(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】光ファイバ走査によって画像を記録するためのマイクロ器具システム及び方法、並びに画像を生成するためのコンピュータ実装方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20240927BHJP
A61B 3/10 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61B1/00 526
A61B1/00 522
A61B3/10 100
(21)【出願番号】P 2023564031
(86)(22)【出願日】2022-04-14
(86)【国際出願番号】 EP2022060131
(87)【国際公開番号】W WO2022223469
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-12-04
(31)【優先権主張番号】102021109825.4
(32)【優先日】2021-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502303382
【氏名又は名称】カール ツアイス メディテック アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100230514
【氏名又は名称】泉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】デルバート ピーター アンドリュース
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン フォイクト
(72)【発明者】
【氏名】キャロリン クルスマン
(72)【発明者】
【氏名】マシアス ヒルエンブランド
(72)【発明者】
【氏名】マックス リーデル
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン マルツィ
(72)【発明者】
【氏名】フランチスカ マティス-ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】フリッツ ヘンゲレール
【審査官】小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-524061(JP,A)
【文献】特表2017-501854(JP,A)
【文献】特表2019-532730(JP,A)
【文献】特開2008-165236(JP,A)
【文献】米国特許第07189961(US,B1)
【文献】米国特許第06294775(US,B1)
【文献】High-resolution resonant and nonresonant fiber-scanning confocal microscope,Journal of Biomedical Optics,2011年02月,Vol. 16, No. 2,026007
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ器具(1)を用いて、少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の遠位端(23、93)が、観察対象(27)の関心領域にわたって横方向に動かされている間、光ファイバ走査によって前記観察対象(27)の二次元又は三次元画像を記録するためのマイクロ器具システムであって:
- 前記観察対象(27)を向いている遠位端(23、93)を有する少なくとも1本の統合光ファイバ(15、80)を有するマイクロ器具(1)、
- 画像データを記録するために、前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)を用いて、前記観察対象(27)からの光を供給可能である記録装置(9)、
- 前記それぞれの画像データの記録時点の前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)の位置を表す位置データを少なくとも決定し且つ前記画像データに前記位置データを割り当てるように設計された決定機器(2、41a、41b、43);及び
- データ処理デバイス(45)であって、
- 前記画像データを受信するために、前記記録装置(9)に接続され;
- 前記位置データを受信するために、前記決定機器(2、41a、41b、43)に接続され;及び
- 前記位置データを用いて、二次元又は三次元画像を形成するために、前記画像データをコンパイルするように設計される、データ処理デバイス(45)
を含む、マイクロ器具システムにおいて、
前記決定機器(2、41a、41b、43)は、前記観察対象(27)に対して前記位置データを決定するように設計されることを特徴とする、マイクロ器具システム。
【請求項2】
- 前記決定機器(2、41a、41b、43)は、前記それぞれの画像データの前記記録時点における前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)の向きを表す向きデータを決定し且つ前記画像データに前記向きデータを割り当てるようにも設計され、
- 前記データ処理デバイス(45)はまた、前記向きデータを受信するために、前記決定機器(2、41a、41b、43)に接続され、及び
- 前記データ処理デバイス(45)は、前記位置データを用いるだけでなく、前記向きデータも用いて、二次元又は三次元画像を形成するために前記画像データをコンパイルするように設計されることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ器具システム。
【請求項3】
マイクロ器具(1)を用いて、少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の遠位端(23、93)が、観察対象(27)の関心領域にわたって横方向に動かされている間、光ファイバ走査によって前記観察対象(27)の二次元又は三次元画像を記録するためのマイクロ器具システムであって:
- 前記観察対象(27)を向いている遠位端(23、93)を有する少なくとも1本の統合光ファイバ(15、80)を有するマイクロ器具(1);
- 画像データを記録するために、前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)を用いて、前記観察対象(27)からの光を供給可能である記録装置(9);
- 前記それぞれの画像データの記録時点の前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)の位置を表す位置データを少なくとも決定し且つ前記画像データに前記位置データを割り当てるように設計された決定機器(2、41a、41b、43);及び
- データ処理デバイス(45)であって、
- 前記画像データを受信するために、前記記録装置(9)に接続され;
- 前記位置データを受信するために、前記決定機器(2、41a、41b、43)に接続され、及び
- 前記位置データを用いて、二次元又は三次元画像を形成するために、前記画像データをコンパイルするように設計されるデータ処理デバイス(45)
を含み、
前記決定機器(2、41a、41b、43)は、規定された座標系において前記位置データを絶対的に決定するように設計される、マイクロ器具システムにおいて、
- 前記決定機器(2、41a、41b、43)は、前記それぞれの画像データの前記記録時点における前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)の向きを表す向きデータを決定し且つ前記向きデータを前記画像データに割り当てるようにも設計され、
- 前記データ処理デバイス(45)はまた、前記向きデータを受信するために、前記決定機器(2、41a、41b、43)に接続され、及び
- 前記データ処理デバイス(45)は、前記位置データを用いるだけでなく、前記向きデータも用いて、二次元又は三次元画像を形成するために、前記画像データをコンパイルするように設計されることを特徴とする、マイクロ器具システム。
【請求項4】
- 前記マイクロ器具(1)は、遠位端(21、90)を備える棒状又はチューブ状構造(3、77)であり、前記光ファイバの前記遠位端(23、93)は、前記棒状又はチューブ状構造(3、77)の前記遠位端(21、90)に位置し、
- 前記観察対象(27)の前記関心領域にわたる前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)の横方向の動きは、前記棒状又はチューブ状構造(3、77)の前記遠位端(21、90)が前記関心領域にわたって動かされるおかげで、実施され、及び
- 前記決定機器(2、41a、41b、43)は、前記マイクロ器具(1)の要素(2A)
の検出された位置それぞれからの前記位置データを決定するように設計される追跡システム(2)であり、前記棒状又はチューブ状構造(3、77)の前記遠位端(23、93)に対するその要素の空間位置は分かっていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のマイクロ器具システム。
【請求項5】
- 前記マイクロ器具(1)は、遠位端(21、90)を備える棒状又はチューブ状構造(3、77)であり、前記光ファイバの前記遠位端(23、93)は、前記棒状又はチューブ状構造(3、77)の前記遠位端(21、90)に位置し、
- 前記観察対象(27)の前記関心領域にわたる前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)の前記横方向の動きは、前記棒状又はチューブ状構造(3、77)の前記遠位端(21、90)が前記関心領域にわたって動かされるおかげで、実施され、及び
- 前記決定機器(2、41a、41b、43)は評価ユニット(43)を含み、この評価ユニットは、画像処理ソフトウェアを用いて、前記棒状又はチューブ状構造(3、77)の前記遠位端を、外科用顕微鏡(39)によって記録された立体像で特定し、且つ前記観察対象(27)に対する又は前記外科用顕微鏡(39)の座標系に対する前記棒状又はチューブ状構造(3、77)の前記遠位端(21、90)の前記位置データを決定するように設計されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のマイクロ器具システム。
【請求項6】
- 前記マイクロ器具(1)は、遠位端(21、90)を備える棒状又はチューブ状構造(3、77)であり、前記光ファイバの前記遠位端(23、93)は、前記棒状又はチューブ状構造(3、77)の前記遠位端(21、90)に位置し、
- 前記観察対象(27)の前記関心領域にわたる前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)の前記横方向の動きは、前記棒状又はチューブ状構造(3、77)の前記遠位端(21、90)が前記関心領域にわたって動かされるおかげで、実施され、及び
慣性センサーシステムが決定機器(2、41a、41b、43)として利用され、前記慣性センサーシステムは、検出された動きに基づいて又は検出された向きに基づいて、前記位置データを決定することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のマイクロ器具システム。
【請求項7】
第1に、前記位置データ、第2に、前記画像データを、互いに時間的に同期させるために、前記位置データを前記画像データに前記割り当てるように設計された同期機器を特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のマイクロ器具システム。
【請求項8】
第1に、前記位置データ及び前記向きデータ、第2に、前記画像データを、互いに時間的に同期させるために、前記位置データ及び前記向きデータを前記画像データに前記割り当てるように設計された同期機器を特徴とする、請求項2又は3に記載のマイクロ器具システム。
【請求項9】
観察対象を向いている遠位端をそれぞれ備える複数の光ファイバ(80)が、前記マイクロ器具に組み込まれることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のマイクロ器具システム。
【請求項10】
前記マイクロ器具(1)は、前記少なくとも1本の光ファイバ(15)の前記遠位端(23)又は前記マイクロ器具(1)の前記遠位端(21)の横振動を誘発するデバイス(47、49)を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のマイクロ器具システム。
【請求項11】
- 振動を導入する前記デバイス(47、49)は、調整可能な向きでの横振動の前記誘発を可能にするように、設計され、及び
- 前記データ処理デバイス(45)は、時間的に連続する位置データ及び任意選択的に向きデータから、前記少なくとも1本の光ファイバ(15)の前記遠位端(21)又は前記マイクロ器具(1)の前記遠位端(21)の振動補正された動きの方向を決定し、且つ制御信号を発生して、後者を、振動を誘発するための前記デバイス(47、49)へ出力するように設計され、前記制御信号は、振動を誘発するための前記デバイス(47、49)を、前記横振動が前記決定された振動補正された動きの方向に対して垂直に向けられるように、制御することを特徴とする、請求項10に記載のマイクロ器具システム。
【請求項12】
- 前記マイクロ器具(1)は、前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の近位端が位置する近位端(57、81)を含み、及び
- スキャナー(53、83)が、前記マイクロ器具(1)の前記近位端(57、81)又は前記遠位端(21、90)に存在し、且つ前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の対応する端から出てくる光及び前記光ファイバ(15、80)に入る光の方向を修正するために使用され得ることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のマイクロ器具システム。
【請求項13】
- 複数の光ファイバ(80)が前記マイクロ器具に組み込まれ、
- 前記マイクロ器具は、前記光ファイバ(80)の近位端に位置し及び連続して前記個々の光ファイバ(80)の前記近位端中へ光を入力結合し且つ前記個々の光ファイバ(80)からの光を出力結合するために使用され得るスキャナー(83)を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のマイクロ器具システム。
【請求項14】
光ファイバ走査システムの一部であり且つ観察対象(27)を向く遠位端(23、93)を備える光ファイバ(15、80)が組み込まれるマイクロ器具(1)を用いて、前記観察対象(27)の二次元又は三次元画像を生成するためのコンピュータ実装方法であって、以下の:
- 前記少なくとも1本の光ファイバ(1、80)を用いて取得された複数の画像データを受信又は検索するステップであって、前記画像データは、前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)が前記マイクロ器具(1)を用いて前記観察対象(27)の関心領域にわたって横方向に動かされる間に、取得されるステップ;及び
- 前記画像データに割り当てられた少なくとも位置データを受信又は検索するステップであって、前記位置データは、前記それぞれの画像データが取得されている間の、前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)の位置を表すステップか、又は受信若しくは検索されたデータから前記位置データを決定するステップであって、前記データは、前記画像データに割り当てられ、且つ前記それぞれの画像データが取得されている間に、前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)の前記位置データを得ることを可能にするステップ、
- 前記位置データを用いて、前記画像データから前記二次元又は三次元画像をコンパイルするステップ
を含む、方法において、
前記受信、検索、又は決定された位置データは、前記観察対象(27)に関して利用可能であることを特徴とする、方法。
【請求項15】
- 向きデータは前記画像データに割り当てられ、前記それぞれの画像データが取得されている間の前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)の前記向きを表す前記向きデータも、受信されるか若しくは呼び出されるか、又は前記向きデータは、受信若しくは検索されたデータから決定され、前記データは、前記画像データに割り当てられ、且つ前記それぞれの画像データが取得されている間に、前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)の前記向きデータを得ることを可能にし、及び
- 前記画像データは、前記位置データを用いるだけでなく、前記向きデータも用いて、前記二次元又は三次元画像を形成するためにコンパイルされることを特徴とする、請求項14に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項16】
光ファイバ走査システムの一部であり且つ観察対象(27)を向く遠位端(23、93)を備える光ファイバ(15、80)が組み込まれるマイクロ器具(1)を用いて、前記観察対象(27)の二次元又は三次元画像を生成するためのコンピュータ実装方法であって、以下の:
- 前記少なくとも1本の光ファイバ(1、80)を用いて取得された複数の画像データを受信又は検索するステップであって、前記画像データは、前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)が前記マイクロ器具(1)を用いて前記観察対象(27)の関心領域にわたって横方向に動かされる間に、取得されるステップ;及び
- 前記画像データに割り当てられた少なくとも位置データを受信又は検索するステップであって、前記位置データは、前記それぞれの画像データが取得されている間の、前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)の位置を表すステップか、又は受信若しくは検索されたデータから前記位置データを決定するステップであって、前記データは前記画像データに割り当てられ、且つ前記それぞれの画像データが取得されている間に、前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)の前記位置データを得ることを可能にするステップ、
- 前記位置データを用いて、前記画像データから前記二次元又は三次元画像をコンパイルするステップ
を含み、
前記受信、検索、又は決定された位置データは、規定された座標系において、絶対的に利用可能である、方法において、
- 前記画像データに割り当てられた、前記それぞれの画像データが取得されている間の前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)の向きを表す向きデータも、受信若しくは検索されるか、又は前記向きデータは、受信若しくは検索されたデータから決定され、前記データは、前記画像データに割り当てられ、且つ前記それぞれの画像データが取得されている間に、前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)の前記向きデータを得ることを可能にし、
- 前記画像データは、前記位置データを用いるだけでなく、前記向きデータも用いて、前記二次元又は三次元画像を形成するためにコンパイルされることを特徴とする、方法。
【請求項17】
- 前記マイクロ器具(1)は、遠位端(21、90)を備える棒状又はチューブ状構造(3、77)であり、前記光ファイバの前記遠位端(23、93)は、前記棒状又はチューブ状構造(3、77)の前記遠位端(21、90)に位置し、
- 前記観察対象(27)の前記関心領域にわたる前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)の横方向の動きは、前記棒状又はチューブ状構造(3、77)の前記遠位端(21、90)が前記関心領域にわたって動かされるおかげで、実施され、及び
- 前記位置データは、前記マイクロ器具(1)の要素(2A)
の検出された位置それぞれからの前記位置データを決定するように設計される追跡システム(2)である決定機器(2、41a、41b、43)によって受信され、前記棒状又はチューブ状構造(3、77)の前記遠位端(23、93)に対するその要素の空間位置は分かっていることを特徴とする、請求項14~16のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項18】
- 前記マイクロ器具(1)は、遠位端(21、90)を備える棒状又はチューブ状構造(3、77)であり、前記光ファイバの前記遠位端(23、93)は、前記棒状又はチューブ状構造(3、77)の前記遠位端(21、90)に位置し、
- 前記観察対象(27)の前記関心領域にわたる前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)の前記横方向の動きは、前記棒状又はチューブ状構造(3、77)の前記遠位端(21、90)が前記関心領域にわたって動かされるおかげで、実施され、及び
- 前記位置データは、評価ユニット(43)を含む決定機器(2、41a、41b、43)によって受信され、この評価ユニットは、画像処理ソフトウェアを用いて、前記棒状又はチューブ状構造(3、77)の前記遠位端を、外科用顕微鏡(39)によって記録された立体像で特定し、且つ前記観察対象(27)に対する又は前記外科用顕微鏡(39)の座標系に対する前記棒状又はチューブ状構造(3、77)の前記遠位端(21、90)の前記位置データを決定するように設計されることを特徴とする、請求項14~16のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項19】
- 前記マイクロ器具(1)は、遠位端(21、90)を備える棒状又はチューブ状構造(3、77)であり、前記光ファイバの前記遠位端(23、93)は、前記棒状又はチューブ状構造(3、77)の前記遠位端(21、90)に位置し、
- 前記観察対象(27)の前記関心領域にわたる前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)の前記横方向の動きは、前記棒状又はチューブ状構造(3、77)の前記遠位端(21、90)が前記関心領域にわたって動かされるおかげで、実施され、及び
- 前記位置データは、慣性センサーシステムとして設計される決定機器(2、41a、41b、43)によって受信され、前記慣性センサーシステムは、検出された動きに基づいて又は検出された向きに基づいて、前記位置データを決定することを特徴とする、請求項14~16のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項20】
前記画像データへの前記位置データの前記割り当てのために、第1に、前記位置データ、第2に、前記画像データが、互いに時間的に同期されることを特徴とする、請求項14~16のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項21】
前記画像データへの前記位置データ及び前記向きデータの前記割り当てのために、第1に、前記位置データ及び前記向きデータ、第2に、前記画像データが、互いに時間的に同期されることを特徴とする、請求項15又は16に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項22】
さらに走査データ及び/又は振動データが収集又は検索され、及び前記二次元又は三次元画像をコンパイルするときに、前記走査データ及び/又は振動データも考慮されることを特徴とする、請求項14~16のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項23】
前記位置データは、記録された画像データの共通の画像内容から取得されることを特徴とする、請求項14~16のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項24】
前記位置データ及び前記向きデータは、記録された画像データの共通の画像内容から取得されることを特徴とする、請求項15又は16に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項25】
観察対象(27)を向く遠位端(23、93)を備える少なくとも1本の光ファイバ(15、80)が組み込まれるマイクロ器具(1)を用いて、前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)が前記観察対象(27)の関心領域にわたって動かされている間に、前記マイクロ器具(1)を使用して、光ファイバ走査によって、前記観察対象(27)の前記関心領域の二次元又は三次元画像を記録するための
マイクロ器具システムの作動方法であって、以下の:
- 前記観察対象(27)の前記関心領域にわた
る動きの最中に、前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)が動かされる経路上のいくつかの位置に関する位置データを収集するステップ、又は前記観察対象(27)の前記関心領域にわたる前記動きの最中に、前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)が動かされる前記経路上のいくつかの位置に関する位置データを得ることを可能にするデータを収集し、且つこれらのデータから前記位置データを決定するステップ;
- 前記位置データが収集又は決定された位置において画像データを収集し、且つ前記それぞれの位置データに前記画像データを割り当てるステップ;及び
- 前記位置データを用いて、前記二次元又は三次元画像を形成するために、前記画像データをコンパイルするステップ
を含む、
作動方法において、
前記収集又は決定された位置データは、前記観察対象(27)に対して利用可能であることを特徴とする、
作動方法。
【請求項26】
- 前記観察対象(27)の前記関心領域にわたる前記動きの最中に、前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)が動かされる前記経路のいくつかの位置に関する向きデータが、収集されるか、又は前記向きデータは、前記観察対象(27)の前記関心領域にわたる前記動きの最中に、前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)が動かされる前記経路のいくつかの位置に関する向きデータを得ることを可能にするデータから決定され;
- 前記画像データは、前記それぞれの位置データだけでなく、前記それぞれの向きデータにも割り当てられ;及び
- 前記画像データは、前記位置データを用いるだけでなく、前記向きデータも用いて、前記二次元又は三次元画像を形成するためにコンパイルされることを特徴とする、請求項25に記載の
作動方法。
【請求項27】
観察対象(27)を向く遠位端(23、93)を備える少なくとも1本の光ファイバ(15、80)が組み込まれるマイクロ器具(1)を用いて、前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)が前記観察対象(27)の関心領域にわたって動かされている間に、前記マイクロ器具(1)を使用して、光ファイバ走査によって、前記観察対象(27)の前記関心領域の二次元又は三次元画像を記録するための
マイクロ器具システムの作動方法であって、以下の:
- 前記観察対象(27)の前記関心領域にわた
る動きの最中に、前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)が動かされる経路上のいくつかの位置に関する位置データを収集するステップ、又は前記観察対象(27)の前記関心領域にわたる前記動きの最中に、前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)が動かされる前記経路上のいくつかの位置に関する位置データを得ることを可能にするデータを収集し、且つこれらのデータから前記位置データを決定するステップ;
- 位置データが収集又は決定された位置の画像データを収集し、且つ前記それぞれの位置データに前記画像データを割り当てるステップ;及び
- 前記位置データを用いて、前記二次元又は三次元画像を形成するために、前記画像データをコンパイルするステップ
を含み、
前記収集又は決定された位置データは、規定された座標系において絶対的に利用可能である、
作動方法において、
- 前記観察対象(27)の前記関心領域にわたる前記動きの最中に、前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)が動かされる前記経路のいくつかの位置に関する向きデータが、収集されるか、又は前記向きデータは、前記観察対象(27)の前記関心領域にわたる前記動きの最中に、前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)が動かされる前記経路のいくつかの位置に関する向きデータを得ることを可能にするデータから決定され;
- 前記画像データは、前記それぞれの位置データだけでなく、前記それぞれの向きデータにも割り当てられ;及び
- 前記画像データは、前記位置データを用いるだけでなく、前記向きデータも用いて、前記二次元又は三次元画像を形成するためにコンパイルされることを特徴とする、
作動方法。
【請求項28】
- 前記マイクロ器具(1)は、遠位端(21、90)を備える棒状又はチューブ状構造(3、77)であり、前記光ファイバの前記遠位端(23、93)は、前記棒状又はチューブ状構造(3、77)の前記遠位端(21、90)に位置し、
- 前記観察対象(27)の前記関心領域にわたる前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)の横方向の動きは、前記棒状又はチューブ状構造(3、77)の前記遠位端(21、90)が前記関心領域にわたって動かされるおかげで、実施され、及び
- 前記位置データは、決定機器(2、41a、41b、43)のおかげで収集され、その決定機器は追跡システム(2)であり、前記マイクロ器具(1)の要素(2A)
の検出された位置それぞれからの前記位置データを決定し、前記棒状又はチューブ状構造(3、77)の前記遠位端(23、93)に対するその要素の空間位置は分かっていることを特徴とする、請求項25~27のいずれか1項に記載の
作動方法。
【請求項29】
- 前記マイクロ器具(1)は、遠位端(21、90)を備える棒状又はチューブ状構造(3、77)であり、前記光ファイバの前記遠位端(23、93)は、前記棒状又はチューブ状構造(3、77)の前記遠位端(21、90)に位置し、
- 前記観察対象(27)の前記関心領域にわたる前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)
の横方向の動きは、前記棒状又はチューブ状構造(3、77)の前記遠位端(21、90)が前記関心領域にわたって動かされるおかげで、実施され、及び
- 前記位置データは、決定機器(2、41a、41b、43)のおかげで収集され、その決定機器は、画像処理ソフトウェアを備える評価ユニット(43)を含み、それを用いて、前記棒状又はチューブ状構造(3、77)の前記遠位端を、外科用顕微鏡(39)によって記録された立体像で特定し、且つ前記位置データは、前記観察対象(27)に対する又は前記外科用顕微鏡(39)の座標系に対する前記棒状又はチューブ状構造(3、77)の前記遠位端(21、90)の立体情報に基づいて決定されることを特徴とする、請求項25~27のいずれか1項に記載の
作動方法。
【請求項30】
- 前記マイクロ器具(1)は、遠位端(21、90)を備える棒状又はチューブ状構造(3、77)であり、前記光ファイバの前記遠位端(23、93)は、前記棒状又はチューブ状構造(3、77)の前記遠位端(21、90)に位置し、
- 前記観察対象(27)の前記関心領域にわたる前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)
の横方向の動きは、前記棒状又はチューブ状構造(3、77)の前記遠位端(21、90)が前記関心領域にわたって動かされるおかげで、実施され、及び
- 前記位置データは、決定機器(2、41a、41b、43)として利用される慣性センサーシステムのおかげで収集され、前記慣性センサーシステムは、検出された動きに基づいて又は検出された向きに基づいて、前記位置データを決定することを特徴とする、請求項25~27のいずれか1項に記載の
作動方法。
【請求項31】
前記画像データへの前記位置データの前記割り当てのために、第1に、前記位置データ、第2に、前記画像データが、互いに時間的に同期されることを特徴とする、請求項25~27のいずれか1項に記載の
作動方法。
【請求項32】
前記画像データへの前記位置データ及び前記向きデータの前記割り当てのために、第1に、前記位置データ及び前記向きデータ、第2に、前記画像データが、互いに時間的に同期されることを特徴とする、請求項26又は27に記載の
作動方法。
【請求項33】
前記観察対象を向く遠位端(93)をそれぞれ備える複数の光ファイバ(80)が組み込まれるマイクロ器具が利用され、及び画像データは、位置データが収集された前記位置において、前記光ファイバ(18)のそれぞれによって取得される、請求項25~27のいずれか1項に記載の
作動方法。
【請求項34】
前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記少なくとも1つの遠位端(23、93)又は前記マイクロ器具(1)の前記遠位端(21)の横振動が誘発され、及び前記位置データは、前記誘発された振動の振動周期の最中に、前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)の異なる位置において収集される、請求項25~27のいずれか1項に記載の
作動方法。
【請求項35】
前記観察対象(27)の前記関心領域にわたる前記動きの最中に、前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)又は前記マイクロ器具(1)の前記遠位端(21)が動かされる前記経路の現在の振動補正された方向は、横振動が誘発される前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)又は前記マイクロ器具(1)の前記遠位端(21)の前記位置データ及び前記横振動から決定され、横振動は、前記決定された現在の振動補正された方向に対して垂直に伸びる、請求項27に記載の
作動方法。
【請求項36】
前記画像データを記録するために、前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)に供給される光の方向は、前記マイクロ器具(1)を用いて、前記少なくとも1本の光ファイバ(15、80)の前記遠位端(23、93)が前記観察対象(27)の前記関心領域にわたって動かされる間に、修正される、請求項25~27のいずれか1項に記載の
作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ走査による二次元又は三次元画像を記録するためのマイクロ器具システム及びその使用法に関する。さらに、本発明は、観察対象の二次元又は三次元画像を生成するためのコンピュータ実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一部の外科の分野、例えば神経外科及び眼科手術では、外科用顕微鏡を使用して手術部位の術中の可視化が行われる。さらに、外科用顕微鏡はまた、光干渉断層法(OCT:optical coherence tomography)を行うための装置を装備し得、それを用いて、微細に集束されたビームを使用して手術部位の関心領域は走査される。しかしながら、そのような純粋な外部の撮像には、例えば眼内にある、アクセスしにくい構造を可視化することを意図する場合、ある程度の制限がある。それゆえ、例えば、小柱網又は虹彩の後ろ側の領域、例えば周辺網膜、鋸状縁、毛様体扁平部、毛様体部、若しくは眼内の溝は、直接可視化及び/又は測定できないか、又は陰影効果若しくは幾何学的な制限のせいで、なんとか直接可視化及び/又は測定されるにすぎないとし得る。さらに、外部の撮像を使用する手術部位の可視化が原理上は可能になるが、特定の状況のせいで妨げられる事態がある。それゆえ、外部の可視化は、例えば、硝子体液が濁っている、角膜混濁がある、又は硝子体液に出血のある後眼部での眼科外科的処置の場合、かなり損なわれるか、又は全く可能ではない。外科用顕微鏡に基づく術中の可視化におけるそのような制限は、外科医に大きな課題を示し、且つまた、外科的処置の可能性又は結果に悪影響を及ぼすかもしれない。いくつかの場合には、眼科手術では、上述の問題に打ち勝つための単純な方法、具体的には、そうでなければ影になった構造に、撮像のためにアクセス可能にするための、眼の強膜圧迫(scleral indentation)及び陥凹(depression)として公知のものであることが分かっている。しかしながら、この方法は、組織外傷のリスクを隠し持つ。さらに、撮像の安定性は、圧迫の十分な制御が欠如していることゆえに、常に単純なわけではない。この方法のさらなる遥かに不利な点は、眼を圧迫するために片手を空けている必要があることである。さらに、圧迫は、眼内の遮られている箇所を可視化に提供するのに常に好適なわけではない。脳神経外科法はまた、組織の変位によって、簡単に撮像に提供することができる、遮られている箇所によって阻まれ得る。
【0003】
光ファイバOCTシステムは、手術部位内の遮られている構造を撮像に提供するオプションを構成する。そのような光ファイバOCTシステムは、例えば、米国特許第10,517,760B2号明細書に説明されている。米国特許第10,517,760B2号明細書に説明されているOCTシステムは、OCTガイド緑内障手術において使用され、ここでは、光ファイバOCTシステムを使用して眼内撮像が実施され得る。この場合、光ファイバ又は光ファイバ束が、光ファイバプローブに組み込まれ、これが、眼の内部に挿入され得る。一次元走査、並びにファイバ束が使用されている場合、二次元及び三次元走査が、そのような光ファイバOCTシステムを使用して、可能である。
【0004】
英国特許第2551102A号明細書には、OCTシステムの1本以上の光ファイバが組み込まれている外科器具が説明されている。二次元又は三次元画像は、光ファイバを用いて記録され得る。
【0005】
国際公開第2012/0126070A1号パンフレット及び国際公開第2014/0175853A1号パンフレットには、引き戻し法として公知のものが説明されており、ここでは、OCTプローブが血管に挿入され、その後引き戻される。血管の三次元画像は、引き戻し中にOCTプローブによって取得される。
【0006】
国際公開第2016/01689A1号パンフレットには、さらに、走査ヘッドを備えるファイバを含むOCTシステムによる、3D画像又はマップの生成が開示されている;及び米国特許出願公開第2007/0239033A1号明細書及び国際公開第02/083003A1号パンフレットには、統合光ファイバを備える生検針が開示されている。
【0007】
さらに、米国特許出願公開第2013/0077048A1号明細書には、使用されるファイバ直径が0.5~2mmのファイバカメラによる撮像について説明されている。
【0008】
さらに、光ファイバOCTシステムを用いて、器具の標的箇所から顕微手術器具の先端までの距離を決定することの実践が公知である。そのような方法及び装置は、例えば、国際公開第2012/012540A2号パンフレット、米国特許出願公開第2015/0297404A1号明細書、及び米国特許第10,045,882B2号明細書に説明されている。
【0009】
説明した方法は、二次元若しくは三次元画像を生成するためのファイバ束、又は遠位ファイバ端に走査機器のいずれかを必要とし、それにより、横方向走査が実施され得る。ファイバ束が使用されるとき、その横方向範囲がマイクロ器具の自由なルーメンによって限定され、その結果、二次元又は三次元画像は、特に非常に小さいマイクロ器具が使用されるときはいつでも、考えられる最善の解像度で、手術部位の比較的小さい横方向領域のみを示し得る。図示の横方向領域は、好適な付属光ユニットを使用して増加され得るが、これは、解像度を悪くする。さらに、遠位ファイバ端の領域におけるスキャナーの使用は、マイクロ器具の機械的に複雑な遠位構造につながり、これは、マイクロ器具の殺菌を困難にし得るか又はさらには不可能にし得、且つその最小サイズをかなり限定する。さらに、構造の複雑さによって生産コストも増大し、それにより、そのような解決法の経済的魅力が下がる。さらに、遠位構成要素は、検出又は走査領域をより大きくするためには、これまでよりも大きく且つさらに複雑である必要がある。それに反して、遠位端が小さく保たれることを意図する場合、例えば高解像度と組み合わせて、考えられる走査領域の大きな範囲を考慮して、撮像の非常に限定された性能のみが可能である。
【0010】
引き戻し法の範囲内で三次元画像を記録することは、主に、チューブ状対象の画像の記録に好適であり、平面対象の画像の記録にはあまり好適ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それゆえ、光ファイバ走査によって二次元又は三次元画像を記録するためのマイクロ器具システム及び方法が必要とされており、システム及び方法は、単一の光ファイバを使用して二次元若しくは三次元画像を記録することを可能にするか、又はファイバ束を使用して二次元若しくは三次元画像を記録することを可能にし、これらの画像は、ファイバ束よりも大きい横方向範囲を有する対象領域を示し、さらにマイクロ器具の遠位端における複雑さがほとんどない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、請求項1に記載のマイクロ器具システム、請求項9に記載の二次元又は三次元画像を生成するためのコンピュータ実装方法、及び請求項14に記載の光ファイバ走査によって二次元又は三次元画像を記録するための方法によって、達成される。従属請求項は、本発明の好都合な形態を含む。
【0013】
マイクロ器具を用いて、少なくとも1本の光ファイバの遠位端が観察対象の関心領域にわたって横方向に動かされている間に、光ファイバ走査によって観察対象を二次元又は三次元画像を記録するための、本発明によるマイクロ器具システムは、以下のものを含む:
- 観察対象を向く遠位端を有する少なくとも1本の統合光ファイバを有するマイクロ器具。この場合、少なくとも1本の光ファイバは、特に光ファイバOCTシステムの光ファイバとし得る。しかしながら、その代わりに、光ファイバ共焦点顕微鏡の一部としてもよい。
- 画像データを記録するために、少なくとも1本の光ファイバを用いて観察対象からの光が供給可能である記録装置。この場合、画像データは、観察対象の走査のために単一の光ファイバを使用するときには、個々のピクセル、すなわち二次元画像における個々の画素、又はボクセル、すなわち三次元画像における個々の画素とし得るか、或いは、光ファイバが光ファイバOCTシステムの一部である場合には、個々のA走査、すなわち観察対象の異なる深さに由来する複数の画素とし得る。画像データは、ファイバ束を使用して観察対象を走査する場合には、小さい面積の2D画像、又はファイバ束が光ファイバOCT装置の一部である場合には、小さい体積の3D画像とし得る。個々の画像データによって表された領域又は個々の画像データによって表された体積の横方向範囲は、この場合、ファイバ束の遠位端の範囲に対応する。
- それぞれの画像データの記録時点の少なくとも1本の光ファイバの遠位端の位置を表す位置データを少なくとも決定し且つ画像データに前記位置データを割り当てるように設計される決定機器。この場合、決定機器は、走査の最中のそれぞれの画像データの記録時点の少なくとも1本の光ファイバの遠位端の位置を検出するように設計され得る。この場合、例えば光追跡システム又は慣性センサーシステムが決定機器として利用され得、これは、回転点の周りでの回転のみを可能にする場合、検出された動きに基づいて又は検出された向きに基づいて、位置を決定する。その代わりに又はそれに加えて、決定機器は、根拠として収集したデータを使用して、走査の最中に、計算によって、それぞれの画像データの記録時点の少なくとも1本の光ファイバの遠位端の位置データを決定するように設計され得、それから、それぞれの画像データの記録時点の少なくとも1本の光ファイバの遠位端の位置が得られ得る。例えば、マイクロ器具の遠位端の異なる位置が、回転点の周りでのマイクロ器具の回転に基づく場合、マイクロ器具の遠位端の位置は、マイクロ器具の向き及び回転点とその遠位端との間の距離に基づいて、決定され得る。従って、それぞれの画像データが取得されるときに少なくとも1本の光ファイバの遠位端の位置データが得られ得るデータは、向きデータとし得る。原理上、観察対象に対する遠位端を示す立体像に基づいて、少なくとも1本の光ファイバの遠位端の位置データを決定することも、可能である。それぞれの画像データが取得されるときの少なくとも1本の光ファイバの遠位端の位置データが得られ得るデータは、その場合の立体像からのデータである。
【0014】
本発明によれば、データ処理デバイスは、画像データを受信するために記録装置に接続され、且つ位置データを受信するために決定機器に接続される。位置データを用いて、二次元又は三次元画像を形成するために画像データをコンパイルするように設計される。
【0015】
決定機器が、それぞれの画像データの記録時点の少なくとも1本の光ファイバの遠位端の向きを表す向きデータも決定し、且つ前記向きデータを画像データに割り当てるように設計され、及びデータ処理デバイスはまた、向きデータを受信するために決定機器に接続される場合も、好都合である。そのため、データ処理デバイスは、位置データを用いるだけでなく、向きデータも用いて、二次元又は三次元画像を形成するために画像データをコンパイルするように設計される。特に、走査の最中にその位置で許容された向き変動の所与の限界を越えて少なくとも1本の光ファイバの遠位端の向きが変わるときはいつでも向きデータを決定することは理にかなうとし得る。この場合、許容された向き変動の所与の限界は、画像データが収集される解像度次第、及び任意選択的に、A走査が実施される深さ範囲次第とし得る。A走査の深さ範囲全体では、少なくとも1本の光ファイバの遠位端の許容された向き変動が、取得された画像データの空間分解能よりも小さいA走査用の画像データが取得される箇所における変動のみをもたらすように、選択されるべきである。
【0016】
位置データ及び任意選択的に向きデータを画像データに割り当てるために、同期機器が存在してもよい;これは、第1に、位置データ及び任意選択的に向きデータ、第2に、画像データを互いに時間的に同期させるように設計される。
【0017】
本発明によるマイクロ器具システムは、少数の光ファイバ及びさらには単一の光ファイバのみによる走査によって、観察対象の二次元又は三次元画像を記録することを可能にし、画像は、使用される少なくとも1本の光ファイバの遠位端又はファイバ束の遠位端の範囲よりも遥かに大きい観察対象の横方向領域で反射する。これを達成するために、走査目的で、ユーザは、観察対象を描きたいかのように、観察対象の関心領域にわたってマイクロ器具の遠位端のみを、掃引する動きで動かす必要がある。画像データは、この掃引する動きの最中に少なくとも1本の光ファイバの遠位端の多様な位置で取得され、その後、画像データに割り当てられた位置データを用いて、及び必要な場合には向きデータを用いて、二次元又は三次元画像をポイント毎に構成するために使用される。走査は、単一の光ファイバではなく、ファイバ束が使用される場合、観察対象の小さい横方向領域をそれぞれ再現する個々の二次元又は三次元画像から大きい二次元又は三次元画像をコンパイルするために使用され得る。さらに、ファイバ束が使用される場合、部分的には、掃引する動きの最中に、ファイバ束の複数のファイバによって対象領域を連続的に検出することが可能であり、その結果、信号強度が増大され得、それゆえ信号雑音比が改善され得る。ファイバ束の個々の光ファイバの遠位端の相対位置は、互いに対して分かっているため、ファイバ束のうちの1つの光ファイバの遠位端の位置及び任意選択的に向きを検出又は決定するので十分である。そのため、残りのファイバの位置及び向きは、ファイバ束の個々の光ファイバの遠位端間の公知の空間関係から決定され得る。
【0018】
本発明によるマイクロ器具システムは、少なくとも1本の光ファイバの遠位端にスキャナーを必要とせず、その結果、マイクロ器具の構造は、単純に保たれ得、前記マイクロ器具の滅菌を容易にする。さらに、単純な構造は、使い捨て製品としてのマイクロ器具のコスト効率的な生産を可能にし、及びこれは、特に、非常に小さい構造寸法の場合に、使用済の器具を再滅菌する場合よりも良好な器具の無菌状態を保証し得る。しかしながら、少なくとも1本の光ファイバの遠位端のスキャナーが、オプションとして可能である。
【0019】
少なくとも1本の光ファイバの遠位端の位置及び/又は向きは、例えば追跡システムや慣性センサーシステムによって、若しくは少なくとも1本の光ファイバの遠位端が立体像で認識されるおかげで、直接検出され得るか、又はマイクロ器具の要素の位置及び/又は向き、例えばマイクロ器具に配置されたマーカが検出され、前記マーカの空間位置及び任意選択的に向きが少なくとも1本の光ファイバの遠位端に対して分かっているおかげで、間接的に検出され得る。さらに、位置データ及び/又は向きデータを、絶対的に、すなわち規定された座標系において決定するオプション、又はこれらを、例えば対象に対して(例えば、対象に対する距離及び向きを検出することによって)若しくは互いに対して(例えば連続的な画像データ中の同じ画像内容に基づいて)、相対的に決定するオプションがある。さらに、位置データ及び/又は向きデータは、画像記録の位置依存性パラメータ、例えば焦点を設定するために、又は走査のために少なくとも1本のファイバを位置決めする及び/又はそのための向きするために、使用され得る。
【0020】
この場合、各画像データセットに対して位置測定も実施することは必須ではない。例として、位置が測定されなかった画像データセットの位置データを決定するために補間又はモデルベースの再構成を使用することも可能である。このための前提条件は、動きの動力学が、個別の検出によって制限される位置検出の帯域幅を上回らないか、又は、それにもかかわらずこれを上回る場合には、この超過分をシステムが分かっていることである。それゆえ、振動の振幅及び向きの双方が分かっている手動の動きにオーバーレイされる高周波数振動の場合には、いずれの場合も振動周期毎に一回のみ、例えば零交差のたびに、位置を測定することで十分である。そのため、振動周期の最中に取られる位置は、公知の振動に基づいて計算され得る。
【0021】
さらに、センサーフュージョン又は情報融合として知られているものを使用して、位置を検出し得る;この場合、異なるセンサーに由来する情報が、互いにつなぎ合わせられる。例えば、高周波数であるが不正確な慣性センサーシステムが、低周波数であるが正確な追跡システムと組み合わせられてもよい。このようにして、慣性センサーシステムによって取得された正確さの劣る位置データ及び任意選択的な向きデータが、潜在的な不正確さが大きくなりすぎる前に、追跡システムの正確な位置データ及び任意選択的な向きデータを使用して、反復的に較正される。
【0022】
本発明によるマイクロ器具システムの好都合な発展形態では、マイクロ器具は、少なくとも1本の光ファイバの遠位端又はマイクロ器具の遠位端の横振動を誘発するための装置を含む。例として、横振動を誘発するための装置は、少なくとも1つの圧電素子及び少なくとも1つの圧電素子用の好適なコントローラを含み得る。
【0023】
振動方向における画像情報の線は、少なくとも1本の光ファイバの遠位端又はマイクロ器具の遠位端の横振動の結果として、記録され得る。少なくとも1本の光ファイバの遠位端の掃引方向が、その場合、振動方向に対して平行に延在しない場合、掃引する動きの最中に、単一の光ファイバのみが走査に使用される場合でも、画素は、掃引する動きに対応する経路に沿ってのみでなく、掃引する動きの線に対して垂直な、ある範囲を有する条片状領域に沿っても、記録される。これは、振動を誘発するための装置が、調整可能な向きによる横振動の誘発を可能にするように、設計される場合、特に好都合に実現され得る。例として、これは、少なくとも2つの圧電素子を使用することによって、達成され得る。この形態では、データ処理デバイスは、時間的に連続する位置データから、少なくとも1本の光ファイバの遠位端の振動補正された動きの方向を決定するように設計される。その後、決定された動きの方向に基づいて制御信号を発生させ、且つ振動を誘発するための装置に前記制御信号を出力し得、制御信号は、横振動が、決定された動きの方向に対して垂直に向けられるように、装置を制御する。このようにして、動きの方向に対して垂直な、走査される条片の最大限可能な範囲が、誘発された振動によって得られ得る。
【0024】
本発明によるマイクロ器具システムでは、マイクロ器具は、近位端及び遠位端を含み得、ここでは、少なくとも1本の光ファイバの近位端は、マイクロ器具の近位端に位置し、及び少なくとも1本の光ファイバの遠位端は、マイクロ器具の遠位端に位置する。スキャナーが、マイクロ器具の近位端又は遠位端に存在し得、且つ少なくとも1本の光ファイバの対応する端から出てくる光、及び光ファイバの対応する端に入る光の方向を修正するために使用され得る。この場合、近位端にあるスキャナーは、遠位端にスキャナーの設置空間を必要としないという利点を提供するため、遠位端は、可能な限り小さく設計されることができる。例えば、ファイバ束の場合、近位端にあるスキャナーは、画像データを取得するために、特定の時間的な順序で各ファイバ束を連続的に制御するために使用され得る。しかしながら、近位端にあるスキャナーはまた、個々の光ファイバの場合に、具体的には、光ファイバがその断面にわたって屈折率勾配を有していれば、使用され得る。これは、光ファイバの端の一方からの光ビームの射出方向が、光ファイバの他方の端中への入射方向次第となることにつながる。それゆえ、観察対象の小さい領域が、近位端における走査の動きによる単一のファイバによって走査され得、このファイバは、これを達成するために、観察対象に対して動かされる必要はない。
【0025】
マイクロ器具の遠位端にあるスキャナーは、特に、いずれの場合も、マイクロ器具の遠位端が可動部を有するときはいつでも、それ自体が役立つ。例として、少なくとも1本の光ファイバが、硝子体切除装置の可動部に組み込まれ得る。この可動部は、スリーブの内部で長手方向の動きを行い、且つ及び眼内の硝子体液を粉砕する働きをする。
【0026】
本発明はまた、光ファイバ走査システムの一部であり且つ観察対象を向く遠位端を備える光ファイバが組み込まれるマイクロ器具を用いて、観察対象の二次元又は三次元画像を生成するためのコンピュータ実装方法を提案する。方法は、以下のステップを含む:
- 少なくとも1本の光ファイバを用いて取得された複数の画像データを受信又は検索するステップであって、マイクロ器具を用いて、少なくとも1本の光ファイバの遠位端が観察対象の関心領域にわたって横方向に動かされている間に、前記画像データが取得されるステップ。この場合、既に上述したように、画像データは、個々の画素、短い長さの若しくは小さい面積の一次元画像若しくは二次元画像、又は小さい体積の三次元画像とし得る。
- 画像データに割り当てられた少なくとも位置データを受信又は検索するステップであって、前記位置データは、それぞれの画像データが取得されている間の少なくとも1本の光ファイバの遠位端の位置を表すステップか、又は受信若しくは検索されたデータから位置データを決定するステップであって、前記データは、画像データに割り当てられ、且つそれぞれの画像データが取得されている間に、少なくとも1本の光ファイバの遠位端の位置データを得ることを可能にするステップ。例として、例えばマイクロ器具の遠位端の異なる位置が回転点の周りでのマイクロ器具の回転に基づく場合、計算によって、受信又は検索された向きデータから、走査の最中に少なくとも1本の光ファイバの遠位端が取った位置に関する位置データを決定することが可能である。この場合、マイクロ器具の遠位端の位置は、その向き及び回転点と遠位端との間の距離に基づいて、決定され得る。従って、少なくとも1本の光ファイバの遠位端の位置データが得られ得るデータは、向きデータとし得る。立体像データも、少なくとも1本の光ファイバの遠位端の位置データが得られ得るデータとして、考慮に入る。
【0027】
特に、少なくとも1本の光ファイバの遠位端の向きがその位置を変える場合、位置データに加えて、画像データに割り当てられる向きデータを受信又は検索することであって、前記向きデータは、走査の最中にそれぞれの画像データが取得されるときの少なくとも1本の光ファイバの遠位端の向きを表すこと、又はそれぞれの画像データが取得されるときに少なくとも1本の光ファイバの遠位端の向きデータが得られ得る、画像データに割り当てられた受信又は検索されたデータから、向きデータを決定することが、さらに好都合である。例として、デジタル立体像は、向きデータを得ることを可能にするデータとし得る。
【0028】
位置データ及び/又は向きデータは、少なくとも1本の光ファイバの遠位端の位置及び向きをそれぞれ直接特定し得るか、又はこれらを、例えばマイクロ器具の要素の位置及び/又は向き、例えばマイクロ器具に配置されたマーカが検出されるおかげで、少なくとも1本の光ファイバの遠位端の位置及び/又は向きがこの要素に対して分かっているため、間接的に特定し得る。さらに、位置データ及び/又は向きデータは、それぞれ絶対的な位置データ及び絶対的な向きデータとし得、これらは、固定された座標系において与えられるか、又はこれらは、それぞれ相対的な位置データ及び相対的な向きデータとし得、以前の画像から抽出される観察対象の要素に対する又は組織構造に対する少なくとも1本の光ファイバの遠位端の位置及び向きをそれぞれ説明する。画像データへの位置データ及び任意選択的に向きデータの割り当てが、例えば、位置データ及び任意選択的に向きデータに、同様に画像データに加えられるタイムスタンプに基づいて、実施され得、タイムスタンプは、走査時に記録された画像データを、この時点で収集又は決定された位置データ及び任意選択的に向きデータに割り当てることを可能にする。しかしながら、割り当てはまた、例えばこれらの画像データの収集又は決定された位置データ及び任意選択的に向きデータとの共通ファイルに記憶されている特定の位置及び任意選択的に向きに対して取得された画像データのおかげで、又は、全てのデータが単一のファイルに記憶されている場合は、このファイル内の、関連付けられた位置データ及び任意選択的に向きデータのすぐ前又は後ろに常に位置する特定の位置及び任意選択的に向きに対して取得された画像データのおかげで、タイムスタンプなしで実施され得る。
【0029】
本発明によれば、二次元又は三次元画像は、走査の最中に取得された画像データからの位置データ及び任意選択的に向きデータを用いてコンパイルされる。このようにして、二次元又は三次元画像は、少なくとも1本の光ファイバの遠位端が走査機器を含む必要なく、単一の光ファイバを使用して取得され得る。複数の光ファイバを備えるファイバ束がマイクロ器具に組み込まれる場合、ファイバ束によって記録されるときに、より大きい範囲の二次元又は三次元画像が、より小さい範囲の二次元又は三次元画像からコンパイルされ得る。この場合、コンピュータ実装方法は、特に、関心対象領域にわたって、関心対象領域を描くことを意図したかのような動きでファイバ束の遠位端又はマイクロ器具の遠位端を案内するユーザのおかげで、関心対象領域の記録を可能にする。画像データは、この動きの最中、多様な位置で取得され、その後、個々の位置で取得されたように、位置データ及び任意選択的に向きデータを用いて、全体的な画像を形成するためにコンパイルされる。
【0030】
上記に説明したように、用いられるマイクロ器具が、スキャナー又はその遠位端若しくは少なくとも1本の光ファイバの遠位端の横振動を誘発する機器を含む場合、コンピュータ実装方法はまた、走査データ及び/又は振動データを受信又は検索するステップを含み得る。この場合、振動データはまた、振動のモデルに基づいて、遠位端のそれぞれの偏向が計算によって決定され得るデータとし得る。振動データが、例えば、振動をもたらすために圧電素子に供給される電圧を表す場合、遠位端のそれぞれの偏向は、電圧と偏向との間の関係を再現するモデルに基づいて、計算によって決定され得る。その後、二次元又は三次元画像をコンパイルするときに、走査データ及び/又は振動データも考慮され得る。例えば、走査データを考慮することは、ファイバ束が、ファイバ束の個々の光ファイバによって収集された画像情報をコンパイルして、ファイバ束によって取得された小さい面積の二次元画像又は小さい体積の三次元画像を形成するために使用される場合、好都合とし得る。屈折率勾配のある個々の光ファイバの場合も、それぞれのスキャナー位置、それゆえ光ファイバ中への及び光ファイバからのビームの入口及び射出方向のそれぞれに関する知識を用いて、小さい範囲で二次元又は三次元画像を取得することが可能である。双方の場合において、走査速度が、光ファイバの遠位端又はマイクロ器具の遠位端が関心対象領域にわたって動かされる速度よりも速ければ、好都合である。この場合、走査速度は、光ファイバの遠位端又はマイクロ器具の遠位端の動きの速度よりも10~1000倍速いとし得る。特に、走査速度は、走査の最中、光ファイバの遠位端又はマイクロ器具の遠位端の位置が実質的に変わらない、すなわち、位置の変化が、走査された画像における2つの隣接する画素間の距離の3倍以下である、特に走査された画像における2つの隣接する画素間の単一の距離以下、及び好ましくは走査された画像における2つの隣接する画素間の距離の半分以下である程度に、高いとし得る。走査された画像は、特に位置の変化が2つの隣接する画素間の距離の半分以下である場合、目立つモーションブラーを含まない。少量のモーションブラーが意図した用途で受け入れられる場合、走査の最中の位置の変化はまた、走査された画像における2つの隣接する画素間の単一の距離以上とし得る。しかしながら、A走査のデータにおけるA走査の最中の動きの速度に起因する遠位端の位置の横方向の変化を考慮することも可能である。換言すると、走査速度が動きの速度と同じ程度である、又はさらにはよりゆっくりである場合、位置データを利用することによって、画像データをコンパイルすることが可能であり、これは、異なる深さで記録され、且つ二次元又は三次元画像において正しい位置を生み出すように互いに対して横方向にシフトされる。
【0031】
本発明のさらなる態様によれば、光ファイバ走査によって観察対象の関心領域の二次元又は三次元画像を記録するための方法が利用可能であり、マイクロ器具は、方法の範囲内で使用され、及び観察対象を向く遠位端を備える少なくとも1本の光ファイバが、前記マイクロ器具に組み込まれている。光ファイバ走査によって記録することは、マイクロ器具を用いて、少なくとも1本の光ファイバの遠位端が観察対象の関心領域にわたって動かされている間に、実施される。特に、動きは、手動で実施され得、且つ観察対象の関心領域を描くことを意図したかのように行われ得る。方法は、以下のステップを含む:
- 観察対象の関心領域にわたる動きの最中に、少なくとも1本の光ファイバの遠位端が動かされる経路上のいくつかの位置に関する位置データを収集するステップ、又はそれぞれの画像データが取得されるときに、少なくとも1本の光ファイバの遠位端の位置データを得ることが可能であるデータを収集し、且つこれらのデータから位置データを決定するステップ。既に上記に述べているように、向きデータ、立体像、又は画像データ自体から、計算によって、位置データを決定することが可能である。
- 画像データを収集し、且つそれぞれの位置データに画像データを割り当てるステップ。画像データに位置データを割り当てるために、例えば、位置データと画像データを互いに時間的に同期させることが可能である。
- 位置データを用いて、二次元又は三次元画像を形成するために画像データをコンパイルするステップ。
【0032】
光ファイバ走査によって観察対象の関心領域の二次元又は三次元画像を記録するための、本発明による方法を用いて、外科医が、走査を実施するために、少なくとも1本の光ファイバの遠位端又はマイクロ器具の遠位端を関心領域にわたって掃引する動きで案内するおかげで、自由に選択可能な関心対象領域を二次元又は三次元で術中に撮像することができる。二次元又は三次元画像を取得するためのこの方法は、直観的に行われ得、且つマイクロ器具の遠位端の複雑な形態を必要としない。特に、方法を行うために単一の光ファイバで十分であるため、これを達成するために、非常に小径のマイクロ器具が使用され得、その結果、方法は、特に、目の手術及び神経外科において問題なく応用され得る。
【0033】
特に、少なくとも1本の光ファイバの遠位端の向きがその位置を変えることができる場合、位置データに加えて、観察対象の関心領域にわたる動きの最中に少なくとも1本の光ファイバの遠位端が動かされる経路上のいくつかの位置に関する向きデータが収集されるか、又は向きデータが、観察対象の関心領域にわたる動きの最中に少なくとも1本の光ファイバの遠位端が動かされる経路上のいくつかの位置に関する向きデータを得ることが可能である、収集されたデータから決定されれば、さらに好都合である。それぞれの位置データに加えて、画像データも、それぞれの向きデータに割り当てられ得、及び位置データを用いるだけでなく、向きデータも用いて、二次元又は三次元画像を形成するために、走査によって取得された画像データをコンパイルすることが実施され得る。走査の最中に収集された画像データへの、収集又は決定された位置データ及び向きデータの割り当てを可能にするために、第1に向きデータ及び第2に画像データを、例えば時間的に互いに同期させて記録することが可能であり、及びこれらに、タイムスタンプを提供するか、又はこれらを、同時に記録された向きデータとの画像データの関連を示す順序で記憶する。
【0034】
単一の光ファイバだけでなく、例えば光ファイバ束の場合のように、互いに対する位置が分かっている複数の光ファイバもマイクロ器具に組み込まれる場合、二次元又は三次元画像は、掃引する動きの各位置で記録され得、前記画像の横方向の寸法は、光ファイバの配置構成の横方向範囲によって決定される。これは、単一の光ファイバの場合に必要とされる点と比較して、小さい寸法の二次元又は三次元画像が記録される点間の距離を長くすることを可能にする。その反面、単一の光ファイバの場合には、同じ距離を維持することも可能であり、それにより、小さい寸法の記録された二次元又は三次元画像は、互いに重なる。このようにして、走査の最中に冗長な画素が生じ、及びこれらは、それぞれの画素の信号強度を高め、それゆえ、信号雑音比を改善する。さらに、重なる画像の場合には、対象領域が、個々の画像の解像度を下回る絶対値だけ、互いに対してシフトされる場合、解像度を高めることが可能である。それぞれの画像の画素は、対象によって反射された光の強度値を表し、個々の画像の強度値は、格子に配置されており、格子点間の距離が画像の解像度に対応する。格子点のピッチよりも小さい絶対値だけシフトさせることによって、画像の強度値から、画像の格子点間に位置する強度値を決定することが可能であり、及び画像を同期させることが可能であり、ここでは、個々の強度値間の格子のピッチが狭くされ、それにより、同期された画像は、得られた画像よりも画像の解像度が高い。この点で、画像データが記録され且つ位置データが収集される好適な周波数を設定することによって、画像データが記録される位置間の距離が調整され得ることに言及する。
【0035】
位置データによって画像データの収集をトリガするオプションがあることも述べるべきである。例として、位置格子を特定し、且つ、位置格子上の位置に到達するときはいつでも、この位置に関する画像データが収集されることが可能であるか、又は特定のシフトを特定し、その後、画像データの新しい収集が実施されることが可能である。しかしながら、その代わりに、画像データの収集によって位置データの収集をトリガすることも可能である、すなわち画像データが記録される度に、記録の箇所に関する位置データ及び任意選択的に向きデータの収集又は決定が付随して起こる。しかしながら、本発明の範囲内では、何によって何がトリガされるかは重要ではなく、むしろ、第1に、収集された画像データ、第2に、収集又は決定された位置データ及び任意選択的に向きデータが互いに一意的に割り当てられ得ることが重要である。例として、割り当ては、例えば画像データ並びに位置データ及び任意選択的に向きデータにおいてタイムスタンプを用いて、時間的な同期によって実施され得るか、又は割り当ては、特定の一連のデータの記憶によって実施され得る。例として、画像データ並びに関連の位置データ及び任意選択的に向きデータは、単一のファイルに記憶され得、位置及び任意選択的に向きを表すデータは、常に、この位置及び任意選択的に向きに属する画像データの直ぐ前又は後に記憶される。
【0036】
本発明の範囲内で、誘発された振動の振動周期の最中に、位置データ及び任意選択的に向きデータが少なくとも1本の光ファイバの遠位端の異なる位置で獲得される、少なくとも1本の光ファイバの遠位端又はマイクロ器具の遠位端の横振動を誘発するオプションもある。このようにして、経路に沿って観察対象の関心領域にわたって掃引するときに掃引される領域は、大きくされ得る。これは、特に、観察対象の関心領域にわたる動きの最中に、少なくとも1本の光ファイバの遠位端が動かされる経路の現在の方向が決定される場合に、当てはまり、及び、少なくとも1本の光ファイバの少なくとも1つの遠位端又はマイクロ器具の遠位端が横振動するため、決定された現在の方向に対して垂直に伸びる横振動が誘発される。このようにして、動きの最中に、経路に沿って広い領域、特に最大限に広い領域にわたって掃引することが可能である。
【0037】
方法のこの形態では、原則に基づいて、横振動の振動周期中に個々の位置及び任意選択的に個々の向きが解像され得る速さで、位置検出及び任意選択的に向き検出が実施されるオプションがある。その反面、振動の振幅、周波数及び振動方向が分かっている場合、振動周期に対応する周波数で位置データ及び任意選択的に向きデータの収集を行い、且つ検出された位置を開始点として使用して、振動周波数及び振動振幅を用いて、少なくとも1本の光ファイバの遠位端又はマイクロ器具の遠位端の個々の位置及び任意選択的に向きを決定することで十分である。しかしながら、画像データが記録される記録周波数は、振動の周波数に少なくとも等しい必要があるため、複数の画像データは、一振動周期中に取得され得る。
【0038】
本発明による方法のさらなる発展形態では、少なくとも1本の光ファイバ又はマイクロ器具の遠位端が観察対象の関心領域にわたって動かされている間に、画像データを記録するために、少なくとも1本の光ファイバの遠位端に供給される光の方向を修正するオプションがある。例として、これは、少なくとも1本の光ファイバ若しくはマイクロ器具の遠位端にあるスキャナーを用いて、又は屈折率勾配のある光ファイバが使用されるおかげで、実施され得、その近位端には、スキャナーが存在し、且つ光ファイバから出てくる光を、異なる方向から記録装置の感光センサー上へと導くために使用され得る。本発明による方法の今説明した修正形態では、上記で既に説明したように、少なくとも1本の光ファイバ又はマイクロ器具の近位端又は遠位端で使用されるスキャナーは、少なくとも1本の光ファイバの遠位端又はマイクロ器具の遠位端の位置及び向きが実質的に走査の最中に変わらないような高い走査周波数を有する必要がある。
【0039】
本発明のさらなる特徴、特性及び利点は、添付図面を参照して、例示的な実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】マイクロ器具システムの第1の例示的な実施形態を示す。
【
図2】二次元又は三次元画像を記録するための方法の範囲内で、マイクロ器具の遠位端の動きを、側面図で概略的に示す。
【
図3】二次元又は三次元画像を記録するときのマイクロ器具の遠位端の経路を平面図で示す。
【
図4】マイクロ器具の遠位端が振動させられる、第1の例示的な実施形態の修正形態を、側面図で示す。
【
図5】
図4によるマイクロ器具の遠位端の動きの方向を、動きの方向に重ね合わせられた振動と一緒に、示す。
【
図6】第1の例示的な実施形態のさらなる修正形態を概略図で示す。
【
図7】第1の例示的な実施形態の範囲内で使用され得るような、マイクロ器具の遠位端を示す。
【
図8】第1の例示的な実施形態の範囲内で使用され得るような、マイクロ器具の遠位端の代替的な形態を示す。
【
図9】第1の例示的な実施形態の範囲内で使用され得るような、マイクロ器具の遠位端のさらなる代替的な形態を示す。
【
図9】第1の例示的な実施形態の範囲内で使用され得るような、マイクロ器具の遠位端のさらなる修正形態をさらに示す。
【
図10】第1の例示的な実施形態の範囲内で使用され得るような、マイクロ器具の遠位端のさらなる修正形態をさらに示す。
【
図11】第1の例示的な実施形態の範囲内で使用され得るような、マイクロ器具の遠位端のさらなる修正形態をさらに示す。
【
図12】個々の光ファイバの代わりにファイバ束が使用される、マイクロ器具システムの第2の例示的な実施形態を示す。
【
図13】二次元又は三次元画像を記録するときの、ファイバ束の遠位端の経路の概略図を示す。
【
図14】第2の例示的な実施形態の範囲内で使用され得るような、マイクロ器具の遠位端の代替的な形態を示す。
【
図15】複数の光ファイバを使用するときの、二次元又は三次元画像を記録する代替的なオプションを示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明によるマイクロ器具システムの第1の例示的な実施形態について、以下、
図1~11を参照して説明する。
【0042】
第1の例示的な実施形態のマイクロ器具システムは、マイクロ器具1を含み、これはプローブの形をしている。後者は、カニューレ3又は別の棒のような又はチューブ状構造を含み、その外径は、例示的な本実施形態では、1.5mm以下、好ましくは1.0mm以下、及び特に0.6mm以下である。治療中の外科医がマイクロ器具1を案内することを可能にするハンドル7が、カニューレ3の近位端5に位置する。
【0043】
例示的な本実施形態では、マイクロ器具システムはまた、OCTシステム9の形をしている記録装置を含む。OCTシステムは、観察対象27の異なる対象深さからの画像データを記録するために使用され得る。これを達成するために、照明光は、対象分岐部11及び参照分岐部13に分割される。対象分岐部11及び参照分岐部13の双方共、それぞれ、光ファイバ15及び17をそれぞれ含み、その中へ、照明機器からの光、例示的な本実施形態ではOCTハードウェア10に組み込まれたレーザ19が、対象分岐部11及び参照分岐部13の双方に共通するファイバ部分25を介して、並びにその遠位端に配置された結合器28を介して、入力結合される。対象分岐部の光ファイバ15は、マイクロ器具1を通ってカニューレ3の遠位端21まで延在し、そこに、対象分岐部11の光ファイバ15の遠位端23が位置する。コリメーション光ユニットが、参照分岐部13の光ファイバ17の遠位端35に位置し、コリメーション光ユニットを用いて、平行なビームがミラー33に方向付けられ、且つミラー33によって反射された平行なビームが参照分岐部13の光ファイバ17の遠位端35に集束される。対象分岐部11及び参照分岐部13の光ファイバ15、17は、同じ光路長を有し、及びミラー33は、観察対象27からの対象分岐部11の光ファイバ15の遠位端23の距離に実質的に対応する、参照分岐部13の光ファイバ17の遠位端からの距離を有する。
【0044】
対象分岐部11の光ファイバ15の遠位端23から出てくる光は、例えば眼の内部の一部分若しくは構造、又は例えば脳内の、神経構造とし得る観察対象27を照明する。これを達成するために、マイクロ光ユニット又は屈折率勾配に基づくレンズ(ここでは図示せず)が、光ファイバ15の遠位端23に存在し、且つ観察対象27の一点25に光を集束させる。この場合、単色レーザ光が観察対象27の組織中へ一定の深さまで入る。レーザ光は、それが透過する深さ範囲全体から反射される。その後、反射されたレーザ光は、マイクロ光ユニット又は屈折率勾配に基づくレンズによって、光ファイバ15の遠位端23中へと再度入力結合され、且つ結合器28へと案内され、その後、前記光を、共通のファイバ部分25中へと入力結合する。その後、OCTハードウェア内に配置され且つビームスプリッターミラー又はビームスプリッタープリズムとして設計され得るビームスプリッター31を介して、例えば、光は、共通のファイバ部分25から、同様にOCTハードウェア内に配置される検出器12へ供給される。
【0045】
対象分岐部11からの光に加えて、参照分岐部13からの光も、共通のファイバ部分29中へ入力結合される。共通のファイバ部分29からの距離が変更され得るミラー33が、入力結合された光によって、前もって照明された。この変更の最中に生じる参照分岐部13の光ファイバ17の遠位端からのミラー33の距離は、レーザ光が反射される対象27内の深さ領域と、光分岐部11の光ファイバ15の遠位端23との間の距離に対応する。参照分岐部内で光が移動する光路長は、参照分岐部13の光ファイバ17の遠位端35に対してミラー31をシフトさせることによって、変更され得る。ミラー33によって反射された光の光路長が、観察対象27の一定の深さから反射された光の光路長に対応する場合、共通のファイバ部分29において、参照分岐部13からの光と対象分岐部11からの光との間の構造的な重ね合わせがある。これは、検出器における強度の増大につながり、これは次に、検出された光の大部分を形成する、構造的に干渉する光につながる。この場合、参照分岐部13における光ファイバ17の遠位端35からのミラー31の距離は、参照分岐部13内の光に構造的に干渉できるようにするために光が反射されるべき、観察対象27の深さを決定する。参照分岐部13の光ファイバ17の遠位端35からのミラー31の距離が、ここで動かされる場合、これは、動いている最中に、ミラーの設定次第で、参照分岐部13の光に構造的に干渉する、観察対象27の異なる深さからの光につながり、その結果、この所与の範囲にわたるミラーの動きによって、観察対象27内での所与の深さ範囲の走査を可能にする。一定の深さ範囲にわたるそのような走査は、深さ走査又はA走査と呼ばれる。
【0046】
この点で、他の形のOCTシステムも、特に固定ミラー33で間に合わせるものなども可能であることが注目される。例として、対象の全ての深さ範囲が、白色光干渉分光法を用いて同時に記録され得る。この場合利用されるものは、白色光が多様な波長を含むことであり、これは、参照分岐部13内の固定光路長では、対象分岐部11内及び対象分岐部のわずかに異なる光路長で生じる白色光の各波長に対する構造的な干渉につながる。それゆえ、固定して配置されたミラーの場合、特定の波長での構造的な干渉のための条件は、反射が実施される観察対象27の深さによって決定される。それに反して、他の波長は、観察対象内での異なる深さでの構造的な干渉のための条件を満たし、その結果、深さ情報は、検出器によって検出された光のスペクトル分布において符号化される。
【0047】
マイクロ器具システムはまた、マイクロ器具1の位置、及び必要な場合には向きを決定する決定機器を含む。例示的な本実施形態では、追跡システム2が、決定機器の機能を果たし、これは、マイクロ器具1に配置されたマーカ2Aに基づいて、マイクロ器具1の位置、及び必要な場合には向きを検出し、且つカニューレ3の遠位端に対するマーカ2Aの公知の配置構成に基づいて、カニューレ3の遠位端の位置及び向きを決定する。或いは、検出機器は、デジタル画像センサー41A、41Bをそれぞれ有する2つのステレオ成分ビーム経路を備える慣性センサーシステム又は外科用顕微鏡39を含み得る。その後、2つの画像センサー41A、41Bによって記録された画像は、評価ユニット43へ供給され、これは、画像処理ソフトウェアを用いて、記録された画像にあるカニューレ3の遠位端を認識し、且つ、立体情報に基づいて、観察対象に対する又は外科用顕微鏡の座標系に対する遠位端21の位置及び任意選択的に向きを決定する。
【0048】
OCTハードウェア10内で検出器12によって記録された画像データは、評価ユニット43によって決定された位置データ及び任意選択的に決定された向きデータと一緒に、例示的な本実施形態では市販のPCであるデータ処理装置45へ出力され、そこに、決定機器の評価機器43、及びOCTハードウェア10の検出器12が接続されている。しかしながら、その代わりに、データ処理装置45はまた、専用のハードウェアコンポーネントとしてもよい。ソフトウェアは、コンピュータ45にインストールされ、且つOCTシステムによって取得した画像データをコンパイルして、位置データ及び任意選択的に向きデータを用いて二次元又は三次元画像を形成する。これを達成するために、それぞれの記録された画像データ並びにそれぞれの収集された位置データ及び任意選択的に向きデータは、例示的な本実施形態ではタイムスタンプを備え、そのタイムスタンプに基づいて、画像データは、検出された位置、及び任意選択的に、検出された向きに割り当てられ得る。
【0049】
上述のマイクロ器具システムを用いて二次元又は三次元画像を記録することについて、
図2~11を参照して、以下説明する。
【0050】
図1に示す光ファイバ走査マイクロ器具システムを用いて二次元又は三次元画像を記録することについて、
図2及び
図3を参照して、以下説明する。この場合、
図2は、側面図におけるマイクロ器具1の動きを示し、及び
図3は、平面図における動きの経路の例を示す。
【0051】
二次元又は三次元画像を記録するために、マイクロ器具1の遠位端21は、走査を行うために、
図2に矢印で示すように、観察対象27の表面にわたって横方向に動かされる。二次元画像を記録することを意図する場合、マイクロ器具1の遠位端21は、観察対象上に線を描くことを意図していたかのように、表面にわたる線に沿って案内される必要があるだけである。その後、A走査が、OCTシステムを用いて、線に沿って記録され、且つ位置データ及び任意選択的に向きデータを用いて、コンパイルされて、二次元画像を形成し得、この二次元画像では、一次元が線を表し、及び第2の次元は、光が反射された、観察対象内の深さである。そのような二次元画像はB走査とも呼ばれる。三次元画像を生成するために、マイクロ器具1の遠位端21は、走査を実施するために、
図3の例示的な経路に基づいて示すように、関心領域全体にわたって動かされる必要がある。この経路は、関心領域を描くことを意図したかのようなタイプのマイクロ器具の遠位端21の前後の動きを表す。画像データは、マイクロ器具1の遠位端21の経路に沿った多様な位置で記録される。さらに、遠位端21の関連付けられた位置データ及び任意選択的に関連付けられた向きデータは、全ての獲得した画像データに関し決定され、且つそれぞれの画像データに割り当てられる。例示的な本実施形態では、位置データ及び任意選択的に向きデータは、タイムスタンプに基づいて、それぞれの画像データに割り当てられる。しかしながら、これはまた、例えば、共通ファイルに書き込まれている画像データ、位置データ、及び任意選択的に向きデータのおかげで、実施され得、共通ファイルでは、画像データに割り当てられた位置データ及び任意選択的に向きデータは、常に、画像データの直前であるか又は常に画像データの直後である。
【0052】
その後、それに割り当てられた位置データ及び任意選択的に向きデータを用いて画像データをコンパイルすることが、コンピュータ45にインストールされたソフトウェアによって実施され、ソフトウェアは、コンピュータ実装方法の以下のステップを実行する:
(i) 例示的な本実施形態では、OCTシステムを用いて取得したA走査を表す、OCTシステムによって取得した画像データ、並びにまた、画像データに割り当てられた位置データ、及び、必要な場合には、画像データに割り当てられた向きデータを受信又は検索するステップ。
(ii) 画像データに割り当てられた位置データ及び任意選択的に画像データに割り当てられた向きデータに基づいて、互いに対するA走査の位置及び任意選択的に向きを決定するステップ、及び
(iii) 互いに対して正しく位置決めされている、及び、必要な場合には、互いに対して正しい向きにされているA走査をコンパイルすることによって、二次元又は三次元画像を構成するステップであって、ここでは、二次元又は三次元画像の個々の画素間を補間するオプションもあるステップ。
【0053】
互いに対するA走査の位置及び任意選択的に向きを決定するのではなく、代わりに、固定された座標系において、A走査の位置及び任意選択的に向きを決定することも可能であり、ここでは、二次元又は三次元画像を構成することを目的として、A走査は、座標系の対応する位置、及び任意選択的に対応する向きに位置決めされる。
【0054】
図2は、線形の経路セクションが互いに隣接して延在する、マイクロ器具1の遠位端21の動きのための経路を示すが、関心領域を網羅するために使用され得る任意の他の所望の経路も、原則に基づいて好適である。例として、関心領域は、中心点から始まる渦巻き状の動きで掃引され得る。しかしながら、完全に任意であっても、関心領域にわたる不規則な動きは、個々のA走査が、いずれの場合も、割り当てられた位置データ及び任意選択的に割り当てられた向きデータに基づいて、三次元画像を形成するためにコンパイルされ得るため、結果につながる。
【0055】
図1に示す例示的な実施形態の修正形態について、
図4及び
図5を参照して、以下説明する。この修正形態では、マイクロ器具1は、カニューレ3を振動させるために使用され得る2つの圧電素子を含む。圧電素子は、カニューレの軸の周りに90度の角度で分布して配置されて、圧電素子47、49が、カニューレ中へ相互に垂直な横振動を導入するために使用され得るようにする。圧電素子47、49を好適に制御することによって、横振動は、カニューレ3の任意の所望の半径方向に沿って誘発され得る。
【0056】
説明した修正形態では、コンピュータ45は、収集した位置データ及び任意選択的に向きデータに基づいて、観察対象の関心領域にわたるマイクロ器具1の遠位端21の現在の動きの方向及び動きの速度を決定する。この現在の動きの方向は、A走査が記録される観察対象上のスポット25での動きの方向に基づいて、
図5に示されている。動きの方向は、点25から始まる矢印によって表される。そのため、コンピュータ45は、前もって決定された動きの方向に対して垂直な方向を決定し、且つ圧電素子47、49を駆動して、それら圧電素子が、現在の動きの方向に対して垂直な線形振動を誘発するようにする。振動データは分かっているため、この振動は、マイクロ器具1の遠位端21の動きの方向が決定されるときに、計算によって、収集した位置データ及び任意選択的に収集した向きデータから除去され得る。
【0057】
図4及び
図5に示すマイクロ器具システムの修正形態では、画像は、複数の画像が一振動周期中に記録されるように、非常に迅速に記録される。これに関連して、振動は、一般的に、振動の零点が、一振動周期中に振動方向に対して垂直なその位置を実質的に変えないような高い周波数で使用される。しかしながら、マイクロ器具は関心領域を走査するために手で案内されるため、不規則な手動の動きの速度のせいで、例えば
図5の中心に示すように、一振動周期中に零点の比較的大きな変化がある場合があるかもしれない。しかしながら、コンピュータは振動周波数及び振動振幅が分かっているだけでなく、振動方向に対して垂直な動きの速度も検出するため、走査の最中に発生する速度変動が、三次元画像をコンパイルするときに考慮され得る。
【0058】
カニューレ3の振動する遠位端21を用いて、
図3に示すような手動で案内される前後の動きを必要とせずに、三次元画像を記録することが可能になる。必要なのは、線に沿った動きだけである。それにもかかわらず、前後の動きがある場合には、カニューレ3の振動する遠位端21は、例えば幅広のブラシで描くときに可能とし得るように、経路の隣接する領域間の距離を長くすることを可能にする。このようにして、大きな面積の観察対象の領域が、三次元画像化に迅速に提供され得る。
【0059】
第1の例示的な実施形態の説明した修正形態では、カニューレ3全体が振動されていたが、カニューレ3の内部の光ファイバ15のみを振動させるオプションもある。さらに、カニューレ3又は参照分岐部11にある光ファイバ15の機械的な振動を必要とせずに、OCTシステムの対象光ビームに振動を引き起こすオプションがある。これは、光ファイバ51の長手方向に対して垂直に屈折率勾配(index gradient)がある光ファイバ51を用いる場合、可能にされる。そのため、光ファイバ51の遠位端52からの対象光ビームの射出方向は、光ファイバ51中への光の入射方向次第である。光が、ここで、例えば振動するガルバノミラーを使用して、異なる方向で光ファイバ51の近位端57中へ入力結合される場合、これは、光ファイバ51の遠位端52から出てくる光の射出方向が、ガルバノミラー53の振動によってその射出方向を変えることにつながる。同じことが、観察対象27によって反射される光の入射方向に当てはまり、これは、その後、ガルバノミラーによって、検出器12の方向へ伝達される。それゆえ、振動を用いて、それにより、マイクロ器具1が手で案内される経路に沿った画像データだけでなく、この経路の左右の領域からの画像データも記録することが可能である。屈折率勾配があり且つ振動するガルバノミラー53がその近位端57に配置された光ファイバ51が、
図6に示されている。さらに、光ファイバ51中へ入力結合された対象光ビーム55のコースが、観察対象27の所まで、概略的に示されている。
【0060】
原理上、手で案内される動きはまた、常に震えを含むことを利用することがさらに可能である。この震えは、マイクロ器具の遠位端の振動のように考えられ得、且つ同様に、観察対象27にわたって、手で案内される経路の左右の領域から画像データを記録するために使用され得る。震えから生じる振動の振幅、周波数、及び方向は、この場合、分かっていないが、マイクロ器具1の遠位端21又は光ファイバ15の遠位端23の位置検出及び任意選択的に向き検出が実施される周波数は、画像データを記録するときに、震えのせいで変動する記録中の位置がそれぞれ個々に検出できるように、高い必要がある。振幅、周波数、及び方向が分かっている、誘発された振動の場合、位置データ及び任意選択的に向きデータが収集される周波数が、個々の振動周期のそれぞれの零を決定するのに十分に高いことで十分である。そのため、振動周期中に画像データを記録するときの個々の記録している位置は、零点から進む振動の周波数、振幅、及び方向に基づいて決定され得る。獲得した零点は、手で案内される動きの経路の周りで変動するため、この変動は、振動の公知の周波数、公知の振幅、及び公知の方向に基づいて、補正され得る。そのため、補正された位置は、零点を表す。
【0061】
手で案内されるマイクロ器具1の動きの方向に第2の方向を重ね合わせるさらなるオプションは、マイクロ器具の遠位端に可動スキャナーを配置することからなる。第1の例示的な実施形態のそのような変形例は、
図7に概略的に示されている。この変形例では、マイクロ器具1は、対象分岐部11の光ファイバ15が中を通って案内される単純なカニューレだけではない。その代わりに、マイクロ器具は、眼の硝子体液を粉砕するための硝子体切除装置(vitrectome)として具現化される。そのような硝子体切除装置は、開口部61が設けられた中空シャフト59を含む。その長手方向に可動である同様の中空チューブ63が、中空シャフト59内に配置される。粉砕された硝子体液片が、この中空チューブ63を通して吸引される。このプロセスにおいて、中空チューブは、開口部61がチューブによって完全に封止される位置と、開口部が開放している位置との間で長手方向に前後に動く。
図7に概略的に示すように、チューブ63の遠位端が、ここで、反射素子、例えばミラー又はプリズムを備える場合、その前後の動きは、対象光ビーム55によって観察対象27の領域を走査するために使用され、その領域は、前後の動きの最中にチューブ63が移動させられる経路に実質的に対応する。第1の例示的な実施形態の前述の実施形態の変形例とは対照的に、画像データは、光ファイバ15の長手方向においてではなく、
図7に示す実施形態の変形例では、光ファイバ15に対して半径方向に記録される。
【0062】
光ファイバ15自体は静止している、すなわち、動かされないが、
図7に示す実施形態の変形例では、同様に、内側チューブ63と一緒に光ファイバも動かすオプションがある。これを達成するために、光ファイバ15の弾性部分が、例えば硝子体切除装置のハンドル7に存在してもよい。例えば、
図8に示すように、この弾性部分は、内側チューブ63の動きによって、締められたり又は緩ませられたりするループによって実現され得る。さらに、光ファイバ15の遠位端23は、この実施形態の変形例では偏向器(
図8には示さず)を含み、前記偏向器は、対象光ビームを、光ファイバ15から出射すると、光ファイバ15の半径方向に偏向させる。
【0063】
対象を走査するための、
図8に示す形態は、
図7に示す実施形態の変形例と比べて、対象経路11内の光路長が内側チューブ63の前後の動きによって変化しないという利点を提供する。それに反して、
図7に示す変形例では、反射素子64の前後の動きの移動は、対象分岐部11内の光路長の変化につながり、これは、参照分岐部13内の光路長に適応することによって、補償される必要がある。この適応は、機械的に、例えば、対象分岐部15での前後の動きの最中に、反射素子64の位置と一緒に参照分岐部13内で可動ミラー33の零点をシフトさせるおかげで、又は電子的に、例えばその動きの最中の反射素子64のそれぞれの位置に基づいて、個々の構造的に干渉する波長が反射された対象の深さを補正するための、コンピュータ45によって説明される対象分岐部11内での経路長の変更のおかげで、実施され得る。OCTシステムではなく、例えば画像データを取得するために使用される共焦点レーザ走査顕微鏡の場合、前後の動きの最中の反射素子64の移動が集束を実質的に損なわないような大きい焦点深度を備えるシステムを提供するオプションがある。
【0064】
図7及び
図8を参照して説明する硝子体切除装置は、参照分岐部11の光ファイバ15の半径方向における画像データを記録することを可能にする。しかしながら、上述のカニューレのような硝子体切除装置を使用するオプションもある。この場合、対象分岐部11の光ファイバ15は、シャフトの遠位端65まで案内されて、光ファイバ15の遠位端23が、
図9に示すように、硝子体切除装置の遠位端65と同一平面で終端するようにする。
【0065】
しかしながら、光ファイバ15の長手方向又は光ファイバ15の半径方向とは他の方向における画像を記録するオプションもある。これを達成するために、光ファイバ15の遠位端23から出てくる対象光ビームを、光ファイバ15の長手方向と半径方向との間に位置する方向に偏向させる偏向器67(
図10参照)が、対象分岐部11の光ファイバ15の遠位端に配置され得る。例として、偏向器は、マイクロプリズムとして、又は「軸外れ自由形状TIRミラー(off axis freeform TIR mirror)」として知られているものとして、設計され得る。「軸外れ自由形状TIRミラー」では、偏向は、全反射(TIR:total-internal reflection)が理由で実施され、反射方向は、自由形状面の形状によって決定される。画像が記録され得る複数の取り得る代替的な方向が、図面に概略的に示されている。
【0066】
さらに、第1の例示的な実施形態のさらなる変形例が
図11に示されている。この実施形態の変形例では、硝子体切除装置のシャフトの遠位端65は、透明領域69として形成される。この透明領域69は、実質的に、半球内面70を備える半球シェルの形状を有する。透明領域69中まで延在するガイドレール71が、シャフト59の内部に存在し、及び対象分岐部11の光ファイバ15の遠位端23は、前記ガイドレールを用いて、ガイドレール71と透明領域69の壁73との間で長手方向に動かされ得る。この長手方向の動きの結果、前記ファイバの向きと共に、半球内面70に沿って光ファイバ15の遠位端21の位置を設定することが可能であり、ここでは、光ファイバの向き、それゆえ放出方向は、透明領域69の内面70における遠位端21の位置次第である。これにより、
図11に示すように、対象の光の放出方向、又は画像データを記録するときの記録方向を変更することを可能にする。
【0067】
本発明によるマイクロ器具システムの第2の例示的な実施形態について、以下、
図12~15を参照して説明する。この場合、
図12は、マイクロ器具システムを示し、及び
図13は、三次元画像を記録している最中のマイクロ器具システムの遠位端の経路を示す。
図14及び
図15は、第2の例示的な実施形態の修正形態を示す。
【0068】
図12に示す、本発明によるマイクロ器具システムの第2の例示的な実施形態は、第1の例示的な実施形態のように、対象分岐部11、参照分岐部13、及びOCTハードウェア10を備える、OCTシステムを含む。参照分岐部13及びOCTハードウェア10及び共通のファイバ部分29は、第1の例示的な実施形態の参照分岐部13、OCTハードウェア10及び共通のファイバ部分29と変わらない。それゆえ、それらは、第1の例示的な実施形態に示すものと同じ参照符号で示され、繰り返しを避けるために、再度説明はしない。外科用顕微鏡39、評価ユニット43、及びコンピュータ45も、第1の例示的な実施形態のものと変わらない。それゆえ、同様に、これらは、第1の例示的な実施形態からのものと同じ参照符号で示され、繰り返しを避けるために、再度説明はしない。
【0069】
本発明によるマイクロ器具システムの第2の例示的な実施形態は、OCTシステムの対象分岐部11の設計に関して、第1の例示的な実施形態とは異なる。マイクロ器具の遠位端まで光ファイバ15を案内するのではなく、光ファイバ15は、コリメーション光ユニット75内で終端し、マイクロ器具のカニューレ77の近位端の上流で終端する。複数の光ファイバ80を備えるファイバ束79が、カニューレ77中を通って延在する。ファイバ束79は、一般に、少なくとも2本の光ファイバ80を含むが、1000本以下の光ファイバ80を含む。ファイバ束79の光ファイバ80の数は、この場合、カニューレ77内で利用可能な空間によって制限され、これは、同様に、カニューレ77の外径によって制限される。例示的な本実施形態では、後者の外径は、1.5mm以下、好ましくは1.0mm以下、及び特に0.6mm以下である。
図12に示さない、治療中の外科医がマイクロ器具を案内することを可能にするハンドルは、カニューレ77の近位端に位置する。
【0070】
例示的な本実施形態では、相互に垂直な軸の周りで回転可能な2つの駆動可能なガルバノミラー85、87を含むスキャナー83が、対象分岐部11の光ファイバ15のコリメーション光ユニット75と、ファイバ束79の近位端81との間に位置する。特に、このスキャナー83はまた、マイクロ器具のハンドル内に配置され得る。スキャナー83のガルバノミラー85、87を用いて、集束光ユニット91に入射すると、対象光ビーム89(コリメーション光ユニット75によって横方向にコリメートされている)の位置を変化させることが可能である。集束光ユニット91にコリメートされた対象光ビーム89が入射する位置次第で、前記対象光ビームは、ファイバ束79の異なる光ファイバ80中へ入力結合される。その後、観察対象27から後方に散乱された光は、集束光ユニット91へ戻るように案内され、これは、この方向において、この光ファイバによって、コリメーション光ユニットとして機能する。その後、ガルバノミラー85、87によって、コリメートされた対象光ビームは、コリメーション光ユニット75へ方向付けられ、これは、この方向において集束光ユニットとなり、及びそれを用いて、コリメートされた対象光ビームは、光ファイバ15の端に集束される。
【0071】
2つのガルバノミラー85、87を好適に駆動することによって、観察対象27の横方向領域を走査することを可能にする。ファイバ束79の個々の光ファイバ80によって取得した画像データの処理は、第1の例示的な実施形態に関して説明した処理に対応する。ファイバ束79の光ファイバ80の遠位端23の位置及び向きは、互いに対して分かっており、二次元又は三次元画像は、ファイバ束79の個々の光ファイバ80を使用して記録されたA走査から構成され得、前記画像の横方向範囲は、ファイバ束79の光ファイバの遠位端93の配置構成の横方向範囲に対応する。第1の例示的な実施形態とは対照的に、マイクロ器具の遠位端が観察対象27にわたって動かされるときに、第2の例示的な実施形態において記録されるのはA走査だけでなく、ファイバ束79の光ファイバ80の遠位端93が線に沿って配置される場合はB走査、又はファイバ束79の光ファイバ80の遠位端93が平面に配置される場合は、三次元画像が記録される。
【0072】
第1の例示的な実施形態におけるように、観察対象27の関心領域にわたって動かされる最中のマイクロ器具の遠位端90の位置、及び必要な場合には向きも、第1の例示的な実施形態に関して既に説明したように、慣性センサーシステムの追跡システム2及びマーカ2Aを用いて、又は外科用顕微鏡39の画像センサー41A、41Bを用いて、第2の例示的な実施形態において検出される。位置データ及び任意選択的に向きデータを用いて、観察対象27の関心領域にわたってマイクロ器具の遠位端90を動かすときにファイバ束79を使用して記録された画像データは、コンパイルされて、大きな二次元又は三次元画像、すなわち横方向範囲が、ファイバ束79の光ファイバ80の遠位端の配置構成の横方向範囲よりも大きい画像を形成する。
【0073】
しかしながら、ナビゲーションシステム2、慣性センサーシステム、又は立体像によってマイクロ器具の遠位端90の位置データを決定することは、第2の例示的な実施形態においては必須ではない。記録された二次元又は三次元画像は、位置データのそのような決定がなくても、コンパイルされて、より大きい二次元又は三次元画像を形成し得る。ここで利用されるものは、ファイバ束79の個々の光ファイバ80の遠位端93の位置が互いに対して分かっていることである。ファイバ束79の光ファイバの遠位端93の平面の配置構成は、特に、マイクロ器具の遠位端90を観察対象27の関心領域にわたって動かすときに、同じ画像領域を連続的に掃引する個々の光ファイバ80につながる。この動きの最中のファイバ束79の個々の光ファイバ80の経路は、
図13に概略的に示されている。現在の画像記録の周波数が非常に高いため、観察対象27にわたって遠位端が動いている最中に記録されるそれぞれの二次元又は三次元画像が撮像される対象領域が互いに重なる場合、現在記録されている二次元又は三次元画像はまた、いずれの場合にも、直前の二次元又は三次元画像において撮像された対象領域の一部を撮像している。現在の画像及び直前の画像の双方において撮像された対象領域の構造を特定することによって、並びにそれぞれの画像におけるその位置を特定することによって、ファイバ束の遠位端に対して、示される対象領域の位置、及び必要な場合には向きを決定することが可能である。位置データ及び任意選択的に向きデータは、ファイバ束の遠位端に対する、示される対象領域の決定された位置及び任意選択的に決定された向きに基づいて、各画像に対して決定され得、且つその後、記録された二次元又は三次元画像をコンパイルするために使用されて、より大きな二次元又は三次元画像を形成し得る。
【0074】
二次元又は三次元画像は、説明したようにコンパイルされ得るが、このようにコンパイルされた画像は、画像の絶対位置が特定の座標系において分かっていない場合、術前に又は術後に得られた画像に簡単に重ね合わせられることができない。それゆえ、この形態において位置データも収集されれば好都合であり、位置データは、例示的な本実施形態では外科用顕微鏡39の座標系とし得る、所与の座標系に関連するマイクロ器具の遠位端90のそれぞれの位置を決定する。その後、記録された画像は、好適な座標変換によって、術前又は術後に得られた画像データに重ね合わせられ得る。それに反して、OCTシステムによって記録された画像で特定された対象領域がまた、外科用顕微鏡の立体像において特定され得る場合、入力された座標系での位置検出は、OCTシステムによって得られた画像データを、外科用顕微鏡39を使用して得られた立体像に単にオーバーレイするためには、必須ではない。そのため、特定された構造は、OCTシステムによって得た画像を、外科用顕微鏡によって得た画像にオーバーレイするために位置合わせされ得、それにより、位置的に正しい重ね合わせが可能にされる。
【0075】
図14は、第2の例示的な実施形態の修正形態を示す。この修正形態では、ファイバ束79は、4本の光ファイバ80a~dのみを含む。さらに、これらの4本の光ファイバ80a~dのうち、1本の光ファイバ80aのみが、マイクロ器具又はカニューレ77の遠位端90まで案内される。この光ファイバ80aは、その長手方向に沿って画像データを記録し、且つ二次元又は三次元画像を形成するためにコンパイルされる画像データの実際の記録に役立つ。残りの3本の光ファイバ80b~cは、マイクロ器具の遠位端90の前に、既に終端し、且つそれらの半径方向における画像データを収集する。
図14に示す実施形態の変形例では、これらは、位置を検出する働きをするにすぎず、二次元又は三次元画像が取得されることが意図される画像データは収集しない。
【0076】
半径方向及び長手方向に取得された画像データを用いて、観察対象27内での、すなわち本例では眼内での、カニューレの遠位端90の位置及び向きを決定することが可能である。ここで利用され得ることは、マイクロ器具又はカニューレが、全体的に、トロカール点、すなわち、トロカールが眼中へ挿入される箇所の眼球上の点の周りでの回転運動のみを可能にするトロカールを通して眼内に挿入され、その結果、マイクロ器具又はカニューレの遠位端が、その長手方向軸に沿ってシフトされない限り、かなり接近して球面上で動かされることである。眼球の形状は、術前データに基づいて実質的に決定され得るため、網膜からの4本の光ファイバ80a~dの遠位端の決定された距離から、眼の周りのマイクロ器具又はカニューレの遠位端90の位置を決定することが可能である。そのように決定された位置及び任意選択的に向きを用いて、光ファイバ80aを用いて長手方向に収集された画像データをコンパイルして、二次元又は三次元画像を形成することが可能である。
【0077】
図14に示す第2の例示的な実施形態の変形例の修正形態が、
図15に示されている。4本の光ファイバ80a~dの代わりに、
図15に示す実施形態の変形例のファイバ束は、2本の光ファイバ80a、80bのみを含む。光ファイバ80bの遠位端93bは、回転可能なミラー95又は任意の他の走査機器に割り当てられ、それによって、光ファイバ80bを用いて画像データが収集される方向を変更することが可能である。このようにして、異なる方向から画像データを取得することが可能であり、その画像データは、
図14に示す実施形態の変形例におけるように、図示の変形例では硝子体切除装置であるマイクロ器具の遠位端90の位置を決定し、それゆえ、観察対象の術前に決定された幾何学的形状を使用して、観察対象における光ファイバ80aの遠位端93aの位置を決定するために使用され得る。
【0078】
説明のために、例示的な実施形態に基づいて、本発明を詳細に説明した。しかしながら、当業者は、本発明の範囲内で説明した実施形態からの逸脱があり得ることを認識する。特に、画像の記録は、OCTシステムを用いて実施される必要はなく、任意の他の光ファイバ走査システム、例えば光ファイバ共焦点レーザ走査顕微鏡によって、実現され得る。さらに、位置データは、必ずしも、外科用顕微鏡を使用して決定される必要はない。マイクロ器具にマーカを提供するオプションもあり、少なくとも1本の光ファイバの遠位端に対するその位置は、公知である。追跡システムを使用してマーカの位置を辿ること(追跡)によって、いつでも、マーカの位置データ、それゆえマーカの位置データに関連して分かっている遠位端の位置を決定することが可能である。さらに、相対的な位置データも、マイクロ器具の遠位端の動きのコースを検出する加速度センサーを使用して収集され得る。位置データを収集するために、本発明の範囲内で使用され得る、考えられるさらなる方法は、観察対象上への、例えば赤外線でのパターンの投射を含み、前記パターンは、記録された画像データにおいて特定されている。その後、投射されたパターンは、二次元又は三次元画像をコンパイルするための参照として利用され得る。マイクロ器具がトロカールを通して観察対象に挿入される場合、さらに、トロカール上の参照点に関連してマイクロ器具の位置を決定するオプションがある。例えば外部ナビゲーションシステムによって、トロカールの位置が検出される場合、これはまた、マイクロ器具の遠位端の位置の絶対的な決定を可能にする。マイクロ器具の遠位端が振動する場合、ファイバブラッググレーティングを用いてその湾曲を検出することが可能である。近位端に対するマイクロ器具の遠位端の位置は、マイクロ器具上のファイバブラッググレーティングの湾曲の程度及び位置から決定され得る。マイクロ器具システムを用いて取得された二次元又は三次元画像はまた、さらに、例示的な実施形態におけるように他の画像に重ね合わせるのではなく、独立した画像データとして表示され得る。さらに、複数の位置検出システムは、位置検出の信頼性(robustness)を高めるために同時に使用され得る。それゆえ、本発明は、例示的な実施形態によって限定されることを意図せず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0079】
1 マイクロ器具
2 ナビゲーションシステム
2A マーカ
3 カニューレ
5 近位端
7 ハンドル
9 記録装置
10 ハードウェア
11 対象分岐部
12 検出器
13 参照分岐部
15 光ファイバ
17 光ファイバ
19 レーザ
21 遠位端
23 遠位端
25 スポット
27 観察対象
28 結合器
29 共通のファイバ部分
31 ビームスプリッター
33 ミラー
35 遠位端
37 コリメーション光ユニット
39 外科用顕微鏡
41A、B 画像センサー
43 評価ユニット
45 コンピュータ
47 圧電素子
49 圧電素子
51 光ファイバ
52 遠位端
53 振動するガルバノミラー
55 対象光ビーム
57 近位端
59 シャフト
61 開口部
63 中空チューブ
64 反射素子
65 遠位端
66 ループ
67 偏向器
69 透明領域
70 内面
71 ガイドレール
73 外壁
75 コリメーション光ユニット
77 マイクロ器具
79 ファイバ束
80 光ファイバ
81 近位端
83 スキャナー
85 ガルバノミラー
87 ガルバノミラー
89 コリメートされた対象光ビーム
90 遠位端
91 集束光ユニット
93 遠位端
95 回転可能なミラー