溶融させる。その後、温度を下げ、接合材4を凝固させることで、各半導体素子5と導体パターン2が接合される。
【0053】
ステップS2の後、ステップS3において、ワイヤ6およびワイヤ7による配線を行う。
【0054】
ステップS3では、まず、ワイヤ6により、半導体素子5a1と半導体素子5b1、半導体素子5b1と導体パターン2、半導体素子5a2と半導体素子5b2、を接続する。次に、主端子8および信号端子9を配置する。そして、ワイヤ7により信号端子9と半導体素子5a1、信号端子9と半導体素子5a2、を接続し、また、ワイヤ6により主端子8aと導体パターン2、主端子8bと半導体素子5b2、および主端子8cと導体パターン2、を接続する。
【0055】
ステップS3の後、ステップS4において、封止材10により半導体素子5を封止する。
【0056】
ステップS1からステップS4を経て、半導体ユニット101が得られる。
【0057】
ステップS4の後、ステップS5において、導体パターン3の下面とベース板11とを、接合材12により接合する。
【0058】
ステップS1からステップS5を経て、半導体装置151が得られる。
【0059】
ステップS5では、接合材12を半導体ユニット101とベース板11の間に配置した後、各材料の温度を上昇させて接合材12を溶融させる。半導体ユニット101およびベース板11の熱容量が大きい状況において効率的に接合材12を溶融させるための方法として、ベース板11の下面にホットプレート等を接触させることで加熱するという方法がある。
【0060】
ステップS5において接合材4が再溶融すると、接合材4が固体から液体への状態変化によって膨張することにより、封止材10にクラックが発生し、半導体装置151の特性および信頼性が低下する。そのため、接合材4を溶融させず接合材12のみを選択的に溶融させることが望ましい。しかし、ベース板11の下面から熱を加えると、半導体ユニット101の内部においても下面側から上面側に熱が伝導していく為、半導体ユニット101内部の接合材4が再溶融する可能性が有る。
【0061】
半導体素子5を導体パターン2に接合する接合材として融点の高い材料、例えばシンター接合材等、を採用することで、当該接合材の再溶融を抑制することもできる。しかし、その場合、シンター接合材を用いた接合では圧力の印加等が必要であるなどの理由により、製造装置の大型化が必要となったり、半導体ユニット101のサイズに関する制限が発生したりする。また、直接材料費および製造装置費が高くなる為、半導体装置151の製造コストが高くなる。半導体素子5を導体パターン2に接合する接合材としてはんだを用いることで、半導体装置151の製造コストを抑えられる。
【0062】
接合材4の固相線温度が接合材12の固相線温度以上であれば、ステップS5における接合材4の再溶融が抑制される。接合材4の固相線温度が接合材12の液相線温度以上であれば、ステップS5における接合材4の再溶融がより抑制される。接合材4の固相線温度が接合材12の液相線温度と比べより高ければ、ステップS5における接合材4の再溶融がより抑制される。
【0063】
接合材4の固相線温度が接合材12の固相線温度と比べ高すぎると、以下の問題が発生する。ステップS2において、接合材4は、固相線温度で凝固し、その後、常温まで冷却される。常温において、導体パターン2および絶縁材1は、線膨張係数の違い等により、接合材4の固相線温度と常温の差ΔT1に比例した力を接合材4から直接的または間接的に受ける。同様に、常温において、導体パターン3および絶縁材1は、接合材12の固相線温度と常温の差ΔT2に比例した力を、接合材12から直接的または間接的に受ける。ΔT1とΔT2の差が大きい場合、絶縁材1が受ける力が上側と下側で大きく異なるため、絶縁材1に反りまたは局所的な応力が発生し、半導体装置151の信頼性が低下する。そのため、半導体装置151の信頼性の観点から、ΔT1とΔT2の差、つまり、接合材4の固相線温度と接合材12の固相線温度の差は、40℃以下であることが望ましい。
【0064】
製造工程における接合材4および接合材12の温度にはばらつきがあるため、接合材4の固相線温度が接合材12の固相線温度以上であるというだけでは、ステップS5における接合材4の再溶融を十分に抑制することは難しい。絶縁材1の熱の伝えやすさを抑えることで、ステップS5における接合材4の再溶融を抑制することができる。絶縁材1の熱伝導率κ1と絶縁材1の厚みD1の比κ1/D1がκ1/D1≦35×104W/(m2K)を満たす構成により、ベース板11の下面からの加熱が行われた際に接合材4に伝わる熱を抑制でき、ステップS5における接合材4の再溶融を抑制できる。それにより、製造工程において許容される温度のばらつきが増加する。
【0065】
導体パターン3を導体パターン2よりも薄くすることで導体パターン3の熱容量を下げることができ、例えば、導体パターン3の熱容量を導体パターン2の熱容量よりも小さくできる。導体パターン3の熱容量が小さければ、ステップS5においてベース板11よりも下側から加熱を行う際、導体パターン3と接合材12の界面が速やかに昇温するため、接合材12を溶融させるために必要な加熱時間が短くなり、製造性および生産性が向上する。導体パターン3の厚みが0.8mm以下であれば、これらの効果がより顕著に得られる。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態の半導体装置の製造方法では、ステップS2において接合材4を溶融させてから凝固させることで導体パターン2と半導体素子5との接合をした後に、ステップS5において接合材12を溶融させてから凝固させることで導体パターン3とベース板11との接合をし、ステップS5において導体パターン2とベース板11との接合をする際には、ベース板11よりも下側から加熱を行う。ベース板11よりも下側から加熱を行うとは、ベース板11の下面に熱源を接触させ加熱する場合を含む。
【0067】
本実施の形態の半導体装置151において、絶縁材1の熱伝導率κ1と絶縁材1の厚みD1の比κ1/D1はκ1/D1≦35×104W/(m2K)を満たし、接合材4の固相線温度は接合材12の固相線温度以上である。これにより、ステップS5における接合材4の再溶融が抑制され、接合材4の再溶融による半導体装置151の品質の低下が抑制される。また、接合材4の固相線温度と接合材12の固相線温度の差が40℃以内であることで、接合材4の固相線温度と接合材12の固相線温度との差に基づいて絶縁材1が受けるダメージが抑制され、半導体装置151の信頼性が向上する。
【0068】
<B.実施の形態2>
図5は半導体装置152の上面図である。半導体装置152の内部構造を示すため、
図5においては半導体装置152の備える封止材10は省略されている。
図3は実施の形態2の半導体装置152の断面図であり、
図5のB-B線における断面図である。
図4は実施の形態2の半導体装置152の断面図であり、
図5のC-C線における断面図である。
【0069】
本実施の形態の半導体装置152は、実施の形態1の半導体装置151と比べると、半導体ユニット101の代わりに半導体ユニット102を備える点が異なる。半導体装置152は、その他の点では半導体装置151と同様である。半導体ユニット102は、半導体ユニット101と比べると、ワイヤ6、主端子8a、主端子8bおよび主端子8cの代わりに、インナーリード13、主端子8d、主端子8eおよび主端子8fを備える点が異なる。半導体ユニット102は、その他の点では半導体ユニット101と同様である。
【0070】
図3に示されるように、インナーリード13は半導体素子5a1の上面と接合材15により接合されている。インナーリード13は半導体素子5b1の上面と接合材15により接合されている。インナーリード13は導体パターン2の上面と接合材14により接合されている。導体パターン2と半導体素子5a1の上面とが、インナーリード13により接続されている。導体パターン2と半導体素子5b1の上面とが、インナーリード13により接続されている。導体パターン2のうち導体パターン2が接合材14により接合されている箇所は、導体パターン2のうち半導体素子5a1が接合材4により接合されている箇所と非一体である。導体パターン2のうち導体パターン2が接合材14により接合されている箇所は、導体パターン2のうち半導体素子5b1が接合材4により接合されている箇所と非一体である。
【0071】
主端子8eはインナーリード81とアウターリード82を備える。インナーリード81は主端子8eのうち封止材10に封止されている部分であり、主端子8eのうち封止材10から突出している部分であるアウターリード82と一体である。
【0072】
インナーリード81は半導体素子5a2の上面と接合材15により接合されている。インナーリード81は半導体素子5b2の上面と接合材15により接合されている。
【0073】
接合材14および接合材15は例えばはんだである。接合材14および接合材15は例えば、鉛フリーでありかつSnを主成分とするはんだである。
【0074】
接合材4の場合と同様、製造時における接合材14および接合材15の再溶融を抑制することが望ましい。製造時における接合材14および接合材15の再溶融を抑制するために、接合材14の固相線温度は例えば接合材12の固相線温度以上であり、接合材15の固相線温度は例えば接合材12の固相線温度以上である。接合材14の固相線温度と接合材12の固相線温度の差が40℃以内であれば、接合材14の固相線温度と接合材12の固相線温度の差に基づいて絶縁材1が受けるダメージが抑制され、半導体装置152の信頼性が向上する。接合材15の固相線温度と接合材12の固相線温度の差が40℃以内であれば、接合材14の固相線温度と接合材12の固相線温度の差に基づいて絶縁材1が受けるダメージが抑制され、半導体装置152の信頼性が向上する。接合材14の材料および接合材15の材料は、例えば接合材4の材料と同じである。
【0075】
主端子8dは導体パターン2と直接接続されている。主端子8fは導体パターン2と直接接続されている。主端子8dおよび主端子8fを導体パターン2に直接接続する方法としては、US(Ultrasonic、超音波)接合および拡散接合等が挙げられる。
【0076】
主端子8d、主端子8e、および主端子8fの材料は、例えば実施の形態1の半導体装置151の主端子8a、主端子8b、および主端子8cの材料と同じである。また、主端子8d、主端子8e、および主端子8fの厚みは、例えば実施の形態1の半導体装置151の主端子8a、主端子8b、および主端子8cの厚みと同じである。
【0077】
インナーリード13の材料は、電気抵抗の小さい材料であることが望ましい。当該電気抵抗の小さい材料は例えば銅、銅合金、アルミ、またはアルミ合金である。
【0078】
実施の形態1の場合と比較すると、主電流がワイヤ6を流れていた箇所を、主電流がインナーリード13、主端子8d、主端子8e、または主端子8fを流れるよう変更することで、電気抵抗を低減することが出来、半導体装置152の電流容量が増加する。
【0079】
図10は本実施の形態の半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。本実施の形態の半導体装置の製造方法は、ステップS3において、ワイヤ6による配線の代わりにインナーリード13および主端子8による配線を行う点を除けば、実施の形態1の半導体装置の製造方法と同様である。
【0080】
<C.実施の形態3>
本実施の形態の半導体装置153は、実施の形態2の半導体装置152と比べると、半導体ユニット102の代わりに半導体ユニット103を備える点が異なる。また、半導体装置153においては、半導体ユニット103の上側に、ベース板21が接合材20により接合されている。半導体装置153は、その他の点では半導体装置152と同様である。
図6は実施の形態3の半導体装置153の断面図であり、半導体装置152の
図3と対応する断面における断面図である。
図7は実施の形態3の半導体装置153の断面図であり、半導体装置152の
図4と対応する断面における断面図である。
【0081】
半導体ユニット103は、半導体ユニット102と比べ、絶縁基板26を更に備える。半導体ユニット103はその他の点では半導体ユニット102と同様である。絶縁基板26は、絶縁材17、導体パターン18、および導体パターン19を備える。
【0082】
図6に示されるように、導体パターン18はインナーリード13の上面と接合材16により接合されている。導体パターン18は、インナーリード13の上面のうち平面視で半導体素子5a1または半導体素子5b1と重なる領域と接合材16により接合されている。
【0083】
図7に示されるように、導体パターン18はインナーリード81の上面と接合材16により接合されている。導体パターン18は、インナーリード81の上面のうち平面視で半導体素子5a2または半導体素子5b2と重なる領域と接合材16により接合されている。
【0084】
絶縁材17は導体パターン18の上面と接合されている。導体パターン19は絶縁材17の上面と接合されている。半導体ユニット103において、導体パターン19の一部は封止材10から露出している。ベース板21は、導体パターン19のうち封止材10から露出している部分と接合材20を介して接合されている。
【0085】
本実施の形態の半導体装置153においては、半導体素子5から発生した熱の一部は、接合材15、インナーリード13、インナーリード81、接合材16、導体パターン18、絶縁材17、導体パターン19、接合材20、およびベース板21を通って半導体装置153の外部へと伝わる。そのため、半導体素子5を上下の両側から冷却でき、半導体装置153の電流容量の向上および小型化が可能である。
【0086】
接合材16および接合材20は例えばはんだである。接合材16および接合材20は例えば、鉛フリーでありかつSnを主成分とするはんだである。
【0087】
本実施の形態の半導体装置の製造方法は、実施の形態2の半導体装置の製造方法と比べると、ステップS3(
図10を参照)の後、ステップS4の前にインナーリード13およびインナーリード81の上面上に接合材16により絶縁基板26を接合する点と、ステップS5において絶縁基板25とベース板11の接合に加え絶縁基板26とベース板21の接合を行う点が、異なる。本実施の形態の半導体装置の製造方法はその他の点では実施の形態2の半導体装置の製造方法と同様である。
【0088】
接合材4の場合と同様、製造時の接合材16の再溶融を抑制することが望ましい。半導体装置153の製造時に絶縁基板26の導体パターン19とベース板21とを接合する際は、接合材20を半導体ユニット103とベース板21の間に配置した後、ベース板21より上側からの加熱により接合材20を溶融させる。そのため、接合材16の再溶融を抑制するためには、ベース板21より上側からの加熱が行われた際に接合材16に熱が伝わりにくいことが望ましい。また、絶縁材1の場合と同様、接合材16の固相線温度と接合材20の固相線温度との差に基づいて絶縁材17が受けるダメージを抑制することが望ましい。
【0089】
半導体装置153の構成は、例えば、絶縁材17の熱伝導率κ2と絶縁材17の厚みD2の比κ2/D2がκ2/D2≦35×104W/(m2K)を満たし、接合材16の固相線温度が接合材20の固相線温度以上であり、接合材16の固相線温度と接合材20の固相線温度の差が40℃以内である、というものである。このような構成により、接合材16の再溶融が抑制され、また、接合材16の固相線温度と接合材20の固相線温度との差に基づいて絶縁材17が受けるダメージが抑制される。
【0090】
絶縁材17の熱伝導率κ2は例えば35W/(m・K)以下であり、絶縁材17の厚みD2は例えば100μm以上である。
【0091】
接合材16の固相線温度は例えば接合材20の液相線温度以上である。
【0092】
絶縁材17は例えば絶縁樹脂である。当該絶縁材樹脂は例えばエポキシ樹脂を主成分とする絶縁材樹脂である。絶縁材17は例えばセラミックである。当該セラミックは例えばAl2O3を主成分とするセラミックである。
【0093】
導体パターン19は例えば導体パターン18よりも薄い。導体パターン19の厚みは例えば0.8mm以下である。
【0094】
接合材20の厚みは例えば150μm以下である。
【0095】
<D.実施の形態4>
図8は実施の形態4の半導体装置154の断面図である。半導体装置154は、実施の形態1の半導体装置151と比べると、ベース板11の代わりにベース板11dを備える。半導体装置154は、その他の点では実施の形態1の半導体装置151と同様である。
【0096】
ベース板11dの下面には凹凸が設けられている。
図8では、ベース板11dが下面にピンフィン22を備えることによりベース板11dの下面に凹凸が設けられている場合が示されている。ベース板11dの下面の凹凸は他の構造により設けられたものでもよい。例えば、ベース板11dの下面に溝が設けられることにより、ベース板11dの下面の凹凸が設けられてもよい。
【0097】
ベース板11dの下面に凹凸が設けられていることにより、ベース板11dの下面に冷媒を直接当てた際の、冷媒とベース板11dとの間での熱交換の効率が向上する。そのため、半導体素子5を効率よく冷却でき、半導体装置154の電流容量の向上および小型化が可能である。
【0098】
本実施の形態の半導体装置の製造方法は、ベース板11の代わりにベース板11dを用いることを除けば、実施の形態1の半導体装置の製造方法と同様である。
【0099】
半導体装置154は、実施の形態2または3の半導体装置152または半導体装置153の構成からベース板11をベース板11dで置き換えた構成の半導体装置であってもよい。
【0100】
<E.実施の形態5>
図9は実施の形態5の半導体装置155の断面図である。本実施の形態の半導体装置155は、実施の形態1の半導体装置151と比べると、半導体ユニット101の代わりに半導体ユニット105を備える点が異なる。本実施の形態の半導体装置155は、その他の点では実施の形態1の半導体装置151と同様である。
【0101】
半導体ユニット105において、導体パターン3は、導体パターン3の下面の外周部の少なくとも部分的な領域においては、接合材12によってベース板11と接合されていない。また、半導体ユニット105において、封止材10は、導体パターン3の下面の外周部を少なくとも部分的に覆っている。半導体ユニット105は、その他の点では実施の形態1の半導体ユニット101と同様である。
【0102】
導体パターン3は、導体パターン3の下面の外周部の部分的な領域においては接合材12によってベース板11と接合されていてもよい。導体パターン3の下面のうち接合材12によってベース板11と接合されていていない領域が、導体パターン3の下面の外周部の周方向の全体を含んでいてもよい。
【0103】
封止材10は、導体パターン3の外周部を部分的に覆っていてもよい。封止材10は、導体パターン3の外周部を周方向の全体において覆っていてもよい。
【0104】
半導体ユニット105とベース板11とが接合材12によりが接合されていることで、導体パターン3は、常温において、接合材12の固相線温度と常温の差ΔT2に比例した力を、接合材12から受ける。絶縁材1が導体パターン3を介して接合材12から力を受けること等によって絶縁材1に生じる応力は、導体パターン3の端部と対応する箇所で最大となりやすい。そのため、導体パターン3の端部と対応する箇所を起点として、絶縁材1の破壊およびクラックが進展する可能性が高い。
【0105】
本実施の形態では、導体パターン3の下面の外周部の少なくとも部分的な領域において、接合材12によるベース板11との接合がなされていない。そのため、絶縁材1のうち導体パターン3の端部と対応する箇所に生じる応力が緩和され、絶縁材1の破壊およびクラックを抑制できる。
【0106】
封止材10が導体パターン3の外周部を少なくとも部分的に覆っていることによっても、絶縁材1のうち導体パターン3の端部と対応する箇所に生じる応力が緩和され、絶縁材1の破壊およびクラックを抑制できる。
【0107】
封止材10とベース板11の間に隙間をあけておくことで、温度変化によって封止材10とベース板11が接触して互いに反発しあい接合材12による接合に問題が生じることを抑制できる。
【0108】
本実施の形態の半導体装置の製造方法は、ステップS4(
図10を参照)において封止材10が導体パターン3の下面の外周部を少なくとも部分的に覆うように封止を行うことを除けば、実施の形態1の半導体装置の製造方法と同様である。
【0109】
<F.実施の形態6>
本実施の形態は、上述した実施の形態1から5のいずれかにかかる半導体装置を電力変換装置に適用したものである。実施の形態1から5のいずれかにかかる半導体装置の適用は特定の電力変換装置に限定されるものではないが、以下、実施の形態6として、三相のインバータに実施の形態1から5のいずれかにかかる半導体装置を適用した場合について説明する。
【0110】
図11は、本実施の形態にかかる電力変換装置を適用した電力変換システムの構成を示すブロック図である。
【0111】
図11に示す電力変換システムは、電源100、電力変換装置200、負荷300から構成される。電源100は、直流電源であり、電力変換装置200に直流電力を供給する。電源100は種々のもので構成することが可能であり、例えば、直流系統、太陽電池、蓄電池で構成することができるし、交流系統に接続された整流回路またはAC/DCコンバータで構成することとしてもよい。また、電源100を、直流系統から出力される直流電力を所定の電力に変換するDC/DCコンバータによって構成することとしてもよい。
【0112】
電力変換装置200は、電源100と負荷300の間に接続された三相のインバータであり、電源100から供給された直流電力を交流電力に変換し、負荷300に交流電力を供給する。電力変換装置200は、
図11に示すように、直流電力を交流電力に変換して出力する主変換回路201と、主変換回路201を制御する制御信号を主変換回路201に出力する制御回路203とを備えている。
【0113】
負荷300は、電力変換装置200から供給された交流電力によって駆動される三相の電動機である。なお、負荷300は特定の用途に限られるものではなく、各種電気機器に搭載された電動機であり、例えば、ハイブリッド自動車、電気自動車、鉄道車両、エレベーター、もしくは、空調機器向けの電動機として用いられる。
【0114】
以下、電力変換装置200の詳細を説明する。主変換回路201は、スイッチング素子と還流ダイオードを備えており(図示せず)、スイッチング素子がスイッチングすることによって、電源100から供給される直流電力を交流電力に変換し、負荷300に供給する。主変換回路201の具体的な回路構成は種々のものがあるが、本実施の形態にかかる主変換回路201は2レベルの三相フルブリッジ回路であり、6つのスイッチング素子とそれぞれのスイッチング素子に逆並列された6つの還流ダイオードから構成することができる。主変換回路201の各スイッチング素子および各還流ダイオードの少なくともいずれかは、上述した実施の形態1から5のいずれかにかかる半導体装置に相当する半導体装置202が有するスイッチング素子または還流ダイオードである。6つのスイッチング素子は2つのスイッチング素子ごとに直列接続され上下アームを構成し、各上下アームはフルブリッジ回路の各相(U相、V相、W相)を構成する。そして、各上下アームの出力端子、すなわち主変換回路201の3つの出力端子は、負荷300に接続される。
【0115】
また、主変換回路201は、各スイッチング素子を駆動する駆動回路(図示なし)を備えているが、駆動回路は半導体装置202に内蔵されていてもよいし、半導体装置202とは別に駆動回路を備える構成であってもよい。駆動回路は、主変換回路201のスイッチング素子を駆動する駆動信号を生成し、主変換回路201のスイッチング素子の制御電極に供給する。具体的には、後述する制御回路203からの制御信号に従い、スイッチング素子をオン状態にする駆動信号とスイッチング素子をオフ状態にする駆動信号とを各スイッチング素子の制御電極に出力する。スイッチング素子をオン状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以上の電圧信号(オン信号)であり、スイッチング素子をオフ状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以下の電圧信号(オフ信号)となる。
【0116】
制御回路203は、負荷300に所望の電力が供給されるよう主変換回路201のスイッチング素子を制御する。具体的には、負荷300に供給すべき電力に基づいて主変換回路201の各スイッチング素子がオン状態となるべき時間(オン時間)を算出する。例えば、出力すべき電圧に応じてスイッチング素子のオン時間を変調するPWM制御によって主変換回路201を制御することができる。そして、各時点においてオン状態となるべきスイッチング素子にはオン信号を、オフ状態となるべきスイッチング素子にはオフ信号が出力されるよう、主変換回路201が備える駆動回路に制御指令(制御信号)を出力する。駆動回路は、この制御信号に従い、各スイッチング素子の制御電極にオン信号又はオフ信号を駆動信号として出力する。
【0117】
本実施の形態に係る電力変換装置では、主変換回路201が備える半導体装置202として実施の形態1から5のいずれかにかかる半導体装置を適用するため、半導体装置202の製造過程における接合材4の再溶融を抑制でき、電力変換装置の品質の低下を抑制できる。
【0118】
本実施の形態では、2レベルの三相インバータに実施の形態1から5のいずれかにかかる半導体装置を適用する例を説明したが、実施の形態1から5のいずれかにかかる半導体装置の適用は、これに限られるものではなく、種々の電力変換装置に適用することができる。本実施の形態では、2レベルの電力変換装置としたが3レベルまたはマルチレベルの電力変換装置であっても構わないし、単相負荷に電力を供給する場合には単相のインバータに実施の形態1から5のいずれかにかかる半導体装置を適用しても構わない。また、直流負荷等に電力を供給する場合にはDC/DCコンバータまたはAC/DCコンバータに実施の形態1から5のいずれかにかかる半導体装置を適用することも可能である。
【0119】
また、実施の形態1から5のいずれかにかかる半導体装置を適用した電力変換装置は、上述した負荷が電動機の場合に限定されるものではなく、例えば、放電加工機、レーザー加工機、誘導加熱調理器、または非接触給電システムの電源装置として用いることもでき、さらには太陽光発電システムまたは蓄電システム等のパワーコンディショナーとして用いることも可能である。
【0120】
なお、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0121】
1 絶縁材、2,3,18,19 導体パターン、4,12,14,15,16,20 接合材、5,5a1,5a2,5b1,5b2 半導体素子、6,7 ワイヤ、8 主端子、8a,8b,8c,8d,8e,8f 主端子、9 信号端子、10 封止材、11,11d,21 ベース板、13,81 インナーリード、17 絶縁材、22 ピンフィン、25,26 絶縁基板、82 アウターリード、100 電源、101,102,103,105 半導体ユニット、151,152,153,154,155,202 半導体装置、200 電力変換装置、201 主変換回路、203 制御回路、300 負荷。