(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】施工品質評価プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20240930BHJP
【FI】
G06Q50/08
(21)【出願番号】P 2020138210
(22)【出願日】2020-08-18
【審査請求日】2023-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】小出 良知
(72)【発明者】
【氏名】和田 剛
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 勝重
(72)【発明者】
【氏名】林田 秀和
【審査官】田上 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-002536(JP,A)
【文献】特開2016-142601(JP,A)
【文献】特開2011-248748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築現場での評価対象物の施工品質を評価する施工品質評価プログラムであって、
前記評価対象物が含まれる写真画像を取得する写真画像取得処理と、
前記写真画像取得処理において取得した前記写真画像が、施工品質の評価が可能な適合写真画像であるか、又は施工品質の評価が不能な不適写真画像であるか、を判断する写真適否判断処理と、
前記写真適否判断処理において前記適合写真画像であると判断された場合に、当該適合写真画像が、前記評価対象物の施工品質が良好な良好写真画像であるか、又は前記評価対象物の施工品質が不良な不良写真画像であるか、を判断する施工良否判断処理と、
前記写真適否判断処理において前記不適写真画像であると判断された場合に、当該不適写真画像である旨の情報を出力するとともに、前記写真適否判断処理において前記適合写真画像であると判断された場合に、前記施工良否判断処理が判断した前記評価対象物の施工品質の良否を出力する出力処理と、
を備え
、
前記写真適否判断処理は、予め前記適合写真画像及び前記不適写真画像を機械学習させたプログラムにより、前記写真画像の適否を判断し、
前記施工良否判断処理は、予め入力された基準部に対する評価対象物の大きさの比率の基準値に基づいて、前記写真画像に含まれる基準部の大きさに対する評価対象物の大きさの比率を評価して、施工品質の良否を判断する比率判断処理を含むことを特徴とする施工品質評価プログラム。
【請求項2】
予め前記不適写真画像を不適の理由毎に機械学習させておき、
前記写真適否判断処理において施工品質の評価が不能な不適写真画像であると判断した場合に、当該写真適否判断処理は、
前記不適の理由毎の機械学習の結果に基づいて、前記不適写真画像がいずれの理由に基づく不適写真画像であるかを判断し、前記不適の理由に応じて前記不適写真画像を分類し、
前記出力処理は当該不適の理由を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の施工品質評価プログラム。
【請求項3】
前記施工良否判断処理は、予め施工の良好な良好写真画像及び施工の不良な不良写真画像を機械学習させたプログラムにより、前記写真適否判断処理により適合写真画像と判断された写真画像の評価対象物の施工品質の良否を判断する品質学習判断処理を含むことを特徴とする
請求項1又は請求項2に記載の施工品質評価プログラム。
【請求項4】
前記品質学習判断処理は、予め前記不良写真画像は施工不良の原因に応じていくつかの原因に分類して機械学習させておき、前記不良写真画像を施工品質の不良の原因毎に分類し、
前記施工良否判断処理において前記
評価対象物の施工品質が不良であると判断した場合に、前記出力処理は、
前記品質学習判断処理の分類に基づいて当該施工品質の不良の原因毎
に出力することを特徴とする
請求項3に記載の施工品質評価プログラム。
【請求項5】
前記写真画像取得処理は、前記評価対象物を撮影する際に、写真撮影範囲を表示するモニターに、前記写真撮影範囲中の前記評価対象物の大きさ及び撮影方向をガイドするガイド情報を表示することを特徴とする
請求項1から請求項4のいずれかに記載の施工品質評価プログラム。
【請求項6】
施工工程を管理する施工工程管理処理から取得した工程表に
予め各工程ごとに記載された前記評価対象物の施工完了予定時期に基づいて、
前記評価対象物の前記施工完了予定時期を経過しており、且つ、前記写真画像取得処理が前記写真画像を取得していない場合に、前記評価対象物が含まれる写真画像の撮影を促す撮影促進情報を出力する撮影促進処理をさらに備えることを特徴とする
請求項1から請求項5のいずれかに記載の施工品質評価プログラム。
【請求項7】
前記施工良否判断処理は、前記良好写真画像及び前記不良写真画像をそれぞれ所定の記憶部に蓄積記憶するものであり、
前記記憶部に記憶された前記良好写真画像及び前記不良写真画像をランダムに表示する教育表示処理をさらに備え、
前記教育表示処理は、表示した写真画像が前記良好写真画像及び前記不良写真画像のいずれであるかを隠した第一表示態様と、当該写真画像が前記良好写真画像であるか、前記不良写真画像であるかを示す良否判定情報を表示した第二表示態様と、を切り替えて表示可能であることを特徴とする
請求項1から請求項6のいずれかに記載の施工品質評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の施工の際に、施工管理用に取得される写真画像を用いて施工品質を評価する施工品質評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築物の施工現場における施工管理として、撮影機能を有する端末を用いて施工確認箇所の写真を撮影し、サーバ上に撮影された写真を保存し、施工確認場所の撮影の進捗を、未撮影である状態又は撮影完了の状態を区別して表示する施工管理システムが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、例えばコンクリート構造物の施工品質を評価するために、脱型後のコンクリート構造物を撮像し、当該画像と、予め機械学習させた情報とを用いて、撮像されたコンクリート構造物の施工品質を評価し、出力する施工品質評価装置が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-45355号公報
【文献】特開2016-142601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2のような施工品質評価装置を用いても、そもそも評価対象物が適切に撮影されていない場合には、品質を評価することができない問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、建築現場での評価対象物の施工品質を評価する施工品質評価プログラムであって、適切に撮影された評価対象物の写真画像に基づいて、施工品質の良否を的確に判断することができる施工品質評価プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の施工品質評価プログラムは、建築現場での評価対象物の施工品質を評価する施工品質評価プログラムであって、前記評価対象物が含まれる写真画像を取得する写真画像取得処理と、前記写真画像取得処理において取得した前記写真画像が、施工品質の評価が可能な適合写真画像であるか、又は施工品質の評価が不能な不適写真画像であるか、を判断する写真適否判断処理と、前記写真適否判断処理において前記適合写真画像であると判断された場合に、当該適合写真画像が、前記評価対象物の施工品質が良好な良好写真画像であるか、又は前記評価対象物の施工品質が不良な不良写真画像であるか、を判断する施工良否判断処理と、前記写真適否判断処理において前記不適写真画像であると判断された場合に、当該不適写真画像である旨の情報を出力するとともに、前記写真適否判断処理において前記適合写真画像であると判断された場合に、前記施工良否判断処理が判断した前記評価対象物の施工品質の良否を出力する出力処理と、を備え、前記写真適否判断処理は、予め前記適合写真画像及び前記不適写真画像を機械学習させたプログラムにより、前記写真画像の適否を判断し、前記施工良否判断処理は、予め入力された基準部に対する評価対象物の大きさの比率の基準値に基づいて、前記写真画像に含まれる基準部の大きさに対する評価対象物の大きさの比率を評価して、施工品質の良否を判断する比率判断処理を含むことを特徴としている。
【0010】
本発明の施工品質評価プログラムは、前記写真適否判断処理において施工品質の評価が不能な不適写真画像であると判断した場合に、当該写真適否判断処理は、予め前記不適写真画像を不適の理由毎に機械学習させておき、当該機械学習に基づいて、前記不適写真画像がいずれの理由に基づく不適写真画像であるかを判断し、前記不適の理由に応じて前記不適写真画像を分類し、前記出力処理は当該不適の理由を出力することを特徴としている。
【0011】
本発明の施工品質評価プログラムは、前記施工良否判断処理は、予め施工の良好な良好写真画像及び施工の不良な不良写真画像を機械学習させたプログラムにより、前記写真適否判断処理により適合写真画像と判断された写真画像の評価対象物の施工品質の良否を判断する品質学習判断処理を含むことを特徴としている。
【0012】
本発明の施工品質評価プログラムは、前記品質学習判断処理は、予め前記不良写真画像は施工不良の原因に応じていくつかの原因に分類して機械学習させておき、前記不良写真画像を施工品質の不良の原因毎に分類し、前記施工良否判断処理において前記評価対象物の施工品質が不良であると判断した場合に、前記出力処理は、前記品質学習判断処理の分類に基づいて当該施工品質の不良の原因毎に分類して出力することを特徴としている。
【0014】
本発明の施工品質評価プログラムは、前記写真画像取得処理は、前記評価対象物を撮影する際に、写真撮影範囲を表示するモニタに、前記写真撮影範囲中の前記評価対象物の大きさ及び撮影方向をガイドするガイド情報を表示することを特徴としている。
【0015】
本発明の施工品質評価プログラムは、施工工程を管理する施工工程管理処理から取得した工程表に予め各工程ごとに記載された前記評価対象物の施工完了予定時期に基づいて、前記評価対象物の前記施工完了予定時期を経過しており、且つ、前記写真画像取得処理が前記写真画像を取得していない場合に、前記評価対象物が含まれる写真画像の撮影を促す撮影促進情報を出力する撮影促進処理をさらに備えることを特徴としている。
【0016】
本発明の施工品質評価プログラムは、前記施工良否判断処理は、前記良好写真画像及び前記不良写真画像をそれぞれ所定の記憶部に蓄積記憶するものであり、前記記憶部に記憶された前記良好写真画像及び前記不良写真画像をランダムに表示する教育表示処理をさらに備え、前記教育表示処理は、表示した写真画像が前記良好写真画像及び前記不良写真画像のいずれであるかを隠した第一表示態様と、当該写真画像が前記良好写真画像であるか、前記不良写真画像であるかを示す良否判定情報を表示した第二表示態様と、を切り替えて表示可能であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の施工品質評価プログラムによると、写真適否判断処理が、評価対象物が含まれている写真画像の適否を判断した後に、施工良否判断処理が、当該写真適否判断処理により適合写真画像と判断された写真画像が、評価対象物の施工品質が良好な良好写真画像であるか、評価対象物の施工品質が不良な不良写真画像であるかを判断し、出力処理が、不適写真である画像である旨の情報、及び施工良否判断処理が判断した評価対象物の施工品質の良否を出力するので、評価対象物の写真撮影が不適切な場合には写真画像を取得しなおす判断を行うことができ、施工品質が不良な場合には、施工をやり直す判断を行うことができ、適切な判断を行うことができる。そして、この施工品質評価プログラムによる評価を受けることによって、施工管理者が施工管理用の写真画像の撮影技能を高めることができるとともに、施工品質を向上させることができる。
【0018】
本発明の施工品質評価プログラムによると、写真適否判断処理は、予め適合写真画像及び不適写真画像を機械学習させたプログラムよって、写真画像の適否を判断するものであるので、写真画像の適否を判断する精度を高めることができる。
【0019】
本発明の施工品質評価プログラムによると、写真適否判断処理は、不適の理由に応じて不適写真画像を分類し、不適の理由を出力するので、不適の理由を理解することができ、容易に適切な写真画像の撮り直しを行うことができるとともに、写真画像の撮影技能を高めることができる。
【0020】
本発明の施工品質評価プログラムによると、施工良否判断処理は、基準部と評価対象物との大きさの比率の基準値に基づいて、評価対象物の施工品質の良否を判断する比率判断処理を含むので、基準値を入力することで、データの蓄積がない場合でも簡単に施工品質の良否を判断することができる。そして、比率を基準とすることで、写真画像からは実寸が判別できない場合であっても、施工品質の良否を確実に判断することができる。
【0021】
本発明の施工品質評価プログラムによると、施工良否判断処理は、予め施工の良好な良好写真画像及び施工の不良な不良写真画像を機械学習させたプログラムにより、写真適否判断処理により適合写真画像と判断された写真画像の評価対象物の施工品質の良否を判断する品質学習判断処理を含むので、データの蓄積によってより精度の高い施工品質の良否の判断をすることができる。
【0022】
本発明の施工品質評価プログラムによると、出力処理が施工品質の不良の原因毎に分類して出力するので、施工品質の不良と判断された評価対象物をどのように補修するかを簡単に確認することができる。
【0024】
本発明の施工品質評価プログラムによると、写真画像取得処理は、評価対象物を撮影する際に、撮影画像中の評価対象物の大きさ及び撮影方向をガイドするガイド情報を出力処理に表示するので、不適切な写真画像の撮影を減らすことができ、適切な写真画像を取得することができる。
【0025】
本発明の施工品質評価プログラムによると、出力処理は、施工工程を管理する施工工程管理処理から取得した評価対象物の施工時期情報に基づいて、撮影促進情報を出力するので、写真画像の取得漏れを防ぐことができ、確実に施工品質の良否を判断することができる。
【0026】
本発明の施工品質評価プログラムによると、教育表示処理が、記憶部に記憶された良好写真画像及び不良写真画像をランダムに表示するものであり、表示した写真画像が、良好写真画像及び不良写真画像のいずれであるかを隠した第一表示態様と、当該写真画像が良好写真画像であるか、不良写真画像であるかを示す良否判定情報を表示した第二表示態様と、を切り替えて表示可能であるので、第一表示態様で良否の判断を行った後に、第二表示態様で答え合わせすることができ、作業者や施工管理者の教育を行って、施工精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】施工品質評価プログラムを実行する施工管理システムの構成の一例を示すブロック図。
【
図2】施工品質評価プログラムの処理のルーチンを示すフローチャート。
【
図3】撮影促進処理のルーチンを示すフローチャート。
【
図4】写真画像取得処理のルーチンを示すフローチャート。
【
図5】写真画像取得処理の際に、クライアント端末のモニタに表示されるガイド情報を説明する図。
【
図6】写真画像取得処理の際に、クライアント端末のモニタに表示される撮影を促すメッセージを説明する図。
【
図7】写真適否判断処理のルーチンを示すフローチャート。
【
図8】写真適否判断処理の際に、写真画像が不適写真画像であった場合に、クライアント端末のモニタに不適の理由が表示された状態を説明する図。
【
図9】施工良否判断処理のルーチンを示すフローチャート。
【
図10】出力処置のルーチンを示すフローチャート。
【
図11】出力処理において、良好写真画像であった場合の施工品質が良好である旨の情報を、クライアント端末のモニタに表示する状態を説明する図。
【
図12】品質学習判断処理において判断された写真画像が不良写真画像であった場合に、出力処理において施工品質が不良である旨の情報を、クライアント端末のモニタに表示する状態を説明する図。
【
図13】比率判断処理及び有無判断処理において判断された写真画像が不良写真画像であった場合に、出力処理において施工品質が不良である旨の情報を、クライアント端末のモニタに表示する状態を説明する図。
【
図14】教育表示処理のルーチンを示すフローチャート。
【
図15】教育表示処理において、クライアント端末のモニタに表示される(A)は第一態様の一例を示し、(B)は第二態様の一例を示す図。
【
図16】教育表示処理において、クライアント端末のモニタに表示される(A)は第一態様の他の例を示し、(B)は第二態様の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の施工品質評価プログラム1の実施形態について、各図を参照しつつ説明する。本実施形態の施工品質評価プログラム1は、建築現場における施工管理に使用する写真画像を用いて、施工品質を評価するプログラムである。施工品質評価プログラム1は、
図1に示すように、インターネット2を介して接続される複数のクライアント端末3と、各種情報処理を行うサーバ4と、写真画像を蓄積記憶する記憶部5と、によって構成される施工管理システム6により実行されるプログラムである。
【0029】
サーバ4は、図示しないCPU、メモリ、HDD等を有するコンピュータであり、例えば建設会社の保有する自社サーバであってもよく、又は、クラウドサーバなどの外部のサーバであってもよい。また、本実施形態においては1つのサーバ4で各種情報処理を行っているが、複数のサーバ4に分けて処理が行われるものであってもよい。サーバ4は、後述する施工工程管理プログラム7及び施工品質評価プログラム1をそれぞれ実行可能に構成されている。例えば、施工工程管理サーバと施工品質評価サーバとを分けて構成してもよい。また、記憶部5は、本実施形態においては、インターネット2を介してサーバ4に接続される外部ストレージである。記憶部5は、これに限られるものではなく、サーバ4内部のHDDや図示しないLANを介してサーバ4に接続される自社ストレージであってもよい。
【0030】
クライアント端末3は、例えばタブレット端末である。クライアント端末3は、写真撮影が可能なカメラ8を有するとともに、サーバ4と通信を行い、施工工程管理プログラム7や施工品質評価プログラム1の各種出力画面を表示可能なモニタ9が設けられている。クライアント端末3はタブレット端末に限定されるものではなく、例えばスマートフォンやラップトップPCであってもよい。また、本実施形態におけるタブレット端末が果たす機能は必ずしも1台の端末によって実現されるものに限定されるものではなく、例えば、カメラ機能を有する端末と、モニタ9や図示しない操作部を有する端末とを別々に設けて、これらの端末が協働して、施工工程管理プログラム7のクライアント端末側の処理を実行するものであってもよい。クライアント端末3は、建築現場の施工管理者がそれぞれ保有しており、工期の管理や施工管理報告書に用いる写真画像の撮影を行う。
【0031】
施工工程管理プログラム7は、予め入力された工程表に従って施工し、各部の施工が完了する毎に、その旨を入力することで、工事全体の進捗を管理し、当該進捗に応じて工程表を更新するアプリケーションプログラムである。また、施工品質評価プログラム1は、後述するように当該工程表に基づいて、写真画像の撮影を促す撮影促進情報を出力し、評価対象物の写真画像を取得して、施工品質を評価するアプリケーションプログラムである。
【0032】
なお、本実施形態においては、インターネット2を介してクライアント端末3に接続されるサーバ4が施工品質評価プログラム1を実行する構成であるが、予めクライアント端末3に施工品質評価プログラム1をダウンロードすることで、当該施工品質評価プログラム1の処理の一部又は全部がクライアント端末3の図示しないCPUによって実行されるものであってもよい。施工品質評価プログラム1の各種処理をクライアント端末3が実行する構成とすれば、サーバ4及びクライアント端末3間で通信されるデータ量を減らすことができ、建築現場の通信環境が悪い場合であっても、施工品質評価プログラム1を実行することができる。
【0033】
次に、以上のように構成される施工管理システム6において、主としてサーバ4のCPUが実行する施工品質評価プログラム1の具体的な処理について説明する。サーバ4のCPUは、施工品質評価プログラム1に基づいて、
図2に示すように、まず、撮影促進処理を実行する(S100)。撮影促進処理では、
図3に示すように、まず、施工工程管理プログラム7によって記憶部5に記憶されている工程表にアクセスし、評価対象物10の施工完了予定時期が経過したか否か判断する(S101)。具体的には、予め各工程ごとに施工品質を管理する必要がある評価対象物10が定められており、それぞれの評価対象物10に対してそれぞれ施工完了予定時期が経過したか否かの判断を行う。なお、評価対象物10とは適切に施工されなかった場合に建築物に不具合が生じる箇所として、予め定められた箇所であり、従来であればチェックリストに基づいて人為的にチェックしていた箇所である。
【0034】
評価対象物10の施工完了予定時期を経過していないと判断すると(S101:No)、そのまま処理を待機する。一方、評価対象物10の施工完了予定時期を経過していると判断すると(S101:Yes)、当該評価対象物10の写真画像を取得したか否か判断する(S102)。すなわち、施工品質評価プログラム1に基づいて、クライアント端末3のカメラ8を用いて、施工完了後の評価対象物10を撮影し、撮影した写真画像をサーバ4が受信したか否か判断する。写真画像を取得したと判断すると(S102:No)、そのまま撮影促進処理のルーチンを終了する。一方、写真画像を取得していないと判断すると(S102:Yes)、写真促進情報を出力する(S103)。具体的には、クライアント端末3のモニタ9に、「XXXの写真を撮影してください」などの評価対象物10の写真画像を撮影するように促す文字情報を表示させる制御を行う。なお、写真促進情報の出力はモニタ9に文字情報を表示制御させるものに限定されるものではなく、例えば、評価対象物10の写真画像を撮影するように促す内容のメールの送信やインスタントメッセンジャーへの出力であってもよい。写真促進情報を出力すると(S103)、撮影促進処理を終了する。
【0035】
このように写真促進処理によって、写真画像の取得漏れを防ぐことができ、例えば化粧材に覆われるなどして、施工が完了した後から写真を取得することが困難な場所でも、確実に施工品質の良否を判断することができる。
【0036】
撮影促進処理を終了すると(S100)、次に、
図2に示すように、写真画像取得処理を実行する(S200)。写真画像取得処理は、
図4に示すように、まず、クライアント端末3のカメラ8を起動する処理を行う(S201)。具体的には、サーバ4からクライアント端末3に、カメラ8を起動する旨のコマンドを送信する。クライアント端末3のカメラ8を起動すると、クライアント端末3のモニタ9には、写真撮影範囲の画像が表示される。そして、次に、モニタ9にガイド情報11を表示する処理を行う(S202)。具体的には、写真画像中の評価対象物10の形状を例えば予め機械学習によってパターン認識可能に記憶させておき、認識される評価対象物10の形状が所望の範囲に収まるように誘導するガイド情報11をモニタ9の写真撮影範囲の画像に重ねて表示する処理を行う。
【0037】
図5では、評価対象物10としてのインターホン下地の写真画像取得処理におけるガイド情報11を表示する処理を示している。例えば、
図5に示すように、正面から見て矩形のインターホン下地の各角部が配置されるべき位置を示す4つのカギカッコ型のガイド情報11を示すとともに、矢印型のガイド情報11を示すことで、クライアント端末3の向きを当該矢印に沿って回転させることで、適切な撮影方向及び撮影される評価対象物10の大きさをガイドしている。
【0038】
そして、クライアント端末3のカメラ8が評価対象物10を適切な撮影方向及び大きさで映しているか否か判断し(S203)、すなわち、プログラムにより認識される評価対象物10の形状が所望の範囲に収まっているか否か判断し、所望の範囲に収まっていない場合には(S203:No)、撮影される評価対象物10の大きさ又は撮影方向が適切になるようにメッセージを表示する(S205)。すなわち、下部に文字のガイド情報11を表示することで、より適切な撮影方向及び大きさとなるようにガイドしている。具体的には、
図5(A)のように評価対象物10の施工品質を評価することができないほどに斜めから撮影されている場合には、クライアント端末3のカメラ8の方向を回転させるように指示する文字のガイド情報11が表示され、
図5(B)のように評価対象物10の施工品質を評価することができないほどに小さく撮影されている場合には、クライアント端末3を評価対象物10に近づけるように指示する文字のガイド情報11が表示される。そして、S203に戻って、クライアント端末3のカメラ8が評価対象物10を適切な撮影方向及び大きさで映すまで、処理を待機する。
【0039】
一方、クライアント端末3のカメラ8が、適切な撮影方向及び大きさで評価対象物10を映していると判断される場合は(S203:YES)、
図6に示すように撮影を促す文字情報を表示し(S204)、処理を終了する。
【0040】
なお、ガイド情報11は上述の実施形態に限定されるものではなく、評価対象物10を適切に撮影するための案内をできるものであればどのような構成であってもよい。また、ガイド情報11は、モニタ9に表示される情報の他に、音声や振動で表示するものであってもよい。このように、写真画像取得処理の際に、撮影画像中の評価対象物の大きさ及び撮影方向をガイドするガイド情報を出力処理に表示されるので、不適切な写真画像の撮影を減らすことができ、適切な写真画像を取得することができる。
【0041】
以上のようにして、評価対象物10の写真画像を取得すると(S200)、
図2に示すように、次に、写真適合判断処理を行う(S300)。写真適合判断処理では、
図7に示すように、まず、写真画像取得処理において、取得された画像が評価対象物10の写真画像が施工品質の評価が可能な適合写真であるか、施工品質の評価が不能な不適写真画像であるかを判断する(S301)。具体的には、予め多数の適合写真画像及び不適写真画像を例えばディープランニングの手法で機械学習させたプログラムによって新たに取得した写真画像が適合写真画像であるか不適写真画像であるかを判断する。適合写真画像であると判断すると(S301:Yes)、そのまま写真適否判断処理のルーチンを終了する。
【0042】
一方、不適写真画像であると判断すると(S301:No)、不適写真画像を不適理由毎に分類する処理を行う(S302)。具体的には、多数の不適写真画像を不適理由毎に機械学習させておき、これに基づいて、写真画像がいずれの理由に基づく不適写真画像であるかを判断する。不適写真画像の不適の理由としては、撮影方向が斜めすぎて評価対象物10の品質の評価を行うことができない場合や写真画像の中の評価対象物10が小さすぎて品質評価を行うことができない場合の他、写真画像がブレている、写真画像の焦点が評価対象物10に合っていない、写真画像が暗すぎる、評価対象物10の全部又は一部が写真画像中にない、評価対象物10の一部が他の部材などによって隠されているなどの理由があり、これらの理由毎に不適写真画像を分類する。なお、不適写真画像の不適の理由としては、上述のものに限定されるものではなく、写真画像が明るすぎて白飛びしている場合や通信の不良などによって写真画像のデータが壊れた場合などの様々な場合に分類するものであってもよい。
【0043】
不適写真画像を不適理由毎に分類すると(S302)、当該不適理由を出力する処理を行う(S303)。具体的には、
図8(A)に示すように、例えば、撮影擦る方向が斜めすぎるために不適となった不適写真画像を表示するとともに、正面からの撮り直しを促す文字情報を出力する。また、例えば
図8(B)に示すように、インターホンの本体によって、インターホン下地の一部が隠れている場合には、その旨の文字情報を出力する。以上のように、不適写真画像を不適の理由とともに表示すると、当該不適写真画像を記憶部5に記憶する処理を行い(S304)、
図2のS200に戻って、写真画像を取得しなおす。
【0044】
このように、写真適否判断処理において、評価対象物の施工品質の評価とは別に、撮影された写真画像の撮影品質を評価し出力するので、写真画像を取得しなおす必要があることを簡単に認識させることができ、また、不適の理由も表示されるので、写真画像を取得する撮影技能を向上させることができる。
【0045】
写真適否判断処理を終了すると(S300)、次に、施工良否判断処理を行う(S400)。施工良否判断処理では、
図9に示すように、まず、評価対象物10に応じて、品質学習判断処理(S401)、比率判断処理(S402)、有無判断処理(S403)のいずれかの処理を行う。品質学習判断処理(S401)は、予め施工の良好な良好写真画像及び施工の不良な不良写真画像を機械学習させたプログラムにより、写真適否判断処理により適合写真画像と判断された写真画像の評価対象物10の施工品質が良好であるか不良であるかを判断する処理を行う。具体的には、多数の良好写真画像の特徴及び不良写真画像の特徴を抽出し、ディーランニングさせることによって、良好写真画像と不良写真画像とを判別可能としたプログラムにより、良好写真画像か不良写真画像かを判断する。また、多数の不良写真画像は施工不良の原因に応じていくつかの原因に分類して機械学習させることで、品質学習判断処理において、不良写真画像をさらに施工品質の不良の原因毎に分類する。
【0046】
このように、品質学習判断処理で、機械学習させたプログラムにより、様々な要因が考えられる施工不良について、データの蓄積によって精度の高い判断をすることができる。また、施工品質の不良の原因毎に分類するので、施工品質の不良と判断された評価対象物をどのように補修するかを簡単に確認することができる。
【0047】
比率判断処理(S402)は、評価対象物10の近傍に配置される部材であるか、又は評価対象物10に含まれる部位であって、施工品質によって寸法が変化する可能性がない部材を基準部12として予め入力しておき、機械学習などによって当該基準部12を画像認識で判別可能としておく。そして、基準部12に対する評価対象物10の大きさの比率の基準値を予め入力しておく。例えば評価対象物10が、外構ブロック塀の配筋である場合には、鉄筋の端部の折り曲げる長さが鉄筋の直径の4倍以上とする基準を満たすか否かにより評価対象物10の施工品質を評価する。具体的には、画像認識により基準部12としての鉄筋の直径と評価対象物10としての折り曲げられた長さとの比率を算出し、4倍以上である場合には、施工品質が良好な良好写真画像であると判断し、4倍未満の場合には、施工品質が不良な不良写真画像であると判断する。なお、写真画像の撮影方向によって鉄筋の長さや直径が変化して写されるが、例えば、円形の鉄筋端部が楕円に歪んだ形状に基づいて撮影された角度を推定し、鉄筋の直径及び折り曲げられた長さの比率を算出することができる。なお、比率判断処理(S402)の対象となる評価対象物10は、上述のものに限定されるものではなく、例えば界壁を貫通する耐火スリーブ材の直径を基準部12とし、耐火スリーブ材の界壁からの突出長さを評価対象物10として、比率判断処理により判断するものであってもよい。このように、比率を基準に判断することで、写真画像からは実際の寸法が判別できない場合であっても、施工品質の良否を確実に判断することができる。
【0048】
有無判断処理(S403)は、評価対象物10に必須の部材の有無に基づいて施工品質の良否を判断する処理である。例えば、評価対象物10としての樹木にプレートを取り付けることが施工基準として定まっている場合に、画像認識によって当該プレートの有無を判断する処理を行う。このように特定の部材の有無だけを確認すればよい箇所の施工品質の判断の場合には、極めて簡単な処理で判断することができるので、サーバにかかる負荷を小さくすることができる。
【0049】
品質学習判断処理(S401)、比率判断処理(S402)、有無判断処理(S403)が完了すると、施工品質が良好な写真画像と判断された場合には(S404:Yes)、良好写真画像として記憶部5に記憶する処理を行い(S405)、施工良否判断処理を終了する。一方、施工品質が不良な写真画像と判断された場合には(S404:No)、施工品質の不良原因毎に分類して(S406)不良写真画像として記憶部5に記憶する処理を行い(S407)、施工良否判断処理を終了する。なお、不良写真画像は、品質学習判断処理(S401)は、複数の施工品質の不良原因が存在する評価対象物10の良不良を判断するものであるので、不良写真画像を不良原因毎に分類するが、比率判断処理(S402)及び有無判断処理(S403)においては、不良原因が1つである場合には、必ずしも不良原因毎に分類する処理は行われない。
【0050】
図2に戻って、施工良否判断処理(S400)を終了すると、次に、出力処理を行う(S500)。出力処理では、前述の施工良否判断処理において、良好写真画像と判断された場合には(S501:Yes)、
図11に示すように、良好写真画像であるので、施工検査に合格した旨と、施工管理報告写真に登録した旨の情報をモニタ9に表示して出力処理を終了する。一方、不良写真画像であると判断された場合には(S501:No)、
図12及び
図13に示すように、施工品質が不良である旨、及び当該施工品質の不良原因をモニタ9に表示して、
図2の2に戻って、評価対象物の施工がやり直された後、施工品質評価プログラムの処理を繰り返す。
【0051】
以上のようにして、記憶部5に蓄積記憶された良好写真画像及び不良写真画像は、作業者や施工管理者の施工品質向上のための教育にも使用することができる。教育表示処理は、まず、記憶部5に記憶されている良好写真画像及び不良写真画像の中から無作為に写真画像を抽出し、当該写真画像が良好写真画像であるか不良写真画像あるかを表示しない第一表示態様で表示する(S601)。具体的には
図15(A)又は
図16(A)に示すように、いずれかの写真画像を表示するとともに、良好及び不良をタッチ操作により選択可能に表示する。そして、次に受け付けたタッチ操作が正解であるか否か判断し(S602)、その後、
図15(B)及び
図16(B)に示すように、良好写真画像であるか、不良写真画像であるかの情報を示した第二表示態様で当該写真画像を表示する(S603)。具体的には、第一表示態様で表示したものと同じ写真画像を表示するとともに、
図15(B)に示すように、タッチ操作が正解である場合には丸の表示を重ねて表示し、
図16(B)に示すように、タッチ操作が不正解である場合にはバツの表示を重ねて表示する。このように、教育表示処理によって、作業者や施工管理者の教育を行って、施工精度を高めることができる。
【0052】
本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る施工品質評価プログラム1は、例えば住宅の施工品質を評価するプログラムとして好適である。
【符号の説明】
【0054】
1 施工品質評価プログラム
5 記憶部
8 カメラ
9 モニタ
10 評価対象物
11 ガイド情報
12 基準部