(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】配管機器
(51)【国際特許分類】
F16L 41/02 20060101AFI20240927BHJP
B01F 25/10 20220101ALI20240927BHJP
B01F 35/51 20220101ALI20240927BHJP
B01F 101/58 20220101ALN20240927BHJP
【FI】
F16L41/02
B01F25/10
B01F35/51
B01F101:58
(21)【出願番号】P 2024052535
(22)【出願日】2024-03-27
【審査請求日】2024-07-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147599
【氏名又は名称】丹羽 匡孝
(74)【代理人】
【識別番号】100141025
【氏名又は名称】阿久津 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【氏名又は名称】西山 善章
(72)【発明者】
【氏名】隈元 康太
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-142335(JP,A)
【文献】特開2022-092186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 41/02
B01F 25/10
B01F 35/51
B01F 101/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のフッ素樹脂材料から形成され、第1の境界面を有する本体と、
第2のフッ素樹脂材料から形成され、第2の境界面を有する接合部材と、
熱融着性の第3のフッ素樹脂材料から形成され、前記第2の境界面を介して前記接合部材と一体的に成形された中間部材と、
を備え、前記本体が前記第1の境界面に開口する凹部を有し、前記第1の境界面から前記中間部材の厚さよりも低い長さだけ突出する環状の筒壁部が前記凹部の開口の周囲に沿って設けられ
、該筒壁部の内周面が前記凹部の内周面と面一になるように形成されており、前記第1のフッ素樹脂材料及び前記第2のフッ素樹脂材料が前記第3のフッ素樹脂材料の融点で非溶融性を呈する非溶融性フッ素樹脂材料であり、前記中間部材は、前記筒壁部の少なくとも先端部が前記中間部材に沈み込んだ状態で、前記本体と一体化されて成形され、前記中間部材と前記凹部とによって空間部を形成していることを特徴とする配管機器。
【請求項2】
前記本体に、前記空間部に連通する流入流路及び流出流路とが形成されている、請求項1に記載の配管機器。
【請求項3】
前記中間部材がフィルム状又は板状である、請求項2に記載の配管機器。
【請求項4】
前記中間部材の厚さが50μmから100mmの範囲である、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の配管機器。
【請求項5】
前記筒壁部が前記中間部材に沈み込んでいる部分の長さが0.5μmから95mmの範囲である、請求項4に記載の配管機器。
【請求項6】
前記第1のフッ素樹脂材料及び前記第2のフッ素樹脂材料がPTFEである、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の配管機器。
【請求項7】
前記第3のフッ素樹脂材料はPFA又は変性PTFEである、請求項6に記載の配管機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体が流れる流路が内部に設けられており且つ配管の一部を構成する配管機器に関する。
【背景技術】
【0002】
化学工場、半導体製造分野、食品分野、医療分野、バイオ分野などの各種産業分野では、流体を流通させるために、例えばバルブ装置や流体混合器など、流路が内部に設けられ配管の一部として使用される様々な配管機器が使用されている。特に、半導体製造分野の配管機器では、劇薬である強酸類などを薬液として使用することが多いため、外部に薬液を漏出させないシール構造、いわゆる外部シール構造、が採用されている。
【0003】
一般的に、このような外部シール構造は、切削加工された部品同士を組み合わせて構成される。しかしながら、このような構造では、当接する面同士が加工誤差により僅かに歪んだだけでも、隙間が生じて流路内に滞留部が形成されてしまい、歩留まり悪化の原因となる。このため、例えば流路の一部に形成され且つ外部に開口する凹部を他の部材で閉鎖する場合、二つ部材の対向面の間にダイヤフラムやパッキンのような弾力性を有する部材を挟持することにより、隙間を生じることなく二つの部材の間をシールするようにすることが多い。また、ダイヤフラムのような部材を二つの部材の対向面の間に挟持できないような場合には、例えば特許文献1に記載の流量制御バルブのように、二つの部材の当接面同士を融点以上に加熱して溶着により一体化させる方法などが採用されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のように、二つの当接部材の当接面同士を加熱して溶着させる方法では、各部材の材料が融点以上に加熱されて流動化するので、二つの当接面を圧接したときに流動化した材料が二つの部材の間から流路内にはみ出て段差部を形成してしまうことがある。このような段差部は流路内で薬液の滞留部を生じさせてしまい、同様に、歩留まり悪化の原因となる。
【0006】
よって、本発明の目的は、従来技術に存する問題を解決するために、配管機器において二つの部材を隙間なく且つ段差部を生じさせずに接続することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的に鑑み、第1のフッ素樹脂材料から形成され、第1の境界面を有する本体と、第2のフッ素樹脂材料から形成され、第2の境界面を有する接合部材と、熱融着性の第3のフッ素樹脂材料から形成され、前記第2の境界面を介して前記接合部材と一体的に成形された中間部材とを備え、前記本体が前記第1の境界面に開口する凹部を有し、前記第1の境界面から前記中間部材の厚さよりも低い長さだけ突出する環状の筒壁部が前記凹部の開口の周囲に沿って設けられ、該筒壁部の内周面が前記凹部の内周面と面一になるように形成されており、前記第1のフッ素樹脂材料及び前記第2のフッ素樹脂材料が前記第3のフッ素樹脂材料の融点で非溶融性を呈する非溶融性フッ素樹脂材料であり、前記中間部材は、前記筒壁部の少なくとも先端部が前記中間部材に沈み込んだ状態で、前記本体と一体化されて成形され、前記中間部材と前記凹部とによって空間部を形成している配管機器を提供する。
【0008】
上記配管機器では、本体を形成する第1のフッ素樹脂材料と接合部材を形成する第2のフッ素樹脂材料とが中間部材を形成する第3のフッ素樹脂材料の融点で非溶融性を呈するフッ素樹脂材料からなる。したがって、第3のフッ素樹脂材料の融点まで加熱しても、本体及び接合部材は形状を維持することができ、本体の凹部の開口に沿って設けられた筒壁部の少なくとも一部が中間部材に沈み込んだ状態で、中間部材と本体とを一体化させて成形することが可能である。前述したように、本体に設けられた環状の筒壁部の少なくとも先端部が接合部材と一体的に成形された中間部材に沈み込んだ状態で中間部材と本体とが一体化されて成形されていれば、本体の筒壁部の少なくとも先端部の内周面及び先端面(頂面)が接合部材と一体的に成形された中間部材と一体化されていることになる。この結果、本体の第1の境界面と中間部材との間に仮に隙間が生じていても、本体の筒壁部と中間部材との間が確実に封止された状態となるので、本体の凹部と中間部材とによって形成された空間部が本体と中間部材及び接合部材との間では外部から封止された状態となり、空間部内の流体が外部に漏出することが確実に防止される。また、筒壁部は凹部の開口部の周囲に沿って形成されているので、空間部において本体と中間部材との連結部において段差が形成されず、滞留部も生じない。なお、本願において、筒壁部の先端部が中間部材に沈み込んだ状態とは、筒壁部の少なくとも先端面(頂面)及び内周面が中間部材に隙間なく接している状態を意味し、筒壁部の外周面が中間部材に接していない状態を含む。
【0009】
上記配管機器では、前記本体に、前記空間部に連通する流入流路及び流出流路とが形成されているようにすることができる。
【0010】
上記配管機器では、前記中間部材がフィルム状又は板状であることが好ましい。
【0011】
また、前記中間部材の厚さが50μmから100mmの範囲であるようにすることができる。この場合、前記筒壁部が前記中間部材に沈み込んでいる部分の長さが0.5μmから95mmの範囲であるようにすることができる。
【0012】
一つの実施形態として、前記第1のフッ素樹脂材料及び前記第2のフッ素樹脂材料がPTFEとすることができる。この場合、前記第3のフッ素樹脂材料はPFA又は変性PTFEであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の配管機器によれば、本体の第1の境界面と中間部材との間に隙間が生じていても、本体の筒壁部と中間部材との間が確実に封止された状態となるので、本体の凹部と中間部材及びこれと一体的に成形された接合部材とによって形成された空間部が本体と中間部材及び接合部材との間において外部から封止された状態となり、空間部内の流体が本体と中間部材及び接合部材との間を通って外部に漏出することが確実に防止される。また、筒壁部は凹部の開口部の周囲に沿って形成されているので、空間部において本体と中間部材との連結部において段差が形成されず、滞留部も生じない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明による配管機器の一つの実施形態である渦流式流体混合器の全体構成を示した斜視図である。
【
図2】
図1に示されている配管機器を上方から見た平面図である。
【
図3】
図2に示されている線III-IIIに沿った配管機器の断面図である。
【
図4】
図1に示されている配管機器を製造する手順の一例を示す説明図である。
【
図5】
図1に示されている配管機器を製造する手順の一例を示す説明図である。
【
図6】
図1に示されている配管機器を製造する手順の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明による配管機器の実施の形態を説明する。
最初に
図1から
図3を参照して、本発明による配管機器の一例である渦流式流体混合器11の全体構成を説明する。
【0016】
本発明による配管機器は、第1のフッ素樹脂材料から形成され且つ第1の境界面13aを有する本体13と、第2のフッ素樹脂材料から形成され且つ第2の境界面15aを有する接合部材15と、本体13と接合部材15との間に介在し且つ第3のフッ素樹脂材料から形成される中間部材17とを備え、中間部材17が第2の境界面15aを介して接合部材15と一体的に成形され接合されている。中間部材17はフィルム状又は板状であり、厚さは例えば50μmから100mmの範囲とすることができる。
【0017】
本体13には、第1の境界面13aに開口する凹部19が形成されており、第1の境界面13aへの凹部19の開口の周囲すなわち周縁に沿って第1の境界面13aから中間部材の厚さよりも低い長さだけ突出する環状の筒壁部21が設けられている。凹部19の内周面と筒壁部21の内周面とは、滑らかに接続され面一となるように形成されている。また、接合部材15と一体的に成形された中間部材17は、環状の筒壁部21の少なくとも先端部が中間部材17に沈み込んで埋まる状態で、第1の境界面13a側で本体13と一体的に成形されている。中間部材17に沈み込んで埋まる筒壁部21の長さは、中間部材17の厚さよりも短く、例えば、0.5μmから95mmの範囲とすることができる。しかしながら、中間部材17に沈み込んで埋まる筒壁部21の長さは、中間部材17の厚さよりも短く、筒壁部21の少なくとも先端面(頂面)が中間部材17と接して中間部材17を貫通していなければ、上述の範囲に限定されるものではない。なお、本願において、筒壁部21の先端部が中間部材17に沈み込んで埋まった状態とは、筒壁部21の少なくとも先端面(頂面)及び内周面が中間部材17に隙間なく接している状態を意味し、筒壁部21の外周面が中間部材17に接していない状態を含む。
【0018】
このように、本体13の凹部19は、接合部材15と一体的に成形された中間部材17で第1の境界面13aへの開口を閉鎖することによって、空間部を形成し、本体13と中間部材17とは、本体13の環状の筒壁部21の少なくとも先端部の内周面及び頂面が中間部材17と一体化されるように成形されている。この結果、本体13の第1の境界面13aと中間部材17との間に仮に隙間が生じていても、本体13の環状の筒壁部21と中間部材17との間が確実にシール(すなわち封止)された状態となるので、内部空間から本体13と接合部材15との接合部を通った流体の漏出を確実に防止できる。
【0019】
中間部材17を形成する第3のフッ素樹脂材料は融点以上まで加熱されて溶融した後に冷え固まることにより他の樹脂材料と接合することができる熱融着性フッ素樹脂材料からなり、本体13を形成する第1のフッ素樹脂材料及び接合部材15を形成する第2のフッ素樹脂材料は、第3のフッ素樹脂材料の融点で溶融せず形状を維持できる非溶融性を呈する難溶性(非溶融性)のフッ素樹脂材料からなる。
【0020】
難溶性(非溶融性)のフッ素樹脂材料としては、例えば、第3のフッ素樹脂材料の融点よりも高い融点を有するフッ素樹脂材料や、融点まで加熱してもゲル状になって完全には溶融しないフッ素樹脂を使用することができる。また、第1のフッ素樹脂材料と第2のフッ素樹脂材料とは、第3のフッ素樹脂材料の融点で非溶融性を呈することができれば、同一種類のフッ素樹脂材料からなってもよく、異なる種類のフッ素樹脂材料からなってもよい。例えば、第1のフッ素樹脂材料及び第2のフッ素樹脂材料をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とし、第3のフッ素樹脂材料をパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)又は変性PTFEとすることができる。
【0021】
本願において、配管機器とは、流体が流れる流路が内部に設けられており且つ配管の一部を構成する機器を意味し、例えばバルブ装置、流体混合器などが含まれる。
図1から
図3に示されている実施形態では、本発明による配管機器として、渦流式流体混合器11が例示されており、本体13の凹部19と蓋部材を構成する接合部材15及び中間部材17とによって形成される空間部が渦室23として使用されている。凹部19は断面概略円形状を有した概略円柱形状の空間となっている。また、本体13の凹部19の底面(
図1から
図3に示されている実施形態では空間部の天井面)には、底面の中央部から突出する突出部25が設けられている。突出部25は断面概略円形状の概略円柱形状を有しており、突出部25の周囲に環状の空間が形成されるようになっている。さらに、本体13には、第1の入口接続端部27から凹部19の内周面に対する接線方向に且つ図中の水平方向に延びて凹部19に連通する第1の流体供給路29と、第2の入口接続端部31から図中の上下方向に延びて第1の流体供給路29の中間部に接続される第2の流体供給路33と、出口接続端部35から図中の水平方向に延びた後に概略直角に下方に湾曲して突出部25を貫通して凹部19に接続される流体排出路37とが形成されている。第1の流体供給路29と第2の流体供給路33とは、空間部すなわち渦室23に連通する流入流路を構成し、流体排出路37は、空間部すなわち渦室23に連通する流出流路を構成している。なお、突出部25は、第1の流体供給路29から渦室23に流入する流体が突出部25に衝突して流れるような位置に設けられている。
【0022】
このような渦流式流体混合器11では、第1の流体供給路29に供給される主流体に、第1の流体供給路29に接続される第2の流体供給路33から供給される添加流体が合流して渦室23に供給され、合流した流体が渦室23内で渦流をなし、渦流の作用で混合された後、流体排出路37から排出される。
図1から
図3に示されている渦流式流体混合器11では、凹部19の底面の中央部から突出する突出部25が設けられており、流体排出路37が突出部25を貫通して延びている。しかしながら、突出部25の位置は凹部19の底面の中央部に限定されるものではなく、第1の流体供給路29から供給される流体の少なくとも一部が突出部25に衝突するようになっていればよい。さらに、流体排出路37は、渦室23内の流体を排出できれば、突出部25を通らずに凹部19に接続されていてよく、突出部25が設けられていなくてもよい。
【0023】
渦流式流体混合器11では、本体13の凹部19の開口の周囲に沿って設けられた筒壁部21の少なくとも内周面及び先端面(頂面)が蓋部材の一部をなす中間部材17と一体的に成形されており、本体13と蓋部材との間がシールされているので、凹部19と蓋部材とによって形成される空間部が構成する渦室23内の流体が本体13と蓋部材との間から外部に漏出することを確実に防止することができる。
【0024】
次に、
図4から
図6を参照して、
図1から
図3に示されている渦流式流体混合器11を製造する方法の一例を説明する。ここでは、渦流式流体混合器11の中間部材17が熱融着性の第3のフッ素樹脂材料であるPFAから形成され、本体13が第3のフッ素樹脂材料であるPFAの融点において非溶融性を呈する難溶性(非溶融性)の第1のフッ素樹脂材料であるPTFEから形成され、接合部材15が第3のフッ素樹脂材料であるPFAの融点において非溶融性を呈する難溶性の第2のフッ素樹脂材料であるPTFEから形成されているものとする。
【0025】
まず、
図4に示されているように、PTFEから圧縮成形された直方体形状の第1のブランク体39の底面39aに、切削加工により、下方に開口し且つ頂面から下方に突出する突出部25が設けられた凹部19を作製し、凹部19の底面39aへの開口の周囲に沿って、内周面が凹部19の内周面と滑らかに接続され面一になるように第1の境界面13aから突出する環状の筒壁部21を作製する。これにより、第1の境界面13aから突出する筒壁部21が形成される。次に、切削加工により、第1のブランク体39の第1の側面39bから凹部19の外周面にその接線方向に接続されるように水平方向に延びる第1の流体供給路29を作製し、第1のブランク体39の頂面39cから垂直方向(上下方向)に延びる第2の流体供給路33を作製し、第1の流体供給路29の中間部に接続させる。また、切削加工により、第1の側面39bと対向する第1のブランク体39の第2の側面39dから水平方向に延びる流体通路を作製すると共に突出部25を貫通して上方に延びる流体通路を作製し、作製した二つの流体通路を接続することによって流体排出路37を作製する。
【0026】
次に、PTFEから圧縮成形された直方体形状の第2のブランク体41の頂面41aに、切削加工により、上方に開口する凹部43を作製する。凹部43は、凹部43の底面から開口部までの長さ(深さ)が第1の境界面13aから突出する筒壁部21の長さ(すなわち高さ)よりも長くなるように作製される。次に、第2のブランク体41の凹部43内に、PFAから形成されるフィルム状又は板状の樹脂集合体45を収容する。樹脂集合体45は、その高さが凹部43の深さよりも低くなるように作製されており、樹脂集合体45が凹部43内に収容されたときに凹部43よりも上方に突出しないようになっている。樹脂集合体45は、切削加工、押出成形又は射出成形により作製してもよく、PFAの粉体又はペレットを凹部43に充填して作製してもよい。
【0027】
次に、第1のブランク体39に形成された筒壁部21が樹脂集合体45に接するように、凹部43内に樹脂集合体45が収容された状態の第2のブランク体41の上に第1のブランク体39を配置する。さらに、この状態で配置された第1のブランク体39、第2のブランク体41及び樹脂集合体45を加熱炉内に配置して、少なくとも第3のフッ素樹脂材料であるPFAの融点以上まで加熱する。すると、第1のフッ素樹脂材料及び第2のフッ素樹脂材料である難溶性のPTFEから形成された第1のブランク体39と第2のブランク体41は、仮にPTFEの融点以上まで加熱されてもゲル化して溶融しないので、筒壁部21及び凹部43の形状を維持する。一方、熱融着性の第3のフッ素樹脂材料であるPFAから形成される樹脂集合体45は、融点以上まで加熱されているので、溶融して流動化する。凹部43を形成する第2のフッ素樹脂材料であるPTFEが難溶性で第2のブランク体41が形状を維持しているので、樹脂集合体45は溶融しても凹部43内に保持される。また、樹脂集合体45が溶融すると、
図5に示されているように、形状を維持している第1のブランク体39に形成された第1の境界面13aが第2のブランク体41の頂面41aに当接するまで、ブランク体39に作製された筒壁部21が樹脂集合体45内に沈み込こむ。筒壁部21の高さは凹部43の深さよりも短いので、第1のブランク体39に形成された第1の境界面13aが第2のブランク体41の頂面41aに当接したとき、第1のブランク体39に形成された筒壁部21の先端面は第2のブランク体41に形成された凹部43の底面に接触しない。この状態で冷却すると、筒壁部21の少なくとも先端部が樹脂集合体45を貫通せず、樹脂集合体45内に沈み込んで埋まった状態で、樹脂集合体45と第1のブランク体39とが一体的に成形されて融着されると共に、樹脂集合体45と第2のブランク体41とが一体的に成形されて融着される。樹脂集合体45と第2のブランク体41が一体的に成形されて融着された状態では、樹脂集合体45の底面と接する第2のブランク体41の凹部43の底面が第2の境界面15aをなす。
【0028】
次に、一体的に成形されて融着された第1のブランク体39、第2のブランク体41及び樹脂集合体45を切削加工することによって、
図6に示されるように、渦流式流体混合器11を作製することができる。詳細には、切削加工により、第1のブランク体39の流体供給路29、第2の流体供給路33及び流体排出路37の端部に、それぞれ、第1の入口接続端部27、第2の入口接続端部31及び出口接続端部35を作製して、本体13が作製される。また、筒壁部21の外周面と面一になるまで第2のブランク体41及び樹脂集合体45の側部及び底部を切削加工することによって、第2の境界面15aを介して一体的に成形された接合部材15及び中間部材17(すなわち蓋部材)が作製される。こうして作製された渦流式流体混合器11において、筒壁部21の周囲の第1のブランク体39の底面が第1の境界面13aを構成し、中間部材17の底面と接する接合部材15の頂面(第2のブランク体41の凹部43の底面から作製される部分)が第2の境界面15aを構成する。
【0029】
本体13の筒壁部21が接合部材15と一体的に形成された中間部材17を貫通することなく、少なくとも先端部が中間部材17に沈み込んで埋まった状態で中間部材17と一体的に成形されて融着されることによって、本体13の凹部19が接合部材15及び中間部材17によって封鎖され、渦室23をなす空間部が形成される。また、筒壁部21の先端部が少なくとも内周面と先端面(頂面)において中間部材17と一体的に成形されているので、本体13と接合部材15及び中間部材17との間が確実に封止され、内部空間の流体が本体13と接合部材15及び中間部材17との間から外部に漏出することを防止することができる。さらに、筒壁部21は、中間部材17となる樹脂集合体45を溶融させた状態で樹脂集合体45内に沈み込むので、筒壁部21と中間部材17との接続部において段差部が形成されて、滞留部を生じさせることを抑制することができる。
【0030】
以上、図示されている本発明の流体機器の実施形態である渦流式流体混合器11を参照して、本発明を説明したが、本発明は、図示されている実施形態に限定されるものではない。例えば、図示されている実施形態では、本発明による配管機器として、渦流式流体混合器11を例示しているが、配管機器とは、流体が流れる流路を内部に有し且つ配管の一部として使用される機器を意味し、例えばバルブ装置、流体混合器などが含まれる。また、図示されている実施形態では、第1のフッ素樹脂材料及び第2のフッ素樹脂材料としてPTFEが使用され、第3のフッ素樹脂材料としてPFAが使用されているが、第1のフッ素樹脂材料、第2のフッ素樹脂材料及び第3のフッ素樹脂材料はこれらに限定されるものではない。さらに、本発明の配管機器の一例である渦流式流体混合器11の製造方法はあくまで例示であり、本発明の配管機器の構成を満たすものであれば、その製造方法は限定されるものではない。
【符号の説明】
【0031】
11 渦流式流体混合器
13 本体
13a 第1の境界面
15 接合部材
15a 第2の境界面
17 中間部材
19 凹部
21 筒壁部
【要約】
【課題】配管機器において二つの部材を隙間なく且つ段差部を生じさせずに接続する。
【解決手段】配管機器は、第1のフッ素樹脂材料から形成され、第1の境界面13aを有する本体13と、第2のフッ素樹脂材料から形成され、第2の境界面15aを有する接合部材15と、第3のフッ素樹脂材料から形成され、第2の境界面15aを介して接合部材15と一体的に成形された中間部材17とを備える。本体13が第1の境界面13aに開口する凹部19を有し、中間部材17の厚さよりも低い長さだけ突出する筒壁部21が凹部19の開口の周囲に沿って設けられている。第1のフッ素樹脂材料及び第2のフッ素樹脂材料が第3のフッ素樹脂材料の融点で非溶融性を呈する非溶融性フッ素樹脂材料であり、中間部材17は、筒壁部21の少なくとも先端部が中間部材に沈み込んだ状態で、本体13と一体化されて成形され、中間部材と凹部とによって空間部を形成している。
【選択図】
図3