(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】スクリュウ不要の船舶、宇宙探査機などの推進力発生装置
(51)【国際特許分類】
F03H 99/00 20090101AFI20240927BHJP
【FI】
F03H99/00 D
(21)【出願番号】P 2024094966
(22)【出願日】2024-06-12
【審査請求日】2024-06-12
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506134009
【氏名又は名称】柴田 英策
(72)【発明者】
【氏名】柴田 英策
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特許第7087216(JP,B1)
【文献】登録実用新案第3158488(JP,U)
【文献】特開2016-84799(JP,A)
【文献】特開2012-137082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03H 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錘(2)を固着した回転子(1)及び回転子軸受(5)と、ジョイント(6)及び傘歯車(8)を結合したモーター(7)からなる振動装置と、可撓性金属材料である円形な振動板(4)端部に前記回転子(1)を垂直に設置し、前記振動板(4)の半円内に一対の前記振動装置の傘歯車(8)を係合して鋭角に配置し、外フレーム(9)中間に結合する垂直軸(3)に、前記振動板(4)中心を固定し、両側に調整ネジ(13)を備えた前記外フレーム(9)に、直交する回転軸(11)および軸受(11b)を備えた支持枠(10)を固定し、前記回転軸(11)を共通にする軸受(11b)を備えた底板(12)と連結し、前記回転子(1)の錘(2)が同期回転することにより、前記振動板(4)の振動装置側と反対側において、振動エネルギー格差または復元力格差が生じ、推進力を発生させる推進力発生装置。
【請求項2】
鋭角に配置したモーター間夾角中間線(7b)と、外フレーム中心線(9a)が一致する配置とすることにより、前記外フレーム中心線(9a)に平行に推進する請求項1記載の推進力発生装置。
【請求項3】
外フレーム(9)に、直交する回転軸(11)を備えた支持枠(10)および底板(12)の前記回転軸(11)が働き、振動板(4)の上下振動を位相により和らげる効果がある請求項1記載の推進力発生装置。
【請求項4】
支持枠(10)および底板(12)に備える軸受(11b)を、外フレーム中心線(9a)から左右等間隔に設置する請求項1記載の推進力発生装置。
【請求項5】
振動板(4)の形状を、楕円形または多角形とする請求項1記載の推進力発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動手段としての推進機関に関し、1個の振動板内において二つの異なる大きさの振幅を発生させ、その振動エネルギー格差により移動する推進技術に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶や潜水艦はスクリュウプロペラで水をかくことにより回転翼に揚力が発生するため推進する。しかし、回転翼への巻き込みによる危険性や、魚類への接触事故も危惧される。また、宇宙探査機に使用されているイオンエンジンなどは、最大推力は小さく、燃料として推進剤を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第7087216号公報
【文献】特許第7029743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、外力により円形振動板を振動させ、円形振動板を二つに区分する領域において、振幅の大きさが異なることにより、振動エネルギーが大きい方向へ推進する、推進力発生装置を提供することを目的とする。
【0005】
また、外乱振動を和らげるため位相により制御し、所定の方向へ移動推進させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明に係る推進力発生装置は、錘2を固着した回転子1及び回転子軸受5と、ジョイント6及び傘歯車8を結合したモーター7からなる振動装置と、可撓性金属材料である円形な振動板4端部に、前記回転子1を垂直に設置し、前記振動板4の半円内に一対の前記振動装置の傘歯車8を係合して鋭角に配置し、外フレーム9中間に結合する垂直軸3に、前記振動板4を固定する。
【0007】
両側に調整ネジ13を備えた前記外フレーム9に、直交する回転軸11および軸受11bを備えた支持枠10を固定し、さらに、前記回転軸11を共通し軸受11bを備えた底板12を連結し、鋭角に配置したモーター間夾角中間線7bと、外フレーム中心線9aが一致する配置とし、回転子1の錘2を同期回転させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載される効果を奏する。
【0009】
二つのモーターは傘歯車8によりかみ合っているため回転方向が逆になる。そこで、回転子1の錘2を振動板4と垂直な、上下端方向では一致した位置とし、さらに、90度回転して振動板4と平行な位置では、反対側を向くように回転を同期させる。モーター7の回転方向は限定しない。
【0010】
外フレーム9が水平状態のとき、振動板4の振動装置側の質量が重いことから、振動装置側の調整ネジ13と底板12は接触状態になるが、反対側の調整ネジ13と底板12の間に任意の「あそび」間隔を設ける。これにより外フレーム9下方にある支持枠10および底板12の回転軸11が働き、振動板4の周期に対し、外フレーム9などの慣性質量の固有周期は遅れて応答するため、位相により調和され本装置の上下振動を和らげる効果がある。
【0011】
上記の支持枠10および底板12に設ける、共通する回転軸11の軸受11bは、外フレーム中心線9aから左右等間隔に配置する。
【0012】
図4の平面図により、外フレーム中心線9aと円形の振動板4中心Oが直交する部分を、「振動装置側」と「反対側」とに区分して説明する。
振動装置側には回転子1、回転子軸受5、ジョイント6、モーター7、傘歯車8を直線的に連結し、同様に構成された一対の傘歯車8をかみ合わせ、振動板4の半円内に配置する。鋭角に配置したモーター間夾角中間線7bと、外フレーム中心線9aが一致する設定にする。
【0013】
鋭角に配置するモーター間夾角7aは、傘歯車8の歯先角やモーターサイズにより決まるため角度を指定するものではない。以降の説明によって、なるべく狭い夾角にできれば、遠心力による力が集中作用するため、振動板4の撓み量が大きくなり、それに伴い推進力も大きくなることは理解されるであろう。
【0014】
振動板4は可撓性金属材料であって、中心を垂直軸3に固定しているため、外力が作用すると端部側の振幅が大きくなる。特に回転子1などを配置した振動装置側は、外力により反対側より撓み量が大きくなる傾向にある。その場合、振動周期は等しいが振幅が異なるため、振動装置側へ発生する振動エネルギーが大きくなり、振動装置側方向にモーメント差による推進力が発生する。
【0015】
上記の場合、金属材料およびモーター電流量によっては、反対側の振幅が大きくなる材料もあり、その場合は反対側方向に移動する力が働く。
【0016】
鋭角に配置したモーター間夾角中間線7bと、外フレーム中心線9aが一致する配置にしているため、振動による応力が垂直軸3および支持枠10ならびに底板12の回転軸11および軸受11b均等に作用して移動方向が制限され、振動装置は外フレーム中心線9aと平行に直線的に推進する。
【0017】
振動エネルギー(E)の計算式は、次式により求められる。
【0018】
(数1) E=2π2mf2A2
ただし、 m(質量) f(振動数) A(振幅)
【0019】
数式1から分かるように、振動エネルギーは振動数および振幅の二乗に比例する。したがって振幅の相違により、振動板内にエネルギー格差が生じて推進力が発生すると言える。
【0020】
また、振動板4に作用する復元力(F)の計算式は、次式により求められる。
【0021】
(数2)F=-mrω2
ただし、m(質量) r(振幅) ω(角速度=2πf)
【0022】
数2から、復元力は振幅に比例するため、振動板4内の振幅が異なると、復元力の格差によりどちらかに推進する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施例として実験結果をもとに詳細に説明する。
【実施例】
【0025】
実験例1
図1~
図3は本発明に係る実験装置で、振動板4には鉄系金属材料のSPCC(冷間圧延軟鋼板)と純チタンを用いて実験した。比較したデーターを表1に示している。共通条件として、錘2の質量13.4g、錘2の回転半径6.0cm、モーター7電圧12V、モーター間夾角7aは59度である。また、外フレーム9に取り付けた調整ネジ13の「あそび」は1~2mmである。
【0026】
SPCC板(厚さ2.3mm)の場合、電流を1.5A(アンペア)にすると外フレーム9と垂直な部分の振動板4端部の振幅は、「反対側」で7mm、「振動装置側」では10mmとなる。そのため、実験装置は振動装置側方向へ秒速1.53cmの速さで水平に移動する。このとき、実験装置の底板を引き留める、けん引力は2.25kg必要となる。(けん引力=推進力)
【0027】
同じSPCC板の場合で、電流を2.5Aに上げると回転の当初、実験装置は振動装置側方向へ進むが、次第に振動加速が増すと反対側方向へ進んで行く。そのため、電流量で推進方向を変えることが可能である。
【0028】
SPCC板のヤング率は高いが降伏点または耐力が低いため、遠心力が強く働くとスプリングバックが遅くなり、振動板4の撓み量が大きくなる傾向がある。
【0029】
実験例2
純チタン板(厚さ5.0mm)の場合は、電流量を1.5Aから3.0Aに変えても進む方向は振動装置側方向である。SPCCより降伏点または耐力が高いことが要因と考えられる。しかし、板厚によっては異なるかも知れない。SPCC板より振動が小さく、スムーズに推進する。
【0030】
使用したモーター7の定格電流は4Aであるが、その半分以下の電流で推進力が発生するため、省エネルギーであると言える。
【0031】
その他として、本発明に係る傘歯車8を使用する形式ではなく、位置制御ユニットを用いたオンライン指令により、錘2を同期回転することはすでに公知である。
【0032】
円形振動板4の形状は、楕円形や多角形のようなものでも同様な効果が得られるものと考えられることから、振動板4の形状を限定するものではない。
【0033】
また、支持枠10に備えた回転軸11と外フレーム9の垂直軸3は、必ずしも垂直な位置関係で交差する必要はなく、多少位置が相違しても同様な効果がある。
【0034】
その他の実験として、4個の車輪が付いた手押し式の台車(重量8.4kg)に、実験装置を乗せて作動させても推進はしないものであった。装置の底板12と基礎地盤との間が中空になり、振動が一方的になって基礎地盤から反動が得られないため推進しない。振動に対応できる慣性質量のある物体に取り付けると、推進力が発生するものと考えられる。
【0035】
実験装置の実験結果を表1に示した。
【0036】
【符号の説明】
【0037】
1:回転子 2:錘 3:垂直軸
4:振動板 5:回転子軸受 6:ジョイント
7:モーター 7a:モーター間夾角
7b:モーター間夾角中間線 8:傘歯車
9:外フレーム 9a :外フレーム中心線
10:支持枠 11:回転軸 11a:回転軸中心線
11b:軸受 12:底板 13:調整ネジ
14:振幅
【要約】
【課題】外力により円形振動板を振動させ、振動板の中心から二分割する領域において振幅差を発生させ、振動エネルギーの格差を応用した推進装置を提供する。
【解決手段】錘2を固着した回転子1及び回転子軸受5により構成される振動装置と、傘歯車8を結合したモーター7軸をジョイント6で直線的に連結し、同様に構成された一対の振動装置の傘歯車8を、鋭角に係合して円形振動板4の半円内に配置し、調整ネジ13を設けた外フレーム9中間に結合する垂直軸3に振動板4を固定し、外フレーム9に直交する回転軸11を備えた支持枠10および回転軸11を共通する底板12を連結し、回転子1の錘2を同期回転させ、振動エネルギー格差により推進力を発生させる。
【選択図】
図1